Volume 38,
Issue 11,
2011
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総説
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癌と化学療法 38巻11号, 1745-1749 (2011);
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ゲノムインプリンティング(遺伝子刷り込み)とは,母親と父親ゲノムに親由来が記憶される現象である。インプリントまたこの分子機構の破綻は,先天性疾患や小児期のがん発生および多種類のがんに関与する。インプリント遺伝子発現の調節にはエピジェネティックな分子機構が働く。近年のエピジェネティクス研究の進展は,がん化機構の病態解明に加え,がんの診断法の開発,予防法(リスク診断),新薬開発,予後や治療効果の判定などに臨床応用されはじめている。
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特集
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外来がん化学療法におけるリスク管理
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癌と化学療法 38巻11号, 1750-1752 (2011);
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抗がん剤の血管外漏出は難治性潰瘍形成など重篤な皮膚障害を来すリスクが少なからず存在し,化学療法中の患者にさら負担をかけることになる。最近やっと国内でも血管外漏出についてのガイドラインが出版され示されたが,最も重要な対処法に関してはエビデンスが乏しいため実践的な指針は示されていない。そのため,各施設で独自の対処による院内プロトコールを策定する必要がある。われわれは,これまで漏出後即時のステロイド剤局注による対処法により,その後皮膚障害が出現し問題となった症例の経験はまったくないため,ここにその対処法について解説する。
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癌と化学療法 38巻11号, 1753-1757 (2011);
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抗癌薬の副作用で,過敏性反応として知られるinfusion reaction とアレルギー反応は比較的頻度が高く,重篤化すると生命予後にかかわるため日常診療において細心の注意が必要である。infusion reaction の作用機序は十分に解明されていないが,一部はサイトカインの放出反応と考えられる。主に分子標的薬のなかの抗体薬によって発症し,特に抗CD20 抗体のrituximabの場合は,infusion reactionの頻度が高いので注意を要する。一方,アレルギー反応は,IgE を介したⅠ型アレルギー反応として発症し,重症化の場合はアナフィラキシーと呼ばれる。化学療法薬のなかでは,プラチナ系抗癌剤とタキサン系抗癌剤はアレルギー反応の頻度が比較的高い薬剤である。この総説ではこれらの過敏性反応に対する予防対策や発症時の救急処置法について述べる。
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癌と化学療法 38巻11号, 1758-1760 (2011);
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外来抗がん剤治療におけるリスクマネジメントの観点に立って,嘔吐,嘔気のコントロールについて阻害因子をどう除去して,安全性を改善するのかということで記述した。特に医師間の格差をなくして,ガイドラインに沿った処方を抗がん剤治療でも制吐剤でも行うことが重要で,処方セット化やレジメン登録による管理が重要である。看護師,薬剤師による管理も協力して導入することが安全性につながる。
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癌と化学療法 38巻11号, 1761-1766 (2011);
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化学療法による粘膜炎は臨床的に重要で,時として用量制限毒性となる。その結果,減量や治療延期により治療効果が妨げられる可能性がある。症状は部位により口内炎,嚥下障害,下痢などがある。口腔粘膜炎の発生機序は過去10 年でかなり解明されたが,ランダム化比較試験で効果が確認された予防法や治療法は少ない。最も一般的に受け入れられているのは口腔ケアである。下痢はirinotecan をうける患者で最もよく見られるが,時に生命に危険が及ぶ。定まった予防法はないが,出現した下痢に対してはloperamide やoctreotide の有効性が証明されている。今後は,より有効な治療法に関して質の高い臨床試験で検証する必要がある。
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癌と化学療法 38巻11号, 1767-1772 (2011);
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皮膚症状は,外見的な変化による心理的苦痛をはじめ,患者のQOL に影響を及ぼす可能性が示唆されている。一方で,抗EGFR 阻害薬(cetuximab,panitumumab,erlotinib)における皮膚障害の程度と臨床効果に相関が認められている。EGFR 阻害薬による皮膚症状を適切にマネジメントしながら,可能な限り治療を継続することが患者のベネフィットにつながる。経口フッ化ピリミジン系抗がん剤(capecitabine,S-1)におけるhand-foot syndromeでは,日常のセルフスキンケア(清潔,保湿,刺激からの回避)が重要であり,減量・休薬を含めた早めの対処がポイントとなる。
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癌と化学療法 38巻11号, 1773-1776 (2011);
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化学療法による末梢神経障害(chemotherapy-induced peripheral neuropathy: CIPN)は比較的頻度の高い有害反応の一つであり,化学療法を受けた患者の約3〜4割が経験するといわれる。末梢神経障害はタキサン系抗がん剤,ビンカアルカロイド製剤,白金製剤,bortezomib,thalidomideなど,様々な薬剤によって起こり得る。症状が出現すると回復に時間がかかり長期にわたって患者のQOL を損ねる他,不可逆的な障害を残してしまう場合もある。さらに薬剤の減量や中止を余儀なくされることから,慢性の有害事象として問題になることが多い。現時点ではCIPN に対する治療法や予防法は確立されておらず,早期発見と早期対応が重要となる。外来がん化学療法においては,看護師や薬剤師など多職種がかかわって症状をモニターしていくことが有用である。
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癌と化学療法 38巻11号, 1777-1781 (2011);
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骨髄抑制は,固形腫瘍や造血器腫瘍に対する化学療法によって生じる最も重要な副作用の一つで,好中球減少・貧血・血小板減少を引き起こす。特に発熱性好中球減少症は生命にかかわり得るので,速やかに適切な治療が必要である。
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癌と化学療法 38巻11号, 1782-1784 (2011);
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がん化学療法における間質性肺炎発症のリスクは,抗がん剤投与の副作用による間質性肺炎の発生のみではない。リスクの発生段階として, 1.化学療法採択時(患者と化学療法レジメンの選択および患者説明), 2.化学療法中, 3.化学療法後の経過観察期間, 4.初期症状出現時および間質性肺炎の確定診断後に分けることができる。各段階で十分なリスク管理を行うとともに,医師・呼吸器専門医・看護師・薬剤師などチーム医療を行いながらリスク管理を行う必要がある。
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Current Organ Topics:大腸癌
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癌と化学療法 38巻11号, 1785-1785 (2011);
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癌と化学療法 38巻11号, 1786-1789 (2011);
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癌と化学療法 38巻11号, 1790-1792 (2011);
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癌と化学療法 38巻11号, 1793-1797 (2011);
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癌と化学療法 38巻11号, 1798-1802 (2011);
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原著
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癌と化学療法 38巻11号, 1803-1807 (2011);
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口腔・顎顔面領域癌に対する超選択的動注同時化学放射線療法(以下,HFT 法)は,stageIII,IVの進行癌や切除不能癌に対し,原発腫瘍切除回避をめざした治療法として期待され,本邦でも広まりつつある。本法は極めて高い奏効率の報告がなされている一方で,治療に伴う有害事象も少なからず存在する。当科ではHFT法を2007 年から導入し,2009 年4 月までに計13 例の口腔癌に施行した。治療4 週後における評価で完全寛解率は100%であり,非常に良好な治療成績を認めたが,数々の有害事象も経験したため,それら有害事象に対する検討を行った。全例においてgrade 3 以上の口内炎・白血球減少が生じた。また,ほとんどの症例で悪心・嘔吐が出現したが,うち1 例はカテーテルの椎骨動脈への誤送入が原因と考えられた。本療法では十分な患者情報の収集と注意深い観察を行い,慎重に治療を進めていくことが重要だと考えられた。
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癌と化学療法 38巻11号, 1809-1811 (2011);
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喉頭癌は頭頸部領域の悪性腫瘍で最も頻度が高いが,その一方で早期発見と治療が可能なことから比較的予後が良好とされている。喉頭癌の治療に関しては報告が多数存在し,どの施設でも治療方法はある程度一定しているが,喉頭癌T2症例での喉頭温存率,治療の選択などに関しては施設間差がまだ存在している。治療法の選択によっては生存率が増加するものの,温存できる音声機能を喪失させてしまう場合もある。当科では,根治と臓器・機能温存の立場に重点をおき,喉頭癌T2 症例に対してS-1,nedaplatin/放射線同時併用療法を中心に行っている。対象は2005 年4 月〜2010 年3 月までに当科で一次治療を施行した喉頭癌T2 症例の27 例(男性23 例,女性4 例)とした。平均年齢は64.1(42〜80)歳,平均経過観察期間は30.6(2〜60)か月であった。TNM分類はT2N0M0が24 例,T2N1M0 が1 例,T2N2bM0 が2 例であった。当科での疾患特異的生存率は96.3%であった。また,CR率は88.9%,喉頭温存率は92.6%であった。
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癌と化学療法 38巻11号, 1813-1816 (2011);
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背景: pemetrexed(PEM)とcisplatin(CDDP)併用療法は未治療非扁平上皮癌に対して有用性が示されているが,高齢者に対する評価は定まっていない。目的:後期高齢者へのCDDP+PEM併用療法の効果や毒性を明らかにする。対象と方法: 2009年6 月〜2010 年5 月までCDDP+PEM併用療法を実施された75 歳以上の非扁平上皮肺癌6 例について,後ろ向きに解析した。結果:平均年齢は79.2(76〜82)歳,男性/女性: 3/3,病期IIIB/IV: 1/5,全例がEGFR 遺伝子変異陰性の腺癌で,5 例がfirst-line,1 例のみthird-lineであった。4 例が4 コースを完遂した。効果は奏効率50%,病勢コントロール率83%であった。毒性は血液毒性としてgrade 3/4 の好中球減少を1/2 例,血小板減少を1/1 例に認めたが,輸血は必要としなかった。腎機能が低下していく症例で骨髄抑制は重篤となった。grade 3 の嘔気,食欲不振を半数に認め,そのため2 例が1 コースで終了となり,長期入院の要因ともなった。結論:後期高齢者に対してもPEM であれば骨髄抑制の忍容性からCDDP と併用可能であるが,腎機能の低下への配慮と嘔気対策は必要と考えられた。
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癌と化学療法 38巻11号, 1817-1820 (2011);
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背景: 切除不能・再発進行胃癌に対してS-1 ベースの化学療法が汎用されている。特に75 歳未満の臓器機能良好例においてはS-1/CDDP療法の有用性が示され,標準治療として位置付けられるようになった。一方で,実地臨床では臨床試験の対象患者とは背景の異なる患者を診察することも多い。目的と方法:当センターにおいて胃癌化学療法の実態と治療成績を明らかにすることを目的とし,2002 年1 月〜2009 年9 月にS-1 ベースの化学療法を開始した切除不能・再発進行胃癌78症例をレトロスペクティブに検討した。結果:高齢者は23 例(29%),腎機能障害例は8 例(10%),いずれか一方を満たす症例は27例(35%)を占めた。S-1/CDDP 療法は全体の63%に施行されていた。S-1 ベースの化学療法の治療成績はRR 44%,PFS 5.4 か月,MST 10.6か月であった。多変量解析では全生存期間に対する予後良好に寄与する因子として,高齢,分化型癌,S-1療法が抽出されたが,いずれも有意差は認められなかった。結論:実地臨床では高齢者,腎機能障害も多く,S-1ベースの化学療法は有用であった。今回の検討では高齢者や腎機能障害を含む対象においてCDDP の上乗せ効果を示すことはできなかった。
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癌と化学療法 38巻11号, 1821-1824 (2011);
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目的:大腸癌肝転移に対する肝切除・熱凝固療法後における補助化学療法として経口剤を用いた報告は少ないため安全性と有効性について検討を行う。対象: 2003〜2008年に当科および関連施設で大腸癌肝転移に対して肝切除/マイクロ波焼灼療法/ラジオ波焼灼療法を行った後,S-1もしくはUFT/UZEL を投与した20 例。結果:年齢は平均62.4 歳で同時性13 例,異時性7 例。S-1投与は16 例,UFT/UZEL 投与は4 例。再発は12 例(60%)。無病生存期間の中央値は17.6 か月,生存期間の中央値は47 か月。有害事象は14 例(70%)に認められたがgrade 3 以上の有害事象は好中球減少1 例(5%)であり,その他は下痢3 例,食欲低下3 例,口内炎2 例,血小板数低下2 例,肝障害1 例などすべてgrade 1/2 であった(重複あり)。再発によるレジメン変更は8 例,有害事象による中止は1 例,有害事象の程度は軽度だが希望による中止は3 例であり,再発による中止を除いた完遂率は66%であった。まとめ:肝転移に対する外科治療後の補助化学療法としてS-1・UFT 投与は安全に施行できた。
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癌と化学療法 38巻11号, 1825-1835 (2011);
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切除不能再発大腸癌(metastatic colorectal cancer: mCRC)についての海外の臨床試験の結果から,抗EGFR 抗体医薬の負の治療効果予測因子としてKRAS 遺伝子変異が同定され,本邦では2010 年4 月にKRAS 遺伝子変異検査が保険承認された。そして,抗EGFR 抗体医薬がmCRC 治療の一次治療から使用できるようになった。本検査の需要は急速に高まっており,KRAS遺伝子変異検査の迅速かつ簡便な診断法の早期確立が望まれる。このような背景を受け,われわれは,多項目同時測定技術(Luminex(xMAP)技術)と標的遺伝子断片を特異的に検出するPCR-rSSO 法を組み合わせることで,KRAS 遺伝子のコドン12 または13 に対する迅速かつ簡便な遺伝子変異測定法を開発した。変異型KRAS 遺伝子をクローン化したプラスミドDNA,あるいはパラフィン包埋されたKRAS遺伝子変異を有する株化癌細胞由来腫瘍を用いてKRAS遺伝子変異の検出を行い,本測定系の特異度・再現性について良好な基礎性能を確認できた。また,パラフィン包埋されたmCRC組織を用いて,ダイレクトシークエンス法との比較を実施し,野生型・変異型の判定において高い一致率が確認された。以上の結果から,臨床検査においても本測定系の有用性は高いと考えられる。
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癌と化学療法 38巻11号, 1837-1840 (2011);
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過去25 年間に当院で治療したpT1 期の上皮性卵巣癌161 例を対象とした。pT1N0M0 群(N0 群)93 例,pT1NxM0群(Nx群)59 例,pT1N1M0群(N1群)9 例に対して系統的リンパ節郭清の意義について検討した。N0+N1群102 例はNx群59例に比較してrelapse-free survival(RFS),overall survival(OS)ともに有意に予後良好であった(p=0.006,p=0.02)。OSに対する多変量解析においてリンパ節郭清施行はハザード比0.473(95%信頼区間0.235-0.951,p=0.036)と有意な予後因子となった。pT1期の卵巣癌に対して系統的リンパ節郭清を施行することに治療的意義がある可能性が示された。
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症例
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癌と化学療法 38巻11号, 1841-1843 (2011);
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S-1による姑息的な治療の有用性を検討するため,S-1 単独投与により完全消失(CR)が得られた口腔癌症例について臨床的に検討した。対象はS-1 単独投与によりCR が得られた口腔扁平上皮癌全8 症例である。S-1 の投与は5 投2 休法で行ったが,全8 例中4 例にgrade 1 の有害事象がみられた。CRが得られるまでの平均投与期間は9.8±3.1 週(3.3±1.0 コース)であった。全8 例中7 例に再発が認められ,うち5 例は局所非制御,1 例は頸部非制御のため原病死していた。再発までの平均日数(TTP)は447.4±479.5 日であった。再発後,切除を行った1 例,およびCR が得られた後,放射線治療を行った1 例では再発なく現在も生存中である。全体の1 年生存率は100%,3年生存率は37.5%であった。
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癌と化学療法 38巻11号, 1845-1848 (2011);
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症例は63 歳,男性。食道癌(squamous cell carcinoma)Mt type 2+壁内転移(IM)cT3N1M0; cStageIIIの診断であったが,予後不良因子のIM陽性であったため手術の選択に悩み,導入化学療法の方針となった。FP 療法2 コース施行後,全体としてはSD だったが,局所が著明に縮小したため,手術を回避して化学放射線療法(CRT)を追加する方針になった。CRT 終了から約3 年無増悪で経過している。IM陽性食道癌は術後の予後が不良であることが知られているが,CRT による治療成績もまとまった報告はない。治療開始から3年生存している本例の経過は貴重と考えたため報告する。
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癌と化学療法 38巻11号, 1849-1851 (2011);
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症例は45 歳,男性。進行結腸癌術後の縦隔・大動脈周囲リンパ節再発に対して,一次治療としてFOLFIRI療法を13コース施行,二次治療としてmFOLFOX6療法+ベバシズマブを8 コース施行後,病変部の増大による背部痛と貧血の進行を認めたため上部消化管内視鏡検査を施行した。噴門部小弯に深い潰瘍性病変を認め,噴門周囲のリンパ節腫大に伴う胃壁への直接浸潤による穿通性潰瘍と最終診断した。三次治療としてセツキシマブ単独療法を開始したところ噴門部潰瘍は瘢痕化し,外来にて通院化学療法の継続が可能となった。転移リンパ節による胃壁への穿通性潰瘍にてQOL が低下した患者に対して,三次治療としてのセツキシマブ単独療法が奏効した症例を経験した。
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癌と化学療法 38巻11号, 1853-1856 (2011);
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症例は63 歳,女性。巨大肝腫瘍の診断にて当科紹介となり,精査にてS 状結腸癌同時性肝転移の診断となった。腫瘍は20 cm を超える巨大な腫瘍で,下大静脈ならびに3 本の肝静脈への浸潤を認め,グリソン鞘浸潤により軽度の胆管拡張と腹水も認めたため切除不能と判断した。conversion を目的にfirst-line としてmFOLFOX6+cetuximab の投与を行った。CEA,CA19-9は早期に減少し,標的病変は50%の縮小(PR)となり,左肝静脈の癌浸潤も認められないことから切除可能と判断,7 コース投与後に4 週間休薬し,右3 区域切除+下大静脈合併切除再建を施行した。術後合併症はなく第20 病日に退院,同様の化学療法を継続し,原発巣に対し鏡視下S 状結腸切除術を施行した。cetuximabのfirst-lineでの抗癌剤との併用は,特に巨大腫瘍に対して早期に抗腫瘍縮小効果が得られたことから,大腸癌肝転移の治療において新たな治療戦略となることが示唆された。
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癌と化学療法 38巻11号, 1857-1859 (2011);
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症例は66歳,男性。2008 年4 月,他院で閉塞性黄疸を指摘され,精査目的に当科紹介入院となった。各種検査で胆嚢癌cStageIVbと直腸癌cStageIIの重複癌と診断した。胆囊癌が生命予後を規定すると考え,gemcitabineを投与した。3 コース終了時のCT で,肝十二指腸間膜内リンパ節増大と胆囊癌による十二指腸狭窄を認めたためPD と判定した。二次治療としてS-1 を投与したところ,胆囊癌原発巣と肝十二指腸間膜内リンパ節が縮小したためPR と判定した。また,大腸内視鏡検査で直腸癌の著明な縮小を認めた。8 コース終了時のCT で胆囊原発巣増大と肝転移出現を認めたためPD と判定した。その後はbest supportive careに移行し,化学療法開始17か月後の2009 年10 月に原病死された。本例では,二次治療のS-1 のPFS が10 か月で,S-1 開始から死亡までの期間が13 か月と良好であったことから,直腸癌合併切除不能胆囊癌に対する二次治療のS-1が生存期間延長に寄与したと考えられた。
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癌と化学療法 38巻11号, 1861-1864 (2011);
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B 型肝炎ウイルス(HBV)感染者の抗癌化学療法施行時にはHBV の再活性化が問題となる。活動性肝炎を発症すると治療の変更を迫られるのみでなく,急性肝炎から劇症肝炎を起引する場合があるため,HBV 再活性化の予防が求められる。われわれはエンテカビルの予防投与により,乳癌術後の補助療法を安全に完遂した症例を経験した。患者は20 歳時にHBV感染を指摘されていた48 歳,女性で,左乳癌のため乳房切除と広背筋皮弁による乳房再建術を受けた。最終診断はER 陽性,PgR 陽性,HER2 陰性でT1N1M0,stageIIA の硬癌であった。アンスラサイクリンとタキサンによる化学療法とホルモン剤による補助療法を予定した。seroconversion状態で,HBV-DNA 量は2.8 log copies/mL であった。HBV再活性化の予防のため化学療法開始前にエンテカビルを投与した。3 週目にHBV-DNA 量は検出感度以下となり,化学療法を開始した。以後DNA量は検出感度以下で推移し,肝炎の発症も認めず治療を完遂した。
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癌と化学療法 38巻11号, 1865-1867 (2011);
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症例は62 歳,女性で左乳頭びらんを主訴に受診。術前検査にて腋窩リンパ節転移を伴うPagetoid 癌と診断した。術前化学療法としてweekly paclitaxel/trastuzumab を施行し著効が得られた後に手術を施行。切除標本はPaget 細胞の残存を認めるのみであった。術後1 年6 か月を経過するが,現在のところ再発兆候を認めていない。浸潤癌を伴うPagetoid癌に対する術前化学療法の報告は認めない。今回われわれは,術前化学療法を施行し浸潤巣および乳管内病変に対し著効が得られた症例を経験したため報告する。
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癌と化学療法 38巻11号, 1869-1871 (2011);
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症例は65 歳,女性。1989 年,右乳癌に対し非定型的乳房切除術,術後補助療法を施行。2007年,PETにて結腸癌,肝転移を疑う所見を認めたため,S 状結腸切除および肝生検を施行した。最終診断は,T2N1H1,f-StageIVであった。bevacizumab投与開始後,右胸壁潰瘍形成部から出血を認めた。bevacizumabによる微小血管障害を原因としてまず考え,投与中止したところ皮膚病変は改善した。局所再発,放射線による遅発性潰瘍形成なども疑われ,bevacizumabを中止することで出血を回避できた1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 38巻11号, 1873-1875 (2011);
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症例は61 歳,女性。1991年,左乳癌にて乳腺全摘術+右腋窩郭清術施行している。その後2001 年に右大腿骨骨幹部に転移を認め,CMF療法が施行された。2006年に同部に再発を認めたため,放射線外照射療法は37.5 Gy 施行された。しかし2008年に再度同部位に再燃が疑われたため,S-1 100 mg/body/day分2 を2週間投与,1 週間休薬のサイクルにて投与を開始した。投与後約12週で腫瘍マーカーは正常値内となり,その後約20 か月上昇を認めていない。
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癌と化学療法 38巻11号, 1877-1879 (2011);
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症例は63 歳,男性。呼吸困難を主訴に当院を受診した。胸部CT にて右胸水を認め精査の結果,肺腺癌(cTXN2M1a,stageIV)と診断した。cisplatin(CDDP)80 mg/m2,docetaxelhydrate(DOC)60 mg/m2の化学療法を3 コース施行したが,胸水の増加を認めprogressive disease(PD)と判断した。carboplatin(CBDCA)AUC 5,paclitaxel(PTX)200 mg/m2,bevacizumab 15 mg/kg に変更したところ,胸水の著明な減少を認めた。現在初診より6 か月経過(CBDCA/PTX/bevacizumab 3 コース終了)し,治療を継続中である。
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癌と化学療法 38巻11号, 1881-1884 (2011);
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症例は72 歳,男性。意識状態低下,肝脾腫瘤,高Ca 血症が認められたため,精査目的で当院に転院した。肝生検の結果,びまん性B 細胞性悪性リンパ腫と診断された。高Ca 血症に起因する症状は,生理食塩水の点滴,calcitonin 製剤の投与などを行い,血清Ca 値が改善するとともに消失した。精査結果,血清副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)の上昇およびPTH の低下が認められ,腫瘍細胞から産生されるPTHrP の上昇が高Ca血症の原因と考えられた。全身状態の改善後にRCHOP療法6 コースを施行し,PTHrPの再上昇は観察されず,良好な原疾患の制御が得られている。
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癌と化学療法 38巻11号, 1885-1888 (2011);
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症例は68 歳,男性。2010 年5 月より脊髄横断症状が出現,MRI にてTh5 椎体レベルで脊髄にT2W1 高信号域を認め,髄液検査などを施行するも確定診断は得られなかった。ステロイドパルス療法にて一時的な改善を認めたが,11 月より脊髄横断症状の再燃と肝脾腫を認めた。検査所見では血球減少症とLDH,sIL2-R の増加を認め,皮膚生検によりintravascular large B-cell lymphoma(IVLBCL)と診断し得た。R-CHOP療法施行後には脊髄横断症状は改善,MRIでも髄内腫瘍の消失を認めた。脊髄横断症状の鑑別としてIVLBCLを念頭におく必要がある。
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医事・緩和ケア
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癌と化学療法 38巻11号, 1889-1895 (2011);
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地域における緩和ケアの普及は重要であり,複数地域の多職種による意見交換会は緩和ケアの向上に有用な可能性がある。本研究の目的は, 1.複数地域の多職種による意見交換会の有用性を評価すること, 2.話題とされた地域緩和ケアの課題を整理することである。4 地域の医療福祉従事者336 名が意見交換会に参加した。80%以上の参加者が全般的にとても役に立った・役に立ったと回答した。50%以上が,「自分が抱えている問題や悩みの具体的な解決策を得る」,「自分の地域・施設に帰って実際に生かす」ことにとても役に立った・役に立ったと回答した。課題は,地域の顔のみえる関係の構築,専門緩和ケアの利便性と質の向上,医療福祉従事者の緩和ケア・在宅ケアに関する認識と知識,病院と地域との連携の促進,地域内の連携の促進,既存のリソースの最大利用,患者・市民の緩和ケア・在宅ケアに関する認識,制度・社会の問題の8 領域40 課題に整理された。