癌と化学療法

Volume 38, Issue 6, 2011
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総説
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骨転移のメカニズムと治療戦略
38巻6号(2011);View Description
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骨は肺や肝と並ぶがんの転移標的臓器である。近年がん細胞と転移標的臓器の生物学的環境との相互関連が注目されているが,骨転移の場合は骨の分子細胞生物学的特性が詳細に解析されていることもあり,すでに10 年以上も前から骨環境と転移がん細胞とのクロストークの重要性が認識されてきた。またその概念に基づいて,ビスホスホネートなどを用いた骨転移特異的治療が日常的に行われている。骨環境(ニッチ)に定着,適応,増殖し,転移を成立させるためにがん(幹)細胞が示す特性の変化と,転移がん細胞によって作り変えられる骨微小環境を分子細胞レベルで理解することが,より効果的,かつ特異的な治療の開発に結び付くと期待される。
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特別寄稿
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第9回アジア臨床腫瘍学会総会を20年振りに日本で開催して―アジアのなかの日本の立ち位置は?―
38巻6号(2011);View Description
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第9 回アジア臨床腫瘍学会(ACOS)を2010 年8 月25,26,27日の3日間,岐阜グランドホテルで開催した。本学会は1991年に開設され,初回学術総会が同年9 月に田口鐵男大阪大学名誉教授(現,ACOS名誉会長)により大阪で開催された。以降,バンコック,昆明,バリー,台北,ソウル,北京,マニラで隔年ごとに開催され,今回が日本では20 年振りになる。主題は「アジアから世界に向かって情報発信しよう」,副題として「集学的治療でアジアの癌患者を救おう」をめどにプログラムを編成した。今回の学術総会は42 名の各国評議員で本部組織委員を構成し,国内組織委員として総勢365 名の協力を得た。また,特別企画として会長講演,キーノートレクチャー,特別講演,教育講演,シンポジウム,ワークショップ,ランチョンセミナーなど161 のセッションを設けた。一般演題は,口演およびポスター発表で500 題,うち140 演題がアジア各国から応募された。特別企画を含めた国別演者数は,日本が475題,韓国が85 題,台湾が34 題,中国が27 題,その他インド,インドネシア,ベトナム,USAが各10 題以上で,総計20 か国から704 題が発表された。参加総数は1,136名で,大学スタッフ,ボランティア,患者団体,市民を加えると1,500名以上となった。なお,新規企画として学会記念誌「Recent Advances of Cancer in Asian Countries(アジアの癌)」を発刊し,特別企画でアジアの癌疫学,ACOSのmissionとvision,日本発新規抗癌剤,TS-1 とゼローダの開発経緯と展望,多国間臨床試験,低侵襲手術,癌と漢方,市民参加型ワークショップなどを試みたが,いずれも盛会裏に終了できた。
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特集
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- 分子標的治療薬の二次治療
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転移性乳癌とラパチニブ
38巻6号(2011);View Description
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上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor: EGFR)は細胞膜に存在し,HER1(EGFR),HER2(ErbB),HER3,HER4 の4 種類がある。それぞれが二量体を形成し細胞内にシグナルを伝達し細胞増殖に関与する。HER2蛋白を発現する乳癌は15〜20%に認められ,このHER2に対するモノクローナル抗体であるトラスツズマブはHER2陽性乳癌の予後を改善し,その治療体系は大きく変化した。しかし,臨床的にはトラスツズマブ耐性症例が存在し,その機序と克服が課題である。ラパチニブはHER2受容体チロシンキナーゼを阻害することによりHER2増殖シグナルであるMAPK-ERK1/2とAKTのリン酸化を減少させ癌細胞の増殖を抑制する。本稿では,HER2陽性乳癌の増殖過程とその治療に関し,ラパチニブに焦点を当て述べる。 -
非小細胞肺癌とエルロチニブ
38巻6号(2011);View Description
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エルロチニブとゲフィチニブはキナゾリン骨格をもち,EGFR チロシンキナーゼを選択的に可逆的に阻害する。非小細胞肺癌患者において,EGFR の活性変異はEGFR チロシンキナーゼ阻害剤であるゲフィチニブとエルロチニブの高感受性に寄与している。エルロチニブは,EGFR遺伝子変異陽性患者における初回治療として開発が進んでおり,昨今行われた第Ⅲ相試験の結果,エルロチニブ単独群は化学療法群と比較し,無増悪生存期間および奏効率ともに優れた結果を示した。 -
大腸癌薬物療法と抗EGFR 抗体薬
38巻6号(2011);View Description
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抗EGFR 抗体薬はK-ras 遺伝子に変異がない大腸癌において有用性が示されている。現時点では分子標的薬剤の術後補助化学療法における有用性は認められていない。一次化学療法における分子標的治療薬剤としては,FOLFOX/FOLFIRIへのBV の有用性が検証されている。現時点でのエビデンスと有害事象の点などからは,抗EGFR 抗体薬の一次治療への適応は限定的であり,BV 慎重投与の症例や腫瘍による症状を有する症例や転移巣切除の予定症例など,腫瘍縮小効果が予後に大きく影響し得る症例では抗EGFR 抗体薬の併用療法も考慮される。二次・三次治療における分子標的治療薬剤としては抗EGFR 抗体薬併用療法が勧められる。ただし三次治療まで可能であるような症例においては二次FOLFIRI,三次IRI+Cmab/Pmabなどの治療選択も考えられる。有害事象を適切にマネジメントすることで治療の継続性が高まり,治療成績の向上が認められるため支持療法は抗EGFR 抗体薬治療では特に重要である。 -
腎細胞癌における分子標的治療薬の二次治療
38巻6号(2011);View Description
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サイトカイン療法のみが有用な薬剤であった進行性腎細胞癌の全身治療に種々の分子標的薬が使用されるようになり,進行症例の生存期間も延長してきている。しかし,分子標的薬治療後に進行した症例での二次治療はどうするべきかについての質の高いエビデンスは少なく,ランダム化試験により有用性が示されているのはeverolimusのみである。各薬剤使用のシークエンスを含め,より有効な治療のためには,本邦での今後の検討が必要である。 -
慢性骨髄性白血病とニロチニブ
38巻6号(2011);View Description
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慢性骨髄性白血病(CML)は造血幹細胞の腫瘍化でPhiladelphia染色体により生じたBCR-ABL 融合遺伝子の産生蛋白Ablチロシンキナーゼが発症の要因となる。従来,ヒドロキシウレア,ブスルファンなどによる血球コントロールが行われてきたが,Ablチロシンキナーゼ阻害薬メシル酸イマチニブ(IM)の出現により治療体系は大きく変わった。本薬の継続投与によりCML の80%に細胞遺伝学的完全寛解が得られ,CML 関連死のみを含む全生存率は90%を超えている。それでもIM耐性例,不耐容例が問題となり開発されたニロチニブは第2 世代のAbl チロシンキナーゼ阻害薬で野生型Bcr-AblにはIMの10 倍以上強力な阻害作用を発揮する。また,様々なIM抵抗性変異型Bcr-Ablにも効果を示す。国内外での第II相試験では,IM抵抗性のCML患者に細胞遺伝学的効果,さらには分子遺伝学的効果が得られ,本邦では2009 年1 月に「IM抵抗性の慢性期または移行期のCML」に適応が承認された。第2 世代チロシンキナーゼ阻害薬の選択指針としてEuropeanLeukemia Net Consensusに基づきIM治療にsuboptimal responseまたはfailure,または不耐容の場合ニロチニブの使用が考慮される。IM治療抵抗性の場合はキナーゼドメインの変異解析から,IM治療抵抗性で変異がない場合あるいは不耐容例では患者背景と薬剤毒性の面からニロチニブの選択を考慮する。2010 年12 月には「初発慢性期または移行期のCML」に対してニロチニブの適応が承認された。初発の慢性期CML 患者の予後のさらなる改善,ひいては治癒のために早期からより深い効果が得られる方向に向かうものと思われる。 -
消化管間質腫瘍とスニチニブ
38巻6号(2011);View Description
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消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor: GIST)は分子標的治療が最も効果的な腫瘍の一つである。分子標的薬イマチニブはそれまで有効な治療手段のなかった進行および再発性GIST の予後を大きく改善させたが,一方でイマチニブ耐性腫瘍の治療が問題となった。スニチニブリンゴ酸塩(スニチニブ)は複数の分子を標的とする受容体型チロシンキナーゼ阻害薬であり,イマチニブ耐性GISTに対して唯一,保険診療上,使用が認められた分子標的治療薬である。国内外の臨床試験から,イマチニブ耐性腫瘍に対して24〜39%の臨床的有効率が認められており,7か月の無増悪期間が得られることが示されている。しかし日本人では血小板減少を主体とした骨髄抑制が強く,有害事象のマネージメントに苦慮することが多いこともわかってきた。臨床効果を維持しつつ有害事象を最小限に止めるため,日本人に合った投与方法の検討を進めなければならない。
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Current Organ Topics:脳腫瘍 グリオーマ
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原著
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広島県内における胃癌化学療法の実態調査
38巻6号(2011);View Description
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目的: 広島県内の胃癌化学療法の施行状況を調べるため,アンケートによる実態調査を行った。対象と方法:胃癌化学療法を施行している県内の主要76 施設を対象とした。術後補助化学療法および進行再発例の治療方針について質問した。進行再発例については手術療法の位置付けに関する設問も設定した。結果:がん診療連携拠点病院10 施設を含む41 施設から回答を得た。術後補助化学療法では,StageII,IIIに対しS-1(84%)が選択され,標準用量での開始(79%),1 年間投与(84%)が最も多かった。S-1の内服を1 年以上継続する施設(64%)があり,理由として患者のニーズ(53%)があげられた。Stage IB,II(T1)に対し,S-1(45%)やUFT(20%)が使用されていた。進行再発例(S-1未治療)に対する一次治療は,75 歳未満でS-1+CDDP(62%),S-1単剤(26%)であったが,75 歳以上では各々33,46%とS-1 単剤の選択が増加した。腹水・腹膜播種例では,S-1+CDDP(26%),S-1 単剤(15%),S-1+DTX(21%),S-1+PTX(17%),PTX単剤(17%)とタキサン系薬剤が頻用される傾向にあった。術後補助化学療法としてS-1 投与歴がある患者においては,投与終了時期から再発までの期間によって選択される薬剤が異なっていた。CY1P0,P1での胃切除は各々92,83%で選択され,多くはD1 郭清であった。結論:広島県内では,S-1 を中心とした標準治療が普及していた。症例によっては一次治療でのタキサン系薬剤の使用や,姑息的胃切除術が施行されている実態が明らかとなった。 -
進行・再発胃癌に対するThird-Line ChemotherapyとしてのCPT-11+CDDP 療法の有用性
38巻6号(2011);View Description
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われわれは進行・再発胃癌に対し,first-lineとしてはS-1 単剤,second-lineとしてはtaxane系,third-lineとしてはCPT-11+CDDP の逐次化学療法を施行してきた。今回,third-lineとしてのCPT-11+CDDP 投与の有用性について検討した。対象は進行・再発胃癌患者に対して化学療法を施行した118 例中,third-lineとしてCPT-11+CDDP 療法を施行した34例であった。first-lineからsecond-lineへの移行率は72%でsecond-lineからthird-lineへの移行率は40%であった。thirdlineとしての奏効率は5.9%,third-line からの生存期間中央値(MST)は209 日であった。有害事象はgrade3 を7 例(20.6%)に認めたが,重篤なものは認めなかった。CPT-11+CDDP 療法はthird-line chemotherapyとして安全で有効な治療法であると考えられた。 -
Efficacy and Toxicity of S-1 Plus Cisplatin Combination Neoadjuvant Chemotherapy in Patients with Oral Cancer
38巻6号(2011);View Description
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S-1 は,多くのがんの治療に対する化学療法剤として広く使用されている経口フッ化ピリミジン系薬剤である。本研究では,口腔癌治療の術前化学療法として用いたS-1とcisplatin(CDDP)併用(S-1/CDDP)の効果と安全性について検討した。対象は口腔癌と診断されS-1/CDDP で治療を行った12 症例で,連続21 日間のS-1 内服とその後14 日間の休薬および治療開始後8 日目に生食500mL に溶解し120分かけてCDDP(60mg /m2)静脈内投与を行った症例であった。7 例にPRが認められた。平均経過観察期間は54.8か月で,11例生存していた。本方法は副作用が少なく,grade 3 の血小板減少症が1 例のみでgrade 4 はみられず,治療による死亡例は認められなかった。さらに5-fluorouracil(5-FU)効果と関連しているTS,DPD およびOPRT の免疫組織学的発現について検討したが,今回の症例群による検討結果では,免疫組織学的評価と臨床病理学的因子との間には相関性が認められなかった。 -
ベバシズマブ併用大腸癌化学療法による口腔有害事象に関する後ろ向き検討
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目的: われわれはベバシズマブ(BV)併用大腸癌化学療法により重篤な口内炎を発症した患者を複数経験した。口内炎発症におけるBV の影響を検討することを目的に後ろ向き調査を行った。対象と方法: 2008 年1 月〜2009 年12 月の間にBV 併用化学療法施行後口内炎を発症した患者11 名を対象とした。この11 名について口内炎発症に関与する要因,口内炎の程度,発症後の症状,口内炎に対する治療内容を解析した。結果:口内炎の程度はgrade 1: 5 名,grade 2: 3 名,grade 3 が3 名であった。7 名は前治療を受けていたが,その間には重篤な口内炎の発症はみられなかった。口内炎の所見は,発赤11名,びらん・潰瘍7 名,アフタ3 名,偽膜形成3 名であった。口内炎の発生部位は頬粘膜咬合線上で11 名全員に一致していた。治療として,ポラプレジンク口腔内崩壊錠を使用することで口内炎は軽快し,BV の継続が可能であった。考察:口内炎の発症には,種々の要因が関与しており,一つの原因を特定することは困難である。しかし,BV 投与により唾液中のVEGFレベルが低下し,口内炎の修復を遅延させることがその原因の一つになると推察される。 -
セツキシマブ投与によるInfusion Reactionの発現時期の検討
38巻6号(2011);View Description
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セツキシマブ投与によるinfusion reaction(以下,IR)は,軽度のものから重篤なものまで含めた発現率はおよそ20%で,投与に際して十分に注意を払う必要のある有害事象であることから,IR の発現時期とその程度について調査した。2008年9 月〜2010 年2月に,愛知県がんセンター中央病院(以下,当院)の実地臨床でセツキシマブが投与され,調査可能であった大腸がん症例93例について,レトロスペクティブに,performance status(PS),IR の発現時期,投与開始後からIR 発現までの時間,副作用grade分類,併用抗がん剤について調査検討した。患者背景は,年齢中央値は62 歳(範囲29〜82歳),男性63 名,女性30 名,PS は0: 7 名,1: 71 名,2: 15 名,外来における初回投与は45 例(48%),治療経過は三次治療以降の患者が83 名(89%),併用する抗がん剤はイリノテカンweekly 投与が44 例(59%),イリノテカンbiweekly 投与が17 例(23%)であった。IR の発現は12 例(13%)で認められ,grade 1 および2 が各6 例であった。IR の発現時期は,初回投与時が11例(92%)で,その内訳はgrade 1 が6 例,grade 2 が5例であった。投与3 回目においてgrade 2 のIR発現が1例認められた。IR のgrade 1 の主な症状は発熱や悪感,嘔気・嘔吐,皮膚掻痒感が認められ,発熱や悪感に対してNSAIDs が投与されたが,嘔気・嘔吐および皮膚掻痒感に対しては経過観察であった。grade 2 では呼吸苦,喘鳴,全身発疹,顔面紅潮,痙攣が認められ,いずれの症例もステロイドが投与され,症状は軽快した。投与開始後のIR 発現について点滴開始後15 分までのIR発現は3 例(25%)(grade 1: 1 例,grade 2: 2 例),16〜60分では3 例(25%)(grade 1: 1 例,grade 2: 2 例),61〜120 分では6 例(50%)(grade 1: 4 例,grade 2: 2 例)であった。 -
酢酸ゴセレリン注射時における局所冷却による疼痛緩和効果の検討
38巻6号(2011);View Description
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目的: 氷と冷却スプレー(sp)を用いた冷却が酢酸ゴセレリン投与に伴う疼痛の軽減に有効であるかを評価する。対象と方法:酢酸ゴセレリンによるホルモン療法施行中の前立腺癌患者47 例を対象とした。氷(2009 年3 月以前)あるいは塩化エチル含有冷却sp(2009 年4 月以降)による前処置後,前立腺癌患者に酢酸ゴセレリンを皮下注射した。酢酸ゴセレリン投与に伴う疼痛は,face scale(FS)とnumerical rating scale(NRS)を用いて評価した。結果: 氷あるいはsp による冷却時(初回)のFS(NRS)中央値は,非冷却時と比較し有意に低値であった(FS,NRS ともp<0.01)。全47 人中39 人(83.0%)が冷却を希望し,非冷却を希望したのは5 人(10.6%)にすぎなかった。氷と冷却sp時のFS(NRS)中央値に有意差を認めなかった(FS: p=0.353,NRS: p=0.120)。氷冷却で2 例に軽微な遅発性皮下出血を認めたが,その他に冷却に伴う有害事象を認めなかった。結論: 酢酸ゴセレリン投与時の注射部位の冷却は,冷却法にかかわらず(氷あるいは冷却sp),疼痛緩和に有効であった。また注射部位の局所冷却に伴う重大な合併症はみられなかった。 -
S-1服用患者における腎機能を考慮した副作用発現頻度の解析
38巻6号(2011);View Description
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ティーエスワン(S-1)の副作用発現頻度については多数報告されているが,投与量の重要な指標となる腎機能を考慮して副作用発現頻度を検討した報告は見当たらない。そこで今回,大垣市民病院外科においてS-1 が処方された患者を対象に,腎機能別の副作用発現頻度を調査した。2008 年10 月〜2009 年12 月に大垣市民病院外科においてS-1 が処方された患者163 名を対象とした。クレアチニンクリアランスが低い群ほど副作用発現頻度が高く,さらにその程度は重篤であった。また,血小板減少,脱水で有意差を認めた。このことから,薬剤師も服薬指導および経過観察を積極的に行っていく必要があると考える。
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特別寄稿
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多様な病態を示すがん性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬の有用性―オキシコドンの鎮痛プロファイルを中心に―
38巻6号(2011);View Description
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がん性疼痛の発現機序は複雑で,内臓痛,神経障害性疼痛,骨疼痛などの多様な病態を呈する。オピオイド鎮痛薬は治療薬として高い有効性を示すが,効果的な疼痛治療を行うためには疼痛の病態に応じた薬剤の選択が重要である。各種オピオイドの鎮痛プロファイルは均一ではなく,特に神経障害性疼痛と骨疼痛に対する反応性は各オピオイド間で大きく異なることが少なくない。オピオイド鎮痛薬の使用に際しては副作用への配慮も欠かすことができない。また,根治的治療期の化学療法などに伴う神経障害性疼痛の治療にオピオイド鎮痛薬を使用する場合は,乱用・嗜癖を防ぐための十分な配慮が求められる。オキシコドンは神経障害性疼痛に対する有効性のエビデンスが高く,治療抵抗性の骨疼痛に対しても鎮痛効果を期待できることに加えて,安全性プロファイルに優れているという報告も公表されているので,多様な病態を示すがん性疼痛に対するオピオイド治療の第1 選択薬に適していると考えられる。
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症例
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外来S-1単独投与により無再発期間延長が得られた転移性眼瞼脂腺癌症例
38巻6号(2011);View Description
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眼瞼脂腺癌の眼窩内容除去術後の反復する頸部転移症例に対して,S-1 単独外来化学療法を施行し,投与開始後29 か月無再発生存が可能であった症例を報告する。症例は68 歳,女性。再発性右眼窩腫瘍に対する眼窩内容除去術後,頸部リンパ節転移を生じ転移巣の摘出手術を繰り返したため,眼窩内容除去術後19 か月目から再発予防を目的にS-1(80 mg/body/day・分2)を投与開始した。本例はS-1投与後29 か月間無再発であったこと,薬物中断を契機に急激な腫瘍の増大をみたことから,S-1 が脂腺癌の再発予防に効果があったと考えられる。有効な化学療法が明らかでない脂腺癌の再発転移巣に対する治療選択の一助となることが期待された。 -
肺癌患者の直接死因に対するレトロスペクティブな検討―腸管壊死で死亡した肺癌患者の2 例―
38巻6号(2011);View Description
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当センターで過去5 年間に肺癌経過中に死亡退院となった患者313 例の直接死因をレトロスペクティブに分析した。消化器疾患による死亡は,呼吸不全34.8%,肺炎19.0%,悪液質12.0%,脳転移8.3%に次いで7.0%(22 例)と5 番目に多かった。22 例のうち肝転移による肝不全死が10 例と最も多く,上下部消化管出血が8 例で続いた。腸管壊死で死亡した2例については,剖検結果から2 例とも死因と腫瘍との直接的な因果関係は否定された。しかし,長期臥床や栄養状態不良,急激な体重減少が腸管壊死の原因であった可能性は否定できず,高齢や担癌状態,抗癌剤治療が少なからず影響していたと考えられた。 -
同側腋窩リンパ節転移を伴う胸壁浸潤肺癌に対し化学放射線療法後に根治手術を行った1 例
38巻6号(2011);View Description
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症例は41 歳,男性。右第3,4,5 肋骨に浸潤し肺門部にリンパ節腫大を伴う75 mm大の非小細胞性肺癌(cT3N1M0,cStage IIIA)に対し化学放射線療法を開始したが,cisplatin(CDDP)/docetaxel(DOC)1 コース,放射線照射28 Gyの時点で間質性肺炎が出現し中止となった。その時点のPET-CT にて原発巣,肺門リンパ節の他,右腋窩リンパ節にも集積を認め,穿刺細胞診でclass Vであった。cStageIVであったが,根治切除可能と判断し右上葉切除・胸壁合併切除,ND2a,右腋窩郭清を施行した。病理で原発巣に腫瘍成分を認めず,肺門縦隔リンパ節転移を認めず,腋窩リンパ節1 個のみ転移を認めた。術後補助化学療法CDDP/vinorelbine(VNR)を3 コース施行し,術後10 か月,再発なく経過している。同側腋窩リンパ節転移は規約上遠隔転移とみなされるが,胸壁浸潤部からの局所リンパ行性の転移である可能性があり,切除の適応となり得ると考えられた。 -
バンコマイシン投与によって難治性肝性脳症が改善し肝細胞癌に対する肝動脈化学塞栓療法が可能となった1 例
38巻6号(2011);View Description
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症例は80 歳,男性。C 型肝硬変,肝細胞癌で通院していた。2007 年秋ごろから肝性脳症を繰り返すようになり,頻回の外来通院と入院加療を必要とした。肝予備能の低下により,肝細胞癌に対する治療は不可能となった。肝性脳症に対して緩下剤,ラクツロース,カナマイシン内服などの投与を行ったが,脳症のコントロールは困難であった。血中アンモニア値は130 μg/dL前後で,時に200 μg/dL 以上となった。12 月よりバンコマイシン内服(0.5 g/回,3 日に1 回投与)を追加したところ,アンモニア値は速やかに50 μg/dL 低下となり,意識レベルの正常化,ADL,QOLの改善など著明な効果が得られた。バンコマイシン内服開始3 か月後には,Child C(10 点)からChild B(7 点)と肝予備能も改善,肝細胞癌に対し肝動脈化学塞栓療法が可能となった。 -
硬膜下血腫で発症したDIC 併発胃癌骨髄癌症に対しMTX/5-FU時間差投与法が奏効した1 例
38巻6号(2011);View Description
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症例は44 歳,男性。頭痛を主訴に近医を受診し硬膜下血腫と診断され,当院脳神経外科へ紹介入院となった。播種性血管内凝固症候群(DIC)の状態であったが,穿頭血腫ドレナージ術が施行された。骨髄検査で印環細胞癌を認め,CT で胃癌が疑われたことから進行胃癌の骨髄転移によりDIC を併発したと考えられた。DIC 治療および輸血を行ったが出血傾向は改善せず,第14 病日に緩和ケアチームへ紹介された。緩和的化学療法に関して家族は治療を希望されなかったが,患者の意識の回復後に本人と家族の同意が得られ,methotrexate(MTX)/5-FU 時間差投与法(MF療法)を開始した。治療は奏効し,DICを離脱して第57 病日に退院となった。 -
Phenytoin Toxicity in a Patient Receiving Concomitant Use ofPhenytoin and S-1 Plus Cisplatin Chemotherapyfor Advanced Gastric Cancer
38巻6号(2011);View Description
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症例は61 歳,男性。てんかん治療のためフェニトインとバルプロ酸ナトリウムを内服していた。リンパ節転移を伴う進行胃癌と診断されたためS-1+cisplatin 化学療法が施行された。化学療法開始2 か月後に下肢脱力,ふらつき,上肢振戦を認めた。頭部CT とMRI 検査で脳転移などの頭蓋内病変は認めなかったが,血清フェニトイン濃度が21.2 mg/mL と上昇していたためフェニトイン中毒と診断した。フェニトイン内服量を150 mg/日に減量したが,ふらつきは消失しなかったためフェニトインとバルプロ酸ナトリウムを中止した。薬剤中止7 日後に正常歩行が可能になった。本症例ではS-1 による血清フェニトイン濃度の上昇が薬剤開始2 か月後とタイムラグを認め,cisplatin による血清フェニトイン濃度減少作用との相反が認められた可能性があった。フェニトイン内服患者におけるS-1 投与では,血清フェニトイン濃度上昇時期を予測し,血清フェニトイン濃度モニタリングを適宜行うことが重要である。 -
腹膜播種を伴う原発性小腸癌に対してS-1/CPT-11療法を施行した1 例
38巻6号(2011);View Description
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症例は62 歳,女性。心窩部不快感,嘔気,黒色便を主訴に当院を受診した。腹部CT にて十二指腸から空腸移行部に腫瘍性病変を認め,近傍に腹膜播種を疑う病変が存在した。上部消化管内視鏡検査では空腸起始部が2 型腫瘍で閉塞していた。病理組織検査の結果は高〜中分化型腺癌であった。腹膜播種を伴った原発性小腸癌で,腫瘍により腸閉塞となっていたため手術を施行した。術後,S-1/CPT-11療法を施行し,いったんは腫瘍マーカーの正常化を認めたが,14 コース施行後に腹膜播種の増大を認めPD となった。second-line としてS-1/CDDP 療法,third-line として5’-DFUR/PTX 療法を行ったが奏効せず,初回治療開始後20 か月で死亡された。原発性小腸癌は頻度が少ないため有効な化学療法が確立されていないが,S-1/CPT-11 療法はその選択肢の一つとなり得ると考えられた。 -
Abdominal Wall Infiltration by Small Bowel Adenocarcinoma ina Patient with Crohnʼs Disease―A Case Report
38巻6号(2011);View Description
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症例は46 歳,男性。クローン病の診断で他院より紹介された。2007 年,腹痛と右下腹部皮膚の発赤・腫脹を認め,小腸造影および腹部CT 検査で回腸末端の狭窄と腹壁への穿通が疑われた。外科転科となり,狭窄部位の解除目的で手術が行われた。所見は回盲弁より35 cm 口側の回腸が右下腹壁に癒着しており,回腸壁と腹壁の一部を切除した。術後病理組織検査の結果は回腸癌腹壁浸潤の所見であったため,再手術を施行した。回盲弁より1 m口側の回腸を含めた回盲部切除と広範囲腹壁合併切除術を行った。組織学的にはクローン病を背景に,前回縫合部位の回腸に腺癌の所見を認めた。また切除腹壁に広範な浸潤を認めたが,断端に腫瘍の露出を認めなかった。術後は経過良好で退院となり外来で化学療法を行っていたが,CT およびPET 検査で腹壁再発が疑われたため,さらに放射線治療を行い一時的な寛解を認めたものの術後1年9か月で死亡した。 -
三次治療としてのCetuximab単独療法にてConversion Therapyが可能となった大腸癌肝転移例―病理学的完全奏効例―
38巻6号(2011);View Description
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大腸癌肝再発に対して施行した三次治療のcetuximab単独療法が著効し,conversion therapyとして肝切除を施行し得た1 例を経験した。肝切除標本内に癌遺残を認めず,病理学的完全奏効と判定した。進行大腸癌の集学的治療には,多職種の関与とエビデンスに基づいた個々の施設でのコンセンサス形成が重要である。 -
Capecitabineによる術前化学放射線療法が奏効し治癒切除が得られた局所進行S 状結腸癌の1 例
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症例は60 歳,男性。排尿痛を主訴に受診した。精査により膀胱,直腸,骨盤壁に浸潤を伴うS 状結腸癌と診断した。切除不能と考え,人工肛門造設の後,腫瘍縮小目的で術前化学放射線療法(NACRT)を施行した。放射線治療は1.8 Gy×5日/週×5 週,計45 Gy,併用化学療法はcapecitabineを用い,825 mg/m2×2/日×5/週×5 週を施行した。NACRT後,CTで腫瘍の縮小(効果判定,RECIST基準PR)を認め,膀胱,直腸への浸潤は遺残したが,骨盤壁への浸潤は消失した。FDGPETで遠隔転移が認められず,治癒切除可能と思われた。NACRT終了後1 か月に骨盤内臓全摘術(TPE)を施行,病理組織学的にも治癒切除できた。術後経過は良好で,capecitabine術後補助化学療法を4 コース施行し,現在,10 か月無再発生存中である。capecitabineを用いたNACRTは切除不能局所進行結腸癌に対して有用な治療法と考えられた。 -
直腸癌多発肺転移に対するUFT/LV 療法中に発症した薬剤性間質性肺炎の1 例
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症例は70 歳,男性。直腸癌,多発肺転移に対して2009 年8 月ハルトマン手術を施行し,原発巣の切除術を開始した。術後30日目から多発肺転移に対してホリナート・テガフール・ウラシル(UFT/LV)療法(UFT 300 mg/日・分3 経口投与,LV 75 mg/日・分3 経口投与,28 日間連続投与,7 日間休薬)を行った。2 コースの休薬期間中に発熱および呼吸苦出現,薬剤性間質性肺炎を疑われ緊急入院した。入院後ステロイド内服加療(prednisolone 30 mg)を開始した。臨床症状,画像検査所見は速やかに改善し,治療開始10 日目に退院となった。UFT/LV 療法に伴う薬剤性間質性肺炎の発生頻度は0.1%未満であり,非常にまれな合併症である。ステロイドによる早期治療が有効であり,まれではあるが副作用として薬剤性間質性肺炎を念頭においた注意深い経過観察が必要と考える。 -
膀胱癌に対する経口5-FU 製剤を用いた個別化治療の可能性の検討―膀胱癌多発転移症例に対してUFT 少量投与が著効を示した1 例―
38巻6号(2011);View Description
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浸潤性膀胱癌に対する抗癌剤治療は,methotrexate,vinblastine,doxorubicin,cisplatin(M-VAC)療法やgemcitabine,cisplatin(GC)療法などの多剤併用療法が標準治療となっているが,良好な治療成績は得られていないのが現状である。また,多剤併用療法はperformance status(PS)不良や高齢患者の状態をさらに悪化させ,患者のquality of life(QOL)や予後を不良とする一因となっていることも否めない。今回われわれは,膀胱癌全摘除術後に急速に多発転移を来した高齢患者において,UFT 少量投与が極めて有効であった症例を報告する。加えて,各種ヒト膀胱癌由来細胞株に対する5-FU およびuracil,5-chloro-2,4-dihydroxypyridine(CDHP)の併用効果をcollagen gel droplet embedded drug sensitivity test(CD-DST法)で評価し,経口5-FU 製剤であるUFT やS-1による個別化治療の可能性について検討した。 -
ゾレドロン酸使用により骨転移の疼痛コントロールが良好になされた子宮体癌の1 例
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子宮体癌は,他の固形癌と異なり骨転移を起こすことは少ないとされている。今回,坐骨転移による骨痛が発見の契機となり,ゾレドロン酸により骨痛が良好にコントロールされた子宮体癌の1 例について報告する。症例は57 歳,女性。右坐骨痛を訴え,当院整形外科を受診した。骨シンチグラフィにて,悪性腫瘍の骨転移を疑われたためCT およびMRIを行ったところ,溶骨性の骨転移と子宮の腫大を認め子宮由来の悪性腫瘍を疑われ,当院産婦人科に紹介となった。子宮内膜の生検により,類内膜腺癌を認めた。子宮体癌診断にて,単純子宮全摘術+両側付属器切除術+右側坐骨生検術を行った。坐骨生検の結果は類内膜腺癌であり,子宮体癌の坐骨転移と考えられた(pT3aN1M1)。術後化学療法として,パクリタキセル/カルボプラチン併用療法を6 コース行った。坐骨痛はNSAIDSの併用によりいったん軽快したが,術後9 か月に再出現した。そこでゾレドロン酸4 mgを4 週ごとに投与したところ,4 コース後にはvisual analogue scaleは70 から10へ低下し,その後骨痛は軽減を維持した。ゾレドロン酸は子宮体癌の骨転移による疼痛管理に有用であると考えられた。 -
S-1/Low-Dose CDDP 併用療法が奏効した胃癌骨転移再発による播種性骨髄癌症の1 例
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症例は50 歳台,男性。1995年胃癌に対し胃全摘術を施行した(stageII)。2008年4月ALP高値を指摘され,精査にて胃癌多発骨転移と診断されたが,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation: DIC)を発症し,播種性骨髄癌症の診断で,S-1/low-dose CDDP 併用療法(S-1 80 mg/m2/day・分2 を2週間投与1 週間休薬,CDDP 20 mg/m2をday 1,8 に投与)を開始した。1 コースでDIC は改善し,2009 年4 月に死亡するまで最終的に約1 年間の予後を得ることができた。S-1/low-dose CDDP 併用療法はDIC を伴う胃癌多発骨転移に対しても有用な治療法であると考えられた。 -
多発性肝腫瘍を契機にカルチノイドと診断治療され8 年5 か月生存し得た膵原発高分化型神経内分泌癌の1 例
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症例は58 歳,女性。近医にて多発性肝腫瘍を指摘され,精査加療目的で当院受診となった。肝腫瘍生検にてカルチノイドと診断,骨シンチグラフィ検査で左肩甲骨外側,両股関節に異常集積を認めたが,原発巣は不明であった。全身化学療法としてgemcitabine投与の他,肝病変に対し肝動脈化学塞栓術,骨病変に対し放射線治療が施行されるも,8 年5 か月後に肝病変が悪化し永眠された。剖検診断で原発巣は小病変ながらも,膵原発高分化型神経内分泌癌と推定された。
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薬事
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Cisplatin(CDDP)投与に伴う悪心・嘔吐に対するAprepitantの有効性についての検討
38巻6号(2011);View Description
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抗悪性腫瘍剤投与に伴う悪心・嘔吐(CINV)は,患者にとって苦痛のある副作用である。QOL を低下させ,しばしば化学療法の継続に支障を来すこともあるので,症状の発現を予防することが極めて重要である。NK-1 受容体拮抗薬であるaprepitant はガイドラインで使用が推奨されている制吐剤である。aprepitant を使用せず,CDDP レジメン開始後2 コース目以降でaprepitant を使用した9 例についてCINV に対する有効性について検討を行った。aprepitant 未使用時と比較して,aprepitant使用により急性期・遅発期ともにCINV のgradeや救援治療の有無においても改善がみられた。今回の検討からaprepitantはCINV に対して有効であると考えられた。
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癌レポート
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がん患者の在宅中心静脈栄養法(HPN)導入に際しての患者教育に関する看護師の取り組み
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患者やその家族への在宅中心静脈栄養法(HPN)に関するマネージメントの教育は,スムーズな在宅医療への移行に際し必須のプロセスである。われわれは2007年より,専従看護師による6 日間の教育カリキュラムを実践してきたので,その現状を報告する。対象は2007 年4 月〜2009 年1 月の期間にHPN の教育を受けたがん患者104 例であり,外来移行は67例(64%)で可能であった。退院から死亡までの期間の中央値は260 日,そのうち在宅療養が可能であった日数の中央値は117 日であり,在宅率は45%であった。 -
外来化学療法患者に対する副作用対策―パンフレットを活用した副作用の患者自己管理の推進―
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外来化学療法患者に対する副作用対策の一つとして,当院外来化学療法センターの場所や診療の流れに関する案内,抗癌剤の副作用に関する解説とその対処法,非血液毒性に関する自己管理チェックシートで構成される患者向けパンフレットを2008年9 月に作成し,10 月に導入した。2009 年1 月〜2月の2 か月間に,外来化学療法患者120 名に無記名投函法にてアンケートを実施した。その結果,パンフレットの内容に関心を示さなかった患者は2%のみであり,副作用の解説とその対処法をはじめ,その内容に高い関心を示した患者がほとんどであった。また,performance status や非血液毒性の程度を患者自身によって記入してもらう自己管理チェックシートの記入率は90%と高かった。記入率を年齢別,性別に比較検討すると,年齢別では,70歳未満でも70歳以上でも90%であり,年齢による違いは認められなかったが(p=0.9334),性別に比較すると,男性は74%,女性は95%であり,女性のほうが有意に記入率が高い傾向にあった(p=0.0046)。
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