癌と化学療法
Volume 40, Issue 12, 2013
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特集【第34回 癌免疫外科研究会,第35回 日本癌局所療法研究会】
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- <第34回 癌免疫外科研究会>
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腫瘍抗原(TAA)遺伝子導入iPS 細胞由来樹状細胞(iPSDCs)を用いた癌ワクチン療法
40巻12号(2013);View Description Hide Description当教室では,樹状細胞(DCs)ワクチン療法の基礎研究および臨床研究を行ってきた。これには多量のDCs が必要であるが,担癌患者から誘導したDCs はその数,ワクチン効果が一定ではなく,安定したDCs の供給が課題である。2006 年に多様な細胞分化能力と無限増殖能力を併せもつiPS 細胞が樹立され,2009 年にはiPS 細胞由来DCs(iPSDCs)の分化誘導が報告された。今回われわれは,腫瘍抗原(TAA)遺伝子導入iPSDCs を分化誘導し,その抗腫瘍効果を中心に従来の骨髄細胞由来DCs(BMDCs)と比較検討した。方法: マウスiPS 細胞からTAA 遺伝子導入DCs を分化誘導し,抗原提示細胞としての機能を比較検討した。抗腫瘍効果については,51Cr─release assay および皮下腫瘍モデルで評価した。結果: TAA 遺伝子導入iPSDCs は,BMDCs と同等の抗原提示細胞としての機能を認め,抗腫瘍効果においても同等であった。結語: 腫瘍抗原遺伝子導入iPSDCs はBMDCs と同等の機能,抗腫瘍効果を認めた。今後は臨床応用をめざし,さらに研究を進めていく。 -
乳癌術前化学療法中のIndoleamine 2, 3─Dioxygenase の発現と腫瘍径の変化について
40巻12号(2013);View Description Hide Description乳癌に対する術前化学療法の効果と,生体への侵襲程度をindoleamine 2, 3─dioxygenase(IDO)の発現程度から比較検討した。術前化学療法を施行した27 症例を対象とし,化学療法施行前,EC 終了時,wPac 終了時,化学療法終了3 週間後,手術終了時より4 週間後に採血した。得られた血漿について,HPLC を用いてtryptophan(Trp)とkynurenine(Kyn)を測定した。奏効率77.8%,臨床的有用率77.8%,腫瘍の縮小率は平均58.9±41.1%であった。最終的にpathological completeresponse(pCR)を得た症例は5 例(18.5%)であった。すべての症例で,Trp/Kyn ratio は化学療法開始後に有意に低下し,手術終了後に化学療法終了前のレベルまで回復した。Trp/Kyn ratio は腫瘍の縮小率や奏効率,臨床的有用率,有害事象の発生と相関しなかった。pCR 症例とその他の症例の間にTrp/Kyn ratio の差を認めなかった。 -
新規抗癌剤エリブリン使用症例40 例の検討─乳癌サブタイプ分類からのアプローチ─
40巻12号(2013);View Description Hide Description背景: エリブリンは,非タキサン系の新規微小管ダイナミクス阻害剤である。承認から2 年近くが経過し,臨床的薬剤特性が明らかとなってきている。当院使用症例40 例を乳癌サブタイプ分類から検討した。対象と方法: 本剤にて治療を行った40 例を対象とし,有効性について奏効率(ORR),クリニカルベネフィット率(CBR),治療成功期間(TTF)を指標とし,ER,PR,HER2,Ki67 の発現状況からサブタイプに分類し検討した。結果: 全体のORR は35.0%,CBR は42.5%であった。ORR は,すべてのサブタイプでほぼ同等であった。一方でearly─line 使用症例は,late─line 症例と比較しTTF を延長していたが(p=0.001),サブタイプ別では差を認めなかった。有害事象でも,サブタイプによる差はなかった。結語: 乳癌サブタイプによるエリブリンの有用性・忍容性の相違は認められなかった。しかしながらearly─line で使用することで,高い治療効果が期待できることが示唆された。 -
進行再発大腸癌に対するペプチドワクチン療法の治療成績
40巻12号(2013);View Description Hide Description大腸癌に対する癌ワクチンとしての特性をもつHLA─A24*拘束性ペプチドワクチンが同定され,大腸癌特異的ワクチンRNF43 およびTOMM34 とUFT+Leucovorin(LV)併用療法の臨床試験を行った。重篤な有害事象を認めず安全に施行でき,RNF43 とTOMM34 両方のCTL 反応を認めた症例は,RNF43 またはTOMM34 いずれか一方のCTL 反応を認めた症例に比べ長期生存を得た。より多くの免疫反応を得るために新しい臨床試験を計画した。進行再発大腸癌患者に対し,複数のペプチド(RNF43,TOMM34,FOXM1,MELK,HJURP,VEGFR1,VEGFR2)を用いたワクチン療法を開始している。 -
術後補助化学療法としてmFOLFOX6 を施行した大腸癌患者における宿主状態の評価
40巻12号(2013);View Description Hide Descriptionはじめに: 大腸癌術後の補助化学療法として,mFOLFOX6 を施行した患者の宿主状態と有害事象の発現頻度との関連をみた。対象と方法: 対象はmFOLFOX6 療法を施行した大腸癌患者(術後補助化学療法)17 例である。男女比7:10,年齢62(32~75)歳,治療回数は12(4~12)回であった。身体・栄養・免疫状態の指標は,年齢,performance status(PS),body mass index(BMI),serum albumin(Alb),小野寺指数(PNI),controlling nutritional status(CONUT),Glasgowprognostic score(GPS),顆粒球/リンパ球比(G/L),好中球数,total lymphocyte count(TLC)を選択し,有害事象の発現頻度(重症度で最高Grade 2 以上)を全有害事象,消化器症状以外,消化器症状に大別し,治療前の宿主状態との関連についてみた。結果: 全有害事象および消化器症状以外は11 例(64.7%)にみられ,PNI 45 未満で高率であった(p<0.05)。その他の指標との関連はみられなかった。消化器症状は4 例(23.5%)にみられたが,いずれの指標との関連はみられなかった。結語: PNI 45 未満の患者において,大腸癌補助化学療法中の有害事象を多く認めた。mFOLFOX6 による補助化学療法の安全な施行には,栄養サポートも必要である。 -
乳癌晩期再発症例におけるIndoleamine 2, 3─Dioxygenase の発現について
40巻12号(2013);View Description Hide Description乳癌の晩期再発症例の病態・予後を明らかにし,再発時の侵襲程度をindoleamine 2, 3─dioxygenase(IDO)の発現程度から検討した。術後5 年以上を経過した32 症例を対象とした。再発・転移が発見された時に採血を行い,HPLC を用いてtryptophan(Trp)/kynurenine(Kyn)ratio を測定した。転移・再発病変が局所治療可能な症例を局所治療可群とし,その他の晩期再発乳癌を局所治療不能群として臨床病理学的因子と比較検討した。平均年齢は56.8 歳。再発までの期間は5.0~21.4年であり,10 年以内の再発症例が多かった。ホルモン受容体陽性症例が32 症例中30 症例。局所治療可能群は12 例,局所治療不能群は20 例であり,全身療法が必要な症例が多かった。晩期再発後の累積生存期間は,局所治療可能群が局所治療不能群に比べて有意に長かった。観察期間の中央値は4.5±2.3 年。Trp/Kyn ratio は局所治療不能群に比べて局所治療可能群が有意に高く,Trp/Kyn ratio が高いほど再発後の生存期間が長かった。 -
PSK 併用補助化学療法を施行した高齢者大腸癌における有効症例の探索的検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description当院で外科手術および補助化学療法を施行した70 歳以上の高齢者大腸癌患者62 例を対象とし,全生存期間(OS)ならびに無病生存期間(DFS)の解析と有効性を示す症例の探索を行った。術後補助化学療法には5′─DFUR,UFT およびUFT/LV といった経口抗癌剤を用い,全症例に免疫賦活剤であるPSK を併用した。全症例の治療成績は3 年OS 83.4%,3年DFS 78.6%であり,化学療法剤ごとで差は認められなかった。次に各種臨床検査値について,中央値をカットオフ値として高値および低値群で単変量解析を行ったところ,CEA およびCA125 で有意であった。さらに多変量Cox 回帰分析を実施したところ,術前CEA 値のみ有意となった。そこで術前CEA 4.0 ng/mL をカットオフ値として層別解析を実施したところ,術前CEA 値が高い症例では低い症例に比べて約8 倍予後が増悪する可能性が示された。したがって,このような症例に対してはより強力な抗腫瘍効果を有するレジメンを検討するのが望ましい。 -
進行再発癌に対する免疫療法・温熱療法の有効性(乳癌症例についての効果)
40巻12号(2013);View Description Hide Description2005 年7 月~2012 年9 月に当院において,評価可能病変をもった172 例の進行再発乳癌患者に免疫療法または温熱療法を施行した。clinical benefit case を有効と判定し30 例(17.4%)であった。樹状細胞の有効率が27.5%と最も高かった。また,免疫単独群の有効は1 例(7.7%)であったが,免疫療法に温熱を併用した群では有効は100 例中26 例の26.0%で,3倍以上の効果が得られた。温熱単独ではわずか3 例(5.1%)であった。有効30 例を詳細に検討すると23 例は標準治療の追加変更はないため,開始された温熱・免疫療法が有効に寄与したと考えられる。転移部位について検討すると温熱のみで有効となった3 例の転移部位は皮膚と近位リンパ節で,比較的狭い範囲の局所再発であった。免疫のみで有効となった1 例は肺転移と癌性胸膜炎であった。残りの19 例は肝・骨・肺・脳などの重要実質臓器に多発転移をもつ重篤症例であり,有効となるには全例温熱と免疫療法の併用を要した。 -
膵癌における免疫化学療法の可能性
40巻12号(2013);View Description Hide Description近年,膵癌に対する集学的治療の一つとして免疫細胞療法が試みられているが,腫瘍免疫逃避機構の存在が大きな障壁となっている。その要因の一つとして,癌細胞膜上のMHC class I related chain A(MICA)発現の減少および可溶性MICAの出現が重要であると考えられている。gemcitabine(GEM)には,殺細胞効果以外に腫瘍上のMICA の発現を増加させる作用があることが報告されており,今回GEM を用いた術前化学療法施行症例でのMICA の発現効果,MICA のリガンドであるNKG2D を発現しているリンパ球およびCD16(NK 細胞,γδT 細胞など)陽性リンパ球の浸潤を検討した。術前化学療法(GEM+S─1)施行群は,非施行群に比べて腫瘍上でのMICA 発現,腫瘍周囲でのNKG2D およびCD16 陽性リンパ球の浸潤が高率に認められた。術前化学療法にGEM を用いることは腫瘍のMICA の発現を増強し,免疫担当細胞を活性化させる可能性が示唆された。今後は可溶性MICA の制御を行う工夫が重要である。 -
Stage IV 大腸癌における予後予測因子としての好中球・リンパ球比の有用性
40巻12号(2013);View Description Hide DescriptionStage IV 大腸癌における術前好中球・リンパ球比(neutrophil─to─lymphocyte ratio: NLR)の予後予測因子としての有用性を検討した。術前化学療法施行例および穿孔例を除く当科で手術を施行したStage IV 大腸癌のうち術前NLR が判明している130 例を対象とした。術前NLR を算出し,cut off 値を3 に設定。低値群(n=61)と高値群(n=69)に分類し,臨床病理学的因子や予後との相関を検討した。NLR 別の2 年生存率(生存期間中央値)は,低値群58.1%(38.0 か月),高値群43.5%(22.3 か月)で,高値群が有意に予後不良であった。単変量解析では,NLR 高値,腹膜播種,根治度C,組織型(非分化型),転移臓器数2 以上が有意に予後不良であり,多変量解析ではNLR,根治度,組織型,転移臓器数が独立した予後因子であった。Stage IV 大腸癌における術前NLR はバイオマーカーとして有用である可能性が示唆された。 -
進行再発大腸癌に対する免疫療法・温熱療法の有効性
40巻12号(2013);View Description Hide Description2005 年7 月~2012 年9 月に当院において,評価可能病変をもった226 例の進行再発大腸癌患者に免疫療法または温熱療法を施行した。clinical benefit case を有効と判定し30 例(13.3%)であった。樹状細胞の有効率が23/122(18.9%)と最も高かった。また,免疫療法単独の有効が14 例中2 例(14.3%)であったのに対し,免疫療法に温熱を併用した群では有効は161 例中26 例の16.1%と上昇していた。温熱単独ではわずか2 例(3.9%)であった。すべての部位における完治症例は5 例で,そのうち4 例は温熱と樹状細胞とリンパ球のすべてを併用した症例であった。温熱単独および免疫単独で有効になったのは,肝転移のみの症例でいずれも2 例であった。残りの26 例中25 例の有効例は肝・肺などの重要実質臓器への多発転移症例であり,これらはすべて温熱と免疫療法の併用を要した。 - <第35回 日本癌局所療法研究会>
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術前化学療法施行後胸腔鏡下食道切除術の治療成績
40巻12号(2013);View Description Hide Description胸腔鏡下食道切除術(以下,本術式)は本邦で広く行われているものの,術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy:NAC)の本術式の治療成績に及ぼす影響についての報告は少ない。今回,NAC の胸腔鏡下食道切除例の周術期治療成績について検討を行った。2005 年1 月~2012 年12 月までの本術式施行例のうち,治療開始前の進行度がcStage II/III であった129例(NAC+群54 例,NAC-群75 例)を対象とした。NAC+例では手術時間・胸部操作時間が有意に長く,総出血量・胸部出血量ともに少なかった。郭清リンパ節個数は差がなく,術後合併症の発症頻度にも差がなかった。本術式は,術前化学療法施行後でも安全に施行可能である。 -
進行食道癌における術前化学療法の現況
40巻12号(2013);View Description Hide DescriptionJCOG9907 試験の報告以降,Stage II,III の進行食道癌では術前補助化学療法後根治手術の施行が標準治療となりつつある。一方で局所進行症例または多発リンパ節転移例には,より強力な補助療法が求められている。当科ではこのような高度進行食道癌症例に対して,cisplatin と5─FU の2 剤に加えてdocetaxel を加えたDCF 療法を選択的に施行している。2010 年1 月~2012 年12 月の期間に,術前補助化学療法後に手術を施行した胸部食道癌症例が53 例であった。化学療法のレジメンは基本的にはFP 療法を行い,局所進行あるいはリンパ節転移多数例に対してDCF 療法を行った。症例の内訳はFP 群 43 例,DCF 群 7 例で他症例は1,2 コース目でレジメン変更した。grade 3 以上の有害事象はFP 群12/43(27.9%)例,DCF 群7/7(100%)例。DCF 群は好中球減少が必発だが,重篤な有害事象ではなかった。DCF 群は1 例を除き根治切除でき,有効な術前化学療法となり得ることが示唆された。 -
Conversion Gastrectomy を施行したStage IV 胃癌の治療成績の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description背景: Stage IV 胃癌は化学療法が治療の主体となるが,化学療法に奏効する症例は予後の改善が期待できると考えられ,当科では切除可能となった時点で胃切除術(conversion gastrectomy)を施行している。対象と方法: 2008 年10 月~2012 年12 月までにStage IV 胃癌と診断され,化学療法後に胃切除術を施行した20 例を対象とした。非治癒因子,臨床的治療効果,R 因子,組織学的効果で群分けし,手術時からの生存期間をretrospective に検討した。結果: 全体の生存期間中央値は18.0か月であった。非治癒因子では単独/2 因子が16.3/22.0 か月(p=0.18),SD/PR が22.0/18.0 か月(p=0.64)であったが,Grade 0,1a/1b─3 が16.3/47.8 か月(p=0.04)であり,R0/1─2 が47.8/14.1 か月(p=0.04)と有意差を認めた。結語: 化学療法の組織学的効果が高く,R0 切除を達成し得た場合に予後の改善が得られると考えられた。 -
術前化学療法を用いるStage IV 胃癌の治療戦略
40巻12号(2013);View Description Hide Description当院では2007 年からStage IV と診断された胃癌に対しては,まず化学療法を行い,その後にR0/1 手術が可能となった症例に対して手術を行っており,この治療戦略について検討した。対象は2007~2012 年までのStage IV 胃癌46 例で,化学療法後R0/1 手術を行ったNAC 群(19 例)と化学療法を継続したCx 群(27 例)に分類し検討した。さらに2001~2006年の術前化学療法のないStage IV 胃癌でR0/1 手術となった症例をOPE 群(36 例),R2 手術となった症例をNC 群(43 例)としこれらとも比較検討した。化学療法はS─1+CDDP またはS─1+DOC を行った。病勢制御率は72%で,手術への移行率は肝転移53.8%,傍大動脈リンパ節転移62.5%,腹膜転移29.4%,T4N2 100%,遠隔転移0%であった。生存比較ではNAC群/OPE 群/Cx 群/NC 群の順に,2 年生存率が69%/55%/0%/20%で5 年生存率が35%/30%/0%/5%であった。 -
術前化学療法施行後の根治的胃切除術の安全性と忍容性─ Clavien─Dindo 分類を用いた術後合併症評価─
40巻12号(2013);View Description Hide Description背景: 術前補助化学療法は有望な試験治療の一つである。しかしながら,術前化学療法施行後の胃切除術の有効性や安全性については未だ十分には検討されていない。対象および方法: 2002 年12 月~2011 年5 月の期間に術前化学療法後に根治的胃切除術を施行した45 例を対象とした。本検討では,Clavien─Dindo 分類を用いて術後合併症を評価した。結果: 年齢中央値は63 歳,術前化学療法のレジメンはPTX+CDDP 療法が23 例,S─1+CDDP 療法が20 例,S─1 単剤およびCPT─11+CDDP が各1 例であった。手術は幽門側胃切除6 例,胃全摘術が39 例,手術時間の中央値268 分,術中出血量の中央値は249.5 mL であった。grade 2 以上の手術合併症は12 例に認められた。内訳はgrade 3a 吻合部出血2 例,grade 2 腹腔内膿瘍1 例,grade 2 膵液漏が9 例であった。手術死亡はなかった。結論: 術前化学療法施行後の症例でも安全に根治的胃切除術が施行できる可能性が示唆された。 -
術前化学放射線療法後の下部直腸局所進行癌に対する至適な直腸切離部位の病理組織学的検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description近年,肛門温存手術の風潮に伴って,術前化学放射線療法(chemoradiotherapy: CRT)後の残存癌の肛門側への分布の把握がますます重要となっていると考えられるが,CRT 後の下部直腸の肛門側への分布を詳細に検討した報告は未だに少ない。今回われわれは,CRT 後の下部直腸進行癌の病理組織学的な至適な切離部位を明らかにすることを目的とした。病変下縁がRb にかかるcT3─4,cN0─3,M0 の下部直腸進行癌に対してCRT が行われた36 例を対象とした。CRT regimen はCPT─11(80 mg/m2)とS─1(80 mg/m2/day)であり,計45 Gy(1.8 Gy/day×25 day)の放射線が同時照射された。また,手術はCRT 終了の6~8 週間後に行われた。CRT 後の下部消化管内視鏡所見と切除固定標本から腫瘍の肉眼型を0─II like 型,2 型,5 型に群別した。摘出した下部直腸の切除標本を病理組織学的にレビューし,残存癌および周囲の線維化組織を固定標本写真上にマッピングして上記で群別した肉眼型ごとの臨床病理学的因子および分布の特徴を解析した。肉眼型は0─II like 型16 例,2 型15 例,5 型が5 例であった。組織学的には3 例(8.3%)にpCR が得られていたが,多くの症例で病変深層に癌が残存し,病変浅層のみに癌が残存する症例は認めなかった。また,0─II like 型と2 型を比較すると,線維化組織および残存癌の範囲ともに0─II like 型で有意に小さいという結果であった(p<0.05)。残存癌の広がりに関しては,2 型で腫瘍の肉眼的境界の周囲に限局していたのに対し,0─II like 型では腫瘍の肉眼的境界から,より肛門側に散在性に分布する傾向を認めた。CRT は腫瘍範囲の縮小には有効であるが,側方および深部方向の残存癌には注意が必要である。腫瘍の肉眼型により側方方向の癌の分布が推測できる可能性が示唆された。 -
高度進行大腸癌に対する術前化学療法
40巻12号(2013);View Description Hide Description背景と目的: 治癒切除が得られなかった大腸癌の成績は良好とはいい難い。術前化学療法(NAC)により治癒切除率を上昇させ,再発率を低下できる可能性があり,当科ではいわゆるmarginally resectable な高度進行大腸癌に対し,NAC を推奨している。進行大腸癌に対するNAC の治療方法,成績を報告する。対象と方法: 当科でNAC を施行した進行大腸癌10 例を対象とした。レジメンはFOLFIRI─3 に分子標的治療薬を組み合わせて4~8 コース施行し,終了後4~6 週で根治術を施行した。結果: 画像上の治療効果は,CR 0 例,PR 5 例,SD 5 例で,PD は1 例も認めなかった。9 例でR0 の手術が施行され,組織学的治療効果はgrade 1a 5 例,1b 3 例,2 が2 例であった。全例生存中であり,2 年無再発生存率が62.2%と良好な成績が得られた。結語: 少ない症例で短い観察期間ではあるが,NAC の施行により進行大腸癌の切除率を上げ,再発率を下げられる可能性が示唆された。 -
切除可能転移巣を有するStage IV 大腸癌の術前補助XELOX±BV 療法の経験
40巻12号(2013);View Description Hide Description今回われわれは,当施設において2009 年10 月~2012 年12 月に施行された切除可能転移巣を有するStage IV 進行大腸癌15 例に対して術前補助XELOX±bevacizumab(BV)療法を施行した。XELOX+BV 併用療法9 例,XELOX 療法を6 例に施行した。全症例の投与サイクル中央値は4 コース,奏効率は73.3%,全症例にR0 手術が施行された。治療期間内にGrade3 以上の高度有害事象は認めなかった。また,特記すべき周術期合併症は認めなかった。観察期間中央値は670 日で無病生存期間(DFS)中央値は522 日であった。今回,われわれが検討した切除可能転移巣を有するStage IV 進行大腸癌に対する術前補助XELOX±BV 療法は特記すべき周術期合併症もなく,術後早期再発抑制効果を含めた効果,安全性に関して満足できる治療法である可能性が示唆された。 -
切除企図・切除可能膵癌に対する術前化学療法の有効性
40巻12号(2013);View Description Hide Description切除可能膵癌に対する標準治療は,手術先行+術後補助化学療法とされるが,企図治療どおりに治療資源が投入できた場合の2 年推定生存率が50%弱と不良である。さらに実際には,治療企図例のなかに治療開始後の非切除因子や化学療法遂行不能例があり,企図例全体では実生存率はより低いと考えられる。膵癌に対する術前治療は,未だ探索的検討のみであり,有効性は十分明らかにされていない。切除企図膵癌に対する術前GS 療法の有効性を明らかにする。2006~2012 年に,当科で切除企図後に治療開始した241 例中,治療前画像で主要動脈への浸潤を疑う切除境界膵癌は83 例で,本邦手術適応(門脈合併切除を許容)からみた「切除可能・切除企図膵癌」は158 例であった。そこから,術前GS 療法(N 群)39 例を手術先行(S 群)93 例と比較した。生存期間を主評価項目,R0 切除率・真のR0 率(R0 かつ術後腫瘍マーカー正常化)・N0 率を副次評価項目として両群をretrospective に比較した。年齢,性別,腫瘍主座に両群で有意差を認めなかった。切除率は,N 群36 例(92%),S 群80 例(86%)で有意差はなかった(p=0.31)。非切除例を含む,intention─to─treat 解析での全生存期間中央値はN 群39.4 か月でS 群20.8 か月に比べ有意な延長を認め,2 年生存率はN 群74.9%,S 群46.6%であった(p=0.0009)。R0 切除率・真のR0 率・N0 率はいずれも,N 群(各85,69,44%)でS 群(各72,48,24%)に対して高率に達成されていた(各々p=0.11,p=0.028,p=0.022)。術前GS 療法は,本邦の標準的な手術適応で切除を企図した場合に切除機会を減じることなく,生存期間を延長する可能性が示唆される。現在,厚生労働科学研究費の補助を受け,膵癌術前化学療法としてのGS 療法の第II/III 相試験(Prep─02/JSAP─05): 全国多施設共同ランダム化比較試験(UMIN─No. 000009634)で検証を開始している。 -
術前化学(放射線)療法を行った切除可能および境界膵癌の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description目的: potentially resectable(PR)膵癌,borderline resectable(BR)膵癌のNAC およびNAC─RT の効果を判定すること。対象: 術前加療を受けた27(PR 膵癌14,BR 膵癌13)例を対象とした。術前化学療法内容は,NAC 15 例,NAC─RT12 例であった。結果: RECIST 評価による抗腫瘍効果判定で,PR 10 例(37%),SD 11 例(41%),PD 6 例(22%)であった。PD 理由は全例局所増大であった。PR 膵癌とBR 膵癌における根治切除率は,PR 膵癌57%,BR 膵癌38%であった。手術拒否以外の非切除理由は,PR 膵癌において腫瘍増大が4 例,腹膜播種1 例であり,BR 膵癌で腫瘍増大2 例,繰り返す重篤な胆管炎・膵炎によるものが2 例であった。PR 膵癌の根治手術症例8 例中,最終病理診断にてダウンステージが得られた症例は3 例あり,アップステージは1 例であった。2 例に組織学的リンパ節転移を認め,2 例に術後4 か月に腹膜播種を認め,また,術後3 年以上生存症例は1 例あった。BR 膵癌の根治手術症例5 例中4 例にダウンステージ,1 例にアップステージを認めた。組織学的効果として,Evans 分類のII a が1 例あった。5 例中3 例に再発を認めており,再発形式はリンパ節転移,肝転移,腹膜播種であった。再発を認めていない2 例において3 年以上無再発生存中である。まとめ: NAC/NAC─RT により,組織学的にダウンステージングを得られた症例もあり,膵癌術前加療を行う有用性が示唆された。しかし,加療後腫瘍増大により切除不能となった症例や加療後早期に再発した症例もあり,今後,予後を含めたさらなる症例の蓄積が必要である。 -
光力学診断法による胆汁細胞診と術前化学療法への対策の試み
40巻12号(2013);View Description Hide Description5─アミノレブリン酸(ALA)の代謝産物であるprotoporphyrin IX(PPIX)の特性を利用した光力学診断法(photodynamicdiagnosis: PDD)に基づいて,細胞診への応用の可能性を検討した。この原理を基礎的方法で確認した後,胆道癌症例で臨床的に胆汁細胞診を試みた。細菌の混在によるfalse─positive を回避するため,独自に開発したシステムを本法に導入した。これにより,photodynamic cytodiagnosis(PDCD)における有用性が期待される結果が得られた。 -
胃癌肝転移に対する肝動注療法を中心とする集学的治療
40巻12号(2013);View Description Hide Description胃癌の異時性孤立性肝転移症例4 例に肝動注療法を行い,その後それ以上の再発がなければ手術,ラジオ波焼灼術(RFA)を追加して予後の改善を図ったので報告する。症例は69~79 歳,男性4 人。胃癌はStage IA 2 例,IB 1 例,IIIA が1 例。画像上,再発診断までの期間は7,10,31,60 か月であった。その後,全身化学療法を追加されたがPD となった症例が2 例,RFA を施行された症例が1 例であった。術前の肝動注療法(HAI)はポート埋め込みの上,毎週5─FU(500~750mg)を投与した症例が1 例,残りの3 例はポート埋め込み,または一過性のチューブ留置の上,短期高用量の5─FU(6,000mg/週)持続投与(短期動注)を3~4 回施行した。効果はPR 3 例,NC が1 例であった。2 例は摘出,1 例はRFA,1 例は摘出後別の箇所にRFA を追加した。全例に術後のHAI を施行した。結果2 例は12,21 か月無再発生存中。1 例は前立腺癌が新たに判明,骨盤内リンパ節転移,坐骨転移が生じたが22 か月外来にて通院中。最後の1 例は肝動脈支配でない残肝に再発したがHAI を追加しながら,36 か月外来通院中である。HAI を中心とした集学的治療は胃癌肝転移に有効と思われた。 -
胃癌S─1 術後補助化学療法後の再発症例における原発巣のHER2 の発現割合と臨床的意義
40巻12号(2013);View Description Hide Description目的: S─1 補助化学療法後の再発症例におけるhuman epidermal growth factor receptor 2(HER2)の陽性割合,臨床病理学的特徴,予後を検討した。対象および方法: 2002 年3 月~2010 年6 月に,D2 術後にS─1 術後補助化学療法を施行し再発した38 例を対象とした。HER2 の判定はToGA 試験に基づいて行った。結果: IHC 法およびFISH 法によるHER2 のスコアリング結果は,IHC 0: 27 例/IHC 1+: 4 例/IHC 2+ and FISH negative: 3 例/IHC 2+ and FISH positive: 1 例/IHC 3+: 3 例で,HER2 陽性は4 例(10.5%)であった。HER2 陽性再発胃癌では,分化型が多く血管侵襲が高頻度であったが,再発形式や予後はHER2 陰性胃癌と間に差を認めなかった。結論: S─1 補助化学療法後の再発胃癌におけるHER2 陽性率は,初発StageII/III 胃癌とほぼ同等であり,S─1 補助化学療法はHER2 にかかわらず有効であった可能性が示唆される。 -
病理学的分子マーカーからみたStage II 大腸癌の予後規定因子
40巻12号(2013);View Description Hide Description大腸癌治療ガイドラインで補助化学療法の適応とされる再発高リスクstage II の選別基準は明らかではない。今回,病理学的分子マーカーからみたstage II の予後規定因子を解析し,術後補助療法の治療戦略を検討する。対象・方法: 1994 年9月~1997 年8 月,1999 年1 月~2003 年9 月に集積された治癒切除stage II の316 例を対象とした。病理組織学的因子と術後成績から再発危険因子を解析した。結果: 再発転移10.8%,5 年無再発生存率87.8%,5 年生存率は93.8%。単変量解析で壁深達(SE+SI),リンパ管侵襲(ly2+3),静脈侵襲(v2+3),簇出(grade 2+3),神経侵襲(PN1)が有意な再発危険因子であった。多変量解析では簇出(p=0.008),壁深達(p=0.008),静脈侵襲(p=0.034)が有意で,これら3 因子によるリスク因子数別の解析で2 個以上の症例はstage III と同等の予後を示した。結論: stage II の壁深達,簇出,静脈侵襲のうち2 因子を満たす場合は,再発高リスク症例として補助化学療法が考慮される。 -
サブタイプ別にみた乳癌術前化学療法の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description当院における術前化学療法(NAC)について検討した。対象は2004 年1 月~2013 年1 月の間にNAC を施行した69症例。病理学的治療効果はCR 14 例(20.3%),PR 37 例(53.6%)であり,73.9%にPR 以上の腫瘍縮小効果がみられた。サブタイプ別に検討するとluminal type 21 例中CR 0 例/PR 12 例(57.1%),luminal─HER2 type 6 例中CR 0 例/PR 4 例(66.7%),HER2 type 17 例中CR 10 例(58.8%)/PR 7 例(41.2%),triple negative 25 例中CR 4 例(16%)/PR 14 例(56%)であった。HER2 type のうちtrastuzumab 併用レジメンが施行された12 例では,CR は9 例(75%)にみられた。HER2 typeに対するNAC では高い病理学的完全奏効率が報告されている。サブタイプ診断に基づいた治療方針を選択することが重要と考えられる。 -
10 個以上の大腸癌多発肝転移に対する外科治療成績
40巻12号(2013);View Description Hide Description10 個以上の大腸癌肝転移切除例の臨床経過を検討した。大腸癌肝転移切除455 例中,1~4 個336 例,5~9 個71 例,10個以上48 例[化学療法(化療)なし17 例,化療あり31 例]。個数別5 年生存率(OS)/3 年無再発生存率(DFS)は1~4個:53.7%/33.7%,5~9個: 31.7%/15.8%,10 個以上: 27.7%(n=5)/6.9%(n=3)。個数別の化療有無による5 年OS(化療あり/なし)は1~4個: 52.7%/56.1%(not significant: ns),5~9個: 49.9%/13.1%(p=0.0003),10 個以上: 42.3%(n=5)/0%(p<0.0001)と5 個以上で化療が有効であった。5 年以上生存例はLV5FU2(5─FU+Leucovorin)肝動注化療後切除2例,Leucovorin+5─FU+oxaliplatin(FOLFOX)後切除2 例,肝切後FOLFOX 補助化療1 例であった。10 個以上の多発肝転移例でも切除+化療31 例中5 例の術後5 年生存が得られた。化療+積極的再発巣切除により長期予後向上の可能性がある。 -
補助化学療法時代の多発肝転移に対する治療戦略
40巻12号(2013);View Description Hide Description大腸癌に対する化学療法の進歩により,多発肝転移に対する補助化学療法を含めた治療戦略が必要である。今回われわれは,肝転移を初回切除した91 症例のうち,初回切除数が7 個以上であった10 症例の臨床経過を検討した。切除個数は21個,19 個,17 個,9 個がそれぞれ1 例,7 個が6 例であった。門脈塞栓術を3 例に施行し,そのうち2 例は二期的肝切除を施行した。肝転移切除後に補助化学療法を10 例全員に施行した。再発は全症例に認めたが,6 例は肝再発のみであり,5 例に再肝切除を施行した。平均観察期間25 か月の時点で,無再発生存4 例,再発化学療法中4 例,原病死は2 例であり,生存曲線は1~3 個,4~6 個の群と同等であった。大腸癌多発肝転移の治療戦略では,拡大肝切除,門脈枝塞栓術,二期的肝切除,再肝切除など肝病変に対する積極的な外科切除に加え,術後化学療法を取り入れることで生存成績の向上が期待できる。 -
大腸癌肝転移の化学療法後のCR は治癒を意味するものか
40巻12号(2013);View Description Hide Descriptionわれわれは,多発肝転移完全切除後に出現した単発肝転移巣に対し化学療法を行い完全奏効(CR)となったが,その後同部位に単発で再燃した症例を経験した。症例は67 歳,男性。2008 年6 月,直腸癌(Rs)による腸閉塞にてHartmann 手術を施行。pSS,pN2,cH2(Grade C)の所見であった。2008 年8 月多発肝転移(9 か所)に対して,肝拡大左葉切除および肝部分切除により肝転移巣を完全切除した。術後2 か月より補助化学療法としてmFOLFOX6 を開始した。しかし,術後3 か月の腹部CT で肝S7 に単発の5 mm の小結節がみられた。再肝切除を希望せず,化学療法を継続した。術後7 か月後の腹部CT にて小結節は消失した。mFOLFOX6 は10 コースで終了し,内服の抗癌剤へ変更した。しかし,その後約5 か月後の腹部CT 検査で肝S7 の小結節(1.5 cm)が同部位に再度出現(単発)した。mFOLFOX6,FOLFIRI に分子標的治療薬を付加した化学療法を継続し現在に至る。再発肝転移巣出現後4 年3 か月が経過しているが,肝内転移巣は単発のままであり他臓器転移もみられない。 -
大腸癌同時性肝転移に対するConversion Therapy の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description切除不能な大腸癌肝転移症例を化学療法後に切除可能とする治療戦略であるconversion therapy の有効性が報告されている。当科で経験した同時性肝転移93 例を対象にconversion therapy の適切な治療方針について考察した。conversiontherapy 群は12 例であり,肝転移因子の臨床病理学的背景因子に有意差はなかった。一次治療の内容はoxaliplatin を含めた多剤併用療法が67%,投与期間は3~24 コースであった。conversion therapy 症例の5 年生存率は46%であり,切除可能肝切除症例と比較して有意差は認められなかった。有効な化学療法により,conversion therapy 症例を増やすことが大腸癌同時性肝転移症例の生存率の改善に重要であると考えられた。今後は,化学療法の内容と肝切除術式の適切なバランスについても検討の必要があると考えられた。 -
膵癌術後肝転移に対するGemcitabine を用いた肝動注化学療法施行症例の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description2008~2010年までに当科で経験した膵癌術後肝転移症例のうち,gemcitabine( GEM)を用いた肝動注化学療法を行った7 症例について治療効果と予後の検討を行った。また,GEM 肝動注投与症例について末梢血中のGEM 濃度を測定し,静脈投与症例と比較検討した。有害事象は骨髄抑制とカテーテルトラブルを6 例に認めたが,重篤な合併症は認めなかった。6例に病勢制御効果(PR 3 例,SD 3 例)が得られ,肝転移再発後の生存期間中央値は14 か月であった。また,別に膵胆道癌症例を対象として行った肝動注後末梢血中のGEM 濃度を測定した8 症例における血中濃度の解析では,400~800 mg/標準肝容積(standard liver volume: SLV)の投与では静脈投与の約1/10 以下であったが,1,000 mg/SLV では1,000 mg/m2 を静脈内投与した濃度とほぼ同じであった。膵癌術後の肝転移に対して肝動注化学療法は有効であり,800 mg/SLV が至適投与量であると考えられた。 -
再発肝細胞癌に対しSorafenib 投与後に腹腔鏡下肝切除術を施行した3 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例1: 63 歳,女性。53 歳時にC 型肝炎関連HCC に対し手術施行後,両葉に多発再発病変を認めTACE およびHAICを施行後sorafenib(200 mg/日)を2 か月内服。その後,外側区域の再発腫瘍のみが急速増大を認め,腹腔鏡下肝外側区域切除術を施行した。症例2: 54 歳,男性。53 歳時にC 型肝炎関連HCC に対し二度手術を施行。術後再発を認め,sorafenib(400mg/日)を1.5 か月内服したところ肝内再発巣は縮小したが,門脈背側(No. 13)リンパ節に腫大を認め,腹腔鏡下肝部分切除術,リンパ節摘出術を施行した。症例3: 56 歳,男性。52 歳時にC 型肝炎関連HCC に対し手術施行後,両葉に再発を認めTACE を3 回施行後sorafenib を内服(400 mg/日→ 600 mg/日)。活動性病変が左葉に限局したため,腹腔鏡下左葉切除術を施行した。 -
Vp4 肝細胞癌の積極的切除と術後集学的治療
40巻12号(2013);View Description Hide Description目的: 高度門脈侵襲を伴う肝細胞癌は予後不良で,治療法は確立していない。地域中核病院である当院におけるキャンサーボード導入後,5 年間のVp4 肝細胞癌に対する治療成績について検討した。対象と方法: 2007 年7 月~ 2012 年6 月までのVp4 肝細胞癌8 例で,切除4 例,非切除4 例。切除例では肝葉切除・門脈内腫瘍栓抜去術を施行した後,肝動脈化学塞栓療法(TACE)3 例,肝動注療法(HAI)2 例,ソラフェニブ1 例の術後集学的治療を可能なかぎり行った。非切除例ではHAIを1 例に施行。成績: 切除例はいずれも耐術し,在院死亡はなかった。切除例の術後生存期間は中央値344.5 日で非切除例では67 日であった。結論: Vp4 肝細胞癌に対して積極的な切除を行い在院死亡例はなかった。減量肝切除であっても,術後集学的治療療法としてTACE やHAI を反復施行可能な症例では1 年以上の予後が得られた。耐術能があれば積極的な切除が有効であることが示唆された。 -
集学的治療によりCR が得られた進行再発肝細胞癌1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は76 歳,女性。2007 年に肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC)に対し肝部分切除後,肝内再発に対し2008年3 月に経カテーテル的肝動注塞栓術(transarterial chemoembolization: TACE),2009 年1 月と9 月にも同様にTACE を施行した。2009 年10 月に回盲部に単発の腹膜播種を認め,回盲部切除術を施行後,sorafenib 内服を開始した。2009 年12 月と2010 年3 月に肝内再発に対しTACE を施行した。2010 年6 月PET にて肝内再発1 か所および左卵巣転移を認め,限局していることから肝部分切除および左卵巣摘出術を行った。その後もsorafenib 内服継続していたが,2011 年2 月に両肺に多発転移巣を認めた。sorafenib は継続しつつcisplatin 全身投与を行った。計3 コース施行後,画像上肺転移巣は消失し,約2 年経過した現在も無再発経過中である。切除およびsorafenib を中心とした集学的治療により根治が得られた進行再発HCC の1 例を経験した。 -
進行肝細胞癌に対する粒子線治療後にPIHP を施行した症例の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Descriptionこれまでわれわれは,減量肝切除に経皮的肝灌流化学療法(PIHP)を組み合わせた2 段階治療の有用性について報告してきたが,肝機能不良で減量切除困難な症例の対策が課題であった。その対策として主腫瘍を粒子線治療で制御し,残存病変をPIHP で制御する試みを近年行っており,その安全性と有効性について検討した。対象は2006~2013 年に切除不能肝細胞癌に対し,粒子線治療施行後にPIHP を局所制御目的で施行した6 例。患者背景は平均年齢64 歳,平均腫瘍径は6.2 cm(2.0~10.8 cm)で全例が肝硬変。粒子線治療(陽子線5 例,炭素線1 例)の主腫瘍に対する局所制御は良好であった。PIHPではdoxorubicin 100 mg/m2,mitomycin C 30 mg/m2 を標準量として肝動注。PIHP の副作用は全例にGrade 2 以上の好中球減少を認めたが,重篤な肝機能障害,胆管障害はみられなかった。PIHP の有効性は奏効率50%(partial response 3 例,stable disease 3 例)であり,生存期間は粒子線治療後で平均26.9 か月であった。粒子線照射後であってもPIHP は安全に施行可能であり,局所制御効果は比較的良好であった。予後延長効果に関しては今後の検討が必要である。 -
幽門狭窄を伴う胃癌に対する十二指腸ステントの意義と問題点
40巻12号(2013);View Description Hide Description当院で十二指腸ステントを留置した胃癌患者11 例を対象とし,幽門狭窄を伴う胃癌における十二指腸ステント治療の意義と問題点を検討した。ステント留置手技に関する合併症はなく,経口摂取開始日の中央値は3(1~7)日であった。全例で経口摂取状況が改善し,経鼻胃管挿入例では全例で抜去が可能となった。一方で,腹膜播種を伴う症例ではステント留置後も経口摂取量が不十分で,経静脈的な栄養補充が必要となることが多かった。幽門狭窄を伴う胃癌に対し,ステント留置術は低侵襲に経口摂取状況を改善し,緩和医療として有用と思われる。 -
狭窄を伴う切除不能・進行胃癌に対する胃十二指腸ステント術の有用性に関する検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description目的: 狭窄を伴う進行・再発胃癌に対する胃十二指腸ステント術(ステント術)の有用性について検討した。対象と方法: 2007~2012 年までの狭窄を伴う切除不能・進行再発胃癌症例20 例を対象とした。Roux─en─Y 型胃空腸バイパス術を行ったバイパス群12 例とWallFlexTM 十二指腸用ステントを用いたステント術を行ったステント群8 例で臨床経過をretrospectiveに比較検討した。結果: 背景では,ステント群はバイパス群と比較してperformance status は悪く,化学療法施行後の症例が多かった。両群とも術後合併症は認めなかった。食事開始時期の中央値は,バイパス群,ステント群で4 日,3 日で(p=0.0008),1 か月後のgastric outlet obstruction scoring system スコアは両群とも全例で改善していた。術後の経口摂取可能期間,術後生存期間は,それぞれバイパス群で301 日,345 日,ステント群で151 日,161 日であった(p=0.0698,p=0.0070)。結語: ステント術は化学療法後にも安全に施行可能で,早期に経口摂取を開始することが可能である。 -
切除不能幽門狭窄胃癌に対するステント治療の成績─胃空腸吻合術との比較─
40巻12号(2013);View Description Hide Description胃癌幽門狭窄に対するステント治療は低侵襲治療として期待されている。切除不能幽門狭窄胃癌に対して,ステント留置または胃空腸吻合術(GJ)を施行した38 例を対象として,ステント留置例を緩和目的のP 群(9 例)と積極的治療目的のA 群(12 例)に分類し,経口摂取改善状態,経口摂取可能期間,生存期間についてGJ 群(17 例)と比較検討した。ステント留置例では高度腹膜播種やPS 不良例が多かったが,19 例(90.5%)で経口摂取が可能となり,ステント留置後化学療法施行例では有意に経口摂取が改善した。しかし,経口摂取可能期間/生存期間中央値は,P 群1.8/2.8 か月,A 群3.2/4.8 か月と,GJ 群の11.8/12.7 か月と比べ短い傾向であった。ステント治療は緩和治療として有効な治療であるが,長期成績は十分とはいえない可能性があり,前向き試験による検討が必要である。 -
切除不能胃癌に対するステント治療とバイパス手術の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description狭窄を伴う切除不能進行胃癌に対して,内視鏡的ステント留置を施行した9 例(以下ステント群)とバイパス手術施行の9 例(以下バイパス群)について,周術期合併症,食事摂取状況および治療成績を比較検討した。周術期合併症はステント群でステント逸脱を1 例,バイパス群で癒着性腸閉塞を1 例に認めた。食事摂取の開始時期は,ステント群第1 病日,バイパス群第4 病日,食事摂取可能期間は各55 日,113 日であった。化学療法導入率および施行期間に差はなく,生存期間はステント群83 日,バイパス群127 日であった。狭窄を伴う切除不能進行胃癌に対する内視鏡的ステント留置は,安全に施行可能で,QOL の改善にも有用であった。 -
通過障害を伴うStage IV 胃癌術後化学療法における腸瘻栄養管理
40巻12号(2013);View Description Hide Description目的: 通過障害を伴うStage IV 胃癌では術後に化学療法を施行することがしばしばあるが,術後の低栄養状態が問題となる。腸瘻栄養により術後の栄養状態を維持しながら化学療法を継続可能になると考え,治療成績について検討した。方法:2008 年1 月~2011 年12 月までの間に当科を受診し,胃癌手術と腸瘻造設術を行ったStage IV 胃癌40 例を対象とした。結果:術式は胃全摘術13 例,胃切除術20 例,胃空腸バイパス術7 例であった。腸瘻造設術における合併症は認めず,チューブ閉塞を4 例(10%),チューブ逸脱を1 例(2.5%)に認めた。化学療法は37 例(92.5%)に開始することができ,継続期間は330(41~721)日であった。考察: Stage IV 胃癌手術症例では術後の経口摂取が不安定な時期に化学療法開始を余儀なくされる。腸瘻栄養を術後早期に開始することにより,在宅移行や化学療法の継続において良好な成績を期待できる。 -
進行再発癌患者の消化管閉塞に対する緩和手術の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description進行再発消化器癌による消化管閉塞に対する緩和手術の意義について検討する。2010 年1 月~2012 年12 月までの3 年間に癌性消化管閉塞に対して緩和手術を施行した20 例を対象として,臨床所見や術式,術後経過,予後を検討した。原疾患は,結腸癌5 例,直腸癌4 例,胃癌4 例,子宮癌3 例,膵癌2 例,膀胱癌1 例,肛門部皮膚癌1 例であり,狭窄部位は小腸8例,直腸12 例,結腸2 例であった。術式は,ストーマ造設術13 例,切除吻合6 例,消化管バイパス術4 例であった。術後に食事摂取可能であった症例は18 例(90%)であったが,4 例(20%)に術後再イレウスを認めた。予後は中央値3(0~15)か月であったが,術後2 か月以内の症例が6 例(30%)あり,手術適応の再検討が必要であると思われた。消化管閉塞に対する緩和手術は,そのQOL 改善のために非常に有用な手段である。生命予後と患者の希望,手術による症状緩和の可能性を十分に検討して手術を行う必要があると思われる。 -
癌性腸閉塞に対する腹腔鏡下ストーマ造設術の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description切除不能進行癌による腸閉塞に対する緩和手術として,腹腔鏡下ストーマ造設術症例を検討した。対象: 2009~2012 年までの4 年間に施行した腹腔鏡下ストーマ造設術24 例を検討した。結果: 手術時間の中央値は59 分で,手術合併症としてはSSI がなく,DIC が1 例,AMI が1 例であった。術後の減圧チューブ抜去率100%・点滴抜去率88%,食事再開率100%,退転院率83%,後治療施行率46%と良好であった。手術関連死(30 日以内死亡)を2 例(8%)に認めた。予後については3か月生存率58%,1 年生存率29%,MST は約4 か月であった。術後に化学放射線治療などの後治療を施行し得た症例では,生存期間が有意に長くなった。開腹手術との比較では,腹腔鏡の群において手術時間が有意に短く,SSI が少なかった。考察:腹腔鏡下ストーマ造設術は,切除不能・進行癌に対する緩和的ストーマ造設術によい適応であると考える。 -
切除不能膵癌の胆道閉塞に対するバイパス術とステント留置の比較
40巻12号(2013);View Description Hide Description切除不能膵癌に伴う胆道閉塞に対する治療方針は様々で,一定の見解は得られていない。2010~2012 年に当院で術中に切除不能と診断され,予防的にバイパス術を施行した8 症例(B 群)を,画像検査などから切除不能膵癌と診断され,胆道閉塞に対して内視鏡下にメタリックステントを留置した7 症例(S 群)と比較し,その合併症や予後について検討した。早期合併症として,B 群で胆管炎と創感染1 例,肝膿瘍1 例を認めたが両群間で在院期間に有意な差はなく,長期合併症にS 群でステント脱落により再ドレナージを要した1 例,十二指腸狭窄で胃空腸バイパス術を要した2 例を認めた。両群で予後に差はなく,長期生存例も存在した。切除不能膵癌の胆道閉塞に対しては,侵襲性の低さから胆道ステント留置が望ましい。しかし切除目的で開腹し,術中所見で切除不能と診断された膵癌に対しては,バイパス術が推奨されると考えられた。 -
イマチニブが著効した小腸GIST 多発肝転移再発の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は73 歳,男性。2001 年9 月,小腸腫瘍に対して小腸部分切除術,横行結腸部分切除術,左腎摘出術を施行した。病理組織はc─kit が陽性で小腸原発GIST と診断された。腫瘍径は10 cm,核分裂像数は2/50 HPF で,高リスク群の小腸gastrointestinal stromal tumor(GIST)であった。特に術後補助治療はされず,外来にて経過観察していたところ,2005 年10 月の腹部CT 検査にて肝S8(21 mm),S7(28 mm)にSOL を指摘され,小腸GIST 多発肝転移再発と診断された。十分な説明の後,イマチニブ400 mg/日の内服を開始した。内服後2 か月のCT 検査で腫瘍の縮小がみられたが,副作用としてgrade 3 の白血球減少と全身倦怠感を認めた。現在1 週内服,1 週休薬にてイマチニブ400 mg を継続し,肝再発後7 年7 か月,肝転移病巣は囊胞変性状態となりCR を維持している。GIST の高リスク群に対してはイマチニブの術後補助治療を考慮する必要がある。 -
化学療法が奏効し穿孔した小腸T 細胞性悪性リンパ腫の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description患者は71 歳,男性。発熱と黒色便を主訴に近医を受診した。小腸カプセル内視鏡検査にて空腸中部に出血を伴う潰瘍性病変を認めた。sIL─2R 5,680 U/mL と高値であり小腸原発の悪性リンパ腫が疑われた。小腸内視鏡検査にて空腸に潰瘍を認め,生検にてT 細胞性悪性リンパ腫(peripheral T─cell lymphoma not otherwise specified: PTCL─NOS)と診断された。腹水を認め,Lugano 分類ではstage IIE であった。当院血液内科に転院となり化学療法が施行された。pirarubicin hydrochloride,cyclophosphamide,vincristine sulfate,prednisolone(THP─COP)療法4 コース目を施行した翌日に,大量の排便とともに腹膜刺激症状を伴う腹痛が出現した。CT にて腹腔内に遊離ガスを認めたため,消化管穿孔と診断し,同日緊急で開腹術を施行した。Treitz 靱帯から180 cm の空腸に3.5×2.0 cm の穿孔部を認めた。約20 cm の小腸を切除し,機能的端々吻合を行い,手術を終了した。術後,汎血球減少を認めG─CSF の投与を行ったものの,経過はおおむね良好であり,術後第21 病日にTHP─COP 療法5 コース目を施行した。化学療法による腫瘍縮小効果に伴い穿孔したと考えられた。 -
原発性小腸癌の治療成績と遺伝子発現解析からみた化学療法の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description原発性小腸癌に対する標準的化学治療は確立されておらず,抗EGFR 抗体薬の適応基準も明らかになっていない。また,小腸癌はLynch 症候群(LS)関連癌の一つでもあり,MSI─H であるLS 大腸癌のように5─FU 系抗癌剤に抵抗性を示す可能性も示唆されている。今回,当科で経験した原発性小腸癌8 例を対象とし,LS との関連性とK─ras 遺伝子変異を調べ,適正な化学療法について考察した。免疫組織化学染色で全例にミスマッチ修復蛋白(MLH1,MSH2,MSH6,PSM2)の正常な発現が確認され,LS 癌である可能性は否定的であった。K─ras 遺伝子変異解析では,半数にコドン12 領域の変異が認められた。実臨床において原発性小腸癌がLS 関連癌である可能性は低く,5─FU ベースの化学療法は適正であると考えられた。また,K─ras 野生型症例に対する抗EGFR 抗体治療を施行することは今後検討の余地があると考えられた。 -
Docetaxel+S─1 療法が奏効し腹膜転移のコントロールが得られた原発性空腸癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description多発腹膜転移を伴った小腸癌に対し,原発巣切除後に docetaxel( DOC)+S─1 療法を行い,腹膜転移のコントロールが得られた症例を経験したので報告する。症例は60 歳,男性。2012 年7 月19 日の人間ドックでCA19─9 の高値を認め,腹部CT で小腸腫瘍が疑われ精査目的に当院消化器内科に入院となった。小腸内視鏡で門歯より約120 cm の部位に発赤を伴う全周性の壁肥厚を認めた。生検結果でadenocarcinoma であった。造影CT で造影効果を伴う壁肥厚,リンパ節転移,腹膜播種結節を認めた。PET─CT で原発巣に一致しSUVmax 6.09 の集積を認めた。以上よりT4N1M1 の進行空腸癌と診断した。空腸の全周性の狭窄を来しており,まず空腸部分切除を行った。術後,腹膜播種を認めていたためS─1 をkey drug としDOC+S─1 を適応した。術後9 か月の現在,化学療法は奏効し腫瘍マーカーは正常化,画像上CR を継続している。 -
貧血を契機に発見された空腸癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は85 歳,女性。息切れを主訴に近医を受診した。貧血を認め,出血源精査目的にて当院に紹介受診となった。上部下部内視鏡検査を施行するも異常を認めなかった。CT 検査にて小腸に7 cm にわたる壁肥厚を認め,小腸癌の存在が疑われた。経口ダブルバルーン内視鏡検査を行い,空腸にほぼ全周性の潰瘍性病変を認めた。腫瘍は狭窄を呈していた。生検結果は,signet─ring cell carcinoma であったため,空腸部分切除を行った。切除標本の病理結果は,低分化腺癌,印環細胞癌,粘液癌,T2(MP),N0,H0,P0,stage I(UICC 第7 版)であった。術後7 か月経過したが,無再発生存中である。小腸癌の発生率は,一般的に消化管悪性腫瘍全体のわずか1~2%と報告されている。今回われわれは,貧血を契機に発見された空腸癌の1 例を経験したので報告する。 -
胃全摘術後に再建空腸パウチ拡張とパウチ内空腸癌を発症した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description胃全摘術後に再建空腸パウチ拡張とパウチ内空腸癌を発症し,パウチ全摘術を施行した1 例を経験したので報告する。症例は60 代,男性。1994 年に胃MALT リンパ腫にて胃全摘術,空腸パウチ再建術(ρ─interposition)を施行した。2012 年7 月下旬よりイレウス様症状を認め,改善が得られないため救急外来を受診し,空腸パウチ拡張の診断にて消化器内科に入院となった。保存的加療にて改善するが症状を繰り返し,精査にて十二指腸癌,パウチ内空腸癌が認められたため,8 月初旬に外科紹介となった。前者に対しては内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行し,後者に対しては空腸パウチ全摘術,Roux─en─Y再建術を施行した。術後創感染を認めたが改善し,術後15 病日に退院となった。 -
FOLFOX 療法が奏効した再発十二指腸癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description60 歳,女性。内視鏡にて十二指腸下行脚に2 型腫瘍を認めた。生検にて腺癌と診断され,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した。病理学的に原発性十二指腸癌と診断され,3 個のリンパ節転移を認め,S─1(80 mg/m²,2 週投与1 週休薬)による術後補助化学療法を開始した。1 年後のCT 検査にて腹部大動脈周囲の多発リンパ節腫脹を認めた。再発と診断し,gemcitabine による化学療法を開始した。8 か月後のCT 検査にて肺転移の出現を認めたため,5─fluorouracil(5─FU)/Leucovorin/oxaliplatin(mFOLFOX6)療法に変更した。6 コース終了後のCT にてPR の効果が得られ,その後1 年間PR を継続している。mFOLFOX6 療法は,再発十二指腸癌に対する有力な治療法になり得ると考えられた。 -
十二指腸未分化癌の1 切除例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は40 歳,男性。主訴は心窩部痛。心窩部痛が半年間持続したため,精査加療目的に当院紹介受診となった。上部消化管内視鏡検査にて十二指腸下行脚に半周性の3 型病変を認めた。腹部造影CT では,十二指腸下行脚に潰瘍形成を伴う腫瘤を認めた。周囲への浸潤,リンパ節転移,遠隔転移を疑う所見はなかった。以上の所見より,原発性十二指腸癌と診断し,膵頭十二指腸切除術,D2 郭清術を施行した。摘出標本では,腫瘍は大きさ4.7×7.0 cm の3 型病変であった。病理組織学的所見で不整形の核をもつ異形細胞が増殖する像がみられた。PAS 染色にて明らかな粘液の確認はできず,腺癌への分化傾向もみられず,未分化癌と診断した。術後経過良好で合併症なく退院,術後17 か月経過の現在,無再発生存中である。十二指腸原発未分化癌はまれな疾患で調べ得る限り,本例は9 例目である。 -
悪性十二指腸狭窄に対する十二指腸ステントの有用性
40巻12号(2013);View Description Hide Description悪性十二指腸狭窄で通過障害を来し,飲食が困難になることがある。このような症例に対して従来は胃空腸吻合術が行われてきたが,手術適応にならない症例もあった。そんななか,2010 年4 月に悪性十二指腸狭窄に対する内視鏡的十二指腸ステント留置術が保険適応となった。われわれは,悪性十二指腸狭窄患者5 例に対してWallFlexTM 十二指腸ステント留置術を行ったので,その安全性・有用性を検討した。対象となった症例の多くは高齢者で,全身性炎症反応が進んでおり,栄養状態も不良であった。ステント留置成功率,症状改善率はともに100%で,5 例中4 例が退院できた。穿孔などの大きな有害事象もなかった。ステント留置後の生存期間中央値は86 日であった。内視鏡的ステント留置術は安全に行え,閉塞症状も改善し在宅移行も可能であり,緩和的治療として有用で,オプションの一つになり得ると思われる。 -
十二指腸原発濾胞性リンパ腫を合併したスキルス胃癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は73 歳,女性。吐血にて救急搬送され,緊急上部消化管内視鏡検査を施行した。胃体中下部に壁の肥厚,多発潰瘍を認め,生検結果では胃癌(por)であり,肉眼的深達度は漿膜下層と診断した。また,十二指腸球部に多発する白色顆粒状隆起性病変を認め,生検結果にて濾胞リンパ腫と診断した。CT 上は明らかな腫大リンパ節を認めなかった。通常,濾胞リンパ腫は進行に長期間要することが多く,生命予後を規定すると考えられる胃癌に対し胃全摘術を施行した。再建はdouble─tract 法にて施行し,十二指腸濾胞リンパ腫を継時的に上部消化管内視鏡にて経過観察できるようにした。十二指腸原発濾胞リンパ腫と胃癌を合併した本症例は非常にまれであり,文献的考察を加え報告する。 -
横行結腸癌浸潤に対する十二指腸部分切除術の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は83 歳,女性。体重減少を主訴に来院,腹部CT 検査にて横行結腸癌十二指腸浸潤を疑われた。上部消化管内視鏡検査にて十二指腸第二部に壁外からの浸潤性腫瘍を認め,下部消化管内視鏡検査にて横行結腸に全周性の2 型病変を認めた。病理診断はいずれも高分化型腺癌であり,右半結腸・十二指腸部分切除術を施行した。十二指腸浸潤部はVater 乳頭より口側で,切除範囲は十二指腸第二部の約1/3 周,長軸約5 cm に及び,Roux─en─Y 法にて空腸を挙上して十二指腸空腸側側吻合を行い再建した。病理組織学的にはSI,N0,Stage II と診断された。術前高値を示した腫瘍マーカーは速やかに基準範囲内に低下,術後3 年が経過した現在まで再発や転移を示唆する所見を認めていない。十二指腸腫瘍性病変に対しては膵頭十二指腸切除術が標準術式とされるが,高齢患者においては侵襲が大きく,本症例のような他臓器癌の浸潤に対しては十二指腸部分切除術がよい適応となると考えられた。 -
集学的治療により長期生存を得ている大動脈周囲リンパ節転移陽性胆管癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は60 歳台,男性。黄疸を主訴に近医を受診,精査にて膵癌と診断された。減黄処置および塩酸ゲムシタビン(GEM)による全身化学療法を約1 か月施行後,手術目的に当科紹介受診となった。膵癌に対する術前臨床試験として膵頭部に計40Gy/20 Fr の重粒子線の照射を行った。術前検査の腹部造影CT では膵頭部に腫瘤を認め,FDG─PET では膵頭部に集積亢進を認め粒子線治療の効果判定はNC であった。粒子線治療終了後49 日目に膵頭十二指腸切除を行った。病理検査にて下部胆管癌・#16 リンパ節に孤立性の転移陽性と診断され,GEM による術後全身化学療法を21 か月施行した。本例は#16 リンパ節に転移陽性であったが術後8 年1 か月無再発生存中であり,術前粒子線照射と術後化学療法の組合わせで長期生存が得られた。 -
切除不能胆囊癌に対し化学療法施行後に切除を施行した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description初診時に切除不能と判断した胆囊癌に対し,化学療法施行後に腫瘍が縮小し切除し得た症例を経験したので報告する。症例は75 歳,女性。黄疸,肝胆道系酵素異常を指摘され前医を受診した。精査にて肝門部の高度リンパ節転移,動脈浸潤,十二指腸浸潤を伴う胆囊癌と診断された。手術不能と判断し,塩酸ゲムシタビン(GEM)単独による化学療法を施行した。19回投与後に腹部CT を撮影したところ,主腫瘍の周囲浸潤の縮小およびリンパ節転移の縮小を認めたため切除を予定した。開腹所見では肝転移が疑われたため肝床切除のみを施行した。術後病理では切除リンパ節および肝結節に悪性腫瘍は認めなかった。一方で,主腫瘍の化学療法の効果はEvans 分類grade I であった。術後補助化学療法としてGEM を再開し,術後17 か月,無再発生存中である。残存癌細胞には癌幹細胞のマーカーであるCD133 が80.9%と高率に陽性であり,癌幹細胞の化学療法耐性との関連が示唆された1 例と考えられた。 -
切除断端陽性中部胆管癌に対し術後放射線療法が奏効した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は57 歳,男性。2006 年2 月に腹部圧迫感を主訴に当院を受診。精査にて中部胆管に腫瘤を認め,生検にて中部胆管癌と診断した。3 月に肝外胆管切除および2 群リンパ節郭清を施行した。左右肝管合流部および膵上縁で胆管を切離したが,術中迅速診断にていずれの断端にもCIS を疑う高度異形性病変を認めた。手術侵襲を考慮して追加切除は行わず,術後放射線療法を行うこととした。術後,各胆管断端を含むように照射野を設定し,体外照射で50.4 Gy/28 Fr の放射線療法を行った。以後,画像上明らかな再発所見は認めず,術後7 年無再発生存中である。胆管切除断端が非浸潤癌であった症例に対し術後放射線療法を行い,長期無再発生存が可能であった症例を経験したので報告する。 -
集学的治療により長期に良好なQOL を得た遠隔リンパ節転移胆囊癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は59 歳,女性。急性胆囊炎で入院となったが,腫瘍マーカー高値とCT での右外腸骨動脈上まで連続する大動脈周囲リンパ節の腫大より,遠隔リンパ節転移胆囊癌で切除不能と診断した。診断確定のためリンパ節生検と姑息的胆囊摘出術を行った後,化学放射線療法を開始した。転移リンパ節への定位放射線治療50 Gy と,ゲムシタビン(GEM 300 mg/body; 週1 回)6 回投与しPR を得た。その後GEM 単独(1,000 mg/m2; 週1 回,第1,8,15 日目,4 週ごと)化学療法を15 コース行ったが,腫瘍マーカーが上昇し二次治療のS─1 化学療法(80 mg/m2; 2 週投与1 週休薬)を9 コース施行した。術後2 年で再びPD となったが患者の希望により支持療法とし,水腎症に尿管ステント,閉塞性黄疸へ胆道ステントを留置した。術後2年11 か月で癌死されたが,直前まで良好なQOL を維持できた。切除不能の遠隔リンパ節転移胆囊癌に集学的治療は有効であった。 -
肝転移を伴う切除不能胆管癌に対して化学療法が著効した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description胆管癌において外科切除は治癒が望める唯一の治療法であるが,早期診断が難しく切除不能な進行癌で発見されることも少なくない。現時点で,切除不能症例に対する治療は放射線療法と化学療法であるが,長期生存を得ることは困難である。今回われわれは,gemcitabine(GEM)+cisplatin(CDDP)による化学療法が著効した切除不能胆管癌の1 例を経験したので報告する。症例は76 歳,男性。黄疸を発症,精査より下部胆管癌(T2N1M0,cStage III)の診断となり手術を施行した。開腹時に肝転移を認め,切除不能と判断し胆道ステントを留置した。術後,GEM+CDDP 併用療法を開始した。5 コース後のCT で肝転移が消失し,外科切除を検討したが,本人の希望で化学療法を継続した。現在,術後26 か月経過し,病変の増悪なく生存中である。 -
術前化学放射線療法を行った肝門部胆管癌治癒切除の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は69 歳,女性。肝胆道系酵素上昇を指摘され,精査の結果肝門部胆管癌と診断され当科紹介となった。この時点での手術では断端・剝離面に腫瘍細胞が残存する可能性があると判断し,術前化学放射線療法を施行した。根治手術を行い,病理標本では大星・下里分類Grade IIb の組織学的抗腫瘍効果を認め,断端・剝離面は癌細胞陰性であった。術後胆汁漏,腹腔内膿瘍を認めたが,術後第82 日目に退院,術後1 年5 か月が経過した現在も無再発生存中である。術前診断で断端・剝離面の癌細胞陽性となる可能性が高い肝門部胆管癌症例に対し,術前化学放射線療法を行うことにより陰性化が得られる可能性が示唆された。 -
養子免疫療法とCetuximab にて長期寛解を得た胆管癌腹水の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description当院初診時63 歳,女性。4 年前閉塞性黄疸にて下部胆管癌診断下に膵頭十二指腸切除術。胆管断端陽性のため,補助療法として肝門部照射および5─fluorouracil(5─FU)持続注射・S─1 投与を受けた。1 年前に子宮体癌が診断され,子宮摘出術に際してダグラス窩に結節あり,生検にて胆管癌腹膜転移が確認された(A 院)。初診時腹水が貯留し,bevacizumab(Bmab)およびgemcitabine(GEM)にて症状軽快するも7 か月にて再燃,消化管通過障害および大量腹水にてB 院に入院。排除腹水中リンパ球を培養し,OK─432前投与後の腹腔に移入する OK─AITおよびA院切除標本検査( EGFR 免染強陽性)より選択したcetuximab(Cmab) を使用,軽快退院後外来にてCmab のみを継続し,腫瘍マーカー正常化。腹膜再発初発以後7 年(Cmab 開始後5.5 年) の健在例を経験したので文献的考察を加え報告する。 -
十二指腸乳頭部内分泌癌の1 切除例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は75 歳,男性。2012 年1 月右季肋部痛にて,当院救急外来受診し,急性胆囊炎の診断で同日入院した。入院後経皮経肝胆囊ドレナージ(PTGBD)施行し,胆囊炎は軽快したが,2 週後に閉塞性黄疸が出現した。原因精査にて十二指腸乳頭部癌(cT3N1M0,Stage III)と診断し,膵頭十二指腸切除を行った。術後組織診では免疫染色でシナプトフィジンが陽性,Ki─67 が強陽性の乳頭部神経内分泌癌(NEC)と診断した。術後3 か月で多発肝転移,リンパ節転移を認めた。化学療法としてカルボプラチン/エトポシドを行うも,Grade 4 の好中球減少が出現したため1 コースで断念した。以降BSC の方針となり,術後11 か月で永眠された。十二指腸乳頭部のNEC は比較的まれな疾患である。また,一般的に急速に転移・進行する極めて予後不良な疾患とされる。今回,十二指腸乳頭部の神経内分泌癌を経験したので報告する。 -
胆管小細胞癌(神経内分泌癌)の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は75 歳,女性。皮膚瘙痒感と尿濃染のため近医を受診し,閉塞性黄疸の診断で当院紹介され緊急入院となった。内視鏡的逆行性膵胆管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography: ERCP)にて中部胆管に高度狭窄を認め,内視鏡的逆行性胆管ドレナージ(endoscopic retrograde bile drainage: ERBD)を留置し減黄した。擦過細胞診はclass III であった。中部胆管癌の診断で幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した。病理組織学的検査にて,腫瘍は大部分が腺管構造の不明瞭な細胞構造で,免疫染色にてchromogranin A,synaptophysin,CD56 がそれぞれ陽性であったため,胆管原発の小細胞癌の診断となった。胆管原発の小細胞癌(神経内分泌癌)は極めてまれであり,本邦論文の切除報告例は自験例を含めて22 例のみである。本症例は術後14 か月無再発生存中であるがその予後は不良であり,今後も慎重な経過観察が必要である。 -
同時性肝転移Stage IVb 胆囊癌を切除し長期無再発生存中の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は67 歳,女性。腹部超音波で胆囊隆起性病変を指摘され当院へ紹介された。腹部造影CT にて胆囊体部に3.4 cmの壁肥厚を伴った扁平隆起性病変と,胆囊近傍の肝S5 に2.2 cm の単発肝転移,13a リンパ節腫大を認め,胆囊癌T2N2H1,Stage IVb と診断した。肝S4a+S5 区域切除・肝外胆管切除・D2 郭清を施行し,最終病理学的診断はpT2,pN2,pH1,fStage IVb であったが,pBM0,pHM0,pEM0 でR0 となった。術後gemcitabine(GEM 1,000 mg/m2; day 1,8,15,4 週ごと)補助化学療法を開始し,計15 コース行った。現在5 年経過し無再発生存中である。胆囊癌の肝転移は切除不能とされているが,胆囊癌はR0 切除以外に長期生存は期待できない。Stage IVb 胆囊癌でも肝S4a/S5 にとどまる限局性肝転移症例では,積極的切除により予後を改善できる可能性があると考えられた。 -
膵頭十二指腸切除術後の腹膜播種再発を切除した胆管癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は50 歳,女性。2010 年4 月中部胆管癌のため,膵頭十二指腸切除,D2 リンパ節郭清術を施行した[pT4N1H0P0M(-),f Stage IVa]。2011 年8 月腹部CT で胃空腸吻合部の空腸壁外に辺縁が濃染され,内部が低吸収を示す腫瘤像(径30×17 mm)を認めた。上部消化管内視鏡検査で,胃空腸吻合部に潰瘍性病変を認めた(生検: Group V,腺癌)。PET─CT 検査にてCT で指摘された腫瘤像に集積を認めたが,その他の部位には集積を認めなかった。以上より,腹膜播種再発の胃空腸吻合部への壁外性浸潤と診断した。2011 年9 月腹膜播種切除,胃空腸吻合部切除,横行結腸部分切除術を施行した。病理組織所見では,胆管癌の腹膜播種再発と診断した。術後経過は良好で,術後12 日目に当科退院となった。2011 年11 月化学療法を再開し(GEM 7 コース施行後,S─1 4 コース施行),現在,GEM+CDDP 施行中である。初回手術より37 か月経過,腹膜播種再発切除より20 か月経過,現在,腹膜播種再々発を認めているが外来通院中である。 -
切除不能十二指腸乳頭部癌に対しStaging Laparoscopy と腹腔鏡下胆道バイパス術を一期的に施行した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は61 歳,男性。黄疸精査のCT にて胆管拡張と十二指腸乳頭部の腫瘤を指摘された。PET/CT にて乳頭部の異常集積を認めたが遠隔転移はなかった。ERCP にて乳頭部癌による閉塞性黄疸と診断。腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術の予定としたが,胆管炎により待機期間長期となったため再度CT を行った。肝右葉に数mm 大の結節を数か所認めたが,炎症性変化か肝転移かの判断は難しく,術中に治療方針を決定することとした。術中洗浄細胞診は陰性だったが,肝白色結節の迅速病理結果は悪性であった。術式を変更し,胆道バイパス術を完全鏡視下に手縫いで行った。合併症なく経過し,術後17 日目に化学療法を導入し翌日退院となった。本症例では根治術を施行し得なかったが,鏡視下手術の応用にて肝転移の診断と一期的な胆道バイパスが可能であった。術後経過良好で術後早期に化学療法を開始することが可能であり,低侵襲かつ適切な治療ができたと考えられた。 -
胆管ステント閉塞による胆管炎に対し経皮経肝的胆管内瘻術を施行した非切除下部胆管癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は87 歳,女性。既往歴に心房細動(抗凝固剤内服加療中),腎機能障害あり。肝胆道系酵素上昇の精査にて各種画像検査より,下部胆管癌(cStage I)と診断。年齢や心・腎機能を考慮し外科的手術は困難と判断,plastic stent(PS)を用いた内視鏡的胆管ドレナージ(ERBD)施行後退院となった。ERBD 施行124 日後に発熱と嘔吐を主訴に来院,肝胆道系酵素の上昇ならびに血液培養でKlebsiella pneumoniae が検出されたことから,ステント閉塞による胆管炎と診断しERBD 施行。腫瘍は前回と比して増大しPS を抜去すると乳頭部からの出血により再挿入は断念した。翌日より敗血症性ショックを併発し抗生剤・免疫グロブリン投与による胆管炎治療を先行した後経皮経肝胆管ドレナージ(PTCD),expandable metallic stent(EMS)によるPTBE 施行後,約2 か月後に永眠するまで閉塞兆候はみられなかった。本症例では,初回診断時に挿入したPS 閉塞時の再内瘻化に至らずステントを選択する際には,患者の生命予後や閉塞した際の対処を見据えて検討することが望ましい。 -
横行結腸癌膵頭浸潤にて胆管と十二指腸にステントを留置した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description横行結腸癌の膵頭浸潤による胆道閉塞と十二指腸狭窄に対し,胆管および消化管ステントを留置した1 例を経験した。症例は46 歳,男性。腸閉塞を伴う局所進行横行結腸癌,肝転移に対し上行結腸人工肛門造設術を施行。術後化学療法を施行し,腫瘍マーカーの低下と腫瘍縮小を認めたものの腫瘍マーカーの再上昇がみられ,右半結腸切除術および肝S2,S6 部分切除術を施行した。病理組織診断はtub1,pSS,ly1,v2,pRM1,pNx,pH1,sP0,sM0,fStage IV で,化学療法効果判定はGrade 1b であった。術後さらに化学療法を継続するも黄疸を発症し,膵頭部再発巣による閉塞性黄疸と十二指腸閉塞,両葉多発肝転移の診断となる。閉塞性黄疸に対し下部胆管に胆道ステントを留置し,十二指腸閉塞に対し十二指腸下行脚に消化管ステントを留置した。治療後,在宅移行が可能となり,上記処置がQOL の維持に寄与したと考えられた。 -
多彩な画像所見を呈した肝細胞癌の1 切除例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は62 歳,男性。全身倦怠感を主訴に前医受診,造影CT で早期から造影され,後期相でpooling される約7 cm 大の肝腫瘍を指摘されたが放置していた。29 か月後,皮膚黄染を主訴に前医を再受診された。腹部CT にて肝S4 に長径13.5cm 大の早期濃染,門脈・平衡相で等濃度の腫瘤を認めた。MRI ではFNH 様の中心瘢痕とEOB の取り込みを認めたが,一方out of phase で肝細胞癌(HCC)を疑うような信号低下を呈した。腫瘍の増大と肝内胆管圧排による閉塞性黄疸を呈していたことより,拡大左葉切除術を施行した。病理組織像は高~中分化型HCC であったが,内部壊死・脂肪沈着・瘢痕組織など多彩な形態が混在していた。術後1 年経過し外来通院中であるが,明らかな再発は認めていない。 -
肝細胞癌・汎血球減少症に対し腹腔鏡下に肝部分切除術と脾臓摘出術を施行した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description患者は69 歳,女性。B 型肝炎,食道静脈瘤で加療中,AFP の上昇(534 ng/mL)が認められた。腹部造影CT 検査では肝S3 に20 mm の腫瘍が認められ,肝細胞癌と診断した。同時に汎血球減少と脾腫が認められたことから,腹腔鏡下に肝部分切除と脾臓摘出術を一期的に行う方針とした。体位は右半側臥位・開脚で,脾摘時は右側臥位,肝切除時は仰臥位にて,計七つのワーキングポートで手術を施行した。手術時間は237 分,出血量は26 mL,術後経過良好で合併症なく,術後10 病日に退院した。近年,肝硬変合併肝細胞癌に対する脾摘は,汎血球減少改善とともに肝機能改善も期待される。腹腔鏡下で肝切除と脾臓摘出術を同時に施行した報告は少なく,当院で同時切除した症例を経験したので報告する。 -
術後リニアック照射を予定し拡大右葉切除を行った肝細胞癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は57 歳,男性。腹部膨満感を主訴として受診し,肝細胞癌(HCC)と診断され紹介受診となった。腫瘍は直径13cm でほぼ右葉全体を占拠し,胆囊内腔への直接浸潤がみられた。また,内側区域進展部より門脈臍部への浸潤がみられた。右三区域切除では残肝容積が少なく術後肝不全が危惧されるため,S4 グリソン鞘を1 枝残した拡大右葉切除を行い,門脈腫瘍栓に対しては術後リニアック照射を行う治療計画を立てた。術後14 病日よりリニアック照射(2.0 Gy×25 回)を開始し,合併症なく,第55 病日に退院となった。第44 病日よりUFT(400 mg/day)内服を開始し,6 か月間投与したが,術後9 か月後のCT で多発肺転移を認めた。low─dose FP 療法(経静脈的投与),sorafenib(800 mg/day)の投与を行い,経過観察中である。術後16 か月の現在肝内再発は認めていない。胆囊浸潤を伴う門脈浸潤合併HCC に対して,リニアック照射を併用することによって合併症なく治療できた症例を経験したので報告した。 -
腫瘍内出血を伴った肝細胞癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description肝細胞癌が肝内血腫を来すのはまれであり,今回肝内に大きな血腫を形成した肝細胞癌を経験したので報告する。症例は79 歳,男性。主訴は心窩部痛と発熱。CT では肝右葉前区域中心に,8 cm 大の内部に高吸収域(出血)を伴う充実性腫瘍を認めた。dynamic 造影CT では,前期相で腫瘍内に微小動脈瘤が描出され,後期相で造影剤が貯留していた。腫瘍内出血を来した肝腫瘍,肝細胞癌の疑いで,待機的に肝右葉切除を施行した。病理診断は高~中分化型肝細胞癌,T2N0M0,stage IIであった。 -
TACE 施行後にClostridium 肝膿瘍を併発した肝細胞癌2 症例の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例1 は74 歳,男性。肝細胞癌に対して肝動脈化学塞栓療法(TACE)を施行後,敗血症となりガス産生性肝膿瘍の診断で緊急開腹ドレナージ術を施行。細菌培養検査でClostridium perfringens が同定された。術後,容態は改善し63 日目に退院した。症例2 は70 歳,男性。肝右葉の巨大な肝細胞癌のため閉塞性黄疸を来して入院。内視鏡的逆行性胆道ドレナージ(ERBD)を行った後にTACE を施行。2 日後に,激しい溶血を伴うガス産生性肝膿瘍破裂を起こし,緊急開腹ドレナージ術を施行したが,術翌日に死亡した。同菌による肝膿瘍は溶血を合併すると予後は極めて不良である。 -
術前肝動脈化学塞栓療法後に切除した混合型肝癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は48 歳,女性。腹部造影CT で,肝内側区域から尾状葉を主座として径約10 cm 大の腫瘍を認めた。腫瘍は早期濃染・遷延性濃染を呈する実質と,壊死を思わせる内部低濃度域を伴っていた。門脈左枝の閉塞と左右肝動脈の狭小化を認めたため,肝内胆管癌の診断の下,術前化学療法(GS 療法: 3 コース)を先行した。しかし,腫瘍の増大傾向を認めたため,肝動脈化学塞栓療法(TACE)を施行したところ,腫瘍の縮小および右肝動脈浸潤像の改善がみられた。このため,根治切除可能と判断し,拡大肝左葉切除術・肝外胆管切除術を施行した。病理組織学的所見では肝内胆管癌を主体とし,一部に肝細胞癌成分の混在を認める混合型肝癌と診断された。術後補助化学療法は,汎血球減少症が遷延したため施行できず,外来経過観察のみとなったが,術後5 年経過した現在,無再発生存中である。 -
急速増大を来した肝血管肉腫の1 切除例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は82 歳,男性。肝囊胞,胆囊ポリープにて経過観察中,肝S5 に径2 cm の境界不明瞭な低エコー領域を指摘された。3 か月後の腹部造影CT 検査にて肝S5 に中心部の造影効果が乏しく,辺縁のみ造影される径5.5 cm の腫瘍性病変を認めた。腹部MRI 検査では,腫瘍はT1 低信号,T2 高信号を呈し,PET─CT では同部位にSUVmax 6.7 の異常集積を認めたが,他に原発巣や遠隔転移を示唆する所見は認めなかった。以上より肝内胆管癌ないしは肝肉腫など肝原発性悪性腫瘍の診断の下,肝S5 亜区域切除術を施行した。切除標本の肉眼的所見では,内部に出血および壊死変性を伴う最大径8 cm の腫瘍を認め,組織学的所見にて壊死・出血を背景に腫大した紡錘形~楕円形核を有する腫瘍細胞が充実性に増生しており,組織染色にてCD31 が弱陽性であったことから肝血管肉腫と診断した。術後17 日目に退院となり,現在術後12 か月無再発生存中である。 -
IFN 併用動注化学療法により長期生存が得られた切除不能(Vp3)肝細胞癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description門脈内腫瘍栓を伴う切除不能肝細胞癌(HCC)に対しインターフェロン併用5─FU 動注化学療法(FAIT)を施行し,長期生存が得られた1 例を報告する。症例は54 歳,男性。C 型慢性肝炎に対するインターフェロン治療中にFDG─PET/CTで肝S1/4 に腫瘍を指摘され,HCC と診断された。門脈左枝に腫瘍栓を認め,肝硬変であったため切除不能と診断され,加療目的で当院に紹介となった。FAIT を計7 コース施行し,腫瘍と門脈左枝の腫瘍栓は消失した。その後,CT で新たに肝S4 に早期濃染像を指摘され,HCC 再発と診断し肝動脈化学塞栓療法(TACE)を追加した。治療開始後5 年経過した現在も,再発なく生存中である。切除不能高度進行HCC に対しても,肝外転移がなければ,FAIT とTACE を組み合わせた集学的治療を施行することにより,予後の改善が期待できると考えられた。 -
術前放射線治療を併用し治癒切除し得たVp4 肝細胞癌の1 切除例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は61 歳,男性。右季肋部痛を自覚し近医を受診し,門脈腫瘍栓合併肝細胞癌と診断され,当科紹介となった。背景肝はHBV(+),HCV(-),ICG R15 11.3%,AFP 4.4 ng/mL,AFP─L3 25.1%,PIVKA─II 256 mAU/mL。画像検査で肝右葉に95×72×66 mm の肝細胞癌を認め,門脈右枝から門脈左枝および門脈本幹に腫瘍栓(Vp4)を伴っていた。治療は腫瘍栓先進部に対し動体追跡放射線治療(20 Gy/4 Fr)を行い,10 日後に拡大肝右葉切除術,腫瘍栓摘出術,S3 部分切除を施行した。術後病理検査の結果,腫瘍は低分化型肝細胞癌であり,腫瘍栓先進部は約50%の壊死効果を認めた。術後経過は良好であり,肝動注化学療法を行った。現在,術後20 か月無再発生存中である。門脈内腫瘍栓に対する術前放射線治療は有用であり,Vp4 肝細胞癌の長期予後改善のためには周術期の集学的治療が必要である。 -
肝切除とUFT にて長期生存を得ているVp4 肝細胞癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は44 歳,男性。心窩部痛を主訴として受診。精査にて肝右葉前区域を中心に不均一な肝腫瘍を認め,両側の門脈枝および本幹まで進展する門脈腫瘍栓を認めた。Vp4 肝細胞癌の診断の下,肝右葉切除,門脈腫瘍栓摘出術を施行した。術後3 か月目よりtegafur─uracil(UFT)300 mg/日を2 週間内服1 週間休薬にて投与開始した。UFT は術後1 年にわたり投与した。術後1 年目の画像診断にて再発病変を認め,アイエーコールによる肝動脈化学療法を施行した後,超音波にて描出可能な病変に対してPEIT を施行した。術後46 か月現在,再発所見なく経過中である。 -
肝内多発肝細胞癌に対してTACE/Sorafenib にて長期生存が得られている1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は73 歳,男性。肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC)に対して,55 歳時に肝中央二区域切除術,69 歳時に肝S6 部分切除術を施行。再肝切除術の4 年後,腹部CT 検査にて肝S2,S7 に計4 個の腫瘍を認め,両葉多発再発と診断し,肝動脈化学塞栓療法(TACE)を施行した。以降,肝内再発に対してTACE を計5 回施行したが,しだいに病勢制御が不能となり,初回TACE 後2 年6 か月経過した時点でTACE 不応と判断し,sorafenib 投与を開始した。sorafenib 投与開始後9か月間はSD を維持していたが,徐々に腫瘍マーカーの上昇および腫瘍の増大を認めたため,TACE を併施しながらsorafenib投与を継続。肝両葉に多発病変が残存はしているものの,肝内多発再発より4 年8 か月経過した現在でも治療を継続中である。 -
集学的治療が奏効した門脈内腫瘍栓併存全肝多発進行肝癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は59 歳,男性。前医で施行された上行結腸癌に対する術前腹部造影CT で肝に早期濃染を伴う多発SOL を指摘され,同時性の肝細胞癌と診断された。上行結腸癌に対する右半結腸切除術を施行後,当院を紹介された。腹部造影CT では肝左葉にびまん性に広がる腫瘍と,右葉に多数の早期濃染像を認めた。腫瘍栓が門脈左枝から本幹まで進展しており,T4(Vp4,IM3)N0M0,Stage IVA と診断し,interferon─α 併用5─FU 肝動注化学療法(FAIT)を8 コース施行した。門脈内腫瘍栓は徐々に縮小したが,肝内病変の増大および右副腎転移を認めたため,sorafenib の内服を開始した。その後,門脈内腫瘍栓はさらに縮小し,門脈の開存の確認後,多発肝内転移に対して肝動脈化学塞栓療法(TACE)を施行した。sorafenib の内服を継続し,肝内病巣のコントロールのためTACE を合計4 回施行し,右副腎転移に対してはラジオ波焼灼術(RFA)を追加した。現在,sorafenib の内服を継続しながら外来通院中である。 -
切除不能進行・再発肝細胞癌に対するIVR 治療(TACE/TAI)は予後を改善するか
40巻12号(2013);View Description Hide Description当科の経カテーテル的肝動脈化学塞栓療法(TACE)/肝動注化学療法(TAI)の治療成績から肝細胞癌(HCC)に対するinterventional radiology(IVR)治療の意義を検討したので報告する。対象はHCC 256 例で,肝障害度が許すかぎりTACEを行い,不応例には動注用CDDP(IA─call)による TAIを施行した。結果(: 1)TACE は 224例に 631回(1~14回:平均4.5 回),TAI は32 例に49 回(1~8回: 平均2.3 回)施行した。(2)全症例の生存率は3 年生存率45.5%,5 年生存率31.6%であった。(3)HCC の個数で単発,2~4 個,5 個以上の3 群に分け生存率を比較すると,3 群間に差を認めなかった(p=0.207)。(4)TACE 不応例の後治療として施行した TAI の MST は 8.5 か月であった。結語(: 1)多発性 HCC でも,多期的なTACE で単発のHCC に近い治療成績が期待できる。(2)TACE 不応例でも,後治療のTAI が予後を改善する可能性があり,局所療法としてのIVR 治療の意義は高いと考えられる。 -
集学的治療における術前経皮的肝灌流化学療法と肝切除の位置付け
40巻12号(2013);View Description Hide Description今回,両葉多発肝細胞癌(HCC)に対して,術前経皮的肝灌流化学療法(PIHP)と肝切除を含めた集学的治療にて,完全奏効が得られた症例を経験したので報告する。症例は61 歳,男性。慢性B 型肝炎のフォローアップ中に,肝S4/8 を主座とするHCC および肝両葉に多発肝内転移を指摘された。精査の結果,腫瘍の局在と肝予備能の観点から根治切除は困難であり,まず多発HCC 制御を目的としたPIHP を企図した。PIHP により主腫瘍の縮小および肝内転移巣の部分制御が得られ,肝拡大左葉切除術を施行した。その後,残肝多発病変に対して肝動脈化学塞栓術(TACE)を3 回施行した。しかし,肝切離断端のS8 再発病変のみが肝外からfeeder を受けており,TACE 不能病変であったため肝S8 部分切除術を施行した。現在,再発なく経過している。本症例のような根治切除困難例に対して術前PIHP を施行することで,切除限界のさらなる拡大が示唆された。 -
肝細胞癌に対するRFA 後の肝外進展に対して外科切除を施行した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description肝細胞癌に対するラジオ波焼灼療法(RFA)後の肝外進展に対して,腹腔鏡下に肝外腫瘤摘出術を施行した症例を経験した。症例は52 歳,男性。肝細胞癌に対して2012 年4 月にRFA を施行した。RFA 施行5 か月後に腫瘍マーカーの急激な上昇を認め,腹部CT にて脾門部に5 cm 大の腫瘤とそれに近接する1 cm 大の腫瘤を認め,RFA 後に来した腹膜播種と診断した。肝内病巣にも3 か所の再発を認めたがコントロール可能と判断し,肝外腫瘤に対して2012 年11 月に腹腔鏡下腫瘤摘出術を施行した。病理組織結果は肝細胞癌の播種として矛盾のない像で,腫瘤は線維性被膜を有し被膜の破綻を認めなかった。術後2 か月後の腫瘍マーカーは速やかに減少し,術後7 か月が経過した現在,肝内病巣は肝動脈塞栓療法にて良好にコントロールできており,新たな肝外病巣は認めていない。肝細胞癌の腹膜播種は,肝内病巣の制御が可能であれば積極的に外科的切除することで予後の改善が期待できると思われた。 -
肝内胆管癌の残肝再発に対して再肝切除を施行した2 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description肝内胆管癌(ICC)の残肝再発に対して,再肝切除を施行し無再発生存中の2 例を報告する。症例1: 53 歳,女性。肝右葉の7 cm の腫瘤形成型のICC に対して拡大右葉切除を施行した。術後7 か月に残肝左葉外側区域に3.8 cm の単発再発を指摘され肝外側区域部分切除を行った。残肝再発後2 年9 か月無再発生存中である。症例2: 59 歳,女性。肝左葉の5 cm 大の腫瘤形成型+胆管浸潤型のICC に対して拡大左葉切除を施行した。術後2 年3 か月で残肝右葉S8 に3 cm の単発再発を指摘されS8 部分切除を行った。残肝再発後2 年11 か月経過し,無再発生存中である。ICC の残肝再発は多発転移や他臓器再発を伴う場合が多く,再肝切除の適応は限定的と考えられる。一方,自験例を含め残肝再発に再肝切除を施行した症例の報告では,単発再発が多く予後は比較的良好であった。他臓器転移を伴わない残肝単発再発は,再肝切除の適応を考慮し得ると考えられた。 -
手術治療により長期生存が得られた肝細胞癌リンパ節転移・胆管内腫瘍栓の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は64 歳,男性。S2/3 5.0 cm,S5 4.3 cm の肝細胞癌(HCC)を発症し,肝外側区切除,S5 亜区域切除術を施行。病理結果は,mod to por,fc(+),fc─inf(+),sf(+),s0,vp0,vv0,va0,b0,im(+),sm(-),T3N0M0,stageIII であった。8 か月後,S1 l 再発,#12 リンパ節転移を認め,肝S1 l 部分切除,リンパ節摘出術施行。初回手術から2 年後,#3,#13 リンパ節に転移を認め,リンパ節摘出術を施行。初回手術より6 年4 か月後,#8,#12 リンパ節に転移を認め,リンパ節摘出術を施行。初回手術より7 年4 か月後,黄疸を発症し,精査でS4/1r 再発,B1r から総胆管・右肝管に及ぶ胆管内腫瘍栓を認めた。経皮経肝胆管ドレナージによる減黄後に肝内側区切除,胆管内腫瘍栓摘出術を施行。現在再発なく経過し,初回手術から8 年の長期生存が得られている。リンパ節転移,胆管内腫瘍栓はまれであるが,病変を完全切除することで長期予後を期待できるため,切除可能な病変な場合,手術治療を検討すべきである。 -
CapeOX が奏効した大腸癌術後多発肝転移の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は60 歳台,女性。2 型糖尿病にて当院内科フォロー中。便潜血反応陽性にて下部消化管内視鏡検査を施行し,RS中心の2 型腫瘍指摘。生検にて直腸S 状結腸部癌の診断。遠隔臓器転移なく腫瘍マーカー陰性であった。2010 年1 月腹腔鏡下前方切除術施行。病理組織診断にてpSS,n2(+)(4/29)のfinal Stage IIIb,また切除検体に径5 mm 大のcarcinoid tumorも含まれていた。補助化学療法を強く勧めたが,拒否。以降定期的な外来経過観察の方針となった。術後半年の腹部造影CT検査にて多発肝転移・肺転移を認めた。K─ras 遺伝子は変異型。転移巣はいずれも切除可能であり,治療方針としてそれら血行性転移巣に対する切除と化学療法の各方針を呈示したが,手術を拒否。化学療法としてCapeOX+BV の方針となった。投薬後4 サイクルで縮小傾向が認められ,8 サイクルでPR となった。投薬開始後約1 年の経過で投薬時のみの高血圧症が出現するようになりBV を中止。以降blue liver 傾向となりGrade 1 の肝機能障害を認めた。投薬を継続していたが,L─OHP による末梢神経障害が出現しプレガバリンにて対応したが,調節不良であったためにL─OHP を休薬としcapecitabine のみの投薬を行った。32 サイクルにて多発肝転移巣は瘢痕様のみとなり,残存腫瘍はほぼ認めなくなった。しかし肺転移巣はNC であった。術後6 か月の再発診断から肺の転移巣も切除可能な病変であり,改めて手術を勧めるも未だに拒否を続けている。しかし転移巣の再燃は認めず,現在も投薬継続中である。 -
Conversion Therapy 後の残肝再発を切除した大腸癌多発肝転移の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description多発肝転移を伴う大腸癌であっても,計画的かつ多段階に肝切除を行うことにより,根治可能となる症例がある。今回われわれは,初診時根治切除不能と考えられた大腸癌多発肝転移に対し,conversion chemotherapy および二期的肝切除を行い,その後二度の残肝再発に対して2 回肝切除し,長期生存している症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。 -
直腸神経内分泌腫痬(NET)による異時性多発肝転移の1 切除例
40巻12号(2013);View Description Hide Description内科的治療で制御困難となった直腸神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor: NET)の多発肝転移巣を切除した1 例を報告する。症例は66 歳,男性。直腸NET の切除5 年後に多発肝転移を認めた。肝動脈化学療法(TAI)5 回,mFOLFOX64 回施行したが,徐々に増大してきたため外科的切除を目的に入院となる。肝右葉の転移巣は融合し最大径8 cm となり,その他肝門部に6.5 cm,S2 に7.2 cm の境界明瞭な転移巣を認めた。拡大右葉切除および肝外側区域の部分切除を施行した。病理所見は前回の直腸NET の転移で,WHO 分類(2010 年)で判定するとNET,G2 であった。術後より徐放性octreotide 30mg を4 週ごとに筋注している。肝切除後1 年2 か月たった現在,再発の兆候は認めていない。 -
門脈腫瘍栓を伴う同時性胃癌肝転移の1 切除例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は71 歳,女性。胃癌の診断で当院紹介,CT にて肝腫瘍を認め,胃癌・肝転移の診断となった。胃角部小弯側に2型の腫瘍を,肝外側区域に75 mm 大の巨大腫瘍を認めた。肝転移巣からは腫瘍栓が門脈臍部に張りだしていた。腫瘍マーカーはAFP が20.7 ng/mL と軽度上昇していた。手術は幽門側胃切除,肝左葉切除術を施行した。病理結果はtub2,T3(ss),N1,M1(HEP),ly0,v2,stage IV の胃癌肝転移で,AFP は陰性であった。術後経過は良好で,外来にてS─1 80 mg による術後補助化学療法を開始した。有害事象は認めず10 コース施行可能であった。再発所見がみられなかったため,1 年2 か月で終了とした。術後3 年目まで再発を認めなかった。3 年6 か月目に腫瘍マーカーが軽度上昇した後,残肝再発が出現し3年10 か月で癌死した。門脈腫瘍栓を来す胃癌はまれで予後不良とされ,残肝に早期再発することが多い。肝転移が単発であり,腫瘍栓が軽度であったためR0 切除が可能であり一定の予後改善がみられたが,再発後の進行が急速で十分な治療を施行できず,こまめな精査と長期の治療継続が必要と考えられた。 -
胃癌術後肝転移に対して肝切除術を施行し長期生存を得た1 症例
40巻12号(2013);View Description Hide Description胃癌術後肝転移に対して肝切除術を施行し長期生存を得た1 例を経験したので報告する。症例は75 歳,男性。2004 年胃癌に対して幽門側胃切除術を施行し,病理診断はT4a(SE)N0M0,Stage IIB であった。胃癌術後2 年で肝S6 に肝転移を指摘された。CT にて転移巣は単発であり,その他の臓器に転移を認めなかったため,肝部分切除術を施行した。胃癌術後3年1 か月で肝S7 に再肝転移を来した。同様に転移巣は単発であり,肉眼的に切除可能と判断し,再肝切除術を施行した。胃癌原発巣および初回肝転移巣,再肝転移巣はいずれも壊死物質を含む中型から大型の腺腔構造を有しており,胃癌からの転移と診断された。現在,再肝切除後5 年9 か月無再発生存中である。本症例は,原発巣の手術時にリンパ節転移を認めなかった点および肝転移時に転移巣が単発であり,その他の遠隔転移を認めなかったことや,肉眼的に根治切除可能であったことが長期生存に寄与したと考えられた。 -
食道癌術後肝再発に対して定位放射線治療が有効であった1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は70 歳代の女性。初診時腹部リンパ節転移を伴う胸部下部Stage III 食道癌であった。5─FU+CDDP による術前補助化学療法を2 コース施行後,根治手術を施行した。術後左反回神経麻痺に伴う嚥下障害に伴い経口摂取量が十分には確保できずPS の回復が遅れた。術後6 か月のCT で肝S8 に約2 cm の肝再発を認めた。再発は肝に限局しており,肝外病変はなかった。PS の回復が十分でなく,全身化学療法の即導入は困難な状況であった。そこで後の全身化学療法を前提として,局所療法としてSBRT を施行した。翌月からはdocetaxel+nedaplatin による全身化学療法を開始し,治療開始後12 か月無再発生存中である。局所療法としてのSBRT は転移部位による制限はあるが,PS 不良例でも安全に施行可能で,特に肝に限局した転移性肝腫瘍に対しては治療の選択肢になることが示唆された。また,今後症例の蓄積や長期の観察が必要である。 -
原発性および転移性肝腫瘍に対する定位放射線治療の有用性
40巻12号(2013);View Description Hide Description2012 年までに定位放射線治療(SRT)を施行した転移性肝腫瘍20 症例(30 結節)および原発性肝腫瘍10 症例(13 結節)を検討した。平均年齢,平均腫瘍径,病巣数は,転移性肝腫瘍で69.4 歳,22.5 mm,単発/多発13 例/7 例,原発性肝腫瘍例ではそれぞれ72.4 歳,22.4 mm,単発/多発8 例/2 例であった。転移性症例の原発は大腸8 例,乳腺4 例,胃3 例,食道2 例,その他3 例であり,原発性肝腫瘍は全例肝細胞癌であった。放射線照射は48.0 あるいは52.8 Gy/4 回/1 週で行った。転移性肝腫瘍の治療効果は奏効率78%で,11 例が1 年以上生存し,うち9 例は2 年以上の長期生存が得られた。単発で肝外病変がなく,化学療法併施可能な症例がよい適応と思われた。一方,原発性肝腫瘍例は奏効率85%と良好であったが,全例で肝内再発を来して1 年以内に6 例が死亡し予後不良であった。適応についてのさらなる検討が必要である。 -
塩化ストロンチウム89SrCl2(メタストロン注)治療において転移性骨腫瘍に様々な抗腫瘍効果を呈した胆管細胞癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は77 歳,男性。胆管細胞癌にて肝右葉後区域切除術を施行され,その後に多発骨転移を指摘される。左腸骨転移による強固な疼痛に対して,オピオイド投与や持続クモ膜下ブロックなどを施行されるも,安定して緩和することは困難であった。89Sr 投与後,疼痛症状の改善がみられ,一時的に在宅療養も可能となった。強い疼痛の原因であった骨盤部の病変は縮小しており,89Sr の抗腫瘍効果と考えられたが,逆に増大する病変も認められた。この変化の差異は,各病変における造骨代謝活性の違いにより,89Sr 集積状態から病変内部への照射線量が大きく異なり,抗腫瘍効果に差が生じるためではないかと考えられた。 -
術後8 年目に肝転移再発を来した耳下腺腺様囊胞癌の1 切除例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は53 歳,女性。2004 年8 月に当院耳鼻咽喉科にて右耳下腺腫瘍に対して耳下腺全摘術および頸部リンパ節郭清を施行した。病理組織診断では腺様囊胞癌(T4aN0M0,stage IVA)で,術後放射線療法を54 Gy 施行した。2005 年10 月に右側頸部に局所再発を認め,腫瘤摘出術を施行した。以後7 年間無再発にて経過観察していたが,2012 年8 月の腹部超音波検査にて肝外側区域に径2 cm 大の低吸収域を認め,腹部CT,腹部MRI による精査にて胆管細胞癌あるいは転移性肝癌が疑われ,11 月に腹腔鏡下肝S2 部分切除術を施行した。腫瘍は直径2.5 cm 大で,病理組織診断は腺様囊胞癌の肝転移であった。術後8 か月経過した現在,無再発にて外来通院中である。 -
丸山ワクチン(SSM)が奏効した肝細胞癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は41 歳,男性。両下肢浮腫のため当院を受診された。血液検査では,軽度の肝・胆道系酵素の上昇,腹部超音波検査で中等量の腹水を認め,精査加療目的に入院となった。腹水は漏出性で,CT では肝内に早期相で濃染され,後期相でwash out される腫瘍を多数認めた。腫瘍マーカーも上昇したことから,肝細胞癌を合併した肝硬変と診断した。利尿剤で腹水コントロールを行ったが腎機能の低下を認めたため,肝癌診療ガイドラインで推奨されている肝動脈塞栓術(TACE),肝動注化学療法(TAI)は行えなかった。本人と相談の上,丸山ワクチン(specific substance Maruyama: SSM)を導入したところpartial response(PR)となり,現在,外来で治療継続中である。 -
術前化学放射線療法を行った肝動脈浸潤を伴う局所進行膵癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は64 歳,男性。分枝型IPMN の経過観察中,2011 年10 月にCA19─9 の上昇があり,精査にて膵頭部癌の合併を指摘され当科紹介となった。12 月に手術を施行したが,総肝動脈から固有肝動脈にかけての癌浸潤を認め,切除不能と判断した。化学放射線療法の方針としgemcitabine(GEM)療法および放射線療法(50.4 Gy/28 Fr)を行い,引き続いてGEM+S─1 療法を施行した。効果はSD であったが,遠隔転移の出現なく腫瘍の局所制御はできていると判断し,再度根治切除を試みた。2012 年10 月,肝動脈合併切除/再建を伴う膵頭十二指腸切除術を施行した。血行再建は,左胃動脈と右肝動脈を吻合した。病理組織診断では腫瘍の90%以上の変性,壊死が認められ,剝離面や動脈周囲に癌遺残を認めず,R0 手術が施行できたことを確認した。現在,術後8 か月経過し無再発生存中である。 -
切除不能局所進行膵癌に対しR0 のアジュバント切除を施行し得た1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description切除不能膵癌は化学(放射線)療法の適応であるが,良好な治療効果が一定期間得られ,新規病変の出現がない症例に対しては,アジュバント切除を付加することで予後が期待できる。症例は60 歳台,女性。背部痛を主訴に当院を受診し,精査により膵体部癌と診断された。CT で腹腔動脈から総肝動脈,胃十二指腸動脈分岐部にかけて連続する軟部陰影を認め,切除不能と診断し化学放射線療法[S─1+体外照射(計56.0 Gy: 2.0 Gy×28 Fr)その後gemcitabine+S─1 を2 週投与1 週休薬で11 コース]を行った。画像上SD であったが,新規病変を認めず腫瘍マーカーの改善を認めたため,治療開始から10 か月後に腹腔動脈合併尾側膵切除を施行した。病理組織所見では,総肝動脈神経叢にわずかに腫瘍細胞を認めるのみで,病変は広範な線維化により置換されていた。術後S─1 内服を行い,治療開始から17 か月現在無再発生存中である。切除不能膵癌に対し,R0 のアジュバント切除を施行し得た症例を経験したので報告する。 -
術前化学放射線療法にて病理学的CR が得られた膵癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は57 歳,男性。食欲減退と腹部膨満感を主訴に近医を受診し,精査の腹部CT 検査にて脾静脈閉塞を伴う40 mm大の膵尾部腫瘤を指摘され当院受診となった。膵尾部癌(cT4N1M0,stage IVa)の診断にて2012 年8 月より術前化学放射線療法(chemoradiotherapy: CRT)[gemcitabine(GEM)/S─1 療法,RT 50.4 Gy/28 Fr]を施行した。CRT 後の腹部CT検査では腫瘍は20 mm に縮小しており,PR の判断で10 月,膵体尾部切除術,脾臓合併切除,D2 リンパ節郭清術を施行した。病理検査では異型細胞は消失しており,治療後の効果判定はEvans 分類のgrade IV と診断され,病理学的CR が得られた。現在,術後8 か月無再発経過中である。 -
術前化学療法施行後肝動脈・門脈合併切除でR0 切除し得た局所進行膵癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は40 歳台,男性。門脈,総肝動脈への浸潤を伴う局所進行膵癌と診断された。術前化学療法(gemcitabine+S─1:GS)を5 コース施行し,腫瘍体積の減少およびCA19─9 値の減少を認め,総肝動脈・門脈合併切除を伴う亜全胃温存膵頭十二指腸切除にてR0 切除を遂行し得た。切除4 週後より術後補助化学療法(gemcitabine)を開始した。局所進行膵癌において,適切な術前化学療法はR0 切除完遂に寄与する可能性がある。術前化学療法施行後に,R0 切除し得た門脈および総肝動脈浸潤を伴う局所進行膵癌の1 例を経験したので報告する。 -
全身化学療法が奏効しConversion し得た切除不能膵癌の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description膵癌は悪性度が極めて高く,未だにその生命予後は不良であり集学的治療が必要な癌腫である。近年では切除不能(unresectable:UR)膵癌に対して化学療法が奏効し,手術可能となる症例の報告も認められてきている。今回2010 年1 月~2012年11 月までに当教室を受診した初診時UR 膵癌のうち,化学療法後,手術に至った症例について検討した。切除可能性の判定基準はNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)ガイドライン1)を用いて評価した。25 例中7 例が切除可能と判断され手術を施行した。7 例中5 例は切除,2 例は腹膜播種または局所進展で非切除となった。UR 膵癌に対する化学療法後の切除例の予後は非手術例に比べて良好であるという報告もあることから,化学療法中のUR 膵癌に関して,手術の可能性を常に考慮しながら診療することが大切であると考えられた。 -
化学放射線療法後にGemcitabine による化学療法を継続し長期間SD が得られているStage IVa 膵癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide DescriptionStage IVa 膵癌に対し化学放射線療法(CRTx)後にgemcitabine(GEM)による化学療法(CTx)を継続し,長期間SD が得られている症例を経験したので報告する。症例: 61 歳,女性。主訴: 自覚症状なし。現病歴: 肝血管腫の経過観察中に膵鈎部に腫瘤影を指摘され,精査加療目的で当科紹介となる。経過: 腹部CT にて膵鈎部に3.0 cm 大のSMA 浸潤を疑う腫瘤影を認めた。ERCP による細胞診でClass V であり膵頭部癌Stage IVa(cT4N0M0)と診断した。SMA 浸潤が疑われたため,CRTx(GEM 250 mg/m2/week×6 weeks+liniac 50.2 Gy)を行ったが効果判定ではSD であったため,続いてGEM によるCTx を行った。GEM 1,000 mg/m2 を3 週投与1 週休薬で施行。11 コース施行した時点で全身倦怠感などの症状が著明になってきたためbiweekly 投与に変更,現在まで計57 コース施行している。画像検査上,主腫瘍はSD を継続,新病変は認めていない。経過中に閉塞性黄疸の状態となったが,チューブステントで対応し,外来化学療法を継続しつつ現在に至っている。 -
切除不能進行膵癌に対するGemcitabine+Erlotinib 併用療法
40巻12号(2013);View Description Hide Descriptiongemcitabine(GEM)+erlotinib の併用療法は,GEM に比較して生存期間の有意な延長が得られており,本邦でも膵癌に適応が追加されている。当院において,2011 年10 月~2013 年4 月までに9 例の治癒切除不能進行膵癌に対してGEM+erlotinib 併用療法を施行したので報告する。年齢62.3(48~70)歳,男女比6:3,PS は全例0,局所進行1 例,遠隔転移8例,膵頭部癌3 例,膵体尾部癌6 例,喫煙歴あり5 例,なし4 例,前治療なし8 例,あり1 例であった。GEM は1,000 mg/m2,3 週投与1 週休薬,erlotinib は100 mg/day,連日服用で開始した。erlotinib の投与期間は133(6~225)日,dose intensity100 mg/day,relative dose intensity は97.1%,GEM の投与期間は5 サイクル(126: 1~224 日),dose intensity 890 mg/m2/week,relative dose intensity は83.6%であった。有害事象は非血液学的毒性が,皮疹4 例(Grade 1: 1 例,Grade 2: 2例,Grade 3: 1 例),急性胆管炎3 例(Grade 3: 2 例,Grade 4: 1 例),顔面浮腫3 例(Grade 1),下痢2 例(Grade 1)他,血液学的毒性は,好中球減少1 例(Grade 4: 1 例),白血球減少1 例(Grade 3: 1 例),貧血4 例(Grade 2: 3 例,Grade 3: 1 例)であった。間質性肺炎はなかった。最良治療効果はPR 1 例,SD 7 例,PD 1 例で,response rate 11.1%,disease controlrate は88.9%であった。また,50%無増悪生存期間5.60 か月(168 日),50%生存期間7.63 か月(229 日),1 年生存率は15%であった。GEM+erlotinib 併用療法は,比較的副作用も少なく第一選択治療として適切と考えられた。 -
エベロリムスが奏効した膵原発非機能性神経内分泌癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Descriptionはじめに: エベロリムスは,本邦でも2011 年に膵神経内分泌腫瘍治療薬として追加承認され,患者の予後の改善が期待されている。症例: 55 歳,女性。主訴は腹痛。画像検索にて,膵尾部を原発とし胃背側から骨盤底に及ぶ長径約30 cm 強の腫瘍,肝転移,傍大動脈リンパ節転移を認めた。経皮的針生検の結果,神経内分泌癌と診断し,膵尾側切除,肝外側区域切除,リンパ節郭清,腹膜播種転移減量手術を施行した。術後3 日目からソマトスタチンアナログ,さらに術後32 日目よりエベロリムス 10 mg/day を内服投与した。エベロリムス内服開始時のCT で骨盤内腹膜播種,腹水貯留,傍大動脈リンパ節腫大を認めた。内服開始後4 か月間はSD を維持したが,術後5 か月後のCT で播種病変の増大を認めPD となった。その後,S─1を内服したが,腫瘍増大,全身状態の増悪を認め,手術から約9 か月後に原病死した。考察: エベロリムスは,NET G1/G2 ではRADIANT─3 国際共同第III 相試験にて有意に無増悪期間を延長しており投与が推奨されているが,NEC では白金製剤をベースとした多剤併用化学療法が施行されることが多い。本症例ではNEC に対してエベロリムスを投与し,4 か月間の無増悪生存期間を得た。エベロリムスのNEC に対する腫瘍抑制効果が期待できるのではないかと考えられた。 -
膵頭部領域癌に対して胆管空腸・胃空腸バイパス術を施行した4 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description胆道狭窄や十二指腸狭窄を伴う切除不能膵頭部領域癌に対して,胆管空腸バイパス術および胃空腸バイパス術を施行し,良好なquality of life(QOL)を保ちつつ化学療法を導入・維持できた症例を4 例経験したので報告する。年齢は64~72歳。疾患は膵頭部癌2 例,十二指腸乳頭部癌2 例。手術は胆囊摘出を行った後,挙上空腸を用いて胆管空腸吻合・胃空腸吻合・空腸空腸吻合をこの順に行い,ブラウン吻合を併置した。術後合併症は認めず,術後5 日目程度で経口摂取を開始できた。閉塞性黄疸を認めた3 例では速やかに減黄効果が認められ,化学療法は術後1 か月以内に導入・再開が可能であった。再減黄が必要な閉塞性黄疸の再発は認めず,亡くなられた2 例ではいずれも永眠直前まで経口摂取が可能であった。バイパス術は安全に施行可能であり,症状緩和のみならず化学療法の導入・継続を可能にするためにも意義のある方法と考えられた。 -
初回切除後4 年で発症した異時性膵癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は55 歳,女性。2008 年7 月膵癌(UICC Stage I)にて亜全胃温存膵頭十二指腸切除を施行,術後半年間の補助化学療法を行った。術後49 か月目に腫瘍マーカーの上昇,CT で残膵に乏血性腫瘤を認め膵癌と診断し,残膵全摘術を施行した。病理組織診断で膵空腸吻合部空腸と脾動脈神経叢に浸潤を伴う異時性膵癌(UICC Stage IIA)と診断した。術後2 か月で多発肝転移,局所再発を認め,術後3 か月で死亡した。本例では初回切除後のサーベイランスにもかかわらず,進行癌で発見され,術後も急速な転帰をとった。さらなる異時性膵癌症例の集積により,初回術後サーベイランス法,治療法の確立が必要である。 -
腎摘出後27 年経過し膵臓転移を認めた腎細胞癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は78 歳,男性。尿閉を主訴に当院救急外来を受診。泌尿器科の尿細胞診にてclass III であり,腹部造影CT 検査を施行したところ膵臓内に2 か所の腫瘤を認め,外科紹介となった。既往歴は27 年前に右腎細胞癌(病期不明)に対し,右腎摘術を施行。CT 検査上,膵頭部に径35 mm 大のhypervascular mass と膵体部に径20 mm 大の膵管拡張を伴い囊胞性腫瘤を認めた。腹部症状ならびに黄疸などの血液検査上の異常所見は認めなかった。膵頭部のhypervascular mass に対する後出血のリスクも高いこと,膵体部の腫瘍は腫瘍位置からEUS─FNA は施行できなかった。膵頭部腫瘍は内分泌腫瘍や腺房細胞癌が,膵体部腫瘍はこれらの変性を伴う同時多発癌,粘液性囊胞腺腫ならびに囊胞腺癌などや分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm: IPMN)などが鑑別にあがった。膵体部の腫瘍は特に主膵管拡張を伴っており,IPMN の可能性を考慮するとわずかな膵尾部を残すことはmalignant potential を残すこととなるであろうと判断し,膵全摘術を選択した。摘出標本にて膵頭部・体部の腫瘍はいずれも腎細胞癌の膵転移であった。本症例は他に転移を認めず,腎摘出後27 年に発見されており比較的まれな疾患である。若干の文献的考察を踏まえ報告する。 -
腎細胞癌膵転移膵頭十二指腸切除後残膵再発に対し膵部分切除を施行した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は74 歳,男性。1991 年に腎細胞癌に対して右腎全摘術を施行し,1996 年に左腎転移に対して左腎部分摘出術を施行した。2007 年に膵転移に対して亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。2012 年11 月のCT にて残膵に造影効果を伴う腫瘤影を認め転移性膵腫瘍が疑われ,2013 年1 月残膵切除術を施行し,術後経過は良好であり,第17 病日に退院となった。組織学的診断はclear cell renal carcinoma であった。術後5 か月現在,他に再発なく,血糖コントロールも良好であり,外来通院中である。腎細胞癌の膵転移は根治切除が可能であれば長期予後が期待できる。膵頭十二指腸切除術後であったものの残膵全摘を回避することができたため,経口血糖降下薬にて血糖コントロールを得られたと考えられる。 -
膵頭十二指腸切除における肝円索を利用した肝動脈保護
40巻12号(2013);View Description Hide Description膵頭十二指腸切除後の仮性動脈瘤破裂は致死的な合併症である。その予防のため,当科では肝円索を血管の被覆に用い,膵腸吻合部から隔絶することで良好な結果を得ている。手技としては,開腹時に肝円索を腹壁より剝離し,手術終了時に胃十二指腸動脈断端を中心に固有肝動脈から総肝動脈にかけて肝円索を巻き付ける。術後のCT では肝動脈の周囲にはしっかりとした脂肪の層が認められ,膿瘍と動脈は隔絶されていた。2003~2012 年まで当科で施行された膵頭十二指腸切除56 例のうち,肝円索を利用しなかった群34 例と利用した群22 例とで術後合併症について比較した。術後膵液瘻および腹腔内膿瘍の発生率に差はなかった。腹腔内出血は,肝円索を利用しなかった群では2 例であったが,利用した群では認められなかった。肝円索を利用した肝動脈被覆法は簡便で,有効な手段になり得ると考えられた。 -
多発肝転移を伴った進行大腸癌に対し二度の鏡視下手術を行った1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description多発肝転移を伴った大腸癌イレウス症例に対し,二度の鏡視下手術を行ったので報告する。症例は82 歳,女性。便秘の精査で大腸癌(S 2 型,SSN0H2P0M0,cStage IV)と診断した。入院時,イレウスの状態であったため経肛門イレウス管を挿入し,腸管減圧を行った。腹腔鏡補助下S 状結腸切除,D3 郭清,回腸人工肛門造設術を施行した。化学療法を4 コース行った後,肝転移巣に対し腹腔鏡補助下肝部分切除,ラジオ波焼灼術を行った。大腸癌イレウス症例は進行した病期のことが多く,予後改善のためには原発巣切除後の治療まで視野に入れる必要がある。大腸癌イレウスであっても低侵襲な腹腔鏡手術を行うことで術後速やかに化学療法を行うことができ,予後改善に寄与すると考えられた。 -
Lynch 症候群による多発大腸癌に対して腹腔鏡下手術を施行し得た1 例
40巻12号(2013);View Description Hide DescriptionLynch 症候群はミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞系列変異を原因とする遺伝性疾患で,大腸,子宮内膜,胃などの関連腫瘍を高率に発症する。大腸癌術後に腹部臓器の多発癌を発症するリスクが高く,再開腹手術が癒着のため困難になる可能性がある。われわれは,Lynch 症候群では腹腔鏡下手術を推奨する。症例は43 歳,男性。検診で便潜血陽性となり,当院紹介。24 歳で大腸ポリープを指摘されていた。精査で盲腸,上行結腸に2 型進行癌を3 か所,Is ポリープを1 か所認めた。父方の第2 近親者内に大腸癌罹患者を2 人認め,改訂版ベセスダガイドラインを満たした。腹腔鏡下結腸右半切除術,D3 を施行した。マイクロサテライト検査陽性で,遺伝子検査にてMLH─1 の変異を確認した。 -
汎発性腹膜炎で緊急手術を要した壁外発育型進行大腸癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は60 歳,男性。右側腹部痛を主訴に当院救急初診。CT 検査で上行結腸外側から背側に内部に石灰化を伴う膿瘍様腫瘤像を認めた。入院後,絶飲食とし,保存的治療を開始。第5 病日,腹部症状が急激に増悪し,腹部全体に筋性防御を伴う強度の腹痛となり,緊急手術となった。腹腔内には混濁した腹水を認めた。右側結腸は,後腹膜,十二指腸と一塊となり巨大な腫瘍を形成し,根治切除は困難で,腫瘍を割りつつ右半結腸切除,十二指腸部分切除を行った。その際,広範な十二指腸下行脚の全層性欠損を生じたため,胃内容・胆汁の十二指腸への流入を減じる目的で幽門洞胃離断術,胃空腸吻合,胆囊外瘻造設を行った。病理所見では,後腹膜剝離面,十二指腸壁にはいずれも腫瘍浸潤を認めR2 手術,中分化管状腺癌,SI(十二指腸),NX,H0,P1(大網),f Stage IV であった。腹膜炎症状を来さなければ,術前化学療法の適応であったと考える。 -
異時性肝転移切除後,腹腔内出血を来した異時性卵巣転移を切除したS 状結腸癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は75 歳,女性。2008 年3 月,S 状結腸癌に対してS 状結腸切除術を施行した[S,tub2,pSE,pN3(4/21),sH0,sP0,sM0,fStage IIIb]。2009 年4 月,肝S6─7 の単発転移巣に対し,肝部分切除術を施行した。2010 年4 月,急速な増大に伴い腹痛・出血を来した右卵巣転移に対し,両側付属器切除術を施行した。術後補助化学療法としてカペシタビンを6 か月投与した。現在,無病生存中である。S 状結腸癌術後,二度の再発に対して外科的切除を行い,その後,補助化学療法を導入し無病生存中の1 例を経験した。大腸癌術後,卵巣転移に伴い出血を来すのはまれであり,若干の文献的考察を加えて報告する。再発巣に対する外科的切除を適切に行うことが,今後ますます重要と考える。 -
当科で考案した結腸癌に対する臍周囲切開による単孔式腹腔鏡手術の理論的背景
40巻12号(2013);View Description Hide Description目的: われわれ独自に考案した臍周囲切開による単孔式腹腔鏡手術(SILS)の理論的背景について検討した。対象・方法: 2009 年9 月~2010 年10 月までの間に行った臍周囲SILS colectomy のうち,臍周囲切開前,筋膜切開後wound retractor(M)(Alexis)装着後の状態を写真で保存できた10 例を対象。臍周囲切開で形成される理論的楕円面積,wound retractor 装着後の楕円面積,臍周囲切開長などをimage analyzer で測定した。結果: wound retractor 装着後の楕円面積はwound retractor装着後の楕円面積の平均2.9(1.6~5.0)倍であった。臍周囲切開長の2 乗とwound retractor 装着後の楕円面積の間には正の相関を認めた(p=0.04,r=0.67)。wound retractor 装着後の楕円面積が700 mm2 以下の5 例に放射状切開を追加した(一方向3 例,二方向1 例,三方向1 例)。結語: われわれの考案したSILS colectomy では,臍中心から臍縁までの距離からsurgical window の面積を推定できることが判明した。 -
腹腔鏡下大腸癌切除でのReduced─Port Surgery における直刺し細径鉗子の安全性,有用性について
40巻12号(2013);View Description Hide Description腹腔鏡下大腸癌切除術においてreduced─port surgery(RPS)導入のため採用した直刺し細径鉗子の安全性,有用性について,当院で2012 年に大腸癌に対し腹腔鏡下大腸切除術を施行した64 例中,細径鉗子[Endo Relief(ホープ電子株式会社)]を併用した22 例の導入効果を検証した。安全性の点で,剛性不足や組織把持による組織損傷のリスクといった従来の細径鉗子にみられた支障は,Endo Relief 使用により生じなかった。また,RPS 導入当初の目的である整容面・創部痛の改善や軽減だけでなく,コスト面でのメリットや腹腔鏡下手術でのtriangulation/counter traction 保持のため,追加鉗子としての有用性があると思われた。port─less での使用であるため,繰り返しの使用によりコスト上のメリットが得られることになる。以上より,腹腔鏡下大腸癌切除術でのRPS を試みた結果,直刺し細径鉗子の組織把持目的としての安全性,有用性が認められた。 -
当院における腹腔鏡下側方郭清の手技と短期成績
40巻12号(2013);View Description Hide Description目的: 当科では下部進行直腸癌に対し術前化学放射線療法を行っており,2012 年4 月より術前診断で側方リンパ節に腫大のない症例の予防的郭清に限り腹腔鏡下側方郭清を開始した。腹腔鏡下側方郭清の短期成績を開腹手術と比較し検証した。対象: 2008 年4 月~2012 年12 月の期間に側方郭清を開腹で行った43 例(open 群)と,腹腔鏡下で行った5 例(lap 群)を対象とした。結果: lap 群 vs open 群では背景因子に有意差は認めず,手術時間(分)は536.2 vs 324.8 でlap 群が有意に長く出血量(mL)139.0 vs 697.8 でlap 群が有意に少なかった。郭清リンパ節個数・術後合併症・在院日数に有意差は認めなかった。結語: 腹腔鏡下側方郭清は手術時間が長くなるが,出血量は少なく安全に施行できた。手技の定型化・腫瘍学的に問題がないことを確認し治療郭清への適応も検討している。 -
結腸癌同時性肝転移治癒切除術後の異時性卵巣転移の1 切除例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は51 歳,女性。悪心・嘔吐,腹痛を主訴に救急来院し,精査の結果下行結腸癌同時性肝転移を認めた。全周性狭窄病変であり,転移性肝腫瘍も切除可能であったため,一期的に結腸左半切除術,肝切除術を施行した。術後補助化学療法を施行中肝転移の増大を認め,初回手術から約2 年6 か月後に肝切除術を施行した。その後,補助化学療法を約1 年継続した。休薬から約1 年経過後の腹部CT にて転移性卵巣腫瘍を指摘され,初回手術から約3 年6 か月後に両側付属器切除術を行った。病理組織学的検査所見は結腸癌の転移であった。 -
術前化学療法により腹腔鏡下にて肛門温存手術が可能となった下部直腸GIST の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は30 代,男性。排便時違和感にて近医を受診し,直腸粘膜下腫瘍の診断にて当院紹介受診となった。大腸内視鏡検査,穿刺生検にて下部直腸GIST と診断された。MRI にて左肛門挙筋への浸潤を疑う所見を認め,根治切除には直腸切断術が必要と考えられた。十分な説明・同意の下,術前イマチニブ療法を行い,腫瘍縮小によって肛門温存手術が可能となることをめざした。投与開始11 か月後のMRI にて腫瘍の縮小を認めたため,腹腔鏡下に肛門温存手術を施行した。血管温存,TMEの層で直腸を授動し,経肛門的に内・外括約筋間を剝離,全層部分切除にて腫瘍を摘出,経肛門吻合,回腸一時ストーマ造設にて手術を終了した。術後合併症なく退院し,肛門機能はほぼ保たれている。病理学的に腫瘍は著明な治療効果を認め,切除断端は陰性であった。直腸GIST に対する機能温存手術をめざした術前化学療法は有用な治療選択の一つとなり得ることが示唆された。 -
腹膜外アプローチが有用であった直腸癌術後骨盤内再発の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description腹膜外アプローチによる局所切除が有用であった直腸癌術後骨盤内再発の1 例を経験したので報告する。症例は73 歳,男性。下部直腸・肛門管癌と診断され直腸切断術を受けた(Rb─P,tub1,pMP,pN0,Stage I)。術後20 か月目の腹部CTにて,骨盤内・尾骨─仙骨(S5)左側に20 mm の腫瘤を認めた。MRI で腫瘤は円形で被膜を有し,浸潤傾向を認めなかった。PET にて腫瘤に一致してFDG が淡く集積するが肉芽腫との鑑別は困難であった。局所再発と診断し手術を施行した。膀胱前腔から左側腔へ剝離を行い容易に骨盤底に到達し,尾骨筋腹側に腫瘤を確認した。腫瘤は楕円形,暗赤色で弾性軟,周囲との癒着は軽度かつ浸潤傾向を認めず,剝離,摘出は容易であった。直腸切断術術後再手術において,腹膜外アプローチは剝離が容易で速やかに骨盤底に到達可能であり,有用な手技であると思われた。 -
結腸癌の治療により病状が安定した多発筋炎とSLE のオーバーラップ症候群の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は75 歳,男性。レイノー症状が出現,その後両肩・両手指の関節痛が出現。さらに症状の増悪を認め,当院内科に精査加療目的に入院した。systemic lupus erythematosus(SLE)および多発筋炎のオーバーラップ症候群と診断されステロイド加療を開始したが,症状のコントロールが不良であった。悪性腫瘍検索目的の便潜血検査が陽性であったため,下部消化管内視鏡検査を施行したところ下行結腸脾弯曲部に15 mm 大のIIa+IIc 病変を認め,生検にてgroup 5 であった。下行結腸癌にて当科紹介となり,腹腔鏡補助下結腸部分切除+D1 郭清を施行した。術後合併症なく経過し,術後筋炎症状は著明に改善した。SLE および皮膚筋炎のオーバーラップ症候群が悪性腫瘍による腫瘍随伴症状であったと考えられる症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。 -
大腸癌に対する腹腔鏡手術後に乳糜腹水を発症した2 例の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description大腸癌に対する腹腔鏡下大腸切除術後に乳糜腹水を発症した2 例を経験したので報告する。症例1: 64 歳,女性。横行結腸癌に対し,腹腔鏡下右半結腸切除術,D3 郭清を行った。術後3 日目の食事開始とともに乳糜腹水を認めた。絶食・低脂肪食で改善した。術後8 日目にドレーンを抜去し,問題なかった。症例2: 80 歳,男性。S 状結腸多発癌に対し,腹腔鏡下高位前方切除術,D2 郭清を行った。術後3 日目に食事開始し,翌日乳糜腹水を認めたが,食事を続行した。乳糜腹水の排液量が少なく,術後6 日目にドレーンを抜去したが,問題なかった。大腸癌術後の乳糜腹水は軽症ですむことが多い。しかし,術中に太いリンパ管を疑えば,結紮やクリッピングで予防に努めるべきである。 -
大腸癌局所再発による悪性小腸イレウスの検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description大腸癌局所再発による悪性小腸イレウス症例5 例(男性2 例,女性3 例,平均58.8 歳)の臨床的特徴を検討した。症例は直腸癌(Rb 1 例,Ra 3 例)4 例,下行結腸癌1 例で,初回手術時のStage は,II 2 例,IIIa/IIIb 各1 例,IV が1 例であった。初回手術から再発までの期間は,1 年~2 年7 か月(平均21.6 か月)であった。Rb 再発の1 例(71 歳,男性)は,直腸切断術・回腸部分切除で根治手術を行った。Ra 再発の2 例(54 歳と51 歳,女性)は,回腸部分切除・腎瘻造設,Ra 再発の1 例(60 歳,女性)は腎瘻造設,下行結腸癌再発の1 例(58 歳,男性)は,吻合部局所切除,肝部分切除,空腸部分切除を施行した(脳転移は放射線療法)。再手術後の経口摂取可能な時期(根治手術例を除く)は,0~4 か月,平均2.3 か月であった。術後合併症は,4 例に認められ再発から死亡までの期間(根治手術例を除く)が平均11.5 か月であった。大腸癌局所再発例は,高度進行癌が多く予後は不良であったが,小腸浸潤のみで局所にとどまり根治手術が可能な例では予後が期待される。 -
高CEA 血症を呈したLow─Grade Appendiceal Mucinous Neoplasm(LAMN)による腸重積に対し腹腔鏡下に治療した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は43 歳,女性。間欠的腹痛を主訴として当院受診した。上部消化管内視鏡検査を施行し,軽度の胃炎を指摘され,内服薬にて経過観察した。その後,腹痛が増強したためCT を施行したところ,径4 cm の囊胞性腫瘤を先進部とする右側結腸重積を認めた。同日,注腸にて整復を試みたが,回盲部に腫瘍性病変が残存していた。盲腸粘膜下腫瘍・腸重積の診断にて腹腔鏡手術を施行した。虫垂全体が上行結腸に重積している所見を認め,腹腔鏡下回盲部切除術を施行した。切除標本では,虫垂内腔に粘液が満たされた囊胞性病変を認めた。術後経過は良好であり,7 病日に退院となった。病理組織学的所見にてlow─grade appendiceal mucinous neoplasm(LAMN)と診断された。 -
集学的治療により根治切除し得た直腸癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description急性汎発性腹膜炎で発症した局所進行直腸癌に術前化学療法を行い,根治切除し得た例を経験したので報告する。症例は68 歳,男性。強い中下腹部痛で救急初診となった。腹部CT で骨盤内を占拠する巨大な腫瘍を認めた。直腸癌に伴う腹膜炎の診断でS 状結腸双孔式人工肛門を造設した。術後の検索で遠隔転移のない,膀胱に広範な浸潤を伴う局所進行直腸癌と診断し化学療法を開始した。まず,FOLFOX6 療法を4 コース,効果判定の後FOLFOX6 にpanitumumab を上乗せし2 コース追加し,初診時から154 日目に低位前方切除,膀胱部分切除,S 状結腸人工肛門閉鎖,回腸ストーマ造設を行った。肉眼的治癒切除で組織学的にも剝離面は癌細胞陰性であった。中分化腺癌,T4N2M0,Stage IIIb であり,さらに術後補助化学療法としてXELOX 療法を6 コース行い初診より13 か月,再発のないことを確認し回腸ストーマを閉鎖した。 -
閉塞性大腸癌に対するステント留置併用術前化学療法の経験
40巻12号(2013);View Description Hide DescriptionRs 結腸癌の全周狭窄に対し大腸ステントを挿入した後,術前化学療法を行い,一期的に根治術を行った症例を経験したので報告する。症例は74 歳の女性,近医にて便潜血陽性を指摘。大腸内視鏡にてRs 結腸に全周性の進行癌を指摘され精査目的に当院紹介。胸腹部CT 検査にてRs 結腸の全周性肥厚,腸閉塞を認めた。一時的人工肛門造設術を行う方針としていたが,患者本人・家族から人工肛門への強い拒否があり,大腸ステント治療による減圧を行う方針とした。大腸ステントを留置し狭窄を解除後,mFOLFOX6 療法を行い根治手術を施行。術後18 病日,経過良好にて退院となった。 -
術前mFOLFOX6+Panitumumab 療法により切除し得た局所進行直腸癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は58 歳,女性。体重減少と貧血の精査目的にて下部消化管内視鏡検査を施行し,狭窄を伴う進行直腸癌(Ra,全周性,tub1,K─RAS 野生型)を認めた。造影CT では原発巣は骨盤内を占拠し,傍大動脈リンパ節腫大も認めた。原発巣のR0 手術は困難と判断し,mFOLFOX6+panitumumab(Pmab)を開始した。mFOLFOX6+Pmab を6 コース,5─FU+Leucovorin+Pmab を2 コース施行後に原発巣と傍大動脈リンパ節は著明に縮小した。原発巣のR0 手術が可能と判断し,低位前方切除術(D3)を行った。病理ではRa,type 5,75×40 mm,tub1>tub2,pSE,ly0,v1,pN0,pPM0,pDMX,pRM1,sH0,sP0,sM1,pStage IV であった。術後はPmab 単剤療法を行っている。本症例のように根治切除術が困難な局所進行直腸癌(K─RAS 野生型)には,術前のmFOLFOX6+Pmab 療法は治療戦略の一つとして有用と考える。 -
Stage IV S 状結腸癌に対し集学的治療後に根治切除し得た1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は54 歳,男性。前医にて切除不能S 状結腸癌[多発性肝転移(H1),肝十二指腸間膜リンパ節転移,肺転移]に対し,S 状結腸切除術を施行された。術後化学療法としてmFOLFOX6+bevacizumab を15 コース施行。効果判定はPR であった。居住地の変更のため当院紹介となった。来院時の画像精査にて切除可能と判断され,肝S7,S8 部分切除術,膵頭十二指腸切除術を施行。その後新たな再発がないことを確認した後,右肺S2 部分切除術を施行した。現在,無再発で経過観察を行っている。大腸癌においては,化学療法にて局所制御できている病変に対しては積極的に根治切除をめざすべきと考えた。 -
遠隔転移・再発を伴う進行S 状結腸癌に対して集学的治療を行い長期生存を得た1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は61 歳,男性。多発肝転移を伴うS 状結腸癌に対して2006 年7 月S 状結腸切除術を施行。原発巣を切除後,化学療法を施行し,肝転移巣を切除可能な大きさまでconversion した後,2007 年9 月肝切除術を施行。2010 年3 月肝・肺再発を認め,残肝切除,肺ラジオ波治療(RFA)を施行。現在初回手術より7 年経過するも以後再発なく生存中である。進行・再発大腸癌は治癒切除を施行することが予後改善につながるが,治癒切除を得るためには手術のみではなく,自験例のように化学療法,RFA などの集学的な治療法が有用である。 -
多発リンパ節転移を伴う進行上行結腸癌に対してセツキシマブ,mFOLFOX6 による化学療法を行い著明な治療効果が得られた1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は65 歳,女性。病変は上行結腸の1 型腫瘍で,病理組織学的検査では中分化管状腺癌と診断され,KRAS 遺伝子型測定では野生型であった。腹部CT にて大動脈周囲を含む多発リンパ節転移,癌性リンパ管症が認められStage IV と診断された。術前化学療法としてmFOLFOX6+セツキシマブ併用療法を6 コース施行した。化学療法後,原発巣やリンパ節転移巣に著明な縮小効果を認め,癌性リンパ管症も改善したため根治手術を行った。現在,術後約8 か月経過し無再発外来通院中である。進行結腸癌に対する分子標的治療薬を併用した術前化学療法は,根治性を高める有用な治療法の一つと考えられた。 -
術前mFOLFOX6 療法が奏効しPathological CR が得られた下部直腸進行癌の1 切除例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は69 歳,男性。排便時出血を主訴に近医を受診した。大腸内視鏡検査で直腸AV2.5 cm/DL─0.5 cm に亜全周性2 型進行癌を認め,当院を紹介受診した。生検結果は中分化腺癌であった。画像検査にてcAI(左肛門挙筋)およびN3(左閉鎖リンパ節)が疑われ,術前化学療法としてmFOLFOX6 療法を6 コース施行した。化学療法後,主腫瘍・左閉鎖リンパ節は縮小し,画像効果判定は部分奏効(partial response: PR)であった。化学療法終了約6 週間後に内肛門括約筋切除術を施行した。術前に浸潤が疑われた左肛門挙筋の剝離断端は陰性であった。術前に腫大が指摘された左閉鎖リンパ節を含めて,両側側方リンパ節生検も施行したが,悪性所見を認めなかった。病理所見では,筋層まで及ぶ瘢痕組織を認めるのみで,明らかな残存腫瘍細胞やリンパ節転移を認めなかった。組織学的効果判定はGrade 3 が得られた。mFOLFOX6 療法は,局所進行直腸癌の術前化学療法として有用な可能性が示唆された。 -
他臓器浸潤直腸癌に対する術前化学放射線療法の治療成績
40巻12号(2013);View Description Hide Description他臓器浸潤した直腸癌に対する術前化学放射線療法(CRT)施行13 例の治療成績を検討した。放射線療法は総照射量を40~50 Gy とし,1 回照射量1.8~2.0 Gy を20~25 回に分割し週5 回照射した。化学療法には5─FU 持続静注,UFT+UZEL,S─1,CPT─11+S─1 のいずれかを用いた。全例で治療を完遂し得たが,1 例が術前に骨盤内膿瘍で死亡した。CRT 終了1 か月後の奏効率は53.8%(7 例)で,9 例で根治度A の手術が施行された。CRT 終了71 日以降に手術が施行された10例のうち,CRT 終了1 か月後の効果がPR であった5 例は全例で根治度A の手術が施行され,4 例で排尿および肛門機能温存手術が施行された。手術施行12 例中6 例で組織学的他臓器浸潤なく,このうち1 例は組織学的PR であった。根治度A 手術施行例の2 例に再発を認めたが,7 例は無再発生存中である。他臓器浸潤した直腸癌に対するCRT は切除率および予後の向上が期待されたが,骨盤内膿瘍などの重篤な合併症に注意することが必要と考えられた。 -
進行直腸癌に対して術前SOX 療法を施行した10 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description進行直腸癌の局所制御を目的として,T4 が疑われる局所進行例に施行された術前S─1+oxaliplatin(SOX)療法の治療成績を報告する。対象は2011~2013 年に当施設で局所進行直腸癌に対して術前SOX 療法を行った10 例。10 例中3 例でbevacizumabを併用し,3 週を1 コースとして平均3.3 コース施行された。Grade 3 以上の有害事象は1 例も認めず,有害事象による治療中断例はなかった。抗腫瘍効果は奏効率40%,腫瘍制御率が100%であり,病変進行(PD)の症例は認めなかった。肝転移の1 例を除いた全例でR0 の治癒切除が可能であり,組織学的効果判定はGrade 0 2 例,Grade 1a 4 例,Grade 1b2 例,Grade 2 が2 例であった。術後合併症は10 例中8 例にみられ,縫合不全は2 例(20%)で認められた。局所進行直腸癌に対する術前化学療法として,ポートレスの外来化学療法が可能なSOX 療法の有用性が示唆された。一方で,術後合併症が多い傾向があり,さらなる症例の蓄積と検討が必要と考えられた。 -
局所進行直腸癌に対する術前化学放射線治療が著効し腹腔鏡補助下内肛門括約筋切除術(Total ISR)を施行し得た1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は74 歳,女性。病変は,歯状線直上から15 cm にわたる広範な全周性の2 型腫瘍で生検にて中分化型腺癌と診断した。CT,FDG─PET にて肛門近傍から直腸全域,S 状結腸移行部にかけて壁肥厚と周囲の脂肪織濃度の上昇,さらに左内腸骨リンパ節にFDG 集積を伴う腫大を認め,cSE,cN3,cM0,cStage IIIb と診断した。腫瘍が肛門と非常に近接し壁外進展も高度であること,また患者の肛門温存の希望が強く術前化学放射線療法(chemoradiation therapy: CRT)の方針とした。定位放射線治療専用のリニアック(NovalisⓇ)を使用した放射線治療とcapecitabine+oxaliplatin(XELOX)+bevacizumab(BV)療法を施行しPR の効果を得た。CRT 終了後5 週目に腹腔鏡補助下内肛門括約筋切除術(total ISR)を施行した。切除標本ではわずかに癌細胞がみられるのみで,pA,N0,M0,pPM0,pDM0,pRM0,pStage II,組織学的効果Grade 2 と診断した。直腸癌に対するCRT には,局所と遠隔転移の制御により肛門温存の適応拡大が期待される。本症例を踏まえ,下部直腸癌に対する術前CRT の課題を検討する。 -
切除不能大腸癌で長期生存が得られた10 例の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description切除不能大腸癌症例における化学療法で,治療を長期間継続するためには有害事象の適切な評価と対策が肝要である。当科において,2006~2010 年に外来化学療法室が関与した進行再発大腸癌症例のなかで,担癌状態で3 年以上の生存が得られた10 例を検討した。oxaliplatin(L─OHP)によるgrade 3 の神経障害を予防するため,外来化学療法室において自己評価シートを用い,期間の他に程度を同時に評価するためにnumeric rating scale(NRS)を用いて有害事象の把握を行った。7 日目を超えてNRS が5 を超える症例はL─OHP の休薬を検討した。長期生存例は,FOLFOX またはsLV5FU2 での治療期間が有意に長期にわたりL─OHP 再導入率も高かった。末梢神経障害のような非血液毒性は,いったん出現すると治療意欲を奪い継続の大きな障害となり得る。詳細な評価がgrade 3 の有害事象の発生を予防し,治療継続に寄与すると思われる。 -
Oxaliplatin─Based Chemotherapy の腹膜播種を伴うStage IV 大腸癌に対する効果
40巻12号(2013);View Description Hide Description背景・目的: oxaliplatin base の化学療法が大腸癌腹膜播種症例に与える影響について検討した。対象・方法: 2006 年1月~2012 年11 月の間に,腹膜播種陽性Stage IV 大腸癌と診断され,oxaliplatin base の化学療法を導入した49 例(oxaliplatin施行群)と,それ以前に5─FU 系の全身化学療法を施行した26 例(control 群)を対象。oxaliplatin 導入前後のoverall survival(OS)を比較。また,oxaliplatin 施行群のOS に関して臨床病理学的因子を共変量とし,単変量,多変量解析を行い,予後因子を検討した。結果: oxalplatin 施行群はcontrol 群より有意に生存期間が延長していた(中央値 20.5 か月 vs 11.7 か月,p=0.04)。oxaliplatin 施行群におけるOS に対するfavorable factor として,70 歳以下(p=0.03),原発巣切除(p=0.02)が同定された。結語: oxaliplatin base の化学療法は大腸癌腹膜播種症例においても生存期間を改善させた。腹膜播種の程度に関係なく原発巣切除を70 歳以下の症例に行い,速やかにoxaliplatin base の化学療法を導入することが予後向上につながることが示唆された。 -
大腸癌肝転移に対する全身化学療法後ラジオ波焼灼療法(RFA)の有効性
40巻12号(2013);View Description Hide Description目的: 当院にて大腸癌肝転移に対し,全身化学療法を施行した後にラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation: RFA)を行った症例の安全性・有用性を検討した。対象: 2006 年1 月~2012 年6 月の間に,大腸癌肝転移に対して全身化学療法後にRFA を施行した17 例,27 病変を対象とした。成績: RFA 前の腫瘍径中央値は12(3~35)mm で,腫瘍個数の平均は1.6(1~4)個であった。局所無再発生存期間中央値は21.3(2.2~61.9)か月で,全生存期間中央値は38.0(5.9~66.3)か月であった。1 例に治療を要する合併症(肝膿瘍)を認めた。腫瘍径が20 mm 以上の病変では9 病変中4 病変に局所再発を認め,20 mm 未満では18 病変中1 病変に局所再発を認め,20 mm 未満の局所再発率は有意に低かった(p=0.030)。結論: 腫瘍径20 mm 未満,3 個以内で,RFA により完全に焼灼し得る解剖学的部位に存在している肝転移巣に対しては,全身化学療法後のRFA が有効な治療の選択肢であると考えられた。 -
術前化学放射線療法が有効で根治切除を施行し得た直腸癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description直腸癌に対する術前化学放射線療法(CRT)が欧米では標準的治療に位置付けられているが,本邦ではTME あるいはTSME+側方郭清が標準的に行われており,生存率が良好で局所再発率も低く,術前CRT は積極的には行われていない。今回われわれは,進行直腸癌に対して術前CRT を施行。主病巣と転移リンパ節の縮小が認められ,根治切除ができた症例を経験したので報告する。症例は47 歳,男性。Ra から口側へと続く全周性の直腸癌の患者。CT 検査で腫瘍と周囲転移リンパ節が骨盤内に充満しており,術後遺残再発の心配があった。そのため術前化学療法としてFOLFOX4 を前医にて施行。しかし病態にはほとんど変化がなく当科紹介。放射線療法にcapecitabine を併用するCRT を施行。主病巣,転移リンパ節ともに縮小した。放射線照射終了後1 か月に手術を施行。直腸Rb に1 か所壁内転移が認められ(術中迅速診で確認),腹会陰式直腸切断術を施行。病理結果は直腸癌,RaRsS,5 型,4/5 周,11×5 cm,中分化管状腺癌,SE,ly2,v3,n1,PM0,DM0,P0,H0,M0,Stage IIIA。K─ras WT,EGFR 蛋白発現陽性。CRT の効果はGrade 1a であった。進行直腸癌の治療法画一化のため,本邦での大規模なRCT の結果が望まれる。 -
術前放射線化学療法が著効し根治切除を施行できた痔瘻癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は60 歳,男性。肛門部痛を主訴に当院を受診し,精査にて肛門周囲膿瘍を伴う痔瘻癌と診断した。放射線化学療法(放射線治療50.4 Gy/capecitabine 2,000 mg/m2)後にXELOX(capecitabine 2,000 mg/m2,oxaliplatin 130 mg/m2)を2 コース施行し,画像上,腫瘍は著明に縮小した。その後,腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術・肛門周囲広範切除術,腹直筋有茎皮弁による会陰部再建を行い,根治切除を行った。病理検査ではtub2,pMP,ly0,v0,pN0(0/3),pM0,pStage I,放射線化学療法の効果はGrade 2 であった。痔瘻癌は術前放射線化学療法のよい適応であることが示唆された。 -
集学的治療により病理学的完全奏効を得た直腸間膜内再発の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は68 歳,男性。67 歳時にS 状結腸癌に対してS 状結腸切除術を施行した。術後補助化学療法としてUFT/UZELを投与した。術後7 か月目よりCEA が7.5 ng/mL と上昇し,造影CT 検査にて吻合部遠位直腸間膜内に4 cm 大の腫瘤を認め,局所再発と診断した。根治切除困難と判断しmFOLFOX6 を6 コース,放射線療法60 Gy を施行した。化学放射線療法施行後の造影CT 検査にて再発巣は同定できず切除可能と判断し,68 歳時に腹会陰式直腸切断術を施行した。切除標本において組織学的にも癌細胞は認めず,病理学的完全奏効と診断した。術後3 年半の間,CEA の上昇や画像上再発を疑う所見はない。外科的切除が困難な症例に対し,放射線化学療法を先行させることで,腫瘍の縮小を図り,安全に治癒切除を施行することができた。局所再発に対しては手術が検討されるが,化学放射線療法のような集学的治療も有用なオプションの一つと考えた。 -
化学療法抵抗性のS 状結腸癌再発に対し放射線,手術療法が有効であった1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は53 歳,女性。骨盤内腹膜に転移を伴うS 状結腸癌に対し,S 状結腸切除術を施行。術後にXELOX+bevacizumab療法を行っていたが,開始後6 か月の画像検査で,肝・骨盤底部に再発腫瘍を指摘された。肝転移に対しては肝亜区域切除術を,骨盤内再発に対しては化学放射線療法(CRT)を行った。2 回目手術後1 年の検査で骨盤内再発の再増大を認めたため,直腸切断術+人工肛門造設術を施行した(病理結果は,S 状結腸癌の局所再発で剝離断端陽性)。3 回目手術後1 年4か月の画像検査で,右肺上葉の緩徐に増大する小結節に対し,肺部分切除を行った(病理検査はS 状結腸癌再発)。同時期に,骨盤内にも再発結節があり,再度CRT を行った。化学療法に感受性が乏しいと思われるような大腸癌の多臓器の再発例に対しても,局所療法を積極的に行うことで,比較的良好な病勢コントロールを得られ,長期生存につながる可能性があると考えられた。 -
直腸癌骨転移に対し化学放射線治療が著効した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は62 歳,男性。左臀部痛を主訴に近医を受診し,仙骨腫瘍と診断された。当院を紹介受診し,下部消化管内視鏡検査にて直腸癌を認め,骨生検にて直腸癌の仙骨転移と診断した。原発巣からの出血や通過障害はなく,他臓器に転移を認めなかった。まず,原発巣も含めた照射野で仙骨転移に対する緩和的放射線療法(40 Gy)を施行し,ゾレドロネート投与も併用した。疼痛の軽減とともに原発巣と転移巣の縮小を認めた。原発巣の進行がコントロールされているため,FOLFIRI+cetuximab療法を開始した。仙骨転移はCT 上消失し,PET─CT ではFDG の集積が消失した。原発巣は縮小し平坦化したが,生検で癌の遺残を確認した。大腸癌の骨転移頻度は,臨床的には8.6~10.7%と報告されているが,単独転移はまれである。今回われわれは,直腸癌単独仙骨転移症例に対し化学放射線治療および全身化学療法が著効した症例を経験したので報告する。 -
IRIS+Panitumumab 療法による二次治療が奏効した大腸癌多発肝転移の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は55 歳,男性。2010 年3 月にS 状結腸結腸癌ならびに肝転移(S3,S4,S5,S6,S7)を指摘され,2010 年6 月にS 状結腸切除術および肝区域切除(S3,S7)ならびに肝腫瘍焼灼術(S4,S5,S6)を行った(SE,N0,H2,P0,M0,fStage IV)。補助化学療法としてS─1+oxaliplatin(SOX)療法を6 コース行うも再発を認めたため,進行性再発大腸癌の一次治療としてSOX+bevacizumab(Bev)療法を行った。10 コース後PD となり,二次治療としてirinotecan+S─1(IRIS)+panitumumab(Pmab)療法を選択し,血液検査や画像上では明らかな抗腫瘍効果を示した。IRIS+Pmab 療法は薬価が低く,ポート管理を必要としないなど利点が多く,患者の個別状況に応じた治療法として二次治療における有用性が示された。 -
Cetuximab 単剤導入療法が奏効した進行直腸癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description近年,進行再発大腸癌に対する化学療法の発展は目覚ましいが,全身状態低下のため標準的な多剤併用化学療法の導入を躊躇する症例も少なからず経験する。われわれは,急激な肝転移巣の増悪による臓器障害と全身状態の低下を認めた症例に対し,導入療法として抗EGFR 抗体薬単剤投与を行うことで,良好な治療経過が得られた1 例を経験した。バイオマーカーを用いた選別により,切迫した臓器予備能低下を認める症例や局所症状により標準治療を躊躇する症例に対して,抗EGFR 阻害薬の単剤導入療法は有用な選択肢となると考えられたため,文献的考察とともに報告する。 -
直腸癌術後再発に対しCapeOX+Bmab 療法が長期奏効している1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は62 歳,女性。2009 年1 月直腸S 状部癌に対し低位前方切除術を施行した。術後診断は,RS,type 3,circ,mod>muc>por,pSE,ly1,v1,pN2,sH0,sP0,cM0,fStage IIIb,KRAS 遺伝子変異型であった。術後補助化学療法としてUFT+LV 療法を6 か月間施行した。2009 年10 月右内腸骨・総腸骨リンパ節転移,腹膜播種再発と診断した。切除不能転移再発に対してCapeOX+Bmab 療法を開始した。2010 年5 月,CT 上再発巣の不明瞭化を認めCR と判断した。末梢神経障害がgrade 2 となり,L─OHP を中止し,capecitabine+Bmab 療法を継続して行った。治療開始から3 年6 か月経過した現在も増悪を認めず,CR を維持している。腹膜播種を伴う切除不能・進行再発大腸癌は予後不良とされる。今回われわれは,CapeOX+Bmab 療法による長期奏効例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。 -
S 状結腸癌術後多発肝転移,心不全を有する高齢者にXELOX+Bevacizumab 療法が有用であった1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は75 歳,女性。肛門痛を主訴に救急外来受診した。CT にてS 状結腸癌穿孔,腹腔内膿瘍と診断し,CT ガイド下膿瘍ドレナージ術を施行した。穿刺6 日後,心不全による呼吸苦,喘鳴が出現し,一時的に人工呼吸器管理となった。その後,保存的加療にて心肺機能は改善した。下部消化管内視鏡検査にてS 状結腸に全周性2 型病変を認め,生検にてtub2 であった。その後S 状結腸切除,リンパ節D3 郭清を施行した。術後経過は良好で,手術2 か月後にCT 施行したところ肝転移を認めた。performance status( PS) 3 であったため抗癌剤治療は行えず経過観察とした。手術 4 か月後にはPS 2にまで回復されていた。一方,CT で肝転移は増悪しており,30%減量した XELOX+bevacizumab( BV)を開始した。化学療法開始後8 か月現在,9 コース施行し,CEA/CA19─9 は基準値内となっており,CT 画像上も肝転移巣は著明に縮小し,PR を得ている。 -
大腸癌肝転移術後残肝再発に対しCapecitabine+Bevacizumab でcCR を得られた1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Descriptionはじめに: 大腸癌肝転移に対する根治的治療は肝切除術であるが,諸種の事情により切除可能病変に対し化学療法(化療)を行う場合がある。今回,大腸癌肝転移に対する肝部分切除術後の残肝再発に対し,capecitabine+bevacizumab(Cape+Beva)でcCR を得られた1 例を経験したので報告する。症例: 75 歳,男性。2011 年4 月上行結腸癌によるイレウスと肝転移(S8)の診断で結腸右半切除+D3,肝部分切除術を施行した。病理検索結果はtub 2,pSE,N1(2/40),H1,Stage IV,R0,Cur B。術後補助化療としてtegafur─uracil(UFT)+Leucovorin(LV)を5 コース施行した後のCT で肝S6 に再発を認めた。肝部分切除術を検討したが患者は化療を希望され,2012 年1 月よりCape+oxaliplatin(L─OHP)+Beva を開始したが,有害事象により2 コースの途中で中止した。この時点で再度手術を検討したが,患者の強い希望によりCape+Beva で継続した。5 コース終了時にCT 上病変は消失し,9 コース終了時のCT 上継続しておりcCR と判定,13 コース終了時点のCT でもcCR を継続している。 -
多発骨転移を伴う肛門管内分泌細胞癌─集学的治療が奏効した1 例─
40巻12号(2013);View Description Hide Description肛門管の神経内分泌癌(neuroendocrine carcinoma: NEC)はまれな疾患で予後不良である。今回,われわれは集学的治療が奏効した多発骨転移を伴う肛門管NEC を経験したので報告する。症例は63 歳,男性。2012 年2 月より肛門痛と背部痛が出現した。肛門管に直径約3 cm の腫瘍を指摘されFDG─PET/CT では多発全身骨転移を認めた。6 月に当科を紹介受診し,免疫染色から NEC と診断した。NECの全身化学療法として,l─leucovorin/5─fluorouraci(l 5─FU)/oxaliplatin(L─OHP):mFOLFOX6+bevacizumab(Bmab)療法,オクトレオチド投与を,骨転移に対してストロンチウム─89,ゾレドロネートの投与を開始した。1 か月後には疼痛の軽減を認め,腫瘍の縮小を認めた。3 か月後のFDG─PET/CT では骨への異常集積は消失した。5 か月後よりgrade 2 の神経障害からL─OHP を中止していたが,10 か月経った現在,骨転移の再燃を認めたためL─OHP を再導入し経過を追っている。 -
XELOX を用いた下部進行直腸癌に対する術前化学放射線療法
40巻12号(2013);View Description Hide Descriptionはじめに: 下部進行直腸癌に対する術前化学放射線療法(CRT)は,本邦では普及していない。われわれは,直腸切断術の適応となるようなT3,N1─2 症例に対してXELOX を併用した術前CRT を行っており,5 例を経験した。方法: 術前照射45 Gy/25 回と併用してcapecitabine 2,000 mg/m2×2 週投与1 週休薬,その後XELOX 療法を2 コース実施。化学療法終了1 か月後に手術。結果: 術前治療中の有害事象として,会陰部の放射線性皮膚炎Grade 2 が3 例,末梢神経障害Grade 2 が1例,皮疹Grade 2 が1 例。手術は腹腔鏡下直腸切断4 例(うち1 例は腹直筋皮弁による会陰再建),開腹低位前方切除1 例。病理学的効果判定はGrade 1a が1 例,Grade 2 が4 例。全例でダウンステージを達成。結語: 進行直腸癌に対する術前治療戦略の一つとしてXELOX を併用した化学放射線治療は有用である可能性がある。 -
DPD 酵素活性低下の直腸癌患者に5─FU の投与量調節し著効を呈した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は64 歳,男性。2011 年8 月に直腸癌腹部傍大動脈リンパ節転移を確認され,手術に先立ち化学療法capecitabine+oxaliplatin(CapeOX)+bevacizumab を開始したが,投与開始直後から重篤な副作用を呈し,その直後にdihydropyrimidinedehydrogenase(DPD)不活性と判明。副作用が改善した時,腹部傍大動脈リンパ節の消失と直腸癌病巣の著明な萎縮を確認したため,直腸低位前方切除を施行。直腸癌術後,フッ化ピリミジン系以外の化学療法を施行したが,リンパ節再発など腫瘍増大の結果となったため,5─fluorouracil(5─FU)を投与量調節して再開し,リンパ節転移の縮小・消失を来し,現在に至っている。 -
術前化学療法を施行後腹腔鏡補助下ISR を施行した直腸内分泌細胞癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は51 歳,男性。2012 年7 月他医にて大腸内視鏡を施行され,直腸癌の診断にて9 月当科紹介受診。右鼠径部に1cm 大のリンパ節を触知。大腸内視鏡にて歯状線直上から口側に2 cm 大の腫瘍を認め,生検にてgroup 5,内分泌細胞癌であった。造影CT にて壁在リンパ節および右鼠径リンパ節転移を認めた。neoadjuvant chemotherapy として9 月にFOLFOX療法を1 回施行。その後EGFR 陽性,K─RAS 野生型と判明し,FOLFOX+panitumumab を計6 コース施行。内視鏡,造影CT にてPR と判定。2013 年1 月腹腔鏡補助下intersphincteric resection(ISR)+右鼠径リンパ節摘出術+人工肛門造設術施行。術中所見はH0P0N1M1(rt. 292)MP,stage IV。病理組織結果はendocrine cell carcinoma,MP,ly2,v2,n0,stageII であった。6 月に人工肛門を閉鎖し,肛門機能は良好である。 -
mFOLFOX6+Panitumumab 療法施行後切除した他臓器浸潤大腸癌の2 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例1 は63 歳,女性。下痢と血便を主訴に来院。骨盤浸潤を伴う直腸癌と診断し,人工肛門造設術を施行。mFOLFOX6+panitumumab 療法を6 コース施行後,低位前方切除術を施行した。術後mFOLFOX6 を6 コース追加し,術後18 か月無再発生存中である。症例2 は52 歳,男性。腹痛,発熱を主訴に初診。膀胱直腸瘻を伴う膀胱浸潤S 状結腸癌の診断で,人工肛門造設術およびmFOLFOX6+panitumumab 療法を6 コース施行後,高位前方切除術+膀胱部分切除術を施行した。術後XELOX 療法を8 コース施行。術後12 か月無再発生存中である。局所進行大腸癌に対する術前化学療法は未だコンセンサスが得られていないが,panitumumab を併用した術前化学療法が有効である可能性が示唆された。 -
化学療法にて切除可能となった膿瘍形成を伴う高度進行大腸癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は60 歳台,男性。大腸内視鏡検査にて全周性直腸癌を指摘された。CT では,骨盤内に直腸・S 状結腸を含めた最大径10.5 cm の巨大な腫瘤を認め,周囲への浸潤・膿瘍形成を示唆されるも遠隔転移は認めず。2011 年3 月,手術施行。腫瘍は骨盤内を占拠し,膀胱・骨盤への浸潤のため可動性不良であり,切除不能と判断し横行結腸人工肛門造設術が行われた。その後mFOLFOX6+bevacizumab を計13 コース行ったところ,膿瘍の悪化はなく腫瘍は著明に縮小(PR)したため根治切除が可能と判断,直腸低位前方切除術を行った。病理所見はS 状結腸癌が直腸に浸潤し一塊となっている中分化管状腺癌であり,浸潤部主体に粘液結節を形成する粘液癌となっていた。術後補助化学療法としてcapecitabine を6 か月施行。初回手術から2 年2 か月,根治切除から1 年6 か月経過した現在,再発なく通院中である。 -
50 歳以下のMSI─H 大腸癌の原発巣における化学療法の効果
40巻12号(2013);View Description Hide Description大腸癌におけるマイクロサテライト不安定性(MSI)は,5─FU 系抗癌剤に抵抗性であることが知られている1─3)。また,50 歳以下でMSI─H である場合にはリンチ症候群の可能性がある。今回,2006 年1 月~2012 年12 月の間に,当科で経験した50 歳以下の切除不能Stage IV 大腸癌のうち,原発巣が切除された11 例について腫瘍のMSI 検査を行い,一次治療として行ったoxaliplatin─base の化学療法の効果との関係を検討した。MSI─H 1 例,MSI─L が2 例,MSS は8 例であった。MSI─H の1 例は,家族性大腸腺腫症(FAP)に合併した高度進行大腸癌であった。MSS の8 例中3 例がSD,1 例がPR であったのに対し,MSI─L の2 例とMSI─H の1 例はいずれもPD であった。50 歳以下のMSI─H ないしMSI─L の大腸癌症例に対するoxaliplatin─base やirinotecan─base の化学療法の有効性については,さらに症例を集積して結論をだす必要があると思われる。 -
切除不能進行・再発大腸癌に対するmFOLFOX6 の位置付け
40巻12号(2013);View Description Hide Description切除不能進行・再発大腸癌に対するFOLFOX 療法では,oxaliplatin(L─OHP)による末梢神経障害のコントロールが課題である。当科では,一次治療としてのmFOLFOX6 を6~8 コースでいったん休止し,二次治療に移行,三次治療としてmFOLFOX6 を再導入している(A 群)。これまでに12 例の症例を経験したので,従来法(B 群)との間で神経毒性の発現状況や,その時期に関して比較検討した。両群でGrade 3 の末梢神経障害を認めたが,B 群では一次治療期間で,A 群では三次治療期間での発現であった。また,A 群において一次治療期間中にGrade 2 の末梢神経障害を3 例に認めたが,二次治療移行後速やかに軽快した。A 群ではB 群に比し,神経障害による病悩期間は短かった。大腸癌の化学療法に際しては,いかにQOLを保ちながら生命予後の改善につなげるかが重要で,当科でのmFOLFOX6 施行方法はQOL の観点から推奨できる方法と考えられた。 -
大腸SM 癌におけるリンパ節転移と再発
40巻12号(2013);View Description Hide Description1999~2010 年までの原発性大腸癌2,135 例のうち大腸SM 癌314 例(14.7%)を対象に,病理学的因子と予後の解析を行った結果,リンパ節転移陽性は33 例(10.5%)であり,腸管傍リンパ節転移26 例(8%),中間リンパ節6 例(2%),主リンパ節または側方リンパ節転移2 例(1%)であった。大腸癌治療ガイドラインに基づき追加腸切除を107 例に施行し,11例にリンパ節転移を認めた(10%)。大腸SM 癌全体で,Stage I 281 例(89%),IIIa 26 例(8%),IIIb 7 例(3%)で全例に根治切除術が行われた。再発は17 例に認められ(再発率5.4%),血行性転移14(肝6,肺4,骨3,脳1)例,リンパ節再発,局所再発,腹膜再発が各々1 例ずつ認められた。平均観察期間51.8 か月の5 年生存率は96.2%であった(他病死8,原病死6,他癌死4)。リンパ節郭清個数は平均9.5 個,D2 とD3 郭清の間で予後の差を認めなかった(p=0.856)。 -
大腸癌腹膜播種症例の予後規定因子と治療戦略
40巻12号(2013);View Description Hide Description腹膜播種の治療成績と予後規定因子をretrospective に評価し,適切な治療方針について考察した。1990~2012 年に当科で経験した同時性腹膜播種を伴う大腸癌症例81 例を対象とした。臨床病理学的背景因子と治療内容および治療成績を明らかにして,その予後規定因子を解析した。腹膜播種の転移程度別の3 年生存率はP1 が22%,P2 が14%,P3 が16%で,3 群間に有意差は認めなかった。根治度別の検討では根治度B の1 年生存率は75%,3 年生存率は30%であり,根治度C よりも有意に良好な生存率を示した(p<0.01)。予後規定因子の多変量解析では,根治度(p=0.03)と肝転移の有無(p=0.01)が独立した予後因子として規定された。根治度B の無再発生存期間の中央値は7.8 か月であったが,根治度B 症例のなかには長期生存例も認められ,完全切除を行うことが重要と考えられた。 -
家族性大腸腺腫症に伴うSM 以深浸潤大腸癌のKRAS Status の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description家族性大腸腺腫症(FAP)でSM 以深浸潤大腸癌を合併した10 例15 病変のKRAS status を解析した。FAP の形態は,密生型2 例,非密生型8 例であった。15 病変のKRAS status は,野生型が6 病変(40%)で,変異型が9 病変(60%)であった。変異タイプでは,G13D が4 例4 病変と最も多かった。3 病変を認めた1 例のKRAS status は,2 病変が変異型,1 病変が野生型であった。また,4 病変を認めた1 例では,3 病変が変異型,1 病変が野生型であった。FAP に合併する大腸癌のKRAS 野生型の割合は,散発性大腸癌より少ないものの40%程度も存在することが判明した。FAP で複数の病変を有する切除不能再発大腸癌に対して抗EGFR 抗体の化学療法を検討する場合,病変部位によりKRAS status が異なる可能性についても考慮する必要があると考えられた。 -
浸潤大腸癌を合併した家族性大腸腺腫症の治療方針
40巻12号(2013);View Description Hide Description目的: 家族性大腸腺腫症(FAP)の術式を浸潤大腸癌の有無別に検討する。対象: 当院で大腸切除を行った古典的FAP21 例。結果: 全例非密生型FAP。腺腫/浸潤大腸癌非合併症例(非浸潤癌群)12 例,粘膜下層以深浸潤大腸癌合併症例(浸潤癌群)9 例。非浸潤癌群の術式は,大腸全摘術・回腸囊肛門(管)吻合術(IPAA)7 例,結腸全摘・回腸直腸吻合術(IRA)5 例。非浸潤癌群の死亡はデスモイド腫瘍切除後再発の1 例。浸潤癌群の術式は,大腸全摘・回腸人工肛門造設術(TPC)2例,IPAA 2 例およびIRA 5 例。Stage I,II およびIII の4 例では進行度に応じた所属リンパ節郭清を施行。Stage IV の5 例中4 例で肝転移巣を治癒切除した。死亡は切除不能多発肝転移の1 例。結語: 粘膜下層以深浸潤大腸癌合併の非密生型FAP では,腺腫/浸潤大腸癌非合併症例と同様に多くはIRA,腫瘍部位によってはIPAA を施行することで良好な予後が得られた。 -
Stage IIIa 結腸癌における再発危険因子の選定
40巻12号(2013);View Description Hide Description目的: Stage IIIa 結腸(Rs を含む)について再発危険因子を明らかにする。対象と方法: 2001 年1 月~2011 年12 月の間に根治切除を行ったStage IIIa 結腸癌(Rs を含む)93 例を対象とした。臨床病理学的因子についてlogrank 検定を行い,再発危険因子の検索を行った。結果: 再発率は18%,術後補助化学療法施行率は68%であった。logrank 検定では壁深達度SE以深のみが再発危険因子であった[hazard ratio( HR) 10.04,95% confidence interval( CI) 3.26─30.89,p<0.0001]。壁深達度SE 以深の症例の1,2,3 年無再発生存率は76,61,56%であった。深達度SE 以深の症例26 例のうち再発を認めた症例は13 例(50%),標準的術後補助化学療法を行った症例11 例とその他の症例15 例でRFS を比較したが,有意差を認めなかった。結語: Stage IIIa 結腸癌(Rs を含む)では,壁深達度SE 以深が再発危険因子であった。 -
直腸MALT リンパ腫の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description直腸MALT リンパ腫の症例を経験したので報告する。症例は67 歳,女性。便通異常を主訴に当院受診。下部消化管内視鏡検査にて,下部直腸に粘膜下腫瘍を認めた。直腸粘膜生検を施行したが,悪性所見は認めなかった。十分なインフォームド・コンセントの下,経肛門的腫瘍摘出術を施行した。病理組織学的検査の結果,直腸MALT リンパ腫と診断した。Lugano国際分類でStage I と診断した。術後Helicobacter pylori 除菌療法のみ施行し,現在まで無再発生存中である。 -
大腸ステントにて良好なQOL を得られた右側結腸癌腸閉塞の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description右側閉塞性結腸癌へのステント留置の報告は本邦では少なく,文献的考察を加え報告する。症例は60 歳,女性。腹部膨満にて当院を受診した。精査にて横行結腸癌による腸閉塞と診断した。入院第2 病日に下部内視鏡検査により横行結腸右側に腫瘍による全周性狭窄を認め,self─expandable metal stent を留置した。同日より排ガスと排便を認め,閉塞症状は直ちに改善した。腹部造影CT にて多発肝転移,腹膜播種,腹水を認め,左囊胞性卵巣腫瘤も描出した。進行度,病態から予後不良と判断し,mFOLFOX6 による化学療法を第12 病日より開始し,第14 病日と早期に退院可能となった。外来にて4 か月間化学療法を施行した後,増大傾向であった卵巣病変を,ステントを含めた原発巣とともに切除した。切除術後6 か月の現在はFOLFIRI にbavacizumab を併用して外来治療中である。 -
大腸癌肝転移に対し胆道ステントを用い集学的治療を行った1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は69 歳,男性。S 状結腸癌・上行結腸癌・転移性肝癌の診断で,S 状結腸切除術・右半結腸切除術・中心静脈ポート留置施行。肝転移は多発性であったため,まず化学療法を行った後,肝切除術を施行した。その後も化学療法を施行したが,イレウスを発症,原因は小腸への腹膜播種であり,小腸部分切除施行,さらに骨盤部の転移へは放射線治療を施行した。以後,肝門部での胆管閉塞による閉塞性黄疸が出現,胆道ステントを挿入し化学療法を継続した。初診より2 年9 か月で死亡された。再発大腸癌の治療方針はガイドライン上では,化学療法が発達した現在でも局所療法として切除可能なものに関しては外科的切除を推奨している。今回,外科的治療や化学療法,放射線治療,さらに胆道ステントなどの治療を組み合わせた結果,比較的QOL が得られた状態で過ごすことができたため,文献的考察を加え報告する。 -
尿膜管癌との鑑別が困難であった横行結腸癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description患者は55 歳,男性。腹満,腹痛を主訴に受診。臍に膿瘍を認め,CT にて臍から腹腔内に突出する腫瘤を認めた。大腸内視鏡検査,生検の結果,横行結腸浸潤の尿膜管癌の可能性が高いと判断した。泌尿器科主導で手術となった。横行結腸切除術+D1 郭清術+尿膜管膀胱切除術+小腸切除術+腹膜播種巣切除術を施行した。SI,N0,M1(PER),stage IV。 免疫染色上は尿膜管癌が疑われた。腫瘍の首座は大腸癌が疑われた。総合的に大腸癌と判断し術後化学療法を行った。比較的まれな尿膜管膿瘍を合併した横行結腸癌の症例を経験したので報告する。 -
大腸SM 癌の同時性多発肝転移の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は64 歳,男性。貧血精査のため上部消化管内視鏡検査,下部内視鏡検査を施行され,20 mm 大の胃粘膜下腫瘍とS 状結腸の18 mm 大のIsp ポリープを認め,S 状結腸ポリープに対してEMR を施行された。病理組織学的診断は高分化腺癌,pSM3(2 mm),ly2,v1,深部断端陽性であり,追加切除目的に当院紹介となった。術前の腹部造影CT で肝S2/3,S5,S8に肝転移を疑う病変を認め,S 状結腸切除術+D3 郭清,胃部分切除術,肝外側区域・S5・S8 部分切除術を施行した。病理組織学的検査の結果,SM3N1M0H1,Stage IV と診断した。大腸SM 癌は内視鏡切除の適応となるものも多く,比較的予後良好な疾患である。しかし,なかには同時性,異時性にリンパ節転移や遠隔転移を認める予後不良な症例も少数ある。本症例は,大腸SM 癌,同時性肝転移の1 例であり,文献的考察を加えて報告する。 -
S 状結腸憩室穿孔にハルトマン術と人工肛門閉鎖術を施行後45 か月目に吻合部すぐ肛門側に認めた進行S 状結腸癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は81 歳,男性。S 状結腸憩室穿孔による腹膜炎で緊急ハルトマン術を施行,その半年後に人工肛門閉鎖術を行った。緊急手術から人工肛門閉鎖術前も含めて,大腸検査は施行していなかった。内痔核手術前に念のため大腸内視鏡検査を施行,人工肛門閉鎖後45 か月目に吻合部すぐ肛門側に進行大腸癌を認めた。大腸検査未施行の人工肛門閉鎖前には大腸癌の除外診断を考え,大腸内視鏡検査を行うことの重要性が示唆された。 -
甲状腺癌を契機に発見された家族性大腸腺腫症の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は24 歳,女性。頸部腫瘤を主訴に近医を受診し,精査の結果,甲状腺乳頭癌cribriform─morular variant(CMV)と診断された。甲状腺癌の組織型より家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis: FAP)の合併を疑い,下部消化管内視鏡検査を施行したところ100 個以上の大腸ポリープを認めた。また,腹部CT 検査にて右下腹部に12 cm 大の腫瘤を認めた。甲状腺全摘術を施行後,大腸全摘術および腹腔内腫瘤摘出術を施行し,病理組織学的検査にて粘膜内癌合併のFAP および腸間膜デスモイド腫瘍と診断された。甲状腺乳頭癌CMV にはFAP を合併することが知られているが,その報告例は少ない。甲状腺乳頭癌CMV を契機に発見された腸間膜デスモイド腫瘍を伴ったFAP の1 例を経験したので報告する。 -
直腸神経内分泌腫瘍に対する治療方針
40巻12号(2013);View Description Hide Description1998 年1 月~2012 年12 月の間,当院で行われた直腸神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor: NET)に対する治療方法をretrospective に解析し,直腸NET に対する治療方針を検討した。症例は25(男性17,女性8)例,平均年齢57(30~78)歳であった。平均腫瘍径は15(5~70)mm であった。手術術式は局所切除16 例,リンパ節郭清を伴う切除が9 例であった。郭清を行った9 例中3 例(33%)にリンパ節転移を認め,深達度sm,腫瘍径10 mm の症例が2 例含まれていた。また,再発は25 例中3 例(12%)に認められ,局所再発1 例,肝転移2 例で,深達度sm,腫瘍径10 mm の1 例は局所切除後,40か月で肝転移を来した。また,再発を来した3 例の原発巣はWHO 分類でG2 以上であった。腫瘍径10 mm 以上には,原則,リンパ節郭清を伴う切除は考慮されるべきであるが,腫瘍径だけでなく,腫瘍細胞増殖能など病理組織学的因子も加味した上で,総合的に治療方針を検討すべきと思われた。 -
直腸カルチノイド切除術5 年後にリンパ節,肝転移を来した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は65 歳,男性。直腸カルチノイド(腫瘍径10 mm)にて2007 年,腹腔鏡補助下低位前方切除術とリンパ節郭清を施行した。病理所見では深達度sm,脈管侵襲陽性,No. 251 のリンパ節転移を認めた。2012 年の腹部造影CT で右閉鎖リンパ節の腫大,S5/6 とS7 に3 か所にリング状造影効果のある結節を認めた。直腸カルチノイド術後の骨盤内リンパ節転移,肝転移の診断にて手術を施行した。術中エコーで10 か所の肝転移巣を確認した。骨盤内リンパ節郭清,肝部分切除術(S5/6,S7,S8)およびマイクロ波凝固療法(MCT)を施行した。術後病理所見で1 mm 以下の微小な肝転移巣を数か所に認めたため,オクトレオチドLAR(20 mg/body/月)を投与中である。術後10 か月現在,無再発生存中である。長期間経過後の再発もあり得ることも念頭に置きながら,経過観察していくことが必要と考えられた。 -
Virchow リンパ節転移で発見されたS 状結腸癌長期生存の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は63 歳,男性。左鎖骨上窩リンパ節腫脹のため当院を受診。吸引針生検にて腺癌の転移を診断された。精査にてS 状結腸癌を診断され,2007 年9 月にS 状結腸切除術が施行された。切除標本ではS 状結腸の2 多発癌で,① 2 型,3/4 周,4.5×4 cm,中分化腺癌,SS,med,INF b,ly0,v2,② 2 型,4/5 周,6.5×6 cm,高分化腺癌,SS,med,INF b,ly2,v0,N(6/16)であった。術後12 病日からFOLFOX4 8 コース,FOLFIRI 8 コースを施行した。2008 年3 月にはCT にてVirchow リンパ節転移は消失,10 月にはPET─CT にても転移なし。その後capecitabine 1 年間15 コースを施行した。2009年10 月より抗癌剤投与を中止したが,2011 年5 月(術後3 年8 か月)CT にて膵尾部に2×3 cm 大の腫瘤を認め膵転移を疑われた。膵体尾部切除術を施行。腫瘍は,CK7(+)とCK20(-)で原発性の膵癌と診断された。術後S─1,GEM,RT を施行し現在も生存中である(術後5 年9 か月)。 -
化学療法とPSK を施行した大腸癌術後アジュバント症例における好中球/リンパ球比の臨床的意義
40巻12号(2013);View Description Hide Description好中球/リンパ球比(neutrophil/lymphocyte ratio: N/L 比)は,様々な癌種において予後との関連性が報告がされており,特にN/L 比高値では予後不良であることが示唆されている。われわれは化学療法とPSK を併用した大腸癌術後アジュバント施行12 症例に対し,治療中におけるN/L 比の変動を検証した。術前N/L 比のカットオフ値を2.5 とし,それぞれ高値群(N/L≧2.5),低値群(N/L<2.5)に層別し,N/L 比をはじめとする各検査値を経時的に解析した。術前N/L 比が高値であった症例は,化学療法施行により低値にコントロールされる症例が多く確認された。また,術前N/L 比が低値の症例はそのまま低値で推移する傾向がみられた。予後についてはN/L 比による差はみられなかった。化学療法にPSK を併用した大腸癌術後アジュバントにおいて,特にN/L 比高値の症例でN/L 比がコントロールできることが確認された。N/L 比を変動させることによる効果については,さらなる検討と症例の蓄積が必要であると考えられた。 -
切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法に伴う緩和ケア
40巻12号(2013);View Description Hide Description背景: 近年の切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法の進歩により,生存期間は中央値で約2 年を超えるまで延長した。しかし,化学療法と並行して行われる緩和ケアについての報告は十分ではない。目的: 当院において切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法に伴う緩和ケアについて検討した。対象: 当院にて2007 年9 月~2011 年3 月までに化学療法を開始した切除不能進行再発大腸癌症例110(男性61,女性49)例を対象とし,緩和ケアについて検討した。結果: 切除不能の告知後,全例,緩和ケア認定看護師もしくは化学療法看護認定看護師によるカウンセリングを受けた。癌性疼痛によりfirst─line の治療においてはNSAIDs を使用する患者は全体の10%であり,オピオイドの使用は6.3%であったが,病状の進行や副作用による治療の変更に伴い鎮痛剤を必要とする比率は増加し,best supportive care(BSC)の患者においてはNSAIDs を68.1%,オピオイドを50%の患者が必要とする状態であった。化学療法の継続が困難となった88 例のうち77 例(87.5%)がMSWの面談を受け,今後の療養先について相談し社会的支援を受けた。まとめ: 化学療法開始時には精神的支援や化学療法副作用対策が重要となるが,病状が進行するにつれ癌性疼痛に対する対策が重要になり,化学療法終了後には療養先に相談などの社会的支援を必要とする傾向を認めた。化学療法期間中に緩和ケアのなかでの重点が移り変わっていくことが示唆された。 -
肺・肝・腹膜転移を伴う結腸癌に多剤療法を行い5 年生存した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は74 歳,男性。肺・肝転移,腹膜播種を伴うS 状結腸癌患者に対して,便通異常が高度のため外科手術を施行した。術後,転移巣に対して,UFT/UZEL(10 か月),FOLFOX(11 コース),FOLFIRI(13 コース),IRIS(23 コース),bevacizumab(32 回),cetuximab(29 回)による全身化学療法とpaclitaxel(65 回)による腹腔内化学療法を行い,5 年間の長期生存が得られた。 -
漏斗胸を伴う胸部食道癌に対し胸腔鏡補助下に切除し得た1 症例
40巻12号(2013);View Description Hide Description食道癌は集学的治療により予後の改善を認めるが,未だ在院死も高率に認める術中,術後管理の難しい疾患である。また,漏斗胸は一般的には無症状ではあるが,心機能の低下や胸痛を認めることがある。漏斗胸を合併した食道癌は椎体と胸骨の間隔が狭く十分な視野の確保が困難である。今回われわれは,漏斗胸を伴った進行食道癌症例に対し胸腔鏡補助下に切除し,再建に苦慮し,術後5 年の無再発生存症例を経験した1 症例を報告する。 -
壁内浸潤により胃壁内に粘膜下腫瘤様病変を形成した食道扁平上皮癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は72 歳,女性。主訴は嚥下困難。上部消化管内視鏡検査において胃噴門部に径50 mm 大の粘膜下腫瘤を認め,生検にて扁平上皮癌と診断も食道に原発巣は認めなかった。画像検査にて遠隔リンパ節転移を認めた。原発巣不明であったが,胃壁内浸潤による粘膜下腫瘤様病変を形成した食道癌,または噴門部リンパ節転移が胃内穿通を来した食道癌が疑われた。化学療法FP(5─FU 800 mg/m2 day 1~5,CDDP 80 mg/m2 day 1)を施行,効果判定SD であった。穿孔の危険性が高いため化学療法中止とし,根治切除不可能であったが,中下部食道噴門部切除術を施行した。術後病理所見より,原発巣から壁内浸潤により胃壁内に粘膜下腫瘤様病変を形成した腹部食道扁平上皮癌と診断した。壁内浸潤により胃粘膜下腫瘤様病変を形成した食道扁平上皮癌のまれな1 例を経験したので報告した。 -
食道憩室内表在癌の1 切除例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は72 歳,男性。健診の上部消化管造影検査で,胸部中部食道前壁に憩室を指摘された。内視鏡検査で憩室内を中心に広がる発赤を伴った境界不明瞭な0─IIc 型病変を認め,生検で扁平上皮癌と診断された。超音波内視鏡検査ではcT1a─EP/LPM と診断,固有筋層の菲薄化を認めた。遠隔転移やリンパ節転移を示唆する所見はなかった。境界不明瞭であり,固有筋層が菲薄化していることから,憩室切除や内視鏡的粘膜下層剝離術(endoscopic submucosal dissection: ESD)の適応外と考え,縦隔鏡補助下胸腹部食道全摘術を施行した。術中所見では憩室は気管分岐部リンパ節と強固に癒着しており,牽引性憩室と考えられた。病理組織学的検索では憩室内を中心に広がる中分化型扁平上皮癌であり,pT1a─LPM であった。憩室内では固有筋層の断裂や菲薄化を認めた。現在,術後6 か月経過しているが,無再発生存中である。 -
食道癌術前化学療法における食事摂取量低下についての検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description食道癌に対する術前化学療法(DCF 療法)により,食事量が低下する症例を多く経験し,その対策が求められている。そこで,術前化学療法としてDCF 療法を行った食道癌6 例,12 コースを対象とし,食事量低下の有無と血液生化学検査[血清アルブミン(Alb)値,白血球数,好中球数,血清ナトリウム(Na)値]との関連を検討した。DCF 療法開始後6~12 日目にかけて食事量低下を多く認め,この期間に食事量低下を認めない群ではAlb 値が低下しないのに対し,食事量低下を認める群ではAlb が低下する傾向を認めた。また,食事量低下の発生率は,Alb 値が3.5 g/dL 未満に低下した場合は100%で,Alb 値が3.5 g/dL 以上であった場合は33.3%にとどまった。Na 値,白血球数,好中球数においては,Alb 値ほど関連性は認めず,食事量低下とAlb 値の低下に関連があることが示唆された。 -
食道癌肉腫の4 例
40巻12号(2013);View Description Hide Descriptionはじめに: 食道悪性腫瘍のなかで癌肉腫の頻度は0.5~2.8%と比較的まれである。今回,食道癌肉腫の4 切除例を経験したため報告する。症例: 全例が男性,平均年齢は61 歳。全例に食道癌に準じた手術を行い,3 例で根治切除,1 例で非根治切除(高度リンパ節転移)となった。根治術例の壁深達度は全例pT1 で2 例にリンパ節転移を認め,病期はI 期が1 例,II 期が2 例であった。根治術例3 例中1 例で術後に縦隔局所再発を認めたため,化学放射線療法を施行し臨床学的完全寛解を得て経過観察中である。他2 例は無再発生存中で根治術例全例が5 年以上生存している。非根治術例は術後111 日に原病死した。考察: 食道癌肉腫は隆起性発育のため早期発見されやすいがリンパ節転移陽性例が多い。治療は食道癌に準じリンパ節郭清を伴う根治切除術,化学療法および化学放射線療法により比較的良好な予後が得られると考えられた。 -
表在型食道原発悪性黒色腫の1 切除例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は71 歳,男性。2 年前より食道メラノーシスを経過観察されていたが,胸部中部食道に30 mm 大の黒色調の亜有茎腫瘍を認め,食道原発悪性黒色腫の疑いにて当科に紹介となった。全身精査にてリンパ節転移や遠隔転移を認めず切除可能と判断し,食道亜全摘,2 領域郭清術を施行した。病理組織診にて食道原発悪性黒色腫,pT1b(SM1),N0,脈管侵襲陰性,Stage I と診断された。皮膚原発悪性黒色腫に準じ,DAC─tam 療法[dacarbazine(DTIC),nimustine(ACNU),cisplatin(CDDP),tamoxifen]を術後補助化学療法として2 コース施行した。現在経過観察中であるが,10 か月無再発生存中である。食道原発悪性黒色腫は悪性度が高く,予後は非常に不良である。病理学的悪性度から高率の局所再発,遠隔転移再発を来す可能性があるため,術後再発を抑制するために深達度SM 症例に対してもリンパ節郭清を伴う手術と遠隔転移制御の化学療法を併用すべきであると考えられた。 -
気管ステント留置後に5─FU/Nedaplatin が著効した切除不能進行食道癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は68 歳,男性。主訴は嗄声,呼吸困難。上部消化管内視鏡検査にて門歯から30 cm の胸部中部食道に1/4 周性の3 型腫瘍を認め,生検で中分化型扁平上皮癌であった。胸部CT 検査では腫大した左反回神経周囲リンパ節が気管を圧排し,著明な気道狭窄を伴っていた。以上から,cT4(106recL─trachea),N2(101L,106recL,106recR),M0,Stage IVa の切除不能進行食道癌と診断した。呼吸困難を改善するために,気管ステント(spiral Z stent: 直径18 mm,長径80 mm)を留置し,自覚症状が改善した後に,5─fluorouracil(5─FU)とnedaplatin を併用した化学療法を開始した。治療開始後,原発巣と転移リンパ節の著明な縮小を認めた。同療法を19 コース施行したが,目立った有害事象は認めず,2 年6 か月間,完全奏効(complete response: CR)を維持している。気道狭窄を伴う局所進行食道癌に対し気管ステント留置後に化学療法を行い,CRを得られたまれな症例を経験したので報告する。 -
気管浸潤を伴う食道癌術後頸部リンパ節再発に対し集学的治療を施行し根治切除が可能となった1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は52 歳,女性。他院にて2008 年10 月に食道癌肉腫に対し食道亜全摘,後縦隔経路胃管再建術を施行した。2009年9 月に前頸部腫瘤を自覚し,精査にて気管浸潤を伴う食道癌肉腫の頸部リンパ節再発と中咽頭癌の合併と診断した。両病変に対し,化学放射線療法(docetaxel+cisplatin)を開始した。途中,化学療法レジメンを変更し(5─fluorouracil+cisplatin+adriamycin),放射線照射療法が終了した時点で(total 60 Gy),腫瘍の著明な縮小を認めた。しかし腫瘍が気管左壁に遺残していたため,手術の方針とした。腫瘍の浸潤が疑われた皮膚,胸骨,鎖骨,肋骨,無名静脈を含め,気管合併切除を伴う頸部リンパ節郭清術を行った。さらに中咽頭部分切除と喉頭合併切除を行い,遊離大腿皮弁移植,縦隔気管孔を造設し,根治切除を得ることができた。現在術後3 年4 か月,無再発生存中である。 -
当院における食道癌に対するWeekly Paclitaxel 療法の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description目的: 進行再発食道癌に対しpaclitaxel の公知申請が承認された。今回,進行再発食道癌患者の二次治療以降の治療の一つとして,weekly paclitaxel(PAC)化学療法の安全性と有用性を検討した。対象と方法: 2012 年1 月~2013 年2 月の間に,当院でweekly PAC(100 mg/m2: 週1 回を6 週間連続投与,2 週間休薬)を投与した進行再発食道癌患者6 例を対象とし,安全性と有用性をretrospective に検討した。結果: 有害事象は,Grade(G)4 の非血液学的毒性は認められず,血液学的毒性では,好中球(Neut)減少(G4),白血球(WBC)減少(G3),ヘモグロビン(Hb)減少(G3)が認められたが,治療により改善した。治療効果はSD,PD がそれぞれ,2 例,2 例であり,生存期間中央値(MST)は,6.5 か月であった。考察: weeklyPAC 療法は副作用の管理を行うことで,外来にて投与可能で有用なレジメンと考えられた。 -
CPT─11/CDDP が著効した食道内分泌細胞癌肺転移の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は70 歳,男性。2012 年3 月から嚥下困難を自覚し,近医にて食道内分泌細胞癌と診断され,手術加療目的で当科へ受診となった。上部消化管内視鏡にて胸部下部腹部食道を中心に亜全周性の潰瘍浸潤型2 型腫瘍を認め,生検結果は扁平上皮癌と内分泌細胞癌の混在型であった。術前診断はcT3N1M0,cStage III で,術前化学療法としてCDDP,5─FU,ADM の3 剤併用化学療法を2 コース施行し,腫瘍効果判定はPR であった。手術は右開胸開腹食道亜全摘出術,2 領域郭清術を施行した。病理組織学的検査にてendocrine cell carcinoma(large cell type),squamous cell carcinoma の混在型,ly2,v2,pT3N1M0,pStage III であった。術後3 か月後の胸部CT にて右肺S6 に7×5 mm の境界明瞭な結節影が出現し,FDG─PETで同部位にSUVmax 4.6 の集積を認め,食道癌endocrine 成分の肺転移と考えた。肺小細胞癌に準じたCPT─11,CDDP 併用化学療法を3 コース施行し,結節影は消失しCR を得た。 -
高度気管浸潤進行食道癌に対するCRT で長期生存が得られた1 症例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は49 歳,男性。嚥下困難を主訴に近医受診,気管浸潤を伴う進行食道癌との診断にて当科紹介となった。気管浸潤による気道狭窄が著明であったため,気管の浮腫予防にステロイドを併用しながら,放射線療法を開始した。放射線照射(RT)8 日目より化学療法(DCF 療法)を併用した。RT 60 Gy,DCF 療法2 コースを施行し,治療効果判定はCR であった。その後,追加で化学療法(FAP 療法)を2 コース施行した。3 年半経過した現在,再発を認めていない。気管狭窄を有する食道癌の治療開始に際し,ステント留置を行った症例報告は散見されるが,ステロイド投与により気管浮腫を抑制した症例報告は1 例報告されているのみである。速やかに治療を開始できる点で優れていると考えられた。 -
食道癌化学療法中に発症したサイトメガロウイルス腸炎の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は62 歳,男性。主訴は心窩部痛ならびに嚥下困難。食道癌(Mt,3 型,cT3,cN2,cM0,cStage III)と診断した。術前化学療法として5─FU+CDDP 1 コース施行するも脳梗塞を発症し,以後根治的化学放射線療法とした。docetaxel 併用放射線療法開始するも間質性肺炎を発症したため,ステロイドパルス療法を行った。ステロイド投与後第26 病日に下血を来し,下部消化管内視鏡検査で横行結腸を中心に多発潰瘍を認めた。血中CMV 抗原陽性であったためCMV 腸炎と診断し,ガンシクロビル投与による治療を開始した。抗ウイルス薬投与開始後第13 病日に穿孔性腹膜炎を発症し,緊急開腹術を施行した。上行結腸に穿孔を認め,回盲部切除・回腸人工肛門造設術を施行した。その後paclitaxel による化学療法を施行したが,食道気管瘻ならびに誤嚥性肺炎を発症し急死した。化学療法やステロイド投与時には,CMV 腸炎の発症に十分な注意が必要である。 -
食道癌FP 療法施行中にSIADH による意識障害を来した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は74 歳,男性。Lt,Type 1,N3,M1(#16a1lat),cStage IV 食道癌に対し,5─FU/CDDP 併用化学療法(FP 療法)を3 コース施行し,4 コース施行後のday 6 にJapan Coma Scale(JCS)III─300 の意識障害が出現した。同日の血液生化学検査でNa 125 mEq/L と低下を認めた。急激な低Na 血症を来し,脱水・腎機能障害を認めず,血液尿検査所見よりSIADH(ADH 不適合分泌症候群)と診断した。診断後よりNa 補正を開始した。発症15 時間後に意識状態は発語可能なレベルまで改善し,発症4 日後には血清Na 132 mEq/L まで上昇し意識障害は消失した。 -
HALS+気縦隔法を用いたサルベージ食道切除症例の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Descriptionわれわれは,2009 年より鏡視下経裂孔的縦隔操作を先行させた食道切除術を導入し,現在までに140 例の治療経験をもつ。本法の利点は,胸部操作時間短縮,後縦隔リンパ節郭清精度の向上にあると考えている。本法を用いたサルベージ切除術2 症例の治療経験を報告する。症例1 は57 歳,男性。胸部食道癌に対する根治化学放射線療法(dCRT)後の原発巣遺残に対し食道亜全摘術を施行。経裂孔・頸部操作先行後,胸骨後経路胃管再建を施行。最後に右開胸創より食道摘出(手術時間370 分,出血量298 mL)。術後合併症なく経過し退院。症例2 は64 歳,男性。胸部食道癌に対するdCRT 後の難治性食道狭窄に対し,非開胸食道切除術,後縦隔経路胃管再建を施行(手術時間282 分,出血量125 mL)。摘出標本で,狭窄部口側にT1a 病変を認めた。術後23 日目に遅発性縫合不全を認めたが,ドレナージにて軽快し退院。本法では,経裂孔的・拡大視下に食道・大動脈間の安全な剝離が可能であり,サルベージ症例に対しても有用である。 -
胃癌の胃全摘術後に吻合部に発生した食道癌に対し局所切除を施行した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は79 歳,女性。17 年前に胃癌にて幽門側胃切除術を施行した。14 年前に残胃癌にて残胃全摘術を施行した(ρ 型Roux─en─Y 法にて再建)。その後外来にて定期的に観察していたが,上腹部の違和感が続いたため精査を施行した。上部消化管内視鏡検査を施行し,食道空腸吻合部近傍に2 型の病変を認めた。生検の結果group 5 であった。胸部造影CT 検査では,周囲組織への浸潤はなく,リンパ節の腫大もなかった。左開胸開腹にてρ 型Roux─en─Y 吻合の吻合部を切除,Y 脚を再利用し,Roux─en─Y による再再建を施行した。現在6 年以上にわたり無再発生存中である。高齢者の胃癌胃全摘術後に発生した食道癌に対し,局所切除と前回手術でRoux─en─Y 再建に用いたY 脚を再利用する再建法は,低侵襲の術式として有効と考えられた。 -
食道癌の化学放射線療法中に放射線性肺臓炎を来した5 例の治療経験
40巻12号(2013);View Description Hide Description食道癌に対する化学放射線療法(chemoradiotherapy: CRT)は,局所進行症例だけでなく切除可能例にも有効な治療法である。CRT に関連した有害事象の一つである放射線性肺臓炎(radiation pneumonitis: RP)は,重篤な経過をたどることがあり注意を要する。今回われわれは,CRT 後に発症し,重症化した5 例のRP を経験したので報告する。患者はすべて男性で,平均年齢は72(66~76)歳であった。食道癌の病期はStage I,II,IVa がそれぞれ1,2,2 例であった。総放射線照射量の平均値は 51.8( 43.4~61.4)Gy であった。初発症状は発熱 4 例,血中CRP 高値が 1 例で,咳嗽や呼吸困難などの呼吸器症状で発症したものは認めなかった。診断時期は放射線終了から平均6.8(1~18)日で,全例胸部CT 検査にてRP と診断された。5 例中4 例は人工呼吸器による集中治療が必要となり,全例にステロイドパルス治療が施行された。2 例は軽快したが,3 例は死亡した(1 例は多臓器不全,2 例は呼吸不全で死亡)。食道癌に対するCRT 施行中に発熱やCRP の上昇を認めた場合,RP を念頭に置くことが重要である。 -
術前化学療法施行食道癌症例におけるFDG─PET の有用性と問題点
40巻12号(2013);View Description Hide Description本邦では,切除可能進行食道癌に対しては術前化学療法後の食道切除術が行われている。しかし,これら術前療法施行症例におけるPET 検査の有用性に関しての報告は少ない。今回われわれは,術前化学療法施行症例におけるPET 検査の有用性と問題点について検討した。FP 療法2 コース後に食道切除を施行したcStage II/III 食道癌37 例を対象とした。化学療法施行後にSUVmax は38.6%低下し,down stage を得た14 例では低下が有意に大きかった。6 例で化学療法後にPET では指摘されなくなったが,病理組織学的には腫瘍が残存していた。さらに,SUVmax が上昇した5 例中4 例が再発した。術前化学療法後のPET 検査は,その特徴をよく理解した上で用いることが肝要である。 -
5─FU/CDDP による術前化学療法で完全寛解が得られ根治切除し得た食道扁平上皮癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は70 歳台,女性。嚥下時つかえ感を主訴に当センター紹介受診。精査の結果,食道癌Lt,T3N1(#106recL)M0,cStage III の診断に対し,術前化学療法5─FU/CDDP 療法2 コース施行。術前化学療法後の上部消化管内視鏡検査では,原発巣は瘢痕化しており粘膜面に明らかな悪性所見は認めなかった。CT 検査では原発巣の食道壁の肥厚は消失しており,#106recLも縮小。手術は右開胸開腹食道亜全摘,胸骨後胃管再建,頸部吻合術を施行。新鮮摘出標本において病変は指摘できず,病理結果では主病巣は瘢痕化しており,瘢痕に一致して筋板を越える食道全層の線維化が認められた。化学療法効果判定は,原発巣,リンパ節ともにEF grade 3 であった。当センターにおいて2010 年5 月~2012 年12 月までに5─FU/CDDP による術前化学療法を施行した49 例のうち,EF grade 0/1a/1b/2/3 症例はそれぞれ3/19/10/16/1 例であり,grade 3 は本例のみであった。今回われわれは,5─FU/CDDP を用いた術前化学療法で完全寛解が得られ,根治切除し得た貴重な症例を経験した。 -
術前化学放射線療法により組織学的CR が得られたcT4 食道癌の2 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例1 は68 歳,女性。大動脈と左肺静脈浸潤を伴うcT4 食道癌(cT4N2M0,cStage IVa)に対し,術前化学放射線療法(5─FU+CDDP 療法2 コース+放射線療法39.6 Gy)を施行し,cPR の診断で胸部食道切除術を施行した。症例2 は69 歳,男性。気管浸潤を伴うcT4 食道癌(cT4N1M0,cStage IVa)に対し,術前化学放射線療法を施行し,cPR の診断で胸部食道切除術を施行した。2 症例とも術前化学放射線療法に伴う合併症を認めず,第13 病日に軽快退院した。術後の病理結果では癌の遺残は認めず,pCR と診断された。若干の文献的考察を加えて報告する。 -
Dynamic FDG─PET による食道癌悪性度評価
40巻12号(2013);View Description Hide Descriptionフラクタル理論をdynamic FDG─PET(dPET)に応用して腫瘍組織の不均一性を定量化し,腫瘍悪性度との関連性について検討した。食道癌治療例30 例を対象とし,18F─FDG 10 mCi 投与後に60 分間の連続ダイナミック撮像を施行した。腫瘍のtime activity curve からbox─counting 法により腫瘍のフラクタル次元fractal dimension(FD)を定量算出した。SUVとの比較,臨床学的進行度との関連性,補助療法前後での変化と臨床学的効果との比較につき検討した。臨床学的進行度と有意な相関関係をもつことが示された(p<0.0001,R2=0.5754)。術前補助療法前後での減少率は,奏効群23.23%,非奏効群5.83%であり,PR/CR 群で減少率の大きい傾向がみられた。cT4 で術前にCRT を行ったがT4 解除ならずPD となった症例では,SUV が19.1 から6.3 と減少したが,FD は1.244 から1.280 と上昇していた。FD は,腫瘍の治療効果判定に有用な指標である可能性が示唆された。 -
FDG─PET を用いた食道癌リンパ節転移診断における偽陰性例の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description食道癌のリンパ節転移は微小転移が多いとされ,CT やFDG─PET による転移検出能が低い原因とされてきた。術前にFDG─PET で転移と指摘できなかった偽陰性群(FN 群)は転移と指摘できた真陽性群(TP 群)に比べ,リンパ節径が小さく,癌占居率も低く,癌占居面積も小さかった。TP 群の最小癌占居面積は7.5 mm2 であり,径5 mm のリンパ節が検出限界と思われた。癌占居面積が大きいにもかかわらず,FN 群となったリンパ節は腫瘍と一塊になっている症例が多かった。リンパ節内での間質量増加や,術前補助療法による線維化も描出不良の一因と考えられた。 -
食道癌術後肝転移に対する局所療法の経験
40巻12号(2013);View Description Hide Description食道癌術後再発に対しては全身化学療法を行われることが多いが,極めて予後不良である。今回肝転移に対して局所治療を行い,長期生存を得られたので報告する。症例1 は75 歳,男性。Lt─cT3N0M0,stage IIA に対し食道亜全摘,2 領域郭清を施行し,pT3N2M0,stage IIIB であった。術後8 か月目に肝S8,S5 に15 mm,5 mm の転移を認めた。全身化学療法後,肝動脈化学塞栓療法(TACE)を行い,CR を継続するも1 年4 か月後に原病死された。症例2 は68 歳,男性。Lt─cT3N2M0,stage IIIB に対し,術前化学療法後,食道亜全摘,3 領域郭清を行いpT3N2M0,stage IIIB であった。術後8 か月目に肝両葉に計5 個転移を認めTACE を施行。残存した1 個に対して定位放射線治療を施行し,1 年無再発中である。肝転移巣に対する局所治療は,今後治療戦略の一つとなり得ると思われた。 -
食道癌術後乳糜胸に対しリピオドール造影を施行した5 症例の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description食道癌術後乳糜胸は比較的まれな合併症であり,確立された治療法はない。今回,食道癌術後乳糜胸に対しリピオドール造影を施行した5 症例を経験したので報告する。占居部位はMt が4 例,Ce が1 例。術前治療前深達度はT4 が3 例,T1bが2 例であった。胸管は2 例において結紮切離,3 例は温存した。全例において,胸腔ドレーン排液性状が乳白色に変化し,乳糜胸と診断された。保存的治療を開始したが,改善を認めず,3 例においてオクトレオチド持続皮下注を施行した。しかし排液持続したため,全例にリピオドール造影を施行した。4 例において改善を認め,造影後5~9 日目で胸腔ドレーン抜去となった。しかし1 例では改善を認めず,最終的に再手術の上,胸管結紮術を施行した。食道癌術後乳糜胸の5 例に対しリピオドール造影を施行し,4 例においては改善を認めた。保存的加療に反応しない症例に対し,効果を期待できると考えられた。 -
当院における肝細胞癌を重複した食道癌4 例の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description食道癌は様々な悪性腫瘍を重複することが知られているが,肝細胞癌は比較的まれとされる。当院における過去10 年の食道癌,肝細胞癌重複例を検討した。全537 例中重複癌は126 例であった(23.5%)。肝細胞癌を重複したものは4 例であり,重複癌中3.2%であった。そのうち1 例が同時性例であった。肝癌の診断に2 例で肝生検が行われていた。治療に関しては,同時性例では一期的切除が行われ,現在術後34 か月再発生存中である。食道癌に肝癌を重複する症例では,画像評価・生検による適切な鑑別診断を行う必要がある。また,同時性例では根治性・耐術能を慎重に評価した上で,一期的切除も考慮されるべきと考えられた。 -
局所進行食道癌からの出血に対して経カテーテル動脈塞栓術(TAE)が有効であった2 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例1: 60 歳台,男性。食道Mt 領域に狭窄を有する1 型腫瘍に対し腫瘍生検を行い,同日に大量の血便を認め,出血性ショックとなった。内視鏡的止血は困難であったため経カテーテル動脈塞栓術(TAE)を施行し,ショックを離脱でき,緊急手術を回避できた。食道癌の診断となり,待機的に根治切除を施行した。症例2: 50 歳台,男性。食道Mt~Lt 領域に全周性の食道癌を認め,術前化学療法後に手術の方針となった。術中所見にて左主気管支,右肺下葉への浸潤を認め,切除不可能であった。術後,化学放射線療法(CRT)を開始したが,術後42 病日,大量吐血を認め,内視鏡的止血が困難であったためTAE を施行した。以後,吐血は消失し,CRT を完遂し得た。結語: 局所進行食道癌からの出血に対しTAE により良好な止血を得られた2 例を経験した。局所進行食道癌からの出血の対応としてTAE が有効な手法の一つであると考えられた。 -
ICG 蛍光法で術中胃管血流・リンパ流評価を施行した胃管癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は69 歳,男性。2005 年胸部食道癌に対し食道亜全摘術・胸骨後経路胃管再建を施行。2012 年上部消化管内視鏡で胃管癌を認めた。上咽頭癌も合併しており化学放射線療法を施行しCR を得た後,胃管癌に対して手術を施行した。放射線照射範囲に吻合部が含まれていたことなどを考慮し,ICG 蛍光法による術中血流・リンパ流評価を施行し縮小手術を行った。ICGを腫瘍近傍粘膜下に局注すると右胃大網動脈に沿ったリンパ流を認めた。さらに胃管幽門側からの血流を遮断し,ICG を静注すると胃管口側からの血流が確認され,幽門側胃管切除術を施行した。再建は空腸を用いRoux─en─Y 再建で行い,術後経過に大きな問題はなかった。病理組織学的所見はpT1b(SM)N0M0,pStage IA であった。今回われわれは,食道癌術後胃管癌に対しICG 蛍光法で胃管血流とリンパ流を術中評価し,縮小手術を行った1 例を経験したので報告する。 -
輸入脚症候群を伴う残胃癌に対して左上腹部内臓全摘術を施行した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は64 歳,男性。40 年前,胃癌に対して胃切除術,Billroth II 法再建を施行している。突然の上腹部痛・嘔吐で当院を受診した。CT 検査で輸入脚の拡張と吻合部腫瘤を認めた。内視鏡検査で輸入脚吻合部の屈曲・浮腫を認め,生検で低分化腺癌が検出された。輸入脚症候群を伴う残胃癌と診断し,手術を施行した。横行結腸・肝外側区域・膵・左腎門部が巻き込まれていたが,肝転移・腹膜播種も認めなかったため,左上腹部内臓全摘術を施行した。病理学的には各臓器に低分化腺癌がびまん性に浸潤しており,洗浄細胞診も陽性であった。術後はADL が低下したため化学療法を断念し,best support care を行ったが,癌性腹膜炎で術後4 か月目に永眠された。残胃癌に伴う輸入脚症候群は特に予後不良のため,外科的切除を行うか,バイパスやステント留置などの姑息的治療後に早急な化学療法を選択するか,病態を鑑みながら総合的に判断する必要がある。 -
胃癌術後再発巣に対して2 回の腹腔鏡下手術が可能であった1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は74 歳,男性。進行胃癌に対して幽門側胃切除術27 か月後に脾,横行結腸転移を認めS─1/cisplatin(CDDP)併用療法を施行したが,効果判定はPD であった。irinotecan(CPT─11)療法を導入するも,結腸転移巣からの出血のため,腹腔鏡補助下に残胃全摘・脾臓摘出・横行結腸部分切除術を施行した。術後はpaclitaxel(PTX)を導入したが4 コース投与後に転移巣によるイレウスを来し,2012 年2 月腹腔鏡補助下に,横行結腸と小腸の転移巣に対し右半結腸切除,小腸部分切除術を施行した。術後はcapecitabine+CDDP 療法を施行したが,再発診断から2 年4 か月後に永眠された。胃癌再発に外科的手術が有効な症例はまれであるが,本例では二度の腹腔鏡下手術を含む積極的な集学的治療を行うことで良好なQOL を得ることができた。 -
胃壁外性発育を示した巨大GIST の1 切除例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は58 歳,男性。急激に増悪する上腹部膨満感および胃痛を主訴に来院した。腹部CT 検査にて胃,肝臓,膵臓など上腹部臓器を圧排する,内部に囊胞性成分と充実性成分を含む長径22 cm 大の巨大腫瘤を指摘された。胃あるいは大網原発のgastrointestinal stromal tumor(GIST)や腹部軟部腫瘍などを鑑別として念頭に置きつつ開腹手術を実施,腫瘍は胃壁より壁外性に発育する囊胞性成分と充実性成分を伴う巨大腫瘍であり,肝左葉および横隔膜と強固に癒着していた。これに対し胃全摘・Roux─en─Y 再建術,肝部分切除術,横隔膜合併切除術を実施した。病理組織学的には紡錘形細胞が錯綜配列を示し増生しており,免疫染色にてc─kit およびCD 34 陽性を示した。以上より胃GIST と診断した。術後早期にイマチニブの投与を開始,術後約1 年間再発や転移を示唆する所見を認めていない。今回われわれは,径20 cm を超える巨大囊胞性胃GIST に対し手術的に切除し得た症例を経験したので報告する。 -
胃癌切除後大腸転移の1 切除例
40巻12号(2013);View Description Hide Description胃癌切除後の大腸転移切除例を経験したので報告する。症例は63 歳,男性。胃癌に対し,幽門側胃切除術,D2 郭清を施行した。組織型は中分化型腺癌でpT4a(SE),pN0,P0,H0,CY0,M0,Stage IIB であった。術後補助化学療法としてS─1 を1 年間投与した。術後2 年10 か月のCT で横行結腸に45 mm 大の不整形腫瘍が出現し,大腸内視鏡にて横行結腸肝弯曲に半周性の腫瘤性病変を認め,生検にて胃癌の転移と診断された。スコープ通過不可能であり,結腸右半切除術を行った。病理組織診断にて中分化から低分化型腺癌,胃癌の大腸転移と診断された。腫瘍は大腸壁内を主座として増生していた。術後,weekly paclitaxel 療法を行い,現在も加療中である。胃癌術後のフォローアップでは大腸転移も念頭に置くべきである。 -
出血性ショックで緊急手術を要した巨大胃GIST の長期生存例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は79 歳,女性。多量の下血を認め,救急搬送となる。来院時,Hb 6.5 g/dL と著明な貧血を認め,腹部CT 検査にて胃穹窿部背側に12 cm 大の巨大な腫瘤像を認めた。入院後,緊急上部内視鏡検査を施行,胃穹窿部後壁に巨大な粘膜下腫瘍を認めた。露出血管に対し凝固止血を試みたが噴出性の出血を認め,クリッピング困難で出血性ショックとなった。内視鏡的には止血困難と判断され,同日,緊急手術を行った。術中所見では,胃壁外発育型の10×12×7 cm 大の巨大な腫瘤を認め,膵臓・脾臓と強固に癒合しており,胃全摘術,膵尾部・脾合併切除を行った。病理組織学的検査にて,胃原発GIST(高リスク)と診断された。術後は患者の希望もあり補助療法は施行していないが,術後約4 年現在,無再発生存中である。出血性ショックで緊急手術を要した巨大胃GIST の長期生存例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。 -
Stage IV の胃癌に対してTrastuzumab 併用化学療法を施行後原発巣切除を行った2 例
40巻12号(2013);View Description Hide DescriptionHER2 陽性,病期IV の胃癌に対してtrastuzumab 併用化学療法を行った後,原発巣切除を施行した2 例を経験した。症例1: 57 歳,男性。胃部不快感あり,精査でVirchow リンパ節転移を伴う胃癌と診断された。HER2 強陽性のためtrastuzumab+capecitabine/CDDP(XP)療法を2 コース施行したが,幽門狭窄が進行し幽門側胃切除術を行った。術後はcapecitabine+trastuzumab による化学療法を施行し残存リンパ節の縮小を認めている。症例2: 62 歳,男性。体重減少あり,精査で癌性腹膜炎を伴う胃癌と診断された。HER2 強陽性のためtrastuzumab+S─1/CDDP(SP)療法を5 コース施行したが,幽門狭窄が進行したため胃全摘術を行った。術後もtrastuzumab+SP 療法を継続し増悪は認めていない。trastuzumab 併用化学療法によって原発巣切除が可能となり,予後の改善につながると考えられた。 -
多臓器合併切除を施行した高度局所浸潤残胃癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は69 歳,男性。胃癌で幽門側胃切除術の既往。S 状結腸に全周性狭窄を伴うtype 3 進行癌と残胃に大型type 3 進行癌,por 1 を認めた。造影CT にて胃癌は肝外側区域と膵への高度な浸潤を認めた。結腸狭窄を生じていたため,S 状結腸切除術を先行。術後に残胃癌の術前化学療法としてS─1/CDDP/Lentinan を2 コース施行。腫瘍は縮小傾向を認めたが,横行結腸への穿通を生じたため手術を選択した。術中所見で肝,膵,横行結腸,横隔膜,心囊への浸潤を認め,残胃全摘+肝部分切除+膵体尾部切除+脾臓摘出+横行結腸部分切除+横隔膜および心囊の一部合併切除を施行。病理所見はpT4b(SI: 肝,膵,横行結腸,横隔膜,心囊)pN3a,Stage IIIC であった。術後にS─1/CDDP 療法を11 コース施行した後にS─1 投与を継続し,現在まで術後3 年10 か月間無再発生存中である。 -
高度腹膜播種を伴う胃癌に対し長期間化学療法後にサルベージ手術を施行した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は45 歳,男性。type 3 胃癌,腹膜播種による大量腹水で当院紹介となった。S─1+cisplatin(CDDP)療法を6 コース行い腹水消失,原発巣CR と判断し,以降はS─1 単剤とした。原発巣再燃後,S─1+docetaxel(DOC)療法を16 コース施行し,病勢コントロールは得られたが末梢神経障害が出現し,biweekly irinotecan(CPT─11)へ変更後も末梢神経障害は改善せず,消化器症状により化学療法継続が困難となった。腹膜播種は制御できていたことからサルベージ手術を施行し,R0手術を施行し得た。しかし,術後9 か月で腹膜播種,傍大動脈リンパ節再発を来し,5 年以上の生存は得られたものの,結果的に治癒させるには至らなかった。 -
減量手術および化学療法が奏効した高度進行胃癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は76歳,男性。2010年11月下旬に,大動脈周囲リンパ節(PALN)転移陽性胃癌に対して,S─1/docetaxe(l DTX)による化学療法を開始した。2 コース施行後のCT 検査では,転移リンパ節の著明な縮小を認めた。2011 年1 月に根治切除可能かを診断するために手術を施行した。まずPALN のサンプリングを施行したところ転移陽性であった。拡大切除は術後合併症のリスクが高いと判断し,胃全摘およびD2 リンパ節郭清術による減量手術を施行した。術後2 か月目のCT 検査ではPALN の再増大を認めたため,S─1 内服による化学療法を開始した。8 か月目に施行したCT 検査ではPALN の著明な縮小を認めた。その後はCA19─9 値の推移を指標にS─1/CDDP,S─1/CPT─11 にて継続化学療法を行い,現在のところリンパ節の再増大は認めていない。今回,手術および化学療法による集学的治療が奏効した高度進行胃癌症例を経験したので報告した。 -
S─1/Lentinan 療法が奏効し根治切除が施行できた進行胃癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide DescriptionS─1/Lentinan(LTN)療法が奏効し,根治切除が施行できた進行胃癌の1 例を経験したので報告する。症例は75 歳,男性。主訴は右季肋部痛。内視鏡にて胃体部に大きな2 型腫瘍(生検tub1)を認めた。CT 上多数の近傍リンパ節と腹部大動脈周囲に最大約3 cm 大のリンパ節腫大を認め,cT4N3M1(LYM),cStage IV と診断した。2010 年5 月から,S─1(80 mg/m2 day 1~28/q6w)/LTN(2 mg weekly)療法を開始した。内視鏡上原発巣は縮小し,3 コース目には生検にて陰性化し瘢痕化した。CT 上4 コース目でCR が得られた。5 コース終了後,幽門側胃切除術,D2 を施行した。病理組織学的所見は,ごく一部にviable な異型細胞が残存しているのみで,胃壁およびリンパ節は線維化していた。ypT2(MP)N0M0,Stage IB,治療効果判定Grade 2 であった。術後補助療法としてS─1/LTN 療法を1 年間施行した。S─1/LTN 療法中Grade 3 以上の副作用は認めなかった。術後2 年4 か月現在無再発生存中である。 -
S─1+CDDP+Trastuzumab が奏効し治癒切除し得たHER2 陽性胃癌の2 例
40巻12号(2013);View Description Hide DescriptionS─1+CDDP+trastuzumab が奏効し,治癒切除し得たHER2 陽性胃癌の2 例を報告する。症例1: 62 歳,男性。胃体下部から十二指腸球部にかけて膵頭部浸潤を伴う胃癌を認め,cT4b(Panc)N3H0P0M0,Stage IIIC と診断した。治癒切除は困難と診断し,S─1+CDDP+trastuzumab(SPT)[S─1 120 mg/body 1~14 day,CDDP 60 mg/m2 day 1+trastuzumab8 mg/kg(2 コース目以降6 mg/kg)day 1]の併用化学療法を開始した。3 コース終了後,原発巣,リンパ節の著明な縮小とともに幽門狭窄による通過障害を来したため,幽門側胃切除,D2,Roux─en─Y 再建術を施行した。病理組織診断は,ypMP,ly3,v1,ypPM0,ypDM0,N3 で組織学的効果判定はGrade 2 であった。症例2: 62 歳,女性。前庭部から十二指腸球部にかけて膵頭部浸潤を伴う胃癌cT4b(Panc)N2H0P0M0,Stage IIIC と診断した。SPT を3 コース終了後,腫瘍およびリンパ節が著明に縮小し,幽門側胃切除,D2,Roux─en─Y 再建術を施行した。病理組織診断はypSM,ly1,v0,ypPM0,ypDM0,N0 で,組織学的効果判定はGrade 2 であった。 -
S─1+CDDP 術前化学療法にて無再発経過中の進行胃癌
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は49 歳,男性。健診で胃体下部に進行胃癌を指摘された。CT ではリンパ節転移を疑い術前化学療法(S─1+CDDP)を施行した。2 コース終了後の時点で胃内視鏡,CT では縮小効果を認めたがSD であった。2 コース後に開腹胃全摘術+胆囊摘出術を施行した。切除検体の病理組織学的所見では,治療効果判定Grade 1b であった。術後補助化学療法はS─1 を1 年間内服。術後3 年10 か月の現在まで再発は認めていない。 -
局所療法として噴門側胃切除術を施行した乳癌胃転移の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例: 72 歳,女性。1994 年に右乳癌に対し,右乳房切除術および腋窩リンパ節郭清術を施行。2003 年に胸骨・多発肺転移を認め,同年より2012 年まで様々なレジメンの化学療法を施行した。2012 年に腹部造影CT および上部消化管内視鏡にて胃噴門部に約4 cm 大の腫瘍性病変を認め,生検結果にて乳癌胃転移と診断した。その後も化学療法を継続したが通過障害が増悪し,噴門側胃切除術を施行した。病理組織像は硬癌,ER(3+)であり,乳癌胃転移と診断した。術後食事摂取は可能となった。考察: 転移性悪性腫瘍による消化管閉塞を来す患者の全身状態は悪く予後も不良であり,緩和手術(切除,バイパス,人工肛門造設,胃瘻・腸瘻造設)を考慮する際には,手術適応の判断は慎重に行う必要がある。結語: 乳癌胃転移は他の悪性腫瘍の胃転移と比較して予後が長く,通過障害に対してはQOL 改善のための外科的治療が有用であることが示唆された。 -
大型3 型,4 型胃癌に対する術前化学療法の有効症例の選別
40巻12号(2013);View Description Hide Description当院における術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy: NAC)としてのS─1/CDDP(SP)療法の有効性について検討した。対象は2007 年以降にNAC を施行した進行胃癌8 例(男性7 例,女性1 例,年齢中央値70 歳)。治療前Stage はIIA:1,II B: 2,III B: 3,III C: 1,IV: 1 例で,肉眼型は大型3 型3 例,4 型5 例であった。SP によるNAC を施行してから胃切除術が施行された。NAC の奏効率は62.5%(PR 5 例)であった。組織学的効果判定基準ではgrade 0: 1,1a: 2,1b: 2,2: 3 例であった。NAC による有害事象は認容範囲内であった。病理組織学的にStage IV,もしくはNAC の組織学的効果判定がgrade0 の症例の予後は不良であった。NAC 後の手術は,術前にStage III 以下で根治切除を考慮すべきであると考えられた。 -
進行胃癌に対する術前化学療法
40巻12号(2013);View Description Hide Description進行胃癌に対する術前S─1+CDDP 併用化学療法の意義につき検討した。2013 年1 月までに診断した無治療進行胃癌55 例を対象とし,S─1+CDDP を併用した術前化学療法を行った。臨床的な抗腫瘍効果は奏効率55%であり,治癒切除の可否,臨床的治療効果,組織学的治療効果が予後と関連していた。CR,PR 症例には主にS─1 が術後使用され,16 例が生存中である。一方,NC,PD 症例22 例中14 例にはpaclitaxel を中心とした術後化学療法が行われ,4 例が3 年以上生存した。術前治療は奏効率55%と十分な効果を認めただけでなく,効果に応じて術後療法の選択と判断材料となり抗癌剤感受性テストとしても有用であることが示唆された。 -
術前S─1/CDDP 療法で治癒切除し得た多発肝転移を伴う胃癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は60 歳,男性。胃前庭部小弯に3 型進行癌を認め,生検にて高分化型腺癌と診断。造影CT および超音波検査で,肝S2,S3,S4,S7 に転移性腫瘍を認めた。臨床病期T3(SS)N0M0H1,Stage IV と診断し,S─1 80 mg/body/day とCDDP60 mg/m2 の併用による化学療法を開始。約6 か月間,合計5 コース施行後,原発巣および肝転移巣の縮小を認めたため,幽門側胃切除術,D2 郭清,肝部分切除術(計4 か所)を施行した。病理結果はT1b(SM)N0M0P0CY0,H0(viable cell なし),原発巣の組織学的化学療法効果判定はGrade 2 で最終病期はStage IA,R0 切除となった。術後は補助化学療法としてS─1 投与を継続し,現在まで術後2 年2 か月間無再発生存中である。多発肝転移を伴う進行胃癌であっても,化学療法の効果によっては同時肝切除を伴う胃切除の意義はあると考えられた。 -
S─1/CDDP による術前化学療法にて組織学的完全奏効が得られた高度リンパ節転移を有する進行胃癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は55 歳,男性。十二指腸潰瘍にて近医入院中に施行した腹部CT で,膵頭部に径35 mm の腫瘤を認め膵癌疑いで当科紹介となった。FDG─PET/CT では,胃幽門部と前庭部周囲にFDG の異常集積を認めた。上部消化管内視鏡検査にて幽門部大弯に3 型病変を認め,生検ではpor2>tub2 であった。膵頭部の腫瘤は#8a リンパ節の腫大と考えられ,胃癌: cT3,N2,H0,P0,M0,cStage IIIB と診断した。bulky リンパ節の膵浸潤が疑われたため,S─1(80 mg/m2: 3 週投与2 週休薬)+CDDP(60 mg/m2: day 8 に点滴静注)による術前化学療法を2 コース施行した。臨床的治療効果はPR であり,幽門側胃切除・D2郭清術を施行した。病理組織学的検査所見では,原発巣・リンパ節を含めていずれにも癌細胞の遺残を認めず,組織学的効果はGrade 3 と診断した。術後1 年間のS─1 補助化学療法を行い,術後4 年6 か月無再発生存中である。 -
ステント留置と化学療法により長期良好なQOL を得た胃癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description今回われわれは,進行性噴門部癌に対しステント留置と化学療法により,長期良好なQOL を得た胃癌の1 例を経験した。症例は82 歳,男性。2010 年3 月より食事摂取困難感を自覚していた。紹介医での上部消化管内視鏡検査にて,噴門部後壁側に巨大な潰瘍性病変を認め,biopsy にてGroup 5,高分化型腺癌の診断となった。精査加療目的に当科紹介となった。術前精査の結果にて遠隔転移もなく手術適応であったが,高齢および肺気腫による肺機能低下もあり,S─1 による加療を選択した。その後も徐々に嚥下困難となり,ステント挿入術を施行した後,抗癌剤メニューをS─1+CDDP へ変更した。S─1+CDDP4 コース施行後の腫瘍マーカー上昇のため,抗癌剤メニューをweekly paclitaxel へ変更した。その後は現在も外来通院にて治療継続中である。通過障害を伴う胃癌に対し,ステント留置した上での化学療法投与は侵襲も少なくQOL も保たれるため,手術困難な症例に対して非常に有効な集学的治療と考えられた。若干の文献的考察を加え報告する。 -
全身および腹腔内投与併用DCS 療法が著効した高度進行胃癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description50 代,男性。胃体部小弯中心に3 型腫瘍を認めた。大動脈周囲リンパ節転移と審査腹腔鏡下の腹腔洗浄細胞診で癌細胞を認めた。全身および腹腔内投与併用DCS 療法を2 コース施行し,原発巣・リンパ節転移巣ともに著明に縮小した。腹腔細胞診は陰性で,切除可能と判断し大動脈周囲リンパ節郭清を伴う胃全摘術を施行した。病理組織学的には,原発巣およびリンパ節ともに癌組織の遺残はなく,pathological CR と判定された(ypT0N0M0)。S─1 による術後補助化学療法を1 年間施行した。現在,術後18 か月が経過しているが無再発生存中である。 -
CDDP+CPT─11 療法が有効であったS─1 禁忌の切除不能再発胃癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide DescriptionCDDP+CPT─11 療法が有効であったS─1 禁忌の切除不能再発胃癌の1 例を経験したので報告する。症例は64 歳,男性。2010 年7 月,進行胃癌に対し幽門側胃切除術を施行した。術後診断はpT4a(SE),pN2,M0,Stage IIIB であった。11月よりS─1 による術後補助化学療法を開始した。2011 年2 月,2 コース終了後に歩行困難を伴う全身浮腫,皮膚障害(grade3)が出現し,S─1 による有害事象と診断した。S─1 禁忌症例と考え,術後補助化学療法は中止した。2011 年9 月,傍大動脈リンパ節転移・多発肺転移を認め,CDDP+CPT─11 療法を開始した。2012 年6 月までに8 コースを施行して傍大動脈リンパ節はほぼ消失した。切除不能再発胃癌に対する化学療法においては,S─1+CDDP 療法が標準である。しかし,S─1 が有害事象で使用できない場合の治療方針については,コンセンサスは得られていない。CDDP+CPT─11 療法は,安全かつ有効な選択肢の一つになると考えられた。 -
化学療法が長期間有効であった多発骨転移を伴う進行胃癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は49 歳,男性。腰背部痛,食欲不振,体重減少を主訴に2009 年1 月に受診し,上部消化管内視鏡検査で胃体部に4 型腫瘍,CT,MRI 検査でリンパ節転移,右副腎転移,骨転移を伴うStage IV 進行胃癌(印環細胞癌)と診断された。2009年2 月よりS─1(80 mg/m2)+CDDP(60 mg/m2)による化学療法(20 コース)とゾレドロン酸(4 mg/body)投与を行い,胃原発巣は部分奏効(PR),リンパ節,副腎は完全奏効(CR)となり,骨転移は非CR/非PD が持続した。2011 年5 月からS─1 とゾレドロン酸の投与を行い,治療開始後4 年経過し,胃原発巣,骨転移は非CR/非PD が持続し,他の転移巣に再燃を認めていない。多発骨転移が残存するものの,化学療法とゾレドロン酸によって長期間の病勢コントロールが可能であった進行胃癌の1 例を経験した。 -
S─1/CDDP 併用療法にてPathological Complete Response(pCR)を得た膵浸潤局所高度進行胃癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は72 歳,男性。内視鏡検査にて胃前庭部後壁中心に3 型の胃癌を認め,幽門輪は完全狭窄を来していた。生検にて低分化型腺癌を認めた。CT にて胃体中部から十二指腸下行脚を占拠し,膵頭部に浸潤する径10 cm 大の腫瘍を認め,腹部大動脈周囲リンパ節の腫脹も認めた。切除不能と診断したが,経口摂取不能でありバイパス手術を施行,開腹所見はCT 所見どおりであり胃空腸吻合術を施行した。術後S─1/CDDP 併用療法を9 コース行い,1 年後のCT にて主腫瘍とリンパ節腫脹の消失を認めた。根治手術として幽門側胃切除術,D2 リンパ節郭清を施行した。病理組織学的には,原発巣・リンパ節のすべてに癌細胞を認めなかった。化学療法の組織学的治療効果判定のcriteria はGrade 3 で,pathological CR(pCR)と診断された。術後補助化学療法としてS─1 を6 か月内服し,術後7 か月現在無再発生存中である。局所進行切除不能胃癌に対し,根治切除の可能性を念頭に置いた積極的な化学療法は,有用な治療の一つになり得ると考えられた。 -
S─1+CDDP 療法が奏効した胃癌播種性骨髄癌症の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は68 歳,女性。進行胃癌の精査中にdisseminated intravascular coagulation(DIC)を発症し,骨髄穿刺により播種性骨髄癌症と診断された。直ちにS─1+CDDP 療法(S─1 80 mg/body po day 1~21 and CDDP 60 mg/body iv day 8)を開始し,4 日目でDIC から離脱した。以後同療法を3 コース施行し,治療開始より184 日の生存期間を得た。播種性骨髄癌症は予後不良であるが,速やかにS─1+CDDP 療法を開始することにより,生存期間の延長を得ることができたと考えられた。 -
S─1/DTX 併用療法が奏効した胃癌術後腹膜播種再発の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は66 歳,男性。2009 年6 月に胃体下部大弯の3 型病変に対して幽門側胃切除術,D2 リンパ節郭清,Roux─en─Y再建術を施行した。最終診断はpT4a,N0,M0,Stage IIB であった。術後補助化学療法としてS─1 内服で経過観察していたが,術後15 か月目のCT 検査にて上腸間膜動脈根部の腹側に35 mm 大の軟部陰影を認めた。#16a2 リンパ節再発と診断し,S─1/CDDP 併用療法を開始した。抗腫瘍効果はPR であったが,新たに右腎周囲に15 mm 大の腫瘤影を認めたため,腹膜播種再発と診断し,レジメンをS─1/DTX 併用療法に変更した。3 コース終了後のCT 検査では播種巣の消失を認め,計9 コース施行したが,リンパ節・腹膜播種巣ともに再増大は認めなかった。患者の希望によりS─1 内服に変更したが,現在のところ増悪所見は認めていない。今回われわれは,S─1/CDDP 併用療法に続く二次治療としてS─1/DTX 併用療法が著効した胃癌再発症例を経験したので報告した。 -
癌性リンパ管症を伴う進行胃癌にDocetaxel+S─1 が奏効した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は67 歳,女性。咳嗽と呼吸困難を主訴に来院し,胸部X 線およびCT にて癌性リンパ管症と診断,入院となった。上部消化管内視鏡にて前庭部大弯の2 型胃癌と診断,performance status(PS)grade 3 であったが,患者の希望もありdocetaxel(DOC)40 mg/m2(day 1)+S─1 100 mg/body(day 1~14)を3 週1 コースとして開始した。2 コース終了後のCT では癌性リンパ管症の明らかな改善を認め,PS も0 まで改善し,外来化学療法へ移行することができた。PS 不良の癌性リンパ管症を伴う進行胃癌に対し,DOC+S─1 療法は有効なレジメンであると考えられ報告する。 -
HER2 陽性切除不能進行・再発胃癌に対する個別化治療
40巻12号(2013);View Description Hide Description2007~2012 年の間に,当科で切除不能進行・再発胃癌に対して化学療法が施行された142 例を対象としtrastuzumabの併用症例の有効性,安全性について検討した。human epidermal growth factor receptor 2(HER2)強陽性率は16.7%で,分化型は未分化型に比してHER2 陽性率が有意に高かった(p=0.014)。trastuzumab 併用療法10 症例の全生存期間中央値は22.9 か月で化学療法単独群の11.6 か月に比して延長していた(p=0.014)。capecitabine/CDDP/trastuzumab は5 例に施行し,trastuzumab の投与期間中央値は13(7~19)か月で,7 例(70%)でbeyond progression においても継続投与されていた。最良効果はPR 4 例,SD 5 例,奏効率は40%であった。二次化学療法以降でtrastuzumab を使用した症例は6 例であった。HER2 陽性の切除不能進行・再発胃癌に対して,二次化学療法以降でもtrastuzumab 併用による予後延長効果がある可能性が示唆された。 -
HER2 陽性切除不能進行胃癌に対してCapecitabine+CDDP+Trastuzumab 併用療法が奏効した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は66 歳,女性。胃前庭部小弯に4/5 周性の3 型進行胃癌を認め,胃癌,L,Less,type 3,tub1,cT3(SS),N3,H1,P1,M1(LYM,PUL),cStage IV と診断した。human epidermal growth factor receptor 2(HER2)強陽性であり,一次治療としてcapecitabine+cisplatin(CDDP)+trastuzumab 併用療法を選択した。4 コース終了後,肺転移消失,肝転移縮小,リンパ節の著明な縮小,原発巣の縮小を認めPR と判定した。治療前に認めていた食欲不振,ビリルビンの上昇も改善した。grade 3 以上の有害事象として好中球減少,貧血,食欲不振を認めた。クレアチニン増加のためCDDP 投与を中止し,capecitabine+trastuzumab 併用療法を継続中である。HER2 陽性切除不能進行胃癌に対して,capecitabine+CDDP+trastuzumab併用療法が奏効した症例を経験したため報告する。 -
遠隔リンパ節転移を伴ったHER2 陽性胃癌に対しSPT 療法(S─1+CDDP+Trastuzumab)が奏効した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例63 歳,男性。左腋窩のしこりを主訴に来院し精査の結果,胃癌を指摘した。病理診断では低分化型腺癌HER2 陽性(IHC 2+,FISH 陽性)であったため,SPT 療法(S─1 120 mg/m2/day+CDDP 60 mg/m2+trastuzumab 8 mg/kg)を開始した。その後,原発巣,腫大リンパ節の著明な縮小を認めたが治療開始後186 日(6.2 か月)後にリンパ節の増大を認め,PD と判断しSPT 療法は中止となった。二次療法としてS─1+docetaxel 1 コース施行したが副作用のためdocetaxel 単剤に変更し,5 コース施行したところ原発巣の縮小とリンパ節の消失を認めた。PET/CT では原発巣のみにFDG 集積を認めたため患者の同意の下,初回治療より約14 か月後,幽門側胃切除術を施行した。術後診断はT1a, N0, M0,fStage IA であった。今回当院にて,HER2 陽性胃癌で化学療法を行った後R0 手術を行った1 例を経験したので,文献的考察を加え呈示した。なお,2011 年4 月~2013 年2 月までに当院で進行・再発胃癌に対し行ったHER2 陽性率は16.4%(11/67 人)であった。 -
S─1+Docetaxel 療法が有効であったPaclitaxel 耐性胃癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Descriptionpaclitaxel(PTX)耐性進行胃癌に対してS─1+docetaxel(DOC)療法が有効であった症例を経験したので報告する。症例は62 歳,女性。2009 年5 月に胃癌に対して胃全摘術を施行。Type 4,por 2>sig,pT4a(SE),pN3a,pP1,CY1,Stage IV であった。S─1 投与を行ったが,22 か月後に腹水の出現を認め,二次治療としてS─1+irinotecan(CPT─11)を施行した。三次治療としてweekly PTX 療法を行ったが,腹水の増加と腹膜肥厚を認めたため,PTX に耐性となったと診断した。2011 年11 月に四次治療としてS─1(80 mg/m2 day 1~14,q3w)+DOC(40 mg/m2 day 1,q3w)療法を開始した。S─1+DOC 療法開始後2 か月目でCT 上腹水および腹膜肥厚は消失した。現在,S─1+DOC 療法開始後12 か月目でCT 上腹膜病変などの再発は認めず,同治療継続中である。 -
胃癌術後の晩期再発として発症した皮膚転移巣に対してS─1+CDDP 療法が著効した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description胃癌術後の晩期再発として発症した皮膚転移巣に対してS─1+CDDP 療法が著効した症例を経験した。症例は64 歳,女性。2000 年,胃癌に対し幽門側胃切除術を施行。術後病理はstage IIIB であった。術後補助化学療法として5─FU+CDDP療法を3 コース施行。その後はdrop out され,11 年間無病無再発であった。2011 年,頭部腫瘤,背部腫瘤を自覚され背部腫瘤を切除し病理検査でsignet─ring cell carcinoma であった。全身精査を行い,左卵巣腫瘤を認めたのみで,その他に異常所見は認めなかった。病理組織学上,胃癌組織と極めて類似していたため,胃癌術後11 年目の皮膚転移,卵巣転移疑いと診断しS─1+CDDP 療法を開始した。治療後から頭部腫瘤は著明な縮小を認めたが,左卵巣腫瘍は増大傾向であり左卵巣腫瘍摘出を行った。摘出卵巣の病理検索では皮膚癌と同様にsignet─ring cell carcinoma であり,胃癌の転移再発と診断した。その後も同様の化学療法を継続し皮膚転移は著しく縮小した。 -
四次治療でのXP 療法にてPR となった再発胃癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は70 歳台,男性。2010 年9 月,幽門前庭部進行胃癌に対し術前化学療法の方針であったが,2 コース目に脳梗塞を発症し化学療法は中止とし,手術を施行した。術後診断はpT3N3aM0,pStage IIIB と診断。術後補助化学療法を行ったが,2 コース後にリンパ節再発が確認された。二次治療としてCPT─11+CDDP 療法を行ったが5 コース施行後にPD となり,三次治療としてdocetaxel 単剤を行ったが2 コースにてPD となった。四次治療としてXP 療法を施行した。4 コース施行後のCT でPR となった。その後8 コースまで施行し,PR 維持していた。以後,capecitabine 単独投与とし20 コース施行しているがPR を維持しており,現在治療継続している。 -
胃癌術後腹膜播種再発による直腸狭窄に対し放射線療法が奏効した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は82 歳,男性。2006 年8 月,胃癌に対し胃全摘術(D2 郭清)を施行した。病理結果はT4a,N3,M0,Stage IIICであった。2009 年10 月,排便困難で受診。下部消化管内視鏡検査で直腸に全周性の狭窄を認め,生検で印環細胞癌が認められたことから胃癌腹膜播種による直腸狭窄と診断した。化学療法導入までの治療として放射線療法(2 Gy×20 回,計40 Gy)を行ったところ排便障害が改善し退院可能となったため,通院での化学療法を導入した。化学療法はweekly paclitaxel を計11 コース,S─1 を20 コース施行し,画像上CR を得た。2012 年12 月より抗癌剤投与は行っていないが,2013 年5 月現在,再発兆候は認めていない。 -
結腸癌術後補助化学療法が奏効した早期胃癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は63 歳,男性。便潜血反応陽性のため下部消化管内視鏡検査を施行し,進行S 状結腸癌の診断となった。術前精査目的の上部消化管内視鏡検査では,胃体下部大弯側に8 mm 大の早期胃癌を認めた。予後規定因子からS 状結腸癌の治療を優先し腹腔鏡補助下S 状結腸切除術,D3 郭清を施行。病理組織診断はStage II であったが,脈管侵襲陽性であり,また早期胃癌にFU 系抗癌剤が有効であった報告もあることから,UFT+LV 錠による大腸癌術後補助化学療法を胃ESD に先行して施行した。胃癌は内視鏡的に経過観察を行い,2 か月後には平坦化,縮小した。さらに5 か月後にはほぼ消失し瘢痕となり,生検でも悪性所見は認めなかった。化学療法は6 か月で終了し,終了後9 か月目の内視鏡所見では早期胃癌は完全に瘢痕化し,生検でも悪性所見は認めていない。 -
胃癌術後の補助化学療法中に多発遠隔リンパ節転移を来した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は70 歳,女性。2010 年5 月に胃癌(U,type 3,por,pT3,ly3,v2,pN3a,Stage IIIB)に対し胃全摘,D2 郭清術を施行された。当初は補助化学療法の同意が得られず,10 月よりS─1 内服を開始したが,2011 年1 月に遠隔リンパ節(腹部大動脈周囲,左鎖骨上)転移を来した。cisplatin(CDDP)+irinotecan(CPT─11)療法を導入し,腹部大動脈周囲リンパ節にはΣ50.0 Gy/20 Fr の放射線療法を併施した。2 コース終了後に腹部大動脈周囲リンパ節はCR,左鎖骨上リンパ節はPR となったため,左鎖骨上リンパ節郭清術を施行した。病理組織学的には4 個のリンパ節に転移を認め,治療効果はgrade1a と診断された。さらに同レジメンを2 コース行い,その後は無治療で経過観察としているが2013 年10 月の時点で無再発生存中である。遠隔転移に対する治療の主体は化学療法であるが,本症例は局所治療の付加が治療経過に寄与していると考えられた。 -
集学的治療で長期生存が得られた腹膜播種を伴う進行胃癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は56 歳,女性。腹膜播種を伴う進行胃癌に対し,播種巣切除を伴う胃全摘術を行った。病理検査結果はtype 3,MUL,less,muc>sig>por1,ly2,v2,pT4aN3aM0P1CYXH0,pStage IV であった。術後1 か月目よりS─1/polysaccharide─Kureha(PSK)/docetaxel(TXT)腹腔内投与(9 か月),irinotecan(CPT─11 10 か月),paclitaxel(TXL 3 か月)を行った。すべての転移巣が消失したため,術後1 年9 か月後に化学療法を休止した。術後5 年目に腹膜再発を来したため,TXL の全身/腹腔内投与併用療法を開始,2 か月後には全身投与のみとした(6 か月)。capecitabine(Xeloda)/cisplatin(CDDP)(2 か月),TXT(1.5 か月),CPT─11(14 か月),TXL の腹腔内投与(3 回)を行い,現在はS─1(現在まで6 か月)を投与している。術後8 年が経過したが現在も病勢コントロールが得られている。 -
集学的治療により良好なQOL を維持し得た切除不能胃癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は57 歳,女性。2012 年1 月に腹部膨満感,両下腿浮腫,歩行困難を主訴に当院を受診した。上部消化管内視鏡検査にて胃幽門前庭部に全周性の3 型進行胃癌を認めた。腹部CT 検査では腹膜播種による腹水貯留,腹部大動脈周囲リンパ節転移を,また頭部CT 検査では脳転移を認めたため,切除不能高度進行胃癌と診断した。幽門部狭窄に対してはステント留置術を施行し,腹水貯留に対しては腹水再灌流療法を施行した。脳転移に対しては全脳照射(30 Gy/10 Fr)を施行した。全身化学療法としてweekly─paclitaxel を計2 コース施行した。しかしながら,治療開始1 か月目の腹部CT 検査で主病巣の増大と腹水貯留の増悪を認めたため化学療法をS─1/paclitaxel に変更し,計5 コース施行した。経過とともに腹水貯留は著明に減少し,歩行可能な状態までにADL は回復した。しかしながら徐々に全身状態の悪化を認め,治療開始11 か月目に永眠された。 -
胃癌根治切除後のリンパ節再発に対して集学的治療が奏効した3 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description胃癌根治切除後のリンパ節再発に対して集学的治療を施行し,奏効した3 例について報告する。症例1: 71 歳,女性。幽門部の進行胃癌に対して幽門側胃切除術,D2 郭清を施行した。術後36 か月目に大動脈周囲リンパ節再発を認め,S─1 と放射線照射療法を併施し,完全寛解が得られた。症例2: 51 歳,男性。噴門部の進行胃癌の術後48 か月目に右頸部リンパ節再発を認めた。再発リンパ節の摘出手術後にS─1 と放射線照射療法を併施し,完全寛解が得られた。症例3: 68 歳,男性。膵頭部への直接浸潤を認め,術前補助化学療法施行後に根治術を施行した。膵頭部リンパ節再発を認めたが,CPT─11+CDDP 療法,放射線単独照射,5─FU+Leucovorin 療法を逐次行い完全寛解が得られた。本報告は胃癌術後のリンパ節再発に対して,全身化学療法に局所療法である放射線治療の併用が有用である可能性が示唆された。 -
胃癌傍大動脈リンパ節再発に対し化学放射線療法が奏効した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は64 歳,男性。2011 年5 月胃癌cT4aN2M1(腹膜,傍大動脈リンパ節),stage IV と診断された。手術適応なく化学療法を施行したところ腹膜結節の消失,傍大動脈リンパ節の縮小を認めた。2012 年2 月胃全摘+D2 郭清を施行した。最終病理結果はpT2N3aM0, stage IIIA の診断であった。術後はcapecitabine/trastuzumab 療法を施行していたが,術後6 か月目の腹部CT にて傍大動脈リンパ節に再発を認めた。PET─CT にて傍大動脈リンパ節以外に異常集積を認めなかったため,傍大動脈リンパ節再発に対し化学放射線療法の方針とした。化学療法はS─1/trastuzumab 療法に変更し,放射線療法は50 Gy/25 Fr 施行した。化学放射線療法による重篤な副作用は認めなかった。化学放射線療法終了後,効果判定のPET─CT では傍大動脈リンパ節への異常集積は消失していた。現在,S─1/trastuzumab 療法を継続中であるが,再発の兆候を認めず経過している。本症例のように再発が局所に限られているような症例に対し,化学放射線療法は治療法の選択肢の一つと考えられた。 -
胃癌周術期EPA 配合栄養剤投与の有用性の検討─術後体重減少とS─1 補助化学療法継続性への影響─
40巻12号(2013);View Description Hide Description背景: 胃癌術後にeicosapentaenoic acid(EPA)配合栄養剤(プロシュアⓇ,アボットジャパン社,日本)を投与し,胃癌術後の体重減少と術後化学療法の継続性への影響を検討した。方法: 神奈川県立がんセンター・胃食道外科で,2010 年12 月~2011 年10 月の期間に連続する胃全摘およびS─1 補助化学療法施行予定症例5 例に対して,通常のERAS 管理に加えて術後にプロシュアⓇを投与し,術後1 か月の体重減少率および術後S─1 補助化学療法の継続率を検討した。プロシュアⓇの投与方法は,術後2~21 日目まで1 日480 mL の内服を原則とした。体重減少率は,(術前体重-術後1 か月の体重)/術前体重×100 で算出した。S─1 補助化学療法の継続率は,S─1 治療開始日から終了日までで算出した。結果: 対象の年齢の中央値は62.0歳,男性1 例・女性が4 例であった。術後1 か月の体重減少率は92.1%で,過去の報告と比較すると約20%の体重減少の軽減効果がみられた(プロシュアⓇ群: 92.1% vs コントロール群: 89.7%)。また,全例が6 か月間のS─1 補助化学療法を完遂できた。考察: 今回の検討では,プロシュアⓇ投与は胃癌術後1 か月の時点での体重減少率を抑制し,術後の補助化学療法の継続率を向上させる可能性が示唆された。 -
SM 胃癌の術前生検と術後病理組織診の分化度診断の乖離と臨床上の問題点
40巻12号(2013);View Description Hide Description背景: 胃癌治療ガイドラインには,大きさ1.5 cm 以下SM 癌の郭清範囲に関して,術前分化度診断を指標とした治療指針が明記されている。胃癌はheterogeneity を示す癌種であり,種々の分化度を示す組織が混在することが多い。胃癌取扱い規約(JCGC 分類)とTNM 分類を用い,術前術後の分化度診断の乖離の程度を評価した。対象: 1995~2011 年に根治切除を行ったSM 胃癌の連続250 例を対象とした。結果: 大きさ1.5 cm 以下SM 癌は47 例(19%)で,17%(8/47)に混在癌を認めた。術前生検で分化型の症例では,JCGC 分類32 例中1 例(3.1%),TNM 分類25 例中2 例(8.0%)で,術後に未分化型と診断された。これらの乖離症例はすべて分化・未分化混在癌であった。総括: 術前生検と術後組織診には,混在癌が原因と考えられる分化度の乖離が存在する。SM 癌の分化度診断を用いた治療方針決定の意義について再検討する必要がある。 -
腹腔鏡下胃全摘術におけるReduced Port Surgery の手術成績
40巻12号(2013);View Description Hide Description目的: 当科では,近年の単孔式手術の技術を応用しreduced port surgery(RPS)に積極的に取り組んでいる。当科でのlaparoscopy─assisted total gastrectomy(LATG)にて,従来のLATG とRPS LATG について周術期の成績につき比較検討する。対象: 2009 年4 月~2012 年2 月までに多孔式LATG を行った16 例(多孔式群)および2012 年2 月~11 月までにreduced port にて行った12 例(RPS 群)。ポートおよび手術: 当初5 ポートに吻合操作用に上腹部の小開腹を加えていたが,徐々にポート数を減らし,現在では臍部のマルチアクセスポートに5 mm ポートを2 か所加えたRPS にて手術を行っている。再建は,全例食道空腸吻合に経口アンビル(OrVilTM)を用いたRoux─en─Y 再建にて行っている。結果: 平均手術時間は多孔式群333 分,RPS 群370 分,平均在院日数は多孔式群23 日,RPS 群17 日であった。周術期合併症としては術死および術後在院死0 例,縫合不全を多孔式群2 例,RPS 群で膵液瘻2 例,後出血に対する再手術を1 例認めた。また,逆流性食道炎をRPS 群に1 例,吻合部狭窄を多孔式群,RPS 群ともに4 例認めた。吻合部狭窄は数回の内視鏡的処置にて全例軽快し,長期的に処置を必要とした症例はなかった。考察: 当科で行っているLATG において,古典的な多孔式の手術とマルチアクセスポートを用いたRPS についてその治療成績を比較したが,縫合不全などの合併症の増加は認めず十分に認容性のある手術と考えられた。 -
術前化学療法により組織学的完全奏効を得た進行胃癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は77 歳,女性。T3N2M1(LYM),Stage IV 進行胃癌に対して,術前化学療法としてDCS 3 剤併用療法を施行した。docetaxel(DTX 40 mg/m2,day 8),cisplatin(CDDP 60 mg/m2,day 8),S─1(80 mg/m2,day 1~21)を5 週ごとに2 コース施行した。1 コース目にてGrade 2 の好中球減少を認めたため,2 コース目は80%量にて投与を行った。化学療法後のCT にて,胃壁の肥厚は消失し,またリンパ節は著明な縮小を認めた。手術は,開腹にて幽門側胃切除術,D2 リンパ節郭清,16 番リンパ節サンプリング,Billroth I 法再建術を施行した。切除標本の病理組織学的検索においては,胃およびリンパ節いずれにも癌細胞は認められなかった。手術後5 週目よりS─1(80 mg/day,2 週投薬1 週休薬)内服を開始し,現在術後1 年,明らかな再発兆候は認めていない。 -
術前補助化学療法を施行した食道胃接合部複合型腺神経内分泌癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は63 歳,男性。腹部膨満感,体重減少があり,噴門部に3 型腫瘍を認め,生検にてneuroendocrine carcinoma の診断を得た。2011 年11 月末よりCDDP+CPT─11 による化学療法を2 コース施行し効果判定はSD であった。続いて2012 年2 月よりS─1+CDDP を3 コース施行し再びSD であった。手術の方針となり,7 月に左開胸開腹下部食道切除・胃全摘,脾摘,胆摘を施行した。腫瘍は,UE,Less,Post,3 型,97×70 mm,病理診断は,mixed adenoneuroendocrine carcinoma(MANEC),pT3(SS),pN2,pStage IIIA であった。標本全体でadenocarcinoma 成分は10%未満であった。腫瘍は漿膜面まで線維化を認め,術前はSE であったことが示唆された。化学療法治療効果判定は,Grade 1 であった。 -
胃切除術後膵液瘻・十二指腸瘻に血液凝固第XIII 因子製剤が著効した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Descriptionはじめに: 胃切除後の膵液瘻は,消化管瘻や腹腔内出血を併発し重篤化し得る術後合併症である。今回われわれは,胃切除後の難治性膵液瘻・消化管瘻に対して血液凝固第XIII 因子(FXIII)製剤を使用し良好な結果を得たので報告する。症例:患者は78 歳,男性。早期胃癌に対し胃全摘術を施行したが,術後膵液瘻および十二指腸断端瘻を発症した。経皮的および再手術によるドレナージを施行し,somatostatin analogue 製剤・抗菌薬・gabexate mesilate を投与し,中心静脈栄養ならびに経腸栄養にて栄養管理を行った。再手術1 か月後も瘻孔からの腸液流出が継続したため,FXIII 活性の低下を確認しFXIII 製剤を5 日間全身投与した。FXIII 製剤投与後,速やかに瘻孔閉鎖に至り軽快退院した。考察: 適切なドレナージ・栄養管理下に治癒しない難治性膵液瘻・消化管瘻に対して,創傷治癒促進因子であるFXIII 製剤は有用であると考えられた。 -
胃癌術後膵液瘻に対するフィブロガミン至適投与時期の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description背景: 胃癌膵液瘻治療に血液凝固第XIII 因子製剤(フィブロガミン)を使うことがあるが,使用する症例や時期に関して明確な指標は存在しない。今回われわれは,栄養・炎症学的数値を指標にしたフィブロガミンの至適投与時期を検討した。対象と方法: 胃癌術後膵液瘻でISGPF スコアGrade B,Grade C と診断した27 例を対象とした。検討項目はTP,Alb,CRP,Hb,WBC,リンパ球数とした。フィブロガミン使用群が非使用群に比べ,2 週間未満の膵液瘻治癒症例の割合が最も高くなるカットオフ値を決定した。結果: Alb 2.6 g/dL 以上,Hb 9.0 g/dL 以上,WBC 9,000/μL 以下のうち少なくとも2 項目以上を満たす場合,使用群の2 週間未満の膵液瘻治癒症例割合が高い傾向を認めた(p=0.1563)。総括: 栄養・炎症学的数値を指標にしたフィブロガミン投与は,膵液瘻治療期間短縮に有用である。 -
術前化学療法後に間質性肺炎を併発し不慮の転帰をとった胃癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description術前化学療法(NAC)後に間質性肺炎を併発し,不慮の転帰をとった進行胃癌の1 例を報告する。症例は76 歳,男性。胃前庭部を中心としたtype 3 の進行胃癌で,血清CEA 値と血清CA19─9 値が高値で術前化学療法の適応とした。S─1 内服2コース後に,S─1+CDDP 療法を1 コース行い手術予定であったが,術前治療終了後6 日目に労作時の呼吸困難が出現し救急入院となった。胸部X 線写真とCT 検査で両肺野に,びまん性の浸潤陰影を認め,間質性肺炎と診断した。気管支肺胞洗浄(BAL)液では好中球とリンパ球の増加を認め,経気管支肺生検(TBLB)で間質性肺炎と診断された。薬剤リンパ球刺激試験(DLST)では,S─1 が陽性で,CDDP が陰性であった。以上の結果より,S─1 に起因する薬剤性の間質性肺炎と診断した。ステロイド内服と抗生剤で治療を始め,ステロイドパルス療法も行ったが効果なく,入院24 日目に急速に呼吸状態が悪化し,人工呼吸器管理に移行したが,38 日目に死亡退院となった。 -
化学療法中にTrousseau 症候群を来した胃癌の3 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description胃癌の化学療法中にTrousseau 症候群を来した3 症例について報告する。症例1: 43 歳,女性。4 型残胃癌,cT4b-N2M1P1/stage IV に対し一次治療としてS─1/CDDP(SP)併用療法を施行中に,左半身麻痺が出現し,CT 検査にて右頭頂葉に脳出血,MRV 検査にて上矢状洞~右S 状静脈洞血栓症を認めた。症例2: 59 歳,男性。3 型胃癌,cT3N1M0H1/stage IVに対し二次治療としてS─1/CPT─11 併用療法を施行中に失調性構音障害,左下肢麻痺が出現し,MRI 検査にて右大脳半球に多発脳梗塞を認めた。症例3: 67 歳,女性。3 型胃癌,cT4aN1M0/stage IIIA に対し術前化学療法としてSP 療法を施行中に右小脳失調,眼振,右顔面神経麻痺を認め,MRI 検査にて右小脳,中小脳脚の多発脳梗塞を認めた。いずれの症例も抗凝固療法を行い,化学療法を再開し,脳卒中の再発は認めなかった。坦癌患者は,凝固系が活性化していることが多いため,定期的な凝固検査や脱水の予防を行い,脳卒中の発症に注意する必要がある。 -
胃癌に対するS─1+CDDP 療法中に気腫性胆囊炎を発症した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は77 歳,女性。胃癌(cT3N2M1,cStage IV)に対して化学療法(S─1+CDDP)施行中に発熱と食欲不振,腹痛を認めたため来院した。腹部CT にて胆石はなく,胆囊壁周囲に気腫を認めた。同日に緊急胆囊摘出術を施行し,経過良好にて術後13 日目に退院となった。1 か月後にS─1+CDDP 療法を再開している。気腫性胆囊炎は胆囊壁の虚血性変化が原因の一つとして考えられており,危険因子として高齢者,動脈硬化や糖尿病などの基礎疾患,胃切除後などがあげられる。化学療法中に無石性胆囊炎を来した症例が報告されており,本症例においても抗癌剤の影響を否定できないことが示唆された。 -
胃癌腹膜播種に対する腹腔内化学療法用腹腔ポートが閉塞した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は50 歳台,男性。心窩部痛の精査にて,胃体下部に3 型胃癌を指摘された。審査腹腔鏡を施行し,P1CY0 を確認した。S─1 の経口内服+パクリタキセル(PTX)の経静脈,腹腔内投与[S─1+PTX(ip+iv)]を施行するため,局所麻酔下に腹腔ポートを留置した。腹腔内化学療法を試みたが,チューブ閉塞を来し,再度留置するも再び閉塞を来した。精査目的で腹腔鏡検査を施行したところ,腹腔チューブの腹腔内刺入部全体を覆うように大網巻絡が認められた。現在,腹膜播種を伴う胃癌に対し,腹腔ポートを留置し,腹腔内および全身化学療法の有効性を検証する臨床試験が進行中であるが,腹腔ポート留置に際し,この症例のように腹腔ポート使用困難例があることも念頭に置く必要があると考える。 -
胃癌骨髄癌腫症により急速な転機をとった1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description緒言: 骨髄癌腫症は,固形癌が骨髄に転移を来し,disseminated intravascular coagulation(DIC)などの種々の血液学的異常を引き起こす予後不良な病態である。症例: 50 歳台,男性。2012 年2 月下血のため受診。CT 検査で右腎腫瘍,胃腫瘍を指摘された。胃腫瘍は前庭部に2 型腫瘍として認め,生検で低分化腺癌の診断であった。7 月下旬右腎摘出術,幽門側胃切除術を施行した。[胃]por2,pT3(ss),pN3b(46/61),M0,pStage III B,R0。[右腎]clear cell carcinoma,pT3a,pN0,pM0。9 月初旬左腰痛が出現し骨転移とDIC を認め,骨髄癌腫症の診断となった。骨転移にdenosumab 投与,姑息的照射を胃癌再発に対しweekly PTX を開始し,1 コース途中にDIC から離脱した。しかし,休薬期間中に再びDIC となり,trastuzumabを上乗せしたが,12 月中旬死亡した。結論: リンパ節転移の多い未分化型進行胃癌では,骨髄癌腫症も念頭に入れて診療に当たる必要があると考えられた。 -
CT ガイド下気管支鏡検査を施行した肺小型病変症例の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description2009 年1 月~2010 年12 月までの間に,25 症例に対しCT ガイド下経気管支肺生検(transbronchial lung biopsy: TBLB)を施行した。画像上,目標までの到達率は76%,検査時間は19 分~62 分で平均検査時間は32 分,特別な合併症はなかった。CT 透視下に鉗子を目的病巣に導く上で,中枢気管支方向に気管支の長軸が確認できることが理想的と考えられた。 -
非小細胞肺癌の化学放射線療法施行長期生存例の有害事象の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description非小細胞肺癌に対する化学放射線療法によって長期生存が得られる症例が増え,それに伴い長期的な有害事象が観察されてきている。当院で1988~2007 年の期間に化学放射線療法を施行した非小細胞肺癌症例のうち,5 年以上の長期生存例を調査し,晩期有害事象(放射線肺臓炎・肺線維症は除く)の発現およびgrading に関して後ろ向きに検討をした。非小細胞肺癌で化学放射線療法施行例は全188 例であり,生存期間の中央値は18.0 か月で5 年生存率は18.9%であった。5 年以上の長期生存例は25 例であった。内訳はI 期4 例,IIB 期4 例,IIIA 期1 例,IIIB 期14 例,IV 期1 例,病期不明が1 例であった。有害事象に関して,皮膚潰瘍形成grade 3 を1 例,皮膚硬結grade 3 を1 例,腕神経叢障害grade 2 を1 例,grade 3 を1 例,上肢浮腫grade 2 を1 例,悪性新生物grade 3 を1 例で認めた。非小細胞肺癌に対する化学放射線療法施行後の長期生存例においては,有害事象の観察およびその対応を適切に行うことが必要である。 -
同時併用化学放射線療法で完全寛解が得られた局所進行G─CSF 産生非小細胞肺癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Descriptiongranulocyte colony─stimulating factor(G─CSF)産生肺癌は予後不良とされている。局所進行のG─CSF 産生肺癌に対して,化学放射線療法が奏効している症例を経験したので報告する。症例は65 歳,男性。主訴は微熱,全身倦怠感,咳嗽。胸部CT で肺腫瘤を指摘され,CT ガイド下経皮針生検で扁平上皮癌と診断された。血液検査で白血球数の著明な上昇と血中G─CSF 値が高値でありG─CSF 産生肺癌が強く疑われた。cT3N2M0,stage IIIA と診断され同時併用化学放射線療法にて完全寛解となった。その後,無治療経過観察されているが,治療後3 年以上が経過した現在も再発は認められていない。白血球数および血中G─CSF 値は正常値に低下した後も再上昇を認めず,G─CSF 抗体免疫染色は陰性であったが臨床的にG─CSF 産生肺癌と診断した。 -
肺尖部胸壁浸潤癌に対して粒子線治療を施行した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description肺尖部胸壁浸潤癌(SST)は珍しく,治療は放射線化学療法後の外科的切除になる。われわれは50 歳台,女性で,SSTに対して粒子線治療を施行した症例を経験したので報告する。主訴は左肩痛。精査にて左肺尖部背側胸壁に5.2×3.5 cm の限局性充実性病変および肋骨浸潤が認められたが,リンパ節腫大はなかった。腫瘍マーカーはCEA 5.7 ng/mL。針生検にて腺癌であり,肺尖部胸壁浸潤癌T3N0M0,stage IIB の診断となった。なお,Horner 症候群はみられなかった。粒子線治療66GyE/10 回が施行された。照射後に腫瘍は4.5×1.9 cm に縮小した。照射早期にGrade 1 の皮膚炎と放射線性肺臓炎がみられた。また6 か月後に左肩の筋晩期軟部組織の炎症がみられ,再発との鑑別を必要とした。現在,照射後2 年が経過するが無再発で経過している。粒子線治療は高い局所制御率と少ない副作用が期待され,手術不能症例に対して有用な局所療法の一つと考えられる。 -
サルコイドーシス合併小型肺癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は70 代,女性。FDG─PET で異常集積を伴う両側肺門・縦隔リンパ節腫大と両側肺野の微小結節,ブドウ膜炎を認め,縦隔鏡リンパ節生検で類上皮肉芽腫の所見を得てサルコイドーシスと診断した。この際,右肺中葉にFDG 集積を伴う1 cm 大の結節を認めたがサルコイドーシスの肺内病変と判断。ブドウ膜炎に対するステロイド投与で肺門・縦隔リンパ節は縮小したが,1 年後に右肺中葉結節が2 cm 大に増大。右肺中葉切除術を実施し,肺扁平上皮癌の診断であった。6 か月後にFDG 集積を伴う右気管前リンパ節腫大が出現したが,EBUS─TBNA で扁平上皮癌のリンパ節転移の診断を得て,ドセタキセルの7 コース投与で縮小し,FDG 集積は消失した。サルコイドーシス合併肺癌では原発巣が小さい場合,サルコイドーシス病変に紛れて見落とされる可能性があり,注意深い画像診断と経過観察が必要である。 -
エタノール注入療法が奏効し呼吸状態の著明な改善を認めた1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は69 歳,男性。扁平上皮癌に対し左下葉切除術を施行した。1 年後の外来で肺炎像を指摘され,1 週間後,呼吸困難を呈して入院した。気管内の3 か所に扁平上皮癌の再発による狭窄を認めたが,気管支鏡下エタノール注入療法と放射線療法の併用により気道内悪性腫瘍を縮小させ,呼吸状態を改善した。治療2 か月後,気道の再狭窄を認め,放射線療法とエタノール注入療法,TS─1 を組み合わせた治療により気道の再開通を得た。エタノール注入療法は簡便な手技で安全性が高く,即効性にも優れており,悪性腫瘍の管内増殖による気道狭窄に対して,有効な治療であると考えられた。 -
尿路上皮癌肺転移切除例の臨床病理学的検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description尿路上皮癌肺転移切除3 例(4 回手術)を経験した。3 例ともに原発巣初回手術から肺転移発症までの経過が長く(19,11,4 年),その間繰り返す原発巣の局所再発に対する治療が行われていた。1 例は膀胱の局所再発巣が粘膜内にとどまっていた。CT 画像では2 例(3 回手術)に肺腫瘍内に空洞を伴っており,組織学的に腫瘍壊死の強い特徴があった。2 例は術前検査で原発性肺癌との鑑別が困難であり,手術標本の免疫組織学的検索にて尿路上皮癌肺転移の確定診断が付けられた。予後は初回肺転移術後32,19,6 か月生存中であり,肺転移切除を含めた集学的治療が生命予後の改善に寄与している可能性が示された。 -
縮小手術時代における胸筋合併乳房切除術のポジショニング
40巻12号(2013);View Description Hide Description背景: 近年,乳癌手術は縮小手術の時代である。しかしながら局所進行乳癌(locally advanced breast cancer: LABC)においては,薬物療法とともに胸筋合併乳房切除(standard radical mastectomy: SRM)を必要とする症例も散見される。対象・方法: 2007 年1 月~2013 年4 月に当科でSRM を施行した乳癌女性7 例の臨床病理学的因子および予後について検討した。結果: 平均年齢68 歳,SRM を選択した理由は大胸筋浸潤6 例,Rotter リンパ節転移3 例,レベルIII リンパ節転移3 例であった。手術時,2 例で皮膚浸潤のため植皮も行った。術後リハビリ介入を3 例に施行,また合併症は創感染1 例,リンパ浮腫2例に認めた。観察期間中央値は26 か月で3 例再発,再発部位はそれぞれ同側鎖骨上リンパ節,胸壁,肝臓であった。結論:SRM を選択したためにQOL が著明に損なわれた症例は認められず,現在も本術式の需要が存在すると考えられた。 -
胸壁合併切除を行った乳癌胸壁再発の2 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例1 は60 歳,女性。37 歳時に右乳癌のため手術(Bt+Ax)を受けた。50 歳時に右大胸筋内再発のため手術を行った。PET─CT 検査で右第4 肋骨と胸骨にFDG 高集積を認めた。乳癌胸壁再発と診断し,右胸壁腫瘤摘出術,右第4,5 肋骨・胸骨合併切除を行った。術後1 年2 か月後に縦隔リンパ節転移が出現した。その後,癌性リンパ管症を併発し術後4 年2 か月後に死亡した。症例2 は80 歳,女性。62 歳時に左乳癌のため手術(Bt+Ax)を受けた。術後18 年目に左胸壁の腫脹があり,乳癌胸壁再発と診断した。左胸壁腫瘤摘出術,第3,4 肋骨,胸骨合併切除を行った。術後1 年7 か月となる現在まで,再発兆候なく経過している。限局した乳癌胸壁再発に対して胸壁合併切除を行い,その後に薬物療法,放射線療法を行うことで良好な局所コントロールが可能であった2 例を経験したので報告する。 -
乳癌の孤立性副腎転移に対し腹腔鏡下副腎摘出術を施行した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は47 歳,女性。42 歳時に右乳癌T3, N1, M0,Stage IIIA, 硬癌,ER(-),PR(-),HER2(3+)に対し術前化学療法および手術(Bp+Ax)を施行した。組織学的効果はGrade 2b,腋窩リンパ節に転移は認めなかった。術後放射線療法と1 年間のtrastuzumab 療法を行った。術後2 年目の腹部CT で左副腎の腫大を認め,PET では左副腎腫大と左傍大動脈リンパ節に集積を認めた。乳癌からの転移が疑われたが孤立性であり,診断と治療を兼ねて腹腔鏡下副腎摘出術を施行した。組織学的には転移性腺癌であり,免疫染色にてER(-),PR(-),HER2(3+)と乳腺原発巣と一致した。術後weekly paclitaxel+trastuzumab による化学療法を12 回施行後にtrastuzumab 単独治療を開始したが,19 週目に左室駆出率が50%に低下したため治療は中止した。現在,副腎摘出術後2 年6 か月経過したが再発徴候なく経過している。乳癌の副腎転移は全身転移の一部として終末期にみられることが多く,孤立性転移として出現することは非常にまれであるが,孤立性の場合には外科的切除と十分な薬物療法を行うことにより長期生存を得る可能性があると考える。 -
全身化学療法施行後,組織拡張器挿入により一次再建を施行したT4bN3c 乳癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は40 歳,女性。4 年前より右乳腺腫瘍を自覚していた。初診時,右AC 領域に皮膚潰瘍を伴う8 cm の腫瘤を触知した。胸壁固定はない。右腋窩リンパ節および鎖骨上リンパ節腫大を認めた。針生検にて浸潤性乳管癌[a3,NG1,ER(+),PgR(+),HER2: 0]の診断を得た。T4bN3cM0,Stage IIIc の診断で,weekly paclitaxel 12 回,FEC 4 回を施行し,MRI にてPR 相当と判断。また腋窩,鎖骨上のリンパ節は非触知となった。患者の再建希望が強く,Bt+Ax+組織拡張器挿入を施行した。病理結果はpT1mic,pN0,化学療法効果判定はGrade 2 であった。術後PMRT を施行(50 Gy)し,6 か月後にimplant への入れ替えを施行した。入れ替えに際し合併症はなかった。術後6 年経過し,局所再発,遠隔転移の出現はなく,整容性は良好である。進行癌に対する乳房再建は二次再建が一般的である。当症例は化学療法が著効したため,一次再建を施行し良好な経過を得た。 -
長期経過観察後に局所切除できた粘液癌の1 切除例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例: 45 歳,女性。経過: 42 歳時,検診で異常を指摘された。超音波検査では左乳房C 領域に囊胞性病変の集簇を認めるのみであった。初診後3 年の超音波検査で,左乳房C 領域の囊胞性病変に接するように数珠状に1 cm の腫瘤病変を認め,造影MRI 検査でも同部位に連続した1.0~1.5 cm 大の造影される腫瘤陰影を認めた。生検を施行し,病理診断は粘液癌であった。乳房部分切除術およびセンチネルリンパ節生検を施行し,最終病理組織診断はmucinous carcinoma, pure type,ER(+),PgR(+),HER2(0),Ki67: 10%,T1N0M0,stage I。術後約1 年経過しているが,再発・転移は認めていない。結語: 経過観察中に妊娠・出産を経験していることで,病変を見極めることは困難であった。しかし,継続的な超音波検査などの画像診断を施行したことで早期に診断・治療でき,経時的な画像検査の必要性を再認識したので報告する。 -
前方境界線の断裂を認め局所療法に難渋した非浸潤性乳管癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description乳房超音波検査における前方境界線の断裂所見は浸潤癌で多くみられる。われわれは前方境界線の断裂様所見を認め,術前診断に難渋した非浸潤性乳管癌(DCIS)を経験したので報告する。症例は41 歳,女性。乳癌一次検診で異常を指摘されて当科を受診した。左乳房A 領域に境界不明瞭な腫瘤を触知した。超音波検査では左乳房A 領域に直径25 mm,前方境界線の断裂様所見を伴う低エコー腫瘤を認めた。吸引式針生検を施行したところ,乳管癌(浸潤・非浸潤は不明)の診断であった。左乳癌(T2,N0,M0=Stage IIA)の診断で,手術を施行した。切除標本の病理組織診断はDCIS であった。DCIS でも乳腺超音波検査で,前方境界線の断裂様所見を呈すこともあるということを念頭に置いて,治療プランを検討することが必要であると思われた。 -
局所療法で根治し得たNeuroendocrine DCIS の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description異常乳頭分泌の原因となる乳管内病変は,局在診断できない症例に遭遇する。われわれは,長期にわたる経過を経て発見されたneuroendocrine(NE)ductal carcinoma in situ(DCIS)に対して,局所治療を行って根治切除が可能であった症例を経験した。症例は44 歳,女性。5 年前より右乳頭異常分泌を認めていたが原因は特定できなかった。分泌の停止と確定診断を目的として,局所麻酔下乳輪切開法による内視鏡補助下乳管腺葉区域切除術を施行した。病理組織診断はNE─DCIS。切除断端は陰性。estrogen receptor 陽性,progesterone receptor 陽性,HER2 score 0,Ki─67 index 80%であった。術後に全身検索を施行したが,遠隔転移は認めなかった。術後に血性の乳頭分泌は消失し,補助放射線療法を施行した後,tamoxifenの投与のみで経過をみている。1 年後の現在,転移・再発の徴候を認めていない。 -
UFT+Letrozole 投与が奏効している術後局所進行乳癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例: 54 歳,女性。主訴は右胸部出血。現病歴は2008 年1 月ごろより右乳房腫瘤を自覚。増大傾向を認め,出血も出現したため当院を受診。針生検にてsolid─tubular carcinoma の診断であった。経過: 乳腺超音波検査では,右乳房全体に腫瘤を認め,計測は不能であった。同時に右腋窩リンパ節,右鎖骨上リンパ節転移が認められた。全身検索では骨転移を認めた。T4bN3M1,stage IV,ER(+),PgR(+),HER2 score 3 であった。以後,UFT(400 mg/body)とletrozole(2.5 mg)を施行した。現在4 年経過しているが,再発・転移は認めていない。結語: 局所進行乳癌であり,リンパ節転移や他臓器転移を認める場合には集学的治療が有効である。しかしながら,転移・再発を制御することは難しく,long SD を維持することはまれである。そのなかでも,UFT+letrozole 投与での報告例は希少であると思われたので報告する。 -
乳腺原発扁平上皮癌に対するエリブリンの有用性
40巻12号(2013);View Description Hide Description乳腺扁平上皮癌はまれであり,全乳癌の0.17~0.4%とされている。通常の乳癌に準じた化学療法には抵抗性を示すため,病勢コントロールは困難である。症例は40 歳,女性。左乳房腫瘤を自覚し近医を受診,超音波検査にて左乳腺に囊胞性変化を伴う低エコー腫瘤が確認された。針生検で扁平上皮癌と診断され,当院紹介となった。画像検査では,左乳腺C 領域に5.2 cm 大の腫瘤および左腋窩に転移を疑わせる腫大リンパ節が確認された。治療前診断は,左乳腺原発扁平上皮癌T4b-N2aM0,stage IIIB,ER,PR,HER2 陰性のtriple─negative であった。治療は化学療法を選択し,エリブリン1.4 mg/m2 の投与を臨床試験にて開始した。24 週以上の安定期間を示し,8 コース終了後に手術(Bt+Ax)に至った。今回われわれは,エリブリンの投与にてクリニカルベネフィットを獲得し,切除に至った乳腺扁平上皮癌を経験した。本疾患に対する化学療法としてエリブリンは選択肢の一つになるのではないかと考えられた。 -
エリブリン投与にてLong─SD を得た転移性乳癌の2 例
40巻12号(2013);View Description Hide Descriptionエリブリン投与が長期にわたり効果的であった転移性乳癌の2 症例を経験した。症例1: 42 歳,女性。Stage IIIB の左乳癌の診断でCEF×4,w─PAC×4,CEF×2,w─PAC×10,VNR×2 施行後,Bt+Ax(level II)を施行されていた。術後2年で肺転移を認め,w─PAC とnab─PAC による化学療法を施行。効果がみられなくなったためエリブリンに変更し,17 コース施行後の現在,long─SD を維持している。症例2: 52 歳,女性。Stage IIB の左乳癌の診断で,CEF×4 → DOC×4 施行後,Bp+Ax(level II)を施行した。術後5 年目に肝転移を認め,nab─PAC を開始したが有害事象のために中止された。エリブリンに変更したところ,投与中止を示唆する有害事象は認めなかった。投与を開始してから17 コース施行し,現在もlong─SD を維持している。 -
Nab─Paclitaxel 投与中に顔面神経麻痺を認めた1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は60 歳,女性。200X 年,右乳癌の診断で乳房全摘,腋窩リンパ節郭清術を施行した。術後EC 療法とパクリタキセル療法を施行し,ホルモン療法と放射線療法を施行した。術後4 年目に肺,リンパ節,骨転移が出現し,再発治療としてnab─paclitaxel(nabPTX)とゾレドロネートを開始した。nabPTX 8 コース終了後,右口角,眉毛の下垂を認め,右顔面の運動障害を認めた。頭部CT,MRI に異常を認めず,右末梢性の顔面神経麻痺と診断した。nabPTX を中止し,リハビリにより,9 か月後に改善を認めた。nabPTX の主な副作用として,末梢神経障害,骨髄抑制があげられるが,顔面神経麻痺は非常にまれな有害事象である。本邦での報告例はないため,ここに報告する。 -
乳癌胸壁再発に化学療法が有効であった1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は55 歳,女性。47 歳時,右乳癌(T2N1,stage IIB,ER+,PR+,HER2-)に対して乳房切除術+リンパ節郭清(Bt+Ax)を施行した。7 年後前胸部の痛みを自覚し,エコーで右前胸部内側の胸壁に径18 mm の腫瘤が描出された(クラスV)。胸部CT では,右胸骨の周囲軟部組織に毛羽立ちのみ認めた。MRI とPET─CT で上縦隔胸骨の右縁が8 cm にわたり広範囲に高輝度となった。乳癌の前胸部局所再発と診断し,AC 療法4 コース,10 月よりdocetaxel 3 weekly を8 コース行い,画像上CR で前胸部の疼痛も消失した。 -
乳癌脳転移に対する早期診断と集学的治療の有用性
40巻12号(2013);View Description Hide Description乳癌の脳転移は再発の過程で診断されることが多く予後不良であるが,病勢のコントロールや症状の緩和に放射線治療が有用である。乳癌治療中に脳転移と診断された自検例9 例について臨床経過を検討した。Stage I,II 5 例,IIIB 3 例,IV 1例,全例に原発巣切除手術と化学療法が行われた。luminal B 3 例,luminal─HER2 2 例,HER2 1 例,triple negative 3 例で,無再発生存期間(DFS)の中央値は15.5(7.6~37.5)か月であった。診断契機はCEA 上昇1 例,定期検査1 例,自覚症状7 例で,4 例はPS の悪化で薬物治療のみ行い診断後の生存期間は23(14~54)日であった。このうち2 例は脳転移が初再発部位で,DFS は7 か月であった。放射線治療は5 例に行われたが,治療を中断した1 例を含む2 例は早期にPS が悪化し,脳転移後生存期間は4.3 か月であった。脳転移が単発性で定位手術的照射(γ ナイフ)を行った1 例と,多発性で全脳照射後再燃時にγ ナイフを追加した2 例は放射線治療後も薬物治療を継続し,脳転移後生存期間は19.7(19.6~48.8)か月であった。脳転移には,緩和的全脳照射と定期的な画像検査による救済的定位手術的照射および頭蓋外病変の制御を目的とした全身治療がQOL の維持に有効であり,延命にも寄与する可能性がある。subtype,転移状況から脳転移リスクを想定し,PS が良好な時期に脳転移を診断し治療を継続することが有用と考えられた。 -
ベバシズマブ併用化学療法が有用であった炎症性乳癌の1 切除例
40巻12号(2013);View Description Hide Description炎症性乳癌は,乳房皮膚の広範な浮腫状硬化と発赤を特徴とする高悪性度の局所進行性乳癌である。症例は58 歳,女性。左乳房腫脹にて当院紹介となった。左乳房外側の皮膚の浮腫状変化を認め,画像検査では境界不明瞭な低エコー腫瘤,皮下リンパ管拡張が確認された。治療前診断は左炎症性乳癌T4dN2M0,Stage IIIB であった。FEC を7 コース投与し,病変安定(SD)を得た。ここで奏効率の高いベバシズマブ・パクリタキセルの併用療法を行い,4 コース投与にて腫瘍は著明に縮小した(部分奏効: PR)。最良効果と判断し手術(Bt+Ax)を施行,組織学的治療効果はGrade IIa であった。炎症性乳癌に対して,ベバシズマブ併用化学療法は有用な治療選択肢の一つと成り得るのではないかと考えられた。 -
Bevacizumab+Paclitaxel 療法が奏効した乳癌癌性胸膜炎の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は57 歳,女性。38 歳時に左乳癌Stage IIB に対して胸筋温存乳房切除術を施行された。52 歳時に胸骨左側前面に5 cm の腫瘤を認め,針生検により乳癌再発[ER(+),PgR(+),HER2:0]と診断された。切除不能と判断し,aromataseinhibitor( AI)の内服を開始し PR を得た。54歳時に針生検を再施行し,PgR の陰性化を認めた。55 歳,局所再発巣の増大を認めたため50 Gy の照射を行い,AI 継続とした。57 歳時,腫瘍マーカーの上昇を認め,精査にて局所再発巣の増大および左胸水貯留を認めたためbevacizumab+paclitaxel 療法を開始した。約2 週間で腫瘍マーカーは低下し,胸水は消失した。3コース施行後のPET─CT では腫瘍は縮小し,局所再発,胸膜播種のFDG 異常集積は消失した。再発乳癌に対しホルモン治療failure 後のlife─threatening の際,bevacizumab+paclitaxel 療法はその奏効率の高さから,first─line 化学療法として有用である可能性が示唆された。 -
Bevacizumab が奏効した再発乳癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は59 歳,女性。2000 年5 月に他院にて右乳癌に対してRt Bt+Ax が施行された。病理組織診断はinvasive ductalcarcinoma(sci),pT2N2M0,Stage IIIA, ER(+),PgR(+),HER2(2+)であった。術後補助療法を施行し再発なく経過していたが,2009 年11 月に左背部皮膚転移および癌性胸膜炎が当院で見つかった。以後,多発骨転移,対側リンパ節転移,多発肝転移が出現し,約2 年3 か月の間に化学療法(計4 レジメン),内分泌療法,リンパ節転移に対しては放射線療法を順次施行したが,病勢コントロールは不良であった。2012 年2 月よりpaclitaxel+bevacizumab 併用療法を開始した。投与開始後,早期より血清CEA 値が低下しはじめ,評価CT にて転移巣の縮小を認めPR と判定した。有害事象として末梢神経障害や鼻出血,高血圧を認めたが,いずれもGrade 2 以下であった。現在まで約11 か月の無増悪生存期間(progression free survival:PFS)が得られ,治療を継続している。 -
進行乳癌に対するBevacizumab 併用化学療法の有用性
40巻12号(2013);View Description Hide Description海外第III 相試験においてbevacizumab 併用化学療法は,無増悪生存期間を延長することが示された一方,全生存期間の延長が示せなかった。当科でのbevacizumab 併用化学療法の治療成績・安全性について報告する。手術不能もしくは転移・再発乳癌19 例を対象とした。年齢中央値は55 歳,全例女性。intrinsic subtype はluminal A/luminal B/triple negative=14/1/4 例であった。前治療歴は中央値が3 レジメン,治療効果はCR/PR/SD/PD が0/12/5/2 であり,奏効率は63%であった。Grade 3 以上の有害事象は,高血圧4 例,末梢神経障害1 例,好中球減少9 例であった。今回の結果ではタキサン系薬剤既治療例により効果が期待でき,さらに二次治療以降やlife─threatening な手術不能・転移再発乳癌症例においても有効な症例が存在していた。生存期間延長のエビデンスはないものの,高い奏効率が要求される症例では有用であると考える。 -
Trastuzumab+Gemcitabine が有効であったHER2 陽性乳癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は71 歳,女性。閉経後。うつ病治療中。8 年前に左乳房全体の硬化を主訴に来院。左乳癌(T3N1M1b,Stage IV),papillotubular>scirrhous carcinoma,g+,f+,ER 陰性,PgR 陰性,HER2/neu 陽性(3+)の診断であった。左第10 肋骨・11 胸椎・下部腰椎から仙椎までの同時性骨転移を認めた。全身治療を第一選択としAC 4 サイクルの後,trastuzumab+paclitaxel 療法を4 サイクル施行。乳房の画像上腫瘤は消失し石灰化のみ,骨転移は左第10 肋骨のみとなった。追加治療として,左乳腺・腋窩・鎖骨上窩へつなぎ3 門接線照射50 Gy/25 分割の放射線治療を行った。約3 年間腫瘍コントロール良好であったが,CEA 漸増を契機に増大する左乳房腫瘤と左腋窩リンパ節腫大を認めた。これに対して,3 年前にBt+Ax(level I)の局所切除術を施行。病理組織にてinvasive ductal carcinoma,papillotubular carcinoma, INFβ,ly3,v0,g+,f+,s+,nuclear grade 3(atypia 3+mitosis 3),リンパ節転移も認めた。trastuzumab 耐性と判断し,残存した骨転移に対しlapatinib+capecitabine の投薬を行うこととした。15 サイクル投薬後に右腋窩リンパ節腫大を認め,局所切除術を施行した。病理組織検査にて乳癌再発,atypia 3,mitosis 2,grade 3,ER 陰性,PgR 陰性,HER2/neu 陽性(3+),MIB─1 index 50%の診断であった。lapatinib+capecitabine はPD と判断し,trastuzumab+gemcitabine を選択した。現在30 サイクル投薬を行っているが,腫瘍のコントロールは良好である。本レジメンはHER2 陽性転移性乳癌に対して有効な治療法であると考えられた。 -
進行乳癌にモーズペーストを使用してQOL の改善を得た1 症例
40巻12号(2013);View Description Hide Description乳癌局所再発や皮膚浸潤を伴う局所進行乳癌は病巣部から渗出液,出血,悪臭によりQOL を著しく阻害する状態となる。今回モーズペーストの使用により,良好な局所コントロールを得られた1 例を報告する。57 歳,女性。渗出液と悪臭を伴う右乳房巨大腫瘤を認め,肺,肝,骨転移を認めた。化学療法を施行しながら局所療法としてモーズぺーストで固定し切除を行うことにより,巨大乳房腫瘤は平坦化した。モーズペーストは進行乳癌に対して局所制御できる可能性が示唆された。 -
90 歳以上の超高齢者乳癌の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description近年,高齢者乳癌は増加しているが,90 歳以上の超高齢者乳癌の報告は極めて少ない。本稿では,90 歳以上の超高齢者乳癌患者について検討した。2000 年1 月~2012 年12 月の間に,当科で治療を受けた90 歳以上の超高齢者乳癌9 例を対象に,患者背景,臨床病理学的特徴,治療について検討した。年齢中央値は91(90~99)歳,併存疾患を7 例(77.8%)に認めた。腫瘍径中央値は4.3(1.4~6.0)cm,T4 症例が6 例(66.7%)であった。また,腋窩リンパ節転移陰性と考えたのは6 例(66.7%)であった。組織型は浸潤性乳管癌8 例,非浸潤性乳管癌1 例であり,ホルモン受容体は陽性7 例,陰性は2 例,HER2 は8 例が陰性であった。治療は,5 例に手術を施行したが,術後の合併はなく安全に施行できた。4 例はホルモン治療を施行し,奏効率は50%であった。90 歳以上の乳癌患者を治療する際には,併存疾患の有無,治療に伴う合併症を考慮しながら治療を提供する必要があると考えられた。 -
後頸筋転移を来した浸潤性小葉癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は57 歳,女性。近医で両側乳腺腫瘤の精査目的に両側乳腺腫瘤摘出生検を施行され,両側浸潤性小葉癌,エストロゲンレセプター陽性,HER2 蛋白過剰発現陰性,断端陽性と診断。加療目的に当院へ紹介となった。遠隔転移は認めなかったが,左鎖骨上リンパ節腫脹を認め,両側乳癌TxN3M0,Stage IIIC と診断された。両側単純乳房切除術を施行した後,内分泌療法を開始した。アナストロゾールとその後にタモキシフェンを投与し,化学療法が導入された。ドセタキセル/シクロフォスファミド併用療法を4 コース施行すると,左鎖骨上リンパ節転移は臨床的完全奏効を得た。2 年間の無治療での経過観察後に胃転移と診断され,フルベストラントの投与を開始したが,同時期より後頸部の硬直を訴え,頸部超音波検査,頸部MRI検査,PET 検査にて後頸筋の異常所見を認め,同部位からの針生検にて乳癌後頸筋転移と診断された。その後カペシタビンの投与を開始し,SD を維持し経過観察中である。 -
治療方針に難渋した非浸潤性乳管癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は42 歳,女性。1 年前に他院で行われたマンモグラフィ併用乳癌検診で,左乳房に淡く不明瞭な石灰化の集簇像を認めたが,超音波検査で異常を認めなかったため,その時の医師の判断で生検は行われなかった。翌年の検診で石灰化部位の増加を認めた。超音波検査では,病変および石灰化を描出できなかった。他院に紹介し,ステレオガイド下吸引式針生検術を施行され,左非浸潤性乳管癌(DCIS)と診断された。遠隔転移を認めず乳房円状部分切除術+センチネルリンパ節生検術を施行した。術中迅速診断にて乳頭側断端が陽性であったため,胸筋温存乳房切除術を施行した。本症例では,比較読影を行うことでDCIS を発見することができた。しかしながら,より早く治療に取りかかっていれば乳房温存治療も可能であったかもしれない。診断に迷う石灰化を認めた場合は,他施設への紹介を行ってでも積極的に生検を行うべきである。 -
同側乳腺内に境界型葉状腫瘍と非浸潤性乳管癌が併存した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は36 歳,女性。2011 年7 月,左CE 領域に発生した最大径6 cm の乳房良性葉状腫瘍に対して,乳房部分切除術が行われていた。経過観察となっていたが2012 年7 月,手術創近傍に腫瘤が触知され受診した。乳房超音波検査では,左乳房C 領域の手術創直下に径24 mm 楕円形,左乳房E 領域に径10 mm の多角形の境界明瞭な低エコー性腫瘤があった。C 領域の腫瘤より超音波ガイド下マンモトーム生検を行い,境界型葉状腫瘍と診断された。いずれの腫瘤も葉状腫瘍局所再発と考え,乳房扇状部分切除術(Bq 80°)を行った。病理学的にはC 領域の腫瘤は,境界型葉状腫瘍局所再発,E 領域の腫瘤は線維腺腫と診断した。2 個の腫瘤性病変の間に,偶発的に非浸潤性乳管癌が認められた。病理学的に切除断端は陰性であり,残存乳房に対して放射線療法を行った。 -
同側乳房に多発した腫瘤を認めた1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は60 歳,女性。前医で施行されたマンモグラフィ検査で,右MI 領域に構築の乱れを伴う微小円形石灰化の集簇および境界明瞭な腫瘤を指摘された。吸引式針生検を施行したところ,浸潤性乳管癌の診断であった。超音波検査では,右乳房に病変部位を3 か所認めた。① AC 領域: 14.5 mm,前医で乳癌の診断,② C 領域: 5.5 mm で ① の娘結節の疑い,③ A 領域: 19.0 mm,線維腺腫の疑いであった。右乳癌(T1N0M0=stage I)の診断で,3 か所の病変をすべて含むように,乳房温存部分切除術およびセンチネルリンパ節生検術を施行した。最終病理結果は術前診断と同様であり,断端は陰性を確保できた。腫瘍の位置からは部分切除は困難かとも考えられたが,詳細な術前の画像診断により局所制御を施行することができた。 -
乳癌の術後化学療法中に急性虫垂炎を発症した1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は66 歳,女性。左乳癌で,左乳房部分切除術,センチネルリンパ節生検を施行した。病理は浸潤性乳管癌(硬癌),ER(+),PgR(+),HER2: 2+(FISH 増幅なし),Ki─67: <10%,pT1c,N0,M0,Stage I であった。患者は術後化学療法を希望したため,TC 療法4 サイクルを予定した。2 サイクル目のday 13 より発熱や心窩部痛があり,day 22 のTC 療法3サイクル目投与日に右下腹部痛を認めた。CT で虫垂炎,腹腔内膿瘍を疑ったため,緊急手術(回盲部切除術)を施行した。術後合併症は認めず,術後12 日で退院した。悪性腫瘍に対する化学療法中の急性腹症は,化学療法の副作用である悪心・嘔吐,顆粒球減少に伴う発熱,局所炎症所見の欠如などから診断が困難である。本症例は化学療法中の急性腹症を早期に診断および手術を施行し,良好な経過を得た1 例である。 -
甲状腺未分化癌の手術経験
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例: 87 歳,男性。約2 か月前より頸部腫瘤を自覚した。来院時には,頸部超音波検査にて右葉に約5×6 cm の囊胞性腫瘤を認めた。気管偏位はあるものの,嗄声やつかえ感は認めなかった。細胞診にてclass IV,未分化癌の疑いであった。不整脈にてペースメーカーを留置されていることもあり,化学療法などの治療法を検討し精査している約1 か月間に頸部発赤増大,熱感も認めた。つかえ感や嗄声も出現したため,局所制御目的に手術を施行した。術中所見では,囊胞部分は壊死しており,周囲臓器との癒着も強く,被膜を一部残存する形で切除した。術後1 週間で創部発赤と腫瘍の増大により創部離開し,出血を認めた。また,術後2 週間で多発肺転移も認めた。対症療法を行うも腫瘍の増大もあり,術後約1 か月半で永眠となった。まとめ: 甲状腺未分化癌の有効な治療法は少なく,治療に難渋することは多い。今回の症例のように高齢者で併存疾患を有しており,さらに進行が急速な場合には,とりわけ難渋する。手術を選択することがよかったのか,貴重な経験をしたので報告した。 -
乳癌の肝・頸部リンパ節再発の治療中に(RECIST 評価により)診断された甲状腺癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は69 歳,女性。60 歳時に左乳癌で左乳房温存術,腋窩郭清I を施行した。病理は乳頭腺管癌: luminal A でpT1N0M0,Stage I であった。術後8 年目にCT で肝再発と頸部リンパ節転移を指摘された。letrozole を3 か月内服するも奏効せず(PD),化学療法EC を6 コース施行した(PR)。その後weekly─paclitaxel(PTX)投与中に主治医交代となった。PTXを4 コース施行後,肝転移は消失した(CR)。しかし,頸部リンパ節は縮小がみられなかった(PD)。細胞診を行い,甲状腺乳頭癌,それによる頸部リンパ節転移と診断した。手術は甲状腺全摘術,頸部リンパ節郭清D3b を行った。診断はpEx0T1b-N1Mx,pStage IVA であった。主治医交代は患者にとって岐路である。乳癌治療には化学療法中あるいはホルモン療法中はそれぞれの臓器に対しResponse Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)による評価が必要である。本症例は,その基本的なRECIST 評価により甲状腺癌と診断された。癌治療にはRECIST 評価が重要で,評価によっては治療方針が大きく変わることを癌治療医は心得るべきである。 -
右顎下部に孤立性に発症した異所性甲状腺髄様癌の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は77 歳,女性。右頸部に無痛性の腫瘤を触知するようになった。身体所見では右顎下部に約2 cm 大の可動性良好な硬結を触知した。頸部超音波検査では,甲状腺左葉に9.8×3.l mm の腫瘤像あり。右頸部リンパ節の穿刺細胞診を施行したところ,class IV 甲状腺乳頭癌疑いとの病理結果であった。甲状腺の腫瘍性病変は左葉にあり,対側の右顎下リンパ節への孤立性転移はまれと考え,まずは右頸部リンパ節生検を施行した。病理検査で甲状腺髄様癌の診断を得たため,診断・治療を兼ねて甲状腺左葉切除術を施行した。術後病理では腺腫様甲状腺腫であった。顎下部に孤立性に発症した甲状腺髄様癌はまれであり,異所性甲状腺の癌化の可能性が考えられた。 -
The“ Sliding Door” Technique for Closure of Abdominal Wall Defects after Rectus Abdominis Musculocutaneous Flap Transposition
40巻12号(2013);View Description Hide DescriptionRadical surgery is often necessary in patients with local recurrence of rectal cancer or in those with carcinoma associated with an anal fistula. The surgery may include extended excision of the perineal area and can create a large dead space in the pelvis and a large skin defect, often necessitating reconstruction of the pelvic floor using rectus abdominis musculocutaneous (RAM) flap transposition. Wound dehiscence and incisional hernia are common complications of RAM flap transposition. We report herein our encounter with 3 patients in whom we used a “sliding door” technique for reconstruction of the abdominal wall after the creation of a RAM flap. One patient underwent abdominoperineal resection with sacrectomy and RAM flap transposition; he experienced a postoperative surgical site infection and wound dehiscence, which we urgently repaired by reconstructing the abdominal wall using the sliding door technique. Two other patients underwent posterior pelvic exenteration with sacrectomy and RAM flap transposition. These patients underwent simultaneous abdominal wall reconstruction using the sliding door technique. No patient experienced postoperative pelvic sepsis, wound dehiscence, or incisional hernia. The sliding door technique might be useful for preventing wound dehiscence and incisional hernia in patients undergoing RAM flap transposition. -
Clinical Outcomes of Pelvic Exenteration for Locally Advanced Primary or Recurrent Non─Colorectal Pelvic Malignancies
40巻12号(2013);View Description Hide DescriptionObjective: The aim of this study was to evaluate the outcomes of patients who underwent extensive pelvic surgery for locally advanced primary or recurrent non─colorectal pelvic malignancies. Patients and methods: We performed a retrospective review of the medical records of 19 patients with non─colorectal pelvic malignancies who underwent extensive surgery at our institution between January 2005 and May 2013. Overall survival and progression─free survival were estimated using the Kaplan─Meier method and compared using the logrank test. Results: With regard to tumor histology, 6 patients (31.6%) had gynecological tumors, 8( 42.1%) had urological tumors, 2( 10.5%) had sarcomas, and 3( 15.8%) had other malignancies. Total pelvic exenteration was performed in 13 patients (68.4%), and other procedures were performed in 6 patients( 31.6%). For all patients, the median operation time and blood loss were 699 min and 2,930 mL, respectively. Complete tumor resection( R0) was achieved in 13 patients( 68.4%), and 16 patients had complications( 84.2%). The median overall survival was 18.5 months for patients who underwent R0 resection, compared with 7.3 months for those who underwent R1/R2 surgery (p=0.113), and the median progression─free survival was 7.3 months for cases of R0 resection, compared with 2.0 months for cases of R1/R2 surgery (p=0.035). Conclusion: Our findings indicate that extensive pelvic surgery may be an optimal treatment for some patients with locally advanced primary or recurrent non─colorectal pelvic malignancies. Careful patient selection according to oncological, anatomical, and patient─related factors may improve the outcomes of patients undergoing this extensive, aggressive pelvic surgical procedure. -
腹痛を契機に発見された巨大膵粘液性囊胞腺癌の1 切除例
40巻12号(2013);View Description Hide Description腹痛を契機に発見された長径15 cm の巨大膵粘液性囊胞腺癌の1 切除例を経験したので報告する。症例は37 歳,女性。間欠的な心窩部痛を主訴に来院し,血液検査にてCEA 22 ng/mL,CA19─9 258,129 U/mL,CA125 53 U/mL と腫瘍マーカーの著明な上昇を示し,CT にて膵体部に壁在結節を有する15 cm 大の巨大な多房性囊胞性腫瘍を認めた。腫瘍の充実成分には造影効果を認め,PET─CT 検査ではFDG の集積を認めた。膵粘液性囊胞腺癌の診断にて,膵体尾部切除,脾臓合併切除を施行した。術中,腫瘍の浸潤が疑われたため,左副腎切除,胃部分切除を併施した。病理組織学検査にて,腫瘍は卵巣様間質を伴う浸潤性の膵粘液性囊胞腺癌と診断した。術後は軽度の胃排出遅延を認めたが保存的に軽快し,術後27 日目に退院となった。現在,外来にて経過観察中であり,術後14 か月無再発生存中である。膵粘液性囊胞腫瘍において,腫瘍径と壁在結節の有無は悪性化と有意に相関しており,悪性例においてはリンパ節転移も高頻度に認められる。術前検査で悪性が疑われた場合には,浸潤性膵管癌に準じた治療が必要と考えられた。 -
癌終末期患者の消化管閉塞に対する消化管ステント治療の検討
40巻12号(2013);View Description Hide Description当科における癌終末期患者の消化管閉塞に対する消化管ステント留置術の治療成績を検討した。癌終末期患者における消化管閉塞に対して,2010 年11 月~2012 年10 月の期間に6 例の消化管ステントを留置した。留置成功率は100%であった。消化管狭窄による症状は全例改善した。全例において食事摂取が再開できた。偶発症・合併症は遅発性穿孔が1 例認められた。留置後の平均生存期間は10~184(中央値71.5)日であった。palliative performance status(終末期患者のPS,以下PPS)は4 例において改善し,palliative prognostic index(終末期患者の予後予測尺度,以下PPI)における予後予測より生存期間が延長したが,PPI>6 の予後不良群(予後予測3 週以内)では治療効果に乏しく,生存期間延長にも寄与しなかった。癌終末期における消化管閉塞の患者において,消化管ステント留置術は有用な選択肢の一つであり,PPS の改善と予後延長を期待できる可能性があるが,PPI 高値の症例に対しては慎重な検討を有すると考えられる。 -
進行消化器癌患者における心臓外科手術を要する病態と癌再発について─消化器外科医の立場から─
40巻12号(2013);View Description Hide Description進行消化器癌患者の治療過程において,心臓手術を積極的に考慮する病態は限られている。(i)放置すると生命の危険を有し,かつ内科的治療では解決できない心臓疾患(心臓腫瘍など)。(ii)消化器癌術後などに発生した心臓疾患(感染性心内膜炎,肺動脈血栓塞栓症など)で緊急を要し,かつ内科的治療に抵抗性の病態があげられる。われわれは,心臓外科手術を必要とした2 症例を経験した。症例1 は68 歳,女性。幽門狭窄を伴う進行胃癌に左房粘液腫を合併した症例で,胃癌根治術(pT4a,pN1,Stage IIIA)後に補助化学療法に先行して左房粘液腫の摘出術を施行するも,術後1 か月で多発肝転移を来したが,化学療法が著効しCR が得られた(肝転移後3 年以上生存でCR 継続中)。症例2 は67 歳,女性。直腸癌にHartmann手術,子宮・右尿管合併切除を施行(AI,n0,Stage II)後,神経因性膀胱となり,尿路感染から敗血症,さらに感染性心内膜炎を来し,内科的治療に抵抗性を示し,心不全が進行したため大動脈弁置換術を施行した。血液培養から菌(methicillin─resistant Staphylococcus aureus: MRSA)が消えるのに術後約2 か月かかった。その直後に肝転移が明らかとなり,その後癌性リンパ管症から術後3 か月で永眠した。いずれも心臓手術後早期に癌の再発がみられた。心臓外科手術を行うことによる過大な外科的侵襲が,癌の進行・再発を促進する可能性も否定できない。加えて,緊急避難的に行う場合も待機手術も心臓手術施行のタイミングは難しい。 -
当院における消化管神経内分泌腫瘍症例の治療経験
40巻12号(2013);View Description Hide Description目的: 当院で経験した消化管神経内分泌腫瘍症例に対し,背景因子,病理組織学的結果,予後についてretrospective な検討を行った。対象と方法: 2002~2012 年までに当院で神経内分泌腫瘍と病理診断された42 症例を対象とし,背景因子,病理組織学的結果,予後についてretrospective に検討を行った。結果: 背景因子では,男性:女性が29:13 例,平均年齢は66.1(26~87)歳であった。腫瘍の局在部位は,食道/胃/十二指腸/結腸/直腸がそれぞれ,2/13/9/1/18 例であった。病理組織学的結果では,深達度SM/MP/SS/SE(AD)/SI(AI)/不明がそれぞれ,26/1/3/1/3/1 例であった。予後は,再発症例で不良で,全例原病死していた。まとめ: 当科で経験した神経内分泌腫瘍症例の検討を行った。内視鏡的切除,外科的局所切除が行われる症例では予後も良好であった。一方,外科的姑息切除,切除不能症例では予後不良であった。 -
原発不明の腹部大動脈傍リンパ節腺癌転移の1 切除例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は70 代後半,女性。気管支喘息通院中の2004 年6 月,CEA 上昇を認めた。精査目的のCT 検査で腹部大動脈傍リンパ節腫大を認めた。超音波検査,上下消化管内視鏡検査,PET では原発巣は明らかではなく,他に悪性病変を認めなかった。CT ガイド下生検にて,低分化型腺癌リンパ節転移と診断された。そこで,5─FU/CDDP 化学療法を2 コース行い,画像検査でPR と診断した。その後,S─1 単剤投与に切り替え経過をみたが,2005 年5 月にはPD となり,S─1/CPT─11 併用療法を開始した。しかし腫瘍は増大傾向で,PET 検査にて他にFDP 集積を認めなかったため,2005 年7 月に腹部大動脈リンパ節腺癌転移切除術を施行した。低分化型腺癌リンパ節転移と診断された。本人の希望で術後経過観察のみ行っている。初診より9 年が経過しているが,無再発生存中である。一般に予後の悪い原発不明癌であっても,転移巣を切除することで長期生存を得られた症例を経験したので報告する。 -
関節リウマチに対しMethotrexate 継続治療9 年目に発生した医原性免疫不全リンパ増殖性疾患において投薬中止にて自然緩解が得られた1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description今回われわれは,関節リウマチに対しmethotrexate(MTX)を9 年間継続治療中に発症した医原性免疫不全リンパ増殖性疾患において,MTX 投与中止により自然緩解が得られた症例を経験したので報告する。症例は64 歳,女性。吐下血・咽頭痛にて緊急入院した。中央に潰瘍を伴う両側扁桃炎と多発胃潰瘍を認め,双方とも生検にてdiffused large B cell lymphomaの疑いであった。PET─CT にて咽頭,頸部リンパ節,肝,脾,胃,回腸末端部,傍大動脈周囲リンパ節に多数の集積像を認め,SUVmax は26.85 であった。血液検査ではLDH 321 U/L,IL─2R 3,531 U/mL と高値を呈していた。MTX 投与を中止したところ精査中に咽頭痛は改善し,扁桃・リンパ節腫大や潰瘍が消退し,LDH・IL─2R ともに基準値内となった。本症例は,MTX 惹起リンパ増殖性疾患のなかの比較的予後のよいregressive 群に属すると考えられるが,MTX 中止後もリンパ増殖性疾患が再燃する可能性もあり,引き続き定期的検査が必要であると思われる。 -
カペシタビンの手足症候群に対するアバンドTM の有効性に関する検討
40巻12号(2013);View Description Hide Descriptionカペシタビンは,50%以上の患者に手足症候群(hand─foot syndrome: HFS)が発現する。一方,β─ヒドロキシ─β─メチル酪酸(HMB),L─グルタミンおよびL─アルギニンを含むアバンドTM は褥瘡や術後の創傷治癒促進効果が報告されているが,カペシタビンによるHFS に対する効果は明らかではない。今回,カぺシタビンによるHFS に対してアバンドTM に回復を促進する効果があるかどうか探索的に検討した。カペシタビンを使用した癌患者のうちgrade 2 以上のHFS を来した6 例を対象に,grade 1 以下に回復するまでの期間を検討した。アバンドTM の服用量は全体で94%であった。回復までの期間の中央値は10(4~14)日であった。アバンドTM はカペシタビンによるHFS の回復促進に有効である可能性がある。 -
超巨大後腹膜悪性Paraganglioma の1 切除例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は74 歳,男性。腹部巨大腫瘤のため,当科転院となった。CT では腹部から骨盤内に及ぶ後腹膜腔に長径20 cmの腫瘍を認め,肝右葉,右腎門,下大静脈に浸潤していた。早晩,肝門,腎門浸潤が予見されたため,腫瘍摘出術を選択した。腫瘍は肝右葉,右腎,回盲部,下大静脈,横隔膜とともに摘出され,下大静脈は体外循環下に人工血管により再建した。術後経過は良好でオピオイドからも離脱したが,術後2 か月で後腹膜再発を認めた。局所放射線療法も奏効せず,術後6 か月にて永眠された。積極的拡大手術が予後に寄与し得えなかった要因について,腫瘍の著しい進行度によるものか,生物学的悪性度によるものかの評価は非常に難しいと考えられた。 -
治療に難渋した腹膜播種を伴った腹膜悪性中皮腫の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は57 歳,男性。腹部違和感にて当科を受診され,CT 検査にて脾弯曲部付近,横行結腸間膜に長径5 cm 前後の腫瘤が指摘され,大網に腹膜播種を疑わせる小結節像も指摘された。FDG─PET においても同部に集積を認め,腹腔鏡観察を行った。横行結腸間膜後鞘部に長径5 cm 強の弾性硬の腫瘤を指摘し,大網に播種と思われる小結節を認めた。手術での根治は困難と考え,診断目的に播種結節を切除し手術終了とした。最終病理結果は,上皮,肉腫の二相型の腹膜悪性中皮腫であった。術後約20 日後より,pemetrexed+cisplatin 併用療法を3 週間隔で投与開始した。3 コース終了後,画像評価にて腫瘤の増大,腹膜播種の悪化を認めたため,二次治療として有効性の報告のあったpaclitaxel に変更した。day 1,8,15 にて投与予定であったが,1 コース目のday 1 終了後より徐々に状態が悪化,その後死亡された。 -
A Giant Mesentery Malignant Solitary Fibrous Tumor Recurring as Dedifferentiated Liposarcoma─ A Report of a Very Rare Case and Literature Review
40巻12号(2013);View Description Hide DescriptionWe report a case of a 59─year─old woman with a very rare giant mesentery malignant solitary fibrous tumor that recurred as dedifferentiated liposarcoma. The woman was admitted to the hospital because of low abdominal pain. Radiological and biopsy findings revealed a multi─lobulated giant malignant solitary fibrous tumor that had invaded the inferior vena cava, abdominal aorta, and superior mesentery vessels. The tumor was completely removed during the first cytoreductive surgery. Histopathologically, tumor had a heterogeneous cell population, composed of spindle cells with fibrous collagen proliferation. The spindle cells were not arranged in a specific pattern. Immunohistochemistry revealed that the tumor cells were positive for CD34, CD99, Bcl─2, and smooth muscle actin( SMA) and negative for CD117, epithelial membrane antigen (EMA), CAM5.7, S100, desmin, and caldesmon. The tumor recurred 9 months after surgery, and another cytoreductive surgery was then performed. The postoperative histopathological appearance of the invaded area indicated a well─differentiated liposarcoma. Formation of tumorous bone was also noted in the same area, in addition to atypical mesenchymal cells and multi─vacuolated lipoblasts in the area of the well─differentiated liposarcoma. Proliferated spindle cells arranged in a storiform pattern were found in the area adjacent to the tumor. Immunohistochemical analysis revealed that the tumors cells were positive for SMA, HHF─35, and caldesmon and negative for CD117, CD34, and S100. A diagnosis of dedifferentiated liposarcoma was made. -
四重複癌(肝・胃・膀胱・尿管)の1 例
40巻12号(2013);View Description Hide Description症例は67 歳,男性。59 歳時に,膀胱癌に対し経尿道的膀胱腫瘍切除術(以下TUR─Bt)および化学療法を施行。8 年後,左尿管結石切石術施行時の生検にて左尿管癌と診断。その後,全身検索にて肝細胞癌,胃癌と診断され,胃亜全摘出術,肝部分切除術およびラジオ波焼灼術,胆囊摘出術を施行した。病理組織診断は,① 膀胱癌: 移行上皮癌,② 肝癌: 中分化肝細胞癌,③ 胃癌: 中分化腺癌,④ 尿管癌: 尿路上皮癌であった。重複癌のなかでも肝細胞癌を含む四重複癌の頻度は低い。