Volume 43,
Issue 11,
2016
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総説
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癌と化学療法 43巻11号, 1311-1315 (2016);
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日本の医療保険制度は,「全ての人が必要な医療サービスを金銭的な困難なく享受できる」というユニバーサル・ヘルス・カバレッジの理想に近いものとして世界でも評価されてきた。しかしながら,高齢化や高額な抗がん剤などの出現により,その財政は圧迫され,現行の医療制度の維持が脅かされている。なかでもオプジーボは,使用すれば日本の医療制度が崩壊するかもしれないと報じられ,大きな議論を呼んだ。日本と同じような公的医療保険制度を有する諸外国では,医療技術の保険償還や償還価格の決定に医療技術評価を導入している。英国では,英国国立医療技術評価機構(NICE)が増分費用効果比を用いて費用対効果を評価している。日本も医療技術評価の試行的導入が決定し,2016 年度からその試みが始まっている。しかし,費用対効果評価の利用は日本と英国で異なっており,英国は保険償還と償還価格両方の決定に利用するのに対し,日本では償還価格の決定のみにとどまっている。日本に費用対効果評価を導入すれば患者の医薬品医療機器へのアクセスを阻害する可能性があるとの批判もある。しかしながら,費用対効果評価は増大しつづける日本の医療費への対策であり,これによって持続的な医療保険制度の維持が可能となり,ひいては患者の必要な医薬品へのアクセスを担保することになるのである。
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特集
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遺伝子プロファイリングと癌治療
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癌と化学療法 43巻11号, 1316-1320 (2016);
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近年,卵巣癌についてゲノムワイドな解析が進められている。卵巣高異型度漿液性癌(HGSOC)は,TP53遺伝子の体細胞変異がほとんどの症例で認められ,染色体コピー数異常が著明である。HGSOC のうちおよそ20%の症例でBRCA 遺伝子変異が認められるが,それらの症例にはPARP 阻害剤が有用である。HGSOC は遺伝子発現プロファイルにより予後や薬剤感受性が異なり,病理組織学的にも特徴付けられる4 サブタイプに分類される。またHGSOC の全ゲノム解析により,化学療法耐性にかかわる様々な原因が明らかになっている。一方,化学療法抵抗性の卵巣明細胞癌(OCCC)では,子宮内膜症性囊胞内の発がん機序に酸化ストレスが関与している。OCCC 特異的に発現する遺伝子には,HNF1Bやその下流遺伝子,さらに酸化ストレスに関連する遺伝子が高発現している。HNF1B はOCCC 細胞において,酸化ストレス抵抗性およびプラチナ抵抗性をもたらす。今後,このようなOCCC の性質に基づき,新規治療法の開発が期待される。
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癌と化学療法 43巻11号, 1321-1325 (2016);
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近年,肺がんではいくつもの発がんにかかわるドライバー遺伝子異常が同定され,各遺伝子異常に対する個別化治療が開発されてきている。その背景には次世代シークエンサーなどの遺伝子解析技術の進化があり,一度に大量の遺伝子解析が可能になったことが大きく貢献している。さらに,免疫チェックポイント阻害治療も本邦で可能となり,その個別化の手法が探られている。患者検体を用いて治療標的となり得る遺伝子異常を横断的に診断するクリニカルシークエンスが国内外で開始され,今後,遺伝子異常に基づく効率的で効果的な治療戦略の確立(precision medicine)が期待されている。本稿では肺がんの個別化治療研究と今後の展望について述べる。
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癌と化学療法 43巻11号, 1326-1331 (2016);
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膵癌は最難治癌の一つであり,その治療開発は急務である。近年,がんに対する治療戦略を決める上でゲノムバイオマーカーの有用性が示されており,いくつかの癌腫では実臨床においても治療薬の選択に実際に利用されている。一方,膵癌においてはゲノムバイオマーカーに基づいた個別化医療は未だ実現しておらず,適切な治療標的も明らかになっていない。膵癌ではKRAS,CDKN2A,TP53,SMAD4の4 遺伝子が主要なドライバー遺伝子であるが,いずれも治療標的とすることが困難とされている。しかし,近年ゲノムシークエンスによって膵癌の分子生物学的特徴が明らかになりつつあり,新たな治療標的の発見や低頻度ながらも既存の薬剤の治療標的となり得る遺伝子異常が検出されることが判明してきた。膵癌の治療成績の向上をめざして,遺伝子プロファイルに基づいた新たな治療開発と個別化治療の実現に向けた試みが今,正に進められている。
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癌と化学療法 43巻11号, 1332-1340 (2016);
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適切に早期乳癌に対して術後補助療法を行うための判断材料として,多重遺伝子発現解析の開発が行われている。個々の症例の再発リスクに応じ補助療法の効果も千差万別となる。個々の乳癌症例に応じた適切な補助療法を行うためには,正確な再発リスクの予測が重要となる。再発リスクは免疫組織学的染色による簡便な方法で行われることが多いが,それだけでは十分な症例の選択ができているとはいい難い。そのため臨床病理学的判断に加えて,実績のある遺伝子発現解析を顧慮することが有用と思われる。推奨される遺伝子発現解析には,MammaPrint(R),Oncotype DX(R),PAM50 ROR,GGI,EndoPredict(R)(EP),Breast Cancer IndexSM(BCI),Curebest(R)95GC Breastなどがある。MammaPrint(R)やOncotype DX(R)は診断から5 年後の再発リスクの予測に定評があり,一方でBCI やEPclin スコアは晩期の再発を予測することに秀でている。それに加えてPAM50 は乳癌の生物学的特徴を踏まえ,サブタイプを分子生物学的に分類することに有用である。これらの結果から得られた遺伝子発現は再発リスクの少ないホルモン陽性乳癌に対して不必要な抗癌剤を回避することが可能となるばかりでなく,抗癌剤すらほとんど効果を認めない再発リスクの高い乳癌に対して分子生物学的特徴による詳細な分類,さらには分子標的治療薬への応用へと結び付く手段となり得る。このように遺伝子発現解析による遺伝子変異の同定と治療効果の相関関係を検証することが,個々の症例に応じた治療方法への確立へと結び付くものと思われる。
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癌と化学療法 43巻11号, 1341-1345 (2016);
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白血病は遺伝子異常により増殖能を獲得した造血細胞が腫瘍性に増殖する疾患であり,その治療の基本は抗癌剤を組み合わせた化学療法である。造血幹細胞移植を含む化学療法の進歩により,小児領域の白血病の治療成績は改善したが,成人を含む白血病全体の5 年生存率は未だ40%程度である。白血病はその病因となる遺伝子異常により,それぞれ病態や治療に対する反応性が異なるヘテロな疾患群である。そのため白血病の適確な治療方針の決定には,それぞれの白血病の病態を考慮し,どの程度の強度の化学療法が妥当なのかを判定すること,すなわちそのリスク因子に基づく層別化が必要である。白血病細胞は複数の遺伝子異常の組み合わせにより成立する多段階発癌の発症機構をとる。近年のマイクロアレイベースの遺伝子発現プロファイリングやエクソーム解析,トランスクリプトーム解析などの網羅的な遺伝子変異解析は,個々の腫瘍細胞が保持する遺伝子変異の把握に非常に有用である。これらの方法を応用し,白血病症例の遺伝子プロファイリングを把握することにより,従来の染色体異常をベースにした白血病の分類・層別化に加えて,より正確に治療反応性や予後の予測が可能な白血病の分類・層別化が可能となりつつある。
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原著
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癌と化学療法 43巻11号, 1361-1365 (2016);
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近年,進行再発大腸癌に対する分子標的薬治療が急速に発展している。KRAS遺伝子変異が抗EGFR 抗体薬の抵抗性に関与することはすでによく知られている。しかし,KRAS遺伝子野生型であっても,実臨床では抗EGFR 抗体薬の効果は20〜30%までの上乗せにとどまる。この理由として,RAS/MAP2K/MAPK 経路や PI3K/AKT 経路の関連が考えられている。本研究では,遺伝子変異解析パネルであるCancerPlex(R)を用いてStage Ⅳ大腸癌に対する遺伝子変異を解析した。2007〜2015年に新潟大学医歯学総合病院,新潟県立がんセンター新潟病院を受診したStage Ⅳ大腸癌112 例を対象とした。内訳は男性66 例,女性46 例。年齢中央値は62.5歳であった。2 例はhypermutated症例であった。残りの110 例を対象としてクラスタリング解析を行った。分子標的薬のターゲット候補である26 遺伝子をクラスタリングに使用した。各患者がもつ共起プロファイル間のユークリッド距離を値にもつ行列からWard法によるクラスタリングを行うと,六つのサブタイプに分類された。これにより,抗EGFR 抗体薬が奏効する患者群を分類できると考える。分子標的薬は高額であるため,費用対効果を考慮した大腸癌治療戦略が重要である。CancerPlex(R)を用いることで遺伝子情報に基づいた“Precision Medicine”が可能になると考える。
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癌と化学療法 43巻11号, 1367-1373 (2016);
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目的: 消化器がん患者を対象に,身体活動量の指標としてInternational Physical Activity Questionnaire(IPAQ)を用いて,患者の背景因子と身体活動量との関係を検討する。方法:外来化学療法中の消化器がん患者を対象に観察研究を行った。主要評価項目はIPAQ により算出された総身体活動量・消費カロリーとし,患者の背景因子との関連を分析した。結果: 75(男性51,女性24)名が登録され,全例で評価を完遂した。平均年齢64.2±10.2 歳,抗がん剤の投与期間の中央値は242.5(最小値7,最大値2,294)日であった。総身体活動量・消費カロリーは高齢になるほど低下し,健常人の年齢別標準値よりも低下していた。職業を有する者は職業をもたない者に比べて総身体活動量・消費カロリーともに多い傾向にあり,また,PS 0 の患者が就業している割合は高く,職業の有無とperformance status(ECOG-PS)との間には有意な関係を認めた。有害事象に関しては,疼痛のある群で消費カロリーが低下する傾向を認めた。考察:外来化学療法中の消化器がん患者では,悪液質の進行,生活スタイルの変化,治療に伴う有害反応が身体活動量に影響を与えていた可能性がある。また,高齢者では身体活動量が低下しやすいため,チーム医療による包括的なかかわりが重要となることが示唆された。
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薬事
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癌と化学療法 43巻11号, 1375-1380 (2016);
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福岡大学病院(以下,当院)の外来がん化学療法患者は保険薬局(以下,薬局)で経口抗がん剤,支持療法薬および合併症治療薬の投薬を受けている。そこで,当院と薬局の情報共有の状況を把握するため,患者と薬局薬剤師にアンケート調査を行った。その結果,薬局薬剤師にがん化学療法を受けていることを伝えている患者は31%にすぎず,病院・薬局間の情報共有の必要性を理解している患者は少ないことが明らかとなった。また,薬局薬剤師は病院での治療薬・治療内容,病名および検査値などの情報を必要としていることが判明した。これらの結果を踏まえて,お薬手帳貼付用シールを改変し,薬局薬剤師と情報共有するための研修を実施した。今後,安全に外来がん化学療法を行うためには病院と薬局が連携し,患者情報を共有できるシステムの構築が急務であると思われる。
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症例
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癌と化学療法 43巻11号, 1381-1384 (2016);
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症例1 は67 歳,男性。胸部中部食道の0-Ⅰ型病変に対し,内視鏡下粘膜下層剝離術後に類基底細胞癌,pT1b(SM2)ly2 v0 と診断され,手術を施行した。標本に病巣の残存はなかったが,リンパ節転移を認めた。術後1 年10 か月に左頸部リンパ節転移を認め,放射線照射後にリンパ節切除を行った。術後4 年経過し,無再発生存中である。症例2 は60 歳,男性。胸部中部食道に0-Ⅱa 病変の粘膜下層浸潤を伴う腺扁平上皮癌の診断で,根治手術を施行した。類基底細胞癌,pT1b(SM3)ly1 v3 pN2,pStage Ⅱと診断された。術後3 か月に多発肺転移,肝転移胸膜播種を来し,永眠された。ともに表在癌であるが,高度な脈管侵襲とリンパ節転移を有していた。食道類基底細胞癌に対する治療方針には一定の見解はないが,表在癌であっても外科的治療を中心とする集学的治療を行う必要がある。
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癌と化学療法 43巻11号, 1385-1388 (2016);
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高度脈管浸潤を伴った肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC)の予後は極めて不良であり,治療法が確立していない。今回われわれは,下大静脈および右房内に腫瘍栓を伴ったHCC 患者において肝動脈化学塞栓療法(transcatheter arterialchemoembolization: TACE)が著効し,長期生存が得られている症例を経験したので報告する。症例は84 歳,男性。TACE を繰り返していたが,高度脈管浸潤(Vv3)を伴うようになった。5-FU 250 mg,DOC 20 mg,MMC 6 mg,BV 100mg を腫瘍内に動注し,SAP(25〜53 mm)25 mgにBV 100 mg(4 mL)を吸着させた塞栓材料を用いてTACEを2回行うことで,下大静脈および右房内の腫瘍栓は消失した。Vv3を認めてから25 か月経過しているが,現在も生存中である。
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癌と化学療法 43巻11号, 1389-1391 (2016);
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顕著な全身症状とperformance status(PS)の低下によって入院となった切除不能高度進行胆嚢癌の2 症例に対して,gemcitabine(GEM)+cisplatin(CDDP)併用療法(GC療法)を施行した。治療開始から約2週間と比較的短期間で癌に伴う全身症状の軽減がみられはじめ,PS は著しく改善した。さらに治療を継続することで,良好なquality of life(QOL)を維持しながら在宅生活を送ることが可能であった。
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癌と化学療法 43巻11号, 1393-1396 (2016);
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症例は検診で発見された肝門部肝内胆管癌の65 歳,男性。腫瘍は肝S4 を中心とした径120 mm大の腫瘤であり,肝内胆管への浸潤を認め,手術による切除は困難とされた。病変は肝に限局していたため,治療方針としては全身化学療法と肝動脈化学塞栓術(TACE)の併用療法が選択され,TACE 目的で当院に紹介となった。動注薬剤は5-FU,epirubicin(EPI),mitomycin C(MMC)を選択し,肝動脈から注入した後にEPIを含浸させたヘパスフィア(R)で塞栓を行った。治療の結果,肝転移は良好な縮小が得られ,肝機能障害の進行もなかった。またTACE に伴う合併症もないため,並行してgemcitabine(GEM)による全身化学療法を開始した。5 回のTACE 終了後には病変は十分に縮小したため,全身化学療法と免疫治療を行う方針となった。経過中に肝病巣は再燃しTACEを再導入したが,最終的には治療抵抗性となるまで計14 回のTACEを施行し,治療開始より26 か月の生存を得ることができた。
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癌と化学療法 43巻11号, 1397-1400 (2016);
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症例は72 歳,女性。43 歳時に左乳癌で乳房切除,腋窩リンパ節郭清を受け,68歳時に胸膜転移を来した。ホルモン療法を行っていたが,4年後に咳,呼吸困難が出現した。胸部X線写真で右胸水が貯留し,胸水の細胞診で癌細胞を認め,癌性胸膜炎の診断となった。paclitaxel とbevacizumab の隔週投与を開始し,2 か月後には胸部X 線写真上,胸水は消失した。30 か月間継続しているが重篤な有害事象はなく,胸水の再貯留も認めていない。癌性胸膜炎に対してpaclitaxel とbevacizumab併用隔週投与療法は有効であり,高齢者でも良好な忍容性が保てることが示唆された。
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癌と化学療法 43巻11号, 1401-1404 (2016);
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目的: 子宮体部漿液性腺癌(uterine serous carcinoma: USC)は本邦では子宮体癌の約5%とまれだが,類内膜腺癌と比較し化学療法の適応となる進行・再発例が多い。しかし,最適な化学療法レジメンは確立していない。今回われわれは,進行・再発USC 症例に対する carboplatin/taxane 療法の有効性および有害事象の評価を目的とし検討を行った。方法: 当院で 2004 年 4 月〜2015 年 12 月までに carboplatin/taxane 療法を施行し,測定可能病変を有した進行・再発 USC 症例を対象としたcarboplatin/paclitaxel療法(TC 療法: carboplatin 5 AUC,paclitaxel 180 mg/m2,3 週間隔)を主に施行し,投与量を 80%へ減量した症例,weekly 投与症例(carboplatin AUC 2,paclitaxel 60 mg/m2,day 1,8,15),paclitaxel をdoce-taxel(70 mg/m2)へ変更した症例も対象とした。奏効率[完全奏効(CR)+部分奏効(PR)],無増悪生存期間(progressionfreesurvival: PFS)および有害事象を後方視的に評価した。成績:対象症例は9 例で,年齢中央値は68(45〜81)歳,9 例中7 例はⅣB期(腹腔内播種5 例,骨転移1 例,縦隔を含む多発リンパ節転移1 例),2 例は術後腹腔内再発であった。治療効果はCR 1 例,PR 6 例,進行(PD)2 例であり,奏効率は78%であった。奏効例7 例のPFS 中央値は9(2〜90)か月であった。術後TC 療法を受けた1 例を含む再発2 例はいずれもPR であった。血液毒性は7 例にGrade 3 以上の好中球減少を認めたが,発熱性好中球減少症を生じた例はなかった。また,1 例で皮下埋め込み型ポート感染からの敗血症を来した。結論:今回のわれわれの少数例の検討では,進行・再発USC症例に対するcarboplatin/taxane療法は有効であると考えられる。今後も症例を蓄積し,さらなる検討が必要である。
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癌と化学療法 43巻11号, 1405-1408 (2016);
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症例は72 歳,男性。下部食道癌(cT3N3M1,cStageⅣ,高〜中分化型扁平上皮癌)を合併した急性骨髄性白血病分化型(予後中間群,M2)の重複癌の診断。日本成人白血病治療共同研究グループのAML201プロトコールに基づき寛解導入療法および強力寛解後療法を施行し,急性骨髄性白血病は完全寛解となった。その後,食道癌に対して放射線治療を行い,部分奏効となった。治療終了約1 年後に食道癌の局所再発を認め,他院で原発巣切除術を施行し経過良好である。食道癌と急性骨髄性白血病の重複癌はまれな症例であり予後不良であるが,予後改善およびQOLの維持に寄与したと考える。
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癌と化学療法 43巻11号, 1409-1412 (2016);
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線維形成性小円形細胞腫瘍(desmoplastic small round cell tumor: DSRCT)は,若年男性の腹腔内に好発するまれな疾患である。短期間で急速に増大し,播種性,リンパ行性,血行性に転移する予後不良な悪性疾患である。症例は31 歳,男性。嚥下障害,ふらつき,嗄声にて脳腫瘍を発見され,腫瘍摘出術を施行された。病理組織学的に転移性脳腫瘍と考えられ,全身検索したところ左上腹部に最大径約12 cm の後腹膜腫瘍を認めた。腫瘍を切除し,DSRCT と診断された。術後放射線療法,肝転移に対する動注療法および全身化学療法を施行したが,局所再発,多発肝転移,肺転移,頸部リンパ節転移を来し,初診から17か月後に原病死した。