癌と化学療法
2019, 46巻Supplement I
Volumes & issues:
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執筆規定
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特別寄稿【一般社団法人日本在宅医療学会】
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新学会: 日本在宅医療連合学会に期待すること−日本の「風土・習慣」にあった在宅医療を!−
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description -
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特集【第29回 日本在宅医療学会学術集会】
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床ずれは自分ごと−間違いだらけの床ずれ対策: 正しく基本を知ればもうエキスパート−
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description褥瘡は主に寝たきりの人に発症するが,寝たきりはすべての人の人生最終章の状態である。褥瘡の発症には圧迫,ずれ,低栄養など複合的に関与しており,医療・介護に直接関与するすべての人が正しく理解対応しないと苦痛を伴う傷である。自分ごととしての認識が重要である。局所療法では在宅で行える方法が大切であり,早期の状態では観察重視,表皮剥離時には真皮の保護,感染期には開放ドレナージが,そして壊死組織を効率的に安全に除去し,できるだけ早く肉芽を盛り上げて表皮化させる。これらの基本を理解・実践することが大切である。 -
在宅医療における化学療法中止および差し控えの終末期生活への影響について−全国在宅医へのアンケート調査の最終報告−
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description地域緩和ケアの視点による化学療法の中止,差し控えの判断基準・提言案作成プロジェクトにおける判断基準・提言を実現するための科学的根拠となるエビデンスを得るための資料の一つとして,各固形がん腫についての抗がん剤の中止とその後のQOL,死亡までのイベントなどについて,全国の在宅がん治療にかかわっている医療施設へのアンケート調査を企画した。 -
京滋摂食嚥下を考える会介護食器プロジェクト−地域伝統工芸・食文化と作業療法とのコラボレーション−
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description京滋摂食嚥下を考える会は地域の食支援体制を構築することを目的に設立され,地域伝統工芸との協業により晴れの日の食事にふさわしい介護食器の開発に取り組んだ。本開発プロジェクトには作業療法士,料亭の女将,デザイナー,陶芸家,漆器老舗といった地域の多職種の人に参加いただいた。各業界におけるルールを尊重しつつ食事を違和感なく楽しめることに主眼をおいて,デザインをすり合わせ機能を保ちながらも京焼・京漆器による意匠をこらした介護食器を完成した。摂食嚥下障害をもつ対象者と家族にこの介護食器を用いた松花堂弁当を提供したところ積極的な摂食がみられ,当事者より高い評価を得た。嚥下食とともに生活する対象者にとって,晴れの日の食事を楽しむ機会は重要であるにもかかわらず,極めて少ないのが現状である。今後より多くの人に食べる喜びを届けられるよう企業連携など発展を検討中である。 -
地域緩和ケアの普及に向けて:人材育成を考える−在宅医と受け皿病院の立場から−
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description当院では1994 年からがん末期の在宅緩和ケアを中心に,訪問診療を基幹病院からの受け皿病院として行ってきている。受け皿病院緩和ケア医として,また在宅緩和ケア医として,地域緩和ケアの普及に向けた課題を報告する。 -
川崎市における地域リハビリテーションの展開
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description川崎市においては,1996年より在宅障害者のための地域リハビリテーションを展開している。2000 年には川崎市における総合的な地域リハシステム構想案が策定され,その実現に向けて活動が続けられている。地域リハビリテーション構想は在宅生活の質の向上,維持,あるいは生活スタイルの再構築のために生活モデルのリハビリテーションを提供しようとするものである。基本理念として「総合性」,「専門性」,「地域性」を掲げ,その中心的事業として在宅リハビリテーションを展開している。川崎市の独自財源で委託し,行政と民間が連携して展開することとし,総合的な地域リハシステムのなかで地域リハビリテーションを実践する上で最も重要な事業に位置付けている。 -
ALS患者に対して「社会参加」を目標に掲げた在宅でのリハビリテーション
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis: ALS)患者は,病状の進行に伴い濃密な医療と身体的なケアが必要となっていくことから,社会参加に対する配慮が疎かになる傾向がある。さらに地域で医療・介護を担当するチームでは,支援の担当者の多くが,ALS 患者のリハビリテーションのための知識などが蓄積されにくい。そこでALS 患者への支援を展開するために,当センターへ助言を求める要請がある。今回,ALS 患者の1 例について,「社会参加」の継続を支援するために,在宅リハビリテーションを実施した。地域の支援者と密に連携しながら,身体機能や活動の変化に合わせて「シーティング」,「コミュニケーション機器」,「リフター」のそれぞれの分野に対して,当センターの専門性を発揮し,この症例の社会参加の継続を支援した経過を報告する。 -
川崎市における在宅リハビリテーションとそのマネジメント
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description川崎市では,1996 年より在宅障害者のための地域リハビリテーションを展開している。そのなかで中心的な役割を担っている制度が,川崎市で実施している在宅リハビリテーション事業である。在宅リハビリテーションでは,リハビリテーション科医師,作業・理学療法士,臨床心理士,リハビリテーション工学士などのリハビリテーション領域の専門職がチームとなり,対象者が実際に生活している場において評価,計画立案を行って,生活モデルのリハビリテーションを実施する。このような多くの専門職の協業的アプローチにおいては,リハビリテーションマネジメントが重要な役割を果たしている。本稿では,川崎市で実施している在宅リハビリテーション事業におけるマネジメントについてソーシャルワーカーの立場から説明する。 -
生活・QOL を支える在宅リハビリテーション−川崎市での取り組み−生活を拡げる住宅改修・福祉用具
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Descriptionわれわれは,地域リハビリテーションの理念に基づき在宅リハビリテーションを実施している。われわれのチームは,リハビリテーション科医師,理学療法士,作業療法士,臨床心理士,保健師,ソーシャルワーカーにより構成され,多職種協業型チームワークにより活動している。最初にチームで地域の当事者宅を訪問し,様々なニーズや潜在的なバリアの原因を把握する。次にあらゆるリハビリテーション技術と社会資源を活用して,よりよい生活を実現することをめざしている。障害をもった人々が生活空間を安全に移動し暮らせるように,住宅改修や福祉用具の導入を彼らに助言している。そして関心が社会参加に向かうように支援している。今回,身体機能回復へのこだわりから「今後,どうよりよく生きるか」に気持ちを切り替え,社会参加を積極的に行うようになった頸髄損傷の女性を紹介する。現在この症例は,障害もつ人々の外出を支援するボランティア活動を積極的に行っている。 -
コントロール不能な高カルシウム血症を合併した悪性エナメル上皮腫の1 例
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description高カルシウム(Ca)血症は癌患者の約20〜30%に随伴するとされ,癌診療において比較的多く遭遇する合併症である。高Ca 血症は意識障害などの原因となり,さらに重症例では腎不全を来し致死的となる。今回われわれは,悪性エナメル上皮腫にコントロール不能な高Ca 血症を合併し,致死的転機をたどった症例を経験した。本症例では高Ca血症が在宅期間を短縮しており,医療者側が高Ca 血症の早期発見やコントロール改善につながる知識を習得することで在宅期間の延長をもたらすと考えられた。また,悪性腫瘍の治療のみでなく合併症である高Ca 血症に対する集学的治療をいつまで行うか検討することで,看取り場所の選択肢が広がる可能性があると考えられた。 -
終末期がん患者のセクシュアリティについての苦悩に医療者は備えているか?
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description緩和ケアの目標はがん患者・家族の理想の生活を支えることであるが,医療者は目の前のがん患者のニーズをすべて聞き取れているとは限らない。入院患者の様々な苦痛は相手や場面を選んで表出される。そして隠された苦悩の代表的なものはセクシュアリティの問題ではないだろうか。がん患者のセクシュアリティの苦悩はふさわしい相手がいなければ表出されることはないと予想される。医療者は患者・家族のセクシュアリティの問題に対して準備をしているだろうか?今回われわれ緩和ケアチームは,入院中に性についての発言があった終末期がん患者とのかかわりから現況調査が必要と考えた。 -
ケミカルコーピングに関する後方視的観察研究
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Descriptionケミカルコーピングは乱用や依存の初期段階との考え方もあり,ケミカルコーピングの頻度や訴え,危険因子を把握することが重要である。本検討では緩和ケアチームに新規依頼となったオピオイドを使用している549 名を対象とし,後方視的に観察研究を行った。その結果,549名中13 名(2.4%)の患者でケミカルコーピングを認めた。訴えの内訳として,6名(46%)で気分が楽になるから,2 名(15%)で不安だから,2 名(15%)で眠れるから,2 名(15%)で何となく,1名(8%)で落ち着くからというような割合であった。ケミカルコーピングと診断された各々の患者の特徴としては,余命3 か月以内,1 年以上のオピオイド内服期間,1 年以上の疾病罹患期間,不安や譫妄,抑うつなどの精神症状を高頻度に有していた。また良性疾患の1 名は,オピオイド依存への移行を認めた。 -
在宅と緩和ケア病棟の関係は変わるのか−今回の診療報酬改定の影響−
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description2007年に施行されたがん対策基本法とその後の各種制度改革により,癌患者の在宅療養や在宅緩和ケアは充実しつつあるが,2018年の診療報酬改定では,緩和ケア病棟における待機日数と在宅復帰率についての施設基準が組み込まれたことが大きな特徴といえる。2013〜2017 年の5 年間における当院緩和ケア科の入院患者数は3,835 名で,このうち一般病棟は2,414 名,緩和ケア病棟は1,421 名であり,在宅復帰率は全体で27.5%であったが,一般病棟からの在宅復帰率が891 名(37%)であったのに対し,緩和ケア病棟からは163名(11%)であった。今後,緩和ケア病棟の求められる役割は変わっていくと思われ,待機日数を短くし,在宅診療を促進していく対応力の高さが求められる。大切なのは患者,家族の状況,希望に応じて速かに療養の場の選択が行える体制の構築であり,普段からの地域の連携クリニックとの信頼関係を保ちつつ診療の継続性を重視して,自家の訪問診療体制の強化をめざしている。 -
訪問看護における診療の補助技術の実践状況とトラブル経験の実態
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description訪問看護における診療の補助技術の実践状況とトラブル経験について質問紙調査を実施した。結果,膀胱留置カテーテルの交換・管理は実施頻度,トラブル経験ともに最も高く,腹膜透析,がん化学療法は実施頻度とトラブルは少ないが実施時の困難度は高かった。訪問時の即時判断と実践の場面で不安を感じる者が多く,地域での訪問看護提供体制の均てん化や訪問看護師の実践向上のための取り組みの必要性が示唆された。 -
地域医療連携室実習での学習成果
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description本研究の目的は,地域医療連携室実習での学生の学習成果を明らかにすることである。研究対象は,A大学看護学科に在籍する学生のなかで,平成28 度病院の地域医療連携室実習を終え研究協力の同意が得られた学生である。データ収集は,学生8 名にインタビューガイドを用いた半構成的面接法を用いた。分析は「地域医療連携室実習での学習成果」に関する記述を抽出し,意味内容の類似性に基づきカテゴリー化した。その結果,地域医療連携室実習での学生の学習成果は【短時間で患者・家族の思いを引き出す信頼関係づくり】,【患者・家族が望む退院後の生活に向けての支援】,【多職種と効果的に連携した退院支援】であった。地域医療連携室実習での学習成果は,入院早期から退院後の個別性の高い生活を見据えて看護を実践し,退院後の支援体制を創ることであった。 -
療養場所の選択と地域性
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description秋田県内の地域医療格差について症例を基に考察した。患者は85 歳,女性。由利本荘・にかほ地区の総合病院へ救急搬送,右下肢急性動脈塞栓症に血栓除去術施行後,症状改善せず右下肢切断術を要したが秋田市内の家族が右下肢切断術を拒否,秋田市内へ転院を希望し,入院継続となった。下肢症状が進行し,在宅医療が難しい当該地区では入院継続が一般的だが,秋田市では在宅医療で対応できる。地区の比較で前者は病院への依存度が高く軽度状態変化で総合病院へ救急搬送が多く,後者は在宅医療体制が整い入院から在宅〜福祉施設での療養に移行でき緩和ケアも可能である。高齢化と介護力低下も問題である地域の貴重な医療福祉資源を有効活用するため,地域包括ケアシステムの充実が大切である。地域包括ケアシステムに対する地域住民の理解が不可欠であり,今後はその啓蒙が重要になっていくと考えられた。 -
緩和ケア病棟退院後に在宅看取りができた症例の検討
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description近年,緩和ケア病棟にも在宅療養支援が求められるようになっている。当院緩和ケア病棟では患者家族の希望に応じた退院支援を行っており,2016年4 月からの2 年間で入院患者数536 例,自宅退院患者数104 例(自宅退院率19.4%)であった。自宅退院患者のうち在宅看取りができた30 例を対象症例とし,適切な退院支援や在宅看取り支援について検討した。背景因子としては女性による介護,オピオイド未使用は在宅看取りをしやすくする要因の可能性があった。在宅看取りは特定の医療機関ではなく,地域の18 施設と広く連携していた。緩和ケア病棟に入院しても退院を希望する理由として,病状の理解が進んだこと,自宅のよさを改めて感じたことがあげられた。退院後在宅看取りまでの期間は中央値14 日と短く,病院と在宅医療チームとの間で緊急入院の受け入れが可能,予後迫る状態での退院が可能という信頼関係に基づく連携が不可欠である。 -
高齢者施設における看取りについて
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Descriptionわが国ではこれまで自宅における死亡が減少し,病院における死亡が増加する傾向にあった。しかし,近年住み慣れた自宅や老人施設で最期を迎えたいと希望する高齢者が増えてきている。われわれはこれまで10 年間にわたり訪問診療を行っており,75 歳以上の後期高齢者のうち152人の看取りを行った。死因としては老衰が87 人と一番多く,施設としては看護師が常駐する有料老人ホームが124人と最多であり,入居から死亡までの期間は平均3 年3か月であった。施設での看取り件数は年々増加傾向にあることも明らかになった。今後われわれは,「かかりつけ医」として自宅や高齢者施設など,病院ではなく地域での看取りを行う機会が増えると思われる。 -
地域基幹病院における在宅療養後方支援制度の活用と在宅療養に関する報告
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description在宅療養後方支援制度は平成26 年度の診療報酬改定において,緊急時の在宅療養患者の後方ベッドの確保を目的として新設された制度であり,在宅療養支援診療所による訪問診療を受けている患者,病院,在宅医の三者で契約を行い,緊急入院の必要が生じた際に入院できる病棟を確保する制度である。神奈川県立足柄上病院は2014 年4 月から同制度を運用し,2018 年5 月まで計215名が登録,156名が死亡した。死亡患者156 名のうち,在宅看取り77 例(49.4%),わが国の2016年の人口動態調査における自宅死の割合(13.0%)と比較して高率だった。また,悪性疾患においては後方支援導入から死亡までの期間のうち,半分以上を在宅で療養している患者が多数であった。病院で看取りとなった症例においても最後の入院から死亡までは平均18 日,中央値12 日であり,亡くなる直前まで在宅で療養できている症例が多数であった。 -
在宅での看取り−恐怖を感じない家族の看取り−
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description本研究の目的は,在宅看取りを行った元家族介護者のなかで看取りに関する不安や精神的負担を感じず看取れたケースより,精神的負担軽減の要因を明らかにすることである。方法は在宅で看取りを行った家族主介護者を対象に半構成的面接調査を行った。質問項目に「死に対する恐怖」があり,「恐怖はまったくなかった」と答えたものおよび,在宅看取りに対する不安はまったくなかったとインタビュー中に話していた者を「看取りの不安や精神的不安がない者」とした。対象となったケースは1 件で,分析はSteps for Coding and Theorizationを用いた。在宅での看取りに関して,(1)死後も生きているという他界観,(2)自身の他界観を大切にしてくれる担当医の存在,(3)治療の自己選択・拒否権,(4)診療所へのアクセスのしやすさ,の理論記述が現れた。在宅看取りの場合,介護者の他界観を無視するよりは推奨するほうが不安を低減する可能性がある。 -
小児在宅医療における薬剤師の役割−親へのインタビュー調査より−
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description在宅で過ごす医療的ケア児が増加傾向にあるが,訪問薬剤師のかかわりはまだ少ない。訪問薬剤管理指導の制度について知らされていないため,服薬に関する困りごとがあっても親が試行錯誤しながら行っている。そこで筆者は,医療的ケア児を介護している親15 名へのインタビューを行い,服薬や薬剤師へのニーズを調査した。親からは訪問薬剤管理指導など制度を教えて欲しい,薬の服用方法,薬の配達に関する要望が多かった。このような声に応えるために,薬剤師には相談や制度の活用など有益な情報の発信,病院・薬局が連携し,地域で親子を支援する体制作りが求められる。 -
在宅患者訪問薬剤管理指導を必要とする小児科患者の調剤の状況−小児科患者に対する薬剤師の対物業務の意義−
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description近年の小児医療の進歩によって重症の難治性疾患の小児も成長し,医療的ケアを継続しながら自宅で過ごす機会も増えたが,患児らの複雑な処方に調剤報酬が見合わないことが,多くの薬局が積極的にかかわれていない状況を招いている懸念がある。この状況を,処方箋の内容から定量的に議論できるよう調剤業務の負担を指標化した。小児在宅医療における薬局の負担の本質は,ハイリスク薬の多剤併用および小児用製剤がないことの他に,重量物の運搬を現場の薬剤師の労力でカバーしていることであり,薬剤師の業務が対物から対人へ転換している時に,小児科患者の訪問薬剤管理指導における対物業務の重要性を明らかにした。 -
薬物療法の専門家としての薬剤師の思考形態−多疾患併存の在宅リウマチ患者の場合−
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description高齢の関節リウマチ患者は増加しているが,多疾患を抱える高齢患者は多剤併用となりがちで,生理機能の低下から副作用を招きやすい。さらに独居では,リウマチの活動性を抑えることがかえってADLの低下を招き,在宅生活を困難にすることもある。多疾患併存の独居高齢リウマチ患者について,血液検査の情報から有害事象の徴候を察知し,早期連携で重篤化を防いだ症例を通じ,3 年間の臨床経過のなかで炎症が薬効・副作用に影響を与えた三つの事象(低アルブミン血症,慢性心不全,脱水)について,在宅医療にかかわる薬剤師に求められる思考形態を示す。 -
生物学的製剤を導入し多職種連携の訪問診療とともに奏効した関節リウマチの1 例
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description症例は50 歳,女性。他院で関節リウマチと診断されたが医療拒否(生物学的製剤を拒否)により悪化,関節痛により歩行困難の状態となった。医師,看護師,理学療法士らによる訪問診療チームをつくり,生物学的製剤の導入と自己注射の指導,リハビリテーション導入を行い患者の状態は少しずつ改善した。関節リウマチ患者をサポートするには患者参加型・訪問医療チーム,IPW(多職種連携)が重要であると考える。 -
在宅医療推進における薬局の機能分化に対する一考察−在宅医療における高度薬学管理機能について−
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description薬剤師が訪問する在宅患者は多様な患者像である。一般に患者は,高齢者の慢性疾患,小児・障がい児の在宅患者,がんの緩和ケアを受けている患者に分かれる。このような在宅患者から薬局に様々な在宅医療の依頼がある。本来であれば,医療提供施設である薬局はどのような患者でも受け入れなければならないが,薬局の体制によって処方箋の受け入れを断るケースが少なからずある。在宅医療に参画する薬局は,1) 薬剤師の人員,2) 無菌調剤室の設備,3) 医療用麻薬の備蓄,4) 医療材料の備蓄などの体制を整備する必要がある。しかしながら,薬局開設者の意思,薬局の規模,薬剤師の経験や地域性などが様々なので,すべての薬局が同じように在宅医療へ参画することは不可能である。今後,医療依存度の高い在宅患者が増えることが想定される。医療依存度の高い在宅患者では,薬剤師にも高い臨床経験が必要であり,薬局の設備や備蓄医薬品にも大きな負担がある。そのため医療依存度の高い在宅医療に対する薬局の評価は,高度薬学管理機能として考える必要がある。 -
かかりつけ機能を中心とした在宅訪問体制の構築
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description2015年10月に厚生労働省より公表された「患者のための薬局ビジョン」には,三つの薬局機能が示され,その一つに在宅医療が明記されている。1994年に薬剤師の在宅患者訪問薬剤管理指導が制度化されたが,それ以前より当薬局では服薬や生活の状況が気になる患者に対し訪問活動を行ってきた。その経験を踏まえ制度化後に在宅患者訪問薬剤管理指導を取り組むに当たり,かかりつけ薬局として処方箋調剤・健康相談活動等の様々な業務を担うなかで,在宅医療を推進するための体制について検討した。薬剤師の経験年数や勤務体制,効率性・生産性,かかりつけ薬局としての役割などについて考慮した結果,患者宅1 件につき担当薬剤師2 人制とすることで在宅医療への支援体制を構築した。また,薬局全体として外来での処方箋調剤と並行して在宅訪問の業務にかかわり,通院から在宅までを切れ目なく連続して患者をフォローしていくことが,地域におけるかかりつけ薬局としての役割を担うことにつながると考えた。 -
在宅療養患者の栄養状態と訪問栄養指導の必要性
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description当クリニックにおいて,管理栄養士による訪問栄養指導を開始するに当たり,在宅療養患者の栄養状態を調査した。対象は2018 年5〜7 月の3 か月間に訪問診療を開始した在宅療養患者76 名で,年齢は75 歳以上が85.5%を占めた。血清albumin(Alb)値を用いて栄養評価を行い,35 名(46%)が中〜高リスクの判定で低栄養状態と思われた。訪問栄養指導を通じ,多職種によるチームで,こうした療養者の生活を支えていきたいと考えている。 -
在宅療養体制に対する課題の認識に関する地域間比較−テキストマイニングとGISによる47都道府県の医療計画の分析−
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description医療計画は地域の現状を反映している。本研究はテキストマイニングによる医療計画の分析と地理情報システムによる地理的特徴の検討を目的とする。47 都道府県の医療計画から全国,6地域区分,高齢化別4 区分のテキストファイルを作成し単語を抽出した後,語の関連性を分析した。さらに重要課題である「看取り」の単語出現率で日本地図を色分けし特徴を検討した。全国の集計では214,716語抽出され,頻出上位は医療,在宅,支援,介護,訪問,診療,連携であった。共起ネットワークでは医療−在宅−介護−連携が体制−構築と連結していた。関東と近畿で人材−育成の連結があった。高齢化率の高い地域で「看取り」が頻出し,低い地域で人材−育成−確保の連結あった。「看取り」の出現頻度は西日本で高かった。医療計画では医療と介護の連携構築が重視され,西日本や高齢化率の高い地域では看取りが,低い地域では人材育成が重視されていると示唆された。 -
突然の退院を支える普段の関係構築−ALS 患者の事例をとおして考える退院前支援からかかわる連携−
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description在宅医療の推進により医療依存度の高い患者が増加してきたため,ケアマネジャーが退院前支援からかかわる退院前カンファレンスの役割が大きくなってきた。また普段の関係性において,病棟スタッフと在宅支援チームの「協働」が大変重要となっている。一般に入院患者の在宅移行を想定して,在宅医療の関係者の間では「連携」という言葉が従来から使われているが,医療と介護の垣根は高く,実際に連携を構築するのは言葉の違いや学んできた内容の違いもあって大変な作業である。今回,ALS患者の在宅移行事例をとおして,病院のソーシャルワーカーからの情報のみで寄り添える在宅チームを結成し,スムーズに在宅へ移行できた連携の1 事例を報告する。 -
病院のがん治療医と在宅医の考え方の相違について
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Descriptionがん末期において療養先として自宅を希望する患者が多いが,症状が安定せず在宅へ移行できない症例を多く経験する。症状が強い場合には在宅医療導入後も緊急入院を必要とすることが多い。今回在宅療養を希望したにもかかわらず,当院への緊急入院を繰り返し在宅導入が困難であった症例を経験したので報告する。また,症例にかかわったがん治療医と在宅医にインタビューを行い両者の視点を比較した。患者・家族の望む生活を実現するには,互いの視点をバランスよく取り入れながら最期まで揺れる希望にそった形での医療のサポートを行う必要があると考えられる。 -
訪問診療の紹介を受けるも契約に至らなかった症例の検討
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description訪問診療の依頼を受けるも契約に至らなかった症例の実態を調査した。2018 年1 月1 日〜6 月30 日までの間に79 件の訪問診療の新規依頼があったが,そのうち契約に至らなかった症例は18 例(22.8%)であった。契約に至らなかった症例の背景は,性別は男性9 例,女性9 例,平均年齢は84.6 歳,主病名は認知症,整形外科疾患,悪性腫瘍,神経難病,心疾患,脳血管疾患などであった。契約に至らなかった理由は,患者自身が訪問診療の必要性を感じないため,紹介後まもなく状態が悪化したため,金銭的理由のため,患者が他人を家に入れたくない思いが強いため,外来通院継続を希望したため,患者宅が訪問可能なエリア外であったため,紹介を受けた後,かかりつけ医が訪問可能であることが判明したためなどであった。患者は訪問診療に対して様々な思いを抱えながら紹介されてきている実態が明らかになった。 -
退院前カンファレンスにおける在宅療養支援診療所の役割の検討
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description入院中から切れ目のない支援を行うための退院前カンファレンスにおける在宅療養支援診療所の役割を検討した。対象患者8 名中がん患者7 名。カンファレンス後死亡した2 名は,退院前カンファレンス後3 日以内に退院をし,初回訪問は退院後24 時間以内に行っていた。在宅療養支援診療所には,退院前カンファレンスで退院後の生活や介護力を踏まえた治療方法や支援の検討を主導する役割がある。退院前カンファレンスの前に行う家族との事前面談は,限られた時間のなかで要点を絞った話しができ,患者や家族の想いに寄り添い,希望をかなえるような支援体制の構築ができることが考えられた。また,退院前カンファレンスの時から患者にかかわる多職種と顔のみえる関係を築き,必要な時に速やかに連携がとれるように主導していく役割があると考えられた。 -
外来看護管理者の在宅療養支援の実態と地域連携への意識に関する調査
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description入院期間の短縮は,セルフケア能力が確立していない状態での退院患者や介護力の低下した家族が増えることを意味し,外来看護師の役割は大きくなっている。本研究では,外来看護師の在宅支援の実態と地域連携への意識に関する調査を行い,外来看護師の役割を明らかにすることを目的とした。大阪府下の公表されている入院施設をもつ一般病院の外来看護管理者を対象に,質問紙調査を郵送法により実施した。質問紙の回収率は16.5%であった。外来看護の課題ではマンパワー不足を課題とする病院が最も多かった。医療専門職スタッフの活用や認定看護師,専門看護師の配置により看護提供に努めていたが,スタッフの勤務体制や配置基準など看護の質の確保に苦慮している実態が明らかになった。看護の質が担保できない理由として,患者のレジネスが把握できないこと,看護以外の業務量の多さから時間が確保できないこと,看護量が決まらないことがあげられていた。看護の質の担保のために,認定看護師の配置や看護外来の設置の工夫がみられたが,院内の看護連携の課題がみられるなど地域連携の不十分な実態が明らかとなった。待ち時間の短縮や処置の集中化,業務の円滑化の工夫など看護師の業務量が多いことが影響していると考えられた。 -
災害への備えの充実・強化を図る上で訪問看護ステーションが直面する課題の検討
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description背景: 大規模災害の発生が想定されているなかで,災害への備えを図ることが喫緊の課題となっている。目的:本研究は,在宅療養者・家族を支える訪問看護ステーションが災害への備えを充実・強化する上で生じる新たな負担感を明らかにすることを目的とする。方法:大規模災害想定される地域に立地する訪問看護ステーションを対象に実施した質問紙調査を基に,備えを進める上での負担について分析を行った。結果:得られたデータを基に「備えを行う前提に関する負担感」,「備えの具体化に関する負担感」,「備えの実践に関する負担感」の三つのカテゴリーを抽出した。考察:負担感を適切に軽減するために,在宅ケアの特性にあった災害への備えの全体像と,実践的で効率的・効果的な備えを可能にするモデルの検討・提示,制度的な位置付けについての検討の必要性が示唆された。 -
食道癌術後の体重減少遷延症例の摂取熱量減少とその対策についての検討
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description食道癌術後体重減少に影響する術後早期の摂取熱量の減少要因について検討した。術後1 年時で術前より10%以上体重減少した35 例を対象とし,術後退院時と1 か月時の目標熱量に対する摂取熱量と栄養管理状況を調査した。退院時に半数以上の25 例で摂取熱量が目標を下回っており,さらに目標熱量の85%未満だった17 例中経腸栄養増量は2 例のみで,画一的に投与量が設定されていた。術後1 か月では29 例が目標熱量以下の摂取で,85%未満は23 例に増加,同様に経腸栄養に増量がなかった。経口摂取は術後特有の消化管症状の訴えが多く,体重が減少していても経腸栄養に否定的な意見が多くみられた。術後早期の熱量減少は経口摂取の少ない症例が経腸栄養の補助的熱量も不足した状態で退院し,その後も摂取量変動に見合った経腸栄養管理でないことが要因であり,経腸栄養の投与量や管理状況も含めて柔軟な調整のための患者指導が必要と考えられた。 -
がん緩和ケアにおける末梢挿入式中心静脈カテーテルの有用性
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description末梢挿入式中心静脈カテーテル(peripherally inserted central venous catheter: PICC)は従来の中心静脈カテーテルに比べ挿入に伴う重篤な合併症の危険性が低いとされ,近年広く用いられるようになっている。当院でがん緩和ケアを受ける患者で超音波ガイド下にPICC を留置した症例に関し安全性と有用性を検討した。PICC 留置を試みた42 例のうち40 例(95.2%)で留置に成功した。9 例(22.5%)で合併症を生じたが,重篤な合併症は生じなかった。30 例でがんの増悪による死亡まで輸液や薬剤の投与経路として活用することができた。留置期間の中央値は25(範囲1〜126)日であった。がん緩和ケアを受ける患者においても超音波ガイド下でのPICC 留置は安全で有用な方法であることが示唆された。 -
経腸栄養カテーテルに付着した黄色ブドウ球菌の水道水による洗浄除去効果の検討
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description経腸栄養カテーテルの管内に付着させた黄色ブドウ球菌を,水道水による洗浄だけで完全に除去できるのかを検討することを目的とした。カテーテル管内に菌液を1 時間充填後,菌液を排出し管内に残存する菌数を算出した。その後,カテーテルに滅菌水道水を10 回通し,管内に残存する菌数を1 回ごとに測定した。洗浄から18 時間後の菌の生存も確認した。その結果,黄色ブドウ球菌は管内に62.6±26.0%残存し,10 回の水道水による洗浄後も完全には除去されず残存し続け,洗浄から18時間後も管内に生存していた。経腸栄養カテーテルを安全に使用するためには再使用しないか,使用後は毎回消毒を行うことが重要であると示唆された。 -
地理情報システムを用いた山間部における食料品アクセス困難地域の地理的特徴の検討
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description山間部における食料品アクセス困難地域の地理的特徴を,GIS を用いて標高データおよび将来推計人口から明らかにすることを目的として研究を実施した。QGISにて標高データ,老年人口の将来推計人数(メッシュ),小売店のデータをマッピングしメッシュ中心点における標高を抽出した。また,小売店とメッシュ中心点を結ぶ直線を描画した。標高の高い地域に位置するメッシュのほうが低い地域に位置するメッシュよりも人の居住していないメッシュが有意に多かった(p<0.01)。小売店とメッシュ中心点の約95%以上がアクセス困難といわれる500 m 以上離れていた。小売店まで遠距離かつ急こう配の山間部において無居住エリアが増加する。GIS を用いて可視化を行うことで将来の見据えた現実的な資源を検討する必要がある。 -
数理モデルを用いた北信越地方における2025年の訪問介護・看護・入浴事業数の予測とGISによる地域的傾向の検討
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description本研究では,北信越地方における市区町村人口と現在の事業所数から,訪問介護・看護・入浴事業所数を予測するモデルを構築し妥当性を検討した。次に本モデルから2025 年の訪問介護・看護・入浴事業所数を予測した。さらに地理情報システム(GIS)を用いて,地域的な特徴を確認した。事業所の予測式の調整済みR2は訪問介護0.93,訪問看護0.87,訪問入浴0.63 だった。2025年の事業所数は訪問介護,看護,入浴でそれぞれ67%,67%,28%減少すると予測された。予測事業所数を用いて地図を着色したところ,訪問介護は北陸から長野北部,訪問看護は福井県嶺北地方,訪問入浴は長野県中部の減少幅が大きいことが示唆された。 -
高用量5-FU による高アンモニア血症を来した1 例
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description切除不能進行大腸がんに対して高用量の5-FU を含む化学療法を投与した後に,高アンモニア血症を来す症例が知られている。症例は81 歳,女性。S 状結腸癌穿孔,汎発性腹膜炎の緊急手術後,pT4bcN2M1(多発肝転移),stage Ⅳ,KRAS:mutant の診断で切除不能進行再発大腸がんとして,術後mFOLFOX6+Bmab 療法4 コース目を開始した48 時間後に意識障害JCS Ⅲ-300となった。高用量5-FU を中止したところ速やかに意識障害は消失した。高アンモニア血症の主因が高用量の5-FU 製剤によるものと考えられたため,後治療としてXELOX+Bmab 療法を開始したところ,高アンモニア血症の発現なく8コース施行し経過観察中である。 -
下肢切断を拒否した足病変患者の在宅療養支援−訪問看護の効果−
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description症例は60 歳台,男性。糖尿病,高血圧を合併。末梢動脈性疾患のため入院し血管内治療後下肢切断手術を勧められていたが,拒否し退院した。両足趾黒色ミイラ化し,自宅では歩行できず疼痛のため麻薬処方されていた。在宅での訪問看護へ依頼があり,下肢創傷ケア,下肢筋力リハビリを妻と一緒に実施した。創部の痛みを伴わないように日々工夫し,徐々に改善した。毎日繰り返すケアをとおして時間を共有することが創部の改善を喜ぶ関係が築け,15 か月後に壊死の部分が治癒脱落した。患者の切断したくないという思いにそって寄り添い,合併症を起こさず治癒できた。 -
介護老人保健施設におけるスキンテア発生の関連要因の検討
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description老人介護施設における皮膚裂傷(スキンテア)の現状を把握し,スキンテア発生の関連要因を検討するため,A 介護老人保険施設で1 年間にスキンテアを発症した入居者152 名を対象に調査を行った。その結果,A介護老人保健施設ではスキンテアの発生率は9.7%であり,スキンテアの発生のうち27.0%が譫妄や認知症がある患者のケア時など医療者側の要因であることが明らかとなった。また,スキンテアの重症度は年齢85 歳以上(p<0.05)とBMI 16.8 未満(p<0.05)が関連していた。今後は看護師と介護職員が協力して,スキンテアの予防ができるようケアの質を高めていくことが課題である。 -
血液疾患患者を対象とした在宅医療へのニーズに関するアンケート調査
46巻Supplement I(2019);View Description Hide Description血液疾患の在宅医療は,輸血などの支持療法の継続が障壁となり調整困難な場合が多い。一方で血液疾患患者からみた在宅療養に対するニーズについては明らかではなく,本研究では患者対象のアンケート調査を実施した。605 名の血液疾患患者から回答を得て,在宅医療に期待する点として,通院の体力的負担の軽減,また心配な点としては急変時の対応が第一にあげられた。さらに90%以上が血液専門医の診療を望み,輸血については赤血球が53.5%,血小板については53.9%が在宅での継続を希望し,緩和的化学療法についても70.9%が在宅でも必要と回答した。緊急時の対応については,在宅医がまず対応し必要に応じて病棟主治医に連絡を希望した回答が56.5%で最も多く,近年重要性が叫ばれている「2 人主治医制」の考え方が血液疾患の在宅医療についても有効である可能性が示唆された。
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