Volume 41,
Issue 10,
2014
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特集
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がん患者の栄養管理
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癌と化学療法 41巻10号, 1191-1195 (2014);
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がん化学療法は近年急速に進歩し,その多くが外来で実施されている。そこでは食欲不振がしばしば問題となり,栄養障害あるいはQOL の低下につながる。その原因は様々であるが,悪心・嘔吐については標準化された制吐療法が普及している。口腔・消化管における粘膜炎は病態が多様で対応が難しいが,ガイドラインが整備されつつある。味覚障害への対応は遅れており,現在エビデンスを蓄積している段階である。千葉県がんセンターで全症例を対象としたスクリーニングを行ったところ,大腸がん,乳がん,卵巣がん,リンパ腫の治療中に食事のおいしさが阻害されていることが判明した。治療内容や症状に応じた個別の対応が求められる。
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癌と化学療法 41巻10号, 1196-1198 (2014);
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悪性腫瘍患者に対する栄養管理は,生存率向上などの明らかなエビデンスに直結していないことから,その意義は十分に認識されていない。しかし,ESPEN のガイドラインが指摘している食事摂取困難7 日以上,推測必要カロリーの60%未満の食事摂取が10 日以上継続するがん患者に対しては,できるだけ早期から栄養補助を開始すべきとの見解は臨床的に適切な対処法と考えられる。栄養法も他の疾患同様に消化管が使用可能であれば経腸的な栄養管理が原則である。また,最近EPA 含有経腸栄養剤による免疫栄養療法などの有用性も報告され今後の検討が待たれる。しかし,がん患者への栄養管理の原則は単なる体重増加や栄養指標の改善ではなく,症状や抗腫瘍療法の副作用の緩和,感染症リスクの軽減など患者のQOLの維持にあることで,PEG などの投与ルートもその観点から議論すべきである。
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癌と化学療法 41巻10号, 1199-1201 (2014);
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がん患者の栄養療法は抗がん治療を支える大切な軸であり,そのなかでも中心静脈栄養法は多くの場面で応用されている。使用される中心静脈カテーテルは浸透圧の高い栄養輸液のみならず,抗がん剤の静脈注射などにも有用で,CV ポートなど患者の負担を減らし合併症を軽減する器機を用いることで患者のQOL を高く維持することに寄与できる。
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癌と化学療法 41巻10号, 1202-1206 (2014);
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がん化学療法に伴う患者の味覚異常については,抗がん剤を投与された患者は食事で苦みを感じやすくなったり,全体的な味覚が弱く感じる傾向があることが知られている。味覚異常を有する抗がん剤治療患者にも食事を楽しんでもらうために,キッコーマン株式会社は21 品目のレシピを開発し,ホームページに公開した。
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原著
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癌と化学療法 41巻10号, 1221-1225 (2014);
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目的: 進行・再発乳癌に対し,ティーエスワン(TS-1)単独療法の安全性および有効性を検討した。対象と方法: 2008年10 月〜2011年6 月までに登録された進行・再発乳癌35 例に対しTS-1単独療法を行い,time to progression(TTP),臨床効果,安全性をプロスペクティブに多施設共同研究として検討した。TS-1は添付文書に従った用量を用いて,4 週間連日投与,2 週休薬で治療を行った。結果:患者背景は年齢中央値59 歳,進行6 例,再発29 例,ホルモン受容体陽性19 例,陰性16例であった。TTP 中央値は3.7か月であった。前治療による治療効果に差は認めなかった。臨床効果が評価できた25 例では,奏効率12%(3/25 例),クリニカルベネフィット率32%(8/25 例)であった。有害事象は27 例(77%)に認められ,うちGrade 3 以上は7 例(20%)であった。血液毒性はヘモグロビン減少9 例(26%),好中球減少13 例(37%),血小板減少6 例(17%)であった。非血液毒性では悪心11 例(31%),嘔吐3 例(9%),下痢9 例(26%),口内炎4 例(11%),皮膚障害6 例(17%)であった。クレアチニン・クリアランスが60 mL/min 未満ではGrade 3 の有害事象発現率が高率であった。結論: 進行・再発乳癌に対するTS-1単独療法は,salvage treatmentの一つになる可能性が示唆された。ただし,腎機能低下例では有害事象が高率となる可能性があるため注意を要する。
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癌と化学療法 41巻10号, 1227-1230 (2014);
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背景: 切除不能進行胃癌に対して,米国ではすべて注射剤で構成されるDCF(ドセタキセル+シスプラチン+5-FU)療法が標準とされているが,わが国での標準治療は経口フッ化ピリミジン(S-1,capecitabine)+CDDP である。内服困難例での治療は未だ定まっていない。また,そのような症例は高度進行例が多い。経口剤を含まない有効なレジメンの開発は重要な課題である。対象: 秋田赤十字病院において2011 年3 月〜2012 年12 月までに経口不能切除不能進行胃癌に対し,初回化学療法としてmodified DCF 療法を施行した6 例についてレトロスペクティブに有効性と安全性を検討した。治療レジメンはドセタキセル 40 mg/m / / / / 2,5-FU 400 mg/m2,レボホリナート200 mg/m2 on day 1,5-FU 1,000 mg/m2day 持続静注on day 1〜2,CDDP 40 mg/m2 on day 3,2 週1 コース。結果:投与コース中央値3(2〜6)。RECIST効果判定可能な5 例においてCR 1 例,PR 4 例で奏効率86%,PD は認めなかった。無増悪生存期間中央値310 日,生存期間中央値599 日であった。1 コース目終了時に症状緩和が6 例(100%)で得られた。Grade 3 以上の有害事象は白血球減少2 例(33%),好中球減少6 例(100%)などを認めた。結語: modified DCF 療法は経口不能進行胃癌に対して奏効率が高く,有望なレジメンの可能性が示唆された。
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癌と化学療法 41巻10号, 1231-1236 (2014);
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背景:レゴラフェニブは,大腸癌に適応を持つ初めての経口マルチキナーゼ阻害剤である。国際共同第Ⅲ相臨床試験(CORRECT 試験)の結果を受け,2013年5 月に保険収載されたが,特徴的な有害事象の多いことが懸念されている。対象と方法:標準化学療法後に病勢進行した切除不能進行再発大腸癌患者の16 例(57〜78歳)を対象とした。レゴラフェニブは,主治医の判断により導入時1 日1 回160 mg(標準量)または80 mgを3 週投与1 週休薬のサイクルで継続した。有害事象により40 mgずつの減量または一時休薬した。結果:投与期間中央値は6.5(IQR 3.8〜21.8)週で,減量または中止を87.5%に認めた(相対用量強度48.8%)。grade 3 以上の有害事象は,手足症候群44%,全身Ð怠感13%,血小板減少13%,食欲不振6%,高血圧6%などであり,1 例に重篤な肝障害が出現した。奏効率0%,病勢制御率(DCR)75.0(95% CI 50.0-93.8)%であった。PFS 9.0(8.5-9.5)週,OS 26.6(5.0-48.1)週であった。結論:標準化学療法に不応となった転移再発大腸癌に対して,レゴラフェニブの有用性が確認された。有害事象の多くは対処可能であったが,手足症候群,全身疲労感,肝機能障害による投与中止例を認めた。CORRECT 試験と比較して,DCR,OS,PFS は同等の結果であったが,投与期間は短かった。
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症例
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癌と化学療法 41巻10号, 1237-1240 (2014);
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超高齢者非小細胞非平上皮肺癌症例に対し,カルボプラチン(CBDCA),ペメトレキセド(PEM),ベバシズマブ(Bev)による化学療法が奏効した症例を経験したので報告する。症例は84 歳,男性。主訴は呼吸困難,受診時右癌性胸水のため右肺は完全虚脱,縦隔は左方に偏位していた。右胸腔ドレナージ後気胸を合併し,開胸下,気瘻部に吸収性組織補強剤を貼付しフィブリン糊を塗布した。退院後外来にて1 コース目はPEM 500 mg/m / 2+Bev 15 mg/kg を投与した。重篤な副作用を認めず,2 コース目からCBDCA AUC4を追加した。7 コース施行後胸水はほぼ消失し,右上葉原発巣は縮小した。その後PEM+Bevの投与を継続した。投与開始から12 か月目(全14 コース施行)まで右胸水は良好にコントロールされ,右上葉原発巣は縮小が維持されていた。化学療法による副作用は軽度で安全に施行可能であった。16 コース施行後左癌性胸水を認め,化学療法開始後15 か月目に永眠された。
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癌と化学療法 41巻10号, 1241-1244 (2014);
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症例は65 歳,男性。2000年11 月,両葉多発肝転移を伴うS 状結腸癌でS 状結腸切除術を施行。術後1 か月目に肝動注化学療法(5-FU 1,000 mg/㎡/5 時間/週)を開始。12 コース終了時点では肝転移の遺残があり,計26 コース終了後に完全寛解(CR)となった。以後,無化療で経過観察。2008 年1 月のMRI でS4 に肝転移巣を同定。経上腸間膜動脈性門脈造影下CT(CTAP)で単発病変と診断し,3 月に肝部分切除を施行した。病理組織学的にも大腸癌肝転移に矛盾しない像であった。肝切除後,無化療で5 年を経過したが,再発兆候は認めていない。肝動注終了後6 年6 か月で再燃したことからslowgrowingな腫瘍であると思われ,今後も長期的な経過観察が必要である。
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癌と化学療法 41巻10号, 1245-1249 (2014);
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左不全麻痺により発症したまれな大腸癌を報告する。患者は75 歳,女性。左不全麻痺にて初診。右前頭葉に13 mm の腫瘤を認めた。開頭腫瘍摘出術を施行。病理所見は腺癌,免疫染色により大腸癌が疑われた。大腸内視鏡で上行結腸癌と診断。頭蓋外転移は認められなかった。左半結腸切除を施行。全脳照射を予定していたが,頸部リンパ節および右上腕皮膚転移,また脳転移再発を認めた。脳転移再発は再手術を行った。その後,全脳照射と疼痛の強い右上腕皮転移に放射線照射を行ったが,第201病日に永眠された。大腸癌の治療成績は化学療法の進歩により大きく改善している。しかし脳転移を有する大腸癌の予後は未だ不良である。歴史的に脳転移には化学療法は無効とされ,手術と放射線療法が行われている。しかしベバシズマブなどを含む現代の化学療法での有効性の評価も必要と思われた。
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癌と化学療法 41巻10号, 1251-1253 (2014);
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カペシタビン単剤投与による白質脳症をMRI拡散強調画像にて診断した1 例を経験したので報告する。症例は63歳,女性。結腸癌術後補助化学療法としてカペシタビンを投与後,眩暈,構音障害,嚥下障害を認め外来受診,MRIの拡散強調画像にて白質脳症と診断した。薬剤の中止のみで早急に症状は改善した。カペシタビンによる白質脳症はまれであるが注意すべき副作用と考えられ,早期の薬剤投与中止が必要である。その早期診断にはMRI拡散強調画像が有用であると考えられる。
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薬事
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癌と化学療法 41巻10号, 1255-1257 (2014);
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乳癌治療においてエピルビシン塩酸塩は化学療法の中心的役割を担う薬剤であるが,この薬剤を組み入れた治療レジメンは,制吐薬適正使用ガイドラインで催吐リスクが高く分類されるものが多い。そのため,レジメンにホスアプレピタントなどの制吐剤が組み入れられることが推奨されている。しかし,これらの薬剤は静脈内投与後,血管痛や静脈炎を多く発症する可能性のある薬剤として知られている。今回われわれは,エピルビシン塩酸塩投与中に発症した静脈炎を伴う血管痛に対して,デキサメタゾンを投与することで鎮痛効果を得ることができた症例を経験したので報告した。ホスアプレピタント後のエピルビシン塩酸塩による血管痛に対して,デキサメタゾン投与が有用である可能性が認められた。本治療法の有効性を確認するため,今後さらなる症例を重ねた臨床研究が必要であると考えた。
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特別寄稿
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第35回 癌免疫外科研究会
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癌と化学療法 41巻10号, 1261-1263 (2014);
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2005年7 月〜2013年11 月に当院において,評価可能病変をもった1,939例の進行再発癌患者に免疫療法または温熱療法を施行した。最も症例が多かったのは260例の大腸癌であった。治療開始後6 か月で判定したclinical benefit rate(CR+PR+long SD)を有効と判定したものが309例(15.9%)であった。樹状細胞+リンパ球+温熱療法の三者併用の有効率が20.7%と最も高かった。温熱療法のみの有効率は3.6%で,転移部位としては皮膚および所属リンパ節で有効であった。免疫療法単独群の有効率は9.1%で,単独の肝転移,肺転移に有効であった。免疫療法に温熱を併用した群では有効率は19.1%で倍以上の効果が得られ,肝・骨・肺・脳などの重要実質臓器に多発転移をもつ重篤症例に有効であった。10 例以上の施行例のある癌種別での有効率については,卵巣癌で25.0%と最も高く,前立腺癌,頭頸部癌と続いた。
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癌と化学療法 41巻10号, 1264-1266 (2014);
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背景・目的:高齢者切除不能胃癌に対して S-1/Lentinan 併用療法の免疫能の変化を評価した。対象・方法: 2008 年 10月〜2012 年 12 月の間に S-1/Lentinan 併用療法を施行し,今回の検討に同意が得られた 70 歳以上の切除不能胃癌 10 例を対象とした。化学療法施行前と化学療法7 週後に免疫パラメータとして制御性T 細胞(Treg)比率,プロスタグランジン(PG)E2,C3,補体価および顆粒球/リンパ球比を測定した。臨床病理学的因子や免疫パラメータを共変量として治療開始日からの予後に影響を与える因子を同定した。結果:化学療法7 週後のTreg比率高値群(p=0.02)とPGE2低値群(p=0.05)およびTreg比率の変化率低下群(p=0.02)で生存期間の有意な延長が認められた。結語: S-1/Lentinan併用療法を施行した高齢者切除不能胃癌の予後には免疫能の動態が関与している可能性が示唆された。
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癌と化学療法 41巻10号, 1267-1269 (2014);
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CD147 は腫瘍の浸潤に関与する多機能膜糖蛋白であり,各種固形癌で過剰発現していることが報告されている。しかしながら,乳癌の進展形式におけるCD147の発現の意義は明らかにされていない。そこで,非浸潤性乳管癌におけるCD147の発現パターンを検討し,浸潤性乳管癌の発現パターンと比較検討することを目的とした。2002 年までに手術を行った乳癌156 例を対象とし,パラフィン包埋切片を用いてCD147 の免疫組織化学染色を行った。得られた結果を非浸潤性乳管癌(A群)と浸潤性乳管癌(B 群)に分けて臨床病理学的因子について検討を行った。結果,CD147 は62.8%に陽性であり,A 群に比べてB 群に発現程度が高かった。全症例でみると,CD147 陽性率は臨床病期,リンパ節転移の有無,腫瘍径と相関した。乳癌において,非浸潤から浸潤に移行する過程でCD147 が関与する可能性が示唆された。
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癌と化学療法 41巻10号, 1270-1272 (2014);
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癌組織に浸潤するマクロファージには腫瘍促進作用を有するものが存在し,M2 マクロファージと呼ばれている。胃癌癌性腹膜炎患者の腹腔内マクロファージのphenotypeを評価した。胃癌癌性腹膜炎患者から採取した腹水あるいは腹腔洗浄液から細胞を回収し,比較対照群をStage Ⅰ,Ⅱ患者の腹腔洗浄液とした。CD45(汎白血球マーカー),CD68(汎マクロファージマーカー),CD163(M2マクロファージマーカー)を染色し,フローサイトメトリーにて計測した。癌性腹膜炎患者の腹腔内には多量の腹腔内マクロファージが存在し,その約71%と大部分がM2マクロファージであることがわかった。またM2 マクロファージを多数有するStage Ⅳ症例の腹腔内マクロファージを継時的に検討したところ,パクリタキセルを含んだ腹腔内化学療法により,M2 マクロファージの比率が減少することがわかった。腹腔内マクロファージは腹膜播種増悪と関連しており,治療ターゲットとなることが示唆された。
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癌と化学療法 41巻10号, 1273-1275 (2014);
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大腸癌手術症例における小野寺式栄養指数(PNI)とmodified Glasgow prognostic score(mGPS)の意義につき,術後経過との関連から比較検討した。対象と方法:大腸癌切除165 例を,PNIは>40(141例),≦40(24 例),mGPSは A/B 群(95例),C 群(44例),D 群(26例)に大別し,術後合併症(GradeⅡ以上)の発生率と術後在院日数(中央値と長期滞在例),臨床病期別生存率との関連を検討した。結果:全合併症,SSIでは両指標,RI ではGPS のみ有意な関連がみられた。術後在院日数は中央値で両指標,長期例はPNI,生存率では両指標で有意な関連がみられた。結論: PNIおよびmGPSは術後経過を反映する有用な指標と考えられた。
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癌と化学療法 41巻10号, 1276-1279 (2014);
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cDNA マイクロアレイ法によって,多種類の癌において新規腫瘍関連抗原が同定され,これら由来のペプチドを用いて臨床試験が進んでいる。われわれは,進行再発大腸癌に対する7 種ペプチドワクチン+UFT/LV 併用療法による臨床試験を計画し,30 例が登録された。有害事象として25 例にGrade 1 の皮膚反応がみられ,1 例にGrade 3 のアナフィラキシーショックがみられたが迅速な処置により速やかに改善した。腫瘍縮小効果では,3 例PR,15 例SD,12 例でPD という結果が得られた。7 種ペプチドワクチン+UFT/LV 併用療法は安全に施行でき,臨床効果の点からも期待のもてる治療と考えられた。
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癌と化学療法 41巻10号, 1280-1282 (2014);
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目的: 多種の進行癌に対するWT1ペプチドとMUC-1ペプチドをパルスした樹状細胞療法の成績を明らかにする。対象および方法:この研究は後ろ向きに調査し,新横浜かとうクリニックにおいて2009 年5 月〜2013 年10 月までに樹状細胞がんワクチンを5回以上接種した計313例を対象とした。臨床効果を解析した。当治療は施設の倫理委員会の承認を得ている。結果313例は,投与回数平均6.0回,平均2.4×10/ 7個回の樹状細胞を接種した。313 例中292 例がRECIST v1.1 で臨床評価できた。診断時からの全生存期間は中央値28.4 か月,当院初診からの生存期間は13 か月(1 年生存率51.4%,2 年生存率36.4%),CR 7.2%(21例),PR 24%(69例),SD 37%(107例),PD 33%(95 例)と治療効果があり,大腸癌は56 例,response rate(RR)・disease control rate(DCR)は,25%・45%,肺癌39 例,31%・82%,膵癌36 例,22%・64%,胃癌34 例,32%・74%,乳癌20 例,15%・75%,卵巣癌16 例,19%・50%,食道癌15 例,20%・73%,その他の癌76 例,38%・67%の癌腫別に違いがあり,この結果は樹状細胞を使った免疫療法が一定の臨床効果があることを示している。
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癌と化学療法 41巻10号, 1283-1285 (2014);
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2005年7 月〜2013年11 月に当院において,74 例の頭頸部癌患者に免疫療法・温熱療法を施行した。咽頭癌29 例,舌癌10 例,口腔底癌8 例,唾液腺癌と喉頭癌が7 例であった。治療開始後6 か月で判定したclinical benefit case(CR+PR+long SD>6 months)を有効と判定し,評価可能病変をもった70 例の患者のうち15 例(21.4%)に有効例を認めた。樹状細胞+リンパ球+温熱療法の三者併用の有効率が25.7%と最も高かった。4 例のCR を認めた。分子標的治療にgd細胞療法を併用して有効である症例を示した。
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癌と化学療法 41巻10号, 1286-1288 (2014);
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aromatase inhibitor(AI)耐性の転移・再発乳がん症例に対して高用量toremifene(TOR)(120 mg/day)を使用した症例についてindoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)の発現程度を検討した。乳癌術後に補助療法としてAIを投与していたが,転移・再発を認めた32 症例を対象とした。転移・再発時に採血を施行し,high performance liquid chromatography(HPLC)を用いてtryptophan(Trp)と kynurenine(Kyn)を測定し,Trp/Kyn ratioから IDOの activityを測定した。観察期間の中央値17.2か月,TOR の奏効率21.9%,臨床的有用率は62.5%であった。遠隔転移群は局所再発群に比べて再発時のTrp/Kyn ratioが有意に低かった。また,TOR奏効群は非奏効群に比べて治療中のTrp/Kyn ratioが有意に高かった。ホルモン療法施行中に病勢がコントロールできていた症例は治療効果に応じて Trp/Kyn ratio が変動した。乳癌術後の転移・再発時の内分泌療法中にTrp/Kynを測定することは病勢の推測に有用である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 41巻10号, 1289-1291 (2014);
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bevacizumab は血管新生を阻害する抗VEGF モノクローナル抗体である。今回われわれは,paclitaxel+bevacizumab併用療法の使用経験について検討した。当院においてpaclitaxel+bevacizumab併用療法を受けた進行・再発乳癌20 症例を対象とした。対象症例をホルモン陽性群と陰性群に分類し,その奏効率および無増悪生存期間(PFS)を比較した。全体の投与数の平均値は3.35(1〜14)サイクル。奏効率はホルモン陽性群で6.6%(CR 0 例,PR 1 例,SD 7例,PD 7 例),ホルモン陰性群で20%(CR 0 例,PR 1 例,SD 4 例,PD 0 例)であった。対象症例全体の奏効率は低かったがfirst-line で使用した症例ではPR を得た。転移・再発後に使用された前治療レジメン数が少ないほどpaclitaxel+bevacizumabを長く使用できる傾向がみられた。
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癌と化学療法 41巻10号, 1292-1294 (2014);
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目的: 化学療法中の癌患者では体内のレボカルニチンレベルの低下が指摘され怠感の要因の一つと考えられている。今回,化学療法中で怠感を訴える癌患者にレボカルニチン塩化物を投与し,怠感の変化を検討した。対象・方法:化学療法中に怠感を訴えた進行・再発癌患者 10 例にレボカルニチン塩化物(900 mg/day)を経口投与し,怠感は numericalrating scale(NRS),栄養評価はgeriatric nutritional risk index(GNRI)を用いて投与前後の変化を検討した。結果:有効は10 例中4 例で怠感が改善した。投与前のGNRI は有効例で無効例より有意に低値を示していたが,投与後は両者間の差は消失した。考察: 有効例では何らかの栄養障害が存在し,それがレボカルニチンにて改善されたと考えられ,この栄養障害の改善が怠感軽減に関与した可能性が推測された。
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癌と化学療法 41巻10号, 1295-1297 (2014);
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2005年7 月〜2013年11 月に当院において,評価可能な116 例の進行再発卵巣癌患者と102 例の進行再発子宮悪性腫瘍患者に免疫療法・温熱療法を施行した。子宮頸癌63 例,子宮体癌31 例,子宮肉腫が8 例であった。治療開始後6 か月で判定したclinical benefit case(CR+PR+long SD)を有効と判定し,卵巣癌の有効例は29 例(25.0%)と高く,特に活性化リンパ球,樹状細胞,温熱療法の三者併用での有効率が47.5%と最も高く,実質臓器への多発転移に有効であった。子宮悪性腫瘍への有効例は13 例(12.7%),そのうち子宮頸癌は5 例(7.9%),子宮体癌は7 例(22.5%),子宮肉腫は1 例(12.5%)であった。卵巣癌,子宮悪性腫瘍ともに温熱療法・免疫療法単独ではほとんど有効例は認められなかったが,併用にて有効が認められた。
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癌と化学療法 41巻10号, 1298-1300 (2014);
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症例は66 歳,女性。他院で腫瘍マーカー高値を指摘され,精査の結果,膵尾部癌と診断された。手術目的で当科紹介となった。腹部CT では,膵尾部に径2.5 cm大の乏血性腫瘤を認め,脾静脈・脾臓浸潤を伴う膵尾部癌と診断した。2013 年2 月,手術目的で当科入院となった。開腹時,少量の腹水を認め,腹腔洗浄細胞診(CY)を提出したところ,Class Ⅴであった。CY 陽性であったが,遠隔転移もなく,腹膜播種も認めなかったので(H0P0),根治切除を行う方針とし,膵体尾部切除,脾臓摘出,左副腎切除,D2リンパ節郭清術を施行した。術後経過良好で,術後23 日目に退院となった。病理組織診断で,pT4N0H0P0M(−)fStage Ⅳaであったため,術後34 日目から補助化学療法としてTS-1 を開始し,4 コース(6か月間)施行した。WT1 ペプチド樹状細胞ワクチン療法も併用して行い,7 回投与(2〜3 週ごと)した。重篤な有害事象は認めなかった。術後1 年4か月経過現在,無再発で外来通院中である。
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癌と化学療法 41巻10号, 1301-1303 (2014);
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術前に栄養障害があると術後の合併症の発生率や死亡率が高くなる。特に食道癌手術患者は,術前から栄養障害に陥っていることが多く,手術の侵襲も大きい。したがって,栄養状態を正しく把握し積極的な周術期の栄養管理を行うことが大切である。そこで当院で施行している食道癌切除例の栄養スクリーニングの現状と評価について報告する。対象は食道癌根治切除例158 例。栄養指標として,年齢,糖尿病の併存,BMI,血清Alb 値,小野寺式栄養指数(PNI),Glasgow prognosticscore(GPS)に分けて検討した。検討項目は,術後合併症の発生頻度(全合併症,肺合併症,精神障害,縫合不全)と術後在院日数長期例の頻度とした。結果は,年齢,BMI,血清Alb 値,PNI,GPS の値が術後合併症の発生や術後在院日数長期化を予測する指標として有用であった。そうした症例では,より積極的な栄養管理を行うことが必要であると考える。
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癌と化学療法 41巻10号, 1304-1306 (2014);
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転移・再発乳癌症例における再発形式によるindoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)の発現の相違を検討した。手術後に転移・再発を認めた37 症例について採血し,HPLC を用いてtryptophan(Trp)とkynurenine(Kyn)を測定した。局所再発群(n=11)と遠隔転移群(n=26)に分けて検討すると,遠隔転移群は局所再発群に比べてTrp/Kyn ratioが低く,遠隔転移群のなかでも多発病変のあるものはTrp/Kyn ratioが低かった。局所再発群は遠隔転移群に比べて予後良好であった。化学療法を施行した症例については化学療法施行時に全例がTrp/Kyn ratioが低下していた。化学療法治療中には抗腫瘍効果の予測には役立たないと思われた。
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癌と化学療法 41巻10号, 1307-1309 (2014);
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大腸癌の予後因子として,化学療法導入前のStage Ⅳ大腸癌に限定した報告は少ない。今回,顆粒球・リンパ球比(granulocyte-to-lymphocyte ratio: G/L 比)を含む,実地臨床で得られる治療前の因子を用いて予後予測の検討を行った。oxaliplatin-baseの化学療法が導入されたStageⅣ大腸癌のうち,化学療法導入前にG/L 比が評価可能であった83 例を対象とした。単変量解析では,G/L 比,転移臓器個数が2 臓器以上,PS 1 以上,非根治症例,Hb,CRP,Alb,ALP,CA19-9 およびLDH が予後不良因子として抽出され,多変量解析では,非根治症例が予後不良の独立因子として同定された。G/L 比のカットオフ値を3 に設定し,低値群(n=44)と高値群(n=39)の2 群に分類した。生存期間中央値は低値群25.4 か月,高値群 16.1 か月で高値群が有意に予後不良であった。化学療法導入前の Stage Ⅳ大腸癌において G/L 比は予後不良の 1 因子として,今後も検討すべき項目と思われた。
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癌と化学療法 41巻10号, 1310-1312 (2014);
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胃癌の予後因子としては臨床病期や病理組織学的所見,様々なバイオマーカーなどが提唱されているが,Stage Ⅳ症例に限った報告は少ない。今回,顆粒球・リンパ球比(granulocyte-to-lymphocyte ratio: G/L比)を含む,実地臨床で得られる治療前の因子を用いてStage Ⅳ胃癌に対する予後予測が可能であるか検討した。当科で治療をしたStage Ⅳ胃癌のうち,G/L 比が評価可能であった 70 例を対象とし,生存に影響を与える臨床病理学的因子を Cox 比例ハザードモデルの解析を用いて検討した。単変量解析では,年齢70 歳以上,PS 2 以上,原発巣非切除,化学療法非施行,CRP およびCA19-9高値が生存に影響を与える有意な因子として抽出され,G/L比は有意な因子としては抽出されなかった。多変量解析では,原発巣非切除,化学療法非実施,CRP 高値が予後不良な独立因子として抽出された。StageⅣ胃癌の予後予測因子に対するG/L比の関与については,さらなる検討が必要であるように考えられた。
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癌と化学療法 41巻10号, 1313-1315 (2014);
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症例は60 歳,男性。多発肝転移と大動脈周囲リンパ節転移を伴うStage Ⅳ胃癌と診断し,SP療法[S-1+CDDP(S-1 80 mg/㎡+CDDP 60 mg/㎡)]を開始した。治療効果を認めていたが,3 コース目施行中に胃穿孔を起こし緊急手術を施行した。手術所見では,胃体上部前壁に約5 mm大の穿孔部を認め,肝S6 のみに転移巣の残存を認めた。原発巣切除術が可能と判断し,胃全摘術(脾臓温存,D1+郭清,Roux-en-Y再建)を施行した。摘出標本では,腫瘍の潰瘍底に穿孔を認め,病理学的所見では,穿孔部の組織学的治療効果判定はGrade 2 であり,周囲は瘢痕化していた。郭清リンパ節には転移は認めなかった。術後経過は良好で,術後4週目よりS-1単剤による治療を再開,肝転移巣の増大はなく術後12 か月経過,生存中である。
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癌と化学療法 41巻10号, 1316-1318 (2014);
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症例は55 歳,男性。4 か月前から食事が通りにくくなり,前医を受診し加療目的に当院紹介,入院となった。精査にて幽門狭窄を伴う進行胃癌,多発肺転移,多発肝転移,腹直筋浸潤,腹膜播種による癌性腹膜炎と診断された。経口摂取で嘔吐を来し,絶食・高カロリー輸液管理とした。weekly paclitaxelによる化学療法を開始し,1 コース終了後,HER2の過剰発現(3+,IHC 法)が判明したためtrastuzumabの追加を行った。2 コース終了後,上部内視鏡検査にて腫瘍は縮小し幽門輪をファイバー通過可能となった。食事摂取が可能となったため退院し外来化学療法を継続した。3 コース終了後,食欲低下で再入院となった。化学療法をfluorouracil+CDDP+trastuzumabに変更したが,幽門狭窄が強く消化管ステントを挿入した。再度食事摂取可能となり,合計2 コース施行したが,腹膜播種によるイレウスを生じ徐々に状態は悪化し永眠された。経過中,約3 か月近く外来通院が可能となり,その期間良好なQOLが保つことができた。