癌と化学療法
2010, 37巻Supplement II
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特集【第21回日本在宅医療学会学術集会】
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在宅における摂食・嚥下リハビリテーション
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description誤嚥性肺炎を直接引き起こす摂食・嚥下障害は外部からの観察が難しく,その状態を正確に把握するためには精査が必要である。しかし,これまで通院できない患者は精査が受けづらい環境にあった。摂食・嚥下障害の精査には嚥下造影検査と嚥下内視鏡検査があり,在宅訪問診療場面においてこの嚥下内視鏡検査を用いることで,摂食・嚥下機能の精査を可能にしたという報告が近年みられるようになった。さらに,在宅の摂食・嚥下障害患者を評価した結果では,患者の摂食・嚥下機能と栄養摂取方法には乖離がみられることが多いことが報告されている。このような精査を取り入れながらそれぞれの環境にあった協働作業を行えるように設定できるかどうかが,摂食・嚥下リハビリの成功を左右する。 -
医師会を軸にした地域連携栄養研究会での連携パス候補
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description東京都の二次医療圏である品川区と大田区の病院では完結した医療の提供が困難なことから,病院から在宅医療へシームレスに医療が継続されることを目的として,様々な取り組みをしている。栄養療法に関して一般栄養療法から特殊栄養療法までを網羅した情報の共有を目的として2006 年に設立された医師会主体の品川大田栄養研究会では,2007 年9 月に荏原医師会,品川区医師会,大森医師会,蒲田医師会,田園調布医師会の各会員を対象として研究会で取り上げるテーマについて栄養アンケート調査を行い,学術集会ではその結果を基に栄養関連連携パスを構築する際の優先順位を定める討議が行われた。2010 年5 月の学術集会において,アンケート結果のキーワードに基づいて候補を検討し,現存する「糖尿病パス」の充実と「PEG管理」の新規構築が決定された。 -
退院支援チームによる効果的な病棟ラウンド—高齢者専門急性期病院における病棟ラウンド報告—
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description高齢者専門の急性期病院である当院では,医師と看護師が病棟で早期に退院支援を開始するために,総合機能スクリーニングシートを活用してきた。しかしまだアセスメントが不十分であり,退院調整依頼までに時間を要している。そこで病院内の退院支援チームの活動として,病棟から退院支援を始めることを目的に,チームメンバーによる病棟ラウンドを実施した。活動の成果としては,ラウンドは退院の方向性や協力体制などに対して効果がみられたが,いくつかの課題も明確となった。よりよい病棟のラウンド方法を検討していく必要がある。 -
特定機能病院において退院支援ツール使用前後における病棟看護師の退院支援にかかわる認識の変化
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description退院支援の必要な患者を早期に発見するための「スクリーニングシートI」,患者の生活に合わせた日常生活行動を評価する「スクリーニングシートII」,「患者家族と医療者の方向性確認シート」,退院調整にかかわる全体の流れのフロー図を示した「退院調整シート」より構成される退院支援ツールを使用することにより,退院支援にかかわる認識がどのように変化するのか,介入前後に75 人の病棟看護師へ自記式質問紙調査を行った。その結果,「経済状況,社会資源の情報収集」,「医療材料の準備」と「在宅医療室,栄養士との連携」に関する理解度が介入後に有意に上昇し(p<0.05),「退院支援満足度」も有意に高くなった(p<0.01)。退院支援ツールの使用は,退院支援に必要な支援内容をチェックする際の手順書として活用可能であり,経験の浅い看護師には実践力の不足している部分を補う際の目安ともなり得ることが示唆された。 -
高齢で医療処置が必要な寝たきり患者と家族への在宅療養支援
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description慢性硬膜下血腫で入院した70 歳台,男性と家族に支援をした。医療処置があるため医師より転院支援での介入を依頼されたが,経済的な問題がわかり,家族と相談の結果,自宅介護支援に変更した。ソーシャルワーカーは在宅療養を熟知した専門職種の支援が望ましいと考え,多職種でカンファレンスを調整し,実施した。家族はケアマネジャーや訪問看護師から自宅での医療や介護について説明を受け,自宅介護をイメージした。話し合われた内容に沿って各専門職が支援を行い,ソーシャルワーカーが調整を行った結果,患者は無事に自宅退院となった。事例から,医療処置のある患者や家族に対してソーシャルワーカーは, 1.医療的な視点に加え,生活の視点でニーズをとらえること, 2.必要な情報を提供し,患者と家族の意思決定を支援すること, 3.チームの調整役となることが必要である。 -
在宅ケアにおける「介護不全」の概念と病態説明モデル
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description在宅ケアの失敗例や在宅の病状悪化例の観察から,「在宅ケアの介護力不足による患者・介護家族の病態」を「介護不全」と定義した。在宅ケアで「介護不全」に陥ると身体的,精神的,社会経済的,家庭的,スピリチュアルな問題が同時多発的に生じる。介護力不足により生じた「介護不全」の病態は,放置されると悪循環を来し,ますます悪化する傾向がある。「介護不全」の治療・予防には,医療だけでなく介護力強化が必要である。 -
急性期病院から在宅医療への推進—その課題と地域連携部門の役割—
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description在宅医療推進の阻害因子として制度の問題や在宅医療,ケアの資源不足が強調されているが,むしろ急性期病院の在宅医療に関する意識や知識不足,地域連携機能や患者とのコミュニケーション不足などの問題が大きい。緩和ケア研修会を受講した医師を対象に在宅医療に関するアンケート調査を行い,その実態を検討した。回収率は127 名中93 名で,73.3%であった。急性期病院の医師は,在宅医療の必要性を実感し,積極的にかかわる意志がある。しかし十分な経験や研修に乏しい。終末期医療として,医師自身が適切とは思わない点滴や輸液などが,患者や家族側の希望を重視したために実際には行われている状況がうかがえる。退院など今後の方針について相談支援する時期は,できるだけ早期からが望ましいが,治療の限界に達した時や退院を促す時などかなり差し迫ってからが少なくない。研修の充実や在宅資源に関する情報共有,また地域連携部門の機能強化などが期待される。 -
麻薬注射使用患者の退院調整と患者支援への薬局のかかわり
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Descriptionがんはわが国における死因の第一位であり,がん対策を総合的かつ計画的に推進することを目的としたがん対策基本法が2006年6 月に成立し,地域特性に応じたがん対策推進のための取り組みが行われているところである。当薬局においてもがんの在宅患者は年々増加の傾向にあり,2009 年4 月〜2010 年3 月の1 年間に,相談を受けた新規の在宅患者24 名中,約80%の19 名ががんの患者であった。そのうち4症例を除く15 症例にオピオイドが使用されていた。経口投与が不可能な場合には,坐薬やフェンタニル貼付剤の使用により疼痛コントロールが行われた。しかし注射薬以外での疼痛コントロールが困難な症例もあり,入院中に他職種より相談を受け対応を行った。今回それら2 症例について,薬局がかかわった調整内容ならびに在宅医療で取り扱う場合の問題点,今後の課題について報告する。 -
医療提供施設としての薬局機能
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description2006年の医療法改正により,「調剤を実施する薬局」は医療提供施設として明記された。この背景は,医薬分業の推進によって,外来患者の60%が処方せんをもって保険薬局(community pharmacy)を利用するようになったことによる。この間,薬局は保険医療に従事したことによって業務体系が確立し,最近では,薬剤師は医師の指示と患者の同意によって在宅患者の訪問活動も行うようになった。このように,薬局機能が時代とともに大きく変わってきたので,今回,都道府県の薬局検索システムを利用して,在宅医療にかかわる薬局機能を調査した。調査時期は2010 年2 月で,アンケート対象は1 都3 県の226 薬局であった。アンケート回収率は42.6% であった。主な結果は,在宅訪問を行っている薬局は59 薬局,保険請求をしている薬局は59 薬局,退院時共同指導に参加した薬局は24 薬局であった。このように,薬局機能が外来患者の調剤から在宅医療まで幅広くなってきたことが明らかとなった。 -
東京都在宅療養支援診療所の活動状況と死亡場所に関する検討
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description東京都在宅療養支援診療所の活動状況と死亡場所との関係を検討した。1,209 件のうち在宅療養支援診療所として稼動していない診療所が9.1%,訪問診療などを行っているが自宅での看取りを行っていない診療所は34.7%であった。自宅死亡者総数の64.3%は,年間11 人以上の患者を自宅で看取っていた114(9.4%)の在宅療養支援診療所によって看取られていた。 -
双方向性モニターシステムを利用した糖尿病患者在宅療養支援
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description高度先進医療病院の看護師と糖尿病患者の自宅を双方向性モニターシステムにより双方向に結び,週1 回,30 分程度の生活指導,糖尿病に関する定期的な相談を12 週間継続した。介入前に比べ,双方向性モニターシステムによる介入12 週間後の体重,HbA 1cの値に改善がみられ,また生活習慣に関するアンケートから,糖尿病患者自身の食事に対する意識に変化がみられた。医療者側からは,週1 回通信することが糖尿病患者の自己管理を見守る意味でたいへん有効であるという意見があった。看護師が週1 回の双方向性ケアシステムを用いた生活指導を実践した結果,糖尿病患者の血糖コントロールが改善し,患者の意識の変化にも有効であることが示唆された。 -
ブログを書くことが在宅認知症介護者に与えるストレス軽減効果
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Descriptionわれわれは,認知症高齢者を在宅で介護しブログを開設している介護者が,ブログを書くことでいかにしてストレスを軽減させているのかを調査した。39 名のブロガー(男性13 名,女性26 名)からE-mail による質問紙の回答が得られた。「ブログを書くことで得られたものは何ですか」という自由記述式の質問から,介護者はブログを書くことで, 1.ソーシャルサポート, 2.対処機制, 3.出来事の知覚,という三つのカテゴリに分類される対処を行っていることが明らかとなり,これはAguileraのいう危機理論と一致する。在宅で認知症高齢者を介護する介護者は,ストレスの多い状況においてブログを書くことで問題を解決に導く手助けにしていることが明らかになった。 -
介護老人保健施設で実践する看取り介護の取り組みと成果—家族へのインタビューを通して—
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description介護老人保健施設での看取り介護導入に伴い,当施設では多職種によるプロジェクトチームを結成。マニュアル作成や勉強会開催などの取り組みにより,看取りシステムをスムースに導入することができた。以上の実践活動から,介護老人保健施設での看護師の役割と社会的意義を再確認できた。介護老人保健施設での看取りを成立させる上で,多職種の協働を機能させることが重要である。そのためにも医療体制の整備,勤務・人員体制の整備,看取りに取り組むための職員の意識付けが必要といえる。 -
摂食・嚥下障害患者のシームレスな栄養管理・地域栄養ケア
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description栄養管理や経口摂取は一つの病院・施設内だけで完結する課題ではないため,地域連携が必要である。シームレスな栄養管理・地域栄養ケアを臨床現場で行うには,5W1H を明確にすることが有用である。横浜南部地域一体型NST 参加者を対象に行ったアンケート調査では,地域一体型NSTの課題として,在宅を含めたNST の連携・ネットワーク強化と,栄養や摂食・嚥下の学習機会の提供の二つが明らかになった。リハ栄養の考え方も地域連携に有用である。リハ栄養とは,栄養状態も含めてICF(国際生活機能分類)で全人的な評価を行った上で,適切な予後予測の下でリハと栄養管理を同時に実践することである。栄養管理だけの連携でもリハだけの連携でも,摂食・嚥下機能,ADL,QOL の向上のためには不十分なことが多い。そのため,シームレスなリハ栄養管理・地域リハ栄養ケアが必要である。 -
在宅人工呼吸器装着患者における災害時支援訓練の実施
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description神経難病を有し人工呼吸器を装着している患者の災害時個別支援計画の策定を行ってきており,今回は実際の災害を想定した避難訓練を実施した。サービス提供事業者および地元自治会など関係者の参加の下災害時支援訓練を実施し,安全な搬送方法を確認すること,さらに問題点や課題を要援護者支援計画へ反映することとした。実際の訓練では,訪問看護師をリーダーとして,人工呼吸器回路を外し,ベッドからリクライニング車椅子に移乗させ,近隣の避難所まで搬送した。車椅子の安全移動に2 人,患者の状態を観察し呼吸管理をする人に1 人,携帯用吸引器などをもつ人が1 人であり,最低4 人は必要であった。今回の訓練により,以下の点が重要であると判明した。 1.在宅療養の開始早期に,市町村が策定している災害時要援護者登録制度届の提出を勧奨する。 2.近隣者と普段からできるだけ交流をもつようにする。 3.定期的にサービス提供事業者による外出支援を行う。 4.訪問看護ステーションが医療機器装着患者の災害時支援について,チームリーダー的役割を担う。 -
救急外来受診後の翌日往診を経て診断に至ったクロイツフェルト・ヤコブ病の1 例
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description在宅高齢者の病態が変化した際に,介護の必要のため入院を要請されることは多い。しかしながら,病床数の限界や患者自身が急激な環境の変化に適応できなかったりすると,入院の適応ではあるものの当該医療機関以外の介護を中心とした医療施設への搬送や,在宅での経過観察を考慮せざるを得ないことも多い。このような対応は,原因疾患によっては重要な病態の変化やその原因疾患が見過ごされてしまい,病態の変化により介護必要度が増した在宅患者の病態の把握,加療が十分になされないままに,在宅高齢者医療が切り捨てられかねないと批判を受ける可能性をはらんでいる。今回われわれは,緊急往診を経てクロイツフェルト・ヤコブ病と確定診断した1 例を経験した。救急外来受診と緊急往診を密に連携させることにより,病態の正確な把握を通じた医療水準の維持が可能となり得る興味ある1例と考えられたので,若干の文献的考察を加えて報告する。 -
医師からみた在宅褥創の問題点
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description在宅で褥創ケアを行うには,早期発見と予防が重要である。しかし,在宅で褥創を早期発見するのは容易ではなく,褥創が悪化感染し肺炎を併発してから診断される例が多い。対策としては,介護者やヘルパーへの褥創教育が重要である。そのため地域に根ざした勉強会の開催など,身近にできることから始めていくことが必要である。栄養改善も重要であり,在宅ではその場で栄養状態を把握可能な,管理栄養士による摂取栄養の計算が欠かせない。在宅でも多職種による介入が必要であるが,多職種のかかわりがかえって介護者の負担を増やす場合がある。介護者の経済的,肉体的,精神的な負担を増やすことのないよう,十分な話し合いの上で連携することが大切である。 -
胃瘻管理を中心とした地域医療への取り組み
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description日比野病院では摂食嚥下障害患者に対して,「食べるためのPEG」を推進している。PEGから嚥下リハビリまで一貫して管理し,在宅や介護施設に移行すると外来で胃瘻チューブ交換を継続している。交換方法を比較検討し,在宅医療における地域病院のあり方を検討する。当院で行っている交換方法は, 1.色素法:ベッドサイドでインジゴカルミン液を用いて胃内であることを確認, 2.造影法: 透視下に交換し胃内を造影して確認, 3.胃カメラ法:内視鏡室で経口的胃カメラ下に交換し確認, 4.電池式胃カメラ法:ベッドサイドで胃瘻孔から胃カメラを挿入し確認,の4 方法である。連続した156 例で患者の身体に影響のある合併症はみられなかった。在宅での交換には 1 または 4 が簡便である。一方,画像診断の面からいえば,確実性から 2 , 3 , 4 のいずれかが望ましい。簡便性と確実性からみて,在宅医療においては電池式胃カメラ法の普及が望まれる。 -
呼吸器装着ALS患者の円滑な在宅移行のために—痰量軽減を含めたケアの重要性—
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description今日,呼吸器を装着したALS 患者において在宅療養へ移行する患者が増加してきている。入院時よりでき得るかぎり介護者の負担を軽減できるように進めていくことが,円滑に在宅へ移行できる手立てとなり得る。われわれは,入院中に頻回の痰吸引を要した呼吸器装着ALS 患者に対して,痰量を効果的に減らすことができ,そのためにスムースに在宅へ移行できた症例を経験した。痰量軽減のために, 1.呼吸器上換気量を高めに設定し, 2.痰量増加の原因として肺基礎疾患の存在を考慮し治療開始すること, 3.夜間睡眠を確保することで体動による痰量増加を予防することが重要と考えられた。 -
在宅人工呼吸器を装着した患児のADL 拡大へのアプローチ
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description在宅人工呼吸器を装着した患者は,外出する機会が少ないのが現状である。原因としては, 1.人工呼吸器のトラブルがあった時の不安, 2.同行する人員確保の問題, 3.外にでることに対する精神的負担, 4.緊急時の受け入れ施設の問題,などがあげられる。医療者は患者のADLを高め,満足できる医療を提供する体制を作ることが重要であり,そのための看護師の役割は大きい。 -
在宅IVH を併用し,多職種の介入により経口摂取が可能となった高齢者の経験
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description肺炎や尿路感染などでの入院を機に,食事量が低下し胃瘻や中心静脈栄養の検討が必要となる高齢者は多い。医療ニーズが高くなると在宅医療の継続が困難となり,入院が長期化することも社会問題となっている。われわれは在宅IVHを導入して自宅退院し,その後シームレスに多職種で介入することにより経口摂取が可能になった高齢者2 症例を経験したので報告する。 -
周術期における在宅療養のための摂食嚥下障害対策の重要性
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description大腿骨頸部/転子部骨折は高齢者が多く,摂食嚥下障害が問題となり在宅療養に支障となるケースが多い。今回,同手術症例の栄養状態と摂食嚥下状況,日常生活活動(ADL)の変化と栄養管理方法,転帰について分析した。その結果,大腿骨頸部/転子部骨折症例において約20%に摂食嚥下障害を認め,最終的なADL の悪化や在宅移行が不可能となるケースが多かった。また摂食嚥下障害は骨折や入院を契機に術前から出現することもあり,食欲低下例でも多く発症していた。さらに摂食嚥下障害患者の認知症症例は55%を占めており,認知症の存在は危険因子であると考えられた。このような視点から高齢者の周術期には,在宅療養のためにより積極的に摂食嚥下機能に留意し,早期から栄養療法を含めた周術期管理をめざすべきであると考える。 -
在宅療養中に摂食不良による脱水から腎排泄型薬物中毒を起こした高齢者の2 症例
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description高齢者は脱水や感染などにより急性腎不全を起こしやすく,薬物の投与に関しては注意が必要である。今回摂食不良による脱水から急性腎不全を来し,薬物中毒を起こした2 症例を経験したので報告する。症例1 は85 歳,女性。大腸癌術後で,食欲低下と脱力を主訴に受診。摂食・飲水不十分な状態で内服のみ継続しており,ジギタリス中毒にて入院。症例2 は72歳,女性。意識障害,食欲低下を主訴に受診。施設職員により投薬は継続されており,ピルジカイニド中毒にて入院。どちらも摂食嚥下が不十分な状況下で通常量の薬剤を投与したことにより,腎排泄型薬物の血中濃度が上昇していた。高齢者の薬剤管理については,個々の背景を包括的に考慮する必要がある。 -
がん治療中の退院,転院支援,調整を行う際壁となる問題—うつ状態の時(精神腫瘍医の立場から)—
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Descriptionがん治療中,それも終末期に近くなった状況下で家族とともに,患者がうつ状態になった状況下でも,より長い在宅生活を過ごすためにはきめ細かい対応が必要となる。がん対策推進基本計画に基づき,当院でもがん相談支援センタ(2009 年6 月開設),がん緩和ケアチーム(2009 年6 月開設)に多職種のスタッフを配置,チームでかかわるようにし,入院中の患者の意向に沿いshared decision makingを繰り返しながら在宅への試みを検討中である。問題点の一つに,患者の精神的うつ状態のため患者本人の判断に時間がかかり,入院中の人を在宅に戻せない,戻すタイミングが遅くなる,ということを何回も重ねることがあった。「うつ」のため決定に時間がかかり,結果的に在宅期間の短縮にならないように,うつを見逃さず適切な対応をするためには,常日ごろからのきめ細かい観察が望まれる。 -
当院におけるStewart-Treves症候群の2 例
37巻Supplement II(2010);View Description Hide DescriptionStewart-Treves 症候群は上肢または下肢の慢性リンパ浮腫に発生する脈管肉腫である。現在,有効な治療法は確立されておらず,発症後の生存期間は数か月から1 年と極めて予後不良な疾患である。リンパ浮腫発症5〜15 年後に脈管肉腫が発症するとの報告があるため,長期にわたる観察・ケアが重要である。 -
褥瘡処置のある癌末期患者への訪問看護支援—相談依頼箋を用いた皮膚・排泄ケア認定看護師との連携—
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description癌末期と診断され,仙骨部に褥瘡のある40 歳台,女性患者と家族に訪問看護を実施した。皮膚・排泄ケア認定看護師と訪問看護師が連携し,入院中から家族指導に参加したことが家族側の安心と円滑な在宅移行につながった。指導パンフレットを在宅でも活用したことで一貫した指導が継続でき,家族は適切に実践できた。在宅では介護者不在の問題から,褥瘡が悪化した。訪問看護師は相談依頼箋に褥瘡部の写真とはがした被覆剤の写真を添付し,皮膚・排泄ケア認定看護師に相談した。結果,皮膚・排泄ケア認定看護師は在宅での状況把握が容易となり,適切なアドバイスの下,訪問看護師が看護を実践したところ褥瘡部の縮小改善がみられた。相談依頼箋は退院後の患者情報の相互伝達・共有ツールとして有効に活用でき,両者が相互確認することでより補完する。 -
病院の外科医のできる在宅緩和ケアの支援
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description終末期の切除不能再発癌患者が本人の希望するところで緩和ケアを受けるためには多くの職種,施設の密な連携が必要である。患者本人,家族が在宅を希望しても様々な制限から,在宅に戻れず病院生活を続けることになる症例もみられる。反面,われわれ外科医のスキルを活用し,患者本人および家族の在宅への希望を実現できた症例も経験した。完全に在宅に戻れない症例でも外出外泊が可能となったり,院外へでられないまでも存命中のQOL が向上した症例もみられた。外科医の提供する終末期緩和ケアは,疼痛管理のみならず,われわれ外科医が日常臨床で行う観血的な処置も,その侵襲と処置後に期待できるQOLの改善とのバランスを考えた上で行うべきと考えている。 -
在宅ケアを続ける上で支障となりやすいせん妄について—精神腫瘍医の立場から—
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description2007年のがん対策基本法(表1),がん対策推進基本計画施行から2 年が経過し,すべての患者・家族の苦痛の軽減,療養生活の向上がめざされている。がん対策推進基本計画では身体症状の緩和や精神心理的な問題など終末期だけでなく,治療の初期段階からの積極的な関与が求められている。具体的には,予防,予防のための啓蒙,重点的に取り組む事項を設け,研究,医療従事者の養成,緩和ケアの実施,相談支援業務,情報提供を行い,すべての患者・家族の安心をめざしている。当院でもその指針に準じ緩和ケア相談部門として,2 年前から緩和ケアチームとがん相談支援センタを設け,チーム医療を行っている。 -
高齢がん患者の症状緩和と地域連携における「在宅医療支援病棟」の役割
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description本研究の目的は,高齢がん患者の症状緩和と地域連携における在宅医療支援病棟の役割を評価することである。われわれは,この病棟の特徴を明らかにするために,臨床的パラメータを後ろ向きに調査した。在宅医療支援病棟は,日常生活動作が低下し認知症の重い,75 歳以上の高齢者に対して重要な役割を担っている。内服困難,呼吸困難,せん妄,全身状態の悪化時に在宅医療に貢献できる。 -
在宅緩和ケアを視野に入れた消化器末期癌患者におけるOS-1を用いた経口補水療法の経験
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description外来にてOS-1を導入し,消化器癌末期患者の入院期間を減らしQOL を維持することを目的とした。当院加療中の再発・切除不能消化器癌患者10 名を対象とした。食事量が半量以下,尿量,尿回数の低下などを認めた場合にOS-1 500〜1,000 mL 程度の飲用を勧めた。9 例に関しては,状況に応じてOS-1を500〜1,000 mL ほど飲用できた。ほとんどの症例で化学療法を併用しながらであった。化学療法に伴う食欲低下時の短期的飲用の症例から,末期症状に伴う食事量低下での長期飲用症例まで認めた。消化器癌末期患者および化学療法におけるOS-1を用いたORT は有用と思われた。 -
在宅緩和医療の充実に向けて
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description在宅緩和医療の充実に向けて克服すべき課題として, 1.病院側スタッフの在宅療養に関する知識・関心の低さ, 2.病院と診療所間の連携不足, 3.在宅側の医療・介護スタッフ確保の困難さ,および医療技術の研修の遅れ, 4.介護,福祉なども含めた地域関係者の連携体制の構築不足,その上に, 5.患者・家族・市民の在宅緩和ケアに関する誤解などが考えられる。これらの課題を一つ一つ解決していくことが在宅緩和医療の充実のためには重要と思われる。本論文では,当院,いわき市での実際の取り組みについて述べ,これらの課題への対処を提言する。 -
血液がん患者の在宅ホスピス緩和ケア
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description血液がん患者の臨床的特色を明らかにしてケアのあり方の参考とするために,当院で2003 年7 月から2010 年3 月の間に在宅ホスピスケアを受けて在宅死した血液がん患者21例を,非血液がん患者733例を対照に検討を行った。患者の年齢,性別,在宅死の頻度などには統計学的に有意な差がなかったが,在宅ケア期間は短い傾向にあった。オピオイド,オキシコドン経口徐放剤の使用頻度は,血液がんで有意に少なく,血液がんのなかでは多発性骨髄腫でのオピオイド使用量が有意に多かった。以上により, 1.血液がん末期患者の在宅ホスピスケアは頻度的に少ないが難度は高くない, 2.症状緩和の中心は痛みだがその頻度は低く呼吸苦も少ないため,多くの症例でフェンタニルパッチが有効であり,オピオイドローテーションの必要はない, 3.多発性骨髄腫では疼痛緩和が重要となる, 4.白血病での出血の問題は在宅ケアを中止するほどではないことなどが明らかになった。 -
医療連携によりがん治療を継続しながら在宅緩和医療が可能となった卵巣がんの1 例
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description入院中の緩和医療は緩和ケアチームが中心となって行うが,外来や他施設へ移行する際に緩和医療が継続されない場合がある。今回,がん治療病院と在宅緩和医療を行う地域中核病院の連携により化学療法を継続しながら在宅緩和医療が可能となった症例を提示し,連続性ある緩和医療のために何が必要かを考察する。症例は46歳,女性。X−10 年に左卵巣癌と診断され手術・化学療法を施行。X年,腫瘍がS 状結腸に浸潤しイレウスを発症。改善後に退院となったが医療依存度は高く,緊急時対応・在宅緩和を目的にK 病院へ連携依頼となった。現在は化学療法を継続しながら在宅緩和医療を行っている。本症例では,地域医療連携を行うことで患者の希望に沿った治療環境の提供と,緩和医療医による在宅医療が可能となった。今後は地域の中核病院医師,在宅医も緩和知識を習得し,互いに連携を図ることが重要と考えられた。また,連携を円滑に行うためのシステム作りも重要と考えられた。 -
Life History Interviewにより患者・家族との関係性を構築し有効な緩和ケアを提供できた在宅緩和ケアの2 例
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Descriptionクライマンはlife history interview を提唱した。これを終末期患者2 例に対して実施した。実施内容の効果について検討し,life history interviewは在宅緩和ケアにおいて患者・家族との関係性を構築し,有効な緩和ケアを提供するための効果的な方法と考えられた。 -
在宅看取りを決意した患者・家族への介入—満足な看取りの経験が及ぼす看取りの文化への影響を考える—
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description独立行政法人国立長寿医療研究センターは,2009 年4 月に在宅医療支援病棟を開棟した。この研究においてわれわれは,訪問看護師中心の密接な連携や看取りのための説明パンフレットを用いた介入が満足な看取りをもたらし,看取りの文化に影響を与えた事例を経験したので報告する。 -
複数の共同主治医により在宅看取りを行った1 例
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description伊豆半島北部に位置する伊東市は高齢化が進み,在宅医療のニーズが高まっているが,地域の唯一の中核病院である伊東市民病院(以下当院)には在宅部門がない。今回,当院に通院していた末期白血病患者が在宅で最期を過ごすことを希望した。院内の複数の医師が院内の看護師と協力し訪問看護ステーションやケアマネージャーと連携し,在宅往診および看取りを行ったので報告する。 -
切除不能進行・再発がんによる消化管閉塞に対する緩和的手術の検討—特に術後経過不良例について—
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description目的: がん性消化管閉塞に対する症状緩和を目的とした手術の意義を検討する。対象・方法:がん性消化管閉塞に対して緩和的手術を施行した35 例を対象として,臨床所見,術式,術後経過を検討した。さらに在院死4 例,術後合併症発生7 例を合わせた11 症例を経過不良群とし,それ以外の24 症例を通常群として2 群を比較した。結果:術前減圧チューブが挿入されていた症例は18 例で,術後全例(100%)でチューブ抜去が可能となった。術後経口摂取可能となった症例は33 例(94.3%)であった。在院死例は4 例(11.4%)で癌死3 例,他病死1 例(急性心筋梗塞)であった。術後在院日数中央値は18日(3〜58日)であった。術後化学療法を施行し得た症例は26 例であった。術後中央生存期間は137 日(3〜1,614日)であった。通常群,術後経過不良群を比較したところ,術前Alb 値は通常群で3.6±0.5 g/dL,経過不良群で2.9±0.9 g/dLであった(p=0.0071)。また,術前Hb は通常群で11.6±1.8 g/dL,経過不良群で9.6±2.0 g/dLであった(p=0.0006)。術前PS は通常群で1.6±0.7,経過不良群で2.6±0.7 であった(p=0.0178)。術後在院日数は通常群で16 日,経過不良群で28 日(p=0.0823),全生存期間中央値は通常群で119 日,経過不良群で42 日であった(p=0.0035)。まとめ:がん性消化管閉塞の患者は,緩和的手術によって経口摂取可能となり,QOL が改善する可能性が高い。しかし低栄養,貧血,PS不良の症例に対しては在院死,合併症発生など術後経過不良となる可能性があり,術前に十分にインフォームド・コンセントをする必要があると思われた。 -
在宅緩和ケアにおけるケアマネジャーの看取りに関する不安と影響要因—看護職とその他の職種での比較から—
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description今回在宅緩和ケアにおけるケアマネジャーの看護職とその他の職種が認識している不安内容を検討し,在宅緩和ケアでの看護職の役割について考えた。A県西医療圏内にあるケアマネジャー実務者に無記名の質問紙を配布し,郵送法にて回収した。有効回答数129名で,看護職者は56 名(43.4%),その他の職種は73 名(56.6%)であった。病状・治療に関して,その他の職種は有意に不安を感じていた。看護職は終末期がん利用者に対する医療的対応,家族への説明や対応,その他の職種との連携などの大きな役割と責任を担っている。 -
高度肥満を有する2 型糖尿病患者の入院超低カロリー食(Very Low Calorie Diet: VLCD)療法から在宅低カロリー食(Low Calorie Diet: LCD)療法への移行
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description高度肥満を有する2 型糖尿病患者に対して,very low calorie diet(VLCD)療法と在宅療養をめざしたlow calorie diet(LCD)療法で栄養管理を行った症例を経験したので報告する。症例は高度肥満を有する60 歳,女性。変形性膝関節症増悪を契機に血糖コントロールが悪化したため入院。当初糖尿病食1,200 kcal/day を提供していたが,減量困難のためVLCD 療法,LCD 療法へ移行。体重減により歩行器での移動が可能となり,血糖コントロールも安定した。退院後に在宅LCD 療法を継続するために,経済的負担軽減が必要と判断されたため,食事と微量元素補助栄養剤を基に安価なLCD 療法メニューを作成した。在宅LCD 療法の継続をサポートするためには,経済的な面や家庭環境を考慮しながら,簡便で継続可能な手法を提案することが大切である。 -
在宅支援診療所が行う在宅栄養サポートチームの試み
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description在宅療養支援診療所の機能は,在宅療養者が安定した療養生活を送るために最良の医療を提供することである。したがって急変時対応を24 時間365 日体制で実践することが必須で,当院は在宅医療に特化して24 時間体制の医療を提供してきた。訪問リハビリテーションも在宅療養での生活を支える重要な柱として位置付け実践してきた。より質の高い医療を提供する手段の一つとして,栄養学的なサポートを含む包括的支援も重要と考え,病院内の栄養サポート体制を在宅医療に応用し多職種の在宅栄養サポートチーム(在宅NST)を結成した。在宅NST を始動した結果, 1.全在宅療養者の栄養学的な基礎データを収集できた。 2.在宅での摂食状況を確認し,きめ細かく栄養管理ができた。 3.栄養管理で得た情報を在宅療養者の診療に活かすことが可能と考えられた。多職種が連携して療養者を観察できるため,定期往診による診療を補完するものとして在宅NST は有用と考えられた。 -
通常の食事を基本とした在宅LCD 療法の献立構成における高成分栄養剤使用について
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description在宅でも実践可能なlow calorie diet(LCD)療法として,高価なフォーミュラ食を用いず,食事を基本として補助栄養剤を併用した献立を作成した。少量でも高栄養を確保できるように開発された,高成分総合栄養剤(アキュアEN800)と微量栄養素補助飲料(ブイクレス)を献立に組み込むことで,蛋白質はやや低いものの,ビタミン・微量元素などの摂取基準を満たし,かつフォーミュラ食より低価格な献立が作成でき,スムーズな在宅移行への提案が可能となった。 -
退院後の継続した栄養管理のためのNST—退院サマリー提供者の実態調査から—
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description栄養管理は退院時に完結するものではなく,その後の継続が必要である。当院では退院時に栄養管理サマリーをNST で発行し,継続した栄養管理のための情報を提供している。今回2008 年4 月からの1 年間について,再入院と死亡例を除く64 例の栄養管理サマリー送付の症例に対し退院3 か月後に追跡調査を行った。退院後には施設や症例の状況に合わせた変更がなされていた。継続した栄養管理のためには,急性期病院からの情報の伝達の他,逆方向の情報交流が必要で,一貫性のある栄養管理の実施こそが求められていると考えられる。そのためには,病状の変化に合わせた両者間での検討が必要で,地域での各施設間の距離感を縮める取り組みが必要である。 -
薬剤師によるHPN コーディネート業務の成果
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description昨今,医師不足の問題を緩和するために厚生労働省では,多職種によるスキルミックスや家族および患者の生活の質を確保するために在宅医療を推進している。東海大学医学部付属八王子病院では,2003 年より薬剤師がHPN のコーディネートを行っている。今回,業務実績を調査するとともに,この業務の有用性を評価するためにアンケート調査を行った。アンケート結果では,看護師からは薬剤師が院外薬局の手配や連絡を行うことが高く評価され,医師においては処方および診療の支援を行うことが高く評価された。このように薬剤師によるHPN のコーディネートは他職種から高い評価を得られると同時にスキルミックスの一端と考える。 -
在宅中心静脈栄養法(HPN)の安全な施行への取り組み
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description栄養サポートチーム(NST)では,稼動当初より在宅における栄養管理の安全な施行と確実な継続を実現するために様々な取り組みを行っている。在宅中心静脈栄養法(HPN)に関しては,退院時指導が患者の視点から,かつ看護師間でも統一して行えるよう患者向けパンフレットを作成し,管理の標準化を行っている。このようなパンフレットの活用は,指導内容を手順化,統一して行え,看護師間でみられる指導格差をなくすことができる。入院中における個々の患者の栄養状態の情報については,「栄養管理サマリ」によって伝達を行っている。今後は,栄養管理サマリを発行した患者の転帰先でのその後の施行状況の検証と,その情報のフィードバック経路の確立が課題である。 -
小児領域における経管栄養ポンプの保険適応外需要について
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description日本では,成分栄養剤(elemental diet: ED)を使用する治療にのみ在宅での経管栄養ポンプ(enteral nutrition pump:EN ポンプ)使用が保険適応となっている。ED をENポンプで投与することはクローン病においては有用である。一方多くの小児科医はED のような人工的かつ不完全な栄養,すなわち必須脂肪酸や微量元素などの栄養素が不足しているものを成長途上にある小児または乳幼児へ長期間投与することに懸念を抱いている。本稿は,ED以外をポンプ投与する必要性に的を絞り小児科医に対して実施したアンケート結果を報告するものである。 -
高カロリー輸液調製後の包装形態がビタミンB1,ビタミンC の安定性に及ぼす影響について
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description在宅中心静脈栄養(HPN)法において,患者宅での混合操作に伴うリスク(菌汚染,注射針による事故など)を軽減するため,微量元素製剤をビタミン含有高カロリー輸液にあらかじめ混合し,輸液バッグに何らかの包装を施して払いだす場合がある。この場合,混合後に施す包装形態がビタミンの安定性に大きく影響すると考えられる。そこで,特に含量低下が懸念されるビタミンB1およびビタミンC に着目し,包装形態の影響を検討した。その結果,最もビタミンの含量低下を抑えた包装形態は,調製後,輸液バッグを脱酸素剤入り遮光性酸素バリア袋に入れて減圧包装する条件であった。しかし,調製から包装までのタイムラグが長くなると,ビタミンC の含量低下が認められたことから,調製後は速やかに包装することが望ましいと考えられた。 -
在宅化学療法の検討
37巻Supplement II(2010);View Description Hide Description症例は79 歳,男性。総合病院にて胃癌,副腎転移,肺転移と診断されタキソテール+TS-1 による病院での外来化学療法を開始されたがPD のため在宅化学療法によるタキソールへ変更。その後もCT 検査にてPD と判定されたため,さらにカンプトへ変更した。前投薬はナゼアOD,ガスターD,デカドロン内服とした。12 か月で合計17 コースの化学療法を行い定期的なCT 検査上はNC だった。しかし,不穏が出現し総合病院へ入院,化学療法を中断されたところ,癌の進行を認め永眠された。総合病院との密な連携により,13か月という比較的長期の在宅化学療法を行うことができた。
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