Volume 45,
Issue 13,
2018
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特集
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【第40回 日本癌局所療法研究会】
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癌と化学療法 45巻13号, 1791-1793 (2018);
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目的: 大腸癌肝転移(CRLM)に対する経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)において,局所再発のリスク因子について検討した。対象: RFA を施行し,6 か月以上観察可能であったCRLM 63 例137 結節。結果:観察期間は6〜120(中央値13)か月であった。局所再発は全137 結節中50 結節(36.5%)に認められ,局所無再発生存期間(LRFS)は中央値26.3 か月であった。再発結節50 結節と無再発結節87 結節の2群に大別し治療背景を比較した結果,多変量解析で腫瘍径および腫瘍の直接穿刺が独立した再発危険因子として抽出された。腫瘍径について局所再発に関するROC 解析を行ったところ,至適カットオフ値は1.8 cm(AUC=0.734)であった。結語: CRLM に対するRFAにおいてより効果的な局所制御を得るには,腫瘍径は1.8 cm以下,焼灼方法はno touch ablationを選択することが望ましい。
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癌と化学療法 45巻13号, 1794-1796 (2018);
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直腸癌骨盤内再発に対し経皮的ラジオ波焼灼術(radiofrequency ablation: RFA)を行った2 例を報告する。症例1 は76 歳,男性。2013年10 月に直腸癌に対し括約筋間直腸切除術を施行した。2015 年5 月に多発肺転移,骨盤内リンパ節再発を認めたため化学療法を開始した。2017年1 月に再発巣の増大により,左臀部痛が増悪したためRFAを施行した。RFA 直後から疼痛は著明に改善し,RFA施行後1 年経過するも骨盤内再発は認めていない。症例2 は48 歳,男性,2011 年11 月に直腸癌を伴う潰瘍性大腸炎に対しハルトマン手術を施行し,2012 年7 月に術後残存直腸癌に対し直腸切断術を施行した。2012 年11 月に仙骨前面の骨盤内再発と多発肺転移を認め化学療法を開始した。肺転移は縮小したが骨盤内再発は残存していたため,定位放射線治療を施行した。2016 年5 月に骨盤内再発の増大,両側水腎症,肛門痛が出現したため両側腎瘻を造設し,骨盤内再発に対してRFAを施行した。RFA施行後疼痛は改善したが,膀胱瘻および骨盤内膿瘍を認めた。RFA施行後2 年,骨盤内再発の増大は認めなかったが,肺転移の増悪により原病死した。
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癌と化学療法 45巻13号, 1797-1799 (2018);
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はじめに: Stage Ⅳ胃癌の生存期間中央値(median survival time: MST)は一般的に約6〜13か月とされている。近年,化学療法の奏効率向上に伴い集学的治療の一貫としてのconversion surgery(CS)症例が増加傾向にある。目的: Stage Ⅳ胃癌に対するCS の意義を検討する。方法:当院でStage Ⅳ胃癌と診断され,化学療法が奏効しCS を施行した11 例を抽出した。非治癒因子・組織型・癌遺残度・組織学的治療効果の4 項目に対して生存期間を後方視的に検討した。結果:全体のMSTは86.4 か月であった。検討した4項目で生存率に有意差はなかったが,腹膜播種がなく腹水細胞診が陰性の場合,R0 切除が可能で組織学的治療効果がGrade 2/3 ならば5 年以上の長期生存が期待された。結語: Stage Ⅳ胃癌に対するCSは,症例を選択すれば安全に施行可能で長期予後が期待できる。
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癌と化学療法 45巻13号, 1800-1802 (2018);
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症例は70 歳,女性。下血にて当院を受診した。既往に22 年前に直腸癌にて低位前方切除術を施行され,再発を認めず経過観察終了となっていた。AV 4 cm の吻合部前壁に1.5 cm 大の隆起性病変を認め,生検にて中分化型腺癌(tub2)と診断した。大腸超音波内視鏡では筋層への浸潤を疑った。CT・MRIでは遠隔転移や明らかなリンパ節転移は認めなかったが,stapleによるアーチファクトもあり,深達度評価が困難であった。22 年前の直腸癌吻合部再発を疑ったが,新発生の可能性も否定できなかった。手術は腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術(D1郭清)を施行した。病理結果は前回と同様の組織型で,深達度はpT2(MP),リンパ節転移を認めず脈管侵襲も認めないため,22 年後の吻合部再発と診断した。術後3 年を経過し,再々発を認めていない。
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癌と化学療法 45巻13号, 1803-1805 (2018);
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はじめに:側方リンパ節転移を伴う下部進行直腸癌は予後不良であり,全身化学療法を要する。また,側方リンパ節転移陽性例に対する腹腔鏡下側方リンパ節郭清(lateral lymph node dissection: LLND)は難易度が高いため普及はしていない。当科で経験した下部直腸癌側方リンパ節転移陽性例に対する術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy: NAC)後,腹腔鏡下側方郭清(total mesorectal excision: TME)+LLNDの治療成績を検討する。対象と方法:対象はNAC後にLLND を行い,側方リンパ節転移陽性であった4 例として手術成績を後ろ向きに検討した。結果: 平均手術時間398 分,平均出血量は150 gであった。リンパ節郭清個数の平均は全体で33.5 個,側方リンパ節は15.3 個であった。開腹移行は認められず,Clavien-Dindo 分類Grade Ⅲ以上の術後合併症は認められなかった。結語: NAC 後の腹腔鏡下TME+LLND はリンパ節転移陽性例に対しても安全と根治性で有用な術式であると考えられる。
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癌と化学療法 45巻13号, 1806-1808 (2018);
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頭蓋底骨転移は多彩な脳神経症状を呈し,患者のquality of life(QOL)を著しく低下させる。乳癌の頭蓋底骨転移による脳神経症状に対し,緩和的放射線治療が奏効した1 例を経験した。症例は62 歳,女性。嗄声症状のスクリーニングでの胸腹部CT にて右乳腺腫瘍,腋窩リンパ節腫大,全身骨に造骨性変化を認め,乳腺針生検にて浸潤性小葉癌と診断された。右乳癌,腋窩リンパ節転移,多発骨転移の診断となった。経過中に食欲不振,回転性めまい,嚥下障害など神経学的に頭蓋底の骨転移が原因と考えられる多彩な脳神経症状を認めた。有症状性頭蓋底骨転移と診断し,頭蓋底に対し緩和的放射線治療を行ったところ,治療開始後1 週間で複数の脳神経症状が軽快した。頭蓋底骨転移により著しくQOL を低下させる脳神経症状を呈した乳癌患者に対し,緩和的放射線治療は有効であったと考える。
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癌と化学療法 45巻13号, 1809-1811 (2018);
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症例は61 歳,女性。腹部膨満感を主訴に当院を受診した。腹部CT にて大量腹水,多発腹膜播種結節を認めた。腹腔鏡下試験開腹術を施行し,腹水細胞診・多発腹膜播種結節組織診にて原発性腹膜癌と診断した。術前化学療法後に,腹式子宮全摘術・両側付属器摘出術・大網切除術を施行した。その後,多発腹膜播種再発によるイレウスおよび脾門部播種結節に対し,それぞれ腹腔鏡下にイレウス解除術,脾臓摘出術を施行した。原発性腹膜癌に対しては,減量手術および化学療法による集学的治療が望ましいとされており,減量手術が複数回に及ぶ症例においても腹腔鏡下手術が有用であると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 1812-1814 (2018);
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症例は嚥下困難のある71 歳,男性。既往歴として脳梗塞,糖尿病,高血圧があった。精査にてMt,2 型食道癌(扁平上皮癌),cT3N2M1(LYM #104L),cStage Ⅳと診断された。術前化学療法としてUDON 療法[5-FU 640 mg/m2(day 1〜5),docetaxel 28 mg/m / 2(day 1,15),nedaplatin 72 mg/m2(day 1)]を2 コース行い,発熱性好中球減少症grade(Gr)3,下痢Gr 2,血小板減少Gr 1 を認めた。2 コース後に腫瘍は縮小し,右開胸食道切除,3 領域郭清,胸骨後経路胃管再建を行った。病理組織結果はypT0N0M0,ypStage 0 で,化学療法の効果はGr 3 であった。高用量のCDDP の使用が困難な高齢者や腎機能低下,併存疾患を有する進行食道癌患者の術前化学療法として,UDON 療法は安全で有効な可能性がある。今後,臨床試験として検証する予定である。
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癌と化学療法 45巻13号, 1815-1817 (2018);
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症例は74 歳,男性。肝機能障害を指摘され,腹部造影CT 検査で胆管前後区域枝合流部での閉塞が疑われた。同部位からの擦過細胞診および胆汁細胞診でClass Ⅴ,組織診で高分化型腺癌を認め,肝門部領域胆管癌と診断された。拡大肝右葉切除の方針で経皮経肝門脈塞栓術(percutaneoustrans hepatic portal vein embolization: PTPE)を行った。PTPE施行から手術10 日前までの 19 日間,S-1 80 mg/日を投与した。手術は拡大肝右葉切除および肝外胆管切除,胆道再建術を施行した。病理組織学的検査で,病変は瘢痕組織とマクロファージ浸潤巣を認めるのみでviable な腫瘍細胞は認めず,pathological complete response(pCR)と判断した。
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癌と化学療法 45巻13号, 1818-1820 (2018);
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症例は87 歳,女性。腹痛と発熱を主訴に当院を受診した。CT 検査では膵頭部に25 mmの腫瘤,膵管と総胆管の拡張を認め,膵頭部癌による閉塞性胆管炎と診断した。まず内視鏡的経鼻胆管ドレナージ(ENBD)を挿入し,その後,膵頭部腫瘤診断のため超音波内視鏡(EUS)検査を施行した。その際に十二指腸穿孔を来し緊急手術を施行した。開腹すると十二指腸球部前壁に穿孔部を認めた。腹腔内汚染は軽度で,十二指腸穿孔部の組織挫滅の程度は軽度であった。空腸を挙上し胆嚢空腸吻合による胆道バイパス,穿孔部を用い十二指腸空腸吻合を行い穿孔部の閉鎖吻合とともに消化管バイパスを作製した。術後合併症なく経過し,術後13 日目で退院となった。退院後は経口摂取可能で自宅で過ごすことができ,術後5 か月で原病死された。本症例では予防的に胆道,消化管バイパス手術を行った。すべての患者に今回の手術が有効であるとはいえないが,緊急手術の場合でも将来の状態を予想し,術式の選択肢を増やすことは有用であると考えた。
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癌と化学療法 45巻13号, 1821-1823 (2018);
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cStageⅡ,Ⅲ食道癌に対する治療は,JCOG9906の結果を受けて術前化学療法+手術が推奨される。一方で,根治的化学放射線療法(definitive chemoradiotherapy: dCRT)も根治可能な治療法である。胸部中部食道癌(扁平上皮癌,Mt,cT2(MP)N2M0,cStage Ⅲ)に対し,dCRT にて完全寛解を得られたが,6 年後に頸部リンパ節再発を認めた症例を経験した。原発巣や他臓器に再発・転移を認めなかったため,サルベージ手術として両側頸部リンパ節郭清術を施行した。病理で頸部リンパ節転移を認めた。術後は補助化学療法を施行せず,無再発を維持している。
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癌と化学療法 45巻13号, 1824-1826 (2018);
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高齢者早期胃癌における胃部分切除の臨床的有用性を検討した。75 歳以上,pStage ⅠA,胃癌切除例63 例を対象とし,部分切除例(部切群)7 例と通常の胃切除・胃全摘例(胃切群)56 例と術後アウトカムを比較した。BMIは術後12 か月後では部切群で有意に高値であった(20.5 kg/m / 2 vs 18.4 kg/m2,p=0.043)。術後体重変化率も術後6 か月で両群間に有意差が認められた(6 か月: 95.0% vs 89.4%,p=0.039; 12 か月: 96.6% vs 86.4%,p=0.016)。術後5 年の疾患特異的生存率は部切群で100%であり再発死例はなく,5年生存率では部切群で1 例に他病死を認め86%に対し胃切群67%であった。有意差はないもののいずれも部切群で良好であった。本術式は,中長期的予後の点で胃切除と比較し遜色のない外科的局所療法と推察された。
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癌と化学療法 45巻13号, 1827-1829 (2018);
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症例は50 歳,男性。食道浸潤を伴う噴門癌に対して,腹腔内から経横隔膜的下部食道切除,胃全摘術,D2,Roux-en-Y 再建を施行し,UE,Less,Type 2,3.8×1.7 cm,T2(MP),M0,H0,P0,N1(1/15),tub2,ly1,v2,StageⅡの診断であった。S-1を用いた術後補助化学療法を行っていたが,術後1 年目のCT 検査で右肺S5 に1 cm 大の孤立性肺腫瘤を認め,胸腔鏡下右肺S5 楔状切除術を施行した。病理組織学的免疫染色で,腫瘍細胞はCK7(+),CK20(+),TTF-1(−)であり,胃癌の転移の診断であった。術後S-1+cisplatinを用いた化学療法を行い,S-1 単剤に切り替えて継続し,肺転移巣切除後5 年を経過して化学療法を中止とした。現在,術後7 年を経過して再発徴候を認めていない。胃癌の孤立性肺転移に対する治療として転移巣切除は提案され得る治療の可能性があり,今後の症例蓄積と集学的治療の開発が期待される。
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癌と化学療法 45巻13号, 1830-1832 (2018);
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一般的に直腸癌の局所再発は,骨盤内腫瘤として再発することが多い。われわれは,直腸癌に対して直腸切断術後2か月で会陰創皮下に局所再発を認め,局所切除を行った症例を経験したので報告する。症例は50 歳台前半,女性。脱肛を主訴に前医より紹介受診となった。精査で,肛門管にかかる半周性のStageⅡ進行直腸癌と診断された。左側方リンパ節に軽度腫大を認めたため,腹腔鏡下直腸切断術,D3郭清(右の側方リンパ節郭清は省略)を施行した。術後診断は,RC,RbP,tub1,type 5,65×47 mm,pT3(A1),ly0,v0,pN0(0/40),M0,pStageⅡであった。術後 2 か月の外来受診で,会陰創皮下に腫瘤を触知し,局所再発と診断した。術後3か月後に局所切除,両側鼠径リンパ節郭清を施行した。術後診断は高分化腺癌で,鼠径リンパ節に転移はなかった。追加切除後6 か月,UFT+LV の内服加療を行い,再切除後1 年で無再発生存中である。局所再発時は早期診断し,外科的切除を行えば根治術を得ることができると思われた。
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癌と化学療法 45巻13号, 1833-1835 (2018);
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persistent descending mesocolon(PDM)は,左側結腸の固定異常によって起こる病態である。腹腔鏡補助下左半結腸切除を行ったPDM を伴う下行結腸癌の1 例を報告する。症例は88 歳,女性。他院入院中に腸閉塞と診断され,当院に紹介受診となった。CT 検査で下行結腸癌に伴う閉塞性腸閉塞と診断された。経肛門的イレウス管を留置し減圧した上で,腹腔鏡補助下左半結腸切除を行った。下行結腸と腹壁の固定が緩く,PDMと考えられた。副中結腸動脈,下腸間膜静脈から血管の放射状の分岐を認めた。PDM においてはしばしば下腸間膜動脈から血管が放射状に分岐するという特徴的な分岐形態を示すが,副中結腸動脈,下腸間膜静脈の分岐形態に関する報告はあまりない。自験例でみられた血管の放射状分岐は,PDM に特有のものかどうかは不明であるが,このような分岐形態を示す可能性があることは念頭に置く必要がある。
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癌と化学療法 45巻13号, 1836-1838 (2018);
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穿孔性胃癌は一般的には救命目的に緊急手術の適応となるが,術前診断が困難で根治切除率が低く,短期および長期予後が不良とされている。穿孔性胃癌に対して一期的切除や局所治療と根治切除の二期的手術を施行した報告は散見されるが,保存的加療後に化学療法を施行し,根治切除し得た症例は少ない。症例は65 歳,男性。左上腹部痛を主訴に前医を受診し上部消化管穿孔の診断を得るも,腹部症状が限局していたため保存的治療が施行された。精査にて噴門から胃体中部にかけて3 型腫瘍を認め,切除不能進行胃癌として化学療法の方針となった。S-1/CDDP(SP)+trastuzumab(T-mab)療法を4 コース施行後に効果判定PR にて胃全摘術を施行し,病理結果はpT2N1CY0H0P0M0,pStageⅡで治癒切除を得られた。術後はS-1療法を継続し,術後3 年6か月現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 45巻13号, 1839-1841 (2018);
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症例は46 歳,男性。2017年に健診の上部消化管内視鏡検査で胃体部大弯に褐色調領域を指摘された。生検で間質内に胞巣状に増殖する腫瘍細胞を認め,免疫染色ではクロモグラニンA 陽性,CD56 陽性,シナプトフィジン陽性で胃神経内分泌腫瘍(NET)が疑われた。術前ガストリン値は82 pg/mL と正常値であり,上部消化管内視鏡検査ではA型胃炎は認めなかった。また,他の随伴症状や家族歴もなく,Ⅲ型胃NETの診断で腹腔鏡下幽門側胃切除術を行った。病理所見では最大径3 mmの腫瘍細胞を認めた。免疫染色でクロモグラニンA陽性,CD56 陽性,シナプトフィジン陽性でKi-67 陽性率は1%以下でありNETG1 相当と考えられた。腫瘍は微小であったが#4dリンパ節に転移を認めた。Ⅲ型胃NETは腫瘍径によらず手術加療が望ましいと考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 1842-1844 (2018);
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乳房Paget病は,乳癌が乳管を経て乳頭および乳輪の表皮内に進展したもので乳癌の一表現型と考えられている。通常の浸潤性乳管癌との重複はまれとされているが,組織起源については議論の分かれるところである。症例は50 歳,女性。検診マンモグラフィにて異常石灰化を指摘され,当院紹介となった。超音波検査では,左乳腺A 領域に2.4×1.3×1.6 cm大の辺縁不整・境界不明瞭な低エコー腫瘤が確認され,針生検での病理診断にて非浸潤性乳管癌と診断された。転移を疑う術前所見はなく,左非浸潤性乳管癌,cTisN0M0,Stage 0 との診断下に単純乳房切除術およびセンチネルリンパ節生検を施行した。術中,リンパ節に転移が認められたために腋窩リンパ節郭清術を追加した。手術標本の病理診断では,主病巣に複数の部位で浸潤成分が認められた。さらに乳頭部の表皮内から豊かな細胞質を有した異型細胞の集塊が認められ,Paget 病との診断を得た。最終診断は,Paget 病を併存した浸潤性乳癌,pT1aN3M0,Stage Ⅲc,Luminal HER2とした。
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癌と化学療法 45巻13号, 1845-1847 (2018);
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症例は57 歳,女性。腹部膨満感と食欲低下を主訴に来院した。腹部CT 検査で腹腔内臓器を圧排する巨大な後腹膜腫瘍を認め,後腹膜脂肪肉腫と診断し,手術を施行した。腫瘍は下行結腸,左腎臓,左卵巣を巻き込んでおり,腫瘍とともにこれらの臓器をen blocに摘出した。病理組織学的検査で脱分化型脂肪肉腫と診断された。術後1 年目のCT 検査で膵頭部背側に低濃度腫瘤の新規出現を認め,脂肪肉腫の再発と診断した。遠隔転移を認めず,完全切除が可能と判断し,再発巣に対して亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。術後は特記すべき合併症を認めなかった。再発巣切除から1 年が経過した現在,無再発生存中である。後腹膜脂肪肉腫に対し有効な化学療法が存在しない現況を考慮すると,本疾患の予後改善のためには可能な限り外科的切除を追求する必要があるものと考える。
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癌と化学療法 45巻13号, 1848-1850 (2018);
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症例は40 歳,女性。排尿時痛を主訴に当院を受診した。MRI検査では膀胱底部に壁肥厚を認め,同部に腫大した虫垂が連続していた。膀胱鏡では膀胱底部に発赤を認めるも,尿細胞診は陰性であり膀胱癌は否定的であった。以上の所見より,膀胱炎の原因は虫垂膀胱瘻と診断し,腹腔鏡下虫垂切除術+膀胱部分切除術を施行した。虫垂は腫大していた。先端は膀胱に癒着を認めていたが,鈍的に剥離可能であった。瘻孔の残存,虫垂癌の可能性も考慮し,辺縁を十分に確保して癒着部の膀胱壁を切除した。病理検査は腺癌であり,一部膀胱壁の筋層内に浸潤を認めていた。リンパ節郭清の目的で腹腔鏡下回盲部切除術(D3 郭清)を追加した。病理組織学的検査ではリンパ節転移は認めず,pT4b(SI,膀胱)pN0,cM0,pStage Ⅱの診断を得た。
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癌と化学療法 45巻13号, 1851-1853 (2018);
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切除可能な遠隔転移を有する大腸癌は,原発巣に加えて遠隔転移巣に対するR0切除が推奨されている。症例は39歳,女性。血便を主訴に近医を受診した。大腸内視鏡検査を施行し,上部直腸癌と診断した。また,腹部MRI検査を施行し,肝S4 および S5/8 に計 2 個の肝転移を認めた。二期的切除の方針とし,一期目の手術として腹腔鏡補助下低位前方切除術,横行結腸双孔式人工肛門造設術を施行した。肝転移に対する術前補助化学療法としてCapeOX療法を2 コース施行した後に,二期目の手術として人工肛門閉鎖術と人工肛門閉鎖創を利用した用手補助腹腔鏡下肝部分切除術の同時手術を施行した。術後経過は良好で,二期目の手術から21 日後にCapeOX 療法を再開した。人工肛門閉鎖の創部を利用して用手補助用デバイスを装着し,安全かつ低侵襲に肝部分切除を施行できたと考える。
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癌と化学療法 45巻13号, 1854-1856 (2018);
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症例は33 歳,女性。15 年前に右乳房の腫瘤摘出術を施行され,線維腺腫と診断された。5 年前に再度右乳房に腫瘤を認め,針生検で線維腺腫と診断され経過観察となったが,その後増大を認め4 年前に腫瘤摘出術が施行された。病理診断は境界悪性葉状腫瘍で,切除断端は陰性であった。2 年前に右乳房に再度腫瘤を認め,針生検で葉状腫瘍と診断された。急速な増大を認めたため悪性化を疑い,右乳房切除術を施行された。病理診断は良性葉状腫瘍であった。また,左乳房には4 年前より腫瘤を指摘されていたが,線維腺腫の疑いで経過観察されていた。1 年前より腫瘤の増大を認め,2 か月前よりさらに新たに腫瘤が出現し増大を認めた。針生検でいずれの腫瘤も葉状腫瘍と診断され,左乳房切除術を施行した。病理診断はいずれも良性葉状腫瘍であった。両側に異時性に多発した葉状腫瘍の1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 1857-1859 (2018);
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遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)では,男性乳癌や膵癌の既往が重要となり,BRCA 遺伝子変異を考慮して診断を進めるべきである。また,進行膵癌は多様な転移を来し,まれではあるが乳腺組織への転移の報告も散見される。今回われわれは,膵癌乳腺転移との鑑別を要した膵癌・男性乳癌重複の1 例を経験したので報告する。症例は67 歳,男性。発熱,右季肋部痛,全身i怠感を主訴に近医を受診し,CT 精査にて膵尾部癌多発肝転移・腹膜転移が疑われ,当院紹介となった。家族歴に特記すべき事項はなかった。左前胸部に約2 cm 大の弾性硬の腫瘤を認め,超音波検査で左乳腺C 領域に2.8 cm大の内部不均質で境界不明瞭な腫瘤が確認された。膵癌からの乳腺転移も否定し得ず,針生検を行ったところ,病理所見より乳腺原発が明らかとなった。以上より,膵尾部癌,cT4N1M1,Stage Ⅳおよび原発性乳癌,cT2N0M0,StageⅡAとの同時性重複癌とした。全身精査中に腫瘍増大により肝不全が進行,best supportive care(BSC)に至った。
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癌と化学療法 45巻13号, 1860-1862 (2018);
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症例は68 歳,女性。左乳癌,cT2N0M0,cStageⅡAに対し,左乳房部分切除術,センチネルリンパ節生検を施行した。術前MRI検査で浸潤癌の長径は30 mmと診断されていたが,術後病理組織診断では浸潤癌は長径50 mmで周囲に非浸潤性乳管癌を伴い,病変全体の範囲は60 mm に及び,頭側断端に非浸潤性乳管癌の露出を認めた。追加切除を希望し,前回手術の頭側断端より20 mmの切除範囲で,乳房追加部分切除術を施行した。病理組織診断では前回手術断端周囲に癌の遺残は認めなかったが,その頭側に6 mm 大の浸潤癌を認め,体表側断端に癌が露出していたため左残存乳房に対して全摘術を行った。病理組織診断では7 mm と2 mm の浸潤癌をさらに認めた。術前画像の見直しを行ったが,乳房内転移と一致する結節の同定はできなかった。追加切除した乳房内に転移結節を認めた1 例を報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 1863-1865 (2018);
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症例は64 歳,女性。2015年7 月左乳房腫瘤を自覚し,2016 年1 月に腫瘍が露出,潰瘍化し,3 月に出血があり当院に救急搬送された。CT では左乳房に胸壁浸潤を伴う巨大腫瘍と腋窩リンパ節・肝・骨転移を認めた。針生検の結果,Luminal-HER2 type の浸潤性乳管癌であり,pertuzumab+trastuzumab+docetaxel 投与の方針となった。pertuzumab を予定の約2/3 量投与した時点で悪寒が出現したため,減速して投与した。投与終了時に動悸,嘔気,頻脈,血圧低下が認められたため,補液を施行したところ,約20 分で症状は改善した。trastuzumab投与を開始直後から悪寒,頻脈,血圧低下が再度出現し,さらに腫瘍部分に疼痛を訴え,投与を中止した。trastuzumab は病期によってinfusion reaction の発症頻度に差を認めることから,本症例は全身の腫瘍量が多かったため症状が重篤であったと考えられた。腫瘍量が多い場合,前投薬の投与や投与速度減速を考慮する必要がある。
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癌と化学療法 45巻13号, 1866-1868 (2018);
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症例は60 歳台,男性。既往歴は糖尿病と脂質異常症あり。検診で下部消化管内視鏡検査を施行され,SM深部浸潤が疑われるS状結腸癌を指摘され,当科紹介となった。cT1b(SM),cN0,cM0,cStageⅠと診断し,腹腔鏡下S 状結腸切除術を施行した。手術はヘラ型電気メスと超音波凝固切開装置を使用した。左結腸動脈は温存してS 状結腸動脈第1 枝とS状結腸動脈第2 枝を切離してD3 リンパ節郭清とし,ドレーンを留置した。術後3 日目より食事を開始したところ,翌日に乳び腹水を認めた。脂肪制限食に変更したところ,術後6 日目にはドレーン排液が減少して白濁はなくなった。術後7日目にドレーンを抜去し,術後9 日目に退院となった。腹腔鏡下結腸切除術後に乳び瘻となったが,保存的加療で軽快した1例を経験した。ドレーン排液が少ない場合には絶食,完全静脈栄養を必要とせず治癒する可能性がある。
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癌と化学療法 45巻13号, 1869-1871 (2018);
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症例は84 歳,女性。検診マンモグラフィで左局所的非対称性陰影(FAD)を指摘され,当院を受診した。初診時の乳房超音波検査で左乳房内上部に0.5 cm の嚢胞性病変を認めた。初診時から2 年6か月後に1.8 cm に増大し,内部に充実成分を認めた。針生検では悪性疑いの判定(嚢胞内乳頭癌を推定する組織像)であった。左乳腺部分切除術およびセンチネルリンパ節生検を施行し,最終病理診断は被包型乳頭状癌であった。被包型乳頭状癌は周囲に筋上皮を認めず二相性が確認できないが,非浸潤性乳管癌の範疇と考えられており予後良好である。
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癌と化学療法 45巻13号, 1872-1874 (2018);
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背景と目的: CT colonography(CTC)と血管3Dを合成した手術支援画像(simulation CTC: S-CTC)は大腸癌手術での有用性が報告されているが,非造影CT からは血管3Dの作製は困難である。また,横行結腸切除は腹腔鏡では比較的難しい術式といわれており,横行結腸正中病変の小開腹下横行結腸切除術は可能であるが,正確なD2 リンパ節郭清は困難である。非造影CTC より作製した血管3D によるS-CTC を用いて,小開腹下横行結腸切除術D2 リンパ節郭清を行えた症例を報告する。対象と方法:症例は77 歳,男性。横行結腸正中の横行結腸癌,cT2N0M0,StageⅠの診断となった。既往歴に慢性腎不全がある。術前に非造影CT を施行し,workstationはZiostation2 を用いて画像構築を行った。結果:単純CT から,動脈,静脈とも辺縁血管レベルまで血管3D を作製可能であった。CTC と動脈3D とを組み合わせた非造影S-CTC を用いて,支配動脈は中結腸動脈左枝(MCA Lt)であること,左右にMCA右枝(MCA Rt)と副中結腸動脈(AMCA)が存在するが,どちらも10 cm以上離れていることが同定できた。また,動脈と静脈をfusionすることでMCA Lt に伴走する静脈はSMVより分岐していることも判明した。MCA Lt と伴走する静脈を選択的に切除する横行結腸切除術D2リンパ節郭清を術前にsimulation し,約7 cm の小開腹でsimulation どおりの手術を行うことができた。結語:非造影S-CTC は有用であり,小開腹下横行結腸切除術D2 リンパ節郭清も施行可能であった。
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癌と化学療法 45巻13号, 1875-1876 (2018);
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症例は67 歳,女性。傍大動脈リンパ節転移を伴ったStage Ⅳの直腸癌の診断でHartmann手術(D3,R1)を施行した。術後にFOLFIRIを行った。術後1 年で肝転移巣に対し肝S6 部分切除を施行した。術後にS-1 を20 コース行った。初回手術後3 年11 か月で,リンパ節転移に対しリンパ節摘出術(No. 12p,No. 16b1int)を施行した。術後にcapecitabine(Cape)を8 コース行った。初回手術後5年7か月でVirchow リンパ節転移が出現しCape+bevacizumab(Bmab)を29 コース施行したが緩徐に増大し,リンパ節摘出術(Virchow)を施行した。初回手術から9年4か月でVirchowリンパ節および傍大動脈リンパ節転移が出現し,リンパ節摘出術(Virchow,No. 16b1int)を施行した。術後はS-1 を8 コース行った。大腸癌のVirchowリンパ節転移は一般的に予後不良だが,本症例は集学的治療により長期生存中である。
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癌と化学療法 45巻13号, 1877-1879 (2018);
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症例は40 歳台,男性。盲腸癌に対し2012 年1 月に腹腔鏡下回盲部切除術(D3)を施行した。病理組織学的検査ではpT2(SS)n1(+)の fStage Ⅲa,RAS は変異型であった。術後補助化学療法としてtegafur/uracil(UFT)/calcium folinate(UZEL)の内服を5 サイクル施行した。術後1年6か月のCTにて肝転移を認め,2015 年8 月に腹腔鏡下肝部分切除術を施行した。肝下面の大網に結節があり摘出した。病理結果からどちらも同様の腺癌であったため,腹膜播種と診断した。補助化学療法としてcapecitabine+oxaliplatin(CapeOX)療法を8 サイクル施行した。その後播種再発による大腸イレウスにて2015年10月に腹腔鏡下横行結腸切除術を行った。術中所見にて播種が散在しており,再発・切除不能症例としてirinotecan+S-1(IRIS)+bevacizumab(BV)療法を選択した。27 サイクル施行後に肺転移が出現し,また腹腔神経叢周囲の傍大動脈リンパ節転移が増大しprogressive disease(PD)となり,2017 年 9 月からtrifluridine/tipiracil(TAS102)療法を開始した。治療開始前から以前から認めていた腰痛,腹痛に対する麻薬のレスキュー量の増加が顕著となった。これに伴いベースを増量していたが調節困難であったこと,主な痛みが腹腔神経叢の支配領域に一致した痛みであったことから,局所療法として腹腔神経叢ブロック(celiac plexus neurolysis: CPN)を行った。CT ガイド下にウログラフィンとブピバカインと無水エタノールを注入し手技を終えた。大きな合併症もなく退院し,外来で徐々に麻薬のベース量を漸減できた。日中はレスキューを一度も使用しないこともあり麻薬のベース量が減らせ,quality of life(QOL)にも非常に有用であった。傍大動脈リンパ節転移による疼痛と考えられる場合は本療法を考慮してもよいと思われた。
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癌と化学療法 45巻13号, 1880-1882 (2018);
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症例は67 歳,女性。十二指腸(4th portion)癌に対して,十二指腸部分切除を行った。術後病理結果所見はtub2>por2, adenocarcinoma,SE,int,ly3,v1,n+(10/20)であった。術後補助療法としてcisplatin(CDDP)+S-1 を 2 コース実施後,S-1内服を1 年施行した。術後2 年で不正出血を契機に直腸播種結節を指摘された。間もなく,同腫瘤による結腸閉塞を発症したため,横行結腸に人工肛門を造設した。capecitabine+oxaliplatin(CapeOX)+bevacizumabを開始し,一時腫瘍の縮小を認めたが徐々に増大し,肛門からの多量の下血を認めた。腫瘤部に緩和的放射線療法 50 Gy/25 Fr を施行し,FOLFIRI+bevacizumabを継続中であった。しかし再度下血し,貧血と全身倦怠感を認め入院した。出血に対する保存的加療が困難であったため,interventional radiology(IVR)を用いた局所療法での止血を試みた。IVR施行後から止血を確認でき,その後の明らかな合併症はなかった。患者は1 週間後に退院し,緩和医療を受け3 か月後に死亡した。IVRは癌終末期における症状緩和の有効な治療選択肢となり得ると考えられる。
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癌と化学療法 45巻13号, 1883-1885 (2018);
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症例は70 歳台,女性。腹痛と右下腹部腫瘤を契機に受診し,大腸内視鏡検査にて全周性の上行結腸癌が認められた。手術は結腸右半切除術,D3 リンパ節郭清,回腸結腸機能的端々吻合を施行した。病理診断はT4aN1M0,Stage Ⅲa であった。初回手術後9 か月より腫瘍マーカーの上昇があり,精査にて孤立性のドレーン抜去部腹壁再発と診断し,腫瘍を露出せずに切除した。第2 回目手術後4 か月に腹壁再再発を来し,さらに大腸内視鏡検査で吻合部再発も認められ,吻合部再発切除および腹壁腫瘍切除を施行した。第3 回目手術後10 か月現在,再発を認めていない。本症例の再発形式として癌細胞のimplantationが原因の一つとして考えられるが,術中操作や創保護の工夫など十分な検討が必要である。
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癌と化学療法 45巻13号, 1886-1888 (2018);
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当科で経験した回腸結腸型腸重積を来した回腸原発悪性リンパ腫の4 例を報告する。症例は65〜76歳の男性2 例,女性2 例。主訴は全例が腹痛であった。CT では腸重積の特徴的所見であるtarget sign が認められた。大腸内視鏡検査では結腸内に脱出した腫瘍を認め,回腸腫瘍による回腸結腸型腸重積と診断したが,生検による確定診断は得られなかった。手術は回盲部切除術または結腸右半切除術を施行した。腫瘍の肉眼形態は全例隆起型であり,バウヒン弁より25 cm 以内に存在していた。組織学的にびまん性大細胞型B 細胞性リンパ腫(DLBCL)2 例,T細胞性悪性リンパ腫1 例,濾胞性リンパ腫1例と診断した。前2 者に対しては術後化学療法を施行した。成人腸重積症は原因の多くが腫瘍であり,迅速な手術が不可欠である。悪性リンパ腫と診断された場合,術後化学療法との集学的治療を行う必要がある。
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癌と化学療法 45巻13号, 1889-1891 (2018);
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症例は73 歳,男性。肛門痛を主訴に来院した。主腫瘍は肛門3 時方向に10 cm 大の腫瘍性病変が露出していた。疼痛で坐位を保持することができず,便失禁と会陰部の悪臭を伴い,周囲皮膚がびらん性炎症を起こしていた。肛門管癌(中分化管状腺癌)による肛門狭窄と診断した。遠隔転移は認めなかった。根治切除をめざし,まずはS 状結腸に双孔式人工肛門を左下腹部へ造設した。術前化学放射線療法(CRT)を施行した。放射線治療(RT)は 40 Gy/20 回照射とし,capecitabine825 mg/m / 2回をRT照射日に1 日2 回経口投与した後,腹腔鏡補助下腹会陰式直腸切断術を施行した。治療効果はGrade1bであった。術後日常生活動作は改善し,坐位保持も可能になった。術後12 か月,再発徴候なく経過している。今回,術前CRT により肛門管癌の局所制御が可能であった症例を経験した。
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癌と化学療法 45巻13号, 1892-1894 (2018);
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症例は76 歳,女性。前医でイレウスの診断で,当院を救急受診した。腹部は著明に膨隆し圧痛を認めた。CT で横行結腸肝弯曲部にapple core signを認め,イレウスを呈していた。播種病変により上腸間膜静脈の閉塞を呈していた。また,両肺野に多発する腫瘤,肝S6 に腫瘤を認め,肺肝転移を伴う切除不能閉塞性横行結腸癌と診断した。閉塞解除のために大腸ステントを留置した。局所高度進行であり原発巣切除不能と診断し,大腸ステント留置のままmFOLFOX6療法を開始した。5 コース施行後のCT では肝転移は消失し,多発性肺転移はSDであった。さらに5 コース施行し,FU による維持療法を20コース施行した。肝S6に腫瘤が再出現し,PD と診断した。肝腫瘍の組織診では大腸癌転移の所見で,RAS遺伝子変異は認めなかった。初診より2 年となる現在,second-lineとしてFOLFIRI+panitumumab療法を施行中であり,大腸ステントに関連する合併症はない。今回,姑息的大腸ステント留置後に長期化学療法を施行している横行結腸癌の1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 1895-1897 (2018);
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症例は74 歳,女性。心窩部痛の精査目的に当院を紹介され,多発リンパ節転移を伴う進行胃癌,cT4aN2M0,cStageⅢB と診断した。術前補助化学療法としてSP 療法(S-1 100 mg day 1〜21,cisplatin 80 mg day 8)を2 コース施行した。効果判定はnon-CR/non-PD(RECIST ver1.1)と診断した。切除を試みたが,腹腔内に多数の腹膜播種転移を認め,根治切除不能と判断した。化学療法をXP 療法(capecitabine 3,000 mg day 1〜14,cisplatin 112 mg day 1)に変更したが,1 コース施行後に原発巣の増大による腫瘍出血と狭窄症状を認めた。化学療法を中止して姑息的な幽門側胃切除術を行ったが,全身状態の改善に乏しく,胃切除後17 病日に死亡した。癌遺伝子パネルによる解析を施行したところ,高度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)胃癌と判定した。近年の遺伝子解析の結果から,大腸癌と同様に胃癌においてもMSI-H症例に対する周術期化学療法は効果に乏しい可能性がある。本症例は,胃癌における分子生物学的背景に基づいた治療戦略を検討する上で示唆に富む症例であると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 1898-1900 (2018);
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症例は94 歳,女性。主訴:臍部の肉芽。4 年前に多発大腸癌で腹腔鏡補助下結腸部分切除術(上行結腸,S状結腸)を施行,StageⅢa であった。術後3 年目までのサーベイランスでは再発所見はなかったが,臍部の正中創より滲出液を認めるようになり,正中創部の不良肉芽と考えられた。術後4年3か月,臍部肉芽の増大を認め,組織生検を施行したところ腺癌と診断された。臍転移と考え,腹壁全層切除にて摘出した。術中開腹所見では腹腔内に多発微小結節を認め,腹膜播種と診断した。切除標本では真皮から筋層まで管状腺癌を認め,大腸癌臍転移と診断した。臍転移はQOL を低下することがあり,積極的な摘出を考慮すべきと考える。
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癌と化学療法 45巻13号, 1901-1903 (2018);
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症例は 82 歳,男性。多発肝転移を伴う切除不能遠位胆管癌の診断で計 25 コースの gemcitabine(GEM)/cisplatin(CDDP)併用療法が行われ,肝転移巣の消失が確認されたため,初診時より2 年11 か月後にconversion surgeryとして膵頭十二指腸切除術(ⅡA-1,D2)を施行した(T2N0M0,fStageⅠB)。術後は2 年間のGEM単独療法を行い,無再発で経過していた。術後3 年10 か月目のCT 検査で残膵に造影効果不良な腫瘍性病変と,FDG-PET 検査で同部位にSUVmax 8.6の陽性集積が認められたため残膵癌と診断し,残膵全摘術および脾臓摘出術を施行した。病理組織所見では,残膵実質から発生した腫瘍が認められたため,残膵癌(T3N1aM0,fStageⅡB)と診断した。術後補助化学療法としてS-1 療法を行い,切除不能遠位胆管癌の初診時から7 年4か月後の現在,無再発生存中である。切除不能胆管癌治療後,膵癌を異時性に合併し予後不良と推測されるケースにおいても,集学的治療が奏効すれば長期生存が得られる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 45巻13号, 1904-1906 (2018);
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神経内分泌乳癌はまれな組織型である。今回われわれは,本症例を乳腺科のない一般病院で経験した。症例は69歳,女性。左乳房腫瘤を主訴に当科を受診した。来院時,左A領域に12 mmの腫瘤を触知した。マンモグラフィ検査では腫瘤として描出された。超音波検査では11 mm の境界明瞭な低エコー腫瘤を認め,内部に豊富な血流信号を伴っていた。針生検で浸潤性乳管癌の診断であった。全身検索で他臓器転移のないことを確認後,胸筋温存乳房切除術+センチネルリンパ節生検術を施行した。病理組織学的診断は浸潤性乳管癌,腫瘍径12 mm,リンパ節転移なし。ER 陽性,PgR 陽性,HER2陰性,Ki-67 5%,synaptophysin 90%,chromogranin A 1%。CD56 20%であり,神経内分泌癌,T1N0M0,StageⅠと診断した。術後経過は良好で,合併症はなく第7 病日に退院した。退院後letrozoleの投与のみで経過観察中である。術後2 年経過した現在,転移・再発の徴候を認めていない。
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癌と化学療法 45巻13号, 1907-1909 (2018);
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肛門部扁平上皮癌に対して化学放射線療法(CRT)を施行した11 例の治療成績を検討した。標準治療は放射線療法(RT)では総線量を50.4〜60 Gy とし,小骨盤腔と両側鼠径部に20 回照射後に肛門部に10 回照射し,化学療法はRT 開始日から 5-FU 750 mg/m / / 2day をday 1〜5 持続静注,mitomycin C 10 mg/m2をday 1 に静注し,4 週間ごとに2 コース施行した。対象はT1 1 例,T2 7 例,T3 2 例,T4 1 例であった。T4症例は遠隔転移を認め,T1症例は膣癌による左鎖骨上リンパ節転移(N4)を認めたが,他は治療前の画像診断でリンパ節および遠隔転移を認めなかった。3 例(27.2%)でGrade 3 の有害事象を認めた。標準治療を行った9 例中8 例(88.9%)でCR となったが,2 例(25.0%)に局所再発を認め,これら2例のCRT 終了から再発までの期間は60 か月以上であった。肛門部扁平上皮癌に対するCRT は安全に施行が可能で,根治が期待される治療法と考えられたが,CR後も十分なフォローアップが必要と考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 1910-1914 (2018);
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大胸筋皮弁は低侵襲で手技が簡便であり,依然として進行口腔癌再建に有用性の高い局所有茎筋皮弁である。しかし本皮弁の欠点は,皮弁血行動態の不安定性から皮島の部分壊死や辺縁壊死が高頻度に生じることにある。そこでわれわれは,皮弁血行動態安定化を目的に,従来からの第4 肋間の最も太い内胸動脈前肋間枝の穿通枝に加え,第3 および第2 肋間の内胸動脈前肋間枝の穿通枝を複数含めたハート型変法デザインとし,その有用性を評価検討した。2015 年2 月〜2018 年1 月までの3 年間に,進行口腔癌根治切除後に本術式により顎口腔再建を行い,6 か月以上の経過観察を行うことができた全7 症例(男性5 例女性2 例,平均69.0歳)を対象とした。病期分類はいずれもStage Ⅳ(ⅣA 5 例,ⅣB 2 例)であった。本術式においては,いずれの症例も,皮弁や皮島の部分壊死や辺縁壊死を認めず,完全生着した。本改良術式は,皮弁の血行動態の安定化に寄与する可能性が示唆された。
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癌と化学療法 45巻13号, 1915-1918 (2018);
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目的: 胃癌術後の栄養障害は,術後補助化学療法(adjuvant)の継続期間や予後に影響を与える。CT での筋肉量測定とadjuvant 期間および予後との関連を解析した。対象: 2012 年1 月〜2017 年5 月にStage Ⅱ〜ⅢB 胃癌に治癒切除後,adjuvantを施行した33 例。方法: adjuvantを150 日以内に中止したdrop out群とその他のcontinue群の2 群間で臨床病理学的因子の比較を後方視的に行った。無再発生存期間に影響を及ぼす臨床病理学的因子を抽出した。結果: 2 群間比較ではadjuvant 前後でのリンパ球数の減少,術式,筋肉量減少率(DPMI/Dt)において有意差を認め,DPMI/Dt が独立因子であった。無再発生存についても DPMI/Dt と病期が独立危険因子として選択された。考察:胃癌術後の体重減少は adjuvant の有害事象発現や継続期間に影響するとされるが,筋肉量の減少が寄与し,その減少率は無再発生存にも影響する可能性がある。今後,筋肉減少率を抑制する介入ができれば予後改善の可能性が考えられる。
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癌と化学療法 45巻13号, 1919-1921 (2018);
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当院で行った80 歳以上の高齢者7 例に対して行った完全腹腔鏡下胃空腸吻合術を,80 歳未満の7 例と比較検討し報告する。男女比,原発巣の分布に差はなかった。performance status(PS)の分布に有意差はなかったが,80 歳以上群でPS3 が3 例,PS 4 が3 例と状態の悪い症例が目立った。両群で貧血,低栄養を認めた。80 歳未満群では病期3が1例,病期4が6 例と病態の重い症例が多い一方,80 歳以上群では病期3が5例,病期4 が2例と分布に差を認めた。術後経過としては全例大きな合併症なく,経口摂取再開が可能であった。術後在院日数は80 歳以上群のほうが短かった。80 歳以上群が早く退院可能であった背景の一つには病期が比較的軽く,経口摂取が可能となることでPS の改善がみられたためと考えている。緩和治療への方針が定まった際には本術式を早期に選択することで,残された日々のquality of life(QOL)を高められる可能性を感じた。
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癌と化学療法 45巻13号, 1922-1924 (2018);
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他臓器浸潤を伴う局所進行直腸癌に対して,術前化学療法(NAC)としてS-1+oxaliplatin(SOX)療法3 コースを施行し,腹腔鏡下直腸切断術を施行し得た症例を経験したので報告する。症例は70 歳,女性。下血を主訴に近医を受診したところ,下部消化管内視鏡検査で直腸Rb に2 型腫瘍を認め,生検でadenocarcinoma の診断を得た。CT およびMRI で膣浸潤,リンパ節転移を指摘され,NAC後に手術を行う方針とし,SOX 療法を3 コース施行した。NAC後の効果判定はSDであった。腹腔鏡下直腸切断術(D3),卵巣,子宮,膣合併切除を施行した。病理組織学的検査にてadenocarcinoma,muc>tub2,ypT4b(AI,vaginal wall),int,INF b,ly1,v2,EX(−),PN1a,grade 1,pPM0,pDM0,pRM0,pStage Ⅲa,化学療法による治療組織学的効果判定はgrade 1a と判断した。NAC後の腹腔鏡下手術はR0切除をめざす上で有用であり,また安全に施行し得る術式であると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 1925-1927 (2018);
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症例は55 歳,男性。2012年下血を主訴に来院し,肛門縁から12 cm にかけて全周性の3 型病変を認め,周囲リンパ節転移と下部尿道浸潤が疑われた。cT4bN2M0,cStage Ⅲb の診断で,術前mFOLFOX6+Bmab を4 コース施行してPR となり,直腸切断術を行った。尿道海綿体への癒着が強固で下部尿道合併切除および尿道形成を行った。病理ではypT4b(下部尿道),ypN0,ypStageⅡで尿道剥離断端陽性,根治度C であった。術後mFOLFOX6を4 コース追加し,骨盤領域と予防的に両側鼠径リンパ節に計60 Gy 照射した。術後1 年6 か月に左鼠径リンパ節が3.7 cm と腫大したため,さらにFOL FIRIを8 コース行ったところ正常大となった。6年後の現在,再発の兆候を認めず健在である。
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癌と化学療法 45巻13号, 1928-1930 (2018);
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症例は70 歳,男性。下血を主訴に近医より当院に紹介受診となった。下部消化管内視鏡検査を施行し,肛門縁から5〜10 cmにかけて全周性進行直腸癌を認めた。腫瘍は巨大であったため術前化学療法CapeOX(capecitabine 3,000 mg/m2day 1〜14+oxaliplatin 130 mg/m2 day 1)療法を4コース施行後,腹腔鏡下低位前方切除術,回腸人工肛門造設術を施行した。病理組織検査において腫瘍の残存は確認できず,完全奏効であった。術後補助化学療法として,CapeOX療法を4コース施行した後に人工肛門を閉鎖した。術後9 か月現在,外来フォローアップ中であるが,無再発生存中である。
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癌と化学療法 45巻13号, 1931-1933 (2018);
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症例は40 歳台,女性。粘血便を主訴に近医を受診し,精査で直腸に腫瘍を認め当科に紹介となった。下部消化管内視鏡検査で直腸に内視鏡通過不能な全周性腫瘍を認め,生検にて中分化型腺癌と診断された。CT,MRI検査では直腸Ra を主座とする65 mm 大の腫瘍を認めた。明らかな遠隔転移は認めなかった。回腸人工肛門造設後にS-1 内服併用による術前化学放射線療法(NACRT)を行った。腫瘍は著明に縮小し,ycT3N0M0,ycStageⅡであり,腹腔鏡補助下低位前方切除術を行った。病理組織検査では直腸やリンパ節に癌細胞は認めず,pathological complete response(pCR)であった。現在,術後6 か月で無再発生存中である。拡大手術を行っても非治癒切除が危惧される巨大直腸癌において,NACRTによりpCR が得られ腹腔鏡下に肛門温存手術を施行した症例を経験した。局所進行直腸癌において,NACRT は根治性と機能温存に寄与すると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 1934-1936 (2018);
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盲腸癌同時性肝転移(H2)に対して,二期的肝切除を含む集学的治療が奏効した1 例を経験したので報告する。症例は72 歳,女性。嘔気,体重減少を主訴に受診した。精査にて肝S4/8 と S3 に同時性肝転移を伴う1 型盲腸癌と診断し,原発切除の腹腔鏡下回盲部切除(D3)を先行した。その後,肝転移巣は増大し切除不能となったが,mFOLFOX6+bevacizumabを 11 コース施行したところ,肝 S4/8 病変および S3 病変は縮小した。初回手術から 8 か月後に肝拡大内側区域切除を施行し,1か月後に肝外側区域部分切除を施行した。術後は2 年以上経過した現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 45巻13号, 1937-1939 (2018);
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進行大腸癌の原発巣での仮性動脈瘤破綻による出血性ショックに対して,選択的動脈塞栓術(trans-catheter arterial embolization: TAE)が奏効した2 例を経験したので報告する。症例1: 73 歳,女性。直腸穿孔,腹膜炎の診断にて他院でHartmann 手術を施行された。6 か月後に大量血便を来して救急搬送となり,諸検査により遺残した直腸癌からの湧出性出血と診断した。造影CT で上直腸動脈(superior rectal artery: SRA)末梢が腫瘍内で瘤化しており,入院3 日目にTAE を施行して止血した。症例2: 79 歳,男性。血便精査にて,亜全周性2型S状結腸癌,同時性肝転移と診断した。待機的原発巣切除の直前に多量の血便を来し,救急搬送された。造影CT ではSRA末梢が腫瘍内で瘤化しており,直ちにTAEを施行して止血した。
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癌と化学療法 45巻13号, 1940-1942 (2018);
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症例1: 60 歳台,女性。直腸癌に対し腹腔鏡下括約筋間直腸切除術を施行した。術後3 年6か月後,CEAの上昇と骨盤内右背側に局所再発巣を認めたため,重粒子線治療を施行した。CEAは正常化し,CT で腫瘍の縮小と造影効果の著明な低下,PET-CTでの集積消失を認めた。12 か月間,無増悪生存中である。症例2: 60 歳台,女性。直腸癌に対し前医で腹会陰式直腸切断術を施行した。術後3 年6か月後,CEAの上昇と骨盤壁左側に局所再発を認め,手術目的に当科へ紹介となり,腫瘍を摘出した。病理組織学的には腫瘍の剥離面が陽性であったため,放射線化学療法(60 Gy,S-1 併用)を追加した。再発切除から2 年7か月後,左坐骨に局所再々発を認め,重粒子線治療を施行した。CEA値は正常化し,PET-CTでの集積消失を認め,24 か月間無増悪生存中である。結語:重粒子線治療は局所再発に対する有効な治療法の一つであると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 1943-1945 (2018);
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超高齢の切除不能再発大腸癌患者に対する化学療法の安全性,有効性は明らかになっていない。今回,肝転移再発を来した超高齢大腸癌患者に対してcapecitabine+bevacizumab療法を施行した1 例を経験したので報告する。症例は87 歳,女性。横行結腸癌に対して結腸右半切除術を施行した。術後4 か月で認めた5 か所の多発肝転移に対して肝部分切除術を施行した。初回手術後9 か月で肝S4 に再発を認めた。再切除も検討したが本人が拒否したため,年齢も考慮してcapecitabine+bevacizumab による化学療法を選択した。18 コースを施行し,CT では病勢はSD を維持している。その間Grade 2 の手足症候群を認めたが,その他の有害事象は認めずPSも0 を維持している。capecitabine+bevacizumab療法は超高齢者大腸癌患者に対して有用で安全な化学療法であると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 1946-1948 (2018);
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症例は74 歳,男性。X年,前医で食道癌にて右開胸食道亜全摘術,胃管再建術を施行された。X+11 年,胃管癌が判明したが,前医で手術困難と判断され陽子線化学療法を行われCR と判定された。X+15 年,画像検査で胃管癌のリンパ節転移が疑われた。上部消化管内視鏡では,前回の胃管癌の遺残を疑う所見は認めず,新規病変として前庭部に早期癌(高分化腺癌)を認めた。胃管癌のリンパ節再発および新規胃管癌と診断し,胃管全摘術を施行した。病理組織の結果,低分化腺癌(por)を前回治療部位の粘膜下から漿膜(T4a),リンパ節に認めた。新規病変はT1aであった。術後7 か月で癌性胸膜炎を発症し,術後8 か月に死亡した。近年,食道癌に対する治療の進歩に伴い術後長期生存例が増加し,同時に再建胃管癌症例も増加傾向にある。今回われわれは,胸部食道癌術後11 年目に発生した胃管癌に対し陽子線治療を施行したが,4 年後に再発を来した1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 1949-1951 (2018);
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肝細胞癌(HCC)の腹膜播種はまれであり,これに対する外科切除の治療効果に関しては一定の見解が得られていない。症例1: 48歳,男性。肝S6 のHCC に対し二度の肝切除,一度のラジオ波焼灼療法(RFA)が施行された。初回手術から8 年後に骨盤底に腹膜播種を来し外科切除が施行された。腹膜播種切除後17 か月が経過し再発生存中である。症例2: 71 歳,男性。肝S6のHCC に対して三度の穿刺局所療法が施行され,残肝局所再発に対し手術が施行された。腫瘍近傍に腹膜播種を認め同時切除が行われたが,骨盤内再発を認めて腹膜播種切除後20 か月目に原病死した。症例3: 58 歳,男性。肝S6 のHCC に対する肝S6 亜区域切除後8 年目に十二指腸狭窄を伴う腹膜播種が認められた。外科切除を施行したが,その2 か月後に原病死した。文献的考察や自験例の経験から,HCC 腹膜播種(少数個)に対して外科切除は有効な治療選択肢の一つになり得る。
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癌と化学療法 45巻13号, 1952-1954 (2018);
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症例は63 歳,男性。検診異常で前医を受診し,上部内視鏡検査で胃角部大弯側の中心部に潰瘍形成を伴う径約70 mm大の胃粘膜下腫瘍様隆起性病変を認めたため,当院内科に紹介となった。EUS-FNA検査で紡錘形腫瘍の出現があり,免疫染色でCD20 陽性細胞を多数認め,B 細胞系リンパ腫の可能性も除外できず,切除診断目的に当科紹介となった。腫瘍径が大きく周囲リンパ節腫大を伴っていることから,幽門側胃切除術(D2郭清)を施行した。摘出標本は径67×49 mm大の紡錘形細胞が錯綜して増殖する腫瘍で,核分裂像は少量,免疫染色でS-100陽性,c-kit,CD34,DOG-1は陰性であり,所属リンパ節への転移は認めず,胃良性神経鞘腫と診断した。術後経過は良好で術後8 日目に退院となり,以後6 か月間無再発で経過している。
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癌と化学療法 45巻13号, 1955-1957 (2018);
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症例は57 歳,男性。右季肋部痛にて当院を受診した。腹部造影CT で肝S6-7の10 cm 大の腫瘤性病変が肝表面から突出し,周囲には腹腔内出血を来していた。同日,緊急肝動脈塞栓術を行い止血し得た。また,血中a-fetoprotein(AFP)が 4,447.9 ng/mL と高値であった。後日行った上部消化管内視鏡検査で胃体中部小弯側に 20 mm 大の 2 型病変を認めたため,幽門側胃切除術および肝右葉切除術を行った。病理組織診断は胃病変は肝様腺癌で,AFP蛋白陽性であった。一方,肝病変はAFP 蛋白陰性であったが,胃の肝様腺癌と類似し,背景肝に線維化を認めなかった。以上より,AFP産生胃癌肝転移と診断した。術後31 日,CT で肝S1に転移性病変および腹水貯留を認め化学療法を行うも奏効せず,術後75 日目に原癌死した。AFP産生胃癌肝転移の切除率は低く,破裂症例に対して手術を行った報告は本邦2 例目である。
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癌と化学療法 45巻13号, 1958-1960 (2018);
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症例は30 歳,女性。出産を契機に進行胃癌[MUL,Circ,Type 4,por1+2,T4a,N3a,M1(LYM,P1,CY1,H0),Stage Ⅳ]が発見された。切除不能進行胃癌の診断で化学療法(first-line: S-1+CDDP,second-line: PTX+Rmab,thirdline:Nmab)を施行した。開始後約10 か月から頭痛が出現したが,薬物治療にも抵抗性であったため精査を施行したところ頭部造影MRI検査で脳表にびまん性濃染を認め,癌性髄膜炎が疑われた。明らかな水頭症などは認めなかった。症状緩和の目的でステロイド投与などを行ったが,症状は改善しなかった。それ以上の積極的加療は希望しなかったため,抗癌剤の髄注内療法や放射線療法は行わなかった。徐々に症状は悪化し,診断後約4 週間で原病死した。胃癌による癌性髄膜炎の頻度は非常に低く,診断も困難であることが多い。診断し得た場合にも病状の進行が早く治療は困難で,予後は極めて悪いのが現状である。今回われわれは,30歳の若年で発症した胃癌の癌性髄膜炎を経験した。
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癌と化学療法 45巻13号, 1961-1963 (2018);
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アポクリン腺癌は比較的まれな皮膚原発の悪性腫瘍であり,腋窩に好発するとされている。転移性腺癌,副乳癌や乳腺原発アポクリン癌などが鑑別として重要になるが,診断が困難な症例も存在する。症例は86 歳,女性。右腋窩の胸壁腫瘤の精査加療目的にて当院に紹介となった。理学所見では,右腋窩に皮膚潰瘍を伴った約4 cm 大の腫瘤を認めた。超音波検査では,右腋窩に約4 cm大の腫瘤,また転移を疑わせるリンパ節腫大が複数個確認された。CT にて遠隔転移は認めなかった。原発巣の精査目的にて吸引式乳腺組織生検を施行し,アポクリン癌(ER 強陽性,PgR 陰性,HER2-FISH陰性,Ki-67 13.6%)の病理組織学的診断を得た。ER 陽性のため,術前診断は右乳腺アポクリン癌,cT4N1M0,Stage Ⅲb とし,単純乳房切除および腋窩リンパ節郭清術を施行した。病理組織学的診断では腫大した類円形核を有する異形細胞が確認され,乳腺原発アポクリン癌,pT4N2M0,Stage Ⅲb(45×25 mm,tf2,na2,mc1,ly1,v2,ER 強陽性,PgR 陰性,HER2強陽性,Ki-67 6%)の診断を得た。
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癌と化学療法 45巻13号, 1964-1966 (2018);
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症例は74 歳,男性。腹部超音波検査で肝内に多発する腫瘤を指摘され,下部消化管内視鏡検査で回腸末端に25 mm大の2 型腫瘍を認めた。生検ではneuroendocrine tumor(NET)G1の診断であった。回腸NET G1の多発肝転移の診断で,開腹回盲部切除術,肝S2 生検を施行した。術中所見では,回腸末端部に漿膜浸潤を伴う腫瘤,腸間膜リンパ節の腫大と肝S2,S5,S8 に多発する計3 個の腫瘤を認めた。総合診断は,回腸NET G1,T4N1M1,Stage Ⅳであった。術後はオクトレオチド療法を施行し,約24 か月経過した現在も生存中である。今回われわれは,肝転移を伴う回腸NET G1の1 例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 1967-1969 (2018);
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症例は79 歳,男性。既往歴は2003 年,2007 年に後腹膜腫瘍に対して経仙骨的小骨盤内腫瘍摘出術を施行した(pseudocyst の診断で悪性所見なし)。2014 年に後腹膜腫瘍再発に対して開窓およびドレナージ術を施行した(腺癌を認めたが,原発同定および根治切除困難)。2016年に臀部痛と右下肢のしびれを主訴に当院を受診した。腹部CTでは下腹部から右会陰部にまで達する嚢胞性病変を認めた。根治照射は困難であったため,疼痛コントロール目的でサイバーナイフ照射を施行した。1日 5 Gy,5日間連続で照射(総線量 25 Gy)した。治療開始 2 日目には疼痛が1/10 まで改善し,坐位を保てるようになった。その後も疼痛コントロールは良好であったが,照射治療1 年6か月後に原病死した。今回,後腹膜原発不明癌に伴う疼痛に対してサイバーナイフ治療で症状緩和を得た1 例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 1970-1972 (2018);
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口腔白板症は,口腔領域の前癌病変のなかで発生頻度と悪性化率の高い疾患である。今回われわれは,2015 年1 月〜2017 年12 月までの3 年間に,各種精査にて口腔白板症の臨床診断の下,切除術を行った62 例67 部位について臨床病理学的検討を行った。症例は男性22 例,女性40 例で,発生部位は下顎歯肉が26 部位(38.8%)と最も多く,次いで舌24 部位(35.8%),上顎歯肉9 部位(13.4%),頬粘膜4 部位(6.0%),口蓋3 部位(4.5%),口唇1 部位(1.49%)であった。臨床視診型は白班型が41 部位(61.2%)と最も多く,紅斑混在型12 部位(17.9%),丘型11 部位(16.4%),疣型3 部位(4.5%)であった。切除術後の病理組織学的検査結果において,白板症病変内に上皮内腫瘍/上皮内癌を16 部位(23.9%),早期扁平上皮癌を5 部位(7.5%)に認めた。したがって,臨床診断的に口腔白板症であってもすでに病変の一部には悪性化を来していることも少なくなく,積極な外科的切除の対象になる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 45巻13号, 1973-1975 (2018);
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下部直腸粘膜内癌に対する経肛門的局所切除後発症した多量の縦隔気腫・後腹膜気腫に対して保存的に治療し得た1例を経験した。80 歳台,女性。排便困難を主訴に肛門括約筋機能低下を有する直腸粘膜脱症候群と診断された。大腸内視鏡検査にて歯状線より口側に半周ほどの隆起性病変を含む全周性の粘膜の増生があり,生検の一部からsuspicious for adenocarcinoma(tub1/pap),Group 4 の診断を得た。脊椎麻酔下に経肛門的切除術を非連続的に計半周程度行い,可及的に閉鎖した。術翌日から38℃の発熱,術後2 日目のCT 検査で広範な後腹膜気腫および上咽頭に至る縦隔気腫を認めた。発熱以外の自覚症状を認めなかったため,絶食の上抗生剤治療を選択したところ,術後10 日で縦隔気腫はほぼ消失した。送気下の治療でなくとも局所切除後縦隔気腫に至る危険性もあり注意を要する。
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癌と化学療法 45巻13号, 1976-1978 (2018);
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高齢者の膵・胆道癌に対し,膵頭十二指腸切除術(PD)を施行する際の適格基準を評価した。対象はPD を施行した70 歳以上の膵・胆道癌244 例である。適格基準は(1)心機能は心臓エコーでejection fraction ≧40,(2)肺機能はspirogramで FEV1.0% ≧50%,(3)栄養指標は血清 albumin 値 ≧ 3.0 g/dL,(4)一般全身状態は Karnofsky performance status ≧80%,(5)意思決定は自己決定能力ありの5 項目である。超高齢者群(80〜88歳,32 例)にPD の意義があるか,高齢者群(70〜79 歳,212例)と周術期合併症,手術関連死亡率,遠隔成績を比較し,予後因子を探索した。超高齢者群は2 項目以上の併存症(p<0.0001)と術後せん妄(p=0.024)が有意に高率であったが,術後在院日数,在院死亡は2 群間で差はなかった(p=0.958)。他病死を含めた遠隔成績は2 群間で差はなく(p=0.197),予後因子は出血量(p=0.0008)と手術時間(p=0.0091)の2 因子であった。高齢者に対するPD の適格基準は妥当で,外科治療の選択に迷った時の一助になる可能性がある。
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癌と化学療法 45巻13号, 1979-1981 (2018);
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症例は50 歳台,女性。CEA高値を認め精査を行ったところ,15 cm 大の切除困難肝転移を伴うRAS 野生型S 状結腸癌と診断された。根治切除困難と判断しCapeOX療法を導入したが,2 コース終了時に肝病変の18 cm への増大を認めたため,FOLFIRI+panitumumab にレジメンを変更し6 コース施行した。重篤な有害事象は認めず,肝病変は11 cm までに縮小し,RECIST 効果判定はPR と判断した。根治手術を目的に腹腔鏡補助下S 状結腸切除術,さらに門脈右枝に対する経皮経肝門脈枝塞栓術(PTPE)で残肝容量率を34%まで増量した上で肝右葉切除・肝S4 部分切除・胆嚢摘出術を施行した。組織学的治療効果判定はGrade 1a であった。肝切除から術後28 か月経過した現在,無再発生存中である。巨大肝転移に対して抗EGFR 抗体を含む全身治療で早期の腫瘍縮小効果を得た後に,PTPE で正常肝組織の増量を図り治癒切除し得たものと考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 1982-1984 (2018);
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術後化学療法としてS-1/Lentinan併用療法(S-1 80 mg/body,Lentinan 2 mg/回)を施行し,無再発長期生存が得られたP0CY1 胃癌を経験したので報告する。症例は70 歳,女性。胃癌,UE,Type 3,cT3N0M0,cStageⅡAの診断で胃全摘,D2郭清,Roux-en-Y再建を施行し,術後診断は胃癌,UE,Type 3,pT4a,pN2(5/94),M1(CY1),pStage Ⅳであった。術後化学療法としてS-1/CDDP 療法(CDDP 80 mg/body,S-1 80 mg/body)を予定し術当日にCDDP を投与したが,骨髄抑制が著明であり S-1 単剤投与へ変更した。S-1 休薬にても骨髄抑制が遷延したため S-1/Lentinan 併用療法(S-1 80mg/body,Lentinan 2 mg/回)を開始し術後2 年8 か月まで施行し,術後13 年無再発生存中である。
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癌と化学療法 45巻13号, 1985-1987 (2018);
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膵・消化管神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor: NET)診療ガイドラインによると,直腸NET は腫瘍径10 mm 以下の場合は内視鏡的切除が推奨され,10 mmより大きい場合は直腸切除(断)術+リンパ節郭清が推奨されている。今回,リンパ節転移を認めた長径5 mm の直腸NET の1例を経験したので報告する。症例は69 歳,男性。便潜血検査陽性で下部内視鏡検査を施行し直腸Rb に5 mm の粘膜下腫瘍(SMT)を認め,生検でNET の診断を得た。後日内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行した。病理組織学的診断はNET-G1,4.5×2.5 mm,v(+),ly(+)であり,局所リンパ節郭清のため腹腔鏡補助下直腸切除術(D2郭清)を施行した。摘出標本では局所に腫瘍の残存は認めなかったが,直腸傍リンパ節に転移を1個認めた。直腸NETにおけるリンパ節転移の危険因子は,① 腫瘍径>10 mm,② 腫瘍表面性状(陥凹,潰瘍形成),③ 脈管侵襲陽性であるが,本症例のように10 mm 以下の直腸NETでもリンパ節転移を来すことがあることを念頭に置く必要があると思われる。
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癌と化学療法 45巻13号, 1988-1990 (2018);
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術後10 年目に骨盤内再発を認めた下部直腸MP 癌の症例を報告する。症例は81 歳,女性。10 年前に下部直腸癌の診断で,括約筋間直腸切除術を施行した。病理組織的学にはT2N0M0,StageⅠであった。術後9 年後にCEAの軽度上昇を認め経過観察していたが,術後 10 年目には CEA 15.9 ng/mL まで上昇したため,PET-CT 検査を施行した。右梨状筋部にFDG の集積(SUVmax=7.47)を認め,再発と診断した。CTガイド下生検で腺癌と診断され,放射線治療(60 Gy/30 回)を施行した。放射線治療10 か月後のPET-CT検査では骨盤内再発はコントロールされていたが,肺転移を認め経過観察中である。
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癌と化学療法 45巻13号, 1991-1993 (2018);
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症例は65 歳,女性。掻痒感,黄疸,尿黄染を主訴に近医を受診した。胆管癌の診断で手術目的に当科紹介となった。画像所見で下部胆管から左右肝管合流部および左肝管根部にかけて狭窄を認めた。以上より,広範囲胆管癌(Bpd,cT2,cN1,cM0,cStage ⅢB)の診断で,肝膵同時切除術(肝左葉切除術,尾状葉切除術,膵頭十二指腸切除術)を施行した。病理組織学的所見では,Bpd,circ,papillary-infiltrating type,51×47×7 mm,tub2>tub1>por1,T2,ly1,v1,ne1,pN0,pDM0,pHM0,pEM0,pPV0,pA0,R0,pStageⅠの診断であり,術後補助化学療法としてS-1 療法を施行した。2コース終了時の腹部造影CT 検査で肝転移,リンパ節再発の診断となり,gemcitabine+cisplatin併用療法(GC 療法)へ変更した。27 コース施行後,腹部造影CT 検査で肝転移の消失とリンパ節転移の縮小を認めた。長期にわたりPRを得られていたため化学療法は一時終了し,術後48 か月を経過した現在,再発なく経過している。
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癌と化学療法 45巻13号, 1994-1996 (2018);
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症例は68 歳,男性。既往歴に急性骨髄性白血病に対する骨髄移植歴がある。健診で肝機能障害を指摘され,精査目的で当院を受診した。膵頭部腫瘍の非機能性神経内分泌腫瘍および多発肝転移の診断の下,門脈合併切除を伴う膵頭十二指腸切除術および肝転移サンプリング(S4,S5)を施行した(R2切除)。切除標本の病理組織学的検査で,膵頭部原発のNET G2および同腫瘍の肝転移と診断された。術後化学療法としてPE+アフィニトール療法を開始した。しかしGrade 3 の骨髄抑制が認められたためCDDP+ETP(PE)療法は早期に中止し,アフィニトール単剤を継続したが骨髄機能のコントロールに難渋した。術後4か月の画像診断で肝転移はSDと判定し,術後5 か月にR0切除を目的とする肝部分切除術を施行した。計6 か所の肝転移を部分切除した。肝転移切除後10 か月の画像診断で再び多発肝転移が出現したため,アフィニトールを減量して再開した。肝再発確認後4 か月の画像診断でSD と判定し,再度R0 切除を目的として右門脈塞栓術後に肝右葉切除と左葉部分切除を施行した。約2 年にわたる治療経過で担癌状態を脱している膵頭部原発NET G2 の多発肝転移例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 1997-1999 (2018);
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症例は65 歳,女性。両側膝関節痛を主訴に2017 年6 月当科を受診した。造影CT 検査にて右肺動脈血栓症+両側深部静脈血栓症に加え,左乳腺に18 cm大の巨大腫瘤を指摘され当科入院となった。精査にて左乳癌(T4cN0M0,Stage ⅢB),ルミナールBタイプと診断した。ヘパリン投与を行い,腫瘍から悪臭に対しメトロニダゾールゲルを使用し,内分泌療法としてアナストロゾールを開始した。腫瘍からの悪臭・出血や大量の滲出液のコントロールのため,7 月下旬よりMohs' pasteを使用し,1〜2週おき計4 回の処置で腫瘍はほぼ消失し症状の改善をみた。8 月から化学療法を開始し,9 月には病的骨折のためデノスマブを開始した。治療後の皮膚欠損部の上皮化も進み,11 月下旬に軽快退院となった。本外用薬は院内調剤が必要であるが,本症例のように露出した局所進行乳癌に対し,症状のコントロールとQOLの改善,腫瘍の縮小に有用であった。
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癌と化学療法 45巻13号, 2000-2002 (2018);
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症例は73 歳,男性。S 状結腸憩室炎の診断で入院となった。生検では悪性所見を認めなかったが,保存的加療後もS状結腸が完全狭窄していたためS 状結腸切除術を施行した。病理組織学的検査所見では粘膜表層の一部に高分化腺癌を認め,粘膜下層より深層で浸潤性微小乳頭癌(invasive micropapillary carcinoma: IMPC)を認めた。IMPCは腫瘍全体の95%以上を占めていた。IMPC は術前診断が困難であり,また悪性度が高いとされている。これらは低分化なIMPCが腫瘍先進部に存在することと関連がある可能性が高く,今後症例の集積が必要である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2003-2005 (2018);
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肝細胞癌(hepatocellar carcinoma: HCC)再発に対する加療後に,肝門部リンパ節転移を認めた症例を経験した。症例は73 歳,男性。8 年前に胃消化管間質腫瘍破裂に対して胃部分切除術を施行した。同時に70 mm 大の肝腫瘍を後区域に認め,転移性肝腫瘍の診断の下,イマチニブ内服加療を開始した。1 年経過し増大傾向を認めないため,拡大後区域切除術を施行した。病理診断では中分化型HCC を認めた。その後,HCC 再発を3 回認め,TACE+RFA 2 回,肝部分切除1 回施行した。今回,PIVKA-Ⅱが 1,720 mAU/mL と高値を示し,CT 検査で S4/8 に 22 mm 大の HCC 再発と肝門部に 35 mm,13mm 大のリンパ節腫大を認めた。S4/8 の再発病変に対しては TACE を先行し,肝門部リンパ節とともに外科的切除を施行した。病理診断では肝組織の広範な壊死とTACE 痕を認め,摘出リンパ節には中〜低分化型HCC の転移を認めた。HCCのリンパ節転移はまれであり,本症例ではHCC 再発に対する繰り返す治療により生じたリンパ流の変化が要因の一つと考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2006-2008 (2018);
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症例は45 歳,男性。肛門の違和感を主訴に前医を受診した。高位筋間痔瘻の診断でseton+ドレナージ術を受けるも症状が遷延し,CT にて直腸右壁外に3 cm 大の腫瘍を認め,生検で消化管神経内分泌癌(neuroendocrine carcinoma: NEC)の診断となり,当科に紹介受診となった。肝転移を伴っており,stage Ⅳの診断で化学療法を行った。CDDP+CPT-11 を8コース行ったところで転移も含め腫瘍消失と判断したが,3 か月後に原発部位に1 cm の結節が出現し,再発と判断した。CDDP+CPT-11 を再導入したが,原発巣の増大を認めた。CDDP+VP-16+放射線療法を導入したところ,腫瘍の縮小を認めた。肝転移も消失したままで根治切除可能と判断し,Miles手術・前立腺精嚢全摘・尿道再建を行い,術後28 日目に退院した。病理所見はNEC 小細胞癌でCRT効果はGrade 2 で根治度Aと判断した。術後46 日目に痙攣を契機に多発脳転移,髄膜播種,肝転移が判明した。脳転移にはサイバーナイフを行った。髄膜播種による脳圧亢進に対してドレナージを要した。術後115日目に死亡した。
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癌と化学療法 45巻13号, 2009-2011 (2018);
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症例は75 歳,男性。横行結腸癌の術後補助化学療法としてtegafur uracil(UFT)/Leucovorin(LV)療法を開始した。day 15 からGrade 3 の下痢,Grade 2 の嘔吐が出現したが,自己判断で服薬を継続していた。day 26 の外来受診時に著明な脱水による急性腎不全を認め入院となった。対症療法を行うも1 日4回程度の嘔吐が持続し,入院後5 日目に突然ショック状態となり,CT で胸部下部食道の特発性食道破裂が疑われた。胃管留置・左胸腔穿刺で同一の排液を認め,食道破裂の胸腔内穿破と診断し緊急手術を施行した。術後36 日より経口摂取を開始,術後85 日に近医に転院となった。現在,再発なく当科外来で経過観察中である。本症例は強い有害事象が出現しているにもかかわらず服薬が継続され,頻回の嘔吐から特発性食道破裂を発症したと考えられた。高齢者での抗癌剤投与時には,一般的な服薬指導の他に患者の生活背景・服薬状況も考慮に入れて治療を選択する必要がある。
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癌と化学療法 45巻13号, 2012-2014 (2018);
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レゴラフェニブは切除不能進行再発大腸癌に対する有効性が確認されたマルチキナーゼ阻害剤であり,サルベージラインとして推奨されている。一方で有害事象により早期の脱落症例も目立ち,初回投与量減量で全生存期間(OS)延長を図る報告例もあるが,適切な投与法の報告は少ない。われわれは,標準化学療法に不応となった切除不能大腸癌患者へのレゴラフェニブの投与法について検討した。2014 年4 月以降にレゴラフェニブ投与となった25 例を対象とした。初回投与量を160/120/80 mg群に,1 サイクル3 週投与 1 週休薬群,2 週投与1 週休薬群に群別し,それぞれのOSを後方視的に解析した。全例でのOS は中央値9.40か月,3 週投与1 週休薬群,2 週投与1 週休薬群では9.26 か月,9.40 か月(p=0.64),初回投与量160/120/80 mg群では,13.7/9.40/17.6か月(p=0.564)であった。患者に応じた減量投与が重篤な有害事象を抑制し,結果的に予後延長につながるものと示唆された。
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癌と化学療法 45巻13号, 2015-2017 (2018);
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症例は67 歳,女性。人間ドックの下部消化管内視鏡で直腸S 状部癌を指摘された。術前のCT でSMV rotation signを認め,腸回転異常症の合併が疑われた。肺に遠隔転移を疑う小結節を複数認め,原発巣切除後に化学療法を行う方針とし,腹腔鏡補助下高位前方切除術(D3郭清)を施行した。術中所見から,腸回転異常症(non-rotation type)が明らかとなった。腹腔内の癒着は高度であったが,慎重に剥離操作を行うことで内側アプローチが可能であった。術後経過はおおむね良好で,術後17日目に退院となった。病理診断は直腸癌(T3,N0,M1a,pStage Ⅳ)であった。腸回転異常症を伴う大腸癌症例に対する腹腔鏡手術では術前に血管走行や腫瘍の部位の把握が重要であり,開腹歴がなくても腹腔内の癒着が高度であることに留意する必要があると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2018-2020 (2018);
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症例は81 歳,男性。2002年11 月に胃全摘術,D2郭清,Roux-en-Y再建,胆嚢摘出術を施行した。病理組織学的検査の結果,M,Type 5,53×42 mm,tub2>tub1,pT4a,ly2,v2,pN1,pPM0,pDM0,M0,pStage ⅢA(胃癌取扱い規約第15版)であった。術後補助療法は施行せず,5年間無再発で経過したため終診とした。2017 年2 月,嚥下時のつかえ感を自覚し,当院を紹介受診した。腹部造影CT 検査で肝外側区域に8×5 cm の肝外に突出する腫瘍を認め,同腫瘍が挙上空腸へ浸潤・圧排していた。肝生検の病理組織では腺癌の所見であり,免疫染色で胃癌の肝転移と考えられた。以上より,胃全摘術後14 年3 か月後の肝転移再発と診断した。胃切除後晩期再発,特に10 年以降の再発は非常にまれであり,若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2021-2023 (2018);
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症例は74 歳,女性。当科受診の1 年前からの右鼠径部膨隆を認めていた。膨隆の増大傾向があり,当科受診となった。身体所見上は右鼠径部に拇指頭大の膨隆を認めた。CT 所見にて右側大腿ヘルニアを認め,内部に液体貯留を認めた。右大腿ヘルニアと診断し,前方アプローチの大腿ヘルニア修復術を施行した。術中所見では大腿輪から脱出する弾性軟の結節を認めたため,結節被膜を損傷しないように切除した。術後病理検査の結果,類内膜腺癌の診断に至った。術後に施行したMRI,PET-CT にて明らかな残存病変を認めなかったが産婦人科にコンサルトした上で,腹膜癌に準じた全身化学療法(paclitaxel+carboplatin+bevacizumab療法)を行う方針となった。今回,われわれは大腿ヘルニア嚢に発生した類内膜腺癌を診断し得た1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2024-2026 (2018);
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今回われわれは,非乳頭部表在性十二指腸腫瘍に対して腹腔鏡内視鏡合同手術(laparoscopic endoscopic cooperative surgery: LECS)を導入したので報告する。症例1: 50 歳台,男性。十二指腸下行部,Vater乳頭の肛門側に5 mm程度の0-Ⅱc 病変を認めた。生検ではGroup 4 であった。この病変に対してLECS を施行した。摘出標本の病理検査ではtubular adenomaで切除断端は陰性であった。術後在院日数は12 日で合併症は認めなかった。症例2: 80 歳台,男性。十二指腸下行部,Vater乳頭部やや口側後壁よりに10 mm 大の0-Ⅱc 病変を認めた。生検ではGroup 5 高分化型腺癌と診断した。この病変に対してLECS を施行した。摘出標本の病理検査では,粘膜に限局した高分化型腺癌で切除断端は陰性であった。術後在院日数は9 日で合併症は認めなかった。まとめ:十二指腸腺腫およびリンパ節転移の可能性の低い十二指腸粘膜癌に対するLECS は有用であり,安全に施行し得た。
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癌と化学療法 45巻13号, 2027-2029 (2018);
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化学療法に不応であったが化学放射線療法(CRT)が奏効し,切除可能となった進行S 状結腸癌の1例を報告する。症例は59 歳,女性。下腹部に小児頭大の腫瘤を認め,膀胱浸潤と傍大動脈リンパ節転移を伴う巨大S 状結腸癌と診断された。mFOLFOX6+cetuximab療法を 2 コース施行したが無効であり,CRT(50.4 Gy/28 Fr,S-11 00 mg/日×28 日)に方針変更したところ原発巣の縮小を認めた。初診時から約5 か月後に骨盤内臓全摘術および傍大動脈リンパ節切除を施行した。本症例のように骨盤内に切除困難な原発巣を有する大腸癌症例に対する化学療法が不応の場合,CRT が有効な局所コントロールのモダリティになり得ることが示唆された。
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癌と化学療法 45巻13号, 2030-2032 (2018);
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大腸癌穿孔緊急手術例33 例の術後合併症の危険因子,予後因子について検討した。ASA-PS≧3,術前ショックあり,Mannheim Prognostic Index(MPI)≧27,が重篤な術後合併症(≧Grade 3)の危険因子としてあげられ,多変量解析の結果ASA-PS≧3,MPI≧27 が独立した危険因子であった。全生存期間についての検討ではASA-PS≧3,根治度C,術後合併症あり,予後不良であり多変量解析の結果から根治度C,術後合併症ありが独立した予後規定因子であった。
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癌と化学療法 45巻13号, 2033-2035 (2018);
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2004 年4 月〜2014 年3 月までに当院で治療した治癒切除不能大腸癌のうち,原発巣切除あるいは化学療法の少なくとも一方を行ったStage Ⅳ大腸癌症例125 例を対象とし,全生存期間を検討した。原発巣切除群,化学療法施行群で有意差をもって生存期間の延長がみられた。L-OHP あるいはCPT-11を含む化学療法施行群をintensive chemo群,それ以外の化学療法群はextensive chemo 群とし,化学療法未施行群との3 群間でも検討をしたところintensive chemo 群のみで生存期間の延長がみられた。原発巣切除+化学療法群,原発巣切除単独群,化学療法単独群の3 群間で検討したところ,原発巣切除+化学療法群のみで生存期間の延長がみられた。合わせた5 群間の検討では原発巣切除+intensive chemo 群で最も生存期間の延長がみられた。治癒切除不能大腸癌では,原発巣切除とintensive な化学療法を施行すると最も生存期間の延長に寄与することが示唆された。
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癌と化学療法 45巻13号, 2036-2038 (2018);
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同時孤立性副腎転移を伴う盲腸癌の1 例を経験したので報告する。症例は62 歳,女性。他疾患にて通院治療中に体重減少を認めたため精査を行ったところ盲腸癌と診断した。さらに左副腎腫瘍も認められた。転移性腫瘍が疑われたため,回盲部切除と同時に左副腎摘出術を施行した。病理組織学的診断では摘出した副腎は原発病巣と同様,中分化腺癌であった。mFOLFOX6 療法による術後補助化学療法を行い,術後4 年経過した現在も無再発生存中である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2039-2041 (2018);
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閉塞性大腸癌に対する手術は,以前は過大侵襲を伴うことが多かったが,近年は大腸ステントによる術前腸管内減圧により,絶食による栄養状態の悪化や緊急手術,人工肛門造設を回避でき,待機的な腹腔鏡下手術が行えるようになった。われわれは,中央からやや左側の横行結腸癌においては横行結腸切除を標準としている。閉塞性腸炎を伴う閉塞性横行結腸癌においても術前内視鏡的に大腸ステントを留置し,2〜3 週間程度の腸管内減圧を図ることで右半結腸切除となることを回避でき,横行結腸切除が行える。われわれは,頭側アプローチを先行する横行結腸間膜の挟み撃ち郭清を標準としている。まず,胃結腸間から膵下縁で郭清の頭側境界を規定し,中結腸静脈根部の郭清を行う。膵組織をガーゼで保護した後に内側アプローチを行うことで横行結腸間膜の基部が明瞭化し,尾側から中結腸動脈根部の郭清を行うことで確実なD3 郭清が可能となる。
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癌と化学療法 45巻13号, 2042-2044 (2018);
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症例は51 歳,女性。子宮内膜癌の加療目的で当院を紹介受診した。第一度近親者3 人に大腸癌の家族歴があった。術前検査で進行盲腸癌も判明した。盲腸癌と子宮内膜癌に対して腹腔鏡下に準広汎子宮全摘,両側付属器切除および回盲部切除術を同時に施行した。病理組織学的には,子宮病変は癌腫成分と肉腫成分からなる子宮癌肉腫であった。改訂ベセスダガイドラインの4 項目を満たしたため,Lynch 症候群を疑った。ミスマッチ修復蛋白に対する免疫染色では,盲腸癌組織,子宮癌肉腫組織ともにMSH2 とMSH6 の発現消失を認めた。遺伝学的検査でMSH2 遺伝子のexon 14 に病的な生殖細胞系列変異を認めたため,Lynch症候群と確定診断した。鏡視下手術は低侵襲であり,複数回の手術やリスク低減手術を受ける可能性のある本症候群患者にとって有用である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2045-2047 (2018);
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症例は77 歳,男性。主訴:嘔吐。既往歴: 2013 年胃癌にて幽門側胃切除術施行+Roux-en-Y再建が施行され,術後補助化学療法として1 年間S-1内服していたが,再発を認めなかった。術後2 年8か月目に肝門部リンパ節・後腹膜再発を認め,閉塞性黄疸が出現したためdouble balloon-ERCP(DB-ERCP)下にて金属ステントを留置した。以後SOX 療法を継続していたが,術後4 年4か月目に再度胆道系酵素上昇・黄疸が出現したため入院となり,PTCD・金属ステントを再留置施行した。黄疸は軽快したが食事を再開するも嘔吐を認めたため,腹部CT を施行したところ内ヘルニアを呈しており,再入院後8日目に手術を施行した。小腸間膜根部は肥厚・硬化しており同部位を中心にヘルニア門を認めた。同部位を閉鎖し手術を終了,以後問題なく食事摂取できていたが,術後85 日目に全身状態が悪化し死亡した。
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癌と化学療法 45巻13号, 2048-2050 (2018);
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高度局所進行S 状結腸癌に対しtriplet chemotherapyを先行し,根治手術を行えた症例を経験したので報告する。症例は57歳,女性。下血,発熱,体重減少を主訴に当院を受診した。精査の結果,領域リンパ節腫大を伴う閉塞性S 状結腸癌が直腸と子宮に直接浸潤したStage Ⅲb の高度局所進行癌と診断した。腫瘍が骨盤内占拠しており,腫瘍を露頭せず外科的マージンを確保した根治術を行うことは困難と判断した。化学療法を先行する方針とした。腸閉塞に対し人工肛門造設を行った後,FOLFOXを3コース施行後,FOFOXIRI+bevacizumabをさらに3コース施行した。腫瘍の著明な縮小を認め,後方骨盤内臓全摘術によるR0 手術が可能となった。最終病理診断はypT4bN0M0,ypStage Ⅱであった。術後補助化学療法としてCapeOXを行い,術後9 か月が経過しているが再発を認めていない。
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癌と化学療法 45巻13号, 2051-2053 (2018);
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症例は60 歳台,男性。傍大動脈リンパ節腫大を伴う切除不能巨大進行直腸癌に対し,化学療法を導入,原発巣は速やかに縮小した。傍大動脈リンパ節腫大が残存したため,約2 年間化学療法を継続,画像精査の結果切除可能と判断し,根治手術を施行した。治癒切除であり,術後化学療法は行わず10 か月無再発生存中である。化学療法により切除可能となる症例も多く,自験例のように長期にわたり化学療法を行う際にも,常に根治手術の可能性を考え治療方針の再検討を行うことが重要である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2054-2056 (2018);
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腫瘍を合併した潰瘍性大腸炎(UC)の外科治療成績を検討した。対象と方法:対象は1998〜2016年に外科治療を行ったUC 112 例のうち腫瘍合併の14 例(癌 9 例/dysplasia-associated lesion or mass 5 例)。腫瘍合併例の背景因子を非腫瘍例と比較検討し,外科治療成績を解析した。結果:腫瘍群は58.1 歳で有意に高齢者が多く,病悩期間は13.2 年と有意に長期であった。腫瘍合併14 例の術式は回腸嚢肛門吻合術(IAA)5 例,回腸嚢肛門管吻合術(IACA)4 例,回腸直腸吻合術(IRA)2 例,括約筋間直腸切除術(ISR)が1 例であり,52 歳のS 状結腸癌は散発性大腸癌と判断して腹腔鏡下S 状結腸切除術を選択した。癌9 例中8 例は病期Ⅱ以下で,壁深達pT2以深の5 例で定期的内視鏡が未施行であった。同時期の下部直腸粘膜内癌で70 歳以上の2 例では内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が選択されていた。結論:腫瘍合併例は高齢者も多く,排便障害を考慮してIAA以外の術式も検討される。定期的内視鏡の症例では早期の段階で根治的外科切除が施行され,サーベイランスの重要性が再確認できた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2057-2059 (2018);
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はじめに:腹腔鏡下幽門側胃切除術において小弯リンパ節郭清は,郭清操作の終盤に行われることが多い。肥満症例などでは時に視野展開が難しいこともあり,出血や残胃の損傷などのトラブルが起こる可能性もある。当院における小弯リンパ節郭清の工夫について報告する。手術手技:十二指腸を自動縫合器で切離した後に,左横隔膜下へ向かい胃をロール状に巻いていく。助手の右手の鉗子で胃角部小弯付近を把持し,患者左側頭側へ牽引することにより食道胃接合部から胃角部までが直線化され,術者右手の超音波凝固切開装置との軸を合わせることができる。郭清は,後壁側の食道胃接合部付近から胃角部へ向かい行う。後壁側の郭清を可及的に行った後に腹側から前壁の郭清を行い,小弯郭清を終了する。小弯郭清に要した時間は,平均9 分14 秒であった。結語:これらの工夫により出血や胃壁の損傷などのトラブルを回避し,安全・確実な小弯郭清を可能としている。
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癌と化学療法 45巻13号, 2060-2062 (2018);
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高度なリンパ節転移を伴った切除可能HER2陰性進行胃癌の3 例に対し十分な説明と同意の下,治療成績の向上をめざし,術前補助化学療法(NAC)を行った。S-1+oxaliplatin(G-SOX)療法を1 例,capecitabine+oxaliplatin(CapeOX)療法を2 例に行い,それらの病理学的効果はそれぞれGrade 3,Grade 2,Grade 1a であった。病理学的に治療効果の乏しかった1 例で,術後補助化学療法中に肝および腹膜転移再発を来した。NACは手術の影響を受けないため,術後補助化学療法に比べて耐用性が高く,より高い効果を得ることが期待されるが,症例を適切に選択するための診断基準やレジメン,治療成績について検証を続ける必要があると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2063-2065 (2018);
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胃癌腹膜播種症例は化学療法(化療)の著効による長期生存の報告もみられるが,一般には予後不良とされている。腹膜播種を伴う進行胃癌に対し,局所療法により術後40 か月以上の生存が得られた1 例を経験したので報告する。症例は58 歳,男性。2014 年7 月切除範囲内に限局する腹膜播種を伴う進行胃癌の診断で,幽門側胃切除+D2郭清,Roux-en-Y 再建術を施行した[tub2>por2,pType 3,pT4a,pN3,pP1,pCY0(Class Ⅲ),pRMX,pR1,fStage Ⅳ,HER2 IHC 0]。術後患者は化療を希望せず,術後18 か月の腹膜播種再発時にも局所療法を選択し,腫瘤切除術と腹水洗浄細胞診を施行した。病理上再発が確認されpCY1であったが,second opinionの後も化療を希望しなかった。術後39 か月腹膜播種再発による亜腸閉塞を発症した。複数箇所の閉塞のため局所療法は不適と判断し術後40 か月に化療(S-1+CDDP)を1 コース施行したが,患者は以降の化療を希望せず転医した。術後41か月原病死した。
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癌と化学療法 45巻13号, 2066-2068 (2018);
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症例は66 歳,女性。近医で上部消化管内視鏡検査にて胃体上部後壁に3 型腫瘍を認め,生検にてpor2の診断を得て,手術目的に当科紹介となり手術を施行した。腫瘍は膵尾部への浸潤を認め,胃全摘,脾摘,膵尾部合併切除術を施行した。病理結果はpor2>sig,pT4b(pancreas),N3b,P1,CY1,Stage Ⅳ,HER2 score 0 であった。術後SP療法を施行したが,Grade 3 の食欲不振のため1 コースのみでfailure となり,経過観察となっていた。術後5 か月時に腹部膨満と通過障害が出現し,CT にて多量の腹水および輸入脚を含む腸管拡張を認め,癌性腹膜炎による輸入脚症候群と診断した。減圧を図りつつ,二次治療としてramucirumab(RAM)+paclitaxel(PTX)療法を開始し,1 コース終了後には腹水は消失し,腸管拡張の改善を認め,その後RAM+PTX 療法を6 コース施行し,8 か月の無増悪生存を得た。RAINBOW 試験とREGARD 試験によりRAMの有効性が示され,進行再発胃癌に対する二次治療としてRAM+PTX療法が位置付けられた。今回われわれは,胃癌術後腹膜播種に対してRAM+PTX 療法が著効した1 例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2069-2071 (2018);
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背景: 進行・再発胃癌に対してS-1/cisplatin(CDDP)療法が標準療法として汎用されてきた。CDDP の用量依存性の腎毒性に対して大量輸液が推奨され,入院施行されることが多い。目的:少量かつ短期間の外来での補液法(short hydration法)によるCDDP 併用化学療法の腎毒性を後方視的に検討した。方法:対象はS-1/CDDP(60 mg/m2)療法を受けた75歳以下の胃癌患者 29 例。輸液は 1.9 L/220分とし,当日以外の輸液はなしとした。外来施行の忍容性と血清クレアチニン(Cr)増加,eGFR による腎毒性の評価を行った。結果: 2 コース以上施行した25 例中24 例で外来に移行できた。Cr の最悪GradeはGrade 1 でGrade 2 以上は認めなかった。eGFR のコース内Grade 悪化を15 例中13 例に認めたが,可逆的であった。結語: short hydration法を用いたS-1/CDDP 療法は,胃癌患者においても重篤な腎障害なく外来で施行できると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2072-2074 (2018);
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症例は42 歳,女性。発熱と腹痛を主訴に受診した。穿孔性虫垂炎と診断され,同日緊急手術を施行した。回腸末端から回盲部にかけて腸管,腸間膜に強い壁肥厚と浮腫を認め,悪性疾患を否定できず,回盲部切除術を施行した。病理組織学的所見では腸管壁内に膿瘍を認め,炎症性肉芽組織と反応性の紡錘形細胞増生を認め,炎症性偽腫瘍(inflammatory pseudotumor:IPT)と診断した。IPTは術前診断で悪性腫瘍との鑑別が困難であり,文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2075-2077 (2018);
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症例は60 歳台,男性。2015 年に胃癌手術の既往があったが,再発の兆候なく経過していた。2017年2 月に胃癌の術後検査として大腸内視鏡検査を行い,上行結腸に1/3 周性の隆起性病変を認めた。生検で低分化腺癌の成分を認めた。胸腹部CT 検査で他臓器に異常所見なく,腫瘍マーカーにも異常はなかった。2017 年3 月に上行結腸の低分化腺癌に対して右結腸切除術(D3)を施行した。術中所見で所属リンパ節転移はみられたが,腹膜播種などの遠隔転移は認めなかった。病理所見で低分化型腺癌の主座は粘膜下層を中心としたリンパ管内に存在し,胃癌の組織型に類似していることから胃癌の大腸転移の診断を得た。pPM0,pDM0,pRM0,pCY0 で根治手術となった。しかし術後2 か月のCT 検査で腹膜播種による腹水貯留と鎖骨上リンパ節転移を認め,大腸術後6 か月で死亡した。術前診断に難渋した胃癌術後異時性上行結腸転移の1 例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2078-2080 (2018);
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直腸癌術後骨盤内再発の治療では,感染を併発し治療に難渋することがある。骨盤内再発巣の感染により敗血症を発症した症例に対して放射線療法を行い,外来での分子標的薬治療に移行できた2 例を経験した。症例1 は58 歳,女性。2011年12月,局所進行直腸癌に対し人工肛門造設術後,化学療法を施行した。2012 年6 月,低位前方切除術を施行した。2014年1 月,骨盤内再発に対し化学療法を開始した。個人的事情で4 か月間治療中断した。再発巣の増大,感染により敗血症となり2017年2 月入院した。抗菌薬では感染は改善せず,放射線療法(60 Gy/30 回)を施行した。感染は改善し,panitumumab単剤療法を開始し退院した。症例2 は61 歳,男性。2014年2 月,直腸癌に対し低位前方切除術を施行した。2015 年9 月,骨盤内再発に対し化学療法を開始した。2016 年11 月,食道静脈瘤破裂で化学療法は中止した。再発巣が増大,感染し,敗血症となり 2017 年 5 月,当院へ紹介入院した。人工肛門造設後,放射線療法(50 Gy/20 回)施行した。感染は改善し,cetuximab単剤療法を開始し退院した。
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癌と化学療法 45巻13号, 2081-2083 (2018);
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異時性多発遠隔転移再発を4 回の手術のみで制御し得て,初回手術から10 年2 か月生存中の大腸癌の1 例を報告した。症例は49 歳,男性。2型S 状結腸癌に対してS 状結腸切除を施行した。病理所見は3.5×4.0 cm,type 2,pSS,ly2,v1,pN0,cH0,cP0,cM0,pStageⅡ,R0であった。その後,異時性に肝肺転移を認めた。肝転移巣の1 か所に対して肝左葉切除を,肺転移巣の4 か所に対して計3 回の手術で肺部分切除を施行した。第4 回目の再発手術時には腹壁瘢痕部の皮下腫瘤も同時に摘出した。病理診断はいずれもS 状結腸癌からの転移で,根治切除が可能であった。現在,最終手術から1 年1 か月経過して再発はない。全経過中化学療法は行っていない。少数個の転移に対しては積極的に切除することで,再発を繰り返しながらも長期生存が期待できる症例があると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2084-2086 (2018);
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症例は60 歳,男性。経過: 2006年に直腸癌に対して骨盤内臓全摘術を施行(ULCC pT3,pN0,M0,fStageⅡA)した。2014年黄疸にて紹介受診し,腹部CT にて肝右葉にS8 の5cm を最大とする乏血性腫瘍を数個認め,腫瘍の末梢側の胆管は拡張していた。内視鏡的経鼻胆道ドレナージにより減黄の後,肝右葉切除術を施行した。切除標本は肉眼的には肝前区域に白色の6.5cm 大の病変を認め,腫瘍はグリソン断端部近傍を中心として末梢側に樹枝状ないし索状,一部腫瘤を形成しながら広がっていた。病理組織学的には中分化腺癌に相当し,癌はグリソン鞘に沿った進展が主体で,免疫染色では,CK7(−),CK20(++),CDX2(+)であった。考察: 8 年前の直腸癌と今回の胆管腫瘍の病理組織所見は極めて類似しており,最終的に直腸癌の肝内胆管転移再発と診断した。肝切除術後3 年7か月現在,再発を認めていない。
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癌と化学療法 45巻13号, 2087-2089 (2018);
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今回われわれは,左肺多形癌術後に,十二指腸浸潤を伴った肺多形癌からの膵転移の1 切除例を経験したので報告する。症例は65 歳,男性。2016 年に左肺癌に対し左下葉切除を受けた。病理組織学的に多形癌(pleomorphic carcinoma)と診断され,pT2bN0M0,stageⅡAであった。術後化学療法は本人の希望で施行されなかった。術後10 か月目に食事摂取不良となり,当院内科に紹介された。CT 上,十二指腸下行脚〜水平脚に約7 cm 大の腫瘍を認め,上腸間膜静脈への浸潤が疑われた。上部消化管内視鏡検査では十二指腸下行脚に全周性狭窄を認め,生検でpoorly differentiated adenocarcinoma,既往の肺多形癌の組織,細胞像に類似性を認めたため,肺癌の十二指腸転移を疑い膵頭十二指腸切除術+門脈合併切除再建を予定した。術中所見として,十二指腸下行脚から水平脚にかけて手拳大の腫瘍を触知し,横行結腸への浸潤を認めた。上腸間膜静脈は胃結腸静脈幹根部から回結腸静脈根部レベルまで浸潤を受けていた。また右尿管も浸潤が疑われ,以上から膵頭十二指腸切除術+門脈合併切除左外腸骨静脈graft 再建+右半結腸切除術+右尿管部分切除術を施行した。病理組織学的に腫瘍は膵実質を主体とし,十二指腸粘膜まで浸潤していた。腫瘍細胞は未分化な形態で既往の肺多形癌に類似しており,肺多形癌膵転移の診断に至った。転移性膵腫瘍の切除報告は散見されるが,その多くは腎癌の膵転移であり,肺癌膵転移の切除報告は少ない。また,肺多形癌は全肺腫瘍の約0.3%とまれな腫瘍でもあるため,貴重な症例と考え報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2090-2092 (2018);
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腹痛と肝機能異常で見つかった同時性多発肝転移を伴う進行膵癌症例に対し集学的治療を行い,QOLを保ちながら予後延長が得られた86 歳,女性患者の1 例を報告する。症例は当科初診時,86歳の女性。GPT 103 U/Lであった。直ちに,全身化学療法(SC)としてgemcitabine(GEM)1 g と5-FU 1 g の毎週交代療法を開始して,2週間後から放射線療法を開始した(55 Gy/25 days)。3 週間後短期大量肝動注療法(5-FU 1 g/day×3,1日休薬,5-FU 1 g/day×3)(SPHDHAI)を施行した。これらにより肝機能は正常化し,腹痛は消失した。以後,5-FU 1,500 mgを毎週肝動注施行するWHDHAI を2 回施行した後,GEM 800 mg(全身療法)と5-FU 1,500 mg(肝動注療法)を毎週交代で行う混合療法(MC)を施行した。1年以上外来通院ができた。約13 か月目に多発肺転移が出現し,約19 か月目に死亡した。われわれの用いた集学的治療は,超高齢の膵癌症例にもQOL を保ちながら予後延長が見込める方法と思われた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2093-2095 (2018);
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症例は87 歳,男性。上部消化管内視鏡検査にて胃体中部後壁に陥凹性病変を認め,生検の結果は中分化型管状腺癌であった。腹部造影CT 検査で領域リンパ節の腫大や遠隔転移は認めず,cT2(MP),N0,M0,cStageⅠと診断した。腹腔鏡下幽門側胃切除術,D2リンパ節郭清を施行した。病理診断はpT2(MP),pN0,M0,pStageⅠB であり,免疫染色にてsynaptophysin,chromograninA,CD56 に一部陽性を示し,内分泌細胞癌への分化を認めた。術後5 か月の腹部造影MRI検査で多発肝転移を認め,S-1単独療法を開始した。RECISTの効果判定はPRでありS-1 療法を継続の上,経過観察中である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2096-2098 (2018);
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石灰化病変に対しステレオガイド下吸引式乳房生検(ST-VAB)を施行後に,手術が必要となった場合,超音波検査(US)では病変の同定が難しく,広範囲に切除しなければならない場合がある。今回,USで描出可能な乳腺生検マーカーであるHydroMARK®(Devicor Medical Japan K. K.)を検査後に留置し,手術の際に小規模切除を試みた。HydroMARK®は,全例6 か月後までUSで良好に描出された。切除生検を施行した1 例では11 g の切除量で異形乳管過形成(ADH)と診断可能であった。一方,HydroMARK®を留置しなかった2 例では,切除量は44 g,32 g であった。5 例の全摘症例でHydro MARK®と腫瘍の最大距離を検討したところ300 mm であった。HydroMARK®は安全に留置できる超音波視認性が良好なマーカーであり,留置により病変部位を小規模かつ正確に切除することが可能になると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2099-2101 (2018);
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皮膚浸潤乳癌などの体表部悪性腫瘍は悪臭,出血および滲出液を伴うことが多く,QOL を著しく低下させる。全身状態不良な遠隔転移を伴う皮膚浸潤乳癌に対し,Mohsペーストと薬物療法によりQOL が著明に改善した1 例を報告する。患者は61歳,女性。乳癌皮膚浸潤のため悪臭と多量の滲出液を認め,癌性胸膜炎による多量胸水のため体動時呼吸苦も伴っていた。全身薬物療法を行いながら局所療法としてMohs ペーストを使用した。腫瘍露出部をMohs ペーストで固定し,白色ワセリン塗布を続けていくことで鋭的切除することなく腫瘍露出部は完全に上皮化し,悪臭,滲出液ともに消失した。胸水消失により体動時呼吸苦も軽快しQOLが改善した。
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癌と化学療法 45巻13号, 2102-2104 (2018);
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症例は73 歳,男性。下血を主訴に近医にて精査を施行した。EGD・CSは異常所見なく,腹部USで小腸腫瘍が疑われ紹介となった。腹部CT で小腸腫瘍を2 か所に認め,活動性出血も疑われた。また,腸間膜内にリンパ節転移を疑う結節と多発する肺腫瘍,肝腫瘍を認めた。肺癌の小腸転移,肺内転移・肝転移を第一に考えた。小腸出血のコントロールのため,同日緊急手術を施行した。手術では2 か所の小腸腫瘍と,その腸間膜根部付近に2 か所リンパ節腫大を認め,小腸・腸間膜切除を施行した。病理組織学的結果はいずれも絨毛癌であった。術後に測定した b-hCG 値は 15,000 IU/L 以上と高値,性腺などに明らかな原発巣はなく,原発巣不明の多発小腸絨毛癌,肺転移・肝転移・リンパ節転移と診断した。術後化学療法としてcisplatin(CDDP)+irinotecan(CPT-11)を施行し,b-hCG 値は一時3,000 IU/L 台まで低下した。しかしb-hCG 値は再度上昇し,肝転移の増悪も認め化学療法をdocetaxel(DOC)+carboplatin(CBDCA)に変更した。肝転移は悪化し,肝不全・癌性腹膜炎の進行に伴い術後8 か月で死亡した。
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癌と化学療法 45巻13号, 2105-2107 (2018);
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症例は81 歳,男性。14 歳時に急性虫垂炎に対し虫垂切除術を行い,術後腸閉塞に対し回腸横行結腸バイパス術を行った。75歳時に前立腺癌と診断され当院泌尿器科で放射線療法を行い,外来でフォローされていた。腹部造影CT 検査で骨盤内の回腸に7 cm 大の腫瘍を認め,胃腸科へ紹介された。下部消化管内視鏡検査で回腸横行結腸バイパス術吻合部の肛門側回腸にtype 1 の腫瘍を認めた。生検にてGroup 5,pap>tub1であり,blind loopに発生した小腸癌,cT3N0M0,cStageⅡA(UICC 7th edition)と診断した。手術は小腸部分切除術を行った。術後は経過良好で術後17 日目に退院した。原発性小腸癌の発生頻度は十二指腸癌を除けば全消化管癌の0.1〜0.3%と低く,blind loop の回腸に発生した報告例は極めて少ない。若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2108-2110 (2018);
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症例は80 歳台,男性。全身N怠感,食思不振から左上腹部腫瘤を指摘された。腹部造影CT で左腎周囲後腹膜腔に周囲臓器を圧排する腫瘍を認めた。腫瘍内部は不均一な造影効果を有する充実成分と脂肪成分と思われる低吸収域とが混在していた。また,主腫瘍と連続しない胃と接する不均一な造影効果を有する充実性腫瘤を2 か所認めた。腹水やその他結節は認めなかった。以上の所見から,後腹膜脂肪肉腫,腹腔内転移と診断し,後腹膜腫瘍摘出術および胃局所切除術を行った。主腫瘍の大きさは21×18 cmで,重量は2.0 kgであった。切除標本の病理組織診断にて,脱分化型脂肪肉腫およびその転移と診断した。腫瘍の切除断端は陰性であった。脂肪肉腫は局所再発率が高く,切除断端の腫瘍の有無が予後を規定する重要な因子である。今回われわれは,転移巣を有するも切除し得た脱分化型脂肪肉腫の1 例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2111-2113 (2018);
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症例は40 代,女性。直腸癌および肝,卵巣,腹膜転移に対する切除術後に出現した多発肺転移に対し,右肺中葉切除術,次いで左肺S8部分切除術を実施した。残存する右肺S7 転移が深部にあったため,右肺S8 転移とともに肺切除の代わりに体幹部定位放射線治療(stereotactic body radiotherapy: SBRT)を実施した。新たに出現した右肺S6 深部の転移に対し,SBRT を追加した。初回肺切除後4 年5 か月で切除ないし照射した病変の局所再発はなく,最終放射線治療後1年8か月を経過して新規病変を認めていない。大腸癌の肺転移に対するSBRTは手術に匹敵する良好な生存成績・局所制御が得られる可能性があり,安全性と肺機能温存の点で優れている。多発肺転移に対する手術とSBRTの併用は,副作用のある全身化学療法を回避して良好なQOL を保てるため,特に仕事や子育てに従事する比較的若年の患者にとっては有用と考えられる。
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癌と化学療法 45巻13号, 2114-2116 (2018);
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穿刺吸引細胞診(FNA)クラスⅢで手術を施行した甲状腺腫瘍14 例について検討した。腫瘍の術前診断は,悪性3例,悪性疑い5 例,良性6 例であった。術中迅速診断が13 例で行われ,悪性1 例,悪性疑い5 例,良悪性鑑別困難7 例であった。手術は甲状腺全摘または亜全摘+D1〜2a 郭清4 例,甲状腺片葉峡部切除+D1 郭清3 例,甲状腺亜全摘3 例,甲状腺片葉切除3 例,甲状腺片葉部分切除1 例が行われた。最終病理結果は乳頭癌6 例(全例Stage I),濾胞癌1 例(Stage Ⅲ),悪性リンパ腫1 例,濾胞腺腫2 例,腺腫様甲状腺腫4 例であった。術前診断・術中迅速診断と最終病理診断が一致しない症例を2 例認めた(濾胞癌1 例,腺腫様甲状腺腫1 例)。FNAクラスⅢの14 例中8 例が悪性腫瘍であり,クラス分類上Ⅲは手術適応とするのが妥当と思われた。手術は術前・術中診断を総合的に検討して術式選択をする必要がある。
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癌と化学療法 45巻13号, 2117-2119 (2018);
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症例は76 歳,男性。イレウスの診断で入院となったが,偶発的にCT で胆嚢腫瘍を認め胆嚢癌と診断された。大動脈周囲リンパ節を含む複数のリンパ節腫大がみられ,PET-CT でFDG 集積が確認されたため,大動脈周囲リンパ節転移を伴う胆嚢癌(Stage ⅣB)と診断した。切除不能と判断し,gemcitabine(GEM)とcisplatin(CDDP)の併用療法(GC 療法)を施行した。4 コース施行後のCT 所見では腫大リンパ節の縮小を,PET-CT 所見ではリンパ節への集積の消失を認めた。StageⅡへのdown stagingが得られ,conversion surgeryの適応と判断し,リンパ節郭清を伴う拡大胆嚢摘出術を施行した。病理組織学的診断ではpT2N0M0,Stage Ⅱであった。切除不能胆嚢癌に対しGC 療法が奏効した後にconversion surgeryを施行した1 例を経験したので,文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2120-2122 (2018);
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急速に増大した上行結腸癌の肝転移に対しCapeOX+B-mab 療法が著効した1 例を経験したので報告する。症例は40 歳,女性。4 年前に右乳癌手術,2 年前に左側の横行結腸癌手術,6 か月前に右卵巣癌手術の既往がある。横行結腸癌術後のsurveillance CT 検査で盲腸から上行結腸にかけて壁肥厚を指摘され,下部消化管内視鏡検査で上行結腸癌の診断,結腸右半切除を施行した。術後約1 か月目の採血で血清CEA値,CA19-9値が高値のため,術後約2 か月目にCT 検査を施行し,切除は困難な多発肝転移と診断した。EGFR 陽性,RAS wild typeであったが,右側結腸癌のためCapeOX+B-mab療法の方針とし,4 コース施行したところ肝転移は著明に縮小(cPR)し,肝中央二区域切除およびS7/8 区域切除を施行した。病理検索では腫瘍の中心部は壊死し,その周囲に線維とリンパ球浸潤のある病巣で腫瘍の残存はなく,pCRの診断となった。現在,外来で経過観察中である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2123-2125 (2018);
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目的: 近年,社会の高齢化に伴い食道癌症例も高齢化している。食道癌手術は高度な侵襲を伴うため,高齢者に対する手術適応は慎重を要する。そこで当科における80 歳以上の超高齢者食道癌手術例の有効性および安全性を検討した。対象と方法: 当科の食道癌手術例303 例のうち,80 歳以上の超高齢者食道癌手術例22 例(7.3%)を検討対象とした。検討項目は背景因子,手術術式,術後合併症,予後について行った。結果:年齢は中央値83 歳。PSは0〜1。併存疾患は,高血圧11 例,悪性腫瘍の手術歴5 例,糖尿病5 例などを認めた。術式は右開胸食道亜全摘術+2 領域リンパ節郭清15 例が最も多く,3領域リンパ節郭清は1 例のみであり,縮小した術式が多く選択されていた。術後合併症は14 例(63%)に認めた。内訳は,術後せん妄6 例,肺炎5 例,不整脈4 例などを認めたが,いずれも保存的治療で軽快した。また,手術関連死亡はなく,全例軽快し退院が可能であった。結語:超高齢食道癌症例に対する手術は,術前評価,術式の選択,周術期管理を適切に行えば有効で安全に施行可能であると考える。
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癌と化学療法 45巻13号, 2126-2128 (2018);
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症例は58 歳,男性。上部消化管内視鏡にて噴門直下前壁に40 mm 大の3 型腫瘍を認め,生検でGroup 5,por1,Siewert分類typeⅢの食道胃接合部癌と診断した。胃周囲および#16a2,b1 領域リンパ節に腫大を認め,cT4aN2M1(LYM),cStage Ⅳと診断し,S-1/cisplatin療法 4 コースを施行した。化学療法後の内視鏡では原発腫瘍の縮小を認め,また下部食道に粘膜下腫瘍様の小結節を複数認めた。#16a2, b1領域リンパ節の消失を認めたため根治切除可能と判断し,左開胸開腹による下部食道切除,胃全摘,D2-#10 郭清,Roux-en-Y法再建術を施行した。摘出標本では噴門直下前壁に35 mm大の3 型腫瘍を認めた。また,食道胃接合部から80 mm までの下部食道に最大径10 mm の結節病変を計6 個認めた。病理組織学的検索では食道結節病変は原発巣とは非連続性で粘膜下に存在し,一部に内分泌分化を伴う低分化腺癌であり,食道壁内転移と診断した。ypT3(SS),ypN2(3/21),ypM1(esophagus),ypStage Ⅳ,R0と最終診断した。術後補助化学療法としてS-1 内服を施行したが,術後9 か月目に多発肝,リンパ節再発を認め,術後15 か月目に原病死した。食道胃接合部癌が食道壁内転移を来すことは比較的まれであり,若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2129-2131 (2018);
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症例は71 歳,男性。200X年に肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC)に対して前医で腹腔鏡補助下肝外側区域切除術を施行された。200X+7 年,200X+9 年,200X+10 年にHCC 再発を認め,それぞれに経皮的ラジオ波焼灼術(radiofrequency ablation: RFA)を3 回施行した。200X+11 年に右側胸部腫瘤を自覚し,精査でHCC に対するRFA後の穿刺経路播種(needle-tract implantation)の診断となった。外科的切除の方針とし,右第8 肋骨合併切除を伴う右開胸下胸壁悪性腫瘍切除術を施行し,術後12 か月無再発で経過している。RFA 後穿刺経路播種を認めた際に,外科的切除を検討することは局所制御を行う上で重要であると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2132-2134 (2018);
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後腹膜脂肪肉腫の治療は手術療法が基本であるが,軟部肉腫に対してトラベクテジンが承認され,脂肪肉腫の治療の選択肢が増えた。今回,トラベクテジン療法後に根治切除し得た巨大後腹膜脂肪肉腫の1 例を経験したので報告する。症例は61 歳,男性。腹部腫瘤の精査のため入院した。腹部全体に可動性のない最大径約50 cm の腫瘤を認めた。CT では右後腹膜を中心とする骨盤内から肝下面までのlow density area 内に充実性腫瘍を認めた。穿刺生検で脂肪肉腫と診断された。トラベクテジンによる化学療法8 コース終了後の効果判定はstable disease であったが,腫瘤は軟らかくかつ可動性良好となり右腎,右副腎,下大静脈部分切除を伴う腫瘍切除術を行った。病理検査で高分化型と脱分化型の混合型であった。術後10か月現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2135-2137 (2018);
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ヒル(leech)は,約2,500 年前から医療目的で使用されてきた。近年では,形成外科領域で再建外科手術後の皮弁うっ血状態の改善を目的に用いられているが,口腔領域での使用報告は少ない。今回われわれは,口腔癌に対する前腕皮弁再建後に静脈うっ血を生じ,その改善目的に医療用ヒルを使用した1 例を経験したので報告する。症例は67 歳,女性。左舌縁部扁平上皮癌(cT2N0M0,StageⅡ)の診断にて,全身麻酔下に気管切開術,左肩甲舌骨筋上郭清術,左舌部分切除術,遊離前腕皮弁再建術を施行した。術後21 時間で静脈内血栓を生じたため再吻合手術を施行したが,うっ血が持続したため医療用ヒルを導入した。5 日間で計10 回使用し,計21.6 gの吸血を得た。吸血後は皮弁からの持続出血を認め,皮膚の暗紫色は改善した。皮弁の遠心部は壊死したが,大部分は生着が得られた。術後13 日目には経口摂取を開始し,術後機能は良好であった。
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癌と化学療法 45巻13号, 2138-2140 (2018);
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幽門輪温存幽門側胃切除術(pylorus-preserving gastrectomy: PPG)後の食後腹部膨満感(postprandial abdominal fullness: PAF)について検討した。早期胃癌迷走神経温存PPG 後22 例(男性14 例,女性8 例,平均64.8 歳)をA群(12例,PAF陽性例)とB群(10 例,PAF陰性例)の2 群に分け,PAFと残胃排出機能(gastric emptying function: GEF)の関連を検討した。残存幽門洞長はA群がB群より有意に短く(p<0.05),食欲と経口摂取量は有意にA群がB 群より不良であった(それぞれ,p<0.05,p<0.01)。逆流性食道炎症状,早期ダンピング症候群,術後体重減少,内視鏡的逆流性食道炎,残胃炎などはA群がB 群より多かった。残胃内容停滞は有意にA群がB 群より多く認められた(p<0.01)。固形食のGEF[残胃内50%残存時間(分)遅延,120分後の残胃内残存率(%)]は,有意にA群がB 群より多く認められた(それぞれp<0.001)。PAF 陽性例は陰性例より明らかに残存幽門洞が短く,胃切除障害を多く認められGEF は明らかに不良であった。
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癌と化学療法 45巻13号, 2141-2143 (2018);
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小腸原発の未分化多形肉腫(undifferentiated pleomorphic sarcoma: UPS)は,極めてまれな予後不良の疾患である。今回,回腸原発のUPS の1 例を経験したので報告する。症例は44 歳,男性。9 か月前より下腹部痛が出現し,近医で貧血および下腹部腫瘤を指摘され当科へ紹介入院となった。血液一般検査で貧血,生化学検査で低蛋白血症を認めた。腹部CT 検査で内部不整な壊死を伴う充実性腫瘍による膀胱圧迫像が認められ,後腹膜腫瘍を疑い開腹手術を施行した。回腸末端から60 cm 部に腫瘍を認め,壁外進展し膀胱に癒着していた。回腸末端50 cm 部から30 cm 長の回腸部分切除を行った。腫瘤は9×8×5 cm 大で,組織像はfibroblast 様のspindle cell よりなり,storiform patternを呈するUPS と診断された。術後化学療法は行わず,術後10日目に退院となった。術後2 年経過しているが再発を認めていない。
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癌と化学療法 45巻13号, 2144-2146 (2018);
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症例は67 歳,男性。上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部に20 mm大の0-Ⅱa+Ⅱc 病変を認め,拡大内視鏡診断で深達度Mの分化型腺癌が疑われたため,内視鏡的切除を施行した。病理診断結果はType 0-Ⅱa+Ⅱc,19×12 mm,tub1,pT1b(SM2)(粘膜筋板から700 mm),pUL0,Ly0,V0,pHM0,pVM0であった。追加外科切除として亜全胃温存膵頭十二指腸切除術(SSPPD)を予定したが,その必要性と危険性を鑑みて近傍リンパ節の転移検索のみ希望した。腹腔鏡下にNo.5,6,12b,13aリンパ節サンプリングを施行したところ,No. 6 リンパ節転移が判明した。後日にSSPPD・D2を施行したが,追加郭清したリンパ節に転移を認めなかった。SM 以深の十二指腸癌には膵頭十二指腸切除を行うべきだが手術侵襲が大きいため,今後,内視鏡的切除後の根治性評価ならびに腫瘍占拠部位に応じたリンパ流・リンパ節転移頻度の解析とともに,至適な治療方針の確立が望まれる。
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癌と化学療法 45巻13号, 2147-2149 (2018);
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症例は56 歳,男性。右季肋部痛を主訴に前医を受診した。肝腫瘤を指摘され当院紹介となった。CT にて肝S7/8 に早期相で辺縁が造影される乏血性の65 mm 大の腫瘍に腫瘍と連続して液貯留を認め,破裂肝細胞癌(hepatocellular carcino-ma: HCC)と診断した。血管造影ではS7/8 に辺縁が濃染する腫瘍性病変を認め,A8からジェルパート®を用いて動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization: TAE)を施行した。腫瘍マーカーは,TAE前後でAFPは正常で変化なく,PIVKA-Ⅱは 1,008 から 34 mAU/mL と正常化した。TAE から約 3 週間後の CT にて同腫瘤は辺縁がわずかに造影され内部にガス産生を伴う不均一な低吸収域として認めた。遺残の可能性が完全には否定できず,肝右葉切除を施行した。病理学的検査では肝 S7/8 の結節はほぼ完全に壊死を来し,viable な腫瘍細胞を認めず,病理学的完全奏効(pathologically complete response:pCR)と診断した。破裂HCC に対するTAE 後に肝切除を施行しpCR が得られた症例を経験したので,文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2150-2152 (2018);
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症例は71 歳,男性。胃角部後壁に2 型進行胃癌を認め,CT で胃所属リンパ節および腹部大動脈リンパ節の腫大を認めた。M,post,Type 2,tub2,cT4a(SE)N+M1(PAN),cStage Ⅳb と診断し,oxaliplatin+S-1(SOX)療法を開始した。3 コース終了時の治療効果はPR,6 コース終了時にycT2(MP)N0M0,ycStageⅠB と診断した。化学療法中にGrade2 以上の副作用は認めなかった。R0手術が可能と判断し,conversion surgeryとして開腹下幽門側胃切除・D3郭清(大動脈周囲リンパ節郭清)を施行した。病理検査結果はypT0N1M0で,組織学的効果判定は原発巣Grade 3,リンパ節はGrade 2bであった。術後はS-1 の内服を開始し,術後1 年現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2153-2155 (2018);
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laparoscopy and endoscopy cooperative surgery(LECS)関連手術としてのnon-exposed endoscopic wall-inversion surgery(NEWS)は,腫瘍を内反し切除することで胃壁の変形を軽減し,腫瘍の腹腔内播種を防ぐことができる優れた術式である。しかし切除後に粘膜欠損が残存するため,術後の遅発性の潰瘍や穿孔の懸念がある。今回,従来のNEWS に全層性の縫合を追加し,粘膜欠損部を閉鎖したNEWS 変法を開発した。症例は64 歳,女性。胃噴門前壁の25 mm のgastrointestinal stromal tumor(GIST)に対して内視鏡補助下に腫瘍の位置をマーキングした。腹腔鏡下に腫瘍周囲の漿膜切開を行い,腫瘍漿膜面に当てたスペーサーを胃壁内に埋めるように漿膜面から結節縫合閉鎖した。内視鏡下に腫瘍周囲を全層切開し腫瘍を切除した。胃粘膜欠損部を内視鏡下に確認しながら,腹腔側から3-0 V-Loc180®で全層連続縫合して寄せた。われわれの開発したNEWS 変法は,さらにハイリスクな腫瘍や十二指腸腫瘍への応用が可能である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2156-2158 (2018);
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症例は70 歳,男性。Stage Ⅳ(ypT3N3aM1),胃癌の診断でドセタキセル/シスプラチン/S-1 療法を2 コース施行した。2014 年6 月,胃全摘および脾臓摘出術を施行,術後S-1 補助化学療法を施行したが,9月に大動脈周囲リンパ節に再発を認めイリノテカン/シスプラチン療法を開始した。2015 年 2 月,再発リンパ節の増大を認め,パクリタキセル療法に変更,5 月に手指のしびれ(Grade 2)を認め,オキサリプラチン/S-1 療法に変更した。2016 年 2 月,腹水貯留が著明となり,化学療法を中止した。その後,外来通院を継続し再発リンパ節の増大を認めたが,全身状態は良好であったため再度化学療法施行の方針とした。2017年 2 月からラムシルマブ/パクリタキセル療法を開始し,経過中に有害事象として好中球減少(Grade2)を認めたが,パクリタキセルの減量のみでラムシルマブの減量は行わず治療継続できた。その後,再発リンパ節の縮小および腹水の減少を認めた。ラムシルマブ/パクリタキセル療法開始後1 年経過した現在も外来通院中である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2159-2161 (2018);
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症例は63 歳,男性。当院で,糖尿病治療中に腹部CT で膵尾部の主膵管の拡張を指摘された。腹部造影CT 検査では,膵体部に径25 mm大の低吸収を呈する腫瘤を認めた。endoscopic ultrasonography(EUS)では,膵体部に低エコー腫瘤を認め,穿刺吸引組織診では腺癌と診断した。膵体部癌の術前診断で,膵体尾部切除術,摘脾術,D2リンパ節郭清術を施行した。術後経過は良好であった。病理組織所見では,膵管癌と膵内分泌腫瘍(NET,G2)が混在している膵併存腫瘍と診断した。最終進行度はfT3N1M0,StageⅡBと診断した。現在,術後6 か月が経過し,当科外来でS-1 による術後補助化学療法を継続中である。膵管癌と膵神経内分泌腫瘍の膵併存腫瘍はまれであり,報告例も少ないため臨床病理学的特徴は明らかでない。今回,膵管癌と膵神経内分泌腫瘍が混存した膵併存腫瘍の1 切除例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2162-2164 (2018);
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症例は59 歳,男性。糖尿病性慢性腎不全に対し血液透析を導入され,近医で維持透析を受けていた。皮膚悪性黒色腫加療後の定期検査目的のPET-CT 検査で,膵体部に異常集積を指摘された。endoscopic ultrasonography(EUS)で同部に16 mm 大の腫瘤を認め,吸引細胞診による生検にて腺癌が検出された。膵体部癌と診断し,gemcitabine+nab-paclitaxel(GnP)療法による術前化学療法を2 コース施行した。加療後のPET-CT 検査では異常集積の消失を認め,遠隔転移も認めず,膵体尾部切除術を施行した。病理組織像は悪性細胞を認めず,病理学的完全奏効(pCR)と診断した。透析患者に対してもGnP療法による積極的な治療が良好な成績につながる可能性が示された。
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癌と化学療法 45巻13号, 2165-2167 (2018);
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癌患者の苦痛症状の一つに難治性腹水があり,腹水治療法の選択肢に腹水濾過濃縮再静注法(CART)がある。従来型のCART では処理量や合併症の問題があり,改良型CART(KM-CART)が開発された。癌患者に対してのKM-CART の効果や安全性を,KM-CART を施行した症例から後方視的に考察した。今回,2017年3 月〜2018年1 月で,癌症例19 例,延べ30回KM-CARTを施行した。回収した腹水は7.0±2.6 L で,再静注した腹水中のAlb は52.6±31.4 g であった。施行前後での血清Alb 値の減少は認めず,血清Cr 値は有意に減少した。腹囲や両大腿周囲径は有意に減少し,食欲も改善した。有害事象は肝機能障害を1 回,腎後性腎不全を1 回認めたが,その後の対応によって回復を認めた。腹水穿刺時,再静注時に血圧低下を認めたが異常値は認めず,発熱も認めなかった。KM-CARTでは大量の腹水を処理することができ,少ない有害事象での治療が可能であった。KM-CARTは,癌患者のQOL 改善に大きく貢献する腹水治療法と考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2168-2170 (2018);
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本邦における胃癌に対する放射線療法は,症状緩和目的であることが多い。今回,膵浸潤のある局所進行胃癌にて,緩和目的の放射線治療を含む集学的治療が奏効し,根治切除に至った1 例を経験したので報告する。症例は70 歳,女性。膵浸潤を伴う胃前庭部の進行胃癌(治療前診断はcT4bN2M0,cStage ⅢC)に対し拡大手術(膵頭十二指腸切除)の同意が得られず,導入療法の位置付けで化学療法の方針となった。化学療法に先立ち,腫瘍出血による貧血が問題となり,緩和目的に放射線治療(35 Gy/14 Fr)を施行した。その後S-1+oxaliplatin(SOX)療法を開始したが,有害事象(好中球減少および 怠感)のためSOX 療法は減量後4コースで終了となり,以降S-1単剤治療を6 か月施行した。治療開始後1 年の時点で腫瘍縮小を認め,膵浸潤解除が期待されたため胃切除術を予定した。手術所見では膵浸潤を認めず,幽門側胃切除術(D2 郭清,Roux-en-Y再建),横行結腸部分切除術を施行した。最終診断はypT4b(横行結腸)N0M0,ypStage ⅢBであった。術後は補助化学療法(S-1単剤)を1年間施行し,術後1年9か月現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2171-2173 (2018);
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症例は81 歳,女性。膣浸潤を伴う進行下部直腸癌に対して術前化学放射線療法(CRT)を施行したが,患者が手術を拒否したため根治的CRT を追加した。その後直腸膣漏を認め,回腸双孔式人工肛門を造設し化学療法を行ったが腫瘍の増大と膣漏の増悪を来したため,CRT 終了16 か月後に腹腔鏡下直腸切断術および膣後壁合併切除術を施行した。CRT 後の炎症や腫瘍の浸潤による癒着は認めたが安全に手術が行え,後期高齢者であったが周術期合併症を起こさず,術後66 か月無再発生存を維持している。直腸癌に対する術前CRT 終了後手術までの期間は6〜8 週が一般的であるが,今回ははるかに長期間経過後に手術を行った症例を経験し良好な結果を得たので報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2174-2176 (2018);
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症例は69 歳,男性。C型慢性肝炎,肝硬変のフォロー中,肝S4 に2.3 cm 大の肝外突出性の肝細胞癌が出現し,腹腔鏡下に肝S4部分切除術を施行したが術中操作で被膜損傷を来した。最終診断は中分化型の肝細胞癌で,進行度はpT2N0M0,pStageⅡであった。術後7 か月目に肝内再発巣が出現,肝動脈化学塞栓療法(TACE)およびラジオ波焼灼術を施行したが,術後8 か月目に腹膜播種再発を来し手術を施行した。しかしその後も腹膜播種が再燃・増悪し,治療を継続したが病状は悪化,初回術後2 年6か月目に死亡した。肝細胞癌の再発形式は肝内再発が主で,腹膜播種再発の頻度は低い。本症例では,術中操作が再発の原因となった可能性が考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2177-2179 (2018);
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乳癌術後,圧排性無気肺を来した縦隔リンパ節転移に対しエリブリン投与と放射線療法の併用が著効した1 例を経験したので報告する。症例は69 歳,女性。初診時に左局所進行乳癌と診断され術前化学療法後に左乳房切断術+腋窩リンパ節郭清を施行された。術後補助療法として胸壁照射を終了し内分泌療法を施行中,術後2 年で縦隔リンパ節転移,胸膜播種が出現し,カペシタビン内服を開始した。術後9 年で多発肺転移が出現したため,エリブリン投与へ変更した。1 コース目のday 10に突然の酸素化低下を来し,上縦隔リンパ節転移による圧排性無気肺と診断した。エリブリン投与継続に加え上縦隔への放射線治療を開始し,転移リンパ節の消失および無気肺の改善を得た。以降エリブリンの継続にて病勢コントロールは良好である。エリブリンと放射線治療の併用についての解析は十分ではないが,本症例のようにlife threateningな状況でも比較的安全に施行でき,速やかな腫瘍縮小効果を得られる可能性がある。
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癌と化学療法 45巻13号, 2180-2182 (2018);
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症例は初診時49 歳,女性。子宮筋腫の精査中に肝腫瘤を指摘された。CT では肝後区域に径6 cm 大の低濃度腫瘍を認め,内部はモザイク状に造影された。確定診断のためエコー下肝生検を施行したところ,NET G1と診断された。全身検索では原発巣は同定できず,肝原発あるいは原発不明転移性NET の診断で肝右葉切除術を施行した。以後外来フォローしていたが,術後1 年目のCT で小腸に2 cm大の腫瘤を指摘された。小腸内視鏡では空腸の粘膜下腫瘍で,生検でNET G2と診断されたため小腸部分切除を施行した。NET G2(Ki-67 指数3.5%)で,静脈浸潤および1 個の周囲リンパ節転移を伴っており原発巣と考えられた。初回手術3 年2か月後のCT で多発肝転移を認め,bland-TAEを計3 回施行したがコントロール不良であり,初回手術4 年6か月後から持続性ソマトスタチンアナログ徐放性製剤を開始した。5 年6 か月後の現在,健在である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2183-2185 (2018);
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症例は76 歳,女性。下部胆管癌に対して経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)後,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術(SSPPD)を施行した。術後9 か月のCT で,PTBD 挿入部とは異なる右前胸壁の皮下に約1.5 cm 大の腫瘤を認めた。穿刺細胞診,針生検を施行するも悪性所見は認めなかった。術後12か月のCT で腫瘤は増大傾向であり,下部胆管癌の胸壁再発が疑われ,腫瘤摘出術を施行した。術中に肋骨浸潤が疑われたため,第6・第7 肋骨部分合併切除を行った。切除標本の病理組織検査で胆管癌の胸壁転移と確定診断した。術後経過は良好であり,術後14 日目に退院となった。術後補助化学療法は本人の希望により施行していない。原発巣切除から約2 年,胸壁転移切除から9 か月が経過した現在,無再発生存中である。胆管癌術後の胸壁再発例でも切除可能であれば長期生存が得られる可能性もあり,積極的に切除を考慮すべきであると考えられる。
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癌と化学療法 45巻13号, 2186-2188 (2018);
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緒言: 肛門周囲乳房外Paget 病は,発生機序が異なる皮膚付属器原発の肛門周囲Paget 病(perianal Paget's disease)と直腸肛門管癌のPaget 様進展(Pagetoid spread: PS)で治療方針,予後が異なる。PSを伴う肛門管癌はまれであり,当院で経験した2 例に文献的考察を加えて報告する。症例1: 患者は69 歳,女性。肛門痛と肛門周囲の発赤,びらんで受診した。生検で肛門管癌のPS と診断し,腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した。術後12 か月無再発生存中である。症例2: 症例は62 歳,男性。便潜血,痔核で受診し,肛門管癌の診断で経肛門的腫瘍切除術が施行された。術後5 年目に局所再発に対し内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection: ESD)を施行されたが,術後10 年目に肛門腫瘤が出現し,さらに増大および肛門周囲の発赤を認め,生検で肛門管癌のPSと診断された。腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行し,術後10 か月無再発生存中である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2189-2192 (2018);
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大腸癌遠隔転移切除後の補助化学療法の有効性は確立されていない。大腸癌肝,肺転移各々の根治切除後の補助化学療法の有効性を検討するために,2005年4 月〜2017 年3 月の当科の肝切除群90 例,肺切除群25 例(肝肺転移切除例は除く)を後方視的に解析した。肝切除後における補助化学療法施行例(施行例)42 例,非施行例48 例,肺切除後における施行例10例,非施行例は15 例であった。肝切除後における施行例は非施行例に比べoverall survival(OS),relapse free survival(RFS)が有意に良好であった(ともにp=0.043)。肺切除後における施行例と非施行例のOS(p=0.84),RFS(p=0.87)に差はなかった。肝切除例ではOS において補助化学療法が予後改善因子として抽出された(HR=0.473,95%CI: 0.23-0.97,p=0.04)。肺切除例では,生存期間にかかわる因子は抽出できなかった。肝切除後補助化学療法は転移巣切除後の生存期間上乗せを期待できるが,肺切除後では同等の効果は期待できないことが示唆された。
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癌と化学療法 45巻13号, 2193-2195 (2018);
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症例は59 歳,男性。下痢と全身Q怠を主訴に入院となった。大量の腹水と全身浮腫を認めた。血液検査にて貧血と腫瘍マーカーの上昇を認めた。画像検査にて直腸S 状部から上部直腸に狭窄を伴う直腸癌の原発巣,多発性肝転移,大量の腹水を認めた。病理検査結果は高分化型腺癌であった。人工肛門造設の上,mFOLFOX6+panitumumab(Pmab)6コース,FOLFIRI+Pmab を4 コース施行したところ,原発巣・肝転移巣の縮小と腹水の消失が認められた。本人の希望にて経過観察となった。2 年後に下血を認め,精査にて直腸癌の増大があり,手術の方針となった。二期的切除の方針とし,直腸低位前方切除を施行した。3 か月後に肝部分切除術を施行した。さらに9 か月後に肝再発を認め,再度肝切除を施行した。多発性肝転移,癌性腹水を伴う症例においても積極的な治療が予後改善に寄与し得ると考えられる。
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癌と化学療法 45巻13号, 2196-2198 (2018);
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皮膚筋炎に合併する悪性腫瘍として比較的まれな盲腸癌の1 例を経験した。症例は81 歳,男性。皮疹,四肢の筋力低下,嚥下困難を契機に皮膚筋炎と診断され,ステロイド加療が開始された。悪性腫瘍を検索する目的の下部消化管内視鏡検査で盲腸に2 型腫瘍を認めたため,腹腔鏡下回盲部切除術を施行した。術直前には立位不能であったが,術後10 日目で立位は可能となり,術後14 日目には自力歩行が可能となった。また,皮疹は消退し術前高値であったcreatine kinase(CK)は正常化した。悪性腫瘍合併皮膚筋炎は予後不良であるが,腫瘍切除により症状がしばしば改善することが知られており,速やかな病変検索と根治切除が重要と考えられる。
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癌と化学療法 45巻13号, 2199-2201 (2018);
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症例は35 歳,男性。S 状結腸癌・切除不能同時性肝転移の診断となり,FOLFOX+panitumumab療法を施行した。3 コース施行したところ著明な縮小を認め切除可能と判断し,S 状結腸切除術,拡大肝左葉切除術,肝部分切除術を施行した。肝転移巣の病理結果では腫瘍残存を認めず,pCR が得られた。術後19 か月に肝S5 に孤発性残肝再発を認め,肝部分切除術を施行し,その後無再発生存を得ている。黄疸を伴う切除不能同時性大腸癌肝転移に対しFOLFOX+panitumumab療法を有効かつ安全に行い,pCRが得られた症例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2202-2204 (2018);
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症例は43 歳,女性。40 歳時に子宮体部の類内膜腺癌(Stage ⅢC)で,子宮全摘術+両側付属器切除術を施行した。子宮内膜癌に対するミスマッチ修復蛋白の免疫染色によるリンチ症候群のスクリーニングの結果,MSH2/MSH6 蛋白の発現欠失を認めた。遺伝学的検査でEPCAMのexon 8,9 を含む約20 kb の広範な欠失を認めた。下部消化管内視鏡検査を行ったところ,盲腸に1 型腫瘍を認めた。体型(高度肥満),術式選択(広範切除あるいは区域切除)による異時性大腸癌発生リスクと予後について,十分なインフォームド・コンセントを行った結果,結腸全摘術を施行することとなった。病理組織学的所見は粘液癌(StageⅡ)であった。EPCAM欠失のリンチ症候群は通常子宮内膜癌のリスクは高くないが,本症例のようにMSH2の近傍に及ぶ広範なEPCAM欠失を認める場合には,子宮内膜癌のリスクに注意すべきと考える。
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癌と化学療法 45巻13号, 2205-2207 (2018);
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症例は63 歳,男性。肝腫瘍が疑われ,当院に紹介となった。腹部造影CT 検査では,肝左葉にリング状濃染を伴う直径12 cm大の巨大腫瘤を認めた。門脈左枝内に腫瘍栓を認めた。門脈内腫瘍栓を伴った肝内胆管癌と診断し,手術の方針となった。腫瘍栓を切除範囲に含める形で肝左葉尾状葉切除術,肝外胆管切除術,リンパ節郭清術を施行した。切除標本の病理組織検査にて肝内胆管癌(中分化型腺癌)と診断され,門脈左枝内に腫瘍栓を伴っていた。術後合併症は認められなかった。術後補助化学療法としてS-1 療法を行ったが,術後3 か月目に肺,肝,脊椎転移を認めた。gemcitabine,cisplatin 併用療法に変更し,脊椎転移に対しては放射線療法を施行したが治療効果を認めず,転移巣の急速な増大を認め術後6 か月目に原癌死した。これまでに肉眼的門脈内腫瘍栓を伴った肝内胆管癌に関する報告は少ないが,過去の報告や本症例の経過を踏まえると,その予後は非常に不良である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 45巻13号, 2208-2210 (2018);
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症例は72 歳,男性。左上葉肺癌(扁平上皮癌),T4N2M0,Stage Ⅲb に対して化学放射線療法施行後,9 か月後のCT検査で脾上極に60 mm大の腫瘤を認めた。FDG-PET/CT 検査では同部位にFDG の異常集積を認め,超音波内視鏡検査下の細胞診にて肺癌脾転移と診断した。原発巣は化学放射線療法によって良好に制御されており,他の部位に明らかな転移巣を認めなかったことから,脾転移巣を切除する方針とした。腹腔鏡下に手術を開始したところ,脾転移巣から膵尾部への浸潤が疑われ,腹腔鏡下膵尾側切除術および脾臓摘出術を施行した。病理組織検査では,脾臓および膵臓への浸潤を伴った肺癌の脾門部リンパ節への転移と診断された。術後3 か月目に脳転移と骨転移を認め,脳転移に対して放射線療法を行ったが,その他の転移巣に対しては積極的な治療は行わず,術後11 か月目に原病死した。肺癌の遠隔転移巣の外科的治療の臨床的意義を疑問視する報告もあり,その適応については今後も十分な検討が必要である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2211-2213 (2018);
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胆嚢捻転症は比較的まれな疾患で,胆嚢癌は急性胆嚢炎の1〜1.5%に合併するとされている。今回,急性胆嚢炎を発症し,腹腔鏡下胆嚢摘出術(TANKO)で切除し得た胆嚢癌合併胆嚢捻転症の1 例を経験したので報告する。症例は54 歳,女性。主訴は心窩部痛であった。CT では胆嚢壁肥厚と胆嚢頸部に捻転を疑う所見を認めた。また,胆嚢頸部の壁肥厚があり,腫瘤性病変の可能性も示唆されていた。胆嚢捻転症の診断で腹腔鏡下胆嚢摘出術(TANKO)を施行した。胆嚢は壊死に陥っていた。胆嚢はほとんど肝床に付着しておらず,胆嚢管,胆嚢動脈を軸に360°捻転していた。術中胆汁の漏出があり,腹腔内を十分洗浄した。術後病理診断で胆嚢癌の合併が明らかとなった。胆嚢癌を合併した胆嚢捻転症の本邦報告例は,自験例以外に14 例であった。そのなかで単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術を行った報告はみられなかった。胆嚢癌に胆嚢捻転症を合併した際には,腹腔鏡による胆嚢摘出術も選択肢の一つとなり得ると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2214-2216 (2018);
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症例は71 歳,女性。53 歳時に右腎淡明細胞癌に対して右腎摘出術を施行した。68歳時に右副腎・甲状腺転移が出現し,それぞれ切除が施行された。今回,他院で分枝型IPMNのフォロー中,膵内にびまん性に多発する多血性腫瘤を認め,腎癌膵転移が疑われ当科に紹介となった。超音波内視鏡下穿刺吸引術(EUS-FNA)で腎癌多発膵転移と診断した。化学療法なども検討されたが外科治療を選択し,膵全摘術を施行した。術後7 か月まで無再発生存中であり,インスリン療法で血糖コントロールも良好である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2217-2219 (2018);
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症例は61 歳,女性。検診マンモグラフィにて左乳腺腫瘤を指摘され,当院受診となった。超音波検査にて左乳腺BD領域に15.5×7.2 mm 大の不整形腫瘤を認め,吸引式乳腺組織生検(vacuum-assisted biopsy: VAB)を行うも,悪性所見は認められなかった。しかしながら3 か月後,腫瘤は24.2×16.5 mm大に増大し,腋窩にも転移が疑われる複数個のリンパ節腫大が認められた。乳腺腫瘤に対し再度VAB を行うものの悪性所見は認めず,腋窩リンパ節に対する針生検(core needlebiopsy: CNB)より乳癌の診断に至った。手術は単純乳房切除術および腋窩リンパ節郭清を施行,摘出標本の乳腺組織より梗塞壊死を伴う充実腺管癌との確定診断が得られた。腋窩リンパ節転移は合計23 個に確認された。今回われわれは,急速に増大する梗塞壊死を伴う乳癌を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2220-2222 (2018);
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症例は61 歳,女性。主訴は心窩部痛。2003 年に左乳癌に対して乳房切除術+腋窩リンパ節郭清を施行していた。病理診断は浸潤性小葉癌,n(3/7),ER 陽性,PgR 陽性,HER2陰性であった。術後再発に対して化学療法中に右水腎症が出現していた。この時点では後腹膜転移とは診断できず,腰椎への放射線治療による尿管狭窄と考えて尿管ステントを挿入した。その1 か月後に心窩部痛を訴えて来院し,CT にて胃と十二指腸下降脚の著明な拡張と上部消化管内視鏡,消化管造影検査にて十二指腸水平部に狭窄を認めた。乳癌後腹膜転移による十二指腸狭窄と診断し,狭窄部に十二指腸ステントを挿入した。さらに胆管ステント・膵管ステントを挿入した。ステント挿入後,食事摂取が可能となり,約7 か月間エリブリンによる化学療法が可能であった。今回,複数のステント留置が有効であった乳癌後腹膜転移の1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2223-2225 (2018);
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症例は73 歳,男性。体動時の腹痛を主訴に当院を受診した。腹部超音波検査,腹部造影CT 検査で小腸間膜に充実性の腫瘤を認めた。悪性リンパ腫を疑い,臍部ZigZag切開による単孔式腹腔鏡下に組織学的検査目的に腫瘍切除を行った。病理組織診断はmalignant lymphoma follicular typeであった。臍部ZigZag切開を行うことで鉗子操作も容易であり,腸間膜を体外へ挙上することができた。腸間膜悪性リンパ腫の切除や生検には,臍部ZigZag 切開孔からの単孔式腹腔鏡下手術は有用であると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2226-2228 (2018);
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全身治療に抵抗性を示した乳癌術後の晩期再発に対して積極的な外科治療を施行し,長期生存が得られている1例を経験したので報告する。症例は53 歳,女性。1999 年5 月,右乳癌に対して胸筋温存乳房切除術を施行した。術後補助療法として5′-DFUR,抗エストロゲン剤を内服した。術後5 年経過し,無再発にて抗エストロゲン剤のみ続行した。2007 年11 月,右鎖骨上窩リンパ節転移を疑われ,5′-DFUR を再開した。2008 年2 月よりcyclophosphamide,epirubicin,5-fluorouracil(CEF)療法,アロマターゼ阻害剤内服を開始したが,リンパ節は増大した。その後も他の化学療法を継続したが効果は乏しく,2009年12月,頸部リンパ節摘出術を施行した。その後も再発を認め,2010 年1 月,3 月,4 月,それぞれ右頸部腫瘤摘出術を施行した。2013 年12 月,右頸部リンパ節摘出術を施行した。摘出標本はすべて組織学的に乳癌の転移として矛盾しなかった。以後アロマターゼ阻害剤のみ継続しているが,無再発生存中である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2229-2231 (2018);
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大網腫瘤として切除後,原発性腹膜癌と診断されながら,術後全身化学療法を施行せずに無再発生存を得ている興味深い1 例を経験したので報告する。症例は78 歳,女性。悪性疾患の既往歴はなし。近医の腹部エコーにて下行結腸付近の腫瘤陰影を指摘され,2014 年5 月当科を紹介受診した。腹部造影CT では左下腹部に大きさ94×80×34 mm の消化管とは連続しない均一に造影される軟部陰影を指摘された。gastrointestinal stromal tumor(GIST)などを疑い,2014 年6 月開腹術を施行した。開腹所見では,腫瘍は大網由来と思われ,周囲への浸潤傾向は認められず,腫瘍周囲の大網とともに腫瘍を摘出した。病理検査では,腫瘍は卵巣漿液性腺癌と矛盾しない非常に低分化な腺癌と判明した。術前・術後検査にて他臓器に病変は認められず,原発性腹膜癌と診断した。患者は術後全身化学療法を希望せず経過観察することとなり,2018 年4 月現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2232-2234 (2018);
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ER 陰性HER2 陽性局所進行高齢者乳癌術後の局所領域再発に対し,局所治療のみで病勢をコントロールし得た1 例を経験したので報告する。心房細動で抗凝固療法中の80 歳,女性。臨床病期はT4bN1M0,Stage ⅢB。局所進行乳癌に対し胸筋温存乳房切除術+植皮術を施行し,術後補助療法は行わず経過観察とした。術後4 か月にlevel Ⅲリンパ節再発,術後13 か月に胸壁および傍胸骨リンパ節に再発し,それぞれ放射線外照射を施行した。術後2 年11 か月に対側左腋窩リンパ節の単独再発に対し,腋窩リンパ節郭清術を施行した。切除標本のbiologyは不変で経過観察を継続した。術後3年7か月に原発性膵癌を認め,手術適応なく化学療法を行った。治療開始1 年2 か月後に膵癌の進行により死亡したが,経過中乳癌再燃徴候を認めなかった。
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癌と化学療法 45巻13号, 2235-2237 (2018);
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肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC)破裂は,未だ予後不良の疾患である。今回,過去18 年間に当科で経験したHCC 破裂症例の検討を行った。発症時年齢は48〜76(平均67)歳,男性5 例,女性1 例であった。いずれの症例も急激な腹痛あるいは意識消失で発症し,3 例がショックを呈していた。全症例で肝動脈塞栓療法(transcatheter arterial embolization:TAE)を施行することで止血が可能であった。その後,全身検索,肝予備能評価を行い,全症例で肝切除術を施行した。術後は特記すべき合併症を認めなかった。腹膜播種再発を認めた2 例は術後2 年以内に原病死しているが,3 例は再発なく経過し,うち2 例は4 年以上の無再発長期生存を得ており,症例によっては長期生存が期待できると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2238-2240 (2018);
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症例は60 歳,男性。検診の上部消化管内視鏡検査で十二指腸Vater 乳頭対側にdelle を伴う50 mm 大の粘膜下腫瘍を認めた。消化管造影検査で同部位に造影欠損を認め,腹部造影CT 検査では内部不均一で造影効果の乏しい50 mm大の腫瘤を認めた。生検ではc-kit陽性,DOG1 陽性であり,十二指腸gastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断した。手術先行では膵頭十二指腸切除術となる可能性が高く,高侵襲手術の回避のためmesylate imatinib(imatinib)の術前化学療法を開始した。16 か月のimatinib 投与で腫瘤は21 mm へと縮小し,手術の方針となり,腹腔鏡下十二指腸部分切除術にて根治切除し得た。現在術後26 か月になるが,原発巣に関しては局所再発なく生存中である。本症例につき若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2241-2243 (2018);
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はじめに:進行再発食道癌による気道浸潤は,狭窄や瘻孔形成から致死的な合併症を来す上に呼吸障害から患者のQOL を著しく損なう。当院で施行された気道ステント留置症例の背景因子や治療成績を後方視的に検討した。対象: 2010〜2017 年の間に当院で進行再発食道癌による気道浸潤に対して気道ステント留置を施行した9 例を対象とした。結果:気道ステントは9 例中8 例にUltraflexTM coverstent を留置し,1例はDumon Y字型ステントを留置した。ステント留置に伴う合併症は認めなかった。ステント留置後は4 例で化学療法など追加治療を行った。ステント留置後の生存期間の中央値は84(6〜142)日であり,9 例中5 例の患者が自宅退院可能であった。結語:進行再発食道癌による気道浸潤に対する気道ステント留置術は,合併症なく安全に施行可能であった。気道ステント留置術は症状緩和において有効な治療と考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2244-2246 (2018);
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大腸SM癌において,pSM癌の約10%にはリンパ節転移が認められると報告されている。そのため2014 年版の大腸癌治療ガイドラインでは,追加切除の適応基準を設定しいずれかの因子が認められた場合は,リンパ節郭清を伴う追加腸切除を考慮するとされている。しかし実臨床では,追加切除を行わない症例もみられる。対象は2008〜2016 年に内視鏡治療(ESD or EMR)を施行した大腸pSM 癌(324 例)のなかで,追加切除の適応基準を満たす231 例とした。症例を追加切除(+)群(153例)と追加切除(−)群(74 例)に分け,比較・検討を行った。2 群間は予後に関して大きな差を認めなかった。SM癌の予後は比較的良好であるため患者背景を考慮し,治療方針を選ぶことが重要と考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2247-2248 (2018);
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腹腔鏡下手術は拡大視効果により正確な局所解剖の把握が可能であるが,良好な視野展開が前提となる。胃切除術において視野の妨げとなる肝外側区域の圧排法について,当施設で導入した取り組みを紹介する。1) 右横隔膜脚を明らかとする。2) ペンローズドレーンを10 cm に切り,正中に半分ほどの切り込みを入れ,両端から正中の切込みに向け2-0ナイロン糸を通しステンレス製の小型クリップ(FJ クリップ)に結紮し,クリップを横隔膜脚に固定しナイロン糸を用いて体腔外で仮固定する。3) ペンローズドレーンの背側にシリコンディスクを挿入し,肝外側区域を圧排する。考察:本操作では煩雑な操作を腹腔外で気腹前に準備可能である。また,肝外側を面で均一な負荷で圧排でき,鉗子操作による副損傷を予防できる。愛護的かつ確実な視野展開が可能な方法として有効と考えられる。
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癌と化学療法 45巻13号, 2249-2251 (2018);
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大腸癌同時性肝転移治癒切除例の予後を明らかにし,今後治療の指標とすることを目的とした。1996〜2014年までに当科で治癒切除した同時性肝転移を伴う大腸癌症例61 例を対象とした。対象例の肝転移程度はH1 47 例,H2が14 例,肝転移GradeはA 29 例,B 18 例,Cが14 例,肝切除の時期は原発巣と同時切除33 例,二期的切除が28 例であった。治癒切除後の生存期間中央値58.0か月,5 年生存率は49.9%であった。予後と各臨床病理学的因子との関連では,原発巣の壁深達度がpT4,肝転移Grade がB,C の予後が不良であった。一方,肝転移切除時期,肝切除後の化学療法の有無,治癒切除が初発時のみか,再発切除ありかでは予後に差がなかった。大腸癌同時性肝転移では,原発巣の壁深達度と肝転移Gradeが予後因子となるが,同時切除に固執することなく治療方針を選択してもよいと考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2252-2254 (2018);
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症例1 は74 歳,男性。2011年7 月胃癌に対して胃全摘術を施行するも術中所見で腹膜播種(P1c)を認めた。術後はS-1/docetaxel(DTX)療法を32 コースまで施行し,その後はS-1 単剤療法を継続した。しかし2013 年 11 月門脈内腫瘍栓を認め,レジメンを変更し化学療法を継続したが,手術より3 年7か月後に死亡した。症例2 は77 歳,男性。2013 年9 月胃癌に対して幽門側胃切除術を施行したが,術中所見で腹膜播種(P1b)を認めた。術後はS-1/DTX/trastuzumab(Tmab)療法を5 コース行い,2014年5 月よりS-1単剤療法を2015 年10 月まで継続した。現在,術後4 年6か月経過しているが,再発を認めず経過している。症例3 は75 歳,女性。2014 年9 月胃癌に対し手術となるも,術中所見で腹膜播種(P1c)を認め試験開腹術のみとなった。術後は S-1/DTX 療法を開始した。23 コースまで行い CT では原発巣は SD であり,新たな転移巣など認めず経過していた。しかし2016年6 月本人の希望でbest spportive care(BSC)の方針となり,手術より2 年6か月後に死亡した。S-1/DTX 療法は腹膜播種を伴う進行胃癌に対して選択肢の一つである。
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癌と化学療法 45巻13号, 2255-2257 (2018);
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エビデンスは未だないものの,Stage Ⅳ胃癌患者の化学療法著効例にconversion surgery(移行手術)が行われる場合がある。今回,Stage Ⅳ胃癌患者に積極的な栄養療法を行いながら化学療法を行い,移行手術を施行して良好な経過が得られている症例を報告する。症例は74 歳,男性。高度の貧血の精査で腹水,腹膜播種を伴うStage Ⅳ胃癌と診断した。中心静脈ポートを留置し,1 日1,000 kcal 以上のTPN 点滴管理を併用したG-SOX療法を4 コース施行した。結果,原発巣,所属リンパ節は縮小し,腹水・腹腔内播種結節は消失した。審査腹腔鏡で腹膜結節,腹水細胞診を提出したが,悪性所見を認めなかった。移行手術として開腹胃全摘術+D2 郭清,腸瘻造設術を施行した。原発巣は1mmの結節2か所に悪性所見があるのみであった。術後は,空腸瘻による在宅経腸栄養を併用しながら体重の減少なく化学療法を継続し,現在も再発なく経過している。
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癌と化学療法 45巻13号, 2258-2260 (2018);
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症例は69 歳,女性。全身d怠感と食欲不振を主訴に当院を受診した。触診で左上腹部に腫瘤を認め,採血ではHb7.3 g/dL と貧血を認めた。腹部 CT 検査を行ったところ横行結腸癌による大腸イレウスの診断で横行結腸切除,D3 リンパ節郭清を施行した。最終診断は,tub2,T4aN0M0,StageⅡであった。術後9 か月目に腫瘍マーカーの再上昇があり,CT 検査と下部消化管内視鏡検査を施行したところ吻合部口側に局所再発を認めた。再開腹手術を行ったが,局所浸潤が強く試験開腹となった。病勢コントロール目的に術後55 日目より,FOLFOX 療法を開始した。5 コース行ったところで腫瘍マーカーが著減し,再手術から6 か月目のCT でCR 判定を得た。その後,再手術から2年1か月目までFOLFOX を計29 コース行い,以後本人の希望により化学療法を中止した。休薬後もさらに6 年間,再発兆候なく経過している。
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癌と化学療法 45巻13号, 2261-2263 (2018);
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症例は69 歳,男性。上行結腸癌によるイレウスに対してイレウス管を挿入した。翌日,穿孔性腹膜炎を来したため,右半結腸切除術・D3 郭清を施行した。病理組織学検査でA,type 2,muc>tub1,pT3,pN0,M0,pStageⅡと診断した。術後補助療法としてUFT/Leucovorin(LV)を 6 か月間内服し,2 年間再発所見なく経過していたが,イレウスを繰り返すようになった。保存的加療で改善していたが,CT で小腸の壁肥厚を認め,繰り返すイレウスに対してイレウス解除術を行った。腹腔内に明らかな播種は認めなかった。吻合部より口側の小腸に腫瘍性病変を認め切除した。病理組織学検査で,漿膜外浸潤を認めない粘膜下主体の腫瘍を認め,組織型は上行結腸癌に類似していた。他臓器に遠隔転移を認めず,上行結腸癌の小腸転移と診断した。今回われわれは,まれな大腸癌の小腸転移の1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2264-2266 (2018);
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症例は65 歳,女性。2011年にS 状結腸癌に対して腹腔鏡補助下高位前方切除術を施行した。病理結果はtype 2,25×27 mm,tub2,SE,N2,ly2,v1,Stage Ⅲb であった。術後補助化学療法としてUFT+UZEL を6 か月間内服した。術後6 年目CT にて,左尿管を途絶する24 mm 大の結節と両側肺に単発の肺結節を認めた。左後腹膜再発左尿管浸潤,両側肺転移の診断でパニツムマブ+FOLFOX 療法を計8 コース施行した。効果判定はPR であり,新規病変を認めないことから左腎合併左半結腸切除術を施行した。病理結果はmetastatic adenocarcinomaで矛盾はなかった。現在,再度化学療法を施行中である。肺病変は著変なく新規病変の出現はないため,今後切除を予定している。治癒切除後5 年を超えての再発はStageⅢ症例では非常にまれである。5 年以上の術後サーベイランスにより,自覚症状出現前に診断可能であった遅発性再発の1例を経験したため報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2267-2269 (2018);
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食道でのgastrointestinal stromal tumor(GIST)の発生はまれであり,定型的な術式やアプローチ方法について一定の見解は得られていない。今回われわれは,食道GIST に対して縦隔鏡下手術による切除を行った1 例を報告する。症例は58 歳,男性。食道粘膜下腫瘍を指摘されフォローアップされていたが,腫瘍の増大傾向を認め当科を受診した。門歯列より33 cm に18 mm 大の粘膜下腫瘍を認め,EUS では第四層に連続していた。上部消化管造影では腫瘍は胸部中部〜下部食道に存在した。超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(EUS-FNAB)でc-kit(+),desmin(−),a-SMA(−)でありGIST と診断され,切除の方針となった。被膜損傷のない切除および開胸操作による手術侵襲の回避のため,縦隔鏡アプローチによる鏡視下経裂孔食道亜全摘術・胸骨後経路胃管再建を行った。病理検査はFletcher分類低リスクのGISTであった。縦隔鏡アプローチによる鏡視下食道亜全摘術では開胸操作を避け食道周囲のみを剥離でき,食道GIST に対する術式の選択肢の一つとなり得ると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2270-2272 (2018);
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現在,胃癌肝転移に対する肝切除の適応は明らかなコンセンサスはない。今回,2001 年8 月〜2017年9 月までの間に当院で施行した胃癌肝転移切除症例24 例を対象とし,予後不良因子を同定することで肝切除適応を検討した。全24 症例の1,3,5年生存率はそれぞれ63,21,17%であった。単変量解析では,肝転移個数3 個以上,同時性肝転移,切除断端陽性が有意な予後不良因子であり,多変量解析では同時性肝転移(HR 4.71,95%CI: 1.08-21.79,p=0.040),切除断端陽性(HR5.95,95%CI: 1.56-25.81,p=0.009)が独立した有意な予後不良因子であった。異時性かつ切除断端陰性が得られれば,胃癌肝転移に対する外科的切除は良好な予後が期待できる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 45巻13号, 2273-2275 (2018);
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症例は82 歳,男性。胃体上部の3 型進行胃癌[tub2,HER2 score 3,cT3N3M1(LYM),cStage Ⅳ]に対してcapecitabine+cisplatin+trastuzumab療法を開始した。1 コース施行後にGrade 3 の好中球減少を認めたためcapecitabineは減量し,cisplatin は投与を終了した。4 コース施行後に胃病変と腫大リンパ節ともに著明な縮小を認め,外科的切除も検討したが,高齢のため手術は希望しなかった。その後75 コースにわたりcapecitabine+trastuzumab療法を継続した。77 コース後に多発肺,肝,リンパ節転移を認めるまで約53 か月と長期にわたりperformance status(PS)が悪化することなく病勢コントロール可能であった1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2276-2278 (2018);
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症例は69 歳,女性。主訴は,摂食・嚥下障害であった。右乳房腫瘤を自覚していたが放置していた。増大傾向でさらに咽頭のつかえ感も自覚し,徐々に水分摂取困難となり受診した。右乳房皮膚に露出する10 cm 大の腫瘍と腋窩リンパ節腫大を認め,針生検で浸潤性乳管癌,Luminal B の診断であった。CT で原発巣の他,肺,骨,縦隔リンパ節転移を認め,縦隔リンパ節腫大による食道圧排もみられた。内視鏡および食道造影検査でも,壁外圧排による高度食道狭窄を認めた。転移性乳癌として速やかなquality of life(QOL)改善を目的に,bevacizumab+paclitaxel療法を開始した。開始後,通過障害は速やかに改善し,2 コース目終了時にはほぼ常食摂取が可能となった。CT でも原発巣,転移巣ともに著明な縮小を得た。4 コース終了後はホルモン療法に切り替え,現在も外来内分泌療法を継続している。本症例のように奏効が必要な切迫した転移性乳癌において,bevacizumabの効果が患者の速やかなQOL 改善に有用である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2279-2281 (2018);
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症例は多発性肝転移を伴う大腸癌の64 歳,男性。原発巣に対し腹腔鏡下低位前方切除術を施行した。本人の希望により肝切除は行わず,mFOLFOX6+bevacizumabによる化学療法を開始した。6 コース施行後のGd-EOB-DTPA(EOB)造影MRI 上,肝転移巣はすべて消失した。mFOLFOX6+bevacizumab による化学療法は13 コースで終了した。原発巣切除術後7 年2か月が経過しているが,無再発長期生存中である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2282-2284 (2018);
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症例は62 歳,男性。突然の上腹部痛を主訴に当院へ救急搬送された。腹部造影CT 検査で,腹腔内遊離ガス,胃底部に深い潰瘍を伴う高度の壁肥厚,胃周囲のリンパ節腫大が認められ,胃癌穿孔を疑い,同日,胃全摘術,Roux-en-Y再建を施行した。病理組織検査では,胃体上部前壁から小弯に約10×6 cm 大の平坦な隆起性病変がみられ,中心部には穿孔を伴った3 cm 大の潰瘍形成を認めた。組織学的には,病変に一致して壁全層に中型から小型のリンパ球様異型細胞の増殖を認め,粘膜内にはlymphoepithelial lesion がみられた。免疫染色では,CD20(+),CD10(−),CD5(−),CD3(−)であり,MALTリンパ腫の診断に至った。また,粘膜内にHelicobacter pyloriは認めなかった。術後,補助化学療法はせずに経過観察している。自験例のようなMALTリンパ腫の自然穿孔は極めてまれであり,若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2285-2287 (2018);
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今回われわれは,進行胃癌に対して症状緩和目的に放射線治療を施行した2 症例を経験したので報告する。症例1: 74歳,男性。胃癌による持続的な出血により貧血を来し,頻繁に輸血を要した。止血目的に放射線治療を施行し止血が得られた。症例2: 81 歳,男性。残胃癌術後41 か月で腹膜播種再発を認め,化学療法(S-1療法)を開始した。しかし腫瘍増大による消化管通過障害を来したため,放射線治療を施行したところ狭窄解除が得られた。結論: 進行胃癌における緩和的放射線治療は比較的低侵襲であり,有効な治療選択肢となり得る。
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癌と化学療法 45巻13号, 2288-2290 (2018);
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再発を繰り返す直腸GIST に対し外科治療とイマチニブによる集学的治療により,長期生存を認めた1 例を経験したので報告する。症例は76 歳,女性。主訴は,排便困難と下血。直腸GISTの診断にて経肛門的直腸部分切除術を施行し,術後1 年で局所再発を来し再度直腸部分切除術を行った。再手術8 か月後に肝転移再発,イマチニブを2 か月間投与で腫瘍は縮小を認め拡大肝左葉切除術を行った。術後2 年間イマチニブ投与を行ったが,その2 年後に残肝再発と胸椎・腰椎転移が出現し,イマチニブを再開,投与後6 か月で腫瘍は嚢胞化した。イマチニブ再開後7 年経過した現在(初回手術後13 年)も増悪なく,経過観察中である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2291-2293 (2018);
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背景:胃管癌に対する標準的手術はリンパ節郭清を伴う胃管切除と考えられる。しかし高侵襲かつ高難易度であることが課題である。症例: 81 歳,男性。67 歳時に食道癌に対し右開胸食道亜全摘術,胸骨後経路胃管再建術を施行した。81 歳時に貧血精査の結果,胃管癌,cT1bN0M0,cStageⅠAと診断された。年齢を考慮し開腹下の胃管局所切除を行う方針とした。術前に上部消化管造影と内視鏡を行い,腫瘍の位置と胸骨の位置を透視下に特定し,内視鏡下でマーキングを行った。手術: 上腹部正中切開で開腹し,胃管と周囲の癒着を剥離し前壁切開し,腫瘍を全層切除した。術後は縫合不全と左腸腰筋膿瘍を認めたが保存的に軽快し,術後26 日目に退院となった。術後病理はT1a,断端陰性であり,現在無再発経過観察中である。内視鏡を利用し,胃管局所切除を施行した症例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2294-2296 (2018);
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症例は73 歳,男性。2 か月前から喉のつかえ感,体重減少(20 kg)を主訴に近医を受診し,上部消化管内視鏡検査で胸部食道(門歯より33〜37 cm)に0-Ⅱc+Ⅱa と胃噴門部前壁に7 cm 大の3 型腫瘍を認め,生検にていずれも扁平上皮癌と診断した。食道病変と胃病変は内視鏡所見で連続性は認めなかった。上部消化管透視検査では噴門部の腫瘍により通過障害を来しており,食道から胃に造影剤の流出を認めなかった。術中所見で広範な横隔膜浸潤を認め,根治的切除は困難と判断し,緩和的に胃全摘術を施行した。術後経過は良好で術後20 日目に退院した。術後経口摂取は良好であったが,原病の増悪のため手術から3 か月後に死亡した。巨大な胃壁転移を伴う食道癌の予後は不良であるが,噴門部狭窄に対して緩和的手術を行い,経口摂取が可能となった1 例を経験した。
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癌と化学療法 45巻13号, 2297-2299 (2018);
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症例は78 歳,男性。2015 年1 月,他院の精査で早期食道癌と診断され,前医で内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection: ESD)を受けた。病理組織学的検査の結果,scc,pSM1,pHM1,pVM0,ly0,v0 であった。高齢のため経過観察とされた。2017 年6 月の造影CT 検査で縦隔リンパ節が腫脹し,再発と診断され当院初診となった。他臓器への遠隔転移はなかったが,病変が大きく周囲臓器への浸潤の可能性も否定できなかったため,まず化学療法を施行した。病変は縮小し,患者の希望から食道切除術を施行した。病変は左肺へ浸潤し,左肺合併部分切除も要したが治癒切除となった。
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癌と化学療法 45巻13号, 2300-2302 (2018);
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患者は44 歳,女性。腹部腫瘤触知を主訴に,近医より紹介受診した。血液検査では肝機能は正常,腫瘍マーカーはCA19-9のみ軽度上昇を認めた。造影CT で肝S5から尾側に突出する15 cm 大の腫瘤影を認め,腫瘤は動脈相で不均一に濃染し,平衡相でwash outを示した。MRI所見からは,腫瘤は被膜を有し内部は細胞成分が豊富な腫瘍と推測された。FDGPET検査では腫瘤全体にほぼ均一にFDG の集積を認め,その他転移を疑う異常集積は認めなかった。以上より肝細胞癌の診断の下,手術を施行した。腫瘍は肝S5 より尾側へ大きく突出する形で存在していたが,他臓器への浸潤や肝内転移を認めず,肝S5亜区域切除により根治切除できた。病理組織所見では,肝外発育型の肝内胆管癌と診断した。肝内胆管癌は原発性肝癌の約4.4%とまれであり,肝外発育型を呈するのは極めて珍しい。今回,肝外発育を呈した肝内胆管癌の1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2303-2305 (2018);
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症例は55 歳,女性。2014 年,超音波検査で肝嚢胞性病変を指摘され,近医で経過観察していた。2017年,前医閉院に伴い当院紹介となった。造影CT で肝左葉に径12 cm 大の多房性病変を認め,嚢胞内に明らかな充実成分は認められなかった。腫瘍は増大傾向であり,CA19-9も上昇傾向を伴っていたことから肝粘液性嚢胞性腫瘍(mucinous cystic neoplasm:MCN)を疑い,肝拡大左葉切除術を施行した。術後経過は良好で術後14 日目に退院した。病理組織検査では,嚢胞内腔側は一層の粘液産生性の上皮細胞に被われており,それらの細胞の異型度は強くなかった。上皮下間質は卵巣様間質の組織像を呈しており,免疫組織化学染色ではエストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体がともに陽性であったため,肝MCN with low-grade intraepithelial neoplasiaと診断した。術後8 か月経過した現在,明らかな再発兆候を認めず生存中である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2306-2308 (2018);
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患者は77 歳,女性。背部痛,上腹部痛を主訴に近医を受診し,膵腫瘍を指摘され,当科に紹介受診した。造影CT 検査で膵鉤部の径25 mm の膵癌と診断したが,約半周の上腸間膜動脈神経叢浸潤を認めた。リンパ節転移や遠隔転移の所見はなく,borderline resectable(BR)膵頭部癌,cT3,N0,M0,cStageⅡAと診断し,gemcitabine+nab-paclitaxel療法を施行した。経過中Grade 3 の好中球減少症を認めたが適宜減量しながら継続し,6 コース終了後には腫瘍と上腸間膜動脈神経叢への浸潤範囲は縮小した。亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,D2リンパ節郭清を施行し,病理組織学的所見でR0の根治切除の結果を得た。BR 膵癌に対する術前補助化学療法は未だ確立されていないが,術前治療によるR0切除率の向上は膵癌の治療成績の向上に寄与する可能性がある。
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癌と化学療法 45巻13号, 2309-2311 (2018);
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症例は63 歳,男性。総肝動脈(CHA)と固有肝動脈(PHA)へ浸潤する局所進行切除不能膵頭部癌の診断で,S-1 併用の化学放射線療法を施行したが,CHA周囲軟部陰影の増大を認めgemcitabine+nab-paclitaxel療法に変更し,計13 コース投与した。腫瘍マーカーの正常化と,Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)で長期stable disease(SD)が得られていたことからconversion切除を施行した。左胃動脈から左肝動脈が分岐しており,中肝動脈と右肝動脈を二段階でコイル塞栓し,肝動脈血流改変を術前に行った後,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術・CHA/PHA合併切除(非再建)を施行した。肝動脈切除に起因する術後合併症は認めず,術後第33 病日で退院した。初診より3年6か月,術後2 年2か月無再発生存中である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2312-2314 (2018);
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症例は59 歳,女性。心窩部痛を主訴に発症し,精査にて切除可能膵頭部癌と診断された。幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した。病理所見は高分化型管状腺癌で,細胞質に粘液成分を多く含む核異型の軽度な腫瘍細胞を主体としていた。最終診断は膵頭部癌,pT3N0M0,StageⅡAであった。術後,肝灌流療法として5-FU の肝動注・門脈注を行い,引き続きgemcitabineでの術後補助化学療法を1 年間施行した。術後7 年目のCT,PET-CTで左頸部リンパ節転移が疑われた。全身検索では他臓器癌を認めなかった。診断を兼ねて再切除の方針となり,左頸部リンパ節摘出術を行った。病理組織は初回切除時の原発巣と同様な組織像を呈する豊富な粘液産生を伴う高分化型腺癌であり,膵癌の再発として矛盾しなかった。術後はS-1単独療法を約1 年間行った。現在は再切除から3 年10 か月無再発生存中であり,初回手術から11 年の長期生存を得ている。
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癌と化学療法 45巻13号, 2315-2317 (2018);
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症例は26 歳,女性。膵尾部の腫瘤性病変を認め,solid pseudopapillary tumorを疑い腹腔鏡補助下膵体尾部切除術および脾臓摘出術を施行した。病理組織学的診断は膵腺房細胞癌の診断となり,術後は外来にてS-1 単独療法4 コースを施行し,2 年6 か月経過した現在,再発を認めていない。膵腺房細胞癌は全膵腫瘍の約0.4%を占めるまれな疾患であり,さらに若年発症例の報告は少ない。また,膵腺房細胞癌において術後化学療法の必要性がいわれているものの依然として確立はされていない。今回,若年女性に発症した膵腺房細胞癌に対して術後S-1 単独療法4 コースを施行し,無再発で経過した1 例を経験したため報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2318-2320 (2018);
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今回われわれは,大網原発巨大gastrointestinal stromal tumor(GIST)の1 例を経験したので報告する。症例は74歳,女性。主訴は腹部膨満感,下腹部痛,食思不振。CT で不均一に造影される30×20 cm 大の巨大腫瘍を認め,大網もしくは腸間膜原発のGIST を疑った。腹膜結節も認め,根治手術は困難と判断し,姑息的手術を行う方針とした。腫瘍の主座は大網であり,横行結腸間膜に浸潤し,横行結腸の辺縁動脈を巻き込んでいたため腫瘍切除に際し横行結腸部分切除も行った。免疫学的所見ではc-kit(+),CD34(+),S100(−),DOG1(−),核分裂像は高倍率50 視野に対して1 個であり,高リスク群の大網原発のGIST と診断した。第37 病日よりimatinib を開始するも徐々に全身状態が悪化し,第109 病日に原病死した。
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癌と化学療法 45巻13号, 2321-2323 (2018);
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進行十二指腸癌に対しパクリタキセル療法が奏効した1 例を経験した。症例は70 歳台,女性。出血性十二指腸潰瘍の診断で,当院へ紹介された。当院にて上部消化管内視鏡検査を施行したところ,十二指腸球部に3 型腫瘍を認めた。造影CTで十二指腸球部の壁肥厚に加え,リンパ節転移と肝転移が疑われ化学療法の方針となった。一次治療としてSOX 療法を4コース施行したところ原発巣の壁肥厚は増悪し,肝臓に新病変が出現していたためPD と判断した。二次治療としてwPTX療法を4 コース施行したところ原発巣の壁肥厚は改善し,肝転移巣はすべて縮小し不明瞭化した。縮小率は75%であり,PRと判断した。PET-CT でも原発巣の集積低下とリンパ節や肝転移の集積消失を認めたことから,根治切除可能と判断し手術を施行した。肝切除部に癌細胞は認めず,術後病理結果からも根治切除し得た結果であった。進行十二指腸癌に対しwPTX療法が有用である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 45巻13号, 2324-2326 (2018);
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大腸癌穿孔症例における原発巣の占拠部位の生存期間への影響について検討した。2005 年4 月〜2016 年12 月の間に,原発性穿孔性大腸癌(口側非癌部穿孔も含む)症例で耐術した52 例を対象とした。盲腸〜横行腸結腸穿孔症例9 例(右側群)と下行結腸〜直腸穿孔症例43 例(左側群)の患者背景,全生存期間(OS)を比較検討した。年齢,性別,Stage,化学療法施行率については両群間に差はなかったが,Hinchey stage分類では,左側群のほうが有意に高値であった(p<0.05)。生存期間中央値は右側群,左側群で各々21.2 か月,68.2 か月で左側群のほうが有意に良好な傾向であった(p=0.05)。耐術した大腸癌穿孔症例における原発巣の部位は予後因子になると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2327-2329 (2018);
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術前S-1+oxaliplatin 併用療法(NAC-SOX 療法)が奏効し,根治切除し得た食道浸潤を伴う4 型胃癌の1 例を経験した。症例は46 歳,男性。検診の胃透視で要精密検査となり,当院を受診した。精査の結果,食道浸潤を伴う進行4 型胃癌,cT4b(横隔膜)N2M0,Stage ⅢCと診断し,NAC-SOX療法を3 コース施行した。有害事象は軽微であった。PR の抗腫瘍効果が得られたため,胃全摘+胸部食道亜全摘を施行した。組織学的効果判定は,原発巣Grade 2,リンパ節がGrade 3であり,全体として術前化学療法がかなりの治療効果を示した。ypT3N0M0P0CY0H0,Stage ⅡAの最終診断にて治癒切除と判断した。現在,術後補助化学療法としてS-1 単独療法を継続中である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2330-2332 (2018);
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症例は80 歳,女性。虫垂癌のため腹腔鏡下右半結腸切除施行した(mucinous adenocarcinoma,pT4aN1M0,stageⅢa)後の腹膜播種再発に対してCapeOX+bevacizumab による化学療法を施行した。stable disease(SD)の状態が続き,計5 コース施行した。その間,自覚および他覚症状は特にみられず経過していたが,効果判定のため行った胸部造影CT 検査で肺動脈に血栓形成の所見がみられた。bevacizumabによる合併症と考え化学療法は中止し,ヘパリン投与による抗凝固療法を開始した。肺梗塞など併発することなく,抗凝固療法はapixaban に変更した。これにより肺動脈の血栓は消失したが,腹膜播種は増大し死亡した。切除不能進行再発大腸癌に対してCapeOX+bevacizumabは大腸癌治療ガイドラインでも推奨されるレジメンの一つである。一般的にbevacizumabの副作用は比較的軽微とされているが,重篤な副作用には消化管穿孔や血栓症などがあげられる。なかでも肺塞栓症の頻度は約0.1%と少ないが,死亡に至る例もあり注意をすべき合併症である。しかし血栓症を併発しても症例のなかには本報告のように無症状のものも含まれていると思われる。bevacizumab投与に際しては,血栓症合併に対する早期発見および治療を含めた対策が必要と考える。
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癌と化学療法 45巻13号, 2333-2335 (2018);
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症例は57 歳,女性。近医で裂肛の治療経過中に直腸腫瘤を指摘され,当院紹介となった。下部消化管内視鏡検査にて直腸Rbに約8 mm 大の黄白色調の隆起性病変を認めた。生検で直腸神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor-G1)と診断された。超音波内視鏡検査上,第2〜3 層に位置し,明らかな筋層浸潤は認めず,局所切除の適応と判断された。経肛門的内視鏡下低侵襲手術にて腫瘍切除術を施行した。全身麻酔下に砕石位とし,GelPOINT®Path(Applied Medical 社)を肛門管に装着し,3 portsで操作を行った。肛門縁より約5 cm 口側に直腸腫瘍を認め,電気メスで全層切除を行った。欠損部は3-0 マルチフィラメント吸収糸を用いて縫合閉鎖した。手術時間24 分,出血は少量であった。本術式は肛門縁から5〜20 cm の症例を適応とし,明瞭な視野で低侵襲かつ確実性の高い一括切除と欠損部の縫合閉鎖が可能であり,局所切除が適応の直腸腫瘍をより確実に切除するための有用なアプローチ法の一つと考える。
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癌と化学療法 45巻13号, 2336-2338 (2018);
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症例は76 歳,女性。左乳頭からの血性乳汁分泌を主訴に当院を受診した。左乳房E 領域に約3 cm 大の硬結を触知した。マンモグラフィ検査で左乳腺にスピキュラを伴う境界不明瞭な不整形腫瘤を認め,超音波検査では左乳房E 領域に38 mm大の境界不明瞭な低エコー腫瘤像を認めた。針生検で,アポクリン細胞に特徴的な好酸性の胞体と小型核を有する上皮細胞の乳頭状増殖を認め,乳腺アポクリン癌が疑われた。免疫組織学的検査にてER 陰性,PgR 陰性,HER2 陰性であった。術前診断は,乳腺アポクリン癌,cT2N0M0,cStageⅡAであり,左乳房切除+センチネルリンパ節生検術を施行した。術後病理組織学的検査にてアポクリン癌,ER 陰性,PgR 陰性,HER2陰性,Ki-67 5%,センチネルリンパ節転移陰性と診断された。術後経過は良好であり,8日目に退院となった。術後1 年7か月現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2339-2341 (2018);
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目的:癌性腸閉塞に対し,腸閉塞症状の改善と経口摂取の再開を目的として行われる姑息的人工肛門造設術の有効性について検討した。方法:当科で切除不能癌による腸閉塞に対し人工肛門造設術を施行した16 例を対象とし,患者背景と術後成績について後方視的に検討した。結果:年齢中央値は64 歳で,原疾患は大腸癌が11 例(69%)で最多であった。術後に食事摂取の再開が可能であった症例は15 例(94%)で,colorectal obstruction scoring system(CROSS)は術前後で2 から4 へと改善を認めた。術後合併症(Clavien-Dindo分類gradeⅡ以上)を8 例(50%)で認め,合併症群は術前低アルブミン値(≦3.5 g/dL)の症例が多く(p=0.077),在院日数が長期であった(p=0.041)。術後生存期間中央値は107 日であり,70 歳以下,CA19-9 ≦37.7 U/mL,術後 CROSS 4,術後化学療法施行において有意な生存期間の延長を認めた。術後 CROSS が4 に改善した群で術後化学療法の施行が可能であった(p=0.019)。結語:姑息的人工肛門は末期癌患者の経口摂取改善に寄与し,術後化学療法が可能となり予後の改善につながる可能性がある。
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癌と化学療法 45巻13号, 2342-2344 (2018);
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症例は57 歳,女性。直腸癌に対して腹会陰式直腸切断術を行い,病理所見はStage ⅢAであった。術後補助化学療法を行ったが,術後26 か月で仙骨前面に局所再発を来し,疼痛を伴うようになった。全身化学療法と並行して緩和ケアを開始したが,術後43か月で高用量のオピオイドでも疼痛制御困難となった。集学的治療により一時的にオピオイドを減量できたが,術後50か月で再び高用量のオピオイドを要するようになった。疼痛への予期不安からレスキューを頻用しており,われわれはケミカルコーピングに陥ったと判断した。鎮痛補助薬や心理療法の導入でオピオイドの減量に成功した。その後も病勢は進行したが,疼痛制御困難に陥ることはなかった。疼痛制御困難を生じると病勢制御やオピオイド用量増加で対処しがちであるが,ケミカルコーピングを含む心理的背景を考慮することでオピオイド使用の適正化と患者のQOL 向上につながると考えられる。
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癌と化学療法 45巻13号, 2345-2347 (2018);
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症例は67 歳,男性。胃体上部後壁に2 型病変を認め,生検結果は中分化管状腺癌であった。腹部CT 検査では,No. 1に1個,No. 3 に1 個,No. 3〜11pにbulky N,No. 16a2latに1 個の腫大リンパ節を認めた。胃癌,T4aN2M1(LYM),cStageⅣB と診断し,capecitabine+cisplatin(XP)療法を2 コース行った。原発巣とリンパ節の著明な縮小を認めたため,胃全摘とD2+No. 16a2lat リンパ節郭清を施行した。病理組織学的に摘出胃およびリンパ節に癌細胞の遺残を認めず,組織学的効果はGrade 3 であった。高度リンパ節転移症例でも化学療法の著効により根治切除が可能となる場合があり,至適な化学療法レジメンおよび術式についてのさらなる検討を要する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2348-2350 (2018);
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症例は67 歳,男性。腹痛と発熱を主訴に受診した。CT 検査で腹部多発腫瘤と膿瘍形成が疑われ,腹腔内の多発腫瘍を可及的に摘出した。病理検査で消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor: GIST)と診断し,遺残腫瘍に対してimatinib療法を行った。副作用が強く低用量間欠投与を選択したが,91 か月にわたり病勢制御が可能であった。腹膜播種を伴う高度進行GISTに対して,減量手術後のimatinib低用量間欠投与が有効な可能性が示唆された。
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癌と化学療法 45巻13号, 2351-2353 (2018);
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当院で手術を施行した85 歳以上の大腸癌患者35 例に対する周術期状況に対して,estimation of physiologic ability and surgical stress(E-PASS)score を基に検討を行った。合併症発生率はClavien-Dindo 分類においてはGrade 2 およびGrade 3 ともに高齢になるに従い,高い傾向であった。術前リスクスコア(preoperative risk score: PRS)は年齢とともに上昇していたが,手術侵襲スコア(surgical stress score: SSS)は変わりなく,総合リスクスコア(comprehensive risk score:CRS)でも高齢になるにつれてスコアは高くなっていた。高齢者ではすでにPRS が高いため,SSS を下げることがリスクを減らすと考え,2016 年度より手術時間短縮,腹腔鏡率の増加などの工夫を行った。改善前後ではSSS は有意に低下し,Grade 3 の合併症率を減らすことが可能であった。超高齢者に対してはSSS を下げる工夫をすることで合併症発生率を下げることが可能であると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2354-2356 (2018);
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症例は82 歳,女性。左E 領域に26 mm 大の腫瘤を触知し,US で境界明瞭な20 mm 大の嚢胞性病変と内部に9 mm大の充実部を認めた。針生検で乳腺扁平上皮癌,ER 陽性,PgR 陰性,HER2陰性,cT1N0M0,StageⅠと診断し,高齢を理由に内分泌療法を開始した。ホルモン剤を4 回変更した5 年4か月時点で,腫瘍径は52 mmに増大した。切除可能かつ高齢ではあるが耐術可能と判断し,左乳房切除術+腋窩リンパ節切除を施行した。術後病理組織検査では,単房性嚢胞性病変と5 mm の浸潤部を伴う扁平上皮癌であり,ER は陰転化していた。術後補助療法は施行せず,術後10 か月後も無再発経過中である。高齢者の初期治療としての内分泌療法選択時にはER 陰転化や治療の長期化に伴う高齢化により,耐術不能となり得ることを検討の上決定する必要がある。
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癌と化学療法 45巻13号, 2357-2359 (2018);
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症例は62 歳,男性。下痢の精査のため下部消化管内視鏡検査を行ったところ,下部直腸に1/2 周性の2 型病変および上部直腸に2/3 周性の2 型病変を認めた。腹部造影CT 検査では,直腸(Ra-Rb)に壁肥厚を認め,骨盤内のリンパ節腫大,両側側方リンパ節腫大を認めた。遠隔転移は認めなかった。側方リンパ節転移を伴う局所進行直腸癌,cT3N3M0,cStageⅢbと診断し,術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy: NAC)としてCapeOX+Bmabを4 コース行った。効果判定PRと診断し,鏡視下手術による切除可能と判断した。腹腔鏡下マイルズ手術および側方リンパ節郭清を行った。術後補助化学療法CapeOX を4 コース行い術後8 か月現在,無再発生存中である。CapeOX+Bmab は局所進行直腸癌に対して術前化学療法として有効な治療法になり得ると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2360-2362 (2018);
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今回われわれは,大腸癌腹膜播種切除例の成績を検討し,播種巣の切除意義を明らかにすることを目的とした。2009年1 月〜2017 年12 月までの期間に当院において,大腸癌腹膜播種に対してR0 外科手術を施行した11 例を対象とし,検討を行った。観察期間中央値23 か月,3 年生存率72.8%,3 年無再発生存率は22.7%であった。腹膜播種巣に対する外科的切除は有用である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 45巻13号, 2363-2365 (2018);
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症例: 61歳,男性。体重減少を主訴に近医を受診した。上部消化管内視鏡検査にて胃前庭部に2 型病変を認め,生検で腺癌(por)の所見であった。造影CT では小弯および幽門下リンパ節の腫大を認め,膵頭前部リンパ節(No. 17)にも腫大を認めた。開腹胃全摘,脾摘,D2+No. 17 郭清,Roux-en-Y 再建術を施行した。病理組織検査ではtub2-por,pT3(SS)N3aM1(LYM),pStage Ⅳであり,十二指腸浸潤を伴っていた。また,HER2 陽性であった。化学療法(S-1+CDDP+trastuzumab)を1 年間施行,その後外来にて経過観察を行った。術後4 年のCT で下大静脈(IVC)への浸潤を伴う膵頭後部リンパ節(No. 13)再発を認めた。化学療法(capecitabine+CDDP+trastuzumab)を計4 コース施行後,CT にてPR の効果判定となり,開腹下に摘出術を施行した。転移リンパ節はIVCに強固に癒着していたため合併切除とした。病理ではリンパ節構造は消失し線維化と肉芽腫が散見され,腫瘍組織は消失していた。胃癌術後のNo. 13 リンパ節単独での再発はまれな病態であるが,切除を含めた集学的治療が有効であると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2366-2368 (2018);
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82 歳,男性。心房細動でワーファリン内服中。進行胃癌に対し幽門側胃切除術,Roux-en-Y再建を施行した。術中多発肝転移を認め,pT3(SS)N2M1H1P0CY0,pStage Ⅳ,(HER2,score 3+)と診断した。肝転移およびその後出現したリンパ節転移(膵頭部前面と胸骨後)に対し,化学療法を行っていた。治療開始から46 か月,三次治療irinotecan+cisplatin療法を施行中にGrade 3 の貧血を認めた。腹部CT で肝転移はCR,リンパ節転移はSDを維持しており,上部・下部内視鏡では出血源を認めなかった。化学療法は休薬し,各種補充療法を行うも貧血の進行と輸血を繰り返した。ダブルバルーン内視鏡を行ったところ,十二指腸断端に腫瘍浸潤と出血を認め,膵頭部前面リンパ節転移の十二指腸浸潤部出血と診断した。出血制御目的に姑息的放射線照射(40 Gy/20 Fr)を施行した結果,出血制御と縮小が得られた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2369-2371 (2018);
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症例は68 歳,男性。食道胃接合部に全周性3 型腫瘍を認め,生検結果は低分化腺癌であった。造影CT 検査では,腹部食道から胃体上部にかけての全周性壁肥厚と多数の領域リンパ節腫大を認めた。食道胃接合部癌,GE,cT4a(SE)N3aM0,cStage Ⅲであり,bulky N を有していたため術前にS-1+oxaliplatin(SOX)療法を2 コース行った。その結果,原発巣および腫大リンパ節の著明な縮小を認め,T3N1M0,ycStage Ⅲの診断で胃全摘・下部食道切除,D2リンパ節郭清を施行した。病理組織学的に摘出胃・食道およびリンパ節に癌細胞の遺残を認めず,組織学的効果はGrade 3 であった。bulky Nを含む高度リンパ節転移症例に対する術前化学療法は考慮すべき治療戦略であり,SOX 療法は有効なレジメンの一つになり得ると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2372-2374 (2018);
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症例1 は65 歳,女性。胸部下部食道癌に対して術前補助化学療法(NAC)後に根治切除術を施行した。術後1年7か月で下行大動脈背側に局所再発を指摘され,化学放射線療法(CRT)・化学療法を施行した。下行大動脈への浸潤が否定できないものの他に新規病変を認めず,術前に大動脈ステントグラフト(ASG)を挿入し安全に大動脈外膜合併再発腫瘤切除術を行った。症例2 は64 歳,男性。胸部中部食道癌に対してNAC後に根治切除術を施行した。術後5 か月で下行大動脈と左下肺静脈に接するような局所再発を指摘され,CRT・化学療法を施行した。再発腫瘤は残存したが他に新規病変を認めず,ASG を内挿した後に安全に大動脈外膜合併再発腫瘤切除術を行った。ASG 内挿術は,食道癌根治切除術後大動脈周囲局所再発に対する治療の選択肢となり得ると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2375-2377 (2018);
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症例は58 歳,男性。2006年に胃癌に対して幽門側胃切除術,D2郭清,Roux-en-Y再建を施行した。病理診断結果は,胃癌,por2,pT3(SS),pN3a(8/27),pStage ⅢBであった。術後 3 か月より補助化学療法としてS-1 単剤を1 年間投与した。術後5 年で腹膜播種再発による全周性の直腸狭窄,膀胱・尿管再発を認め,回腸瘻および左腎瘻造設術を施行した。初回手術後5 年2 か月よりドセタキセル+S-1 併用療法(DS 療法)を開始した。DS 療法開始後2 年10 か月23 コース終了時点でcCR となった。開始後5年5か月57 コース終了時点で多発リンパ節転移,骨転移を認めPD判定となった。イリノテカン単剤療法を導入し5コース施行するも,開始後5年9か月時点で骨転移が増悪し死亡した。今回,胃癌腹膜播種に対してDS 療法が奏効し,長期生存が得られた1 例を経験した。
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癌と化学療法 45巻13号, 2378-2380 (2018);
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症例1: 75 歳,男性。2011 年7 月,胃体部癌に対し幽門側胃切除(D2郭清),横行結腸間膜合併切除,Billroth Ⅰ再建を施行した。病理ではadenocarcinoma(tub2,tub1),pT4b(SI: 横行結腸間膜)N3M0,pStage Ⅲcであった。術後補助化学療法としてS-1を6 か月間内服したが,1 年目のCT 検査にて3 cm 大の腹膜播種再発を認め,横行結腸切除術を施行した。術後weekly PTX+S-1 を2 年8 か月行い,その後biweekly PTX を継続中で,初回手術から7 年経過した現在も無再発で経過している。症例2: 65 歳,男性。2016 年7 月心窩部痛を主訴に近医で上部消化管内視鏡検査を施行され,胃体上部のスキルス癌と診断された。CT およびCS 検査でSchnitzler 転移と診断した。S-1+CDDP を6 コース施行したところでPR となり,PET-CT 検査で明らかな他の遠隔転移を認めなかったため,2017 年3 月胃全摘術(D2郭清)および低位前方切除術を施行した。病理診断にてadenocarcinoma(tub2,por2,sig),pT4a(SE)N0,組織学的効果判定はGrade 1a で,直腸病変は腺癌の播種と診断された。術後もS-1内服を継続中で,手術後1 年6か月経過した現在も無再発で経過している。胃癌腹膜播種は一般に治療は困難で予後不良であり外科手術の対象となることはまれであるが,化学療法の進歩に伴い長期生存例も報告されている。当科では限局した腹膜播種に対し,化学療法と手術を組み合わせて良好な経過を得ている2 例を経験した。播種を伴う胃癌でも積極的に手術を行う価値がある症例も存在すると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2381-2383 (2018);
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腹腔内転移を伴う胃癌に対する治療法として,腹腔内化学療法(IP 療法)の有用性が臨床試験で検証されている。今回われわれは,IP ポートのカテーテルによる腸管穿孔の症例を経験したので報告する。症例は75 歳,男性。4 型胃癌に対してIP 療法施行後,胃全摘出術を施行し術後化学療法を行い,再発なく経過観察中であった。1 週間前よりの発熱,腹痛を主訴に受診し造影CT 検査を施行したところ,カテーテルの腸管への穿通を認めた。カテーテルによる腸管穿孔からの腹膜炎と診断し,同日カテーテル抜去,腹腔内ドレナージ術を施行した。チューブは回盲部から20 cm 口側の回腸に穿通していた。回盲部と損傷腸管を切除,皮下ポートを抜去した。術後25 日目に退院となった。以前の報告ではIP ポートのカテーテルによる腸管穿孔の頻度は0〜3.5%と報告されており,まれではあるが発生すると致命的な合併症となり得る。化学療法が終了した患者の腹腔内アクセスポートは,可能な限り早期に抜去するとこが望ましいと考えられる。
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癌と化学療法 45巻13号, 2384-2386 (2018);
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症例は83 歳,男性。陳旧性肺結核,肺線維症のため,当院呼吸器外科で経過観察されていた。上腹部痛を主訴に救急外来を受診し,上腹部にfree airを認め上部消化管穿孔の診断で入院した。保存的治療のみで症状は改善し,第10 病日に上部消化管内視鏡検査にて胃角部小弯に潰瘍性病変を認めた。血清 CEA が 22.7 ng/mL と高値であったため胃癌による穿孔を疑ったが,生検結果はGroup 1 であった。腹部骨盤CT 画像にてS 状結腸に不整な壁肥厚を認め,下部消化管内視鏡検査を施行したところ1 型腫瘤を認め,生検にてGroup 5 が検出されS 状結腸癌の診断に至った。併存症による高度拘束性肺障害を有しており,脊椎クモ膜下麻酔および硬膜外麻酔下でのS 状結腸切除術を施行した。上部消化管穿孔による救急外来受診を契機にS 状結腸癌が発見された症例を経験したため報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2387-2389 (2018);
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今回われわれは,成人盲腸重積症で発症した盲腸癌に対して緊急手術を施行した1 例を経験したので報告する。症例は79 歳,女性。腹痛・嘔吐を主訴に前医を受診し,腸重積症が疑われ当院に紹介となった。来院時右下腹部に腫瘤を触知し,同部位に圧痛および腹膜刺激症状を認めた。腹部単純CT 検査では,腫瘤性病変を先進部とした横行結腸中央部にまで至る腸重積を認めた。限局性腹膜炎所見を認め,緊急開腹手術を施行した。術中所見では,後腹膜に固定されていない腫大した右側結腸に小腸,回盲部の陥入を認めた。Hutchinson手技を行い,腸重積を解除した。触診で回盲部に硬結を触れたため盲腸癌による腸重積症と考え,回盲部切除術を行った。病理学的検査所見は,盲腸癌,tub1,pT2N3M0,pStage Ⅲb であった。術後12か月現在,無再発生存中である。成人腸重積症では自験例のように腹膜刺激症状を有し,腸管壊死・穿孔が否定できない場合には緊急手術を検討する必要がある。
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癌と化学療法 45巻13号, 2390-2392 (2018);
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症例は73 歳,男性。食思不振と体重減少を主訴に当院受診となった。造影CTでS状結腸間膜に5 cm 大の腫瘤を認めた。悪性も否定できないため,組織診断も兼ねて腹腔鏡下に切除した。腫瘍はS 状結腸間膜内に認め,岬角付近では仙骨側に浸潤を疑う所見を認め,同部位に一部腫瘍が残存することとなった。病理学的組織検査では,免疫組織学的にAE1/3 陽性,INI-1部分的欠失を認めたため類上皮肉腫と診断した。残存腫瘍に対する治療として重粒子線療法を施行した。残存腫瘍の縮小を認め,現在術後1 年で明らかな増悪傾向は認めていない。類上皮肉腫は全軟部肉腫のなかでも約1%と非常にまれな疾患であり,腹腔内に発生する報告はまれである。外科的切除が原則とされるが,今後同様の症例に対して重粒子線も治療選択肢の一つとなり得る可能性が示唆された。
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癌と化学療法 45巻13号, 2393-2395 (2018);
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進行虫垂癌2 切除例を経験した。症例1: 67 歳,女性。手術時,粘液を主体とした播種を腹腔内に多数認めた。腹腔鏡下結腸右半切除(R2)を行った。病理組織学的所見は高分化腺癌と高分化粘液癌(G1)の混在で,pT2N0M1bG1にてpStageⅣA。術後6 か月を経過し,外来にて補助化学療法を行っている。症例2: 48 歳,女性。手術時,終末回腸への浸潤を認めた。腹腔鏡下結腸右半切除(R0)を行った。病理組織学的診断はpT4bN0M0にてStageⅡ。外来にて経過観察している。考察:症例1 は,高分化粘液癌の播種であれば予後は比較的よいと思われるが,高分化腺癌が混在していたため術後化学療法を行っている。症例2 では浸潤性のある粘液癌であるが,播種やリンパ節転移がないためStageⅡとして補助療法を行わずに経過観察している。虫垂癌症例に対してはTNM 分類に基づくステージングを積極的に行い,適切な追加治療を行うことが望まれる。
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癌と化学療法 45巻13号, 2396-2398 (2018);
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症例は糖尿病性腎症で血液透析を導入されている54 歳,男性。S 状結腸癌の診断で手術を施行した。術後9 か月で多発肝転移を認め,FOLFIRI療法+panitumumab(Pmab)を開始し2 コース施行した。capecitabine+bevacizumabを15コース,Pmab単剤投与を27 コース施行した。途中,感染性心内膜炎に対して僧帽弁置換術,多発脳梗塞,糖尿病性壊疽に対する下腿切断術,肝転移内膿瘍に対する穿刺ドレナージ,多発大腸潰瘍による下血などでその都度投薬を中断した。その度に腫瘍の増大と腫瘍マーカーの上昇を認めたが,化学療法の再開により腫瘍の再縮小と腫瘍マーカーの抑制ができた。しかしPmabを27コース終了時にPDとなり,再発後42 か月で原病死となった。まとめ:血液透析患者における抗腫瘍薬の安全性や薬物動態に対するevidence は不足しており,十分なインフォームド・コンセント(IC)の下に慎重な投与が求められる。今回,重度の心疾患と糖尿病性の合併症を併発しながらも化学療法で長期間制御できた透析患者の1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2399-2401 (2018);
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緒言: 食道癌術後の再建胃管壊死は重篤な合併症の一つであり,再建手術は侵襲も大きく困難なことが多い。再建胃管壊死に対して二期的遊離空腸再建術を施行した症例を経験したので報告する。症例: 73 歳,男性。胸部食道癌に対して鏡視下食道亜全摘,胸骨後経路胃管再建術を施行した。術後31 日目に胃管壊死を認めたため手術を施行した。再建胃管抜去,壊死胃管切除および頸部食道瘻造設を施行した。二期的再建を考慮し,残存胃管を前胸部皮下に拳上固定しておいた。再手術後35 日目に二期的再建術を施行した。胸骨前経路遊離空腸再建を施行し,microsurgeryにより右内胸動静脈と血管吻合した。術後経過は良好であった。考察:胃管壊死は重篤な合併症であり外科的治療が必要であるが,消化管再建に関しては大半が回結腸や有茎空腸再建の報告であった。本症例では残存胃管を利用した遊離空腸再建を行うことができ,低侵襲かつより生理的な消化管再建を行うことができたと思われる。結語:胃管壊死後の胸骨前経路遊離空腸再建術は,有用な再建法の選択肢になり得ると思われた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2402-2404 (2018);
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症例は78 歳,男性。嚥下時違和感を主訴に受診し,内視鏡検査にて中下部食道に2 型の腫瘍と胃体上部後壁に0-Ⅱa病変を認めた。精査にて多発リンパ節転移,肺転移を認め,食道扁平上皮癌,Lt 2 型,cT3N4M1,cStage Ⅳb および胃癌,U,post,cType 0-Ⅱa,cT1N0M0,cStage Ⅰと診断した。切除不能と判断し,docetaxel,cisplatin,5-FU(DCF)療法を開始した。DCF 療法開始後4 日目に38℃の発熱を認めた。抗菌薬加療開始後も炎症・発熱が遷延するため,8 日目に胸部CT 検査を施行した。食道癌穿孔・縦隔炎・右膿胸と診断し,緊急胸腔鏡下縦隔ドレナージ術を施行した。ドレナージ術後10日目の胸部CT にて右胸腔内に遺残膿瘍を認めたため,CT ガイド下膿瘍ドレナージを追加した。加療により全身状態の改善を認め,術後31日目に軽快退院,術後49 日目にDCF 療法を再開した。化学療法中の食道縦隔炎に対し,外科的治療により化学療法を再開し得た症例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2405-2407 (2018);
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症例は70 歳,女性。糖尿病で近医に通院中,血便を主訴に受診し,下部内視鏡検査にて直腸に1/4 周性の2 型腫瘍を指摘され,精査加療目的に当科紹介となった。術前の血液検査にてHbA1c 10.2%と上昇しており,腹部CT 検査にて左副腎に25 mm大の腫瘤を認め,精査を施行した。ACTH低値,血中cortisol値の日内変動の消失,dexamethasone負荷による抑制がなく,尿中cortisol 高値であったため副腎性クッシング症候群と診断された。直腸癌と左副腎腫瘍に対して同時腹腔鏡下切除術を行う方針とし,腹腔鏡下左副腎摘出術を施行後,腹腔鏡下低位前方切除術,回腸ストーマ造設術を施行した。病理組織学的所見は,直腸癌がpap,pT1b(SM),pN0,cM0,fStageⅠ,副腎はadrenal cortical adenomaであった。術後はステロイド補充療法を行いつつ管理し,経過良好であった。副腎機能亢進状態での手術は,術後の急性副腎不全の危険性があるため周術期のステロイド補充療法が必要であった。
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癌と化学療法 45巻13号, 2408-2410 (2018);
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症例は63 歳,男性。近医で慢性C型肝炎に対してIFN+リバビリン併用療法を施行されたが,皮膚症状のため中止となった。スクリーニングのエコー,CT で肝S5 に2 cm大の腫瘍を指摘され,精査にてS5,S8,S3 に早期病変を認めたが,治療を希望せず経過観察とした。その後,外来フォロー中にPIVKA-Ⅱが59,994 mAU/mL と著明に上昇し,CT で S8 病変の増大および門脈浸潤(vp2),S3 に高分化型肝細胞癌を疑う所見を認めたが明らかな遠隔転移はなく,肝右葉切除術,肝S3部分切除術,胆嚢摘出術を施行した。術後3 か月目のCT で多発肺転移を認めたため,sorafenibを 800 mg/day で開始した。術後6 か月目のCT で肺転移の増大を認めsorafenib不応と判断し,regorafenib(120 mg/day)に変更した。術後 8.5 か月目のCT で肺転移の著明な縮小を認め,regorafenib継続とした。術後1 年,regorafenibへの変更後6 か月,肺転移はほぼ消失し,肝内再発なく経過している。門脈浸潤(vp2)を伴う多発肝細胞癌術後,早期の多発肺転移に対するsorafenibが不応となり,regorafenib投与でほぼCR に近い治療効果を得た1 例を経験した。
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癌と化学療法 45巻13号, 2411-2413 (2018);
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症例は78 歳,男性。右側腹部痛精査のため当院を受診した。精査の結果,胆嚢の底部病変は黄色肉芽腫性胆嚢炎(XGC),頸部病変は胆嚢腺筋腫症(ADM)と診断したが,いずれも胆嚢癌の可能性を考慮し開腹手術の方針とした。胆嚢全層切除を行い,切除標本の術中迅速病理組織検査にて頸部に胆嚢癌を認め,胆嚢管切除断端陽性であった。胆嚢床切除,肝外胆管切除,リンパ節郭清を追加した。病理組織学的検査では胆嚢頸部から胆嚢管にかけて腺癌細胞を認め,T3aN0M0,Stage ⅢAと診断した。同部位にADMは認められなかった。また,底部病変はXGCと診断した。本症例は胆嚢病変の診断に関して示唆に富んだ症例であると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2414-2416 (2018);
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ゲムシタビンとシスプラチンの併用療法(GC療法)は,切除不能胆道癌に対する標準治療として施行されている。一方で,重篤な有害事象を併発する症例も少なくない。2014年1 月〜2018年4 月までに18 例の切除不能・再発胆道癌に対してGC 療法を施行した。年齢中央値は67.5(53〜84)歳,性別は男性13 例,女性が5 例で,performance status は0 が15 例,1 が3 例であった。原発巣は遠位胆管癌9 例,肝内胆管癌3 例,乳頭部癌3 例,胆嚢癌が3 例であった。根治切除後の再発に対する投与が14 例で,再発部位は肝が9 例と最多であった。Grade 3 以上の有害事象は16 例にみられ,好中球減少が13 例と最も多かった。Grade 5 の有害事象はみられなかった。治療効果はCR 1 例,PR 1 例,SD 10 例,PDが6例で,奏効率11.1%,病勢コントロール率は66.7%であった。切除不能・再発胆道癌に対するGC 療法は有効な治療と考えられるが重篤な有害事象も多く,PS良好な患者に施行するなど慎重に適応を決定する必要がある。
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癌と化学療法 45巻13号, 2417-2419 (2018);
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症例は70 歳,女性。糖尿病の悪化と腫瘍マーカーの高値で紹介された。血液検査でCA19-9 の上昇を認めた。造影CT 検査で門脈から上腸間膜静脈への浸潤を伴う膵頭部癌と診断,局所進行切除不能膵癌と判断し化学療法を施行した。gemcitabine(Gem)4 コース,Gem+nab-paclitaxel(PTX)を19 コース投与した。投与中に好中球減少症で3 週のうち1週しか投与できず,60% doseの減量投与となった。60% doseでも腫瘍抑制効果がみられ,32 か月の生存であった。Gem+nab-PTXは安全および長期間使用することが可能であった。
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癌と化学療法 45巻13号, 2420-2422 (2018);
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症例は50 歳台,男性。前日からの腹痛を主訴に当院を受診した。腹部造影CT 検査で血性を疑う腹水貯留と胃体部大弯側と接する約4.0×5.0×4.5 cm 大の腫瘤を認め,周囲は被包化された血腫で取り囲まれていた。胃gastrointestinal stromal tumor(GIST)の破裂と診断し,同日緊急手術を施行した。腹腔内に250 mL 程度の血性腹水と胃体部大弯側に6〜7 cm大の腫瘤を認めた。手術は胃部分切除を施行した。免疫染色ではc-kit弱陽性,CD34 びまん性陽性で,遺伝子検索ではPDGFR-a exon18 D842Vに変異を認め胃GISTと診断された。高リスク症例ではあるがイマチニブ耐性のため,術後補助化学療法なしで経過観察とした。術後8 か月再発を認めず生存中である。破裂症例であり,今後も再発に注意が必要である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2423-2425 (2018);
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症例は70 歳台,男性。胃体上部小弯の胃癌に対して胃全摘術を施行した。術後病理診断はT3(SS)N2M0,StageⅢAであった。術後補助化学療法として,S-1内服を1 年間継続した。術後1 年6か月目のCT にて,肝S4 に30 mm大の単発肝転移が指摘された。術前化学療法後肝切除の方針とし,原発巣の免疫組織化学検査でHER2 status 2+,FISH陽性であったためcapecitabine+cisplatin+trastuzumab療法を2 コース施行した。効果判定はSDであり,肝S4 部分切除を施行した。術後病理診断は胃癌の転移性肝腫瘍であった。組織学的治療効果はGradeⅠb 相当であった。術後化学療法はcisplatinを除いたcapecitabine+trastuzumab療法を1 年間施行した。肝転移切除後1 年現在,無再発で経過している。
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癌と化学療法 45巻13号, 2426-2428 (2018);
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症例は40 歳,女性。右乳癌に対して乳腺部分切除術および腋窩郭清を施行した。最終診断は,T2N0M0,StageⅡA,mucinous,ly3,v0,ER 弱陽性,PgR 弱陽性であった。残存乳腺に放射線照射を行った後に術後補助療法を5 年間行い,その後は無治療で経過観察していた。手術から7 年後のCT 検査で両側肺転移を認め,気管支鏡下生検ではER/PgR/HER2=強陽性/強陽性/弱陽性の診断であった。一次内分泌療法を行ったところ,約3 年間の病状安定を得た。病状進行後に二次内分泌療法へ変更し,さらに3 年間の奏効を獲得した。その後letrozole単剤療法に切り替え,さらに3 年間腫瘍縮小を維持している。ホルモン受容体陽性乳癌の再発治療においては,再発までの期間や再生検によるホルモン受容体の発現状況の確認など内分泌療法の感受性を考慮した上で治療に当たることが重要である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2429-2431 (2018);
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症例は72 歳,女性。右乳房腫瘤を自覚し近医を受診した。精査加療目的に当院紹介となった。画像検査で右乳腺に比較的境界明瞭な腫瘤を認めた。針生検では間質に多形性の核を伴う紡錘形細胞が増殖しており,間質肉腫または悪性葉状腫瘍が疑われたため,確定診断を目的に乳腺腫瘤切除術を施行した。摘出標本の病理組織学的検査では,ほとんどが非上皮性の肉腫様であったが,一部に既存の乳管上皮を認めたため悪性葉状腫瘍の診断に至った。術後補助療法は施行せず術後2年間,無再発生存中である。針生検で葉状腫瘍と間質肉腫の鑑別を行うことは困難なこともあり,また遠隔転移例での予後は不良であることから,早期に摘出生検による確定診断を付けるとともに術後の厳重な経過観察が必要と考えられる。
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癌と化学療法 45巻13号, 2432-2434 (2018);
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症例は73 歳,女性。左乳房腫瘤を自覚し近医を受診し,精査加療目的に当院紹介となった。乳腺超音波検査にて,左EC 領域に不整形の低エコー腫瘤を認めた。同部位の針生検による病理組織学的検査では充実性に増殖する腫瘍を認め,免疫組織染色にてE-cadherin陽性,シナプトフィジン陽性,クロモグラニンA陽性,CD56 陰性であり,神経内分泌癌と考えられた。また,ER 強陽性,PgR 強陽性,HER2 陰性であった。CT 検査や骨シンチグラフィではリンパ節転移や遠隔転移を認めなかった。手術療法を優先し,単純乳房切除術およびセンチネルリンパ節生検を施行した。最終病理診断は神経内分泌癌(T2N0M0,StageⅡA,Luminal A-like)であった。術後は乳癌サブタイプを考慮し,内分泌療法を予定している。乳腺神経内分泌癌はまれである。他臓器からの乳腺転移の可能性を考慮し,画像精査を行うことが重要である。
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癌と化学療法 45巻13号, 2435-2437 (2018);
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HER2 陽性進行・再発乳癌に対する一次治療として,CLEOPATRA試験の結果からドセタキセル(DOC)+ペルツズマブ(PER)+トラスツズマブ(TRA)療法が推奨されている。今回われわれは,DOC+PER+TRA療法が著効した2 例を経験した。症例1 は40 歳台,女性。左進行乳癌,TxN3aM0,Stage ⅢC,Luminal-HER2 typeに対し一次治療としてDOC+PER+TRA を投与し縮小を得た後,Bt+Ax(Ⅱ)を施行した。組織学的治療効果判定はGrade 3 であった。症例2 は60歳台,女性。左進行乳癌,T4cN3cM1(LYM),Stage Ⅳ,HER2 typeに対し三次治療としてDOC+PER+TRA療法を施行した。cCR を得たため,Bt+Ax(Ⅰ)を施行した。組織学的治療効果判定はGrade 3 であった。2 症例ともDOC+PER+TRA 療法が著効し,原発巣切除が可能になった上,病理学的完全奏効を得ており,DOC+PER+TRA療法による予後の改善が期待された。今後PER+TRA 併用化学療法の適応拡大により,HER2 陽性乳癌のさらなる治療成績の向上が期待される。
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癌と化学療法 45巻13号, 2438-2440 (2018);
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イマチニブ抵抗性小腸gastrointestinal stromal tumor(GIST)に対して外科切除およびスニチニブ療法が有効であった1 例を報告する。症例は73 歳,女性。当院初診4年前に小腸GISTの初回手術を受け,以降GIST再発に対して4 回の切除を受けていた。経過中にイマチニブ耐性となり,5 回目の手術後も腹腔内に再発を認め,緩和治療目的に当科紹介初診となった。腫瘍による疼痛が強く経口摂取も不能であったため,症状緩和目的に腫瘍切除の方針となった。広汎小腸切除と播種巣切除を行い,肉眼的に遺残病変は認めない状態を得た。術後再発抑制のためスニチニブ療法を導入した。減量投与を要したが,術後3 年2 か月経過した現在,明らかな再発を認めず生存中である。再発GIST に対して減量手術と薬物治療を併用することで良好な成績が得られる可能性もあると思われた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2441-2443 (2018);
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症例は43 歳,女性。関節リウマチに対してメトトレキサート(MTX)を服用中であった。検診腹部エコーで肝腫瘤が疑われ紹介受診となった。CT で肝腹側に肝外結節性病変を認め,solitary fibrous tumorなどを疑い,確定診断および治療目的に腹腔鏡手術を施行した。腫瘍は腹壁にあり,肝と癒着していた。腫瘍癒着部の肝部分切除術を行った後,横隔膜の一部を含めて腹壁から腫瘍を切除した。術中迅速病理診断ではより悪性度の高い腫瘍が疑われたため,切除断端にあたる心嚢の一部を追加切除した。術後合併症なく第6 病日に退院した。最終病理診断は悪性リンパ腫で,病歴を考慮しMTX 関連悪性リンパ腫と最終診断した。MTX中止の下,化学療法を施行し術後10 か月経過した現在,再発を認めていない。腹腔鏡による心嚢へのアプローチは,低侵襲性に加え腹腔鏡の拡大視効果により,安全な手術を可能とすると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2444-2446 (2018);
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症例は66 歳,男性。S 状結腸癌,肝転移術後経過観察中の造影CT 検査で胃脾間膜付近に腫瘤陰影が出現し,経時的な増大を認めた。経胃EUS-FNAでも確定診断を得られなかったため,大網腫瘍切除術を行った。切除標本のHE 染色では太い膠原繊維束の増生を伴い,紡錘形核を有する線維芽細胞様細胞を認めた。また,免疫染色でGIST,平滑筋腫瘍,神経6腫などの消化管間葉系腫瘍が除外され,病理組織学的にデスモイド腫瘍と診断された。腫瘍切除後2 年6か月時点で無再発経過観察中である。デスモイド腫瘍は局所に浸潤性を有し再発傾向を示すが,転移を来すことはほとんどないため,増大する場合は十分な切除断端を得た上での外科的一括切除が原則である。大網原発のデスモイド腫瘍はまれであるが,増大傾向を示しかつ切除可能な大網腫瘍に対し確定診断を得るためにも確実な切除術を行うことの意義は大きいと思われる。
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癌と化学療法 45巻13号, 2447-2449 (2018);
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症例は90 歳,男性。胃癌に対し胃全摘術を施行し最終診断はtub2,pT4a,pN1,sP0,pCY0,sM0,Stage ⅢAであった。術前血清CA19-9値が1,326 U/mL と高値であったが術後速やかに低下した。血清 CA19-9 値は術後 2 か月で再上昇を認めたが,画像検査では再発は指摘できなかった。術後10 か月目に嘔吐で受診し,腹部CT 所見でS 状結腸腫瘍による腸閉塞が疑われた。下部消化管内視鏡検査でS 状結腸に全周性の狭窄を伴う腫瘍を認め,生検で分化型管状腺癌と診断された。CT,消化管造影でS 状結腸内に複数の腫瘍の存在が疑われ,S 状結腸切除術を施行したところ切除標本では合計四つの腫瘍を認めた。病理結果ではいずれも強い核異型を有する腺癌細胞を認め,4 病変とも胃癌の組織像に非常に類似していた。また免疫染色の結果,胃癌,大腸癌ともにCA19-9が強陽性で,CA19-9産生胃癌の多発結腸転移と診断した。結腸切除術後も血清CA19-9値は速やかに低下した。
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癌と化学療法 45巻13号, 2450-2452 (2018);
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肝十二指腸間膜背側から総肝動脈背側領域の一塊となったリンパ節のみに転移を認めた進行胃癌切除例を経験したので報告する。症例は81 歳,男性。心窩部痛精査の過程で胃体下部小弯にBormann 3 型胃癌を診断された。術前CT,PETCT検査で胃の主病変とともに膵頭部頭背側に3.5 cm 大の腫瘤性病変を認め,SUVmax=8.5 のFDG 高集積でリンパ節転移が疑われた。通常開腹下で幽門側胃切除,D2+No. 12 bp,13a,8p リンパ節郭清,胆嚢摘出術を行い,Roux-en-Y(R-Y)型に再建した。術前指摘されていたリンパ節を含めen bloc に切除し,R0,根治度B であった。病理検索ではpoorly differentiated adenocarcinoma,por1,T3(ss),INF b,ly1,v0。リンパ節は一塊となったNo. 12 bp,13a,8p に転移を認めたが,他の領域のリンパ節にはまったく転移を認めなかった。術後経過は良好であった。本人の希望で術後補助化学療法は施行しなかったが,術後6 年を経過し明らかな再発を認めていない。
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癌と化学療法 45巻13号, 2453-2455 (2018);
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大腸癌の再発を切除以外の治療で治癒させることは少ない。今回,切除以外の治療で治癒した3 例を経験したため報告する。症例1: 患者は66 歳,女性。下部直腸癌,tub2,T2N0M0に対しISR を施行した。初回手術より2 年6か月後に仙骨右側S1 からS3 に及ぶ骨盤内再発を認め,50 Gy の放射線療法後CR となった。引き続きmFOLFOX6+ベバシズマブ療法を1 年間施行し,その後6 年間CR を保っている。症例2: 患者は47 歳,男性。下部直腸癌,tub2,T3N2M0に対し術前5-FU+ロイコボリン併用で40 Gy のCRT後LARを施行した。術後1 年で大動脈周囲リンパ節転移が出現し,mFOLFOX6+ベバシズマブ療法を2 か月施行しCR となった。その後さらに5 か月間継続投与したところ,吻合部に瘻孔が出現した。抗癌剤は中止したが,現在まで6 年間CR を保っている。症例3: 患者は56 歳,男性。肛門皮膚転移と膀胱浸潤のある下部直腸癌,muc,T4bN0M1aに対しTPEを施行した。術後1 年6か月で腸閉塞になり,骨盤内再発を認めた。小腸バイパス術後カペシタビン併用のCRT を46 Gy施行しCR となり,5 年経過している。治療成功の鍵について,症例集積して検討する必要があると思われた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2456-2457 (2018);
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食道癌術後に遠隔転移を生じた症例の予後は極めて悪く,外科治療の適応となることはまれである。しかしわれわれは,食道癌根治切除後の肺転移に対し二度の肺切除を行い,長期生存を得た症例を経験したため報告する。症例は62 歳,男性。食道癌[CeUt,cT4(気管)N1M0,cStage Ⅳa]の診断で化学放射線療法を施行した。cT3 へとdown stagingが得られ,右開胸開腹食道亜全摘後縦隔経路胃管再建術および頸部リンパ節郭清術を施行した。術後診断はpT2N1M0,fStage Ⅱであった。術後5か月で右上葉に肺転移を認め,右肺S2 部分切除術を施行した。初回手術後1年2か月で左肺に2 か所の転移を認め,左肺楔状切除術(S3,S6)を施行した。初回手術後8年3か月で他病死した。食道癌後後の他臓器再発は肺転移が最も多く,予後不良である。しかし外科的切除が予後改善に寄与する症例もあり,考慮すべき治療法の一つと考える。
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癌と化学療法 45巻13号, 2458-2460 (2018);
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症例は73 歳,女性。下腹部痛,腹部膨満感を主訴に近医を受診,下腹部に腫瘍性病変を認め当院紹介となった。造影CT 検査で,膀胱右前壁に壁肥厚および虫垂先端に連続する約6 cm 大の内部に壊死性変化を疑う腫瘤を認めた。虫垂腫瘍膀胱浸潤や膀胱腫瘍虫垂浸潤が疑われ手術の方針とした。約1 か月後の入院時に施行した造影CT 検査にて虫垂先端の腫瘤は著明に縮小していたが膀胱の壁肥厚は残存しており,虫垂に造影効果を受ける腫瘤を認め,虫垂癌もしくは膀胱癌と考え手術を施行した。術中所見では虫垂先端が膀胱壁と一塊になっており,膀胱壁を含めた虫垂切除を行い,虫垂中部に約1 cm 大の腫瘍を認めた。迅速病理検査にて虫垂癌と診断されたため,回盲部切除+D2リンパ節郭清を追加した。病理組織学的検査で虫垂癌,pT2N0M0,pStageⅠの診断,虫垂癌による閉塞性虫垂炎で虫垂が穿破し,腹腔内膿瘍を形成,膀胱に穿通したものと考えた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2461-2463 (2018);
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症例は71 歳,男性。上腹部痛,食思不振を主訴に当院内科を受診した。上部消化管内視鏡検査で1 型進行胃癌と診断され,当科紹介となった。腹部造影CT では胃体中部大弯に壁肥厚を認め,横行結腸に浸潤を疑う所見が認められた。また,大網に播種を疑う結節を認め,大動脈周囲リンパ節腫脹が認められた。胃癌横行結腸浸潤の診断で,横行結腸合併切除を伴う幽門側胃切除,D2+No. 16b1 郭清を施行した。腫瘍は横行結腸に浸潤しており,大網には播種結節が認められた。肝転移は認められず,腹水細胞診は陰性であった。術後経過は良好で,第16 病日に退院した。病理組織学的には低分化腺癌の所見で,腫瘍は横行結腸に浸潤しており,瘻孔を形成していた。術後化学療法としてS-1 を術後4 年まで継続した。術後9 年経過した現在,再発は認められていない。
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癌と化学療法 45巻13号, 2464-2466 (2018);
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症例は65 歳,女性。同時性肝転移を伴う上行結腸癌[T3N1M1(H2),Stage Ⅳ]と診断し,結腸右半切除術を施行した。11 個の肝転移に対して,5-FU 肝動注療法を施行した。縮小率28.9%と奏効していたが,10 か月施行時に肝S2 の病変が増大した。全身化学療法としてIRIS療法を施行したが奏効せず,拡大肝外側区域切除を施行した。さらに4 か月後,肝S6 の再発病変に対して肝後区域切除を施行した。その9 か月後に肝S1 の肝転移巣を指摘され,CapeOX,mFOLFOX6 療法を施行したが,標的病変が増大し,肝S1 部分切除を施行した。さらに4 か月後,肝S8 に再発を来し,肝S8 部分切除を行った(原発巣切除術後7 年)。以後5年5か月,再発を認めていない。本症例は分子標的薬導入以前の症例であり,肝動注療法,全身化学療法,4 回の肝切除を行うことで12 年5 か月の長期生存を得た。大腸癌肝転移に対する肝動注療法,複数回肝切除の意義を示す症例として報告する。
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癌と化学療法 45巻13号, 2467-2469 (2018);
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大腸癌穿孔は,救命を優先する一方で癌の根治性も考慮した手術術式の選択が必要となる。当科で手術介入した大腸癌穿孔15 例を対象とし,穿孔形態によって遊離と被覆の2 群に分け2 群間で後方視的に比較した。2 群間(遊離:被覆)の比較では,形態は11:4 例,周術期死亡例は2:0例,再発は3:0 例,SOFAスコアが1.72:1.0,術後化学療法施行率55:75%,開始時期59.4:40.3日,術後PMX施行例6:0例であった。再発例,周術期死亡例,術後PMX施行例はすべて遊離穿孔症例であった。遊離穿孔症例では,術前から敗血症になりやすく周術期の状態が不安定で術後化学療法を行えない,開始時期が遅延しやすいことから再発率が上昇する可能性がある。被覆穿孔例は,根治性をより考慮した術式選択と遅延なく術後化学療法を行うことが重要であると考える。
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癌と化学療法 45巻13号, 2470-2472 (2018);
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症例は82 歳,女性。左乳房腫瘤を主訴に受診し,精査にてHER2 陽性局所進行乳癌と診断した。eribulin,trastuzumab,pertuzumabの併用療法により切除可能となり,病理学的にGrade 2b の効果が得られた。eribulin,trastuzumab,pertuzumabの併用療法は比較的安全で有効な治療と考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2473-2475 (2018);
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症例は48 歳,女性。嘔吐を主訴に当院を受診し,精査にて乳癌結腸転移と診断した。乳癌の結腸・直腸転移は予後不良であり化学療法が主な治療と考えられるが,病勢によってはホルモン治療も選択肢の一つとして考慮できると考えられた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2476-2478 (2018);
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症例は78 歳,男性。下痢を主訴に受診し,肝転移を伴う直腸癌と診断された。術中所見で肝転移は切除不能と診断され,局所制御のため超低位前方切除術を施行した。術後にmFOLFOX6+bevacizumab 療法を5 コース,FOLFIRI+bevacizumab療法を2 コース施行したが,どちらも奏効しなかった。後方視的に施行した次世代シークエンサーによる遺伝子変異解析パネル検査(415遺伝子)では,原発巣に高頻度の体細胞変異を有するhypermutationであったことが判明した。大腸癌におけるhypermutation の多くはミスマッチ修復遺伝子の異常を有し,5-fluorouracil 系抗癌剤が無効である可能性がある。一方で,免疫チェックポイント阻害薬が有効である可能性がある。薬物療法前に遺伝子変異解析パネル検査を行うことで,個々の患者に最適な治療法を提案できる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 45巻13号, 2479-2481 (2018);
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症例: 42歳,女性。主訴:左血性乳頭分泌。現病歴:約10 年前に血性乳頭分泌を指摘された。精査施行し,乳管内乳頭腫であった。しかし継続的に分泌を認めていた。今回,再度針生検を施行したところ浸潤性乳管癌の診断となった。経過: 乳房超音波検査では,左乳房全体に低エコーの内部不均一の不整形低エコー腫瘤を認めた。乳房MRI検査でも左乳房全体に造影結節を認めた。Bt+SN を行い,solid papillary carcinoma with neuroendocrine differentiation,T2N0M0,stageⅡA,ER(+),PgR(+),HER2 0 であった。まとめ:今回の症例では経過中でも何度か針生検などの精査をしてきたが,このように長期経過を要してしまった。また,長期の血性乳頭分泌は神経内分泌型乳癌の特徴的な所見であり,十分にこの疾患を念頭に置き経過観察していくことが重要と思われた。
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癌と化学療法 45巻13号, 2482-2484 (2018);
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症例は70 歳,男性。右下腹部違和感にて当院を受診し,下部消化管内視鏡検査にて虫垂口を中心に絨毛性腫瘍を認めた。腹部CT 検査では虫垂から盲腸内に24 mm 大の腫瘤と虫垂の腫大を認め,虫垂腫瘍に伴う閉塞性虫垂炎と診断し,盲腸部分切除術を施行した。切除標本では虫垂中央を中心とした40 mm大の隆起性病変で,病理組織検査にて固有筋層への浸潤を伴う高〜中分化腺癌と診断した。リンパ節郭清を伴う追加切除を勧めたが手術や化学療法を拒否したため,慎重な経過観察を行っていたが,術後 5 か月目にS4/8 に肝転移を認めた。化学療法を施行後,他院紹介にて肝部分切除術を施行した。肝切除術後1 年間補助化学療法を施行し,再手術後約2 年4か月再発・転移なく経過している。原発性虫垂癌術後の早期再発症例の報告は比較的少ないため報告する。