癌と化学療法

Volume 42, Issue 4, 2015
Volumes & issues:
-
総説
-
-
わが国のがん登録の法制化―全国がん登録の実施へ―
42巻4号(2015);View Description
Hide Description
2013年12月に成立した「がん登録等の推進に関する法律」に基づき2016 年1 月より全国がん登録が開始される。これまでわが国では罹患率,生存率は限られた地域におけるデータしか存在しなかったが,本登録の実施により精度の高い全国値が得られるようになり,がん対策の企画,立案,評価に生かされることになる。加えて,全国がん登録のデータはがん医療の質の評価,がん検診の精度評価や大規模コホート研究の追跡調査への活用が想定される。また,各医療機関は届出症例の生存確認情報を全国がん登録から得ることが可能となり治療成績の公表や調査研究の促進が期待できる。全国がん登録の開始はわが国のがん対策ならびにがん研究を推進する上で画期的であり,この貴重な情報を活用した成果を国民に十分還元することが求められる。
-
-
特集
-
- Second-Line Therapyの進歩
-
大腸癌のSecond-Line Therapyの進歩
42巻4号(2015);View Description
Hide Description
オキサリプラチン,イリノテカン,5-フルオロウラシルによる併用療法あるいはこれらに分子標的薬を併用した治療方法は,転移性結腸・直腸癌に対して今や第一次治療,第二次治療として確立されており,多くの治療ガイドラインにおいて標準治療として位置付けられている。しかしながら,それらの治療が施行された後の救援治療法に関する有用なデータは極めて少ない。このため,ここでは一連の初期治療後の救援治療法を検討した。救援治療法としては,カペシタビン,マイトマイシンC,ゲムシタビンなどは限られた効果しか得られないかまったく無効である。血管新生阻害薬は病変進行を遅延させ,生存期間を延長させるかもしれない。レゴラフェニブとTAS-102は救援治療法として確立された。新規薬物や新規併用療法とbest supportive care との第Ⅲ相比較試験をとおした転移性結腸・直腸癌に対する救援治療法の開発は重要な臨床的課題である。治療効果を予言するバイオマーカーの開発や大腸癌に関する分子機序のさらなる理解はいっそう必須である。 -
胃癌の二次化学療法の進歩
42巻4号(2015);View Description
Hide Description
転移・再発胃癌に対する化学療法は,新規抗がん剤の開発により高い奏効率と生存期間の延長が得られるようになったものの治癒は困難である。一次化学療法後に増悪した場合,対症療法のみよりも二次化学療法を行うと有意に生存期間が延長できるため,全身状態が良好な症例に対しては二次化学療法を追加するべきである。WJOG4407試験において,二次治療の薬剤としてirinotecan とpaclitaxel の比較では有効性や生存期間中央値には差はなかったが,paclitaxel のほうが三次化学療法へ移行できた割合が多かった。現在,進行中の二次化学療法の試験ではpaclitaxel をコントロールアームにおいたものが多い。二次治療における分子標的薬ではramucirumabとapatinibの有効性が示された。ramucirumabは今後本邦でも保険承認の予定であり,paclitaxelとの併用が標準治療に位置付けられる。 -
切除不能進行膵癌のセカンドライン化学療法
42巻4号(2015);View Description
Hide Description
切除不能進行膵癌の二次化学療法の有用性についてエビデンスは十分ではないものの,ほぼコンセンサスとなっている。治療内容をgemcitabine-based regimenと5-FU-based regimenに分けて,一次治療に用いられていないregimenを二次治療として選択することになる。本邦では5-FU-based regimenとしてはS-1 が頻用されている。現在,注目されているFOLFIRINOX 療法が一次治療であれば二次治療はgemcitabine が推奨され,nab-paclitaxel+gemcitabine 併用療法が一次治療であればS-1が推奨される。 -
転移再発乳癌に対するSecond-Line Therapyの進歩
42巻4号(2015);View Description
Hide Description
転移再発乳癌において限られた症例を除いて治癒は困難であり,生存期間(overall survival: OS)の延長と質の高いquality of life(QOL)の維持が治療の目的となる。転移再発乳癌に対しては腫瘍の生物学的特性,転移巣の場所(臓器)とその広がり,再発までの期間,前治療の内容とその効果,年齢,閉経状況,performance status(PS),患者の希望・価値観などを考慮し,これまで構築されてきたエビデンスを基に最適な薬物療法を選択することが重要である。転移再発乳癌に対しては薬物療法が主体となるが,薬物療法開始前にエストロゲン受容体(estrogen receptor: ER),プロゲステロン受容体(progesterone receptor: PgR)といったホルモン受容体とヒト上皮成長因子受容体2(human epidermal growth factor receptor2: HER2)の発現状況を評価し,それらを基にサブタイプ分類を行う。現在,臨床に応用されているサブタイプ分類としてLuminal タイプ(ER 陽性またはPgR 陽性),HER2 タイプ(HER2 陽性),トリプルネガティブタイプ(ER 陰性かつPgR陰性かつHER2 陰性)があり,近年,サブタイプごとに有効なレジメンが開発され乳癌に対する薬物療法は大きな変遷を遂げている。本稿では転移再発乳癌に対する薬物療法の進歩をsecond-line therapyを中心にサブタイプ別に紹介する。 -
肺癌における二次治療の動向
42巻4号(2015);View Description
Hide Description
肺癌の二次治療は,非小細胞肺癌と小細胞肺癌のsensitive relapse において確立している。特に,EGFR 遺伝子変異陽性非小細胞肺癌,ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺癌に関しては分子標的薬の登場により治療成績が著しく進歩している。さらにEGFR-T790M 遺伝子変異による獲得耐性を克服するための薬剤の開発が進んでおり,今後の治療戦略に期待がもたれる。一方,小細胞肺癌に対しては未だ有効な分子標的薬の開発は進んでいないのが現状である。
-
Current Organ Topics:Melanoma and Non-Melanoma Skin Cancers メラノーマ・皮膚癌
-
-
-
特別寄稿
-
-
治癒切除不能な進行・再発の胃癌に対するオキサリプラチンの臨床導入に当たって
42巻4号(2015);View Description
Hide Description
最近,オキサリプラチンの「治癒切除不能な進行・再発の胃癌」の効能・効果が公知申請に基づき承認された。今後,胃癌に対するレジメンとしてSOX 療法およびCapeOX 療法が普及していくと考えられる。胃癌に対するSOX 療法では,オキサリプラチンの初回投与量として100 mg/m / 2を用いた国内の安全性データが豊富である。一方,130 mg/m2を用いる場合は,結腸・直腸癌に対するSOFT 試験の投与開始・減量基準を参照すべきである。本稿では,実地臨床で胃癌に対してオキサリプラチンを使用する際に参考となる臨床試験成績を概説するとともに,前述の点も踏まえて臨床導入に当たっての留意点について述べた。
-
-
原著
-
-
乳癌患者におけるパクリタキセル注射剤(アルブミン懸濁型)の使用成績調査結果
42巻4号(2015);View Description
Hide Description
承認条件に基づき,パクリタキセル注射剤(アルブミン懸濁型)の使用成績調査を実施した。2010 年9 月24 日〜2011年2 月14 日に963 例が登録された。29例が除外例となり,安全性評価症例数は934 例であった。副作用発現率は92.8%,主な副作用はパクリタキセル製剤に特徴的な骨髄抑制と末梢性感覚神経障害であった。いずれも2 コース目までに高頻度で発現し,投与中止例の主たる有害事象であった。骨髄抑制の重篤化を防止するため臨床検査や問診を実施すること,および末梢性感覚神経障害に対し早期に対処することが,投与継続率を高め,治療効果を向上させると期待できた。 -
大腸癌術後補助化学療法アンケート調査―オキサリプラチンのリスクベネフィットバランスに関する考察―
42巻4号(2015);View Description
Hide Description
大腸癌術後補助化学療法を受けた患者147人,化学療法に携わる医師54 人,看護師84 人を対象にしたアンケート調査を行った。結果,オキサリプラチン併用(Ox)療法を受けた患者は,フッ化ピリミジン単独(Non-Ox)療法を受けた患者と比較して末梢性感覚ニューロパチーのスコアが高い傾向にあったが,健康関連QOL スコアは両群とも良好であった。また,治療中の副作用についてOx 療法を受けた患者の81%が治療の副作用は中等度であったと回答した。一方,医療者の約40%はOx 療法の副作用を強いと思うと回答し,実際に治療を受けた患者と医療者との間でOx 療法へのイメージに乖離が認められた。Ox併用による相対的再発リスク低下の上乗せを勘案すると,StageⅢ大腸癌術後補助化学療法においてOx療法のリスクベネフィットバランスは許容できると考えられた。 -
造血器腫瘍化学療法中における専門的口腔ケア介入の効果
42巻4号(2015);View Description
Hide Description
背景: がん化学療法における口腔合併症のうち,口腔粘膜炎の発症率は40%と報告されている。さらに,口腔粘膜炎は経口摂取困難による栄養低下や二次感染による重篤な感染症の原因となり得るため,その予防や治療は非常に重要である。目的:造血器腫瘍の化学療法中に専門的口腔ケア介入を行った患者における口腔内の状況,専門的口腔ケアの効果の検討を行った。対象・方法: 2008 年4 月〜2011 年3 月までに歯科衛生士による専門的口腔ケア介入を行った非ホジキンリンパ腫,急性骨髄性白血病の患者28 例について後ろ向き調査を行った。結果:専門的口腔ケア介入期間中28 例中11 例(39.3%)に口腔粘膜炎が発症したが,専門的口腔ケア介入を継続することで改善を認めた。口腔粘膜炎を発症した症例では,舌苔や口腔カンジダ症を合併していた。今回の調査では,化学療法開始後に専門的口腔ケアを介入する症例が28 例中25 例(89.3%)であった。結語: 化学療法による口腔粘膜炎や口腔感染症発症の予防,軽減のために化学療法開始前から歯科医師,歯科衛生士による専門的口腔ケアの介入の重要性が示唆された。
-
-
医事
-
-
免疫細胞療法を受けた癌患者満足度調査の解析とその課題
42巻4号(2015);View Description
Hide Description
Patient satisfaction with cancer immunotherapy, which is not covered by health insurance in Japan, was evaluated among 65 patients with advanced cancer who had received immunotherapy in our hospital for 2 years. Satisfaction measures were based on patients' expectations for medical care, cost, and staff services, and involved a questionnaire consisting of 25 items. Results of the questionnaire analysis showed that most patients, who expected much of antigen-specific vaccination such as dendriticc ells(DC)pulsed tumor-associated antigens, were dissatisfied with the high cost of private immunotherapy(i. e., not covered by medical insurance), and were unable to perceive the effectiveness of the treatment because there was no quantitative analysis of killer T cells induced by immunotherapy. Therefore, it is critically important for us to confirm the safety and efficiency of cancer immunotherapy, before introducing medical insurance for cancer patients in Japan. In addition, the quantitative measurement of killer T cells induced by DC peptide vaccines should be considered, to meet patients' expectations.
-
-
薬事
-
-
ペメトレキセド治療開始時の前投薬期間による安全性の検討
42巻4号(2015);View Description
Hide Description
背景・目的:ペメトレキセド(pemetrexed: PEM)治療時,重篤な副作用軽減のためにビタミンB12製剤と葉酸の前投薬を7 日以上前から行うことが推奨される。しかし,実臨床ではやむ得ない事情により前投薬が7 日未満となる場合も散見される。そのため,前投薬投与7 日未満での安全性を検討した。方法:前投薬投与期間から,A群7 日間以上,B群7日間未満とした。1 サイクル治療後の副作用(骨髄抑制,皮疹,下痢)の発現状況を検討した。結果:ペメトレキセド治療患者は70名であり,男女比は40/30 名,年齢の中央値は64.5(43〜86)歳であった。first-lineで使用した患者は33 名,A群/B 群は57/13名であった。Grade 3 以上の好中球減少は A 群 4/49 名(8.2%),B 群 2/13 名(15.4%)であった(p=0.60)。Grade3 以上の血小板減少,皮疹,下痢についても同様の検討をしたが有意差は認められなかった。結論:本研究では,前投薬投与7 日間未満でも安全にPEM治療を施行できる可能性が示唆された。しかし,交絡因子の調整や検出力不足もあり,さらなる検討が必要である。
-
-
症例
-
-
計画的にイマチニブを中止しインターフェロンで Major Molecular Response を維持しながら出産した慢性骨髄性白血病の1 例
42巻4号(2015);View Description
Hide Description
慢性骨髄性白血病(CML)の 38 歳女性患者は,イマチニブ投与 18 か月で transcription mediated amplification/hy-bridization protection assay(TMA/HPA)法による Major bcr-abl mRNA 定量(Amp-CML)において 5 コピー/0.5mgRNA未満のmajor molecular response(MMR)となった。妊娠を希望したため,MMRを10 か月維持した時点で計画的にイマチニブを中止した。妊娠後のCML 再燃傾向に対してインターフェロンアルファを投与し,それに伴う嘔気は夜間投与への変更で改善がみられた。その後,MMRを維持しながら正常分娩で健常児を出産した。今回,治療成績の向上および生命予後の改善に加え,患者の生活の質の確保ができたことで意義のある1 例と考え報告した。 -
セツキシマブ併用放射線療法が著効した中咽頭癌(T4aN2bM0)の1 例
42巻4号(2015);View Description
Hide Description
今回われわれは,高齢者で心疾患,腎機能障害の合併症がある中咽頭癌T4aN2bM0 症例にセツキシマブ併用放射線療法を行い,良好な結果を得た症例を経験したので報告する。症例は78 歳,男性。咽頭痛と右頸部の腫脹を主訴に当院へ紹介された。細胞診はClass Ⅴ(扁平上皮癌)であり,CT にて中咽頭癌(T4aN2bM0)と診断したが,既往歴として高血圧,慢性腎不全,糖尿病,脳梗塞,狭心症,前立腺癌を認め,手術や白金製剤による化学放射線療法は困難と判断し,セツキシマブ併用放射線療法を行った。経過中,Grade 3 の粘膜障害およびGrade 2 の皮膚炎を認めたが,他に明らかな有害事象は認めずに治療を完遂した。治療終了後の造影CT 検査では原発巣の腫瘍および頸部リンパ節腫脹は消失しており,completeresponseと判定した。経過観察期間はまだ浅く6か月であるが,再発,転移は認めていない。セツキシマブ併用放射線療法は,高齢で合併症をもつ進行中咽頭癌患者に対しても有効であると考えられた。 -
Pertuzumabを用いた術前化学療法によってpCR が得られたHER2 陽性乳癌の1 例
42巻4号(2015);View Description
Hide Description
症例は56 歳,女性。乳がん検診で右乳腺腫瘍を指摘され,当科紹介となった。右乳房C 領域に4 cm の不整な分葉状腫瘍を認め,腋窩リンパ節腫大も認めた。浸潤性乳管癌(乳頭腺管癌),Luminal-HER2タイプのT2N1M0,StageⅡB 乳癌と診断された。術前化学療法としてpertuzumab+trastuzumab+docetaxel を4 コース施行し,cCR となった。その後にFEC 療法4 コースを追加し,乳房部分切除およびセンチネルリンパ節生検を行った。切除標本には腫瘍の遺残を認めず,pCR と判断された。pertuzumab を用いた術前化学療法は,HER2 陽性乳癌に対する術前化学療法に有効な治療法と考えられた。 -
集学的治療が奏効し長期生存中の癌性胸膜炎・癌性心タンポナーデ合併乳癌の1 例
42巻4号(2015);View Description
Hide Description
症例は69 歳,女性。呼吸困難にて救急外来受診。左癌性胸膜炎合併左乳癌と診断,胸腔ドレナージ/胸膜癒着術を施行。EC 化学療法(約6 か月)と letrozoleの途中併用にて胸水消失,左乳癌/左頸部/左鎖骨上窩/左腋窩リンパ節腫瘤の著明な縮小を得たが,letrozole 単独治療中に癌性心タンポナーデと診断,心嚢ドレナージ/心嚢内薬剤注入で心嚢液貯留は消失した。weekly paclitaxel化学療法(約11 か月)後 cCR となりletrozole単独治療中に乳房再発が出現し,左乳房切除/腋窩郭清手術を施行。救急初診から3 年5か月を経過し,画像診断上転移病巣を認めず生存中である。 -
六次治療としてのNab-Paclitaxel+Carboplatin併用化学療法が奏効した肺腺癌の1 例
42巻4号(2015);View Description
Hide Description
症例は48 歳,女性。検診を契機に肺腺癌,adenocarcinoma,cT4N2M1a,stage Ⅳと診断されて以後,cisplatin+gemcitabine+bevacizumabとその維持療法としてのpemetrexed+bevacizumab,docetaxel,erlotinib,S-1,amrubicinによる治療を順次受けたが再発したため,六次治療のために入院した。PSが保たれていること,各種臓器障害がないことを確認した上で,carboplatin(AUC 6,day 1,q4wks)+nab-paclitaxel(100 mg/m2,day 1,8,15 q4wks)を開始したところ,重篤な副作用なく腫瘍は著明に縮小した。nab-paclitaxel+carboplatin 併用化学療法は,複数回の再発を繰り返す非扁平上皮非小細胞肺癌における選択肢の一つとなり得る可能性がある。 -
術前CDDP/5-FU 療法にて組織学的完全奏効が得られた食道癌の3 例
42巻4号(2015);View Description
Hide Description
術前CDDP/5-FU(CF)療法にて組織学的完全奏効(pathological complete response: pCR)が得られた食道癌の3 例を経験した。全例男性,胸部中部食道,臨床病期Ⅱの扁平上皮癌であった。3 例とも標準的CF 療法を2 コース施行後,根治的食道切除,3 領域リンパ節郭清を施行した。切除標本に癌細胞の遺残は認められず,pCR と判定された。現在3 例ともに無再発生存中である。 -
肝転移を有する胃原発絨毛癌に対し肝動注化学療法,Irinotecan+Cisplatin療法にて長期生存が得られた1 例
42巻4号(2015);View Description
Hide Description
患者は62 歳,男性。食欲不振精査のCT で胃前庭部壁肥厚,多発肝腫瘤,肺結節を認め,内視鏡検査で胃前庭部に易出血性2 型腫瘍を認めた。胃病変の出血制御目的にて幽門側胃切除を施行した。病理組織学的検査で胃原発絨毛癌と診断された。肝転移が予後規定因子と判断し肝動注化学療法にS-1 を併用した。術後5 か月,肝転移は著明なPR を認めたが,肺転移はPD であった。irinotecan+cisplatinに変更後も肝転移は制御されたが,悪液質のため術後1年5か月,永眠された。胃原発絨毛癌は非常にまれな疾患で,早期に肝転移を来し予後は極めて不良である。早急な肝転移制御が予後の延長につながると考えられ,肝動注化学療法を全身化学療法に併施することで長期生存が得られると考えられた。 -
横行結腸癌に多発性筋炎を合併し手術および抗癌剤治療により筋炎の改善を認めた1 例
42巻4号(2015);View Description
Hide Description
横行結腸癌と多発性筋炎を合併し,横行結腸癌に対する手術と抗癌剤治療により筋炎の改善が得られた症例を経験したため報告する。症例は72 歳,女性。筋力低下を主訴に前医を受診し,多発性筋炎と診断された。全身検索目的の大腸内視鏡検査で横行結腸に進行大腸癌を認め,CT 検査で遠隔転移は認めなかった。前医でg グロブリン大量療法を施行後,当科に紹介された。初診時は寝たきり状態で,上下肢とも挙上不能であった。腫瘍随伴性筋炎と考え,横行結腸癌に対する手術を先行した。右半結腸切除術を行い,pT4N1M0,stage Ⅲa であった。術後血清creatine phosphokinase(CPK)の低下を認め,追加治療としてステロイド大量療法を行ったが十分な改善がなく,ステロイド抵抗性筋炎と診断した。横行結腸癌に対する術後化学療法としてフルオロウラシル・レボホリナート併用療法を行ったところCPK の低下が得られ,筋力改善を認めたため筋炎に対しても有効であったと考えられた。皮膚筋炎には消化器癌の合併が多く,消化器癌に対する手術加療で筋炎が改善したという報告はこれまでもみられるが,消化器癌に対する抗癌剤治療で筋炎が改善したとする報告例は検索した範囲ではみられなかった。また,皮膚筋炎と比較して多発性筋炎は悪性腫瘍の合併報告例が少なく,大腸癌との合併は本邦でこれまで5 例しか報告がない。貴重な症例と考え,文献考察を交えて報告する。 -
S状結腸癌と尿管癌の同時性重複癌の1 例
42巻4号(2015);View Description
Hide Description
症例は78 歳,男性。C 型肝炎,高血圧症で近医通院中であった。C 型肝炎のfollow目的で施行された腹部エコーにて右水腎症の指摘あり,精査加療目的に2011年11 月当院を紹介された。造影CT 検査にてS 状結腸中部に壁肥厚と内腔の狭窄化があり,右尿管はL4/5 レベルで壁肥厚・濃染を認め,その頭側では尿管・腎盂・腎杯が著明に拡張していた。大腸内視鏡(CF)検査ではS 状結腸に2 型病変を認め,生検で高分化型腺癌と診断された。以上のことからS 状結腸癌(cT4aN0M0,cStageⅡ)・画像所見より尿管癌(cT2N0M0,cStageⅡ)と診断し,S 状結腸切除術(D3 郭清術)+右腎尿管全摘術(大静脈前・後・外側,大動静脈間リンパ節郭清)を施行した。術後経過は特に問題なく,術後2 年経過しているが,S 状結腸癌・尿管癌のいずれも再発兆候を認めていない。 -
経口摂取不能の癌患者における疼痛に対しフェンタニルクエン酸塩口腔粘膜吸収製剤にて痛みのコントロールを行った1 例
42巻4号(2015);View Description
Hide Description
患者は60 歳,男性。若年時に服毒による自殺を図り,食道狭窄を生じた。頻回の食道ブジーを試みるも,食餌の通過困難となり食道バイパス術を施行。しかし,術後縫合不全による吻合部狭窄を来し,経口不能となった。同時に,腐食性食道炎の部位に食道癌の発症を認めた。食道癌の突出痛に対しては,オキシコドン塩酸塩によるレスキューが必要であった。フェンタニルクエン酸塩口腔粘膜吸収製剤に変更後,突出痛の消失が得られた。経口摂取困難な癌患者の疼痛コントロールにフェンタニルクエン酸塩口腔粘膜吸収製剤は有効と思われた。
-