癌と化学療法
Volume 40, Issue 5, 2013
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総説
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腫瘍溶解性ウイルスに関する研究の現況
40巻5号(2013);View Description Hide Description近年,癌に対する腫瘍溶解性ウイルス療法が注目されてきている。これは,ウイルス療法に関する前臨床的研究により,その認容性や腫瘍内でのウイルス増殖に加えて,ウイルス製剤による腫瘍免疫応答などが証明されたためである。さらに,欧米における転移性悪性黒色腫に対する腫瘍溶解性ヘルペスウイルス製剤OncoVEXを用いた第Ⅲ相試験の終了も大きく後押ししている。ようやくわが国においても,食道癌に対するOBP-301 によるアデノウイルス療法や,G47b による脳腫瘍に対するヘルペスウイルス療法の臨床試験も開始された。腫瘍溶解性ウイルス療法は着実な第一歩を踏みだした。
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特集
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- 新しいがん対策推進計画
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国のがん対策推進基本計画
40巻5号(2013);View Description Hide Description昭和56(1981)年から,がんはわが国の死亡原因の第1 位となり,以降,高齢化とも相まって死亡率は上昇しつづけている。政府は1984年より「対がん10 カ年総合戦略」を策定し,その後も第2 次,3 次対がん10 か年戦略を策定し,がん対策の推進に向けて努力してきた。そして,2006年には「がん対策基本法」が成立し,2007 年4 月に施行された。その法律に基づき包括的がん対策を推進するため,がん対策推進協議会で第1 期のがん対策推進基本計画が策定され,同年6 月に閣議決定された。この国の基本計画に基づき,都道府県はそれぞれのがん対策推進基本計画を策定し,全国的にがん対策が実施されることになっている。「がん対策基本法」では,少なくとも5 年ごとにがん対策推進基本計画の見直しが必要とされており,2011年度に基本計画が見直され,第2 期の基本計画として2012 年6 月に閣議決定されたところである。その主な変更点は,これまでの基本計画は医療面が重視されていたのに対して,社会全体としてがん対策を推進することの重要性が強調されたことである。本稿では,わが国のがん対策のこれまでの経緯を紹介し,今後の課題についても私見を述べる。 -
東京都におけるがん対策推進計画
40巻5号(2013);View Description Hide Description東京都は国のがん対策に則って平成20 年以来東京都がん対策推進計画を実行してきた。そして,この5 年間で一定の成果を上げることができている。これまでの計画を見直すとともに,平成24 年に策定された国のがん対策基本計画に沿う形で,平成25 年度に新たな東京都がん対策推進計画を開始する。この新たな東京都の計画の基本方針として,がんの予防を重視,高度ながん医療を総合的に展開,患者家族の不安の軽減,がん登録やがん研究の推進をあげている。 -
第2期の宮城県がん対策推進計画の概要
40巻5号(2013);View Description Hide Description現在,わが国のがん対策の柱は,がん予防,がん早期発見と進行がんの治療成績の向上である。平成19 年4月にがん対策基本法が制定されてこの3 本柱が明確になり,同年に策定されたがん対策推進基本計画に沿って都道府県のがん対策推進計画が示され,都道府県ごとに必要ながん対策が5 年間実施された。この基本法に基づき平成24年6 月に第2 期のがん対策推進基本計画が新たに策定され,平成25 年度からのスタートをめざして都道府県ごとにがん対策推進計画の改訂作業が行われている。ここでは宮城県の第1 期のがん対策推進計画の概要とその評価,第2 期がん対策推進計画(最終案)の概要について解説する。 -
愛媛県におけるがん対策推進計画 松山赤十字病院のがん対策推進について―「がん診療推進室」の現状―
40巻5号(2013);View Description Hide Descriptionわが国の最近のがん対策は,「第3 次対がん10 か年総合戦略」に基づき,がんの罹患率と死亡率の低下をめざして推進された。2007年4 月に国,地方自治体に「がん対策」の推進を義務付ける「がん対策基本法」を公布し,同年6 月に「がん対策推進基本計画」の概要が厚生労働省から公表された。愛媛県,松山赤十字病院のがん対策について下記のように報告した。・愛媛県のがん対策推進の進捗状態を報告した。2012 年に見直しと,新しい取り組みである小児がん,がん患者の就労の問題,在宅医療の推進などについて報告した。・松山赤十字病院のがん診療連携拠点病院の取り組みについて,5年間の経緯を報告した。・松山赤十字病院のがん医療として,ニュータイプの「がん診療推進室」の集約的多職種のチーム活動について報告した。「がん診療推進室」は,病院の基本方針のBSC に則った四つの視点からみたがん医療に取り組んでいることを報告した。
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Current Organ Topics:HematologicMalignancies/PediatricMalignancies 血液・リンパ腫瘍
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原著
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原発巣切除後の転移・再発大腸癌に対する二次治療としてのFOLFIRI+Bevacizumab療法
40巻5号(2013);View Description Hide Description当科では原発巣切除後の転移・再発大腸癌に対する二次治療としてFOLFIRI+bevacizumab(BV)療法を標準治療としている。今回,一次治療としてFOLFOX療法を行いPD もしくは有害事象のため,二次治療のFOLFIRI+BV 療法へ移行した35 症例(このうち一次治療からBV 併用は3 例)に対し,抗腫瘍効果(4 回以上施行)と有害事象についてその臨床成績を検討した。BV は26 例5 mg/kg,3 例10 mg/kg,6 例が途中より5 から10 mg/kg に増量している。FOLFIRI+BV療法の平均施行回数は13.9回,平均投与期間は10.0 か月であった。抗腫瘍効果はCR 1 例,PR 5 例,SD 21 例,PD 8 例であった(奏効率17.1%,腫瘍制御率77.1%)。無増悪生存期間の中央値は11.0 か月,FOLFIRI+BV 療法開始後の生存期間中央値は23.0か月であった。有害事象は77.1%に出現し,Grade 3 以上は55.5%であり,BV に特異的な有害事象は高血圧(Grade 3)が2 例であった。原発巣切除直後の転移・再発大腸癌に対する二次治療としてのFOLFIRI+BV 療法は有害事象に注意しながら慎重に投与すれば予後の延長が十分期待できると考えられた。 -
切除不能進行・再発大腸癌に対するCetuximab+Irinotecanの治療成績
40巻5号(2013);View Description Hide Description背景: 2008年7 月に切除不能進行・再発大腸癌に対するcetuximab(Cmab)療法がわが国でも承認され,広く用いられるようになったが,国内における使用成績の報告は少ない。目的:神奈川県内5 施設における切除不能進行・再発大腸癌に対するCmab+irinotecan(CPT-11)の使用成績について後方視的に検討した。対象: 2008 年10 月〜2010年4 月までに上記5 施設で切除不能進行・再発大腸癌に対しCmab+CPT-11 療法を施行した38 例を対象とした。すべて二次治療以降の導入であった。結果:奏効率24%,病勢コントロール率68%,治療成功期間中央値105 日,生存期間中央値242 日であった。有害事象はGrade 2 以上の皮膚障害が68%にみられた。結論:進行・再発の大腸癌に対するCmab+CPT-11療法は,海外での臨床試験の成績に比べても遜色のないものであり,かつ安全に行える治療であるといえる。 -
胃切除術後患者に対する上部消化管内視鏡検査前飲水による食物残渣減少効果の検討
40巻5号(2013);View Description Hide Description胃切後患者のfollow-up は非常に重要であるが,食物残渣が多く内視鏡観察が不十分となることも経験される。胃全摘術以外の胃切後患者を対象とし,内視鏡前飲水による残胃の食物残渣の減少効果を検討した。内視鏡検査前日に500 mL,当日に350 mL を飲水する飲水群と,従来どおり飲水しないコントロール群とで比較検討し,また幽門の有無についても効果を比較した。飲水群では残渣が少ない傾向であった。幽門温存症例では飲水群でも残渣の減少効果がみられなかったが,幽門切除症例では有意に残渣の減少がみられた。胃切後患者でも検査前飲水は苦痛,合併症なく安全に行え,幽門切除症例で飲水による残渣減少効果が認められた。 -
皮下埋め込み型中心静脈ポートの合併症の検討
40巻5号(2013);View Description Hide Description2007年1 月〜2011年11 月までの期間に当院で留置した皮下埋め込み型中心静脈ポート(CV ポート)500 例を対象として合併症の検討を行った。CV ポート留置の目的は化学療法目的279 例,在宅中心静脈栄養目的が221 例であった。原因疾患は悪性腫瘍441例(大腸癌252例,胃癌54 例など),良性疾患が59 例であった。CV ポート留置時の合併症は7 例(1.4%)に認めた(気胸6 例,カテーテル血管内迷入1 例)。CV ポート留置後の合併症は43 例(8.6%)に認め,感染18 例,閉塞10例,皮膚潰瘍4 例,ポートの皮下での回転4 例,静脈血栓閉塞3 例,カテーテル逸脱3 例などであった。1,2,3 年累積使用可能率は90.7%,81.2%,74.6%であった。CV ポート留置後の合併症は,化学療法目的に比べ栄養目的の症例に多かった。 -
高度催吐性化学療法に伴う悪心・嘔吐に対するGranisetron,AprepitantとDexamethasone併用とPalonosetron,AprepitantとDexamethasone併用の制吐効果の比較―有効性と安全性の後方視野的検討―
40巻5号(2013);View Description Hide Description抗がん剤投与時に生じる悪心・嘔吐は患者にとって大きな苦痛を感じる副作用の一つである。特にcisplatin やanthracycline系薬剤などの高度催吐性リスク薬では,NK1受容体拮抗薬であるaprepitant と5-HT3受容体拮抗薬およびdexamethasoneの3 剤併用が推奨されている。しかしaprepitant とdexamethasone にどの5-HT3受容体拮抗薬併用が適正であるかは不明である。そこでわれわれはgranisetron を使用していた患者にpalonosetron を変更投与した時の悪心自覚症状を点数化したアンケート調査を行った。結果: palonosetronとaprepitant・dexamethasone投与群で,急性期(0〜24時間),遅発期(24〜120時間)およびcisplatin投与群,anthracycline系薬剤投与群すべてにおいて悪心点数の有意な改善を認めた。アンケート調査からは,高度催吐性リスク薬を用いる化学療法では積極的にaprepitant・dexamethasoneへ5-HT3受容体結合含有率が長時間であるpalonosetronを併用することで,急性・遅発性悪心の予防,軽減できる可能性が示唆された。
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症例
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術前エピルビシン+シクロフォスファミド併用療法(EC療法)に引き続いたゲムシタビン併用パクリタキセル療法で組織学的CR が得られたトリプルネガティブ乳癌の1 例
40巻5号(2013);View Description Hide Description症例は59 歳,女性。トリプルネガティブ乳癌(triple-negative breast cancer: TNBC)(T2N0M0)と診断され,術前化学療法を施行する方針となった。まず,3 週ごとのエピルビシン+シクロフォスファミド併用療法(EC 療法)を開始した。4 コース終了時点でcPR の効果判定であり,引き続いて毎週のゲムシタビン併用パクリタキセル療法を行った。8 コース終了時点でさらなる腫瘍縮小効果を認め,左乳房部分切除術を施行した。摘出標本の病理組織学的検査にてpCR が確認された。ゲムシタビン併用パクリタキセル療法は,TNBCに対する有用な術前化学療法の一つと考えられた。 -
FEC とAbraxaneの投与が著効した乳癌の1 例
40巻5号(2013);View Description Hide Description症例は49 歳,女性。2011年8 月に右乳房腫瘤を自覚したため当科を受診した。針生検の結果,浸潤癌,ER弱陽性,PR 陰性,HER2 は陰性,組織学的悪性度がGradeⅢであった。腫瘍径が3 cm 大あり,患者の乳房温存希望と組織学的悪性度が高度であったため術前化学療法を選択した。アルコールにアレルギーがあったため,FEC100 療法4 コースの後にAbraxane(260 mg/m2,3 週毎に投与)を4 コース施行後,乳房温存術を施行した。好中球減少を除いて,grade 3以上の有害事象は認めず,外来通院で安全に施行できた。術前化学療法後の乳房造影MRIで浸潤性病変は消失した。病理結果はpCRであった。早期乳癌に対する術前化学療法としてのAbraxaneは効果を十分に期待できる治療であると思われた。 -
乳癌骨転移に対するビスフォスフォネート製剤の長期間投与に関連した顎骨壊死に続発した脳膿瘍の1 例
40巻5号(2013);View Description Hide Descriptionビスフォスフォネート製剤(BP 製剤)は,癌の骨転移などに有効な治療薬として広く使用されている。左乳癌T4N2M1(肺・骨)に対してゾレドロン酸水和物を2 年11 か月投与した。失認症を認めたため頭部CT 検査を施行したところ,脳転移,脳浮腫を認め緊急入院となった。精査したところ,顎骨壊死による脳膿瘍であると診断された。BP 製剤長期間投与に関連した顎骨壊死に続発した脳膿瘍の1 例を経験した。 -
肝細胞癌の骨転移に対してソラフェニブ+ゾレドロン酸によりCR が得られた1 例
40巻5号(2013);View Description Hide Descriptionソラフェニブは経口マルチキナーゼ阻害薬であり,海外の大規模な第Ⅲ相臨床試験で進行肝細胞癌患者の生存期間を延長することが報告された。これらを経て,本邦においても2009 年5 月に切除不能な肝細胞癌にも保険適応が承認された。進行肝細胞癌に対するソラフェニブによるCR 症例の文献的報告が散見されるが,骨転移が消失した例の報告はない。今回,肝細胞癌の骨転移に対してソラフェニブ(ゾレドロン酸併用)によりCR が得られた症例を経験したので報告する。症例は64 歳,男性。B 型肝炎キャリアであった。肝細胞癌切除後9 か月に骨転移が発見された。ソラフェニブ+ゾレドロン酸を開始したところ腫瘍は徐々に縮小し,開始後15 か月でCR が得られた。CR 後投与中止して12 か月経過したが,再発の兆候は認めない。有害事象に関しては手足皮膚反応を認めたが,一時的なソラフェニブの減量により投与の継続が可能であった。 -
S-1+GEM 併用療法無効後にGEM 単独療法が著効した膵癌再発の1 例
40巻5号(2013);View Description Hide Description症例は62 歳,男性。膵体尾部癌にて膵体尾部切除術を施行し,術後4 か月で局所再発が出現した。S-1+gemcitabine併用療法(GEM 750 mg/m2)にて治療を開始後9 か月のCT にて多発肺転移を認め,GEM単独療法(1,000 mg/m2)に変更後12か月でCT 画像上CR の抗腫瘍効果を認めた。3 か月後に治療を中止したが,9か月経過しCR を継続している。GEM単独療法は未だに進行膵癌治療の主流と思われる。 -
Docetaxel/Cisplatin/5-FU 併用療法により病理学的CR が得られた大動脈浸潤食道癌の1 例
40巻5号(2013);View Description Hide Description症例は64 歳,男性。頸部リンパ節転移,大動脈浸潤を伴う胸部中部食道癌(cT4N2M0,cStage Ⅳa)に対してdo-cetaxel/cisplatin/5-FU 併用療法(DFP 療法)を行った。1 コース終了後の効果判定で原発巣,上縦隔リンパ節の著明な縮小を認め,根治切除可能と判断し,右開胸開腹食道亜全摘,胸骨後経路胃管再建,胸腹部リンパ節郭清を行った。腫瘍と胸部大動脈との間に瘢痕を介した癒着を認めたが,剥離可能であった。病理組織学的検査で胸部中部食道のほぼ全層に線維化と炎症細胞の浸潤を認めたが,viable な腫瘍細胞は存在せず,病理学的効果判定Grade 3(pCR)と判定された。治療開始後4年現在,無再発生存中である。DFP 療法は,他臓器浸潤を伴う進行食道癌の初回治療として,化学放射線療法を温存し根治切除可能とすることが期待できる有効な治療法であると考えられた。 -
Bevacizumabを併用し化学療法が奏効した血液透析中の大腸癌肝転移の1 例
40巻5号(2013);View Description Hide Description今回,われわれは血液透析肝転移に対して大腸癌化学療法を施行し,CR を得られた1 症例を経験したので報告する。症例は67 歳,男性で慢性腎不全の既往があり,2005年より血液透析が施行されている。2010 年1 月肝転移を伴うS 状結腸癌および直腸癌に対して高位前方切除術を施行した。術後化学療法としてFOLFOX6+bevacizumab(BV)を計画し,doseescalation を行いながら血液透析を週3 回併用しつつ化学療法を開始したところ,oxaliplatin の影響と思われる骨髄抑制のため2 コースのみの投与となりBV+sLV5FU2療法に変更となった。その後はほぼ予定どおり治療を継続し,肝転移は消失してCR と判断している。透析症例のBV 使用症例は報告も少ないが,慎重な投与により安全に使用できると考えられた。 -
集学的治療により長期生存が得られたStageⅣ胃癌の1 例
40巻5号(2013);View Description Hide Description症例は47 歳,女性。2005 年3 月,傍大動脈リンパ節腫大と多発肝転移を伴う噴門部3 型低分化胃癌に対して,docetaxel(DOC),cisplatin(CDDP),S-1 による術前化学療法(DCS療法)を3コース施行した。この結果,画像上リンパ節転移の縮小,肝転移の消失をみた。7 月,胃全摘術+脾摘+D2リンパ節郭清と肝転移瘢痕に対するラジオ波焼灼術を施行した。病理学的にリンパ節は,#1 および#16b1 preにそれぞれ免疫染色にて確認される転移を1 個ずつ認めた。術後DOC,S-1 による化学療法を継続し,現在7 年無再発生存中である。stageⅣ胃癌に対して集学的治療を行うことで長期生存が得られる症例も認めるため,標準的治療の確立が望まれる。 -
胃癌術後の癌性腹膜炎に対し集学的治療により約4年以上の延命効果が得られた1 例
40巻5号(2013);View Description Hide Description胃癌術後の癌性腹膜炎は,腹水のコントロールが難しく治療に難渋することが多い。今回われわれは,術後2 年目に発症した癌性腹膜炎に対してS-1+docetaxel(DOC)療法を施行し,完全奏効が得られた。さらに,術後3 年目に再々発した癌性腹膜炎に対してバイパス手術により経口摂取を維持しつつ再度S-1+DOC 療法を施行し,2 年以上にわたり良好なコントロールが得られた。投与回数の増加とともに副作用で継続困難となったが,化学療法の変更[irinotecan(CPT-11)/cisplatin(CDDP)→weekly paclitaxel(PTX)→methotrexate(MTX)/5-fluorouracil(5-FU)交代療法]とバイパス手術を組み合わせることにより,引き続き病状の進行を制御しつつ日常生活を継続し得た。結果として,癌性腹膜炎の再発から約4 年以上もの延命効果が得られた。 -
Bevacizumab併用再発大腸癌化学療法中に腸間膜静脈に血栓を生じた1例
40巻5号(2013);View Description Hide Description症例は48 歳,男性。横行結腸癌切除後の腹腔内リンパ節再発に対しbevacizumab+FOLFOX による化学療法を施行し,6 コース終了後に門脈系の重篤な血栓症を併発した。直ちに休薬するとともに,ウロキナーゼによる抗凝固療法の開始により血栓の退縮をみたが,完全なる溶解には至らなかった。臨床症状なくそのまま抗凝固療法を継続し,保存的治療が可能であった。6コースの化学療法の結果はCR であり,2年後の現在でも無治療にて効果は持続中である。 -
Bevacizumabを含む化学療法中に壊死性筋膜炎を来した直腸癌術後局所再発の1 例
40巻5号(2013);View Description Hide Description症例は52 歳,女性。子宮浸潤を伴う進行直腸癌に対して低位前方切除術,子宮合併切除術を施行した。術後10 か月目に骨盤痛を自覚し,PET-CT で骨盤内の局所再発を指摘された。放射線療法(50 Gy)を施行し,疼痛は軽快したが,その後も腫瘍マーカーの上昇が続くため,術後1 年2 か月より化学療法(XELOX+bevacizumab)を開始した。2コース目終了後左臀部から下腿にかけて疼痛を自覚するようになり,癌性疼痛の増悪の診断にて加療目的で入院となった。入院後敗血症性ショックとなり,腸穿孔による壊死性筋膜炎と診断された。bevacizumabとの関連が考えられたため,文献的考察を加え報告する。 -
胃癌同時性肝転移術後の残肝再発に対してS-1併用化学療法が奏効し肝切除術を施行した1 例
40巻5号(2013);View Description Hide Description症例は71 歳,男性。胃癌の同時性肝転移[LM,Circ,2 型,cT4,cN0,cH1(S6),cP0,cM0,cStage Ⅳ]に対して幽門側胃切除,D1+#7,胆嚢摘出術,結腸部分切除術,肝部分切除術を施行した。術後化学療法としてS-1+CDDP を施行したが,残肝再発を認めた。S-1+CPT-11に変更し化学療法を継続,他部位に再発を認めなかったため,初回手術より9か月後に残肝再発巣切除を施行した。術後補助化学療法としてS-1 内服を加えることで,術後29 か月(初回手術より38 か月)が経過したが再発所見はない。胃癌同時性肝転移に対して外科切除を施行した症例であり,化学療法を加えることで残肝再発後の再切除においても良好な予後が得られた。 -
FOLFIRI 療法中に5-FUに起因する高アンモニア血症を来した高齢者再発大腸癌の1 例
40巻5号(2013);View Description Hide DescriptionわれわれはFOLFIRI療法を施行中,高アンモニア血症を来した高齢者の症例を経験した。症例は80 歳,男性。盲腸癌根治切除後の局所再発に対し,再切除後にFOLFIRI療法を開始した。5 コース目を施行中,高アンモニア血症による意識障害を認め,分岐鎖アミノ酸製剤を投与したところ速やかに回復した。5-FU 投与による高アンモニア血症は,アンモニア産生増加と代謝低下に起因し,腎機能障害,脱水,便秘,感染症,体重減少により増悪する。高齢者は,肝腎代謝機能の潜在的低下があり,若年者より大量5-FU 投与により高アンモニア血症を来しやすい状態であるため注意が必要である。
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