癌と化学療法
2018, 45巻Supplement Ⅰ
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特集 【第28回 日本在宅医療学会学術集会】
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巻頭言 病気を診る,人を診る,家を診る,地域を診る―第28 回日本在宅医療学会学術集会を振り返って―
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description -
在宅緩和ケアにおけるエンドオブライフに向けた自己(意思)決定支援
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description在宅緩和ケアにおけるエンドオブライフに向けた自己(意思)決定支援には,がん,非がん患者にかかわらずアドバンス・ケア・プランニング(advance care planning: ACP)が大切である。 -
在宅医療における化学療法中止および差し控えの終末期生活への影響について―全国在宅医へのアンケート調査の中間報告―
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description目的: 地域緩和ケアの視点による化学療法の中止,差し控えの判断基準・提言案作成プロジェクトにおける判断基準・提言を実現するための科学的根拠となるエビデンスを得るための資料の一つとして,各固形がん腫についての抗がん剤の中止とその後のQOL,死亡までのイベントなどについて,全国の在宅がん治療にかかわっている医療施設へのアンケート調査を企画した。対象と方法:在宅医とがん治療の実情に関するアンケート調査として,郵便はがきによる案内でアンケート内容はWeb により,アンケート対象の期間は2016 年度の在宅死亡患者,各施設最低1 人,最大50 人までの記入とした。結果:第28 回日本在宅医療学会学術集会での発表は,まだ集積期間中であるため中間報告として,その一部についての解析を呈する(2017 年5 月中旬〜8 月末までの約4 か月弱の期間での中間報告)。43都道府県,170 施設の医療機関から576 患者分の回答あった。年齢分布では高齢者が圧倒的に多く,なかでも 80 歳より84 歳がピークで65歳以上が 3/4 以上を占めていた。在宅医療利用日数については14日以内が最も多く,日数が増すごとに減少しているが,1 年以上になる長期の患者も散見された。回答患者について,診断後に化学療法施行ありと化学療法施行なしについてみると,何らかの化学療法が施行されたのは約40%,最初から化学療法を施行しなかったのは60%であった。がん在宅医療の現場では,最初から化学療法なしの患者が多く,その理由としては主に高齢であることなどがあり,比較的緩和ケアファーストでの治療が多かった。結論: 今回の目的にとっては一部は問題がある結果となったが,現在まだアンケートを集積中であり,終了時点でさらに詳細な分析を行い,アンケート内容をアンケート協力者への開示,また化学療法中止,あるいは差し控えの判断基準・提言案を作成の基盤として利用したい。 -
特別養護老人ホームに勤務する介護士にシミュレーション教育を用いた褥瘡予防対策の効果
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description特別養護老人ホームにおける介護士への褥瘡予防教育にシミュレーション教育の効果を明らかにするため,質問紙調査をシミュレーション教育の前後で行った。その結果,褥瘡予防ケアに対する知識と実践で有意に得点が高かった。今後は看護師と介護士が協力して,褥瘡予防ケアを実践できるようケアの質を高めていくことが課題である。 -
訪問言語聴覚士の摂食嚥下に関する業務と課題
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description訪問リハビリテーション(リハ)において,理学療法士や作業療法士に比べて言語聴覚士がどのような業務を担っているのか報告は少ない。そのため訪問リハに従事する言語聴覚士の業務内容,患者の傾向,摂食嚥下に関するリハに重点を置いて現状を明らかにする。訪問リハに従事する6名の言語聴覚士に質問紙調査および面接調査を行った。質問紙では個人属性,対象領域,摂食嚥下リハの内容,業務内容,担当患者の傾向について収集した。面接調査では依頼の傾向および依頼状況,摂食嚥下障害患者の評価および訓練内容,肺炎予防にかかわる活動と今後必要と思われる活動について聞き取りをした。結果から多くの言語聴覚士が摂食嚥下障害の患者にかかわっており,呼吸リハや摂食嚥下に関連する部分でのニーズが高い様子がうかがえた。本研究から訪問言語聴覚士と摂食嚥下障害患者を取り巻く環境が明らかとなった。 -
在宅で診る心不全―1症例をとおして―
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description症例は,80 歳台,女性。一人暮らし,脳梗塞の既往,心房細動など多くの疾患を合併していたが,虚血性心筋症から心不全による入退院を繰り返していた。在宅管理となり多職種がかかわることでセルフケアの援助が可能となり,増悪の早めの発見・介入が可能となった。経過中,新たな虚血が関与する増悪がありPCIを施行した。また,腎機能の悪化とともに利尿剤の反応が悪化し透析導入となった。透析導入後にも透析医療機関と連携をしながら一定期間在宅医療を継続したが,最終的には透析の継続のために透析可能な療養型病院へ入院となった。心不全の管理における在宅医療の可能性と限界が感じられた。積極的治療とその意思決定支援についても重要であると思われた。 -
認知症のタイプと高血圧症,糖尿病,骨折の合併頻度の検討
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description最近の報告では,認知症患者は高血圧症や糖尿病を合併しやすいとされ,また認知症状の進行につれフレイル状態になりやすく転倒・骨折の頻度も高くなると考えられている。しかし,認知症のタイプによってそれらの合併頻度がどのように違うのかは,まだ十分には明らかになっていない。そこで今回われわれは,2016 年4 月〜2017年3 月までの1 年間,訪問診療を行ってきた75 歳以上の後期高齢者でアルツハイマー型認知症(176例),レビー小体型認知症(14 例),血管性認知症(15例),前頭側頭型認知症(3例)と確定診断された患者のなかで,高血圧症,糖尿病,転倒による骨折などの合併頻度について検討を行ったのでここに報告する。 -
GISを用いた訪問看護ステーション勢力圏における地域特徴の把握
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description訪問看護ステーションが所在する地域の特徴を明らかにするため,石川県内における訪問看護ステーションの地域特徴について,地理情報システム(geographical information system: GIS)を用いて明らかにすることを目的として研究を実施した。QGISにて老年人口,高齢化率,訪問看護ステーションの所在地データをマッピングし勢力圏を作成した。勢力圏ごとの高齢化率は中央値22.4%(最小8.8%-最大44.6%)であり約5 倍,面積は中央値9.2 km2(最小0.5 km2-最大423.2 km2)と約850 倍の差が認められた。また勢力圏面積が広いステーションは狭いステーションと比較し,高齢化率が高い傾向にあった。GIS を用いて各訪問看護ステーションが所在する地域の特徴を把握することで,地域ごとの潜在的ニーズの明確化や,より地域に適した訪問看護サービスを提供できる可能性が示唆された。 -
人口推計に基づいた能登地域における訪問介護・通所介護事業所の立地数に関する検討―地理情報システムを活用した分析―
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description石川県能登地域で人口減少が顕著である。国土交通省は生活関連サービス事業の成立に必要な人口規模を示しており,これ割り込むと事業撤退の恐れがある。本研究では地理情報システム(geographic information system: GIS)を用いて,2025年の能登地域における訪問介護と通所介護の事業所数について検討する。訪問介護と通所介護の事業所立地数は国立社会保障・人口問題研究所および国土交通省が公開している資料等用いて算出した。次に事業所から半径15 kmのバッファを描写してサービスの空白地帯を確認した。事業所の立地する確率が80%の条件では,ほぼすべての自治体で訪問介護および通所介護事業所数の超過があった。バッファ分析では北部で空白地域が認められた。サービスを維持するには営利目的以外の組織による取り組みが必要であり,特に能登北部においてはその必要度は高い。今後はGIS によるルート解析,人口分布や事業所のロケーション等を含めて検討などが必要である。 -
病院薬剤師による訪問薬剤指導の現状と課題
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description2016年5 月〜2017年3 月まで訪問薬剤管理指導を行った41 例について,患者背景と薬剤師の介入内容を後ろ向きに調査した。介入内容は介護者負担軽減のための配達,処方提案,残薬調整,入院中の介入であった。延べ算定件数285 件に対し,算定できない訪問が32 回あった。往診当日の配達,在宅での処方調整,臨時薬の配達が主な理由であった。業務の問題点と解決策を検討するためにSWOT 分析を試みた。開局薬剤師との算定条件の違いは病院薬剤師の弱みであるが,カルテ参照や入院中の介入などの強みがあることが明らかとなった。 -
在宅療養支援診療所でのPBPM 導入とその効果
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description在宅医療では「チーム医療」が推進されている。薬物治療も同様に薬剤師が多職種と連携することで医療の質の向上や安全性が保たれる。医師,薬剤師が協働して薬物治療を行うために,プロトコルに基づく薬物治療管理(protocol-basedpharmacotherapy management: PBPM)が推奨されている。PBPM を導入するためには,薬剤師と医師とが連携して地域医療における課題を抽出することが必要である。本研究では診療所薬剤師が疑義照会の課題を抽出し,PBPM の提案を行った。また,PBPMを円滑に推進するためにプロトコル作成委員会の設置や地域薬剤師会への説明を行った。今回pilot study として,ドクターゴン鎌倉診療所で五つのプロトコルを作成し,8薬局と合意した。その結果,疑義照会が46%削減することが可能となった。このように診療所と保険薬局でPBPMを導入するためには細かな調節が必要であり,診療所薬剤師が調整役を担うことで円滑な導入が可能であった。 -
施設入所者の処方減薬の取り組みと実績
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description近年,高齢者における多疾病併存による多剤併用が問題となっている。高齢者施設において薬剤師が処方介入し,処方適正化を行うことが役割の一つである。しかし,円滑に行えている現場は少ない。今回,薬剤師からの処方介入の手順を五つ作成し,施設入所者80 名に処方介入を行った。2 年間(2015 年1 月1 日〜2016年12 月31 日)の集計結果は,薬剤師からの処方提案件数118件,医療費削減効果241万1,937円となった。薬剤師からの処方提案の目的は薬を減らすことではなく,処方適正化による患者の負担軽減である。そのためには患者の医療に対する想いを事前に聴くことが重要な要素であった。薬剤師からの患者中心の処方提案を行うことは医療の質の向上にもつながったと考えられ,処方介入の推進にも貢献できる方法であると考える。 -
諸外国の在宅医療に対する薬剤師のかかわりと医療制度国際比較の一考察
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description超高齢社会に当たり公的医療制度のサスティナビリティは重要課題である。そこで日本における先進事例から課題を抽出し,その対応策となり得るものを海外事例から模索した。今回は英米北欧対象の視察ヒアリングから方向性を検討している。英国は皆保険制度を有し少子高齢化の現状があり移民政策を実行しているが,そこには様々な課題がある。しかし,GP 制度はOECD から高い評価を得ている。デンマークもまた家庭医制度を導入しており,ICTを基盤とした社会保障政策を行っている。スウェーデンは極端な薬剤師不足を政策でカバーしている。米国は健康保険制度の重圧を予防・未病重視で乗り越えようとする国民意識が培われている。これらの国々と比較して日本ほど超高齢化が群を抜いて深刻であり,在宅医療を充実させるために薬剤師が重要なポジションと可能性を担う国はない。しかしながら,様々な海外事例から学ぶべきところは数多くある。 -
緊急入院後48時間以内に死亡した症例の検討
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description当院の緩和ケア科は緩和ケア病棟16 床だけでなく,一般病棟や療養病棟でも入院対応を行い,外来診療,連携在宅支援診療所に対する緊急時のバックアップも行っている。2014 年1 月1 日〜2016 年12 月31 日までの3 年間に1,832 例が入院し,そのうち983 例が緊急入院であった。緊急入院患者のうち378 例は在宅復帰したが,605 例がそのまま病院での看取りとなり,このうち91 例が入院後48 時間以内に死亡し,入院契機は呼吸困難と意識レベルの低下が70%を占めた。91例中36 例に在宅支援診療所の介入があり,その半数が在宅での看取りを希望していた。終末期がん患者のバックアップでは,状態悪化により療養の場に対する急な意向の変化がある可能性を理解し,その意向に合わせた療養の場の提供を迅速に行うことが必要であり,在宅から入院への移動が速やかに行える円滑な地域連携体制を構築することが重要である。 -
在宅から緩和ケア病棟に入院し1 週間以内で死亡した症例の検討
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description当緩和ケア病棟は24 時間救急受け入れなどをとおして在宅療養患者の支援をしており,2015 年の集計で入院患者の26.6%が入院後1 週間以内の死亡である。どのような患者が余命の差し迫った状態で入院となるのか,その背景を検討した。患者の症状として呼吸困難,全身衰弱はたとえ経験豊富な在宅診療の介入があっても入院となる症例があり,入院後1 週間以内死亡の割合が高い傾向があった。緩和ケア病棟入院後短期間での死亡症例については,緩和ケアの質が課題の一つである。 -
がん終末期患者の在宅移行時から終末期までの退院調整看護師と訪問看護師との連携の実態からみえたこと
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description「がん終末期患者の在宅移行時から終末期までの退院調整看護師と訪問看護師等との連携の実態」に焦点を当てアンケート調査を実施した。結果,急性期病院では退院調整看護師が配置され退院調整を実践していた。また在宅の医療職および介護職者は,がん終末期患者・家族が退院後の病状の変化や介護不安などの課題を乗り越えられるよう継続的に支援を実践していた。そのなかで訪問看護師は在宅移行時(在宅移行直後)に病院医療者と患者・家族の病状の受け止め方に「ずれがあると感じる」が80%を超えていた。退院調整におけるインフォームド・コンセントや患者・家族の生活に即した退院指導が不十分であることが明らかになった。 -
三重県の在宅療養支援診療所の7 年間の活動状況と地域差に関する検討
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description三重県在宅療養支援診療所の活動状況の2008〜2014年の経年変化を四つの二次保健医療圏別に検討した。「在宅療養支援診療所に係る報告書」数は129件(2008年),170 件(2014年)であった。三重県全体で合計診療患者数,死亡患者数,訪問診療等の合計回数は増加していた。三重県全体において在宅医療体制は整備されつつあると考えられるが,二次保健医療圏別に検討したところ,北勢の活動状況は推進されてきていると考えられるが,東紀州は有意な変化がみられず,在宅医療体制の整備状況には地域差があることが示唆された。 -
在宅医療推進のために多職種連携をめざして
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description地域包括ケアシステムが有効に機能するためには,ひとえに在宅医療にかかっているといえる。在宅医療を進めていく上で必要なのは「連携」であり,システムとして展開していく必要がある。いわき市においては,いわき市といわき市医師会が主催して在宅医療推進のための多職種研修会が開催された。行政の関与,協力もあり,充実した研修会となった。年2 回開催している。いわき市医師会では,在宅医療出前講座を開催している。地域住民の地元の公民館でかかりつけ医をもつこと,認知症の理解,健診・がん検診の受診の勧めなどの講演を診療所医師,勤務医が行って好評を博している。当院では,いわき市南部在宅医療多職種研修会および連携の集いを開催している。より身近な地域での顔のみえる連携に寄与している。その他,当院での取り組みについて報告する。 -
「越谷市医療と介護の連携窓口」の活動報告と今後の展望について
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description越谷市では2016 年4 月に「医療と介護の連携窓口」を越谷市医師会内に設置し運用を始めた。2016 年4 月1 日〜2017年8月31 日までの17 か月間の相談件数は243件であった。医療機関や訪問看護ステーションからの相談が42%,介護関係者からの相談が40%を占めた。相談内容については在宅医療への移行に関しての相談が全体の半数を占めた。相談内容を掲載した広報誌「医療と介護の連携窓口便り」を毎月発行し,多職種間での情報共有を図っている。また,医療と介護の連携を積極的に構築するために研修会を開催し啓発を行っている。医療と介護の連携窓口の役割は単に入院患者の退院支援だけでなく,地域包括ケアシステム構築の潤滑剤として機能している。 -
在宅療養者のための公助,自助,共助のバランスのとれた災害の備え
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description大規模災害の発生が予測されるなかで災害への備えの充実・強化が求められている。災害の備えでは公助,自助,共助のバランスが重要とされるが,災害時の医療では拠点病院とその支援に重点が置かれ,在宅ケアにおける備えはこれまで十分に議論がなされてこなかった。本研究の目的は,首都直下地震,南海トラフ地震により大規模被害が想定されている地域の訪問看護ステーションを対象に,訪問看護ステーションが独自にできる備えと療養者・家族の自助の支援,コミュニティなどの共助の支援の状況を明らかにすることにある。結果から訪問看護ステーションの備えは進みつつあるが,療養者・家族の自助の支援,コミュニティなどの共助の支援は十分でなく,バランスがとれた備えには至っていないことが明らかになった。今後,備えの充実・強化を図るための貴重な資料を得ることができた。 -
在宅療養者の自助力を高め災害に備える訓練のデザインと成果の検討―療養者・家族とともに進めた防災訓練の振り返り―
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description東日本大震災時,療養者・家族の自助の対応と事前対策の必要性を再認識し,2013 年から療養者・家族の自助の力を段階的に高める防災訓練をデザインした。2016年度は防災訓練の成果と構築した内容の検討を行うため,本訪問看護ステーション利用者21 名に,防災訓練実施後,訓練内容・時間,用いた資料,意識の変化,防災行動等について質問紙調査を実施した。訓練日時は全員「よかった」,所要時間は「適切」(95.2%),訓練に用いた資料は「適切」(95.2%)と評価した。意識の変化は「非常に高まった」,「まあ高まった」(85.7%),防災行動は「防災用品の点検・購入」(38.1%),「マニュアルの再確認」(19.0%)などがあった。自由記載は「訓練して安心」,「防災意識が深まった」等があった。以上から構築した内容は総合的に支持・評価され,訓練実施後,防災意識の高まり,防災行動がみられ,自由記載からも療養者,家族の自助の力を高めた成果がうかがえた。 -
在宅で終末期患者を支えるチーム連携―退院当日のサービス担当者会議のあり方を考える―
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description終末期の患者や医療依存度の高い患者の増加により,退院支援・在宅支援チームの「協働」がたいへん重要になっている。最近では在宅療養を選択した患者や家族もインターネットの普及により病気はもちろんのこと,在宅サービス等の情報を知り得ることができイメージがつきやすい。しかし,実際には患者・家族がイメージしていた状況と違い不安や混乱を来すことも多いのが現実である。今回は患者や家族の期待と(現実)のずれにより,不満足な療養状況となった1 事例を報告する。 -
乳がん骨転移による難治性疼痛に対してオキシコドンとタペンタドールの併用療法が有効であった1 例
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description症例は52 歳,女性。乳がん胸椎転移に伴う難治性疼痛に対してアセトアミノフェン,NSAIDs,オキシコドンを内服していたが疼痛コントロール不良であった。鎮痛補助薬としてプレガバリンやガバペンチンを使用したが副作用のため継続できなかった。タペンタドールのノルアドレナリン再取り込み阻害作用に注目し,タペンタドールとオキシコドンによる併用療法を導入したところ,患者の満足のいく疼痛コントロールを得ることができた。オピオイド併用による副作用の出現はなかった。神経障害性疼痛を合併した難治性疼痛に対して,モルヒネ,オキシコドン,フェンタニルなどのm オピオイド受容体作動薬とノルアドレナリン再取り込み阻害作用をもつタペンタドールを併用することが,疼痛緩和に有効である可能性が示唆された。 -
人口減少社会において存続可能な終末期医療に関する一考察
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description人口減少社会において存続可能な終末期医療に必要なものは何かを考える時,あげられるのは「孤立死抑制」,「医療提供人材の最適配分」,「都市機能集約化」なのではないか。本邦の先進事例のなかで実際に先頭を走っている実務者はどうとらえているのだろうかと考え意識調査を分析した。結果はことごとく覆された。ここに医療者の苦悩と決意があり,未知の領域への突入に対する指針が示された。 -
Cancer Disease Trajectoryと芸術アウトリーチ支援活動
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description医療福祉機関・支援団体とは立場の異なる一般コミュニティーによる緩和ケア・グリーフケアの実践の意義を明らかにするために,一般音楽団体である「オペラえひめ」の音楽活動をとおした緩和ケア・グリーフケアへのアプローチについて検討した。通常の医療者の目線とは異なる視点・立ち位置からのがん療養へのかかわりは様々な意味を有する。このような活動には,疾患の特質上,cancer disease trajectoryを把握した医師のコーディネートが重要で,様々な条件が効果的にかみ合った場合,患者・家族・演奏者ならびに医療・療養環境に社会的な効果をもたらし得ると考えられた。 -
訪問薬剤管理指導を必要とする小児科患者の在宅療育状況と薬剤師の役割
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description近年の小児医療の進歩によって重症の難治性疾患の小児も成長し,医療的ケアを継続しながら自宅で過ごす機会も増えた。しかしながら,医師の訪問診療を受けていない小児科患者に対し,要件を満たせば在宅患者訪問薬剤管理指導が実施できることは,医療機関・薬局の双方にあまり知られていない。医療的ケア度が著しく高く,介護者が患児の傍を離れられない超重症児については,介護者の負担軽減と薬の供給経路確保のために訪問薬剤管理指導が有効に活用されるべきである。 -
アカシジアに対してフェンタニルクエン酸塩舌下錠が症状緩和に有効であった1 例
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Descriptionアカシジアとは「足がむずむずしてじっとしていられない」を代表的な訴えとする静座不能症状であり,主に抗ドパミン作用によると考えられている。重度の場合,自殺企図の原因となることが知られている。今回,内服困難症例の薬剤性アカシジアに対してフェンタニルクエン酸塩舌下錠が症状緩和に有効と考えられた1 例を経験したので報告する。症例は50歳台,女性。胃癌,腹膜播種による癌性疼痛,嘔気のコントロール目的で緩和ケアチームに依頼となった。嘔気に対してメトクロプラミド,ハロペリドールを用いていたが,足のむずむず感,落ち着きのなさを訴え薬剤性アカシジアと診断した。疼痛コントロールのレスキューでフェンタニルクエン酸舌下錠を内服したところ,一時的なアカシジア症状の改善を認めた。 -
入院中に睡眠障害を有したがん患者に合併したせん妄に対するSuvorexantの有用性の検討
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Descriptionわれわれは,入院中に睡眠障害を有したしたがん患者に合併したせん妄に対するsuvorexant の有用性について検討した。方法は2016年4 月〜2017 年3 月の1年間,当院緩和ケアチームに依頼となった悪性腫瘍に罹患し,不眠症状を有するせん妄患者に対してsuvorexant を用いた9 例を対象とし後方視的に観察研究を行った。せん妄の重症度評価としては,DRS-R98 の日本語版を用い,その結果suvorexant 投与前後におけるDRS-R98 の重症度スコアは投与前に比較し,投与後では有意に総スコアの低下を認めた(投与前: 10±3.20 vs 6.66±1.73,p=0.0031)。また,安全性の面においてもsuvorexantの有害事象は認められなかった。睡眠障害を有するがん患者に合併したせん妄症状に対するsuvorexant の有用性が示唆された。 -
口腔癌に対する超選択的動注化学放射線療法治療後のオピオイド中止が可能な患者因子の検討―後方視的研究―
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description口腔癌における超選択的動注化学放射線療法は,治療により粘膜炎の合併症を引き起こす。その症状緩和にオピオイドを用いた疼痛コントロールを行っているが,臨床現場で患者側からの質問として,① 超選択的動注化学放射線療法終了後からオピオイド中止までの平均日数,② オピオイド中止が可能となった患者側の因子の問い合わせが多い。本検討ではこれらを解明することを目的とする。方法として2016 年4 月〜2017 年3 月の間,当院口腔外科で超選択的動注化学放射線療法を施行した患者を対象とし,後方視的に観察研究を行い,オピオイド中止が可能な患者群,不可能であった患者群を2 群に分類し臨床的背景や臨床データとの比較検討を行った。その結果,オピオイド中止が可能な群では,治療終了後からオピオイド中止までの期間の平均は51(±34.4)日であった。非糖尿病患者と治療中のせん妄ない群がオピオイド中止に寄与する因子として抽出された。 -
A病院におけるがん患者指導管理料2 算定の現状と課題―在宅療養における治療中のつらさと患者の思いに焦点を当て―
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description2010年よりがん患者指導管理料が診療報酬に認められ,A病院でも2016 年より,がん患者指導管理料1,2 の算定を開始し2 年が経過する。今まで看護師が算定してきたがん患者指導管理料2 の面談内容を振り返り,在宅療養における抗がん剤治療のつらさと治療に対する患者の思いを明らかにした。看護面談内容をコード化し分析。抗がん剤治療を行っている外来患者は同じ病気の仲間の死から死を身近に感じ,先のみえない闘病過程のなかで生きている意味や自分らしさを見いだし,「家族に配慮しながら」,「生きるための治療を続けている」ことがわかった。 -
食道癌術症例における在宅療養1 年間での栄養指標と体重減少の関係性の検討
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description食道亜全摘一期的再建術後の21 例(術後補助化学療法未実施)を対象とし,術前から術後1 年までの目標に対する摂取熱量(%),術前と比較した体重(%),Alb,Hb,TTR,T-Cho の推移と各指標間の相関関係を調査した。結果,摂取熱量は術後1 か月時が目標値の87%で最も減少し,術後1 年時には目標に到達しTTRの推移と有意な正の相関関係(r=0.82,p=0.02)があり,T-Choの推移と相関傾向(r=0.70,p=0.14)があった。体重は術後約6 か月時が最低値89%で以降は安定しており,AlbとHb の推移と有意な負の相関関係(vs Alb: r=−0.82,p=0.01,vs Hb: r=−0.87,p=0.01)があった。AlbやHb は体重が減少している比較的術後早期に改善するため体重と負の相関がみられたが,TTR は半減期が摂取熱量の評価の期間とおおよそ一致することからも短期的な摂取熱量の指標としての意義があり,T-Cho と併せて術後病状安定時の摂取量評価に利用できると考えられた。 -
局所進行口腔癌に対する超選択的動注化学放射線療法後の胃瘻抜去が可能な患者因子の検討―後方視的研究―
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description局所進行口腔癌に対する超選択的動注化学放射線療法は,粘膜炎などの合併症を引き起こし,経口摂取や内服が不可能となる。そのため当院では治療期間中にほぼ全例に胃瘻造設を施行し,栄養および薬剤投与ルートの確保を行っている。本検討では超選択的動注化学放射線療法終了後から胃瘻抜去までの平均日数の算出と,胃瘻抜去が可能な因子を抽出することを目的とした。方法は2016 年4 月〜2017 年3 月までの間,当院口腔外科で超選択的動注化学放射線療法を施行した患者を対象とし,後方視的に観察研究を行った。胃瘻抜去が可能であった患者群,不可能であった患者群の2 群に分類し,臨床的背景や臨床データの比較検討を行った。その結果,胃瘻抜去可能群において,治療終了後から胃瘻抜去までの平均期間は132(±51.6)日であった。胃瘻抜去が可能な患者因子として,アルコール摂取量が多い,治療前の接触時痛がない,開口3横指確保可能といった因子が抽出された。 -
埋め込み型中心静脈ポート感染14例の検討
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description東京労災病院で経験したCV ポート感染例について臨床的検討を行った。2015 年4 月〜2017 年1 月に東京労災病院でCV ポート感染が疑われ,血液培養2 セットおよびカテーテル先端培養から同一菌種が検出され,診断が確定された14 例を対象とした。患者背景,原因菌,qSOFA score,CV ポート留置期間,局所の炎症所見の有無,予後などについて解析した。原因菌はCNSが7例(50%),Staphylococcus aureus 3 例(21%),Candida 4 例(29%)であった。CNS 感染例では診察時qSOFA scoreが1以下の症例が多く(71%),CNSでは菌血症を起こしても臓器障害は来しにくい可能性が考えられた。局所の炎症所見が認められたのはCNS の3 例のみであった。局所に炎症所見を認めない症例はMRSA(18%),Candida(36%)などの割合が多く治療困難となる可能性が考えられた。 -
持続皮下注射法による進行再発がん・非がん疾患のエンドオブライフ期在宅緩和ケア
45巻Supplement Ⅰ(2018);View Description Hide Description当院で経験した進行再発がん患者288 例のうちオピオイド等の持続皮下注射法(continuous subcutaneous injection:CSI)を用いた106例を対象に検討を行った。CSIの適応症状は,疼痛65%の他,呼吸器症状46%,鎮静を要する症状23%,症候性痙攣8%,腸管閉塞症状8%と多岐にわたった。CSI 投与期間の中央値は3(1〜350)日,CSI 最終経口モルヒネ換算投与量の中央値は90 mg/日(2.5〜1,920 mg),対象症例の86%にミダゾラム・オクトレオチド等が併用された。非がん性疾患に対してCSI を使用したのは在宅看取りの5 例で,脳・心血管障害,呼吸不全・肝腎不全等の複合的な要因により病状が悪化したend-of-life days の時期にCSI が使用された。本邦では2017 年現在CSI の在宅管理加算は緩和ケア領域では悪性疾患の鎮痛療法に限定されており,悪性疾患の鎮痛療法以外での使用・非がん性疾患への看取り期緩和ケア適応について議論を深める必要があると考えられた。
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