癌と化学療法
Volume 43, Issue 2, 2016
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投稿規定
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総説
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がん免疫チェックポイント阻害療法と遺伝子バイオマーカー
43巻2号(2016);View Description Hide Description1981 年以降,わが国ではがんが死亡原因の1 位となっており,現在でもその上昇傾向に歯止めがかかっていない。2013年のがんによる死者は約365,000人,全死亡者に占める割合は28.8%であり,これはこの年の全死亡者の約3.5 人に1人ががんで死亡した計算になる。免疫療法は外科療法,化学療法,放射線療法に続く第四の治療法として近年急速に発展してきた。特に,治療抵抗性の一因となっているがんの免疫抑制環境を破壊することで治療効果を発揮する「免疫チェックポイント阻害療法」は,これまでにない優れた臨床効果を示す革新的治療法であり,いくつかの阻害薬は承認薬としてすでに世界各国で臨床応用されている。しかし,免疫チェックポイント阻害療法にも克服されなければならない重要な課題が残されており,そのなかの一つが臨床効果や有害事象と相関するバイオマーカーの同定である。これまでに報告されたバイオマーカーは,分子,細胞レベルで判断されるものが主流であったが,次世代シーケンサーなどハイスループットな遺伝子解析システムの発達とともに,患者個々のがん関連遺伝子に着目したバイオマーカーの開発が研究されるようになった。本稿では,がんに対する免疫チェックポイント阻害療法の効果と相関し得る遺伝子バイオマーカー解析の進捗について解説する。
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特集
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- 術後補助化学療法の進歩
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胃癌に対する術後補助化学療法
43巻2号(2016);View Description Hide Descriptionわが国における胃癌術後補助化学療法は,Stage Ⅱ/Ⅲ根治切除術後症例に対する S-1 単独療法の生存期間延長効果を示したACTS-GC の結果から,1 年間のS-1 内服が標準とされている。ACTS-GC のサブグループ解析から,Stage Ⅲ症例では生存期間延長効果が不十分と考えられるため,より強力な治療法の開発が進められている。韓国からは術後XELOX療法の有効性が報告されているが,術後の2 剤併用療法が単剤の成績を上回るか否かは不明であり,今後検討すべき課題である。一方,欧州および米国では周術期化学療法,術後化学放射線療法が標準と考えられている。胃癌術後補助化学療法に関するエビデンスと現在の考え方,今後の方向性につき本稿で概説する。 -
大腸癌術後補助化学療法
43巻2号(2016);View Description Hide Description術後補助化学療法は根治術が行われた大腸癌症例に対して,再発を抑制し予後を改善させる目的で行われる。海外と比して本邦の大腸癌手術成績は良好であり,海外のエビデンスとともに本邦発の臨床試験の結果に基づき,高齢患者も含め個々の患者に合った最適な補助化学療法を導入すべきである。補助化学療法を要するStage Ⅱ高リスク症例を抽出するバイオマーカー研究にも注目が集まる。 -
膵癌
43巻2号(2016);View Description Hide Description膵癌の術後補助療法は,フルオロウラシルを用いた化学放射線療法から始まった。しかし,大規模な比較試験により放射線療法はむしろ成績を悪くするという結果もあり,コンセンサスが得られていなかった。その後,ゲムシタビンが切除不能膵癌の標準治療として確立した後,術後補助療法としても有用性が証明された。わが国ではゲムシタビンとS-1 による術後補助療法の第Ⅲ相試験が実施され,S-1 の優越性が得られたことから,現在わが国の術後補助療法はS-1 が第一選択となっている。国際的にはゲムシタビンが依然術後補助療法の標準治療であり,新しいレジメンであるFOLFIRINOX あるいはゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法との比較試験が行われている。また,術前補助療法への期待も大きくなっており,国内外で様々な臨床試験が進められている。 -
肺癌における術後補助化学療法
43巻2号(2016);View Description Hide Descriptionシスプラチン(CDDP)ベースの術後補助化学療法は,2003 年にⅡ期,ⅢA期非小細胞肺癌(NSCLC)完全切除例に対して5 年生存率を改善することが証明され,本邦でも標準治療として位置付けられている。さらに本邦では,ⅠA 期の一部(T1bN0M0),ⅠB 期に対して大規模ランダム化比較試験およびその後のメタアナリシスで,テガフール・ウラシル配合剤(UFT)が有効であることが証明され,標準治療となっている。最近では個別化治療の確立に向け,病期だけでなく,非扁平上皮NSCLC や高悪性度神経内分泌癌などに対する組織型を加味したレジメンでの臨床試験や,分子標的治療薬を導入した臨床試験も行われている。また,化学療法の適応患者をより明確にするために,効果予測や無効予測可能なバイオマーカーの検索もなされている。 -
乳癌におけるSubtype別の補助化学療法の選択
43巻2号(2016);View Description Hide Description乳癌に対して術前後に行う薬物療法の標的は微小転移である。微小転移が消失すれば遠隔再発はなくなり治癒が可能である。現在の乳癌薬物療法は,癌細胞の治療効果予測因子(ER,PgR,HER2,Ki-67)の有無により四つのsubtypeに分類し,それぞれの治療を選択することが強く推奨されている。本稿では術前後補助化学療法のエビデンスを中心に基本的な選択薬剤と使用上の注意について解説する。
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Current Organ Topics:Gynecologic Tumor 婦人科腫瘍 卵巣癌診療の近未来予想図
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特別寄稿
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エベロリムス治療に伴う口内炎のマネジメント
43巻2号(2016);View Description Hide DescriptionエベロリムスをはじめとするmTOR阻害薬の特徴的な有害事象である口内炎は,発現率が高く疼痛によりQOLを低下させる。ほとんどは軽症〜中等症であるが,重症化すれば服薬継続の障害にもなるため,予防および早期発見・治療に努めることが重要である。また,患者教育も大切であり,口内炎の発現する可能性やその徴候・症状,口腔ケアの重要性について治療開始前に十分説明することが求められる。これらの対策を円滑に進めるためには,がん治療医と歯科医,看護師,薬剤師との連携・協力も不可欠である。現在わが国で進行中の前向き第Ⅲ相臨床試験Oral Care-BC などにより,適切な予防・管理方法が確立されることが望まれる。
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原著
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実地診療における胃癌に対するNab-Paclitaxel療法の現状―患者背景からみた治療認容性の検討―
43巻2号(2016);View Description Hide Descriptionnanoparticle albumin-bound paclitaxel(nab-PTX)は,本邦において大規模な臨床試験を経て胃癌への承認を得たわけではなく,その安全性や有効性は,今後臨床現場で検証される必要がある。今回われわれは,当院で進行・再発胃癌に対しnab-PTXを投与した11 例を対象とし,治療成功期間(time to treatment failure: TTF)に対する独立した寄与因子についてretrospective に検討を行った。単変量解析では小野寺式栄養学的予後指数(prognostic nutritional index: PNI),firstlineの化学療法開始からnab-PTX 投与開始までの日数がTTF に関連しており,多変量解析ではPNI がnab-PTX 投与継続における独立した予測因子として抽出された(ハザード比0.056,p=0.022)。nab-PTX は胃癌の治療成績向上に寄与することが期待されるが,その有効性を発揮するためには一定期間の治療継続は必須である。PNI はnab-PTX の長期治療継続の可能性を予測する有用な因子であり,適切な患者選択のための指標として用いることで治療成績の向上に寄与すると考えられる。 -
造影超音波を用いたAFP 低値進行肝細胞癌に対するソラフェニブの治療評価の検討
43巻2号(2016);View Description Hide Descriptiona-fetoprotein(AFP)低値進行肝細胞癌(HCC)症例に対して,ソラフェニブ治療前後でソナゾイド造影超音波(CEUS)によるarrival time parametric imaging(AtPI)を用いた画像解析を行い,ソラフェニブの早期治療評価におけるAtPIの有用性について検討した。対象は,治療前AFP値 35 ng/mL 以下でソラフェニブを4 週間以上内服した進行HCC13例。各症例において一結節を対象として,治療前と治療2 週後にCEUS を施行しAtPI による解析を行った。AtPI で得られたcolormapping画像において,基準点から対象とした一結節までの造影剤到達時間の平均値(mean time: MT)を算出した。投与前のMTを前値とし,投与2 週後のMTとの差を求め,差が0 以上となった症例をMT(+)群(腫瘍内の血流速度が低下),0 未満となった症例をMT(−)群(腫瘍内の血流速度が上昇)と判断した。両群の生存期間を統計学的に検討した。MT(+)群7 例,MT(−)群6 例,生存期間の中央値はMT(+)群307 日,MT(−)群208 日,p=0.041で,MT(+)群で有意に生存期間の延長を認めた。AtPIで得られたMT の変化を検討することは,AFP低値進行HCC 症例に対してもソラフェニブの早期治療評価におけるバイオマーカーの一つとなる可能性が示唆された。 -
尿路上皮癌におけるGC 療法の4 週レジメンと3 週レジメンの比較検討
43巻2号(2016);View Description Hide Description尿路上皮癌患者に対してGC 療法の4 週レジメン(4W)が実施されているが,day 15 の中止が多く,治療強度が低下することが問題となっている。その解決策として,3 週レジメン(3W)が行われるようになっている。従来の4W と3W を安全性と有効性で比較した報告は少ないことから,レトロスペクティブではあるが,これらの比較検討を行った。血液毒性は,3W/4W における Grade≧3 の白血球減少は 18%/18%,貧血は 28%/39%の発生であり,両レジメンでの発生率に差は認められなかった。一方で,血小板減少では13%/39%(p<0.001)と 4W で発生が多いことが確認された。また,全生存期間は3W/4W でそれぞれ14.8 か月/15.0 か月(p=0.97)であった。以上の結果から,3W は 4W の代替可能なレジメンの一つであり,忍容性の高い投与方法であると考えられる。
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医事
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周術期口腔機能管理件数増加に向けたチーム医療による取り組みと今後の課題
43巻2号(2016);View Description Hide Description平成24 年度診療報酬改訂により周術期口腔機能管理が新設された。しかし,管理料の算定には医科から歯科へ紹介が必要であり,多忙を極める外来担当医の負担は大きく依頼の増えない原因と考えられた。今回われわれは,医師の指導の下,薬剤師が化学療法センターにおいて口腔機能管理の重要性を説明し,歯科受診数の増加につながるか検討した。114 名へ説明を行い,そのうち75 名(65.8%)が当院歯科を受診した。歯科処置は,口腔ケア40/75 名(53.3%),次に観血的処置23/75名(30.7%)であった。また,当院倫理委員会承認後に化学療法センターにおいて化学療法施行中の患者にアンケートを実施し,患者満足度に関し無回答の患者は77/110名(70.0%)であった。この関心の低さは,歯科受診は口腔内トラブル出現時にするものと考えられ,予防に重点を置く意識変革の必要性を感じた。2014 年周術期口腔機能管理料算定件数は,当初の62 件(1 月)から162件(12月)へ大幅に増加し,かかりつけ歯科医への紹介率・逆紹介率も2013 年6 月11.2%・10.7%,2014 年6 月21.0%・41.9%と著明に増加した。今後は,周術期口腔機能管理のアウトカム評価や地域での医科歯科連携の強化に取り組みたい。
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薬事
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転移大腸癌患者における抗EGFR モノクローナル抗体による低マグネシウム血症および座瘡様皮疹の発現状況と治療効果との関連
43巻2号(2016);View Description Hide Description目的: KRAS 野生型の切除不能進行大腸癌に対して抗EGFR モノクローナル抗体であるセツキシマブやパニツムマブは優れた効果を発揮する。しかし,これらの薬剤の使用においては,低マグネシウム(Mg)血症や座瘡様皮疹などの副作用が高頻度に発現し,重篤な場合には治療の中断が余儀なくされる。一方,低Mg血症や座瘡様皮疹の発現と治療効果との関連について示唆した報告がある。本研究では,抗EGFR モノクローナル抗体が投与された患者を対象として低Mg血症および座瘡様皮疹の発現と治療効果についてレトロスペクティブに調査した。方法: 2012 年4 月〜2015 年3 月の期間において,岐阜大学医学部附属病院消化器外科にてセツキシマブもしくはパニツムマブが一次治療として投与された大腸癌患者34 例を対象とした。低Mg 血症および座瘡様皮疹は有害事象共通用語規準(CTCAE v4.0)に準じて重症度分類した。結果:低Mg血症(全grade)および座瘡様皮疹(grade 2 以上)の発現率はそれぞれ29%および50%であり,いずれの場合も有害事象発現群では非発現群と比較して奏効率が高い傾向を示したが,有意差はなかった。一方,低Mg血症と座瘡様皮疹を併発した割合は24%であり,併発群での奏効率は非併発群と比較して有意に高かった(88% vs 38%,p=0.039)。考察: 低Mg血症ならびに座瘡様皮疹の併発は抗EGFR モノクローナル抗体の有効性の予測因子になり得る可能性が示唆された。
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症例
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乳管腺腫を背景に発生した微小浸潤アポクリン癌の1 例
43巻2号(2016);View Description Hide Description症例は63 歳,女性。検診で右乳房腫瘤を指摘され,当科を受診した。精査で非浸潤性乳管癌と診断され,右乳房部分切除術,センチネルリンパ節生検を施行した。術後病理組織学的検査では診断に苦慮したが,最終的に乳管腺腫を背景に発生した微小浸潤アポクリン癌と診断した。乳管腺腫とアポクリン癌の鑑別は難しく病理診断上しばしば問題となる。本症例のように乳管腺腫を背景としてアポクリン癌を合併することもあり,良悪性の判別には注意を要する。乳管腺腫とアポクリン癌の鑑別が困難な場合は診断を兼ねた完全切除が望ましいと考えられる。 -
広範囲乳管内進展および腋窩リンパ節微小転移を伴う乳腺Glycogen-Rich Clear Cell Carcinoma の1 例
43巻2号(2016);View Description Hide Description症例は48 歳,女性。マンモグラフィで左乳房M-O 領域に多形性・不均一な区域性微細石灰化像を認めた。乳房超音波検査では,左乳房C 領域に多数の石灰化を伴う3.7 cm 大の境界不明瞭な低エコー域を認めた。乳房造影MRIで左乳房C領域に約4 cm のnon-mass like enhancement を認めた。エコーガイド下吸引式針生検を施行し,乳腺glycogen-rich clearcell carcinoma(GRCC)と診断された。乳腺皮下全摘術およびセンチネルリンパ節生検を施行した。迅速病理にてセンチネルリンパ節転移を認め,腋窩リンパ節郭清を施行した。病理所見では最大0.4 cm の微小浸潤癌および5 cm に及ぶ広範囲な乳管内進展を認めた。diastase 消化により陰性化するPAS 陽性物質を有し,adipophilin 陰性でありGRCC として矛盾しない所見であった。GRCC はHull らにより初めて報告された乳腺悪性腫瘍であり,症例報告も少なく予後や治療方法に関して一定の見解が得られていない。 -
選択的動注化学放射線療法により根治を得たRouviereリンパ節転移を伴う上顎洞癌の1 例
43巻2号(2016);View Description Hide Description症例は71 歳,男性。鼻出血の精査にて右外側咽頭後リンパ節(Rouviere node: RN)および右上内深頸リンパ節(superior internal jugular node: SN)に転移を有する右上顎洞癌の診断となった。外科治療での病変制御は困難と判断したため,われわれは選択的動注化学療法(動注療法)と放射線治療を施行した。動注療法はnedaplatin(CDGP)とdocetaxel(TXT)を選択し上顎洞癌およびRN に注入した。動注療法と同時に強度変調放射線治療(IMRT)を行い,66 Gy/33 Frを照射した。治療終了後の画像所見では,すべての病変は消失していた。病変は動注化学放射線療法にて十分に局所制御できたと判断し,追加治療を要することなく,現在は外来にて経過観察中である。 -
高齢者の胃癌術後再発に対しS-1単独療法によりComplete Responseが得られた1 例
43巻2号(2016);View Description Hide Description症例は80 歳,男性。79 歳時,胃癌に対し幽門側胃切除術(D3郭清,Roux-en-Y再建)を施行した。病理組織診断はtub2>por1,pT3(SS),pN2,pStage ⅢAであった。術後5 か月目に上腹部皮膚の発赤を自覚し当科に紹介受診した。CT検査で十二指腸切離端付近に腫瘤を認め右腹壁へ浸潤していた。胃癌再発と診断し,S-1 80 mg/body/day(2 週投与1 週休薬)の単独療法を開始した。2 コース後のCT 検査では腫瘍は著明に縮小し,6 か月後のCT 検査でCR と判断した。2 年6か月間のS-1内服を継続したが,内服終了してから3 年経過後も再発・転移は認めなかった。高齢者に対してS-1 単独療法は安全で有用な治療法であると考えられた。 -
Paclitaxel,S-1の逐次的投与にて5 年生存した腹膜播種陽性胃癌の1例
43巻2号(2016);View Description Hide Description症例は76 歳,男性。吐下血を主訴に受診し,精査加療となった。上部消化管内視鏡検査で露出血管を伴う胃潰瘍とともに3 型胃癌を認め,術中所見で腹膜播種を認めたため胃全摘,胆摘,腹膜播種切除を施行した。術後化学療法としてpaclitaxel,S-1を逐次的に投与し,大きな有害事象は認めず化学療法の継続性を保つことが可能であった。高齢,術後の体重減少などの化学療法継続に対するリスク因子を有しながら,術後5 年8 か月の長期生存が得られた症例を経験した。腹膜播種を伴う胃癌の長期生存はまれであり,若干の文献的考察を加えて報告する。 -
同時性肝・リンパ節転移を認め二期的切除を行った直腸カルチノイドの1 例
43巻2号(2016);View Description Hide Description症例は77 歳,女性。CT にて径45 mmの肝腫瘍を指摘された。下部消化管内視鏡検査にて下部直腸に10 mm強の粘膜下腫瘍を認め,neuroendocrinetumor(grade 2)と診断された。肝転移を伴う直腸カルチノイドの肝転移と診断し,侵襲の大きさ,合併症などから,まず肝切除術を行い二期的に直腸低位前方切除術を行った。病理検査にて直腸カルチノイドは径14 mm,リンパ節転移も4 か所認められた。術後はオクトレオチドLAR の投与を開始し,術後1 年8か月現在,無再発生存中である。 -
化学療法が著効し両側気胸を来した子宮平滑筋肉腫の1 例
43巻2号(2016);View Description Hide Description症例は52 歳,女性。2 経妊1 経産。多発肺転移を伴う子宮平滑筋肉腫に対して単純子宮全摘出術・両側付属器切除術を行い,術後docetaxel+gemcitabine療法を施行した。化学療法が著効し,1 サイクル実施後に両側気胸を認め,両側胸膜癒着術を行った。現在5 サイクルまで継続中であるが,気胸の再発,重篤な副作用は認めていない。化学療法中の気胸は比較的まれな合併症で,肉腫では多くが化学療法反応性の腫瘍壊死や腫瘍内出血が原因と考えられている。ドレナージのみで軽快せず手術や胸膜癒着術が追加されることも多く,治療継続を困難にする場合もあり注意が必要である。 -
Dose-Dense化学療法3サイクル目に急性の高尿酸血症と腎障害を発症しラスブリカーゼ投与により改善した後腹膜原発絨毛がんの1 例
43巻2号(2016);View Description Hide Description症例は32 歳,男性。後腹膜原発絨毛がん,多発肺転移,肝転移の診断。modified bleomycin,etoposide,cisplatin(BEP)療法を1 サイクル施行したがhCG 低下不良であり,GETUG 13 のdose-denseレジメンを実施した。3 サイクル目のcisplatin投与7日目に,急性の高尿酸血症および腎障害を認めた。高カリウム血症および高リン血症は認めなかった。腫瘍崩壊症候群に準じて補液およびラスブリカーゼを投与し,高尿酸血症および腎障害は改善した。 -
Pazopanib療法が奏効した仙骨脊索腫の1 例
43巻2号(2016);View Description Hide Description症例は70歳,男性。2 年ほど前から臀部の腫瘤を自覚していたが,痛みなどはないため放置していた。下肢の痛みと排尿障害が出現するようになり,当院を受診した。腫瘤生検で脊索腫と診断された。巨大なため切除は不能で放射線照射も適応外とされ,pazopanib療法を行った。腫瘤の縮小によりQOL が改善し,14か月無増悪を保っている。
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