癌と化学療法

Volume 42, Issue 2, 2015
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総説
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iPS細胞技術と癌治療
42巻2号(2015);View Description
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人工多能性幹(induced pluripotent stem: iPS)細胞は,特定の因子を体細胞に導入し適切な環境下で培養することで得られる多能性幹細胞である。iPS 細胞は分化多能性と自己複製能を有するのに加え,様々な個人の細胞から,さらには一個人のなかの様々な細胞種から樹立できるという特徴を有している。技術応用という観点からは,iPS 細胞がもつこれらの特徴を十分に理解しておくことが必要であり,それを基盤とする応用法の戦略構築が重要である。現在,iPS 細胞技術は様々な領域において応用されるようになり,癌研究においても免疫治療,病態解明,創薬などに向けた多岐にわたる応用がなされ,有用なツールとなっている。今後も様々な取り組みが展開していくものと思われ,iPS 細胞技術を応用した新たな癌治療法の開発が期待される。
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特集
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- 粒子線治療と薬物療法併用
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非小細胞肺癌における化学陽子線治療の現状と展望
42巻2号(2015);View Description
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切除不能局所進行非小細胞肺癌に対する標準治療は化学放射線治療である。陽子線治療は線量分布の特性により,正常肺への照射量を軽減することができる。国立がん研究センター東病院では,2011 年12 月から局所進行非小細胞肺癌に対し化学療法と陽子線治療の併用を行っている。2 年間で33 症例に化学療法と陽子線治療の同時併用を行った。9 症例でV20Gy や脊髄線量が多く,X 線による通常分割照射の適応がないと判断し陽子線治療を行った。化学療法レジメンはシスプラチン+ビノレルビン併用療法31 例,カルボプラチン+パクリタキセルの毎週投与1 例,カルボプラチンの連日投与が1例であった。1 例を除いて全例が規定の陽子線治療を受けた(60 GyE が15 例,66 GyE が17 例)。1 例で陽子線治療中に肝転移が出現し,陽子線治療を36 GyE で中止した。8 例で陽子線治療を中断した。その理由は発熱性好中球減少6 例,食道炎が3 例であった。グレード(G)3 の食道炎は2 例(6%)に認めた。G2の毒性は,食道炎12 例,皮膚炎10 例,肺臓炎2 例ほど認めた。G3 の肺臓炎はなかった。17 症例が増悪を来し,照射野内再発4 例,遠隔転移14 例,両方を認めた症例が1 例であった。打ち切り例の観察期間中央値が6.0か月の解析で,無増悪生存期間中央値は9.9(95%信頼区間: 5.2-14.6)か月であった。この後ろ向き研究の結果,陽子線治療と化学療法の同時併用は忍容可能であったが,X線照射を用いた標準的な化学放射線治療と比べて食道炎と皮膚炎が強い傾向がみられた。 -
局所進行癌に対する化学療法を併用した陽子線治療成績と展望
42巻2号(2015);View Description
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陽子線は炭素イオン線と同等に物理学的特徴として荷電された粒子が止まり,その直前で深部相対線量が最大となるため,X 線と比較し線量分布が良好である。一方,陽子線の単位長さ当たりに付与するエネルギーはX線と同様に低いため,その生物学的効果はX 線とほぼ同等である。それゆえ,陽子線治療は進行癌に対して局所制御を改善する目的とした線量の増加を図れるとともに,化学療法を安全に併用できる魅力的な治療である。国内での施設数の増加とともに,スポットスキャン法をはじめとした新しい治療技術開発も進んでおり,他施設共同研究も現在模索されている。本稿では同時化学放射線療法を行う進行癌として,食道癌,非小細胞肺癌,肝内胆管癌,膵癌および膀胱癌について,筑波大学で1983年から取り組んできた陽子線治療成績について文献的考察を交えて紹介するとともに,今後の展望を述べる。 -
炭素イオン線治療併用療法に関する基礎生物研究
42巻2号(2015);View Description
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医療用重粒子加速装置(heavy ion medical accelerator in Chiba: HIMAC)から得られる炭素イオン線を使った癌治療は,治療開始から20 周年となった2014年には治療患者数は9,000例を超え,多くの癌で高い局所制御率が得られることが示されている。しかしながら,癌の種類や形状,リスク臓器との位置関係によっては増感作用をもつ抗癌剤との併用が選択肢にあがる。また,転移の抑制が必要な場合も全身性併用療法の検討が必要である。現在臨床では,dacarbazine,nimustinehydrochloride,vincristine(DAV),ゲムシタビン(gemcitabine),シスプラチン(cisplatin),フルオロウラシル(5-fluorouracil)の併用が実施されている。一方,これまでの基礎研究ではADPリボースポリメラーゼ阻害剤やHSP90 阻害剤の効果的な増感作用が報告されている。また,われわれは放射線に応答した癌細胞の浸潤能変化にかかわるパスウェイを解析し,特定の分子群を同時に阻害することによる浸潤抑制効果を示した。さらにマウス腫瘍モデルを用いた炭素イオン線治療樹状細胞併用療法の転移抑制効果についても紹介する。 -
前立腺癌に対する重粒子線治療―ホルモン療法の役割―
42巻2号(2015);View Description
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前立腺癌に対する炭素イオンを使用した重粒子線治療におけるホルモン療法の役割を概説した。従来の放射線療法において中間リスク群では短期ホルモン療法が,高リスク群では長期ホルモン療法が推奨されている。組織内の酸素化点やアンドロゲン受容体を介したDNA 遺伝子修復因子の点などから,放射線とアンドロゲン除去療法のメリットが基礎的に検討されている。重粒子線治療においてもリスク分類に応じたホルモン併用が行われている。今後さらに至適併用方法や期間の検討が待たれる。
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Current Organ Topics:Gynecologic Tumor 婦人科腫瘍 卵巣癌薬物療法の新たな潮流
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Ⅱ.High-Grade Serous,Endometrioid Carcinomaにおけるゲノムワイド解析と有効性が期待される分子標的治療薬の新展開
42巻2号(2015);View Description
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原著
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進行非扁平上皮非小細胞肺癌に対するCisplatin+Pemetrexed併用療法の安全性および有効性の後方視的検討
42巻2号(2015);View Description
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cisplatin(CDDP)+pemetrexed(PEM)併用療法は未治療進行非平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)に対する標準治療の一つと考えられるが,本邦における同治療の報告は第Ⅱ相試験の報告1 報にとどまり,日常臨床における安全性および有効性は明らかでない。今回われわれは,未治療進行非平上皮NSCLC の初回化学療法としてCDDP+PEM 併用療法を行った40 例を対象に後方視的に解析を行った。治療に関連する有害事象は,Grade 3 以上の血液毒性は好中球減少7 例(17.5%),白血球減少5 例(12.5%),貧血,血小板減少,発熱性好中球減少を1 例(2.5%)ずつ認めた。Grade 3 以上の非血液毒性は食欲不振3 例(7.5%),感染,皮疹,トランスアミナーゼ上昇を1 例(2.5%)ずつ認めた。治療に関連する死亡は認めなかった。奏効率37.5%,無増悪生存期間中央値5.6 か月,全生存期間中央値は18.8 か月であった。EGFR 遺伝子変異陰性または不明例(n=28)に関しても,全生存期間中央値16.8 か月と長期生存を認めていた。未治療進行非平上皮NSCLC に対するCDDP+PEM併用療法は既存の報告と同様に安全性が高く,良好な生存成績が期待できる治療法と考えられた。 -
KRAS 遺伝子野生型治癒切除不能大腸癌に対する二次治療以降の抗EGFR 抗体薬単剤の検討
42巻2号(2015);View Description
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2008 年11 月〜2012 年2 月までにcetuximab もしくはpanitumumab 単剤で治療したKRAS 遺伝子野生型治癒切除不能大腸癌の治療成績について,PS 良好群(PS 0/1)と不良群(PS 2/3/4)に分けて後方視的に検討した。対象は22 例で,PS良好群11 例(PS 0/1:3/8 例),PS 不良群11 例(PS 2/3/4:6/3/2 例)だった。PS良好群と不良群の奏効率は9%と 0%,病勢コントロール率は73%と18%,無増悪生存期間中央値は5.1 か月[95%信頼区間(confidence interval: CI)1.5-8.7]と0.7 か月(95% CI 0.3-1.0),全生存期間中央値は16 か月(95% CI 8.8-24)と1.5 か月(95% CI 0.7-2.4)であった。grade3 以上の有害事象は全体で18%に認められ,cetuximabで1例のinfusion reaction(grade 4)と,panitumumabで1例の間質性肺炎(grade 4)を認め,いずれも治療中止とした。治療関連死はなかった。PS良好例には実地臨床でも既報と同様の治療成績を示したが,PS 2 以上には適応を慎重に検討する必要がある。 -
進行大腸癌に対するアジュバントCapecitabine+Oxaliplatin併用療法のFeasibility試験
42巻2号(2015);View Description
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2009 年9 月〜2012 年1 月までに大阪府立成人病センターにおいて,術後の総合所見Ⅲ期もしくはP1 およびM1(LYM)の結腸・直腸癌症例でD2-D3 のリンパ節郭清が行われた根治度B 以上の15 例の症例を対象に,capecitabine+oxaliplatin併用療法を3 週間を1 コースとして投与し,そのfeasibility について検討した。海外にて実施されたMOSAIC 試験 / 1),NSABP C-07試験2)およびNO16968/XELOXA 試験3)と比較しても,Grade 3 以上の重篤な手足症候群(HFS)が発現しないなど比較的安全に施行可能であったが,さらなる大規模な症例での安全性を検証する必要がある。 -
悪性腫瘍に伴う腹水へのトルバプタンの効果
42巻2号(2015);View Description
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悪性疾患に伴う腹水は従来の塩類利尿薬無効のことも多く,コントロールがしばしば困難である。今回われわれは,塩類利尿薬にて腹水のコントロール不良な心不全を伴う悪性腹水症例10 例において新規水利尿薬であるトルバプタンを投与し,その効果と副作用を検討した。2週間のトルバプタン投与にて腹部膨満感は有意に軽減を認めた。一方で有意に血清カリウム,尿素窒素,クレアチニンの増加を認めたが,臨床的には問題となった症例はなかった。トルバプタンは悪性腹水についても有効である可能性が示唆された。
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薬事
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リドカインを含有したポラプレジンク・アルギン酸ナトリウム含嗽液の製剤学的安定性の評価
42巻2号(2015);View Description
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目的: 疼痛を伴う口内炎の治療を目的に,ポラプレジンク・アルギン酸ナトリウム含嗽液(P/AG)にリドカインを加えた含嗽液(L-P/AG)を調製し,製剤学的安定性を評価した。方法: L-P/AG の保存温度は 5℃,25℃,40℃とした。ポラプレジンクおよびリドカインの含量を測定した。さらに,L-P/AG の粘度および pH を測定し,外観を観察した。結果: L-P/AG は5℃暗所,25℃暗所条件下では両薬剤の含量低下はみられず,粘度,pH,外観に関しても変化はなかった。40℃曝光条件下では両薬剤の含量低下を認めた。また,粘度・pHの減少や外観変化を認めた。考察: 疼痛を伴う口内炎治療用含嗽液として調製したL-P/AGは,28 日間 25℃暗所において製剤学的に安定であることが示唆された。 -
大腸癌抗癌剤化学療法時におけるホスアプレピタントの最適な投与方法の検討
42巻2号(2015);View Description
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ホスアプレピタント(以下,FOS)が保険収載され,当院ではアドヒアランス向上の面から大腸癌化学療法レジメンの制吐剤を経口から静注に全面切り替えをした。しかし,末梢からのFOS 投与により投与部位反応を訴える患者を経験した。今回,FOS の投与部位反応の実態を把握するとともに回避策についても検討した。従来のFOS 投与方法を通常群とし希釈群を試験群として前向きに検討したところ,2 群間に投与部位反応の発現頻度に有意差はなく希釈群のほうが通常群よりも高い傾向となった。この結果より,当院では無危害原則から逸脱していること,および経口薬アプレピタント(以下,APR)による代替治療があることから研究を早期中止とし,患者希望を伺った上で経口薬投与を原則とした。
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症例
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急性骨髄性白血病転化時に皮下骨髄性肉腫を呈した本態性血小板血症の1 例
42巻2号(2015);View Description
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症例は80 歳,男性。2008年11 月より本態性血小板血症(essential thrombocythemia: ET)の診断でhydroxyureaとaspirinの内服を行っていた。2012年1 月に白血球数が著増し,busulfanとcytarabineの併用投与を行った。同年10 月に発熱と全身Æ怠感のため入院となり,末Í血管の確保が困難であり右前胸部に中心静脈ポートを造設した。ポート造設の約2週間後ポート近傍に皮下腫瘤を認め,11 月に原病悪化のため死亡した。剖検でAML(M2)への転化,およびリンパ節と右前胸部の骨髄性肉腫(myeloid sarcoma: MS)を確認した。ET はAML への移行頻度は低く,MS の併発はまれである。最近,造血器腫瘍患者への中心静脈ポート造設の機会が増加しており,MSの合併に注意が必要である。 -
Capecitabine+CDDP 療法が奏効し切除し得たStageⅣ進行胃癌の1 例
42巻2号(2015);View Description
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本邦での切除不能進行胃癌に対する標準治療はS-1+cisplatin(CDDP)療法であるが,今回われわれはcapecitabine+CDDP 療法(XP療法)が奏効した1 例を経験したので報告する。症例は64 歳,女性。進行胃癌(cT4aN2 H1P0M0,StageⅣ)の診断で,当院へ紹介された。生検で低分化腺癌,HER2陰性と診断し,XP 療法を開始した。6 コース終了時の画像評価で肝転移巣がほぼ消失したため,開腹胃全摘術(D2郭清,Roux-en-Y再建術)を施行した。最後まで画像上残存したS5の肝転移巣は術中エコーで同定できず,切除を行わなかった。病理組織学的効果判定は原発巣Grade 1b でypT3,ypN1,ypStageⅡB であった。術後補助療法としてS-1を開始し,術後1年8か月経過した現在も無再発で生存中である。 -
進行胃癌化学療法中にRenal Salt-Wasting Syndrome(RSWS)を発症した1 例
42巻2号(2015);View Description
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症例は66 歳,女性。胸やけ,肝機能障害を認め,上部消化管内視鏡検査,CT 検査にて進行胃癌,多発肝転移と診断した。シスプラチン(CDDP)を含む化学療法中に嘔気と意識障害が出現し著明な低Na 血症を認め,renal salt-wastingsyndrome(RSWS)と診断し,水分とNa 補充により回復が得られた。CDDP投与中に低Na血症を生じた場合は,まれな病態であるがRSWSも念頭に置き治療を行う必要がある。 -
原発不明癌として治療を受けていた虫垂癌の1 例
42巻2号(2015);View Description
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われわれは原発不明癌として治療を受けていたが増悪し,開腹手術による確定診断後にmodified FOLFOX6(mFOLFOX6)+panitumumab療法を施行し,部分寛解となり原発巣切除となった症例を経験したので報告する。症例は50歳台,男性。腹部膨満,食思不振を主訴に前医受診。腹水貯留を伴う腹膜結節を認め癌性腹膜炎と診断された。腹水細胞診の結果,消化管由来と診断される腺癌を認めたが,PET-CT検査,上下部消化管内視鏡検査にて原発巣の診断は得られなかった。原発不明癌としてCBDCA+PTX 療法,GEM 療法にて加療するも腹水増大し,播種結節に伴う腸管閉塞を認め,2013年1 月当院を紹介された。腸閉塞解除目的で開腹手術施行。腹腔内は虫垂の壁肥厚および播種による回腸末端付近の閉塞を認めたため,回腸人工肛門造設および播種結節切除を行った。虫垂癌の診断を得て,mFOLFOX6+panitumumab 療法を3コース施行し,部分寛解を得た後,再び開腹し,拡大右半結腸切除術にて原発巣および一部播種結節を切除した。現在,原発不明癌に対しては標準的治療レジメンが存在しないばかりか,化学療法によって患者の予後改善を得られるのかも明確ではない。確定診断を得るためにも可能であれば開腹手術を考慮する必要がある。 -
Regorafenib導入直後にStevens-Johnson症候群を来した進行再発大腸癌の1 例
42巻2号(2015);View Description
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症例は55 歳,男性。直腸癌に対し低位前方切除術を施行された。術後8 年で肝転移,肺転移,腹腔内リンパ節転移などを来し標準化学療法に抵抗性となり,regorafenibを導入した。導入後早期にStevens-Johnson症候群(SJS)を来し,投与中止の上,ステロイド内服・外用による治療を要した。SJSは治療継続困難となる重要な有害事象であり,導入早期に注意深く皮膚症状を観察することが必要である。本症例は,regorafenibによるSJSの初の報告例である。 -
集学的治療にて長期生存を得たKRAS遺伝子変異を伴う再発直腸癌の1 例
42巻2号(2015);View Description
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進行・再発大腸癌に対する新規抗癌剤や分子標的薬の登場により多くの患者が生存期間の延長を得られるようになった。しかしさらなる長期生存を得るためには全身化学療法のみではなく,転移巣に対する局所療法も組み合わせる必要がある。とりわけKRAS 変異を伴う大腸癌は有効薬剤が限られるため,より集学的な治療が必要となる。今回われわれは,KRAS変異を伴う直腸癌術後肺再発・骨盤内リンパ節再発を来した50 代の男性に対して全身化学療法に加え,肺切除,経皮的ラジオ波焼灼術(radiofrequency ablation: RFA),リンパ節切除といった集学的治療を行うことにより,初回再発時より3年以上,活動性病変のない状態で生存している症例を報告する。 -
S-1+Gemcitabine療法に手術を付加した集学的治療で5年生存している進行膵鉤部癌の1 例
42巻2号(2015);View Description
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症例は62 歳,女性。下痢と体重減少を主訴に近医を受診した。CT で膵鉤部に径2 cm 大の乏血性腫瘍を認め,当科に紹介された。膵鉤部癌cT4(A)N0M0,cStage Ⅳaの診断で,gemcitabineを3 週投与1 週休薬で開始した。4 コース終了後,S-1 の併用(GS 療法)を開始した。徐々に腫瘍は縮小し,1 年8 か月後のCT で上腸間膜動脈周囲の軟部陰影が残存するのみで,膵内の腫瘤を同定し得なくなった。遠隔転移を認めず,膵頭十二指腸切除術を予定した。上腸間膜動脈周囲神経叢の線維化と肥厚が非常に強く,切除不能と判断しGS療法を再開した。その後,罹患した原発性肺癌を切除し,GS療法を継続した。化学療法開始3年9か月のCTで膵鉤部の腫瘍が再増大したため切除を行った。治療開始5 年後の現在も化学療法中である。 -
化学療法が奏効し両側気胸を合併した多形型悪性線維性組織球腫多発肺転移の1 例
42巻2号(2015);View Description
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症例は70 歳,男性。2011 年6 月,左大腿部pleomorphic malignant fibrous histiocytoma(多形型MFH)にて腫瘍広範囲切除術を施行された。10 か月後,局所再発のため局所再発部広範囲切除術を施行された。同時に多発肺転移を認め,イホスファミド+ドキソルビシン療法を行った。3 コース終了後,肺転移が増大しPD と診断した。二次治療としてイホスファミド,エトポシドの投与を行った。3 コース後,多発肺転移が増大しPD と診断,三次治療としてドセタキセル+ゲムシタビン投与を開始した。3 コース後,多発肺転移巣は縮小し瘢痕・空洞化していた(縮小率85.9%)。4 コース後,左気胸を合併し,胸腔鏡下に左上葉部分切除術を施行した。術後病理診断にて術中気瘻を認め,化学療法により瘢痕化した病変では胸膜の破綻が認められた。13 コース施行後,右気胸を認め,胸腔鏡下に右中葉部分切除術を施行した。術後病理診断にて術中気瘻を認めた囊胞病変は,腫瘍の遺残を認めなかった。15 コース施行したが重篤な副作用は認めず,PRが継続している。 -
二次化学療法により完全奏効が得られた後に急激に悪化した原発不明癌の症例
42巻2号(2015);View Description
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癌性髄膜炎は転移性癌患者の約5%で生じ,固形癌では乳癌・肺癌・悪性黒色腫・消化器癌などに多いといわれている。今回われわれは,原発不明癌に対する二次化学療法で著明な治療効果がみられ画像効果判定で完全奏効(CR)と診断された後に,癌性髄膜炎の発症によって急激に悪化した症例を経験したので報告する。
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