癌と化学療法
Volume 45, Issue 8, 2018
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総説
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ピロリ菌除菌後の胃がん(除菌後胃がん)
45巻8号(2018);View Description Hide Descriptionピロリ菌除菌治療による胃発がん抑制効果が明らかになったことや,有効な除菌レジメンの開発に伴い正にピロリ菌の国民総除菌時代が到来している。今後,発見される胃がんは除菌後胃がんがその割合を大幅に増やすと考えられる。除菌後胃がんはピロリ菌感染胃がんと比較し陥凹型を呈する例や,周囲の胃粘膜との境界が不明瞭な例の割合が多いとされ,注意する必要がある。除菌後症例のなかでも,胃がんの高リスク群を適切に評価することが効率的な胃がんスクリーニングに重要である。
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特集
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- がん治療におけるNavigation手術の現状と展望
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消化器外科領域における術前3Dシミュレーションの現状と展望
45巻8号(2018);View Description Hide Description肝臓手術における術前3D シミュレーションは,わが国で2012 年に保険収載となって以来急速に普及した。肝臓に関する解剖学的構造の理解,肝容量の推定および門脈,肝静脈灌流域の評価など,肝臓手術の術前3D シミュレーションに関連する研究成果がこれまでに多数報告されている。しかし従来の3D 解析システムでは,再構成された3D 肝臓モデルは固定された剛性のモデルである。また,肝離断が進行していく工程や,その工程で肝切離面に順に出現する肝内脈管を視認することができなかった。そこでわれわれは,肝臓のリアルタイムの動きと変形を可能とする肝切除シミュレーションソフトウェア「Liversim」を開発した。また最近,肝切除術における術前CT を基にした3Dプリントモデルの有用性が報告されている。われわれは独自に,内部を空洞化し肝臓表面にフレームを配置した3D プリント肝臓フレームモデルを開発した。このモデルでは製造コストが大幅に削減され,視認性が大きく改善された。近年,インドシアニングリーン(ICG)が近赤外光照射により蛍光を発することを活用した外科手術ナビゲーションが注目されている。さらにカーナビゲーションのようなリアルタイムナビゲーション手術の研究開発が期待されている。 -
肝胆膵外科領域におけるNavigation手術の現状と展望
45巻8号(2018);View Description Hide Description肝胆膵領域の手術は,複雑な局所解剖と多彩な解剖学的変異により精緻な技術を要求されるため高難度手術として認知されている。そのため,局所解剖を詳細に把握するための術前シミュレーションと,精度の高い手術を支援する術中ナビゲーション技術の発展が期待されている。肝切除におけるナビゲーション手術は,1985 年に幕内らによって超音波ガイド下に色素を用いて解剖学切除が行われたことに始まり,近年,医工学技術の進歩により,手術の安全性と確実性を支援する様々な医療機器の開発が行われている。本稿では,肝胆膵手術におけるナビゲーション手術の実際とその将来展望について概説する。 -
乳腺外科領域におけるNavigation手術の現状と展望―ICG を用いたセンチネルリンパ節生検の意義―
45巻8号(2018);View Description Hide Descriptionセンチネルリンパ節生検は,乳腺外科領域での標準治療である。放射線同位元素(radioisotope: RI)を用いるRI法は標準的なセンチネルリンパ節の同定法であるが,被曝やRI の使用に当たり核医学のある施設に限られるなどの問題点が指摘されている。そのなかで,近赤外線蛍光イメージングシステムを用いたインドシアニングリーン(indocyanine green: ICG)蛍光法がわが国で開発された。このシステムはreal-time にリンパ流を確認し,センチネルリンパ節を摘出するnavigation手術を可能にした。これまでの臨床試験の結果から,このICG 蛍光法はRI 法と同等の高い同定率を示すことが明らかとなり,現在ではRI 法に代わり得る標準的な同定法となっている。今後,がん細胞を可視化するトレーサーを用いた生体イメージングによる革新的なnavigation手術の開発が期待される。 -
経尿道的手術におけるALA-PDD を用いたNavigation手術の現状と展望
45巻8号(2018);View Description Hide Description近年,光感受性物質や蛍光物質を用いた術中蛍光ナビゲーションシステムの臨床応用が進み,注目を集めている。蛍光ナビゲーションシステムは次世代型の内視鏡技術であり,正確な診断や治療に欠かせない存在である。泌尿器科領域で展開されている5-アミノレブリン酸塩酸塩を用いた光力学診断の現状および展望について概説する。
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Current Organ Topics:Thorax/Lung and Mediastinum, Pleura: Cancer 肺癌 局所進行非小細胞肺癌に対する治療戦略
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原著
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大腸癌化学療法中のモニタリング(NLRとSoluble PD-L1)
45巻8号(2018);View Description Hide Description背景: 好中球数/リンパ球数比(NLR)値は免疫能の指標および固形癌の予後因子として有用とされ,化学療法前NLR低値の症例では予後が良好とされている。特に免疫チェックポイント阻害剤単剤(抗PD-1 抗体,抗CTLA-4抗体)で,投与前および投与中のNLR 低値が予後因子となることより,NLR は免疫状態を含めた全身状態を反映することが示唆される。目的:大腸癌化学療法実施中のNLR とsoluble PD-L1(sPD-L1)を測定し,化学療法の影響を検討する。方法: 5-FU のTDM(濃度測定による5-FU 投与量の個別化)を併用した大腸癌化学療法施行中に,NLRと腫瘍マーカー(TM),sPD-L1(ELISA法)を経時的に測定した切除不能・再発大腸癌10 例を対象とした。男性8 例,女性2 例,年齢は60〜82(中央値65)歳であり,結腸癌5 例,直腸癌が5 例であった。転移部位は,腹膜6 例,肝6 例,リンパ節5 例,肺1 例,骨1 例であった(重複あり)。FOLFOX 9 例,FOLFIRI 6 例,S-1 2 例,TAS-102 2 例,CapeOX 1 例,IRIS 1 例,LV5FU2 1 例であった。分子標的薬はBmab 6 例,Pmab 3 例,RAM が3 例であった。レジメン変更はbaseline PD で行った。NLR とTM,sPD-L1 を測定して,化学療法の影響を検証した。結果:治療期間は8〜42(中央値18)か月であった。NLR とsPD-L1(r=0.241,p=0.0459),TMとsPD-L1(r=0.368,p=0.0496)の間には弱い相関を認めた。奏効例ではNLR,TM の低下と同時にsPDL1の低下を認めた。病変の増大を認めた症例では,TM は上昇したがsPD-L1は上昇しなかった。結論: 大腸癌化学療法施行中のNLR とsPD-L1の変化は抗腫瘍免疫効果のマーカーとなる可能性がある。 -
進行再発乳癌に対するエリブリンとゲムシタビン併用療法の第Ⅰ相臨床試験(JBCRG-18Gem)
45巻8号(2018);View Description Hide Descriptionエリブリン(ERI)は進行再発乳癌に対して承認されているが,他の化学療法剤との併用における有効性および安全性は確立していない。ERI とゲムシタビン(GEM)の併用化学療法の忍容性を検討するため,日本人の進行再発乳癌患者を対象とした第Ⅰ相臨床試験を実施した。ERI およびGEMの用法・用量について,開始用量(Level 0)をそれぞれ1.1 mg/m2および800 mg/m / / 2とし,忍容性が確認された場合は次用量(Level 1)としてそれぞれ1.4 mg/m2および800 mg/m2に移行することとした。本試験に7 例が登録され,その内訳はLevel 0 3 例,Level 1 に4 例であった。用量制限毒性(dose limitingtoxicity: DLT)はLevel 1 の1 例(Grade 3 の口腔粘膜炎)のみに認められた。しかし好中球数減少をはじめとするGrade 3 以上の血液毒性が高頻度に発現し,スケジュールどおりに本併用療法を実施することが困難であったため,最大耐用量(maximum tolerated dose: MTD)および第Ⅱ相臨床試験における推奨用量(recommended dose: RD)の評価を実施しなかった。また,ERI とGEMの併用による薬物間相互作用は認められなかった。以上のように,進行再発乳癌患者に対するERI+GEM併用療法は血液毒性のため治療継続が困難であった。本試験における用量では,日本人においては新たな治療オプションとなる可能性は低いと考えられる。
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医事
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胃癌・大腸癌化学療法に対する医療関係者の意識に関する多施設アンケート調査
45巻8号(2018);View Description Hide Description治療提供者(医療者)から治療受給者(患者)となった場合,化学療法に対する考え方に変化はみられないであろうか。変化がある場合,その要因は何であろうか。今回われわれは,胃癌・大腸癌の化学療法にかかわる医師,薬剤師を対象として化学療法に対する意識に関してアンケート調査を行った。アンケート回収総数は胃癌83 名,大腸癌92 名であった。補助化学療法は患者となった場合,胃癌で5%,大腸癌では4%で治療を希望しないと回答した。その要因は拘束時間,有害事象,延命非希望であった。胃癌で11%,大腸癌では9%が立場の違いで化学療法に対する考え方が変わると回答した。その要因は医学的見地,職務上であった。一方,進行再発化学療法においては,胃癌で6%,大腸癌では5%が治療を希望しないと回答し,その要因は根治が望めない,拘束時間,延命非希望であった。胃癌で21%,大腸癌では14%が限定的なら治療を受けると回答した。また,胃癌で26%,大腸癌では18%が立場の違いで化学療法に対する考え方が変わると回答した。その要因は医学的見地,職務上であった。進行再発胃癌・大腸癌に対する化学療法の目的は,延命96%,緩和が43%であった。完治と回答した割合は,大腸癌のほうが胃癌より統計学的に有意に多かった(32% vs 18%)。また,自分が患者となった場合に進行再発胃癌・大腸癌に対する化学療法で避けたい有害事象で多かったのは末,神経障害であった。以上より,少なからぬ割合の医療者が患者側になった場合に治療に否定的あるいは消極的であることがわかった。このような背景を認識し,実臨床に役立てていくことが肝要であると考えられた。
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症例
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胸水セルブロックでEGFR 遺伝子T790M変異を確認しOsimertinib治療を行った超高齢者肺腺癌の1 例
45巻8号(2018);View Description Hide Description症例は90 歳,女性。呼吸困難感にて近医を受診し左優位の胸水貯留を指摘され当院紹介となった。左胸水セルブロック検査にてEGFR 遺伝子変異陽性(L858R)の肺腺癌と判明し,erlotinibによる治療を行った。erlotinib開始後15 か月目に左胸水の再増悪を認め,左胸水セルブロックにてEGFR 遺伝子T790M変異を検出した。osimertinibによる治療を行い,約11 か月間の病勢コントロールができた。osimertinib に耐性化後の胸水セルブロック検査では,L858R 変異は認めるもののT790M変異は消失していた。胸水セルブロックにてEGFR 遺伝子変異の検索を行い,osimertinibによる治療を施行できた超高齢肺腺癌の1例を経験したため報告する。 -
癌性胸膜炎と癌性心膜炎を呈した進行期肺腺癌に対してアルブミン懸濁型パクリタキセル(Nab-PTX)を含む化学療法にて良好な癌性漿膜炎の制御を得た1 例
45巻8号(2018);View Description Hide Description症例は63 歳,男性。癌性胸膜炎と癌性心膜炎による呼吸困難で救急搬送され,心囊ドレナージを施行されるも黄色ブドウ球菌性菌血症を併発した。抗生剤治療を併用し,ヒト血清アルブミンとパクリタキセルを結合させたナノ粒子製剤であるアルブミン懸濁型パクリタキセル(nab-PTX)を含む化学療法にて良好な癌性漿膜炎の制御を得た。癌性漿膜炎症例に対しては,すでに有効性の確認されているbevacizumabとともにnab-PTXを使用するプラチナ併用化学療法は病勢制御を期待し得る治療選択肢の一つと考えられる。 -
Detection of EGFR T790M in a Large Amount of Malignant Ascites Cellblock
45巻8号(2018);View Description Hide Descriptionオシメルチニブは第一,二世代EGFR-TKI 阻害剤に治療抵抗性のある肺癌患者に対して,極めて高い抗癌活性を示し得る薬剤である。通常,これらの治療抵抗性はEGFR exon 20 T790M遺伝子変異に起因し,腫瘍の再生検によって検出することが可能である。われわれは腹水検査を繰り返すことにより,T790M遺伝子変異を検出し得た症例を経験したので報告する。症例は71 歳,女性。EGFR exon 19 遺伝子欠失の肺腺癌患者であった。セカンドラインとしてエルロチニブ25 mg による治療を開始されたが,2 年後に癌性胸水の増加とともに癌性腹水貯留を認めた。胸水および腹水検査ではT790M遺伝子変異は検出されず,アファチニブ20 mg での治療を行ったが腹水の減少は認めず,2 か月後には全身状態の著明な悪化を認めた。腹水をより可能な限り多量に採取し,セルブロック処理を行った上で遺伝子検査を施行したところ,最終的にT790M遺伝子変異を検出することができた。その後,オシメルチニブ80 mgによる加療を開始し,腹水は劇的に減少,原発肺病変も縮小し全身状態の改善を認めた。 -
血液透析患者の進行肺扁平上皮癌に対しCarboplatin+Paclitaxelによる化学療法を行った1 例
45巻8号(2018);View Description Hide Description今回われわれは,血液透析患者の進行肺扁平上皮癌に対しcarboplatin(CBDCA)+paclitaxel(PTX)による化学療法を行った1 例を経験した。症例は54 歳,男性。慢性腎不全にて血液透析中,感冒様症状のため抗生剤を処方されたが改善せず,当院内科を紹介されCT で肺癌が疑われたため外科に紹介となった。気管支鏡検査で右上葉枝を閉塞する腫瘍を認め,扁平上皮癌と診断した。縦隔リンパ節は対側肺門まで腫大していたためc-T3N3M0,stage ⅢB と判断し,化学療法の方針とした。治療はCBDCA+PTX を選択し,CBDCAは1 コース目をAUC 4(GFR=0 として100 mg),2 コース目をAUC 5,3〜6コース目をAUC 6 として,PTX は 200 mg/m2として施行した。有害事象は軽度で6 コースを行いpartial responseの奏効を得た。透析患者の肺癌に対する化学療法は報告も少なく,使用する薬剤に関するエビデンスはなく治療選択に難渋する。今回の経験も踏まえて若干の文献的考察も加えて報告する。 -
Carboplatin+Nab-Paclitaxel併用化学療法が著効した特発性肺線維症合併進行肺扁平上皮癌に対するサルベージ手術の経験
45巻8号(2018);View Description Hide Description症例は74 歳,男性。PS 0,重喫煙者(Brinkman index 2080)。2008 年から特発性肺線維症の診断でpirfenidoneを投薬中に胸部異常陰影を指摘された。2014年5 月右中葉原発扁平上皮癌C-T2aN2M1a(対側肺転移)-Ⅳa と診断,化学療法を施行した。carboplatin(5 AUC,day 1)+nab-paclitaxel(100 mg/m2,days 1,8,15)を3 コース施行後,原発巣は縮小し(縮小率93.3%),縦隔リンパ節と対側肺転移巣は消失,腫瘍マーカーは低下した(CYFRA 29.5→3.4 ng/mL)。残存中葉腫瘍に対するサルベージ手術の方針となり,胸腔鏡下右中葉部分切除を施行し軽快退院となった。術後に同様の化学療法を3コース施行し,2017年8 月現在,無再発で外来通院中である。 -
G-CSF 産生胸部食道扁平上皮癌に対し化学放射線療法を施行した1 例
45巻8号(2018);View Description Hide Description症例は64 歳,男性。声のかすれ,咽頭痛,発熱を主訴に近医を受診するが症状は軽快しなかった。その後,食後のつかえ感が出現し,上部消化管内視鏡検査にて胸部食道扁平上皮癌の診断となった。白血球は異常高値であり,血清granulocyte-colony stimulating factor(G-CSF)値が高値を示し,生検標本の免疫染色にて抗G-CSF 抗体陽性であったため,GCSF産生胸部食道扁平上皮癌と診断した。切除不能と判断し,化学放射線療法を施行した。治療効果判定のCT 検査では原発巣は縮小したが骨転移を認め,その後に脳転移,肝転移が出現し,診断後7 か月にて癌死した。食道原発のG-CSF産生腫瘍はまれな疾患で悪性度が高く予後不良とされており,治療の困難さを再認識させられた。 -
大腸癌加療中に合併した治療関連骨髄異形成症候群に対してAzacitidineが有用であった1 例
45巻8号(2018);View Description Hide Description症例は71 歳,男性。X−3 年1 月,結腸穿孔を契機に直腸癌(cT4aNXM0,stageⅡB〜ⅢC,RAS 遺伝子変異野生型)と診断した。術後に放射線療法,oxaliplatinを含む化学療法を実施した。X年9 月ごろより汎血球減少があり,精査の結果,monosomy 7 の染色体異常を有する治療関連骨髄異形成症候群(therapy-related myelodysplastic syndrome: t-MDS)の診断となった。今回われわれはt-MDS に対してazacitidine 投与により,約1 年の延命が可能であった1 例を経験したので報告する。 -
Ramucirumab投与によりネフローゼ症候群を発症した進行直腸癌の1 例
45巻8号(2018);View Description Hide Descriptionramucirumab(Rmab)投与によりネフローゼ症候群を発症した進行直腸癌の1 例を報告する。症例は48 歳,女性。同時性肝・肺・骨転移を伴う進行直腸癌に対してFOLFIRI+Rmabを施行した。治療後より浮腫と体重増加を認め,28日目に浮腫増悪,アルブミン低下,尿蛋白増加を認め,ネフローゼ症候群と診断された。アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬,サイアザイド系利尿薬により改善した。抗VEGF 抗体薬による治療中はネフローゼ症候群の発症を念頭に置き,定期的な血圧測定,浮腫や蛋白尿の確認を行うことが重要である。 -
認知症を有する上行結腸癌術後再発患者に対する抗癌剤治療の経験
45巻8号(2018);View Description Hide Description症例は高度認知症を有する72 歳,男性。右下腹部有痛性腫瘤を主訴に近医より紹介受診された。精査の結果,上行結腸中位に腹壁に浸潤する全周性の腫瘍を認め,生検の結果,中分化型腺癌と診断された。癌部の疼痛が強く,放置しておくとイレウスの危険性もあると判断されたため,腹腔鏡下右半結腸切除術を施行した。術後1 年目の検査で前回手術部周辺に局所再発を認めた。家族と相談し十分な監督管理下に化学療法を行う方針とし,capecitabine(Cape)+bevacizumab(Bmab)を用いた治療を開始した。現在も外来で治療継続中であるが,局所再発病変は縮小傾向である。 -
TAS-102内服により2年を超えるOS延長効果を認めた進行再発結腸,直腸癌の2 例
45巻8号(2018);View Description Hide Descriptionトリフルリジン・チピラシル塩酸塩配合錠(Lonsurf®:TAS-102)は切除不能進行再発大腸癌の適応症を取得し,市販開始より約3 年が経過したが,長期にわたる使用実績については不明である。今回当院では,進行再発結腸,直腸癌患者に対し2 年を超えるTAS-102 連続使用例を2 例経験した。経過中緩徐な増大傾向でありながらも増大に伴う身体症状が出現するまでにいずれも内服開始から2 年以上を要している。主な副作用として複数回の好中球減少を認め減薬,休薬期間の延長などを必要としたが消化器症状などの出現はなく,継続的に内服可能であった。TAS-102は比較的忍容性が高く,高齢者または強力な化学療法投与後の担癌患者において安全で有効な治療選択肢であると考えられた。
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