癌と化学療法
Volume 37, Issue 3, 2010
Volumes & issues:
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総説
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マイクロRNA のがん治療への応用
37巻3号(2010);View Description Hide DescriptionマイクロRNA は約22 塩基対からなる短鎖RNA 分子であり,標的遺伝子のメッセンジャーRNA の3'非翻訳領域中の相補的配列に結合することでその翻訳を抑制し,様々な生命現象を調節することが知られている。特にがんとのかかわりは多くの研究がなされており,マイクロRNA が多くのがん種の発がん過程で重要な役割を果たしていることが知られている。がん研究において,マイクロRNA が注目されているもう一つの理由はバイオマーカーとしての有用性である。がん患者の血中には健常人と比較して,多くの種類のマイクロRNA が含まれていることから,細胞外マイクロRNA を定量することでがんの早期発見につながることが期待されている。われわれはこれまで明らかとなっていなかった分泌型マイクロRNA の分泌機構,生理作用を解析し,分泌型マイクロRNAが別の細胞に取り込まれて,標的遺伝子の発現抑制という本来の生理機能を発揮することを示すデータを得ている。これらの検討から,分泌型マイクロRNA はがん細胞と間質細胞とのクロストークを仲介し,がん微小環境の形成に関与していることが示唆される。がん関連マイクロRNAは,がん部で発現が増加しているがんマイクロRNA(oncogenic microRNA)と,発現が減少している抗がんマイクロRNA(tumor suppressor microRNA)の2 種類に大別することができる。前者を治療標的とする場合はantagomirs と呼ばれるマイクロRNA の働きを阻害する短鎖RNA を,後者の場合はmicroRNA mimetics というマイクロRNAと同じ働きをするRNAを投与することで,がん治療をめざすのがマイクロRNA創薬の基本コンセプトである。がんを適応症とするマイクロRNA 医薬品は現在まだ前臨床段階ではあるが,今後ヒトでも治療効果が発揮されることが期待される。
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特集
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- 肝癌治療の現況
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腹腔鏡下肝切除術
37巻3号(2010);View Description Hide Description完全腹腔鏡下肝切除術(totally laparoscopic liver resection: TLLR)は熟練した肝臓外科医によって安全に施行されているが,いまだ標準治療には至っていない。1997 年5 月〜2009 年10 月の期間に岩手医科大学附属病院で97 名のTLLR を施行した。術式は部分切除術79 名,外側区域切除15 名,S5亜区域切除2 名,右葉切除1 名であった。TLLRでは腫瘍径,発育形態と占居部位に応じて手術適応を熟慮することが重要である。また,手技の定型化もTLLR を安全そして有効に行う上で重要である。部分切除術では,肝切離時の出血を軽減するためにラジオ波による肝切離前凝固を行う。肝表層2 cm までは超音波凝固切開装置で肝実質を切離する。外側区域切除術では,超音波凝固切開装置を使用して,肝円索の左側で肝実質の厚さを約1 cm に薄くし,グリソン鞘と左肝静脈は肝実質とともに自動縫合器で切離するなどである。本稿では,われわれが行っている肝癌に対するTLLR の適応と手技の工夫について総説する。 -
肝癌に対する体外肝切除術
37巻3号(2010);View Description Hide Description肝予備能が保たれている患者に発生した肝細胞癌に対しては,肝切除による腫瘍摘出が最も根治性が高い治療である。症例数は決して多くはないが,腫瘍の解剖学的局在や大きさ,脈管浸潤などの条件によって通常の肝切除では摘出不可能な病変に対して体外肝切除が適応となることがある。体外肝切除はいったん全肝を体外へ摘出し,バックテーブルにて冷保存下に肝切除を施行,最後に残肝を自家肝移植する方法である。術前の脈管と腫瘍の3 次元的位置関係の把握と厳密な残肝容積の予測,正確な肝切除手技と肝移植手技,さらに高度な術後管理が必要となり,体外肝切除の成功には熟練した肝切除・肝移植チームが必要である。今回,体外肝切除の適応条件,手技および問題点について概説する。 -
Epirubicinを使用したTACE に抵抗性を示す肝細胞癌に対する治療戦略
37巻3号(2010);View Description Hide Description肝動脈化学塞栓療法(TACE)は切除不能な肝細胞癌(HCC)に対して,腫瘍の病勢を抑え,生命予後を改善する上で有効な治療法である。治療に際して,わが国においてはepirubicin,mitomycin C などの抗癌剤とLipiodol を併用して治療を施行している。しかしながら,問題点としてTACE を反復することでHCC が治療抵抗性になることがあり,その結果として長期生存率はいまだ十分高いとはいえない。白金製剤は種々の悪性腫瘍において有効な薬剤であり,近年HCC に対する治療においても使用されている。しかしながら,実臨床で遭遇するTACE 抵抗性となった症例に対する白金製剤の有用性に関してはいまだ十分な評価がなされていない。そこで今回は,当院で治療したepirubicin を使用したTACE に対して抵抗性となったHCC 152 症例を対象に,白金製剤を使用した経カテーテル的治療の有用性に関しretrospective に検討を行った。結果,治療3 か月後のCT にてcomplete response(CR)となった症例は6 例(4%),partial response(PR)は28 例(18%)であり,50%生存期間ではPR/CR の奏効例においては非奏効例と比較して1.4 年の延長を認めた。今後,種々の分子標的治療薬が登場し,進行肝癌に対する治療の第一選択は変化していく可能性もある。しかしながら今回の結果から,反復したTACE に対して治療抵抗性を獲得したHCC には,白金製剤を使用したTACE を行うことが一つの有用な方法であると考えられた。 -
薬物療法
37巻3号(2010);View Description Hide Descriptionsorafenibはplaceboと比較した二つの第III相試験において,有意に良好な病勢制御割合,無増悪生存期間と生存期間を示し,進行肝細胞癌に対する標準治療として位置付けられ,広く使われるようになった。現在,肝切除や局所壊死療法,肝動脈化学塞栓術後の補助療法としてのsorafenib の有用性を明らかにするためのランダム化比較試験が進行中である。また,その他の分子標的治療薬や分子標的治療薬との併用療法などの開発も盛んに行われている。一方,本邦では5-fluorouracilとcisplatin,5-fluorouracilとinterferon,cisplatin などの肝動注化学療法が,腫瘍縮小効果も高く,良好な生存期間も報告されているため,以前からよく行われている。しかし,ランダム化比較試験などが十分に行われておらず,肝動注化学療法の延命効果は明らかにされていない。今後,進行肝細胞癌に対する肝動注化学療法の適切な患者選択や全身化学療法との棲み分け,さらには延命効果を明らかにしていくことが重要である。sorafenibの延命効果が示されて以来,肝細胞癌の薬物療法は大きく変貌しており,今後さらなる治療成績の向上が期待されている。 -
肝細胞がんの樹状細胞治療
37巻3号(2010);View Description Hide Description肝細胞がん(肝がん)に対する現行の局所療法による根治性は高まってきているが,再発病変を制御することは困難である。そこで,がんの再発に対する抑制効果が注目されている樹状細胞免疫治療を,肝がん診療に応用する可能性を検討した。本臨床研究においては,肝動脈塞栓療法(TAE)と同時に樹状細胞を投与する手法の免疫作用と治療効果について解析した。樹状細胞はC 型肝がん患者の末梢血単球から誘導し,5×10 6個の細胞を血管カテーテルを介して肝がん組織に導入した。各種の樹状細胞調整法の検討において,ペプチドで刺激培養した樹状細胞は表現マーカーの解析において未熟なパターンであり,これに対して免疫賦活物質OK-432 を用いた刺激培養法では成熟活性化マーカーCD83 が高発現した。樹状細胞を投与した患者の経過において,副作用や有害事象などの問題を認めなかった。そして興味深いことに,無再発生存期間の解析ではOK-432 刺激樹状細胞をTAE と併用した症例において,TAE 標準治療と比較して再発率が低下することが示された。これより,OK-432によって刺激した樹状細胞は,TAEと併用することによって有効な抗腫瘍効果を発揮し肝がんの再発を抑制することが示唆された。今回の研究によって,樹状細胞治療が将来の肝がん診療における再発抑制の一つの選択肢となる可能性が示された。 -
肝移植
37巻3号(2010);View Description Hide Description肝細胞癌に対する根治的治療法である肝移植は年々症例数が増加し,本邦では保険適応となった2004 年以降の増加が加速している。移植適応のgold standard であるMilan 基準は厳格すぎるため,その適応拡大が各施設で試みられているが結論はいまだでていない。一方,肝機能が保たれている症例に対して肝移植か肝切除のどちらを選択すべきかという命題についても,いまだcontroversialである。すなわち全体としては肝移植と肝切除で同等の成績が得られているが,肝機能不良例では移植が有利である。特に10 年生存率は肝切除では不良であることから,salvage肝移植を考慮した長期的な治療指針を提示すべきであろう。肝移植後の肝細胞癌再発に対して有効な治療法は確立していない。今後は新しい薬剤・治療法の開発に期待がかけられる。同時にC 型肝炎再燃のコントロールも必須であり,こちらも新たな治療戦略の確立が求められている。
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Current Organ Topics:骨・軟部腫瘍
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原著
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当院の肺癌術後補助化学療法の現状—臨床研究登録状況についての検討—
37巻3号(2010);View Description Hide Description当院の病理病期IB,II,IIIA期非小細胞癌・切除例に対する術後補助化学療法の現状および術後補助化学療法の臨床研究登録状況をまとめた。2001 年8 月〜2008 年12 月31 日までに術後補助化学療法の候補患者数は315 例であった。315例のうち186 例(59%)に術後補助化学療法が行われた。術後補助化学療法を行った群は行わなかった群に対し有意に若く,併存疾患も少なかった。術後補助化学療法は経口剤であるUFT が大多数を占め,carboplatin+paclitaxel,gemcitabine,cisplatin+vinorelbineがそれに続いた。術後補助化学療法施行186 例中,臨床研究登録例は25 例(13%)と少数であった。臨床研究に登録しなかった理由として,20 例で医療者サイドがregimen を選択し,残りの141 例で患者サイドがregimenを自ら選択し希望していた。術後補助化学療法の臨床研究参加率は低く,多くは患者自身が治療法を選択していた。 -
腹膜転移を有する胃癌症例に対する治療戦略
37巻3号(2010);View Description Hide Description腹膜転移を有する進行胃癌では術後補助化学療法を行っても,その予後はMST でわずか232 日と不良であった。そこでわれわれは,開腹あるいはstaging laparoscopy にて腹膜転移ありと診断された胃癌に対しては原発巣切除を行わないで,できるだけ早期に全身化学療法を始めることに治療戦略を変更した。11 例の腹膜転移を有する胃癌にS-1+paclitaxel(PTX)を含む全身化学療法が優先して行われた。S-1(80 mg/m2/day)2 週投与,PTX(50 mg/m2)はday 1,day 8 に投与し1 週休薬を1 コースとした。11 例のうち5 例にPTX+S-1 をfirst-line として,6 例はsecond-line として行われていた。何例かは一時的な効果を示す症例も認めたものの,ほとんどの症例はprogressive disease であった。しかし11 例中2例に腹膜転移のcomplete response が得られ根治的胃切除が可能となった。2 例とも現在無再発生存中である。胃癌腹膜転移に対し全身化学療法を優先して行われた11 例のMST は464 日であり,手術先行,術後化学療法例のMST 232 日に比べ生存期間が延長する(p=0.0500)可能性が示唆された。 -
進行胃癌に対するS-1+CDDP による術前化学療法の術後病理組織効果と予後
37巻3号(2010);View Description Hide Description切除予後不良進行胃癌に対する術前化学療法(NAC)の治療成績と予後について切除標本病理組織評価から検討した。対象: 75 歳以下,術前画像診断にて根治切除可能と判断された症例を対象とした。NAC のregimen はS-1 80〜120 mg/body 3W po+CDDP 60 mg/m2 day 8 を2 コース終了後に胃切除+D2 以上を行った。病理組織効果Grade 2 以上をresponder(R),Grade 1b以下をnon-responder(N)に分類。TS,OPRT の発現との関係,予後について検討した。結果:検討11 症例中R 5 例,N 6 例であった。OPRT 高発現例はR 例と主に関連していた。一方,TS high/OPRT low 症例ではN例が多い傾向であった。OS(4年以上追跡)は4 年生存率36.4%であった。R vs N生存率はR 例が良好傾向であった(p=0.0864)。無再発期間はR 例が有意(p=0.0414)に良好であった。結語: S-1+CDDP のNACは有効と考えられるが,その真価を確認するためにNACと術後adjuvantとのphase III study(JCOG0501)の結果が待たれる。 -
ポート合併症により化学療法の延期が必要となった大腸癌症例の検討
37巻3号(2010);View Description Hide Description目的:大腸癌治療におけるCV ポート関連の合併症について,その頻度,臨床因子との関係を明らかにする。方法:2006 年2 月〜2009 年4 月までの間に当院外科でCV ポートを挿入した切除不能転移・再発大腸癌57 例を対象とした。挿入部位,挿入時間,術者,ポート製品などの因子について合併症との関連を検討した。結果:男性42 例,女性15 例。ポート挿入時の年齢中央値は67(28〜82)歳。導入理由は肝転移25 例,腹膜播種12 例,リンパ節再発7 例,肺転移18 例,局所因子8 例,その他4 例であった(複数回答あり)。対象症例中,ポートトラブルが原因で治療を延期した症例は10 例(17.5%)。内訳は感染が4 例(7.0%),血栓が5 例(8.8%),カテーテル断裂1 例(1.8%)であった。9例でポート抜去を行った。穿刺部位,術者,挿入時間,ポート製品別の検討では合併症の有無に有意差を認めなかった。結論: CV ポート合併症の頻度はそれほど高くないといわれているが,術者や挿入時間にかかわらず抜去が必要となるようなトラブルが起こり得る。挿入方法や製品の検討,早期発見の重要性と医療側と患者側の理解が必要であると思われる。 -
進行消化器癌に対するS-1を含む化学療法の副作用対策—微粒子化分散Lentinan との併用—
37巻3号(2010);View Description Hide Description目的: 近年,進行消化器癌に対する薬物治療において,S-1(tegafur・gimeracil・oteracil potassium)が単剤もしくは他の抗癌剤との併用(S-1+a)で処方されている。しかしながら副作用の発現率も高く,長期間投与を続けられなくなるケースも少なくない。本研究では,S-1 もしくはS-1+a の化学療法に微粒子化分散Lentinan(superfine dispersed lentinan:SDL)を併用投与し,S-1 またはS-1+a の副作用の発現が軽減できるか否かを検討する。対象と方法:切除不能または再発消化器癌患者72 例を対象とした。男性45 名,女性27 例,年齢は中央値64(31〜85)歳であった。癌腫は胃癌29 例,大腸癌25 例,膵癌10例,その他の消化器癌8 例であった。SDL(15 mg/袋/日,1 日1 回1 袋)を12週間連日経口投与した。生存期間はKaplan-Meier法にて,有害事象の評価はCTCAE ver 3.0 にて行った。結果: SDL との因果関係が否定できない有害事象は2例(2.7%)2件(便秘grade 2 および嘔気grade 1)であり重篤な症状ではなく,SDL 投与中止後消失した。S-1との因果関係が否定できない副作用は,72症例中9例(12.5%)11 件(grade 3以上は3例(4.2%)3件)と血液毒性,非血液毒性ともに発現が非常に低率であった。特に消化管毒性に関しては認められなかった。全生存期間は,胃癌で9.5 か月(95%信頼区間: 7.0〜22.4 か月),大腸癌では18.4 か月(95%信頼区間: 13.2〜28.5 か月)であった。結語: これらの結果よりSDL は,進行消化器癌患者に対して投与しても安全であり,またS-1 もしくはS-1+aの化学療法の副作用対策に有用と考えられる。SDL を併用することでS-1 の投与期間の延長につながり,結果として生命予後の延長に寄与できる可能性が示唆された。 -
Bevacizumab併用化学療法における治療効果予測としてのCEA の意義
37巻3号(2010);View Description Hide Description目的:治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌に対してbevacizumab 併用化学療法が適応になって以降,その有用性が報告されている。抗腫瘍効果の判定基準としては一般にRECIST ガイドラインが用いられているが,画像評価の判定には種々の問題点もあり,今回,治療効果予測としてのCEA の意義について検討した。対象と方法: 2007 年8 月以降,bevacizumab 併用化学療法を施行した患者25 例のうち,RECIST ガイドラインによる抗腫瘍効果の治療判定がなされた18例を対象とした。定期的に施行された血液検査によるCEA 値と抗腫瘍効果判定との関連,各症例のCEA の推移をretrospective に解析した。結果:年齢は49〜78(平均64.2)歳,男性/女性: 16/2(例)。根治的手術後の異時性再発症例は7 例で肝/肺転移が6 例,骨盤内再発が1 例であった。同時性肝/肺転移による姑息的手術施行が9 例,非手術症例が2 例であった。bevacizumabの治療ラインは,first-line 16 例,second-line 2 例であった。併用化学療法は,first-lineではmFOLFOX6療法12 例,FOLFIRI療法3 例,IFL 療法1 例であった。second-lineでは,2 例とも併用化学療法はFOLFIRI療法であり,前治療はmFOLFOX6療法であった。全体の奏効率は55.6%(CR 1 例,PR 9 例,SD 3 例,PD 5 例)であり,bevacizumabをfirst-lineとして使用した16 例では56.3%(CR 1 例,PR 8 例,SD 3 例,PD 4 例)であった。治療開始時にCEAが正常範囲内(5 ng/mL)であった3 例の奏効率は100%(CR 1 例,PR 2 例)であったのに対し,CEA 高値15 例の奏効率は46.7%(PR 7 例,SD 3 例,PD 5 例)であった。さらにCEAが100 ng/mL 以上の症例7 例のうち6 例がCEA制御期間5 か月以下で,平均3.0(1〜5)か月であったのに対し,CEAが100 ng/mL 以下の症例8 例のうち6 例がCEA制御期間5 か月以上,平均8.4(3〜15)か月であった。結論: bevacizumab併用化学療法において,治療開始時CEA正常例は,高値例に比して高い奏効率を示した。また治療開始時のCEA が100 ng/mL 以上の症例はCEA 制御期間が短く,bevacizumab 併用化学療法によってもその効果は低いことが示唆された。bevacizumab 併用化学療法においてCEA 値は,治療効果予測バイオマーカーとして臨床的に参考になる可能性がある。 -
TS-1適正使用確認システムの構築とその応用
37巻3号(2010);View Description Hide Description経口抗悪性腫瘍薬であるTS-1 は腎排泄型のCDHP を含有しており,腎機能低下症例では副作用頻度が増加する。そこで当センターでは,TS-1服用患者に安全かつ有効な薬物治療を行うため,経時的なCcrを簡便に確認するシステム(TS-1 適正使用確認システム)の構築を行った。本システムを用いて調査したところ,適正使用逸脱例が2 例発見された。1例目はCcr が30 以下を示したため,腎機能正常患者の血中濃度シミュレーションと比較したところ,薬物動態に変化がみられた。2 例目はCcr が40 台であったがT-Bil の上昇があったため尿中ウラシル値の測定を行い,さらに薬剤リンパ球刺激試験を実施する結果となった。以上より,本システムは医師や薬剤師では網羅しきれないTS-1 服用患者の状況を一目で確認可能であり,安全な薬物治療を進める上で有用である。
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特別調査報告
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各診療科間に存在する転移性骨腫瘍に対する認識の差に伴う実診療の違い—転移性骨腫瘍に対するチーム医療の必要性—
37巻3号(2010);View Description Hide Description転移性骨腫瘍は,すべての診療科において遭遇するものの専門家が少ないのが現状である。今回,各診療科の医師に対しゾレドロン酸に関するアンケートを行い,診療科ごとでの転移性骨腫瘍の治療法の違いについてretrospective に検討した。乳腺外科医は正確な知識に伴い適切な使用を行っていたが,その他の診療科では知識不足から不適切な使用が行われていた。今後,転移性骨腫瘍に対する新たな治療が開発されることが期待されるが,今回のゾレドロン酸のように知識や経験の違いのために適正な使用が行われない可能性があると考えられた。したがって,転移性骨腫瘍の知識を常にup dateし,各診療科に対し啓蒙活動を行う専門チームが必要であると考えられた。
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話題
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病病連携による術前腹腔鏡検査の有用性
37巻3号(2010);View Description Hide Description手術件数が多い施設で,術前腹腔鏡検査を限られた期間に施行することは困難である。われわれは,連携医療機関の病院に腹腔鏡検査を依頼する,病病連携による術前腹腔鏡検査を開始したので,その有用性を報告する。漿膜浸潤を有する胃癌症例を対象とし,当院の予定手術までに腹腔鏡検査を連携病院で行った。2008 年4 月〜2009 年1 月までに14 症例に施行した。病理診断を含めた腹腔鏡検査の結果を中央値11 日で得られた。腹腔鏡検査を依頼してから予定手術までの期間は中央値34 日であった。合併症はなかった。14症例中4 例に腹膜転移を認め,10例は腹膜転移なく洗浄細胞診も陰性であった。P0Cy0 であった10 症例中9 例が手術を受け,7 例が根治切除となったが,2 例が洗浄細胞診陽性にて根治度C 手術となった。病病連携により安全に短期間に術前腹腔鏡検査を施行することが可能であった。しかしながら,洗浄細胞診に関して偽陰性例が2 例あり,改善する必要があると思われた。
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症例
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両側多発肺転移再発を来した肝細胞癌に対してS-1により長期SDが得られた1 例
37巻3号(2010);View Description Hide Description遠隔転移再発を来した肝細胞癌に対する治療は一定したものがないのが現状である。今回,われわれは肝細胞癌術後に両側多発肺転移を来した症例で前治療に治療抵抗性となった後,S-1 を投与し長期SD が得られた症例を経験した。症例は62 歳,男性。HBs-Ag(−),HCV-Ab(−)の肝右葉全体を占める肝細胞癌に対し,肝右3 区域切除を施行した。術後1年3 か月目のCT 検査にて両側多発肺転移が出現し,UFT 単独治療に加え,5-FU 500 mg の週1 回点滴静注を追加したpharmacokinetic modulation chemotherapy(PMC)を行った。その結果,24か月間の無増悪期間が得られたが肺転移の増大がみられたため,S-1 80mg/dayから開始し100mg/dayの経口投与を行った。投与後,9 か月間のSDが得られPIVKA-IIも73 mAU/mL と低下した。遠隔転移再発を来した肝細胞癌に対するS-1 の経口投与は治療の選択肢の一つになり得ると考えられた。 -
CisplatinおよびPemetrexedの再投与が有効であった悪性胸膜中皮腫の1 例
37巻3号(2010);View Description Hide Description今回われわれは,cisplatin(CDDP)およびpemetrexed(ALM)の再投与が有効であった悪性胸膜中皮腫の1 例を経験したので,ここに報告する。症例は78 歳,男性。エコーガイド下生検および胸腹部CT より,悪性胸膜中皮腫上皮型,International Mesothelioma Interest Group(IMIG)分類IV期と診断された。Cr が高値であることと高齢であることより,CDDP 60 mg/m2とALM 500 mg/m2をday 1に投与し,これを3〜4週ごとに繰り返し6コース行った。病変は縮小を示し,6 コース終了後のResponse Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)での最良総合効果はpartial response(PR)であった。再度病変の増大を認めたため,vinorelbine,gemcitabine,S-1 で治療を行うも奏効せず,五次治療としてCDDP およびALMの併用療法を行い再び奏効した。 -
肝転移を伴う進展型小細胞肺癌に対する肝動注化学療法にて病勢コントロールが可能であった1 例
37巻3号(2010);View Description Hide Description58 歳,男性。2007年12 月よりsmall cell lung cancer[T2N1M1(HEP)cstage IV/ED]に対し,化学療法(CDDP+CPT-11 2 コース,CBDCA+PTX 3 コース)を施行し,SDであった。原発巣は縮小傾向(43×38 mm)で,肝転移は不変であった。PS 0 と全身状態は良好であったため,局所コントロール目的にて2008 年3 月より肝動注化学療法を開始した。CPT-11単剤をweekly投与の形で継続し,ProGRPの低下を認めるとともに,2009 年1 月までSDをkeep できた。肝転移を伴う肺癌に対する肝動注化学療法により,病勢コントロールおよびQOL保持に有効であったと考えられた。 -
術後肝転移に対しFEC75 施行後Tamoxifen・アロマターゼ阻害剤逐次投与によりCR が維持されている乳腺粘液癌の1 例
37巻3号(2010);View Description Hide Description症例は51 歳,閉経前女性。2005 年2 月に左乳癌(粘液癌混合型)に対し胸筋温存乳房切除術を施行し,術後LH-RH agonistおよびtamoxifen citrate(TAM)の投与を開始したが,9 月のCT所見上,肝右葉S4 に転移がみられたため,10 月よりFEC75(cyclophosphamide 500 mg/m2,epirubicin 75 mg/ m2,5-FU 500 mg/m2: day 1 投与,1 コース21 日間)を開始した。5コース施行時点で患者の意向から本治療を中止し,以後TAM内服単独とした。CT所見上,転移病変は縮小傾向を示し,術後1年2か月目に施行したFDG-PET では,もはやviable cellの残存は認められなかった。術後1年3か月目より内服をアロマターゼ阻害剤に変更し,術後4 年経った現在も同剤内服を継続しているが,CT 所見上肝病変は消失しこの状態が維持されている。 -
FEC 療法後TrastuzumabとDocetaxelの併用療法が奏効した転移性乳癌の1 例
37巻3号(2010);View Description Hide Description症例は56 歳,女性。2007 年11 月初旬,左乳房腫瘤よりの出血を主訴に当院を受診。左乳房C-area を中心に直径5cm 大の潰瘍形成,胸筋固定を伴う腫瘍を認めた。CT 検査にて多発性肺転移,肝臓転移も指摘された。core needle biopsyにてscirrhous carcinoma が検出されER 陽性,HER2 も強陽性を示した。FEC100 を4 コース投与後,trastuzumab とdocetaxelの併用療法を10コース計30 週投与した。投与後,乳房腫瘍は縮小し,肺転移,肝転移病巣は消退しpartial response(PR)の結果が得られた。FDG-PET 検査では異常集積は認めなかった。2009 年2 月初旬,左乳房切除術を施行するも病理組織検査ではGrade 2b とわずかに癌細胞の遺残を認めるのみであった。今回,遠隔転移を伴った進行乳癌に対しtrastuzumabとdocetaxelの併用療法が奏効した1 例を経験したので報告する。 -
Classical CMF が著効を示した乳癌術後肝転移の1 例
37巻3号(2010);View Description Hide Description患者は35 歳,女性。anthracycline,taxanes,vinorelbine抵抗性の乳癌肝転移に対してclassical CMFが著効を示した。CMF は副作用が比較的少なく,QOL を悪化することなく外来で治療継続が可能であることから,新規薬剤に抵抗性を示す再発乳癌に対する治療法の選択肢の一つであると考えられた。 -
多発性肝転移および骨転移の多剤耐性乳癌にCMF 療法が有効であった1 例
37巻3号(2010);View Description Hide Description患者は再発乳癌,肝転移の51 歳,女性。術後CEF 療法などを受け,再発後,ホルモン治療と化学療法を受けていた。多種の化学療法を受け,すでに多剤耐性化したと思われたが,CMF療法にて9 か月間の病勢コントロールが可能であった。CMF 療法は他の乳癌化学療法に比べ副作用が少なく,QOL を保ちつつ継続的に治療が可能である。本症例のように多剤耐性化したと思われる再発乳癌に対しても有効である場合があり,CMF療法はanthracycline,taxaneなどの治療後のthird-line以降でも有効な化学療法の選択肢の一つと考えられた。 -
Virchowリンパ節,傍大動脈リンパ節腫大を認めた進行胃癌に対しS-1単剤療法が著効した1 例
37巻3号(2010);View Description Hide Description症例は64 歳,女性。左頸部の腫瘤を主訴に近医を受診した。内視鏡検査で胃体下部に3 型の腫瘍があり,生検で低分化腺癌と診断された。CT 検査でVirchow リンパ節と傍大動脈リンパ節の腫大を認め切除不能と判断し,S-1 単剤療法を4週間投与2 週間休薬で開始した。副作用のため2 週間投与1 週間休薬に変更し5 コース行った。CT 検査でVirchow リンパ節,傍大動脈リンパ節が消失したため幽門側胃切除,D2リンパ節郭清,胆嚢摘出術を施行した。病理では胃の残存腫瘍の最大径は2 mm でリンパ節転移はなかった。組織学的判定基準Grade 2 と判定された。術後経過は良好でS-1 投与を再開し1 年経過したが再発徴候はない。 -
S-1継続内服により長期無再発生存中のAFP 産生Stage IV胃癌の1 例
37巻3号(2010);View Description Hide Description症例は66 歳,女性。摂食時のつかえ感に対する精査の結果,噴門部進行胃癌と診断された。胃全摘術を施行したが病理所見では免疫染色で一部AFP 陽性を示し,横隔膜への直接浸潤ならびに2 群リンパ節転移,さらには脾門付近での静脈内腫瘍栓形成を認め,予後は極めて厳しいと考えられた。術後補助化学療法としてS-1 を内服開始し,6 年半経過した現在もいまだ再発の兆候は認めていない。予後不良なAFP 産生進行胃癌であっても,近年は化学療法有効例の報告も増えてきており,集学的治療により良好な生命予後を期待できる可能性が示唆された。 -
MUC1 標的免疫細胞療法とGemcitabineとの併用が著効した膵頭部癌多発肝転移の1 例
37巻3号(2010);View Description Hide Description症例は52 歳,女性。心窩部の違和感を主訴として当院を受診,多発肝転移を伴う膵頭部癌と診断した。胆管狭窄に対し金属ステントを留置し,その後gemcitabine(GEM)1,000 mg/m2週1 回,3 週投与1 週休薬を1 コースとして投与を開始した。また,MUC1をパルスした樹状細胞(DC)と活性化自己リンパ球(CAT)の投与によるMUC1標的免疫細胞療法(DC-CAT)を2 週に1 回を1 コースとして併用した。GEM 6 コース,DC-CAT 9 コース施行後,原発巣と肝転移巣の消失を認めた。治療開始後7 か月後となる現在もGEM とCAT 療法を継続し,complete response を維持している。GEM と免疫細胞療法の併用治療の進行膵癌に対する有用性が示唆された。 -
UFT+Leucovorin併用放射線化学療法およびS-1+CPT-11併用療法が奏効した切除不能進行S 状結腸癌の1 例
37巻3号(2010);View Description Hide Description症例は75 歳,男性。2007 年7 月,下痢と貧血を主訴に受診,下部消化管内視鏡検査にてS 状結腸癌と診断した。血清CEA は45.1 ng/mL と高値であった。手術を施行したが切除不能であった。術後,局所制御のため放射線化学療法を施行した。化学療法はUFT(420 mg/body/day)+Leucovorin(75 mg/ body/day)を毎日経口投与し,放射線療法中6 週間継続した。放射線療法は2 Gy/day×30 回(総線量60 Gy)を施行した。放射線化学療法終了後の10 月には,CEAは治療開始前の45.1 ng/mL から18.5 ng/mL に低下し,CT にてS 状結腸の腫瘍は縮小していた。放射線化学療法後よりS-1(100 mg/body/day, day 1〜14)+CPT-11(140 mg/body/day, day 1 および15),4 週間で1 コースとしたS-1+CPT-11併用療法を開始した。血清CEA は4 コース目には正常範囲内となった。シグモイドスコピーにて腫瘍は認めず,生検でも腫瘍細胞は検出されなかった。8コース後の2008 年6 月,腹部骨盤CT ではS 状結腸の腫瘤は消失し,PET-CTにおいてもFDG の取り込みを認めなかった。切除不能進行S 状結腸癌にUFT+Leucovorin 併用放射線化学療法施行およびS-1+CPT-11 併用療法は有用であると考えられた。 -
癌性リンパ管症を伴ったS 状結腸癌に対して分子標的薬を併用した治療が奏効した1 例
37巻3号(2010);View Description Hide Description症例は51 歳,男性。下部消化管内視鏡検査にてS 状結腸に1 型病変を認め,生検にて高〜中分化型腺癌の診断となった。また頸部〜骨盤腔造影CT にて多発リンパ節腫大を認め,S 状結腸癌多発リンパ節転移の診断にて,全身化学療法施行目的に当科へ紹介され初診となった。当科初診時に呼吸苦の訴えがあり,当科で施行のCT にて癌性リンパ管症の診断となった。mFOLFOX6+bevacizumab 併用療法を開始したところ癌性リンパ管症の大幅な改善を認めた。8 か月後の評価で増悪を認めたため,二次治療としてFOLFIRI療法を開始したが無効であり,再度呼吸困難も出現し,CT にて癌性リンパ管症の再増悪を認めた。三次治療としてirinotecan+cetuximab 併用療法を開始したところ再度癌性リンパ管症の大幅な改善を認めた。癌性リンパ管症を伴う悪性腫瘍症例は治療抵抗性で予後不良であるとされてきたが,本症例は分子標的薬を併用した治療により癌性リンパ管症の改善を認め,長期生存を得ている。若干の文献的考察を加え報告する。 -
Imatinib Mesylateにより著明な骨髄低形成を来すも低用量投与にて細胞遺伝学的寛解が得られた移行期慢性骨髄性白血病
37巻3号(2010);View Description Hide Description症例は58 歳,女性。2006 年6 月,WBC 125,600/μL,巨脾にて当科を受診。骨髄検査にてPhiladelphia(Ph)染色体陽性であり,移行期慢性骨髄性白血病(CML-AP)と診断。imatinib mesylate(imatinib)600 mg/日にて治療を開始したが,汎血球減少が進行したためimatinib を徐々に減量。2007 年1 月にHb 9.8 g/dL,Plt 1.0×10 4/μL となりimatinib を中止。貧血,血小板減少に対しては赤血球,血小板輸血を要した。骨髄検査を施行したところ著明な低形成性骨髄であり,染色体検査ではPh 陽性細胞は8/14 であった。8 か月間の休薬を要したが,9 月血球数が回復したためimatinib 100 mg/日より再開し,その後200 mg/日で継続投与としたところ2008 年2 月の骨髄染色体検査ではPh 陽性細胞は0/20 と細胞遺伝学的寛解(CCyR)が得られた。imatinibによる血液毒性は通常減量,休薬により速やかに回復するが,本症例のごとく著明な骨髄低形成を来し長期に及び汎血球減少が遷延した例はまれである。さらにCML-AP にもかかわらず低用量imatinib 投与再開にてCCyR が得られた貴重な症例と考えられ,文献的考察を加えて報告する。 -
化学療法後に著明な低ナトリウム血症を呈しRenal Salt-Wasting Syndromeと考えられた1例
37巻3号(2010);View Description Hide Description症例は66 歳,女性。限局型小細胞肺癌に対しcisplatin(CDDP)+etoposide(ETP)による化学療法と胸部放射線療法を開始。1 コース目day 3 より嘔吐,低Na 血症が出現。輸液,ステロイド投与を行うが改善なく,day 7 に血中Na 値は109 mEq/L まで低下し,意識障害,痙攣を来した。高張食塩水点滴投与で徐々に回復,day 22 にほぼ正常に復し,後遺症は残さなかった。発症時に脱水所見が著明で,尿へのNa排泄が亢進していたことからrenal salt-wasting syndrome(RSWS)を来したものと考えた。2 コース目からはCDDP をcarboplatin(CBDCA)に変更し,低Na 血症の再現をみなかった。CDDP 投与後に発症する低Na 血症にはADH分泌不適合症候群(SIADH)だけでなく,本症候群も鑑別に入れ,高張食塩水の補充を考えていくべきである。 -
肺がん術後骨転移・がん性リンパ管炎の疼痛と呼吸困難に対し,フェンタニル注射剤によるタイトレーションにてフェンタニル貼付剤(デュロテップパッチ)と塩酸オキシコドン(オキシコンチン)の至適投与量を決定し得た1 例
37巻3号(2010);View Description Hide Description昨今のがんに対するdisease-modifying treatment の進歩により,初期治療後に転移再発を繰り返して数年の経過をたどりながら結果的に末期状態に至る患者に接する機会が増えている。これは確かに「がん治療における生命予後の改善」を実感する現象ではあるが,患者にとっては,がんとの闘いに加えて治療の副作用や疼痛など様々な症状と向き合う時間が数年に及ぶということをも意味している。こうした状況を背景に,disease-modifying treatment と並存するpalliative careの重要性が本邦のがん治療においても不十分ながら認識されつつある。われわれは,肺がん術後骨転移・がん性リンパ管炎の疼痛と呼吸困難に対し,フェンタニル注射剤によるタイトレーションにてフェンタニル貼付剤と塩酸オキシコドンの至適投与量を短期間で決定し,良好な症状コントロールを得た1 例を経験した。タイトレーション後の薬剤投与量は,フェンタニル貼付剤35 mg+塩酸オキシコドン60 mg+ベタメタゾン4 mg となった。薬剤の特性,タイトレーションの具体的な方法,文献的考察とともに本症例の経過を報告する。
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短報
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癌診療レポート
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がん患者への臨床検査技師の取り組みを考える—がん患者と家族を対象とした「がん治療と臨床検査」の講演後のアンケート報告から—
37巻3号(2010);View Description Hide Descriptionがん医療においてはチーム医療の必要性がいわれ,臨床検査技師もチームの一員として積極的に活動していく必要がある。今回,がん患者とその家族を対象とした当院がんセンター主催の講演会「第6 回ともに生きる会」で臨床検査技師が「がん治療と臨床検査」という演題で講演し,講演後にアンケートを行った。その結果,講演内容の満足度および理解度ともに良好であった。また,講演後の質疑応答やアンケート結果から得られた意見を参考に,臨床検査技師が医師・看護師に代わって外科病棟で化学療法および放射線治療を受ける患者への白血球数と好中球数の報告や,外来で化学療法を受けるための通院治療センターで,検査相談を開始した。チーム医療の一員として臨床検査技師がこのような取り組みを行うことは,がん医療の質の向上に貢献するものと考える。
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