癌と化学療法
2012, 39巻Supplement I
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特集【第23 回日本在宅医療学会学術集会】
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在宅導入や終末期の看取りに向けた意思決定の障壁を克服するために病院が果たすべき役割―End-Of-Life Care Teamの活動からみえてくるもの―
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description在宅導入や終末期の看取りに向けた難しい意思決定の障壁を克服するために,病院が果たすべき介入方法は明らかにされていない。そこで,非がんも対象に加え高齢者ケアも融合させたEnd-Of-Life Care Teamの行った,患者の自律を支える体系化された意思決定支援介入について振り返るなかで,介入方法のあり方について考察した。介入後の在宅看取り率の検討などから,End-Of-Life Care Teamを介入母体としたポリシーの一致した協働は,終末期の難しい意思決定に関する障壁の克服に貢献し得る可能性が示唆された。 -
在宅ケアにおける「家庭機能評価」の検討
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description安定した在宅ケアを行うには,患者・家族の「家庭機能評価」を行う必要がある。家庭機能の量的評価として,衣食住環境,患者状態,家庭機能の三次元の評価を示した。簡易な量的評価として,介護力を在宅介護スコアで,家族機能評価をFACESKG Ⅳで評価する方法を提案した。患者・家族・家庭の質的評価には,ナラティブ・メディスンとエスノグラフィーが有用である。急速な高齢化と孤立化による社会構造の変化が著しい今日の日本社会で在宅ケアを推進するには,患者家庭の文化人類学的研究が今後重要と考えられた。 -
在宅医療のIT 化についてiPadを用いた患者情報共有における当院の試み―在宅医療ネットワークの構築をめざして―
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description病院内では電子カルテ化などinformation technology(IT)化は整備されつつあるが,在宅医療においてはまったく皆無であり,患者情報へのアクセスは紙カルテのみで,それを人数分もち歩くなど煩雑さが常に伴う。そこでわれわれはiPadを用いた患者情報共有システムを開発し,当クリニックで導入した。これを導入することで,いつどこにいても患者情報にアクセスすることが可能になり,またクリニックどうしの画像情報もリアルタイムに閲覧でき,スムースに指示をだすことが可能となった。このシステムを他のクリニックにも導入することができれば,在宅医療のネットワークを構築することも可能となる。今後の課題として,薬剤師,介護福祉士などの他業種や施設,家族との情報共有が可能となれば,在宅医療のIT 化がよりいっそう発展していくものと思われる。 -
おひさまシステムを用いた地域医療連携の報告―患者情報―ITによる地域共有化をめざして―
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description社会の高齢化と終末期医療に対する関心に伴い,住み馴れた地域で療養を行う在宅医療のニーズは今後も高まることが予想される。しかし,これら在宅医療を担うのは,少人数かつ小規模の診療所や訪問看護ステーション,調剤薬局,その他各種事業所であり,互いの連携業務や各種報告書作成が煩雑なだけでなく,正確な情報を共有することすら困難な状況にある。また,医師のみが記載する電子カルテの診療録は,連携する複数・他職種の関係者が閲覧・情報共有するには適していない上に,これまで診療録に記載されることのなかった細かな情報,たとえば,患者宅の間取りや家族の思い,介護サービスの利用状況などこそが在宅医療の他職種連携には非常に重要となる。当初,医療法人内の情報共有システムとしてスタートさせた「おひさまシステム」を地域連携システムとして用いるわれわれの取り組みを紹介し,IT を用いた地域連携の問題点と今後の課題について報告する。今後,さらなるシステム運営の効率化と情報共有の精度向上のためには,システム上だけではない関係者どうしの顔のみえる関係性の維持が重要である。 -
電子カルテ稼働自治体急性期病院でのIT活用による診療情報の地域共有化の試み
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description当院では2002 年電子カルテを導入,2010 年には地域医療ネットワークシステムを稼働させ,地域との診療情報の共有化を始め約2 年が経過したので,その取り組みと課題を報告する。当院の仮想専用線(virtualprivate network: VPN)装置を配した専用サーバーと地域の医療機関に設置した電子証明書発行の専用端末を結び,市内外50施設に設置した。医療機関側で患者自身の同意を文書(病院指定様式)で取得し申請すれば,地域ネットワークサーバーへ指定患者の情報が移行され,医療機関側から1 年間アクセスでき,更新は可能である。投薬注射,各種検査結果関連と医師カルテ,退院時サマリーなどがアプリケーション単位で閲覧でき,月平均約80 例の登録やアクセスがある。本システムはリアルタイムに情報が得られ継続した診療に役立つが,閲覧のみの共有化であり,連携パスはシステム上存在せず,求められる連携に応えきれない状況にある。 -
在宅医療へスムーズな移行をめざした医療連携
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description多くの人々に在宅医療を正しく認識してもらうため,急性期病院,ホスピス,療養型病院での診療への参加,セミナーなどの開催を行っている。当クリニックでの在宅診療期間を前期と後期に分けて検討したところ,診療期間の延長を認め,そういった活動の一つの成果と考えられた。かかりつけ医や在宅医を含めた医療連携を充実させることで,急性期病院の負担軽減と医療の精度強化を期待できる。在宅医療では多職種連携が要であり,患者と医療関係者に在宅医療を正しく認識してもらうことも連携の一つの意義となる。今後は福祉施設にも参加いただき,秋田市独自の在宅ネットワークをさらに充実させ高齢化社会を乗り切らなければならない。超高齢化社会への対策は世界のモデルケースとなり得るはずである。 -
栄養管理における地域連携とNST ネットワーク構築への10年間の取り組み
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description当院栄養サポートチーム(NST)は地域連携およびNST ネットワーク構築を念頭に置いた活動を展開し,稼働より10 年が経過している。栄養管理の地域連携を推進するため下記の①〜④を柱として退院後の栄養管理の継続に取り組んできた。① かかりつけ医・近隣施設・病院との情報共有の場としての地域合同勉強会。② より広域的な施設間情報共有目的での公開NST 大会。③ 共有化のため,輸液・経腸栄養に関するNST マニュアルの作成,送付。④ 継続した栄養管理が必要な患者に関する栄養管理サマリーの作成,提供。また退院後の栄養管理の充実のため,栄養管理サマリー提供後の栄養転帰調査の実施なども行った。この結果,地域レベルでの栄養管理に対する意識・知識の向上や受け入れ施設・患者・家族の不安の軽減がみられた。また,追跡調査により当院での栄養管理に対するフィードバックが推進された。今後も栄養管理に関する地域連携をより広域的に発展させていく必要があると考えられる。 -
終末期癌患者の在宅医療を支援する病院と診療所の良好な連携構築―緩和ケア提供に関するアンケート実施による対応力把握の有用性―
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description当院では外来,入院,訪問診療,訪問看護で終末期癌患者への緩和ケアを提供してきた。2011 年6 月に緩和ケア病棟を開設後,新規患者数は急増し,患者の居住範囲も広がり,自院だけでは十分な訪問診療提供が困難となり,状態悪化後も在宅療養継続を希望する患者に応えるため,地域の在宅支援施設との連携が重要となった。このため各診療所の緩和ケア提供能力の把握,連携の強化を目的とし,緩和ケア提供に関するアンケート調査を実施した。現在,連携施設は25 施設となっており,当院初診後の往診対応は8%から14%に増加し,在宅死亡率は10%から13%となった。往診施設の対応力により,患者の在宅療養継続期間は影響を受ける。在宅緩和ケア施設に関する情報の把握,各施設の緩和ケアスキルの向上は,在宅療養継続に不可欠であり,患者を受け入れる病院は,在宅患者の急激な状態変化に対応し,確実にバックアップすることが重要である。 -
在宅療養者の薬に関する諸問題
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description急速に高齢社会を迎えたわが国では,医療提供体制の見直しが進められている。その結果,医療は入院,外来,在宅医療に機能分化した。そのような背景のなかで,薬局の機能も急速に変化してきた。今回,在宅医療における医薬品の供給に関する課題について報告する。 -
訪問看護における診療報酬・介護報酬の同時改定について
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description訪問看護の現状を紹介し,2012年度の同時改定から今後の訪問看護の強化すべき方向を考える。特に在宅移行支援,医療ニーズの高い在宅療養者の支援強化が重要であり,看護と介護職員との一体的なケア提供が求められる。 -
在宅ホスピス緩和ケアにおける高齢者問題
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description在宅ホスピスケアは,単なる病院医療の延長ではなく,家でなければできないホスピスケアである。しかし,本邦においての人口の高齢化に伴い,在宅ホスピスケアの提供だけでなく,独居,老老介護および認知症といった社会的な問題を有する症例に直面することがある。今回,262例の訪問診療を行った症例を検討したので報告した。全体では,在宅看取り率は69%。高齢かつ認知症を有する症例は入院を選択される傾向にあったが,高齢かつ独居症例では在宅ケアを選択されることが多い傾向にあった。老老介護の症例では58%が入院を選択されていた。独居,老老介護および認知症の現状をさらに詳細に検討することで,今後の在宅ホスピスケア,在宅看取りの普及に努めていきたい。 -
腹水緩和における腹水濾過濃縮再静注法(CART)の在宅での有用性
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description腹水で苦しむ患者において腹水濾過濃縮再静注法(cell-free and concentrated ascites reinfusion therapy: CART)は,有用な緩和手技である。CARTを在宅で普及させるためには,在宅医療連携が必要不可欠と考える。 -
地域がん診療連携拠点病院におけるがん在宅医療と地域連携の現況
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description公立甲賀病院は,2008 年2 月に地域がん診療連携拠点病院に指定され活動している。2011 年度から地域医療部のなかに在宅医療室を設置し,訪問診療担当非常勤医師が在宅診療を行いがん患者もみている。この結果,在宅におけるがん患者診療は増加したが,看取りの増加には至っていない。在宅看取りを増やすためには院外との協力が不可欠と考えられたため,地域におけるがん在宅緩和医療推進会議を創設し,有益な意見交換がなされた。今後は院内外ともに情報共有,共同作業が不可欠であり,これに向けた環境作りが必要である。 -
当院ホスピス病棟の運用システム―在宅療養を支えるには―
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description多くの終末期がん患者がホスピス・緩和ケア病棟での療養を希望するが,実際に利用できる患者は非常に少ない。当院は,「なるべく多くの方に緩和ケアを提供する」ことを目標とし,「一般病棟も含め緩和ケアの場とする」,「ホスピスへの入院はホスピスを希望する方のなかで最も予後予測の悪い方を優先する」を実践してきた。2007年4 月〜2011年3月の集計で87%の患者が希望するタイミングで当院に入院できた。地域の医療資源を考慮してホスピス病棟の運用を工夫することで,終末期がん患者はより多くの時間を自宅で過ごせる可能性があると考える。 -
退院・居宅支援におけるMSC 看護師の役割について―2010年度の活動分析より―
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description特定機能病院である当院のメディカルサポートセンター(MSC)では,医療ソーシャルワーカー(MSW)と看護師が協働し,入院患者への退院支援,外来患者への居宅支援を行っている。MSC看護師の役割は,患者・家族の居住地となる地域の医療・福祉情報を集約すること,医療者が退院後の生活についてイメージできるようにかかわること,がん患者が療養方法や場所について意思決定できるように,地域の医療や介護サービス,ホスピス・緩和ケアなどに関してより幅広い情報を提供することである。 -
ITを用いた双方向性ケアシステムによるアルツハイマー型認知症患者服薬管理支援
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Descriptionわれわれはテレビ電話を用いて認知症患者の服薬コンプライアンスの向上を目的に研究を立案し,現在3 名の患者に介入を行っている。本研究では,テレビ電話により服薬確認が可能な貼付剤であるアルツハイマー型認知症治療薬リバスタッチパッチを使用している患者に焦点を当て,介入効果を検討した。具体的には,患者の治療効果や皮膚症状,介護者の使いやすさなどをモニターすることにより,服薬コンプライアンス・治療効果の向上をめざしている。特に,適用部位の皮膚症状に注目し,リバスタッチパッチの継続率を高め,quality of life(QOL)を上げることを目的としている。また介護者に対し,介護への負担や不安を傾聴することにより,介護負担感や不安を軽減させることも期待される。 -
在宅医療の質評価尺度(HCSC-J)の有用性に関する検討
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description開発段階にある在宅医療の質評価尺度(HCSC-J)を用いて,在宅療養支援診療所(A施設,B 施設)のサービスの質評価を行い,本尺度の有用性を検討した結果,HCSC-Jの下位尺度合計得点と在宅療養の総合評価に有意な相関がみられた。在宅医療の質評価尺度として開発段階にある六つの下位尺度15 項目で構成されたHCSC-J は,在宅医療の質を評価する上で有用であることが示唆された。 -
在宅医療推進における円滑な情報共有システムを導入した新たな多職種連携の試み―千葉県柏市における在宅医療の推進―
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description高齢社会の到来とともにわが国の医療政策が問い直されており,医療・介護提供体制を今から大きく進化させていく時期にきている。そこには,今までの治すだけの医療から「病人である前に『生活者』なのである」という理念の下に,個々人の生活に密着し,住み慣れたまち(地域)全体で生から死までを地域全体で診て(みて)いくという地域完結型の医療への進化,そして機能分化型のシステム型医療への転換が必要とされている。この象徴的存在となるのが「在宅医療」である。また,今まで以上に円滑な多職種連携と情報共有システムが求められており,在宅医療を担うかかりつけ医や在宅医の専門医,多職種が周りでサポートし,生活者でもある患者を中心にしてシームレス(切れ目のない)な現場を作り上げる必要がある。しかし,まずは医療・介護に携わっている一人一人の医療人たちの意識改革があってこその転換であろう。 -
皮膚疾患により課題であった刺入部管理対策としてブロビアックカテーテルを留置し在宅退院となった症例
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description当院栄養サポートチーム(NST)内輸液チームでは,感染制御チームと共同で輸液管理の院内標準化に努めている。今回,刺入部皮膚の状態が悪く,マニュアルに沿った管理が困難な症例に対し,刺入部管理が簡便なブロビアックカテーテルに変更し在宅退院できた症例について報告する。症例は50 歳台,男性。原発性アミロイドーシスで入院後,嚥下障害・消化管障害を発症,中心静脈栄養(total parenteral nutrition: TPN)が選択された。当初は感染や皮膚トラブルを繰り返しながらも刺入部は画一的なマニュアル管理を行っていた。しかし,既存マニュアルではめざす栄養治療が行えず,ブロビアックカテーテルでの管理を推奨した。変更後は個別管理に加え,原疾患の改善もあり,皮膚障害は改善し,カテーテル関連血流感染を起こさず経過し経口摂取が可能となった。マニュアルは画一的な管理を強制するものではなく,患者の個別性を評価し,マニュアルで対応困難な症例には考えられる最善の方法を選択することが必要である。 -
在宅でフェンタニル製剤から塩酸モルヒネ持続皮下注射へ換算量よりも少量のオピオイドローテーションにより長期在宅症状管理が可能であった2 症例
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description在宅にてフェンタニル製剤から塩酸モルヒネ持続皮下注射へ換算表よりも少量のオピオイドでローテーションを行い疼痛管理に成功した2 症例を経験したので報告する。医療者が頻回に患者の状態を確認することができない在宅症例では,換算量のとおりにローテーションすることはオピオイドの過量による副作用の発見が遅れるリスクを伴う可能性も示唆された。 -
硬膜外カテーテル/皮下ポート在宅管理中にMRSA敗血症を来し,在宅ケアを中止したstage Ⅳb期膵癌の1 症例
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description硬膜外ブロックは全身的な薬物療法と比較して,鎮痛効果が高く,眠気などの副作用が軽減され有益であるが,カテーテル長期留置に伴う感染症予防のために皮下ポートの造設が必要となる。stage Ⅳb 期膵癌患者に硬膜外皮下ポートを造設することで,在宅療養の継続が可能となり,著明なnumerical rating scale(NRS)の改善をみた。しかし,本症例は硬膜外カテーテルが感染源となるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus: MRSA)による敗血症を発症し,在宅ケアを中止せざるを得なくなった。硬膜外カテーテル/皮下ポート施行時には病院医療者と在宅医療実施者間でのガイドラインの策定および共有が必要となる。 -
日本バプテスト病院におけるホスピス病棟,一般病棟,老人保健施設,在宅間の緩和ケア連携の構築―ホスピス医が病院から地域へ―
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description当院では,ホスピス病棟,一般病棟,老人保健施設に加え,2009 年11 月に在宅ホスピス緩和ケアクリニック(在宅クリニック)を立ち上げ,患者・家族が望むところで緩和ケアが受けられる医療システムを構築した。2009年11 月〜2011年12 月の期間に,ホスピス科,在宅クリニックがかかわり,ホスピス病棟,一般病棟および在宅で死亡した癌患者514 人を対象とし,患者内訳,入退院状況について検討した。ホスピス病棟,一般病棟,在宅で死亡した患者は,それぞれ373 人,11人,130 人であった。病院ホスピス医も20 人の訪問診療にかかわった。病院ホスピス医も在宅クリニック医と連携して訪問診療にかかわることで,初診時に最期の療養場所が決定されていない患者や早急な退院希望にも対応しやすく,より円滑な緩和ケアの提供が可能となった。 -
越谷市における医療と介護の10年
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description現在埼玉県越谷市における介護サービス施設は充足しているが,在宅医療の中心となる訪問看護ステーション・在宅療養支援診療所は明らかに不足している。まず関連多職種による「医療と介護連携の会」を立ち上げ,お互い顔のみえる関係をめざした。参加者は毎回200名近くあり,医師の連携には市内に「物忘れ相談医マップ」を作成し,介護との連携に役立っている。連携の勉強会としては「みんなの輪」を月に一度,過去40 回開催。在宅での緩和ケアを市民に理解してもらうための講座「誰もが自分らしく生きるために」を年1 回開催している。毎回2 部構成で,第1 部は緩和ケアを中心にした講演,第2 部では多職種の人による越谷市の在宅医療の現状と対策などをシンポジウム形式で行っている。2012 年2 月には埼玉県立がんセンターなどの拠点病院から自宅へ帰る際にがん難民にならないためのがん相談窓口を開設した。 -
在宅療養支援研修会に参加した薬剤師に対するアンケート調査
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Descriptionわれわれは,在宅医療に薬剤師参画を促進する際の問題点を明らかにする目的で,在宅医療支援研修会参加薬剤師にアンケート調査を実施した。参加者累積人数284名で,参加者の勤務年数は,10 年以上の中堅クラスの薬剤師の参加者が多くみられた。在宅医療にかかわった経験ありが69%で,その主な業務は,「医薬品の患者宅への配達」と「患者宅での服薬指導」であった。在宅医療にかかわっていくのに必要な事項の質問では,「他職種間での連携」,「幅広い知識」そして「患者や家族とのかかわり」との意見が多かった。現在の課題として,「診療報酬が少ない」,「薬剤師不足」,「他職種連携経験不足」など多方面にわたっていたが,在宅医療での薬剤師参画の必要性に対する認識が認められた。これらの問題点の解決には,地域薬剤師が主体となり,医師会などとの連携体制の構築や定期的な研修会の開催が必要である。 -
外来化学療法センターにおける手足症候群に関する検討―薬剤師による内服管理と支持療法の検討―
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Descriptionカペシタビン(ゼローダ)は結腸がん,直腸がん,乳がん,胃がんに効果期待される5-FU 系経口抗がん剤1,2)で,しばしば手足症候群(hand-foot syndrome: HFS)を発症し,薬剤投与を中止せざるを得ない有害事象を発症する3)。今回外来にて,通院治療中患者に対する有害事象であるHFS に対する支持療法の有効性について,薬剤師による検討を施行した。カペシタビン治療中の患者はHFS の軽減,予防効果のあるvitamin B6(pyridoxine)を内服加療している。治療開始時から保湿剤を使用している患者では,HFS の発症は軽度から中程度であった。薬剤の減量や休薬期間の適切な確保に加え,早期からの皮膚の保湿により,外来で抗がん剤治療を行うがん患者の生活の質の向上が望まれる。 -
調剤薬局薬剤師による高齢者専用賃貸住宅における緩和ケア活動
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Descriptionヤナセ薬局では在宅医療に積極的に介入している。今回,訪問薬剤管理指導を行った患者のうち高齢者専用賃貸住宅(高専賃)に入居している患者に対する活動について検討した。2009年6 月〜2012年2 月に入居し,訪問薬剤管理指導を行った117 名を対象とし,施設における活動内容とその効果について検討した。対象患者のうち74 名(63%)は終末期がん患者であり,筋萎縮性側索硬化症7 名(6%),筋ジストロフィー2 名(2%)と難治性疾患も多く含まれていた。施設における活動内容は,「医師の回診への同行」,「処方設計支援」,「カンファレンスへの参加」,「訪問看護師に対する医薬品情報の提供」などであった。処方設計支援における効果としては,「喀痰が多量な終末期がん患者に対する輸液量の減量の提案」,「腎不全患者に対するオピオイドの選択方法」,「消化管閉塞患者の症状緩和に対する薬剤の選択方法」などであり,いずれの場合においても症状の緩和につながった。 -
開業医および多職種を対象とした在宅医療研修の試行および評価―千葉県柏市における在宅医療推進の取り組み―
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description2011年5 月〜10月の間,柏市医師会の推薦を受けた開業医6 名を中心に,千葉県柏市内の歯科医師,薬剤師,訪問看護師,介護支援専門員など計30 名を対象として,在宅医療に携わる医師を増やすことを主目的とした計8.0 日間の試行研修プログラムを試行し,その評価を行った。特徴は,①現役の開業医を受講対象としていること,②開業医が実地研修に赴くこと,③多職種による議論の場が研修のなかに埋め込まれていること,④同一市町村内の多職種を受講対象としていること,⑤医師会など地域の関係団体の推薦により受講者を選定したことなどである。受講者の意識を受講前後で比較した結果,在宅医療に対する意識は前向きに変化する傾向を示し,知識の向上や多職種連携の促進にも寄与が認められた。2012年3 月〜4 月には内容を大幅に短縮した研修を実施していることから,両者の比較が必要であるとともに,今後研修のコンテンツならびに運営のノウハウを広く他地域に向けて発信していきたいと考えている。 -
退院・転院時紹介先医療機関向けに交付する栄養治療実施計画書兼栄養治療実施報告書に関する調査
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description栄養サポートチーム加算算定に基づき,栄養治療実施計画書兼栄養治療実施報告書を送付した,病院・施設・開業医81 件において,報告書内容の理解度や利用度についてのアンケート調査を実施した。回答のうち,報告書送付の趣旨を理解している割合は69%,報告書が参考になると答えた割合は74%で,病院・施設では趣旨理解が進んでいたが,開業医ではまだ浸透が不十分であった。また,1 人の患者に対して複数の事業所がかかわることが多く,それらすべてに周知させるためには,事業所それぞれへの送付が必要であった。報告書は様々な職種で利用され,職種を問わず栄養管理に関する関心は高いことがわかった。報告書の項目で,「栄養管理上の注意点・特徴」,「嚥下障害」,「栄養管理方法」などが有用との意見が多かった。当院退院後の療養先での栄養評価は,経験やマンパワーなどにより,継続が困難なこともあり,報告書は貴重な情報源で今後の栄養評価の方向性を伝達できると考えられた。 -
当科における在宅栄養管理
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description在宅医療が定着して20 年以上の年月が経過し,その需要は増している。その間かつてない高齢化社会を迎え,栄養療法を必要とする患者が増えている。当科では,1996 年より在宅医療を行い,その内容は在宅緩和ケアが中心であった。総数は168 例で,がん疾患は約90%を占め,終末期も約80%であった。home parenteral nutrition(HPN)を151 例,homeenteral nutrition(HEN)を内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy: PEG)を利用して7例に施行。胃瘻造設患者の6 例は,がんによる消化管閉塞に対する減圧として用いた。がん終末期患者の輸液に関しては,悪液質の存在の有無で点滴内容を変更し,悪液質を伴う場合は,本人,家族の希望を重視している。 -
在宅高齢者の貧血と栄養
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description在宅高齢者の貧血症例59 症例につき,貧血の原因を調べ治療経過を検討した。貧血の原因は,鉄欠乏性,慢性炎症に伴うもの,腎性が3/4 を占め,原因疾患の治療によって80%以上の症例で貧血が改善した。貧血の原因が不明な,いわゆる老人性貧血も20%ほどみられ,栄養状態とともに貧血も改善した症例がみられた。今回,貧血の検査,治療の重要性が再確認され,また老人性貧血も放置せず栄養状態を改善することの重要性が示唆された。 -
胃瘻造設患者の急性期病院退院調査にみる栄養管理の動向
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description当院では,栄養サポートチーム稼働当初より地域との連携に力を入れてきた。退院先への栄養管理サマリーの送付に加え,患者の転帰調査を行い栄養管理の動向を把握するようにしている。今回,2008 年4 月〜2010年7 月までの間に胃瘻栄養で退院した患者が,3 か月後にどのくらい経口摂取へ移行できたのかを調査した。対象109 例のうち10 例で経口摂取が始まっていた。急性期病院である当院での退院時栄養方法は,移行先の療養環境や患者家族の状況を考慮した選定になっているが,移行先の療養環境はその後の患者の栄養管理方法に大きく影響することがうかがえた。退院時の栄養方法のその後を調査することは,栄養方法を決定する際に大いに役立つと考えられた。胃瘻栄養に対する正しい認識の周知のためにも,今後もサマリー送付後調査を継続し,各療養施設と広域的な情報交換を行っていくことは必要であると考えられた。 -
在宅患者の動向からみた看取り困難理由と対応の検討
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description在宅医療を行う際,介護家族が患者の死を受容することは重要な問題である。長期在宅患者,短期在宅患者あるいは若年在宅患者を主な対象として,介護家族が死の受容をどのように受け止めるか,その現状および医療側の対応について検討した。短期在宅癌患者と長期在宅患者の看取りが増加するとともに若年癌患者も増加してきていて,介護家族がどのように死を受け入れるかは多様になってきている。看取りに際して,在宅療養期間や若年在宅患者の場合の患者や家族背景を考慮した医療側のきめ細やかな対応とともに,終末期医療には様々な選択肢の準備が必要である。 -
福祉施設にて疼痛緩和に苦慮した1 例
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description病院の病床数が減少傾向にあるため福祉施設に癌末期患者も入所してくることが多くなっている。主治医を中心とする地域連携により,疼痛コントロールが困難な患者に対して緩和ケアを行った症例を経験した。症例は87 歳,男性で直腸癌,膀胱癌に対し手術施行,ストーマ造設後に福祉施設へ入所した。癌性疼痛に対しオピオイドが処方されたが,患者の訴えが少なく,さらに麻薬を使用した経験がある看護師が少なかったため,当初は疼痛コントロールが不十分であった。しかし,スタッフ間で情報共有を図ることで緩和ケアの充実につなげた。意識改革には主治医のみならず,薬剤師の協力が有効であり,地域連携が役立ったと考えられる。注意深く症状をアセスメントして緩和ケアを行うことで,常勤医不在の福祉施設でも施設での看取りにつなげることができた。 -
肛門部痛に対するクモ膜下フェノールブロックの在宅移行への検討―薬剤部調製によるフェノールグリセリンの臨床使用―
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description近年,がん患者の在宅移行が増加している。一方,がん性疼痛の治療の一つである神経ブロック療法は,痛みに関する知覚神経のみを選択的にブロックすることにより効果的な鎮痛が得られる。神経変性薬であるフェノールグリセリンを用いることにより,患者の疼痛を1 週間〜3か月程度抑えることが期待されている。今回,肛門部痛に対するクモ膜下フェノールブロックの在宅移行を検討したので報告する。肛門部痛症例に対して,クモ膜下フェノールブロックを施行することで,numerical rating scale(NRS)の減少,オピオイドの減量,quality of life(QOL)の改善など効果的な鎮痛が認められた。また,8例中5例において在宅へ移行することができた。このように,効果的な鎮痛が得られるクモ膜下フェノールブロックを行うことで,在宅への移行が増やせる可能性があることが考えられる。 -
地域連携により在宅療養可能となった悪性関節リウマチの1 症例
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description地域連携により在宅療養可能となった悪性関節リウマチ症例を検討した。63歳,女性。小腸壊死,脳梗塞,心不全,強膜炎などを合併した。現医療体制では急性期病院や療養型病院への入院は困難で,福祉施設での療養も難しい。医療の進歩により症状コントロールとともに予後も改善したが,療養体制がそれに追いついていない。今後は医療と介護の両体制のシームレスな充実が必要である。 -
高齢者の在宅療養継続の関連要因の検討―病院で在宅支援を受けた後の復帰困難要因の症例対照研究―
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description本研究は,在宅医療を支援する病棟において高齢者の在宅復帰困難の関連要因を検討することを目的に,在宅復帰困難例を症例,在宅復帰例を対照とした症例対照研究を行った。本邦の入院患者における在宅復帰困難高齢者は約20%であった。在宅復帰困難要因には,家族の介護受け入れ困難,本人の在宅療養への希望がないこと,在宅療養経験があること,在院日数の長期化が関連することが示唆された。 -
在宅ケアを続ける上で支障となりやすい,せん妄(認知症と間違いやすい)について―精神腫瘍医の立場から(第三報)―
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Descriptionがんになっても仕事をなくさないように,緩和ケアをいつでもどこでも受けられるように,がんそのものの早期発見をめざすために,患者と同様将来遺族になるであろう家族に対しての対応も求められる。最終的には「できるだけ長い期間在宅で」をめざし作られた2007年のがん対策基本法,がん対策推進基本計画施行から5 年間が経過し,新5 か年計画策定に向けて見直しが検討されている。他方,わが国年間100万人の死亡数のうち,がん死は1/3,将来的にこの比率はもっと上昇し,2 人に1 人との予想もでている。また療養場所として多くの人が希望する終末期には在宅でという希望は,なかなか10%というハードルを越えるに至っていない現実もある。病床数301 床,在院日数10 日の急性期総合病院の当院でも努力中である。第20,21,22回の日本在宅医療学会学術集会でも報告した,在宅医療への移行をスムースに行うために,身体症状緩和,精神症状緩和をめざし多職種の協力の大切さは,昨今ますます重要視されている。当院でもがん相談支援センター,がん緩和ケアチームに医師,看護師(がん関連の認定看護師を含む)ソーシャルワーカーのスタッフを配置し,患者とshared decision making(SDM)を繰り返しながら,がん終末期になってもより苦痛の少ない在宅生活をめざしている。その際,支障となるものは多々あるが,精神症状の発現への対策も重要である。多くの場面において精神疾患でよくみられるせん妄では,結果的に全般的生活の質のさらなる低下の他,将来遺族になるであろう家族の消耗につながり思いがけない悪い結果を生んだり,治療の妨げになることもある。特にがん末期では治療方針,療養場所など次々と決定しなければならないことも多く,せん妄発現が往々にして妨げとなる。せん妄の評価,ケア,治療(でき得れば環境調整などで予防も含め)が重要である。そのためには,関係スタッフの協力,研鑽が必要である。院内にがん相談支援センターを作り活動を始めてから3 年経過し,自験例も30例を超えた。そのなかで,今後のせん妄対策には基本的な対応が必要だと再認識をした例を経験したので報告する。 -
後期高齢者の在宅療養継続の障壁となる転倒・骨折と睡眠薬使用のリスク関係の検討
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description在宅療養中の後期高齢者において,転倒・骨折はADLが急激に低下し,在宅療養の継続に対する大きな障壁となる。転倒事故の原因としては,睡眠薬などの服用が重要な発生要因の一つと考えられている。当クリニックにおいて2008 年5月〜2011年12月まで訪問診療を行ってきた後期高齢者患者599(男性216,女性383)例に関して,睡眠薬の使用が転倒・骨折のリスクを増加するのかどうかを比較検討した。 -
在宅と福祉施設
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description術後高齢者の現実について検討した。86 歳,男性。全周性直腸癌の診断で直腸切断術,人工肛門造設術が施行された。術後入院中に脳梗塞を発症し,廃用症候群が進行したため,高カロリー輸液管理のまま退院となった。療養型病院にはベッドに空きがなく,自宅では介護体制が整えることができなかったため福祉施設へ入所した。高齢者では手術をきっかけに寝たきりとなることは少なくない。老老介護や核家族化の進行などで在宅の介護力が低下している現代では,福祉施設でも在宅と同等の体制を適応し医療を受けることのできるシステムを整える必要がある。 -
がん治療中の退院,転院支援,調整を行う際壁となる問題―うつ状態の時(精神腫瘍医の立場から,第三報)―
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description第21,22回日本在宅医療学会学術集会でも報告したが,がん治療中,患者および将来遺族になるであろう家族が,うつ状態になる頻度は50%以上が見込まれ対応が必要である。当院緩和ケアチームでこの3 年間にかかわった20 例の体験を基に対応について検討した。 -
認知症を合併したリンパ浮腫患者へのケアを経験して
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description近年,リンパ浮腫へのケアの重要性が認識されつつある。浮腫の軽減や皮膚の状態の改善をケアの目標とした場合,ケアを継続することが重要である。しかし,浮腫のケアを毎日施行する時間や労力が必要であり,ケアの自己中断となる場合も少なくない。そのため,患者自身がリンパ浮腫をよく理解し,ケアの知識・技術を習得することが大事である。しかし,認知症患者においては「理解」自体が困難であるため,① 患者本人が心地よいと感じるケアの施行,② 患者本人へのその時の身体的・精神的状態を考慮したケアの施行,③在宅でのケアにかかわる人員の確保とその教育が重要と考えられた。 -
当院における在宅神経難病患者支援体制―計画的レスパイト入院システムの構築―
39巻Supplement I(2012);View Description Hide Description神経難病患者は長期入院先が少なく,家族で重い介護を担っているのが現状である。当院では在宅療養を支えるため,定期的にレスパイト入院できるシステムを構築し,多くの神経難病患者の在宅療養を支えている。
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