Volume 42,
Issue 10,
2015
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総説
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癌と化学療法 42巻10号, 1133-1136 (2015);
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EB ウイルス(EBV)は広くヒトに感染している二本鎖DNAウイルスで,バーキットリンパ腫やホジキンリンパ腫,上咽頭癌,胃癌など,EBV 関連癌と呼ばれる悪性腫瘍との関連が知られている。これらの癌においてEBV は潜伏感染を維持し,発現しているウイルス遺伝子の機能は発癌に寄与すると考えられている。本稿では,発癌にかかわるとされるEBV の膜蛋白質latent membrane protein(LMP)およびnon-coding RNA(ncRNA)であるEBV-encoded small RNA(EBER)の作用を中心に,EBV による発癌機構について概説する。LMP2A はB 細胞抗原レセプターシグナルを模倣し,同じくCD40 シグナルを模倣するLMP1 と協調してリンパ腫の発生に寄与する一方,上皮においてもLMP2A による細胞内シグナル伝達の惹起が発癌に寄与することが明らかになっている。EBER は部分的二本鎖RNA(dsRNA)構造をもつと考えられ,宿主のdsRNA 認識分子であるRIG-I およびTLR3 からのシグナル伝達を惹起するが,これらの自然免疫シグナルの活性化は,癌も含めたEBV による疾患の病態形成に寄与することが明らかにされている。
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特集
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化学放射線療法の現況と展望
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癌と化学療法 42巻10号, 1137-1140 (2015);
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化学放射線療法は多くの癌腫で標準的な治療選択肢として確立している。併用のタイミングは同時併用で効果が高いことが確認されているが,治療効果増強の代償として患者に急性および晩期の有害事象増強を強いている側面があることは認識する必要がある。近年,放射線治療の技術的進歩は目覚ましく,強度変調放射線治療などの高精度技術が広く導入されている。また,化学療法薬剤についても新規抗癌剤や分子標的薬が開発され,その治療効果も向上している。そのため,両者の至適な組み合わせでさらなる治療成績向上や有害事象低減が可能になる日も近いと予想される。
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癌と化学療法 42巻10号, 1141-1147 (2015);
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喉頭全摘出術が必要な頭頸部癌症例において,生存率と機能的喉頭温存率の向上を目的とした治療方法を開発した。原発巣に対しては,DOC 60 mg/m / / / 2,CDDP 60 mg/m2の2 剤をSeldinger法により動注し,5-FU 750 mg/m2day を120時間点滴持続静注する導入化学療法と同時放射線化学療法を施行し,原発巣の制御と機能的喉頭温存を図った。各種癌における5 年生存率,5年機能的喉頭温存率は,それぞれ喉頭癌(64 例)で70.4%,71.0%,中咽頭癌(51 例)で72.8%,63.4%,下咽頭癌(57例)では68.5%,65.2%であった。また,所属リンパ節制御には徹底した頸部郭清術で対応した。その結果,良好な生存率と機能的喉頭温存率を得られた。
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癌と化学療法 42巻10号, 1148-1151 (2015);
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化学放射線療法は,食道癌治療の二本柱として非常に重要な地位を占めている。臨床病期Ⅰ(T1N0M0)食道癌では食道切除が標準治療となっているが,化学放射線療法の有効性が報告され,現在,食道切除群と根治的化学放射線療法群を比較した第Ⅲ相試験が行われている。臨床病期Ⅱ/Ⅲ(T4 を除く)食道癌では術前化学療法+手術治療が標準治療となっており,化学放射線療法は食道温存希望症例,手術拒否例,耐術不能例においての標準治療とされている。臨床病期Ⅳ(T4/M1LYM)では手術治療より化学放射線療法を選択する場合が多いと考えられる。化学放射線療法による根治性が高まる一方で,心肺毒性などの遅発性有害事象や遺残・再発例に対する救済治療の安全性に関する問題が認識されている。放射線照射技術の治療開発として強度変調放射線治療(intensity-modulated radiation therapy: IMRT)などの新しい照射技術があり,ターゲット・ボリュームを減らさずにリスク臓器を避けることにより治療成績の向上が期待される。救済治療,IMRT などの新たな放射線治療機器の導入,新規薬剤を含めて新たな治療の開発が進んでおり,その発展が期待される。
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癌と化学療法 42巻10号, 1152-1155 (2015);
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切除不能膵癌に対する治療は,日本でもFOLFIRINOX 療法やgemcitabine+nab-paclitaxel 療法が選択可能となった。これらの治療法の有効性は転移例のみで証明されているが,局所進行膵癌に対しても期待されている。一方で,局所進行膵癌の治療は化学放射線療法も選択肢の一つであり,日本ではS-1 併用,欧米ではcapecitabine併用の化学放射線療法が行われてきている。さらに,最近では導入化学療法の概念が生まれ開発が進んでいる。JCOG1106 試験において,gemcitabineによる導入化学療法後のS-1 併用化学放射線療法の有効性が確認され,日本での化学放射線療法のbest regimen が確立されつつある。しかし,依然として化学療法がよいのか化学放射線療法がよいのか,一定の見解は得られていない。本稿では局所進行膵癌に対する化学放射線療法に関して解説する。
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癌と化学療法 42巻10号, 1156-1161 (2015);
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局所進行子宮頸癌に対し,同時化学放射線療法(CCRT)を強く推奨する米国NCIのclinical alertがだされてから15年以上が経過した。その後,CCRT の治療成績向上を目的とした臨床試験が数多く実施されてきた。化学療法レジメンの検討とともに,画像誘導小線源治療(IGBT)や強度変調放射線治療(IMRT)などを用いた放射線治療の高精度化と最適化が重要な課題である。
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緊急座談会
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癌と化学療法 42巻10号, 1179-1182 (2015);
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原著
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癌と化学療法 42巻10号, 1185-1189 (2015);
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切除不能進行・再発胆道癌に対する標準化学療法は,英国のABC-02試験と日本のBT22 試験の良好な結果から,ゲムシタビン+シスプラチン(GC 療法)とされるが,BT22 試験のGC 群は42 例にすぎず,さらに症例を重ねて有効性と安全性を検討する必要があると考えられた。そこで,福岡・北九州地区においてGC 療法の安全性・有効性を多施設前向き観察研究にて確認した。登録症例は再発例2 例を含む37 例。年齢の中央値は67.5(43〜84)歳,肝内胆管癌12 例,肝外胆管癌13例,胆嚢癌12 例であった。生存期間中央値(median survival time: MST)は14.9 か月,1 年生存率は54.5%であり,無増悪生存期間(progression free survival: PFS)の中央値は7.7 か月であった。治療関連死亡は認めず,Grade 3以上の有害事象は白血球減少13例(35.1%),好中球減少12 例(32.4%)など血液毒性が主であった。MST,1 年生存率,PFS,有害事象発生状況などはBT22 試験と同様であり,本多施設前向き観察研究により,切除不能進行・再発胆道癌に対するGC 療法の有効性と安全性が確認された。
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癌と化学療法 42巻10号, 1191-1195 (2015);
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口腔癌に対してdocetaxel,nedaplatin(5 日間分割投与),5-fluorouracil の3 剤併用化学療法を実施した患者を対象に,aprepitantをコース初日から投与した場合とコース3 日目から投与した場合の制吐効果を比較し,適切なaprepitantの投与タイミングを明らかにすることを目的とした。1.嘔吐は両群ともほとんどみられず,比較できなかった。2.最大悪心grade は初日群が平均0.78±0.22 であったのに対し,3 日目群では平均2.33±0.71 と有意(p=0.002,U-test)に高かった。3.経日的な悪心gradeの推移下面積(AUC)も初日群が平均3.11±3.59 であったのに対し,3 日目群では平均13.44±9.58と有意(p=0.019,U-test)に高かった。4.3 日目群ではgrade 2 以上の悪心が8/9 例(88.9%)にみられたのに対し,初日群では1/9(11.1%)と有意(p<0.001,c2 test)に低かった。aprepitantは初日から投与することで悪心の発現をよく抑えることが確認された。
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医事
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癌と化学療法 42巻10号, 1197-1201 (2015);
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当院は2012年4 月に大阪府がん診療拠点病院に指定されたことを機に,5 大がんの府内統一型のがん地域連携パスを導入した。PDCAサイクルの概念に基づき,パスの問題点(認知不足,煩雑,患者の不安,医療者の理解不足)を抽出し,具体的に,①広報活動,②診療過程が可視化できる計画表を作成,③連携パス事務担当から患者に説明,④オリジナル診療情報提供書を作成し簡素化,⑤ 主治医の地域連携パス調査票の提出などを計画し実行した。これらを継続的に改善することで,がん地域連携パスの運用を促進することができた。
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症例
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癌と化学療法 42巻10号, 1203-1205 (2015);
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高齢の閉経後乳癌患者に対しtamoxifen を用いたホルモン療法施行中に血栓性静脈炎を生じた症例を経験した。症例は95 歳,女性。右の乳房腫瘤を自覚し,当科受診となった。ADLは80 点でおおむね自立。右乳房DE 領域20 mm大の乳癌であった。手術侵襲を考慮し,ホルモン療法を先行した。既往より骨粗鬆症が疑われたため,アロマターゼ阻害剤(AI)を用いずtamoxifenを使用した。治療開始後約6 か月の時点で左下腿に著明な腫脹を認め,CT,超音波検査などの画像所見より左大腿の血栓性静脈炎と診断。tamoxifen を中止し,ワーファリン(R)による血栓溶解療法を行い軽快した。tamoxifen による血栓性静脈炎の発症はまれであるが,高齢患者では血栓症のリスクが高い可能性があり,このような症例では注意が必要と考えた。
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癌と化学療法 42巻10号, 1207-1209 (2015);
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症例は66 歳,男性。2 型進行胃癌と診断され,胃全摘術が施行された。病理組織学的検査の結果,T3N2H0P0CY0M0,stage ⅢB と診断され,術後12 か月間S-1 による補助化学療法を行った。術後13 か月目のCT 検査で大動脈周囲リンパ節再発を認めた。paclitaxel,5-fluorouracil,cisplatinによる化学療法を開始した。3 コース後のCT 検査で化学療法の効果はprogressive diseaseであった。再発巣が限局していたため,放射線療法を計56 Gy施行した。再発リンパ節は著明に縮小し無治療で経過観察中であるが,放射線療法後70 か月経過した現在,無増悪生存中である。本症例のように限局したリンパ節再発に対して,放射線療法は治療法の一つとなり得る。
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癌と化学療法 42巻10号, 1211-1214 (2015);
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レゴラフェニブ投与にて腫瘍縮小を認め,長期生存しているKRAS変異型大腸癌の1 例を経験したので報告する。症例は65歳,女性。盲腸癌術後,右腹壁に再発を生じ切除施行。術後mFOLFOX6を12 コース施行した。1 年7 か月後に両側肺転移を生じ切除施行。術後bevacizumab+FOLFIRI を開始した。1 年後に残肺再発を生じたがKRAS 遺伝子変異型であり,抗EGFR 抗体薬が使用できず,その後再発巣の増悪を認めレゴラフェニブ投与を開始したところ,転移巣の縮小を認めた。
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癌と化学療法 42巻10号, 1215-1218 (2015);
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背景: 大腸癌治療では5-FU 持続静注用インフューザーポンプ(以下,ポンプ)が汎用されるが,5-FU 血中濃度からの検討は少ない。目的: 2 種類のポンプ間で5-FU 血中濃度に差を認めた1 症例を報告する。方法: 61 歳,男性。S 状結腸癌術後肝転移に対し FOLFIRI+bevacizumab を開始。転移巣が増大し 5-FU を 3,000 mg/m2へ増量した際,投与時間延長を認めた。ポンプをジャクソン型(以下,J型)からボトル型(以下,B 型)へ変更し,5-FU 血中濃度測定を行った。結果: J 型の投与時間は約53時間,血中濃度は投与開始後2・16・19 時間で282.5・507・470.3 ng/mL であった。同一投与量でのB型の投与時間は約49時間となり,血中濃度は投与開始後2・16・19 時間で548.5・964.5・915.0 ng/mL であったが,Grade 3の口内炎出現のため 5-FU を 2,700 mg/m / 2へ減量したところ,16 時間値は593.5 ng/mL であった。結語:投与量が同一であっても,ポンプにより投与時間ならびに5-FU 血中濃度は異なる。特に増量時は,5-FU 血中濃度も約2 倍の差を認めた。このようにポンプの機能特性は5-FU 血中濃度に影響を与えるため,血中濃度を測定して投与量調節することは有用である。その結果,副作用の軽減,奏効率の上昇が期待できる。
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医・歯事
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癌と化学療法 42巻10号, 1219-1221 (2015);
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がん化学療法における口腔内併発症によりがん患者の栄養状態が悪化し,生活の質を低下させることがある。これらの口腔内併発症を減らすには予防的な介入が効果的である。当院には院内歯科や口腔外科がないため,地区歯科医師会との連携を試みた。まず,地区歯科医師会会員を対象に質問紙を用いた調査を行い,86%の歯科医師が当院との周術期口腔機能管理連携に関心をもっていることがわかった。さらに歯科処置の内容,バリアフリー・階段の有無など施設状況に関する情報を歯科医院から提供いただいた。地区歯科医師会と協議して,がん患者の口腔管理を改善することを目的として医科歯科連携票を作成した。また,がん医療に関する知識のアップデートを図るとともに,医科歯科連携を円滑にするため三段階の研修を企画・開催した。2015 年3 月現在,登録歯科施設数は計129 施設となり,すでに81 件の周術期医科歯科連携が実施された。
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特別寄稿
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第36回癌免疫外科研究会
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癌と化学療法 42巻10号, 1225-1227 (2015);
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aromatase inhibitor(AI)剤耐性の転移・再発乳癌症例に対してfulvestrant(500 mg/28 day)を使用した症例についてindoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)の発現程度を検討した。乳癌術後に補助療法としてAI剤を投与していたが転移・再発を認めた21症例を対象とした。転移・再発時に採血を施行し,HPLC を用いてtriptophan(Trp)とkynurenine(Kyn)を測定し,Trp/Kynratio からIDO の activityを測定した。fulvestrantの奏効率は28.6%(6/21 例),臨床的有用率は76.2%(16/21例)であった。遠隔転移群は局所再発群に比べて再発時のTrp/Kynratio が有意に低かった。また,fulvestrant 奏効群は非奏効群に比べて治療中のTrp/Kynratio が有意に高かった。ホルモン療法施行中に病勢がコントロールできていた症例は,治療効果に応じて Trp/Kynratio が変動した。乳癌術後の転移・再発時の内分泌療法中に Trp/Kynを測定することは,病勢の推測に有用である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 42巻10号, 1228-1230 (2015);
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近年の分子細胞生化学の発展により,分子標的治療薬によって飛躍的に予後改善を認める癌腫もでてきている。また,bevacizumabの台頭にみられるように,がん微小環境を制御することでより抗腫瘍効果を上げる例もでてきており,新しい可能性を示唆している。癌とがん微小環境の相互作用については以前より多く報告されており,その中心的な役割を担っているのが癌関連線維芽細胞(cancer-associated fibroblasts: CAFs)といわれている。以前よりわれわれは,食道癌の進展におけるがん微小環境の強い関与を推測し,特にCAF の作用に注目し分子標的となり得るシグナルの解析を行ってきた。しかしながら,CAF の単一のシグナル阻害のみでは癌の治療においては不十分な可能性が考えられた。現在までに多くのCAF 細胞におけるシグナルを標的とした治療法が提案されてきたが,未だ十分な結果を得ていない。光線免疫療法は,2011年にMitsunagaらにて発表された近赤外線光を用いた標的分子特異的癌治療である。われわれは,その細胞特異性に殺傷できるシステムに注目し,現在CAFそのものを制御すべくCAFに対する光線化学療法の開発,またその効果を検討している。今後検討結果を随時報告する予定である。
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癌と化学療法 42巻10号, 1231-1233 (2015);
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2014 年5 月〜2015 年5 月まで当院で再発・転移乳がんと診断された10 例に対し化学療法(AC 療法,パクリタキセル,S-1)もしくはホルモン療法を行い,温熱療法を併用した。結果はPR 2 例,SD 5 例であった。また,PR 2 例のうち1 例は経口抗がん剤S-1,もう1 例はホルモン剤であった。さらに,がん性胸水やがん性腹水にも劇的に効果がみられた。温熱療法で特に重大な有害事象は認められず,温熱療法に化学療法やホルモン療法の併用は有用である可能性を示唆した。
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癌と化学療法 42巻10号, 1234-1236 (2015);
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全身骨格筋量(以下,骨格筋量)は癌の予後因子である。骨格筋量の測定には特殊な器機を必要とするため,CT 画像にて得られる最大大腰筋断面積(MPCA)を骨格筋量の代替指標とする方法を開発し,骨格筋量の減少と癌終末期における生命予後との相関を検討した。対象は当科で胃癌または大腸癌に対し切除術を行い,すでに死亡した59 例。術前および死亡前に施行したCT を用い,MPCAを測定した。死亡前のMPCA を術前値で除したものを最大大腰筋断面積比(MPCA-R)とし,生存期間との相関を検討した。対象症例の生存期間中央値は44 日であり,MPCR-Rは生存期間と有意に相関した(p=0.001)。生存期間30 日以下,90 日以下をendpointとしROC 解析を行った結果,AUCはそれぞれ0.710,0.748であった。胃癌および大腸癌において,骨格筋量の増減を反映するMPCR-R は終末期における予後を予測する有効な指標となり得ると考えられた。
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癌と化学療法 42巻10号, 1237-1239 (2015);
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一般的に上皮性癌転移は血行性,リンパ行性,播種性に大別されるが,遠隔臓器への転移の主な要因は血行性転移である。末梢循環腫瘍細胞(circulating tumor cell: CTC)は血行性転移の主因と考えられている。CTC 測定の有用性について検討した臨床試験では,転移再発乳癌においてCTC 数が5 個以上であった場合,予後不良であったと報告されており,CTC 数を測定することは予後予測因子となる可能性が示唆された。今回われわれは,転移再発乳癌患者のCTC 測定を行い,測定結果と患者背景について検討した。
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癌と化学療法 42巻10号, 1240-1242 (2015);
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われわれは,癌患者における末梢血液中浮遊癌細胞(CTC)を同定して,その特徴を明らかにし,癌の治療に役立てる目的で新規CTC チップを開発し,CTC 捕捉システムの臨床研究を行っている。今回,CTC 捕捉システムを用いて進行乳癌患者血液中に存在するCTC を同定した。また,術前化学療法症例においてCTC 捕捉システムを用いた抗癌剤感受性試験を行った。その結果,6 検体中5 例の末梢血液からCTC を同定することが可能であった。また,CTC を同定した進行乳癌症例において,化学療法によりCTC が減少することを確認した。以上より,新規CTC 捕捉システムは乳癌患者におけるCTC同定に有用であった。また,抗癌剤の早期治療効果予測が可能であった。
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癌と化学療法 42巻10号, 1243-1245 (2015);
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直腸癌手術におけるSSI 発生に影響する免疫栄養因子について検討した。対象と方法:直腸癌切除103 例を対象に術前のDMあり,BMI<18.5,≧25.0,PNI≦40,G/L>2,CONUT≧2,mGPS Dを危険因子に選択し,SSI発生(Grade≧Ⅱ)に影響する因子を検討した。結果: SSI 発生(13 例)に影響を与えた因子は単変量解析でPNI≦40,性別・年齢で調整後はPNI≦40,mGPS D,stepwise selectionではPNI≦40 が選択された。結語:直腸癌手術におけるSSI発生の危険因子として,免疫栄養因子ではPNI とmGPSが有用な指標であった。
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癌と化学療法 42巻10号, 1246-1248 (2015);
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目的: 局所進行食道癌に対する,積極的栄養補助の有用性を明らかにする。対象・方法:過去2 年間で,cT4 と診断され化学放射線療法(CRT)を施行した頸部・胸部食道平上皮癌11 例を対象とした。CRT はFP 療法と,放射線照射計60 Gyを施行した。栄養アセスメントとして,CRT 前の経口摂取エネルギー量(OIE),総エネルギー消費量(TEE)を全例に算出した。OIE/TEE<0.6の全症例に対し経口栄養補助剤(ONS)投与を,狭窄症例には経管栄養(EN)を行い,OIE/TEE≧0.6とした。治療前後での栄養状態の変化について検討した。結果: ONS,EN 症例は各2 例(18.9%)で,7 例は食事のみでOIE/TEE≧0.6 を達成できた。介入により,平均OIE/TEE は 67.9%から84.9%に上昇した。9 例(81.8%)で規定のCRTを完遂できた。PNI,CRP値の変化に有意差はなかった。BMIは0.39 kg/m2減少し(p=0.039),平均体重減少率1.57%,奏効率は81.8%であった。結語: 局所進行食道癌CRT 施行症例に対して積極的栄養補助を行うことにより,治療が完遂でき奏効率が上昇することが期待できる。
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癌と化学療法 42巻10号, 1249-1251 (2015);
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bevacizumab は血管新生を阻害し抗腫瘍効果を発揮する抗VEGF モノクローナル抗体である。今回われわれは,bevacizumab 使用中のリンパ球数の変動に注目し,奏効率との関連について検討を行った。当院においてpaclitaxel+bevacizumab併用療法治療を受けた進行・再発乳癌20 例を対象とした。grade 2 以上のリンパ球数減少を認めた群をA 群,grade 1 またはリンパ球数減少を認めなかった群をB 群として両群の奏効率および無増悪生存期間(PFS)を比較した。A 群7 例,B 群13例であり,PFS の平均値はA群77.7 日,B 群で56.8 日と有意差は認めなかった(p=0.67,logrank)。奏効率はA群14.3%(CR 0 例,PR 1 例,SD 3 例,PD 3 例),B 群23.0%(CR 0 例,PR 3 例,SD 6 例,PD 4 例)であり,臨床的有効率はA 群57.1%,B 群で69.2%とともにB 群がA群を上回った。
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癌と化学療法 42巻10号, 1252-1255 (2015);
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NK 細胞は自然免疫の主因子の一つであり,悪性腫瘍の増殖抑制にも重要な役割をもつ。本研究では,ヒト乳がん手術検体を直接移植して樹立した3 種類のヒトがん異種移植腫瘍(patient-derived tumor xenograft: PDX)を,高度免疫不全マウスである NOD/SCID マウスと,さらに NK 細胞の活性を欠く NSG マウスに継代移植した。NSG マウスと比較したNOD/SCID マウスでの腫瘍増殖抑制の程度は PDX の系統により大きく異なり,抗 CD49b 抗体で標識される NK 細胞の浸潤の程度と関連した。しかし,各種のNK 細胞リガンドのPDX 腫瘍細胞における発現と,NK 細胞の浸潤度には関連を認めなかった。以上より,NK 細胞による増殖抑制の程度は,乳がんPDX 腫瘍により大きく異なることが示唆された。乳がんPDX 組織へのNK 細胞浸潤にかかわる分子機構については,さらなる検討が必要である。
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癌と化学療法 42巻10号, 1256-1258 (2015);
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目的: 胃癌術後合併症発生の早期予測におけるC 反応性蛋白(CRP)値の有用性を検討した。対象と方法:当院で2008〜2014 年までの間に,胃癌に対して開腹幽門側胃切除術もしくは胃全摘術を施行した77 例を対象とした。術後縫合不全もしくは膵液漏の合併群(C 群)と非合併群(N 群)に分類し,術後1 日目,3 日目,7 日目の白血球数(WBC),CRP,血小板数(Plt)を比較した。さらに,ROC 曲線を用いて術後縫合不全もしくは膵液漏の合併を予測する上で有用な項目を検討した。結果: 77 例中7 例で術後縫合不全(4例)もしくは膵液漏(3 例)を合併した。術後3 日目のCRP 値,3 日目と7 日目の平均WBC値はC 群で有意に高値であった(p<0.05)。術後3 日目の平均CRP 値のROC 曲線下面積は0.898(95%CI: 0.809-0.987)と高値であった。cut off値は20.1 mg/dL で,感度 85.7%,特異度84.3%であった。結語:術後 3 日目のCRP 値上昇は,術後合併症予測において有用と思われる。
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癌と化学療法 42巻10号, 1259-1261 (2015);
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甲状腺乳頭癌術後に多発性肺転移を認め,I131による内照射治療を受けた症例についてindoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)の発現程度を検討した。甲状腺癌術後に肺転移を認め,I131による内照射を施行した3 症例を対象とした。転移発見時に採血を施行し,HPLC を用いてtryptophan(Trp)と kynurenine(Kyn)を測定し,Trp/Kyn ratioから IDOの activityを測定した。甲状腺乳頭癌術後多発性肺転移発生時には再発発見前に比べて有意に末×血中のTrp/Kyn ratioが低かった。これらの症例に対して残存甲状腺全摘術を施行後に I / 131による内照射を行ったところ,時間を追ってTrp/Kyn ratio が回復していった。I131による内照射の効果判定にIDOのactivityを測定することは有用であった。
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癌と化学療法 42巻10号, 1262-1264 (2015);
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大腸癌の肝転移に対する治療は,大腸癌治療ガイドラインにおいて切除可能症例には肝切除が推奨されている。一方で,局所治療としての放射線治療の有効性を支持するデータは存在せず,推奨される治療とはいえないのが現状である。CyberKnife(R)による放射線治療は,肝転移などの体幹部の病変に対しても,高い精度でリニアックを用いた定位照射が可能である。当院では2009年12 月〜2014年9 月までに14 症例22 病変の大腸癌肝転移に対してCyberKnife(R)による放射線治療を施行した。その結果は,76.2%の奏効率と81.0%の局所制御率が得られ,高度な有害事象はみられなかった。大腸癌肝転移に対するCyberKnife(R)による放射線治療は,低侵襲かつ安全性の高い局所治療として有効であると考えられた。
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癌と化学療法 42巻10号, 1265-1267 (2015);
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多くの後腹膜腫瘍は非上皮性で,上皮性悪性腫瘍はまれである。今回われわれは,後腹膜粘液性嚢胞腺癌の1 例を経験したので報告する。症例は56 歳,女性。腹部膨満を主訴に来院した。10 年前に右下腹部に後腹膜嚢胞を指摘され,経過観察されていた。その後CT 検査で嚢胞の増大傾向ならびに内部に結節成分を認めたため,後腹膜嚢胞腺癌の診断で手術の方針となった。腫瘍は右側腹部後腹膜腔に存在し,腸腰筋,腎下極および上行結腸に接していたが,腸管との連続性はなかった。腫瘍は9 cm 大の表面平滑な単房性嚢胞性病変で,内腔は粘稠な内容液で占められ,一部隆起部分を有していた。病理組織学検査で嚢胞内腔の隆起部分に腺癌細胞の乳頭状増殖がみられ,ER 染色およびPgR 染色が陽性であったため,異所性卵巣由来の後腹膜粘液性嚢胞腺癌と診断した。術後7 か月の現在,再発兆候なく生存中である。
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癌と化学療法 42巻10号, 1268-1270 (2015);
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症例1 は61 歳,男性。下腹部痛を主訴とした精査で虫垂印環細胞癌を認めた。手術所見では,腹膜播種結節を多数認め,原発巣は後腹膜への高度浸潤により非切除となった。T4b(後腹膜),NX,P3,StageⅣの診断で術後S-1 療法を中心とした化学療法を施行し,術後32 か月目で原病死となった。症例2 は76 歳,男性。腹痛を主訴に腹部CT 検査を施行したところ,遊離ガス像を認めた。消化管穿孔,汎発性腹膜炎の診断で手術を施行。多数の腹膜播種および盲腸に浸潤するS 状結腸腫瘍を認め,上行結腸に穿孔部を認めた。全身状態不良のため原発巣は非切除とし,穿孔部を含む右結腸部分切除術を施行した。T4b(盲腸),NX,P3,StageⅣの診断で術後FOLFIRI+bevacizumab療法を中心とした化学療法を施行し,術後26か月目で原病死した。いずれも多発腹膜播種を伴う切除不能の印環細胞癌症例であったが,化学療法により比較的良好な生存期間を得ることが可能であった。
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癌と化学療法 42巻10号, 1271-1273 (2015);
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患者は70 歳,女性。主訴は便潜血検査陽性。下部消化管内視鏡検査を受けて,上行結腸に2 型腫瘍を認めた。生検による病理診断は,低〜中分化型腺癌と診断。以上の結果から,結腸右半切除術+D2郭清を行った。摘出標本の病理組織検査では,低分化腺癌と扁平上皮癌成分の混在が認められ,腺扁平上皮癌と診断された[pSS,ly0,v0,pN0,ow(−),aw(−),M0]。大腸癌は,そのほとんどが腺癌であり,腺扁平上皮癌は比較的まれな疾患である。この腫瘍の特徴は,病状が進行してから発見されることが多く,リンパ節への転移率が高い。腫瘍の発育速度が腺癌と比べて速く,予後不良と考えられている。自験例は術後6 年を経過し無再発で生存中であるが,本疾患の特徴から慎重な経過観察が必要と考えられる。
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癌と化学療法 42巻10号, 1274-1276 (2015);
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症例は54 歳,女性。体重減少と腹部腫瘤を主訴に当院紹介受診。精査の結果,転移性肝・肺腫瘍を伴う直腸(RS)癌,tub2,cT4a(SE),N0M1b(H3,PUL1),cStageⅣの診断。残肝率の問題から切除不能と判断し,全身化学療法を選択。一次治療としてB-mab+mFOLFOX6を14 コース施行。末梢神経障害(Grade 2)のため,二次治療として初診9 か月後よりP-mab+FOLFIRIを7 コース施行。効果判定はPR,肝・肺の遠隔転移巣も含め切除可能と判断し手術を選択。経皮経肝門脈塞栓術を施行した後に腹腔鏡下肝切除術と開腹低位前方切除術,その約2 か月後に胸腔鏡下肺切除術を施行しR0 手術を得られた。現在,術後化学療法を行わずにいるが,再発を認めていない。K-ras 野生型切除不能進行大腸癌に対して,抗EGFR 抗体使用のタイミングを逸しないことが重要で,conversion surgeryの可能性を念頭に置いて診療する必要がある。
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癌と化学療法 42巻10号, 1277-1279 (2015);
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症例は67 歳,男性。21 年前に十二指腸潰瘍のため,幽門側胃切除術+Billroth Ⅱ法再建を施行した。2014 年5 月ごろから食欲低下・嘔気が出現したため,上部消化管内視鏡検査を受けた。吻合部に全周性の粘膜および大弯襞の肥厚を認め,生検ではgroup 2 との診断であり,再度生検でも同様の結果となった。その後,狭窄症状が進行したため診断目的にて開腹手術施行。挙上空腸リンパ節を迅速病理検査に提出したところ,腺癌を認め残胃癌の診断の下,残胃全摘出術+Roux-en-Y再建術を施行した。摘出病理組織所見ではpT4a,pN0,pM1(空腸リンパ節),pStageⅣとなった。今回われわれは,術前内視鏡診断が困難であった残胃癌を経験したので文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 42巻10号, 1280-1282 (2015);
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症例1 は60 歳,男性。14 年前胃癌にて幽門側胃切除術を施行した。術後再発を認めず経過していたが,癒着性イレウスを繰り返しており,4 回/年(通算14 回)の入院となり症状が軽快しないため,腹腔鏡手術を施行した。術中所見では正中創直下の腹膜に小腸が360度以上捻転し癒着しており,同部位に対して癒着剥離術を施行した。症例2 は77 歳,男性。1 年6 か月前胃癌に対し幽門側胃切除術,B-Ⅰ再建術を施行された。術後から癒着性イレウスによる入退院を通算7 回繰り返したため,手術を施行した。術中所見では小腸が正中創直下の腹膜と後腹膜に癒着していたため癒着剥離術を施行した。症例2 は虚血性腸炎が原因と考えられる大腸イレウスを併発したが,その折施行した手術では小腸に器質的病変部位は認めなかった。今回われわれは,腹壁との癒着により小腸捻転を繰り返し発症した腸閉塞に対して腹腔鏡下剥離術を施行し,早期に症状改善し得た症例を経験したので文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 42巻10号, 1283-1285 (2015);
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好中球・リンパ球比(neutrophil lymphocyte ratio: NLR)は,複数の癌腫において予後と相関することが報告されている。われわれは乳癌における術前化学療法の奏効率とNLRの関連性を検討し,乳癌化学療法中にNLRを測定することの意義を検討した。術前化学療法を施行した原発性乳癌19 例を対象とした。EC×4→nab-PTX×4 を各4 サイクル施行後,標的病変に対し効果判定を行い,奏効群(CR+PR),非奏効群(SD+PD)の2 群に分類した。これらについてnab-PTX投与前,nab-PTX(1-1)投与後7 日目,nab-PTX(4-3)投与後7 日目における,それぞれのphaseにおけるNLRについて測定した。奏効群は14 例,非奏効群は5 例であった。NLR 値はnab-PTX投与前,nab-PTX(1-1)7 日目,nab-PTX(4-3)7 日目のいずれのphaseにおいても奏効群と非奏効群間に差を認めなかった。
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癌と化学療法 42巻10号, 1286-1288 (2015);
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われわれの施設では,以前から大腸癌肝転移に対する治療戦略として術前化学療法を積極的に施行してきた。当科で経験した大腸癌肝転移切除例65 例を対象に術前化学療法の安全性と生存・再発,再発のリスク因子に関する検討を行った。65 例の治療成績は3 年生存率73.9%(Grade A: 81.8%,Grade B: 77.8%,Grade C: 0%),5 年生存率は62.5%であった。術前化学療法群での3 年生存率は63.3%であった。同時性・異時性肝転移での比較,Grade AとB+C での比較で生存率に有意差はなかった。再発のリスクにおいても有意差のある因子を抽出できなかった。今後はさらなる観察期間の延長による検討が必要と考えられた。また,画像上の形態学的評価を行い,ベバシズマブ投与群の57.1%に高度奏効を認めた。形態学的変化と病理学的変化との関連性,臨床的な予後との相関についてさらなる検討が必要と考えられた。
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癌と化学療法 42巻10号, 1289-1291 (2015);
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2011 年3 月,HER2 陽性進行再発胃癌に対してtrastuzumab(Tmab)が承認され,治療方針決定の際にHER2の検索が必要となった。今回,当院におけるHER2 陽性胃癌の臨床病理学的特徴および治療の現状について検討した。2011 年3月〜2014年8 月に当院でHER2 発現を検索した106例を対象とした。HER2陽性は16 例(15.1%)であった。HER2陽性例は陰性例と比較し,年齢,男女比,原発部位に差を認めなかったが,組織型は分化型が,肉眼型としては限局型が多い傾向を認めた。10 例にTmab併用化学療法が行われ,HER2投与回数は1〜44(中央値7.5)回,最大治療効果はCR 1 例,PR 4例であった。Tmabに特徴的な有害事象を認めなかった。当院におけるHER2 陽性率は15.1%と既報と同程度で,またTmab併用化学療法は安全かつ有効と思われた。
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癌と化学療法 42巻10号, 1292-1294 (2015);
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症例は70 歳,女性。主訴は肛門からの腫瘍の脱出と腹痛。肛門管癌(低分化腺癌)によるイレウスと診断された。胸腹部CT・MRIでは,膣壁および肛門挙筋に広範に浸潤する11×5×12 cm と巨大な腫瘍を認め,両側鼠径リンパ節は腫大し転移が示唆された。直腸(Rb)癌,cT4b(膣・外陰部・肛門挙筋),N0H0P0M1a(LYM),stageⅣ(大腸癌取扱い規約第8 版)と診断,根治切除は不可能と判断した。イレウス解除目的で横行結腸双孔式人工肛門を作製の後,術前化学放射線療法(45 Gy/1.8 Gy×25,TS-1 80 mg/body: 2週投与 1 週休薬,計 2 コース),続いてBev+mFOLFOX6 10 コース施行した。腫瘍は著明に縮小し,PET-CT検査では原発巣・鼠径リンパ節への集積は消失,膣のみにSUVmax 6.3の異常集積を認めた。化学療法終了6週後に膣・膀胱・外陰部を合併切除する骨盤内臓全摘術を施行した。結果,進行度ypT4b(膣),N0H0P0M0,stageⅡで治癒切除となった。術前治療の効果はGrade 2 であった。
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癌と化学療法 42巻10号, 1295-1297 (2015);
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症例は67 歳,女性。胃癌ML,Post,Less,Gre,type 1,100 mm,tub2>por,cT4aN1M1(lung),cStage Ⅳ,HER2陽性(IHC3+)と診断した。初診時PS 2,Alb 2.2 g/dL,CRP 6.18 mg/dL,Hb 10.9 g/dLと癌悪液質状態にあった。全身状態を考慮してcapecitabine(X),cisplatin(P)ともに1 段階減量したXP+trastuzumab(H)を6 コース施行した。CTCAE Grade 2 以上の有害事象は認めなかった。6 コース施行後,癌悪液質は改善した。画像評価で肺転移巣は著明に縮小し,PET 検査で集積を認めないためpartial responseと判定し,臨床的にはviable な腫瘍遺残はないと判断した。同時に,胃噴門直下に30 mm大の新規0-Ⅱc 病変の出現を認め,生検結果より悪性リンパ腫の診断となった。転移巣が著明に縮小していること,新規に胃悪性リンパ腫が出現したことより,conversion surgeryの方針とした。開腹胃全摘,脾温存D2郭清,Roux-Y 再建術を施行した。術後病理診断では,ML,Post,yType 3,45×25 mm,tub2>por,ypT4a,ly0,v0,ypN0,ypStage ⅡB で,組織学的効果判定はGrade 1bであった。術後はX+Hによる化学療法を継続しており,術後7 か月間無再発生存中である。
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癌と化学療法 42巻10号, 1298-1300 (2015);
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症例は65 歳,女性。下血,発熱を主訴に当院消化器内科に紹介となった。下部消化管内視鏡検査で回腸末端に広範な潰瘍形成を伴う腫瘍を認めた。生検でextranodal NK/T cell lymphoma,nasal type疑いとなったが,肝脾腫を伴って急激に増悪する肝細胞障害を認めたため,可及的にCHOP 療法を開始したが,2 日目に穿孔性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した。術後,徐々に全身状態悪化し第75 病日に死亡した。本症例では,全身的な病勢コントロール目的に化学療法を先行したが,extranodal NK/T cell lymphoma,nasal typeでは腫瘍穿孔などの急激な経過をたどることがあるため,手術を先行することも選択肢の一つであると考えられた。
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癌と化学療法 42巻10号, 1301-1303 (2015);
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患者は83歳,男性。1993年1 月慢性膵炎に対して膵頭十二指腸切除術(PD)を施行した。以後当科外来にて経過観察中であったが,術後早期より上部消化管内視鏡検査において残胃体中部小弯側・胃空腸吻合部付近に微小な粘膜下腫瘍を指摘されていた。2010年4 月に施行した腹部造影CT 検査および上部消化管内視鏡検査において,腫瘍の増大を認めたため手術適応と判断した。術中所見では胃空腸吻合部直上に腫瘍を認め,吻合部を含めた残胃部分切除を行い,Roux-en-Y法にて再建した。現在まで再手術後約5 年間,無再発で経過している。PD 術後の胃GIST診断例の報告はまれであるが,長期生存例の増加に伴い残存臓器に悪性腫瘍を認める機会も増えることが予想され,そのことを念頭に置いた術後の定期検査が必要であると思われた。
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癌と化学療法 42巻10号, 1304-1306 (2015);
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症例は77 歳,男性。2012年3 月に胃癌,UME,cT4aN2M0,cStage ⅢBの診断で胃全摘D1+郭清術を施行した。術中網嚢内に腹膜播種結節を認め,病理組織学的にUME,Less,pType 3,por1>tub2,pT4aN3b(21/41)M1(P1),fStageⅣと診断した。術後化学療法(S-1: 80 mg/m2)を6 コース実施後,有害事象により化学療法を中止し,経過観察となっていた。術後2 年の上部消化管内視鏡検査で,胸部中部食道に隆起性病変を認め,病理組織学的には管腔構造を有した腺癌細胞増殖として認め,胃癌の食道転移と診断し,少量weekly docetaxel(25 mg/m / / 2)/cisplatin(25 mg/m2)療法(3週投与1 週休薬)を開始した。5 コース実施後の上部消化管内視鏡検査で隆起性病変は消失し,全身検索においても再発所見を認めなかった。現在,無再発経過観察中である。
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癌と化学療法 42巻10号, 1307-1309 (2015);
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症例は68 歳,女性。リンパ節転移を伴う進行食道癌の診断で術前化学放射線治療を施行。治療中に食欲低下および体重減少を認めたため経鼻経管栄養を開始し体重減少は速やかに改善した。治療終了後に,著明なリンパ球数低下を伴う発熱を来し,精査でサイトメガロウイルス感染と診断され,直ちにガンシクロビルの投与を開始し症状は改善した。2 か月後,食道癌根治切除術を施行し軽快した。化学放射線治療後の低免疫,低栄養状態での発熱に対し迅速なサイトメガロウイルス感染診断,ガンシクロビル投与および経鼻経管栄養が有効であった。
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癌と化学療法 42巻10号, 1310-1312 (2015);
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背景: セツキシマブ(Cmab)は切除不能進行再発大腸癌の予後改善に重要な役割を果たしている。現在,一般臨床ではKRAS 遺伝子がCmab の予後予測因子として用いられているがCmab のさらなる効果予測因子の探索が試みられている。目的: Cmab の効果とFcgR 遺伝子多型の関連性を検討した。対象と方法: FLIER 試験(切除不能進行再発大腸癌に対する二次治療としてのFOLFIRI+Cmab 療法: ECRIN)登録症例のうちKRAS(コドン12,13)とBRAF(コドン600)野生型の57例。FcgR Ⅱa(H131R)/Fcg Ⅲa(V158F)と奏効率,overall survival(OS),progression-free survival(PFS)との関連を検討した。結果: FcgR Ⅱa(HH/HR/RR),FcgR Ⅲa(FF/FV/VV)の遺伝子多型は奏効率,OS,PFS のいずれも関連は認めなかった。haplotype 解析ではFcgR Ⅱa-131H,FcgR Ⅲa-158V がそれ以外と比較して奏効率が有意に低く(p=0.018),diplotype解析においてもHV/HV で奏効率が有意に低かった(p=0.038)。考察・結語:今回の検討ではFcgRⅡa-131H とFcgR Ⅲa-158V がCmab の予後不良因子になる可能性が示唆された。ADCC 活性に関与するFcgR 遺伝子多型がCmabの効果予測因子になり得るかについてはさらなる検討が必要と考えられた。
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癌と化学療法 42巻10号, 1313-1315 (2015);
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2009年1 月〜2014年12 月まで,当施設において化学療法後に直腸切除したcStage Ⅳ直腸癌18 例(前医での化学療法施行例を含む)をレトロスペクティブに検討した。施行した化学療法のレジメンはmFOLFOX6 8 例,SOX 5 例,XELOX 3 例,その他2 例であった。12 例に分子標的薬を投与していた。局所の抗腫瘍効果はPR 10 例,SD 8 例,遠隔転移巣での効果はPR 9 例,SD 9 例であった。術式はHAL/LAR 12 例,ISR 2 例,APR/Hartmann 4 例であった。化学療法前に6例でストーマ造設が行われていた。術後合併症は6例に認めた。うち縫合不全は2 例で,いずれもストーマ造設状態のため保存的治療で軽快した。原発巣を先に切除したcStage Ⅳ 45 例との比較では,全生存期間で有意な差は認めなかったが(p=0.382),遠隔転移巣を切除しCur B となった症例は8 例(44.4%)であった。原発巣先行切除群のCur B 率は26.7%であった。今回の検討では全生存期間の比較で差を認めなかったことより,cStage Ⅳ直腸癌に対する治療戦略として,まず原発巣切除を先に行うか術前化学療法を行うかは,controversialである。しかし,術前化学療法を行うことで,Cur B 率の向上に寄与する可能性があると思われた。
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癌と化学療法 42巻10号, 1316-1318 (2015);
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進行・再発大腸癌に対しTAS-102 を投与した7 例に関して短期成績を検討した。対象は2014 年6 月以降に当科でTAS-102を投与した進行・再発大腸癌の7 例で,これら対象例の臨床病理学的因子,短期治療成績について検討した。対象は男性3 例,女性4 例で,投与開始年齢中央値は71(41〜82)歳,KRAS statusは野生型3 例,変異型4 例であった。前治療レジメン数は2 レジメン2 例,3レジメン4 例,5レジメン1 例で,転移臓器数は1 臓器5 例,2臓器1 例,3臓器1 例であった。TAS-102の投与コース数は中央値2(1〜6)コースであった。投与終了理由は骨髄抑制1 例,本人希望3 例,PD2例,全身状態不良1 例であった。有害事象は血液毒性として好中球減少4 例(G3以上3 例),白血球減少3 例(G3以上1 例),貧血2例(G3 以上1例),血小板減少2 例(G3以上1 例)を認め,1 コース目の休薬期間に多く認めた。他にG2 の嘔気1 例と胃潰瘍1例,G1 の嘔吐2 例,下痢1 例,総ビリルビン値異常1 例を認めた。TAS-102投与開始からの生存期間の中央値は9 か月であった。
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癌と化学療法 42巻10号, 1319-1321 (2015);
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エベロリムスは,腫瘍細胞の分裂,血管新生および細胞代謝の調節において重要な役割を果たすmTOR 蛋白を標的とするmTOR 阻害剤である。乳癌の内分泌療法に抵抗性を示すメカニズムの一つとして,PI3K/AKT/mTOR 経路の過剰活性と関連が指摘されており,エベロリムスを併用することで,内分泌療法への抵抗性を克服して治療効果を高めることが期待できる。2014年3 月より当院でエベロリムスを使用した進行・再発乳癌患者20 例に対する有効性と安全性を検討した。年齢中央値は65.5(51〜82)歳,ホルモン受容体は全例で陽性,内臓転移(主に肺,肝臓)は,10 例(50%)であった。補助化学療法は12例(60%)で施行され,エベロリムスまでの前治療数の中央値は5(2〜12)であった。そのうち内分泌治療レジメン数の中央値は3(1〜5)であり,11 例(55%)で3 レジメン以上の内分泌治療歴を有していた。PFS は2.5(1〜9)か月であった。治療効果はPR 4 例(20%),SD 9 例(45%),PD 7 例(35%)であり,臨床的奏効率は65%(5 コース以上の症例は 4 例/20%)であった。内分泌治療が3 レジメン以下の症例でPR 3 例,SD 9 例であったのに対し,4 レジメン以上の症例ではPR 1 例,SDは0 例であった。主な有害事象は口内炎6 例,間質性肺炎1 例,味覚障害1 例,その他(皮膚湿疹,嘔気,蜂窩織炎)2 例であった。また,血液毒性は認めなかった。有害事象を認めない症例は10 例(50%)であった。有害事象を認めた症例はPR 3 例,SD は4 例(臨床的奏効率70%)であったのに対し,有害事象を認めなかった症例ではPR 1例,SDが5例(臨床的奏効率60%)であった。今回の検討では,エベロリムス投与による有害事象発現症例で有効性がやや高い傾向が示唆された。
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癌と化学療法 42巻10号, 1322-1324 (2015);
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症例は66 歳,男性。早期食道癌と進行胃癌の同時性重複癌と診断された。進行胃癌に対する化学療法中にbacterialtranslocation(BT)による敗血症性ショックを発症し,抗生剤とg グロブリンおよび呼吸循環管理,エンドトキシン吸着療法による治療を開始,敗血症性ショックによるdisseminated intravascular coagulation(DIC)も発症し,組換えヒト可溶型トロンボモジュリンも投与した。集中治療により早期にショックおよびDICより離脱した。担癌で化学療法による低免疫状態の患者に敗血症性ショックを来した場合でも,早期の適切な対応と治療によって救命することができた。
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癌と化学療法 42巻10号, 1325-1327 (2015);
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症例は26 歳,女性。父親,姉,叔父に褐色細胞腫の家族歴あり。25 歳時に褐色細胞腫にて両側副腎摘出術を施行後,ステロイド補充療法中であった。経過観察の腹部CT で膵に造影で濃染する結節を4 か所認め,精査にて非機能性多発性膵内分泌腫瘍と診断された。von Hippel-Lindau病(VHL)の臨床診断基準を満たさなかった。若年であること,異時性・多発性内分泌腫瘍を考慮し,十二指腸温存膵頭切除術,脾温存膵尾部切除術,膵体部腫瘍核出術を施行した。病理組織検査で腫瘍はいずれもNET G1 と診断された。また,術後の遺伝子検査でVHL と診断された。今回われわれは,結果的に過不足ない治療が選択できたと考えられるが,疾患の組み合わせから多発腫瘍症候群を疑った際には本疾患を念頭に置き,早期の遺伝カウンセリング実施および遺伝子検査を考慮し,術前に正確な診断を得ることが治療方針を決定する上で重要であると考えられた。
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癌と化学療法 42巻10号, 1328-1330 (2015);
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上行結腸の癌異時性卵巣転移によるpseudo-Meigs症候群の1 例を経験した。症例は65 歳,女性。他院で上行結腸癌の根治切除を受けたが術後3 か月目に胸腹水が出現し,癌性腹膜炎と診断され緩和治療の方針を示されたため,セカンドオピニオンを希望し当科を受診した。CEA,CA125は高値を示し,CT で胸腹水および右卵巣腫瘍を認めたが,明らかな播種性病変を認めなかったことより,腹腔内観察と腫大した卵巣切除を目的に手術を施行した。病理組織診の結果からは上行結腸癌卵巣転移と診断されたが,開腹所見では癌性腹膜炎は否定的であった。術後,mFOLFOX6+bevacizumab を導入したが,11 か月目に対側の卵巣転移から同様の症状を呈したため再手術で左卵巣を摘出した。その後も同レジメンで化学療法を1 年間継続し,術後2 年3 か月を経た現在まで再発兆候はない。胸腹水を合併した卵巣腫瘍に対しては本症候群を念頭に置き,積極的に切除を考慮すべきであると考える。