癌と化学療法
Volume 37, Issue 12, 2010
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特集【第31回癌免疫外科研究会,第32回日本癌局所療法研究会】
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肝内胆管癌の増殖・線維化におけるレニン・アンギオテンシン系非依存性アンギオテンシンII産生系の役割
37巻12号(2010);View Description Hide Description肝内胆管癌(ICC)組織においては,癌細胞と肝星細胞(HSC)との相互作用が癌間質の線維化や細胞の増殖能亢進に関与していると考えられる。そこで今回,癌間質で産生されるアンギオテンシンII(AngII)とその特異的受容体AT−1 受容体の関与について検討した。ICC 組織中AngII含量は正常肝や癌間質の少ない肝細胞癌と比較して有意に高値であった。ICC,HSC 細胞株にAT−1 発現を認め,AngII添加によりICC,HSC の増殖能,HSC の活性化の亢進を認め,AngII受容体拮抗薬(angiotensin II receptor blocker: ARB)添加によりそれらの反応は抑制された。ICC 組織において局所AngII産生系は,腫瘍細胞の増殖と癌間質の線維化に相乗効果をもたらすと考えられ,ARB にはAT−1 が発現する腫瘍に対する抗腫瘍・抗線維化効果がある可能性が示唆された。 -
PSK による大腸癌患者のTh1/Th2 バランスおよびTreg の制御
37巻12号(2010);View Description Hide Description癌患者ではTh1/Th2 バランスにおいてTh2 優位状態であり,またTreg の割合が高くなっている。したがって癌免疫療法においてはこれら免疫抑制状態を解除する必要がある。今回,大腸癌症例において末梢血のCD4+IL−10+ 細胞とCD4+Foxp3+ 細胞の割合をフローサイトメトリーにより測定し,PSK がTh2 優位状態やTreg 高値の状態を解除できるかについて検討した。大腸癌患者40 例を対象とし,術前にPSK を1 日3 g,1 週間経口投与しPSK 投与前後において末梢血を採取し検討した。CD4+IL−10+ が低下する症例が63%に認められTh2 優位状態が解除されていた。また,CD4+Foxp3+ が低下する症例も63%に認められた。しかし,PSK 投与前後におけるCD4+IL−10+ とCD4+Foxp3+ の変化率には有意な相関は認められなかった。今後はPSK 投与によりTreg 高値状態が解除される症例がPSK のresponder になるかについて検討する必要がある。 -
血中CRP 値による進行食道癌に対する根治化学放射線療法の早期効果予測
37巻12号(2010);View Description Hide Description血中CRP 値の上昇で食道癌の進展を反映することが報告されている。そこで,進行食道癌に対する根治化学放射線療法(CRT)症例を対象として,血中CRP 値による効果予測が可能か否かをretrospective に検討した。当院で根治CRT を施行したM1b を除くcT3/cT4 食道扁平上皮癌36 例を対象として,CRT 前およびCRT 開始1 週,2 週,3 週後の血中CRP 値とCR 導入との関連を検討した。非CR 群でCR 群に比べてCRT 開始2 週後(CRT2W)のCRP が高かった(p=0.071)。多変量解析を用いてパーティションモデルを作製し予測精度を検証したところ,CRP≦0.1(CRT2W)を示す症例をCR 症例に選別した場合の予測精度は感度50%,特異度82.1%,正診率75.0%であった。血中CRP 値はCRT 奏効性と深く関連しており,CRT 開始2 週経過した時点のCRP 値によりCR 導入症例を比較的高い精度で選別できることを明らかにした。 -
WT1 ペプチド樹状細胞ワクチン療法と活性化リンパ球療法併用の進行癌治療成績
37巻12号(2010);View Description Hide Description目的: 進行癌に対するWT1 ペプチド樹状細胞ワクチン療法の成績を明らかにする。方法: 患者自己単球より樹状細胞を誘導し,WT1 ペプチドをパルスした樹状細胞を2 週間に1 回,計5 回接種し,活性化リンパ球療法を併用した。HLA−A2402,HLA−A0201,またはHLA−A0206 陽性の進行癌患者26 人に治療を施行した。5 回の治療を完了した20 人の患者を解析の対象とした。結果: 膵癌3 例,乳癌・食道癌・肺癌・大腸癌・卵巣癌・子宮癌が2 例,その他5 例,平均年齢64 歳,再発癌9 例,stageIV 9 例,11 例で抗癌剤治療を併用した。PR 7 例,NC 8 例,PD 5 例であった。PR 7 例は,大腸癌2 例,肺癌・咽頭癌・脊髄腫瘍・膵癌・平滑筋腫瘍が各1 例,そのなかで4 例が抗癌剤治療を併用した。結論: WT1 ペプチド樹状細胞ワクチン療法と活性化リンパ球療法併用は,再発癌・StageIV の他治療無効例に一定の効果を認めた。 -
当院における癌の集学的治療─温熱免疫療法─
37巻12号(2010);View Description Hide Description984 例の進行・再発癌患者に温熱・免疫療法を施行した。癌の集学的治療において,免疫療法と温熱療法との併用はその効果が著しく増強する。疾患別に検討すると卵巣癌,頭頸部癌,肺癌,前立腺癌,胃癌,甲状腺癌,乳癌に有効例が多かった。完治例でみると大腸癌,卵巣癌に多く4 例ずつ認められ,乳癌,膵癌,子宮癌,胆道癌,頭頸部癌にも完治が複数例認められた。腹膜播種例に関しては樹状細胞の腹腔内投与が有効であった。また,樹状細胞療法後の長期生存例においては約1 年後に樹状細胞療法を再度施行することが示唆された。 -
ホルモン受容体陽性の進行・再発乳癌に対するChemo−Endocrine Therapy の可能性について
37巻12号(2010);View Description Hide Descriptionホルモン受容体陽性乳癌において,化学療法とホルモン療法を併用することによる効果と有害事象について検討した。2000〜2008 年までに当科で経験した原発性乳癌のうち,転移・再発を認めホルモン受容体陽性でHER2 が陰性であり,治療にpaclitaxel(PTX)を使用した27 症例を対象とした。転移・再発時に患者本人の希望で,PTX(80 mg/m2/3 週投薬1 週休薬)に加えてtoremifene(TOR)を併用した群14 症例と,TOR を併用しなかった群13 例において,奏効率,奏効期間,臨床的有用率について検討を行った。治療効果の判定はRECIST に基づいて評価し,PTX 使用期間のみについて評価を行った。転移・再発からの観察期間の中央値は2.3 年であった。奏効率には差を認めなかった。奏効期間は併用群が単独使用群に比べて有意に長く,臨床的有用率は併用群が単独使用群に比べて有意に高かった。PTX とTOR の併用療法は奏効期間の延長が期待できる可能性が示唆された。 -
当科における切除不能進行再発大腸癌に対するCetuximab 投与の現況
37巻12号(2010);View Description Hide Description当科におけるcetuximab 投与の現況について,治療効果と有害事象を中心に報告する。対象は,当科で切除不能進行再発大腸癌に対しcetuximab を投与した13 例。性別は男性8 例,女性5 例,年齢中央値65 歳。cetuximab の投与方法は全身状態を考慮し,単剤投与が6 例,CPT−11 との併用投与が7 例であった。投与回数の中央値は13 回,治療効果の評価可能症例は9 例で,PR 3 例,SD 2 例,PD 4 例で奏効率33%,病勢コントロール率56%であった。全対象例の生存期間中央値は219日であった。有害事象は皮膚障害を91%と高率に認めたが,grade 3 以上は1 例のみであった。cetuximab の効果は比較的良好であったが,その投与継続には皮膚障害のコントロールが重要と考えられる。 -
乳癌術後補助化学療法とホルモン療法中のIndoleamine 2,3−Dioxygenase の変化
37巻12号(2010);View Description Hide Description乳癌術後補助化学療法とホルモン療法による生体への侵襲程度を,indoleamine 2,3-dioxygenase (IDO)の発現程度から検討した。乳癌術後補助化学療法を施行した11 例とホルモン療法を施行した10 例を対象とし,化学療法施行前,FEC 終了時,wPTX 終了時,全化学療法終了3 週間後に採血した。ホルモン治療のみを受けた10 症例も同時期に採血し,HPLC を用いてtriptophan (Trp)とkynurenine (Kyn)を測定した。化学療法施行群はFEC 施行後,wPTX 施行後にTrp/Kyn ratioが上昇し,同時期のホルモン療法施行群と比較して高かった。化学療法施行後3 週間後には施行前のレベルまで低下した。ホルモン療法施行群のTrp/Kyn ratio は施行前から終了後までほぼ一定であった。乳癌術後の補助化学療法による免疫学的ダメージはホルモン治療と比較して高いと考えられた。 -
PSK のアポトーシス誘導メカニズムの解析
37巻12号(2010);View Description Hide Descriptionカワラタケ由来のクレスチン(protein-bound polysaccharide-K: PSK)は,免疫賦活作用を有する抗悪性腫瘍剤であるが,その他の作用として癌細胞に対する直接的な効果も知られている。今回われわれはPSK のアポトーシス誘導作用に焦点を当て,その作用メカニズムの解析を行った。まず7 種のヒト細胞株(WiDr,HT29,SW480,KATOIII,AGS,HL60 およびU937)を用いて,PSK による細胞増殖抑制効果を検討したところ,ヒト急性前骨髄性白血病細胞であるHL60 細胞において最も強い細胞増殖抑制効果が観察された。そこで,HL60 細胞に対する細胞増殖抑制効果においてアポトーシスの関与をAnnexin-V/Propidium iodide 染色,DNA 断片化などで検討した。その結果,PSK によってアポトーシスが誘導されていることが確認された。さらにアポトーシスアレイによって,PSK によるpro-caspase-3 の発現増加とcIAP-1,cIAP-2 などの発現低下を認めた。またFACS を用いて活性化caspase-3 発現細胞の割合の増加を確認した。以上の結果からPSK はHL60細胞にアポトーシスを誘導し,細胞増殖を抑制することが示唆された。 -
StageII/III 胃癌に対するPSK 術後補助療法のResponder の予測
37巻12号(2010);View Description Hide DescriptionPSK は化学療法との併用により,胃癌切除後の生存率を改善させる。今回われわれは,教室で切除したStageII/III 胃癌術後補助化学療法を施行した254 例において化学療法単独群(138 例),PSK 併用群(116 例)にて術後再発に及ぼす臨床病理学因子について比較検討した。無再発生存期間は,両群において有意差は認めなかった。PSK 併用群にて再発に関与する因子として,pT,脈管侵襲,pStage,腫瘍径の因子が単変量解析において有意差を認めた。多変量解析では脈管侵襲が独立した因子と考えられた。このことより,StageII/III 胃癌に対するPSK 術後補助療法において原発巣の脈管侵襲が高度な場合は,再発の危険性が高くなることが示唆された。今後,PSK 有効症例と無効症例を予測し得るバイオマーカーの検討が必要である。 -
局所進行再発食道癌に対するDocetaxel 併用化学放射線療法
37巻12号(2010);View Description Hide Descriptiondocetaxel(DOC)は外来投与が可能で,放射線の増感作用を有する新規抗癌剤である。今回,われわれは進行再発食道癌8 例に対してDOC 併用化学放射線療法(CRT)を施行したのでその効果と安全性を報告する。対象と方法: 対象は縦隔リンパ節再発6 例,併存疾患による手術不能例1 例,FP 療法後の二次治療が1 例であった。DOC は10 mg/m2 を週1 回×6週点滴投与,放射線は2 Gy/回 計60 Gy を照射した。結果: 効果判定はCR 2 例,PR 5 例,SD 1 例で奏効率87.5%であった。有害事象はgrade 3 以上の血液毒性,grade 2 以上の非血液毒性ともに認められず,経口摂取ができなかった1 例以外は全例が外来にて治療可能であった。平均奏効期間は6.6 か月,生存期間中央値は13.3 か月であった。まとめ: 局所進行再発食道癌に対するDOC-CRT は高い奏効率を認め,患者の生活の質を維持できる優れた治療と考えられた。 -
微小な腹膜転移(Minimal Peritoneal Metastasis: MPM)を伴うスキルス胃癌の予後からみた外科切除の意義
37巻12号(2010);View Description Hide Description微小な腹膜転移を伴うスキルス胃癌の予後は不良であり,切除の意義は明らかではない。<方法>解析1: 1970〜1995年に当院でR0/R1 切除した79 例(A 群)に対し,2001 年1〜12 月にJCOG30 施設でR0/R1 切除+S−1 を受けた47 例(B群)のハザード比(HR)を算出した。解析2: JCOG9205-5-FU 群に対するSPIRITS-S-1/CDDP(SP)群のHR を算出した。解析3: 解析1/解析2/ACTS-GC におけるそれぞれのHR を比較した。<結果>解析1: HR は1 年目0.64,2 年目0.76,3 年目0.92 であった。解析2: HR は1 年目0.64,2 年目0.84 であった。解析3: 1 年目のHR はACTS<解析1=解析2,2 年目のHR はACTS<解析1<解析2 であった。<結論>HR が解析1<解析2 であることから,術後S-1 投与により切除の意義は増大した。 -
大腸癌肝転移に対する局所肝動注と全身投与の併用による術前化学療法の効果
37巻12号(2010);View Description Hide Description大腸癌肝転移に対する切除前化学療法として肝動注を全身化学療法と併用し,その効果を検討した。化学療法を施行した117 例を全身投与群(n=28),肝動注群(n=63),全身−肝動注併用群(n=26)に分類した。全身投与はFOLFOX4 を,肝動注は5-FU,CDDP,LV の3 剤レジメンを,全身−肝動注はこれらを併用したレジメンとした。肝転移の奏効率(PR 以上)は,全身群(29%)に比較し動注群(52%,p=0.02)および併用群(73%,p<0.01)が良好であり,肝外転移も含めた奏効率も併用群が他群に比較し良好であった。肝切除率は全身群42%,動注群70%,併用群が96%で,切除成績も併用群が良好であった。非癌部肝組織の類洞拡張は全身群に比較し併用群が低率で,脂肪変性は動注群に比較し併用群が低率であった。以上より,全身−肝動注の併用治療は術前化学療法として有効な治療と考えられた。 -
膵癌に対する術前化学放射線療法後切除例の長期予後の検討
37巻12号(2010);View Description Hide Description膵癌は極めて難治癌であり,手術単独療法には限界がある。われわれは膵癌の予後向上を目的として,術前化学放射線療法を実施している。それらの患者では手術単独治療群に比べて組織学的根治切除率が高く,リンパ節転移率が明らかに低いことが認められた。その結果,術後長期生存患者が多く認められた。 -
シスプラチン剤形変更による抗癌効果
37巻12号(2010);View Description Hide Descriptionシスプラチン注射製剤(CDDP)を剤形変更し,局所停留能と徐放性の付与を試みている。独自に調製した新剤形を担癌マウスに投与,抗腫瘍効果を検討した。担癌マウスの生存期間は,新剤形投与群でCDDP 単独投与群に比較してより長く,抗癌効果に優れていることが示唆された。新剤形の臨床利用を最終目的として,癌化学療法への展開も検討した。 -
抜去可能なカテーテルを用いた肝動注化学療法の評価と今後の位置付け
37巻12号(2010);View Description Hide DescriptionWS カテーテルを使用した肝動注化学療法の有用性を検証した。対象は62 例で,大腸癌肝転移42 例(切除後予防動注26 例,切除不能16 例),その他20 例であった。肝動脈径が細い5 例を除く57 症例で簡便な「投げ込み法」で留置することができた。そのうち32 例で留置後2.3〜20.5 か月目に抜去を試みたが,全例で容易に抜去可能であった。MDCT による肝動脈形態の追跡で3.3 Fr 使用の20 例では2 例(肝動脈狭窄)を除いて変化を認めず,開存性は良好に保たれていた。先端部に形状記憶コイルを埋め込んだWS カテーテルは,血管壁にコイル固定することなしに安定した留置が得られ,後に抜去することも可能である。近年,全身化学療法の進歩が著しく,侵襲的な治療である肝動注は役割の見直しを余儀なくされており,今後は対象を限定した上で簡便な方法で短い治療期間で実施することが望ましいと思われる。 -
腹膜播種を伴う胃癌に対するバイパス術の効果
37巻12号(2010);View Description Hide Description幽門狭窄のある腹膜転移陽性胃癌(P1 胃癌)に対するバイパス術の成績から手術の適応について検討した。対象: 2003年10 月より2008 年12 月までのP1 胃癌67 例のうちバイパス術を行った11 例を対象とした。男女比は8:3 で年齢は60〜87歳(平均73.5 歳),3 型が7 例,4 型が4 例であった。手術は不完全離断法による胃空腸バイパス術で腸瘻を付加した。結果:PS が3 で高度のP1 胃癌3 例では,術直後に緩和移行し退院できなかった(23,26,60日)。他の8 例は10〜35 日(中央値16 日)で退院し,外来でS-1 を中心とした化学療法が実施可能であった。化学療法が有効な1 例で術後40 か月生存したが,他の症例ではすべて1 年以内に死亡した(MST 8 か月)。考察: 何か食べたいという患者の希望によりバイパス術を実施することがあるが,PS 3 のP1 胃癌では緩和手術としてのバイパス術の適応は少ないと思われた。 -
再生不良性貧血を合併したCY1 進行胃癌に対して術前化学療法を施行し得た1 症例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は51 歳,女性。15 年前に再生不良性貧血を指摘されたが放置してきた。2009 年12 月ごろに食後の胃重感が出現し,胃癌の診断にて当院に紹介となった。上部内視鏡検査では,胃体上部から胃角部にかけて小弯中心に全周性の4 型胃癌を認めた。腹部CT にて広範囲の胃壁肥厚,漿膜浸潤を認めたが,リンパ節転移,他臓器浸潤・転移は認めなかった。しかし,術前腹腔洗浄細胞診は陽性であったため,S-1 とdocetaxel 腹腔内投与を併用した化学療法を2 コース施行したが,重篤な合併症は認めなかった。その後,胃全摘術,D2 郭清,Roux-en Y 再建術を施行し,病理分類は,ypT4aN3H0M0P1 であった。現在は外来でS-1 を内服継続中である。再生不良性貧血のような化学療法困難症例でも,S-1 とdocetaxel 腹腔内投与を併用した化学療法は安全に施行できる可能性があり,有用な治療法の一つであると考えられた。 -
イマチニブの少量長期投与により著明なPR が得られている直腸,胃GIST の2 例
37巻12号(2010);View Description Hide Descriptionイマチニブ(グリベック)はKIT 陽性GIST の治療に有効な分子標的治療薬であるが,通常400 mg/日の投与が一般的となっている。しかし,白血球減少などの副作用も強く,長期間の投与は難しい場合もある。今回,直腸ならびに胃の壁外性巨大GIST に対し,イマチニブ200 mg/日の少量長期投与を継続し,著明なPR が得られた2 症例を経験したので報告した。近年,少量長期投与の有効例の報告が散見されるとともに,耐性・PD 症例に対する継続投与の意義も報告されており,GISTに対する分子標的治療薬の少量長期継続投与の意義を強調した。 -
術前化学療法と術後肝動注療法の併用によりPS 0,Long NC を維持した多臓器転移大腸癌症例
37巻12号(2010);View Description Hide Description上行結腸癌による腸閉塞,多発肝転移,肺転移,腹膜転移のために低栄養に陥った75 歳の大腸癌症例に対して,IVHによる栄養管理,術前化学療法(FOLFOX4 2 コース)を施行しperformance status(PS)の改善を得た後,原発巣切除を施行した。術後に投与の間隔を4 週としたFOLFOX4,FOLFIRI にbevacizumab,cetuximab を加えた全身化学療法と,その間2 回の肝動注療法(WHAI)との組み合わせにより治療を継続した。肝転移巣が大きく予後規定因子と予測される高齢者症例であったが,30 か月間PS 0 とlong NC を維持できた。stageIV 高齢者大腸癌の治療においてPS の保持は手術,化学療法の施行に当たり重要である。 -
大腸癌肝転移に対するラジオ波焼却療法の検討
37巻12号(2010);View Description Hide Description目的: 大腸癌肝転移に対するラジオ波焼却療法(radiofrequency ablation: RFA)の有効性について検討した。対象と方法: 13 症例,31 病変に対してRFA を施行した。同時性肝転移7 例,異時性肝転移6 例。腫瘍径0.5〜3.9 cm(平均1.5 cm),腫瘍個数1〜10 個(平均2.9 個)。合併症: 肝機能異常1 例,腹腔内出血1 例。結果: 31 病変中4 病変に局所再発を認め,局所コントロール率は87.1%であった。腫瘍径が3 cm 以上のものでは局所再発50%と高率であったが,3 cm 未満では局所コントロール率92.6%と良好であった。RFA 施行後4 例(30.8%)に肝内新病変を認めた。RFA 後累積生存率は1 年生存率92.3%,2 年生存率46.2%。再発率は1 年55.6%,2 年55.6%であった。結論: 大腸癌肝転移に対するRFA は腫瘍径が3 cm未満の症例では局所コントロール率は良好で,大腸癌肝転移に対する治療戦略の一つとして有用であると考えられた。 -
皮膚瘻を伴う下部直腸癌に対する骨盤内臓全摘術と腹直筋皮弁による会陰形成の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は60 歳,男性。遠隔転移を伴わない下部直腸癌前立腺・膀胱浸潤,会陰部皮膚瘻形成に対し,骨盤内臓全摘術を施行。骨盤底・会陰部再建には腹直筋有茎皮弁を使用した。術後軽症の骨盤死腔炎を発症したが,骨盤底に充填した筋弁により死腔が減少し,ドレナージ,抗生剤投与にて軽快した。術後のQOL も比較的保たれている。腹直筋皮弁による骨盤底再建は,骨盤腔の大きな欠損が充填でき,同時に大きな皮膚欠損も補填できる有用な術式であると考えられた。 -
MRI を用いた下部直腸癌の転移陽性側方リンパ節検索の試み
37巻12号(2010);View Description Hide Descriptionはじめに: 本邦では進行下部直腸癌に対して側方郭清が行われているが,機能温存と予後のバランスを考えれば,側方郭清でbenefit が得られる症例を選別できれば理想的である。当科では,これまで側方リンパ節のホルマリン固定による縮小率から側方リンパ節転移の有無を効率よく選別するには摘出リンパ節の短径6 mm をcut-off 値とすることが有用であると報告してきた。今回,MRI における側方リンパ節の短径を計測し,われわれが設定したcut-off 値の妥当性をretrospective に検討した。対象・方法: 1997 年10 月〜2009 年12 月の間に両側または片側の側方リンパ節郭清あるいはサンプリングが行われた下部直腸癌44 例のうち,術前にMRI を施行した25 例を対象とし,1 症例につき左右各々1 個,計50 個の側方リンパ節を対象とした。仙腸関節に沿って10〜15 度で斜位をかけ,5 mm 間隔で撮影した矢状断画像を用い側方リンパ節の短径6 mm をcut-off 値とし,側方リンパ節転移のsensitivity,specificity,positive predictive value,accuracy を検討した。結果: 側方リンパ節転移は5 例(片側4 例,両側1 例)に認められた。sensitivity 50%,specificity 90%,positive predictive value 42.9%,accuracy 84.8%であった。結語: 転移の有無を選別するには,短径6 mm をcut-off 値にすることはaccuracy(84.8%)からは妥当であるが,短径6 mm 未満の転移リンパ節をMRI 画像から効率よく選別することは困難と考えられた。 -
肝切除と経皮的肝灌流(PIHP)の2 段階治療(Dual Tx)が奏効したVp4 門脈腫瘍栓(PVTT)を伴う肝細胞癌(HCC)の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description今回,Vp4 肝細胞癌(HCC)に対し肝切除と経皮的肝灌流(PIHP)の2 段階治療(dual Tx)が奏効した症例を経験したので報告する。症例は68 歳,男性。2009 年8 月に右季肋部痛,全身倦怠感を主訴に近医を受診した。肝右葉の巨大HCCとVp4 の門脈腫瘍栓(PVTT)を認め,当科を紹介された。来院時のCT で肝右葉を占める径14 cm のHCC と,門脈右枝より門脈本幹を越え左枝まで進展するPVTT を認めた。腫瘍栓の進展により門脈本幹が完全に閉塞し,切除のタイミングを逸する可能性を考え準緊急的に肝右葉切除およびPVTT 摘出術を施行した。病理組織所見では12.5×11.0 cm,St,中分化〜低分化型HCC,eg,fc(+),fc-inf(−),sf(+),s0,vp4,vv0,va0,b0,sm(+),stageIVA であった。切除断端の一部にPVTT が露出していた。Vp4 のPVTT を合併していたため,PIHP(doxorubicin 90 mg/m2)を追加した。肝切除,腫瘍栓摘出,PIHP により腫瘍マーカーは術前AFP 20 ng/mL,PIVKA-II 6,017 mAU/mL→PIHP 後AFP 3 ng/mL,PIVKA-II 43 mAU/mL と正常化し,現在術後10 か月無再発生存中である。dual Tx は高度血管侵襲を伴う進行HCC において,中・長期予後を実現できる最も強力な治療戦略である。dual Tx が奏効したVp4 HCC の1 症例を経験したので報告する。 -
Von Hippel-Lindau 病に発生した腎細胞癌術後片腎再発に対してラジオ波凝固療法を施行した1 例─適応と手技上の工夫について─
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は48 歳,女性。38 歳時にvon Hippel-Lindau 病に合併した両側多発腎細胞癌で右腎全摘出術,左腎部分切除術を施行されていた。今回,腸管に接する左側の腎細胞癌術後片腎再発を認め,炭酸ガスを注入すること(carbon dioxide a dissection technique)で腸管損傷を来すことなく安全にCT ガイド下にRFA を施行し,腎機能を温存して腎細胞癌を治療できた1 例を経験した。 -
Indication of Peritonectomy for Peritoneal Dissemination
37巻12号(2010);View Description Hide DescriptionA total of 521 patients with peritoneal carcinomatosis(PC)were treated by peritonectomy and perioperative chemotherapy. Each of the 95, 58, 316, 31, 10 and 11 patients were from gastric, colorectal, appendiceal, ovarian, small bowel cancer and mesothelioma, respectively. The distribution and volume of PC are recorded by the Sugarbaker peritoneal carcinomatosis index(PCI). Peritonectomy was performed with a radical resection of the primary tumor and all gross PC with involved organs, peritoneum, or tissue that was deemed technically feasible and safe for the patient. The postoperative major complication of grade 3 was found in 14%, and total 30─day mortality was 2.7%. The survival of gastric cancer patients with a PCI score ≤ 6 was significantly better than those with a PCI score ≥ 7. In appendiceal neoplasm, patients with PCI score less than 28 showed significantly better survival than those with PCI score greater than 29. The survival of colorectal cancer patients with a PCI score ≥ 11 was significantly poorer than those with a PCI score ≤ 10. Among the various prognostic factors in appendiceal neoplasm and gastric cancer patients, CC─0 complete cytoreduction was the most important independent prognostic factor. Peritonectomy is done to remove macroscopic disease and perioperative intraperitoneal chemotherapy to eradicate microscopic residual disease aiming to remove disease completely with a single procedure. Peritonectomy combined with perioperative chemotherapy may achieve long─term survival in a selected group of patients with PC. The higher mortality rate underlines this necessarily strict selection that should be reserved to experienced institutions. -
肝細胞癌術後リンパ節再発に対しリンパ節切除術と経皮的肝灌流化学療法を施行し長期生存を得た1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description肝細胞癌術後多発リンパ節再発・肝内再発に対し,リンパ節切除術と経皮的肝灌流化学療法(percutaneous isolated hepatic perfusion: PIHP)を中心とした集学的治療で長期生存を得た1 例を経験した。症例は70 歳,男性。1999 年肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC)に対し,肝動脈化学塞栓療法を施行。2000 年多発HCC 再発に対し,肝部分切除術を施行された。2002 年総肝動脈〜固有肝動脈周囲のリンパ節再発と肝内再発を指摘され,腹部リンパ節切除術,ラジオ波焼灼療法を施行。術後にPIHP 施行し,以降4 年間無再発であった。その後3 回の肝内再発を認めたが,局所治療が奏効し初回治療から10 年,リンパ節切除術より8 年経過した現在,無病生存中である。 -
動注化学療法と定位放射線治療を併用し集学的治療が著効した局所進行膵癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description局所進行膵体部癌(T4N1M0,StageIVa)に対して膵動注化学療法後に定位放射線治療を行い,長期生存が得られた1 症例を報告する。症例は60 代,女性。膵動注の方法は,interventional radiology の技術を用いて,膵血流を腹腔動脈に一本化後,リザーバーカテーテルを留置した。レジメンは5-FU(1,000 mg/m2/qw)の動注とgemcitabine(GEM 1,000 mg/m2/qw)の全身化学療法併用療法を施行した。5 コース施行し,腫瘍は著明な縮小が得られたが動注薬剤分布が不十分であった部位に腫瘍の残存がみられたため,同部位に限局してfull dose GEM 併用の定位放射線治療(50 Gy)を実施した。重篤な副作用なく治療を完遂でき,36 か月経った現在も生存中である。 -
術前に腫瘍血管塞栓術を施行し無輸血で切除し得た巨大仙骨原発神経鞘腫の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例: 71 歳,男性。1 年前から排便時の下腹部痛を自覚していたが放置していた。検診にて骨盤内腫瘍を指摘され当科紹介となった。精査にて骨盤腔内に10 cm 大の腫瘍を認め,直腸平滑筋肉腫,神経鞘腫などが考えられた。術中の相当量の出血を予想し,腫瘍の縮小効果も兼ねて術前に腫瘍の栄養血管である左内腸骨動脈と上直腸動脈の塞栓術を施行した。手術は腫瘍摘出+超低位前方切除+一時的人工肛門造設術を行った。術中出血量は約1,000 mL,回収式自己血240 mL と希釈式自己血800 mL を返血し,無輸血手術であった。摘出腫瘍は10.5×9×10.5 cm で重量320 g。黄白色の皮膜に覆われた表面平滑で弾性硬な腫瘍であった。病理所見ではAntoni A 型とAntoni B 型が混在するneurilemoma(schwannoma)の診断を得た。 -
頻回の手術を伴う集学的治療にて20 年以上生存しているGIST の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は49 歳,女性。1990 年に7 cm 大の空腸粘膜下腫瘍に対して腫瘍切除術を施行した。1993〜2004 年にかけて再発巣に対して合計4 回の手術を施行した。2003 年にGIST の診断を得たためイマチニブの内服を開始した。2004 年の手術以降はイマチニブを休薬していたが,2006 年に腹腔内再発を認めイマチニブを再開し,継続内服中である。今回,頻回の外科的切除とイマチニブの内服によって初回手術から20 年以上経過したGIST の1 例を経験したので報告する。 -
腺腫との鑑別を要した副甲状腺癌の経験
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例: 67 歳,男性。経過: 2009 年1 月ごろより下肢脱力感を認め近医を受診。検査で甲状腺腫瘤を認め当院内科を紹介受診。血液生化学検査では高カルシウム血症を認め,iPTH は2,190 pg/mL と高値を示していた。頸部超音波検査所見では左甲状腺下極背部に辺縁整の腫瘤像を認め,同時に甲状腺左葉下極にも石灰化を伴う腫瘤像を認めた。甲状腺腫瘤に対して穿刺吸引細胞診を施行しclassIIIa であった。原発副甲状腺腺腫による副甲状腺機能亢進症の診断で副甲状腺摘出術および甲状腺左葉切除術を施行。術中病理診断ではadenoma の診断であったが,病理組織学検査所見ではadenocarcinoma of parathyroid,and its metastasis to thyroid の診断であった。まとめ: 術前診断では,副甲状腺癌と診断することはしばしば難渋することがある。今回われわれは,副甲状腺癌甲状腺転移の1 例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。 -
鑑別困難な肝内結節を有するアルコール性肝硬変合併進行男性乳癌治療の諸問題
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は59 歳,男性。アルコール性肝硬変合併進行男性乳癌の1 例を経験した。以下,五点に留意しながら加療を行った。 1.肝内結節の評価・鑑別。 2.局所切除のタイミング。 3.肝予備能低下に対する薬物療法の投与量設定。 4.断酒・節酒指導。 5.腹水などの肝硬変の合併症の制御。現在,肝内結節の増大なく,術後約3 年4 か月経過しているが再燃の兆候はない。 -
食道癌術後局所再発・気管浸潤に対し気管ステント留置後に放射線化学療法を施行し2 年間CR を維持している1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description進行・再発食道癌気管浸潤に対する治療に気管ステント留置があり,呼吸困難が劇的に改善するが,一時的な病態改善にしかならず予後不良例が多い。今回われわれは,食道癌局所再発による気管浸潤に対してexpandable metallic stent(EMS)留置後,5-FU およびdocetaxel 併用の放射線化学療法(CRT)により再発病巣が消失し(CR),気管ステントを抜去できさらに2 年間CR を維持している1 例を経験した。症例は初診時73 歳,男性。頸部食道癌にて右開胸開腹食道全摘,胸壁前咽頭胃管吻合,気管開窓術を施行。術後1 年半で局所再発,気管浸潤による喀血,呼吸困難にて入院。気管ステントを留置後にCRT を施行。CR となりステントを抜去した。その後S-1 による補助化学療法を施行したが,副作用で2 コース施行後に中止。以降経過観察のみ行っているが,CRT 終了後2 年4 か月経過した現在も再発転移を認めていない。 -
原発巣切除後に多発肝転移に対してS-1+Paclitaxel 療法が著効し副腎単独再発を切除することにより長期完全寛解を維持している胃癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は74 歳,男性。心窩部不快感を主訴に精査したところ胃前庭部から十二指腸球部に至る進行胃癌を認めた。また,CT にて多発肝転移を認めStageIV と診断した。通過障害を認めたため手術先行となり,幽門側胃切除術を施行した。術後17 日目よりS-1+weekly paclitaxel(PTX)による化学療法を開始したところ,4 コース終了後のCT にて肝転移像の消失を認めた。6 コース終了後のCT にて肝転移は臨床学的完全寛解(clinical complete response: cCR)を維持していたが,右副腎に4.5×3.0 cm 大の腫瘤を認め,右副腎再発を疑い胃切除後13 か月に右副腎摘出術を施行した。病理組織検査にて胃癌再発との診断であった。術後,S-1 内服のみで再開したが本人の希望にて1 コースのみで中止し,その後は経過観察としているが2 回目の手術以降に再発所見なく,75 か月のcCR を維持している。 -
腹水を有するCEA が4 万を超えた大腸癌同時性肝転移に対する短期大量肝動注療法(短期動注)
37巻12号(2010);View Description Hide Description今回われわれは,同時性多発性肝転移によって肝不全になりつつあった進行性大腸癌同時性卵巣転移の症例に対して,来院直後から短期動注を行い肝不全状態を離脱させ,主病巣を手術した後,肝動注療法によって1 年以上良好なコントロールをし続けている患者を報告する。症例は75 歳,女性。全身倦怠感にて来院。bilirubin 約2 mg/dL,GOT 約200 U/L,CEAが4×10 4ng/mL 以上あった。CT では左胆管が肝転移によって拡張し腹水が著明であった。入院翌日から短期動注(1 コースが5-FU 1 g/day×3 days 持続,1 日休薬,5-FU 1 g/day×3 days 持続)を開始。1 週間の間隔をおいて計4 コース施行。肝機能は正常化し,CEA も1/10 以下になったため,治療開始から74 日目にS 状結腸切除,両側卵巣切除を施行した。その後,外来にて動注療法を持続,CEA は最低90 ng/mL まで下降した。現在もほぼCR の状態である。たとえ,腹水がある肝不全状態の肝転移症例に対しても短期動注は安全に行え,効果が期待できると思われた。 -
Cetuximab 投与により切除可能となった直腸癌による転移性肝臓癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は70 歳台,男性。直腸癌および肝転移(S6)に対し,低位前方切除術および肝腫瘍核出術を施行。術後4 か月のCT 検査にて肝S5 およびS7 に転移巣が出現,病変の縮小による肝切除を目標に,mFOLFOX6 療法による化学療法を開始したがPD であった。二次治療としてFOLFIRI+cetuximab 療法を選択,肝転移巣が著明に縮小したため,5 コース終了後,肝右葉切除を施行。mFOLFOX6 療法による一次治療が無効でFOLFIRI+cetuximab 療法による二次治療が奏効したことにより,切除可能となった直腸癌による転移性肝臓癌の1 症例を経験した。 -
S-1 併用RT+mFOLFOX6 にて長期に病状コントロールし得た1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description放射線療法は5-FU などの化学療法剤と併用することで癌の感受性が増し,単独治療より効果が高くなることが報告されている。また,大腸癌に対するS-1 の放射線療法効果増強の基礎研究や,直腸癌の術前S-1 併用放射線療法においてその有用性が報告されている。一方,全身化学療法においても5-FU 単独の時代と比較し腫瘍縮小効果と予後の延長が示されている。症例は66 歳,男性。下部直腸癌にて低位前方切除術施行,術後の病理診断はStageII で補助化学療法は施行せず。術後1 年8 か月後に直腸癌の仙骨転移再発と診断しS-1 併用放射線療法を施行。S-1 は120 mg/day 2 週投薬,1 週休薬とした。放射線療法は3 Gy/day 5 日照射,2 日休で合計45 Gy の照射を行った。さらにmFOLFOX6 療法を11 コース施行しCR となり再発より約3 年8 か月経過している現在も再発兆候はない。単独骨転移再発において局所療法+全身療法により高い効果が得られる症例があることが示された。 -
mFOLFOX 療法および膵頭十二指腸切除により根治治療が可能となった上行結腸癌リンパ節再発の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は50 歳台,女性。上行結腸癌切除術後13 か月目の定期検査にて,リンパ節再発を認めた。再手術にて切除を試みるも再発巣は膵頭部と一塊となっており,切除不可能と診断した。術後,mFOLFOX 療法を6 コース施行したところ,再発巣は著明に縮小し切除可能と判断した。膵頭十二指腸切除により再発巣の完全切除が可能であった。術後,骨盤部に腹膜播種再発を認めるもFOLFIRI+bevacizumab 療法にてコントロール可能である。局所の制御が化学療法と積極的外科治療により可能となった貴重な症例であると思われたので報告する。 -
多臓器転移を伴いながら長期間にわたり制御可能であった直腸カルチノイドの1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は45 歳,男性。下血にて大腸内視鏡検査を施行し,下部直腸に腫瘍性病変を指摘され,生検にて直腸カルチノイドと診断された。CT にて多発性肝転移を指摘された。腹会陰式直腸切断術の後,肝部分切除術およびTACE を施行し,画像上,完全寛解を得た。治療1 年後,多発性肝転移,腹腔内リンパ節転移,多発骨転移を認めた。このため,オクトレオチド徐放剤の投与を開始したところ,転移性腫瘍はいずれも著明な腫瘍縮小効果を示した。その後,2 年6 か月間にわたり増悪と寛解を認めながら,病態の進行は制御可能であった。手術などの局所療法後に再発し,長期間にわたり効果的な症状緩和と腫瘍増殖抑制が得られた1 例を経験した。オクトレオチド徐放剤の投与は,進行の比較的緩徐な転移性カルチノイドに対し有用であることが示唆された。 -
術後3 年半以上の生存が得られている進行膵癌の2 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description手術と術後化学療法にて術後3 年半以上の生存が得られている進行膵癌の2 例を報告する。症例1 は71 歳,男性。腹部超音波検査で膵頭部に2 cm 大の腫瘤を指摘。膵頭十二指腸切除術,D2 郭清を実施し病理組織学的にs0,rp1 でpT3N2,StageIVa。術後gemcitabine(GEM)1,000 mg/m2 を実施し,現在術後3 年8 か月経過し無再発生存中。症例2 は63 歳,男性。CT では腫瘤は不明瞭。幽門輪温存膵頭十二指腸切除術,D2 郭清を実施し病理組織学的にs0,rp0 でpT3N1M0,StageIII。術後半年後にGEM 1,000 mg/m2 を開始するも半年間で終了。術後1 年半経過時CA19-9 の上昇のため再開。術後2 年半経過後CA19-9 が再度急上昇したためS-1 併用を開始。現在術後3 年半経過し無再発生存中。膵実質内に限局している進行膵臓癌は長期生存候補である。GEM 単独で限界がみえた時,S-1 の併用が効果的である可能性がある。 -
化学放射線療法で6 年の経過が得られた局所進行切除不能膵尾部癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description局所進行切除不能膵尾部癌に化学放射線療法(CRT)を行い,6 年生存した症例を報告する。症例は61 歳,男性。CTにて胃体部後壁,左腎・左副腎,腹腔神経叢・上腸間膜動脈神経叢に浸潤する5.6 cm の局所進行切除不能膵尾部癌を認めた。gemcitabine(GEM)に原発巣へ放射線療法(RT)を併用し奏効した。2 年11 か月でSchnitzler 転移から直腸狭窄を来したが,同部にRT を行い狭窄症状は軽快した。3 年3 か月でGEM からS-1 に変更し,4 年5 か月に傍大動脈リンパ節転移が増大しGEM+S-1 併用に変更した。4 年10 か月に上縦隔リンパ節転移みられGEM+S-1 を継続し,6 年1 か月縦隔転移の疼痛緩和にRT を施行した。癌悪液質により6 年6 か月に癌死した。局所進行切除不能膵癌の長期生存例はまれである。CRT が奏効する症例では,原発巣の制御に加え転移巣の制御や随伴症状の改善のためCRT は有用である。 -
術前化学療法により治癒切除し得た局所進行膵臓癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description今回われわれは,膵浸潤を伴った切除不能十二指腸癌と診断され化学療法を行った結果,切除可能となり,切除後の病理診断で膵臓癌と診断された症例を経験した。症例は36 歳,男性。2009 年7 月に腹部膨満感を主訴に近医を受診した。上腹部内視鏡検査の結果,十二指腸水平脚に全周性の狭窄および管腔外への瘻孔形成を認めた。膵浸潤を伴う十二指腸癌と診断された。CT で上腸間膜動脈(SMA)周囲神経叢浸潤を認めたため切除不能と診断した。胃空腸吻合術施行後に化学療法(docetaxel:DOC 40 mg/m2,day 1,CDDP 60 mg/ m2,day 1,S-1 80 mg/m2,day 1〜14,3 コース)(以後DCS 療法)を施行した。PRの腫瘍縮小効果を認め,CT 上SMA 周囲神経叢浸潤は改善した。遠隔転移所見は存在しないため治癒切除可能と診断し,膵尾側切除(十二指腸第3,4 部,横行結腸脾弯曲,左副腎合併切除)を施行した。術後の病理学的検索の結果は,膵癌十二指腸浸潤との診断であった。切除標本に悪性細胞の残存は認めたものの,腫瘍周囲には化学療法の効果による広範な線維化を認めた。いずれの膵周囲剥離面にも癌浸潤を認めず,R0 の手術が施行できた。現在,術後6 か月経過し無再発生存中である。 -
膵癌術後1 年で臍転移を来した1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は70 歳,女性。2008 年1 月上旬より家人に黄疸を指摘され当院を受診した。腹部造影CT 検査にて膵頭部狭窄を認めたため,PTCD チューブ留置の上で外科に紹介となった。腹部CT 検査において膵鉤部に19 mm 大の軽度造影される腫瘤を認め,末梢胆管は拡張し大動脈周辺に微小リンパ節が認められ膵頭部癌と診断し,膵頭十二指腸切除術+D2+16 番リンパ節郭清を施行した。術後4 か月の腹部CT 検査でPTCD 抜去部にて1 cm の腫瘍を認めたため,腫瘤を摘出した上で50 Gy(2 Gy×25 回)+GEM 1,000 mg/m2 を施行した。その後もGEM 1,000 mg/m2 を施行したが,術後17 か月臍部に腫瘍が出現した。腫瘤は他に出現しておらず,PTCD 抜去部はコントロールできていると考え臍切除を施行したが,直下の腹膜に播種を認めた。臍切除後もGEM を継続投与したが,臍切除後約8 か月で永眠された。臍転移が残存すると患者の整容を著しく損なうため,生命予後には寄与しない場合でも切除の意義はあると考えられた。 -
膵癌浸潤による急性輸入脚閉塞症から輸入脚破裂に至った1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は77 歳,男性。22 歳時に胃潰瘍で広範囲胃切除,Billroth II 法再建の既往があった。下痢と腹痛を主訴に当院へ紹介され,腹部CT 検査で膵体部癌の胃空腸吻合部への浸潤による急性輸入脚閉塞症と診断された。上部消化管内視鏡検査では,残胃から輸入脚への開口部は確認できず,輸入脚の減圧はできなかった。経皮経肝胆道ドレナージチューブによる経乳頭的減圧を準備していたところ,輸入脚破裂を来した。開腹するとTreitz 靱帯から肛側15 cm の輸入脚の腸間膜対側に径1 cm大の穿孔部を認めた。胃空腸吻合部は膵体部癌の浸潤を受けていたが,輸出脚の通過性は保たれていたため,穿孔部と輸出脚空腸との間で側々吻合をおき,Braun 吻合とした。術後経過は良好であった。その後化学療法が施行され,術後15 か月間生存した。急性輸入脚閉塞症では,穿孔のみならず急性膵炎の合併もあり迅速な処置が必要である。 -
非機能性膵内分泌腫瘍多発肝転移に対し肝動注化学療法が奏効し肝転移巣を切除し得た1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は33 歳,女性。非機能性膵内分泌腫瘍,多発肝転移(切除不能)の診断にて幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した。原発巣の病理組織像はhigh-grade malignancy( WHO classification)と診断され,#13リンパ節に3 個の転移を認めた。肝転移巣に対する化学療法として,術後3 週経過し留置した動注用ポートより高用量の5-FU 1,000 mg/body を週1 回にて投与した。grade 2( NCI-CTC v3.0)の下痢のため4 回の休薬を行ったが速やかに回復,他に重篤な有害事象は認めなかった。肝動注療法により腫瘍は縮小しPR を得たため,20 回投与後に二期的に肝切除を試みた。手術は4 か所の切除と4 か所のRFA を施行,切除標本の病理組織検索では腫瘍は完全に壊死していた。術後3 か月現在,無再発生存中である。非機能性膵内分泌腫瘍の肝転移に対しては外科的切除が第一選択であるが,一期的に切除が困難である場合,肝動注療法も有用な治療上のオプションの一つであると考えられた。 -
原発巣の同定に難渋した非機能性膵内分泌細胞癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は60 歳,女性。上腹部違和感,体重減少にて当院を受診。CT 検査において肝両葉に早期濃染,後期洗いだしを呈する肝多発病変を認めた。多血性ではあるもののHCC の典型的造影パターンは認めなかった。確定診断目的にて,腹腔鏡下肝部分切除施行。病理結果にて神経内分泌腫瘍との結果を得た。転移性神経内分泌腫瘍の可能性を考え精査を続けた。術後2 か月目の再検索にて膵尾部の腫瘤性病変が指摘された。EUS-FNA を施行し,膵内分泌腫瘍の診断が得られた。膵原発巣に対し,膵体尾部切除術施行。経過をとおして内分泌症状なく,非機能性膵内分泌細胞癌と確定診断した。その後,拡大肝右葉切除+肝左葉焼灼術を追加し,現在無再発生存中である。 -
S-1+Gemcitabine 併用全身化学療法は無効であったが5-FU+Cisplatinによる肝動注化学療法が著効した膵癌術後肝転移の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description今回,S-1 とgemcitabine(GEM)併用全身化学療法は無効であったが,5-fluorouracil(5-FU)+cisplatin(CDDP)による肝動注化学療法が著効した膵癌術後肝転移の1 例を経験した。症例は70 歳台,女性。膵頭部癌にて膵頭十二指腸切除術を施行した。T4,N0,M0,StageIVa にて,術後よりUFT 経口投与による補助化学療法を開始した。術後8 か月よりDUPAN-2 の上昇を認めS-1 経口投与に変更したが,術後10 か月の腹部CT 検査にて肝転移の出現を認めた。GEM 単独およびS-1+GEM 併用全身化学療法を施行したが,肝転移は増大傾向を示したため5-FU+CDDP による肝動注化学療法を開始した。治療開始後5 か月の腹部CT 検査にて肝転移は著明に縮小し,術後30 か月生存中である。S-1+GEM 併用全身化学療法無効膵癌肝転移に対して,肝動注化学療法は有効な治療の選択肢の一つになり得ることが示唆された。 -
十二指腸へ穿破した非浸潤型Intraductal Papillary Mucinous Carcinoma(IPMC)の1 切除例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は74 歳,男性。発熱を主訴に近医を受診し,腹部CT 検査にて膵頭部に10 mm 大の嚢胞性腫瘤と主膵管拡張を認めた。また,上部消化管内視鏡検査にて十二指腸球部後壁に粘液の付着とその流出口を認め,精査,手術目的に当院紹介となった。EUS にて,拡張した主膵管とその内腔に壁在結節を認め,さらにERP にて主膵管と十二指腸球部との交通が確認された。瘻孔部より細径内視鏡を挿入して観察したところ,内腔に粘液の貯留および乳頭状の隆起性病変を認め,同部位よりの生検では腺腫と診断された。以上より,主膵管型IPMN の十二指腸穿破との術前診断にて膵頭十二指腸切除術を施行した。摘出標本の病理組織学的検査ではIPMC(carcinoma in situ)であった。十二指腸球部穿破部位は浸潤を認めないことから,主膵管内圧の上昇により膵管内粘液が機械的に十二指腸に穿破したと考えられた。 -
胸部食道癌内視鏡治療後の遅発性リンパ節再発に対し根治術を施行した2 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description食道表在癌に対する粘膜切除術は外科手術と比較して,低侵襲であり有用な治療法の一つである。しかし壁深達度MM以深の場合,リンパ節転移を伴う可能性があり,その後の再発に注意を要する。今回,われわれは内視鏡的粘膜切除(EMR)後にリンパ節再発を来し根治術を施行した2 例を経験したので報告する。症例1 は49 歳,男性。2005 年10 月,0-IIc 型の食道癌に対しEMR を施行した。組織学的検索にてpT1b-SM3,ly0,v0 であったため,根治的化学放射線療法を追加した。2007年6 月胃噴門小弯側に4 cm 大のリンパ節(#1)再発を認め,8 月に根治術を施行した。病理検査では#1 以外に#8a にも転移を認めた。症例2 は68 歳,男性。2006 年8 月,0-IIa 型食道癌に対しEMR を施行した。組織学的検索にてpT1a-MM,ly0,v0 のため,補助化学療法を施行した。2009 年2 月胃噴門部に約2 cm 大のリンパ節(#1)再発を認め,6 月に根治術を施行した。病理検査では#1 以外に#108 にも転移を認めた。 -
DCF 療法とサルベージ手術によって長期生存している高度リンパ節転移を伴う進行食道癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は60 歳台,女性。頸部,縦隔,腹部の3 領域にわたるリンパ節転移を伴うcT2N4M0,cStageIVa 食道癌に対してdocetaxel/cisplatin/5-FU 併用療法(DCF 療法)を行った。DCF 療法を2 サイクル実施後には原発巣,リンパ節転移いずれに対してもCR が得られた。1 年5 か月後,左頸部リンパ節再発を認めたため,頸部リンパ節郭清術を施行した。その後,縦隔リンパ節腫大が出現したためDCF 療法を再度行ったところ再びCR が得られ,初診から3 年以上長期生存している。高度リンパ節転移を伴う進行食道癌に対して,DCF 療法とサルベージ手術の組み合わせは有効な治療法の選択肢となり得ると考えられた。 -
頸部食道・下咽頭重複癌に対して導入化学療法+Salvage 手術を施行した1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は60 歳台,男性。つかえ感を主訴に近医を受診し,精査加療目的にて当院に紹介受診となった。精査の結果,下咽頭癌cT2N1M0,cStageIII,頸部食道癌cT2N1M0,cStageIII の重複癌と診断。導入化学療法の方針とし,FAP 療法(5-FU 700 mg/m2 day 1〜5,DXR 30 mg/m2 day 1,CDDP 14 mg/m2 day 1〜5)を3 コース施行,治療効果判定はPR であった。その後,根治的CRT(64.8 Gy/54 fr,concurrent with weekly DOC 10 mg/m2)を施行。原発巣はCR であったが頸部リンパ節に遺残を認め,Salvage 手術として頸部郭清術を施行した。病理組織学的検査ではviable な腫瘍細胞を認めた。以後初回治療から1 年10 か月,Salvage 手術から1 年経過しているが無再発生存中である。 -
HALS 胃管作製と腹腔鏡下結腸切除を行った結腸腫瘍合併食道癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は54 歳,男性。嚥下困難の原因精査により,胸部中部食道癌を指摘された。また,術前スクリーニングの下部消化管内視鏡検査でS 状結腸に側方発育型腫瘍を認めた。一期的に,食道亜全摘術,HALS 胃管作製,胸骨後経路胃管再建術と腹腔鏡下S 状結腸切除術を施行した。上腹部,臍部に,それぞれLap Disc(regular,mini)を挿入。右側腹部・右下腹部に12 mm ポート,左側腹部・左下腹部に5 mm ポートを留置した。まず,上腹部のLap Disc をカメラポートとして使用し,内側アプローチによるS 状結腸切除術を行った。結腸の切離・吻合は,臍部の小切開創より行った。続いて,上腹部のLap Discから術者の左手を挿入。臍部のLap Disc をカメラポートとして使用し,胃管作製を行った。術後経過は良好で,術後26 日に退院となった。本術式は安全かつ低侵襲で,消化管重複癌に対し極めて有効な方法であると考えられた。 -
肺・気管支瘻合併進行食道癌に対する食道ステント留置症例についての検討
37巻12号(2010);View Description Hide Description肺実質・末梢気道に穿通し瘻孔を形成する進行食道癌症例では,咳嗽や栄養障害のためQOL は著しく低下し,気道感染による全身状態のさらなる悪化を来すことから,速やかな局所対策が必要となる。われわれは,肺・気管支瘻を伴った進行食道癌に対して,食道ステント留置がQOL 改善に有用であった3 例を経験したので報告する。症例1 は肺瘻による肺膿瘍を形成し,右肺下葉切除術を施行した。穿孔部には術中内視鏡下に食道ステントを留置し,術後26 日目に食事を開始した。症例2 は化学療法後に肺瘻を形成し,食道ステント留置から3 日後に食事を開始した。症例3 は気管支瘻に伴う肺炎を発症し,食道ステント留置から7 日後に食事を開始した。肺・気管支瘻を伴う食道癌では,外科的切除はもちろん,非外科的治療も困難である。食道ステントは,経口摂取を可能とするのみならず,瘻孔閉鎖による呼吸器感染・症状の改善を図る上で非常に有用であった。 -
食道扁平上皮癌における化学放射線療法の治療効果とERCC1,TS 蛋白発現の検討
37巻12号(2010);View Description Hide Description目的: 食道扁平上皮癌における5-FU/CDDP を用いた化学放射線療法の効果予測因子としてのexcision repair cross-complementing-1(ERCC1),thymidylate synthase(TS)蛋白発現の意義を検討した。対象・方法: 食道扁平上皮癌と診断され5-FU,CDDP 化学放射線療法を施行した15 症例を対象とした。治療前,生検検体を免疫組織化学染色(ERCC1,TS)し,陽性率,強度を判定し,治療効果について検討した。またMIB-1 index,p53,p21,bax,bcl-2 との関連を検討した。結果:ERCC1 では陽性率,強度ともに全例で陽性となり,治療効果との関連は認めなかった。また,TS の染色率,強度と治療効果の間にも関連は認めなかった。MIB-1 index,p53,p21,bax,bcl-2 と治療効果の間にも関連は認めなかった。結語: ERCC1,TS 蛋白発現は5-FU/CDDP を用いた化学放射線療法の治療効果予測には役立たない可能性が示唆された。 -
集学的治療が奏効した再発食道癌(遠隔期再発)の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description頸部リンパ節郭清と化学放射線療法が奏効した再発食道癌を報告する。症例は66 歳,女性。2003 年2 月胸部中部食道癌に対し,手術を施行した。術後5 年経過した2008 年2 月の頸部CT 検査と超音波検査で頸部リンパ節再発を認めたため,両側頸部リンパ節郭清術を施行した。術後化学療法(CDDP+5-FU)と放射線療法(40 Gy)を追加した。治療後2 年3 か月を経過した現在再発なく外来通院中である。食道癌頸部リンパ節転移に対して,リンパ節郭清と化学放射線療法は有用であることが示唆された。 -
cT4 食道癌に対しSecond-Line 化学療法後に切除を施行した1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は69 歳,男性。食道Ut からMt に及ぶ長径10 cm の2 型病変を認め食道癌と診断された。左主気管支・大動脈への浸潤が疑われるため,まず化学放射線療法を行うこととした。放射線療法とともに,5-FU,CDDP 併用療法(FP 療法)を2 コース施行した。治療後,腫瘍の縮小が得られ通過障害は改善したが,治癒切除困難であったため,second-line 化学療法としてdocetaxel,CDDP,5-FU 併用療法(DCF 療法)を4 コース施行した。腫瘍は著明に縮小し,治癒切除可能と判断したため,食道亜全摘術を施行した。術中,術後に大きな合併症は認めなかった。術前化学療法の標準治療であるFP 療法にて十分な縮小効果が得られなくてもsecond-line 化学療法としてdocetaxel を追加することにより,down-stage が得られる可能性があると考えられた。 -
集学的治療により長期生存を得た食道小細胞癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description今回われわれは巨大なリンパ節転移を有する進行食道小細胞癌に対し,化学放射線治療により長期生存を得た症例を経験した。症例は73 歳,女性。2003 年10 月,右頸部のしこりと食事のつかえ感を主訴に当院を受診。精査の上部消化管内視鏡にて胸部中部食道に3 型病変を認めた。生検の結果にて小細胞癌の診断となった。また造影CT にて頸部〜縦隔に拡がるリンパ節転移を認めた。進行食道癌,T3N3M0,cStageIII の診断となった。精査後,放射線療法およびCDDP+CPT-11 による化学療法を施行した。放射線化学療法により食道腫瘍およびリンパ節転移の著明な縮小効果を認めた。食道小細胞癌は比較的早期より全身転移を来し,非常に予後不良である。今回われわれは,放射線化学療法により長期生存を得た症例を経験した。若干の文献的考察を加え報告する。 -
長期生存を得た食道腺癌術後孤発性副腎転移の1 切除例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は71 歳,男性。嗄声,嚥下困難を主訴に他院を受診。胸部中部食道腺癌の診断で化学放射線療法を施行し,PR の診断であった。その後当科に紹介され,T3N0,StageIII の診断で2001 年右開胸開腹食道亜全摘を施行。病理結果はGrade 3であった。術後経過観察中にCEA の上昇を認め,CT 上リンパ節再発と判断し2002 年4 月に化学療法(5-FU 500 mg/m2 day 1〜5,CDDP 15 mg/m2 day 1〜5 を1 コース, その後5-FU 700 mg/m2 day 1〜5,nedaplatin 70 mg/m2 day 1 を1 コース)を施行した。以後もCEA 高値が持続したため,2003 年3 月FDG-PET を施行すると右副腎に高集積がみられた。CT 上も同部位に低濃度腫瘤を認め,右副腎転移と診断し右副腎摘出術を施行した。病理結果はpoorly-differentiated tubular adenocarcinoma であった。以後再発なく2009 年3 月他病死した。食道癌副腎転移は他に非治癒因子がない場合,切除により予後改善が得られる可能性があると考えられた。 -
食道癌肝転移に対する少量5-FU 動注療法
37巻12号(2010);View Description Hide Description食道癌肝転移に対する少量5-FU 動注療法の局所療法としての有用性を検討した。食道癌肝転移例のうち肝外病変を有さない6 例を対象とした。5-FU 投与は,週1 回250 mg 動注,もしくは250 mg/day を1 週間持続動注後,1 週間休薬にて施行した。治療効果はCR 2 例,PR 3 例,SD 1 例であり,奏効率83%,局所制御率100%であった。動注後無増悪期間は治療継続ができた症例では53 か月,26 か月と比較的長期であり,治療中断した1 例を除き全例で最期まで治療効果は保たれていた。有害事象はgrade 1/2 の腹痛2 例と食欲不振3 例を認め,grade 3/4 の重篤な合併症は認められなかった。カテーテル合併症は大動脈内逸脱1 例,肝動脈狭窄1 例を認めともに治療中断を余儀なくされた。本法は高い確率で抗腫瘍効果を有し,化学療法や放射線治療と組み合わせることで予後延長が期待できると考えられた。 -
胃癌化学療法中に発症したニューモシスチス肺炎の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は60 歳台,男性。腹痛と黒色便を主訴に2009 年4 月当院を受診され,bulky N2 を伴う2 型進行胃癌(T4a,N2,H0,P0,M0,cStageIIIB)と診断した。S-1+CDDP 療法を施行するもPD となったため,S-1+CPT-11 療法に変更した。その際,化学療法に伴う吐気に対してステロイドも内服していた。3 コース目第12 病日に高熱と呼吸苦で当院を受診され,急激に進行する呼吸不全のため同日人工呼吸器管理となった。胸部CT 検査にて両肺野にすりガラス状陰影が多発し,PCP,薬剤性肺炎などを疑い入院直後よりST 合剤,ステロイドを含む治療を開始した。入院後の検査でβ-D-グルカン高値・PCR 検査陽性であり,PCP と診断した。早期治療にもかかわらず人工呼吸器からの離脱はできず,細菌性肺炎の合併,胃癌の進行も伴い入院第51 日目に原病死した。化学療法やステロイド投与時には,致死的なPCP の発症に十分な注意が必要である。 -
化学療法により閉塞性黄疸を解除し得た十二指腸浸潤再発胃癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は64 歳,男性。胃体部低分化癌(f-StageIB)に対して腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を施行した。補助化学療法なしで経過観察していたが,術後11 か月目より上腹部膨満感・疼痛が出現,閉塞性黄疸を指摘され受診した。上部消化管内視鏡では,吻合部から水平脚にかけて発赤を伴った浮腫状の狭窄を認めた。生検ではgroupV(por)が検出され,胃癌の再発と考えられた。黄疸は十二指腸浸潤に伴う下部胆管の閉塞によるものと考えられた。PTCD 留置,腸瘻造設後にlow-dose CDDP+5-FU を1 コース,PTX 毎週投与を2 コース施行した。最終的に十二指腸の狭窄も改善し,胆道ステントを留置することもなく治療開始3 か月後にチューブフリーの状態で退院された。その後,癌性腹膜炎の悪化により再発後8 か月目に永眠された。低分化胃癌では,十二指腸水平浸潤から閉塞性黄疸を来すこともあり得るため,病態に応じた治療が必要である。 -
胃癌術後リンパ節再発に対しIrinotecan・Cisplatin 併用療法が有効であった1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description胃癌術後,S-1 による補助化学療法中に来した大動脈周囲リンパ節再発に対して,irinotecan(CPT-11)・cisplatin(CDDP)投与を行い,22 か月にわたってCR が得られている症例を経験したので報告する。症例は60 歳,女性。胃癌に対して幽門側胃切除,D2 リンパ節郭清を施行。補助化学療法としてS-1(100 mg/day)を4 コース施行後,大動脈周囲リンパ節への再発を認めた。CPT-11・CDDP 併用療法を6 コース施行しCR と診断。以後,有害事象から数回の減量を行い,2010 年5 月,再発の徴候なく外来にて経過観察中である。 -
異時性肝転移を伴う治癒切除不能進行胃癌に対して集学的治療にて長期無再発・生存を得られている1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は57 歳,男性。cN2,cH0,cM0,cT3(SE),cP1,cStageIV 胃癌の診断であったが,腫瘍による狭窄・出血を回避するため非治癒手術を先行させた。手術所見では明らかな腹膜転移を認めなかったため,幽門側胃切除D2 リンパ節郭清と膵頭前部リンパ節をサンプリング採取した。病理組織診断は,pT3(SE),pN2,sH0,pM1(LYM),pStageIV となった。術後はS-1 投与を行ったが,1 年9 か月後,肝S6 に単発転移を認めたためラジオ波焼灼(RFA)を行った。その後再びS-1を1 年間投与を行い,現在経過観察中で術後5 年10 か月経過するが無再発・生存中である。StageIV となる因子がN 因子もしくはM 因子でも(LYM)であれば術後化学療法の完遂性を損なわない程度の郭清を伴う手術,そして引き続き化学療法,RFA といった集学的治療を行えたことで長期生存を得られている可能性があると考えた。 -
短期S-1 に続く長期UFT 単独治療にて3 年以上のCR を維持している高齢者進行胃癌の1 症例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は81 歳,女性。胃部不快感があり近医を受診し,胃癌を指摘され当科に受診した。内視鏡で胃体上部前壁に約3cm 長の3 型病変を認めた。生検診断は低分化型腺癌。高齢で手術を希望されなかったが化学療法は同意が得られた。S-1 80 mg/day(2 週投与1 週休薬)で開始したが,2 週服用後全身倦怠感,grade 1 の血小板減少を認め60 mg/day に減量した。S-1 を8 週間内服終了前に食欲不振,嘔吐,めまいで倒れ救急車にて搬送入院された。S-1 終了時に病変はほぼCR 状態になったが,S-1 継続は困難と考え,より副作用が少ないUFT-E で化学療法を再開した。UFT-E は300 mg/day で開始,副作用がなかったため1 か月後より400 mg/day に増量し,dose intensity を高めた。病変が完全にCR になったためUFT-Eは300 mg/day に減量し,現在まで約3 年間継続している。至適投与期間はエビデンスがないのが現状で,副作用もほとんどなくQOL も良好なため長期投与になっている。 -
集学的治療にてQOL の維持と長期生存が得られた胃癌術後腹膜再発の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description胃癌術後腹膜再発による消化管狭窄に対し,集学的治療にて通過障害の改善によるQOL の維持と長期予後を得た症例を経験した。症例は54 歳,女性。胃体部小弯中心の4 型胃癌に対し胃全摘術,D2 郭清,Roux-en Y 再建を施行。病理所見は,por 2 ss ly1 v1 n0,pT2 pN0 sH0 sP0 sCY0 sM0,fStageIB であった。術後2 年より腹膜再発を認め,左尿管狭窄,空腸Y 吻合部狭窄,横行結腸浸潤による狭窄,食道空腸吻合部狭窄が経時的に出現した。それぞれの再発形式に応じて,手術(空腸バイパス術,上行結腸人工肛門造設術),化学療法(S-1,S-1+PTX,weekly PTX,CPT-11,DOC),IVR(尿管ステント留置,中心静脈ポート留置,消化管ステント留置)を駆使し,集学的治療を行った。上記治療により,通過障害,逆流症状が回避され,QOL の維持と長期予後が得られた。 -
S-1+CDDP による化学療法によりpCR が得られた進行胃癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は79 歳,男性。心窩部痛の精査にて腹水を伴う大型の規約5 型胃癌が指摘された。UML,Ant-Less-Gre,cT4a(SE),cN1,cH0,cP1,cStageIV と診断し,S-1+CDDP 併用化学療法を先行した。S-1 は60 mg/m2 を21 日間投与14 日間休薬し,CDDP は50 mg/m2 をday 8 に投与した。3 サイクル施行後の審査腹腔鏡検査では胃体上部小弯側での漿膜露出が疑われたが,腹水や播種結節は認められず,腹腔洗浄細胞診は陰性であった。計4 サイクル施行後,原発巣cPR,転移リンパ節cCR が得られycT4a(SE),N1,M0,P0,CY0,H0,StageIIIAと診断し,胃全摘術,リンパ節郭清D1+No.7,8a,9,R0 を施行した。切除標本の病理学的検索では原発巣,転移リンパ節はともに線維性に硬化しており腫瘍細胞の残存は認められず,臨床病理学的所見Grade 3,pCR と診断された。文献的にはまれであり報告した。 -
切除不能な進行直腸S 状部・胃重複癌に対して集学的治療を行い胃病変の局所制御にFOLFIRI 療法が有効であった1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は59 歳,男性。腸閉塞で当科に入院となった。腹部造影CT では,直腸S 状部に左骨盤壁まで浸潤する腫瘍と肝両葉に転移性肝腫瘍を認めた。下部消化管内視鏡検査では,2 型の直腸S 状部癌を認めた。入院後3 日目にS 状結腸人工肛門造設術を施行した。また,術後の上部消化管内視鏡検査で穹窿部に3 型胃癌を認めた。以上より,多発肝転移を伴う切除不能な直腸S 状部・胃重複癌と診断し,全身化学療法を開始した。first-line はS-1 を2 コース施行するもPD で中止し,second-line としてFOLFIRI 療法を開始した。5 コース終了時に腫瘍マーカーは減少し,上部消化管内視鏡検査では,腫瘍は著明に縮小していた。FOLFIRI 療法は計12 コース施行し,その後はmFOLFOX6 療法を計11 コース,RPMI 療法を1 コース施行したが,癌性腹膜炎で永眠された。second-line 以降,胃病変は良好にコントロールされていた。切除不能な進行直腸S 状部・胃重複癌においては,FOLFIRI 療法が有用な治療になる可能性が示唆された。 -
胃切除7 年8 か月後に腹膜播種にて再発したCY 陽性4 型胃癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は55 歳,女性。食思不振,体重減少を主訴に来院。上部消化管内視鏡検査にて胃粘膜の浮腫性変化とgiant fold を認め,生検にて低分化型腺癌と診断された。腹部CT 検査では腹水や肝転移は認めなかったが,胃壁の肥厚と多数のリンパ節腫大を指摘された。術前診断T3N2M0,StageIIIB の4 型胃癌と診断し,胃全摘術を施行した。明らかな腹膜播種は認めなかったものの,腹腔洗浄細胞診が陽性であった。術後はS-1 単剤による補助療法を4 年間行い,再発は認めなかった。しかし7 年8 か月後にCT 検査にて腹膜播種再発と診断され,現在再度S-1 にて治療中である。 -
S-1 治療抵抗性切除不能進行胃癌に対してWeekly Paclitaxel によるSecond-Line Chemotherapy が著効した症例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は62 歳,女性。胃噴門部の2 型腫瘍で傍大動脈リンパ節腫大,腹腔内リンパ節腫大による十二指腸への直接浸潤,総胆管・胆嚢の圧排を伴う切除不能の進行胃癌に対しCDDP+S-1 療法を2 サイクル施行しPR であったが,3 サイクル目で腫瘍が増大。閉塞性黄疸の進行,腹水増加を認めPDと判断し中止した。second-line chemotherapy としてpaclitaxel(PTX)のweekly 投与を開始した。4 サイクル終了時にはCT 上,腫大していたリンパ節消失・腹水消失・胆嚢の緊満改善を認め,6サイクル終了時には上部消化管内視鏡検査にて,腫瘍消失・十二指腸圧排消失した。生検上,腫瘍の遺残を認めなかった。13サイクルまで続け腹腔内のコントロールは良好であったが,ろれつが回らなくなるなどの神経症状が出現したため,頭部MRI検査を施行したところ右側頭葉から頭頂葉にかけて正中構造の左方への偏位を伴う単発腫瘍を認めた。他院へ転院となり手術となった。組織学的に胃癌の脳転移の診断であった。退院後神経症状は残ったが,局所のうち腹腔内のコントロールは良好であったため,術後14 サイクル目より本療法を再開し引き続き計30 サイクル施行することができた。血液毒性として開始直後にgrade 3 の好中球減少を認めたが,それ以外で重篤な有害事象を認めなかった。本療法はS-1 治療抵抗性であった切除不能進行胃癌に対するsecond-line chemotherapy として有用と考えられた。 -
腹膜播種を伴う高度進行胃癌に対してS-1+腹腔内CDDP 投与が著効した1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description胃癌腹膜播種は予後不良な状態であり,全身化学療法が治療の第一選択となるが,播種巣に対する直接的な作用を期待して抗癌剤の腹腔内投与も行われてきた。今回われわれは,腹膜播種を伴う高度進行胃癌に対してS-1 の内服投与とCDDPの腹腔内投与を併用した化学療法を行い,長期生存を得た症例を経験した。症例は40 歳台,男性。心窩部痛を主訴に近医で上部消化管内視鏡検査を施行され,胃噴門部から幽門前庭部にわたる巨大な3 型胃癌を指摘された。開腹時に腹膜播種を認めたため姑息的に胃全摘術を行い,IP ポートを造設した。手術当日にCDDP の腹腔内投与を行い,術後14 日目よりS-1+腹腔内CDDP 投与を開始した。10 コース施行後,CDDP に対するアレルギー反応を認めたことからS-1 単剤投与に変更した。2010年5 月までにS-1 単剤投与を35 コース施行した。治療開始5 年間が経過した現在も無再発生存中である。 -
胃癌胃全摘術後吻合部再発に対して再切除を施行した1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は72 歳,男性。2005 年12 月,胃癌にて胃全摘術を施行し,UE,3 型,tub 2,INFβ,SS,ly2,v1,PM(−),DM(−),T2,N1,H0,P0,M0,StageII であった。2009 年5 月,上部消化管内視鏡検査にて吻合部再発を認め,6 月,胃癌吻合部再発の診断にて左胸腹連続切開下に吻合部再発部切除術を施行した。病理組織学的に初回手術の胃癌の組織像と類似した組織像であり,胃癌吻合部再発と診断した。胃全摘術後吻合部再発においては切除により長期生存例も存在するため,腹膜播種,遠隔リンパ節転移,局所高度進展,他臓器転移がなければ手術治療を考慮する必要があると考えられた。 -
胃癌の穿孔性腹膜炎術後に胃全摘,尾状葉単発肝転移切除を行い良好な経過をたどった1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は64 歳,男性で,上腹部痛を主訴に救急搬入された。上部消化管穿孔,汎発性腹膜炎の診断にて手術を施行した。開腹にて胃癌の穿孔が考えられた。穿孔部大網充填術,腹膜炎ドレナージ,リンパ節(4sb)生検術を施行した。生検したリンパ節の病理組織検査所見は低分化腺癌であった。精査の後,初回手術から21 日目に胃全摘術,リンパ節郭清(D2),尾状葉肝転移切除術を施行した。術後2 年半にわたり化学療法を行っており,腫瘍マーカーの上昇はみられるも画像診断上再発の徴候はみられない。 -
S-1/CDDP 併用術前化学療法が著効した局所進行胃癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Descriptionはじめに: 4 型進行胃癌の予後は極めて不良であり,術前後の集学的治療を施行しても満足いく結果が得られないのが現状である。今回われわれは,高度進行胃癌に対して術前化学療法が奏効し切除可能であった1 例を経験したので報告する。症例: 64 歳,女性。主訴は心窩部違和感であった。現病歴: 高血圧,高脂血症,糖尿病,慢性心不全にて外来加療中,心窩部違和感が出現。消化器内科を受診し内視鏡を施行。肉眼所見では病変は穹窿部大弯から前庭部にかけて広がり,4 型進行胃癌を強く疑った。前庭部小弯と胃体上部前壁よりの潰瘍辺縁から生検しadenocarcinoma,GroupV の診断であった。腹部CT では肝腫瘤は認めないが胃壁は全体に肥厚しており,胃小弯,腹腔動脈近傍でリンパ節が同定された。腹部超音波検査では胃壁の全周性肥厚を認め,一部肝左葉,膵への浸潤の疑いあり。胃周囲リンパ節腫大の疑いであった。治療: 胃癌の肝左葉および膵浸潤の疑いにて,術前化学療法(S-1+CDDP 療法)を施行後に胃全摘術の方針となり4 コース施行した。結果: 内視鏡では胃内に病変を認めず,胃体部,前庭部に瘢痕を認めるのみで伸展性は著明に改善し,食道浸潤も肉眼的には認めなかった。胃体中部小弯,前庭部大弯の2 か所を生検したが瘢痕様の線維化が目立ち,低分化型腺癌の増殖は確認できなかった。腹部CT でも胃壁の肥厚の改善を認めた。以上より術前化学療法が奏効したと判断し胃全摘術+脾臓摘出術+胆嚢摘出術を施行した。病理所見は,MLU,type 5,約8.5×13 cm,poorly differentiated adenocarcinoma(por2),INFγ,sci,pT2(SS),ly2,v0,pN2(#1: 2/8,#6: 1/6,#11p: 2/5),pPM(−),pDM(−),StageIIIA であった。線維性瘢痕組織の形成を背景に,por 2 相当の低分化型腺癌の浸潤性増殖を粘膜下から漿膜直下にかけて認めた。化学療法による治療効果はGrade 2 であった。術後S-1+CDDP 療法を開始するも嘔気が強くS-1 を減量したが,好中球減少および嘔気もありUFT へ変更した。現在,術後6 か月経過したが再発を認めていない。結語: 術前化学療法(S-1+CDDP 療法)を施行することにより,高度進行胃癌に対しても腫瘍縮小効果が期待される治療と考えられた。 -
残胃癌術後リンパ節再発に対してCPT-11+CDDP 併用療法が奏効した1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description残胃癌術後に空腸腸間膜リンパ節転移を来した症例に対して,irinotecan(CPT-11 60 mg/m2)+cisplatin(CDDP 30 mg/m2)併用療法(2 週間隔投与)を行い,長期CR を得た1 例を報告する。症例は77 歳,男性。35 歳時,十二指腸潰瘍に対して胃切除術(Billroth II 法)を施行。73 歳時(2005 年10 月)胃空腸吻合部の3 型胃癌で残胃全摘術を施行した。術後S-1 120 mg/日を5 コース施行したが,2006 年6 月,腫瘍マーカーの増加,空腸腸間膜のリンパ節腫大を認めリンパ節再発と診断され,CPT-11+CDDP 併用療法に変更した。9 月,腫瘍マーカーは正常値となり,12 月には腹部CT 上リンパ節の腫大は認めなくなりCR と診断された。2007 年1 月,貧血(grade 3)のため計12 コースを施行して化学療法を中断し,その後,経過観察とした。以後,3 年6 か月間,腫瘍マーカーは正常域にあり,画像検査上,明らかな再発は認められない。 -
CDDP 投与が困難であったためS-1/Docetaxel 併用療法を施行した胃癌3 症例
37巻12号(2010);View Description Hide Description進行再発胃癌に対するS-1/cisplatin(CDDP)併用療法は標準治療とされているが,CDDP 投与が困難な症例も存在する。今回われわれは,CDDP 投与が困難と判断したため,S-1/docetaxel(DOC)併用療法を施行した3 症例を経験した。同療法は外来で施行可能であり,重篤な有害反応なく安全かつ有効な治療と考えられた。 -
S-1+CDDP 療法が奏効しながらも癌性髄膜炎で死亡した進行胃癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は68 歳,男性。1996 年1 月に胃癌で幽門側胃切除術を施行。StageII で再発を認めなかった。残胃癌の診断にて2004 年1 月紹介受診となった。胃内視鏡にて胃体上部小弯に2 型腫瘍を認め生検結果は低分化腺癌,GroupV であった。造影CT にて大動脈周囲にリンパ節腫大を認めたためneoadjuvant chemotherapy としてCDDP 20 mg/日×4 日,S-1 100 mg/日×14 日を2 コース施行後,腫瘍,リンパ節は著明に縮小しPR と判定した。4 月1 日残胃全摘術,脾臓胆嚢合併切除術を施行した。病理では腫瘍細胞を認めずGrade 3 と判定された。術後経過順調にて4 月25 日に退院となった。6 月初めより構語障害,右手のしびれが現れMRI で脳転移を3 か所に認めた。他医脳外科に入院し,6 月30 日定位的放射線治療を施行後退院となった。8 月6 日より頭痛が出現し,髄液細胞診にてclassV であり,癌性髄膜炎と診断された。8 月16 日入院,同日MTX(10 mg)髄腔内投与を行ったが9 月4 日死亡された。 -
S-1+CDDP 療法による化学療法を施行後,根治切除術が可能となったP0CY1 を伴った4 型胃癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は41 歳,女性。心窩部痛を主訴に発見され,4 型進行胃癌と診断された。審査腹腔鏡検査ではP0CY1 と診断され,術前化学療法としてS-1+CDDP 療法が開始された。3 コース施行後,腹水細胞診の陰転化が認められ,胃全摘術が施行された。切除検体の病理組織学的所見では治療効果判定Grade 2 と診断された。術後補助化学療法としてS-1 投与を10 か月施行されたが,術後575 日に腹膜播種再発を認められ,セカンドラインに変更された。 -
胃腫瘍における腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除術(Laparoscopic and Endoscopic Cooperative Surgery)
37巻12号(2010);View Description Hide Description近年,内視鏡的治療や腹腔鏡手術などの低侵襲治療の進歩は著しく,技術の工夫,デバイスの進歩,手技の融合により新たな治療戦略が可能となってきている。その一つに腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除術(laparoscopic and endoscopic cooperative surgery: LECS)があげられる。本法は腹腔鏡下胃切除術と内視鏡的粘膜下層剥離術を組み合わせた手法であり,内視鏡的粘膜下層切開剥離術を用いて胃内腔から切離線を決定し腹腔鏡下で漿膜・筋層切開を行う方法である。今回われわれは,噴門直下の内腔発育型胃粘膜下腫瘍に対しLECS を施行し,切除後の胃の変形を来すことなく良好な結果を得た。LECSは最小限の胃壁切除で粘膜下腫瘍が切除可能であり,食道胃移行部や幽門輪近傍の病変にも応用可能である。今後さらに適応を拡大できるものと考えられる。 -
術前補助化学療法としてDocetaxel+CDDP+S-1 療法を施行した高度進行胃癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は60 歳代,男性。嚥下困難にて当院を初診。高度リンパ節転移,食道浸潤を伴う進行胃癌(cStageIIIB)と診断した。根治切除困難と考え,十分なinformed consent の下,術前補助化学療法(以下NAC)を行うこととした。day 1 にdocetaxel(40 mg/m2)とCDDP(60 mg/m2)を経静脈的に投与し,S-1(80 mg/m2)を2 週間(day 1〜14)経口投与,その後2 週休薬した(以下DCS 療法)。2 コース施行し,2 週後に根治術を行った。有害事象として,grade 3 の白血球減少と好中球減少を認めた。2 コース終了後,原発巣,リンパ節転移とも著明に縮小した。D2 リンパ節郭清を伴う胃全摘+脾合併切除を行い,治癒切除が可能であった。摘出標本の病理組織学的効果判定ではGrade 2 であった。術後補助化学療法はgrade3 の食欲不振のため,コンプライアンスが得られなかった。術後8 か月,腹膜転移のため永眠された。NAC では抗腫瘍効果が高く,効果発現の速いレジメンが求められる。DCS はNAC として有望なレジメンである。 -
胃全摘術後の食道空腸吻合部の通過障害に対してアルゴンプラズマ凝固が奏効した1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Descriptionはじめに: 胃全摘術後の食道空腸吻合部の通過障害に対してアルゴンプラズマ凝固(APC)を施行し,奏効した1 例を経験したので報告する。症例: 73 歳,男性。2008 年12 月前医にて早期胃癌に対する噴門側胃切除術を施行したが,瘢痕性の食道胃吻合部狭窄を認め,2009 年2 月当院に紹介入院となった。同月,胃全摘術を施行し,自動吻合器を用いて食道空腸吻合術を施行した。術後通過障害が出現し,消化管内視鏡検査にて吻合部直下2/3 周性に挙上空腸の粘膜のたるみが腸管内に突出しているのを認めた。バルーン拡張術にて通過障害が改善しないため,APC を用いてたるんでいる粘膜を焼灼したところ,粘膜のたるみはほぼ消失した。粘膜焼灼術施行より1 年2 か月経過した現在,通過障害は再現していない。まとめ: 自動吻合器による食道空腸吻合における空腸の粘膜のたるみによる通過障害に対して,APC による粘膜焼灼は安全で有用であった。 -
当院における胃癌術後,内ヘルニア症例の検討
37巻12号(2010);View Description Hide Description2008 年以降,当院で経験した開腹胃癌術後の内ヘルニア症例を報告する。症例1: 51 歳,男性。幽門側胃切除,結腸前経路Roux-en Y 再建を施行後1 年1 か月後,腹痛・嘔吐にて当院を受診した。症例2: 66 歳,男性。胃全摘,結腸前経路Roux-en Y 再建を施行後8 か月後,腹痛にて当院を受診した。症例3: 69 歳,男性。幽門側胃切除,結腸前経路Roux-en Y再建を施行後2 年5 か月後,腹痛にて当院を受診した。症例4: 68 歳,男性。幽門側胃切除,結腸前経路Roux-en Y 再建を施行後2 年後,腹痛・嘔吐にて当院を受診した。4 症例とも腹部X 線検査にてニボー像,CT 検査にて腸間膜血管の螺旋像を認めた。3 例が挙上空腸の腸間膜と横行結腸との間隙(Petersen's defect)に,1 例が挙上空腸の腸間膜と輸入脚の腸間膜との間隙に小腸が陥入していた。開腹胃癌手術後の内ヘルニアの報告は少なく,文献的考察を加え報告する。 -
化学療法にて長期生存を得たスキルス胃癌術後卵巣転移の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は68 歳,女性。StageIIIA のスキルス胃癌に対して胃全摘+D2 リンパ節郭清,Roux-en Y 再建施行。術後6 か月で胃癌の卵巣転移(Krukenberg 腫瘍)にて腹腔鏡下に両側卵巣切除施行。術後7 か月目より胃癌の両側卵巣転移としてS-1 80 mg/m2(100 mg/body)による化学療法を11 コース施行した。術後2 年5 か月で縦隔リンパ節腫大を指摘され,docetaxel 60 mg/m2(80 mg/body)に変更され9 コース施行,grade 3 の神経障害のため術後3 年6 か月よりCPT-11 100 mg/body 3 週投与2 週休薬に変更して12 コース施行した。術後4 年8 か月でCT にてCR と診断。PET-CT にて明らかな集積を認めなかった。現在抗癌剤休薬中,初回手術後4 年10 か月であるが再発を認めていない。われわれは,進行胃癌の両側卵巣転移に対して両側の卵巣切除+S-1,CPT-11,taxane 系抗癌剤などの新規抗癌剤による化学療法による長期生存例を経験したので報告する。 -
肺癌胃転移の切除例
37巻12号(2010);View Description Hide Description転移性胃腫瘍は比較的まれであり,原発巣は乳癌,肺癌などが多いとされている。今回われわれは肺癌胃転移の1 切除例を経験したので報告する。症例は70 歳台,女性。2001 年10 月右肺腺癌(pT4, N2, M0)にて右肺下葉切除を施行。術後化学療法(CDDP+VP-16)施行後外来通院中であった。2006 年4 月の定期検査のpositron emission tomography(PET)-CTで胃壁,腹腔動脈周囲・大動脈周囲リンパ節に異常集積を認めたため,上部消化管内視鏡検査を施行したところ胃噴門部に径4 cm の粘膜下腫瘍を認め,生検で腺癌の結果であった。肺癌のリンパ節転移とその胃壁浸潤の診断で,7 月に噴門側胃切除空腸間置術を施行した。病理組織学的所見は肺癌の胃壁内転移であった。術後補助療法としてS-1 隔日投与を行った。肺癌の胃転移は比較的まれであり,予後不良とされている。化学療法を含めた集学的治療を検討すべきであると考えられた。 -
集学的治療により延命とQOL の向上が得られた高齢者胃癌多発肝転移の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は85 歳,男性。多発肝転移を伴う進行胃癌に対し,幽門側胃切除術後に化学療法を開始した。S-1 4 コース後にPD,second-line のweekly paclitaxel 3 コース後もPD であった。標的病変が肝転移のみであったためthird-line は肝動注療法を導入,CDDP+5-FU を投与し肝転移巣は消失した。新たに肺,腹腔リンパ節に転移が出現したため肝動注療法は25 週間で終了したが,化学療法に伴う有害事象を認めず外来治療が可能であった。fourth-line 以降S-1+CDDP,docetaxel を投与したが,いずれもgrade 3 の口腔粘膜炎のため入院加療を必要とした。best supportive care へ移行後は口内炎も消失し,自宅で自立した生活を取り戻している。QOL が保たれた延命効果が得られ,本症例において肝動注療法は最も効果的な治療であった。 -
切除不能進行胃癌に対して胃空腸吻合術と化学療法にて長期生存中の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は64 歳,男性。主訴は食欲不振と体重減少。腹部造影CT にて胃小弯リンパ節腫大を指摘され,上部消化管内視鏡検査を施行。胃癌(低分化型腺癌)と診断された。2008 年10 月に手術を施行。手術所見にて病変部は幽門部を主体とし,膵頭部に直接浸潤し一塊となっており胃空腸吻合術を行った(L,3 型,T4(膵),N2,H0,P0,CY0,M0,StageIV)。術後S-1 100 mg /日,4 週投与2 週休薬を開始し2 コース終了後には腫瘍およびリンパ節転移は縮小しPR となった。7 コース終了後より食欲不振(grade 3)を認めたため,8 コース目からはS-1 80 mg/日に変更となった。胃空腸吻合術後19 か月経過するも腫瘍およびリンパ節転移の増大を認めていない。切除不能胃癌に対し,胃空腸吻合術を行うことで経口摂取が可能となり,S-1 を用いた化学療法の早期開始により長期予後を得ている症例を経験したので報告する。 -
胃癌術後の両側卵巣転移に対して局所制御を目的に卵巣摘出術を施行した1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は51 歳,女性。2006 年5 月に残胃癌に対し,残胃全摘術+横行結腸部分切除術+肝外側区域部分切除術+摘脾術を施行した(f-T4N0M0P0H0CY0,por 2,StageIIIA,Cur B)。7 月よりS-1 単剤(80 mg/m2,4 週投与2 週休薬)による1 年間の補助化学療法を施行した。しかし,2009 年2 月のCT 検査にて両側の卵巣転移(右: 65 mm 大,左: 27 mm 大)を認めたため,3 月に両側卵巣摘出術を施行した。病理組織学的には両側卵巣ともtub 2-por 2 であり,胃癌の転移と考えられた。術後経過は順調であったが手術時に腹膜播種を認めたため,4 月よりS-1+CDDP 併用療法(S-1 80 mg/m2,day 1〜21,CDDP 60 mg/m2,day 8/35 days)を6 コース施行した後,S-1 単剤による化学療法を開始した。2010 年6 月現在,明らかな増悪なく外来通院中である。まとめ: 胃癌の卵巣転移において,たとえ腹膜転移を伴っていてもその程度によっては,付属器摘出術を減量手術として施行し,術後に化学療法を併用することで予後が改善する可能性を有することが示唆された。 -
進行胃癌術後腹腔内リンパ節再発に対して放射線化学療法が有効であった1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は75 歳,男性。著明なリンパ節転移を伴う3 型胃癌に対し,術前化学療法としてS-1+CDDP を2 コース施行後(効果はPR),幽門側胃切除術を行った。術後補助療法としてS-1 を開始するも術後6 か月で腹腔内リンパ節再発を認めた。腫大リンパ節は増大傾向を示し,放射線療法を目的に当科紹介。S-1 を併用し,総線量65 Gy(10MV X 線,2.5 Gy/day×26 Fr)の照射を転移リンパ節に選択的に行った。加療中,有害事象は特に認めず,30 mm 大のリンパ節腫大が15 mm と縮小。その後は無治療とするが1 年4 か月経過した現在,無増悪生存中である。放射線療法は再発胃癌に対する有効な治療法の一つとなる可能性があると考えられた。 -
胃癌術後リンパ節再発症例に対する化学放射線療法の経験
37巻12号(2010);View Description Hide Description胃癌術後補助化学療法施行中に出現したリンパ節再発に対し,docetaxel+S-1 併用化学放射線療法を行い,良好な局所コントロールを得ることができた2 例を経験した。症例は,胃食道接合部癌術後40 か月に吻合部縦隔リンパ節再発を来した68 歳,男性,および胃前庭部癌術後16 か月に大動脈周囲リンパ節再発を来した72 歳,男性である。S-1 を中心とした複数protocol の術後化学療法を行っている際にCT 検査により再発が明らかになった。放射線治療に際してdocetaxel(30 mg/body day 1,8)およびS-1 の内服(100 mg /body day 1〜14)1 週休薬を2 コース併用し,50 Gy の照射を行った。縦隔内再発例ではgrade 3 の食道炎を呈したが放射線治療を完遂し得た。治療後1 か月に行ったCT 検査でリンパ節は縮小した。本邦では欧米と異なり胃癌において放射線治療が占める割合は少ないが,S-1+CDDP を併用した化学放射線療法が切除不能胃癌に対して奏効したという報告もあり,併用化学療法を工夫することで胃癌に対しても化学放射線療法が治療の選択肢になり得ることが示唆された。 -
放射線治療が有効であった胃癌術後肝転移の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description胃癌の肝転移に対して,放射線治療(定位放射線照射: SRT)が有効であった1 例を経験したので報告する。症例は77歳,男性。2007 年2 月にU 領域の3 型胃癌に対して,胃全摘,脾摘,胆摘,D2 郭清を行い,病理組織結果は高〜中分化腺癌,T3(SE)N0 H0 P0 CY0 M0,StageII であった。11 月に肝S8 転移と骨盤内腹水を伴う腹膜転移再発を来し,化学療法(S-1)で腹水は消失したが肝転移増大(2 cm)を認めたため,2008 年5 月にSRT(52.8 Gy/4回)を施行,腫瘍は縮小し,SRT 後24 か月間再発,再燃を認めていない。早期有害事象(AE)として,grade 3 の白血球減少,好中球減少,grade 2 のAST/ ALT 上昇,晩期AE として2009 年8 月(SRT 後15 か月)にgrade 2 の気胸,胸水を認めた。胃癌肝転移に対して,手術やRFA が不可能な場合には,SRT も治療の選択肢の一つとして有用である。 -
進行胃癌に対する化学放射線療法の評価
37巻12号(2010);View Description Hide Description耐術能の低下した症例や手術を拒否される進行胃癌の管理は難渋する場合がある。腫瘍出血により貧血の程度が強い5症例に対して,S-1(100 mg/day)もしくはCDDP(6 mg/m2)とS-1(100 mg/day)による化学放射線療法を施行した。治療の結果,4 例に腫瘍縮小効果を認め,全例腫瘍出血が抑制され治療後6 か月以内の輸血は行わなかった。また通過障害も軽減し,経口摂取量も全例増加した。grade 3 以上の有害事象は好中球減少1 例,食欲不振3 例にみられた。緩和的治療として手術が選択困難な場合の治療としての有用性が示唆された。 -
胃内分泌細胞癌の2 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description胃内分泌細胞癌はまれで,予後は極めて不良とされている。今回われわれは,胃内分泌細胞癌の2 例を経験したので報告する。症例1: 60 歳台,男性。2008 年7 月,胃体上部の2 型の内分泌細胞癌と周囲リンパ節転移,肝転移を指摘され(cT2N1M0H1,cStageIV),S-1+CDDP 療法を5 コース施行するもPD となった。CDDP+CPT-11 療法に変更すると転移巣の縮小を認め約10 か月PR を維持したが,その後増悪し2010 年3 月に死亡した。症例2: 70 歳台,男性。2009 年12 月,胃体上部の1 型内分泌細胞癌および右肺腫瘍と診断され2010 年1 月,胃全摘術を施行(fT3N1M0H0P0CY0,StageIIIa)。1 か月後のCT で肝転移を指摘され,S-1 内服を開始するも転移巣の増大を認めCDDP+CPT-11 療法に変更し投与中である。 -
S-1/CDDP 併用療法が著効した肝転移を伴う胃内分泌細胞癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description胃内分泌細胞癌は悪性度が高く予後不良であり,現在は確立された治療方法はない。われわれは,肝・リンパ節転移を伴う胃内分泌細胞癌に対してS-1/ CDDP 併用療法を施行後,根治切除が可能となった1 例を経験した。症例は68 歳,男性。2006 年,近医で施行された上部消化管内視鏡検査にて胃角部小弯に3 型病変を認め,生検で内分泌細胞癌と診断された。CT検査にて肝S2/S3 転移およびNo.6 のリンパ節転移を認めた。S-1/CDDP 併用療法を10 コース施行後,原発巣は著変がないものの,肝・リンパ節転移は縮小した。10 コース目にS-1 による薬疹が出現したため,CPT-11/CDDP 併用療法に変更し,合計21 コースを施行した。原発巣からの出血症状を認め,幽門側胃切除,肝部分切除を施行し病理で原発巣およびリンパ節に癌細胞を認めず,肝転移巣は硝子瘢痕化していた。術後補助化学療法としてS-1/CDDP 併用療法を1 年間行い,術後2 年3 か月経過した現在も無再発生存中である。 -
切除不能S 状結腸癌2 症例に対するXELOX+Bevacizumab 療法の経験
37巻12号(2010);View Description Hide Description切除不能大腸癌に対してXELOX 療法が2009 年,本邦でも投与可能となった。XELOX 療法は従来のFOLFOX 療法などと比較すると末梢点滴で行えるという簡便性,入院を要さない,1 コース3 週間であるなどのメリットを有しているため,当院でも切除不能大腸癌症例に積極的に導入している。症例1 は66 歳,男性。S 状結腸癌の後腹膜浸潤のため切除不能と診断され,XELOX+bevacizumab 療法を導入した。8 コース終了後の効果判定ではNC であった。症例2 は67 歳,男性。S 状結腸癌,多発転移性肺腫瘍の診断でS 状結腸切除術後XELOX+bevacizumab 療法を導入した。4 コース終了後の効果判定ではPR であった。いずれもgrade 3 以上の有害事象を認めず,治療期間においてQOL は維持されていたと思われた。現在,厳重な経過観察下にXELOX+bevacizumab 療法を継続中である。 -
肝動注後CapeOX+Bevacizumab 療法が有効であった大腸癌多発肝転移の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は63 歳,女性。高度肝機能障害を伴う切除不能多発肝転移を有する進行下行結腸癌と診断した。肝不全の回避目的に肝動注を先行し,10 サイクル投与後,肝機能は改善したため,capecitabine,oxaliplatin(CapeOX)+bevacizumab(Bmab)療法を開始した。全身化学療法は奏効を示し,治療開始1 年後の現在もCapeOX+Bmab 療法を継続中である。 -
直腸癌術後肝転移残肝再発に対してBevacizumab 併用全身化学療法後に再肝切除を施行した1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description大腸癌に対する全身化学療法の大幅な進歩により奏効率が向上し,当初は切除不能とされた遠隔転移を有する大腸癌においても転移巣が切除可能となる症例が増加している。根治術を施行し得た症例は予後の改善が認められている。今回,直腸癌術後肝転移残肝再発に対してbevacizumab 併用全身化学療法後に再肝切除を施行した1 例を経験したので報告する。 -
Bevacizumab 併用大腸癌化学療法中に静脈血栓症を認めた2 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例1 は59 歳,男性。直腸癌に対して腹会陰式直腸切断術を施行したが,その後,骨盤内再発および肺転移が出現し,mFOLFOX6+bevacizumab 併用療法を開始した。14 コース終了後,右肩痛の訴えがあり,CT にて中心静脈ポート周囲の右鎖骨下静脈に深部静脈血栓を認めた。症例2 は65 歳,男性。直腸癌に対して,低位前方切除術を施行した。その後,肺転移が出現し,mFOLFOX6+bevacizumab 併用療法を開始した。6 コース終了後,CT にて無症候性の下肢静脈血栓および両側肺動脈血栓を認めた。bevacizumab の副作用に静脈血栓塞栓があげられるが,その発症には中心静脈ポート留置が相加的に働く可能性も報告されている。中心静脈ポートが留置されている担癌患者のbevacizumab 投与においては,特に血栓症の合併に留意し,早期に的確な診断と治療を行う必要があると考えられた。 -
当院でのCetuximab 有効例の検討
37巻12号(2010);View Description Hide Description2008 年11 月より当院にてcetuximab の投与を行った再発・進行大腸癌8 例中,有効例6 例の検討を報告する。症例は48〜77 歳,男性4 例,女性2 例。原発巣は直腸1 例,S 状結腸4 例,上行結腸1 例。PS 0〜1。第二次治療1 例,第三次治療3 例,第五次治療1 例,第七次治療1 例であった。3 例は単独療法,3 例はCPT-11 併用療法(150 mg/m2,biweekly)であり,CPT-11 併用群でFOLFIRI による前治療を受けたのは2 例であった。cetuximab は単独投与でも3 例中2 例でPR が得られ,強い腫瘍縮小効果が得られた。腫瘍マーカー減少効果は著明に得られ,減少率は1 か月目で単独療法31.7%,併用療法60.8%,2 か月目で単独療法14.1%,併用療法29.5%であった。PFS/TTF は単独療法では平均3.0/4.5 か月で,CPT-11 併用療法では平均7.3/9.3 か月であった。座瘡様発疹・爪囲炎は全例に出現した。 -
肝動注化学療法にCetuximab 単剤投与併用が有効であった標準的化学療法不応大腸癌肝肺転移の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description肝動注化学療法に,cetuximab(Cmab)単剤投与併用が有効であった標準的化学療法不応大腸癌肝肺転移の1 例を経験したので報告する。 症例は61 歳,女性。2008 年3 月,S 状結腸癌切除不能肝肺転移にてS 状結腸切除術を施行。4 月より,肝肺転移に対しbevacizumab(Bev)+mFOLFOX6 療法を開始した。いったんPR を得たがその後増大,2009 年5 月よりBev+FOLFIRI 療法,8 月よりCmab+CPT-11 療法を施行したが不応で,肝転移巣による胆管炎,貧血,全身倦怠感のためPS は2 に低下した。肝転移がQOL や予後を規定すると考え,11 月より肝動注化学療法(5-FU 1,000 mg/m2)にCmab 単剤投与を併用した。4 か月後のCT ではSD であったが,CEA は低下した。胆道系酵素も改善,胆管炎も消退し,臨床的に非常に有効であった。なお,肺転移もSD を維持しており,Cmab 併用の有効性も示唆される。 -
UFT 内服により長期CR が得られた大腸癌多発肺転移の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は77 歳,女性。2003 年12 月,多発性肺転移を伴う上行結腸癌にて腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した。上行結腸癌は60×35 mm,2 型,高分化型腺癌,SS,ly1,v3,n1 であった。術後,縫合不全合併するも保存的に軽快し,第109病日に軽快退院となった。退院後(2004 年4 月)よりUFT 300 mg/日内服を開始した。1 年後の2005 年4 月のCT にて両側肺転移は消失,術前168 ng/mL と高値を示したCEA 値も正常化しており,CR と判定した。2006 年6 月までUFT 内服した。2010 年5 月のCT でも肺転移は消失しており,CR は継続中である -
切除不能・再発大腸癌における一次治療mFOLFOX6 療法の治療効果とTS/ERCC-1 蛋白発現の検討
37巻12号(2010);View Description Hide Description5-fluorouracil(5-FU),oxaliplatin(L-OHP)ベースの化学療法の治療効果に,thymidylate synthase(TS)やexcision repair complementing-1(ERCC-1)の発現や遺伝子多型が関与していることが報告されているが,いまだに一定の見解は得られていない。今回,切除不能・再発大腸癌に対し,一次治療として行ったmFOLFOX6 療法の効果と,原発巣の切除標本における癌細胞のTS/ERCC-1 蛋白発現の関係について検討したので報告する。評価可能な病変を有する切除不能・再発大腸癌に対して一次治療としてmFOLFOX6 療法を行った症例のうち,原発巣の切除標本に対するTS/ERCC-1 の免疫染色を行った50 例を対象。各発現の程度と奏効率,無増悪生存期間について検討した。TS/ERCC-1 の発現程度と各因子と奏効率(TS: p>0.99,ERCC-1: p=0.50),無増悪生存期間(TS: p=0.60,ERCC-1: p=0.60)に関連はなかった。今回の検討から,TS/ERCC-1 の免疫組織化学的染色による蛋白発現の多寡は,一次治療mFOLFOX6 の効果の予測には役立たない可能性が示唆された。 -
結腸癌副腎転移の1 切除例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は77 歳,男性。S 状結腸癌に対してS 状結腸切除術を行った2 年後,肝転移に対して肝右葉切除術を施行した。術後補助化学療法を実施したが,さらにその2 年後にCT およびFDG-PET 検査で右副腎転移と診断された。全身化学療法(S-1+CPT-11: IRIS 療法)でSD を維持していたが,化学療法6 コース終了後より転移巣の増大傾向が認められた。他部位への再発所見が認められない孤立性副腎転移であるため,右副腎摘出術を行った。摘出した副腎の病理学的検索により結腸癌の副腎転移と確定診断された。副腎転移切除後はIRIS 療法を再開し,術後6 か月無再発生存中である。本症例のように孤立性転移巣の場合,または他部位の転移巣を有する例でも,その他の治療(化学療法)などで他の転移巣が制御可能であること,全身状態が良好であることなどの条件が満たされれば外科切除の適応と考える。 -
化学療法後肝切除を施行し25 か月の生存を得た大腸癌同時性肝・肺転移の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description化学療法と転移巣切除により,初回手術から25 か月の生存を得た大腸癌同時性肝・肺転移症例を経験したので報告する。症例は60 歳,男性。肝・肺転移を伴ったS 状結腸癌に対しS 状結腸切除術を施行し[S,type 2,pSE,pN1,cH1(grade A),cM1(肺),LM3,fStageIV],術後6 週より,mFOLFOX6+bevacizumab(Bmab)を施行した。化学療法後のCT にて肝・肺転移ともにPR となったため,肝切除術を施行した。術後,肺転移巣の増大を認めたため,mFOLFOX6+Bmab を再開し,以後FOLFIRI+Bmab(最良効果SD),cetuximab(同PD)を投与したが,初回手術より25 か月で原癌死した。初回化学療法にてPR となった時点で化学療法を継続する選択肢も考えられたが,本症例では肺病変が制御可能と判断し,肝切除を施行した。 -
集学的治療が有効であった大腸癌Krukenberg 腫瘍の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は80 歳,女性。2007 年2 月,2 型S 状結腸癌に対して2 群リンパ節郭清を伴うS 状結腸切除術を施行した。病理組織の結果はwell differentiated adenocarcinoma,ss,α,ly0,v0,ow(−),aw(−),n(−)で,fStageII(SS,N0,P0,H0,M0),根治度A であった。術後経過は良好であったが根治術後12 か月ごろよりCEA 値の上昇がみられ,CT 検査およびMRI 検査にて骨盤内に直径10 cm 大の多房性嚢腫を認めた。2008 年5 月,両側卵巣悪性腫瘍に対して子宮・両側付属器摘出術+大網切除術を施行した。病理組織の結果は転移性腺癌で大腸癌由来のKrukenberg 腫瘍と診断された。また,術中の腹水細胞診の結果は陽性であった。本人・家族に結果を説明したところ,外来での内服抗癌剤治療を希望された。Krukenberg腫瘍術後25 か月現在,明らかな再発所見なく外来加療している。 -
集学的治療にて長期生存中のVirchow リンパ節転移を伴った直腸癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は57 歳,男性。近医にて直腸癌を指摘され当院紹介となる。前立腺への浸潤を疑い,術前化学放射線療法(CPT-11,UFT/LV 併用,50.4 Gy)施行。効果判定時のPET-CT にてVirchow リンパ節転移を認めたため,主病巣の切除のみ行い,術後早期からの化学療法を施行することとした。腹会陰式直腸切断術施行後mFOLFOX6 療法を開始し,9 コース施行。grade 3 の末梢神経障害が出現したため,FOLFIRI 療法に変更し27 コース施行。Virchow リンパ節は縮小傾向となった。本人の希望で7 か月間休薬したところVirchow リンパ節が増大傾向を認めたため,FOLFOX+bevacizumab を開始した。原発巣切除を行った上で,化学療法を治療効果と副作用とを考慮しながら継続していくことで初診時から38 か月経った現在も外来通院できており,QOL を損なうことなく治療継続できている。 -
S 状結腸癌・異時性多発性肝転移術後の副腎転移・傍大動脈リンパ節転移に対して外科的切除および化学療法にて再発なく経過している1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は57 歳,女性。S 状結腸癌に対して2002 年1 月S 状結腸切除術を施行し,病理組織診断では中分化腺癌であった(2 型,pSS,pN0,sH0,sP0,sM0,fStageII)。2002 年12 月多発性肝転移を認め,術前化学療法(UFT+CPT-11)を行い,2003 年7 月に肝S2,S7 部分切除術を施行した。その後2007 年2 月右副腎転移および傍大動脈リンパ節転移を認め,術前化学療法(mFOLFOX6)を施行し効果はPR であったため,7 月に右副腎摘出術および傍大動脈リンパ節郭清術を施行した。病理結果では右副腎および傍大動脈リンパ節ともに中分化腺癌を認めた。術後補助療法(mFOLFOX6)を4 コース施行し,経過観察するも2008 年9 月よりCEA 8 ng/mL と上昇し,PET/CT にて右副腎摘出部の再発と考えられたためにmFOLFOX6+bevacizumab を開始した。現在のところ腫瘍マーカーは陰性でPET/CT でも明らかな再発は認めていない。多発性の遠隔転移に対して外科的切除および化学療法を行うことにより,術後約3 年間良好に経過した症例を経験したので文献的な考察を加えて報告する。 -
大腸癌肺転移に定位放射線治療を施行し良好な制御効果が得られた1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は73 歳,男性。多発肝転移を伴うS 状結腸癌に対し,S 状結腸切除術+肝動注カテーテル留置術を施行した。肝切除後に肺転移を認め,mFOLFOX6 投与の方針となった。病変は一度縮小したが,投与終了後に再燃を認めたため,定位放射線治療(60 Gy/10 Fr)を施行した。腫瘍は瘢痕化し,放射線治療後21 か月現在,無再発生存中である。大腸癌肺転移に対する治療法として,肺切除は他の治療法と比べ良好な成績を残すものの,合併症などの理由で肺切除の適応とならない症例も散見される。定位放射線治療はこうした症例に対し有効な治療法となり得ると思われた。 -
大腸癌肝転移治癒切除後の補助化学療法としてのFOLFOX4 療法
37巻12号(2010);View Description Hide Description大腸癌遠隔転移治癒切除後の補助化学療法の有用性は部分的にしか示されていない。大腸癌肝転移切除術後にFOLFOX4療法を行った7 例について報告する。5 例は予防的肝動注後にFOLFOX4 療法6 サイクルを,残る2 例にはFOLFOX4 療法のみ8 サイクルを投与した。すべての症例にoxaliplatin の減量を行うことなく計画したサイクル数が投与された。grade 3 の好中球減少を4 例に認めた以外に重篤な有害事象を認めなかった。2 例に肺転移をそれぞれ肝切除後21.3,28.1 か月後に認めたが,観察期間中央値23.5 か月において全例生存中である。FOLFOX4 療法6〜8 サイクル投与による大腸癌肝転移治癒切除後の補助化学療法は安全で高いoxaliplatin の用量強度が得られ予後改善効果が期待できる。 -
切除不能両葉多発肝転移に対し化学療法併施Two-Stage Hepatectomy にて切除し得た1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は60 歳,男性。他院にてS 状結腸癌に対しS 状結腸切除術施行後に両葉多発肝転移を認め,切除不能と判断されて当院紹介となった。切除後予測残肝容量不足のため,downstage を目的に化学療法(mFOLFOX6+bevacizumab)を行い,標的病変はPR となった。しかしながら切除予定術式からは予測残肝容量不足となるため,一期的肝切除は困難と判断し,two-stage hepatectomy を考慮した。最終抗癌剤投与4 週間後に初回手術として,肝左葉4 か所の部分切除術と術中門脈右枝塞栓術を施行した。初回手術から5 週間後,右肝切除術を施行し全病変を切除した。術後合併症なく,第17 病日に退院となった。切除不能両葉多発肝転移例に対して,新規抗癌剤・分子標的治療剤併用療法や門脈枝塞栓術を併施したtwo-stage hepatectomy により切除適応の拡大が可能となり,これらを用いることは大腸癌肝転移患者の予後に大いに寄与し得ると考えられた。 -
大腸粘液癌の再発形式の検討
37巻12号(2010);View Description Hide Description大腸癌根治切除StageII・III 症例771 例に関して,粘液癌24 例(3%)を高・中分化腺癌725 例(94%)と比較し,臨床病理学的特徴とその再発率,再発形式,予後を検討した。粘液癌は,高・中分化腺癌と比較して,腫瘍の大きさが5 cm 以上,リンパ管侵襲高度,StageIIIb のものが多かった。再発,予後に関しても粘液癌は,高・中分化腺癌と比較して不良であった。再発形式では,粘液癌はリンパ節再発は有意に多く,局所再発,腹膜再発は多い傾向を認めたが,肝転移を認めなかった。以上のことから,粘液癌症例に対しては手術時も術後も高・中分化腺癌と比べて,より細かい治療方針を考慮する必要があると考えられた。 -
pM 大腸癌手術症例の検討
37巻12号(2010);View Description Hide DescriptionpM 大腸癌手術症例に対する治療内容を解析した。2004 年1 月〜2008 年12 月までの原発性大腸癌手術1,037 例中pM癌は43 例であり,結腸癌29 例,直腸癌14 例であった。結腸癌の術式は,腹腔鏡下大腸切除15 例と開腹大腸切除14 例であった。結腸癌の腫瘍径は平均28 mm,そのうち腫瘍最大径20 mm 未満は11 例(38%)であった。直腸癌は,経肛門的直腸局所切除9 例が最も多く,開腹手術4 例,腹腔鏡手術1 例であった。経肛門的直腸局所切除の腫瘍径は平均42 mm,開腹および腹腔鏡下直腸切除の腫瘍径は平均34 mm であった。そのうち最大径20 mm 未満の直腸癌は1 例のみであった。最大径20mm 未満のpM 結腸癌11 例(25%)は,理論上は開腹手術ではなく内視鏡的治療で対応可能であったが,深達度診断の深読み,内視鏡治療の手技上の困難性,合併する腹部の他疾患の治療など様々な要因により外科的切除が施行された。 -
大腸癌肝転移に対する全身化学療法後肝切除例の検討
37巻12号(2010);View Description Hide Description当院で大腸癌肝転移に対し全身化学療法後に肝切除を施行した8 例をretrospective に検討した。手術不能肝転移が化学療法により切除可能となった例が3 例,術前補助化学療法として行った例が5 例であった。年齢は69 歳(平均55〜81 歳)。oxaliplatin ベース5 例,irinotecan ベース4 例,UFT/LV が1 例に投与されており,bevacizumab 4 例,cetuximab が2 例に併用されていた(重複あり)。化学療法の期間は12 週(中央値7〜90 週)。最良効果判定はPR 6 例,SD 2 例であった。軽度の胆汁瘻を1 例に認めたが,重篤な合併症はなく術後在院日数は平均で17 日(13〜22 日)であった。化学療法投与後であっても肝切除は安全に施行可能であると考えられた。 -
前治療による壊死巣を有する大腸癌肝転移に対する肝切除
37巻12号(2010);View Description Hide Description近年,大腸癌に対する治療は新規薬剤の開発やラジオ波焼灼療法の適応などに伴い選択肢が広がっている。これらの結果,経過中に肝転移巣に壊死巣を生じる場合があり,肝切除が病態を改善する可能性がある。右葉を占拠する同時性巨大肝転移を伴う横行結腸癌として発見された症例では,肝転移巣は下大静脈と中左肝静脈共通幹に広範囲に接しており,切除不能と診断,mFOLFOX6+bevacizumab による化学療法を約6 か月間行った後,肝転移巣が膿瘍化して内部に多量のガス産生を伴う状態となった。Bevacizumab の影響が疑われた。発熱などで治療の継続が不可能となったが,原発巣と肝転移巣の同時切除を施行することにより化学療法が再開可能となった。また,S6 の肝転移を伴う下行結腸癌で結腸切除と肝部分切除を施行した後,術後補助化学療法を行っていた症例では約1 年後S7 に2 cm 大の残肝再発が出現,ラジオ波焼灼療法を施行した。3か月後のCT にて壊死効果が不十分で肝S7 の転移巣が急速増大して6 cm 大になったため肝切除を施行した。術後に腫瘍マーカーは正常化した。分子標的薬やラジオ波焼灼療法により肝に壊死巣を生じる場合があり,肝切除による治療が有効な場合は,治療のタイミングを逃さないことが重要である。 -
大腸癌の同時性肝転移に対し動注化学療法併用後に肝切除を施行し長期生存が得られた1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description初診が2000 年のS 状結腸癌,同時性の肝内多発性転移の症例に対し,当時は有効な全身化学療法も認めなかったこともあり,肝動注療法を選択した。約1 年半ほどの化学療法を間欠的に施行し,腫瘍は縮小したが根治には至らなかった。このため肝切除を選択することとし,初診より約2 年経過した時点で,肝左葉切除術とS8 肝部分切除術を施行した。10 年経過した現在でも無再発にて経過しており,長期生存が得られている。最近の大腸癌肝転移の治療方針では,多発性肝転移の場合,術前に全身化学療法を施行して手術することも考慮されるようになってきている。しかし,これらには副作用などにて化学療法を十分に行えない症例も認められる。その点,動注化学療法は比較的副作用が少なく効果が得られることもあり,治療法の一つとして選択し得るものだと考えられたため,文献的考察を加え報告する。 -
IRIS 療法が著効した大腸癌多発性肝転移の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description大腸癌由来の多発性肝転移に対し肝動注(5-FU)療法で腫瘍縮小効果を得ていた患者が,動注カテーテル閉塞により腫瘍マーカーの再上昇を認めたためsecond-line としてS-1,CPT-11(IRIS)療法を開始したところ,肝動注療法以上の腫瘍マーカーの著明な低下を認め,画像所見上でも部分奏効を得ている症例を報告する。肝腫瘍体積/肝体積比は入院時57%だったのが,動注カテーテル閉塞が起きた14 コース目で16%まで縮小し,IRIS 療法7 コース目で18%と画像上で部分奏効を得ている。肝動注療法はFOLFIRI などの化学療法と比較して副作用が少なく,比較的安価で抗腫瘍効果が期待できる治療法の一つである。IRIS 療法はポート留置を必要とせず,FOLFIRI 療法の約半分の治療費で施行できる。IRIS 療法は切除不能大腸癌の二次治療としてFOLFIRI 療法との第III 相臨床(FIRIS)試験にて非劣性が証明されており,IRIS 療法が大腸癌の肝転移に対して肝動注療法に匹敵する治療法である可能性が示唆された。 -
大腸癌多発肝転移に対する局所凝固療法後に血小板減少を認めた1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は76 歳,女性。1 年前に上行結腸癌,多発肝転移の診断で当院に紹介された。初診時の腹部CT で両葉にわたる50 個以上の肝転移と,肺転移,胃小弯周囲のリンパ節腫大を認めた。切除不能と診断し,化学療法(mFOLFOX6,5-FU/LV)を10 か月施行した。化学療法が著効し,CT では肺転移は消失し,肝臓も石灰化を残すのみであった。切除の方針とし,結腸右半切除,胃小弯側リンパ節郭清,肝部分切除(17 か所,32 個)・マイクロ波凝固療法(20 か所)を施行した。開腹所見では縮小した肝転移を多数認め,上記の術式となった。術後に血小板が14 × 10 4 から3 × 10 4/mm3 に低下した。術後出血はなく肝機能は保たれており,抗血小板抗体も陰性であった。熱凝固による血小板減少と推測され,播種性血管内凝固に準じる治療を施行し,血小板数は改善した。本症例に文献的考察を加え報告する。 -
StageIV 大腸癌に対する腹腔鏡下原発巣切除
37巻12号(2010);View Description Hide Description大腸癌治療ガイドラインにおいて,StageIV であっても有症状で耐術能に問題がなければ原発巣切除が推奨されている。原発巣切除における腹腔鏡手術の有用性,妥当性をretrospective に検討した。対象は2006 年4 月〜2009 年12 月までの間にcStageIV と診断され,原発巣を切除する目的で手術を行った29 例(腹腔鏡群21 例,開腹群8 例)。手術時間,出血量,郭清度,ストーマ造設率,合併症,在院日数,開腹移行,化学療法導入率,化学療法開始日,奏効率,観察期間を検討項目とした。出血量,ストーマ造設率,合併症率,在院日数で有意差があった。特に合併症は腹腔鏡群が2 例(9.5%)に対し,開腹群は5 例(63%)と高率であった。StageIV における腹腔鏡下原発巣切除術は安全性に問題なく,腹腔鏡手術の低侵襲性を享受できることから,StageIV 症例において有用であると考えられた。 -
局所切除を繰り返し長期生存を得たS 状結腸癌肛門管転移の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は72 歳,男性。1999 年1 月,S 状結腸癌に対しS 状結腸切除術を施行した。病理組織学的結果はtub 2,SS,ly2,v2,N1,H0,P0,M0,StageIIIa,cur A であった。2001 年3 月,下血を認め,大腸内視鏡検査にて肛門管に直径15 mm の粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認めた。生検結果はtub 2で,S 状結腸癌肛門管転移を疑い,2001 年5 月経肛門的腫瘍摘出術を施行した。病理所見はtub 2,A,ly2,v2,RM0 で組織像は初回S 状結腸癌と類似していた。腫瘍の局在が上皮下で,脈管侵襲は高度,他の肛門管原発腫瘍の所見を認めなかったため,S 状結腸癌肛門管転移と診断した。その後,複数回の鼠径リンパ節転移,肛門管再発,肺転移を来すもいずれも切除し,初回手術後11 年目の現在,新たな再発なく生存中である。局所切除を繰り返し長期生存を得たS 状結腸癌の肛門管転移症例を経験したので文献的考察を加えて報告する。 -
減量・休薬基準を明記したmFOLFOX6 療法の試み
37巻12号(2010);View Description Hide Description進行再発大腸癌に対するmFOLFOX6 療法の標準化と医療スタッフ間における情報の共有を目的に,外来化学療法室で施行するmFOLFOX6 のパスを作成した。本パス(医療者用)の特徴は,治療レジメン,臨床検査値,CTCAE v2.0 による有害事象判定基準,生じやすい有害事象とその対策,oxaliplatin,5-fluorouracil の減量・休薬基準などが明記されていることである。本パスの導入前後で,oxaliplatinのrelative dose intensity(RDI),治療中止理由,progression-free survival(PFS)について比較検討した。パス導入後の58 例のほうが,パス導入前の108 例よりoxaliplatin のRDI が高かったが(p=0.04),有害事象による中止頻度には差がなかった(p=0.18)。PFS はパス導入前後で差がなかった(p=0.74)。われわれの作成したパスは医療スタッフの情報共有のみならず,mFOLFOX6 療法の標準化に有用であると考えられた。 -
大腸癌卵巣転移によるPseudo-Meigs’症候群の検討
37巻12号(2010);View Description Hide Description大腸癌卵巣転移によるpseudo-Meigs’症候群はまれな疾患である。今回,pseudo-Meigs’症候群の特徴を検討する目的でpseudo-Meigs’症候群5 例(PM 群)と,同時期に切除術を受けた大腸癌卵巣転移10 例(対照群)について,臨床病理学的因子,予後についてretrospective に比較検討した。PM 群と対照群の間で年齢(p=0.46),占居部位(p=0.36),組織型(p=0.41),深達度(p=0.28),根治度(p>0.99),同時性/異時性(p=0.46),片側性/両側性(p=0.37),リンパ節転移陽性率(p=0.69),腹膜播種(p=0.75),CEA 値(p=0.52),静脈侵襲(p=0.33),リンパ管侵襲(p=0.46)に差はなかった。累積3 年生存率はPM 群37.5%,対照群10%と差はなかった(p=0.19)。今回の検討からpseudo-Meigs’症候群に特徴的な臨床病理学的因子を見いだすことはできなかったが,pseudo-Meigs’症候群では卵巣転移を切除することで,卵巣転移症例と少なくとも同等の予後が期待できると考えられた。 -
切除不能進行大腸癌肝転移に対する全身化学療法抵抗後のOxaliplatin 動注療法
37巻12号(2010);View Description Hide Description切除不能進行大腸癌肝転移に対してFOLFOX などによる全身化学療法抵抗性を示した5 例に対してoxaliplatin(L-OHP)動注療法を行いretrospective に検討した。レジメンは,levofolinate calcium(175 mg/body)と同時にL-OHP(100 mg /body)を2 時間で動注した後に5-FU(500 mg/body)を急速静注した。この治療を2 週間ごとに行った。結果: 平均年齢は58 歳,全例でFOLFOX 療法を受けており,5 例中4 例にL-OHP 動注療法前より肺転移を認めた。動注療法回数は10.2 回(5〜14 回),5 例中4 例にCEA の低下を認め,奏効率は2 例に肝転移病巣のPR が得られたが,肝外転移巣の進行のため全例でPD であった。動注療法による副作用は認めなかった。動注後PFS 中央値は3.0 か月,OS 中央値は7.1 か月であった。5 例中2 例が生存中である。結語: 全身化学療法の治療抵抗例,特に肝外転移のない例においてはL-OHP 動注療法により,抗腫瘍効果の可能性が期待し得ると考えられた。 -
側方リンパ節への跳躍転移を郭清した後に長期生存を得られた直腸S 状部癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Descriptionはじめに: 大腸癌の跳躍転移は比較的まれである。直腸S 状部癌術後に跳躍転移と考えられる側方リンパ節転移を郭清し,長期生存した症例を報告する。症例: 42 歳,女性。直腸S 状部癌に対して前方切除術(D2 郭清)を施行。病理診断は中分化腺癌,ss,n1(#251 3/7,#252 0/3),stageIIIa であった。術後補助化学療法は5-FU/LV 静注およびテガフール・ウラシル内服を行った。術後2 年目CEA の上昇があり,PET で傍大動脈リンパ節転移と診断。術後2 年5 か月目中枢側リンパ節,傍大動脈周囲リンパ節および両側腸骨動脈リンパ節を郭清した。中枢側リンパ節に転移なく,側方リンパ節への転移を認めた。2 回目の手術後6 年間遠隔転移および局所再発なく経過した。まとめ: 中枢方向に転移なく,側方リンパ節のみに転移を認め跳躍転移と考えられた。リンパ節郭清で長期生存が得られたまれな症例と考えられた。 -
Stage 0,I 結腸癌における小切開アプローチ法による結腸癌根治術の手術成績の検討
37巻12号(2010);View Description Hide Description背景・目的: 当科では2000 年7 月以降,結腸癌に対し,腹腔鏡下手術に代替し得る低侵襲手術として小切開手術を行い,その手技や短期成績については報告してきた。今回,stage 0,I 症例の手術成績についてretrospective に検討した。対象・方法: 2000 年7 月〜2009 年3 月の間に,小切開アプローチ法(皮膚切開7 cm 以下)により根治切除術が試みられ,病理組織学的にstage 0,I と診断された結腸癌127 例(EMR 後の追加切除が17 例を含む)を対象とし,臨床病理学的因子,手術因子,再発形式,予後について検討した。結果: 年齢は中央値67 歳,男性84 例,女性43 例,BMI の中央値は22.6 kg/m2であった。原発部位は盲腸9 例,上行結腸28 例,横行結腸24 例,下行結腸4 例,S 状結腸62 例であった。皮膚切開が6〜7cm の小切開手術117 例,臍周囲の切開のみの極小切開が10 例であった。全症例中39 例に腹部手術の既往があった。ASA 分類は,I: 100 例,II: 12 例,III: 15 例であった。手術時間の中央値は110 分,出血量の中央値は50 mL であった。127 症例中120 症例に小切開アプローチ法で根治切除を完遂し得た。7 例(6%)に皮膚切開の延長を要し,そのうち3 例は既往腹部手術の癒着が原因であった。D1 リンパ節郭清は37 例,D2: 63 例,D3: 27 例に施行された。病理組織学的深達度は,m: 51 例(40%),sm: 39 例(31%),mp: 37 例(29%)であった。術後合併症は15 例(12%)で,縫合不全を1 例に認めた。累積5 年無病率と全生存率は各々97.8%と95%であり,再発はStageI の2 例(肝,腹部大動脈周囲リンパ節再発)に認め,腹部大動脈周囲リンパ節再発の1 例が原癌死した。結語: 結腸癌根治手術を小切開アプローチ法で行う上で,腫瘍学的に安全な術式である。 -
大腸癌化学療法中に発症したITP に対する脾動脈塞栓
37巻12号(2010);View Description Hide Descriptionはじめに: 大腸癌肝転移に対して術前補助化学療法を行う場合,切除のタイミングと有害事象への対応が課題である。症例: 50 歳台,男性。直腸癌同時性多発肝転移に対して,原発巣切除後に肝切除に対する術前化学療法をbevacizumab+mFOLFOX6 にて行い腫瘍の縮小を認め(PR),切除術を計画していたところ,血小板数が1.4×10 4/μL へ著しく減少した。諸検査にて特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と診断。ステロイドを含む薬物治療では血小板数は改善せず。部分的脾動脈塞栓を施行したところ,血小板数が回復した。この間8 か月の化学療法休止期間中に肝転移は増大,肺転移も出現し切除を断念。FOLFIRI 療法にてSD を3 か月間維持している。結語: 肝切除を前提とした化学療法を行う場合,常に切除のタイミングを考慮しつつ治療することが重要であり,有害事象に対しては迅速に対応する必要があると考えられた。 -
広範な側方リンパ節および大動脈周囲リンパ節を有する直腸癌の無再発長期生存の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide DescriptionRab 直腸癌で両側側方さらに大動脈周囲リンパ節に多数の転移を認めた症例に対して,両側側方ならびに大動脈周囲リンパ節郭清を施行し,その後の補助化学療法も併せて術後5 年無再発生存を得られた症例を経験したので報告する。患者は42歳,男性。CT で両側側方から大動脈周囲に最大14 mm のリンパ節腫大を連続して認めたRab 直腸癌(84×70 mm)に対して,低位前方切除術(上方向D3+両側側方郭清+No.216 郭清)を施行した。病理診断はType 2,84×70 mm,tub 2>por,A-SE,int,INF b,ly3,v1,pN3(35/68),M1(No.216: 24/37),StageIV(Cur B)であった。術後CPT-11+5-FU+l-LV(3 週投与3 週休薬)を3 コース,S-1+CPT-11(5 週1 コース)を3 コース,続いてS-1 120 mg/日を1 年間継続した。術前高値であったCEA 85.3 ng/ mL,CA19-9 57 U/mL も正常化したまま術後5 年無再発生存中である。大動脈周囲リンパ節転移に対する手術適応は明確ではないが,明らかな転移巣に対する拡大郭清(局所コントロール)とその後の化学療法で根治が得られる可能性がある。 -
化学放射線療法により局所コントロールが良好であった鼠径リンパ節転移を伴った下部直腸癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Descriptionわれわれは,両側鼠径リンパ節転移を伴った下部直腸癌に対して,化学放射線療法により良好な局所コントロールを得た症例を経験したので報告する。症例は59 歳,男性で肛門痛を主訴に当科紹介受診となった。大腸内視鏡検査にて下部直腸に半周性の2 型進行癌を認め,生検にて高〜中分化腺癌と診断された。CT 検査にて傍直腸,両側鼠径部および右外腸骨領域にリンパ節転移を認めた。肛門痛が高度であったため,人工肛門を造設後に強度変調放射線治療(総線量 50.4 Gy)を開始した。なお,併用化学療法はFOLFOX とした。化学放射線療法後に施行した検査では原発巣は完全に消失し,リンパ節転移巣は著明に縮小しているのが確認された。しかし照射終了後9 か月目のCT 検査にて多発する肺,肝転移が確認されたため,FOLFOX+bevacizumab による化学療法を開始した。2 年以上経過した現在,照射領域の原発巣およびリンパ節転移巣は,再増大する傾向もなく良好な局所コントロールを得ている。 -
進行直腸癌に続発し根治切除後に軽快した膜性腎症の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は71 歳,男性。全身浮腫と下部直腸に全周性1 型の直腸癌を認めた。Hb 値7.5 g/dL,血清アルブミン1.2 g/dL,尿中排出アルブミン1.8〜3.8 g/日で膜性腎症の病理所見を得た。循環動態は不安定で,術前に血液製剤,利尿剤,ドーパミンを投与し,腹会陰式直腸切断術を施行した。病理は低分化腺癌で1 型,90×85 mm,pAI(精巣),pN3,sH0,sP0,cM0,fStageIIIb であった。術後新鮮凍結血漿とアルブミン製剤を投与し,合併症なく浮腫も消失し尿中蛋白尿も術後40 日ごろに消失した。術後3 年8 か月他病死したが,ネフローゼ症候群の再燃を認めなかった。適切な周術期管理下での原発巣切除により,ネフローゼ症候群の改善を認めた直腸癌の症例を報告する。 -
仙骨高位レベルの局所再発直腸癌に対して術前化学放射線療法を行い治癒切除し得た1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description直腸癌局所再発に対する仙骨合併切除は,5 年生存率が20〜50%と報告されており,根治が期待できる手術である。一方,高位仙骨切除は,仙骨神経切断による高度歩行障害を合併し術後QOL を著しく損なうことがある。われわれは,局所再発直腸癌に対して術前化学放射線療法(CRT)を施行し,腫瘍を縮小させS1 神経を温存し歩行障害なく治癒切除し得た1 例を経験したので報告する。症例は54 歳,男性。直腸癌術後吻合部局所再発のため来院した。再発巣の腫瘍径は54×41 mm であり,仙骨前面に接し上縁はS1 に達していた。両側S1 神経を温存して治癒切除は困難と考え,まず術前CRT を施行した。CRT 後,腫瘍は著明に縮小し治癒切除が可能となり,S1 神経を温存し再発巣と仙骨を合併切除した。切除標本においても病理学的に治癒切除が確認できた。術後,歩行障害なく第36 病日に退院となった。現在,術後72 か月,無再発生存中である。 -
メシル酸イマチニブ投与後に切除した直腸GIST の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は54 歳,男性。下血を主訴に下部消化管内視鏡検査を施行した。下部直腸に粘膜下腫瘍を認め,生検にてgastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断された。腫瘍径が10 cm の小骨盤腔を占める大きな腫瘍であったため,メシル酸イマチニブ400 mg/day を8 週間投与し縮小効果を認めた後,腹会陰式直腸切断術を施行した。術後経過良好にて第16病日に退院となった。組織学的には,紡錘形を示す腫瘍細胞が錯綜配列を示しつつ増殖する像を認めた。免疫組織化学検査ではc-kit 陽性,CD34 陽性であった。核分裂像が13/50 HPF であり,再発高リスク群と考えられたため,術後メシル酸イマチニブ400 mg/day による術後補助療法を1 年間施行し,経過観察となった。術後3 年7 か月無再発生存中である。切除可能なGIST の標準治療は外科的切除であるが,メシル酸イマチニブを用いた術前補助療法が有用な症例が存在すると考えられた。 -
術前FOLFOX 療法が奏効しpCR が得られた局所進行直腸癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は72 歳,男性。血便を自覚し,近医受診。下部消化管内視鏡検査を施行したところ,肛門縁より2 cm の直腸前壁を中心にほぼ全周性の3 型腫瘍を認め,Rb 直腸癌と診断された。CT 検査にて前立腺浸潤が疑われたため,down staging 目的に術前mFOLFOX6 療法を6 コース施行した。化学療法後に腫瘍は著明に縮小し,下部内視鏡検査では瘢痕性の狭窄を認めるのみであった。mFOLFOX6 療法6 コース施行後に腹会陰式直腸切断術を施行した。術中所見は前立腺に線維性の癒着を認めたが,剥離可能であった。病理学的検査にて切除標本内に癌細胞は認められず,pathological complete response(pCR)と診断した。術後補助療法としてS-1 を施行したが,現在までのところ再発兆候は認めていない。 -
mFOLFOX6+Bevacizumab 併用療法が奏効した直腸S 状部癌・多発性肝転移の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Descriptionmodified FOLFOX6(mFOLFOX6)+bevacizumab 併用療法が奏効した直腸S 状部癌・多発性肝転移の1 例を経験した。症例は49 歳,男性。便秘,食欲低下を主訴に当院へ紹介受診。腹部超音波検査,CT 検査で直腸Rs に穿通性直腸癌を認め,肝S3 に1 か所(11 mm 大),肝S4 に2 か所(21 mm 大,14 mm 大)肝転移を認めた。初回手術は低位前方切除術+D3 郭清のみ施行した。術後第14 病日のCT で,肝S6 にも8 mm 大の転移を認めた。第16 病日よりmFOLFOX6+bevacizumab 療法を開始した。化学療法8 コース施行した時点で肝S6 の腫瘤影は消失し,他の転移巣も著明に縮小した。この時点でliverhanging maneuver 法を用いた肝左葉切除術を施行した。術後も化学療法を継続し,現在無再発生存中である。 -
直腸SM 癌で側方リンパ節再発を来した1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は54 歳,男性。健診で便潜血反応陽性を指摘され,当院消化器内科にて下部内視鏡検査を施行。AV 6 cm(DL 3 cm)に18 mm の0-Is 型SM 癌(well differentiated adenocarcinoma)を認めた。内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行,病理結果はpSM(1,300 μm),脈管侵襲陽性(ly+,v+)であり,追加腸切除目的で当科紹介となった。腹腔鏡下低位前方切除術+D2 郭清術を施行し,腫瘍の残存,リンパ節転移を認めず(0/7),fStageI。術後14 か月目に突然のCEA 上昇(4→26 ng/mL)を認めたため精査,右側方リンパ節(#283)に再発を認めた。遠隔転移を認めなかったために化学放射線療法(UFT/LV/CPT-11+RT)を先行して,両側側方リンパ節,傍大動脈リンパ節郭清術を施行。リンパ節転移陽性であり,術後mFOLFOX6 療法を開始するが急速に多発肺転移と多発骨転移の出現を認め,術後27 か月目(再発後13 か月目)に死亡となった。大腸SM 癌の根治術後であってもごくまれに再発し,急速に進行する症例があることを念頭に外来フォローすることが肝要である。 -
放射線化学療法が奏効しpCR が得られた直腸癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description患者は60 歳台,女性。下血を主訴に近医を受診,内視鏡検査にて直腸に腫瘍性病変を認め紹介となった。直腸診では肛門縁より5 cm 後壁に腫瘍を触知した。腫瘍マーカーはすべて正常範囲であった。注腸造影および内視鏡検査では,歯状線より3 cm 口側の下部直腸に5 cm 大の規約2 型病変を認め,生検の結果,中分化腺癌であった。骨盤腔CT,MRI 検査では下部直腸壁の肥厚と直腸傍リンパ節の腫大を認め,FDG-PET では同部位に集積を認めた。cT3,cN2,M0,StageIIIb の診断で術前放射線化学療法を開始した。放射線は2 Gy×25 回,計50 Gy 照射し,照射期間中はUFT 400 mg/Uzel 75 mg の内服を行った。治療後,腫瘍は2 cm 大の潰瘍を有するのみでFDG-PET では集積はなくcT1,cN0,M0,StageIと診断した。手術は超低位前方切除術(D2)を施行した。病理組織学的所見では,腺管構造を示す癌細胞はすべて消失し線維性瘢痕を認めるのみでGrade 3,pathologically complete response(pCR)が得られた。 -
術前化学放射線療法が奏効した局所進行下部直腸癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は80 歳,女性。体重減少を主訴に前医を受診し,精査にて局所進行下部直腸癌と診断され当科に紹介された。腫瘍は膣後壁と尾骨への浸潤が疑われ骨盤腔内を埋め尽くすものがあり,切除不能と判断しS-1 併用化学放射線療法(CRT)を施行した(S-1 80 mg/m2,RT 1.8 Gy × 25 回,計45 Gy)。CRT により腫瘍縮小効果が得られたため,手術を施行した。超低位前方切除術(D3 郭清),回腸人工肛門造設術を施行し,肛門温存が可能であった。組織学的治療効果はGrade 2 であった。術前CRT による副作用はgrade 1 の白血球減少のみであった。局所進行直腸癌に対するCRT は,欧米では標準治療であり,局所制御効果が期待できる。本邦でも局所進行直腸癌症例では治癒切除率を向上させるとされており,今後大規模な臨床試験での検証が求められる。 -
低用量S-1 療法が長期間奏効している直腸癌局所再発の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は80 歳,男性。既往歴は2 型糖尿病,脳梗塞。2003 年3 月直腸癌に対し低位前方切除術を施行した(StageII)。術後UFT 内服を行っていたが,2004 年12 月に大腸内視鏡・CT 検査で吻合部再発を認めた。画像所見で腫瘍は仙骨への浸潤を認めた。根治治療には仙骨合併切除を伴う腹会陰式直腸切断術が必要であると考えられたが,患者・家族とのinformed consent の結果,手術侵襲および年齢・耐術能を考慮して手術は行わない方針となり,S-1 の内服を開始した。腫瘍は徐々に縮小傾向を認め,再発後5 年以上が経過しているが遠隔転移を認めず,良好なQOL を維持できている。結腸・直腸癌の局所再発に対する根治治療が外科的切除であることは周知の事実であるが,年齢や合併症のため困難であることも少なくない。本症例は,局所治療が困難な症例における全身化学療法の有用性が示唆された1 例であるため報告する。 -
直腸癌術後に早期多発肝転移を来し手術と肝動注療法を施行し長期生存が得られている1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description大腸癌術後の早期多発肝転移で肝切除術後に動注療法を施行し,5 年以上の無再発長期生存が得られている症例を経験したので報告する。症例は46 歳,男性。2004 年1 月に直腸癌で低位前方切除術を施行した[Rs,ss,n2,P0,H0,M(−),D3,StageIIIb,mod,ly1,v2]。術後化学療法(5-FU/ LV)を施行したが,6 月のCT,MRI で肝右葉(S5,6,8)に8 か所の多発転移巣を認めたため肝右葉切除術を施行した。補助療法として肝動注療法(weekly high-dose 5-FU: WHF)を重篤な副作用の出現なく17 コース施行した。現在,肝切除術後5 年9 か月経過となるが無再発生存中である。現在では,大腸癌肝転移術後に対する化学療法は全身投与が主流となっているが,術後補助療法として局所コントロール目的の肝動注療法は治療選択肢の一つとして重要である。 -
S 状結腸癌術後孤立性腹膜外転移を切除し得た1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description孤立性腹膜外転移を切除し,良好な結果が得られているS 状結腸癌のまれな1 例を報告する。症例は45 歳,女性。40 歳時,S 状結腸癌によるイレウスに対し,S 状結腸切除術が施行された。S 状結腸間膜に5 mm 大の腹膜播種を伴っており,組織学的病期はStageIV であった。術後,5-FU 系抗癌剤が2 年間投与された。術後3 年経過後,CEA が漸増し,両側卵巣の腫大を認めたため,術後3 年8 か月後に両側卵巣摘出術が施行された。CEA は一過性に低下したが,その後再び漸増した。UFT+LV の投与後にもCEA は増加を続けたため,mFOLFOX6 に変更したところ(9 コース施行),CEA は基準値内まで低下した。mFOLFOX6 中止4 か月後にCEA の上昇と,PET-CT で骨盤内に石灰化を伴い,FDG の強い集積を伴う径3 cm大のmass lesion を認めた。ダグラス窩直下の腹膜外の腫瘤を摘出したところ,CEA は基準値内に低下した。摘出標本の組織像は結腸癌に酷似した中分化型腺癌であった。初回手術から6 年5 か月の現在,再発の徴候は認めていない。 -
化学放射線療法を施行した肛門扁平上皮癌4 例の治療経験
37巻12号(2010);View Description Hide Description肛門扁平上皮癌に対して,化学放射線療法(CRT)を施行した4 例の治療成績を検討した。放射線療法(RT)は小骨盤腔と両側鼠径部に40 Gy/30 回照射後,肛門部に20 Gy/10 回照射した。化学療法はRT 開始日から5-FU 750 mg/ m2/dayをdays 1〜5 持続静注,MMC 10 mg/m2 をday 1 に静注し,4 週間ごとに3〜4 コース施行した。腫瘍サイズはT1 が1 例,T2 が3 例で,術前検査にて1 例に左鎖骨上リンパ節,大動脈周囲リンパ節に転移を認めた(N4)が,3 例ではリンパ節に転移を認めなかった(N0)。全例で血行性転移は認めなかった。CRT 中の副作用はgrade 2 の食欲不振2 例,grade 2 の好中球減少3 例,grade 2 の血小板減少を2 例に認めたが,RT の中断や化学療法の開始を1 週間以上遅らせることなく全例でCRTを完遂できた。CRT の効果は肛門病変に関して全例がcomplete response(CR)で,現在まで再発なく経過観察中である。肛門扁平上皮癌に対するCRT は安全に施行が可能で,根治が期待される治療法と考えられた。 -
痔瘻に合併した肛門管癌に対して骨盤内臓器全摘術ならびに会陰部VY 皮弁再建術を施行した1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は53 歳,男性。主訴は肛門周囲膿瘍。近医で痔瘻と診断され,定期検査中に大腸内視鏡検査で下部直腸に腫瘍性病変を認め,生検で高分化型腺癌を指摘された。痔瘻に合併した直腸癌または肛門癌の診断で当科に紹介受診された。腹部骨盤CT ならびにMRI 検査で肛門から直腸周囲に背側を中心に殿部皮下に及ぶ液体貯留を認め,腹側では前立腺から精嚢,直腸右側から膀胱に達する瘻孔も認めた。痔瘻に合併した肛門癌と診断し骨盤内臓器全摘術を施行した。会陰欠損部の単純閉鎖は困難で,両側の大殿筋皮弁を作製し,VY 皮弁で再建を行った。現在,術後1 年4 か月経過しているが,再発なく生存中である。局所拡大手術に伴う欠損部位の再建方法として,VY 皮弁再建は有用である。 -
Perianal Paget's Disease 5 例の手術成績と免疫組織学的検討
37巻12号(2010);View Description Hide DescriptionPerianal Paget's disease は,皮膚原発のPaget 病と,直腸・肛門管癌が肛門周囲の皮膚に進展したPagetoid spread に分類され,アポクリン上皮のマーカーであるGCDFP15 と直腸癌で高発現するCK 20 の染色性により鑑別できるとの報告がある。今回,1997〜2006 年まで当科で切除手術を施行したperianal Paget's disease の5 例についてretrospective に手術成績と免疫染色の意義を検討した。臨床所見として全症例で肛囲皮膚の浸潤性紅斑を認め,2 例で直腸・肛門管内に腫瘤が認められた。腫瘤が存在する2 例を直腸・肛門管癌由来のPagetoid spread,腫瘤が存在しなかった3 例を皮膚付属腺原発Paget 病と臨床的に診断し切除手術を施行した。免疫染色の結果,Pagetoid spread の2 例ではいずれもGCDFP15(−),CK20(+)であった。腫瘤が存在しない3 例のうち1 例のみがGCDFP15(+),CK20(−)であり,皮膚付属腺原発Paget 病であった。残りの2 例は直腸・肛門管癌由来のPagetoid spread であったと考えられた。Pagetoid spread と皮膚付属腺原発Paget 病では治療戦略が異なることから,皮膚付属腺原発Paget 病と診断されている症例のなかにも直腸・肛門管癌由来のPagetoid spread があり得ることを念頭におき,GCDFP15 とCK20 の免疫染色を行うことは臨床上不可欠であると考えられる。 -
HIV 陽性の肛門管扁平上皮癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は62 歳,男性。同性愛者。肛門の有痛性結節を内痔核と診断されたが,HIV 陽性と判明し,当院へ紹介受診した。精査にて肛門扁平上皮癌,cA1N2(両側鼠径リンパ節)M0,stageIIIB と診断した。HIV はウイルス量が上昇していたためHAART を先行した。ウイルス量が感度以下となり,放射線化学療法を開始した。5-FU+CDDP および鼠径部を含めた全骨盤照射を行い,治療効果はCR を得た。しかし,診断から2 年で縦隔および肺門リンパ節に再発を認めた。CDDP/5-FU を施行したが効果判定はPD でCDDP をMMC へ変更して加療を継続したが,治療効果を認めず診断から3 年後に原癌死した。HIV 陽性の肛門管扁平上皮癌の1 例を経験したので報告する。 -
サルベージ手術を施行した放射線化学療法後の再発肛門扁平上皮癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は76 歳,女性。肛門部の違和感と排便時の疼痛を自覚し,近医を受診した。生検で肛門扁平上皮癌と診断され,放射線化学療法(UFT 500 mg/5 days /week,59.4 Gy)を行い完全寛解を得た。サーベイランス中の術後8 か月目に肛門部の痛みとびらんが出現した。再発を疑い生検を施行したところ,局所再発と診断した。遠隔転移は認めなかった。肛門扁平上皮癌の放射線化学療法後の再発に対してサルベージ手術として,直腸切断術を施行した。術後10 か月間経過し,再発を認めず。肛門機能温存が可能な放射線化学療法は,肛門扁平上皮癌に対して標準治療になった。しかし,約30%の症例が放射線化学療法無効,局所再発などによってサルベージ手術を要している。今後は肛門扁平上皮癌に対して放射線化学療法が行われ,必要に応じてサルベージ手術を行う症例が増加すると考えられる。 -
肝細胞癌に対するLaparoscopic Radiofrequency Ablation
37巻12号(2010);View Description Hide Description今回われわれは肝細胞癌(HCC)に対する腹腔鏡下でのラジオ波焼灼術(L-RFA)症例を検討し,同治療法の選択・適応を考察した。2008 年1 月〜2010 年5 月までにL-RFA を施行した18 症例,27 結節について検討を行った。手術手技は全身麻酔下に臍下部よりカメラポート(12 mm)を挿入し,目標の腫瘍結節と臍下ポート部を軸に左右対称に5 mm ポートを両側肋弓下に1 本ずつ挿入して術野を確保しCool-tip 針(25 cm)を用いRFA を施行した。手術時間203 分(±85.5),出血量21.0 g(±68.4),術後合併症3 例(ともに胸水貯留),術後平均在院日数10.8 日,術後遺残全例なし,術後生存期間中央値562 日(±197 日)であった。予後は1 例のみ術後516 日目に肝不全により死亡。その他,全例生存であった。L-RFA は,肉眼および超音波検査で同定可能な結節であれば,主要脈管との位置関係を考慮することにより,経皮アプローチでは穿刺困難な部位に対してもablation 可能であり,RFA の適応を広げ得ると考えられる。 -
2 回の肝切除と3 回の肋骨転移切除を施行した肝細胞癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は40 歳台,女性。2005 年6 月S6 の肝外突出型肝細胞癌に対して,肝S6 部分切除を施行した(pT2N0M0,StageII)。2007 年9 月腹部造影CT で,肝S5 に径1.5 cm の肝内再発を認め肝S5 部分切除を施行した。2008 年5 月右胸部痛が出現し,AFP 347 ng/mL,PIVKA-II 61 mAU/mL と腫瘍マーカーの上昇を認め精査したところ,胸部CT,骨シンチグラフィ上,右第9 肋骨に3 cm 径の骨転移が同定された。その他に再発所見は認めず,疼痛コントロールの目的で2008 年7 月右第9肋骨部分切除を施行した。その後,右第9 肋骨の残部に再発,再々発を認め,2009 年7 月に2 回目,2010 年5 月に3 回目の右第9 肋骨部分切除を施行した。初回肝切除から5 年経過現在,外来通院中である。本症例のように肝内病巣や他の転移病巣が制御されている症例で,切除が容易な単発の骨転移であれば疼痛の制御という意味での局所切除は有効と考えられる。 -
破裂を契機に発見された非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を背景とした肝細胞癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は69 歳,女性。突然の右下腹部痛を主訴に救急外来を受診し,CT にて肝腫瘍破裂と診断。緊急IVR が実施不可能なため,緊急開腹術実施。大量の腹腔内出血によりショック状態であったことから可及的に右肝動脈結紮,破裂部縫合止血のみ施行。肝炎ウイルスマーカー陰性,既往歴に糖尿病,高血圧,脂質代謝異常があり,非飲酒者ということから生検結果を含めて非アルコール性脂肪肝炎(NASH)による肝硬変と診断。全身状態の回復を待って肝前区域切除術施行。術後約1 年後,肝S3 に再発しこれを再切除。以後現在まで約2 年半経過するが無再発生存中である。NASH を背景とした発癌には様々な機序が考えられており,未解明なところも多い。若干の文献的考察を加えて報告する。 -
骨転移を有する高度進行肝細胞癌に対し集学的治療により長期生存の得られている1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は54 歳,男性。1987 年HBs 抗原陽性を指摘され,2007 年1 月CT にて肝細胞癌(HCC)を指摘。初診時,下大静脈内腫瘍栓(Vv3)を伴う主腫瘍と多発する肝内転移を認め,単純X 線,骨シンチグラフィにて右恥骨の骨転移を認めた。高度進行HCC,T4(Vv3)N0M1(骨),StageIVB の診断の下,集学的治療を開始した。肝内病変に対しては,3 月,8 月に肝動脈化学塞栓療法(TACE)を施行。2008 年12 月にはS8 に新規病変を認め,TACE を施行した。骨転移に対しては,2007 年3 月よりRT 30 Gy の照射を行い,良好な化骨が得られている。全身化学療法として2008 年1 月よりS-1+IFN-α 療法を3 か月間施行し,診断より3 年を経過した現在に至るまで新規遠隔転移病巣の出現を認めていない。骨転移を伴う高度進行HCC であっても単発のものであれば,集学的治療により長期生存が得られる症例が存在すると考えられた。 -
局所治療として減量再肝切除を施行した肝細胞癌症例
37巻12号(2010);View Description Hide Description肝細胞癌根治的切除の残肝多発再発に対する治療としてはTAE が選択されることが多いが,繰り返し施行しているうちに十分な効果が得られない無効病巣となり,治療に難渋することも少なくない。今回,われわれは初回肝切除後の残肝多発再発に対して繰り返しTAE を行い,TAE 無効病巣が出現した4 例に対して減量再肝切除を施行した。全例肝予備能はChild A であり,画像検査で門脈内腫瘍栓は認めなかった。1 例で術後胆汁漏を認め入院期間の延長を来したが,残りの3 例では術後2 週間以内に退院可能であった。現時点での1 年生存率は100%であり,短期成績は良好であった。以上のことから,肝予備能が良好で門脈内腫瘍栓を認めない症例では,減量再肝切除はTAE 無効病巣に対する局所治療の選択肢となり得ると考えられる。 -
進行肝細胞癌に対するソラフェニブの治療成績
37巻12号(2010);View Description Hide Description肝外病変を伴う進行肝細胞癌に対するソラフェニブの治療成績を検討した。対象は2009 年6〜10 月までに当科でソラフェニブを投与した進行肝細胞癌8 例。有害事象は7 例(87.5%)に認め,grade 3 以上は手足症候群2 例,疲労1 例であった。その他にgrade 2 の高血圧3 例,grade 1 の下痢2 例,食欲不振4 例を認めた。減量投与移行は3 例,休薬は2 例に行ったが全症例継続投与可能であった。治療効果はCR/PR 0 例,SD 2 例,PD 6 例,予後はソラフェニブ投与開始からは101 日であった。8 例中6 例が原病死しており,現在2 例が継続投与中である。現時点での進行肝細胞癌に対するソラフェニブの治療成績は満足できるものではなかった。高率に有害事象を認めるが,減量・休薬による投与法の工夫によって継続投与は可能であった。 -
門脈腫瘍栓を伴う進行肝細胞癌に対するSorafenib+Cisplatin 分割肝動注併用療法のPilot Study
37巻12号(2010);View Description Hide Description切除不能進行肝細胞癌(HCC)に対するsorafenib+cisplatin 分割肝動注併用療法の効果につき評価した。方法: 切除不能進行HCC で,かつVp3 以上の門脈腫瘍栓を伴う5 症例(年齢71.8±8.2 歳,男女比4:1)を対象とし,sorafenib 内服(400 mg/body,day 1〜28)+cisplatin 分割肝動注(20 mg /m2,day 1,8,15)を1 コース行い,安全性と有効性を評価した。結果: 有害事象はgrade 3 が2 例(total bilirubin: T-Bil 上昇・AST 上昇1 例,T-Bil 上昇と肝性脳症が1 例),grade 2 は4 例(高血圧・好中球減少1 例,高血圧・血小板減少1 例,高血圧・アミラーゼ上昇1 例,腹痛1 例)認められた。grade 3 の有害事象は休薬により改善し,全例1 コース完遂できた。投与後の評価はPR 1 例,SD 3 例,PD 1 例であった。考察: 切除不能進行HCC に対するsorafenib+cisplatin 分割肝動注併用療法は安全に施行可能で有効性の期待できる治療法と考えられた。 -
巨大脾腫を伴う肝硬変合併肝細胞癌に対し脾摘を併施し治療した症例の検討
37巻12号(2010);View Description Hide Description肝硬変の進行による血小板(Plt)減少や難治性胸腹水などを合併する肝細胞癌は治療に難渋する。そこでわれわれは,巨大脾腫を伴う肝硬変合併肝細胞癌症例に対し脾摘を併施し,肝細胞癌治療を施行した7 症例において脾摘の有用性と肝細胞癌に対する治療成績を検討した。術前Plt 数は平均4.6×10 4/μL,CT での最大脾臓径は平均143.0 mm であった。平均Plt 数は術後14 日目と28 日目で23.1×10 4/μL(p=0.005)と16.1×10 4/μL(p=0.01)であり,術前と比較し有意に上昇した。白血球やアルブミンも同様に術前と比較し有意に改善した。脾摘後の肝細胞癌に対する治療は1 例当たり平均2.4 回,治療ごとではTACE 13 回,RFA 4 回であった。現在5 例生存中で,平均生存期間は17.3 か月,最長38 か月であった。脾摘により再発肝細胞癌に対し繰り返し治療を行うことができ,予後改善に寄与するため,巨大脾腫を伴う肝硬変合併肝細胞癌症例において肝細胞癌治療と同時に脾摘を行うことが有用であると考えられた。 -
肝細胞癌多発肺転移と腹膜転移再発に気管支動注療法とPEIT,外科的切除が奏効した1 症例
37巻12号(2010);View Description Hide Description肝細胞癌(HCC)多発肺転移,腹膜転移再発に気管支動注,PEIT,切除の集学的局所療法が奏効し,良好なQOL で長期生存が得られた1 症例を報告する。症例は80 歳,男性。肝右葉破裂HCC に,コイル塞栓後肝右葉切除。術後4 か月右腹部圧痛からUS で上行結腸部に腹膜転移,CT で多発肺転移を認めた。肺転移にmitomycin C 気管支動注(one shot)を施行し著効,縮小しstable となった。腹膜転移はSMANCS 動注でいったん縮小後,再増大のため17 か月よりPEIT を施行。数回のPEIT 後腹痛が出現,PEIT 部に膿瘍を認め,28 か月回盲部切除・腹壁合併切除で腹膜転移切除。以後腹膜再発なし。右副腎転移と増大する左肺転移が1 個出現し,39 か月開腹右副腎切除,経横隔膜的左肺下葉部分切除を施行。45 か月左下肺に転移巣増大。47,49 か月気管支動注も無効にて,54 か月VATS 左肺下葉部分切除。58 か月肺静脈左房腫瘍栓を伴う肺転移が出現。85 歳の高齢で手術の希望なく経過観察。60 か月腫瘍塞栓と思われる脳梗塞を発症し,術後65 か月で死亡された。 -
肝動脈化学塞栓療法により長期生存したVp4 門脈内腫瘍栓を伴う肝細胞癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は50 歳,男性。発熱を主訴に受診。肝機能障害を認め精査したところ,腹部造影CT にて肝前区域を中心とした境界不明瞭なびまん性の肝細胞癌を認め,両側の門脈枝および門脈本幹に及ぶ門脈内腫瘍栓(Vp4)を伴っていた。肝予備能と予測残肝容積から切除不能と判断し,肝動脈化学(塞栓)療法(Lip-TAI,TACE)を繰り返し施行し,腫瘍の縮小およびAFP,PIVKA-II の著明な低下を認めた。初回治療後3 年目にimpending rupture を認めたが,TACE 施行により止血を得た。以後もTACE を継続し治療した。初回治療後5 年6 か月にて胆管内腫瘍栓に伴う胆道出血により肝不全が進行し死亡した。本症例はVp4 門脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌であったが,残肝機能に留意した肝動脈カテーテル療法により長期生存し得る症例も存在することが示唆された。 -
IFN-α/5-FU およびCDDP を用いた肝動注化学療法が著効し長期生存が得られたVp3,Vv3 肝細胞癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は60 歳,男性。右側腹部から背部の痛みを主訴に受診,腹部造影CT にて肝S5/6 に門脈右枝および下大静脈に腫瘍栓を伴う8 cm 大の主腫瘍と肝両葉の多発肝内転移を認めた。腫瘍マーカーはAFP 2,480 ng/mL,PIVKA-II 31,900 mAU/mL まで増加していた。T4(Vp3,Vv3,IM3)N0M0,StageIVA の診断の下,interferon-α(IFN-α)併用5-FU 動注化学療法を計4 コース施行した。主腫瘍の著明な縮小,多発肝内転移巣の減少,腫瘍マーカーの大幅な低下を認めたものの,肝S3 に新規病変を認めたためPD と判定し,cisplatin(CDDP)動注化学療法に変更して計8 回施行した。肝内病変は消失し画像上CR が得られ,腫瘍マーカーは正常化した。初回治療開始より58 か月生存中である。脈管内腫瘍栓を伴う高度進行肝細胞癌に対して治療が奏効し,長期生存が得られている症例を経験した。 -
肝細胞癌切除術後の腹膜転移再発に対して開腹切除を施行し得た1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description肝切除後の肝外転移再発に対してIFN-α/S-1 併用化学療法を施行するも,増大した腹膜転移再発巣を切除した肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC)の1 例を経験したので報告する。症例は61 歳,男性。肝S5/8 に1.5 cm,肝S6 に4 cmのHCC を認め,2005 年12 月に肝切除を施行した。2007 年7 月に多発肺転移および腹膜転移を認めたためにIFN-α/S-1 併用化学療法を4 コース施行したが,11 月の腹部造影CT 検査では腹膜転移は10 cm に増大し,イレウス症状が出現し,12 月腹膜転移巣に対して切除術を施行した。巨大腫瘍の切除標本は11×8×7 cm 大の285 g の多結節融合型の腫瘍で,病理組織診断はeg,fc(+),fc-inf(+),sf(+)の低分化型HCC であった。術後経過良好にて術後12 日目に退院した。その後,肺転移が進行し,最終的に呼吸不全にて2009 年1 月永眠されたが,腹部症状は認めなかった。HCC の肝外転移のなかで腹膜播種巣によりイレウスに至る危険性がある場合は,切除術により全身状態の悪化を防ぐことを目的として開腹手術の適応となる症例もあると考える。 -
肝細胞癌のリンパ節再発に対し動脈化学塞栓術を施行した1 例
37巻12号(2010);View Description Hide DescriptionC 型肝炎を伴う67 歳,男性の肝細胞癌肝切除術後のリンパ節再発に対し,動脈化学塞栓術(TACE)を施行した症例を経験した。死亡時までリンパ節再発巣は明らかな増大を示さず,肝細胞癌のリンパ節再発に対する一つの治療法としてTACEの可能性を示した。 -
切除不能・再発進行肝細胞癌に対するCDDP 肝動注化学療法の検討
37巻12号(2010);View Description Hide Description切除不能・再発進行肝細胞癌に対しては肝動脈化学塞栓療法(TACE)が行われているが,TACE 無効症例や適応外症例に対する有効な治療はいまだ確立されていない。これらの症例に対しわれわれは動注用CDDP を用いた肝動注化学療法(TAI)を施行してきたが,本稿ではその治療成績を検討するとともに,同治療が著効した門脈内腫瘍栓を伴う高度進行肝細胞癌の1 例を提示する。対象は2004 年11 月〜2010 年3 月までにCDDP によるTAI を行った切除不能・再発進行肝細胞癌16 例で,7 例に門脈腫瘍栓,1 例に胆管内腫瘍栓を伴っていた。動注用CDDP(65 mg/m2)は固有肝動脈から30 分かけて動注した。TAI 施行回数は1〜8 回(平均1.8 回),治療効果はTE4: 1 例,TE3: 2 例,TE2: 1 例,TE1: 11 例,評価不能: 1 例で,奏効率は18.8%であった。有害事象は,血液・骨髄毒性はなく,grade 3 の悪心,食欲不振を各1 例ずつ(6.3%)認めた。TAI 後の累積生存率は,1 年生存率31.2%,50%生存期間は314 日であった。本療法は切除不能・再発進行肝細胞癌に対するTACE 後の二次治療として,予後改善への寄与が期待される。 -
門脈腫瘍栓を伴う巨大肝細胞癌に対してDSM-TACE が奏効した1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は56 歳,男性。右季肋部痛にて当院を紹介受診した。2008 年2 月25 日のCT で,肝後区域を主体にした長径約13 cm の不整形腫瘤があり,門脈腫瘍栓を伴っていた。肝生検で肝細胞癌と診断され,精査の結果多発の肝内転移を認め,手術では治癒切除困難と考えられた。腫瘍マーカーはAFP 5×10 4 ng/mL 以上,PIVKA-II 72,200 mAU/mL と異常高値を示した。4 月10 日にDSM-TACE を施行した。副作用は軽度。腫瘍マーカーが著明に減少するも7 月に再上昇したため,9 月4 日再度施行した。CT で腫瘍は著明に縮小,腫瘍マーカーも正常化し,2010 年6 月現在,2 年以上経過した今もそれを維持している。門脈腫瘍栓を伴うstageIV 肝細胞癌は,治療困難な症例が多く,予後不良である。今回われわれはDSM-TACEを施行し,良好な経過をたどっている進行肝細胞癌の1 例を経験した。DSM-TACE は今後の局所治療の選択肢の一つとして期待できる。 -
当科における切除不能進行胆嚢癌に対する化学療法の治療成績
37巻12号(2010);View Description Hide Description当科の切除不能胆嚢癌に対する化学療法の治療成績を検討したので報告する。方法: 2005 年以降の切除不能胆嚢癌16 例を対象とし,後ろ向きに検討した。結果: 切除不能の理由は腹膜播種6 例,リンパ節転移5 例,肝転移3 例,局所進行2 例であった。一次治療は16 例中15 例にgemcitabine(GEM)が使用された。15 例全例が二次治療を受け,10 例にS-1 が使用された。一次治療GEM の奏効率は14.3%,病勢コントロール率は78.6%,無増悪期間の中央値は6 か月であった。二次治療のS-1 の奏効率は20%,病勢コントロール率は30%,無増悪期間の中央値は1.8 か月であった。全体の生存期間中央値は14.9 か月であった。考察: 切除不能進行胆道癌に対する化学療法の諸家の報告ではGEM 単剤が生存期間中央値7.4〜17.1 か月,多剤併用で5〜16 か月とされていることから,当科の治療成績は遜色ないものと思われた。 -
TAE が奏効した肝転移陽性進行胆嚢癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は75 歳,女性。食欲低下,体重減少,心窩部痛を主訴に当院を受診し,精査にて胆嚢扁平上皮癌StageIVb と診断された。腹部CT 検査では,肝・十二指腸に浸潤する径約6 cm 大の胆嚢癌を認め,多発肝転移を有していた。同部からの腫瘍性出血が進行したため,胃空腸吻合術を施行したが,効果は乏しく術後も貧血が進行したためTAE を施行した。固有肝動脈からCDDP 70 mg とLipiodol 7 mL のemulsion を動注し,さらに右肝動脈よりゲルフォームにて塞栓を行った。TAE 2 回施行後の効果判定CT では,主腫瘍・多発肝転移ともに著明な縮小効果を認めた。その後,肺転移が出現したためgemcitabine を投与開始したが,全身状態の悪化を認め初回入院より約8 か月後死亡した。本症例のように比較的vascularityのある胆嚢癌についてはTAE による局所治療が有効な場合もあり,治療の選択肢として考慮されるべきと考えられた。 -
切除不能進行胆嚢癌に対してGemcitabine+CDDP 併用療法が著効した1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は54 歳,男性。心窩部痛,褐色尿を主訴に当院を受診。閉塞性黄疸の診断で緊急入院となった。既往歴は左腎盂癌にて左腎・尿管切除を施行していた。胆嚢癌,肝浸潤,肝十二指腸間膜浸潤,リンパ節転移と診断した。黄疸の改善を待って手術を施行したが,切除不能で試験開腹術のみとした。第16 病日より化学療法(gemcitabine 1,000 mg/m2+CDDP 25 mg/m2)を開始した。2009 年米国臨床腫瘍学会(ASCO)にて進行または転移性胆道癌患者に対するgemcitabine+CDDP 併用療法がgemcitabine 単剤と比較した第III 相試験(the UK ABC-02 trial)において全生存期間を有意に延長し,死亡リスクを低下させたことが示されたため参考とした。入院にて施行の1 サイクル終了時,化学療法による有害事象は認めず,以降外来にて化学療法を継続した。8 サイクル終了後まで有害事象は認めなかった。腫瘍マーカーは著明に低下,腫瘍は縮小し,胆管狭窄も有意に改善した。切除不能胆嚢癌に対する本治療法は慎重な経過観察を行えば外来での施行も可能であり,有効かつ安全な治療法と考えられ標準治療となり得ることが示唆された。 -
胆石イレウス術後に胆嚢十二指腸瘻を介して十二指腸浸潤を来した胆嚢癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は75 歳,女性。8 年前に他院にて腸石イレウスの診断で回腸部分切除がなされている。その際には胆嚢摘出はなされていない。心窩部痛を主訴にわれわれの施設を受診。上部消化管内視鏡検査にて十二指腸球部前壁に数mm 大のカルチノイドおよび球部頭側に異型上皮を指摘され,幽門側胃切除および胆嚢摘出術を施行した。病理組織検査では胆嚢癌が胆嚢十二指腸瘻内を上皮内進展している像を認め,その口側に十二指腸カルチノイドを認めた。術後経過良好で退院となったが,病理組織検査の結果判明後,遺残胆嚢管切除,1 群リンパ節郭清を追加し,現在無再発で外来通院中である。胆道消化管瘻は放置すれば胆道が持続的に膵液に被曝することとなり,癌化の可能性が高いといわれている。本症例でも初回手術の際に胆嚢摘出がなされていれば,今回の胆嚢癌は防げた可能性が高い。胆嚢消化管瘻の存在が疑われた場合には胆嚢摘出を確実に行うことが重要である。 -
肝動脈・門脈合併切除再建により根治切除し得た肝門部胆管癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description肝門部胆管癌の根治切除における肝動脈・門脈合併切除再建の適応や意義については,いまだ意見の分かれるところである。肝動脈・門脈合併切除再建により根治し得た肝門部胆管癌の1 例を報告する。症例は57 歳,女性。卵巣嚢腫の経過観察中に肝機能障害を認め,肝門部胆管癌の診断にて当科を受診した。精査にて肝動脈・門脈合併切除再建を要するものの,切除可能と診断し,肝左葉・尾状葉切除,肝動脈・門脈合併切除再建,リンパ節郭清,右肝管空腸吻合を施行した。門脈は摘出肝の肝静脈を用いて再建した。術後経過良好で第20 病日に退院となり,術後8 か月経過した現在無再発生存中である。 -
肝腸間膜動脈幹と腸回転異常を合併した中下部胆管癌に対し膵頭十二指腸切除を施行した1 症例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は61 歳,男性。中下部胆管癌の診断で膵頭十二指腸切除術を施行した。術前のdynamic CT 検査にて動脈の走行を確認したところ,肝動脈は上腸間膜動脈からのreplacement で,分岐した後に膵前面を通り肝に流入しており,この血管から膵内へ幾本もの分枝が認められた。手術では肝への血流を確保するため,膵表面をはうように走行する肝動脈を露出し,膵内に分岐する枝をすべて処理し肝動脈を温存した。また術前には診断し得なかったが,十二指腸はTreitz 靱帯を形成せず下行し,結腸は腹腔内左側に存在する腸回転異常も合併していた。肝動脈走行の変異は様々報告されているが,悪性腫瘍に対する膵頭十二指腸切除においてその変位はリンパ節郭清,肝への血流を考慮する上で重要になってくる。本症例では,リンパ節郭清を損なうことなく肝動脈を温存し得た。 -
肝内胆管癌術後再発による門脈狭窄に対し経皮経肝門脈ステント挿入術を施行した1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は69 歳,女性。肝内胆管癌に対して門脈合併切除再建術,胆管切除を伴う肝拡大左葉切除術を施行した。再発なく経過していたが,術後7 年目にタール便を主訴に当科外来を受診。著明な貧血を認めたため,上部および下部消化管内視鏡を施行したが,明らかな出血源は認めなかった。CT にて肝外門脈の閉塞と側副血行路の発達,PET にて閉塞部に一致した集積亢進を認め,肝内胆管癌局所再発,門脈狭窄に伴う門脈圧亢進による小腸出血と診断した。門脈圧軽減を目的に経皮経肝門脈ステント挿入術を行った。門脈閉塞部にuncovered expandable metallic stent を留置した。ステント留置により門脈本幹の血流は著明に改善し,側副血行路は消失した。その後は消化管出血を認めていない。門脈狭窄に対するステント留置術は侵襲が比較的軽微であり,門脈圧亢進による消化管出血に対して積極的に考慮されるべき方法であると考えられた。 -
肝内胆管癌に対し肝切除およびS-1 併用CDDP 動注化学療法により長期生存が得られた1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description肝内胆管癌(ICC)に対する治療法は,外科的切除が第一選択となる。しかしながら,切除後の残肝および遠隔再発の頻度が高く,再発に対する有効な治療法が確立されていないのが現状で,予後はいまだ不良である。今回われわれはICC に対し肝切除を施行し,残肝再発を来すもS-1 併用CDDP 動注化学療法により術後5 年を超える長期生存が得られた症例を経験したので報告する。症例は71 歳,女性。B 型肝炎のフォロー中に近医の腹部CT にて肝S1/8 に径約30 mm 大の腫瘍を指摘され,当院紹介となった。肝尾状葉全切除,肝S8 部分切除を施行し,病理にて中分化型肝内胆管癌,T2N0M0,StageII と確定診断された。術後約3 年4 か月目の腹部CT にて肝S4 に約35 mm 大の再発を確認したため,S-1 80 mg/日(4 投2 休)併用CDDP 動注化学療法を施行した。5 コースを施行し,手術後約5 年を経過した現時点において病変の増悪を認めておらず生存中である。 -
化学療法にて長期生存中の切除不能肝内胆管癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は83 歳,男性。上行結腸癌術後にて外来通院中,血液検査にてCA19-9 の上昇を認めた。腹部CT 検査にて精査を施行したところ肝左葉に肝内胆管癌を認めた。2007 年5 月21 日に手術を施行した。術中所見では肝十二指腸間膜内リンパ節に2 cm 大のリンパ節腫脹を認め,術中病理検査に提出したところ中分化型腺癌であり,StageIVb(TxN1M0)と診断されたため手術を終了した。以降,gemcitabine(GEM 1,000 mg/body)による化学療法を開始し,約20 か月間投与した。その期間の評価はPR〜SD であった。その後,腫瘍の増大傾向を認めたためS-1 の内服に変更したが,さらに腫瘍の増大,腫瘍マーカーの上昇を認めたため再度GEM に変更した。その結果,腫瘍マーカーの減少を認め,現在もADL を維持したまま外来通院中である。 -
術中迅速診断にて肺転移の診断がついた肺腺癌の2 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description術中迅速診断にて同一肺葉内肺転移の診断がつき,術式決定に有用であった肺腺癌の2 例を経験したので報告する。症例1: 61 歳,女性。2007 年9 月左肺S4 の2 cm 大腺癌およびS3 に3 mm 大結節を認め手術施行。手術は最初にS3 肺腫瘍を切除し,術中迅速診断にて腺癌の結果であり,画像診断と併せ同一肺葉内肺転移と診断した。最終的に左肺S4 区域切除術,S6部分切除,S3 部分切除,LN(#6,11)摘出術を施行,手術病理診断はpT3N0M0=StageIIB,pm1 であった。本例は術後2年目に対側肺転移が出現したため同部位を切除後,現在化学療法を施行中である。症例2: 60 歳,女性。2009 年6 月のCT 検査にて右肺S10,S6,S2 の3 か所に0.5〜1 cm 大のGGO を認め,肺癌の疑いにて手術施行。手術は最初にS10 肺腫瘍を切除し術中迅速診断にて肺腺癌の結果であった。次いでS6 肺腫瘍,腫大したLN(#7,10)を切除し術中迅速診断を追加,S6 腫瘍: 腺癌,LN: 良性の結果を得,画像診断と併せS10 肺腺癌+S6 同一肺葉内肺転移と診断した。最終的に右肺S10,S6,S2,S8 部分切除,LN(#7,10)摘出術を施行,手術病理診断はpT3N0M0=StageIIB,pm1 であった。現在化学療法を施行し再発なく経過観察中である。 -
肺癌術後脳転移に対しガンマナイフ治療により長期生存が得られた2 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description原発性肺癌根治手術後の単発性脳転移に対して,ガンマナイフによる定位放射線治療を実施し長期生存が得られている2 症例を経験した。いずれも70 歳台の男性で,脳転移出現時の全身状態は良好で他に活動性病変はなし。症例1 では,術後1 年2 か月に発見された最大径1.8 cm の無症候性の脳転移巣に対してガンマナイフを実施。以後7 年間局所制御が得られ,肺転移担癌ながら全身状態良好で生存中である。症例2 では,術後9 か月に発見された左半身不全麻痺を伴う最大径2.7 cm の脳転移巣に対してガンマナイフを実施。6 か月後に局所再燃を来し再照射にても制御できず,麻痺の進行と痙攣を伴い脳転移出現後3 年2 か月で神経死した。 -
術中温熱化学療法の併用により長期生存が得られた癌性胸膜炎の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description悪性胸水を有する末梢小型肺腺癌症例に対し原発巣切除時,術中42℃に加温した温蒸留水とmitomycin C(MMC)10 mg よりなる温熱化学療法を施行。この結果6 年0 か月の良好な生存期間が得られた。悪性胸水を有する症例においても,播種病巣を伴わないものでは外科的治療に集学的治療を加えることによって良好な生存期間が得られる可能性が示唆された。 -
切除不能原発性肺癌に対する相補的定位胸部放射線治療の検討
37巻12号(2010);View Description Hide Description定位放射線治療は近年,肺腫瘍の治療にも適応されている。われわれは,2007 年10 月〜2009 年12 月までに当院で定位放射線治療を受けた非小細胞肺癌29 症例31 病変の治療成績について後ろ向きに評価を行った(平均年齢75 歳。臨床病期IA 期13 例,IB 期5 例,IIIA 期1 例,IIIB 期1 例,再発例11 例)。すべての症例で予定された治療を完遂できた。合併症としては,1 例で治療後に既存の肺線維症の進行を認めステロイド治療が必要となったが,他の症例では治療を要する合併症を認めなかった。追跡可能な27 症例29 病変について評価を行った。今回の観察期間中に11 例で再発を認め,無増悪生存期間中央値は8 か月であった。I期の症例に限ると再発は17 例中4 例,無増悪生存期間中央値は12 か月であった。定位放射線治療は医学的理由により切除不能な早期肺癌に対し安全かつ有効な治療であり,手術の相補的な治療選択肢になり得ると考えられた。 -
副腎転移にて発見された肺多形癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は50 歳台,男性。右季肋部痛を主訴に受診し,CT にて右副腎腫瘤と右肺上葉腫瘤を指摘。副腎腫瘤が急速に増大してきたため右副腎摘出術を先行した。副腎腫瘍は,肺癌の一般的な組織型と合致しなかったため副腎癌と病理診断された。2 腫瘍のうち一方が原発で他方が転移,もしくは両方とも原発の可能性が考えられたため右肺上葉切除術も行った。肺腫瘍は紡錘形腫瘍細胞と腺癌を含む原発性肺多形癌と病理診断され,振り返って副腎腫瘍も肺多形癌の副腎転移と訂正された。術後2 か月で,頸部リンパ節転移,胃転移,右副腎切除部局所再発が出現し,carboplatin とpaclitaxel による全身化学療法を6 コース実施し,臨床的に4 年間著効が得られている。 -
当院での乳癌に対するラジオ波熱凝固療法の試み
37巻12号(2010);View Description Hide Description最近の乳癌の手術は縮小化する傾向にあり,将来的には早期乳癌を外科的に切除することなく治すことであろうと考えられる。当科でも院内倫理委員会の承認を得て,広範な乳管内進展のない2 cm 以下の乳癌を対象に,2008 年4 月よりラジオ波熱凝固療法を開始した。まずは手技および安全性の臨床的見地より5 例を行ったので報告する。全例安全に施行可能で,熱傷などの合併症は認めなかった。観察期間中央値は22 か月(21 〜 24 か月)の時点で,局所再発および遠隔転移は認めていない。整容性においても全例良好であった。 -
ホルモン療法が長期奏効している骨転移を伴うStageIV 乳癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description6 年間にわたりホルモン治療が奏効しているStageIV 症例を提示する。症例は48 歳,女性。左A 領域に3 cm 大の乳腺腫瘤を自覚し来院した。CNB にて浸潤性乳管癌[硬癌,ER(+),PgR(+),HER2: 0]の診断を得た。CT では胸腰椎骨盤への多発骨転移を認めた。T2NXM1,StageIV の診断で,全身化学療法を施行した。AC 療法4 コース,docetaxel 4 コースを施行し,原発巣はPR を得た。その後tamoxifen(TAM)を4 年間内服した後,swiching でAI に変更し2 年経過するが,原発巣,骨転移いずれも増悪はなく,6 年間ホルモン療法+bisphosphonate を継続している。閉経後進行再発乳癌に対してのfirst-line ホルモン治療のtime to progression はAI で10.7 か月,TAM で6.4 か月とされ,AI が有意に長い。化学療法後の維持療法としての抗ホルモン治療について統一見解はないが,今後複数の抗ホルモン薬が奏効し,長期経過をたどる症例は増加すると思われる。 -
胃転移で発見され長期生存した進行性乳癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は51 歳,女性。主訴は腹部膨満感。超音波検査で腹水を認め,上部内視鏡検査での胃生検でadenocarcinoma と診断された(胃癌type 4)。一方,胸部CT で左乳房腫瘍を指摘され,針生検でinvasive lobular carcinoma と診断された。改めて胃生検組織のER,PgR の免疫組織化学染色により,胃癌から左乳癌T2N1M1,stageIV と診断を改め,治療を開始した。化学療法はEC 6 コース-weekly PTX 4 コース(epirubicin, cyclophosphamide-weekly paclitaxel)を行った。化学療法後,乳房腫瘤,腹水,腫瘍マーカーは著明に改善した。その後ホルモン療法を行い,初診後2 年6 か月で永眠された。予後不良といわれる4 型進行胃癌類似型乳癌・浸潤性小葉癌stageIV に対し,集学的治療を行い患者・家族の満足が得られた症例を経験した。女性で胃癌のtype 4 をみた時は乳癌の胃転移も念頭におくべきである。 -
集学的治療により良好なQOL を保ちつつ生存を得ている再発乳癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は70 歳,女性。1997 年に右乳癌に対し,胸筋温存乳房切除術,腋窩・鎖骨下リンパ節郭清を施行し,病理組織学的診断は浸潤性乳管癌,T2,N2,M0,StageIIIA の診断であった。術後はTAM,UFT 併用療法を5 年間施行した。術後9年目に右腋窩リンパ節再発を認め,摘出術を施行した。術後AC 療法を6 サイクル施行した。術後10 年目に多発肺転移が出現したため,DOC 単剤療法を8 サイクル施行した。術後11 年目,再び右腋窩腫瘤が出現し,capecitabine 療法を6 サイクル施行した。術後12 年目,肺転移の増悪と右腋窩腫瘤の増大を認めたため,2006 年に摘出した標本を再検査したところ,ER陰性,PgR 陰性,HER2 陽性であったためtrastuzumab+PTX 療法6 サイクル施行した。肺転移は縮小し,PR であった。右腋窩腫瘤は10 cm 大まで増大し,QOL 低下を来していたため摘出術を施行した。術後放射線療法後,化学療法再開予定である。 -
局所放射線療法が有効であった乳癌皮膚転移の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例: 78 歳,女性。経過: 2007 年1 月ごろより前胸部腫瘤を触知した。そのまま放置していたが,増大したため当院皮膚科を受診。局所所見では,前胸部正中部に大きさ約2 cm の弾性硬,可動性のない腫瘤を認めた。皮膚生検したところ,乳癌転移疑いの診断となり当科紹介となった。マンモグラフィおよび乳腺超音波検査では,乳腺内には明らかな病変は認めなかった。病理組織診断の特殊免疫染色では,CK7 およびCEA 陽性,ER(+),PgR(+)であった。以上より潜在性乳癌皮膚転移の診断となった。治療は,手術療法を拒否されたため放射線療法を施行。総線量66 Gy を照射した。照射後の評価ではcCRとなった。以後,約2 年経過しているが,再発・転移は認めていない。結語: 乳癌治療において局所制御目的に放射線療法を施行することがあるが,1 年以上のcCR を得ることは少ないことから若干の文献的考察を加えて報告する。 -
乳癌皮膚転移に対し放射線治療を行った3 例の検討
37巻12号(2010);View Description Hide Description胸筋温存乳房切除術後の皮膚転移に対し放射線治療にて改善を認めた乳癌3 症例について報告する。全例リンパ節転移陽性,脈管侵襲陽性,triple negative であった。症例1: 術後補助化学療法終了直後に創部発赤が出現し,生検で皮膚転移と診断した。化学療法の効果なく急速に増大したため放射線照射を施行し皮膚病変は軽快したが,肺,骨,対側乳房転移で死亡された。症例2: 鎖骨上リンパ節転移,左癌性胸膜炎,多発小結節性皮膚再発を認め,鎧状の皮膚病変に胸壁照射を施行し軽快した。しかし多発性肝転移にて死亡された。症例3: びまん性樹枝状発赤を呈する皮膚再発に胸壁照射を施行した。皮膚病変はほぼ消失し化学療法を継続した。結語: 放射線治療は皮膚病変の改善に有用で,患者のQOL 向上に寄与するものと考える。再発治療中における施行時期の選択が課題となる。 -
Exemestane が著効した超高齢者乳癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例: 91 歳,女性。経過: 2006 年4 月に左乳房腫瘤を指摘された。精査加療目的に紹介。マンモグラフィおよび乳腺超音波検査で,左乳房CA 領域に大きさ約3×4 cm 大の辺縁不整,内部不均一な腫瘤を認めた。針生検を施行し,solid-tubur carcinoma,ER(+),PgR(+),HER2 score 1+であった。全身検索では遠隔転移は認めなかった。超高齢であることや,認知症もあるために手術は施行せず,exemestane(25 mg/day,po)を開始した。以後,4 年間投与を継続したところ触診では腫瘤を認めず,超音波検査所見でも明らかな腫瘤像は認めなかった。また,投与中による副作用も認めなかった。現在も内服加療しているが再発も認めていない。まとめ: 医療技術の向上により高齢者の乳癌罹患率は増加傾向にある。今回のように,ホルモン感受性があるならば積極的なホルモン療法を施行していくことが予後に有効であることが示唆された。 -
同一乳房内に多発した乳腺粘液癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例: 46 歳,女性。経過: 約30 年前より左乳房腫瘤を認めた。2006 年8 月ごろになり増大および多発傾向を認めたため,当院を受診。マンモグラフィでは,辺縁不整の腫瘤陰影が多発しておりカテゴリー4 と診断した。乳腺超音波検査では,それぞれ独立したhypo echoic mass と境界不整な病変を多数認めた。乳腺MRI でも多発性腫瘤性病変を認めた。悪性も否定できないため,それぞれに針生検を施行したところ粘液癌の診断であった。手術は胸筋温存乳房切除術およびセンチネルリンパ節生検術を施行した。病理組織診断では,mucinous carcinoma,T2N0M0,stageIIA,ER(+),PgR(+),HER2 score 0 であった。現在,約4 年経過しているが再発・転移は認めていない。まとめ: 乳癌の多発症例は少なく,粘液癌の場合の報告例は散見されるのみである。今回われわれは,貴重な1 例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。 -
術前化学療法の効果に相違を認めた同側多発乳癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は61 歳,女性。左乳房腫瘤にて当院を受診し,超音波検査にて左A 領域に3.3 cm 大,左C 領域に0.9 cm 大の腫瘤を認めた。針生検にて浸潤性乳管癌,A 領域主病巣: ER(+),PR(−),HER2(+),C 領域娘病巣: ER(+),PR(+),HER2(−)であった。左乳癌T2N1M0,StageIIB に対し,術前化学療法を行ったところA 領域腫瘍は消失したが,C 領域腫瘍に変化を認めなかった。またC 領域外側に1.9 cm 大の新病巣が発生し,針生検にて浸潤性乳管癌,ER(+),PR(+),HER2(−)であった。ここでPD と評価し,手術(Bt+Ax)を施行した。病理結果は,A 領域の主病巣はpCR,C 領域娘病巣は浸潤性小葉癌,そしてC 領域外側の新病巣は充実腺管癌であった。術後の治療は,それぞれのサブタイプに応じ,抗HER2 療法,また放射線療法・ホルモン療法を行った。同側乳房に3 個の腫瘍が同時発生し,それぞれbiology が異なっていたため術前化学療法の効果に相違を認めた症例を経験したので報告する。 -
高齢者DCIS に対する癌局所療法としての局所麻酔下乳管腺葉区域切除
37巻12号(2010);View Description Hide Description乳癌検診およびマンモトーム生検の普及とともに,今後高齢者のductal carcinoma in situ(DCIS) 発見頻度は上昇してゆくものと思われる。われわれは乳頭血性分泌を呈し,局所麻酔下に診断と局所治療を兼ねた乳管腺葉区域切除を施行し,DCIS の診断と局所治療を行い,良好な整容性とQOL を保てたので報告する。症例は82 歳,女性。右乳頭血性分泌を主訴に当科を受診した。来院時,右乳頭より単孔性の血性分泌を認めたが腫瘤は触知しなかった。乳管造影検査,乳管内視鏡検査,MRI で病変を描出できなかったため,局所麻酔下に乳輪切開法による乳管腺葉区域切除術を施行した。病理組織診断はDCIS,ER 陽性,PgR 陰性,HER2 score 0 であり,切除断端は陰性であった。その後の全身検索で有意な転移巣を認めず,局所に対する放射線治療の後,アロマターゼ阻害剤によるホルモン治療を行っている。術後3 年2 か月目の現在,再発・転移を認めていない。 -
乳癌術後に対する放射線治療後に発症したBOOP の2 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description乳癌術後の放射線治療後に発症したbronchiolitis obliterans organizing pneumonia(BOOP)の2 例を報告する。症例1 は58 歳,女性。両側乳癌にて乳房円状部分切除術+センチネルリンパ節生検を施行後,残存乳房に放射線照射(両側乳房に各々計50 Gy)を行った。照射後2 か月に咳嗽,発熱,全身倦怠感が出現,臨床経過と画像所見からBOOP を疑い,ステロイドの経口投与を開始,症状,画像所見は改善した。症例2 は57 歳,女性。右乳癌にて胸筋温存乳房切除術を施行した。術後1 か月に局所皮膚再発を認め,右胸壁に計50 Gy の放射線照射を行った。照射後の局所皮膚生検にて腫瘍残存を認め,局所再発巣切除術を施行した。照射後2 か月に咳嗽,呼吸困難,発熱が出現,臨床経過,画像所見,bronchoalveolar lavage(BAL)とtransbronchial lung biopsy(TBLB)にてBOOP と診断,ステロイドパルス療法の後,ステロイドを経口投与に変更,症状,画像所見は改善した。乳癌術後の放射線障害としてBOOP を認識し,肺病変出現時は本疾患を念頭に精査を行う必要がある。 -
乳腺葉状腫瘍に対する局所療法としての手術療法の長期成績
37巻12号(2010);View Description Hide Description過去に経験した28 症例の乳腺葉状腫瘍において再発・転移の有無を検索し,手術療法の長期成績について検討した。対象症例の平均年齢は45.2 歳,全例女性であった。穿刺吸引細胞診は17 例に行われており,そのうち穿刺吸引細胞診で葉状腫瘍の診断がついたものは1 例。針生検施行例は22 例,そのうち葉状腫瘍の診断がついたものは18 例であった。6 症例が針生検を施行せず,画像所見だけで葉状腫瘍の疑いとされ,摘出生検が行われていた。手術は全例腫瘍から最低1 cm のマージンを含めて行われていた。術後の平均観察期間は5.4 年。術後の局所再発は5 例に認められた。他臓器への遠隔転移を認めたものは1 症例のみであった。局所再発を起こした5 例は初回手術時に病理学的に悪性と診断されたものではなかった。病理学的に切除断端が陰性であり,良性または境界病変と診断されても,術後長期にわたって定期的に経過観察の必要があると思われた。 -
十二指腸原発GIST に対して膵温存十二指腸切除術を施行した1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は79 歳,男性。腹部腫瘤を主訴に来院。胸腹部CT にて膵頭部に10 cm の腫瘍を認めたが,遠隔臓器転移や周囲臓器浸潤は認めなかった。同腫瘍は,上部内視鏡検査では十二指腸3rd portion の粘膜下腫瘍として認め,c-kit 陽性にて十二指腸GIST と診断され,膵温存十二指腸部分切除術を行った。GIST の大部分は胃と小腸に発生し,十二指腸は極めてまれである。GIST に対する外科治療法は基本的には局所切除であるが,十二指腸に存在する場合には局所切除が時に困難で,腫瘍の大きさや乳頭近くに存在する時には膵頭十二指腸切除術が必要となる場合もある。一般にGIST は膨張性発育で,リンパ節転移はまれであり,膵頭十二指腸切除は過大侵襲と思われる。それゆえ,膵温存の十二指腸部分切除は十二指腸GIST に対して可能ならば試みるべき方法と思われる。 -
S-1,UFT/LV 療法が奏効した原発性小腸癌の2 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description原発性小腸癌は消化管癌のなかでもまれであるが,進行・再発例も多い。しかしながら術後補助化学療法や再発例に対する化学療法は,症例報告が散見される程度であり,治療レジメンに一定の見解はない。今回,原発性小腸癌に対する経口化学療法としてS-1,UFT/LV 療法が有効であった2 例を経験した。 -
原発性小腸癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は64 歳,女性。2008 年5 月腹部膨満感が増強したため入院となった。入院時腹部CT 所見では口側腸管の拡張を伴った小腸の軟部濃度腫瘤が指摘され,小腸腫瘍による腸閉塞と診断し,手術を施行した。開腹時,回盲部から15 cm の回腸に全周性の腫瘍性病変を認め,回腸末端に播種性病変を伴っていたため,同部位も含めて回腸部分切除術を施行した。病理組織学的所見ではリンパ節転移を伴った原発性小腸癌であり,播種病変は小腸癌由来であった。術後S-1 を内服していたが,術後6 か月目に卵巣に再発を来したため,卵巣を摘出した。その後肺転移を認め,mFOLFOX6+bevacizumab を施行し,現在CR である。原発性小腸癌はまれな疾患であり,臨床症状が出現しないと発見に至らないことが多く,リンパ節転移や遠隔転移を伴うような進行した状態で発見されることが多いため,予後不良であるとされている。今回,原発性進行小腸癌の1 例を経験したので文献的考察を加え報告する。 -
術前化学療法が奏効した同時性胃・肺重複癌の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は66 歳,男性。2007 年10 月呼吸苦を主訴に来院。精査にて左癌性胸水貯留,胃癌が発見された。StageIV の胃癌と診断し化学療法S-1+DOC を開始した。経過観察中2009 年に左肺腫瘍が出現,化学療法をCDDP+CPT-11 へ変更した。胃・肺病変ともに縮小効果を得た上で2010 年手術にて胃癌・肺腫瘍ともに摘出した。病理組織学的に胃癌はpT1N0M0,StageIA,Cur A,肺腫瘍は原発性肺腺癌,pT1N0M0,StageIA,R0,悪性胸水は肺癌由来の診断であった。化学療法の効果判定では,胃癌は組織学的にEf 0〜1a,肺癌は画像上胸水が消失しdown staging が得られ,組織学的にはGrade 0〜1a であった。 -
癌性胸腹水に対するレンチナン(LNT)+OK-432 併用胸腹腔内投与の臨床的検討
37巻12号(2010);View Description Hide Description非特異的免疫賦活剤であるレンチナン(Lentinan: LNT)とOK-432 を併用する治療法は,癌患者のTh1/Th2 バランスを制御しTh1 優位を誘導できる。この理論に基づいて,化学療法無効の癌性胸腹水に対してLNT+OK-432 併用胸腹腔内投与を試みた。20 症例21 病巣中,胸腹水の完全消失を10 病巣,減少を7 病巣に認め有効率は81%であった。効果発現までの治療回数は1〜3 コースであり,9 病巣では1 コースのみの治療で胸腹水が減少あるいは消失していた。LNT による副作用はみられず,OK-432 投与により37℃台の発熱が10 例に認められた。癌性胸腹水に対するLNT+OK-432 併用胸腹腔内投与は,有効かつ患者に優しい局所療法といえる。 -
肝腫瘍切除後に皮膚紅班を伴う著明な血中好酸球増多症の改善をみた1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description全身皮膚紅班の原因精査中肝左葉に腫瘤を指摘され,切除後皮膚病変の消失が得られた1 例を報告する。症例は65 歳,男性。2 か月来続く全身そう痒疹のため睡眠障害を呈していた。末梢血中WBC 10,600/mm3,好酸球は34.7%(3,678/mm3)と著明に増加していた。画像検査上,肝左葉に最大径6.8 cm の腫瘍を認め,経皮針生検の結果は腺癌であった。心,肺などへの好酸球浸潤による障害のないことを確認後,肝左葉切除術を行った。肉眼所見は胆管内発育を伴う腫瘤形成型で一部は腫瘍壊死,膿瘍化によると考えられる嚢胞状を呈していた。病理診断は胆管細胞癌であった。術後血中好酸球数は500 /mm3 前後を推移,術後4 年現在再発なく経過している。皮膚病変は術後急速に消退した。血中好酸球増多症を伴う肝腫瘍の報告は散見されるが,治癒切除し得た例は極めてまれである。 -
スペーサー手術と粒子線治療による2 段階治療が有効であった仙骨脊索腫の1 例
37巻12号(2010);View Description Hide Description症例は80 歳,女性。2006 年より両足のしびれを訴えたが,近医にて脊椎管狭窄症と診断され放置していた。2009 年2 月,肛門周囲のしびれ感が出現し,CT および生検にて仙骨脊索腫と診断された。腫瘍は径12 cm で仙骨のS3 に浸潤し,手術は不可能であった。またRa,Rb で直腸と接しているため粒子線の根治的照射治療も困難で2 段階治療の適応と考えた。まず,開腹下に仙骨前面の腫瘍と直腸の間にゴアテックスシートをスペーサーとして挿入し,創の治癒を待って粒子線を計70.4 GyE/32 Fr 照射した。照射2 か月後には腫瘍径は縮小を示し,8 か月後の現時点で局所制御と膀胱および直腸機能は良好である。スペーサー手術と粒子線を組み合わせた2 段階治療は切除不能かつ粒子線による根治的照射不可能な仙骨脊索腫に対する第一適応になると考えられた。
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