癌と化学療法

2011, 38巻Supplement I
Volumes & issues:
-
特集【第22回日本在宅医療学会学術集会】
-
-
在宅医療は「よりよく生きる場所」での医療
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
「在宅は治療がなくなってから死ぬために帰るところ」という認識が残っている。しかし,症状コントロールに在宅化学療法を行うことが有用な場合もあり,治療がなくなってから在宅という考え方には違和感を覚える。在宅は「よりよく生きる場所」である。また,病院の病床数は全国的に減少傾向であり,在宅医療が充実することで急性期病院の機能をより高めることも期待できる。在宅医療には地域連携が必須であり,多職種が集まれるカンファレンスや研修会などを開催して連携を充実させることで,秋田市独自の在宅ネットワークの整備を進めている。 -
後期高齢者の在宅医療における心不全マーカーとしてのNT-proBNPの有用性
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
血中のN 末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)のレベルは心不全の状況を反映する有益な指標である。後期高齢者を対象とした在宅医療においては,NT-proBNP は有用で簡便なマーカーではないかと考えられる。当クリニックにおいて2008 年5 月〜2011 年2 月まで訪問診療を行ってきた240 名の後期高齢者患者に関して,NT-proBNP の測定値と臨床データとの比較検討を行った。 -
在宅緩和ケアの現状
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
いわき市における地域連携による在宅緩和ケアの取り組みを推進するために,ネットワークの構築をめざし, 1.医師会の支部ごとのスキルアップ教育研修会, 2.在宅緩和ケア合同研修会および連携の集いの開催, 3.地域連携緩和ケアのためのクリティカルパスの運用, 4.いわき緩和医療研究会の充実に重点を置いて取り組んできた。しかしながら,病診連携による在宅緩和ケアは満足いく状態とはいえない。その一方で,医師間の連携,多職種との連携など,いわゆる「顔のみえる連携」は着実に進んでいる実感がある。当科においては連携による緩和ケア症例が増加し,病診連携による在宅緩和ケア症例も経験した。このようななかで重要なことは,まずは緩和ケア,在宅緩和ケアを積極的に取り組んでいる施設を認知していただき,緩和が必要な患者を早期にそのような施設に紹介することが肝要であると思われる。 -
急性期を中心とする病院の癌患者の在宅における看取りの現況
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
公立甲賀病院は主に急性期患者の診療に当たる一般病院であるが,同時に地域の中核病院としての機能も要求されている。当院では2008年の地域がん診療連携拠点病院指定前から在宅患者の看取りを行っており,2008 年度から2010 年度まで82 例のターミナルケアを行い,うち23 例を在宅で看取った。また,地域医療部で2009 年度から2 年間で23 回の訪問診療(一部往診)を行い,7 例の在宅看取りを行った。現在までおおむね良好な反応を得てきたが,最終的に患者および家族が再入院を望むこともあり,臨機応変な対応と各部署間の連携が不可欠である。本年,在宅医療部門を独立させた。この上で院内での緩和ケア体制をしっかりと確立するとともに,地域の医療機関とも連携した在宅緩和医療/ケアに関するネットワークを構築する必要があると考え歩みだしたところである。 -
終末期リンパ浮腫患者へのケア介入によりQOL が向上し,在宅ホスピスケアが可能となった1 例
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
近年,リンパ浮腫の予防とそのケアの重要性が認識されてきているが,終末期がん患者におけるリンパ浮腫への複合的理学療法は相対的禁忌に位置付けられ,ケアへの介入が困難な場合であることが多い。今回,われわれはケアへの強い希望があった患者に予測される有害事象への対策を施行しながら,段階的にケアを導入した。その結果,ADLの拡大・QOL の向上により在宅への移行が可能となった。終末期がん患者におけるリンパ浮腫ケアにおいては,患者の意向に沿った目標の設定と共有,予測される有害事象への対策,段階的なケアの導入が重要であると考えられた。 -
高齢者社会時代に対する在宅医療支援センター構想
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
首都圏での高齢者人口の急増に対処する方策はとても十分といえない状況のなかで,在宅医療はこれに解決策を与える可能性の一つである。一方で現況の在宅医療体制ではこの変化に太刀打ちできるとは考えられないため,地域の在宅医療システム全体を抜本的に再構築する在宅医療支援センター構想を柏市,東京大学,UR,千葉大学で取り組んでいる。単にセンターを作るだけでなく在宅医療にかかわるすべての職種を動員して会議を進めるとともに,柏在宅医療研修プログラムを作成して講習会を開始することで開業医の在宅医指向を図り,またこのための地域医療ネットワークを構築している。将来はこのシステムに研修医や学生が参加できるような体制を作り,在宅医療を支える医療資源の確保も考えている。 -
クラウド上のグループウェア・サイボウズLiveを用いた在宅医療における情報共有の試み
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
在宅医療では多職種,多事業所が患者にかかわるが,患者情報を適切に共有する際,従来のメディアは多くの問題を抱えていた。そこで,情報共有ツールとして,サイボウズLive というクラウドで稼動する無料のグループウェアを用いたところ,情報量は増えたにもかかわらず電話やファクシミリは激減し,情報共有には極めて有効であることがわかった。また,参加メンバーへのアンケートでも業務負担感は少なくなり,必要な情報が増えたと好評であった。その結果,以下のことがいえる。 1.患者情報を共有するだけで,人を支えることができる。 2.共有情報は患者データよりも患者や家族,かかわるスタッフの意識のほうがより重要である。 3.情報共有により,単なる連携からチームと呼べる一体感が生まれる。 4.情報共有により,かかわるスタッフには成長するチャンスが生まれる。 5.情報共有にはサイボウズLive のような適切なツールが必要である。 -
在宅緩和ケアの変遷
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
当院の在宅緩和ケア推進は,在宅医療に対する法整備,連携の充実,医療処置の進歩など,いろいろな要因によって充実してきた。 -
調剤薬局が在宅用ポンプレンタル事業を行うことについての検討
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
日本の在宅医療において,医師は自分でポンプを購入する必要はなく,ポンプレンタル業者からレンタルできる。ただし,これらの業者は医学的なサポートを行うことはできない。そこでヤナセ薬局の薬剤師はポンプレンタル事業を行い,患者・医師・看護師などに対して医学的なサポートを行っている。医学的なサポートの内容は「退院カンファレンスへの参加」,「入院中の患者や医療スタッフにポンプの使い方を説明」,「自宅の患者や医療スタッフにポンプの使い方を説明」,「輸液ルートの接続方法の提案」,「衛生材料の提案」などである。 -
高齢者の在宅療養継続を可能とする総合相談支援事業の検討
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
地域包括支援センターの中核的業務である総合相談事例への支援から,高齢者が在宅療養を継続していく上での支援すべき課題とそれに対する有効な支援方法を明らかにすること,および配属されている看護職としてのあり方を考察することを目的に,事例分析と検討会を行った。その結果,在宅療養を継続していくための有効な支援は,高齢者との信頼関係の構築,日常生活の自己管理能力を高める,自宅で生活したいという意思に沿う,家族・親族の介護力を高める,支援者となる近隣者の相談相手となる,支援にかかわる近隣者と遠方に住む親族との調整,高齢者が役割や生きがいをもって生活できるように支援することであると考える。また,看護職としての役割は,退院前から在宅までの一貫した支援方針で支援する,三職種の専門性を生かした事例検討を行うこと,高齢者が望む在宅療養を可能とする地域作りを行っていくことと考える。 -
在宅医療をサポートするため大学ができること
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
本学では,1998年より医学科学生実習のなかに在宅ケア実習を取り入れてきた。第3 学年の必修実習として地域の訪問看護ステーションの看護師(指導者)らに,多くの学生を受け入れていただいている。学生を受け入れてもらうだけでは,教育としては一方通行であり不十分である。教育の改善,向上を図るためにも,大学としてできることを地域に還元するため,地域医療の指導者への生涯学習コースを実施している。その一つに訪問看護ステーションの看護師を対象とした聴診セミナーを施行している。受講後のアンケートおよび生涯学習コースに関するアンケートを実施したので報告する。聴診セミナー参加者へのアンケートは,セミナー受講直後のアンケートと過去の参加者全員へのセミナーの効果などに関する事後アンケートの二つの内容があり,対象は前者が72 名(72/72,100%),後者が120 名(120/210,57.1%),アンケート内容は,セミナーに関する評価と今後の改善点に関するものが中心であった。結果は,セミナーに関する評価は良好で,今後の参考になる意見も多かった。また生涯学習コースに関するアンケートは,学外在宅ケア実習41 施設の訪問看護ステーションの看護師を対象とした。より実践的なシミュレーション教育プログラムを企画・開発するため,現在行っている心音・呼吸音の他に新たに8 項目(在宅緩和医療とオピオイド,栄養管理でのPEG 関連,ICLS,在宅人工呼吸器と救急処置,IVHポートの取り扱い,心電図検査,気管異物,臓器別の解剖・生理学)を提示した。結果213 名(213/446,47.8%)より回答が得られた。受講希望は,在宅緩和医療とオピオイド,在宅人口呼吸器と救急処置,栄養管理でのPEG 関連,ICLS などが多かった。大学は在宅医療の現場で患者のそばにいる地域の医療者の方々へ,大学が持っている教育資源の還元ができること,また大学がより実践的な教育効果を生む生涯教育コースを作ることが,今後の在宅医療を進めるために必要と思われた。 -
高齢者の高熱症例―治療と経過―
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
われわれは,在宅患者が高熱を来した102症例の診療記録を分析した。在宅で対症療法や抗生剤内服を行ったところ,68 症例が数日間で回復し,34症例では病院を受診,そのうち25 症例で入院加療が必要になった。検査や治療の方法が限られている在宅診療において,高齢者が高熱を来した場合には病状経過を注意深く見守り,必要に応じて病院を受診し,精査や入院加療などの対応をすることが重要である。 -
在宅医療における医薬品提供体制について―医療提供施設である薬局の機能評価―
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
高齢化が急速に進んできたことから,地域医療を担う薬局の機能や薬局薬剤師の役割が大きく変わってきた。薬局機能について,1994年に厚生省(当時)は,かかりつけ薬局の成熟度を提言し,そのなかで第4 段階の成熟度として在宅医療への薬局の参加を明らかにした。薬局が在宅医療にかかわるには,医薬分業によって医薬品を提供することになる。医薬分業は処方せん発行枚数が7 億枚を超え,分業率が60%を超えており,社会のシステムとして定着したといえる。しかしながら,注射薬の供給体制,小児科の処方せん応需や医療材料の供給に課題を残している。今回,在宅医療を推進する上で医薬品提供体制の課題について報告する。 -
在宅中心静脈栄養における,高カロリー輸液用糖・アミノ酸・総合ビタミン・微量元素液への切り替えに伴う問題点を検討した1 例
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
症例は62 歳,女性。在宅静脈栄養管理を簡素化する目的で,高カロリー輸液用糖・アミノ酸・総合ビタミン・微量元素液が一体となった輸液製剤へ切り替え,混注回数の削減を試みたが,残念ながら処方後自宅に運び込まれる梱包箱が増え,作業が増加した。箱が大きくなったために備蓄スペースが大きくなり,生活空間が狭くなった。上室,下室,小室2 個の開通が困難で,1,500 mLは輸液開始時点での重量が重く,患者の日常生活に合わなかった。有益な製剤だが,患者それぞれの生活環境で考慮しなければならない課題が多く存在する。 -
超音波検査による確実なバルーン型胃瘻交換確認法―左肋骨弓下走査によるアプローチ―
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
胃瘻の普及により,交換時のカテーテル迷入や瘻孔損傷などによる事故の報告が増加している。このため,胃瘻交換後の確認を画像診断または内視鏡などを用いて行うことが推奨されている。しかし,在宅医療の現場でX線や内視鏡を用いた検査を施行することは困難である。今回,われわれは在宅での胃瘻交換において,超音波検査によるカテーテル確認法の有用性と問題点について検討した。胃瘻患者33 例のうち,在宅で胃瘻交換を行った6 例を対象とした。4 例のバルーン型胃瘻において明瞭に確認することができたが,1 例のバンパー型は不明瞭だった。材質,形状によりエコーでの見え方が異なるためと考えられた。左肋骨弓下走査は,左側腹部から肋骨弓下に沿ってプローブを走査することで脾臓から胃穹窿部,胃内腔と連続するlow echoic areaをエコーで追いながら胃瘻カテーテルを確認する。患者の状態や条件にもよるが,バルーン型胃瘻に対して超音波検査は有用と考えられた。 -
東日本大震災から計画停電終了までの在宅人工呼吸器患者への対応の実際:今後の自然災害にいかに備えるか?
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
2011 年3 月11 日,マグニチュード9 の大地震が東日本を襲い,福島原発事故による電力需給不足のため計画停電を経験した。震度5 弱の地震があった川崎市にある当院は2011 年3〜4 月で在宅呼吸ケアをTPPV 5 名,NPPV 11 名,HOT36 名で行った。24時間人工呼吸器装着の3 名中2 名が外部バッテリーなし。地震後一部の地域に7 時間の停電があったが,幸い影響なし。さらに3 月14〜28日まで約3 時間/日の計画停電があった。今回人工呼吸器会社の協力で外部バッテリーの貸与を受け,4〜9時間の予備電力を備え,計画停電による不測の事態を免れた。今後不測の大規模停電への備えが必要である。 -
地域連携を強化した退院支援の実際―退院指導における患者・家族・地域スタッフの評価の分析―
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
在宅療養に移行する場合,当院の退院支援システムに沿い地域スタッフに介入を依頼し,患者・家族と地域スタッフも参加する退院前カンファレンスを行っている。退院前カンファレンスでは,提供しているケアが継続できるよう検討,在宅用にアレンジして入院中から実践している。今回退院前カンファレンスを2 回以上もち,当院から地域に移行できた3 事例を対象に,患者・家族の意見とケアマネジャーにケアの継続について,聞き取り調査を行い評価した。退院前カンファレンスで,ケアの検討をすることで,病院から地域にスムーズにバトンタッチができ提供しているケアの継続ができた。在宅療養に向けてアレンジしたケアが,患者・家族にとって適切であったといえる。 -
登録制による在宅支援を行う病棟における癌患者と非癌患者の比較検討
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
目的:登録制による在宅支援する病棟に入院した癌患者と非癌患者の特性を明らかにすること。方法:2009 年4 月〜2010年3 月に入院した患者254名を対象に観察研究を実施した。調査項目は属性,生活機能,医療処置・介護指導数,介護状況などであった。分析は,対象を癌(以下,癌群)と癌以外(以下,非癌群)の2 群比較を行った。結果:2 群比較から,癌群は,男性が多く(p<0.01),平均Barthel Index得点がともに高く(p<0.01),要介護度が低く(p<0.01),平均在院日数(p<0.01),平均入院回数ともに少なく(p<0.05),再入院時の入院までの日数,登録から入院までの日数はともに短く(p<0.01),死亡退院割合が高かった(p<0.01)。癌群は薬剤数(p<0.01),麻薬使用(p<0.01),鎮静処置(p<0.01),看取り指導(p<0.01)を受ける割合が多かったが,食事ケア(p<0.05),経鼻胃管(p<0.01),胃瘻(p<0.01)を受ける割合,食事以外の身体介護,褥瘡,転倒指導を受ける割合,介護状況に差は認められなかった。結論:癌患者が病院に登録された時点から,在宅看取りを見通した在宅医療・支援が必要であるとともに身体介護や予防的支援の必要性が示唆された。 -
保険薬局の在宅緩和医療における役割
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
当薬局では,13 年間に69 名の患者に在宅患者訪問薬剤管理指導を行ってきた。home parenteral nutrition業務を開始後は終末期のがん患者にかかわる機会が増えた。在宅患者訪問薬剤管理指導は患者や地域医療チームに貢献するために他職種と連携を図り,医学的・薬学的見地に基づいて行ってきた。外来通院中のがん患者に対しては,疼痛日記や医療用麻薬説明書の配布および服薬指導マニュアルの作成により,導入前より適正な処方が増加してきており,一定の成果が上がったと考えている。しかし,保険薬局が在宅緩和医療にかかわる上で診療報酬や調剤報酬上の問題,低い調剤報酬による薬局経営の圧迫,医療用麻薬の不良在庫の多さ,および薬剤師に対する患者や地域医療チームの認識度の低さなど様々な問題が山積している。この問題を克服することにより,薬剤師が患者や地域医療チームにさらに貢献できると考える。 -
ストロンチウム-89投与,くも膜下フェノールブロック施行で自宅に帰ることができた進行尿膜管癌の症例
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
39 歳,男性。尿膜管癌多発骨転移に伴う疼痛が主訴の症例。2008 年3 月,膀胱部分切除。9 か月後,CTで多発肺転移が発見された。以後,化学療法(methotrexate/5-fluorouracil,irinotecan,taxotere,gemcitabine)を施行するも増悪し,肝,脳,骨転移が出現。両肩,腰,臀部の痛み,両側下肢の痺れ,右足首より先の全知覚脱失と運動障害が出現,床上仰臥位しか取れなくなり入院となった。MRI では多発脊椎転移,脊椎変形による腰部脊柱管狭窄と馬尾の圧迫を認めた。フェンタニル貼付,アセトアミノフェン,ガバペンチン,パロキセチン内服で疼痛コントロールが不良であった。ストロンチウム-89投与,くも膜下フェノールブロックを行ったところ疼痛は改善し,一時期自宅に帰ることが可能であった。 -
硬膜外皮下ポートによる在宅でのがん疼痛管理の検討
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
持続硬膜外ブロックは全身的な薬物療法と比較し,鎮痛効果が強く,眠気などのオピオイドによる副作用も少ないが,カテーテルの長期留置では感染防止のために皮下ポートの造設が必要になる。今回,2004 年8 月〜2010年12 月まで硬膜外皮下ポートを造設した125症例のなかで,在宅ケアに移行できた30 例を検討した。この30 例は全例ペインスコアの改善を認めたが,1 例にポート感染が疑われた。在宅医が感染を予防し,安定した疼痛緩和を得るには,在宅医とポートを造設した病院の間で共通の指針と緊密な連携が必要である。 -
転移性脊椎腫瘍を契機に肺癌と診断され緩和的放射線治療を行った3 症例
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
転移性脊椎腫瘍は骨腫瘍のなかで最多であり,疼痛・病的骨折・麻痺を惹起し,患者のactivity of daily living(ADL)に大きくかかわる。今回,転移性脊椎腫瘍を契機に肺癌と診断され,緩和的放射線治療を行った3 症例を経験した。全3 症例に薬物療法と放射線療法を施行しnumerical rating scale(NRS)上の疼痛改善は認められたが,performance status(PS)・ADLの改善は認めず,原病進行や合併症のためPS・ADLは悪化した。骨転移を契機に癌と診断される症例では,すでにPS不良例が多くADLの改善につながる治療が困難である。骨転移の治療は疼痛管理とビスホスホネート・放射線・ストロンチウム・骨セメント・手術・装具療法,また今後に期待される分子標的薬(デノスマブ)など多岐にわたる。骨転移を来しやすい担癌患者では,各専門科と密接な連携をとって集学的な治療を行うことで,早期の骨転移発見とADLやPS の改善に結び付く治療が可能になると考えた。 -
治療初期からの病診連携と外来および病棟緩和ケアチーム,訪問看護ステーションとの連携にて在宅で看取ることができた直腸癌患者の1 例
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
癌に対する化学療法の進歩で生命予後が延長するようになった一方で,終末期医療の観点からは,緩和ケアチーム介入の時期や療養場所の選択についての判断が難しくなった。そこで,院内緩和ケアチームの早期導入と静岡市がん診療地域連携協議会(S-NET)による地域連携体制にて,スムースに在宅移行して在宅で看取った症例を報告する。患者は50 歳代,女性。直腸癌の診断で根治手術施行し,S-NET 登録して退院した。3 か月後,再発を確認して外来化学療法を開始した。その11 か月後,外来緩和ケアチームが介入した。その6 か月後,胸水貯留にて入院して病棟緩和ケアチームが介入した。地域連携体制を整えて在宅ケアへ移行した。退院後も継続して当院の外来フォローを行った。約2 か月後,自宅で永眠された。外来化学療法中からの緩和ケアチーム介入,2 人主治医体制と訪問看護による安心感が在宅ケアに有効であったと思われた。 -
婦人科がん患者の在宅ホスピス緩和ケア
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
婦人科がん患者の臨床的特色を明らかにしてケアの在り方の参考とするために,当院で2003 年7 月〜2010 年6 月の間に在宅ホスピスケアを受けて在宅死した婦人科がん患者37 例(非婦人科がん患者762 例を対照)に対する検討を行った。患者の年齢においては統計学的有意差がみられたが,在宅ケア期間や在宅死の頻度には有意な差がなかった。オピオイドの使用頻度は,非婦人科がんとの統計学的有意差はみられなかったが,腎瘻管理の頻度は非婦人科がんよりも有意に多かった。在宅ケア期間が15 日以上の患者に対するケア中のフォーカスリストの分析では,対照群との有意差はなかった。以上により,婦人科がん患者の在宅ホスピスケアは他領域のがんと比較して,年齢が有意に低く在宅期間は短い傾向にあるため,これらの点を配慮したケアの組み立てが必要である。また,施行頻度が多い医療処置のなかにはやや専門性が必要なものがあるため,在宅医がその手技を取得するか,専門医の支援が必要である。 -
泌尿器科がん患者の在宅ホスピス緩和ケア
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
泌尿器科がん患者の臨床的特色を明らかにしてケアの在り方の参考とするために,当院で2003 年7 月〜2010 年6 月の間に在宅ホスピスケアを受けて在宅死した泌尿器科がん患者62 例(非泌尿器科がん患者737 例を対照)に対する検討を行った。患者の年齢,性別,在宅死の頻度には統計学的に有意な差がなかったが,在宅ケア期間は長い傾向にあった。オピオイドの使用頻度は,非泌尿器科がんとの統計学的有意差はみられなかったが,在宅酸素療法,腎瘻管理,膀胱留置カテーテルの施行頻度は有意に多かった。以上により,泌尿器科がん患者の在宅ホスピスケアは他領域のがんと比較して,年齢,在宅期間などに有意な差はなかったが,やや専門性が必要な医療処置で,施行頻度が多いものがあるため,在宅医が手技を取得するか,専門医の支援が必要である。 -
かわごえ緩和ケアネットワーク(Palliative Care Interactive Network in KAWAGOE: PINK)による地域連携
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
2007年に施行されたがん対策基本法では,基本理念のなかに「本人の意向を十分尊重してがんの治療方法等が選択されるよう体制を整備する事」と「がん患者の療養生活の質の維持向上」がうたわれている。しかし,対象患者の特殊性や各施設における対応範囲のばらつきにより,上記を満たすための緩和ケアにおける実務的な地域連携は困難であった。そこで,がん診療連携拠点病院である当センター,市中病院,在宅療養支援診療所,大学薬学部の有志が,かわごえ緩和ケアネットワーク(Palliative care Interactive Network in KAWAGOE: PINK)を発足した。主たる活動は,年2 回の全体集会(地域緩和ケアカンファレンス,各施設の活動報告など),日本対がん協会と地域の実行委員会が主催するリレーフォーライフ川越での市民フォーラム,がんサロン(患者・家族・遺族会),メーリングリストによる情報交換や症例検討などである。本活動により,地域の実務担当者が直接連携できる有機的なネットワークが構築された。 -
頭頸部がんの在宅緩和ケアはできるのか?
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
頭頸部がん患者の緩和ケアの特徴である症状の特異性と対処を理解し,専門医との連携協力体制があれば,頭頸部がんの在宅緩和ケアは一般病院・診療所でも対応は可能である。 -
在宅終末期医療充実のための緩和ケア研修会
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
当院は2008 年より,がん診療にかかわる医師のための緩和ケア研修会を開催してきた。地域の緩和ケア充実のために,医師だけでなく,コメディカルスタッフも研修会に参加できるように工夫した。参加者は毎回60 名を超え,内訳は院内医師20%,院内看護師24%,診療所などの医師13%,地域の薬剤師12%,他施設の看護師17%となっており,内容については90%以上が満足,難易度が高いと答えていたのは8%のみであり,多くの受講者に満足度の高い研修を行うことができた。 -
緩和医療における胃瘻適応の標準化に向けて
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
緩和医療における胃瘻の適応は十分に論議されていないのが現状である。内視鏡やデバイスの進化により従来は不可能だった症例も安全に胃瘻造設が行えるようになった。胃瘻はがん患者の在宅療養に非常に有用なツールの一つである。緩和医療における胃瘻の適応は引き続き論議されるべきテーマと考えられる。当院においての適応は, 1.必要な栄養・水分を自発的に摂取できない(通過障害に加え口腔内疼痛も含む), 2.消化管吸収機能正常, 3.生命予後予測4週以上(+悪液質ではない), 4.本人の意思としている。 -
がん治療中の退院,転院支援,調整を行う際壁となる問題―老人性うつ状態の時(精神腫瘍医の立場から,第二報)―
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
がん治療中,緩和ケアチームに患者が紹介される機会が増えてきた。終末期に近い状況下で,患者がうつ状態になった場面では患者の家族も動揺しやすく,療養場所の一つとしての在宅生活を,「より長く」めざすためにはきめ細かい対応,早期の発見,早期の対応が必要となる。がん対策推進基本計画に基づき,当院でもがん相談支援センター,がん緩和ケアチーム(ともに2009 年6 月開設)に多職種のスタッフを配置,チームでかかわり,入院中の患者の意向に沿うようshared decision makingを繰り返しながら在宅への試みを検討中である。実際の問題点として, 1.患者の精神的うつ状態のため,うつ特有にみられる能力の低下はないものの,低下しがちな自己評価,時間のかかる自己判断などで,入院から在宅に移行できなかったり,移行のタイミングが遅くなりやすいことを経験するようになった。がんをもつ「うつ」のうち,治療中の薬剤に起因する主なものはステロイド,インターフェロン製剤,降圧剤,女性ホルモン剤,抗ヒスタミン薬,抗菌剤などの有害事象による出現頻度が非常に高いものであるとともに,症状を改善しやすいことがわかっている。なかでもよく使われるステロイドは服用後平均して10 日経過後,5%の患者にプレドニゾロン換算40 mg/日に発現リスクが高いとされている。薬剤起因性の場合は減薬で意外と早く症状緩和ができるが,通常のうつの場合,抗うつ剤を服用してから作用に先立って副作用が出現する可能性があることや効果発現までに2〜4 週間かかることも踏まえなければならず,また,うつ状態では意思決定を先延ばしにしたほうがよいともいわれており,早急さを要する急性期の緩和医療では検討課題の一つである。決定に時間がかかり,結果的には在宅に復帰はできたが,短期間で終わってしまっては反省にならないため,うつを見逃さず適切な対応をするためには常日ごろからのきめ細かい観察が望まれる。 -
在宅ケアを続ける上で支障となりやすいせん妄について―精神腫瘍医の立場から(第二報)―
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
2012年,施行から5 年が経過し,改訂について準備されているがん対策基本法とがん対策推進基本計画(図1)の精神に基づいてすべてのがん患者,第二の患者である家族に対して治療の初期段階からの対応が求められている。わが国では年間100万人の死亡数のうち,がん死は1/3,将来的にこの比率はもっと上昇することが予想されている。療養場所としての皆が希望する終末期には,在宅でという希望は実際10%も満たしておらず,種々問題となっている。それらを改善するために,多職種によるチーム医療の大切さは指摘されている。当院でも緩和ケアチーム,がん相談支援センターを2009 年に位置付け,相談を継続中である。相談内容は多岐にわたり2010 年の当学会でも報告したが,精神症状としてせん妄を呈した場合,せっかく在宅医療を行いながら中断せざるを得ないことが度々認められている。当初の方針の変更がなされないよう,せん妄症状に遭遇した際の対応について検討した。 -
院内看護師を対象にした在宅医療勉強会の効果の検証―研修前後のアンケート調査より―
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
在宅医療支援・推進室は,病棟看護師の退院支援や在宅医療の知識を深める目的に「在宅医療勉強会」を2006 年から開催し,2010年度では開始前後に学習内容の理解度と到達度の調査(自己評価質問紙)と,各回勉強会終了後に講義内容の理解度の調査(勉強会ごと質問紙)を実施した。いずれの項目も勉強会後の結果が有意に向上していた(p<0.05)。自由記載から, 1.地域と連携した事例から他職種のかかわり方を学べたこと, 2.看護師の事例にファシリテーター(訪問看護師)から直接アドバイスを受けられたこと, 3.講師の経験談より地域医療を実感したことを抽出した。これは地域医療者と協働した効果と考える。一方で,病棟看護師らが退院支援で困難と感じていることに「医師や他職種の連携」,「患者・家族間の異なる意向のかかわり」,「退院準備のタイミング」と「社会資源,保険福祉制度」などの知識不足の指摘があり,これらのニーズを活かした勉強会となるよう検討を重ねていきたい。 -
テレビ電話によるコミュニケーションが認知症高齢者の認知機能と介護負担軽減に与える効果
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
われわれはテレビ電話(Skype)を用いた定期的な交信が,在宅生活を送っている認知症患者とその家族介護者に与える影響について検証を行った。介入群8 家庭に週1 回30 分の交信を12 週間継続し,患者には認知機能やADL,家族にはうつや睡眠時間などの評価を介入直前と12 週後に行った。また対照群8 家庭との比較を行った。結果は介入群家族で睡眠時間の改善が有意にみられた。また介入群の患者はHDS-R で改善傾向がみられた。アンケートでは介入群の患者は交信を楽しみにしており,介護者からも情報収集に役立つなどの声が聞かれ,テレビ電話によるコミュニケーションが患者の意欲を増し,認知機能の改善と家族へのよい影響に有用であることが明らかになった。また,2 年間に3 回の介入を行った被験者では介入時には認知機能や介護負担が改善するが,介入後数か月で数値が減少するという現象がみられたことから,継続した介入の必要性が示唆された。 -
テレビ電話を用いた定期的な介入が糖尿病患者の血糖コントロールに与える影響
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
在宅療養中の糖尿病患者を対象に,看護師によるテレビ電話を用いた定期的な交信が患者・家族の食事や運動,服薬などの自己管理をサポートし,血糖コントロールにどのような影響を与えるかを検討した。交信は週1 回,30 分程度の相談で,3か月間継続した。対象者は男性4 名,女性6名であった。対象者プロフィールは平均年齢63±2 歳,平均体重69.0±5.6 kg,平均罹病期間14±2 年,平均FBG 134.7±12.5 mg/dL,平均HbA 1c 7.4±0.3%であった。介入3 か月後,全員の平均HbA 1c値は有意に減少し6.8±0.2%であった(p<0.005)。また,介入3 か月後の体重も有意に減少した(p<0.0005)。食事を中心とした自己の生活について毎日振り返り,週1 回看護師とともに確認することで生活習慣に対する意識が高まり,行動の変化が生まれ,HbA 1c,体重の有意な減少につながったと考えられた。 -
東京都在宅療養支援診療所の活動状況と死亡場所の経年変化に関する検討
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
東京都在宅療養支援診療所の活動状況と死亡場所の経年変化を検討した。東京都在宅療養支援診療所数は1,166 件(2008年)から1,246件(2010年)に微増していた。東京都在宅療養支援診療所が2009 年7 月〜2010 年6 月に診療した合計患者数は前年の24.4%,自宅での看取り数は前年の9.3%増加しており,在宅療養支援診療所による在宅療養支援が進んでいることが示された。 -
在宅患者が導尿を行うに当たり抱いた不安や経験したトラブルの有無とその内容
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
本研究では,在宅で導尿を実施している患者が,導尿を行う際に抱いた不安や経験したトラブルの有無と内容を明らかにすることを目的として,在宅導尿患者25 名に調査用紙を用いた聞き取り調査を行った。調査結果は一文章一意味記録としコード化し,カテゴリー化した。その結果,在宅で導尿を行う70〜80%の患者が,不安を抱いたりトラブルを経験していた。在宅患者の導尿の開始と継続に当たり何らかの支援が必要である。今後は,不安やトラブルなどの多くを占めていた内容を中心に不安軽減や問題解決ができるように,外来受診時に支援していくことが求められることが明らかとなった。 -
在宅導尿患者における使用物品の自己購入状況とその負担感に関する実態
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
本研究は在宅導尿患者における使用物品の自己購入状況とその負担感を明らかにすることであった。A県内の泌尿器科外来に通院中の在宅導尿患者26 名を対象に,自己作成質問票による聞き取り調査を実施した。結果,自己購入者は17 名(65.4%,男性13 名・女性4 名),平均年齢は57.9歳であった。自己購入物品は,「畜尿バッグ」,「注射器」から「カテーテル」,「ティッシュペーパー」など多岐にわたっている。また,自己購入の手間を7 名41%が感じると回答し,経済的負担を8 名47%が感じると回答した。自己購入金額には400 円から12,000円と個人差が大きく,負担額の違いと経済的負担感に関連があり,「毎月のことだから」,「一生必要だから」など負担を感じていた。 -
在宅導尿患者への医療機関からの物品供給状況に関する研究
38巻Supplement I(2011);View Description
Hide Description
目的: 在宅導尿患者に対する医療機関からの物品供給状況の実態を明らかにすること。方法:医療機関4 か所と在宅導尿患者26 名に調査用紙に基づく聞き取り調査を行った。調査項目は,医療機関からは物品の供給状況とその費用など。患者からは患者背景と物品使用状況などであった。結果: 1.医療機関から供給されているのは,在宅導尿患者が使用している物品種類の総数のうち53.0%であり,患者自身が購入している物品があること,処方による供給がみられることが明らかになった。 2.供給量や医療機関の費用負担額の実態から,受診時にまったく供給がない者がいる反面,供給種類・量が多いため費用負担額が高く,在宅自己導尿指導管理料の70%近くを占める者がいるなど,個人差が大きかった。考察:物品供給システムを確立するに当たり,医療職への物品供給の仕組みの周知徹底や供給内容や量にかかわらず一律の管理料である現診療報酬システムの妥当性について,今後検討していく必要があると考えられた。
-