Volume 42,
Issue 11,
2015
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総説
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癌と化学療法 42巻11号, 1335-1337 (2015);
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食道癌集学的治療の効果を最大化するためには,放射線や抗癌剤治療に対する治療の必要性や治療効果を予測することが重要である。内視鏡下生検サンプルを用いた分子生物学的解析は一定の有用性があるが,生検組織局所の生物学的特徴と腫瘍全体の分子病態との乖離,あるいは再発・多発病変での総合的な分子病態との乖離などの課題がある。そこで,全身の病態を反映する血液バイオマーカーを活用したliquid biopsyが注目されている。liquid biopsyは,リアルタイムでの治療モニタリングが可能であること,安価でかつ簡便であること,数値化可能で客観性のあることなどの特長を有している。
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特集
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骨転移の診療
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癌と化学療法 42巻11号, 1338-1341 (2015);
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骨転移診療における医療的な介入は多岐にわたる。そこには原発巣の治療科,放射線診断医,病理医,整形外科医,放射線治療医,腫瘍内科医,緩和ケア医,リハビリテーション医,歯科医,看護師,薬剤師,理学療法士,作業療法士,ソーシャルワーカーなどの参入が必要である。このような多職種が患者アウトカムを改善するという一つの目標に向かって作業する場合には,それぞれの専門家が行う介入がどのようなポテンシャルをもっているのか,それを専門としない医療提供者が理解し,協調的に作業する必要がある。そのために骨転移診療における多様な医療的介入の概要を示したガイドがあれば相互理解に貢献でき,より有効な共同作業ができるものと思われた。骨転移診療ガイドラインの作成の主たる目的は,そこにある。診療ガイドラインは科学的根拠に基づいて記載される必要がある。骨転移診療ガイドラインの作成に当たり,この領域は個々の専門領域においても,ましてや協調的な介入においては十分なエビデンスが蓄積されていないことも一連の作業のなかで明らかになってきた。今回の骨転移診療ガイドラインは,現在の骨転移診療における未解決の問題を示すことにも結果的につながったと考えている。今回の作業は骨転移診療が今後エビデンスの裏付けを受けながら,さらに体系化されていく嚆矢になれば幸いである。
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癌と化学療法 42巻11号, 1342-1345 (2015);
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がん薬物療法の治療成績の向上に伴う生存期間の延長により,骨転移を有する症例が日常診療でも増加している。最近,日本臨床腫瘍学会を中心に骨転移診療ガイドラインがまとめられたが,薬物療法に関しては主に骨修飾薬(bone modifyingagents: BMA)を中心に,臓器別にエビデンスと推奨度に関して整理,記載されている。骨転移はがん細胞からの造骨阻害因子と溶骨因子により骨芽細胞の造骨低下,破骨細胞による骨吸収亢進,さらには骨基質からの増殖因子のがん細胞へのフィードバックという悪循環を分子メカニズムとして背景にもつ。BMAはこれらのメカニズムを背景に開発されており,日常臨床でもすでに使用されている。BMA を使用する意義について,肺がん,乳がん,前立腺がんについては骨関連事象(skeletal related events: SRE)の抑制に関して,多発性骨髄腫についてはSRE に加えて全生存期間の延長に関してのエビデンスが述べられており,積極的なBMAの使用が推奨される。
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癌と化学療法 42巻11号, 1346-1349 (2015);
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骨転移は,痛み,病的骨折,脊髄圧迫など様々な症状を引き起こす。とりわけ骨転移に伴う痛みは患者にとって深刻な問題である。放射線治療により,多くの患者でさしたる副作用なく痛みを緩和し,病的骨折や脊髄圧迫を予防することができる。単回照射でも分割照射でも除痛効果は同等であることが多くの臨床試験で示されている。放射線治療で痛みが緩和されなかった場合や放射線治療後に緩和された痛みが再燃した場合には,再照射により痛みの緩和が期待できる。シンチグラフィで集積がみられる部位の痛みに対しては,組織型や病巣の分布によっては放射性同位元素の投与も選択肢となる。脊髄圧迫症候群は腫瘍緊急症のうち最も多いもので,迅速かつ的確な対応が求められる。脊髄圧迫症候群の治療には外部照射がよく用いられている。脊髄圧迫症候群や病的骨折に対しては症例により手術も考慮すべきである。骨転移に対する手術操作の後には放射線治療が必要である。脊髄圧迫や病的骨折のリスクが高い症例では適切な予防措置を講じるべきである。
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癌と化学療法 42巻11号, 1350-1354 (2015);
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近年の新たな骨修飾薬や分子標的治療薬の登場により,骨転移の手術適応は大きく変わりつつある。ビスフォスフォネート製剤やデノスマブの使用により骨転移症例のうち手術となる割合は減少しているが,その一方で各がん種の治療は急速に進歩しており,予後の延長が見込まれる症例に対しては積極的に手術による局所制御を検討する必要がある。手術適応を正確に評価するためには早期から整形外科が介入することが必要であり,骨転移外来やcancer board の設立などにより骨転移にかかわる各診療科が横断的に連携できる体制を構築していくことが急務である。
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原著
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癌と化学療法 42巻11号, 1379-1383 (2015);
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肺癌に対してのシスプラチン(CDDP)併用化学療法適用症例(74 例: 2012 年12 月〜2013 年4 月)を対象として,hydration法の違い[規定外の追加hydrationおよびマグネシウム(Mg)投与の有無]で症例を分類し,CDDP 投与後の急性腎不全(acute kidney injury: AKI)と他の有害事象の発生状況を後方視的に調査し,関連性について検討した。grade 2 以上のAKIを来した症例はMg投与群0%(0/計 33 例),非投与群7.3%(3/計 41 例)であり,Mg非投与/追加 hydrationなし症例群で grade 4 に至る重篤な AKI を 2 例認めた。Mg 投与/追加 hydration あり群で高い制吐率と良好な尿量確保を得た。AKI症例では,CDDP 投与後1 週間以内にgrade 3 以上の低ナトリウム(Na)血症を来す症例が多かった。CDDP由来のAKI 対策では,Mg投与と十分なhydrationの他,制吐達成や電解質補正を含めた対応が重要である。
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癌と化学療法 42巻11号, 1385-1389 (2015);
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口腔癌に対して導入化学療法としてdocetaxel,cisplatin,5-fluorouracil の3 剤併用による超選択的動注化学療法を施行した13 例(A群)と全身化学療法を施行した13 例(B群)の有害事象および合併症をレトロスペクティブに検討を行った。全身性有害事象としては,血液毒性では好中球減少でA群はB 群と比較して有意に軽度であった(p=0.043)。しかし,局所性有害事象として口腔粘膜障害の発現率はA群9例(69.2%),B群3例(23.1%)であり,A群において有意に高かった(p=0.021)。口腔粘膜障害の発現時期は両群間には有意な差は認められなかった。また,合併症として脳梗塞は認められなかったが,顔面神経麻痺が1 例に発症した。以上より,口腔癌の導入化学療法として超選択的動注化学療法は有害事象について全身化学療法と比較して好中球減少に関しては軽度であり,全身性有害事象は軽度な傾向がある。しかし,局所性有害事象として口腔粘膜炎の頻度が有意に高く予防が重要であり,合併症である顔面神経麻痺や脳梗塞のリスクを管理することが重要であると考えられる。
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薬事
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癌と化学療法 42巻11号, 1391-1395 (2015);
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大腸がんに対する化学療法であるフルオロウラシル(5-FU)の46 時間持続静注のデバイスとして,加圧式携帯型持続注入器(以下,インフューザー)が用いられるが,流速に誤差が生じることが知られている。投与量または投与終了時間の誤差は5-FU の有効性や安全性に影響する可能性があるため,流速の誤差を極力低減することが求められる。流速への影響因子として希釈液の種類,気温および5-FU 濃度などが報告されているが,ポート留置部位の影響について検討した報告はない。そこで,本研究ではポート留置部位が異なる大腸がん患者を対象とし,インフューザーによる5-FU 持続静注の流速に影響する因子を検討した。その結果,ポート留置部位はインフューザーによる5-FU 持続静注の流速に影響する因子であることが明らかとなった。5-FU濃度や気温以外にポート留置部位も考慮し,流速の誤差を低減することが重要である。
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癌と化学療法 42巻11号, 1397-1400 (2015);
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実地臨床では,CapeOXレジメンにおけるオキサリプラチン(L-OHP)の血管痛は治療アドヒアランスの障害となる。われわれは,L-OHPの血管痛を予防するため外来化学療法患者を対象に,L-OHP 希釈液の加温投与ならびに温罨法による看護ケアを行っている。また,L-OHP 誘発静脈炎と血管痛を発現した大腸がん患者の危険因子を後方視的に評価した。さらに,看護ケアの予防効果は2010年1 月〜2012年3月の期間で入院患者と外来患者で比較した。L-OHP 投与部位にいずれかの症状がある場合を静脈炎と定義し,一方で痛みを有する場合を血管痛と定義した。患者31 名,総投与132 コースを評価対象とした。多変量解析の結果,静脈炎および血管痛の有意な要因として女性患者が抽出された(調整オッズ比: 2.357,95%信頼区間: 1.053-5.418 と調整オッズ比: 5.754,95%信頼区間: 2.119-18.567)。静脈炎と血管痛の発現率は入院患者と外来患者で変わらなかった(静脈炎61.3% vs 67.7%,血管痛は29.0% vs 19.4%)。以上より,女性患者においてL-OHP は中心静脈からの投与を検討すべきである。
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癌と化学療法 42巻11号, 1401-1405 (2015);
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近年,S-1 に代表されるように抗悪性腫瘍薬による眼障害が問題となっている。oxaliplatin は大腸がんの標準治療において汎用されている抗悪性腫瘍薬であり,重大な副作用として,視野欠損,視野障害,視神経炎,視力低下などの眼障害も報告されている。しかしながら,発現時期や発現頻度など未だ不明な点が多いのが現状である。そこで日常診療における有益な知見を得るため,oxaliplatin の眼障害に関する後方視的な調査を実施した。本検討期間でoxaliplatin が投与された全患者55 名のうち,眼障害が発現した患者は10 名(18.2%)であった。内訳は眼瞼下垂5 名(9.1%),視野障害2 名(3.6%),視力低下2 名(3.6%),眼痛1 名(1.8%),充血1 名(1.8%),流涙1 名(1.8%)および霧視1 名(1.8%)であった。発現時期は初回や2 回目などの治療初期が多く,症状の程度はいずれもGrade 1 または2 で比較的軽度であった。また,多くの症例が自然経過にて症状の改善を認めた。以上より,oxaliplatin による眼障害は可逆的で軽微な症状が大半を占めるものの,本邦においてもある程度の頻度で存在していることが明らかとなった。今後,より多くの施設で詳細な検討を行われることが望まれる。
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症例
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癌と化学療法 42巻11号, 1407-1410 (2015);
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57 歳,女性。左胸腔内巨大腫瘤。2013 年1 月,左肺尖部原発肺腺癌。原発巣は放射線治療60 Gy で局所制御を得た。その後,全身化学療法を施行するも左胸腔内腫瘤増大,血性胸水,血痰は持続した。2014 年3 月,当院紹介受診。PS 3,在宅酸素療法が導入され,起座呼吸の状態であった。血色素は8.5 g/dLと低値を示した。造影 CT では左胸腔内囊胞状腫瘤は200×144×143 mm,心臓は腫瘤により背側から圧排されていたため,腫瘤の縮小を目的に2014 年4〜6 月にかけて3 回の動注塞栓術を施行した。選択した血管は左気管支動脈,左第9,10,11 肋間動脈,左下横隔動脈。動注薬剤はCDDP,5-FU,塞栓物質は球状塞栓物質を使用した。9 月の経過観察で主病変は 100×93×54 mmに縮小。血色素は13.8 g/dL,呼吸苦は改善しPS 0 となった。全身化学療法不応例に対し動注塞栓術が奏効した症例を報告する。
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癌と化学療法 42巻11号, 1411-1413 (2015);
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症例は60 歳台,男性。2 か月前からの舌腫大にて近医を受診し,紹介受診となった。舌口腔MRIでは,舌左側に正中を越え口腔底に浸潤する腫瘍と左顎下リンパ節腫大を認めた。上部消化管内視鏡検査にて頸部食道に1 型腫瘍,胸部下部食道にヨード不染帯を認め,造影CT 検査では右反回神経周囲リンパ節腫大と気管膜様部浸潤が疑われた。生検結果は舌,食道ともに扁平上皮癌であった。食道癌,CeUt,cType1,cT4(気管)N1M0,cStageⅣa,同時性多発食道癌,舌癌(T4aN1M0,StageⅣa)と診断した。導入化学療法としてDCF 療法を2 コース施行し,食道癌,舌癌ともに腫瘍縮小効果を認め,同時手術を施行した。手術は右開胸開腹食道亜全摘術,後縦隔経路,頸部食道胃管再建,3 領域リンパ節郭清,左舌可動部半側切除術,頸部郭清,舌形成術を行った。現在,術後経過1 年となるが無再発生存中である。
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癌と化学療法 42巻11号, 1415-1418 (2015);
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症例は78 歳,男性。食物の通過不良を主訴に近医受診し,食道癌を指摘され紹介。精査にてStage Ⅲの食道癌と診断し,術前5-fluorouracil(5-FU)+cisplatin(CDDP)(FP 療法)を施行した。第1 日目のCDDP 投与開始とともに徐脈を認めたが自覚症状はなく,治療を継続した。第4 日目に自覚症状は伴わないが高度徐脈を認めたため化学療法を中止し,その後徐脈は軽快した。FP 療法は食道癌に対する有用な治療であるが,高度徐脈を合併する可能性もあり注意する必要がある。
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癌と化学療法 42巻11号, 1419-1421 (2015);
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当院で化学療法を行った切除不能進行胃癌のうち,骨格筋転移を来した症例について報告する。症例1 は70 歳台,男性。造影CT 検査にて肺転移,多発リンパ節転移,脳転移に加えて腸腰筋転移を認めた。症例2 は60 歳台,男性。造影CT検査にて肺転移,リンパ節転移,腸腰筋転移を認めた。症例3 は50 歳台,男性。造影CT検査にて多発リンパ節転移に加えて尿管浸潤,腹膜転移,腸腰筋・臀筋・背筋に転移を認めた。3 症例とも全身化学療法を施行するも,初診より7〜8 か月で永眠された。これらは,当院での骨格筋転移を有さない他臓器転移症例と比較して有意に予後不良であった(p<0.01)。胃癌の骨格筋転移は転移形式として比較的まれであるが,化学療法無効例が多く予後不良因子の一つと考えられた。
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癌と化学療法 42巻11号, 1423-1425 (2015);
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大腸癌化学療法中に発症したニューモシスチス肺炎(pneumocystis pneumonia: PCP)の1 例を経験した。症例は,70歳,男性。排便時出血を主訴に受診。進行S 状結腸癌(T2N2aM1b,Stage ⅣB)と診断し,一次治療としてmFOLFOX6+panitumumabを3 サイクル,二次治療としてFOLFIRI+bevacizumabを行った。ステロイド剤は制吐薬適正使用ガイドラインに準じた。二次治療2 サイクル目より38℃台の発熱を認めた。胸部CT 検査で両側肺野にすりガラス影を認めた。炎症反応の上昇を認めたため,抗生剤投与を開始した。b-D-glucan 値の上昇(148 pg/mL)を認め,PCP と診断した。ST 合剤を併用投与したところ,速やかに炎症反応は低下し,すりガラス影は消失した。ステロイド長期投与や放射線治療の治療歴がなくても,担癌状態,抗癌剤投与や加齢はPCP 発症例の危険因子となり得る。抗癌治療中に発熱や呼吸器症状がみられる場合には,本症例も念頭に置いた諸検査が必要と考える。
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癌と化学療法 42巻11号, 1427-1430 (2015);
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症例は71 歳,男性。直腸癌切除術1 年半後,腹膜播種で再発。血液透析導入直前の末期腎不全であったが,70%ドーズでFOLFIRIを導入したところ画像上partial response(PR)となる。Grade 3 の骨髄抑制が時折みられたものの他に著明な副作用なく,2年間stable disease(SD)のまま非透析を維持できた。血液透析導入後もprogressive disease(PD)になるまでFOLFIRI を1 年,二次治療はmFOLFOX6を6 か月,その後LV-5-FU 療法,分子標的薬を順次導入し,さらに1 年8か月延命することができた。透析前の末期腎不全患者であっても,FOLFIRIは比較的腎障害を進行させることなく長期継続でき一次治療として有効で,透析導入後は投与量を適宜調節して有害事象に注意して行えば,他の抗癌剤も非透析患者同様に長期継続でき,延命が望めると思われた。
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癌と化学療法 42巻11号, 1431-1434 (2015);
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切除不能・進行再発大腸癌に対する化学療法として,FOLFOXIRI 療法は一次治療として推奨されている。術前FOLFOXIRI 療法施行後に組織学的完全奏効(pCR)が得られた局所進行S 状結腸癌症例を経験したので報告する。症例は61 歳,男性。下痢を主訴に前医を受診,CT 検査でS 状結腸癌が疑われ当院紹介となった。精査の結果,S 状結腸癌,tub2,cT4b(SI:膀胱)N1M0,cStage Ⅲa,KRAS野生型と診断された。癌性イレウスを来しており,横行結腸に双孔式人工肛門を造設した。画像上,膀胱・小腸浸潤が疑われたため術前化学療法の方針となり,FOLFOXIRI 療法を4 コース施行した。Grade 2 以上の有害事象は認めなかった。効果判定検査で良好な腫瘍縮小効果を得ることができ,腹腔鏡下直腸高位前方切除術(D3郭清)を施行した。術中腫瘍と膀胱との間には強固な癒着を認めたが,剝離可能であった。病理結果で腫瘍遺残を認めず,ypT0N0,組織学的効果判定はGrade 3 と診断された。術後経過は良好で,第8 病日に軽快退院された。進行結腸癌に対する術前化学療法によるpCR 症例はまれであり,術前FOLFOXIRI 療法は,局所進行結腸癌の術前化学療法として有用と考えられた。
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癌と化学療法 42巻11号, 1435-1437 (2015);
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症例は68 歳,男性。血便の精査目的に施行した大腸内視鏡検査でS 状結腸癌による大腸狭窄と診断された。組織学的には低分化型腺癌であった。腹部骨盤造影CT で,大動脈周囲に腫大したリンパ節を多数認めた。開腹下S 状結腸切除,D3郭清を行い,サンプリングした大動脈周囲リンパ節は,病理組織診で低分化型腺癌の転移と診断された。術後にmodifiedFOLFOX6(mFOLFOX6)を6 コース施行したところ大動脈周囲リンパ節の著明な縮小を認めたため,大動脈周囲リンパ節郭清を施行した。組織学的には摘出リンパ節のほとんどが線維化変性を来しており,1 か所に2 mm の小さな転移巣を認めるのみであった。その後,術後補助化学療法として再度mFOLFOX6を6 コース施行した。初回手術から6年8か月,2 回目手術から6 年1か月経過した現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 42巻11号, 1439-1441 (2015);
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症例は69 歳,女性。近医で血液検査で肝機能異常を指摘され,CT 精査にて肝門部に限局した狭窄が認められた。左肝管にENBD 挿入され,精査加療目的に当院紹介入院となった。ERCP で胆囊管の閉塞と総肝管に狭窄が認められ,胆囊管の炎症,もしくは胆囊炎による締め付け型の炎症が考えられた。悪性腫瘍の疑いもあり,手術を施行した。根治的切除が困難であり,胆囊摘出と診断目的に胆管壁を一部切除した。病理診断はpoorly differentiated tubular adenocarcinoma であった。切除不能局所進行胆管癌に対し,化学療法としてgemcitabine単剤療法を開始した。治療期間中に病変の進行はなく,投与開始から6 年6か月経過し,現在も外来通院加療中である。
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癌と化学療法 42巻11号, 1443-1446 (2015);
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症例は73 歳,女性。2014 年4 月に2 系統の血球減少を認め,骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes: MDS),refractory anemia with excess of blasts 1(MDS RAEB1)と診断した。9 月に5-azacitidine(AZA)療法を導入し,3 サイクル目を開始したところ,高熱を認めたため入院となった。入院後,高熱の持続および炎症反応の著しい上昇を認めた。MDSの再評価を施行したところAZA療法は奏効し,病勢は極めて安定していたが,原因不明の炎症性疾患を呈した。成人スティル病(adult onset Stillʼs disease: AOSD)の診断基準を満たしたことからcyclosporin Aおよびステロイド併用療法を施行したが治療効果は乏しく,さらにtocilizumab療法を導入したが全身状態の増悪により永眠された。後日,AZA療法に伴う血中IL-6 の漸増が確認された。近年,AZAが免疫系に作用する報告を認めている。本症例は,MDSに対するAZA療法の経過のなかで原因不明の炎症性疾患を呈したと推測される貴重な症例と考えた。