Volume 44,
Issue 10,
2017
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総説
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癌と化学療法 44巻10号, 813-816 (2017);
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次世代シーケンサー(NGS)を用いたがんの遺伝子解析に基づく治療選択はクリニカルシーケンスと呼ばれ,わが国でも実装に向けた取り組みが進められている。通常,ホルマリン固定パラフィン包埋標本を用い,amplicon sequencingにより体細胞変異などを検索する。それらにはプレアナリシス段階からポストアナリシス段階に分けられるが,それぞれの過程において品質保証,精度管理が必要である。実地臨床では,それらの遺伝子解析結果をレポートとして提出することが求められ,そのレポートを適切に作成するためのクリニカルシーケンスチームを構成する専門家の人材育成が急務である。
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特集
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オリゴ転移に対する治療戦略
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癌と化学療法 44巻10号, 817-820 (2017);
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肺がんにおいても,転移臓器や転移個数の数が少ない病態をoligometastasis と呼ぶことがある。生物学的な転移の機序を考えれば,個数が少なくても遠隔転移があれば全身性疾患であるはずであるが,局所治療のみで治る患者が経験されることから,oligometastasis は完治の魅惑とともに定義されることが多い。従来の報告のほとんどは後方視的であり,oligometastasisによる治療を系統的に解析したものはない。前向き第Ⅱ相試験にて局所治療を追加することで良好な結果が得られたことから,oligometastasis に対する局所治療の有効性を検証する第Ⅲ相試験も検討されている。進行期肺がんの治療がドライバー遺伝子変異に対する分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬により改善しているために,oligometastasisの患者選択がますます難しくなっている。
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癌と化学療法 44巻10号, 821-826 (2017);
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転移を有する大腸癌の治療の中心は手術療法である。他の癌腫では,いったん転移を来すと化学療法が中心となることに比べて特徴的である。切除不能・再発転移大腸癌治療は,本邦でも2005 年の5-FU の持続療法,オキサリプラチンの投与が可能となってから欧米と同様の治療が可能となった。また,いわゆる抗癌剤に加えて種々の分子標的薬も欧米同様に用いることが可能となった。元来の単剤治療から,多剤併用療法に治療がシフトして瞬く間に標準治療として使用されるようになり,生命予後の延長も飛躍的に伸びた。本稿では,大腸癌肝転移の治療を切除可能な癌に関しては,手術,補助療法(術後,術前術後)を中心に,切除不能な癌に関してはconversion therapyを中心に述べる。
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癌と化学療法 44巻10号, 827-830 (2017);
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通常型膵癌(膵腺癌)は一般に進行が早く,遠隔転移が1 か所でもあれば通常切除適応はなく,化学療法が選択される。しかし膵癌原発巣切除後1〜5年で孤立性転移を認め,転移巣の切除で長期生存した例が報告されている。オリゴ転移膵癌に対する切除の前向き研究において,肝あるいはリンパ節転移例における切除では10%程度に5 年以上の長期生存が得られている。原発巣切除後の転移に対する再切除あるいはラジオ波焼灼療法施行例では,肝転移や残膵再発に比べ肺転移で再々発が少なく,長期生存が得られたとの報告がある。通常型の膵癌においてはオリゴ転移の概念や治療戦略について十分な検討もコンセンサスもないが,孤立性肺転移など転移巣の切除により長期に無再発生存を認める患者も少数ながら認めている。今後,オリゴ転移のなかでも切除の適応がある集団を明らかにし,膵癌に対する標準治療として認識されることが必要と考えられる。
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癌と化学療法 44巻10号, 831-834 (2017);
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oligometastasesとは,1995年に提唱された臨床的に特徴的ながんの広がりを示した概念であり,遠隔臓器への転移・再発のうち,限られた臓器に孤立性またはごく少数の病変を有する状態を意味する。転移・再発乳がんは全身疾患であり,治療の基本は薬物療法である。oligometastasesは局所治療による完全切除が潜在的に功を奏する可能性があるとされ,局所治療を中心とした集学的治療によって転移・再発乳がんのなかでは予後は良好とされるが,明確な診断基準や治療指針はない。oligometastases に対する治療は,局所切除術,stereotactic body radiation therapy,stereotactic radiosurgery,radiofrequencyablation などが行われている。しかしこれらの局所治療が予後を改善するという前向きのデータはなく,このほとんどは後方視的なケーススタディであり,患者選択バイアスを考慮する必要がある。転移・再発乳がんでは原発巣とのサブタイプの不一致はしばしば認められるため,適切な再発治療をめざすための生検の意義はある。今後はこの病態に対して,前向きな臨床研究によって治療の意義を明らかにする必要がある。
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原著
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癌と化学療法 44巻10号, 861-865 (2017);
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造血幹細胞移植(SCT)の際に生じる重篤な合併症である肝中心静脈閉塞症(VOD)は,肝臓中心静脈の内皮障害に伴う致死的な血液凝固異常症が基本病態である。原因は単一ではなく,病態も十分解明されていないが,新鮮凍結血漿(FFP)による予防効果が推測されている。そこでわれわれは,当院において2011 年1 月1 日〜2011 年12 月31 日までの1 年間で同種SCT を実施した症例群のうち,早期FFP 投与を行った症例とFFP 非投与症例の2 群比較を行った。対象症例は14(男性7,女性7)例,年齢の中央値は50 歳,平均値47 歳,範囲24〜63歳であった。早期FFP 投与群とFFP 非投与群の移植後60 日間までの検査値比較では,fibrinogen とFDP がFFP 投与群で有意に改善していた。FFP 投与群ではfibrinogen に代表される凝固線溶状態が改善し,それに伴って線溶マーカー異常の出現が予防できる可能性が推察された。
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症例
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癌と化学療法 44巻10号, 867-869 (2017);
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播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation: DIC)は基礎疾患の存在下に全身性持続性の著しい凝固活性化を来し,細小血管内に微小血栓が多発する重篤な病態である。胃癌にもまれに合併し,その予後は著しく不良であることが知られている。症例: 32 歳,女性。T2(ss),N1,H0,P0,M0,CY1,Stage Ⅳの診断で化学療法中に多発骨転移,DIC を認めた。Methotrexate+5-fluorouracil(5-FU)療法を施行したが改善なく,5-FU+levofolinate calcium(l-LV)療法を施行しDIC を離脱できた。結語: 5-FU+l-LV 療法は胃癌癌性DICに有効なレジメンの可能性が示唆された。
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癌と化学療法 44巻10号, 871-873 (2017);
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直腸癌術後側方リンパ節転移に対して化学療法後に手術を行い,病理学的完全奏効(pCR)を得た症例を経験したので報告する。症例は65 歳,男性。上部直腸癌を認め,腹腔鏡下低位前方切除術を施行された。病理組織診断はtub2>por>muc,pT3,ly2,v3,pN2,pM0であった。本人の希望により術後化学療法は施行しなかった。術後6か月目にCEAの上昇を認め,CTとPET-CTにおいて両側側方リンパ節再発を認めた。FOLFOX4+bevacizumabを5コース施行後,腹腔鏡下両側側方リンパ節郭清術を行った。病理組織学検査ではリンパ節に瘢痕と線維化を認め,pCRであった。再発手術後FOLFOX4を7 コース追加し,2年6 か月の間,再発を認めていない。
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癌と化学療法 44巻10号, 875-879 (2017);
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症例は75 歳,男性。2016 年5 月に息切れのため受診した。心房細動と心不全のため入院となり,造影CT 検査で左室・右房腫瘤と心囊液貯留および右鼠径リンパ節腫脹を認めた。鼠径リンパ節生検にて,びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma: DLBCL)と診断した。心囊液からDLBCL の細胞を認め,DLBCL の心臓浸潤による心タンポナーデと診断し,持続心囊ドレナージを行った。心不全を伴うことから減量 tetrahydropyranyldoxorubicin/cyclophos-phamide/vincristine/prednisolone(THP-COP)療法(50%dose)を行い,その5 日後にrituximabを追加した。その後,心筋内のリンパ腫は著明に縮小し,心囊液は消失した。以降は標準投与量でrituximab併用THP-COP(R-THP-COP)療法を8 コース行い,完全寛解が得られた。
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特別寄稿
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第38回癌免疫外科研究会
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癌と化学療法 44巻10号, 883-885 (2017);
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trastuzumab(Tmab)は,human epidermal growth factor receptor 2(HER2)に対するヒト化モノクローナル抗体で,現在乳癌や胃癌に対して臨床使用されており予後の改善に寄与しているが,一方でHER2の低発現(約20%)やTmab抵抗性などの問題も存在している。Tmab抵抗性癌に対する新たなHER2標的製剤が開発されているが,乳癌とは異なり胃癌に対しては臨床的に有効性が証明されたものは未だなく,新たな治療薬の開発が望まれている。ナノ技術は,近年その発展に伴い医療へも応用されてきている。金ナノ粒子は,生体内での安定性と表面修飾の容易性などの特性があり,抗体やペプチド,核酸医薬などの薬物送達においてその有用性が報告されている。今回われわれは,Tmab を搭載した金ナノ粒子製剤を開発し,Tmabに抵抗性を示すHER2 陽性胃癌細胞株に対する有意な治療効果を確認した。Tmab搭載金ナノ粒子は新たなHER2 標的製剤になり得ると考えている。
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癌と化学療法 44巻10号, 886-888 (2017);
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原発性浸潤性乳管癌136例について乳癌担癌状態におけるindoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)の発現が,同一臨床病期で年齢別にどのように変化しているか探索した。初診時に採血を行い,得られた血漿について,tryptophan(Trp)とkynurenine(Kyn)を測定し,Trp/Kyn ratioからIDOの activityを測定した。対象とした136 例の臨床病期はStageⅠ30例,StageⅡ 46 例,Stage Ⅲ 26 例,Stage Ⅳ 34 例であった。年齢層別では30 歳台12 例,40 歳台20 例,50 歳台24 例,60歳台20例,70 歳台24 例,80 歳台20 例,90 歳台16例であった。同一臨床病期において年齢別にTrp/Kyn ratioを比較すると70 歳台以上の症例はそれ以下の症例と比較して有意にTrp/Kyn ratioが低かった。臨床病期別にみると,Stage Ⅳの症例はその他のStageに比べて有意にTrp/Kyn ratioが低かった。乳癌担癌状態で同一臨床病期において,年齢別に比較しても年齢が上昇するに従ってTrp/Kyn ratioは低下した。
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癌と化学療法 44巻10号, 889-891 (2017);
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ミスマッチ修復機構欠損(mismatch repair deficient: dMMR)を有する大腸癌において,programmed cell death 1(PD-1)/PD-ligand 1(PD-L1)シグナルを標的とした免疫チェックポイント阻害薬の有用性が期待されている。しかし大腸癌においてPD-1/PD-L1シグナルの制御機構は,十分に明らかにされていない。microRNA(miRNA)は,癌において重要な役割を担うことが知られ,腫瘍微小環境における免疫チェックポイント分子の調整にもかかわることが報告されてきている。われわれは,本研究にてdMMR大腸癌の免疫抑制的微小環境においてPD-L1発現を制御するmiRNAを特定することを目的とし,検証を行っている。
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癌と化学療法 44巻10号, 892-895 (2017);
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letrozol が長期間奏効した内分泌受容体陽性の超高齢者局所進行乳癌症例に対して,その治療経過中のindoleamine2,3-dioxygenase(IDO)の発現程度を検討した。初診時より定期的に採血を施行し,HPLC を用いてtryptophan(Trp)とkynurenine(Kyn)を測定し,Trp/Kyn ratio から IDO の activity を測定した。治療を開始した後,letrozol が奏効するに従って Trp/Kyn ratio は増加していった。letrozol による内分泌受容体陽性乳癌の治療効果判定に IDO の activity を測定することは有用であると考えられた。
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癌と化学療法 44巻10号, 896-899 (2017);
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C57BL/10 マウスに Rous sarcoma virus(RSV)誘発同系腫瘍の S1018B10 を移植して腫瘍径 4.5 mm を超えてからcyclophosphamide(CY)を週1 回腹腔投与し,Lentinula edodes mycelia extract(LEM)とGanoderma lucidum myceliaextract(MAK)の混合物を経口投与すると,無治療群に比べて延命した。脾細胞をmitomycin C 処理したS1018B10刺激下に培養してS1018B10に対する殺細胞能力を調べると,effector細胞はF4/80 −のDC/Mф系細胞であった。フローサイトメトリー解析で CY+LEM+MAK 治療群の脾細胞培養中の F4/80 −DC/Mф 系細胞の比率は無治療群よりも上昇していた。CY+LEM+MAK治療群のF4/80+CD8a+細胞比率は無治療群よりも低下していた。
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癌と化学療法 44巻10号, 900-902 (2017);
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背景:化学療法は副作用で体重減少や栄養状態悪化を引き起こすことがあり,食道癌化学療法中の栄養剤併用により副作用が軽減した報告もある。胃癌化学療法時に経口栄養剤を併用した症例の検討をretrospectiveに行ったので報告する。対象と方法: 2016年から当院で切除不能胃癌に対し,一次化学療法時から経口栄養剤を併用した症例(男性4 例,女性1 例)を対象とした。一次化学療法の有効性と安全性の評価と,栄養,免疫,予後の指標,さらに骨格筋,脂肪の指標をretorospectiveに検討した。結果:一次化学療法の治療効果でprogressive disease(PD)の症例はなく,progression-free survival(PFS)は166(100〜349)日であった。有害事象では,Grade 3 以上の好中球減少は認めず,有害事象で治療中止となった症例はなかった。治療中は,経口栄養剤は Elental®もしくは ENEVO®を 1 缶/日程度継続して服用が可能であり,種々の指標も9 か月まで維持されていた。まとめ:今回の検討では,胃癌化学療法時に継続して経口栄養剤を摂取することが可能であった。一次化学療法において有害事象による治療中止はなく,166日のPFS が得られた。
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癌と化学療法 44巻10号, 903-905 (2017);
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対象・方法: 2007 年7 月〜2015 年3 月までに鏡視下手術を行った大腸癌症例のうち,免疫・栄養指数として小野寺式栄養指数(PNI),modified Glasgow prognostic score(mGPS),controlling nutritional satatus(CONUT),好中球/リンパ球比(N/L)を測定し得た188例を対象とし,合併症発症と各臨床病理学的因子との関連を検討した。結果:背景因子をみると年齢68(38〜91)歳,男性110例,女性78 例,占居部位は結腸118 例,直腸70 例であった。Clavien-Dindo分類Grade Ⅱ以上の術後合併症は24 例(12.8%)に認め,手術部位感染12 例,遠隔感染7 例,イレウス5 例,その他2 例であった。合併症発症は,占居部位が直腸,出血量が多い例,長時間手術例に多く,免疫・栄養指数との関連をみると,CONUT は関連がなかったが,mGPS 2,PNI 40 以下,N/L が 3 以上の症例で合併症発症が多かった。結語:大腸癌に対する鏡視下手術において,免疫・栄養指数であるmGPS,PNI,N/L は術後合併症の予測因子となると考えられた。
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癌と化学療法 44巻10号, 906-908 (2017);
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はじめに:小野寺式栄養指数(PNI),controlling nutritional status(CONUT),modified Glasgow prognostic score(mGPS),好中球数/リンパ球数比(NLR)がfStageⅡ/Ⅲ大腸癌における予後因子となり得るか検討した。対象・方法:対象は治癒切除を施行したfStageⅡ/Ⅲ大腸癌患者115例である。3 年無病生存率(DFS)および5 年生存率(OS)との関連を検討した。結果: 全体のDFS およびOS は各75.6%,84.4%で,fStageⅡおよびⅢではDFS 各81.3%,69.6%,OS各82.4%,84.4%であった。DFS に関する単変量解析では,性別,年齢,PNI,NLRで有意差を認めたが,PS,占居部位,補助化学療法の有無,CONUT,mGPSで差はなかった。多変量解析では,性別(男性),NLR(>2)が独立した予後不良因子であった(p=0.006,p=0.01)。OS に関しては,性別,年齢,PS,PNI,NLR,CONUT で有意差を認めたが,占居部位,補助化学療法の有無,mGPSで差はなかった。多変量解析では,PS(≧1),NLR(>2)が独立した予後不良因子であった(p=0.009,p=0.006)。結論: fStageⅡ/Ⅲ大腸癌患者における炎症・栄養・免疫を基にした予後因子のうち,NLR(>2)がDFS およびOSにおいて独立した予後不良因子であった。
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癌と化学療法 44巻10号, 909-911 (2017);
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根治手術後に炎症性乳癌型再発を来した症例について,全身の免疫状態をimmunosuppressive acidic protein(IAP)の発現から検討した。当科で手術を行った初発乳癌症例のうち炎症性乳癌型再発を認めた3 例を対象とした。初回手術前,炎症性乳癌型再発を認めた時点,治療経過中に採血を行った。得られた血漿についてIAP値を測定した。炎症性乳癌型再発までの期間の平均値は1.8年。再発時からの観察期間の中央値は19.8 か月であった。初回手術前に比べて炎症性乳癌型再発時のIAP値は有意に高かった。治療経過中に病態が改善してくるに従って,IAP値は低下していった。病態が再度深刻になるにつれてIAP値は再び上昇していった。炎症性乳癌型再発時にIAP値を測定することは意義があると考えられた。
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癌と化学療法 44巻10号, 912-914 (2017);
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緒言:好中球リンパ球比(neutrophil-lymphocyte ratio: NLR)は種々の癌腫において予後不良因子であることが報告されている。今回われわれは,術前化学療法を施行した cStage Ⅱ/Ⅲ食道癌根治切除症例における NLR と予後との関連を検討した。対象と方法: 2011〜2013 年までの間に cStage Ⅱ/Ⅲ食道癌に対して術前化学療法として FP 療法を 2 コース施行後に食道亜全摘術,3 領域郭清を施行し,R0 手術が得られた93 例を対象とした。手術直前のNLRを算出し,予後(全生存率: OS)との関連を後方視的に解析した。NLR のcut off値は2 とした。結果: NLR≧2(n=37)とNLR<2(n=56)の3 年OS はそれぞれ40.5%,67.9%(p=0.005)と有意差を認め,多変量解析では,60 歳以上(HR: 2.342,95%CI: 1.117-6.501,p=0.027),pT≧3(HR: 3.207,95%CI: 1.114-9.233,p=0.031),NLR≧2(HR: 2.342,95%CI: 1.095-5.007,p=0.028)が独立した予後不良因子であった。結語: 術前化学療法を施行した食道癌手術症例において術前NLR は予後不良因子であることが示唆された。
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癌と化学療法 44巻10号, 915-917 (2017);
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皮膚浸潤を伴う局所進行乳癌は,出血・滲出液・感染による悪臭を呈するため局所コントロールに難渋することが多いが,Mohsペーストはこうした局所進行乳癌に有用であることが多数報告されている。今回われわれは,皮膚潰瘍を伴う病理組織学的に診断された局所進行乳癌のうちMohs ペースト外用で局所の治療をした3 例を対象に,末×血中のtryptophan(Trp)/kynurenine(Kyn)ratioおよびCRP 値を測定し,Mohsペーストが免疫にどのように影響を与えるかを検証した。治療開始前,2 回終了時,5 回終了時(1週間後)に採血し,血液中のTrp/Kyn値,CRP 値を測定した。Trp/Kyn ratioからIDOの activityを測定した。結果として,Trp/Kyn ratioは治療開始前,2 回終了時,5 回終了時ともに有意な変化は認めなかった。CRP値はMohs ペースト治療開始前,2 回終了時,5回終了時と回数を追うに従って有意に低下した。
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癌と化学療法 44巻10号, 918-920 (2017);
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目的: 今回,当院でbevacizumab(Bmab)併用一次治療を施行した進行再発大腸癌症例の治療成績について,RAS変異型の治療成績を明らかにすることを目的に後方視的に検討した。方法: 2013 年1 月〜2016 年4 月までに当院で進行再発大腸癌に対し,一次治療として標準治療(化学療法剤2 剤)にBmabを併用した28 人を対象に一次治療と治療成功期間(TTF),全生存期間(OS)を中心に解析した。結果:年齢中央値66.5(46〜81)歳で男性16 例,女性12 例,RAS遺伝子は野生型11例,変異型17 例であった。抗腫瘍効果はCR 2 例,PR 6 例,SD 14 例,PD 4 例で奏効率30.8%,化学療法後に再発巣切除を4 例に認めた。TTF 6.5か月,OS は32.1か月であった。RAS遺伝子別には変異型で3 例に再発巣切除があり,TTFは変異型/野生型で各 6.3,5.6 か月,OS は各 35.8,32.1 か月で差はなかった。また,再発巣切除した症例を除くと OS は各22.7,29.5 か月であった。結語: Bmab 併用一次治療を施行した進行再発大腸癌症例の治療成績について,RAS 変異別に後方視的に検討した。RAS変異別に治療効果に差はなく,治療選択の少ないRAS 変異型でも20 か月以上のOSが期待できると考えられた。
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癌と化学療法 44巻10号, 921-923 (2017);
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大腸癌切除を施行した440例を対象に,surgical site infection(SSI)発症(≧GradeⅡ)に関連する因子を検討した。また,予後をStage 別に比較した。SSI 発症(36 例)は,肺機能障害,mGPS,CONUT,PNI,NLR,占居部位,深達度,リンパ節転移,到達法,合併切除臓器,人工肛門造設,出血量,手術時間と関連していた。予後をみると,StageⅡ,StageⅢではSSI発症例の予後が不良であった。大腸癌手術では術前リスク判定を行い,周術期管理や感染予防対策を行う必要がある。
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癌と化学療法 44巻10号, 924-925 (2017);
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症例は72 歳,女性。2016年6 月上腹部腫瘤を主訴に当院を受診し,超音波で肝左葉外側区域を占拠する内部不均一な低エコー腫瘤を認めた。CT では肝左葉に直径5 cm の境界明瞭な低濃度腫瘍を認めた。原発性肝細胞癌を考え,2016 年8 月に外側区域切除術を施行した。肉眼所見は,直径が5 cm の円形の腫瘍で内部は灰白色であった。病理組織所見は,好酸性胞体を有する紡錘形細胞が束状に存在し,腫瘍細胞は細胞質内に縦走する筋原線維を有していた。免疫組織化学的にはSMA(+)/desmin(+)/CD34(−)/c-kit(−)/S-100(−)で,肝原発平滑筋肉腫と病理診断した。術後経過は良好で,第 8 病日に軽快退院した。その後,無再発で外来経過観察中である。肝原発の平滑筋肉腫は比較的まれな疾患であり,若干の文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 44巻10号, 926-928 (2017);
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症例は45 歳,男性。壊死性遊走性紅斑に対して,当院皮膚科にて入院加療中に低アルブミン血症および全身浮腫を認めた。腹部CT 検査で約4.5 cm 大の膵尾部腫瘍を指摘され,腹部MRI検査やPET-CT検査にて囊胞性腫瘍・膵管内乳頭粘液性腫瘍が疑われたため,手術目的にて当科へ紹介となった。脾合併膵体尾部切除術を施行し,切除組織の免疫染色にて腫瘍細胞はクロモグラニンA・シナプトフィジンともに陽性,神経内分泌腫瘍であり核分裂像は少ない膵神経内分泌腫瘍(grade 2)と診断された。術後1 年6か月の現在,膵腫瘍の再発や皮膚症状の著明な増悪は認めていない。非機能性膵内分泌腫瘍は臨床症状が乏しいため発見が遅れる傾向にあり,皮膚症状の増悪や難治性の皮膚病変に遭遇した際には,内臓悪性腫瘍の合併を疑い全身検索を行う必要があると考えられた。
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癌と化学療法 44巻10号, 929-931 (2017);
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症例は53 歳,男性。胃癌に対して,幽門側胃切除・Roux-en-Y再建術を施行した。Y脚はcircular stapler(21 mm)による側側吻合を用いた。合併症や再発なく経過したが,術後5年3か月,食思不振で来院。画像検査から,Y 脚吻合部狭窄に伴う慢性輸入脚症候群と診断した。狭窄部解除目的に外科的治療の方針とした。開腹すると,挙上空腸,Y脚吻合部が一塊となり,挙上空腸が屈曲していた。癒着剝離を行うことで屈曲は解除されたが,再狭窄が危惧されたためY脚吻合部形成の方針とした。Y 脚吻合部の肛門側で輸入脚と挙上空腸を側側吻合し,パウチ状形成を付加した。術後合併症なく退院し,栄養状態改善と体重増加を認めた。幽門側胃切除後のY脚通過障害に対してY脚パウチ状形成を行った1 例を報告する。
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癌と化学療法 44巻10号, 932-934 (2017);
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症例は72 歳,女性。胃癌に対して腹腔鏡補助下幽門側胃切除術,D1+郭清,前結腸経路Roux-en-Y(R-Y)再建を施行した。術後1 年9 か月に左上腹部痛を主訴に当科外来を受診した。CT にて上腸間膜動静脈分枝の渦巻様サインを認めたため,内ヘルニアを疑い入院とした。絶飲食により腹部症状は軽快したが自然整復されなかったと判断し,腹腔鏡下手術を行った。腹腔鏡の観察では,ほぼ全小腸がPetersenʼs defectに入り込んでいた。虚血性変化を認めなかったため腹腔鏡下に整復し,間隙を縫縮した。内ヘルニアの再発はなく,外来通院中である。幽門側胃切除後の内ヘルニアは比較的まれであるが,R-Y 法では挙上空腸と横行結腸間膜との間隙が生じることで内ヘルニアの危険性が高く,嵌頓壊死により重篤化し得る病態であり,内ヘルニアの発生を念頭に置く必要がある。確実なPetersenʼs defectの縫合閉鎖が内ヘルニアの発生を予防するために重要と考えられた。
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癌と化学療法 44巻10号, 935-937 (2017);
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フルニエ症候群は,急激に進行する壊死性筋膜炎である。bevacizumabを伴う化学療法では消化管穿孔の合併症がよく知られているが,治療中にフルニエ症候群を発症した報告はまれである。症例は73 歳,男性。切除不能進行直腸癌に対してmFOLFOX6+bevacizumab療法を行っていたところ,意識障害が出現し,救急搬送され来院した。造影CT 検査で会陰全体に皮下気種と膿瘍形成を認めた。直腸癌穿孔に伴うフルニエ症候群と診断し,緊急手術を施行した。会陰周囲の広範な開窓,デブリートマンおよびS 状結腸ストーマ造設術を施行した。局所の洗浄処置にて会陰の肉芽形成は良好となった。回腸ストーマ再造設を要したが,術後50 日目にmFOLFOX6 単独療法で治療を再開した。下部直腸癌に対するbevacizumabを伴う化学療法中は,穿孔によるフルニエ症候群に注意を要する。
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癌と化学療法 44巻10号, 938-940 (2017);
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タキサン系薬剤抵抗性進行乳癌に対しエリブリン投与が効果的であった2 症例を経験した。症例1:患者は65 歳,女性。局所進行乳癌T4cN2aM0,stage ⅢB に対し,nab-paclitaxel(nab-PTX)にて化学療法を開始した。骨転移の出現を認め,EC(epirubicin+cyclophosphamide),nab-PTX,bevacizumab(BV)+paclitaxel(PTX)を順次投与するも局所進行および肺転移の出現を認め,エリブリンへ変更した。骨髄転移が出現しPD となるまでにエリブリンを11 コース施行し,long SD を維持した。症例2:患者は77 歳,女性。進行乳癌T4bN3cM1,stage Ⅳに対し,nab-PTX にて化学療法を開始した。胸水の増加を認め,エリブリンへ変更した。PD となるまでにエリブリンを13 コース施行し,無増悪生存期間は9.53か月であった。タキサン系薬剤抵抗性進行乳癌に対しエリブリン投与が効果的であった2 症例を通じて,タキサン系薬剤とは異なるエリブリンの作用が臨床的に推察された。
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癌と化学療法 44巻10号, 941-943 (2017);
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症例は55 歳,女性。腹部膨満感を主訴に当院を受診した。卵巣・子宮腫瘍に対して子宮全摘術・両側卵巣摘出術を施行し,病理結果にてKruckenberg腫瘍と診断された。原発巣精査目的にて上部消化管内視鏡検査を施行し,胃体中部大弯側前壁にtype 3 病変を認め,生検結果はgroup Ⅴ,por2 であった。胃癌卵巣転移と診断され,化学療法としてS-1+oxaliplatin(SOX)療法6 コースを施行した。化学療法効果判定を含め審査腹腔鏡を施行し,細胞診陰性・腹膜転移を認めないため胃全摘術+D2 郭清術を施行した。術後化学療法としてS-1 を継続しているが,現在再発は認めていない。
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癌と化学療法 44巻10号, 944-946 (2017);
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直腸癌の治療において放射線治療をせずに,化学療法のみでpathological complete response(pCR)を得られることは極めて少ない。症例1 は65 歳,男性。直腸癌Stgae Ⅳ[Rb,ant-rt-lt,2 型,tub,cAI(前立腺),cN3,cM1(No. 216)]の患者は化学療法治療を希望し,mFOLFOX6を7 コース,FOLFIRIを2 コース投与した。原発巣の効果判定はCR となり,リンパ節転移は消失し,再発なく外来通院中である。症例2 は75 歳,男性。直腸癌Stage Ⅳ[(Ra-Rb,circ,2 型,cAI(膀胱),cN3,cM1(No. 216)]の患者はmFOLFOX6+bevacizumabを12 コース,FOLFIRI+bevacizumabを6 コース終了後に,低位前方切除術を施行した。原発巣の効果判定はGrade 3 であった。今回われわれは,臓器浸潤を伴う局所進行直腸癌に対し放射線治療を行わずに,全身化学療法のみを施行した後にpCR が得られた2 症例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 44巻10号, 947-949 (2017);
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局所進行上行結腸癌に抗EGFR 抗体薬併用化学療法が奏効し治癒切除し得たが,その再発に対しても同剤を併用した化学療法が著効した1 例を経験した。症例は71 歳,男性。上行結腸癌の診断で治療目的に当科に入院した。遠隔転移はないが,局所の癌の過進展のため治癒切除不能と判断した。KRASが野生型のためmFOLFOX6+cetuximabを6 コース施行し,cPRと判定し根治切除を施行した。最終診断はypT3N1M0,ypStage Ⅲa,化学療法効果判定はGrade 1bであった。術後mFOLFOX6 を6 コース施行し経過観察していたが,切除2 年6か月後のCT で右臀部に約5 cm 大の腫瘍を認め,上行結腸癌の再発と診断した。治癒切除は困難と判断し,mFOLFOX6+panitumumabを6 コース施行したところcPR が得られ,再発巣切除術を施行した。病理組織学的所見ではpCR であった。自験例は抗EGFR 抗体薬併用化学療法治療後の再発に対しても同剤の再投与が著効した示唆に富む症例と考えられた。
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癌と化学療法 44巻10号, 950-952 (2017);
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化学療法にて3 年以上の長期生存を得ている予後不良群の原発不明癌(cancer of unknown primary: CUP)の3症例を報告する。1 症例目は膵頭十二指腸のCUP であり,化学療法後にcCR,膵頭十二指腸切除後にpCR を得て4 年間生存している。2 症例目は未分化癌のCUP であり,化学療法後にPR を得たが有害事象を認め,二次,三次治療を施行し,SD にて4.2 年間生存している。3 症例目は低分化型神経内分泌性癌のCUP であり,化学療法後にPR を得たが骨転移を認め二次治療を施行し,SDにて3.5年間生存している。