癌と化学療法
2016, 43巻Supplement Ⅰ
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特集 【第27回 日本在宅医療学会学術集会】
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巻頭言 学術集会を今後の在宅医療に生かすために―第27 回日本在宅医療学会学術集会を振り返って―
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Description -
在宅死に至ったがん患者家族に対する療養支援の現状―療養支援を行う看護師の立場からみえたこと―
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Description医療制度改革によって在宅医療が推進されているにもかかわらず,わが国におけるがん患者の在宅死亡率は10%未満である。がん終末期において,患者家族はどのような支援を受けることで,住み慣れた場所で療養生活を継続することができるのか明らかでない。そこで在宅死に至ったがん患者に対する療養支援の現状を明らかにするため,在宅死した50 症例を後方視的に調査した。看取り場所の聴取で在宅死を希望する割合は,Medical Support Center(MSC)看護師による支援開始前30%であるのに対し,支援開始後は68%に上昇した。また,MSC看護師の調整支援開始から在宅診療開始されるまでの連携にかかる期間の中央値は5 日であることが明らかになった。MSC 看護師が緩和ケアにおける地域連携の専門的な知識や技術をもって情報提供することで,看取りの場所の意思決定は促進でき,地域支援者との対話をすることによって信頼関係を築き,速やかな連携ができていた。 -
PCA ポンプを用いた在宅緩和ケアにおいて診療所薬剤師および地域薬局間連携が有効に機能した1 例
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Description世田谷区ではがん患者の在宅看取りへの対応が喫緊の課題であることが,様々な統計から示されている。その緩和ケアにおける医療用麻薬の必要性は大きく,さらにpatient controlled analgesia(PCA)は,病院で受けられる高度な緩和ケアを在宅療養の患者が選択できる意味において,患者や家族に在宅看取りを決断させる一因となっている。急激な病状変化と介護者の心情変化を伴う在宅緩和ケアにおける薬剤師の役割は,医師が望む医薬品・医療器材を速やかに確実に供給することが第一だと考える。そのためには,1) ニーズに応じた医療用麻薬の在庫をもつ薬局,2) 速やかに対応できる体制をもつ薬局,3) 地域のリソースを把握する人の存在,4) 日ごろの顔のみえる関係,が重要である。われわれは,所属団体の枠組みを越えた薬剤師の交流・連携の場である「さくらほっぷす(Sakurashinmachi Homecare Pharmacists PartnershipS)」を通じて,急性期病院と地域医療・介護との密接な連携体制の担い手として,より多くの薬剤師の参画を促していきたいと考える。 -
医療と介護の連携強化への支援(第2 報)―新宿区での医師・歯科医師・ケアマネジャーの交流会―
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Description平成26 年度新宿区では医療と介護の連携強化のため,在宅診療医とケアマネジャーの交流会を開催した。摂食嚥下・口腔ケアの観点から高齢者ケアにおいて歯科医師との連携も必要であるため,平成27 年度は在宅診療医・歯科医師・ケアマネジャーの交流会を実施した。参加者へのアンケートの結果,回答者のほとんどから「参考になった」,回答者全員が「互いの領域・視点への理解が深まった」との回答が得られた。以上より,交流会が医師・歯科医師・ケアマネジャーの相互理解と連携促進に寄与したことが示唆された。 -
在宅療養支援診療所における薬剤師の業務内容とその有用性の検討
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Description在宅医療では,「チーム医療」が推進されている。薬物治療も同様に薬剤師が多職種と連携することで医療の質の向上や安全性が保たれる。診療所に対する薬剤師の配置は,医療法第18 条に明記されているが,診療所薬剤師に対する診療報酬はない。診療所薬剤師の業務内容と有用性を検討した。業務内容は訪問診療同行,診療所薬剤師業務のプロトコールに基づく共同治療管理を導入,処方提案,DI 業務,地域薬局の薬剤師との連携であった。当診療所では薬剤師が勤務しているので,薬物治療に積極的に介入が可能であった。薬物治療への介入は,情報収集と整理が必要であり,保険薬局の薬剤師の立場では困難である。診療所薬剤師がその業務を担い,保険薬局の薬剤師と連携することで,薬物治療の質の向上,安全性が保たれる。 -
在宅療養者の適正な薬物治療推進に向けて―地域包括支援センターと薬局の連携―
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Description急速な高齢社会を迎えているわが国は,団塊の世代が75 歳を迎える2025 年を目標として,地域包括ケアシステムの構築が急務である。地域包括ケアシステムのなかで,医療,介護を提供するに当たって,多職種協働,チーム医療,情報の共有などによって住み慣れた地域で生活者を支える時代を迎えた。しかし,薬剤師の訪問は月に1〜2 回程度であるので,なかなか生活状況全般を把握するのは難しい。薬局が生活者を支えるには,地域住民の情報共有が必須であり,地域包括支援センターとの連携が不可欠である。今回,薬局が地域包括支援センターとの連携で適正な薬物治療の推進が可能となった事例について報告する。 -
在宅療養者に薬局薬剤師が寄り添うということは―薬の適正使用推進に向けた薬剤師の活動―
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Descriptionわが国の医薬分業は,処方箋発行枚数が8 億枚,医薬分業率が70%になり,医療提供体制の仕組みとして定着した。その一方で医薬分業の原点に立ち返り,患者本位のかかりつけ薬局について議論が続いている。この一連の議論をとおして厚生労働省は,かかりつけ薬剤師・薬局がもつべき三つの機能を主にした「患者のための薬局ビジョン」を発表した。在宅医療の現場では,このビジョンのように薬剤師からの提案やアクションにより,患者の療養状況の改善につながったケースは今までにも一般的に見受けられる。今回,当薬局の在宅医療へのかかわりのなかで,薬剤師が介入した事例として,1) 処方薬の重複を回避したケース,2) 残薬発生理由から患者の身体能力の変化に気付き,アドヒアランスの向上・多職種への気付きを促した対応について報告し,多職種協働といわれるこの時代に薬剤師のあるべき姿を考察したので報告する。 -
在宅超音波検査による間質性肺炎の鑑別診断
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Description背景: 在宅患者の慢性呼吸不全の病態は様々で,確定診断がついていないことがある。HRCT(高分解能CT)などによる診断は搬送が必要で,採血によるKL-6 などは結果を得るまで数日間を要する。携帯型超音波検査装置の普及により,在宅医療の現場で迅速に肺の超音波診断を行うことが可能になった。われわれの経験では,増悪した間質性肺炎では特徴的な広汎で太いB ラインや胸水が認められることが多く,臨床症状が似ている肺炎,肺気腫,心不全などのエコー像との鑑別が可能である。目的: 超音波診断装置による間質性肺炎鑑別診断の可能性について検討する。対象:慢性呼吸不全またはそれに準じた状態で在宅療養中,KL-6 および肺超音波検査を施行した患者 18 名。方法: KL-6 が 500 U/mL 以上(正常 500 U/mL 未満)および以下で肺エコーを施行した患者で,Bラインまたは胸水描出の有無について検証した。結果: KL-6 が500U/mL 以上であった 8 例全例に B ラインまたは胸水を認めた。KL-6 が 500 U/mL 未満であった 10 例のうち 2 例に B ラインを認めた。考察: 慢性呼吸不全の原因の一つである間質性肺炎では,特徴的な太く広汎な高エコー像が認められる。まだ症例は少ないが,在宅診療の現場における間質性肺炎の診断に超音波検査は有用と考えられる。 -
病院と在宅をつなぐ連携―事例をとおして「自宅で,自分らしく生きる」を考える―
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Description高齢社会を迎えて在宅医療が推進されているが,障害・医療依存度の高いケースや独居・高齢世帯の増加により,退院支援の必要なケースが増加している。しかし,多くの医療機関では,在宅生活のイメージがもてないこともあり,在宅での生活をあきらめてしまうケースも多い。治癒しない病気・障害や老いによる変化を抱えて,在宅医療を実現するには,患者が「どこで,どう生きたいか」の自己決定を行い,希望をかなえるために,退院支援チーム・在宅支援チームとの「協働」が鍵である。今回,患者・家族の思いを軸にしながら,要介護3,脳出血・左半身麻痺,装具使用にて杖歩行・見守り状態の患者の在宅生活がかなえられた1 事例を報告する。 -
高齢男性の老人クラブなどの交流活動への継続参加を可能とする要因
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Description本研究では,老人クラブなどの交流活動に継続参加している高齢男性が,交流活動に参加したきっかけと継続参加を可能とする要因を明らかにすることを目的に,半構造化面接調査を中心にデータ収集,分析した。その結果,定年退職後の高齢男性は,地域とのつながりがないことに気付き,[自己目標の明確化]と[機会の付与]により交流活動に参加していた。また,交流活動に継続参加を可能とする要因は,[自己実現の達成]と[地域からの期待・評価]であることが示唆された。 -
看取り症例からみた地域包括ケア
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Description当クリニックでの看取り症例を検討し,これからの地域包括ケアについて検討した。2007 年10 月〜2012年12 月までの看取り症例は543例であり,在宅看取り数は増加傾向であるが,病院看取り数は減少傾向となっていた。秋田市は高齢化率が年々進んでおり,その影響と考えられる。在宅医療に対する理解は患者家族のみならず,医療関係者間でもまだ不十分である。しかし,在宅連携ネットワークが充実してきたことにより,病院での看取りが減少傾向に転じているのかもしれない。内閣閣僚による社会保障制度改革推進本部による2015 年6 月15 日の第1 次報告では2025 年時点で適正とされるベッド数が推計され,過剰ベッドは全国で15 万床以上,秋田県は約3,500床という結果であった。限られたベッドを有効に使うためにも病院と在宅ケアとの連携が大切となるため,今後は地域包括ケアの体制をより充実させる必要がある。 -
薬剤師が在宅医療に参画する研修のあり方―患者を選ばない,時間を選ばない,場所を選ばない,医療人マインドの醸成―
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Description薬剤師の在宅患者訪問は1994年に調剤報酬「在宅患者訪問薬剤管理指導料(550点)」が設けられたことから始まったが,その当時は一般に薬剤師の在宅患者の訪問活動は,患者,医師,看護師などから認識されていなかった時代であった。その後,2000年の介護保険の導入によって,薬剤師の在宅訪問活動が活発になってきた。しかし,急増する認知症患者や急性期の在宅医療の増加などから,薬剤師の資質,薬局の機能の他,調剤報酬の評価について検討する時期にきている。特に在宅医療にかかわる薬剤師の資質については,多職種による生涯教育の機会が不可欠である。今回,在宅医療にかかわる薬剤師の研修のあり方について報告する。 -
急性期病院職員に在宅医療に関心をもたせる方策―魅力発信経営プロジェクトによる多職種協働―
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Description公立甲賀病院は主に急性期疾患の治療に当たる医療施設であるが,二次医療圏における唯一の総合病院であり,国民健康保険診療施設であることから地域包括ケアも求められている。今回は,在宅医療に来るべき超高齢社会に対処できる病院をめざすことをテーマとして,職員の意識向上をめざした魅力発信経営プロジェクトを立ち上げた。チームリーダーには病院幹部を配置し,在宅医療にまったく関係のない職員も参加することとした。SWOT分析を行うことでまず現状の理解と把握に努めた。ここででた様々な意見を集約し,対策を考えた上で内外に発信する予定である。急性期病院における在宅医療への関心はまったく経験がないため,どう関与してよいのかわからないのも実情と考える。わが国において,今後地域連携や在宅医療の必要性が高まることは間違いなく,多くの医療介護職に目を向けさせ考えることが急務である。 -
薬学生の在宅療養者の訪問同行意義
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Description薬学教育は2006年4 月入学生から6 年制教育になった。この背景は,高度化し複雑化する医療,そして多職種との連携が具体的に求められるようになったことから,それに対応できる新しい時代の薬剤師養成が急務となった。一方,高齢社会の到来とともに医療は機能分化して,在宅医療が推進されるようになった。今回,5 年次実務実習生が11 週間の実習期間のなかで,早い段階から学生の在宅患者の訪問同行をしたことにより,複数回の訪問が可能となった。その結果,患者の様々状況に接することができ,薬に関する気付きの体験を得られたことはたいへん有意義であったと考えられる。5 年生の実務実習において,薬学生が在宅療養者の薬の問題について改善案を提案できた事例について報告する。 -
地域におけるアドバンス・ケア・プランニングファシリテーターのための1日版教育プログラムの実現可能性研究
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Description地域においてアドバンス・ケア・プランニングを推進することは重要である。Education For Implementing End-of-Life Discussion(E-FIELD)は,国立長寿医療研究センターが開発したアドバンス・ケア・プランニングファシリテーター(Advance Care Planning Facilitators: ACPFs)のための,2 日版教育プログラムである。しかし,このプログラムの内容を実行することを難しいと感じる講師もおり,多くの地域で実行するには,長すぎるプログラムであると感じる受講生もいる。この研究の目的は,地域における1 日版プログラムを用いた,ACPFs 教育の実現可能性を明らかにすることである。方法は,2015年5 月〜2016年3 月までの1 日版プログラムの実行から評価までのプロセスを記述し,プログラム実行の3 か月後に7 病院で行った振り返り会議の議事録を用いて,プログラムの有効性を評価した。結果はプログラムの実行から評価までに五つのステップが記述され,最終的な評価としては,五つのカテゴリーが抽出された。この研究でいちばん重要な点は,講師が効果的にプログラムの内容を教えるために,プログラム内の記述表現を短く,シンプルに変更する必要に迫られ,困難に感じたことで,次に重要な点は,知多半島でアドバンス・ケア・プランニングやエンド・オブ・ライフディスカッションを推進する会(G-ACPEL)の活動が,各病院内でのACP の推進に大いに役立ったことである。また,この研究の限界は小地域でしか実施されていない点である。結論として,地域で実施するACPFsのための1日版教育プログラムは実現可能である。 -
在宅療養者のリスクマネジメントのあり方の検討―災害時にハイリスク状態に直面した在宅療養者の行動から―
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Description多発する災害への備えが求められるなかで,療養者の「治療」と「暮らし」の場である在宅環境に合った備えは十分とはいい難く,実効性の高い備えが課題となっている。本研究は療養者のリスクマネジメントのあり方を検討するため,災害時に療養者が直面するリスクの抽出と多様なステークホルダーによるリスク行動を明らかにすることを目的とする。そのため,阪神・淡路大震災(1995年)以降の大規模災害で被災した療養者および家族8 名のインタビューにより,得られた語りの分析(因子探索型質的分析)とステークホルダーの行動をマッピングした。結果,5 カテゴリーと13サブカテゴリーからなるリスクを得た。ステークホルダーマップから,専門職などによるリスク行動を明らかにすることができた。災害時のリスクをとおして在宅ケアにおけるリスクマネジメントの確立と平時からの対応の必要性が示唆された。 -
病気とともに家で生活する患者を支えるには
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Description日常の生活では,進行性の難病はあまり身近なものではなく,患者が診断を受けて,そして家族が初めて進行性の難病に向き合うことが多い。最近ではネット社会の発達により,病気について家族でも詳細を調べることが可能となってきているので,家族にとっても今後の大まかな療養状況は想像できるが,病気の進行に家族の理解や対応がついていけないことも多々ある。患者が病気と向き合い,在宅ケアが提供されるタイミングに,ケア提供者は,患者や家族に寄り添い信頼関係を構築できることが望ましい。今回,「病気とともに家で生きる」について,特定疾病を受け入れ自宅で生活している事例をとおして,普段からの地域医療と介護の連携の重要性について報告する。 -
食道癌術後の在宅療養における栄養管理の問題点について
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Description食道癌術後の在宅療養における栄養管理の問題点について評価した。食道亜全摘一期的再建術後で化学療法未実施の44 例を対象とし,術後1,3,6,9,12 か月時の摂取熱量と体重,栄養療法全般に関する訴えを外来栄養指導で把握した。結果,摂取熱量は術後1 か月が最も減少し,12 か月に術前値まで回復していた。体重減少は術前比較で術後6 か月に87%まで減少し,12か月でも89%であった。栄養療法に関する訴えなどは術後3 か月までは経口摂取量減少など術後消化器関連症状が多く,経腸栄養も管理に難渋し中止要望が多くみられた。一方,術後6 か月以降では経口摂取量増加に伴う食事の質に関するものが増加した。術後在宅栄養管理は術後経過期間に応じて目標が異なり,早期は体重減少に対する管理が求められ,食事指導とともに患者が受け入れられる補助経腸栄養を導入しなければならない。そして順応が進んだ時期は,患者ごとの個別性の高い対応が必要である。 -
COPD 急性増悪への治療の現況―在宅でいかにCOPD 急性増悪を防ぎ,治療するか?―
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide DescriptionCOPD 急性増悪は致死率が高く,著しくQOL を損ねる病態である。COPD の医療費のほとんどを急性増悪が占める。急性増悪に至る手前の自己コントロール域より逸脱した呼吸状態の変化をとらえ,アセスメントし,多面的包括的呼吸ケアの介入がなされ真の慢性安定期が導きだせれば,あまり急性増悪は起こらなくなる。そしてCOPD 患者のQOL が高く保て生命予後が改善し,良好な医療経済効果を生むことは間違いないと思われる。また,急性増悪が起らなくなれば続けて効果的な呼吸リハビリテーションが行え,身体活動性が高く過ごせる。 -
持続注入法に週1回の間欠注入法を導入したことでQOL が改善したHPN 症例―在宅輸液療養患者への薬剤師のかかわり―
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Description在宅中心静脈栄養を施行している患者には,24 時間持続注入法と間欠注入法という二つの選択肢がある。ただし,耐糖能異常などの代謝性基礎疾患がある場合や心・肺・腎機能が低下している患者では,生体の代謝変動をできるだけ少なくするため,持続注入法を選択することが望ましい。また,この持続注入法は患者にとって日常生活が制限されるため,束縛感が強くなる。本症例は,通院先の病院,薬局,患者家族が連携するなかで,持続注入法に週1 回程度の間欠注入法を導入した症例である。この結果,患者自身が短期間の旅行を楽しめるほどQOLが格段に向上した。在宅輸液療養患者をサポートする上では,薬剤師は輸液治療に関するリスク管理や輸液・医療材料に関する保険制度の知識などが必須である。患者本人の自立度や家族の介護力にもよるが,このような手法を適応できる症例が今後少しでも増えれば,在宅輸液療養患者の生きる喜びにつながると考える。 -
同一建物における在宅医療の適正化―個別診察の導入が高齢者の健康管理へ及ぼす影響の検討―
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Description2014年4 月の診療報酬改定では,施設入居患者に対する在宅医療を適正化するため,同一建物における複数訪問時の点数が新設された。それによると従来の月2 回の集団診察(同一建物の場合)では診療報酬が約1/4 まで大幅に減額されるが,集団診察の代わりに個別診察(同一建物以外)を1 回行うことで減額されないという緩和処置がとられた。個別診察1 回の導入は,担当医師にとっては各施設までの移動が繁雑になり,負担が大きくなっているという医療サイドへの負の面がある。一方,同一建物への訪問数が格段に増えることで,当日診察が予定されていない患者の急な病態変化にも対応しやすいというメリットが指摘されている。そこで今回われわれは,個別診察の導入が患者の健康管理にどのような影響があるかを検討した。 -
訪問入浴に従事する看護師の就業継続意思に関する研究
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Description指定訪問入浴介護では原則看護師が同行し,医療的な役割を果たしている。しかし,訪問入浴の現場では看護師不足が深刻である。本研究では訪問入浴に従事する看護師の就業継続意思を高める要因を探るため,E社の看護師に無記名自記式質問調査を行った。その結果,「身体的負担が大きい」と感じた看護師が全体の50%を超えていた。相関分析では,就業継続意思と「看護師とスタッフとの関係は良好だ」r=0.398(p<0.01)で有意な相関がみられた。また「仕事の割に賃金が低い」ではr=−0.232(p<0.01),「身体的負担が大きい」ではr=−0.272(p<0.001)で負の相関がみられた。以上より,身体的な負担や賃金が低いことなどが就業継続意思を阻害する要因であるが,最も影響の大きい要因は人間関係であり,人間関係を良好に保つことが看護師の就業継続意思を高めると示唆された。 -
療養通所介護における多職種連携のレベルと課題―多職種からみた場合―
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Descriptionわれわれは,これまで療養通所介護において,多職種連携の研究の手がかりとして看護職がとらえる連携の実際を明らかにした。その研究の結果,連携のレベルは四つの段階が存在した。また連携の課題は,「情報を共有することが困難」,「全体像の把握が困難」,「方向性を見いだすことが困難」,「緊急時の対応が困難」であった。本研究では,療養通所介護にかかわる多職種がとらえる多職種連携のレベルと課題を明らかにすることを目的とし,A県下の療養通所介護事業所にかかわる看護師以外の職種13 名に半構造化面接を行った。結果,多職種連携のレベルは三つの段階があり,多職種連携の課題は,看護師がとらえたのと同じ,「情報を共有することが困難」と多職種独自の「目標を共有することが困難」,「ケアの一貫性の欠如」,「知識不足による学習の必要性」,「連絡への躊躇」であることが明らかになった。 -
老人介護保健施設における看護管理上の問題点と課題
43巻Supplement Ⅰ(2016);View Description Hide Description老人介護保健施設における看護管理上の問題点と課題を明らかにするため,老人介護施設の1 年間の業務日誌365 枚を検討・解析した。その結果,看護師不在時間に,発熱などの状態変化,褥瘡,転倒・転落および誤嚥において有意に得点が高かった。今後は,看護師と介護士が協力して問題点の内容を詳しく検討し,改善策を講じることが課題である。
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