癌と化学療法

Volume 42, Issue 8, 2015
Volumes & issues:
-
総説
-
-
医学系研究の倫理指針改訂が示す介入研究の在り方
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
臨床研究の主たる目的は,疾病の予防法,診断法および治療法の改善であり,そのために産学連携が必須となる。特に,市販後医薬品を用いた介入研究は根拠に基づく医療の原動力になることから,販売促進の絡みから企業の関心も高く,それらの実施から結果公表の過程で企業が深くかかわり社会問題化しやすい。臨床研究と疫学とを統合させた新倫理指針が2014 年12 月に公表された。論文公表を前提とした研究実施計画概要の公的データベースへの登録義務化,研究の質と信頼性を確保するために,研究者と所属研究機関の長の責任所在の明確化と管理体制の強化充実が大きな要といえる。信頼性の高い介入研究を行うために産学連携にかかる研究者の利益相反(COI)状態をいかに管理するか,その在り方について私見を交えて最近の動向を概説したい。
-
-
特集
-
- 子どもからのがん予防
-
小学生のがん教育を考える
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
がん予防は日本のような超高齢化国にとって,健康寿命の延伸と医療費の削減のためにますます重要な社会的課題となっている。がんは禁煙と定期検診を含む合理的な生活様式と感染対策によりかなり予防できるが,他方ひとたび身に付いた成人の生活様式を変えることは相当困難なことが示されている。それゆえ,ナイーブな小学生にがん予防のためのよい生活姿勢を植えつけることが,最も効果的でありかつ社会的に必要であると考えられる。しかしながら,多くが教育の専門家からなる文部科学省の「がんの教育に関する検討委員会」は最近,がん教育の目標として,① がんに関する知識を与えて予防を理解させ,② 的確な思考・判断に基づいて自らの健康管理ができるようにし,③ がんをとおしていのちのかけがえのなさを知り,がん患者や家族に関心を深めるなどをあげ,(がんはたいへん幅が広くまた深い内容をもつので)総合的ながん教育は中学生から開始するのがよい,という提言を行った。ここにあげられた目標はたいへん立派な内容であるが,立派な目標を小学生にも適用し,Éだから教育は中学生からËとするのは具合が悪いのではなかろうか。小学校には小学校のがん教育の目的があってよい。筆者はÉ小学校のがん教育の主眼はがん予防の姿勢を植えつけるËことを提言している。がんはÉだんだん病(step by step disease)Ëであることを明確に理解させることが肝要である。高邁な目的は,もちろん小学校の姿勢教育のなかでもある程度達成されると期待されるが,それを高く掲げることが,かえってÉ小学校のがん教育Ëをたじろがせ,また予防の姿勢を植えつけるという重要な目的に迫る気合いをそぐことがあってはならないと思っている。 -
なぜ子どもの時からがん予防が必要か?―疫学的視点―
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
がん罹患率は一般的に10〜40歳台では極めて低く,このことが小学生からのがん予防教育・がん予防活動に対する社会の関心の低さにつながっていると思われる。しかし,疫学的,また認知行動科学的視点に立つと,小学生の時に適切ながん予防教育を行うことが最も重要かつ効果的である。本稿では,喫煙,肥満,やせに関するがんリスクの関点と,ヒトパピローマウイルスワクチンの受療行動を例に,その重要性を述べる。小学生に対するがん予防教育は,その効果を認知や保健行動をアウトカムとしてモニタリング,検証することをあらかじめ立案しておき,その実行結果を教育方法や教材の改編などにつなげていくことを提案したい。また,小学生のがん予防教育ががん罹患率の軽減となって統計上に現れるまでには最低でも50 年はかかる。その現実を踏まえ,長期的展望に立ってこれを継続するという姿勢を関係者の間で共有したい。 -
子どもからのがん教育の必要性
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
子どもからのがん教育を中・高生はもちろんのこと,小学生も含めて展開する必要がある。その場合,知識の注入ではなく,生活習慣や人の生命の有限性などを一種のしつけ,教養として子どもに身につけてもらい,それを親にも働きかける動きが大切と思われる。 -
子どもからのがん教育―学会としてなすべきこと,できること―
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
がん多死社会を迎える日本人にとって「あらかじめ正確にがんを知り,可能な限りこれを回避し,いざという場合に備えること」は必須の要素である。こうした認識の下,本格的に学校でのがん教育の導入についての検討が始まった。Ôがんの教育とその普及×は,その重要性から第2 期がん対策推進基本計画の個別目標の一つに取り上げられ,2016 年度には文部科学省が学習指導要領改訂の必要性についての結論を明らかにする予定となっている。しかしながら,具体的な実施にはなお多くの課題があり,一刻も早くこれらに対応する必要がある。がんを専門とする学会などが今なすべきこと,できることについて考え,これをまとめた。 -
日本のがん教育の現況と今後
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
がんに関する正しい知識の普及啓発を推進するため,第2 期がん対策推進基本計画(2012 年6 月)においてがん教育が新たな分野として追加された。それに基づいて文部科学省が平成26 年度よりがんの教育総合支援事業を開始し,「がん教育」の在り方に関する検討会が設置され,モデル事業が開始された。平成26 年度末に取りまとめられた検討会報告書に基づいて平成27,28 年度にモデル事業が実施され,その結果を踏まえて平成29 年度以降に全国展開することが計画されている。 -
アジアにおけるがん国際連携の視点からみた子どものがん教育
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
日本がアジアに向けてがん予防戦略をどのような形で提言していくことが望ましいのかを検討し,がん教育をとおしてかかわっていくことは今後のがん研究連携の推進だけでなく,少子高齢化という社会構造の転換点においてアジアのがん対策に大きく貢献できることだと考える。がんは予防,早期発見,早期治療,治療の高度化,予後のフォロー,再発防止という各場面において日常生活と臨床が一つの線上にあり,これらを支える医療資源をどの段階にどのように配分するかが人々の健康や生活の質に影響する。予防,早期発見が進むことによって医療資源の消費度合いが異なり,一方でこれらの分野は自助努力,個人の意識にゆだねている傾向があるが,人と人とのつながり,共助・公助の枠組みでとらえ直す必要があるのではないかと考えている。次世代を担う子どもたちが,地縁・血縁という継続的な人間関係のなかで形成される学びを得ることが望ましい。がん教育が個人と社会にどのような意味をなし,人間の暮らしの営み,生き方をどう変えるのか,アジアの社会構造の変容を見据えた大きな視点に立ってとらえていく必要がある。
-
Current Organ Topics:Thorax/Lung and Mediastinum, Pleura: Cancer 肺癌 分子標的薬剤を用いた非小細胞肺癌の成績はどの程度向上したか,また今後の展望は
-
-
-
Ⅰ.現時点でのEGFR-TKI の標準治療は何と思われるか,またEGFR-TKI の登場によりどれだけ非小細胞肺癌の成績は向上したか
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
-
-
-
-
-
原著
-
-
TACE 不応進行肝細胞癌症例に対するソラフェニブ導入の有効性について―リザーバー持続肝動注化学療法との比較―
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
当院において肝動脈化学塞栓術(TACE)不応と判断し,ソラフェニブまたはリザーバー持続肝動注化学療法(HAIC)が選択された進行肝細胞癌(ad-HCC)症例を比較し,TACE 不応後のソラフェニブ導入の有効性について検討した。対象はTACE 不応と判断され,ソラフェニブ単独またはソラフェニブとHAIC が併用されたソラフェニブ群17 例,HAIC 単独群26 例で,各群における背景因子,累積生存率,予後規定因子について統計学的に比較検討した。背景因子については両群間に有意差は認めず,生存期間はソラフェニブ群において有意に延長を認めた(p=0.033)。予後規定因子として全43 例においてソラフェニブ投与例,ソラフェニブ群では長期投与例が選択された。ソラフェニブの導入により,TACE 不応ad-HCCの予後延長が期待できる可能性が示唆された。 -
胃癌術後S-1による補助化学療法が筋肉量に及ぼす影響
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
目的:胃癌切除後のS-1 補助化学療法が患者筋肉量に及ぼす影響を調べた。対象:当院で2010 年4 月〜2011 年7 月に根治切除が行われた胃癌患者48 例,うち男性31 例,女性17 例,幽門側胃切除37 例,胃全摘11 例を対象とした。S-1 治療は16 例に術後1 年間行われ(S-1群),行われなかった32 例を対照とした(NT 群)。方法: CT 画像から第4 腰椎レベルの大腰筋断面積を術前,術後6 か月,12 か月,24 か月において計測した。筋肉量は術前値に対する比を求めて統計学的検定を行った。結果: 大腰筋面積は術後12 か月でS-1群が0.86±0.11 とNT 群の0.96±0.08 より有意に減少していたが,術後2年目では両群とも0.93±0.10,0.93±0.11とその差は消失していた。幽門側胃切除例では,術後1 年でS-1 群は0.90±0.05とNT 群の0.96±0.09より有意に減少していた。胃全摘例では,S-1 群は術後1 年で0.80±0.15 に大きく低下していたがNT群の0.93±0.03 と有意差はなかった。結論: S-1 による胃癌術後補助化学療法は患者の筋肉量の減少をもたらしたが,化学療法終了後12 か月で回復していた。 -
化学療法中のがん患者の食欲・栄養状態の変化と酸化ストレス反応
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
化学療法中がん患者の体重減少の原因は低栄養や代謝異常があり,治療や予防方法に関する研究が進んでいる。今回われわれは,化学療法中のがん患者の体重や食欲変化が食事摂取状況の影響を受けるか調査し,食事指導方法について検討した。加えて,食欲と酸化ストレスマーカーの8-hydroxy-2′-deoxyguanosine(8-OHdG)との関連性を調べ,8-OHdGが食欲評価の指標となり得るか検討した。結果,エネルギー摂取量不足の患者は体重減少率が大きく,化学療法中に食欲が低下した患者は,化学療法開始前からすでにエネルギー摂取量が低かった。8-OHdG値は,食欲のない患者のほうが高く上昇した。したがって,早期から栄養介入を実施することが重要であり,8-OHdG値は食欲評価の指標になり得ることが示唆された。
-
-
医事
-
-
アファチニブ導入期28日間におけるアファチニブ・パス運用の後方視的検討―日本版Collaborative Drug Therapy Management(J-CDTM)の実践―
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
アファチニブは新規に承認された第二世代epidermal growth factor receptor-tyrosine kinase inhibitor(EGFR-TKI)である。アファチニブは,EGFR-TKI としては初めて化学療法に対し有意に全生存期間を延長するという優れた抗腫瘍効果を示した一方で,Grade 3〜4下痢,皮疹,爪周囲炎などの発現頻度が高いことが報告された。これを受けて当センターの認定看護師・医師・がん専門薬剤師の多職種協働の下,アファチニブの導入期28 日間で治療中止の原因となり得る下痢や皮疹の重症度を軽減することを主眼においたアファチニブ・パス(本パス)を作成した。2014 年5 月〜10月にアファチニブで加療したEGFR 変異を有する非小細胞肺癌14 症例に本パスを適用した。その結果,14 例中1 例(7.1%)だけがGrade 3 の下痢を発症し,他のGrade 3〜4 の副作用は認めなかった。本パスはアファチニブ導入期28 日間に起こる下痢や皮疹の重症度を低下させるのに有効であった。看護師,医師,薬剤師が協働で作成した本パスを運用する試みは,日本版collaborativedrug therapy management(J-CDTM)の実践といえる。
-
-
薬事
-
-
非小細胞肺癌術後補助療法におけるテガフール・ウラシル配合剤(ユーエフティ)服薬状況に関する特定使用成績調査結果
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
非小細胞肺癌完全切除例におけるテガフール・ウラシル配合剤(ユーエフティ)術後補助療法の服薬コンプライアンスについて,服薬日誌を用いて調査することを目的に特定使用成績調査を実施した。2008 年4 月〜2010 年3 月に2,527 例が登録された。評価不能症例116 例を除いた2,411 例を投与継続性評価症例とし,さらに服薬日誌未記載の600 例を除いた1,811 例を服薬コンプライアンス評価症例とした。投与継続性評価症例2,411 例から再発中止症例318 例を除いた2,093 例における2 年投与継続率は59.1%であり,日本肺癌術後補助化学療法研究会における結果と同様の投与継続性が確認された。治療中止理由とされた主な副作用は消化器障害と肝障害であった。服薬率75%以上の症例が95.3%(1,726/1,811 例)を占め,服薬日誌記載症例の大部分において服薬コンプライアンスが良好であることが認められた。
-
-
症例
-
-
乳癌の術前毎週パクリタキセル投与中に光線過敏症が疑われた1 例
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
パクリタキセル(PTX)による光線過敏症が疑われた症例を経験したので報告する。症例は72 歳,女性。右乳癌(T2N1M0,StageⅡB)にて術前化学療法として毎週PTX(80 mg/m2)が開始された。5 コース目の投与後より肌露出部位に瘙痒感を伴う紅斑が出現した。6 コース目の投与時も症状は持続しており,ステロイド外用剤ならびに抗ヒスタミン剤を開始した。日光曝露を避け,日焼け止めを使用することで症状は軽減し,PTXの投与を12 コース実施可能であった。PTX投与においては光線過敏症の発現を認識する必要がある。 -
Gemcitabine+Paclitaxel療法が奏効した乳癌術後胃結腸転移の1 例
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
症例は55 歳,女性。右乳癌手術7 年後に腹部膨満が出現し外来受診した。腹部CT 検査で胃腫瘤および上行結腸を狭窄する腫瘤を認め,乳癌術後胃結腸転移による腸閉塞と診断した。イレウス管留置による症状軽快の後,gemcitabine+paclitaxel(GT)療法を開始した。治療により腸閉塞症状は改善し,退院後外来化学療法を継続した。8 か月後,腸閉塞症状を再発したため幽門側胃切除および右半結腸切除術を施行した。乳癌術後消化管転移による腸閉塞症状に対し9 か月間の外来治療が可能であったことより,GT療法は乳癌術後胃結腸転移において有用な治療法と考えられる。 -
診断時に広汎遠隔転移を伴った食道原発悪性黒色腫の1 例
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
症例は65 歳,女性。咽頭つかえ感を主訴に受診。上部消化管内視鏡検査で食道のほぼ全長にわたり,全周性に黒褐色調の不整な隆起性病変がみられた。組織生検とFDG-PET/CT を含む全身精査の結果,胸腔内リンパ節や左上腕骨転移を有する食道原発悪性黒色腫(進行度cT3N3M1,StageⅣb)と診断された。dacarbazine(DTIC: 1,000 mg/m2・点滴静注,3週ごと・全7回)単剤療法を行ったが,経過中に胃・十二指腸・小腸への転移がみられ,最終的には脳転移を来し,診断から8 か月で死亡した。本症例をとおして,悪性黒色腫の進行例においては DTIC 単剤の効果は限定的であること,FDG-PET/CT が病変の進展度診断に有用であることが示唆された。 -
イリノテカン+シスプラチン併用療法が著効した食道神経内分泌癌の1 例
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
症例は72 歳,男性。2013 年9 月,嗄声と喉の閉塞感を主訴に当院を受診した。精査CT で胸部食道に壁肥厚と左主気管支,大動脈の圧排があり,右鎖骨上リンパ節,右反回神経リンパ節,胃噴門部リンパ節に腫大が認められた。上部消化管内視鏡検査では,胸部食道に頂部に縦走潰瘍を伴う粘膜下腫瘍様の隆起性病変が認められた。病理組織検査では,N/C 比の高い腫瘍細胞の増殖,免疫組織化学染色にてCD56,NSE 陽性,Ki-67 の強陽性所見(>80%)が認められた。以上より,食道神経内分泌癌(NEC),cT4N3M0,Stage Ⅳa と診断し,小細胞肺癌治療に準じてイリノテカン+シスプラチン併用療法(IP療法)を施行した。3 コース終了後,原発巣,リンパ節ともに完全寛解に近い縮小が得られた。食道NEC は,比較的まれな食道悪性腫瘍で確立された標準治療はない。今回われわれは,IP 療法が著効した食道NEC の1 例を経験したので文献的考察を加え報告する。 -
Trastuzumab併用化学療法により切除可能となったStageⅣ胃癌の1 例
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
症例は70 歳,男性。近医で貧血を指摘され当院紹介となった。精査の結果,腹部大動脈周囲リンパ節転移を伴うStageⅣ胃癌で治癒切除不能と診断した。生検にてHER2 陽性であったため,trastuzumab+capecitabine+cisplatin療法を行ったところ,腫大リンパ節に著明な縮小がみられた。転移巣が制御されたことに加え,原発巣の増大傾向が認められたため手術適応と判断し,胃全摘術を施行した。切除リンパ節には病理学的に癌細胞が認められず,治癒切除がなされたと判断した。現時点においてわが国では,HER2 陽性の切除不能進行・再発胃癌に対する標準治療としてtrastuzumab+capecitabine+cisplatin療法が推奨されているが,本症例では本療法の術前化学療法としての有用性が示唆された。 -
術前化学療法中Trousseau症候群を発症したStageⅣ胃癌の1 例
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
症例は60 歳台,男性。2012年10 月,腹水貯留の精査を目的に入院し,胃癌およびそれによる癌性腹膜炎と診断された。術前化学療法としてS-1+cisplatin(CDDP)療法を開始したが,化学療法中に脳梗塞を発症しTrousseau症候群による凝固機能異常が原因と考えた。化学療法5 コース終了後に胃全摘術を施行し,その後はレジメンをS-1+docetaxel(DTX),さらにnab-paclitaxel(PTX)に変更し化学療法を継続した。内服抗凝固療法にて脳梗塞の再発は認めなかったが,原疾患の悪化に伴い術後1 年5か月で他界した。癌患者にみられる血液凝固能異常はTrousseau症候群として知られており,脳梗塞の合併頻度が高く予後不良である。担癌患者における血栓症においては,本疾患も念頭に置いて加療すべきであると考える。 -
急性リンパ性白血病に発症した中枢神経原発移植後リンパ増殖性疾患
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
症例は27 歳,女性。ALLに対してHLA一座不一致非血縁者間同種骨髄移植を施行した。移植後228 日目に嘔吐,霧視を訴え,頭部MRIで頭蓋内腫瘍を認めた。生検よりN/C 比の高い異型単核細胞を多数認めALLの再発が疑われた。全脳照射を開始したが,脳浮腫の進行により移植後245 日目に死亡した。組織診断でdiffuse large B-cell lymphomaの所見であり,最終診断はPCNS-PTLDとした。PTLD は移植後の免疫抑制状態で発症する疾患である。移植臓器を含む各種臓器に発生し得るが,中枢神経原発は極めてまれである。造血幹細胞移植後に合併する重要な疾患であり,貴重な症例と考えられたため報告する。 -
Lenalidomide維持療法中に膵神経内分泌腫瘍を合併し術後Lenalidomideを再投与した新規診断多発性骨髄腫
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
症例は75 歳,女性。2010年12 月に症候性IgG-l型多発性骨髄腫(予後良好群)の診断となり,bortezomib(BOR,Velcade®)+dexamethasone(DEX)(VD)による寛解導入とBOR+lenalidomide(LEN,Revlimid®)+DEX(VRD)による地固め療法を行い,厳格な完全奏効(stringent complete response: sCR)が得られた。その後,Revlimid®+DEX(Rd)によるLEN 維持療法を行った。2013年4 月に膵神経内分泌腫瘍を認めLEN を休薬し,9 月に膵尾部切除を行った。LEN休薬後に骨髄腫が増悪したため同意の下,LEN を再開したが治療抵抗性となった。本症例の経過から,sCRが獲得されてもLENを継続する必要のある患者群が存在することが示唆された。 -
寛解後のAzacitidine療法により同種造血細胞移植が可能となった血小板増加合併t(3;3)(q21;q26.2)転座急性骨髄性白血病の1 例
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
症例は39 歳,男性。全身ã怠感と食思不振のため受診した。貧血と著明な血小板増多を認め,血漿transforminggrowth factor(TGF)-b は著増し,血清thrombopoietin(TPO)は低下していた。末ö血芽球が増加し,t(3;3)(q21;q26.2)を伴う急性骨髄性白血病と診断した。その後,idarubicin/cytarabineによる寛解導入を行い,完全寛解が得られた。血小板数は正常範囲となり,TGF-bは低下しTPO は増加した。azacitidineによる寛解後療法により,同種造血細胞移植が可能となった。
-
-
短報
-
-
LHRH アゴニストによる妊孕性維持は推奨されるか?POEM Studyの発表を受けて
42巻8号(2015);View Description
Hide Description
The POEMS reportedan effect of goserelin for fertility preservation. The Clinical Practice Guideline for Breast Cancer by The Japanese Breast Cancer Society indicates that the use of the LHRH agonist(LHRHa)for preventing chemotherapy-induced early menopause is a grade C-1 recommendation, and its use for fertility preservation is a grade C-2 recommendation. Results from previous studies on the effects of LHRHa for fertility preservation have varied owing to differences in chemotherapy regimens, definitions of ovarian failure, and dosages of tamoxifen. In the POEMS, the primary endpoint of ovarian failure at 2 years was significantly lower, and the secondary endpoint of pregnancy outcomes was better in the combination group; however, precise interpretation is difficult because many cases were excluded. Currently, it is not necessary to revise The Clinical Practice Guideline; however, desirable results from future studies may allow the recommendation of a specific dosage of LHRHa for fertility preservation.
-