癌と化学療法
Volume 45, Issue 5, 2018
Volumes & issues:
-
総説
-
-
がん情報のあり方とそれを取り巻く問題
45巻5号(2018);View Description Hide Descriptionがん患者の60%以上は,がんに関する情報をインターネットから得ている。しかし,わが国のインターネット上には誤った情報や商用目的の広告などの不適切な情報を多く含まれている。検索サイトでは強力なSearch Engine Optimization(SEO)対策を施された商用サイトや有料の広告が上位に表示され,一定の医学的知識がないと情報の正否の判断が難しいものも多く,患者・家族が標準治療を受けずに間違ったがん治療に誘導されてしまうという問題が生じている。この問題を解決するためには,組織を越えた医療関係者の協働により情報を作成する体制の整備や医療者と患者のコミュニケーションの促進に加え,医療法による医療機関のネット広告の規制,検索サイト側の検索アルゴリズムの改良,患者の情報リテラシーの向上など,多面的な対応が必要であると考える。
-
-
特集
-
- がん治療とわが国の医療経済
-
がん医療を取り巻く医療経済の現状と課題
45巻5号(2018);View Description Hide Description医療経済では,「稀少な資源を何にどう配分すれば最も効率的か」が問題となる。がんの医療費の伸び率について既存のマクロデータを使ってその実態を観察したところ,全体の医療費の伸び率とパラレルな関係があることが判明した。しかしその一方で,外来と入院に分けて医療給付費レベルで部位別に分析すると様相は一変した。これは外来シフトが著しい化学療法,特に高額薬剤が関係していると考えられる。そこで最近話題となっている費用対効果評価においても,一定の技術革新も考慮に入れて多面的な検討が求められる。 -
肺癌における免疫チェックポイント阻害薬の費用対効果,医療経済
45巻5号(2018);View Description Hide Description非小細胞肺癌に対し免疫チェックポイント阻害薬(ICIs)の有効性が示される一方で,治療を継続することによる高いコストが懸念されている。薬剤投与期間中央値から算出したICIsの費用対効果は,これまでの標準化学療法におけるものとそれほど乖離はみられない。しかしICIs の生存曲線にはtail plateau がみられるように奏効期間が長期にわたる症例が存在し,治療期間も長くなるために高額な費用を要することが推察される。一方で,ICIsの投与により無増悪生存期間の延長や治癒が見込めるようになれば以後の医療費が削減でき,全体でみれば医療経済負担の軽減に貢献できる可能性がある。また,現状では効果予測因子であるPD-L1 においても効果が得られない症例が存在するため,さらに有用なバイオマーカーを開発することも医療経済への一助になると期待される。 -
がん治療に伴う“経済毒性”の評価
45巻5号(2018);View Description Hide Description経済毒性はがん患者のQOL や生存に悪影響を及ぼす。COmprehensive Score for financial Toxicity(COST)質問紙は経済毒性を評価するツールであり,米国ですでに検証されている。しかし米国以外での有用性は不明である。COST 質問紙の日本語版を作成し,愛知県がんセンター中央病院で2 か月以上化学療法を継続している20 歳以上の患者にアンケート調査を行った。12 名の患者に同意を得てアンケートを配布し,11 名(92%)から回答を得た。COST スコアの中央値は22(6〜29)であった。グレード1 は5名(45%),グレード2 は2名(18%)であった。COST質問紙日本語版は日本人がん患者の経済毒性を評価することが可能と考えられた。国民皆保険制度があるにもかかわらず,多くの日本人がん患者においても経済毒性は存在していることが示唆された。現在さらに症例を集積し,COST質問紙の妥当性やCOSTスコアに影響する因子を調査中である。 -
「高額治療薬」と患者の思い,患者を支える立場の思い
45巻5号(2018);View Description Hide Description薬物療法の進化により,進行がんを抱える患者も長くがんと向き合い,自分らしく日々を過ごせるようになった。その一方で,増加の一途をたどる医療費の問題から,高額な治療薬の使用を制限するような議論が進んでいる。しかし医療現場においては,患者一人一人の事情や価値観を踏まえた上で最善の治療を提供することが,治療の取り組みとしても医療者・患者の信頼関係においても「あるべき姿」ではないだろうか。医療経済や医療費の問題は単体で考えるのではなく,社会経済という大きな枠組みのなかで国民全体の課題として方向性を議論する問題であり,目の前の患者の治療とは別個に論じるべきである。日々,多くのがん患者・家族の声を聞く患者団体の立場として本テーマを考える。
-
Current Organ Topics:HematologicMalignancies/PediatricMalignancies 血液・リンパ系腫瘍 造血器腫瘍の新たな治療戦略
-
-
-
原著
-
-
GemcitabineおよびS-1治療抵抗性膵癌に対する Weekly Paclitaxel療法の後方視的検討
45巻5号(2018);View Description Hide Description切除不能・再発進行膵癌の化学療法はゲムシタビン(GEM),S-1 の単独投与から,FOLFIRINOX またはナノアルブミン結合パクリタキセル(nab-PTX)+GEMの併用療法に移行した。われわれはnab-PTXの保険適応前にGEMおよびS-1 の標準治療に無効な膵癌症例に対して,当科で実施したweekly PTX療法(PTX 80 mg/m2 day 1,8,15 の4 週ごと)を後方視的に検討した。対象は22 例であり,二次治療3 例,三次治療14 例,四次治療以降で5 例に使用された。施行コース数は平均2.7コース,dose intensityは平均86.1%,治療スケジュールの延期は15 例において行われ,投与量減量は5例で行われた。最良治療効果はPR 1 例,SD 5 例,PD 15例,NE 1 例で,奏効率4.5%,腫瘍制御率27.3%,無増悪生存期間中央値1.7(0.6〜7.0)か月,全生存期間中央値は4.6(1.7〜15.6)か月であった。有害事象は食欲不振,倦怠感,末梢神経障害が多くみられたが認容可能であった。nab-PTX+GEM療法が標準治療となる現状において,GEMおよびS-1 治療抵抗性膵癌におけるPTX単独の効力が示された。 -
肺癌術後再発例におけるBevacizumabの継続使用の経験
45巻5号(2018);View Description Hide Descriptionはじめに:肺癌化学療法におけるbevacizumab(BEV)の継続使用の有用性は,未だ十分に明らかにされているとはいい難い。本稿では,われわれの肺癌術後再発例におけるBEV の継続使用の経験について報告する。対象および結果: 2010 年1 月〜2016年12月まで,20 例の患者にBEV の継続使用を意図して治療が行われた。男性10 例,女性10 例,年齢は71±10歳。手術から再発までの期間は630±460日であった。BEV を併用して行われた化学療法のレジメン数は3±1(1〜6)であった。特に重篤な副作用は認めなかった。8 例が癌死した。手術,再発確認およびBEV 開始からの5 年生存率は,それぞれ78.8%,50.1%,34.3%,中間生存期間は2,465日,2,017日,1,120日であった。考察および結語:肺癌手術例は,手術適応と判断されることで一定以上の良好なperformance statusの症例が選択されている。さらに術後の定期検診により,術後再発を症状発現前に早期発見することができる。よって,肺癌術後再発例はより多くの化学療法レジメンを受けることができる可能性が高いと考えられる。このような症例に対しBEV の継続使用を行うことは,予後向上につながる可能性があると考えられる。 -
緩和治療目的にステント留置術を行った大腸癌イレウス症例の検討―ストーマ造設症例と比べて―
45巻5号(2018);View Description Hide Description2012年1 月〜2016年12 月までに当院で経験した大腸癌イレウス症例において,緩和治療目的ステント留置術の有用性につき,緩和ストーマ造設術と比較検討した。臨床的有効率は,ステント群13 例中11 例(84.6%),ストーマ群では5 例中5 例(100%)であった。臨床的有効例の術後食事開始日は,ステント群11 例では2(1〜6)日であり,ストーマ群5 例の6(4〜14)日に比べてより早期に食事摂取可能であった(p=0.0102)。入院化学療法が行われなかった症例での術後在院日数は,ステント群7 例では10(5〜31)日であり,ストーマ群3 例の23(16〜26)日に比べて早期退院例が多かった。術後化学療法開始日は,ステント群5 例で13(5〜25)日であり,ストーマ群3 例の29(20〜56)日に比べてより早期に化学療法が導入される傾向がみられた。大腸癌イレウス症例での緩和治療目的ステント留置術は術後早期に食事摂取が再開できることから,早期の日常生活への復帰と化学療法導入につながる可能性が示唆された。
-
-
薬事
-
-
患者自宅における抗がん剤曝露防止に関するパンフレットの有用性と薬剤師の意識調査
45巻5号(2018);View Description Hide Description外来化学療法を受ける患者数の増加に伴い,がん患者の排泄物や分泌物をとおして自宅で家族が予期しない形で抗がん剤に曝露されているという懸念がある。そこでわれわれは,自宅での抗がん剤への曝露を防ぐための対策を紹介したパンフレットを作成し,有用性についてアンケート調査を実施した。その結果,90%以上の患者がこのパンフレットが抗がん剤への安全対策に有用であると回答した。さらに大部分の患者が,このパンフレットは病気や治療に対する不安を軽減すると答えた。また,抗がん剤への曝露に関する患者への情報提供における薬剤師のかかわりを知るために,札幌東徳洲会病院および札幌徳洲会病院に勤務する薬剤師を対象にアンケート調査を実施した。結果,46 名中41 名ががん患者への服薬指導を行っていたが,自宅での曝露防止について説明している薬剤師はわずか2 名だった。その理由は,それを実践するための適切な情報の不足だった。今回の取り組みで作成したパンフレットは,自宅での抗がん剤への曝露対策に関する指導を共有化する上で効果的であることが示唆された。
-
-
医事
-
-
本邦におけるAYA 世代がん患者に対する妊孕性に関する支援体制―がん専門医調査の結果より―
45巻5号(2018);View Description Hide Description2016年に実施したWEB アンケート調査により,本邦でのがん専門医の思春期・若年成人(AYA)世代がん患者に対する生殖機能低下や妊孕性温存に関する情報提供の現状,ニーズの把握と今後のがん・生殖医療提供体制の検討を目的とした。解析対象は,産科婦人科専門医と泌尿器科専門医を除外した739 名とした。99.2%が妊孕性温存に関する情報提供は重要と考えていたが,自施設内で生殖機能に関する情報提供を実施している専門医は全体で32.2%,大学病院所属専門医と非大学病院所属専門医で,それぞれ44.9%,19.9%であった。また,近隣産婦人科施設との連携は,それぞれ14.3%と32.7%,地域ネットワークの活用は0.6%と2.7%と施設によって対照的な結果を示した。これは,回答者の所属施設で生殖補助医療(assisted reproductive technology: ART)実施施設が全体で48%,そのうち79.3%が大学病院所属専門医であることとも関係していると思われた。説明内容については,不妊発症可能性に関して92.3%,妊孕性温存方法に関しては66.9%であった。妊孕性温存に関する情報提供としては,全体で22.9%の専門医が近隣産婦人科施設との連携を考え,26.3%が公的ながん・生殖医療相談センター(公的機関)での実施が理想と考えていた。また,妊孕性温存実施に関しては大学病院,非大学病院で,それぞれ34.7%,55.1%が公的機関での実施が望ましいと考えていた。がん専門医は生殖医療に関する情報提供の重要性を認識しつつも,がん治療施設の特性によりAYA 世代がん患者の生殖機能や妊孕性に関する支援体制において量的および質的に適切な情報提供の実施が妨げられている可能性が示唆された。
-
-
症例
-
-
妊娠中に急速増大する乳癌に対して手術・化学療法を施行した1 例
45巻5号(2018);View Description Hide Description症例は33 歳,女性。妊娠28 週で右乳房腫瘤を自覚,右乳癌と診断され妊娠33 週0 日で胸筋温存乳房切除術を施行した。papillo-tubular carcinoma,pT2N3aM0,Stage ⅢC,ER 陰性,PR 陰性,HER2陽性と診断され,術後薬物補助療法を施行した。妊娠中の治療を選択し,術後13 日目(妊娠35 週)でEC 療法1 コース目を施行した。妊娠36 週5 日に自然経腟分娩となった。産後4 日目に対側の左乳房腫瘤を自覚し左乳癌と診断した。EC 療法4 コース終了。現在PTX+HER 療法を進行中である。妊娠中の化学療法については,妊娠中期以降は胎児への影響が比較的少なく安全に施行できることから,化学療法を先行させた。 -
ダサチニブによる器質化肺炎の1 例
45巻5号(2018);View Description Hide Description症例は52 歳,男性。慢性骨髄性白血病(CML)に対してX−4 年からメシル酸イマチニブ(imatinib mesylate,以下イマチニブ),X−2 年からニロチニブ,X−1 年からダサチニブを開始された。X年11 月ごろより息切れが出現し,胸部X線,胸部CT で浸潤影,両側胸水を認めた。抗菌薬と利尿剤を開始されたが改善を認めず,当科を紹介受診した。経気管支肺生検で得られた生検組織で肺胞腔内にポリープ状線維化巣を認め,器質化肺炎と診断した。ダサチニブを中止してステロイド治療を行い,臨床症状,画像所見の改善を認めた。その後CMLに対して,イマチニブ,ニロチニブを投与したが治療効果を認めなかった。ステロイド併用下でダサチニブを再投与し,器質化肺炎の再燃なくCML をコントロールすることができた。ダサチニブによる器質化肺炎はまれであり,これまで報告はない。ステロイド治療によりダサチニブの再投与が可能であった器質化肺炎の症例を経験したので,文献的考察を含め報告する。 -
PF 療法施行中にSIADHを発症し意識障害を来した舌癌の1 例
45巻5号(2018);View Description Hide Description今回われわれは,cisplatin(CDDP),5-fluorouracil(5-FU)(PF 療法)施行中にSIADHによる意識障害を来した舌癌の1 例を経験したので,その概要について報告する。症例は72 歳,女性。右舌の痛みを主訴に受診し,右側舌扁平上皮癌(T4aN2bM0)の診断下に術前化学療法のために入院し,PF 療法を施行した。day 2 から嘔気があり食欲不振を認め,day 3には意識障害を来した。急激な低Na 血症(血清Na 112 mEq/L)や血液尿検査所見などからSIADHが考えられた。意識障害発症後から電解質の補正を開始し,発症2 日後には意思疎通が可能な状態にまで改善し,発症後5 日目には血清Na 値が134 mEq/L にまで回復した。 -
Humoral Hypercalcemia of Malignancyを呈したG-CSF 産生膵退形成癌の1 切除例
45巻5号(2018);View Description Hide Description症例は65 歳,男性。横行結腸癌術後1 年の定期検査でCA19-9が上昇した。腹部CT 検査を施行し,膵頭部に22 mm大の腫瘤を認めたため精査を行い,原発性あるいは転移性膵癌の疑いで膵頭十二指腸切除術を施行した。術後経過は良好であったが,術後28 日目に一過性の意識消失発作を来した。全身精査のCT 検査で頭部に異常はなかったが,多発肝転移と大量腹水を認めた。血液検査所見で高カルシウム血症,血中parathyroid hormone-related protein(PTHrP)高値を認め,humoral hypercalcemia of malignancy(HHM)と診断した。高カルシウム血症は一時改善したが再度悪化し,術後58 日目に高カルシウム血症および癌性腹膜炎により死亡した。病理診断は多形細胞型膵退形成癌で,免疫染色でgranulocyte colonystimulatingfactor(G-CSF)が陽性であった。われわれが検索し得た限りHHMを伴うG-CSF産生膵退形成癌の報告例はなく,極めてまれな症例と考えられた。 -
局所再発大腸癌に対して大腸ステント留置後FOLFIRI+Bevacizumab療法を施行した1 例
45巻5号(2018);View Description Hide Description症例は50 歳,男性。閉塞性S 状結腸癌に対し大腸ステントを留置後にS 状結腸切除術を施行した。8 か月後に局所再発による腸閉塞を発症したため再度大腸ステント留置を施行した。精査にてS 状結腸癌術後局所再発,多発肝転移,腹膜播種の診断となり,速やかにFOLFIRI+bevacizumab を使用した化学療法を開始した。再度の大腸ステント留置により人工肛門造設を回避し,QOL の改善ならびにスムーズな後治療の移行が可能であった。化学療法に伴う合併症は認めず,大腸ステント留置後の化学療法は検討可能な治療戦略の一つと考えられた。 -
FOLFOX とFOLFIRI の交代療法+Bevacizumabにて5 年生存が得られた大動脈周囲リンパ節転移症例の2 例
45巻5号(2018);View Description Hide DescriptionFOLFOX とFOLFIRI をそれぞれの有害事象を減らすため,4 回ずつ交互に行う交代療法(FIREFOX)にbevacizumabを加えた化学療法を施行し,大動脈周囲リンパ節に転移を示した2 例でcomplete response(CR)が得られ,かつ5年生存が得られた。症例は53 歳,女性と60 歳,女性。それぞれpSS,ly3,v2,n4,H0,P0の狭窄を伴う横行結腸癌と,pSS,ly3,v3,n4,H0,P0 の上部直腸癌であった。2 例とも手術施行後,4 か月間8 コースのFIREFOX+bevacizumabを施行し,その後tegafur/uracil+経口Leucovorin療法を6 か月間施行し,さらにdoxifluridin e を 4 年間内服した。2 例とも5年を経過するも,再発なくCR の状態が続いている。FIREFOX+bevacizumabは切除不能大腸癌に対して奏効率100%を示すだけではなく,比較的小さなリンパ節転移症例に対しては5 年生存が得られる可能性がある有効な化学療法と考えた。 -
上行結腸癌同時性肝転移に対してS-1+Oxaliplatin(SOX)+Bevacizumab療法にて組織学的CR を得た1 例
45巻5号(2018);View Description Hide Description症例は77 歳,男性。下血を主訴に発見された全周性の上行結腸癌で,術前検査にて肝S7 に約51 mmの腫瘤を認め,同時性肝転移を伴う局所進行癌と診断した。先行して結腸右半切除術+D3郭清を施行した(pSSN2H2M0,stage Ⅳ)。その後,術前化学療法としてS-1,oxaliplatin(SOX)+bevacizumab(Bmab)療法を4 コース施行し,有害事象の発現は認めなかった。腹部造影CT 検査および腹部EOB-MRI 造影検査にて肝転移巣の著明な縮小を認めたため,肝S7部分切除術を施行した。病理組織学的検査所見では,切除標本内には線維化組織を認めるのみで,viable な腫瘍細胞は認めず組織学的効果判定はGrade 3 であった。患者本人の希望により術後補助化学療法は未施行であるが,術後1 年6 か月経過した現在も無再発生存中である。SOX+Bmab療法は,抗腫瘍効果に加え忍容性,利便性という点においても優れており,本症例のような大腸癌同時性肝転移症例において,二期的切除における肝切除前の術前化学療法として有用な選択肢の一つになり得ると考えられた。 -
Oxaliplatinのアレルギーに対して脱感作療法が有効であった直腸癌術後再発の1 例
45巻5号(2018);View Description Hide Description症例は44 歳,男性。下血を契機に直腸癌と診断され,括約筋間直腸切除術+両側側方郭清術が施行された。病理診断は中分化型管状腺癌,KRAS 野生型,pT2N0M0,pStage Ⅰであった。その後局所再発を認め,CapeOX[capecitabine+oxaliplatin(L-OHP)]+bevacizumab療法が導入され部分奏効(partial response: PR)であったが,手足症候群のため6 コースで中止した。経過観察中に同再発部位の増大を認めたため,FOLFIRI+cetuximab療法が開始されたが十分な腫瘍縮小効果が得られず,局所コントロール目的に腹会陰式直腸切断術が施行された。しかし,術後経過観察中に骨盤内再発に起因する左側水腎症を来した。L-OHP の耐性は確認されていなかったため,L-OHP の効果を期待して尿管ステント留置後にmFOLFOX6+bevacizumab療法を導入した。3 コース目のL-OHP 投与開始直後にGrade 2 のアレルギー(紅斑)が出現したため投与を中止したが,L-OHP の抗腫瘍効果を期待して4 コース目から脱感作療法で治療を継続した。病勢進行(progressiondisease: PD)を認めるまでmFOLFOX6+bevacizumab療法を計27 コース施行し,最良総合効果はPR であった。L-OHP の効果が期待できても,アレルギーのため中止を余儀なくされることがしばしばある。今回,L-OHP の脱感作療法が有用であった1 例を経験したため報告する。
-
-
短報
-
-
成人造血器悪性腫瘍における腫瘍崩壊症候群高リスク症例に対するRasburicase投与期間の検討
45巻5号(2018);View Description Hide DescriptionTumor lysis syndrome(TLS)is a life-threatening metabolic complication caused by the rapid breakdown of malignant cells. It is an oncologic emergency and occurs spontaneously after the initiation of chemotherapy for hematological malignancies. Therefore, the management of TLS is important. Rasburicase(RSB)has been shown to be effective for the management of TLS. We retrospectively investigated the optimal administration period of RSB(1 to 7 days)for 38 adult patients with a hematological malignancy who were at high risk for TLS. In all patients, the serum uric acid(sUA)value did not increase beyond the upper limit of normal. Clinical TLS did not occur in any patients. Seven patients were administered a single-dose of RSB and sUA remained within normal limits. These results suggested that single-dose RSB administration was efficacious for Japanese adult patients with hematological malignancies who are at high risk for TLS.
-
-
医事レポート
-
-
化学療法中の食事に対する当院の取り組み
45巻5号(2018);View Description Hide Description化学療法においては副作用により食欲低下を来し,低栄養状態に陥ることはまれではない。当院では2009 年の嗜好アンケート調査結果から,「化学療法食」を作らずに個別対応食事コメントを11 個追加し,計100 個以上用意して自由形態食として対応している。その使用状況および実用性について検討した。2013年1 月〜6月の6 か月間,血液内科に入院し化学療法を受けている64 名を対象に,個別対応食事コメントの使用状況と食事摂取量の変化を調べた。食事コメントは55 名(86%)の患者に対して使用された。使用回数は延べ2,462回で,新規コメントは35%に使用されていた。追加・変更は191回され,食事摂取量の増加につながったものは70%であり,化学療法中の個人差の大きい嗜好に対応しやすい個別対応食事コメントは食事摂取の支援に有用であった。
-