癌と化学療法

Volume 38, Issue 12, 2011
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特集【第32回癌免疫外科研究会,第33回日本癌局所療法研究会】
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膵癌ペプチドワクチン療法の新規開発
38巻12号(2011);View Description
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vascular endothelial growth factor receptor 2(VEGFR2)は腫瘍血管新生と腫瘍増殖において重要な分子であり,正常血管内皮では発現しないことから免疫療法の標的として有用である。VEGFR2 に対するペプチドワクチン療法は腫瘍本体を標的としないため,免疫逃避機構の克服が期待できる。われわれは,切除不能進行膵癌に対するVEGFR2 由来エピトープペプチド(VEGFR2-169)と塩酸ゲムシタビン(GEM)を併用する第I相臨床試験を行った。VEGFR2-169 は0.5 mg,1.0mg,2.0 mg/body とdose escalation し,GEM は1,000 mg/m2 を投与した。各コホート6 名とした。全例でdose limitingtoxicity は出現せず安全に施行できた。VEGFR2-169 特異的CTL は18 例中11 例(61%)で誘導可能であった。本プロトコールは安全に施行でき,高率に特異的CTL が誘導できた。免疫学的観点からは2.0 mg/body が推奨投与量と考えられた。生存期間の延長も示唆されたことから,2009 年1 月より多施設共同,ランダム化,プラセボ対照,二重盲検第II/III相治験(PEGASUS-PC Study)を開始している。 -
StageIII大腸癌におけるがんペプチドワクチンとUFT/LV 併用による術後補助療法( HLA-Key Open法)
38巻12号(2011);View Description
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網羅的遺伝子解析によって同定された大腸癌高発現性遺伝子からいくつかのHLA-A24 拘束性の新規がんペプチド(RNF43,TOMM34)が同定された。23 例の再発・進行大腸癌に対して,がんペプチドワクチンと経口抗癌剤UFT/LV の併用療法を施行したところ完遂できた21 例では,有害事象が軽微で,全生存期間中央値(MST)も24.4 か月と良好であった。しかもRNF43,TOMM34 ともにCTL 反応性がみられた群が最も生存期間が長く,次いでどちらか一方の反応が得られた群,いずれにも反応がなかった群は最も生存期間が不良であった。この結果を基にStageIII大腸癌の術後再発予防に本療法を応用すべく,ランダム化比較試験を開始している。 -
高度進行再発胃癌に対するS-1 とS-1+PSK を比較するランダム化第II相試験─本試験結果と得られた教訓─
38巻12号(2011);View Description
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本臨床試験は高度進行再発胃癌を対象とし,S-1 に対するS-1+PSK の無増悪生存期間(PFS)における非劣性を評価するランダム化第II相試験である。sample size 120 例で計画されたが,登録が進まず,8 例が登録された時点で中止された。本研究では登録症例に関する情報を新たに収集し,探索的解析を行った。結果: 割付結果はS-1 群4 例/S-1+PSK 群4 例。8例の内訳は,PS 0/1:8/0,年齢中央値64 歳(range: 41~76 歳)。登録8 例全例の全生存期間(OS)は13.7 か月。median-OS はS-1 群で8.9 か月,S-1+PSK 群で13.7 か月であった。まとめ: 全例PS 0 を考慮すると,他の第III相試験におけるS-1 群の成績とほぼ同等であると思われた。本試験はSPIRITS 試験の結果,研究者のmotivation が低下したことで症例登録が進まなくなった。今後の臨床試験では現在,登録中もしくは経過観察中の試験の結果を見すえて,あらかじめ計画しておく必要があろう。 -
超低付着性細胞培養器材HydroCell TM を用いた樹状細胞の培養
38巻12号(2011);View Description
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樹状細胞を利用したがん免疫療法は副作用が少なく臨床効果が期待できる一方,無作為ランダム化試験がほとんど実施されていないため,わが国ではいまだ承認されていない。われわれは,少量の末梢血採血から採取した単球由来樹状細胞の簡便で安価な自動培養システムの開発および大規模無作為臨床試験の実施をめざしており,今回超低付着性細胞培養器材HydroCell TM を用いた樹状細胞の培養法を検討した。HydroCell TM で培養した樹状細胞は通常のフラスコ培養法に比べて約1.5倍の細胞数の増加,酵素を使わない全細胞の簡便な回収,貪食能を有するCD80 およびCD83 陽性樹状細胞比率の増加が認められ,成熟化のステップを簡略化した自動培養システムの開発への可能性が示唆された。 -
PSK のアポトーシス誘導メカニズムの解析(2)
38巻12号(2011);View Description
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これまで,PSK がHL60 細胞に対しアポトーシスを誘導し,増殖を阻害することを報告してきた。今回,PSK が誘導するアポトーシスのメカニズムについて検討した。HL60 細胞のアポトーシスはp38MAPK を介することが報告されていることから,PSK が誘導するアポトーシス誘導にもp38MAPK が関与しているのかを検討した。その結果,PSK はp38MAPK の活性化と考えられるリン酸化を誘導した。また,p38MAPK の阻害剤であるSB203580 によりPSK が誘導するアポトーシスは阻害された。以上の結果から,PSK が誘導するアポトーシスにp38MAPK が重要な働きをしていることが示唆された。 -
食道扁平上皮癌における細胞傷害性T 細胞を用いた免疫治療とHER2 を標的とした分子標的治療の可能性について
38巻12号(2011);View Description
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現在,集学的治療が食道扁平上皮癌(esophageal squamous cell carcinoma: ESCC)に対して施行されているが,ESCCの予後はいまだに不良である。その新たな治療法の開発のため,今回われわれはESCC におけるHER2 を標的とした分子標的治療と細胞傷害性T 細胞(cytotoxic T lymphocyte: CTL)を用いた免疫治療の可能性について検討した。まず,ESCC 症例におけるHER2 とMHC class I の発現を免疫組織学的染色にて調べ,両者の相関関係について解析。続いて,ESCC 細胞株を用いて,ESCC 細胞におけるHER2 を標的とした分子標的治療薬の効果について調べた。それらの結果より,ESCC においては,HER2 強発現群(11.8%)はHER2 を標的とした分子標的治療のよい適応と考えられ,HER2 低発現・陰性群(88.2%)はCTL を誘導する癌ワクチン療法のよい適応であると考えられた。また,Herceptin とlapatinib の併用療法は,HER2 陽性ESCC 症例(29.4%)において有効である可能性が示唆された。 -
S-1 およびKrestin 併用療法の検討
38巻12号(2011);View Description
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胃癌に対するS-1 単独療法は有害事象により治療継続困難な症例がある。今回,当院で施行されたS-1 とKrestin(PSK)の併用療法症例の検討を行った。対象および方法: 2006 年9 月~2008 年8 月までに高度進行・切除不能胃癌3 例にS-1 とPSKの併用療法を行った。S-1 は4 週投与2 週休または2 週投与1 週休薬にて投与,PSK は3 g/日を連日投与した。S-1 治療の継続性に焦点を当てて検討した。結果: 症例1 と症例2 は胃切除後のリンパ節再発症例。症例3 は腹膜転移症例。治療期間の中央値は112 日,生存期間の中央値は552 日であった。治療中止理由は,全例が病状の進行によるものであり,有害事象による中止はなかった。結論: PSK を併用することで,S-1 治療の継続性が高まっていた可能性が示唆された。 -
温熱療法によるリンパ球療法および分子標的治療の増強
38巻12号(2011);View Description
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温熱療法と細胞免疫療法を併用することにより抗腫瘍効果を増強することを動物実験で証明し,さらに分子標的治療の抗腫瘍効果を増強することも動物実験で証明した。 -
甲状腺担癌患者におけるIndoleamine 2,3-Dioxygenase の関与
38巻12号(2011);View Description
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tryptophan を分解する酵素であるindoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)の甲状腺癌担癌患者での発現程度を検索した。外科手術によって得られた術前未治療の甲状腺癌20 例を対象とした。対象の内訳はstage I 10 例,stage II 4 例,stage III 3例,stage IV 3 例であった。癌部の凍結標本20 例と正常上皮部の凍結標本20 例より,total RNA を抽出し,定量化RT-PCR法によってIDO の発現を検討した。甲状腺癌患者と健常人7 例の末梢血より同様に定量化RT-PCR 法によりIDO の発現を検討した。得られた情報を臨床病理学的因子と比較検討した。IDO は20 例すべての甲状腺癌患者の癌部と非癌部に発現していた。癌部におけるIDO の発現は,正常乳腺組織に比べて有意に高かった。局所におけるIDO 高発現群は低発現群と比較してstage が高い傾向があった。生存期間には差を認めなかった。末梢血中におけるIDO の発現は,健常人群に比べて進行甲状腺癌担癌患者群が高かった。甲状腺癌の担癌患者において,IDO は局所の免疫抑制に重要な役割を演じていると考えられた。 -
長期観察結果からみた乳癌術後補助化学療法とホルモン療法におけるIndoleamine 2,3-Dioxygenase 発現について
38巻12号(2011);View Description
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乳癌術後補助化学療法とホルモン療法による生体への侵襲程度を,indoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)の発現程度から長期にわたって観察した。乳癌術後補助化学療法を施行した15 例とホルモン療法を施行した15 例を対象とし,化学療法施行前,FEC 終了時,wPTX 終了時,全化学療法終了3 週間後,その後3 か月ごとに採血した。ホルモン治療のみを受けた15 症例も同時期に採血し,high performance liquid chromatography(HPLC)を用いてkynurenine(Kyn)とtriptophan(Trp)を測定した。化学療法施行群はFEC 施行後,wPTX 施行後にKyn/Trp ratio が上昇し,同時期のホルモン療法施行群と比較して高かった。化学療法施行後3 週間後には施行前のレベルまで低下し,その後は両群ともに平定化したままであった。乳癌術後の補助化学療法による免疫学的ダメージは化学療法施行中のみ高く,その後は平定化するものと考えられた。 -
食道癌術後肺合併症発生に関与する因子の検討
38巻12号(2011);View Description
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食道癌手術症例における術後肺合併症の発生に関与する因子の検討を行った。対象は当科で食道癌手術を施行した132例である。各症例の術前患者因子(年齢,性別,喫煙歴,飲酒歴,呼吸器既往歴,血清総蛋白(TP),血清アルブミン(Alb),血中ヘモグロビン量(Hb),%肺活量,1 秒率),手術因子(手術時間,出血量,輸血の有無),病期因子(腫瘍深達度,TNM病期)と術後肺合併症との関連を検討した。術後肺合併症は27 例(20%)に認められた。肺合併症発生群では,有意に70 歳以上,術前Alb 値4.0 g/dL 以下の症例が多く,多変量解析でも70 歳以上の年齢と術前Alb 値が術後肺合併症発生の独立した危険因子として確認された。術前Alb 値の低下は慢性的な低栄養状態を反映し,低栄養が細胞性免疫低下と関連して,術後合併症の危険因子となることが考えられる。種々の栄養管理を用いて術前Alb 値を補正することにより,術後肺合併症発生を減少させる可能性が示唆された。 -
切除不能進行再発結腸直腸癌に対するXELOX±Bevacizumab 療法の治療経験
38巻12号(2011);View Description
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切除不能進行再発結腸直腸癌に対する化学療法はFOLFOX やFOLFIRI にbevacizumab を加えたものが標準治療である。海外第III相試験(NO16966)にてFOLFOX に対するXELOX の非劣性が示され,bevacizumab の上乗せ効果も確認された。当科で経験したXELOX±bevacizumab の治療成績,安全性について報告する。切除不能進行再発結腸直腸癌に対してXELOX±bevacizumab を使用した45 症例を対象とした。CR:PR:SD:PD:NE=0:13:5:5:22 で奏効率は56.5%,腫瘍抑制率は78.2%であった。そのうち一次治療で行った19 例では奏効率80.0%,腫瘍抑制率は90.0%であった。有害事象は,手足症候群grade 2 は6 例(13.2%),grade 3 は3 例(6.6%)で,1 例で治療継続困難となった以外は減量や休薬で継続が可能であった。死亡例は認めなかった。XELOX±bevacizumab は,FOLFOX などに比較して治療効果や安全性に劣らない治療法と考えられる。手足症候群などの有害事象に注意すればQOL を維持して継続治療が可能であった。 -
標準治療が無効または施行できない症例の温熱免疫療法有効例
38巻12号(2011);View Description
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1,225 例の進行・再発癌患者に温熱・免疫療法を施行した。癌の集学的治療において,温熱療法の免疫療法との併用はその効果が著しく増強する。有効率は樹状細胞,活性化リンパ球,温熱療法を併用した群が最も高く20.7%であった。標準治療が無効となったり施行できない症例において,樹状細胞・温熱療法を併用することによりCR となった3 症例を示した。 -
TLR-9 Agonist を併用した新規食道癌ペプチドワクチン療法
38巻12号(2011);View Description
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癌免疫療法をより強力な治療法として確立するためには,癌患者生体内における免疫抑制を克服する強力なワクチンアジュバントを選択することが重要である。われわれは,TLR-9 agonist であるCpG-ODN の癌ペプチドワクチン療法におけるアジュバントとしての有用性についてin vitro による基礎的検討を行い,さらに進行・再発食道癌患者を対象に癌精巣抗原由来のペプチドワクチン療法にCpG-B を併用した第I相臨床試験を施行した。基礎的検討結果によりCpG の多様な免疫修飾作用が明らかとなり,ペプチドワクチンのアジュバントとしての有用性が期待された。さらに第I相臨床試験においても,基礎的検討と同様,CpG による抗腫瘍免疫誘導における増強効果が示唆された。新規食道癌ペプチドワクチンにTLR-9 agonistであるCpG-ODN を併用するわれわれの治療戦略は,有望な治療法と考えられた。 -
内視鏡的局所療法が有用であったCRT 後再発食道癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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近年食道癌における化学放射線療法(CRT)は,非外科的治療として普及している。CRT はたいへん有用であると同時に,約40%に局所の遺残再発を認める。CRT 後再発食道癌の救済手術は,長期生存が期待できる治療法であるが周術期死亡率が高いことが問題となっている。一方で,CRT 後局所遺残再発に対する救済的EMR は5 年生存率が49.1%を示す報告がある。つまり安全に局所再発のコントロールができれば,長期生存に有用な可能性がある。そこでわれわれは,再発病巣の深達度が粘膜下層までであれば,最初に内視鏡的切除(ESD,EMR)を試みる。その病理結果の深部断端が陽性であれば光線力学的療法(PDT)を追加している。しかし再発病巣の内視鏡的切除が困難と判断した場合は,PDT 単独療法を施行している。今回われわれは,EMR とPDT による局所療法が有用であったCRT 後再発食道癌の1 例を経験したので報告する。 -
食道癌に対する根治的化学放射線療法後の救済手術(Salvage Esophagectomy)例の検討
38巻12号(2011);View Description
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近年,局所進行食道癌のみならず,切除可能食道癌にも50 Gy 以上を照射する根治的化学放射線療法(definitive CRT)が施行されている。そしてdefinitive CRT 後に腫瘍の遺残,再発に対する救済手術(salvage esophagectomy: SE)が必要となる症例が増加している。教室で行ったSE 群7 例の手術成績を40 Gy 照射後の手術(PS)群,術前照射を行っていない手術単独(SA)群と比較検討した。縫合不全率はSE 群43%,PS 群3%,SA 群7%とSE 群が有意に高率であった。またSE 群の肺合併症率は28%で,PS 群15%,SA 群15%と比較して高率であったが,有意差は認めなかった。在院死亡率は,SA 群0%,PS 群9%,SE 群28%と放射線照射量に伴って増加した。合併症,死亡率の高いsalvage 手術は十分な説明と同意の下に,確実にR0 が可能な症例に対して行われるべきと考えられた。 -
手術不能進行胃癌においてS-1/CDDP 併用療法の工夫によりpCR が得られた1 例
38巻12号(2011);View Description
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手術不能高度進行胃癌に対しての標準治療として,S-1/CDDP 併用療法(SP 療法)が標準治療となりつつある。当院では,従来QOL の向上を図るため,SP 療法に工夫を加え,化学療法の2 コース目からは外来で実施してきた。この症例では化学療法開始後15 か月で著効を示したので,胃切除術を行った。切除標本の組織学的所見では全病巣においてpCR が確認できた。この症例の経過とSP 療法の工夫について報告する。 -
術前S-1+CPT-11 療法にて脾静脈腫瘍栓が消失した胃癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は63 歳,男性。主訴は吐血。内視鏡検査では胃体中上部に3 型病変を認め,腹部CT では著明な周囲リンパ節腫大に加え,脾静脈の中枢側から上腸間膜静脈の合流部まで及ぶ腫瘍栓を認めた。根治切除は困難と判断し,S-1(120 mg,day1~21)+CPT-11(135 mg,day 1・15)を計4 コース施行した結果,腫瘍栓は消失し,原発巣・周囲リンパ節も縮小したため胃全摘術を施行した〔tub2,T2(MP)N0 H0 M0 P0 CY0,Stage I B〕。術後補助化学療法としてS-1 の投与を行い,現在約3 年4 か月,無再発生存中となっている。術前化学療法によって腫瘍栓の消失が得られ,根治度の高い手術を行うことができたので若干の文献的考察を加えて報告する。 -
RFA および放射線治療により長期生存している胃癌肝転移の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は64 歳,男性。胃癌cT4N1M0,StageIIIB(胃癌取扱い規約第13 版)に対して2008 年7 月下旬,左上腹部内臓全摘術を施行した。術後補助化学療法中に肝S6,S8 に転移性病変を認めた。一時的に効果を認めたものの,病変の増大を認めた。化学療法単独では肝転移のコントロールは困難と考え,局所療法を施行する方針とした。2009 年11 月,肝S8 病変に対して放射線治療(60 Gy/30 回)を施行した。肝S6 病変に対しては,ラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation: RFA)を計3 回施行したが病変の増大を認め,2010 年11 月,放射線治療(50 Gy/25 回)を施行した。現在も肝S6,S8 病変ともにPR持続中である。胃癌肝転移に対してRFA,放射線治療が奏効し,肝転移出現から2 年半生存中の症例を経験したので報告する。 -
胃粘膜下腫瘍に対する腹腔鏡下胃局所切除術─単孔式手術(SILS)の適応と限界─
38巻12号(2011);View Description
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胃粘膜下腫瘍はリンパ節郭清を要さず,胃局所切除が許容されることから,5 cm 未満の比較的小さな腫瘍では腹腔鏡下胃局所切除術が広く行われている。一方,単孔式腹腔鏡下手術(single-incision laparoscopic surgery: SILS)は腹腔鏡下胆嚢摘出術を中心に認容性が確認されている。通常の腹腔鏡下手術と比較し,臍部の1 か所のみの術創であり,より整容性に優れている胃局切除術は部位や発育形態によって難易度が異なる。管腔外発育型では,部位を問わず自動縫合器を用いたSILSでの局所切除が可能である。ところが,壁内・管腔内発育型では体部大弯の病変部位はSILS が可能である。小弯側,噴門や幽門に近い部位ではSILS で切除は困難で,内視鏡との合同手術(laparoscopic and endoscopic cooperative surgery: LECS)が過不足ない切除に関しては有用である。また噴門や幽門に近い部位では,自動縫合器による閉鎖は困難な場合がある。その際は,port をco-axial に追加するreduced port surgery に変更し,手縫いで閉鎖することが有用である。 -
胃GIST に対する腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除術の不成功例の検討
38巻12号(2011);View Description
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近年,胃粘膜下腫瘍に対して胃壁の過剰切除を避ける目的で腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除術(laparoscopic andendoscopic cooperative surgery: LECS)が開発された。今回,胃GIST に対するLECS が不成功に終わった症例を検討した。症例は89 歳,女性。胃穹窿部後壁,内腔突出型の約30 mm の粘膜下腫瘍に対しLECS を試みた。臍下部と左側腹部に胃壁を固定し,バルーン付きポートを胃内腔に挿入した。内視鏡下に粘膜下層剥離術を施行後,Endo-loopで腫瘍を挙上し胃内腔側から自動縫合器による腫瘍の一括切除を試みた。しかし,腫瘍が大きく挙上が不十分で,かつ小柄な体型で胃内腔の十分な術野確保が困難であったため,開腹移行となった。患者の体型,腫瘍の大きさや位置などを考慮した手術計画が重要で,後壁病変は胃内手術や自動縫合器にとらわれず鏡視下縫合技術を考慮することも必要である。 -
ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子を主成分としたTrafermin(フィブラストスプレー)を用いた胃癌術後難治性膵液瘻の治療
38巻12号(2011);View Description
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膵液瘻は胃癌術後の重篤な合併症の一つであり,多くは保存的に治癒するが,時に難治性となり治療に難渋することも多い。今回われわれは膵液漏による難治性瘻孔に対して,ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:bFGF)を主成分としたTrafermin( フィブラストスプレー)を用いて治癒し得た症例を経験した。症例は67歳,男性。噴門部早期胃癌(T1bN0M0,Stage IA)に対して腹腔鏡下噴門側胃切除術,D1+郭清を施行した。術後約3 か月半に及ぶ難治性膵液瘻となった。Traferminを50μg/日ドレナージチューブから瘻孔内に注入したところ,約3 週間で瘻孔閉鎖に至った。適応を十分に検討すれば,Traferminは膵液瘻に対する新たな治療戦略の一つになると考えられる。 -
十二指腸悪性狭窄にメタリックステントを留置した5 例の検討
38巻12号(2011);View Description
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十二指腸悪性狭窄にメタリックステントを留置した症例は5 例あり,2010 年3 月以前の2 例はover-the-wire(OTW法)でUltraflex を,2010 年4 月以降の3 例はthrough-the-scope(TTS 法)でWallFlex を留置した。5 例の患者背景と,OTW 法とTTS 法での施術時間,術後の食事内容について検討した。OTW 法の2 例は,① 93 歳,女性,十二指腸乳頭部癌(IVa),下行脚狭窄,60 分,刻み食,② 76 歳,男性,膵頭部癌(IVb),水平脚狭窄,90 分,刻み食,TTS 法の3 例は,① 56歳,男性,胆管癌・胆嚢癌,術後再発,下行脚狭窄,16 分,全粥,② 79 歳,女性,膵鉤部癌(IVb),水平脚狭窄,40 分,流動食,③ 64 歳,女性,膵鉤部癌(IVb),水平脚狭窄,17 分,流動食であった。OTW 法に比べTTS 法では手技の簡便化と施術時間の著しい短縮を可能にしたが,ステント留置後の十分な食事摂取を可能にするためには,狭窄部に適したステントの選択と留置部位の検討が必要と思われる。 -
経肛門的に切除し得た巨大早期直腸癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は55 歳,女性。脱肛に伴う肛門痛を主訴に来院。直腸診にて腹側中心にそれほど硬くはない可動性のある巨大腫瘤を触知した。下部消化管内視鏡検査にて歯上線直上に直腸を占拠する巨大腫瘍を認め,生検にて高分化型腺癌であった。この時,全貌を内視鏡画面一視野に収めることはできない大きさであったが,可動性があった。CT,MRI にて骨盤内に充満する腫瘍陰影,周囲血管の怒張像を認めた。しかし,明らかな所属リンパ節腫大は認められなかった。腫瘍全貌が視認できないほどの大きさであったため,EUS での深達度判定やESD による内視鏡的切除も困難と判断,また可動性があることから早期直腸癌の可能性が高いと考え,total biopsy として経肛門的局所切除を行うこととした。砕石位をとり,20 万倍ボスミン生食を粘膜下に局注し,電気メスや超音波凝固切開装置を用い腫瘍を引きだしながら切除を行った。長径約90 mm に及ぶ巨大腫瘍であった。病理組織検査にて高分化型腺癌,深達度m,INFα,ly0,v0,断端陰性の診断であり,全割標本で粘膜筋板を越える浸潤は認めなかった。長径約90 mm の粘膜内癌は非常にまれな病態である。多くの場合sm 浸潤を含み,病理組織診断によってはISR またはAPR になり,QOL に影響を与える治療になってしまうケースも少なくない。今回,若干の文献的考察も踏まえて報告する。 -
大腸癌ダグラス窩転移に対して精嚢前立腺尿道合併切除した症例
38巻12号(2011);View Description
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症例は71 歳,男性。S 状結腸癌にて根治手術し,StageIIIであったが,腹腔内洗浄細胞診陽性であった。補助化学療法を行ったが,術後1 年でダグラス窩再発が認められた。化学放射線照射療法後PR となり,他臓器への転移も認めなかったため根治切除可能と判断し,低位前方切除術+精嚢前立腺尿道の合併切除を行った。術後尿道直腸瘻を来したが,経肛門的に修復した。自然肛門と自然尿路で良好なQOL の下,再発なく経過していた。補助療法は行わずにフォローしていたが,再発手術から4 年後に右肺S9 に単発性の転移が発見され切除した。その1 年後,左肺S6 に単発性の転移が出現しこれも切除した。現在も外来にてフォローしている。局所再発は認めていない。以上のように化学放射線照射療法後に周辺臓器の合併切除を行い,QOL を保ちながら局所制御することができた症例を経験したので報告する。 -
急速に腹壁膿瘍を形成し経皮ドレナージが奏効した虫垂粘液嚢胞腺癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は76 歳,女性。虫垂粘液嚢胞腺癌と診断されたが消化管閉塞はなく,右腸腰筋に及ぶ広範囲な直接浸潤を認め,根治的切除は困難と判断されbevacizumab 併用FOLFIRI 療法を実施。1 コース後に腫瘍は急速に拡大し,右鼠径部に腹壁膿瘍を形成した。膿瘍は皮下に達し発熱と疼痛を呈したため,経皮的にドレナージチューブを膿瘍内に留置したところ著明に改善した。その後ドレナージと化学療法を約10 か月間継続し,増悪を認めていない。腹壁膿瘍を伴った虫垂癌の保存的治療例はまれで文献的考察を加え報告する。 -
大腸癌肺転移に対する肺動脈内抗癌剤注入療法
38巻12号(2011);View Description
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大腸癌肺転移に対する局所治療として,肺動脈内抗癌剤注入療法を開発した。肺動脈内にカテーテルを挿入し,バルーンを膨らませて閉塞することで,片肺の肺動脈血流を遮断することが30 分間可能であった。この間にカテーテルを通してCDDP を肺動脈内に注入した。5 例に行い,重篤な合併症は認めなかったが,腫瘍縮小効果はみられなかった。近年の全身化学療法の進歩により,大腸癌肺転移に対する局所治療の意義は薄れつつある。しかしながら,肺動脈内注入の技術は,将来短時間の曝露で抗腫瘍効果のある薬物が見いだされた際に,大腸癌肺転移に対する新たな局所治療法の一つとなり得る可能性もあると考える。 -
直腸巨大GIST の3 例
38巻12号(2011);View Description
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直腸の消化管間葉系腫瘍(GIST)は比較的まれである。当教室にて手術を行った直腸の巨大GIST 3 例について,臨床成績を検討した。術前にイマチニブを投与したが,Stevens-Johnson 症候群を来し,スニチニブ投与を施行した症例1 例,術前にイマチニブを投与した症例1 例,前治療なしが1 例であった。術前治療の奏効した症例は認めなかった。全例に腹会陰式直腸切断術を施行した。腫瘍径の長径の平均値は11.7 cm と巨大で,免疫組織学的にCD34,KIT 陽性であった。術後観察期間は短く,現在再発症例は確認されていない。直腸のGIST 患者に対して,術前イマチニブ投与が有用であったとする報告が散見され,手術の困難さも考慮すると一つの有効な方法であると考えられているが,効果なき場合,漫然と長期投与することを避け,早急な外科的切除術をすべきであると考えられた。 -
Treatment Results of Peritonectomy Combined with Perioperative Chemotherapy for Colorectal Cancer-Patients with Peritoneal Carcinomatosis
38巻12号(2011);View Description
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Operation results of 81 colorecatal cancer-patients with peritoneal carcinomatosis (PC) treated with peritonectomy plusperioperative chemotherapy are reported. The patients who had the following evidences are considered to be eligible forperitonectomy: 1) No evidence of N3 lymph node involvement, 2) No evidence of hematogenous metastasis, 3) No progressivedisease after preoperative chemotherapy, 4) No severe co-morbidities or no poor general condition. Complete cytoreduction resection is aimed for removing all macroscopic tumors by peritonectomy using electrosurgicaltechniques. The completeness of cytoreduction( CC scores) after peritonectomy is classified into the following 4 criteria:CC-0-no peritoneal seeding was exposed during the complete exploration, CC-1-residual tumor nodules are less than2.5 mm in diameter, CC-2-nodules are between 2.5 mm and 25 mm in diameter, CC-3-nodules are greater than 25 mmin diameter, CC-2 and CC-3 are regarded as incomplete cytoreduction. Operation time and blood loss were 237±124 min. (799-90 min) and 1,598±1,411 mL (6,500-20 mL), respectively.Postoperative complications developed in 37(46%) patients. The patients received CC-0/-1 resection survived significantlylonger than those of CC-2/-3 group. The patients with PCI≦10 survived significantly longer than those with PCI≧11. CC and PCI scores are the independent prognostic factors. The relative risk for death of CC-2/-3 group was 4.6-foldhigher than that of CC-0/ -1 group. Accordingly, peritonectomy is indicated for patients with PCI score≦10. Key words:Colorectal cancer, Peritoneal carcinomatosis, Peritonectomy, Cytoreductive surgery, HIPEC -
直腸癌局所再発に術前化学放射線療法と仙骨高位切除を行った2 例
38巻12号(2011);View Description
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目的: 直腸癌骨盤内再発は周辺臓器の合併切除が必要であることが多い。今回,高位仙骨再発病変に対し化学放射線療法を先行し,仙骨高位切除を含む根治切除を行った2 例を経験した。症例1: 54 歳,男性。直腸癌(Ra,tub2,T3N0H0M0,fStage II)に対する前方切除術施行後6 か月,仙骨前面に長径54 mm の再発を認めた。術前化学放射線療法(CRT: 50 Gy,CPT-11,UFT/LV)により,長径33 mm 大まで縮小し,初回術後11 か月に直腸超低位前方切除,仙骨高位合併切除を施行,断端陰性であった。現在7 年無再発生存している。症例2: 66 歳,男性。直腸癌(Rab,tub2,T4: 膀胱N0H0M0,fStageII)に対するHartmann 手術を施行後7 か月目,仙骨前面に長径66 mm の再発を認めた。CRT により長径35 mm に縮小し,初回術後11 か月,骨盤内臓全摘,仙骨高位合併切除を施行,断端陰性であった。リンパ節転移,骨転移を認め,術後17 か月に死亡した。結論: 外科切除および化学放射線療法を組み合わせた2 例の根治治療を行った。 -
透析患者の放射線治療後直腸癌骨盤内再発に対し超音波ガイド下ラジオ波焼灼術を行った1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は血液透析を行っている75 歳の男性。疼痛を伴う直腸癌局所再発に対し放射線治療を行い,腫瘍マーカーの低下や疼痛の軽減などの臨床的効果が認められた。しかし,6 か月後に腫瘍の再増殖と疼痛の増大を認め,ラジオ波焼灼術(RFA)を疼痛緩和目的に行い,繰り返し行うことで十分な疼痛の軽減を認めた。RFA は,全身状態の不良な末期癌患者や透析患者でも安全に行うことができる有効な治療法であり,さらに除痛効果が不十分な場合は繰り返し行うことが可能である。しかし,RFA を繰り返し行うと皮膚や腫瘍部分が硬くなり穿刺が困難となった。そのため穿刺経路の工夫や穿刺針の開発などが必要と思われた。 -
Extraperitoneal Presentation of Pseudomyxoma Peritonei as Retroperitoneal Invasion with Skin Fistula-A Case Report
38巻12号(2011);View Description
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Pseudomyxoma peritonei (PMP) is characterized by mucinous ascites and implants throughout the peritoneal cavity. Thetumor rarely involves retroperitoneum. We present a patient of PMP with retroperitoneal presentation and spontaneous developmentof a skin fistula. There had been only 7 such cases reported. Key words: Pseudomyxoma peritonei -
若年未婚女性の甲状腺乳頭癌に対する治療方針について
38巻12号(2011);View Description
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症例は20 歳,女性。甲状腺乳頭癌の診断で,甲状腺全摘術+頸部リンパ節郭清術を受けた。その後経過観察中,右頸部にリンパ節腫脹を認め,22 歳時に摘出術を施行した。アブレーションを考慮するも未婚・未出産のため断念。25 歳時に再び右頸部にリンパ節腫脹を認め,再びNo. 6 リンパ節郭清術を施行した。その後結婚し,第一子を出産した。現在のところ再発・転移を認めていないが,本人および夫と相談の上,将来に第二子を出産した後,131 I による内照射療法を予定している。その間に局所再発した場合は,再び手術を考慮している。 結婚・出産前の若年者甲状腺乳頭癌に対する内照射の安全性は確立されていない。治療戦略としては,早期に結婚・妊娠・出産を促し終了後に内照射を施行すること,および局所のリンパ節再発を認めた場合には手術が有効な局所療法であると考えられた。 -
乳癌術後皮膚再発病変に対する局所療法としての手術の有用性について
38巻12号(2011);View Description
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乳癌術後の皮膚再発11 症例を対象に,治療法および予後の面から検討を行った。初回手術より皮膚再発を認めるまでの期間の中央値は1.8±0.8 年であった。初回手術の術式は全例に胸筋温存乳房切除術が行われており,乳房温存術が行われていた症例に皮膚再発は認めなかった。初回手術時の臨床病期はStageIIA 3 例,StageIIB 6 例,StageIIIA 1 例であり,全例が初回手術時の病理組織学検査で切除断端は陰性であった。全例が術後に補助放射線治療を施行されてなかった。9 例が術前・術後に補助化学療法を受けており,ホルモン受容体陽性であった7 例には内分泌治療が施行されていた。皮膚再発後の治療は手術療法,化学療法,放射線療法,内分泌療法による集学的治療が施行されていた。治療効果の判定と病巣の除去に生検を含む手術療法は有用であった。観察期間の中央値は2.2±2.5 年。原病死は2 例であり,他病死症例は認めていない。 -
Mohs’Paste による進行乳癌の局所コントロール
38巻12号(2011);View Description
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われわれは進行乳癌に対し,Mohs’paste により良好な局所コントロールを得た2 例を経験したので報告する。症例1は70 歳,女性。渗出液と悪臭を伴う右乳房巨大腫瘤を認めたが,遠隔転移は認められなかった。病理組織検査で浸潤性乳管癌と診断された。化学療法と同時に,乳房腫瘍をMohs’paste で固定して切除し,巨大乳房腫瘤は平坦化,乾燥したため根治手術を行えた。その後,対側腋窩リンパ節転移が出現したため,摘出して放射線療法を施行した。術後2 年経過したが新出病変を認めていない。症例2 は54 歳,女性。多量の渗出液と出血を伴う右乳房腫瘤を認めた。病理組織検査では浸潤性乳管癌と診断され,さらに肺転移と対側腋窩リンパ節転移が確認された。化学療法と平行して,乳房腫瘍をMohs’paste で固定し切除した。症状はほぼ消失し,腫瘍は平坦で乾燥していった。2 例の患者は良好なQOL を得ることができた。Mohs’paste により局所進行乳癌が制御される可能性が示された。 -
皮膚浸潤を伴う超高齢者局所進行乳癌に対する局所療法としての手術について
38巻12号(2011);View Description
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症例は96 歳,女性。主訴は左乳房皮膚発赤。施設入所中に職員が左乳房皮膚の発赤に気付き当科を受診した。来院時,左乳房C 領域に皮膚の発赤と直径3.5 cm の腫瘤を触知した。超音波検査では左乳房C 領域に直径3 cm のlow echoic massを認めた。穿刺吸引細胞診ではClassV。針生検では浸潤性乳管癌,ER(+),PgR(+),HER2 score 0 の診断であった。全身検索では肺,肝,脳,骨,腋窩リンパ節に明らかな転移を認めず,T4b,N0,M0=StageIIIC の診断であった。心疾患既往と肺機能検査の結果から全身麻酔不可とのことで,局所麻酔下に乳房円状部分切除術を施行。病理学的切除断端は陰性であった。術後アロマターゼ阻害剤を投与して経過を観察している。術後3 年目の現在,再発の徴候は認めていない。種々の要因により全身麻酔が不可能な超高齢者の局所進行乳癌に対して,局所麻酔下による手術は局所療法として有用であった。 -
巨大リンパ節転移が発見の契機となった非触知乳癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は58 歳,女性。6 か月前に右腋窩腫瘤を自覚し当科を受診。右腋窩に直径4 cm の腫瘤性病変を触知した。乳房内には腫瘤を触知しなかった。超音波検査にて右腋窩に巨大なリンパ節腫大を認め,右乳房C 領域に直径2.2 cm の腫瘍を認めた。マンモグラフィ検査では多形性の石灰化が区域性に認められ,category V と診断された。腋窩リンパ節の細胞診ではClassV,原発巣は浸潤性乳管癌,ER(+),PgR(+),HER2 score 0 の診断であった。全身検索の結果,腋窩リンパ節以外の他臓器に転移性病変を認めなかったため,右乳癌(T2N2M0=Stage III A)の診断でCEF(60 mg/tri-weekly)×4 回+weeklypaclitaxel(80 mg/weekly)×12回による術前化学療法を行った。化学療法後の造影MRIによる評価では,腋窩リンパ節,乳房腫瘤ともに消失しており,cCR の診断であった。化学療法終了時より3 週間後に胸筋温存乳房切除術+腋窩リンパ節郭清術を施行した。病理組織検査で乳房内に癌の残存はなく,腋窩リンパ節にも転移はみられなかった。 -
局所麻酔下における乳癌根治手術の有用性と認容性
38巻12号(2011);View Description
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乳癌手術は縮小化が進められ,乳房温存手術(Bp)およびセンチネルリンパ節生検(SNB)が早期乳癌に対する標準的治療の一つになった。当科での局所麻酔下乳癌根治手術の成績を検討した。対象は,術前に針生検により乳癌の確定診断を得られた42 例。適応は術前診断として,限局型非浸潤性乳管癌(DCIS)あるいは浸潤癌では腫瘍径3 cm 以下とし,臨床的に腋窩リンパ節転移を認めないものとした。術式はBp+SNB とし,全例で局所麻酔による手術が可能であった。また,全身麻酔への移行例はなかった。センチネルリンパ節(SN)への転移は2 例に認められた。乳腺断端陽性は14 例(33.3%)であり,全身麻酔下におけるBp と同等の結果であった。また,後出血などの合併症はなかった。局所麻酔下におけるBp は低侵襲手術として有用な手技であることが示唆された。 -
診断に難渋した脾原発悪性リンパ腫の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は55 歳,女性。主訴は左側腹部痛,背部痛。腹部CT,MRI にて膵尾部癌,脾転移(Stage IV b)と診断し,gemcitabine(GEM)による化学療法を施行した。grade 3 の有害事象を認め化学療法を中止。腹部CT 施行したところ腫瘍縮小効果を認めた。腫瘍は限局しており,手術を施行した。病理結果にて,脾原発悪性リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma)の診断となった。脾腫瘍はまれな疾患であり,診断的な観点からも手術適応になると考えられた。また,本症例で投与されたGEM により腫瘍縮小効果が得られた興味深い症例であった。 -
再発巣の局在診断に難渋したインスリノーマのリンパ節・膵内再発の1 例
38巻12号(2011);View Description
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再発巣の局在診断に難渋し,術中診断にて切除したインスリノーマの1 例を経験した。症例は39 歳,女性。約5 年前に,インスリノーマの診断で膵体部腫瘍核出術施行。2002 年6 月某日の早朝,低血糖による意識障害を来し緊急入院となった。画像診断上,再発巣の局在特定はできなかった。10 月,局在診断および治療目的にて開腹手術を施行した。経時的に静脈血糖値,門脈血糖値・インスリン値を測定し,尾部から膵臓を脾静脈から授動を開始した。膵下縁の1.5 cm 大の柔らかい結節を摘出すると血糖値は上昇した。膵授動を進めるとさらに血糖は上昇した。膵は門脈右側縁まで授動し切離した。病理組織学的所見は,摘出した小結節は転移リンパ節であり,膵体部にも被膜下腫瘍塞栓を認めた。術後経過良好であった。術後約8 年8 か月経過しているが,再発の兆候はみられない。 -
難治性膵液瘻に局所麻酔下挙上空腸内減圧チューブ挿入が著効した1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は80 歳,女性。2009 年12 月,下部胆管癌に対して膵実質貫通密着縫合(柿田法)による膵空腸吻合再建を伴う亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。術後早期より膵液瘻を来し,サンドスタチン投与やドレナージによる保存的加療を行ったが改善せず,背側膵動脈分枝からの腹腔内出血を生じ,緊急血管造影下での塞栓止血も要した。約1 か月の加療にても軽快しなかったため,腹壁直下に位置していた挙上空腸断端を局所麻酔小開腹下に穿刺し,腸管内圧減圧用チューブを挿入して吻合部からの膵液の漏出減少を図った。これにより速やかに膵液瘻は軽快治癒した。今回の手技は,膵液瘻の瘻孔を損傷することなく安全に施行でき,難治性膵液瘻の治療法の一選択肢となり得ることが示された。 -
肺癌肝転移の診断でRFA を施行した肝内胆管癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は43 歳,男性。2008 年12 月健診で肺野に結節影を指摘され前医受診。CT で右肺上葉に上大静脈浸潤を伴う35mm 大の腫瘤,および肝S7 に32 mm 大の腫瘤を指摘された。肝腫瘤に対し生検を施行しadenocarcinoma と診断されたため,原発性肺癌,肝転移の診断で,2009 年1 月より全身化学療法を開始した。肝S7 腫瘤に対し2 月にラジオ波焼灼療法(RFA),肺腫瘤に対し12 月に放射線照射を施行。肺病変は著明に縮小したが,肝病変は10 月に再発が確認された後,発育進展を続け8 月には80 mm 大にまで増大した。肝病変に対する治療目的で当科紹介となり,10 月に肝右葉,右横隔膜,右肺合併切除術を施行。病理組織診断,免疫染色にて肝内胆管癌と最終診断された。2011 年1 月現在多発残肝再発,腹膜転移,多発肺転移を認めている。肝内胆管癌に対する確立された治療は肝切除のみであり,RFA の是非については統一した見解が得られていない。多発癌に対しては慎重に臨床診断を行うべきであると考えられた。 -
LDH が4,000 IU/L を超え,腹痛で来院した巨大大腸癌肝転移の1 例
38巻12号(2011);View Description
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われわれは,大腸癌の原発巣を切除した後,来院した同時性巨大肝転移の症例に,短期大量肝動注療法(high dosehepatic arterial infusion: HDHAI)を施行して肝転移を縮小させ,肝切除し得たので報告する。HDHAI 3 コース施行後,重大な合併症として動注穿刺部位に感染性の仮性動脈瘤が生じ,HDHAI 開始後72 日目に感染部位のドレナージならびにF-Fbypass を施行した。93 日目に腫瘍切除とラジオ波焼灼術(radiofrequency ablation: RFA)ならびに右胃大網動脈から総肝動脈に動注チューブ挿入を施行した。本症例はさらに肺転移も存在し,術後は肝動注とCPT-11 の併用療法を施行したが腫瘍マーカーが上昇,腫瘍摘出後9.3 か月後に再切除した。しかし,再度腫瘍マーカーが上昇,20.5 か月後に再々切除し,現在も外来通院中である。その間肺転移の増悪はない。肝転移が予後決定因子である時には,肝を主体とする局所治療は予後の延長に有効と思われた。 -
肝動脈化学塞栓療法により根治切除を施行し得たVp2,両葉多発肝細胞癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は54 歳,男性。肝外側区域に10 cm,内側区域に4 cm,S6 に8 mm の両葉多発肝細胞癌(HCC)を認め,門脈臍部に腫瘍栓を伴っていた。肝動脈化学塞栓療法(TACE)を3 回施行することによって右葉の病変を制御し,制御困難であった病変に対して肝拡大左葉切除術,尾状葉部分切除術を施行し,術後5 年以上の無再発生存が得られた。門脈内に腫瘍栓を伴い,両葉に多発したHCC に対して根治的治療を行うことは困難であるが,TACE により片葉病変をコントロールし,切除術も併施することが治療選択肢の一つとなり得ると考えられた。 -
腹腔内出血を来した巨大十二指腸GIST の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は50 歳,男性。激しい腹痛を主訴に当院を受診した。腹部CT で,右上腹部に造影効果を伴うφ14.4×8.5 cm の腫瘤を認め,膀胱直腸窩に腹水貯留を認めた。腹腔内出血が疑われ同日,緊急手術を行った。開腹すると腹腔内には暗赤色の血性腹水を認めた。腫瘍は十二指腸下行脚の乳頭部対側から壁外性に発育しており,一部腫瘍破裂を認めた。腫瘍より肛門側で十二指腸を離断し,断端はAlbert-Lembert 縫合で閉鎖し憩室化した。胃を前庭部で離断し,標本を摘出した。再建は,Roux-en Y 法で行った。術後病理組織学的検査でGIST と診断された。核分裂像は5~6/10 HPF であった。本症例は術前に腫瘍破裂による腹腔内出血を来したclinically malignant GIST であり,腹膜播種などの再発が懸念されるため,術後35 日目よりイマチニブ400 mg/day の内服を開始した。 -
胃全摘Roux-en-Y 再建後,小腸内で多発性に腺癌を認めた1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は51 歳,男性。1997 年にStage III B 胃癌に対して胃全摘,Roux-en-Y 再建されていた。2008 年イレウスにて空腸部分切除,回腸部分切除を施行。原因はY 脚から50 cm の空腸と回腸末端から20 cm の回腸の小腸癌であった。2009 年PET/CT にて再発および腹膜播種が疑われ,S-1/docetaxel による化学療法を開始した。2010 年閉塞性黄疸を来し,CT にて肝内胆管の拡張,十二指腸内の腫瘍およびリンパ節転移を指摘された。小腸内視鏡を施行し,十二指腸の進行癌,挙上空腸内の2 型進行癌および5 個のポリープ,空腸の2 型進行癌とII a 早期癌を認めた。開腹術を施行するも,肝十二指腸間膜への浸潤が強く非切除,胆管空腸吻合も不可能であった。今後のイレウス防止目的にY 脚から10 cm の挙上空腸部分切除およびY 脚から50 cm の空腸部分切除のみ施行した。小腸癌が本例のごとく,挙上空腸,十二指腸,空腸内にまで多発したものは極めてまれと考えられるため報告する。 -
長期生存した肛門管悪性黒色腫の1 例
38巻12号(2011);View Description
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直腸原発の悪性黒色腫の頻度はまれであり,癌と比較して予後が不良である。なかでもまれな深達度M の直腸悪性黒色腫を経験した。症例は56 歳,男性。2004 年5 月血便を自覚し前医を受診した。直腸診で大腸癌を疑い6 月当科紹介となった。注腸バリウム検査でRb 後壁に側面変形のない3 cm 大の隆起病変を認めた。下部内視鏡検査では黒色調のIs 型腫瘤を認め,生検で悪性黒色腫の診断となった。術前精査でリンパ節転移や他臓器転移などは認めず,深達度はSM を疑った。7 月腹会陰式直腸切断術を施行し,側方郭清を含むD3 郭清を行った。病理組織学的所見では,悪性黒色腫,M,ly0,v0,N0(0/55),H0,P0,M0,Stage 0 であった。術後化学療法は行わず,術後7 年無再発生存中である。 -
鼠径リンパ節転移を伴う肛門管腺癌に対する術前化学放射線(XELOX+RT)療法
38巻12号(2011);View Description
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症例: 51 歳,女性。肛門痛と肛門出血を主訴に,近医肛門科より精査加療目的にて当科を受診。直腸指診にて6 時方向に凹凸不整な腫瘤あり。大腸内視鏡にて径30 mm 程度の腫瘍性病変を認め,生検にて低分化腺癌と判明した。CT 検査にて右鼠径リンパ節転移と疑われる径17 mm 大のリンパ節腫大を認めた。Stage III 期肛門管癌と診断,化学放射線療法先行の方針となる。放射線療法は両側鼠径部を含む照射野とし,1.8 Gy×25 回行った。化学療法としてcapecitabine を併用した。化学放射線療法施行後,評価のCT にて腫瘍の縮小,リンパ節の濃染の消失を認めた。その後2 か月間,肛門周囲皮膚びらんの回復を待ちながらXELOX 療法を施行。また遠隔転移などの新規病変を認めなかったことからR0 手術可能と判断し,放射線照射終了3 か月後,化学療法終了1 か月後に腹腔鏡下直腸切断術+右鼠径リンパ節摘出を施行した。切除標本の病理検査結果は,adenocarcinoma,pA,pN0,ly0,v1,pPM0,pDM0 (14 mm),pRM0 であった。術前化学放射線療法の治療効果は,主腫瘍ではGrade 2 であり,右鼠径リンパ節は粘液の遺残のみであった。術後経過は良好。術後補助療法としてcapecitabineを投与している。術後5 か月の時点では再発を認めていない。結語: 鼠径リンパ節転移を認めた肛門管腺癌に対する治療としては,下部進行直腸癌と同様,術前化学放射線療法が有効である可能性がある。ただし,手術に支障のでる皮膚障害が発生することもあり,手術時期や待機中の化学療法の内容,照射野には両側鼠径部を含めるべきかなどに検討の余地がある。 -
右傍結腸溝に孤立性転移を認めた膿瘍形成下行結腸粘液癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例: 59 歳,男性。1 か月前から時折左下腹部痛と同部のしこりを自覚し,38℃の発熱および左下腹部痛が出現し来院した。腹部超音波検査にて下行結腸の壁の肥厚とその外側に7 cm 大のガスを伴うcystic mass を,さらに上行結腸外側にも6 cm 大のcystic mass を認めた。憩室炎穿孔による膿瘍と判断し抗生剤投与を行いつつ,精査にて膿瘍形成を伴う下行結腸癌および右傍結腸溝腫瘍の診断に至った。下行結腸切除および右傍結腸溝腫瘍摘出術を施行した。術後病理にて下行結腸粘液癌および右傍結腸溝転移との診断を得た。リンパ節転移は認めなかった。大腸粘液癌は右側結腸に多く,播種やリンパ節転移が多い疾患である。今回,左側結腸原発で対側腹膜に孤立性の巨大播種病変を有する大腸粘液癌の1 例を経験したので報告する。 -
大腸癌術後11 年に肺転移が出現し切除術を行った1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は79 歳,男性。1999 年7 月,S 状結腸癌に対しS 状結腸切除術,D3 郭清術を施行〔ss,n (-),stage II,curA〕。2000 年9 月,肝転移出現に対し肝右葉切除術,胆摘を施行。術後補助化学療法(5-FU 200 mg/日を2 年間内服)の後,3~6 か月ごとのフォローアップを継続していた。原発巣切除11 年2 か月後の2010 年9 月,フォローアップの胸部X 線撮影で右上肺野に小結節陰影が出現し,胸部CT およびPET-CT 検査にて原発性肺癌または孤立性の転移性肺癌と診断。11 月,胸腔鏡補助下右肺部分切除を施行。切除標本の免疫組織学的所見はcytokeratin 7(-),cytokeratin 20(+),TTF-1(-)でS 状結腸癌の肺転移と診断した。現時点で肺転移切除後6 か月経過し,無再発生存中である。大腸癌術後10 年を超えての肺転移出現は極めてまれであるが,大腸癌切除既往例の肺腫瘤については肺転移の可能性を排除せずに診断確定を進めることが必要と思われる。 -
直腸癌術後大動脈周囲リンパ節再発に対してFOLFIRI 療法が奏効した1 例
38巻12号(2011);View Description
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56 歳,女性。下血を主訴に来院し,精査の結果,RS 進行直腸癌と診断され,D3 リンパ節郭清を伴う前方切除術を施行し,最終病理診断はf-Stage IIIa であった。術後補助療法としてUFT/Uzel を1 年間投与し,さらに1 年間UFT 単独内服治療を行った。術後2 年目の腹部造影CT 検査にて大動脈周囲リンパ節再発を認めた。最大径17 mm の単発転移巣で切除可能と考えたが,患者が手術を拒否したため,mFOLFOX6 療法を開始した。4 コース終了時点でgrade 3 のアレルギー性の有害事象を認めたため,FOLFIRI 療法に変更した。抗癌剤投与開始6 か月後の腹部造影CT 精査で,大動脈周囲リンパ節の再発巣はほぼ消失した。FOLFIRI は50 コースで終了したが,現在までCR を維持している。FOLFIRI 投与が奏効した直腸癌術後大動脈周囲リンパ節再発症例について報告する。 -
Evaluation of Preoperative Computed Tomography in Estimating Peritoneal Cancer Index in Peritoneal Carcinomatosis
38巻12号(2011);View Description
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Purpose: To evaluate the utility of CT of peritoneal carcinomatosis (PC) by comparing preoperative radiological and intraoperativeperitoneal cancer index (PCI) scores. Material and method: This study collected 76 patients of PC from differentdisease origins. The sensitivity, specificity and accuracy were calculated in each of the abdominopelvic region, and by tumorhistologic type. Result: An overall sensitivity of CT was 69%. The detection rate was highest in appendix and lowest instomach group(84% and 47%, respectively) by the origin of primary disease. There was a lower detection rate(59% vs 79%, p=0.001), and a higher underestimation rate (29% vs 21%, p<0.05) of small bowel lesion compared with overallabdomino-pelvic region. CT predicted an individual regional PCI score accurately in 65%, underestimated in 24%, andoverestimated in 11%. CT detection rate in small tumor (<0.5 cm) was 29%, and increased to 97% with nodules size exceeding5 cm. CT significantly underestimated the clinical PCI value in overall. Conclusion: The sensitivity of CT in detectingPC was influenced by histologic type, tumor location and size. CT underestimated the clinical PCI score in PC patient. -
肝切除および粒子線治療併用にて治療効果を認めた両葉多発肝細胞癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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肝切除と粒子線治療併用にて治療効果を認めた両葉多発の肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC)の1 例を経験した。症例は73 歳,男性。2010 年2 月腹部CT 検査にて両葉多発肝腫瘍を指摘され,当科に紹介された。精査にて肝左葉に門脈腫瘍栓(Vp3)を伴う径8 cm 大と径6 cm 大,後区域に径4 cm 大,S8 に径1.5 cm 大の計4 個のHCC を認め,T4N0M0,Stage IVA と診断された。肝予備能の低下,腫瘍の局在から根治切除は困難であったため,今回われわれは新しい治療戦略として肝切除と粒子線治療の併用療法を考案した。3 月に肝左葉切除術を施行し,5 月に後区域のHCC に対して局所制御目的に粒子線治療を施行した。その後追加治療としてTACE を4 回施行することで,初回治療後15 か月経過した現在も腫瘍の局所制御は良好である。 -
転移性膵腫瘍切除例の検討
38巻12号(2011);View Description
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転移性膵腫瘍の3 切除例を経験したので報告する。症例1: 76 歳,女性。右腎細胞癌に対して右腎摘出術を実施。13 年後に腹部造影CT 検査で膵尾部に25 mm の造影効果の高い腫瘤を認めた。膵体尾部切除術を施行し,腎癌の膵転移と病理診断された。膵切除手術後8 年で原病死した。症例2: 64 歳,男性。右肺腺癌に対して右肺下葉切除術を実施。1 年後にFDG-PET で膵尾部に集積を認めた。また同時に表在性食道癌〔cT1b(sm)N0M0〕を認めた。膵腫瘍に対し,膵体尾部切除術を先行,肺癌の膵転移と病理診断された。膵切除後12 か月で原病死した。症例3: 62 歳,女性。左腎細胞癌に対して左腎摘出術を実施。3 年後にCT で膵体部に15 mm の造影効果の高い腫瘤影を認め,転移性膵腫瘍の診断で膵体尾部切除術を施行,腎癌膵転移と病理診断された。膵切除後15 か月で原病死した。 -
化学療法中に増大したTriple Negative・巨大副乳癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は38 歳,閉経前女性である。右腋窩腫瘤で受診するも粉瘤といわれた。腋窩腫瘤の増大があり,感染性粉瘤の疑いで切開排膿された。当院の初診時,右腋窩に4 cm の腫瘤を触知,超音波検査で6 cm,MRI で血管増生の豊富な腫瘤を認めた。T4bN1M0,stage III B のtriple negative の副乳癌と診断された。治療は術前化学療法FEC100 を4 コース行うもprogressive disease(PD)のためweekly-paclitaxel に変更した。腫瘍は潰瘍化と易出血性を認め,それによりHb 6 g/dL まで低下したため,緊急手術を行った。術後の化学療法はpaclitaxel/gemcitabine を6 コース行った。副乳癌はまれで,腋窩腫瘤をみた際には副乳癌も念頭におくべきである。術前化学療法中,PD になった副乳癌が化学療法の変更を行うも出血を契機に準緊急手術を行った1 例を経験したので報告する。 -
cCR を得た乳癌術後肝転移の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例: 55 歳,女性。経過: 2006 年5 月ごろから右乳房腫瘤を自覚し近医受診。針生検でpapillotubular carcinoma,ER(-),PgR(-),HER2 score(3+)であった。本人の希望もあり,加療目的に11月当科紹介受診。触診では,右AB領域に大きさ約2 cm の境界不明瞭な弾性硬の可動性の内腫瘤を認めた。全身検索したところ遠隔転移も認めなかったため,12 月にBt+Ax( level II)施行。病理組織ではT2N0M0,stage IIA,papillotubular carcinoma,ER(-),PgR(-),HER2 score(3+)であった。補助療法を勧めたが希望されなかったため経過観察していた。術後2 年の検査で多発性肝転移を認めたためFEC 療法を開始し,6 コース終了後のCT,超音波検査では,転移巣は消失しcCR を得た。まとめ: 乳癌は,他臓器の固有癌に比較すると化学療法が有効であるといわれている。同時に,新規薬剤も多種にわたり効果的であった様々な報告がされている。一方で転移臓器によっては,治療薬剤に難渋することもある。 -
皮膚浸潤を伴う局所進行乳癌(T4b)の病態と予後についての検討
38巻12号(2011);View Description
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T4b 乳癌52 例を対象として,治療法および予後の検討を行った。初回治療内容は化学療法35 例(67.3%),手術14 例(26.9%),内分泌療法3 例(5.8%),放射線療法0 例(0%)であった。化学療法施行群のうち31 例(88.6%)がアンスラサイクリンまたはタキサンを含むレジメンが施行されており,奏効率は67.7%であった。化学療法先行群で皮膚所見の消失したものが28.6%であった。全治療期間中における手術療法施行率は88.5%であり,化学療法施行率80.8%,放射線療法施行率17.3%,内分泌療法施行率は69.2%であった。全体のmean TTP は3.9 年,MST は5.9 年であった。手術の有無で比較すると生存期間に差は認めなかったが,無再発生存率で非手術療法群に比べて手術療法施行群のほうがよい成績であった。T4b乳癌において手術療法を含む積極的な局所治療は,出血のコントロール,心理的影響などの観点から,治療法の選択肢として重要であると考えられた。 -
腹水癌に対するシスプラチン新剤形の開発─基礎的検討─
38巻12号(2011);View Description
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シスプラチン注射製剤(CDDP)を独自の方法で剤形変更し,局所停留性と徐放性の付与を試みている。担癌マウスを作製し,抗腫瘍効果を検討した。担癌マウスの生存期間は,新剤形投与群でCDDP 単独投与に比較し長く,抗腫瘍効果に優れていることが示唆された。また,新剤形投与の長期生存マウスの腹水からCD8 陽性リンパ球が認められたことから,癌免疫能誘導が長期生存に寄与していることが考察された。 -
S-1+CDDP 腹腔内化学療法にて長期生存を得たCY 陽性胃癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は50 歳台,男性。2005 年11 月,胃癌に対して幽門側胃切除術を施行した。術中所見では腹膜播種は認めなかったが,腹腔内洗浄細胞診が陽性であったため術後の腹腔内化学療法の目的で腹腔内ポート留置を行った。胃切除検体はLM 領域の小弯を中心とした全周性の3 型進行胃癌であった。組織学的には印環細胞癌と低分化型腺癌を認め,深達度はSE でリンパ節転移を認めた。術後診断はpT4aN2M0P0CY1H0,Stage IV(胃癌取扱い規約第14 版)となった。術後S-1(100 mg/body)内服2 週投与1 週休薬と腹腔内ポートからのCDDP(初回のみ60 mg/m2,2 回目より30 mg/m2)腹腔内化学療法を行い,合計11 コース施行した。11 コース終了の後,ポートより採取した腹腔内細胞診が陰性であることを確認し,腹腔内化学療法を終了した。その後,S-1(100 mg/body)内服投与を4 年間継続し,治療開始後5 年6 か月経過したが無再発生存中である。S-1+CDDP 腹腔内化学療法は,CY 陽性胃癌の治療に効果が期待された。 -
進行膵癌の腹膜播種軽減に対するGemcitabine 腹腔内注入療法の試み
38巻12号(2011);View Description
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膵癌の予後を規定する因子の一つとして腹膜播種進展は大きな問題である。今回,非切除膵癌および再発膵癌治療の腹膜播種の軽減を目的としてgemcitabine(GEM)の腹腔内投与(ipGEM)を行った。対象は,膵癌局所進行例3 例と腹腔内再発例1 例で,開腹下に腹腔内にカテーテルを留置し,皮下にリザーバー・ポートを留置した。開腹時の処置は,局所進行例の2 例に術中放射線照射を行い,うち1 例に胃空腸吻合術を行った。その他の1 例に人工肛門造設術を行った。再発例は,腹壁と腹腔内腫瘍を摘出し,結腸バイパス術を行った。局所進行例の1 例は病状の悪化でipGEM を行うことができず,再発例の1 例は,腹壁皮下への注入液漏れで継続不能となった。局所進行例の残る2 例では,ipGEM を継続することができ,うち1 例では術後6 か月間腹膜播種進展が制御可能であった。もう1 例では肝転移巣は増大傾向にあるが,腹膜播種進展がなく経過している。 -
StageII・III食道癌に対する化学放射線療法の意義
38巻12号(2011);View Description
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背景: 本邦におけるTNM cStage II・III 食道癌に対する術前化学放射線療法(chemoradiation therapy: CRT)の適応は,いまだ不明確である。術前CRT 症例と根治的CRT 症例を比較し,TNM cStage II・III 症例におけるCRT の意義について検討した。対象: TNM cStage II・III 食道扁平上皮癌30 例。A 群(術前CRT)12 例,B 群(根治的CRT)18 例。結果B 群はA 群に比べ高齢症例が有意であった。A 群手術合併症; 肺炎16.6%,縫合不全33.3%,反回神経麻痺8.3%。手術関連死亡は認めず。CRT 奏効率(CR+PR); A 群75%,B 群88.9%(p=0.32)。生存期間中央値; A 群17.4 か月,B 群12.6 か月(p=0.18)。結語: 術前CRT 症例は手術安全性に問題はなく,根治的CRT も比較的安全に施行された。両群間の生存率に差は認めず,根治的CRT は臓器温存面から切除可能食道癌の治療選択肢の一つのオプションになり得ると考えられる。 -
胃癌脳転移の治療成績
38巻12号(2011);View Description
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胃癌の脳転移は比較的まれな疾患であり,その予後は不良である。今回,当院で経験した胃癌脳転移4 例について報告する。症例: 全例男性で,年齢は中央値76(57~77)歳,胃癌の進行度はstage IA 1 例,stage IIIA 2 例,stage IV(肝転移)1 例で,3 例には手術,stage IV の1 例には化学療法が選択されていた。経過: 自覚症状はふらつき2 例,意識障害1 例,頭痛1 例で,脳転移診断までの期間は11,24,30,83 か月であった。小脳転移1 例,大脳転移3 例で,3 cm を超える転移巣(小脳,大脳それぞれ1 病巣)には手術が,それ以外にはガンマナイフによる治療が選択された。脳転移治療後の予後は45,48,58,94 日と予後不良であった(初回治療から12,26,32,85 か月)。考察: 近年ガンマナイフ治療が導入され,脳転移の制御が可能な症例も認められるが,予後はいまだ不良である。脳転移を疑い早期に診断し対応すること,他の再発部位の診断と治療が重要である。 -
胃癌肝転移に対して放射線療法が有効であった1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は69 歳,男性。2007 年9 月に肝転移(S5)を有するLM 領域後壁の2 型進行胃癌(por1)に対して幽門側胃切除を施行した(p-T2N3aM1,Stage IV)。術後は肝転移に対して化学療法をthird-line まで施行したが,肝転移巣の増大を認めたため2008 年7 月に肝部分切除術を施行した。2009 年2 月に再度肝転移(S7 およびS6/7 境界部)を認めたためpaclitaxelによるfifth-line 化学療法を施行した。縮小を認めなかったため12 月よりS6/7 に,2010 年2 月よりS7 に対して定位放射線治療(stereotactic body radiation therapy: SBRT)を施行した。SBRT 後はpaclitaxel による化学療法を施行しているが,CRが継続している。SBRT は胃癌肝転移に対する治療法の一つになり得る可能性が示唆された。 -
放射線療法とPaclitaxel 化学療法にて長期CR が得られた胃癌直腸膀胱窩再発の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は75 歳,男性。胃体上部胃癌(Stage II)に対して幽門側切除術後2 年間再発なく経過していたが,2006 年9 月CT 上直腸膀胱窩に5 cm 大の腫瘍が認められ,腹膜転移再発が疑われた。CT ガイド下生検を施行し,病理組織学的に胃癌の転移が確認されたため,S-1 による化学療法を行ったが奏効しなかった。直腸狭窄回避のため局所制御を目的に2007 年12 月,直腸膀胱窩腫瘍に対して放射線56 Gy 照射を行った。その後2008 年3 月よりpaclitaxel(PTX)の化学療法を施行した結果,7 月にはCT 上直腸膀胱窩腫瘍は完全奏効(complete response: CR)を示し,現在約3 年間CR が維持されている。一般に胃癌術後再発に対しては化学療法が中心となるが,CR が得られる症例は極めてまれである。胃癌の直腸膀胱窩再発腫瘍に放射線療法が著効し,PTX の化学療法により局所制御のみならず,長期CR が得られた症例を経験したので報告する。 -
定位放射線治療で著効が得られた胆嚢癌肝転移症例
38巻12号(2011);View Description
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症例は75 歳,男性。2007 年11 月に胆嚢結石症に対して腹腔鏡下胆囊摘出術を行ったが,術後の病理検査にて胆囊癌と診断され,12月に肝床切除,ポート部腹壁切除,リンパ節郭清術を施行した〔T4( Hinf 2),N0: Stage IVa〕。術後1年4 か月目のCT で肝S4/8 に低吸収域が疑われた。6 週後のEOB-MRI で肝転移(径20 mm)と診断され,定位放射線治療52.8Gy/4 Fr を施行した。病変は3 か月後のCT にて縮小し,7 か月後には同定不能となった。照射後24 か月後の現在まで肝再発を認めていない。一方,2010 年7 月のCT で#9 リンパ節の腫大を認め,リニアック照射60 Gy/20 Fr を施行した。4 か月,9 か月後のCT にて縮小傾向を示している。胆囊癌術後43 か月後の現在,体調良好で生存中である。胆囊癌肝転移は手術適応となることは極めてまれで,予後は不良である。定位放射線治療は高い局所効果を示し,病変は消失した。本法は高い効果が期待でき安全性も高く,治療期間も短いためQOL の面でも良好と思われる。 -
内肛門括約筋切除術の長期術後成績からみた術前放射線療法の適応
38巻12号(2011);View Description
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背景: 内肛門括約筋切除(intersphincteric resection: ISR)に対する術前放射線療法の長期術後成績を明らかにして,その適応を検討した。対象と方法: 対象はISR 治癒切除の22 例(照射群10 例,非照射群12 例)。① 照射群と非照射群の背景因子と術後成績を比較検討した。② 平均追跡期間6.8 年の長期術後排便機能を比較検討した。結果: ① 両群間で臨床病理学的因子や手術因子で有意差はなかった。術後合併症は照射群40%/非照射群17%。局所再発は両群で認められず,5 年生存率は照射群80%/非照射群75%。② 排便回数は照射群4.5 回/非照射群2.7 回。urgency や固形便の漏れは照射群が有意に劣り,Wexner score は照射群12.0/非照射群6.0 と照射群で有意に悪く,Kirwan score も照射群が有意に劣っていた。結論: ISR の術前照射は長期術後排便機能の面から満足できる成績ではなく,本術式を行う場合は選択すべき治療法ではない。 -
S-1 併用放射線療法にてCR を得た肛門管扁平上皮癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は53 歳,女性。肛門痛と下血を主訴に近医を受診,内視鏡検査で肛門管癌を認め精査加療目的で当科紹介となった。画像所見で遠隔転移は認めておらず,生検の病理診断が扁平上皮癌であったことから本人の肛門温存希望もあり,S-1 併用の放射線化学療法を施行した。S-1 は120 mg/day 2 週投薬,1 週休薬とした。放射線は骨盤+鼠径部にtotal 45 Gy/25 Fr,ブーストとして局所に14 Gy/7 Fr を5 日照射2 日休みの間隔で行った。治療終了後の内視鏡検査では肉眼所見上はっきりとした腫瘍性病変は認めず,生検での治療効果判定はGrade 3 であった。若干の文献的考察を加え報告する。 -
放射線化学療法後に切除可能となった局所進行直腸癌症例の縦隔リンパ節転移に対し重粒子線治療が奏効した1 例
38巻12号(2011);View Description
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局所進行直腸癌に対し放射線化学療法後に切除可能となり,続いて縦隔リンパ節転移に対する重粒子線治療が奏効した1 例を経験した。症例は65 歳,女性。局所進行直腸癌,後腹膜浸潤,多発リンパ節転移の診断にて切除不能と判断し,S 状結腸人工肛門造設術を施行した。その後,放射線化学療法を施行し,著明な腫瘍縮小により切除可能となり,低位前方切除術を施行した。病理結果は中~低分化型腺癌,pA ly0 v3 pN0 pRM0 で局所根治切除が得られ,病理組織学的治療効果はGrade 2であった。術後,化学療法を再開するも,縦隔リンパ節転移巣に増大傾向が認められた。同病変に対し重粒子線治療(52.8 Gy)を施行し,転移リンパ節の著明な縮小(-48%)を認めた。放射線治療,化学療法,手術,さらに重粒子線治療を用いた集学的治療により,局所進行直腸癌縦隔リンパ節転移症例の局所および遠隔病巣の制御が可能であった。 -
肛門扁平上皮癌6 例の治療経験
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肛門扁平上皮癌に対する治療方針として,本邦では従来から手術療法が治療の主体である。今回,肛門扁平上皮癌に対する治療法別の治療成績を検討した。2000~2010 年に経験した肛門扁平上皮癌6 例のうち,初期3 例は手術を前提とした放射線化学療法(chemoradiotherapy: CRT)を選択し,後期3 例は根治的CRT を行った。手術群: 症例はStage IIIB 2 例,StageIIIA 1 例。術前療法はCRT 2 例,化学療法が1 例で,抗腫瘍効果は全例がSD。術後合併症は3 例全例でみられ,平均在院日数は45 日。予後は1 例で遠隔転移を認め,2 例は無再発生存中。CRT 群: 症例はStage IIIB,II,IIIA の3 例。照射量は全例が50~60 Gy で,抗腫瘍効果はCR 2 例,PR 1 例。PR 症例はsalvage 手術を行い,手術時間は193 分で,出血量は200 mL。術後合併症は骨盤底膿瘍がみられたが,在院日数は23 日。予後は1 例で腸骨リンパ節転移のため追加照射を必要としたが,2例は無再発生存中。根治CRT の抗腫瘍効果は高く,salvage 手術の安全性やその予後は良好であった。 -
化学放射線療法にて5 年以上Complete Response が得られた肛門扁平上皮癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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肛門扁平上皮癌に対して化学放射線療法を行い,5 年以上complete response が得られた症例を経験したので報告する。症例は60 歳台,男性。肛門部痛を主訴に近医を受診,痔瘻切除術の半年後に肛門周囲に腫瘤形成を認め,生検で肛門扁平上皮癌と診断され当院を紹介受診した。受診時,肛門右側に8 cm 大の硬結を触知した。肛門扁平上皮癌T3N0M0,Stage II に対して化学放射線療法を行った。化学療法は5-FU 750 mg/m2/day の持続静注( days 1~5,29~33) とmitomycin C 10mg/m2(day 1,29) の併用とし,放射線療法は総線量60 Gy(2 Gy/day) の多門照射とした。化学放射線療法を終了して1 か月後には腫瘍は消失した。化学放射線療法を施行してから6 年経過した現在も無再発生存中である。 -
進行下部直腸癌に対するS-1 併用術前化学放射線療法
38巻12号(2011);View Description
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局所進行下部直腸癌5 症例に対してS-1 併用術前化学放射線療法(CRT)を施行し,安全性と治療成績について検討した。術前CRT として化学療法は,S-1 80 mg/m2 14 日投薬7 日休薬14 日投薬を行い,放射線療法は1.8 Gy/day で5 回/週,計45 Gy 照射(ともに計35 日間)とした。術前CRT 終了後,6~8 週間後に手術を施行した。手術は原発巣切除+両側側方郭清を施行した。術前CRT による病理組織学的な奏効率60%(3 例ともGrade 2),側方リンパ節転移症例は0 例であった。有害事象は全例で認めたがgrade 2 以下であり,全例術前CRT を完遂できた。術後合併症は,創感染2 例,縫合不全1例であった。S-1 併用術前CRT は,副作用も軽微で安全に施行できた。今後は,この結果を基に第II 相試験を開始している。 -
長期生存を得た胃結腸瘻を伴った胃癌の2 切除例
38巻12号(2011);View Description
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胃結腸瘻を伴う胃癌の切除例は少なく,予後に記載のあるもののほとんどが肝転移や腹膜播種のために1 年以内に死亡している。長期生存を得た2 切除例を経験したので報告する。症例1: 45 歳,男性。内視鏡検査にて胃体中部大弯に粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認め,生検にて粘液腺癌であった。術中所見にて壁外発育型胃癌による胃横行結腸瘻と診断した。術後化学療法が奏効し,術後56 か月後に癌死に至るまで社会復帰を果たした。症例2: 69 歳,男性。内視鏡検査にて3 型の腫瘍を認め,最深部で腸粘膜が観察された。胃全摘術および膵体尾部,脾,横行結腸合併切除を施行した。術後20 か月後に癌死に至った。胃結腸瘻に対する合併切除の意義については意見が分かれるところだが,同症例のように長期生存が得られるケースもあり,手術時期を逸さないことが肝要である。 -
腹腔鏡下胃切除の手術費用の調査
38巻12号(2011);View Description
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背景: 腹腔鏡下胃切除(LAG)は急速に普及しているがコスト面での検討は十分ではない。今回,腹腔鏡下胃切除におけるコスト面での問題を検討した。対象と方法: 2010 年10 月~2011 年2 月までに当院で施行した開腹幽門側胃切除(ODG),開腹胃全摘(OTG),腹腔鏡補助下幽門側胃切除(LADG),腹腔鏡補助下胃全摘(LATG)の各5 例合計20 例の手術料,材料費,差益(手術料-手術材料費)を比較検討した。結果: 各術式平均の手術料(円)/手術材料費(円)/手術差益(円)は,ODG: 708,700/300,403/408,297,OTG: 856,400/380,588/475,812,LADG: 783,600/474,919/308,681,LATG: 922,300/652,822/269,478 であった。腹腔鏡下手術は開腹手術と比較して差益は少なかった。考察: 実態に合った適切な手術料および手術材料費用の設定が必要と考えられる。 -
化学療法が著効した肝転移を伴う胃内分泌細胞癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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患者は70 歳台,男性。心窩部痛を主訴に当院を受診し,多発肝転移を伴う胃癌を指摘された。上部内視鏡検査で噴門部小弯に3 型胃癌を認め,胃生検により胃内分泌細胞癌と診断された。全身化学療法としてCPT-11+CDDP を11 コース施行したところ,上部内視鏡検査では原発巣は瘢痕を認めるのみとなり,CT・MRI 検査では肝転移は消失していた。clinical CRと診断し,胃全摘術,肝S5 部分切除術を施行した。切除標本では胃壁の筋層内に一部癌細胞の遺残を認めたが,肝転移巣には悪性所見を認めなかった。術後補助化学療法としてS-1 内服を3 コース施行したが,grade 3 の貧血を認めたためその後は無治療で経過観察中である。現在まで再発は認めていない。予後不良とされる胃NEC に対しては化学療法が有効な場合があり,肝転移を伴った症例に対しても切除可能になれば,積極的な外科切除も考慮すべきである。 -
幽門狭窄を伴う切除不能胃癌に対するWallflex Stent 留置術の経験
38巻12号(2011);View Description
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本邦では2010 年4 月から内視鏡的胃十二指腸ステント(Wallflex duodenal stent: WDS)留置術が保険収載され,使用可能となった。当院では,これまで3 例の幽門狭窄を伴う切除不能進行胃癌症例に対して,WDS を計5 回留置した。症例1:67 歳,男性。肝肺リンパ節転移を伴うStage IV の前庭部胃癌。化学療法中に通過障害が出現し,WDS 留置。二次治療を行い,約5 か月間は全粥摂取可能。ステント内閉塞に対してWDS を再留置したが,初診から約11 か月で原病死。症例2: 63 歳,男性。肝リンパ節転移を伴うStage IV の前庭部胃癌。化学療法中に通過障害が出現し,WDS を留置した。約3 か月間は全粥を摂取でき,初診から約6 か月で原病死。症例3: 72 歳,男性。肝転移を伴うStage IV の前庭部胃癌。化学療法中に通過障害が出現し,WDS を留置した。約4 か月間は全粥摂取可能で四次治療まで行ったが,再度狭窄症状が出現し,WDS 再留置により経口摂取の改善を認めた。初診から約9 か月で原病死。結語: 幽門狭窄を伴う切除不能進行胃癌症例に対するWDS 留置術は,いずれの症例でも合併症はなく安全に施行でき,3 か月以上の期間で全粥経口摂取が可能になった。WDS 留置術は安全で有効な治療選択肢として期待できる。 -
審査腹腔鏡が診断・治療方針決定に有用であったスキルス胃癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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内視鏡下生検で癌細胞を証明できず,審査腹腔鏡が診断・治療方針決定に有用であったスキルス胃癌の1 例を経験したので報告する。症例は60 歳台,男性。主訴は心窩部痛。健康診断目的で施行した上部消化管X 線検査にて胃体部の拡張不良を認め,近医にて内視鏡下生検が行われたが陰性であった。その後,当院でも上部消化管X 線検査,腹部造影CT 検査,内視鏡検査を行い,画像所見上スキルス胃癌が疑われたが内視鏡下生検は陰性であった。審査腹腔鏡を施行したところ,腹壁結節が存在し,生検にてadenocarcinomaと診断された。以上よりStage IV(T3NxM1P1CY1)のスキルス胃癌と診断し,現在化学療法を施行中である。 -
消化管出血で胃再発が判明したマントル細胞リンパ腫の1 例
38巻12号(2011);View Description
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64 歳,男性。全身に広がったマントル細胞リンパ腫(MCL)と診断され,初回の化学療法で12 か月間CR を維持した後にPD となり,その11 か月後に突然消化管出血を発症した。上部消化管内視鏡検査ではMLP を呈し,頂部に潰瘍を形成し出血していた。状態が安定した後に生検を行い免疫染色でMCL の再発と最終的に診断,bendamustine 併用化学療法にて再びCR となった。 -
化学放射線療法を施行した食道胃接合部癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は80 歳,女性。2010 年11 月,貧血を主訴に消化管精査を施行し胃癌と診断された。上部消化管内視鏡検査では噴門部から食道胃接合部に一部浸潤する3 型胃癌を認め,生検の結果はpor/tub2 であった。CT 検査では明らかな遠隔転移を認めず,c-stage II B(T4aN0M0)と診断した。しかし呼吸機能検査で重度の閉塞性換気障害を認め,全身麻酔下での胃全摘術は困難と判断し,化学放射線療法を開始した。化学放射線療法の内容はS-1/low-dose CDDP/radiation で,入院にてS-1(80 mg/m2,day 1~21),CDDP(6 mg/m2,day 1~5,8~12,15~19),radiation(50.4 Gy/28 Fr)施行後,外来にてS-1 単剤療法を継続している。治療効果はSD であるが,腫瘍は縮小し出血はみられなくなった。またgrade 3 以上の副作用はみられなかった。化学放射線療法は,食道胃接合部癌患者にとって有用な治療となる可能性があると考えられた。 -
放射線治療による局所制御が有効であった再発胃癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は63 歳,男性。U 領域の0-I 型胃癌に対して,2006 年2 月胃全摘術,胆摘,D1+β郭清を施行し,病理組織は乳頭腺癌,T1(SM),N0,H0,P0,CY0,M0,Stage IA(胃癌取扱い規約第13 版)であった。2008 年5 月肝S2/3 の3 cm大の腫瘤に対して肝外側区域部分切除を施行し,病理組織は胃癌肝転移であった。2009 年2 月No. 12 リンパ節再発に対して,化学療法(一次治療: S-1,二次治療: CPT-11)を施行したが,9 月に門脈腫瘍栓,肝S8 転移を来した。No. 12 リンパ節,門脈腫瘍栓に対して,まずS-1+放射線照射(65 Gy/26 Fr)を施行し,その後肝転移に対して定位放射線照射(SRT)(52.8Gy/4 Fr)を施行し,すべての転移巣で完全奏効を得た。その後無治療で経過観察し,19 か月間再発・再燃を認めていない。grade 3 以上の有害事象は認めなかった。胃癌の再発が局所に限られている場合は,放射線療法も治療法の選択肢となり得る。 -
化学放射線療法により良好なQOL が維持し得た胃癌多発骨転移の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は75歳,男性。2009年6 月にStage IV(CY+)胃癌に対して幽門側胃切除術を施行した。10月初旬から右上肢の痛み,しびれが出現した。CT 検査にて多発骨転移と診断され,頸椎MRI 検査ではC7 病巣は脊柱管内へ伸展し,硬膜嚢への圧排所見を認めた。全身化学療法をS-1/CDDP 療法に変更し,C7 病巣に対しては放射線療法30 Gy を併施した。2 コース終了時には筆記が可能なまでに神経症状の改善が認められた。その他の転移病巣は進行拡大が認められたため,抗癌剤レジメンを変更し継続加療を続けた。2010 年6 月ごろから,左下肢・臀部痛による歩行困難が出現した。腰椎MRI 検査ではL1 からL3 転移病巣は増大し,脊髄への圧排所見を認めた。放射線療法30 Gy を施行したところ,座位可能なまでに症状の改善が認められた。今回,骨転移巣に対する放射線療法がQOL の改善に有効であった胃癌骨転移の1 例を経験した。 -
局所進行膵癌に対し集学的治療にて比較的良好な経過が得られている1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は64 歳,女性。腹痛,背部痛にて当院を受診した。画像上膵体尾部癌と診断され,2009 年4 月膵体尾部切除D1を施行した。Stage III,断端陰性。術後補助化学療法としてgemcitabine(GEM)を開始した。14 か月後画像上局所再発を認めたため,S-1 内服を開始するとともに体外照射を行った。その後GEM+S-1 継続中であるが,2011 年6 月現在まで再発巣はSD であり,外来経過観察中である。 -
非切除膵癌に対し化学放射線療法が奏効した1 例
38巻12号(2011);View Description
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背景: 膵癌は非常に難治な疾患であり,予後不良である。しかも切除不能膵臓癌は,まだ有効な治療法は確立されていない。われわれの施設での局所進行もしくは遠隔転移を伴う浸潤性膵管癌で,平均生存期間は未治療例で7.3 か月,gemcitabine(GEM) を併用した化学放射線療法群で13.6 か月であった。今回,非切除膵癌に対しGEMを用いた化学放射線療法を行い,良好な経過を呈している症例を報告する。 -
肝転移再発に局所治療を組み合わせ長期経過中の膵VIPoma の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は59 歳,女性。膵内分泌腫瘍に膵体尾部切除を施行し,術後5 年に4 か所の肝転移と左腎近傍の腹膜転移を認めた。頻回の下痢,低K血症性周期性四肢麻痺,血中vasoactive intestinal polypeptide(VIP) 上昇あり,VIPomaと診断した。肝切除,腹膜腫瘍切除を施行し,病理検査にて高分化型膵神経内分泌癌の肝・腹膜転移と診断した。再発切除後7 か月に多発肝転移がみられ,肝動脈化学塞栓療法(TACE)を施行した。TACE の効果不良病変にラジオ波凝固療法(RFA)を追加した。現在,原発切除後7 年8 か月,肝・腹膜再発切除後2 年6 か月,活動性病変なく経過している。高分化型膵神経内分泌癌の再発,進展,進行は緩徐なことも多い。可能であれば外科切除が勧められるが,多発病変,完全切除不能な病変,切除後再発などで,手術にTACE やRFA などの局所療法を効果的に組み合わせることは,QOL の維持と予後の改善に有効である。 -
膵体尾部切除後に腹膜再発を来したIPMN 由来浸潤癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は62 歳,男性。2006 年7 月に膵嚢胞性腫瘍,横行結腸浸潤の診断で膵体尾部切除術,横行結腸部分切除術,術中放射線照射( 20 Gy)を施行されていた。病理組織診断ではIPMN由来浸潤癌stage IVaの診断であり,gemcitabine(GEM)による術後化学療法を行っていた。術後11 か月目に撮影した腹部造影CT 検査にて,横隔膜下に囊胞性腫瘍を認めCEA 15.2ng/mL と上昇を認めた。腹膜再発と診断し,GEM とS-1 の併用による化学療法を行うこととした。その後CEA は正常値まで低下したが,術後19 か月目にCA19-9 の上昇を認めtotal 40 Gy の外照射による放射線療法を行った。放射線照射から22か月後,S-1 のみの化学療法を行っていたが,CA19-9 は再び上昇に転じた。腹部造影CT およびPET では,横隔膜下の病変以外には再発病変は指摘できなかった。2010 年1 月,腫瘍切除術,胃部分切除,横隔膜部分切除を施行した。免疫染色でもMUC1(+),MUC2(-),MUC5AC(+),MUC6(+)と前回摘出標本と同様の粘液発現形態であり,IPMN由来浸潤癌の再発と診断した。 -
炎症性乳癌手術に対する筋皮弁による一期再建の有用性
38巻12号(2011);View Description
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症例1: 59 歳,女性。左炎症性乳癌(HER2 type),T4N1M0,stage III B に対し化学療法を施行しPR であったが,腫瘍の増大を認めたため,胸筋温存乳房切除術+腹直筋皮弁一期再建術を施行した。術後,放射線療法,trastuzumab 投与を行い,術後1 年3 か月現在,無再発生存中である。症例2: 67 歳,女性。左炎症性乳癌(triple negative),T4N2M0,stage IIIBに対し多種の化学療法を行ったが,いずれもPD であったため,腫瘍の増大による疼痛,出血のコントロール目的にて,胸筋合併乳房切除術+腹直筋皮弁一期再建術を施行した。術後,放射線療法,化学療法を行ったが,術後6 か月で肺転移,肝転移が出現し,術後10 か月目に永眠された。まとめ: 炎症性乳癌に対する乳房切除術において,筋皮弁による一期再建を行えば広範な乳房切除が可能であり,有用な手技と思われた。 -
局所切除にて診断し得た乳腺腺筋上皮腫の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例: 72 歳,女性。主訴: 右乳房腫瘤触知。現病歴: 2009 年11 月下旬ごろより腫瘤を触知した。初診時,右D 領域に弾性軟の境界明瞭な腫瘤を触知した。乳腺超音波検査では,同部位に約3 cm 大の充実部分に血流を認める嚢胞内腫瘍を認めた。造影MRI では同部位に辺縁一部不整な3 cm 大の増強効果を認めた。針生検を施行したところadenomyoepithelioma の診断であったが,乳癌の可能性も否定できないことから腫瘤摘出術を施行した。病理組織検査所見はadenomyoepithelioma,ER(+),PgR(-),HER2(0),αSMA(+)であった。まとめ: 乳腺腺筋上皮腫は,画像診断や細胞診などの確定診断は困難であり,良悪性の鑑別も容易ではない。本疾患が疑われた場合,確定診断に至るまでには組織診断が不可欠である。過大侵襲かけることなく局所切除にて診断できたので,若干の文献的考察を加えて報告する。 -
減量手術を行った乳腺原発間質肉腫,いわゆる悪性線維性組織球腫の組織像を呈した2 例
38巻12号(2011);View Description
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症例1: 64 歳,女性。2006 年10 月に右乳癌に対して乳房円状部分切除術と放射線療法が行われた。2010 年3 月ごろより右乳房D 領域の腫脹を自覚し,マンモトーム生検で乳房肉腫と診断され,乳頭乳輪温存乳房切除術を行ったところ,病理学的診断で乳腺間質肉腫,悪性線維性組織球腫と同様の組織像と診断された。術後3 か月で胸壁再発を来し,胸壁腫瘍切除・広背筋皮弁再建術を行ったが,この時点で胸膜播種と悪性胸水を認めた。初回手術後約6 か月で呼吸不全のため死亡した。症例2: 60 歳,女性。2009 年8 月に左乳房腫瘤を主訴に当院を受診,精査を勧められたが放置し,2010 年10 月に再診した。小児頭大の自壊を伴う巨大乳腺腫瘤となっており,胸腹部CT で多発肺転移を認めた。左乳房切除・大胸筋合併切除・分層植皮術を行ったところ,病理学的診断で乳腺間質肉腫,悪性線維性組織球腫と同様の組織像と診断された。術後30 日で局所再発が確認され,術後51 日に死亡した。 -
術前緊急放射線照射にて有効な止血を得た乳腺扁平上皮癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は40 歳,女性。右乳房は胸筋固定を伴う易出血性の巨大潰瘍を呈し,T4b,N1,M0,Stage III b であった。極度の貧血と炎症反応高値を認め,全身状態も不良で止血目的の姑息的手術も困難であった。病理診断は乳腺扁平上皮癌であり,止血目的に計30 Gy の緊急放射線照射を施行した。放射線照射にて良好な止血を得た後weekly PTX を導入した。化学放射線療法後は,病巣は著明に縮小し,胸筋合併乳房切除術+腋窩リンパ節郭清+植皮(大腿部より採皮)にて根治手術を施行することができた。扁平上皮癌であり,一般的な組織型の乳癌よりも放射線感受性が高く,より有効な術前化学放射線治療を行い得た可能性があると考えた。 -
乳癌術後腋窩リンパ節再発についての検討
38巻12号(2011);View Description
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乳癌術後腋窩リンパ節(lymph node: LN)再発に対する局所治療の有用性や全身治療の選択について検討した。腋窩LN 単独再発13 例のうち,センチネルLN 生検後4 例,腋窩リンパ節郭清後9 例であった。局所治療としてセンチネルLN 生検後と郭清後再発5 例に腋窩郭清術を行い,4 例は全身治療のみ行った。再発LN のreceptor status は原発巣のER が低発現であった3 例で陰性化した。HER2 陽性例では陰性化し,triple negative では変化しなかった。再発後の全身治療は化学療法6 例,trastuzumab 2 例,内分泌治療1 例,術前治療の続行4 例であった。10 例は健存している。再々発は遠隔臓器転移を3例に認め,1 例が死亡した。術後腋窩LN 再発への腋窩LN 郭清は局所制御に有効と考えられた。転移LN のreceptor statusの再評価は全身治療の選択に有用と考えられた。 -
Lapatinib+Capecitabine 併用療法が奏効した乳癌肝転移の1 例
38巻12号(2011);View Description
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われわれは,乳癌肝転移に対してのthird-line としてlapatinib+capecitabine 併用療法が奏効した1 例を経験したので報告する。症例は55歳,女性。浸潤性乳管癌(T1cN1M0,stage IIA),ER(-),PgR(-),HER2(3+),の診断にて術前化学療法の方針とし,weekly paclitaxel とFEC100 の順次投与を行った後,胸筋温存乳房切除術(Level I,II)を施行した。病理結果では原発巣および腋窩リンパ節転移巣はpCR で,組織学的効果はGrade 3 であった。術後補助療法としてtrastuzumab を施行したが,術後5 か月後に多発性肝転移を認めた。trastuzumab にvinorelbine そしてdocetaxel を併用して1 年4 か月治療したが,再び肝転移巣の増大を認めたためthird-line としてlapatinib+capecitabine の投与を開始した。投与4 か月後の腹部CT では,肝転移の著明な縮小を認め,その効果は約8 か月間続いた。 -
Letrozole 単独投与が著効した乳癌後頭部皮膚転移の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は60 歳台,女性。1 年前より右後頭部腫瘤を自覚し,近医皮膚科を受診した。右後頭部に約3 cm の多結節性の腫瘤を認め,生検を施行した。病理組織学的検査で腺癌の皮膚転移と診断されるも原発巣は同定できなかったため,精査目的に当院紹介受診となった。PET 検査では,後頭部の腫瘤以外にはFDG の異常集積を認めなかった。免疫染色にてER が陽性であることから乳癌を疑い,MMG および超音波検査を施行したが,明らかな異常を認めなかった。MRI 検査では,両側乳腺に区域性の造影される部位が認められたため,同部位に対してMRI 補助下の針生検を施行,両側ともに浸潤性乳管癌(ER+/PgR+/HER2-)であった。以上より遠隔皮膚転移を伴う乳癌と診断,letrozole による内分泌治療を開始した。その後,頭皮転移巣は著明に縮小した。乳癌の転移巣として遠隔皮膚転移はまれである。Conner らによると女性では頭皮皮膚転移のうち84%は乳癌が原発巣と報告されており,頭皮への皮膚転移では乳癌を念頭におくべきである。 -
局所切除できた巨大甲状腺腫の1 切除例
38巻12号(2011);View Description
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症例: 59 歳,女性。主訴: 頸部腫大。現病歴: 約30 年前より頸部腫大を自覚していたが放置していた。また,甲状腺機能低下症を認めていたが,内科的治療にて経過良好であった。しかし,徐々に増大傾向を認めたため手術目的に紹介となった。経過: 頸部超音波検査所見では,甲状腺全体が腫大していた。頸部CT でも同様に甲状腺の腫大を認め,気管を圧迫している所見であった。手術は,頸部襟状切除にて甲状腺準全摘術を施行した。病理組織学的検査所見では,nodular hyperplasia withchronic thyroiditis であった。重量は240 g で大きさは約10×10×3.8 cm であった。術後一時的な甲状腺機能低下症を認めたが,現在は経過良好である。まとめ: 甲状腺機能が安定しており,検査所見において悪性の可能性が低い場合には甲状腺疾患は経過観察されることが多いが,徐々に増大して随伴症状も伴い,美容的にも注目されることがあるので,慎重に観察し局所切除することも重要である。 -
再発後急速増悪にて気管内EMS ステントを留置した甲状腺癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は60 歳,女性。2006 年,結節性甲状腺腫+頸部リンパ管嚢胞にて甲状腺右葉切除,頸部リンパ節囊胞腫瘍摘出術を施行した。術後病理結果にて頸部リンパ節に甲状腺乳頭癌を認め,切除甲状腺には癌を認めなかった。厳重な経過観察を行ったが,術後4 年目に未分化転化による局所再発を認め,気管狭窄に対し気管内EMS ステント留置を施行したが,腫瘍の急速増悪により2 か月後死亡された。本例は手術時の腫瘍残存例であり,甲状腺乳頭癌の再発に未分化転化があることを念頭において,より厳重な経過観察を行うべきであった。EMS ステントは,甲状腺未分化癌による急速な気管狭窄,呼吸不全の制御には有効であった。 -
臨床病期III期非小細胞肺癌への同時放射線化学療法後定位放射線治療の経験
38巻12号(2011);View Description
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現在,体幹部定位放射線治療(SRT)は,外科的治療が困難な早期肺癌に対する有用な治療法の一つであると考えられつつある。また早期肺癌のみならず,縦隔リンパ節転移を伴い通常の放射線治療では照射範囲が広域となるため,放射線治療が困難とされていた症例においても,縦隔病変に対する放射線治療に続いて原発腫瘍に対するSRT を併用することで,安全に放射線治療を行い得る可能性がある。今回われわれは,縦隔リンパ節転移を伴う臨床病期III 期の非小細胞肺癌2 例において,縦隔病変に対する放射線化学療法に続いて原発腫瘍に対するSRT を行った。2 例ともV20(20 Gy 以上の放射線照射を受ける正常肺体積)の低減が可能であり,経過中に症状を有する放射線肺臓炎の出現はみられなかった。 -
逐次化学放射線療法で臨床的著効が得られた切除不能縦隔癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は60 歳台,男性。胸部圧迫感の主訴で,CT にて気管前右方の前上縦隔に孤立性の3 cm 大の腫瘤を発見され,2か月後のCT で7 cm 大に急速に増大し,右鎖骨下・総頸動脈,左腕頭・上大静脈への浸潤を認めた。FDG-PET/CT で当該腫瘤にのみ高度の異常集積を認めた。縦隔鏡下生検にて低分化癌の病理診断を得て,縦隔癌もしくは原発不明癌の縦隔リンパ節転移と診断した。carboplatin+paclitaxel 併用化学療法を4 コース実施して著明な縮小効果を得たが,大血管浸潤が残存し完全切除不能と判断した。当該腫瘤に限局した60 Gy の放射線治療を実施し,CT で当該腫瘤はさらに縮小,PET/CT で異常集積は消失し,臨床的に著効と判断した。以後16 か月間,CT とFDG-PET/CT による経過観察で当該腫瘤は縮小を維持し,異常集積を認めていない。 -
両側肺に同時に存在した3 病変(転移性肺腫瘍,原発性肺癌およびテューモレット)を1 期的に切除した1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は70 歳台,男性。8 年前に右腎明細胞癌にて右腎摘出術を施行,外来にて経過観察していた。経過中の胸部X 線にて左肺結節影を指摘され,胸部CT にて左肺S1+2 に15×12 mm の結節を認めた。また同時に右肺S3 に15×7 mm の結節が新たに指摘された。これらいずれの病変もPET-CT でFDG の集積が認められた。腎癌からの両側転移性肺腫瘍の術前診断にて治療を両側肺区域切除術の方針とした。まず左肺S2 区域切除術を施行,迅速病理診断にて腎明細胞癌の肺転移と診断された。続いて右肺S3 区域切除を施行,同時に右肺中葉に小結節が認められ,同部を部分切除術とした。永久標本による診断では左肺S2 腫瘍は腎癌の転移であったが,右肺S3 腫瘍は原発性肺癌であった。また右肺中葉の病変はテューモレットであった。組織学的に異なる3 種類の肺病変を同時に認めることはまれであることから報告した。 -
Erlotinib Hydrochloride が有効性を示した胸腺腫術後再発の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は43 歳,女性。胸腺腫の術後6 年2 か月後に局所再発。6 年8 か月間にわたり全身化学療法,放射線療法を施行。その後,再増悪し第9 ラインとしてerlotinib hydrochloride が投与された。投与8 週後に腫瘍の縮小が確認された。 -
切除不能巨大腹腔内GIST に対しイマチニブ投与にて切除し得た1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は66 歳,女性。腹部CT 検査にて胃,膵,横行結腸に挟まれた部位に最大径25 cm 大の巨大な腫瘍を認めた。EUS-FNA にてgastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断された。切除不能と判断し,イマチニブ400 mg/day を投与した。腫瘍は縮小し,治療開始約2 年後切除可能と判断するも,PET-CT ではFDG の集積が認められなくなり,経過観察となった。治療開始約3 年後腫瘍が増大,PET-CT でFDG の高集積を認め,手術となった。開腹所見にて腫瘍は約8 cm 大,横行結腸間膜を主座に膵尾部の腹側,胃の大弯に接しており胃部分切除+膵体尾部切除+横行結腸切除術を施行した。肉眼的に完全切除できた。病理学的に腫瘍は変性した硝子状組織と比較的異型の弱い紡錘状細胞からなり,核分裂像は12/50 HPF であった。免疫組織学的染色でCD34(+),c-kit(+)であった。術後経過良好で現在外来加療中である。イマチニブを用いることにより切除可能となった1 例を報告する。 -
集学的治療により21 年間生存中の直腸GIST の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は55 歳,男性。1990 年2 月に直腸平滑筋肉腫の診断にてMiles’術を施行した。1998~2004 年まで計5 回の局所再発と肝転移,肺転移を認め,いずれも手術にて摘出した。再発腫瘤の免疫染色にてc-kit 陽性,CD34 陽性であり,gastrointestinal stromal tumor(GIST)と改めて診断し,イマチニブを半年間投与した。2005 年7 月に上縦隔再発を認め,放射線治療(45 Gy)後にイマチニブ再投与を継続したところ,臨床的CR が得られた。2009 年2 月に間質性肺炎を合併し,その後は無治療としていたが,2010 年2 月に6 回目の局所再発を認め,摘出後にスニチニブの投与を2 か月間行った。11 月に縦隔病変の再燃を認め,スニチニブを再開したところPR が得られ,現在外来通院中である。本症例は集学的治療が奏効し,長期生存が得られている症例と考えられた。 -
術後15 年目に腹腔内巨大腫瘤で発症した再発小腸GIST の1例
38巻12号(2011);View Description
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症例は60 歳台,男性。15 年前に腹腔内出血で緊急手術を受けた。小腸部分切除を施行し,術後病理検査で小腸平滑筋肉腫と診断された。再発なく経過していたが,下腹部腫瘤を主訴に当院を受診。CT にて15 cm 大の骨盤内腫瘤を指摘された。充実性部分と嚢胞性部分の混在した腫瘤でPET-CT などでGIST と診断された。腫瘍を切除したところ,小腸などの消化管との連続性はなかった。病理検査はc-kit 強陽性,CD34 陰性,S100 陰性で,GIST と診断された。15 年前の標本を再確認するとc-kit 陽性の部分があり,GIST と考えられたが,再発とは断定できなかった。遺伝子検索を行ったところ,二つの標本にc-kit 遺伝子の同一変異を認め,15 年前の腫瘍は小腸GIST であり,今回はその再発(孤立性の播種)と診断した。c-kit遺伝子変異の検索が,再発診断,予後予測などに有用であった。 -
切除不能大腸癌同時性肝転移におけるmFOLFOX6 療法の効果
38巻12号(2011);View Description
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切除不能進行再発大腸癌に対する近年の化学療法の進歩は著しく,生存期間の延長に大きく寄与している。今回われわれは,oxaliplatin 導入以後の切除不能大腸癌同時性肝転移症例の治療成績を解析するとともに,oxaliplatin 導入以前の治療成績と比較した。2005 年12 月~2010 年3 月の期間,切除不能大腸癌同時性肝転移にて,一次治療としてmFOLFOX6 を施行した28 例を対象とし,その治療成績をretrospective に検討した。mFOLFOX6 投与回数の中央値は10(2~24)回,oxaliplatinのrelative dose intensityは75.0(42.9~100)%であった。奏効率は32%,無増悪生存期間中央値は9.9 か月であった。4 例(14.3%)にconversion therapy として肝転移切除を施行することができた。全生存期間は,oxaliplatin 導入以前に肝動脈化学療法や全身化学療法を行った31 例より有意に良好であった(中央値31.8 vs 15.1 か月,p<0.01)。今回の結果から,切除不能大腸癌同時性肝転移に対するmFOLFOX6 療法は,conversion therapy をも可能にし,oxaliplatin 導入以前の治療法よりも生存期間の延長に大きく寄与していた。 -
mFOLFOX6 療法により消失した大腸癌肝転移病巣の再増大に対する検討
38巻12号(2011);View Description
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化学療法により画像上消失した大腸癌肝転移病巣の再増大に関する検討は少ない。当科における大腸癌肝転移症例のなかで,肝転移病巣がmFOLFOX6 療法により画像上消失した症例を検討した。対象症例は6 症例で,対象病巣としては55 病巣であった。消失後に外科的に切除されたのは6 病巣で,そのうち3 病巣(50%)に腫瘍の残存を認めた。切除された6 病巣を除く49 病巣の検討では9 病巣(18.4%)に再増大を認め,再増大までの期間は23.5(4.2~41.4) か月,累積再増大率は1年,2 年,3 年でそれぞれ10.5%,10.5%,27.5%であった。また,消失後に施行されたmFOLFOX6 またはFOLFIRI 投与回数は再増大9病巣で10.0(6~16) 回,非再増大40 病巣で9.5(0~23) 回であり,有意な関連は認めなかった。少数例の検討ではあるが,画像上消失した肝転移病巣における癌の遺残は比較的少ないものであった。今後さらに多くの症例の集積とともに,消失後の化学療法の継続についても検討が必要と考える。 -
大腸癌肝転移切除後mFOLFOX6 療法の治療成績─同時性,異時性を比較して─
38巻12号(2011);View Description
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大腸癌肝転移切除後の補助化学療法の有用性に関するエビデンスは少ない。近年では,oxaliplatin base の補助化学療法の成績が散見されるようになってきている。当科ではoxaliplatin の保険収載以降,大腸癌肝転移切除後に補助化学療法としてmFOLFOX6 療法を選択的に施行してきたので,そのpreliminary な成績について報告する。2006 年1 月~2011 年1 月の間において大腸癌肝転移切除後にmFOLFOX6(6~12 コース)を導入した14 例を対象とし,同時性,異時性に分けて,患者背景,無再発生存期間,全生存期間,有害事象についてretrospective に検討した。14 例の内訳は,同時性肝転移5 例,異時性肝転移が9 例であった。両群間の患者背景因子に差は認めなかった。無再発生存期間,全生存期間においても両群間に差は認めなかった。有害事象では,grade 3 以上の有害事象は骨髄抑制を6 例(42.8%)に認めた。末梢神経障害は10 例(71.4%)を認めたがgrade 2 以下であり,同時性4 例(80%),異時性6 例(66.7%)であった。有害事象について両群間に差は認めなかった。大腸癌肝転移切除後の補助化学療法としてmFOLFOX6 療法は,同時性,異時性にかかわらず安全に施行可能である。予後の改善に寄与する可能性の検証には,症例の集積が必要と考えられる。 -
原発巣のmRNA 発現からみた切除不能大腸癌肝転移に対するmFOLFOX6 療法の効果予測
38巻12号(2011);View Description
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大腸癌切除不能肝転移に対し,一次治療としてmFOLFOX6 療法を施行した18 例を対象に,原発巣のthymidylatesynthase( TS),excision repair cross-complementing-1(ERCC-1),ERCC-2,methylenetetrahydrofolate dehydrogenase(MTHFD)の各酵素のmRNA 発現から,mFOLFOX6 療法の効果が予測可能か検討した。奏効率と各酵素のmRNA 発現の多寡には関連はなかった。無増悪生存期間は,ERCC-1 低発現(p=0.08),MTHFD 低発現(p=0.07)で延長する傾向があった。ERCC-1,MTHFD mRNA がともに低発現と,少なくとも一方が高発現を比較すると,ともに低発現のほうが無増悪生存期間が有意に延長していた(p=0.03)。各酵素の発現の多寡は全生存期間と関連はなかった。conversion therapy に移行できた3 例では,ERCC-1,MTHFD mRNA ともに低発現であった。原発巣のERCC-1 およびMTHFD mRNA を検索することは,肝転移に対するmFOLFOX6 療法の効果予測に有用であることが示唆された。 -
切除不能進行再発大腸癌に対するmFOLFOX6 の治療効果とTS,DPD,TP,ERCC-1蛋白発現の検討
38巻12号(2011);View Description
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切除不能進行再発大腸癌におけるmFOLFOX6 の治療効果予測因子として,5-fluorouracil(5-FU)やoxaliplatin の薬剤代謝関連酵素であるthymidylate synthase(TS),dihydropyrimidine dehydrogenase(DPD),thymidine phosphorylase(TP),excision repair cross-complementing-1(ERCC-1)の有用性が報告されている。今回,治癒切除不能Stage IV 大腸癌に一次治療としてmFOLFOX6 を施行された49 例を対象に,mFOLFOX6 療法の奏効率,無増悪生存期間,全生存期間と各酵素の発現レベルの関連について解析し,効果あるいは予後予測因子としての有用性を検討した。いずれの酵素も発現レベルと奏効率に関連は認められなかった。TP 低発現は高発現より無増悪生存期間(p<0.01)および全生存期間(p=0.04)が長く,DPD 低発現は高発現より全生存期間が長かった(p=0.04)。TS,ERCC-1 発現と予後に関連は認められなかった。今回の結果より,TP,DPD が進行大腸癌のmFOLFOX6 施行例の効果予測因子として有用であることが示唆された。 -
大腸癌肝転移切除症例における肝所属リンパ節転移の検討
38巻12号(2011);View Description
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2001~2010 年の間に肝所属リンパ節(HN)転移の有無を組織学的に検索し得た大腸癌肝転移切除48 例を対象に,HN転移の頻度,部位,臨床的意義について検討し,新規抗癌剤時代におけるHN への対応について考察した。HN 転移頻度は同時性が33 例中3 例(9.1%),異時性が15 例中1 例(6.7%)であった。転移部位は,8a と12a リンパ節が各1 例,12b リンパ節が2 例であった。HN 転移陽性の4 例が術後13 か月以内に再発を来した。Cox 比例ハザードモデルによる多変量解析では,HN 転移のみが全生存期間に関する独立危険因子であった〔ハザード比95%信頼区間: 4.165(1.018-17.044),p=0.04〕。HN 転移陽性症例では早期の再発が起きるため,新規抗癌剤による補助化学療法の有用性を検討していく必要性がある。 -
他臓器に浸潤した直腸癌に対する術前化学放射線療法の治療成績
38巻12号(2011);View Description
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他臓器浸潤した直腸癌に対する術前化学放射線療法(CRT)施行11 例の治療成績を検討した。放射線療法は総照射量を40~50 Gy とし,1 回照射量1.8~2.0 Gy を20~25 回に分割して週5 回照射した。化学療法は5-FU 500 mg/body/day 持続静注4 例,UFT 300 mg/m2+Uzel 75 mg/body 2 例,S-1 80 mg/m2 5 例であった。全例で治療を完遂し得たが,1 例が骨盤内膿瘍で死亡した。CRT 終了1 か月後の奏効率は63.6%(7 例)で,7 例に根治度A の手術が可能であった。組織学的効果判定はGrade 1a 5 例,1b 3 例でGrade 2 と3 が各々1 例ずつで,1 例は組織学的に腫瘍の遺残を認めず,5 例で他臓器浸潤を認めなかった。術後全例に合併症を認めたが,いずれも保存的に改善した。根治度A の手術を施行し得た7 例中2 例に肝再発を認めたが,5 例は無再発生存中である。CRT は他臓器浸潤した直腸癌に対して安全に施行が可能で,切除率および予後の向上が期待されたが,腫瘍壊死による骨盤内膿瘍などの重篤な合併症に注意することが必要と考えられた。 -
腸腰筋MFH に動注,切除,放射線の集学的治療を行った1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は51 歳,男性。症状は腰痛と右大腿前面のしびれ感。右下腹部に腫瘤を触知。CT 上腫瘍は椎体に密着し切除困難と考えられ,mitomycin C,epirubicin,spherex 動注化学療法を施行。腫瘍は縮小。繰り返したところ,三度目の動注後に右大腿神経麻痺と腰部皮膚潰瘍を生じ,腫瘍はviable のため手術とした。神経束,腸腰筋を合併切除し,術中照射25 Gy 施行。病理診断はMFH。2 年後仙骨前面に局所再発し,正中仙骨動脈より動注の後,腫瘍を切除。5 年後右総腸骨動脈部再発。腫瘍切除,左右外腸骨動脈間バイパス,右尿管切除を施行。6 年後局所再発に48 Gy 照射し腫瘍は縮小。7 年後骨盤右側に再発し60 Gy 照射。腫瘍は縮小。9 年後腫瘍脇に腫瘍再発。既照射部で照射不能とされた。MFH 治療において最も重要な初回手術で,十分な切除縁を確保するために整形外科,血管外科,放射線科を含めた術前からの集学的チーム医療が必要である。 -
卵巣,肺,腹膜,肝,骨,リンパ節再発を続発した直腸癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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術後,卵巣,肺,腹膜,肝,リンパ節,骨転移再発を続発した直腸癌患者に対して全身化学療法,再発巣の切除,肝動注療法(HAI)を施行し5 年余りの生存を得た。症例は37 歳,女性。2005 年11 月直腸癌(Rab)のため,直腸低位前方切除術,右内腸骨動静脈合併切除術を施行された後,右卵巣転移を来し右卵巣切除術を受けた。その後2 年間FOLFOX4 とFOLFIRI にて化学療法を継続し無再発であったが,化学療法中止後1 か月で肺転移,左卵巣転移,肝,左頸部,腹部大動脈周囲リンパ節転移,骨転移が続発した。腸閉塞解除のため子宮付属器切除,腹膜転移巣,小腸合併切除術を施行した後,肝動注療法(HAI)とcetuximab を併用したIRIS 療法を施行し,10 か月SD を得た。肝動脈閉塞によるHAI の中止の後FOLFIRI,FOLFOX4 による化学療法を行ったが病状は進行し,初回手術後5 年2 か月で死亡した。4 回の手術で切除された腫瘍組織はともにMIB-1 染色で80%以上陽性であった。 -
超高齢者切除不能進行直腸癌に対してmFOLFOX6+Bevacizumab が著効した1 例
38巻12号(2011);View Description
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高齢者大腸癌に対するFOLFOX 療法の安全性と有用性は明らかになっていない。今回,超高齢者の直腸癌,大動脈周囲および鼠径リンパ節転移に対し,modified FOLFOX6(mFOLFOX6)+bevacizumabが著効した1 例を経験したので報告する。症例は85 歳,男性。下部直腸癌,大動脈周囲リンパ節,鼠径リンパ節転移に対し,人工肛門造設後にmFOLFOX6+bevacizumab(2 コース以降)を導入した。grade 2 の好中球減少とgrade 1 の末梢神経障害を認めたが,mFOLFOX6 9 コース施行後にCT 上,大動脈周囲リンパ節は14 mm から5 mm,右鼠径リンパ節は16 mm から4 mm に縮小した。大腸内視鏡検査では原発巣は消失し,生検でも癌は認められなかった。mFOLFOX6+bevacizumab 終了後12 か月の現在,CR を持続している。 -
超高齢者の進行・再発大腸癌に対する抗EGFR 抗体薬単独療法の検討
38巻12号(2011);View Description
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今回80 歳前後の超高齢者で進行・再発大腸癌患者の第一次治療として,抗EGFR 抗体薬の単独療法を施行した3 例を経験したので報告する。症例1 は86 歳,女性。切除不能直腸癌の同時性肝・肺転移の人工肛門造設術後でcetuximab を投与。CEA/CA19-9 値が2 か月で著明に低下したが,その後徐々に上昇傾向にある。画像上直腸の腫瘤陰影が縮小した。症例2 は82 歳,女性。横行結腸癌術後の腹膜播種でcetuximab を投与。CEA/CA19-9 値が2 か月で正常化し,CT 上腹腔内の腫瘤は消失した。症例3 は79 歳,男性。下行結腸癌術後の肺・肝・傍大動脈リンパ節転移でpanitumumab を投与。CEA/CA19-9値が1 か月で低下したが,その後徐々に上昇傾向にある。画像上腫瘤陰影は著変ない。PS,高齢者脆弱性調査(VES-13)スコアに変化はなく全身状態に与える影響は軽微であり,良好な病勢コントロールが得られた。痤瘡様皮疹・爪囲炎・落屑はgrade 1~2,皮膚乾燥・瘙痒症はgrade 2~3 であり,投薬コンプライアンスを上げるために,よりきめの細かい皮膚障害対策の指導が必要と考えられた。 -
Third-Line にてPanitumumab 療法が著効した大腸癌多発性肝転移の1 例
38巻12号(2011);View Description
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大腸癌由来の多発性肝転移に対し肝動注(5-FU)療法にてPR を得ていた患者が,動注カテーテル閉塞により腫瘍マーカーの再上昇を認めたためsecond-line としてIRIS(S-1,CPT-11)療法を施行したところ,肝動注療法以上の腫瘍マーカーの著明な低下を認め,PR を継続していた。時間経過とともに腫瘍マーカーの漸増を認め,約1 年後にPD となった。third-line でpanitumumab 療法を行ったところ著効したので報告する。肝動注療法はFOLFIRI 療法やIRIS 療法と比較して副作用が少なく,比較的安価で抗腫瘍効果が期待できる治療法の一つである。IRIS 療法はポート留置やポンプ携帯を必要とせず,FOLFIRI 療法の約半分の治療費で施行できる。IRIS 療法は切除不能大腸癌の二次治療として,FOLFIRI 療法との第III 相臨床(FIRIS)試験にて非劣性が証明されており,IRIS 療法が大腸癌の肝転移に対して肝動注療法に匹敵する治療法である可能性が示唆された。さらに,panitumumab 療法がIRIS 療法不応例に対し著効した症例を経験し,肝動注療法やIRIS 療法に匹敵する治療法である可能性が示唆された。 -
慢性腎不全維持透析症例の再発大腸癌に対してmFOLFOX6 療法およびFOLFIRI/Bevacizumab 療法を施行した1 例
38巻12号(2011);View Description
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今回われわれは血液透析療法中の大腸癌腹膜播種再発に対し,mFOLFOX6 療法およびFOLFIRI/bevacizumab(BV)療法を施行した1 例を経験した。症例は58 歳,女性。55 歳時に慢性腎臓病にて腹膜透析導入。2006 年11 月,S 状結腸癌を内視鏡切除 (0-IIc,pSM2,HM0,VM0),その後リンパ節郭清目的で腹腔鏡補助下S 状結腸切除・D2 郭清術を受けている。2009 年7 月,腹膜播種再発出現。腹膜透析は中止となり,血液透析開始となった。10 月よりmFOLFOX6 療法を開始。70%量・3 週間隔・L-OHP 終了1 時間後より血液透析を行うことで,安全に施行可能であった。10 コース終了時に両側卵巣転移が出現したため,FOLFIRI/BV 療法に変更。70%量とし,非透析日に施行・2 週間隔とした。2 コース終了後にgrade 4 の好中球減少を認めたため,休薬後60%量としたところ有害事象なく施行可能であった。 -
術前化学放射線療法が著効した進行直腸癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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患者は52 歳,女性。近医で下部直腸癌と診断され,肛門温存手術を希望し当院紹介となった。直腸診では肛門縁から4.5 cm の後壁に約半周性の可動性不良な腫瘍を触知した。内視鏡検査では肛門縁より4.5~7 cm に約半周性の2 型腫瘍を認め,生検にて中分化腺癌と診断された。CT,MRI 検査で明らかなリンパ節腫大,周囲臓器への浸潤所見,遠隔転移を認めなかった。cT3,cN0,cM0 と診断し,術前の化学放射線療法(chemoradiation therapy: CRT)を施行した。放射線治療は1 回1.8 Gy で計45 Gy 施行。化学療法はS-1 内服(100 mg/day: day 1~5,8~12,22~26,29~33)とCPT-11 投与(60 mg/m2: day 1,8,22,29)を行った。CRT 終了後の内視鏡検査で腫瘍は半周性から1/4 周性に縮小し,周堤が平坦化,直腸診でも腫瘍の可動性は改善していた。CRT 終了8 週目に一部の外肛門括約筋切除を伴う肛門括約筋切除(ISR+partial ESR)および回腸人工肛門造設術を施行した。術後の病理組織学的検査では原発巣,リンパ節に癌細胞を認めずGrade 3,完全奏効(pathological complete response: pCR)であった。 -
術前CRT 後に治癒切除術を行い長期生存中の直腸癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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初診時に治癒切除困難と思われる進行下部直腸癌に対して,化学放射線療法(CRT)後に治癒切除術を行い,長期間の無再発生存が得られている1 例を経験したので報告する。症例は50 歳台,女性。2005 年7 月初診。肝転移を伴う進行直腸癌でCT 上,原発巣周囲の膿瘍形成と側方リンパ節腫大を認め,治癒切除困難と判断し,通過障害に対する人工肛門造設術を施行後,二期的治癒切除を目的としたCRT を行う方針とした。放射線照射およびS-1 内服3 コース施行後の効果判定にて原発巣は著明に縮小し,側方リンパ節腫大は認めなくなった。肝転移は増大したが新病変の出現はなかった。原発巣および肝転移巣いずれも治癒切除可能と判断し,2005 年12 月に腹会陰式直腸切断術および肝部分切除術を施行した。術後に化学療法は行わず,経過観察のみで手術から約5 年経過した現在,無再発生存中である。 -
間質性肺炎を伴う下部直腸癌症例に術前放射線療法が奏効した1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は81 歳,男性。半年ほど前より便秘,血便を認めたため当院を受診した。大腸内視鏡検査で肛門縁に近い部位から直腸にかけて,約9 cm 大の全周性の狭窄を来す3 型病変を認めた。生険でGroup V(adenocarcinoma)と診断した。CT検査で肛門縁より口側直腸約9 cm にわたる全周性の直腸壁肥厚を認め,さらに前立腺・左内閉鎖筋に腫瘍浸潤が疑われた。また,両下肺にhoney comb pattern を呈する間質性肺炎像を認めた。81 歳と高齢であること,間質性肺炎もあることから骨盤内臓器全摘術や化学療法は施行せず,まずは人工肛門を造設し,術前放射線療法のみ施行した(合計50 Gy 施行)。放射線治療後,腫瘍は著明に縮小し,画像上前立腺・左内閉鎖筋への浸潤も認めなくなった。放射線治療1 年経過後に腹仙骨式直腸切断術を施行した。術後補助化学療法は施行していないが,現在まで無再発生存中である。 -
膣浸潤を伴う局所進行直腸癌に対し術前化学療法を行い腹腔鏡下に根治術を施行し得た1 例
38巻12号(2011);View Description
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はじめに: われわれは,膣浸潤を伴う局所進行直腸癌に対し術前化学療法を行い,腹腔鏡下に根治術を施行し得た1 例を経験したので報告する。症例: 60 歳,女性。局所進行直腸癌(膣浸潤)と診断され,当科紹介となった。肛門縁より3 cm口側の直腸に全周性の病変が存在し,7 時方向の膣後壁に直腸膣瘻を認めた。術前化学療法を4 コース施行した。化学療法後,腫瘍の著明な縮小が得られた。直腸膣瘻は閉鎖しなかった。腫瘍の縮小により腹腔内操作は鏡視下に実施可能と判断し,腹腔鏡下手術を施行した。腹腔鏡下・経会陰的に膣後壁とともに直腸を切断し,両側側方リンパ節郭清を施行した。病理所見では,膣瘻周囲の固有筋創に癌の残存を認めたが,リンパ節への転移は認めなかった。化学療法の効果判定はGrade 2 であった。まとめ: 他臓器浸潤を伴う下部直腸癌に対する術前化学療法は,手術侵襲の低減という点より検討すべき治療方針であると考えられた。 -
大腸原発内分泌細胞癌の2 例
38巻12号(2011);View Description
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まれな大腸原発内分泌細胞癌の2 手術例を経験したので報告する。症例1 は50 歳台,女性。排便時の出血を主訴に受診し,直腸S 状部に2 型腫瘍を認め,生検で低分化腺癌であった。直腸S 状部癌,SS,N1,H0,P0,M0,Stage III a の診断で直腸高位前方切除術を行った。病理診断で内分泌細胞癌,n1,p1 であった。術後FOLFIRI 療法を行ったが,術後1 年で多発肝転移が出現しmFOLFOX6 へ変更したが,肺転移も出現し術後1 年8 か月で原病死した。症例2 は50 歳台,男性。早期直腸癌に対し前医で内視鏡的粘膜切除(EMR)を施行。病理検査では高分化~中分化腺癌で断端不明であったため経過観察中であった。EMR より1 年後に下部直腸右後壁の隆起性病変が出現し,直腸癌EMR 後局所再発の診断で腹会陰式直腸切断術を施行した。病理診断は,低分化型神経内分泌細胞癌,pA,pN0 であった。術後2 か月で局所再発を来し,octreotide 投与および放射線照射中である。大腸原発内分泌細胞癌は予後が極めて不良であり,化学療法を含めた集学的治療が展開されるべき疾患の一つであると考えられた。 -
大腸内分泌細胞癌多発肝転移による肝不全に肝動注が有効であった1 例
38巻12号(2011);View Description
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肝不全徴候を伴う大腸内分泌細胞癌多発肝転移に対し,肝動注療法が有効であった症例を経験したので報告する。症例は63 歳,男性。腹部CT および下部消化管内視鏡検査により上行結腸癌多発肝転移と診断され,肝不全徴候を認めたため肝動注療法の方針となった。5-FU 肝動注療法(1,500 mg/body/week)を計7 コース施行し,肝機能は改善。肝不全は回避されたと判断し,原発巣を切除した〔A,type 3,pSE,pN3(15/15),ly3,v3,cH3(grade C),cM0,fStage IV〕。術後,病理検査にて内分泌細胞癌と診断された。その後,mFOLFOX6/bevacizumab(Bmab)を計7 コース施行。さらに,sLV5FU2/Bmab,CPT-11/cetuximab を投与したが,肝動注療法開始から10 か月で原癌死した。大腸内分泌細胞癌多発肝転移に対する肝動注療法は有効であると考えられた。 -
肝動脈化学塞栓療法により長期生存が得られた大腸内分泌細胞癌肝転移の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は71 歳,男性。多発肝転移と膵後面リンパ節転移を伴うS 状結腸腫瘍に対して,S 状結腸切除術を施行。病理組織学的検査にて内分泌細胞癌の診断を得た。肝転移に対し肝動脈化学塞栓療法(TACE)を行い,3 か月毎に2 回の施行にてPR を得,以後3 か月毎にTACE を行い14 回が終了した現在,PR を維持している。リンパ節転移に対しては術後8 か月目に計50 Gy の照射を行い,照射前5 cm 大から照射後2 cm 大に縮小し,以後再増大は認めていない。術後48 か月が経過した現在,無増悪生存中である。 -
鼠径リンパ節転移陽性のPagetoid Spread を伴うpSM 肛門管癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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鼠径リンパ節転移陽性であったpagetoid spread(PS)を伴うpSM 肛門管癌の1 例を経験したので報告する。症例は74 歳,女性。肛門部皮疹を主訴に当院を受診した。肛門周囲から外陰部にかけて全周性の紅色局面を認めた。皮膚生検ではpagetoid 細胞と印環細胞を認め,免疫染色ではCK20 陽性,GCDFP15 陰性であった。大腸内視鏡では歯状線直上に隆起性病変を認めた。以上から,PS を伴う肛門管癌と診断し,側方・鼠径リンパ節郭清を含む骨盤内臓全摘術,gluteal thigh flap による皮膚欠損部再建術を施行した。病理組織学的検索の結果,壁深達度が粘膜下層(pSM)の中分化型腺癌で,左鼠径リンパ節の1 個に転移を認めた。文献的報告はほとんどみられないが,本症例のようにPS を伴うpSM 肛門管癌が鼠径リンパ節転移を来す可能性に注意すべきである。 -
肺切除を含む集学的治療を行った肛門管扁平上皮癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は52 歳,女性。2008 年8 月,排便時出血で当科を受診した。下部消化管内視鏡検査でPRb に1/3 周性の2 型病変を認め,生検で扁平上皮癌と診断された。画像上は他臓器に転移は認めなかった。9 月,腹会陰式直腸切断術を施行した。術後の病理組織結果は,PRb,2 型,A,N3,H0,P0,M0,Stage III b であった。術後補助化学療法としてS-1 内服を開始した。2009 年1 月,腹部造影CT で骨盤内再発を認め,放射線化学療法を施行した。10 月,胸部CT で右肺尖部に5 mm の孤立性肺転移を認めた。2010 年3 月,胸部CT で右肺尖部の腫瘍はやや増大するも他に転移性病変は認めなかったため,4 月胸腔鏡下肺部分切除術を施行した。肺切除後16 か月現在,再発を認めていない。今回われわれは,肺切除を含む集学的治療を行った肛門管扁平上皮癌の1 例を経験した。若干の文献的考察を加えて報告する。 -
S-1 を用いた放射線化学療法が著効した肛門管扁平上皮癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は79 歳,女性。血便を主訴に受診し精査の結果,肛門管に2 型腫瘍を認め,生検では低分化扁平上皮癌と診断された。CT では左内腸骨リンパ節腫大を認め,肛門管癌cStage III に対しS-1 を照射日に併用する全骨盤放射線療法(66 Gy/33 Fr)を行った。治療開始4 か月後の内視鏡所見では潰瘍面は完全に上皮化され,その後も増悪なくCR と判定された。CTでは原発巣は指摘できず,リンパ節は描出あるものの縮小し,造影効果も消失した。治療開始より10 か月経過した現時点で再発なく外来通院している。欧米においては,肛門管扁平上皮癌の現時点における標準治療は5-FU+MMC 併用放射線化学療法であるが,わが国においては症例が少なくエビデンスに乏しい。今回,S-1 併用放射線化学療法を行い,著効した1 例を経験したので報告する。 -
肛門扁平上皮癌に対し化学放射線療法後,外科的切除を施行した1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は46 歳,女性。便秘,血便を主訴に当院を受診。下部小胃下管内視鏡検査にて肛門管に約1/4 周性の2 型の腫瘍を認め,生検にて中分化型扁平上皮癌と診断された。画像上,他臓器への転移は認めなかった。肛門扁平上皮癌と診断し,まず化学放射線療法(5-FU/MMC 療法2 コース+放射線療法60 Gy)を施行した。施行後,生検にて悪性所見を認めず経過観察を行っていたが,治療終了後3 か月目に肛門部違和感と疼痛が出現。肛門管に隆起を伴う潰瘍を認め,生検にて扁平上皮癌と診断。肛門扁平上皮癌の局所再発と診断した。化学放射線療法後の局所再発で遠隔転移を認めないため,腹会陰式直腸切断術を施行した。術後経過は良好で,現在無再発生存中である。今回われわれは,肛門扁平上皮癌に対して化学放射線療法施行後に外科的切除を施行した1 例を経験したので報告する。 -
大腸癌卵巣転移の2 例
38巻12号(2011);View Description
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症例1: 45 歳,女性。2007 年12 月,S 状結腸癌,右卵巣腫瘍に対して,S 状結腸切除術,単純子宮全摘術,両側付属器切除術を施行し,術後補助療法としてS-1 を半年間内服した。術後38 か月無再発である。症例2: 61 歳,女性。2009 年9 月に結腸癌,転移性肝癌,胃癌に対して手術を行った。術後6 か月目に両側卵巣腫瘍に対して単純子宮全摘術,両側付属器切除術を施行した。術後補助療法としてcapecitabine を7 コース施行し,初回術後11 月に傍大動脈リンパ節へ再発を認め,現在FOLFIRI/panitumumab を施行中である。両者とも免疫染色においてCK20 染色陽性,CK7 染色陰性であり,大腸癌の卵巣転移と診断された。大腸癌の卵巣転移は遠隔転移巣のなかでは比較的まれであり,大腸癌取扱い規約上は腹膜播種の一つとして分類されているが,切除を含めた集学的治療により長期生存の報告も散見されており,さらなる症例の集積と検討が必要と考えられた。 -
大腸癌肝転移に対して腹腔鏡下にラジオ波焼灼術を行った1 例
38巻12号(2011);View Description
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切除可能な大腸癌肝転移に対しては外科的切除が第一選択であるが,耐術不能例や手術拒否例に対しては,ラジオ波焼灼術(RFA)も選択肢となる。今回,大腸癌肝転移に対し腹腔鏡下にRFA を行った症例を経験したので報告する。症例: 74歳,女性。2009 年2 月,横行結腸癌,同時性多発肝転移に対し腹腔鏡下横行結腸切除術を施行。術後,UFT/LV 内服を行い肝転移の縮小を認めた。2 コース終了後患者の希望にて休薬としたが,肝転移増大を来し,手術を勧めたが拒否されたため,経皮的RFA にて治療を行った。さらに2 回の肝転移再発を認めたが,いずれも他臓器と近い病変であったため,腹腔鏡下にRFA を行った。最終RFA 後9 か月現在,肝転移は制御良好である。経皮的RFA が困難な病変に対して腹腔鏡下にRFA を行うことで,安全かつ効果的に治療を行うことができると考えられた。 -
鼠径リンパ節転移を初発症状として診断された横行結腸癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は80 歳台前半,女性。右鼠径部の硬結と疼痛を主訴に来院した。リンパ節生検を行い腺癌と診断され,免疫染色の結果,大腸癌原発の可能性が高いと診断された。大腸内視鏡検査により横行結腸に進行癌を認めたため,拡大右半結腸切除術を施行した。術後順調に経過したが,術後1 年6 か月で右横隔膜転移を来し,右肺下葉切除術および右横隔膜部分切除術を施行した。その後,腹膜播種を認め,初回手術より2 年1 か月で原病死した。鼠径リンパ節転移は,消化器癌においては直腸癌や肛門癌に認められることが多いが,結腸癌を原発とすることは少ない。今回,鼠径リンパ節転移を伴った横行結腸癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。 -
腸腰筋転移を来したS 状結腸癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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骨格筋は,体重の約40%を占める人体の最大の臓器であるにかかわらず,悪性腫瘍の転移はまれであるとされている。なかでも腸腰筋転移に関する報告は多いが,切除例の報告は少ない。今回大腸癌切除後に腸腰筋転移を来し,放射線療法および化学療法により切除可能であった1 例を経験したので,若干の文献的考察を含め報告する。症例は71 歳,男性。S 状結腸癌に対して,Hartmann 手術を施行。病理はType 3〔8×7 cm,adenocarcinoma(mod),ss or more,ly1,v1,n0,ow(-),aw or ew(+),stage II〕であった。追加切り出しにて熱変性を受けた腫瘍細胞がみられ,外来にてUFT の内服を施行。術後5 年のUS,CT にて左腸骨動脈周囲のリンパ節腫脹あり。PET で左腸腰筋転移の疑い。GTF では早期食道癌,胃体部胃癌の診断。食道癌は門歯列から30~32 cm に不染帯あり,早期食道癌としてESD の適応。胃癌は胃体上~中部後壁にBorrmann1 型でmp 以深。生検でtubular adenocarcinoma の診断。食道癌に対しESD を施行し,1 か月後に胃全摘D1+β施行。術中所見で腸腰筋腫瘍はサイズが大きく切除不可と判断。術後残存左腸腰筋腫瘍に対し,10MVX 線8 門65~70 Gy/26 回/6.5 週の放射線治療を施行するも腫瘍の縮小を認めず。次にFOLFOX+bevacizumab を15 コース施行。腫瘍は著明に縮小し,CT上腫瘍は同定されないがPET で軽度の集積亢進を認め,病変の残存を疑い切除を施行した。組織学的には異型細胞を瘢痕化の強い筋・結合組織内に認めるが,化学療法による変性が高度であった。S 状結腸癌の転移に矛盾しない所見であり,一部腫瘍が切除縁に露出する部位を認めた。術後本人の年齢および全身状態を考慮し,化学療法をS-1 へ変更した。現在切除後5 か月経過したが再発を認めていない。 -
異時性肝転移切除後5 年間転移再発を認めない横行結腸癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は77 歳,男性。2003 年2 月に横行結腸癌(SS,N0,P0,H0,M0,Stage II)にて横行結腸切除,D3 郭清を施行。以後経過観察。2004 年4 月CEA 66.4 ng/mL と上昇し,5 月に腹部エコーで肝S7 に径20 mm の低エコー腫瘤を認めたが,造影CT で腫瘤は描出されず。7 月にCEA 116.3 ng/mL と上昇し,同月MRI にて肝S7 に径22 mm の転移性腫瘤を認めた。以降もCT で腫瘤は同定されず,CEA,エコー,MRI にて経過を追った。入院,手術は拒否。7 月よりS-1 100 mg/日およびPSK 3 g/日の投与を開始。3 コース目に腹痛,食欲低下と催涙にて中止。以降,経過観察。11 月のエコーで肝転移は径15 mm と縮小し,CEA も16.7 ng/mL と著減。しかしエコー上,肝転移は徐々に増大。2005 年7 月にCEA 57.1 ng/mL と上昇し,MRI で腫瘍径25 mm と増大。S-1 再投与後,本人が切除を希望。11 月肝転移巣切除を行った。直前のCEAは101.0 ng/mL,画像上腫瘍径は28 mm まで増大。標本上転移巣は径32 mm,中分化腺癌であった。2006 年1 月より10 月までUFT/UZEL の投与を施行。その後は本人の希望で再び経過観察のみとなった。現在CEA は正常値を維持。2011 年6 月までCT,エコー,MRI などで再発転移を認めていない。 -
大腸癌術後多発肝転移に対し化学療法施行後2 回肝切除術を施行した1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は74 歳,男性。2007 年8 月,直腸癌・S 状結腸癌の重複癌に対して,低位前方切除術を施行した(RSRa,tub2,pSS,pN1,sM0,fStage IIIa; S,pSS)。術後4 か月の検査にて肝両葉にわたる11 個の転移を認め,化学療法(mFOLFOX6+bevacizumab)を開始した。6 コース終了後,肝転移はCT 上5 個に減少し,2008 年6 月,肝部分切除術を施行した。肝切除術8 か月後,肝S6 に径7 mm の転移を認めたため3 か月経過観察したところ,さらにS6,S8 に新病変が出現した。切除可能と判断し2009 年6 月,再肝切除術を施行した。その後2010 年4 月,肺転移に対して外科的切除を施行し,現在無病生存中である。大腸癌術後多発肝転移に対して,多剤併用化学療法施行後に切除可能となった症例を経験した。化学療法と外科的切除を適切に組み合わせた治療戦略が今後ますます重要になると考える。 -
肝転移と大動脈周囲リンパ節転移を有する直腸癌の急性出血に対し緊急血管造影塞栓術後,広範囲リンパ節郭清と同時肝切除によって10 年以上長期生存した症例
38巻12号(2011);View Description
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症例: 68 歳,女性。排便後突然の下血により救急要請。急性出血によるヘモグロビンの低下を認め,直腸診で4~10 時方向に弾性硬な腫瘤性病変を認めた。同部位の病理でgroup V,adenocarcinoma を得た。腹部CT では,肝に40×40 mm の転移巣を認めた。出血病変に対し,両側内腸骨動脈と上直腸動脈より塞栓術を施行した。4 日後,腹会陰式直腸切断術+側方および大動脈周囲郭清+同時肝転移巣切除術+動注用ポート留置術を施行した。術後に5-FU の肝動注療法を計11 g 施行し,10 年以上無再発である。 -
S 状結腸癌の直腸再発および両側肺転移に対して手術と化学療法により長期生存を得た1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は69 歳の男性。7 年前に他院でS 状結腸癌(SS,N2,H0,P0,M0,stage III b)に対してS 状結腸切除を施行。5 年前に直腸腫瘍および両側肺転移(TBLB にて診断)で当科紹介。直腸病巣に対してMile’s 手術を施行し,病理組織診断でS 状結腸癌の局所再発と診断。その後両側肺転移に対して化学療法を開始した。FOLFOX を1 年10 か月間施行しCR の状態を維持していたが,PD となりレジメン変更を続けながら治療を継続。肺腫瘍は増大傾向だが,初診時より約5 年が経過した現在も外来で化学療法を継続中である。 -
直腸癌の肝・肺転移に対し集学的治療にて長期生存を得た1 例
38巻12号(2011);View Description
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初診が十年前の2001 年で,直腸癌の診断にて直腸低位前方切除術を施行された。以後,異時性に転移性肝癌と転移性肺癌が出現し,それぞれ手術を施行した。さらに,その後転移性肺癌が再発,約7 年にわたり放射線治療や全身化学療法による化学療法を施行した。2011 年現在の段階では転移性肺癌は縮小しており,化学療法などは施行していない状態である。本症例では,まだ全身化学療法について,現在のように色々と選択できない時代に限られた部分の局所再発として再発してきたため,主に前半は局所療法として外科的手術や放射線治療を中心に行った。後半は全身化学療法が発達してきたため,化学療法によるコントロールを行っている。大腸癌における治療方針は,ガイドライン上でも,化学療法が発達した現在でも,局所療法が可能なものに関しては外科的手術などを推奨している。切除した後にすぐに他の部位に再発する症例もあるため,決して一概に切除などの局所療法がよいとは思えないが,本症例のように,局所療法や全身化学療法を組み合わせた結果,長期生存が得られることができたため,文献的考察を加え報告する。 -
膿瘍ドレナージ術を先行した腹壁膿瘍合併下行結腸癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は72 歳,男性。左下腹部膨隆で発症し,腹部CT にて下行結腸に全周性壁肥厚,内腔狭窄とその口側結腸の拡張を認め,それと連続して左下腹部腹壁に膿瘍を認めた。結腸癌による腹壁穿通,腹壁膿瘍形成を疑い,まず腹壁膿瘍に対してドレナージを施行した。ドレナージによる腹壁膿瘍の縮小と全身状態の改善後,下行結腸癌に対する根治術を施行した。病理学的には,type 2,50×40 mm,tub2>tub1,pSI(横行結腸,腹壁),ly0,v1,pN0,fStage II であった。腹壁膿瘍腔は炎症所見と肉芽組織で腫瘍細胞は認めなかった。治療法として,大腸癌に対する根治手術と広範な膿瘍腔の合併切除も同時に行い,肉眼的根治術をめざす方法もあるが,今回われわれは膿瘍ドレナージを先行し,原疾患の検索,膿瘍腔の縮小化,全身状態の改善を待って,膿瘍腔合併切除を伴う大腸癌根治術を行った。 -
腸閉塞を伴う直腸癌術後に縫合不全を起こし吻合部再発を来した2 例
38巻12号(2011);View Description
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症例1: 50 歳,女性。2009 年1 月に腸閉塞を伴う直腸癌(Stage III b)の診断の下,減圧治療の後,直腸低位前方切除術を行った。術後縫合不全を起こした。7 月に吻合部に局所再発を来し,会陰腹式直腸切断術を施行した。症例2: 51 歳,男性。2010 年2 月に直腸癌(Stage III b)のため,直腸低位前方切除術を行った。術後縫合不全を来し,回腸瘻造設。経過観察の上,回腸瘻埋没術を行った。12 月に遅発性の縫合不全による腹膜炎を起こし,手術を行った。直腸吻合部を確認したところ,局所再発,転移性肺癌を認めた。まとめ: 2 例とも術前処置がよい状態ではなかったため縫合不全を来し,同部位の治癒遅延から癌細胞のimplantation の高リスク条件となったと考えられる。腸閉塞を伴う直腸癌に対しては,今回の症例のようなリスクを念頭において治療方針を選択するべきであると考えられた。 -
Bevacizumab 投与中に発症した金属ステント留置後結腸癌穿孔の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は73 歳,男性。2007 年10 月に下行結腸癌,腹膜転移と診断し,金属ステントを留置した。その後,FOLFOX4を6 コース,FOLFIRI を7 コース施行し,2008 年8 月よりBevacizumab 併用化学療法を行った。2009 年4 月,ステント留置部位の穿孔を来し緊急手術となったが,腹膜炎によるDIC で術後21 日目に永眠された。金属ステント留置術後の症例にBevacizumab 併用化学療法を行うことについては,慎重に検討する必要がある。 -
化学療法が著効していたが薬剤性脳症が疑われた結腸癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は72 歳,男性。結腸癌肝転移に対してのFOLFOX/bevacizumab 療法を施行中に精神症状が出現し,薬剤性の白質脳症を疑われた。脳MRI の所見ではAlzheimer 病であったが,化学療法前後の精神症状,画像所見が比較できないという理由で薬剤による白質脳症を完全に否定できなかった。白質脳症が疑われるのであれば,化学療法は早期に中断すべきであり,本症例は有効であった化学療法を一時中止せざるを得なかった。基礎疾患などで中枢神経症状が出現するリスクのある症例は,化学療法前後の比較のために,施行前に神経学的検査が必要と考えられた。 -
胃癌術後5 年目に発生した肝腫瘍の1 切除例
38巻12号(2011);View Description
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症例は62 歳,男性。2003 年胃体部癌に対して,幽門側胃切除術を施行した(Stage IB)。2008 年造影CT で,肝S8ドーム下に15 mm 大の早期濃染し後期wash out される腫瘤を指摘。腹部EOB 造影MRI の肝細胞造影相で低信号を示し,血管造影でA8 からの腫瘍濃染を認めた。以上より原発性または転移性肝腫瘍を疑い,肝S8 部分切除術を施行した。切除標本で白色調の充実性腫瘍を認め,病理組織学的に腺癌の診断であった。そこで免疫組織染色を行うと前回手術の胃癌と同様,抗cytokeratin(CK)7 抗体(-)/抗CK20 抗体(+)で,上部下部消化管内視鏡検査では明らかな悪性所見は認めず,最終的に胃癌術後の肝転移再発と診断された。肝切除術後2 年経過した現在も無再発である。胃癌術後5 年目に発生した肝腫瘍において,その鑑別診断に免疫組織染色のCK7/CK20 の発現パターンが有用であった症例を経験したので報告する。 -
EMR 後局所再発に対し手術後3 か月で肝転移を来したAFP 産生胃癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は60 歳台,男性。検診で胃の異常を指摘され,当院消化器科を紹介受診した。上部消化管内視鏡検査で胃穹窿部前壁に20 mm の0-I 型腫瘍を認め,生検で腺癌でありendoscopic mucosal resection(EMR) を施行した。病理組織診断ではpap,m,ly0,v0,HMX,VM0 であった。EMR 施行時に断端部をAPC 焼灼しており経過観察とされたが,1 か月後の上部消化管内視鏡検査で20 mm の局所再発を認め当科紹介となった。EMR 時の結果がm 癌であることから胃局所切除を施行した。病理組織診断でtub1,sm2,ly1,v1,HM0,VM0 であり,胃全摘D1+No.8a,9,11p を追加施行した。病理組織診断では癌の遺残を認めず,最終病理組織診断はU,ant,Type 0-I,50×30 mm,tub1,pT1b(sm2),ly1,v1,pN0 (0/38),pPM0,pDM0,cH0,cP0,CYX,cM0,pStage IA であった。術後経過良好で外来で経過観察とされたが,3 か月後にCTで肝S8,S6 に再発を認めた。原発巣の免疫染色ではAFP 陽性であった。化学療法を施行したが,奏効せず原病死した。内視鏡治療の治療方針については個々の症例につき慎重に判断する必要がある。 -
S-1 補助化学療法後の腹部大動脈周囲リンパ節転移症例の予後と臨床経過
38巻12号(2011);View Description
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背景: S-1 補助化学療法後の腹部大動脈周囲リンパ節(No.16 リンパ節)再発症例の予後や臨床経過は不明である。対象および方法: 2002 年3 月~2010 年3 月までに当院でS-1 術後補助化学療法を施行したStage II/III の症例は82 例であり,このうちNo.16 リンパ節再発症例3 例(3.7%)を対象とした。再発症例の予後と臨床経過を検討した。結果: 進行度は全例がStageIII C。術後S-1 の投与期間中央値は8.8 か月。No.16 リンパ節の再発形式は単発2 例/多発1 例。再発後生存期間中央値は14.3か月。全例で経過中新たな遠隔再発部位はみられなかった。考察: 有効な補助化学療法が確立した現在,No.16 リンパ節は予防的に郭清すべきか,再発後に治療すべきか,再発後には局所治療か全身治療かについて検討する価値があろう。 -
S-1/CDDP 併用術前化学療法が奏効した局所進行胃癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は59 歳,男性。腹部腫瘤を主訴に当科を受診した。精査にて胃癌cT3(SE)N2M0,cStage III C の診断となり,術前化学療法としてS-1/CDDP 併用化学療法を3 コース施行した。3 コース終了後,down staging が得られたため手術の方針とし,幽門側胃切除,D2 郭清を施行した。病理組織検査では,M,type 1,75×35 mm,pap>tub2,adenocarcinoma,pT2(MP),ly3,v0,pN2,Stage II B の診断であった。術後補助化学療法としてS-1 内服中で,術後1 年現在再発所見なく外来通院中である。高度リンパ節転移を伴う胃癌の治療選択肢として,術前化学療法は期待できる治療法と考えられる。 -
胃空腸吻合術後化学療法により胃切除術を施行し得た進行胃癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は50 歳台,男性。食欲不振,嘔吐を主訴に当院紹介受診となった。内視鏡検査にて,通過障害を伴う胃角部~幽門前庭部にかけての全周性の3 型進行胃癌を認め,CT 検査では膵頭部浸潤が疑われたが,肺・肝転移,腹水は認めなかった。2007 年6 月切除術を試みたが膵頭部への浸潤とともに腹水細胞診陽性であり,胃空腸吻合術のみ施行した(cT4bN1H0P0CY1,Stage IV)。術後S-1 を開始したが,薬疹のため1 週間で中止し,CPT-11+CDDP 療法を開始した。アレルギーにより14コースで終了となったが,病変の進行は認めなかった。2009 年1 月からweekly paclitaxel(PTX)療法を開始し,6 コース施行後のCT 検査にて膵浸潤に改善が疑われたため,幽門側胃切除術を施行した(ypT3N1P0CY0,Stage IIB)。術後PTX 療法を1 年間継続するも再発所見はないため,化学療法を中止した。初回治療後48 か月経過しているが無再発生存中である。 -
術前S-1 単独投与によりpCR が得られた進行胃癌の2 例
38巻12号(2011);View Description
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術前S-1 単独投与によりpCR が得られた進行胃癌の2 例を経験したので報告する。症例1: 67 歳,男性。主訴は食欲不振。精査にて胃MLU 領域に全周性の4 型腫瘍を認め,生検では低分化型腺癌であった。cT3N1M0,cStage III A の進行胃癌と診断し,S-1 120 mg/body/day を3 週間投与した後,胃全摘術(D2 郭清)を施行した。病理組織検査にて癌細胞の遺残なく,化学療法の効果判定はgrade 3 と診断された。症例2: 62 歳,男性。主訴は心窩部痛。精査にて噴門部に3 型腫瘍を認めた。生検では中分化型管状腺癌であった。cT4aN2M0,cStage III B の進行胃癌と診断し,S-1 120 mg/body/day を延べ6 週間投与した後,腫瘍の縮小を認め胃全摘術(D2 郭清)を施行した。病理組織検査にて癌細胞の遺残なく,化学療法の効果判定はgrade 3 と診断された。 -
高度進行胃癌に対するDocetaxel+Cisplatin+S-1 併用療法の治療成績
38巻12号(2011);View Description
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高度進行胃癌に対する化学療法として,docetaxel+cisplatin+S-1(DCS)の3 剤併用療法が注目されている。当院でこれまでに6 名の患者にDCS 療法を施行した。6 例中4 例に膵浸潤,3 例に腹部大動脈周囲リンパ節転移,2 例に肝転移を伴っており,臨床病期はIIIC またはIV であった。レジメンはdocetaxel 40 mg/m2 day 1,cisplatin 60 mg/m2 day 1,S-1 80mg/m2 day 1~14 の4 週1 サイクルで,2~4 コース投与した。効果判定ではPR 5 例,SD が1 例であり,奏効率83%,病勢コントロール率は100%であった。有害事象は,grade 3 以上の好中球減少を3 例(50%),発熱性好中球減少症を1 例(17%),grade 3 の下痢を1 例(17%)に認めた。6 例中4 例で化学療法後に手術を行い,全例R0 切除が可能であり,重篤な合併症は認めなかった。組織学的効果判定ではGrade 2 が2 例,Grade 1b が1 例,Grade 1a が1 例であった。DCS 療法は腫瘍縮小効果に優れ,高度進行胃癌に対する術前補助化学療法としても有望なレジメンの一つと考えられる。 -
StageIVの手術不能胃癌に対してS-1/Paclitaxel(PTX)によりcCR となった1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は65 歳,女性。2003 年11 月より体調不良,食欲不振を認め,検診にて上部消化管内視鏡(GIF)を施行し,胃体上部から前庭部にかけて半周性の3 型胃癌を指摘された。CT 検査で肝・肺転移はなかったが,膵体部,空腸,横行結腸に浸潤が疑われ,腹腔鏡検査を施行した。術後診断は,sT4a(SE)N2M1H0P1CY1 でStage IV であった(胃癌取扱い規約第14版)。全身化学療法の方針となり,S-1/CDDP を開始した。2 コース終了した時点でPD と判定し,S-1/PTX に変更した。2コース終了後にはGIF で改善を認め,19 コース終了した2005 年12 月の生検結果はGroup 1 であった。2009 年3 月まで28コース継続し,2011 年6 月現在,診断から7 年7 か月無再発生存中である。Stage IV の手術不能胃癌に対して,S-1/PTX によりcCR となったまれな1 例を経験したので報告した。 -
S-1 を中心とした集学的療法にて長期生存している胃癌肝転移の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は68 歳,女性。胃癌同時性肝転移に対しS-1 を2 コース投与後,原発巣および肝転移巣の縮小を認め,肝部分切除,胃切除を施行した。術後11 か月に異時性肝転移を認めたため,S-1/CDDP 療法を施行した。5 コース施行後肝転移が消失し,化学療法を中止した後も術後8 年間無再発生存中である。本症例では,原発巣でのフッ化ピリミジン系悪性腫瘍剤の標的酵素であるthymidylate synthetase(TS)抗体染色が陰性であり,5-FU 系抗腫瘍薬に対しての感受性が高かった可能性が考えられた。TS 染色はS-1 を中心とする集学的治療の有益なマーカーになる可能性が示唆された。 -
高度進行胃癌に対するS-1+Weekly CDDP 併用療法の使用経験
38巻12号(2011);View Description
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手術不能進行胃癌に対してS-1+weekly CDDP 併用療法(w-CS 療法)を施行し,効果・安全性を後ろ向きに検討した。21 例に当治療を施行した。レジメンはday 1,8 にCDDP 20 mg/m2 を静注し,S-1 を80 mg/m2/day 分2 でday 1~14に内服,その後1 週間休薬とし,3 週1 コースのレジメンを使用した。奏効率は52.3%,病勢コントロール率は85.7%であった。有害事象はgrade 3≧の高度有害事象を全体の23.8%に認め,内訳はgrade 3≧の好中球減少を14.2%,血小板減少を4.7%,血清クレアチニン増加を4.7%に認めた。w-CS 療法は今回の検討にて,効果・安全性ともに満足できる結果であった。今後,前向き試験での症例集積調査が施行されることが望ましい。 -
化学療法施行中の原発巣からの出血に対し経皮的動脈塞栓術で良好な結果を得た進行胃癌の2 例
38巻12号(2011);View Description
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根治切除不能な進行胃癌からの出血のコントロールに経皮的動脈塞栓術(TAE)を施行し,良好な結果が得られた2症例を経験したので報告する。症例1: 61 歳,男性。他臓器浸潤を認める胃体上部から前庭部の2 型進行胃癌に対して化学療法を施行中に吐血を認めた。内視鏡的止血術は困難であり,TAE を施行した。左胃動脈末梢枝からの出血を認め,同動脈を塞栓し止血した。症例2: 58 歳,男性。腹膜播種を認める胃体上部の3 型進行胃癌に対して化学療法を施行中に吐血を認めた。内視鏡的止血術は困難であり,TAE を施行した。左胃動脈および右胃動脈末梢枝からの出血を認め,それぞれ塞栓し止血した。TAE による止血術は急性期の出血がコントロール可能であり,患者のQOL 維持に有用であった。 -
Docetaxel+CDDP+S-1 療法による術前補助化学療法中に穿孔を来した高度進行胃癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は70 歳台,男性。心窩部痛にて紹介受診。精査の結果,高度リンパ節転移を伴うLM 領域の大型3 型進行胃癌(Stage IIIC)と診断した。十分なinformed consent の下,docetaxel+CDDP+S-1 の3 剤を併用した術前補助化学療法(neoadjuvant chemotherapy: NAC)を開始した。day 15 に突然の腹痛が出現し,癌腫穿孔による汎発性腹膜炎の診断で緊急手術となった。胃前庭部前壁の癌腫の中心に2 cm 大の穿孔を認め,NAC 奏効による胃壁脱落が原因と推測された。ショック状態であったため,術式は洗浄ドレナージと大網被覆術を選択した。救命に成功したが,NAC に関連する胃穿孔は種々の有害事象の修飾により,通常のそれよりも重症化する可能性が示唆された。高度進行胃癌に対するNAC は,生命予後の向上が期待される魅力的な治療戦略であるが,大きな潰瘍を伴う進行胃癌に対するNAC では致命的な胃穿孔を招く可能性がある。 -
腹腔内化学療法抵抗性胃癌腹膜播種へのBevacizumab の使用経験
38巻12号(2011);View Description
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今回,われわれは腹腔内化学療法抵抗性の胃癌腹膜播種腹水貯留患者2 名に対しbevacizumab(BEV)を投与し,良好な結果を得られたので報告する。症例1: 62 歳,女性。4 型胃癌に対し,胃全摘術を施行した。術後1 年半で腹膜再発を来し,taxane 系抗癌剤の全身および腹腔内化学療法を行ったが,腹水減少せず,BEV 5 mg/kg を投与した。単回投与により腹水貯留は消失した。症例2: 42 歳,女性。4 型胃癌,腹膜播種に対しS-1+taxane 系抗癌剤の腹腔内化学療法を行うも,腹水貯留状態が遷延,BEV 5~10 mg/kg を計3 回投与し,腹水は軽快した。新規抗癌剤や腹腔内化学療法によって胃癌腹膜播種の治療成績は向上しているが,BEV の併用により腹水control や抗腫瘍効果のさらなる改善が期待される。 -
CY1 胃癌の術後腹腔内再発診断に局所麻酔下腹腔洗浄液診断を施行した2 症例の検討
38巻12号(2011);View Description
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CY1 胃癌は,術後腹膜播種再発高リスク群である。われわれは,治療前に局所麻酔下腹腔洗浄液診断を施行し,CY1を確認した症例に対してはneoadjuvant intra-peritoneal and systemic chemotherapy(NIPS) を施行し,奏効例には手術を行う治療を行ってきた。今回この治療法により根治切除可能となった症例で,術後2 年目に再び腹腔洗浄液細胞診を施行し,陰性を確認し,術後補助療法として施行していたS-1 内服を終了した2 症例を経験したので報告する。 -
在宅経腸栄養療法(HEN)を併用した胃癌患者の癌局所外来化学療法
38巻12号(2011);View Description
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2000~2010 年の10 年間に胃癌手術患者で,食事摂取が少なく栄養補助として在宅経腸栄養(HEN)を行い,外来局所化学療法に併用した症例は21 例であった。施行された局所化学療法は,大動脈内化学療法5 例,肝動注化学療法4 例,腹腔内化学療法12 例であった。評価可能病変が存在した8 例中PR 5 例,PD 3 例であった。HEN は,消化態経腸栄養剤を夜間に注入ポンプを用いて400~1,200 kcal(最多800 kcal)が投与されていた。HEN の施行期間は平均12.9 か月であった。化学療法を安全に継続するためには,栄養管理の継続すなわち「術後のシームレスな栄養管理」は重要である。経口摂取が少ない胃癌患者に,癌局所化学療法を外来で継続するに当たりHEN を行った経験を報告した。 -
胃全摘後の挙上空腸に発生した空腸癌および肝転移の1 手術例
38巻12号(2011);View Description
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胃全摘後の挙上空腸に発生した空腸癌および同時性肝転移の1 手術例を経験したので報告する。症例は61 歳,女性。1994 年に胃癌に対して胃全摘および膵体尾脾合併切除術を施行され,転移・再発なく経過していた。2010 年7 月ごろより上腹部痛が出現,近医を受診し,AFP 高値を指摘された。上部消化管内視鏡検査にて吻合部より約15 cm 肛門側の挙上空腸に3 型腫瘍を認め,腹部造影CT にて肝外側区域に約8 cm 大,肝S8 に約1 cm 大の腫瘍が確認された。挙上空腸に発生した原発性空腸癌および肝転移の診断で,挙上空腸切除,肝外側区域切除,肝部分切除(S8),横行結腸部分切除を施行した。病理診断では空腸癌はmoderately differentiated adenocarcinoma で,肝S8 の腫瘍は空腸癌の同時性転移であったが,外側区域の腫瘍は血管筋脂肪腫であった。挙上空腸に発生した原発性小腸癌は非常にまれであり,若干の文献的考察を加えて報告する。 -
肺癌小腸転移切除術後長期無再発生存の1 例
38巻12号(2011);View Description
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肺癌の小腸転移は広範な全身転移の一徴候であることが多く,予後不良である。今回,肺癌小腸転移切除術後3 年間無再発生存例を経験したので報告する。症例は68 歳,男性。主訴は貧血。2004 年1 月右肺癌に対して前医で右肺上葉切除術が行われた。2006 年11 月前医腹部造影CT 検査にて小腸腫瘍を指摘され,当院で切除術を行った。Treitz 靱帯から50 cm の空腸に8 cm 大の腫瘍があり,空腸部分切除を行った。肺癌の組織と類似した低分化型腺癌で,免疫染色では同じ性状を示したことから肺癌の小腸転移と診断した。本人の希望で術後化学療法は行わなかったが,約1 年半後に小腸間膜の腫瘍を指摘され手術を行った。Treitz 靱帯から10 cm の空腸間膜内に6 cm 大の腫瘍があり,核出術を施行した。肺原発巣と小腸腫瘍に一致した組織像で転移と考えられた。術後当院呼吸器内科にてgemcitabine+CDDP の化学療法を計4 コース行い,最終手術後3年経過して無再発生存中である。 -
多発肝膿瘍を合併した小腸GIST の1 切除例
38巻12号(2011);View Description
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症例は50 歳台,女性。心窩部痛,頭痛を主訴に当院を受診した。発熱,炎症反応上昇,肝機能障害があり,CT で肝多発腫瘤と小腸間膜に5 cm 大の粘膜下腫瘍を認め,精査加療目的で入院となった。小腸腫瘍内腔に液体とガスが貯留し,消化管との交通が疑われた。肝腫瘤は膿瘍と考え抗菌薬を開始したが,小腸腫瘍を経由して細菌が肝に移行したと考え,第3 病日に小腸部分切除術を施行した。腫瘍は,c-kit(+),CD34(+)でGIST と診断した。術中に切除した肝結節は,c-kit(-),CD34(-)で膿瘍と診断した。術後発熱の改善に乏しく,縮小のみられなかった膿瘍に対し経皮経肝膿瘍ドレナージを施行,その後は経過良好で退院となった。肝転移のリスクは高いと判断し,退院後にイマチニブを開始した。術後約11 か月が経過しているが再発・転移は認めていない。多発肝膿瘍を合併したGIST の症例は報告が少なく,貴重な症例と考え報告する。 -
分子標的薬治療後外科的介入を行ったGIST の1 例
38巻12号(2011);View Description
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分子標的薬にてPD となり,腫瘍による出血を来した症例に対し外科的介入を行ったGIST の1 症例を経験したので報告する。症例は59 歳,男性。2008 年に前医にて腹腔内多発腫瘤に対し姑息的腹腔内腫瘤摘出術を施行した。腫瘤はGIST〔c-kit(+),α-SMA(-),S-100(-),CD34(-),5/50 HPF 以上の高リスク〕と診断された。術後imatinib 400 mg/day の投与を開始し,その後sunitinib の導入目的に当科紹介となった。imatinib 投与22 か月目にPD となり,sunitinib(50mg/day 4 週2 休)の投与を開始した。腫瘍増大に伴い腹満感が出現し,2 コース終了後には,下血を来しCS を施行するも出血源の同定はできなかった。3 コース終了後に腫瘍穿破による腹腔内出血を来し,出血コントロール目的で初回治療から約27 か月目に手術を施行した。開腹所見では,腹腔内に血性腹水を認めた。出血の原因となった腫瘤を含め2 個の巨大腫瘤を切除し,小さな嚢胞性腫瘤は可能なかぎり切除したが,骨盤内腫瘤は術中出血のリスクも考慮し切除は行わなかった。切除した腫瘍は小腸に穿破しており下血の原因と考えられた。術後経過は良好で現在までに貧血の進行は認めず,外来通院が可能な状態であり,手術の意義があったと考えられた。 -
高リスクNon-T4,StageII,III食道癌治療法の選択と治療成績
38巻12号(2011);View Description
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non-T4,Stage II,III 食道癌85 例を対象に,当科で定義した高リスク群の治療選択と成績および手術リスク評価法E-PASS scoring system (E-PASS)との関係をretrospective に検討した。① 75 歳以上の高齢者,② performance status≧2,③ 重篤な心,呼吸器,肝,腎疾患,糖尿病の合併,いずれかに当てはまるものを高リスクとすると,高リスク群は35 例(41%)であった。高リスク群で手術が選択される頻度が有意に低く(p<0.01),また手術する場合でも低侵襲な術式が選択される割合が多かった。手術例では高リスク群と非高リスク群で合併症発症率,全生存期間に差はなかった。E-PASS 術前リスクスコア(PRS)は,われわれのリスク分類と治療の選択に相関を認めた(rs=0.63,p<0.01)。高リスクStage II,III 食道癌では,低侵襲な術式の選択をしても非高リスク症例に劣らない予後が期待できることが示唆された。また,われわれのリスク評価法は,E-PASS PRS と密接な関係がある上簡便なため,臨床応用するのに有用な指標となり得ると思われた。 -
放射線化学療法にて7 年8 か月生存中の進行食道癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は60 歳台,男性。2003 年6 月下旬に嚥下時つかえ感を自覚し,精査にて胸部中部食道に2 型食道癌(低分化型扁平上皮癌)を指摘され,7 月上旬当科受診となった。主病変は切除可能であったが,CT にて腹部大動脈から総腸骨動脈周囲リンパ節まで腫大が認められ,T2N4M0,Stage IV a の診断で放射線化学療法を開始した。放射線照射は合計66 Gy,化学療法は5-FU+nedaplatin を4 週間毎に合計4 コース施行した。治療終了時のCT ではリンパ節は縮小し,内視鏡検査では病変部は瘢痕のみで,生検で異型細胞を認めずpCR と判断した。2008 年4 月より左鼠径リンパ節の腫大が出現し,PET-CT で陽性集積を認めた。5 月上旬,左鼠径リンパ節摘出術を施行。病理組織学的に食道癌の転移と診断された。その後は新たな再発なく,初発から7 年8 か月の長期生存中である。高度進行症例では常に再発を念頭におき,長期経過観察が必要と思われた。 -
術前CRT でCR となったが3 年7 か月で再発した気管浸潤食道癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は40 歳台,男性。食道Ut~Ce に長径7.5 cm の3 型病変を認め,食道癌と診断された。気管への直接浸潤が疑われ,まず40 Gy の放射線療法とlow-dose FP(5-FU 500 mg/day,CDDP 5 mg/day 5 投2 休)を行い,腫瘍の縮小と気管浸潤の改善を認め,食道亜全摘術を施行した。病理組織学的効果はGrade 3 であったが,術後3 年7 か月で骨・肺転移が出現し4 年8 か月後に死亡した。他臓器浸潤食道癌でも術前補助療法により切除可能となり,生存期間の延長を図ることが可能であると考えられた。また,組織学的CR が得られた症例でも常に再発を念頭におき,慎重なfollow up が必要であると思われる。 -
化学放射線療法により長期生存を得ている食道内分泌細胞癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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食道内分泌細胞癌に対し,化学放射線療法が奏効した1 例を経験したので報告する。症例は84 歳,男性。胸部中部食道癌cT3N2(101L,109L)M0,stage III,食道内分泌細胞癌の診断にて2007 年5 月より化学放射線療法(5-FU/CDDP 療法とRT 60 Gy)と補助化学療法(計7 コース)を施行。結果cCR が得られた。約2 年9 か月後の2010 年2 月左肺転移が出現し,docetaxel/CDDP/5-FU を開始した。肺転移巣はほぼ消失し,現在,治療開始から4 年5 か月と長期生存が得られている。食道内分泌細胞癌に対し,化学放射線療法が有用である可能性が示唆された。 -
5-FU/CDDP による術前化学療法にて原発巣CR が得られた食道癌の2 例
38巻12号(2011);View Description
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症例1 は67 歳,男性。胸部下部食道癌,T2N0M0,cStage II にて5-FU/CDDP 併用術前化学療法(FP 療法)2 コース後,3 領域郭清を伴う食道亜全摘術を施行した。切除標本では主病変は触知されず,リンパ節腫脹も認めなかった。組織学的検査では,粘膜から固有筋層までの線維化のみで癌細胞の残存は認めず,治療効果判定はgrade 3。T0N0M0,fStage 0 でdown-staging が得られた。症例2 は58 歳,男性。胸部中部食道癌,T3N2M0,cStage III の診断で術前FP 療法2 コース後,3 領域郭清を伴う食道亜全摘術を施行した。切除標本では腫瘍は認めず,組織学的検査では全層性に不規則な線維化を認めるのみで癌細胞の残存は認めず,治療効果判定はgrade 3。2 個のリンパ節転移と周囲線維化を認め,治療効果判定はgrade 2。T0N2M0,fStage II でdown-staging が得られた。術前FP 療法にて原発巣CR が得られた食道癌の2 例を経験したので報告する。 -
根治化学放射線療法後の遺残リンパ節病変に対してS-1 が奏効したT4 食道癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は65 歳,男性。5 cm 大の右反回神経周囲リンパ節転移を伴う胸部中部食道扁平上皮癌〔T4(106recR-右鎖骨下動脈)N2M0,Stage IV a〕に対し,2009 年7 月から導入化学療法として標準量FP 療法を2 コース施行し原発巣CR を得た。さらにDCF 療法を1 コース追加したところ,転移リンパ節のさらなる縮小を認めたものの切除不能と判断し,10 月から根治化学放射線療法: CRT(FP+60 Gy)を施行した。2010 年1 月のPET-CT にて治療効果はnon-CR であったが,ごく軽度の集積を認めるのみであった。3 月のPET-CT にて右頸部リンパ節に新病変の出現と106recR 再燃を認めた。4 月から外来投与を中心とするdocetaxel(DOC)のtriweekly 投与を継続した。12 月のPET-CT にて転移リンパ節の増大を認めたため,S-1 を用いた外来化学療法(4 週投与2 週休薬)を開始した。3 コース投与後の2011 年3 月のPET-CT にて転移リンパ節の著明な縮小を認めた。その後,4 月に死亡されるも,直前の胸部CT にて転移リンパ節の増大は認めず,局所のコントロールは良好であったと考えられる。今回,FP とDCF による導入化学療法とFP 併用による根治CRT 後の遺残転移リンパ節に対して,DOC とS-1 のsequential 投与による外来ベースの化学療法により,良好な病勢コントロールが得られた症例を経験した。一般にT4 食道癌の予後は不良であり,なかでも根治CRT 非奏効例の予後は極めて不良である。したがって,本例のような遺残例に対する追加化学療法の主たる目的は,可能なかぎりQOL を維持しつつ腫瘍進展の抑制を図ることである。DOCによりthymidylate synthase(TS)活性が抑制されることが報告されており,S-1 が奏効した理由として,DOC によるTS抑制の結果,DNA 合成阻害に基づく5-FU の抗腫瘍効果が増強された可能性が推察される。 -
非切除進行・再発食道癌における二次治療としてのBiweekly Nedaplatin/Docetaxel併用療法
38巻12号(2011);View Description
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目的: 非切除進行・再発食道癌に対しbiweekly nedaplatin(CDGP)/docetaxel(DOC)併用療法を二次治療として行い,その有効性と安全性について検討を行った。対象と方法: 対象は,当院にて治療を行った非切除進行もしくは再発食道癌15 例。投与方法は4 週を1 コースとし,day 1 およびday 15 にCDGP 40 mg/m2+DOC 30 mg/m2 を外来ベースで投与した。結果: 有効性に関してはRR 0%,DCR 6.7%であった。TTP 中央値は2.1 か月,MST は7.0 か月であった。また,grade 3以上の有害事象を4 例(26.7%)に認めた。考察: biweekly CDGP/DOC 併用療法は非切除進行・再発食道癌の二次治療として,PS を悪化させず外来で安全に施行できる治療である一方,その有効性は必ずしも満足のいくものではなかった。 -
食道バイパス術を付加した気管浸潤を伴う食道癌に対する治療経験
38巻12号(2011);View Description
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われわれは,気管支と瘻孔を形成した進行食道癌に対し食道バイパス術を導入し,良好なQOL を確保し得た症例を経験した。症例は64 歳,男性。Mt 領域の進行食道癌により化学放射線療法を導入したところ食道気管支瘻を形成したため,食道バイパス術を行った。術後縫合不全により経口摂取再開まで約1 か月を要したが,化学放射線療法を再開したところ瘻孔が完全閉鎖するまでの改善をみた。治療終了後6 か月で瘻孔が再燃したものの,2011 年5 月原病死するまで経口摂取は維持されていた。進行食道癌に対するstent は低侵襲であるが,留置後の化学放射線療法は穿孔などの有害事象の頻度が高く,瘻孔遮断効果が必ずしも安定しない。一方,バイパス術は食物通過経路を確実に気道系から遮断するため,経口摂取を維持した状態で化学放射線療法を行うことが可能である。気道系への浸潤を来した食道癌の治療に当たっては,食道バイパス術を念頭におくべきである。 -
食道癌気管食道瘻に対しCover Stent 留置によりQOL の改善を認めた症例
38巻12号(2011);View Description
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症例は60 歳,男性。2009 年8 月下旬,近医より嗄声主訴にて当院耳鼻科紹介受診。頭頸部CT 検査において,上部(Ut 領域)食道の壁肥厚像と左鎖骨下リンパ節・縦隔リンパ節腫大を認めたため外科紹介となった。上部消化管内視鏡検査では,鼻孔より25~30 cm の胸部上部食道に左壁中心とした半周性の3 型進行癌を認め,squamous cell carcinoma の結果であった。FAP 療法2 コース施行するもPD であり,発熱・咳嗽が出現。胸部CT 検査において気管と食道との交通を認め食道癌気管食道瘻と診断し,放射線治療を60 Gy(2 Gy/1 回)施行した。放射線療法施行後,腫瘍は縮小するも約6 mm の瘻孔を認めたためcoverd type Ultraflex 食道ステントを挿入した。その後ステント留置後5 か月,永眠する直前まで固形物摂取可能であった。 -
食道胃接合部癌に対して逆流防止弁付きステントを使用した1 例
38巻12号(2011);View Description
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食道癌において,食道ステントは経口摂取を維持するための重要な手段であるが,食道胃接合部においては逆流を助長する危険がある。今回われわれは,下部食道から噴門部にかけての癌に対して逆流防止機能付きステントを使用し,逆流症状なく経口摂取を維持し得た症例を経験した。症例は78 歳,男性。2008 年7 月に下部食道に癌を認め,治療を指示されるも放置。2010 年3 月,出血・通過障害のため入院。造影CT にて多発肝転移を認めた。患者希望にて積極的治療は行わないこととし,3 月10 日,内視鏡および透視下に逆流防止機能付き食道用ステントを留置。留置に伴う有害事象は認めず。治療翌日から飲水可能となり,1 週間後から固形物の摂取を許可した。全粥摂取が可能となった時点で退院。以後外来にて経過観察したが,5 月に永眠される直前まで固形物の摂取が可能で逆流症状はなかった。 -
食道癌術後の難治性吻合部狭窄にトリアムシノロン局所注射が有効であった1 例
38巻12号(2011);View Description
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胸部食道癌術後の難治性吻合部狭窄に対して,内視鏡下トリアムシノロン局所注射が有効であった1 例を経験したので報告する。症例は50 歳台,男性。2006 年8 月に胸部食道癌(Mt,Type 3,cT3,cN1,M0,Stage III)に対して右開胸食道亜全摘,胸骨後胃管再建術を施行し,頸部食道胃管吻合には25 mm のcircular stapler を用いた。術後に吻合部縫合不全を発症したが,保存的に軽快した。難治性吻合部狭窄となり,吻合部拡張術(内視鏡下バルーンやブジー法)を繰り返し行ったが完治には至らなかった。2010 年10 月よりトリアムシノロン局所注射を4 週間ごとに施行すると,2011 年4 月の第5 回目には吻合部の開存を認め,以後再狭窄を認めていない。 -
悪性食道狭窄に対しNiti-S TM 食道ステントを使用した3 例の検討
38巻12号(2011);View Description
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近年,悪性食道狭窄に対して,食道ステントの挿入が広く行われている。本稿では,操作性,挿入性ともに優れた新型食道ステントNiti-S TM を使用し,良好な結果を得た3 例を報告する。症例1: 肺門部肺癌とその縦隔リンパ節転移による胸部上部食道の壁外性狭窄に対して挿入。症例2: 胸部中部食道癌のNo.106recL リンパ節転移による気管の壁外性狭窄に対し気管ステントを挿入。その後,原発巣の狭窄に対して挿入。症例3: 胸部下部食道癌の放射線療法後の狭窄に対して挿入。本症例はステントが食道胃接合部(EGJ)を越えるため,ロングカバー付きステントを使用した。3 例とも,嚥下障害は直ちに改善した。本食道ステントは,従来挿入困難であった高度狭窄例でも挿入・留置が容易で,固定性も良好であった。今後の普及が期待される。 -
食道癌術後肺転移に対し化学療法後に肺切除した1 例
38巻12号(2011);View Description
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今回われわれは胸部食道癌根治術後に当初多発性肺転移と診断,化学療法後に単発性肺転移と診断し,切除した1 例を経験したので報告する。症例は59 歳,男性。胸部食道癌根治術後に臨床試験としてpaclitaxel weekly 療法を100 mg/週(3週投与1 週休薬)で3 コース施行後,経過観察中に腫瘍マーカーが上昇し,胸部CT 上結節影を右S1,S5 に認め,PET でS1に取り込みを認めたため,多発性転移性肺腫瘍と診断した(術後1 年7 か月)。再度,paclitaxel weekly 療法を8 コース施行した。8 コース終了後の胸部CT にて肺腫瘍(S1)の増大傾向を認めたが,新病変の出現なく孤立性の肺転移と診断し,右肺S1 部分切除術を施行した。病理結果も転移性肺腫瘍であった。術後paclitaxel weekly 療法を5 コース施行し終了した。現在,食道癌術後3 年7 か月,転移性肺腫瘍術後1 年であるが,再再発なく生存中である。 -
食道悪性黒色腫の1 切除例
38巻12号(2011);View Description
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症例は56 歳,女性。食後の胸痛を自覚し,上部消化管内視鏡検査を施行したところ胸部中部食道に黒色粘膜を認め,生検にて食道悪性黒色腫と診断された。胸腹部CT 検査にてcT1bN0M0,cStage I と診断し,手術を施行した。現在術後約3年になるが,無再発生存中である。食道悪性黒色腫は比較的まれな疾患であり,一定の治療方針はない。今回われわれは,食道悪性黒色腫の1 切除例を経験したので報告する。 -
術前化学放射線療法に高感受性を示した下部胆管癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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当科では胆管癌のsurgical margin 陰性化による切除成績向上を目的にgemcitabine 併用の術前化学放射線療法(NACRAC)を導入し,現在第II 相試験が進行中である。今回,NACRAC が画像上で奏効し,腫瘍マーカーの正常化および病理組織所見で治療効果を確認できた症例を経験したので報告する。症例は50 歳,男性。閉塞性黄疸で当科紹介となった。来院時CEA 10.2 ng/mL,CA19-9 6,280 U/mL と腫瘍マーカーの上昇を認め,腹部CT で下部胆管を閉塞する腫瘤とリンパ節腫大を認めた。EUS では膵浸潤を認め,高度局所進行下部胆管癌の診断でNACRAC を行った。重篤な有害事象もなく,腫瘍マーカーはいずれも正常範囲内へ低下した。治療効果は腹部CT の所見から,RECIST ver.1.1 でPR であった。NACRAC終了2 週後に根治手術を施行し,経過良好で第19 病日に退院した。病理組織所見では,surgical margin は陰性で,大星・下里分類でGrade 2b の治療効果を認めた。NACRAC は胆管癌の予後を改善する可能性を秘めた治療法と考えられた。 -
胆道拡張症に合併した胆管粘膜癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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胆道拡張症には,膵胆管合流異常に起因する総胆管癌が合併しやすいとされている。しかし,膵胆管合流異常を伴わない胆道拡張症における発癌症例の報告は極めて少ない。今回われわれは,膵胆管合流異常を伴わない胆道拡張症の中部胆管に癌が発生した症例を経験した。症例は37 歳,女性。胆石症,肝内胆管拡張症,肝内結石症を指摘され,内視鏡的に切石を試みる際に逆行性膵胆管造影検査を行った。内視鏡的に切石不可能であったため,肝内胆管拡張症,肝内結石症に対して肝S3切除および左右肝管合流部の狭窄に対して肝外胆管切除・胆道再建術を施行した。病理組織診断の結果,中部胆管の極めて小さな範囲に粘膜癌を認めた。この症例について若干の文献的考察を加えて報告する。 -
胆嚢癌同時性肝転移を切除し長期生存を得ている1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は67 歳,男性。兄弟二人に胆道癌があったため,検診で腹部超音波検査を実施したところ胆嚢壁の肥厚を指摘され,精査加療目的に当科を受診。腹部造影CT 検査では胆囊底部主体に壁肥厚が存在し,造影効果が認められた。Rokitansky-aschoff sinus が目立ち,慢性胆囊炎が示唆されたが胆囊頸部リンパ節が腫大しており,悪性疾患の可能性が残った。開腹胆囊摘出術を実施したところ術中所見で胆囊周囲は硬かったため,迅速組織診断を実施。腺癌の診断を得たため,肝S4a+S5 切除術とD2 リンパ節郭清を実施した。切除した肝臓には,肝床部への直接浸潤病巣とS5 に1 cm 大の結節が認められた。追加切除した胆囊管の断端は癌陰性であったため,肝外胆管切除は行わなかった。最終病理学的診断は,patGnbf,慢性炎症型,平坦浸潤型,4.5×3.2 cm,tub2,中間型,INFβ,ly1 v1 pn1 se hinf3 binf0 pv0 a0 bm0 N (+); 3/13。転移リンパ節は12c,12b2,13a がそれぞれ1 個ずつ(N2),S5 病変は胆囊病変と同一組織像であり,遠隔転移(M1)と認定された。肝床部への直接浸潤を踏まえるとpT4N2M1,Stage IVb であった。術後再発の高危険群と考え,当初より術後補助化学療法としてS-1(80 mg/body/day; day 1~14)とgemcitabine(1,000 mg/body; day 8,15)の併用療法を積極的に実施した。特に中断すべき副作用を経験することなく2 年間実施し(合計28 コース),再発兆候がないため補助療法を終了。現在術後2 年半経過してCEA/CA19-9/DUPAN-2 はいずれも正常範囲であり,画像上も転移を示唆するものはない。胆囊癌の同時性肝転移例への積極的治療の報告は少なく,限局性肝転移症例は治療効果が期待できるものとして,若干の文献的考察を加えて報告する。 -
総胆管背側に孤立性リンパ節転移を伴った胆嚢癌の2 切除例
38巻12号(2011);View Description
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症例1 は85 歳,男性。膀胱癌術後のCT で胆嚢腫瘍を指摘された。CT,MRI で胆囊床側の胆囊内に造影される1.5cm 大の腫瘍あり。胆囊癌を疑い手術を施行。肝床切除術,リンパ節郭清を施行。病理では胆囊底部に乳頭腺癌を認め,pSSでpT2pN2(13a のみ)M(-),pStage III。術後22 か月間無再発生存中である。症例2 は73 歳,男性。他院にて胆石性胆囊炎の診断で,腹腔鏡下胆囊摘出術を施行。病理にて進行胆囊癌と診断され,当科紹介。CT,MRI,PET-CT にて胆摘部に2 cm 大の腫瘤あり。胆摘後,胆囊癌の診断にて手術を施行。胆囊床部に硬結を触知し,肝床切除術,2 群リンパ節郭清を施行。病理では,中分化腺癌pT4pN1(12b2 のみ)M(-),pStage IV a。術後約15 か月無再発。胆囊のリンパ流は肝十二指腸間膜の右側系と左側系が提唱され,自験例はいずれも右側系12b2 や13a の孤立性転移である。孤立性リンパ節転移例は比較的予後良好とされるが,長期の予後や症例の蓄積も含め,さらなる検討が必要と思われる。 -
S-1 療法が奏効し長期生存中の肝内胆管癌術後早期リンパ節再発の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は71 歳,男性。肝機能異常精査のため当院に紹介となった。精査の結果,肝内胆管癌の診断となり肝右葉切除術を施行した。術後補助化学療法としてgemcitabine 1,000 mg/m2(3 週投与1 週休薬)を開始した。grade 3 の食欲不振が出現したため,3 サイクル目よりgemcitabine 800 mg/m2 に減量した。術後6 か月のCT にてリンパ節再発を認めた。術後1 年のCT では大動脈周囲の広範なリンパ節再発と残肝再発を認め,S-1 100 mg/day(3 週投与1 週休薬)の投与に変更した。10 サイクル目にgrade 3 の血小板減少が出現したため3 週投与2 週休薬に変更,さらに36 サイクル目からはS-1 80 mg/day(2週投与2 週休薬)に減量した。S-1 療法を開始後2 年でリンパ節再発は消失,4 年で残肝再発もほぼ消失し,PR と判定した。CEA は正常化,CA19-9 も100 U/mL 前後で保たれている。grade 2 の血小板減少がみられるものの,現在43 サイクル目を施行中であり,術後5 年1 か月生存中である。全身状態をみながら化学療法を継続投与したことが予後改善につながったと考えられた。 -
皮膚および右眼悪性リンパ腫化学療法後,胆嚢悪性リンパ腫の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は65 歳,女性。悪性リンパ腫(T-cell,皮膚,右眼内)の診断で,2009 年6 月~12 月まで化学療法(THP-COP)を施行し,寛解状態となった。2010 年8 月に胆嚢腫瘍を指摘され,胆囊腫瘍の切除・生検を目的に当科入院となった。腹部超音波検査で胆囊体部に長径24×14 mm 大の辺縁等エコー,内部低エコーの腫瘍を認めた。深達度はSS 以深と考えられた。腹部CT にて胆囊体部に造影効果を有する腫瘍を認めた。肝床側では浸潤が疑われた。PET-CT では,胆囊体部にSUVmax8.5 の集積を認めた。MRI でも胆囊体部から底部にかけて長径33.5 mm の隆起性病変が認められ,胆囊床浸潤も疑われた。本症例に対して拡大胆囊摘出術を施行した。術中超音波にて粘膜下腫瘍であり,主成分は肝床対側に存在していた。病理診断はmalignant lymphoma,peripheral T-cell lymphoma であった。 -
ゲムシタビン剤形変更の試み
38巻12号(2011);View Description
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ゲムシタビン注射製剤(GEM)の剤形変更を試みた,新剤形はDDS の概念に基づき,徐放性と標的指向性を付与するため,担体は70%脱アセチル化キチン(DAC-70)をベースとした。ことに胆道系臓器に指向性を増大させる目的で,肝,胆道系を介して体外に排出されるインドシアニングリーン(ICG)の特性を利用,担体の一部として使用した。今回は,GEMとICG のin vitro の放出動態,放出されたGEM の抗腫瘍効果を基礎的に調べ,ICG がGEM の担体として臨床的に利用できるかを検討した。新剤形はGEM,ICG いずれの薬物も徐放した。放出されたGEM は癌細胞増殖を抑制した。ICG には癌細胞増殖抑制能はみられなかった。今回の検討から,ICG をGEM の適切な担体とするためには,剤形デザインにさらに新規性を導入する必要があると考えられた。 -
膵頭十二指腸切除後,残膵局所再発に対し再切除を行った1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は70 歳,女性。黄疸を認め,膵頭部に腫瘍を指摘され当科に紹介受診。血液検査で腫瘍マーカーの上昇を認めた(CA19-9 1,231 U/mL,DUPAN-2 3,800 U/mL)。造影computed tomography(CT)で膵頭部に4 cm 大の低吸収な腫瘤陰影を認め,ERCP による擦過細胞診はClass V であった。膵癌と診断し,膵頭十二指腸切除を施行(pT3N1M0,stage III)。術後gemcitabine の投与を行ったが,3 か月目のCT で膵断端に低吸収域を認め,腫瘍マーカーも漸増していた。残膵局所再発を強く疑い,初回術後8 か月目に再切除を行った。術後,乳糜瘻と鬱病の悪化により補助療法を導入することができず,2か月目に再々発を来し再手術後6 か月目に死亡となった。残膵局所再発に対する外科切除に関する報告は少なく,今後症例を蓄積し,再手術の適応基準を確立することが必要と考えられた。 -
頭部巨大多血性腫瘍に対し術前動脈塞栓術を併用して切除した1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は73 歳,女性。10 年の経過で6 cm から13 cm に増大した膵頭部漿液性嚢胞腺腫に対する手術目的に当科紹介受診となった。画像所見上,腫瘍は多血性で動脈相早期より濃染され,腹腔動脈側および上腸間膜動脈(SMA)側の血管から供給されていた。静脈相では腫瘍表面に著明に発達したdrainage vein から門脈本幹が早期に造影され,下腸間膜静脈は腫瘍後方で圧排され流れが不良であった。切除に際して相当量の出血が懸念されたため,胃十二指腸動脈および腫瘍後面で処理の困難な背側膵動脈・脾動脈からの栄養血管を手術前日に塞栓して手術に望んだ。paraduodenal mesenteric approach によりTreitz 靱帯近傍から膵頭後面のアプローチを行い,SMA からの栄養動脈を早期に処理した。これにより術前の塞栓術と併せて腫瘍への供血が早期に遮断され,無輸血にて門脈合併切除を伴う膵頭十二指腸切除術を施行し得た。術後病理組織学的検査にてmicrocystic serous cystadenoma と確定診断された。 -
腹腔鏡下膵体尾部切除後ポート部に腹膜再発を来した膵癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は49 歳,男性。左側腹部痛が出現し近医を受診,検査にて脾門部腫瘤を認め当科紹介受診となった。腹部CT では脾門部から脾下極を主座とする6 cm 大の脾腫瘍を認め,一部膵尾部に浸潤していた。腫瘍マーカーは陰性であり,脾原発の悪性リンパ腫と診断し,腹腔鏡補助下に膵体尾部切除術を施行した。しかし,術後の病理組織結果では浸潤型膵管癌と診断され,脾臓浸潤を伴う進行膵癌であった。術後gemcitabine(GEM)による化学療法を施行した。術後約1 年を経過したころより左側腹部に有痛性の小腫瘤を触知し,精査の結果,左中腹部ポート挿入部位の腹壁播種と診断した。S-1,GEM による化学療法を追加し,さらに局所に対して40 Gy の化学放射線療法を行い,播種出現後1 年半を経過した現在無症状生存中である。悪性腫瘍に対する腹腔鏡手術ではポート部に腹膜播種再発を来す可能性があり,癌細胞散布に注意した慎重な術中操作を徹底する必要がある。 -
主膵管全体が拡張した膵管内乳頭粘液性腫瘍に膵全摘を避けた1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は77 歳,女性。3 年前に近医で膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)を指摘された。本人の希望で経過観察されていたが,膵管内に結節を指摘され,当センターに手術目的で紹介された。既往歴は三度の房室ブロックでペースメーカーを留置されている。耐糖能異常はない。腹部造影CT で膵管全体が拡張し,膵全体を占める多房性の嚢胞性腫瘍を認める。内視鏡的逆行性膵管造影でも主膵管が著明に拡張し,主膵管型IPMN と診断した。浸潤癌であれば膵全摘,腺腫,非浸潤癌は縮小手術の方針とした。術中所見では浸潤癌を示唆する所見はなく,術中超音波で膵管内に結節を認めず,総胆管左縁から膵尾部まで膵分節切除を行った。膵管断端には迅速診で癌・腺腫はない。術後経過は良好で術後16 日目に退院した。耐糖能は問題なく,インスリン導入していない。膵全摘には術後のquality of life の著しい低下の問題があり,今回は回避した。本症例に文献的考察を加え報告する。 -
膵粘液癌の1 切除例
38巻12号(2011);View Description
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症例は60 歳,女性。人間ドックの腹部エコー検査にて膵体部腫瘤を指摘され,当院を受診。貧血,黄疸なく,腹部に腫瘤や圧痛は触知せず。造影CT にて膵体部に尾側膵管の拡張と内部石灰化を伴う2.6 cm 大の低濃度腫瘤を認め,脾静脈浸潤を伴っていた。ERCP 検査にて膵体部で主膵管の高度狭窄を認めた。膵体部癌を疑い手術を施行。開腹すると,膵体部に硬結を触知し,肉眼的には漿膜浸潤を疑った。膵頸部における癌浸潤を否定できず,膵体尾部側切除を断念し,膵頭部体部切除術を施行した。病理組織では膵粘液癌であった。膵外浸潤やリンパ節転移を認めず,pT2N0M0 と診断した。しかし,術後10か月目の腹部CT にて中腹部正中の腹壁直下に約4 cm 大の腹膜再発を認めた。膵粘液癌は,浸潤性膵管癌の約1.4%と比較的まれである。病期II にもかかわらず,早期に腹膜再発を来した内部石灰化を伴う膵粘液癌の1 切除例を経験したので報告する。 -
右副腎浸潤を伴った肝内胆管癌の1 切除例
38巻12号(2011);View Description
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症例は64 歳,女性。心窩部痛の精査目的に施行した腹部CT で右副腎から肝右葉に連続する巨大腫瘍を指摘された。当初は右副腎癌,肝浸潤が疑われ泌尿器科へ紹介となったが,腫瘍針生検で肝内胆管癌と診断を確定し,当科で拡大肝右葉尾状葉切除,右副腎合併切除,横隔膜合併切除を施行した。病理組織学的検査で右副腎への浸潤を伴うものの,リンパ節転移および脈管浸潤を認めず,最終診断はpT3pN0sM0,fStage III の腫瘤形成型肝内胆管癌であった。術後経過は良好であり,術後補助化学療法を行いながら12 か月無再発生存中である。 -
肝細胞癌腹膜播種再発を2 回切除し長期生存が得られた1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は70 歳,男性。B 型慢性肝炎にて他院で経過観察中,2007 年6 月腹部CT で肝細胞癌(HCC)破裂と診断され,他院でTAE 治療を施行された。7 月に当科紹介受診となり,8 月肝S5 切除術,胆嚢摘出術を施行した(pT2N0M0,StageII)。その後,肝内再発に対してTACE 治療を2 回施行したが,2009 年6 月腹部造影CT で肝S5 にviable な病変を認め,さらに肝S3 表面に腹膜播種病変を認めた。腹膜播種以外の肝外転移を認めないことから,7 月肝S5 の再発病変切除,腹膜播種病変切除を施行した(病理組織学的所見: 中分化型HCC とHCC 腹膜播種)。その後,2010 年7 月右横隔膜下と結腸肝弯曲部さらに左尿管近傍にも播種性病変を認めたため,2 回目の腹膜播種切除術を施行した。2011 年1 月に多発肺転移,3 月には骨転移が出現した。以降全身状態が悪化し,HCC 破裂後TAE 治療から46 か月後,初回腹膜播種切除から21 か月後の4 月に原病死した。本症例のように肝内病巣の制御が良好であればHCC の腹膜播種症例に対して,外科的切除により長期生存が期待される症例も存在すると考える。 -
肝内胆管癌切除術後残肝再発に対し再肝切除を施行した1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例60 歳,男性。単発の肝内胆管癌(ICC)に対し肝左葉切除術を施行した。術後補助化学療法としてS-1 を投与したが,血糖コントロールが不良となり5 か月で中止となった。肝切除術後2 年目に2 か所の肝内再発を認めた。再肝切除を行い,組織学的にICC の再発と診断された。再肝切除術後にGEM を6 か月間投与した。再切除後16 か月経過したが無再発生存中である。ICC の残肝再発時に再肝切除が有効な治療法の一つになる可能性があるが,手術適応をどのようにするか検討が必要と思われた。 -
二期的肝切除を施行し得た右房内腫瘍栓を伴う肝細胞癌の1例
38巻12号(2011);View Description
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右房内に進展する腫瘍栓を伴った肝細胞癌(HCC)に対して,二期的肝切除を含む集学的治療の奏効例を報告する。症例は56 歳,男性。CT にて右房内腫瘍栓を伴う肝S7 のHCC と診断した。インターフェロン(IFN)併用アドリアマイシン(ADR)動注化学療法後に手術を施行したが,肝うっ血が強く切除困難であり,右房・下大静脈内腫瘍栓の摘出と右肝静脈縫合閉鎖・グリソン鞘の後区域枝の結紮による進展予防を施した。術後にIFN 併用5-FU 動注化学療法(FAIT)・IFN 併用S-1 療法を施行し,初回手術の1 年4 か月後に肝後区域切除術を施行した。再手術後1 年に肝内に再発を認め,肝動脈化学塞栓療法を施行し,IFN 併用S-1 療法・IFN 併用ADR 動注化学療法を追加するも,再手術後1 年10 か月で閉塞性黄疸が出現し原病死したが,初回治療より3 年8 か月の長期生存を得ることができた。 -
右三区域切除術を施行した若年者非B 型非C 型肝細胞癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は20 歳,男性。右上腹部痛を主訴に受診した。腹部CT にて右葉の広範囲を占める巨大肝腫瘍を認め,また,肝S2,S3 にも各々20 mm 大,10 mm 大の腫瘍を認めた。肝生検の結果は高分化型肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC)であった。腫瘍の進展による痛みと腫瘍内部の壊死部分における感染による発熱が続いていた。右葉の巨大な主腫瘍に対して,肝右三区域切除術を施行した。切除後,痛みと発熱は消失し,術後21 病日より残存腫瘍に対する治療を開始した。術後36 か月が経過した現在,生存中である。若年者非B 型非C 型HCC では,巨大なHCC が存在し進行癌であっても肝硬変合併が少なく,肝機能が比較的良好な例が多い。根治切除が不可能であっても肝切除は補助療法の一つとして,位置付けて集学的治療を行うことが可能であると考えられた。 -
当院における再肝切除症例に対する完全腹腔鏡下肝切除術
38巻12号(2011);View Description
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2010 年6 月~2011 年3 月までに腹腔鏡(補助)下肝切除術を33 例に施行。内訳は完全腹腔鏡下21 例(再切除6 例),腹腔鏡補助下10 例(再切除2 例),用手補助下2 例。完全腹腔鏡下再肝切除の成績を検討。初回切除15 例は原発11 例,転移4 例,再切除6 例は全例原発。肝機能は初回切除,再切除でそれぞれ肝障害度A/B が8/7,2/4,ICG R15 が中央値で18(4~42)%,30(10~35)%で,再切除で肝機能不良の傾向。手術成績は初回切除,再切除で手術時間中央値265(105~673)分,296(157~475)分,出血量中央値10(少量~2,000)cc,25(少量~140)cc,術後在院日数中央値は10(6~17)日,11(6~24)日で同等の結果。再切除例の癒着は気腹と拡大視効果にて良好な視野で安全に剥離可能で,再肝切除症例においても完全腹腔鏡下手術は適応可能と考えられた。 -
肝細胞癌再切除における術中ICG 蛍光法の有用性
38巻12号(2011);View Description
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前治療の存在や背景肝が肝硬変の場合,肝外病変を含む微小病変の存在など同定困難が予想される6 例の肝細胞癌再切除症例に対して,術中US の他ICG 蛍光法を補助診断として同定を試みた。男女比4:2,年齢中央値は61.5(37~66)歳で,併存肝病変はB 型2 例,C 型2 例,NBNC 型2 例であった。ICG 蛍光法を用いた結果は1 例を除き5 例において腫瘍を同定することができ,2 例はTACE 前治療の近傍の腫瘍,1 例は肉眼的に同定困難であった肝表面に存在する小肝細胞癌の同定,腹壁腫瘍再発では脈管浸潤を反映していると考えられる範囲を同定でき,リンパ節再発症例では小さなリンパ節転移を複数個同定可能であった。 ICG 蛍光法は,術中US だけでは判定困難が予想される病変に対する術中補助診断として有用であると考えられる。 -
IFN/5-FU 併用療法(FAIT)とTACE が著効したVp4 肝細胞癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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門脈内腫瘍栓(Vp4)を伴う肝細胞癌(HCC)に対しインターフェロン併用5-FU 肝動注療法(FAIT)を施行し,腫瘍栓の縮小が得られたことにより肝動脈化学塞栓療法(TACE)を付加することで肝内病巣を制御し,長期生存が得られた1例を経験したので報告する。症例は70 歳,女性。肝S8 に5 cm 大の主腫瘍と両葉多発肝内転移(IM3)を認め,門脈右枝の完全閉塞と左枝に進展する門脈内腫瘍栓(Vp4)を伴う高度進行HCC の診断の下,FAIT を開始した。FAIT 3 コース終了後にVp の縮小が得られ肝内への血流の再開を認めたため,TACE を施行した。その後,FAIT,TACE を継続し,初診時より約4 年経過した現在も病勢をコントロールできている。FAIT によりVp が縮小し,TACE などの追加治療ができた症例では,長期生存が得られる可能性があると考えられる。 -
肝細胞癌術後の肺転移に対しS-1/IFN 併用療法が奏効した1 例
38巻12号(2011);View Description
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肝切除後7 か月目に多発肺転移再発を来した肝細胞癌症例に対してS-1/IFN-α(S-1/IFN)併用療法が奏効し,CRが得られた1 例を経験したので報告する。症例は77 歳,男性。咳嗽を主訴に近医を受診し,胸部CT にて肝細胞癌が疑われ,当科を受診した。精査にて肝細胞癌と診断し,術前TACE 施行後,肝左葉切除術を施行した。術後7 か月目に両側多発肺転移を認めS-1/IFN 併用療法を施行したところ4 コース終了時点でCR が得られ,術後26 か月が経過した現在,CR 継続中である。 -
右房内腫瘍栓および多発肺転移を伴う肝細胞癌に対し腫瘍栓摘出術およびS-1 療法が著効した1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は68 歳,男性。2002 年に肝細胞癌(HCC)に対し肝部分切除術を施行し,以降もHCC 再発に対し集学的治療を施行したが,2009 年に両肺に多発肺転移とS4 近傍部に再発巣を認め,肝動脈化学塞栓療法(TACE)を施行した。しかし,CT にてHCC の残存と下大静脈から右房にまで至る腫瘍栓と肺転移の増大を認めた。そこで,腫瘍栓摘出を目的に手術を施行した。腫瘍栓は,S4 近傍の右下横隔静脈に播種した腫瘤を起源として同静脈から右房にまで進展していた。右横隔膜下の腫瘤とともに,人工心肺を使用せず腹腔内からの右房の血流遮断のみで腫瘍栓も摘出した。また,肝左葉表面の播種巣も摘出した。術後にテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合カプセル剤(S-1)を6 コース投与し,CT にて多発肺転移はほぼ消失し,現在,無治療にて経過観察中である。 -
当科における切除不能肝細胞癌症例に対するSorafenib の治療経験
38巻12号(2011);View Description
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当科で経験したsorafenib 治療例について検討した。2011 年4 月までのsorafenib 投与例は計40 例であった。切除不能肝細胞癌(HCC)27 例,肺転移7 例,骨転移6 例,リンパ節転移3 例,腹膜播種2 例,sorafenib 平均投与期間は196.9 日間であった。有害事象はgrade 3 が9 例(22.5%),grade 4 は1 例(3%)認めた。治療効果は奏効率5%,病態制御率55%であった(CR 2 例,PR 0 例,SD 20 例,PD 9 例)。予後は生存期間中央値15.2 か月,無再発生存期間中央値3.7 か月であった。sorafenib の有害事象対策や長期継続の工夫により,進行HCC の予後向上が期待される。 -
肝外転移を有さない肝細胞癌に対しSorafenib を投与した3 例
38巻12号(2011);View Description
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sorafenib は,経口投与が可能なマルチキナーゼ阻害薬で,本邦では2008 年に切除不能な肝細胞癌にも保険適応が承認され,肝機能がChild-Pugh 分類A で,経皮的局所療法や肝動脈化学塞栓療法(TACE)などの適応とならない症例での使用が推奨されている。一方,肝癌診療ガイドラインでは,肝障害度A またはB で肝切除術の適応とならない場合は,4 個以上の多発であり,TACE,TAI が推奨されている。今回,肝外転移を有さない切除不能な肝細胞癌でTACE,TAI が適応であるが,気管支喘息,TACE,TAI 無効,造影剤アレルギー,乏血性病変などのためsorafenib を使用した3 症例を経験した。RECIST にてPR 2 例,SD 1 例であった。また,1 例はmRECIST にてCR であった。今後局所療法の適応である肝細胞癌に対しても,sorafenib の治療選択が広がることが期待された。 -
進行肝細胞癌集学治療の一環としてのSorafenib の可能性
38巻12号(2011);View Description
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sorafenib は根治切除困難な肝細胞癌(HCC)に適応とされるが,肝癌治療での位置付けは検討課題である。症例1 は79 歳,男性。肝右葉のHCC(Stage III: T3N0M0)の診断で拡大右肝切除を施行したが,再発を反復し,術後3 年目に肝外播種と思われる腫瘍を認めた。推奨される治療に乏しく,sorafenib 内服投与を開始した。11 か月投与後にPIVKA-II の再上昇と肝内新病変3 か所が認められたが,肝外性病変はNC であり,局所コントロールを目的に手術を施行。腫瘍切除と肝内腫瘍のRFA が可能でPIVKA-II は正常化し,術後新たな病変は認めていない。sorafenib の投与後に外科的治療が可能となった3例から,sorafenib 投与による治療期間を通じてその後の集学的治療につながる可能性もあることが示唆された。 -
大腸癌同時肝転移を担うエホバの証人に対し術前肝動注療法と同時肝切除術の後,化学療法離脱が可能となった長期生存例
38巻12号(2011);View Description
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転移巣が左肝静脈根部に浸潤した結腸癌同時多発肝転移例にて,無輸血手術が必要なエホバの証人患者で安全性と根治性を確保する目的で肝動注療法を先行し,腫瘍径縮小後,同時切除を施行した。症例は53 歳,男性でエホバの証人。5-FUを7.5 g 肝動注するも無効のため,CPT-11 80 mg/CDDP 30 mg 動注に変更し,CPT-11 400 mg/CDDP 150 mg を投与,同時にS-1(80 mg,day 1~21)を2 コース施行し,著明な腫瘍径の縮小と腫瘍マーカーの低下を得た。治療開始3 か月後,自己血輸血下にS 状結腸切除と同時肝切除(外側区域+部分切除)を施行した。術後化学療法期間中の残肝再発に対するラジオ波焼灼および再切除術を経て,2 年8 か月間の化学療法離脱に成功しており,治療開始から6 年以上経過した現在,再発なく生存中である。術前肝動注療法を含む本治療は,切除不能な同時肝転移を担うエホバの証人患者に有効であった。 -
IVC グラフト再建を伴う肝左葉,尾状葉切除により治癒切除し得た異時性胃癌肝転移の1 例
38巻12号(2011);View Description
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症例は72 歳,男性。胃体下部の2 型胃癌に対し幽門側胃切除,D2 郭清を施行した。術後9 か月目のCT 検査にて,IVC 浸潤を伴う径5 cm の単発肝転移巣を認めた。患者はS-1 投与に対してアナフィラキシーを来したため化学療法のsecond-line を検討していたが,腫瘍は2 か月で直径がほぼ2 倍となるほどのrapid growth を呈した。以上より外科的切除を選択した。手術は肝左葉,尾状葉切除にIVC 合併切除を施行し,IVC はPTFE グラフトによりパッチ再建した。術後合併症なく経過し,第11 病日に退院,外来にてsecond-line のpaclitaxel を継続中である。術後10 か月経過の現在,無再発生存中である。胃癌肝転移症例の手術,特にIVC 再建を伴うような拡大肝切除の適応は厳密に評価されるべきであるが,積極的切除も選択肢の一つであると考えられた。 -
胃GIST 肝転移に対し術前化学療法後に根治的肝切除を施行した1 例
38巻12号(2011);View Description
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イマチニブを用いた術前化学療法により,安全に根治切除が可能となった胃GIST 肝転移の1 例を経験したので報告する。症例は60 歳台,女性。2003 年胃腫瘍出血に対して,緊急開腹の上,胃部分切除術が施行された。術後組織学的に胃GISTと診断され経過観察されていたが,2009 年腹部CT で肝S8 に約70 mm のSOL を指摘され,精査加療目的に当院入院となった。CT では右および中肝静脈を圧排浸潤する腫瘍を認め,胃GIST の肝転移が疑われた。根治切除には拡大右葉切除を要したことから,腫瘍縮小による中肝静脈温存を企図し,イマチニブによる術前化学療法を開始した。治療開始12 か月で腫瘍は約50 mm に縮小したが,内部に染影効果を有するPD 病変を認めたため,この時点で肝切除に踏み切った。術中所見で中肝静脈は温存でき,定型的肝右葉切除術にて根治切除が可能であった。 -
転移性肝癌に対する免疫細胞BAK 細胞の肝動注の試み
38巻12号(2011);View Description
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われわれは高度進行固形癌に対して副作用がなく耐性もできず,QOL を良好に維持しながら“がんと共生しよう”という発想の下,CD56 陽性細胞を中心とした新免疫細胞BAK(BRM activated killer)療法を発明した。しかし,投与法がBAK 細胞の点滴静注のため肝癌に対しては,血管,リンパ管系が複雑で,リンパ球が肝癌まで到達し難いので行ってこなかった。今回,BAK 細胞を肝動注で肝癌に到達させる試みを患者である外科医が希望したので,その結果を報告する。症例は52 歳,男性,医師で,2007 年4 月直腸癌摘出手術,2008 年7 月肝転移が見つかり重粒子線治療を行った。12 月よりBAK細胞を100 億個ずつ毎月1 回ずつ6 回カテーテルによる肝動注を行った。その結果,活性化したリンパ球と肝癌細胞の闘いにより炎症のマーカーである血清α1AG 値が上昇し,6 回投与後は平常値に戻り,その後通常の点滴静注によるBAK 療法を行った結果,PET-CT やPET などの画像上肝転移の完全な消失がみられた。 -
減量手術・新規抗癌剤により長期生存を得ている虫垂粘液癌の1 例
38巻12号(2011);View Description
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外科的根治切除が不可能な進行虫垂粘液癌に対する標準治療は,いまだ確立していない。われわれは,減量手術後に新規抗癌剤を用いた外来化学療法により長期CR を得,その後の再発巣に対する減量手術と温熱化学療法により,長期生存が得られている症例を経験したので報告する。症例は61 歳,女性。急性虫垂炎の疑いで緊急手術を施行した。術中所見では虫垂先端部に約5 cm の腫瘤を認め,周囲に粘液様の漏出物を認めた。虫垂悪性腫瘍を疑い,虫垂切除術,回腸部分切除術を施行した。病理組織結果は,虫垂粘液癌,回腸浸潤,膀胱浸潤の結果で,術後CT で骨盤内癌遺残を認めた。術後化学療法としてS-1/CDDP 療法を6 コース施行し,画像上CR と判定した。以後2 年までS-1 のみでフォローしたが,術後36 か月目に癌性腹膜炎を再発し,41 か月目に腹膜切除術および術中温熱化学療法を施行した。初回手術から4 年11 か月現在,再再発なく生存中である。 -
治療前より胸腔内進展を合併した腹膜偽粘液腫の1 例
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胸腔内進展を合併した腹膜偽粘液腫の1 例を経験した。症例は64 歳,男性。腹部腫瘤精査加療目的に2007 年11 月,入院となった。腹部CT 検査と腹腔穿刺による細胞診により,腹膜偽粘液腫と診断した。開腹手術を施行したところ,粘稠な腹水と上行結腸と大網を巻き込んだ小児頭大の腫瘍を認めた。左右横隔膜にも腫瘍結節を認めた。食道裂孔内にも腫瘍が延びており,左胸膜の広範な肥厚を示している胸部CT 所見と合わせて腹膜偽粘液腫の胸腔内進展と考えた。過大侵襲を避けて胸腔内の処置を行わず,腹腔内の可及的な減量手術のみを行った。術後経過良好で,術後化学療法施行していたが,2008 年7月,腹腔内の腫瘍は徐々に増大し,9 月に再減量手術施行をした。その後も病状は徐々に悪化し,初回手術から26 か月で永眠した。 -
UFT/LV 内服療法にて長期CR が得られている大腸癌術後多発肺転移の1 例
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症例は54 歳,女性。2000 年12 月,盲腸癌に対し右半結腸切除術を施行。C,2 型,2.5×3.5 cm,SE,N1,P1,H0,M(-),Stage IV,Cur B。mod,ss,ly2,v2,n1,p1 であった。2002 年8 月ごろより徐々にCEA の上昇を認めた。2003年7 月,腹部CT 検査にて右下腹部に腫瘍性病変が認められ,腹膜播種が疑われた。12 月,多発腹膜結節に巻き込まれた回腸・横行結腸・S 状結腸部分切除術を施行。2004 年2 月の術後follow up CT にて両肺野に多発する小結節像を認め,肺転移と判断された。化学療法による強い副作用の経験から本人と相談の結果,UFT/LV の内服療法を開始した。9 月の胸部CT にて腫瘍の縮小を認めた。その後,肺野の結節像はさらに縮小し,2011 年2 月の胸部CT ではCR の状態を維持している。 -
再発を繰り返す小児腹腔内デスモイド腫瘍に対して6 回の切除を施行した1 例
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症例は15 歳,男性。腹部の巨大腫瘤を触知し来院した。CT にて膵体部,胃体部大弯に接し,横行結腸を巻き込む広範囲の腫瘤を認めた。幽門側胃切除,膵体尾部切除,横行結腸切除を併施して腫瘍を摘出し,遺残腫瘍は認めなかった。追加治療せず経過観察していたが,術後9 か月目にCT 上,局所再発を認めた。SMV の根部に浸潤しており切除不能と考えたため,VLB とMTX を併用した化学療法を週1 回の静脈投与にて開始した。20 回投与時のCT にて局所再発巣は縮小しPR の評価を得たが,腹腔内・腹壁に多発再発を来した。再発巣はイレウスや強い腹部不快感の原因となったため,5 回の減量手術を行った。VLB とMTX は45 回まで投与し,その後は抗エストロゲン剤によるホルモン療法やNSAID を投与したが効果はみられず,腫瘍の増大による腎機能障害,腹腔内膿瘍を引き起こし,初回手術より5 年8 か月後死亡した。 -
悪性リンパ腫における超音波ガイド下携帯型吸引式リンパ節生検
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リンパ腫の診断においてテーラーメイド治療が提唱されるようになり,治療前にこれらを検索し得る組織量の採取が必要となってきた。針生検や穿刺吸引細胞診では十分な組織量を得られない場合もあり,切開・摘出生検が一般的に行われている。今回,従来の生検法に代わる方法として携帯型吸引式乳腺組織生検装置を悪性リンパ腫の生検診断に応用し,有用性と安全性を検討した。悪性リンパ腫を疑い,吸引式組織生検(vacuum-assisted biopsy: VAB)を行った9 症例を対象とした。全症例が確定診断に至り,新WHO 分類の病型分類まで診断することが可能であった。悪性リンパ腫と診断された症例は8 例,残りの1 例は結核に伴うリンパ節腫大であった。VAB を用いた悪性リンパ腫に対するリンパ節生検は,豊富で良質な組織採取を簡便かつ安全に行うことができ,詳細な治療前診断への寄与が期待できる。
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