Volume 43,
Issue 10,
2016
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総説
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癌と化学療法 43巻10号, 1141-1148 (2016);
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2012 年に改定されたがん対策推進基本計画では,「がん性疼痛をはじめとする苦痛のスクリーニングを診断時から行うなど,がん診療に緩和ケアを組み入れた診療体制を整備する」ことが明記された。痛みは早期から出現し,病状の進行や治療などに伴い,生活への影響が変化するため,診断時や入院時などに限定した調査では意味がない。さらに,一部の患者のみを抽出したスクリーニングでは,質問を受けなかった患者の痛みが明らかになることもなく,対応も期待できない。すべてのがん患者の痛みの有無を明らかにし,その痛みがどのように治療され,改善されたのかを追跡することが重要である。新たな痛みの発生を速やかにとらえられるよう,継続的にモニタリングすることで初めて診断時から終末期までの痛みや苦痛の緩和が可能になる。痛みのスクリーニングに際しては数字などによる痛みの強さの評価は,痛みによる生活への影響と同じではないため,NRS などのみの評価は生活の改善に結び付きにくい。われわれの研究では,”痛みでできないことや困っていること”がなくなることを治療のゴールとしたフィールドワークを行い,痛みによる生活への影響を担当医にフィードバックすることで,鎮痛薬の処方や増量に結び付くことを明らかした。がん診療においては,すべてのがん患者の病期や外来と入院,在宅などの療養の場によらず,痛みの生活への影響を尋ね,痛みに対して速やかに対応することが重要である。
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特集
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術前化学療法における予後の向上
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癌と化学療法 43巻10号, 1149-1156 (2016);
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原発乳癌に対する術前化学療法は乳癌のサブタイプにより治療効果および予後が異なることが明らかになり,術前化学療法の意義もサブタイプ別で異なるようになった。ER 陽性HER2 陰性であるLuminal タイプ乳癌では病理学的完全消失(pCR)率も低く,pCR が予後に影響しない一方,HER2 タイプ乳癌やトリプルネガティブタイプ乳癌ではpCR 率も高い上に予後良好の指標となることが示されている。しかし,Luminal タイプでも術後化学療法を要するような,いわゆるLuminalB タイプの見極めや術前化学療法の予後的意義や治療効果はさらなる検討が必要である。HER2 タイプ,トリプルネガティブタイプ乳癌に対しては,さらなる治療効果を期待できる新規薬剤の開発が進んでいるが,治療効果と医療経済効果を踏まえた新たな戦略を開発していくことが課題となる。
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癌と化学療法 43巻10号, 1157-1160 (2016);
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手術で切除する範囲の外に転移した微小な癌を死滅させることを目的として行うのが補助化学療法である。現在,標準的な補助化学療法の選択肢はD2 術後の1 年間のS-1 もしくは6 か月間のCapeOX であるが,Stage Ⅲの予後には改善の余地がある。強度の高い化学療法を高いコンプライアンスで行える術前補助化学療法(neoadjuvant chemotherapy: NAC)は魅力的であるが,本邦では未だ開発途上にある。二つのJCOG phaseⅡ試験結果からは,bulkyなリンパ節転移を有する胃癌に対する術前化学療法は有効であることが示されている。また,スキルス胃癌に対してはS-1+CDDP の有効性を検証するJCOG のphase Ⅲ試験が進められている。術前化学療法のレジメンとコース数を比較する二つのランダム化phase Ⅱ試験が施行されている。現在のところ,2 コースのS-1+CDDP もしくは3 コースのS-1+oxaliplatin によるNACがphaseⅢの候補として推奨され得る。
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癌と化学療法 43巻10号, 1161-1165 (2016);
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食道癌に対する補助化学療法はglobal standardであるCDDP+5-FU(FP)を用いて術後から始まり,術後と術前補助化学療法の比較試験により術前補助化学療法の有効性が証明された。しかし,臨床病期Ⅱ/Ⅲのなかでも進行した cT3 に対しFP 療法では不十分であったため,FP(CF)療法にドセタキセルを加えたDCF 療法と術前FP(CF)-RT 療法の実施可能試験が行われた。結果,術前DCF 療法と術前FP(CF)-RT 療法ともに安全に遂行可能であり,観察期間が短いものの予後の改善に期待が寄せられ,術前FP(CF)療法/術前DCF 療法/術前 FP(CF)-RT 療法の第Ⅲ相比較試験が現在進行中である。
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癌と化学療法 43巻10号, 1166-1170 (2016);
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背景: 膵癌は切除可能であっても未だ予後不良な疾患である。近年,膵癌治療において根治切除率および予後の向上を目的とした術前治療が注目されている。当院で2008年より行っているS-1 を用いた術前化学放射線療法(S1-CRT)の成績を報告する。方法:切除可能または切除境界膵癌79 例に対してS1-CRTを施行し,55 例(69.6%)に膵切除を施行した。周術期,病理所見および予後に関して検討を行った。結果:膵切除例55 例中52 例(94.5%)に治癒切除が可能となった。全79例の3 年生存率は40.1%で膵切除例55 例の3 年生存率は50.4%であった。考察: S1-CRT により比較的良好な術後中期治療成績が得られた。今後,長期成績の分析や新規薬剤による治療との比較によって術前化学放射線療法の意義を検討する必要がある。
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原著
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癌と化学療法 43巻10号, 1187-1192 (2016);
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triple-negative乳癌(TNBC)は,早期再発が多く予後不良で確立された標準療法もない。今回,TNBC に対する術後補助化学療法(ACT)の有用性を検討した。対象は,術後1 年以上経過のpTNM StageⅠ〜ⅢのTNBC 111(StageⅠ 45,StageⅡ 51,StageⅢ 15)例で,10 年無再発生存率(DFS),全生存率(OS)は,77.5%,86.0%であった。再発は17 例,初発再発部位は肺が7 例と最も多く,局所,骨,対側腋窩が次いだ。StageⅠ〜Ⅲの多変量解析(MVA)では,年齢がOS 良好,UFT がDFS良好,pT がDFS とOS 不良の有意変数であった。StageⅠは再発1 例と予後良好で,ACTはUFT 単独で十分と思われた。StageⅡ〜ⅢのMVAでは,UFTがDFS 良好の,放射線療法がDFS とOS良好の有意変数であった。さらに,UFT+静注(iv)ACT 群のOS がUFT 単独よりも良好で,UFT+iv ACT 併用が予後を改善する可能性が示唆された。
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癌と化学療法 43巻10号, 1193-1196 (2016);
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REGARD試験,RAINBOW試験の結果,進行再発胃癌に対する二次治療におけるramucirumab(RAM)単独療法,paclitaxel(PTX)+RAM療法の有効性が示された。今回,当院で経験したRAM使用例の安全性と臨床的効果を後方視的に検討した。方法:前治療に耐性となり,2015年6 月〜2016 年3 月にRAMを使用して化学療法を行った進行再発胃癌患者23例を対象とした。RAM 8 mg/kgは day 1,15 に投与し,PTXを併用する場合はRAM投与後にPTX 80 mg/m2をday 1,8,15 に投与した。RAM 単独療法を行った10 例をRAM 群,PTX+RAM 療法を行った13 例をPTX+RAM 群として,安全性,治療経過,臨床的効果,無増悪生存期間(PFS),全生存期間(OS)について両群を比較した。結果: RAM群には,PTX+RAM 群と比較してPS が不良な症例や三次治療以後の症例が多く含まれていた。RAM 群,PTX+RAM 群ともにすべて外来で治療を行った。RAM群,PTX+RAM群のgrade 3 以上の血液毒性はそれぞれ1 例,6 例であった。臨床的効果において,奏効例はRAM群で1 例(10%),PTX+RAM群で4 例(30%)に認めた。PFS はそれぞれ54 日,187 日(p=0.0374),OS はそれぞれ158日,50%に未到達であった(p=0.1091)。結語:化学療法の前治療歴のある進行再発胃癌に対して,RAMを使用した治療法は安全に外来で施行可能で効果も期待できる。
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癌と化学療法 43巻10号, 1197-1200 (2016);
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背景: 海外においてプラチナ感受性再発患者に対する第Ⅲ相試験(OCEAN試験)やプラチナ抵抗性再発患者に対する第Ⅲ相試験(AURELIA 試験)が行われ,ともに無増悪生存期間の有意な延長を認めており,根治困難である再発卵巣がん患者が使用を強く望まれることが多い。方法:文書によるインフォームド・コンセントを行った上で,抗がん剤と併用しbevacizumab(Bmab)を用いた再発卵巣がん患者について後方視的検討を行った。成績: 2013 年11 月〜2015年9 月までに,20 例の再発卵巣がん患者にBmabが投与されていた。年齢の中央値は58(32〜81)歳,プラチナ感受性症例は20 例中6 例であった。Bmabの投与サイクルは中央値で8(1〜21)サイクルであり,測定可能病変を有する14 例でresponse rate 50.0%,disease control rateが57.1%であった。また,有害事象などによりBmab投与が中止となったのは11 例であった。結語:再発卵巣がんに対するBmab投与は,安全に施行可能であった。
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薬事
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癌と化学療法 43巻10号, 1201-1205 (2016);
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海外の第Ⅲ相臨床試験では,切除不能進行・再発大腸がん患者の臨床効果においてCOX レジメンに対するSOXレジメンの非劣性が証明された。この報告を受け,われわれは本邦でどちらの治療法が優れた費用対効果をもたらすか臨床判断分析法により検討を行った。方法は,二つの治療法の期待効果と費用をマルコフモデルで5 年間のシミュレーションを行った。モデルに組み込んだ臨床データは,2012年にHongらが報告した臨床試験成績を加工して数値を得た。費用データは,薬剤師の人件費,医療材料費,検査費,薬剤費,有害事象治療費,進行期の総治療費とした。その結果,SOX レジメンとCOX レジメンの期待費用は各々1,538,330 円,1,429,596 円であり,期待生存期間は29.18 か月,28.63 か月であった。COX レジメンに対する SOX レジメンの増分費用効果比は 197,698 円/月であり,SOX レジメンは費用対効果の面で COXレジメンに劣ることがない治療法であることが示唆された。
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症例
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癌と化学療法 43巻10号, 1207-1209 (2016);
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初回診断時64 歳,女性。肝S7 単発肝転移多発リンパ節転移陽性の胃体上部2 型胃癌に対してT4a(SE)N2H1,Stage Ⅳと診断し,化学療法を施行。生検でのHER2 はIHC 2+であったが主治医の不注意によりFISH 法は行わず,trastuzumabを併用しないSP 療法を施行し奏効度はPR で,胃全摘+膵脾合併切除+D2郭清,肝後区域切除を一期的に施行した。切除標本の病理結果はT2N0H1,Stage Ⅳで,HER2 はIHC 0 であった。術後化学療法はS-1 を1 年間内服。術後1 年1か月よりCA19-9 が上昇し,画像上で多発肺転移,膵切除断端部リンパ節転移を認めた。trastuzumab を併用しないXELOX療法を導入したがPD であった。再発診断後に術前生検標本のHER2 を確認すると陽性で,XELOX 後にtrastuzumab併用weekly paclitaxelに変更。その後CA19-9が正常化し,画像上もCR に近いPR が得られた。以後も同療法を継続している。主治医の不注意から生検検体でのHER2 を確認せず興味深い経過を示した1 例を経験し,反省も交えて報告する。
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癌と化学療法 43巻10号, 1211-1214 (2016);
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Human epidermal growth factor receptor 2(HER2)陽性の肝転移を伴うStageⅣ進行胃癌に対してtrastuzumab+capecitabine+cisplatin(T-XP)療法を行った後,原発巣を手術した症例を経験した。症例は73 歳,男性。足白癬の治療の際に施行した血液生化学検査で肝機能異常を指摘されたため,2012 年12 月当院を受診した。CT および上部消化管内視鏡検査で肝転移を伴う胃癌と診断し,生検で中分化型腺癌,HER2は3+であった。T-XP療法を5 コース施行した後,2013 年3月に幽門側胃切除,D2 郭清,BillrothⅠ法再建術を行った。摘出胃と領域リンパ節には病理組織学的な悪性所見はなかった。術後1 か月目よりS-1の内服を開始した。19 コース施行後,食欲不振のためS-1 は中止した。診断より36 か月経過したが,肝転移は消失している。
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癌と化学療法 43巻10号, 1215-1218 (2016);
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症例は63 歳,男性。ふらつきと体重減少を認め近医受診。貧血と胃腫瘍を指摘され,当院紹介となる。上部消化管内視鏡検査にて胃前庭部胃癌と診断された。CT 検査にて肝S4 に62 mm,S8 に26 mmの肝転移を認めた。幽門側胃切除術・D2 郭清を施行。術後S-1単独療法を2 コース施行。肝転移はS4 が52 mm,S8 が16 mmに縮小し,他の病変を認めなかったため肝左葉切除術・S8 部分切除術を施行した。組織学的効果判定はS4 腫瘍がGrade 1b,S8 腫瘍がGrade 3 と診断された。術後補助化学療法にS-1内服を1 年間投与した。肝切除後4 年6か月,無再発生存中である。
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癌と化学療法 43巻10号, 1219-1222 (2016);
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症例は71 歳,女性。1987年に前医で左乳癌に対して乳房切除術および腋窩郭清術を施行。病理診断は硬癌,n(4/19),ER(+),PgR(+),HER2(0)。術後補助療法として5-fluorouracil+tamoxifenを2 年間内服した。2002 年に骨転移を認め,内分泌療法[anastrozole,exemestane(EXE),letrozole,medroxyprogesterone acetate,fulvestrant]を順次施行した。肝・肺・胸膜・腹膜・リンパ節転移,胸腹水が出現し,化学療法に変更。cyclophosphamide/adriamycin/5-fluorouracil,capecitabine,paclitaxel,vinorelbine,gemcitabine,methotrexate+mitomycin C を順次施行したが増悪。2013年10 月,自宅に近い当院を紹介され初診。その後,eribulin を投与したが血小板減少のため中止。2013 年12 月よりethinylestradiol(EE2)によるエストロゲン療法を開始したところ3か月後に胸水は消失し,腹水も減少,肝転移も縮小し,腫瘍マーカー値も低下した。2014 年11 月に肝転移増悪,胸水貯留のため,everolimus+EXE を開始した。2 か月後に肝転移改善,胸水減少,腫瘍マーカー値も低下した。EE2およびeverolimusは,閉経後ホルモン陽性再発乳癌のlate line においても有用な治療選択肢になり得ることが示唆された。
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癌と化学療法 43巻10号, 1223-1226 (2016);
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胸水は骨髄系腫瘍の合併症としてまれであるが,骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍,特に白血球増多が著明な慢性骨髄単球性白血病(chronic myelomonocytic leukemia: CMML)や骨髄線維化を伴う造血器腫瘍にしばしば合併する。今回われわれは,hydroxycarbamide による細胞減少療法中に末=血中の白血球数コントロールは良好であったにもかかわらず,急激な経過で大量の胸水貯留を来した骨髄線維化を伴うCMML 症例を経験した。胸腔鏡検査を含む精査を行うも胸水貯留の原因を同定することはできなかったが,骨髄増殖性腫瘍や骨髄線維化を伴う造血器腫瘍に化学療法を行う際には,骨髄中や末=血中での芽球数や白血球数がコントロールされていても胸水貯留の可能性があり,注意深いモニタリングが必要であると考えられた。
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癌と化学療法 43巻10号, 1227-1230 (2016);
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症例は68 歳,女性。左腋窩腫瘤を主訴に受診した。CT で左腋窩から鎖骨上までの多発リンパ節腫大を認め,MRIやPET で原発巣を指摘できなかった。針生検の結果,原発不明HER2陽性腺癌,腋窩リンパ節転移と診断した。乳癌治療に準じ,doxorubicinおよびcyclophosphamide(AC)療法,paclitaxelおよびtrastuzumab併用療法を各3 コース施行した結果,画像上リンパ節腫大はほぼ消失した。胸筋温存乳房切除術を施行し,病理学的完全奏効(pathological complete response:pCR)と診断された。術後trastuzumab投与を継続し,術後1 年再発なく経過している。
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特別寄稿
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第37回癌免疫外科研究会
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癌と化学療法 43巻10号, 1233-1236 (2016);
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fulvestrant が長期間奏効した内分泌受容体陽性の多臓器にわたる転移・再発乳癌症例に対して,その治療経過中のindoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)の発現程度を検討した。初診時より定期的に採血を施行し,HPLC を用いてtrypto-phan(Trp)と kynurenine(Kyn)を測定し,Trp/Kynratio から IDOの activityを測定した。術後多臓器多発性転移発生時には再発発見前に比べて有意に末梢血中のTrp/Kynratio が低かった。fulvestrant投与後に胸水消失時,リンパ節縮小時と時間を追って Trp/Kynratio が回復していった。fulvestrant による治療の効果判定に IDO の activity を測定することは有用であると考えられた。
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癌と化学療法 43巻10号, 1237-1239 (2016);
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trastuzumab(Tmab)は,human epidermal growth factor receptor 2(HER2)に対するヒト化モノクローナル抗体で,現在乳癌や胃癌に対して臨床使用され予後を改善しているが,HER2の低発現(約20%)やTmab抵抗性の問題がある。Tmab抵抗例に対して新たなHER2 標的製剤が開発されているが胃癌に対して臨床的に有効なものはまだなく,新たな治療法が望まれる。ナノ技術はその発展に伴い医療へ応用されてきている。金ナノ粒子は生体内での安定性と表面修飾の容易性などの特性があり,autophagy やoxidative stress を介したアポトーシスを誘導することも報告されている。われわれは,HER2 標的金ナノ粒子製剤(Tmab-AuNPs)を作製し,Tmab抵抗性胃癌細胞株に対する抗腫瘍効果とHER2細胞外領域を強制発現させたHER2 陰性株に対する抗腫瘍効果を確認しており,Tmab-AuNPs がTmab 抵抗性胃癌に対する新たなHER2 標的製剤になり得ると考えている。
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癌と化学療法 43巻10号, 1240-1242 (2016);
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症例は63 歳,男性。主訴はつかえ感。上部消化管内視鏡検査や上部消化管造影検査で,胸部下部食道から食道胃接合部にわたる腫瘍長径75 mm,全周性の2 型病変を認めた。腫瘍中心は27 mm食道胃接合部よりも食道側であり,Siewert分類typeⅠと診断,生検では腺癌,HER2(IHC 3+)であった。術前診断は胃癌取扱い規約第14 版でcT3,N1,M1(LYMNo. 108),cStage Ⅳ,食道癌取扱い規約第10 版でcT3,N2,M0,cStage Ⅲであり,術前化学療法後に切除の方針とし,capecitabine+cisplatin+trastuzumab療法を開始した。2 コースごとに画像評価を行いながら治療を継続し,合計6 コース施行後の画像効果判定は原発巣とリンパ節ともにpartial response で,新規病変の出現を認めなかった。右開胸開腹胸部食道亜全摘,胸骨後亜全胃再建,D2 郭清術を施行した。病理結果は胃癌取扱い規約に準ずると,T3,N2(No. 7,No. 111),M0,Stage Ⅲで病理組織学的効果判定はGrade 1bであった。術後補助療法は末梢神経障害の残存のため施行せず,治療開始後1年7 か月間無再発生存中である。
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癌と化学療法 43巻10号, 1243-1245 (2016);
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消化管癌周術期におけるneutrophil lymphocyte ratio(NLR)の意義を検討した。対象と方法:消化管癌切除を施行した46 例(胃癌21 例,大腸癌25 例)を対象に,術前のNLR と栄養状態の指標との関連および術後合併症の発生(全合併症,感染性合併症)との関連を検討した。結果:術前NLR は血中ビタミンB1濃度(VB1)と血中ビタミンC 濃度(VC)では関連がみられなかったが,亜鉛<65 mg,PNI≦40,mGPS score 2 で高値であった(p<0.05)。全合併症の有無(発生あり12 例)ではNLR に差がみられなかったが,感染性合併症発生あり(6 例)では,なしと比べてNLRが高値であった(p<0.05)。結語: 術前のNLR は栄養状態の指標との関連もみられ,感染性合併症の予測因子となる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 43巻10号, 1246-1248 (2016);
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肥満は免疫調節機構を変化させ,免疫力の低下を来すことが報告されている。担癌状態の免疫調節機構において,肥満の程度が大きいほどリンパ球の活性は低くなると考えられる。乳癌への化学療法剤投与時における肥満とリンパ球の関連性について検討した。過去2 年間に当科で経験した進行・再発乳癌に対し,エリブリンを投与した10 例を対象とした。対象をbody mass index(BMI)値を用いて,BMI 25 未満を非肥満群,25 以上を肥満群と分類した。エリブリン初回投与前,エリブリン投与day 8 で採血を施行し,エリブリン投与前後におけるリンパ球数の減少率について検討を行った。非肥満群6例,肥満群は4 例であった。エリブリン投与前後でのリンパ球数の減少率の平均値は,非肥満群13.3%,肥満群で12.3%であり,差を認めなかった。
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癌と化学療法 43巻10号, 1249-1251 (2016);
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近年,分子標的治療薬を含め数多くの新薬の登場により,乳がんの治療成績は著しく向上した。一方,トリプルネガティブ乳がん(TNBC)においては,特に進行再発例に対する有効な治療法が未だ少なく,ホルモンレセプター陽性乳がん(Luminal type)やHER2 陽性乳がんに比べ予後は不良である。また,乳癌の治療効果に腫瘍免疫は深く関与することが確認されており,抗腫瘍免疫を誘導する治療法がますます注目されるようになってきている。われわれが行ってきた進行転移性乳癌に対するテーラーメイド型ペプチドワクチン(PV)の臨床試験(phaseⅡ)では,PV 投与により抗腫瘍免疫反応が誘導され,TNBC に対しても臨床的有用性が示唆された。これらの結果を踏まえ,TNBC を対象とする19 種の混合PV ワクチン(KRM-19)による早期第Ⅱ相試験を開始し,新たな治療戦略としての可能性を検討している。
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癌と化学療法 43巻10号, 1252-1255 (2016);
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目的:多種の進行癌に対するWT1 class Ⅰ型ペプチドとWT1 class Ⅱ型ペプチドをパルスした樹状細胞療法の成績を明らかにする。対象および方法:この研究は後向きに調査し,新横浜かとうクリニック(当院)において2013 年9 月〜2015年12 月までに樹状細胞がんワクチンを5 回以上接種した60 例を対象とし,その臨床効果を解析した。当治療は当院の倫理委員会の承認を得ている。結果: 60 例は,投与回数平均6.15 回,平均 2.6×10 / 7個回の樹状細胞を接種した。60 例中55例がRECIST v1.1で臨床評価できた。診断時からの全生存期間は中央値26.9 か月,当院初診からの生存期間12.2 か月(1 年生存率47.6%),CR 9.1%(5例),PR 22%(12例),SD 38%(21例),PD 31%(17例)の治療効果があり,膵癌は11例,response rate(RR)・disease control rate(DCR)は,27%・55%,大腸癌8 例,25%・75%,肺癌7 例,29%・43%,胃癌7 例,71%・86%,その他の癌22 例,23%・74%の癌腫別に違いがあったが,この結果からは,樹状細胞を使った免疫療法が一定の臨床効果がある可能性が示唆された。
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癌と化学療法 43巻10号, 1256-1258 (2016);
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症例は57 歳(1999年当時),女性。当院産婦人科で,卵巣癌に対する手術の際にS 状結腸癌を発見され,同時に根治切除を施行した。術後の病理検査でS 状結腸癌同時性の卵巣転移と診断され,以後当科にて補助化学療法を施行した。補助化学療法は LV 25 mg+5-FU 500 mg/body の 5 日間連続投与を 5 週ごとというレジメンで導入し,以後同量を週 1 回投与へ変更,徐々に投与間隔を空け,術後約2 年間継続した。その後,10 年間の経過観察中に再発を認めなかったが,術後10 年後のCT 検査で骨盤内の腹膜再発と甲状腺腫瘍(甲状腺癌疑い)を認めた。腹膜再発巣切除を試みたが,R2切除となり抗癌剤治療のため,甲状腺腫瘍切除を先行したが,病理所見では大腸癌の転移であった。mFOLFOX6+bevacizumabを開始,6コース後有害事象のためL-OHP を休薬して継続した。いったんは腹膜播種病変の縮小を認めたが,有害事象のため徐々に化学療法の継続は困難となり,化学療法開始後約11か月で肺,骨転移を来し原癌死した。
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癌と化学療法 43巻10号, 1259-1261 (2016);
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食道癌患者では種々の併存疾患を有することが多く,治療選択に難渋することがある。われわれは,間質性肺炎を合併した食道癌患者に対し,放射線化学療法後に鏡視下経裂孔的食道切除を施行した症例を経験したので報告する。症例はステロイドにて加療中の間質性肺炎を合併する77 歳,男性。通過障害に対し上部消化管内視鏡検査を施行したところ,食道癌と診断され,当科紹介となった。初診時のCTにてT4 が疑われたため,放射線化学療法を施行したところ腫瘍は縮小したが,食道狭窄により経口摂取が困難となった。術後呼吸器合併症のリスクが高いと判断し,非開胸の手術として鏡視下経裂孔的食道切除,胃管再建を施行した。術後一時的に気管切開を必要としたが,最終的には気管切開チューブは抜去でき,経口摂取も可能となった。縦郭の狭い空間でも鏡視下に行うことで周囲臓器の損傷なく非開胸の食道切除が可能であった。
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癌と化学療法 43巻10号, 1262-1264 (2016);
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症例は65 歳,男性。2010年8 月からの嗄声を主訴に来院した。胸部中部食道と胃角部小弯側に1 型病変を認め,生検でそれぞれ扁平上皮癌と腺癌であった。胸腹部CT 検査では#101R,#106recL,#1,#3のリンパ節腫大を認め,リンパ節を介して両側反回神経浸潤が疑われた。遠隔転移はなく,同時性進行食道(cT4N2M0,cStage Ⅳ)・胃(cT3N1M0,cStageⅡB)重複癌と診断した。両側反回神経浸潤が疑われることから根治切除は困難と判断し,全身化学療法として,2010 年10月よりDCS療法を開始した。DCS 療法後,食道および胃の原発巣はPR であったが,反回神経周囲のリンパ節は残存していた。食道癌の根治目的に2011年1 月から化学放射線治療(FP 療法+60 Gy)を施行し,効果判定は食道癌はCR,胃癌はPRだった。2011年5月に残存する胃病変に対して幽門側胃切除術を施行した。術後は化学療法を施行せず,治療開始より5 年6 か月無再発生存中である。
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癌と化学療法 43巻10号, 1265-1267 (2016);
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当院で Cur A 切除を施行した pT3 以深の Stage Ⅱ/Ⅲ大腸癌症例 314 例を検討対象とした。75 歳以上を高齢群,75歳未満を非高齢群とし,高齢者における臨床病理学的因子を検討した。高齢群は術前の併存症は高率で栄養不良例が多く,術前状態を考慮してリンパ節郭清度が低く,手術が短時間であった。術後補助化学療法施行率も有意に少なかったが,5 年生存率および3 年無再発生存率に差はなかった。高齢者では治癒切除が得られれば,定型的手術にこだわらず縮小手術でも非高齢者と同等の予後が期待できると考える。
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癌と化学療法 43巻10号, 1268-1270 (2016);
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膵切除後患者では,膵内分泌機能低下により術後糖尿病となる頻度が高く,適切な血糖管理を要することが多い。2010年1 月〜2015年12 月に当院で膵切除を施行した54 例について,術前・術後の膵内分泌機能の変動を検討した。膵頭十二指腸切除は42 例で,術前糖尿病であった症例は15 例(36%),うち7 例(17%)にインスリンが投与されていた。術後は16例(38%)に糖尿病を認め,12 例(29%)にインスリンが投与された。術前非糖尿病型で,術後新たに糖尿病を発症した症例は1 例であった。膵体尾部切除は10 例で,術前糖尿病であった症例は6 例(60%),うち2 例(20%)にインスリンが投与されていた。術後は6 例に糖尿病を認め,4 例(40%)にインスリンが投与された。術前非糖尿病型で,術後新たにインスリンを必要とする症例は認めなかった。部分切除は2 例で,いずれも術前に糖尿病を認め内服薬を投与し,術後も内服薬で管理した。
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癌と化学療法 43巻10号, 1271-1273 (2016);
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2015年6 月〜2016年4 月,当院においてメラノーマと肺癌を除いた19 例の悪性腫瘍に免疫チェックポイント阻害薬を投与した。うち3 例(膵癌,食道癌,脳悪性リンパ腫)に著効した。有効例では,始めの数回で著効を示している。樹状細胞療法などの先行が望ましく,抗癌剤は同時併用時は強力なものは好ましくないと思われた。
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癌と化学療法 43巻10号, 1274-1276 (2016);
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様々な乳癌手術術式における免疫学的侵襲程度を検討した。当科で経験した乳腺疾患17 症例を対象とした。全身麻酔下乳管腺葉区域切除術(n=5)(A群),全身麻酔下乳房円状部分切除術+センチネルリンパ節生検術(n=4)(B群),全身麻酔下胸筋温存乳房切除術+センチネルリンパ節生検術(n=5)(C群),全身麻酔下胸筋温存乳房切除術+腋窩リンパ節郭清術(n=3)(D群)について,術前,術直後,術後2 週間に採血を行い,immunosuppressive acidic protein(IAP)とIL-6 値を測定した。術直後のIAPは各群間に差を認めなかった。術直後のIL-6 はA群で最も低かった。術前,術後2 週間におけるIAP,IL-6値は各群間で差を認めなかった。IL-6 は麻酔時間が長いほど高かった。乳癌における手術侵襲は術式によって,あまり変わらなかった。麻酔時間とIL-6が相関したことから,術中迅速診断の時間短縮が手術侵襲を低下させる要因となることが示唆された。
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癌と化学療法 43巻10号, 1277-1279 (2016);
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症例は81 歳,男性。噴門部癌に対して胃全摘術+D2 郭清+Roux-en-Y 再建を施行した。術後3 日目よりWBC12,000/mL,CRP 29.983 mg/dL と上昇し術後合併症精査目的にて,腹部造影 CT 検査を施行した。食道空腸吻合部周囲にfree airを認め,縫合不全と診断した。縫合不全部に対して,術後10 日目に12 Fr サンプチューブへ入れ替え,術後13 日目に経鼻内視鏡を施行し,縫合不全部より腹腔内に留置したサンプチューブを確認し,術後20 日目に施行した内視鏡では縫合不全は送気にて瘻孔を確認できる程度に改善していた。術後28 日に経口再開するも問題なく経過された。縫合不全を疑うまたは診断された場合,施行する内視鏡は慎重を要するとの意見が散見される。縫合不全部に対して内視鏡を施行することが治療の一助となり得ると考えられた。
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癌と化学療法 43巻10号, 1280-1282 (2016);
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背景: 早期胃癌に対し近年,幽門保存胃切除術が施行されており,術後機能障害予防に対する有用性の報告がなされている。今回われわれは,当院における腹腔鏡補助下幽門保存胃切除術例の短期成績の検討を行った。対象と方法:当科で2013〜2015 年に腹腔鏡補助下幽門保存胃切除術を施行した10 例を対象とし,短期成績につきretrospective に検討を行った。結果: 周術期の合併症として,開腹移行例はなく術後再手術を要する例もなかった。1 年後の相対体重(現在/術前)は94.8%であった。1 年後の術後機能障害による症状が出現した7 例では,嘔気,下痢,腹満,嘔吐がそれぞれ1 例ずつであった。まとめ:腹腔鏡補助下幽門保存胃切除術症例の術後1 年目の相対体重は維持されており,機能障害による種々の症状の出現も少なかった。
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癌と化学療法 43巻10号, 1283-1285 (2016);
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皮膚浸潤を伴う局所進行乳癌はquality of life(QOL)を著しく低下させる。しかし,他臓器転移のない場合,病巣を抱えたまま長い生存期間を得られることも少なくない。Mohs ペーストは皮膚潰瘍を伴う局所進行乳癌に有用であることが多数報告されている。局所進行乳癌におけるMohsペースト使用時のimmunosuppressive acidic protein(IAP)とC-reactiveprotein(CRP)の変化を測定し,本治療法における全身の免疫に及ぼす影響を検討した。治療開始前,2 回終了時,5 回終了時に採血し,血液中のIAP値,CRP 値を測定した。IAP値は治療経過中に有意な変化は認めなかった。CRP 値はMohsペースト治療開始前,2 回終了時,5 回終了時と回数を追うに従って有意に低下した。Mohsペーストは全身の免疫学的に侵襲が少なく,皮膚浸潤を伴う局所進行乳癌に対して安全な治療法であると考えられた。
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癌と化学療法 43巻10号, 1286-1288 (2016);
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症例は30 歳,女性。胃癌の既往があり2009年3 月に胃全摘脾合併切除術を施行され,病理組織学的診断はU,Less,Type 2,pap,ly0,v2,pT3(SE)N2,M0,fStage ⅢBであった。腹膜播種再発に対し,weekly paclitaxel療法施行中の2010年2 月に頭痛,悪心・嘔吐,めまいが出現した。精査の結果,左小脳半球に28 mm大の転移性脳腫瘍と小脳腫脹,水頭症を認め,緊急後頭下開頭腫瘍摘出術を施行した。脳腫瘍の病理組織所見は,胃癌の転移として矛盾しなかった。術後biweeklyCPT-11+cisplatin 療法を開始したが,有害事象によるコンプライアンス低下と再発所見を認めないことから,2011 年4 月に化学療法を中止とした。現在,小脳転移術後6 年無再発生存中である。
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癌と化学療法 43巻10号, 1289-1291 (2016);
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今回われわれは,自己免疫性膵炎および関連胆管炎の経過観察中に膵癌を発症した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。症例は74 歳,男性。2014 年10 月から自己免疫性膵炎および関連胆管炎の診断で,当院内科にてステロイドの内服治療を受けていた。2015年11 月,CA19-9とIgG4 値の上昇傾向認めた。computed tomography検査で膵頭部に腫瘤性病変を認め,さらにpositron emission tomography 検査でも膵頭部に軽度の集積(SUVmax 4.32)を認めた。内視鏡下での細胞診検査などでは悪性像はみられなかったが,画像上から膵頭部癌(cT2N0M0)の診断で手術の方針となった。手術は亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行し,術後膵液漏と胃排泄遅延を認めたが,術後45 日目に軽快退院となった。摘出検体の肉眼所見は,膵頭部に20 mm程度の灰白色調充実性腫瘤性病変を認めた。病理組織学的所見では腫瘍は膵頭部に認めたが,周囲組織への浸潤およびリンパ節転移は認めなかった。一方で,非腫瘍部の間質にはIgG4 陽性細胞を50%以上認め,IgG4関連自己免疫性膵炎と診断された。現在,外来でステロイド併用の上,術後S-1補助化学療法施行中である。
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癌と化学療法 43巻10号, 1292-1294 (2016);
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症例は78 歳,男性。痔核の脱出を主訴に当科を初診した。肛門周囲皮膚に発赤と肥厚を認め,皮膚科に紹介となった。生検で乳房外Paget病と診断された。原発部位検索で肛門ポリープを生検したところ腺癌が検出され,Pagetoid spreadを伴う早期肛門管癌と診断し,根治手術を施行した。手術は皮膚病変を含めた腹会陰式直腸切断術(リンパ節郭清はD2 prx D3)を施行し,薄筋皮弁で会陰部の再建を行った。病理組織学的にはpapillary adenocarcinoma,pSM(5.5 mm),pN0,ly0,v1,pStageⅠで,補助化学療法は施行せず経過観察とした。術後2 年4か月後に施行したCT で多発肝転移を,PET 検査では椎骨,肋骨,外腸骨リンパ節にも集積を認め,多発肝転移,多発骨転移,リンパ節転移と診断した(K-ras 野生型,UGT1A1野生型)。一次治療としてXELOX+bevacizumabを開始し,5コース終了後には肝転移の著明な縮小を認めたが,骨転移は増加,増悪した。二次治療としてIRIS+bevacizumabを開始したが,1コース目よりGrade 3 の血液毒性出現,4コース終了後有害事象のため継続困難と判断した。疼痛も増悪し,肝転移はほぼ消失したが化学療法開始後約11 か月で原癌死した。
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癌と化学療法 43巻10号, 1295-1297 (2016);
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良性・悪性の乳腺嚢胞内病変における液性成分中のindoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)の発現程度を検討した。良性病変3例,悪性病変5 例を対象とした。嚢胞内液体成分を採取し,HPLC を用いてtryptophan(Trp)とkynurenine(Kyn)を測定し,Trp/Kyn ratioからIDO の activityを測定した。全症例の平均年齢は61.2 歳であった。良性群と悪性群の背景因子に有意な差を認めなかった。針生検による病理組織診断は乳管内乳頭腫3 例,乳癌5 例であった。嚢胞内液体成分の細胞診結果は,良性例は全例class Ⅲ,悪性症例はclass Ⅲ 3 例,class Ⅳ 2 例であった。嚢胞内の液性成分のTrp/Kyn ratioは,悪性群に比べて良性群が有意に高かった。乳腺に発症する嚢胞内腫瘍に関する良性・悪性の鑑別に,嚢胞内の液性成分中のTrp/Kyn ratioを測定することは有用である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 43巻10号, 1298-1300 (2016);
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MLH1 プロモーター領域のメチル化によるミスマッチ修復機能不全は高度マイクロサテライト不安定性(microsatelliteinstability: MSI-H)と強い相関があり,このような特徴を有する腫瘍では5-FU などの抗癌剤に耐性との報告がある。今回,高齢者胃癌を対象としてミスマッチ修復(mismatch repair: MMR)蛋白に対する免疫組織化学染色(immunohistochemistry:IHC)による網羅的スクリーニングを行い,免疫染色欠失症例(dMMR)の頻度や特徴から,その治療法について検討した。2005 年4 月〜2014 年1 月までに胃切除術を施行した75 歳以上の胃癌患者199 例を対象とした。dMMR は23 例(12%)であり,dMMRはすべてMLH1とPMS2が欠失しており,MSH6の欠失は認めなかった。dMMRは正常発現(pMMR)に比べて年齢が高く(p=0.03),女性(p<0.01),L領域(p<0.01)で有意に多かった。高齢者胃癌のdMMRの頻度を考慮すると,今後に期待される免疫チェックポイント阻害剤の適応となる症例は少ないと思われた。
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癌と化学療法 43巻10号, 1301-1303 (2016);
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大腸癌における血清p53 抗体値測定の意義について検討した。対象は多発癌・重複癌を除く前治療歴がない大腸癌239例で,血清p53抗体値と臨床病理学的因子,予後との関連について検討した。術前血清p53 抗体値の陽性率は28.9%であった。p53抗体値は臨床病理学的因子や進行度との関連は認めなかった。予後との関連についてみると,p53 抗体値は再発の有無との関連は認められず,生存率にも差は認めなかった。治癒切除後に継続的に血清p53 抗体値を測定した例でみると,術後血清p53抗体値が正常化した例では再発が少ない傾向であり,術後のp53 抗体値の推移では継続的に漸減している例に再発が少なかった(p=0.0008)。大腸癌における術前血清p53 抗体値は臨床病理学的因子との関連は認められず,予後との関連も認めなかった。その一方で,術前血清p53抗体陽性例では,術後の血清p53 抗体値の推移が再発の指標となり得ると考えられた。