Volume 47,
Issue 13,
2020
-
特集
-
-
【第42回 日本癌局所療法研究会】
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1741-1743 (2020);
View Description
Hide Description
症例は56 歳,女性。右乳房腫瘤を自覚し近医を受診,精査加療目的にて当院紹介となった。乳腺超音波検査にて右乳腺C 領域に約5 cm 大の腫瘤を認め,針生検にて右乳癌(浸潤性乳管癌,ER 陰性,PgR 陰性,HER2 陰性,Ki‒67 高発現)との診断に至った。CT 検査では,右乳腺腫瘤,右腋窩リンパ節腫大,肝腫瘍,縦隔リンパ節腫大および肺腫瘍が認められた。肺腫瘍に対して気管支鏡下生検を行い,原発性肺癌との診断を得た。また,骨シンチグラフィでは右大腿骨近位部に溶骨性変化が認められた。治療前診断は,肺腺癌,cT2a,N2/3,M1b/1c(HEP,OSS),Stage ⅢA/B or ⅣA/B(PD‒L1 陽性),右乳癌,T4b,N2,M0/1(HEP,OSS,LYM),Stage ⅢB or Ⅳ triple‒negative(PD‒L1 陽性)の重複癌であった。右乳癌に対して局所出血コントロール目的にて手術(単純乳房切除および腋窩リンパ節郭清術)を施行し,その後に全身化学療法(アテゾリズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル)を開始したところ,部分奏効が得られた。今回,PD‒L1(SP142)陽性肺癌・乳癌重複癌に対してアテゾリズマブ併用療法が奏効した1 例を経験した。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1744-1746 (2020);
View Description
Hide Description
症例は65歳,男性。便潜血陽性の精査目的に施行された下部消化管内視鏡検査で上行結腸の腫瘍性病変を指摘された。生検では神経内分泌癌が検出された。術前診断は上行結腸神経内分泌癌,cT3N0M0,cStage Ⅱとなり,腹腔鏡下回盲部切除術(D3 郭清)を施行した。術中所見では,肝転移や腹膜播種は認めなかった。切除標本の病理結果は上行結腸神経内分泌癌,pT4aN2M0,pStage Ⅲc であり,R0切除を得た。術後補助化学療法としてシスプラチン+イリノテカンを4 コース施行した。しかし術後9 か月に多発腹膜転移と多発肝転移を指摘された。化学療法のレジメンをエトポシド+カルボプラチンに変更し,現在術後13 か月生存中である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1747-1749 (2020);
View Description
Hide Description
症例は39 歳,女性。右トリプルネガティブ乳癌(T2N0M0,Stage ⅡA)の診断で,乳房部分切除術とセンチネルリンパ節生検を施行した。6か月後に温存乳房内に局所再発を認め,再発巣の切除後パクリタキセル+ベバシズマブ療法を開始するもアナフィラキシー様症状が出現し中止となった。次にエリブリンを開始するも局所再発巣は急激に増大し,切除不能となった。患者の背景を考慮するとBRCA1 遺伝子変異の可能性が強く,プラチナ製剤の感受性が高いと予測し,カルボプラチン+ゲムシタビンを選択し6 コース施行した。腫瘍は著明に縮小し,右乳房全切除術と腋窩リンパ節郭清を施行した。術後1 年経過して対側乳癌を発症し,それを契機に遺伝子検査を施行し遺伝性乳癌・卵巣癌症候群(HBOC)の診断となった。局所再発から約6年経過するが遠隔転移は認めていない。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1750-1752 (2020);
View Description
Hide Description
直腸癌に対する術前化学放射線療法の有効性については周知のとおりだが,大腸癌に対する術前補助化学療法(neoadjuvant chemotherapy: NAC)の有効性については一定の見解が得られていない。症例は74 歳,男性。前立腺癌,肝転移疑いの治療中に,CT 検査でS 状結腸に腫瘍の増大を認めた。下部消化管内視鏡検査でS 状結腸に2 型腫瘍を認め,生検で高分化管状腺癌,KRAS 遺伝子変異陽性と診断された。前立腺癌の治療により前立腺癌は縮小したものの,肝腫瘍は著変なくS 状結腸癌の肝転移と診断した。左尿管浸潤が疑われたためNAC の方針とし,mFOLFOX6 療法を8 コース施行後にS状結腸切除,肝S5 部分切除を施行した。病理組織学的所見で腫瘍細胞の残存を認めず,病理学的完全奏効と診断した。術後1 年経過し,再発を認めていない。今後,NAC が奏効する症例の選別や至適レジメン,投与期間,適切な手術時期などを検討していくことで,個々の大腸癌症例に有効な治療の選択が可能となると考える。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1753-1755 (2020);
View Description
Hide Description
腹膜反転部以下に腫瘍下縁を有し,根治度A の手術を施行した直腸癌のうちstage Ⅱ再発例(23 例)をstage Ⅱ無再発例(126 例)と比較し,次にstage Ⅲ再発例89 例と比較した。多変量解析で男性と術前血清CA19‒9 高値がstage Ⅱの再発危険因子であった。stage Ⅱの初再発形式は局所の占める割合(47.8%)がstage Ⅲ(29.2%)に比べて多い傾向にあった。stage Ⅱ再発例の発見動機はstage Ⅲに比べて血清腫瘍マーカー値の割合が低かった。stage Ⅱ再発例の手術率は60.9%でstage Ⅲに比べて有意に高率であった。stage Ⅱ再発例の初回手術後の予後(5 年生存率43.1%)はstage Ⅲ(25.4%)に比べて有意に良好で,stage Ⅱ再発例の再発予後はstage Ⅲに比べて良好な傾向にあった。stage Ⅱ再発例の治療成績は良好であり,画像診断を中心とした確実な術後サーベイランスが予後改善に有効と考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1756-1758 (2020);
View Description
Hide Description
下部直腸癌における低位前方切除術(low anterior resection: LAR)30 例[男性21 例,女性9 例,年齢43~78(平均62.4)歳]を便失禁(fecal incontinence: FI)の有無から2 群[A 群: FI 陽性(n=10),B 群: FI 陰性(n=20)]に分け,対照28 例[C 群: 男性18 例,女性10 例,年齢46~76(平均60.2)歳]とS2‒4 仙骨部磁気刺激(sacral magnetic stimulation:SMS)法による陰部神経運動枝(pudendal motor nerve: PMN)latency(PMNL)値(肛門管の後側)を比較検討した。全例がStage Ⅰ(T1,N0,M0 は20 例: T2,N0,M0 は10 例)であった。性別では,A 群はB 群より男性が有意に多かった(p<0.05)。吻合部位の肛門縁からの距離では,A 群(2.4±1.7 cm)はB 群(4.4±0.9 cm)より有意に短かった(p<0.001)。Wexner score(WS): A 群では8~10(平均9.25)20.0%,11~15(平均13.5)50.0%,16~20(平均18.5)30.0%であり,全例がWS は8 以上であった。また,B 群とC 群は0 であった。PMNL 値: A 群(7.9±0.9 ms)はB 群(4.1±0.6ms),C 群(3.9±0.3 ms)より有意に延長していた(それぞれp<0.001)。B,C 群の間に有意差はなかった。LAR 後FIは男性に多く,明らかに吻合部位は肛門縁に近く位置し,PMN 機能は低下を示した。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1759-1761 (2020);
View Description
Hide Description
症例は63歳,男性。貧血精査の上部消化管内視鏡検査で胃角部大弯に2 型腫瘍を認め,生検で低分化腺癌であった。胸腹部造影CT 検査では,肝両葉に11~27 mm の計1₀ 個の転移を認めた。胃癌,T3(SS)N0M1H1P0,cStage Ⅳと診断し,SP 療法を1 年間施行した。胃原発巣は縮小し,肝S1 に7mm の転移巣を認めるのみとなった。幽門側胃切除術,肝S1ラジオ波焼灼術を行った。術後はS-1 単剤療法を継続し,2 年間無再発生存中である。胃癌同時性多発肝転移は予後不良だが,集学的治療で良好な予後が得られた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1762-1764 (2020);
View Description
Hide Description
症例は60 代,男性。2 か月にわたる慢性的な下腹部痛を主訴に当院を受診した。造影CT で盲腸から膀胱に連続する不整な腫瘤を認め,S 状結腸にも浸潤する所見を認めた。肺肝転移,腹膜播種は認めなかった。CEA 16.8 ng/mL と上昇していた。大腸内視鏡検査では,S 状結腸に壁外浸潤を疑う隆起性病変を認め,生検でtub1 の診断であり,KRAS codon13 G13D であった。膀胱およびS 状結腸に浸潤する局所進行虫垂癌と診断し,術前化学療法としてCAPOX+bevacizumab を4コース施行した。化学療法後の造影CT で腫瘍は縮小し,S 状結腸,膀胱への浸潤面積は縮小していた。診断から135 日目に根治的切除を施行した。主腫瘍は虫垂に認め,腹壁,膀胱,S 状結腸に浸潤していた。回盲部切除(D3)+S 状結腸切除+膀胱部分切除術を施行した。肉眼的所見では虫垂入口部に硬結を認め,虫垂原発であった。病理組織学的診断はⅤ,yType 5,tub2>tub1,ypT4b,ypN0,ycH0,ycM0,ycPUL0,Ly1b,V1b(VB),Pn01b,pStage Ⅱa であり,虫垂癌と診断した。組織学的効果判定Grade 1b,根治度はA であった。術後,膀胱瘻による腹膜炎を生じたが保存的に軽快し,術後36 日目に転院した。今回,術前化学療法としてCAPOX+bevacizumab 施行後に根治切除術を施行した局所進行虫垂癌の1 例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1765-1767 (2020);
View Description
Hide Description
症例は70 歳台,男性。血便を主訴に近医を受診し,直腸診にて腫瘤を触知したため当院紹介となった。既往歴として,8 年前に前立腺癌に対し小線源療法を施行されていた。肛門視診にて腫瘍が肛門から露出しており,下部消化管内視鏡検査では歯状線にかかるように前壁中心に周堤隆起を伴う潰瘍性病変を認めた。生検にてGroup 5,扁平上皮癌(squamous cell carcinoma: SCC)の診断であった。造影CT では下部直腸前壁に壁肥厚を疑うも,前立腺の小線源によるアーチファクトが著明なため評価困難であった。術前診断は肛門管癌(SCC),cT2N0M0,cStage ⅡA であり,通常なら根治的化学放射線療法(chemo⊖radiation therapy: CRT)の適応であるが,前立腺癌に対しての小線源療法後のため直腸の耐容線量を超えることとなり,照射の適応外との判断であった。そのため根治術として腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を選択した。術中所見では,前立腺は小線源療法後にて直腸と強固に癒着しており,小線源が一部前立腺から露出し,また直腸内への迷入を認めた。剝離困難なため,前立腺を一部合併切除し腫瘍を摘出した。術後病理組織学的所見では腫瘍は固有筋層まで達しており,#251 に一つ転移を認めpT2N1aM0,pStage ⅢA であった。放射線誘発癌を疑う前立腺癌小線源療法後の肛門管SCC に関する報告は,非常にまれと考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1768-1770 (2020);
View Description
Hide Description
はじめに: 膵全摘術で胃を温存するかどうかは議論がある。そこで胃切除範囲と周術期胃関連合併症につき検討した。方法: 膵全摘術7 例を評価した。幽門側胃切除(TP)1 例,亜全胃温存(SSPTP)3 例,幽門温存(PPTP)3 例で,郭清目的に全例で右胃動静脈および左胃静脈は切離した。結果: 胃出血,胃潰瘍は認めなかった。delayed gastric emptying(DGE)発症はGrade A 4 例,Grade C 2 例であった。Grade C 症例はともにSSPTP で,1 例は術後腸管壊死によるsecondary なDGE と判断した。もう1 例は左胃動脈を切離したが亜全胃で吻合し,術後内視鏡にてischemic gastropathy と診断した症例であった。考察: 本検討では胃温存術式でもprimary なDGE はGrade A 程度であった。また,左胃動脈の温存には注意を払い,切離した場合は術中の所見によらず胃温存術式は避けるべきである。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1771-1773 (2020);
View Description
Hide Description
症例は78 歳,女性。腹痛を主訴として受診し,虚血性大腸炎と診断された。CT で膵腫大を指摘されたため,治療と並行して膵の精査を行った。造影CT,MRI では主膵管は全長にわたり著明に拡張し,主膵管内には散在する壁在結節が認められた。膵管内乳頭粘液性腺癌(IPMC)の可能性が高い主膵管型膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)と診断し,膵全摘術を施行した。病理組織学的所見では膵全体に主膵管の拡張を認め,非浸潤性のIPMC が主膵管のほぼ全長にわたり進展し,壁在結節を中心に粘液癌~中/高分化型管状腺癌が膵組織内に広く浸潤していた。癌は膵内にとどまっており,最終的にIPMC,invasive,pT2,pN0,pStage ⅠB と診断した。本症例はhigh⊖risk stigmata を有するIPMN であり,壁在結節が膵全体に及んでいたため膵全摘術の適応症例であった。膵全摘術は近年の糖尿病治療の進歩と膵酵素剤の開発により良好な成績が期待できるようになったが,適応については症例ごと慎重に判断する必要がある。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1774-1776 (2020);
View Description
Hide Description
口腔癌の基本治療は根治切除と再建である。手術により咀嚼・摂食・構音障害などが生じるため,各種再建治療や顎補綴を併用し,形態と機能障害の回復を図る必要がある。今回われわれは,口腔がん検診により早期発見と根治治療の行えた口蓋癌症例を経験したので,がん検診の概要を含めて報告する。症例は73 歳,女性。2019 年出雲市口腔がん検診にて口蓋部の腫瘤を指摘され,細胞診にて疑陽性(LSIL)の結果により,当科初診。口蓋正中部に20×20 mm 大の表面粗造な発赤を伴う腫瘤性病変を認めた。口蓋部扁平上皮癌(cT1N0M0,StageⅠ)の診断の下,腫瘍切除術および遊離前腕皮弁による再建を行った。病理診断は口蓋部高分化型扁平上皮癌(pT1N0M0,StageⅠ)であった。現在術後6 か月を経過したが,皮弁の生着は良好で顎口腔機能は回復した。希少がんに分類される口腔がんの周知・啓発は重要で,口腔外科医が行うがん検診は検出率が高く今後も継続していく必要がある。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1777-1779 (2020);
View Description
Hide Description
症例は76 歳,女性。S 状結腸癌術後3 か月で腹膜播種を来し,mFOLFOX6 による化学療法を行っていた。12 コース目を開始したところ,翌日より著明な全身倦怠感・見当識障害を認めた。頭部CT 検査では明らかな異常所見を認めず,血液検査にて血中アンモニア値が著明に高値であった。高アンモニア血症による意識障害と診断し,分岐鎖アミノ酸製剤の投与により翌日には意識レベルは改善した。近年,mFOLFOX6 などの高用量5‒FU 持続投与時におけるまれな有害事象として高アンモニア血症が報告されている。自験例では5‒FU 持続投与量を減量したFOLFIRI 療法に変更したが,その後の意識障害はみられていない。高用量5‒FU 持続投与のあるレジメン施行中に意識障害を来した場合には,高アンモニア血症も鑑別にあげる必要がある。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1780-1782 (2020);
View Description
Hide Description
症例は77 歳,男性。上行結腸癌,同時性多発肺転移に対して腹腔鏡下結腸右半切除術を施行した。pT4aN0M1a(PUL2),stage Ⅳ,RAS 変異型にて術後mFOLFOX6+Bmab 療法を開始した。6 サイクル目の2 日目に意識障害を生じた。頭部CT およびMRI では異常なく,痙攣発作と診断した。補液にて意識状態は徐々に改善した。7 サイクル目の2 日目に再び意識障害を生じた。高アンモニア血症(NH3 400μg/dL)による意識障害と診断し,分岐鎖アミノ酸製剤の点滴にて速やかに意識状態は改善した。SOX+Bmab 療法に変更したが,3 サイクル目の4 日目に高アンモニア血症(NH3 288μg/dL)による意識障害を再び来した。退院後より分岐鎖アミノ酸製剤とラクツロースの内服を開始したところ高アンモニア血症の再発なく,SOX+Bmab 療法をさらに3 サイクル,IRIS+Bmab 療法を計12 サイクル施行し得た。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1783-1785 (2020);
View Description
Hide Description
症例は75 歳,女性。2012 年10 月直腸癌に対して低位前方切除を施行した[T3N0M1a(PUL1),Stage Ⅳa]。mFOLFOX6+bevacizumab(BV)を7 コース,UFT+LV を6 か月施行し肺転移は指摘困難になった。2014 年11 月肺転移再燃に対して右肺部分切除,2017 年4 月肺転移切除部再発に対して右肺下葉切除を施行した。2018 年10 月CEA の上昇を認め,PET 検査にて左頸部,気管分岐部にFGD の異常集積を認めた。造影CT にて左頸部リンパ節腫大,甲状腺左葉の腫瘍,気管分岐部内腔に5 mm 大の結節を認めた。リンパ節および甲状腺腫瘍は吸引細胞診の結果,Class Ⅴ: adenocarcinomaと診断された。また,気管支鏡検査にて気管分岐部に小結節を認め擦過細胞診の結果,Class Ⅴ: adenocarcinoma(直腸癌の転移として矛盾なし)と診断された。FOLFIRI+BV を18 コース施行したところCT では上頸部リンパ節は縮小し,甲状腺転移および気管転移は指摘が困難となり経過観察中である。FOLFIRI+BV は直腸癌の甲状腺転移・気管転移に有用であると思われた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1786-1788 (2020);
View Description
Hide Description
症例は80 歳,男性。主訴は腹部膨満感,心窩部痛あり。精査で食道癌(Mt,SCC,T3N0M0,Stage Ⅱ)と診断した。高齢のため,S-1 と放射線療法による放射線化学療法(CRT)の通院治療を受けていた。54 Gy/27 Fr 照射後時点で咳嗽が増悪し,発熱や食事摂取不良を伴うため入院した。胸腹部CT では肺炎像を認め,まずは細菌性肺炎の疑いに対して抗菌薬を開始した。しかし炎症反応の上昇と発熱が続いたため,薬剤性肺炎を含む間質性肺炎を疑い,プレドニゾロン注60mg の投与を開始したところ,呼吸症状の改善を認めた。その後,体幹から全身に広がる播種性紅斑と肝逸脱酵素の上昇を認め,血液検査でCMV⊖IgG 抗体上昇,C₇⊖HRP 陽性と判明したため,サイトメガロウイルス(CMV)の再活性化と診断した。ganciclovir/valganciclovir を投与したところ肝逸脱酵素は低下し,播種性紅斑は改善した。ステロイドを減量し,valganciclovirを継続しながら退院した。食道癌の治療効果はPR であった。外来で症状やCT をフォローしながらステロイドを調整している。食道癌に対するCRT 治療によって間質性肺炎を発症し,ステロイド投与によりCMV が再活性化したまれな症例と考えられ,若干の文献的考察を加えて報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1789-1791 (2020);
View Description
Hide Description
症例は91 歳,女性。血便を主訴に近医を受診した。血液検査で血小板数1,000/μL と著明な低値であり,特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura: ITP)を疑われたため,当院血液内科に紹介となった。入院後も血便が継続し,下部消化管内視鏡検査を施行した。その結果,盲腸癌(tub1,tub2,cT3N0M0)を認め,手術目的に外科紹介となった。術前に副腎皮質ステロイド投与,免疫グロブリン大量療法(intravenous immunoglobulin: IVIG),血小板輸血を行い,血小板数100,000/μL を目標に改善を図った。手術は腹腔鏡下回盲部切除術,D2 郭清を行い,出血量は10 g であった。術後経過は問題なく,血小板数も4 日連続各10 単位ずつ輸血を行い正常範囲内へ改善した。現在まで癌の再発はなく,血小板減少もみられていない。適切な薬物投与によりITP 合併大腸癌でも腹腔鏡下切除術が安全に実施可能であり,癌切除はITP 改善に寄与し得ることが示唆された。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1792-1794 (2020);
View Description
Hide Description
peritoneal lymphomatosis は腹膜や大網にびまん性に腫瘍浸潤を認め,多量の腹水を伴う非ホジキンリンパ腫のまれな病態の一つであるが,確定診断は困難なことが多い。今回われわれは,腹腔鏡下組織生検が診断と治療方針の決定に有用であった1 例を経験したので報告する。患者は56 歳,女性。2 週間前より腹部膨満が出現し,精査目的に当科紹介となった。腹部CT 検査で大網の肥厚と多量の腹水とを認めた。採血検査と腹水細胞診から悪性リンパ腫が最も疑われたが,確定診断のため第9 病日に腹腔鏡下組織生検を行った。腹腔内は硬化した大網と多量の腹水を認め,大網を一部切除し組織生検とした。病理組織学的結果はdiffuse large B‒cell lymphoma であり,peritoneal lymphomatosis の発症形式を呈したものと診断した。速やかに後方基幹病院へ転院しR‒CHOP 療法が開始され,初診から5 年10 か月経過し再発なく経過している。CT 検査でびまん性に腹膜や大網播種を来す所見を認めた場合,その鑑別診断は多岐にわたる。本疾患の迅速かつ確実な診断と治療方針の決定のために,比較的侵襲の少ない腹腔鏡下組織生検が有用であると考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1795-1797 (2020);
View Description
Hide Description
症例は59 歳,男性。右季肋部痛と発熱を主訴に前医を受診し,精査のため当院紹介となった。大腸内視鏡検査にて上行結腸に2 型腫瘍を認め,CT 検査にて肝臓に多発する腫瘍を認めた。白血球数は13,740/μL と高値で抗生剤による治療後に化学療法を施行する方針としたが,奏効せず感染制御目的に結腸右半切除術を行った。術後にmFOLFOX6 療法を行ったが,肝転移の急速な増悪を認め,第39 病日に死亡した。免疫組織化学染色でG‒CSF 産生上行結腸癌と診断された。本疾患は,急激な経過をたどり予後不良であることが多く,診断した場合は手術や化学療法の適応を慎重に判断する必要があると考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1798-1800 (2020);
View Description
Hide Description
症例は83 歳,男性。腹部超音波検査で肝腫瘍が指摘され,当院紹介受診した。精査の結果,S 状結腸癌,T3N1M1b(左鎖骨上窩リンパ節,肝,傍大動脈リンパ節),Stage ⅣB(UICC 第8版)と診断された。高齢,ECOG performance status 1 のため,capecitabine+bevacizumab 療法を施行した。8コース終了後,原発巣,肝転移巣は縮小しPR であった。手足症候群Grade 2 のため,capecitabine を11 コースより75%に減量,31 コースより50%に減量し継続した。治療開始後,2 年間病勢コントロールを維持している。手足症候群に対しては,ヘパリン類似物質含有クリームおよびステロイド軟膏で加療した。高齢者切除不能大腸癌患者に対するcapecitabine+bevacizumab 療法は,投与量の減量や有害事象に配慮することでQOL を維持し,安全に継続できると考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1801-1803 (2020);
View Description
Hide Description
症例は54 歳,男性。右下腹部痛と吐き気を主訴に当院を受診した。腹部CT 検査にて,右下腹部に11×10 cm の境界明瞭な石灰化を伴う被膜に覆われた内部不均一な充実性腫瘤と腸閉塞を認め,脂肪肉腫が疑われた。イレウス管で減圧後に,診断と治療を兼ねて手術を施行した。腫瘤は終末回腸の腸間膜内に限局し,肉眼的遺残なく摘出できた。病理組織学的所見では変性した脂肪細胞と線維性隔壁を認め大部分が腸間膜脂肪腫であったが高分化型脂肪肉腫の所見も認め,腸間膜脂肪腫と高分化型脂肪肉腫との鑑別は困難であった。腸間膜原発の脂肪腫と脂肪肉腫はまれであり,報告が少ない。今回,脂肪肉腫との鑑別が困難であった腸間膜原発の脂肪腫の1 例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1804-1806 (2020);
View Description
Hide Description
症例は90 歳,男性。2 週間前から左胸部の発赤を自覚し,皮膚科を受診した。理学所見では,左乳頭10 時から2 時方向に25 mm 大の境界不明瞭な紅斑を認めたため,皮膚生検を施行した。病理学的に乳房Paget 病と診断されたため,当科へ紹介となった。乳腺超音波検査では乳腺に有意な所見が認められなかったので,局所麻酔下に左乳房全摘術を施行した。手術標本病理学的検査所見は,乳管内にごく少量の非浸潤性乳管癌を伴う乳房Paget 病であった。男性乳癌は全乳癌の1%未満とされており,また乳房Paget 病の頻度も全乳癌の1~2%とされているため,男性乳房Paget 病は非常にまれな疾患と考えられる。初期症状は乳頭の発赤やびらんであるため,湿疹と誤診され治療が遅れる可能性もあり注意が必要と考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1807-1809 (2020);
View Description
Hide Description
症例は59 歳,女性。左乳癌に対して左乳房切除術および腋窩リンパ節郭清術を施行した。最終診断はpT2N1M0,Stage ⅡB,ER 強陽性,PgR 陰性,HER2 陰性であった。補助内分泌療法を施行していたが,1 年3 か月後に左胸壁再発を認めたため局所切除術および放射線照射を施行した。再発手術より9 か月後,呼吸困難と頸部痛を主訴に救急搬送となり,精査の結果,乳癌頸椎転移による軸椎歯突起骨折および頸髄の圧迫を認めた。早期にC1‒C2 固定術を施行したが,全身状態の増悪を来し,固定術より39 日後に死亡した。乳癌脊椎転移のうち脊髄圧迫症状を有する症例では,治療介入のタイミングを逸すると不可逆的な脊髄障害に至るためoncologic emergency として治療前診断を勧め,迅速に全身療法を開始することが望まれる。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1810-1812 (2020);
View Description
Hide Description
症例は69 歳,女性。10 cm 大の肝腫瘍に対し左肝切除を施行し,病理検査の結果,消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor: GIST)の診断となった。患者は41 歳時に十二指腸粘膜下腫瘍に対し膵頭十二指腸切除術を受けていたが,病理組織学的再検査の結果,十二指腸GIST であったと判明した。原発巣切除28 年後に肝転移再発を来したと考えられるまれなGIST 症例を経験した。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1813-1815 (2020);
View Description
Hide Description
症例は71 歳,男性。横行結腸癌(T4a,N0,M0,Stage Ⅱb)の術後1 年目に施行された腹部CT 検査にて胃に穿通する腫瘤性病変を指摘され,上部消化管内視鏡検査での生検にて大腸癌の再発と診断された。腫瘍出血による貧血の進行があり,他に再発巣は認めなかったため外科的治療を施行した。膵体部への浸潤も疑われたため胃部分切除および膵体尾部切除を伴う腫瘍切除を行い,病理学的にR0 切除を施行し得た。局所再発は遠隔転移とは再発要因が異なるため,外科的治療や放射線治療などの局所治療の有用性が高い。また,局所再発は種々の症状を呈する可能性があるため,可能であれば積極的に切除を考慮すべきである。再発部位によっては術後のQOL 低下が懸念されるが,孤立性である場合は再発巣の完全切除が唯一根治を期待できる治療法であるため,十分なサージカルマージンを取った拡大手術も考慮すべきと思われた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1816-1819 (2020);
View Description
Hide Description
口腔癌は,根治腫瘍切除と再建が基本治療である。手術により顎顔面形態および機能障害が生じる。従来から骨や軟組織移植による再建手術がなされてきたが,侵襲性と良好な形態改善は困難であった。カスタムメイド人工骨(以下,CT‒BoneTM)は,2018 年4 月より新規に保険導入されたカルシウム欠損型HA からなる材料で,低侵襲かつ精密な顎骨再建が可能な新しい手術材料である。今回われわれは,口腔癌切除再建後の顎顔面非対称症例に対しCT‒BoneTMを用い,良好な経過が得られたので概要を報告する。症例は52 歳,女性。2010 年8 月に右下顎骨中心性扁平上皮癌の診断の下,下顎骨区域切除・頸部郭清・遊離腓骨皮弁による再建を行った。今回,顎顔面非対称の残存に対して形態回復を目的に,CT‒BoneTM による再建術を施行した。2020 年1 月,CT‒BoneTMを再建腓骨に沿わせる形で生体活性吸収性スクリューを用いて固定した。現在術後6 か月を経過するが,良好な顎顔面の形態審美的な回復が得られた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1820-1823 (2020);
View Description
Hide Description
口腔白板症は,口腔粘膜の前癌病変のなかで,発生頻度と悪性化率が高く注意を要する疾患である。また,若年者が口腔癌に罹患した場合,腫瘍の活動性が活発なため進行が早く予後不良との報告も多い。今回,臨床的に舌白板症の診断の下,手術加療予定の経過観察中の早期に悪性化を来した,比較的若年の症例を経験したので報告する。症例は47歳,男性。左舌縁部の違和感を主訴に来院した。初診時,白板症の臨床診断の下,患者の強い希望もあり切除術前提での経過観察とした。再診時に臨床的に悪性化を認めたため,舌部分切除術を施行した。その後,頸部リンパ節後発転移を認め,頸部リンパ節郭清術ならびに術後放射線化学療法を施行した。現在,術後約3 年が経過するが,再発や転移を認めず経過良好である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1824-1826 (2020);
View Description
Hide Description
症例1 は73 歳,男性。前医で亜全胃温存膵頭十二指腸切除術(SSPPD)を施行後,フォローCT で食道胃接合部癌を指摘された。cT4aN2M0,cStage Ⅲの診断で,残胃全摘,下部食道切除,D2 郭清,腸瘻造設術を施行し,再建はBraun吻合を温存し,overlap 法にて食道空腸吻合を行った。症例2 は77 歳,男性。膵管内乳頭状粘液腺腫に対してSSPPD を施行し,腫瘍マーカー上昇の精査で食道胃接合部癌を指摘された。内視鏡的粘膜下層剝離術を施行したが,非治癒切除のため残胃全摘,D1+郭清を施行し,再建はBraun 吻合を温存し,circular stapler による食道空腸吻合を行った。SSPPD 術後の残胃全摘術は癒着や消化管再建による解剖学的変化を伴っており,難易度が高い。膵頭十二指腸切除後のBraun 吻合を温存した食道空腸再建を施行し,良好な経過を得た2 例を経験したため再建の工夫について若干の文献的考察を加えて報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1827-1829 (2020);
View Description
Hide Description
症例は69 歳,男性。排便困難を主訴に受診した。所属リンパ節・大動脈周囲リンパ節への転移,前立腺浸潤を伴う下部直腸癌と診断された。RAS 野生型,BRAF V600E 変異陰性。mFOLFOX6+panitumumab(Pmab)療法を施行した。原発巣・転移リンパ節の縮小を認め,18F‒FDG‒PET での集積も消失した(効果判定: cCR)。原発巣のR0 手術が可能と判断し,mFOLFOX6+Pmab 13 コース,mFOLFOX6 を1 コース施行後に腹腔鏡下直腸切断術,D3LD2 郭清,293‒lt リンパ節サンプリングを行った。病理学的に原発巣はpCR(治療効果判定: Grade 3)で,293‒lt リンパ節に少量の癌細胞残存が指摘された。術後化学療法は希望されず,1 年間無再発生存中である。RAS 野生型の進行直腸癌に対する分子標的薬を併用した化学療法は,根治性を保ちつつ周囲組織温存や手術侵襲の低減に寄与する可能性があり,治療戦略の一つとなり得る。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1830-1832 (2020);
View Description
Hide Description
症例は79 歳,男性。既往歴として十二指腸潰瘍に対し幽門側胃切除術が行われ,結腸前経路のBillroth Ⅱ(B‒Ⅱ)で再建されていた。食後心窩部痛と体重減少を主訴に当院紹介され,下部消化管内視鏡検査にて横行結腸癌の診断となり,腹腔鏡下拡大結腸右半切除術を施行した。手術所見として腫瘍は横行結腸中央に存在し,挙上空腸と近接していたものの浸潤や癒着は認めなかった。回結腸動静脈,中結腸動静脈を根部にて処理した後,挙上空腸と横行結腸間膜の癒着剝離を右側から行った。左側結腸の外側授動を行った後,挙上空腸と横行結腸間膜の癒着を左側からも剝離し,標本を摘出した。吻合は挙上空腸の腹側で機能的端々吻合で行った。合併症なく術後第10 病日に退院となった。結腸前経路のB‒Ⅱ再建後の症例では,術前CT 検査の確認と結腸の完全な授動によって安全な腹腔鏡手術が施行できると考えられる。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1833-1835 (2020);
View Description
Hide Description
7 回の外科的切除で長期生存を得ている進行・再発大腸癌の1 例を報告する。症例は73 歳,女性。同時性肝転移を有する上行結腸癌の診断で結腸右半切除術,D3 リンパ節郭清,肝S6 部分切除術を施行した。病理組織学的診断は深達度ss の中分化腺癌と同時性肝転移でfT3N2M1,fStage Ⅳ,根治度B であった。術後補助化学療法としてCAPOX 療法を計6 コース施行したが有害事象で中止した。術後1 年目に右肺転移再発し右中葉部分切除術を施行した。2 年目には2 か所の肝転移再発に対し肝内側区域,S7 部分切除術を施行した。術後3 年目の5 月に右肺転移再発し右上葉部分切除術,同年7 月に肝転移再発で肝S7 部分切除術,同年12 月に右肺転移再発に右上葉部分切除を施行した。3 年間の無病再発期間の後,右鎖骨上および頸部の2 か所にリンパ節再発を認め,リンパ節郭清術を施行した。以後,最終手術から1 年7 か月無再発,初回手術から7 年7 か月生存中である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1836-1838 (2020);
View Description
Hide Description
デスモイド腫瘍は,線維性腫瘍の一種で多くは腹壁や腹壁外に発生し,腹腔内発生は約8%とまれである。今回,前立腺癌術後に発生し,完全切除し得た多発腹腔内デスモイド腫瘍の1 例を経験したので報告する。症例は72 歳,男性。当院泌尿器科で前立腺癌に対し開腹下前立腺全摘術を施行,術後4 年目の腹部CT 検査で腹腔内に最大径56 mm 大,合計4 個の充実性腫瘍を認め,精査目的に当科紹介となった。生検の免疫組織学的検査でvimentin,β‒catenin が陽性で,デスモイド腫瘍と診断された。約1 年間で腫瘍が急速増大し,今後腫瘍増大に伴う腸閉塞を危惧し,完全切除目的に小腸部分切除術および回盲部切除術を施行した。術後経過は良好で,術後12 日目に退院された。従来腹腔内デスモイド腫瘍は,外科的切除がしばしば行われてきたが,NCCN guidelines 2019 では無症状や機能障害のない症例では慎重な経過観察も可能と記載されており,今後も治療方針確立に向けてさらなる症例の蓄積・検討が必要と考える。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1839-1841 (2020);
View Description
Hide Description
5‒FU のまれな有害事象に高アンモニア血症がある。今回われわれは,5‒FU+nedaplatin 療法中に高アンモニア血症による意識障害を来した食道癌の1 例を経験したので報告する。症例は69 歳,男性。体重減少および嘔吐を主訴に受診され,上部消化管内視鏡検査にて2 型進行胸部下部食道癌を認めた。造影CT 検査にて食道癌,cT2N2M0,cStage Ⅲと診断し,術前化学療法を行う方針とした。DCF 療法1 コース目を行うも腎機能障害を認め,2 コース目は5‒FU+nedaplatin 療法を行った。day 5 に嘔吐,day 6 には意識障害が出現し,高アンモニア血症(114 μg/dL)を認めた。補液および分枝鎖アミノ酸製剤投与にて,day 7 には症状およびアンモニア値は軽快した。大腸癌に対する化学療法中に高アンモニア血症を来した報告は散見されるが,食道癌では5‒FU による高アンモニア血症の報告は極めて少ない。5‒FU を含む化学療法施行中に意識障害を認めた際は高アンモニア血症を鑑別にあげ,迅速に対応する必要がある。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1842-1844 (2020);
View Description
Hide Description
症例1: 62 歳,男性。左下腹部痛を来し,当院へ救急搬送された。胃穿孔の診断で,緊急で大網充塡術を施行した。術後の上部消化管内視鏡検査で,体上部小弯に潰瘍性病変を認め,生検で低分化腺癌と診断された。初回手術から70 日後に胃全摘+D2 郭清を施行した。摘出標本では穿孔部に一致して2 型胃癌が認められ,進行度はpT3pN0M0,pStage ⅡA であった。術後S‒1 による補助療法を導入し,初回手術から12 か月,無再発生存中である。症例2: 71 歳,男性。夕食後,上腹部痛が出現し当院に救急搬送された。胃穿孔が示唆され緊急で腹腔鏡下手術を行うと,体部前壁に径8 mm 程度の穿孔部を認め,穿孔部を連続縫合閉鎖し,さらに大網で被覆した。術後,穿孔部周囲の切除組織から高分化管状腺癌が検出され,胃癌穿孔と診断した。初回手術から28 日後に胃全摘+D2 郭清を施行,進行度はpT3pN0M0,pStage ⅡA であった。術後CapeOX 療法を導入し,初回手術から12 か月,無再発生存中である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1845-1847 (2020);
View Description
Hide Description
症例は42 歳,男性。左背部痛を主訴に近医を受診し,腹部CT 検査で肝腫瘍を指摘され当院紹介受診となった。血液検査では肝障害を認めず,肝炎ウイルス,腫瘍マーカーは陰性であった。腹部エコー検査で肝左葉外側区域に血流豊富な8cm 大の類円形高エコー腫瘤を認めた。腫瘤は造影エコー検査の動脈相で全体に不均一に,門脈相で全体に均一に染影され,胸腹部造影CT 検査ではwash out は認めなかった。EOB⊖MRI 検査では肝細胞相で低信号を示した。以上より,悪性の可能性を否定しきれず有症状であったため肝左葉切除術を施行し,肝血管筋脂肪腫(AML)と診断した。肝AML は成熟脂肪細胞,血管内皮細胞,平滑筋細胞から構成されるperivascular epithelioid cell tumor(PEComa)の一種である。画像診断においては,血管成分と脂肪成分の証明や流出路血管が肝静脈である所見が鑑別に用いられる。脂肪成分が豊富な場合は画像所見で診断可能であるが,自験例は脂肪成分をほとんど含まず術前診断に難渋したものと考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1848-1850 (2020);
View Description
Hide Description
cStage Ⅳa 食道癌に対する根治的放射線化学療法後,遺残・再発例のサルベージ胸腔鏡下食道切除術の治療成績について検討した。全例胸腔鏡下に手術を開始し,2 例で開胸移行した。手術時間315 分,出血量は300 mL であった。リンパ節転移は5 例に認め,R1,2 は2 例であった。9 例が再発死亡し,1 例は肺炎で死亡した。全例の2 年・5 年生存率(OS)は46.1%,28.3%であった。R1,2 とpN+は有意に予後不良であった。cStage Ⅳa 食道癌に対する根治的放射線化学療法施行後の外科的治療は,胸腔鏡下に安全に施行可能である。R0 が得られないと長期予後は期待できず,R0 切除可能な症例の選択が重要である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1851-1853 (2020);
View Description
Hide Description
食道癌根治切除後の再発例の再発時期別治療法や予後についてretrospective に検討した。対象は2010 年4 月~2017年12 月の食道癌根治切除190 例のうち術後経過中に再発を認めた56 例(29.5%)とした。これら症例を初回手術後180 日未満に再発が診断された27 例(A 群)と,180 日以上経過後に再発が診断された29 例(B 群)に分けた。両群の進行度や術前治療,再発形式には差がなかったが,A 群で有症状再発例が多かった。外科的介入が可能であったのはA 群1 例,B 群10 例でB 群が有意に多く,二次治療が可能であったのはB 群の5 例のみであった。再発後生存はB 群がよい傾向にあった。食道癌根治術後の早期再発例では有症状の症例が多く,外科的治療介入例や二次治療可能例が少なく予後不良であった。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1854-1856 (2020);
View Description
Hide Description
肉芽腫性乳腺炎は乳腺腫瘤を形成する原因不明の慢性炎症性疾患であり,画像上乳癌との鑑別に苦慮することがある。症例は 50歳台,女性。右乳房C 領域腫瘤に対して針生検を施行し,肉芽腫性乳腺炎と診断された。乳房MRI では悪性の可能性を指摘された。病理組織学的検査と画像検査所見の乖離があること,肉芽腫性乳腺炎としてステロイド治療を施行後の手術は合併症のリスクがあることを考慮し,乳腺腫瘍切除術を施行することにした。永久病理診断は,髄様癌,triple negative type,pT1cN₀cM₀ であった。術後は補助化学療法を施行し,右腋窩センチネルリンパ節生検にて腋窩リンパ節転移のないことを確認して,温存乳房への照射を施行した。肉芽腫性乳腺炎と診断されても,病理組織学的と画像検査所見に乖離がみられる場合には生検方法の変更あるいは摘出生検を試みるべきである。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1857-1859 (2020);
View Description
Hide Description
症例は73 歳,男性。増大傾向の両側性肺結節影を指摘され,当科を受診した。同時性重複肺癌が疑われ,二期的に胸腔鏡補助下左肺S9‒10 区域切除術,右肺S1,S3 部分切除術を施行した。左肺腫瘍は病理組織学的検査にて原発性肺腺癌と大腸癌肺転移の鑑別を要し,術後に下部消化管内視鏡検査を施行した。下部消化管内視鏡では大腸ポリープを認めたが,肺転移を来し得る病変は認められず,腸型腺癌,pT1b,cN0,cM0,Stage ⅠA2 と診断した。右肺腫瘍は乳頭型肺腺癌,pT1c,cN0,cM0, Stage ⅠA3 であり,重複肺腺癌と診断した。腸型腺癌は肺腺癌のまれな組織型であり,診断には大腸内視鏡検査による結腸癌の除外が有用である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1860-1862 (2020);
View Description
Hide Description
はじめに: 進行再発胃癌のthird‒line 以降でnivolumab が臨床使用されているが,免疫関連有害事象(immune‒related adverse events: irAEs)も報告されている。当院でnivolumab 投与後にirAEs を生じた症例を検討する。対象: 2017 年10月~2019 年12 月までにnivolumab を投与した43 例について検討した。結果: irAEs 発症率は23.2%(10/43)で,Grade 3以上では間質性肺炎,副腎機能低下,Stevens‒Johnson syndrome(SJS),1 型糖尿病を認めた。irAEs 発症後もnivolumabで長期予後を得ている症例を3 例認めた。一方で,SJS 発症例は副作用により次治療が困難となっていた。考察: 胃癌third‒line 以降の治療薬剤としてnivolumab に加えてtrifluridine/tipiracil,irinotecan も有効性が示されている。nivolumab が奏効する症例がある一方で,irAEs により次治療が困難となることも想定され,個々の症例に応じたthird‒line 薬剤の選択が望ましいと考えられた。結語: nivolumab は長期の有効性が期待できるが,一方で重篤なirAEs の発症が次治療に影響を及ぼすことは認識しておく必要があると考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1863-1865 (2020);
View Description
Hide Description
症例は80 歳,女性。右腋窩腫瘤を自覚し,前医を受診した。画像検査で右腋窩副乳癌が疑われ,当科に紹介となった。マンモグラフィや超音波検査では右乳房に異常所見を認めず,右腋窩に不整形腫瘤を認めた。切除生検では浸潤性乳管癌に類似した腺癌を認め,ER 陽性,PgR 陽性であった。CT 検査では,乳房内に明らかな病変や遠隔転移を示す所見は認めなかった。右腋窩副乳癌の診断で局所広範囲切除,腋窩郭清および局所有茎皮弁形成を行った。術後病理組織学的所見は,浸潤性乳管癌,ER 陽性,PgR 陽性,HER2 陰性,Ki‒67<10%であり,腫瘍中央に正常乳腺と連続性のない導管組織を認めたことから副乳癌の確定診断となった。術後アナストロゾールの内服を開始し,術後18 か月時点で無再発生存中である。副乳癌は乳癌全体の0.2~0.6%と報告されており,比較的まれな疾患である。右腋窩に発生した副乳癌の1 例を経験したため,文献的考察を加えて報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1866-1868 (2020);
View Description
Hide Description
症例は55 歳,男性。主訴は排便困難であった。CT でS 状結腸から下部直腸にかけての重積,その先進部に腫瘤性病変を認めた。同日,注腸を施行し,下部直腸まで重積していた腫瘍は徐々に戻り整復された。精査にてS 状結腸癌,cT3,cN1b,cM0,cStage Ⅲb の診断にて初診時より23 日目に腹腔鏡下S 状結腸切除術,D3 郭清を施行した。術後合併症なく経過し,術後13 日目に退院した。S 状結腸癌による成人腸重積症に対し,整復の後に待機的に手術することができた症例を経験したので文献的考察を加え報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1869-1871 (2020);
View Description
Hide Description
後腹膜悪性軟部腫瘍である脂肪肉腫への最も有効な治療は外科的切除であり,局所再発のリスクの高さから確実な断端陰性が求められる。今回,骨盤内脂肪肉腫に対し,腹腔鏡と経仙骨によるハイブリッドアプローチで治癒切除し得た症例を経験したので報告する。症例は60 代,男性。骨盤内の直腸右後方を占拠する混合型脂肪肉腫であった。手術は腹腔鏡操作を先行し,右内腸骨動静脈,上直腸動脈を切離し,右骨盤壁に沿うように剝離を行った。口側直腸を離断し,腹膜外経路で結腸を挙上した。ジャックナイフ体位に変換後,右経仙骨アプローチで仙骨前面を剝離し,尾骨を含め直腸肛門と腫瘍および周囲の脂肪織を一塊として摘出した。病理組織学的検査は混合型脂肪肉腫で,切除断端は陰性であった。術後8 か月経過し,無再発生存中である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1872-1874 (2020);
View Description
Hide Description
症例は78 歳,女性。膵頭部腺房細胞癌に対し亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した(pT2pN0pM0,fStageⅠB:JPS 7th)。副作用により術後補助化学療法は3 か月で中止した。術後2 年目の造影CT 検査,PET‒CT 検査で胃小弯にFDG高度集積を伴う2 cm 大腫瘤を認めた。リンパ節再発を疑い開腹すると,胃小弯に3 cm 大腫瘤とその頭側に小腫瘤を触知した。複数個のリンパ節再発と判断し,胃小弯リンパ節郭清術を施行した。病理診断は単発の約2 cm 大の腺房細胞癌リンパ節転移であった。患者の希望にて術後補助化学療法は施行せず,術後1 年7 か月再発の兆候を認めていない。膵腺房細胞癌は全膵腫瘍の0.4%の頻度でまれな腫瘍であり,臨床病理学的特徴は未だ不明な点が多い。近年,自験例のような再発例でも積極的な切除あるいは抗癌剤治療での長期生存例の報告が散見されている。しかし制癌治療の適応,方法は明らかでなく,さらなる症例の蓄積による検討が必要と思われる。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1875-1877 (2020);
View Description
Hide Description
結節性リンパ球優位性ホジキンリンパ腫(NLPHL)は悪性リンパ腫の一種であり,本邦では比較的頻度が少ない。また,腸間膜原発のNLPHL は非典型的である。NLPHL は緩徐に進行する疾患で比較的予後良好であるが,一部悪性転化するリスクがある。境界明瞭な腸間膜腫瘤の術前診断は困難であり,診断と治療を兼ねて早期に外科的介入を行う必要があると考えられる。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1878-1880 (2020);
View Description
Hide Description
症例は69 歳,女性。1 か月前に左乳房腫瘤を自覚し来院した。精査の結果,浸潤性乳管癌と診断され,乳房部分切除と腋窩センチネルリンパ節生検を施行した。最終病理診断は扁平上皮化生を伴う化生癌,トリプルネガティブタイプであった。術後にドセタキセルとシクロホスファミド(TC)療法を施行後,残存乳房への放射線治療と2 年間の経口FU 剤の内服を行った。術後3 年のCT で肺に孤立性の転移巣を認め,カペシタビンとシクロホスファミド(XC)療法を開始したが,転移巣は増大傾向を呈した。転移巣に対して体幹部定位放射線治療(SBRT)を施行したところ,転移巣は不明瞭化した。XC療法による全身療法は,その後有害事象のため中止し,無治療で経過観察中である。SBRT 施行から3 年,術後からは約6 年6 か月経過するが新たな転移再発は認められない。オリゴ転移と考えられる肺転移に対して,SBRT は有効な治療の選択肢の一つと考えられる。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1881-1883 (2020);
View Description
Hide Description
症例は45 歳,男性。黄疸を主訴に当院を受診した。腹部CT で膵頭部に乏血性の腫瘍を認め,腫瘍は上腸間膜動脈に半周以上接し,門脈は腫瘍の浸潤にて狭小化しており,また肝には両葉に多発する転移を認めた。膵頭部癌,T4,N0,M1,Stage Ⅳ(JPS 第7 版)と診断し,まず胆管ステントを留置し減黄を行った。gemcitabine+nab‒paclitaxel 療法を開始し,約24 か月間,30 コース継続した。その間膵頭部の腫瘍の大きさに変化なくSD を維持し,肝両葉の転移はすべて消失した。その後,肝S2 に孤立性転移が出現したためFOLFIRINOX 療法に変更して3 コース行ったが,肝S2 の転移は増大傾向にあり,病勢コントロール目的に腹腔鏡下肝外側区域切除術を施行した。術後経過は良好で術後8 日目に退院し,化学療法を再開した。初回治療から3 年経過した現在,画像上,膵原発巣はSD を維持したまま新たな肝転移の出現なく生存中である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1884-1886 (2020);
View Description
Hide Description
症例は61 歳,男性。繰り返す嘔吐を主訴に当院を受診した。腹部CT で十二指腸上行部に通過障害を生じる高度な狭窄が認められた。同部の腸管壁肥厚はなく,膵にも明らかな腫瘍性病変は認められなかった。上部消化管内視鏡検査では十二指腸上行部に潰瘍瘢痕様の高度狭窄があり,内視鏡の通過はできなかった。生検では悪性所見は検出されなかった。画像所見上も明らかに悪性を示唆する所見はないものの,十二指腸癌や膵癌十二指腸浸潤を完全に否定できないことより手術を行った。手術所見では十二指腸上行部に瘢痕性病変を認め,同部を起点とした通過障害であった。亜全胃温存膵頭十二指腸切除を施行した。術後経過は良好で第17 病日に退院した。病理組織学的診断では膵頭部癌十二指腸上行部浸潤の診断であった。明らかな腫瘍性病変を指摘できない膵癌で,十二指腸浸潤による通過障害を来すものはまれであると考える。非常に興味深い症例であり,文献的考察も踏まえて報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1887-1889 (2020);
View Description
Hide Description
背景: 腹水濾過濃縮再静注療法(cell‒free and concentrated ascites reinfusion therapy: CART)は,難治性腹水に起因する症状緩和に有用である。未治療の胃癌腹膜播種による難治性腹水症例にCART を行い,化学療法を導入できた2 例を経験した。症例1: 患者は56 歳,女性。大量腹水を伴う切除不能進行胃癌の治療目的に紹介された。CART 導入後S‒1+oxaliplatin(SOX)療法を開始した。初回導入よりCART を6 回,SOX 療法を3 コース施行可能であり,原病死直前まで経口摂取が可能であった。症例2: 患者は80 歳,男性。大量腹水を伴う切除不能進行胃癌の診断で紹介された。CART 導入後,trastuzumab+capecitabine+oxaliplatin(Tra+CapeOX)療法を開始した。CART を5 回,Tra+CapeOX 療法を4 コース施行可能であった。考察: CART は腹水貯留による症状緩和に有用であり,全身状態を維持して全身化学療法を継続するために有用である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1890-1892 (2020);
View Description
Hide Description
舌癌は,外科的切除と再建が治療の第一選択となる。今回われわれは,後期高齢者の進行舌癌に対し舌亜全摘術の術中に舌骨挙上することで,再建後に良好な嚥下機能回復が得られた症例を経験したので報告する。症例は89 歳,男性。各種検査の結果,舌扁平上皮癌(cT4aN2bM0,cStage ⅣA)の診断を得た。全身麻酔下に気管切開術,右全頸部郭清術変法(modified radical neck dissection type Ⅱ: MRND type Ⅱ),左肩甲舌骨筋上郭清術,舌亜全摘術,右大胸筋皮弁を用いた舌口腔再建術を施行した。舌亜全摘後に下顎骨下縁に骨孔を形成し,2‒0 ナイロン糸を用いて舌骨を同部まで吊り上げ固定した。皮弁は完全に生着し良好に経過した。再建において,舌骨を下顎骨下縁に吊り上げ固定することで嚥下の咽頭期が再現され,舌接触補助床にて食塊の送り込みが改善し,術後6 か月時点の嚥下造影検査で良好な機能回復を確認した。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1893-1895 (2020);
View Description
Hide Description
症例は69 歳,女性。当院でB 型慢性肝炎の加療中に肝細胞癌(S6,単発)を発症し,肝切除術を施行した。その後,肝内再発を認めRFA 治療を2 回施行した。肝切除術から7 か月後に左副腎転移を切除した。肝切除術から1 年5 か月後に脾臓転移を切除し,さらに肝切除術から3 年7 か月後に肝内再発に対して2 回目の肝切除術と右副腎転移を切除した。初回肝切除術から5 年8 か月後に腹部造影CT で上行結腸近傍に増大傾向を示す結節病変を認めた。腹膜播種再発と診断したが,その他に肝内再発や肝外転移を認めなかったため腹膜播種摘出術を施行した。病理組織学的所見は肝細胞癌の腹膜播種と診断した。術後6 か月経過現在,当院外来通院中であるが無再発生存中である。本症例のように肝内病巣の制御が良好であれば,切除する適応はあると考えられる。今回,肝細胞癌術後腹膜播種の1 切除例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1896-1898 (2020);
View Description
Hide Description
症例は75 歳,女性。腹水コントロールを要するアルコール性肝硬変にて経過観察中に肝細胞癌を認め,肝動脈化学塞栓術(TACE)が施行された。その後5 年間に認めた5 回の肝内再発に対して内科的局所療法(TACE,肝動脈内抗癌剤注入療法,経皮的エタノール注入療法およびラジオ波焼灼療法のいずれかの単独または併用)が適宜施行された。最終の内科的治療の4 か月後に総肝動脈周囲に60×50×30 mm の腫瘤を認め,腹腔鏡下に腫瘍切除術を行い肝細胞癌のリンパ節転移と組織診断された。術後1₇ か月に再び総肝動脈周囲に30×25 mm の腫瘤を認め,腹腔鏡下に腫瘍とともに周囲リンパ節を切除し,肝細胞癌の孤立性リンパ節転移と組織診断された。その後肝細胞癌の再発は認められなかったが,2 回目の手術から22 か月後に膵頭部癌が指摘された。患者は膵癌に対する癌治療を希望せず対症療法により経過観察され,膵癌診断から16 か月後に死亡した。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1899-1901 (2020);
View Description
Hide Description
症例は64 歳,男性。肝機能障害の精査で肝門部領域胆管癌と診断された。腫瘍は右側優位のBismuth 分類Ⅳ型で,門脈右枝~左右分枝への浸潤が認められた。肝予備能,残肝容積は十分であり,拡大肝右葉切除術+肝外胆管切除術+門脈合併切除術が実施された。術中迅速組織診断で十二指腸側・肝側胆管切離断端がともに浸潤癌陽性となったが,進行度や侵襲度を勘案し,膵頭十二指腸切除術の追加や左肝管断端の追加切除は行わなかった。最終的な進行度はpT4b,pN0,cM0,Stage ⅣA,pDM1(w),pHM1(w),pPV1(a),R1 であった。術後化学療法としてgemcitabine(GEM)+cisplatin 療法を1 年,GEM 療法を1 年実施した後,S‒1 療法を継続している。術後5 年3 か月経過した現在,無再発生存中である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1902-1904 (2020);
View Description
Hide Description
症例は60 歳,男性。食道癌に対し術前化学療法後に胸腔鏡下食道亜全摘,後縦隔胃管再建を行った。術後1 年8 か月で,腹腔動脈周囲リンパ節と腹部大動脈周囲リンパ節に再発を認めたため化学放射線療法を行い,その後化学療法を継続していた。化学放射線療法終了後2 か月目に心窩部痛,食欲不振の訴えがあり,CT 検査で再発したリンパ節の壊死と胃への穿通が疑われた。さらに上部消化管内視鏡検査で胃壁後壁に白苔中心部の壊死を伴う25 mm 大の潰瘍形成を認めた。絶食,抗生剤投与による保存的加療で腹部症状と炎症反応の改善を認めた。入院₇ 日目から経口栄養剤を開始したが,食事再開以降も腹部症状や炎症反応の再燃なく,全身状態が安定した入院39 日目に退院した。その後化学療法を再開し,4 か月後の内視鏡検査やCT 検査で転移巣の再増悪はなく,再発から3 年8 か月現在も治療継続中である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1905-1908 (2020);
View Description
Hide Description
発端者は49 歳,女性。盲腸癌(T3N0),S 状結腸癌,T4a,N2b,M1c2(Ova),Stage Ⅳc に対し,結腸全摘・回腸直腸吻合術,両側卵巣切除術を施行した。術後の病理組織学的検査では進行大腸癌2 病変の他に右側結腸を中心に腺腫6 病変,腺腫内癌を2 病変認めた。アムステルダム基準Ⅰを満たす大腸癌の濃厚な家族歴を有していたが,血縁者にポリポーシスの併存が確認されなかった。Lynch 症候群の可能性を考慮し,マイクロサテライト不安定性検査およびミスマッチ修復蛋白の免疫組織化学的検査を施行したが,MSS かつミスマッチ修復蛋白正常発現であり,Lynch 症候群は否定的であった。次世代シーケンス技術を用いた26 遺伝子を含むmultigene panel 検査を行った結果,APC(5q22.2)に病的variant(exon 12 c.994C>T/p.Arg332*)を認めたため,attenuated 型家族性大腸腺腫症と診断した。発端者への結果開示後に,娘3 名に対しsingle⊖site variant解析を施行した。次女,三女に発端者と同一のvariant が確認された。attenuated 型家族性大腸腺腫症と診断された娘2 人は遺伝学的検査判明の各々23 か月,35 か月後に腹腔鏡下結腸全摘・回腸直腸吻合術を施行した。現在,残存直腸の定期的サーベイランスを行っている。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1909-1912 (2020);
View Description
Hide Description
発端者は77 歳,男性。便潜血陽性を主訴に前医を受診した。精査の結果,下行結腸癌,T4a,N1,M0,Stage Ⅲb および直腸腺腫を2 病変認めた。既往疾患に直腸癌(52 歳),盲腸癌(57 歳)の手術歴があり。家族歴は第一度近親者5 名,第二度近親者3 名に消化器腫瘍あるいは婦人科腫瘍の既往を認め,改訂ベセスダガイドラインの₅ 項目中2 項目を満たしていた。術前生検組織を用いて行ったマイクロサテライト不安定性検査ではMSI-H であった。Lynch 症候群の疑いが強いMSI-H 大腸癌としてHartmann 手術を施行した。病理学的検査結果は下行結腸癌,tub2, pT3, pN0, M0,pStage Ⅱa であった。その後,当院へ紹介受診され,切除標本を用いたミスマッチ修復蛋白に対する免疫組織化学的検査ではMSH2/MSH6 の蛋白発現が欠損しており,遺伝学的検査の結果,MSH2 : c.1510+2T>G を同定しLynch 症候群と診断した。発端者への結果開示後に血縁者7 名に対して血縁者診断を行い,4 名に同variant が確認されLynch 症候群variant 保有者と診断した。その後,Lynch 症候群関連腫瘍に対するサーベイランス検査を行ったところ,早期大腸癌の既往がある1 名と今回新規にvariant を同定された1 名に早期大腸癌を認め切除に至った。現在,発端者を含めサーベイランスを継続している。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1913-1914 (2020);
View Description
Hide Description
症例は70 歳,男性。体重減少を主訴に受診した。胃体下部に3 型腫瘍とEOB 造影MRI で肝両葉に30 個以上の多発転移を認め,cT4aN+M1(HEP),Stage ⅣB と診断した。docetaxel+cisplatin+S‒1(DCS)療法を4 コース施行したところ,原発腫瘍はPR であったが多発肝転移はCR が得られたため,腹腔鏡下幽門側胃切除を施行した。術後はS‒1+oxaliplatin(SOX)療法を8 コース施行し,その後はS‒1 単独療法に変更した。肝転移はCR を維持できていたことから術後2 年2か月の時点でS‒1 の投与を終了し,現在術後2 年11 か月無再発生存中である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1915-1917 (2020);
View Description
Hide Description
原発性十二指腸癌はまれな疾患であることから,その治療成績に関する報告は少なく,術式や治療方針は未だ確立されていない。そこで,2010 年1 月~2019 年12 月までの10 年間に当科で切除した原発性十二指腸癌7 例の治療成績を検討し,治療方針について考察した。発生部位は球部5 例(71%),下行脚,水平部各1 例であった。球部の5 例中4 例に幽門側胃切除を行い,他の3 例には膵頭十二指腸切除術を施行した。進行度(UICC TNM 分類第8 版)はStage Ⅰ(T1a/T2,N0)3 例,ⅡA(T3,N0)1 例,ⅢA(N1)2 例,ⅢB(N2)1 例であった。根治度はいずれもR0 切除であった。Stage Ⅱ以上の4 例中3 例にS‒1 による補助化学療法を施行した。予後をみると,Stage ⅠおよびStage ⅡA の4 例に再発はなかったが,Stage ⅢA 以上の3 例中2 例は再発を来した。リンパ節転移のないStage Ⅱまでの治療成績は良好であるが,リンパ節転移を伴うStage Ⅲ以上の治療成績は不良であり,有効な補助療法の確立が今後の課題である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1918-1920 (2020);
View Description
Hide Description
症例は49 歳,男性。肝肺転移を伴う直腸癌に対し2018 年12 月前医で直腸低位前方切除術を施行した(Ra,type 2,tub2,pT4a,pN2a,pM1b,pStage Ⅳb)。患者本人の希望で化学療法は施行しなかった。術後10 か月目に肛門腫瘤を自覚して当科を受診した。肛門に15 mm 大の硬い粘膜下腫瘍様病変を認め,直腸癌肛門転移の疑いで経肛門的局所切除術を施行した。病理検査で腫瘍は重層扁平上皮下で中分化管状腺癌が浸潤性に増殖していた。免疫組織学的検査でCK7(-),CK2₀(1+),CDX2(3+)となり,直腸癌の肛門管転移の診断となった。脈管侵襲は認めず,断端陰性であった。術後全身化学療法を行い,現在まで局所再発を認めていない。今回われわれは,肛門管内に粘膜下腫瘍様の転移を来した直腸癌のまれな1 例を経験したため報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1921-1923 (2020);
View Description
Hide Description
症例は80 歳台,女性。甲状腺乳頭癌術後の皮膚・肺・リンパ節転移にて,当院皮膚科で無治療フォローアップ中であった。同時に膵尾部にも24 mm 大の腫瘤を認め,甲状腺乳頭癌膵転移と考えられフォローされていた。皮膚・肺・リンパ節病変の進行は極めて緩徐であったが,膵病変のみ徐々に増大傾向のため当科紹介となった。診断的治療目的に腹腔鏡下膵尾部切除術,脾合併切除術を施行した。病理診断は脱分化型脂肪肉腫であった。術後,Grade B の膵液瘻を認めたが保存的に軽快し,術後55 日目に軽快退院した。膵から発生した脂肪肉腫は非常にまれである。今回われわれは,診断に苦慮した膵脂肪肉腫の1 例を経験したので,文献的考察を含めて報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1924-1926 (2020);
View Description
Hide Description
症例は90 歳,女性。2 型進行胃癌に対して腹腔鏡下幽門側胃切除術後57 日目,臍創部より腸液の漏出を認めた。経肛門ダブルバルーン(DB)内視鏡検査で盲腸から回腸末端に潰瘍を認めた。粘膜よりサイトメガロウイルス(CMV)DNA陽性を確認した。CMV 腸炎による小腸皮膚瘻と診断し,ガンシクロビル(GCV)投与にて保存的に治療を行い,14 日目には瘻孔閉鎖が得られ軽快し転院となった。原因不明の消化管穿孔に際しては,CMV 腸炎の可能性を念頭に置いて精査加療する必要があると考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1927-1929 (2020);
View Description
Hide Description
管外発育性巨大小腸gastrointestinal stromal tumor(GIST)は卵巣腫瘍と鑑別が困難な例がある。症例は73 歳,女性。下腹部痛を主訴に前医を受診し,CT 検査にて骨盤内に17 cm 大の卵巣腫瘍を疑われ,当院婦人科に紹介受診となった。造影CT 検査と腹部MRI 検査を施行し,上腸間膜動静脈を栄養血管とした小腸GIST の疑いで当科に紹介となり,腹腔内腫瘍摘出術を施行した。腹腔内を巨大な囊胞性腫瘍が占拠し,空腸壁に接していた。子宮,両側付属器とは接しておらず,小腸由来の腫瘍と判断し小腸部分切除を施行した。病理組織学的検査ではc‒kit 陽性で小腸GIST と診断し,imatinib を開始した。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1930-1932 (2020);
View Description
Hide Description
症例は68 歳,女性。直腸癌(pT3N0M0H0P0,pStage Ⅲa)に対して腹腔鏡下直腸高位前方切除術を施行した。術後2 年目に両側肺転移と小脳転移を経時的に認め,それぞれ転移巣切除を施行した。頭部には放射線照射の追加も行った。初回手術後3 年6 か月目に腹部造影CT で膵尾部に腫瘤を認め,原発性膵癌または直腸癌の膵転移の術前診断で膵体尾部切除術を施行した。切除標本の病理組織学的所見では原発の直腸癌組織と類似した高分化管状腺癌であり,免疫染色でCK7 陰性,CK20 陽性,CDX2 陽性であり,直腸癌の膵転移と考えられた。膵転移切除後3 か月目のCT で新規の肝転移と小脳転移を認めたが,その後の化学療法により肝転移巣は消失し,小脳転移も放射線治療により縮小が得られている。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1933-1935 (2020);
View Description
Hide Description
症例は69 歳,女性。胃体中部大弯~上部小弯に広がる3 型病変を認め,生検結果はtub2-por であった。CT で領域リンパ節腫大(bulky N),腹部大動脈周囲リンパ節腫大を認め,cT4a, cN2, cM1(LYM),cStage ⅣB の診断でSP 療法を開始した。3 コース施行後の効果判定で腫瘍およびリンパ節は著明に縮小を認めたため根治切除が可能であると判断し,胃全摘(D2+No. 16 郭清)脾臓合併切除術および右副腎部分切除術を施行した。病理組織学的検査所見では胃全割標本およびリンパ節に癌細胞の遺残を認めず,組織学的効果判定はGrade 3 でpCR と診断した。術後補助化学療法(S-1 単独)を開始するも,1 コース終了後に既往疾患の非定型抗酸菌症の増悪を認めたため以降化学療法は施行せず,術後7 年無再発生存中である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1936-1938 (2020);
View Description
Hide Description
症例は74 歳,女性。腹痛,体重減少を主訴に近医を受診した。腹部エコーにて横行結腸肝弯曲部に腫瘤を認め,当院紹介受診となった。下部消化管内視鏡検査にて肝弯曲部に横行結腸癌を認めた。上部消化管内視鏡検査にて十二指腸下行脚に粘膜の発赤,狭窄を認め,十二指腸浸潤が疑われた。CT で所属リンパ節転移を認めたが,明らかな遠隔転移は認めなかった。以上から,横行結腸癌,十二指腸浸潤(cT4b,N1,M0,cStage Ⅲ)と診断した。術中に腹膜播種や肝転移を認めずR0 手術が可能と判断し,結腸右半切除術・膵頭十二指腸切除術を施行した。病理組織学的所見にてpT4b(Duo,Pan),N1b(3/35)M0,Stage Ⅲb と診断した。術後胃排泄遅延となったが保存的に治療を行い,第37 病日に退院となった。外来にて術後補助化学療法(capecitabine 単独療法)施行中であり,術後8 か月現在無再発生存中である。結腸癌の他臓器浸潤例ではR0 切除ができれば長期生存が得られるという報告もあり,拡大切除を積極的に検討すべきと考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1939-1941 (2020);
View Description
Hide Description
背景: 近年,担癌患者の末梢血の好中球・リンパ球比(NLR),血小板・リンパ球比(PLR),リンパ球・単球比(LMR)などが全身性炎症性反応を評価する指標として,種々の癌腫において報告されている。一方で,遺伝子組換えヒトトロンボモジュリン製剤(rTM)の固形癌DIC に対する有用性が散見されるようになった。本研究では,固形癌DIC に対するrTM療法における全身性炎症性マーカーの臨床的意義を検討した。対象と方法: DIC 症例に対してrTM を投与した固形癌患者63 例を対象とし,NLR,LMR,PLR とDIC 離脱率および28 日生存率との相関を確認した。結果: DIC 離脱率との検討では,LMR で相関はなく(p=0.655),低NLR 症例や低PLR 症例では有意に離脱率が高かった(p=0.037,p=0.024)。さらに28 日生存率との検討においてもLMR では相関はなく(p=0.632),低NLR 症例や低PLR 症例では有意に28 日生存率が高かった(p=0.046,p=0.014)。結語: NLR およびPLR は固形癌DIC に対するrTM 療法において,DIC 離脱率や28 日生存率の予後予測マーカーとして有用性が示唆された。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1942-1944 (2020);
View Description
Hide Description
制御不能な出血を伴う局所進行乳癌に対し先行して手術を行ってQOL を回復し,化学療法を行えた症例を経験した。症例1 は70 歳台,女性。心不全症状で救急搬送された。左乳房に出血,滲出液を伴う巨大な腫瘤を認めた。Hb 5.2 g/dL。生検で浸潤性乳癌,T4bN3cM1(対側腋窩),Stage Ⅳ。噴出するような出血を繰り返すため,手術(左乳房全切除+分層植皮)を行った。術後14 日で退院し,化学療法を導入することができた。症例2 は70 歳台,女性。腰椎圧迫骨折で救急搬送された。診察時に右乳房に出血,滲出液を伴う巨大な腫瘤を認めた。Hb 2.4 g/dL。生検で浸潤性乳癌,T4bN3cM1(両肺),Stage Ⅳ。持続的な出血を認めるため,手術(右乳房全切除+分層植皮)を行った。術後23 日で退院,化学療法を導入し,術後2 年1 か月現在,良好なQOL を保つことができている。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1945-1947 (2020);
View Description
Hide Description
腺房細胞癌(acinic cell carcinoma: ACC)は,唾液腺や膵の腺房細胞癌に類似する腫瘍細胞増殖を主体とする浸潤癌で,乳腺のACC は極めてまれである。われわれは乳腺原発ACC の1 例を経験したので報告する。症例は57 歳,女性。マンモグラフィ(MG)検診で左乳腺に腫瘤を指摘され当院を受診した。最終的に病変が二つの同時性異組織型多発乳癌で,① ACC,② tubulolobular carcinoma(TLC)の診断となった。治療は左乳房切除術+センチネルリンパ節生検を施行し,術後化学療法と内分泌療法を行っている。自験例ACC のHE 染色では,細胞質内の好酸性顆粒が目立つ腫瘍細胞が腺房様構造を豊富に形成していた。また,免疫染色でS-100 蛋白,α1-antichymotrypsin,α1-antitrypsin,lysozyme が陽性で,ER,PgR,HER2 は陰性のtriple-negative 乳癌(TNBC)であった。乳腺原発のACC は予後良好なlow-grade TNBC とされるが,症例集積による生物学的特徴の解明と適切な治療法の検討が必要と考えられる。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1948-1950 (2020);
View Description
Hide Description
症例1 は77 歳,女性。左乳房の発赤,腫脹を主訴に受診した。炎症性乳癌,T4dN1M0,stage ⅢB の診断で,生検では硬癌,ER(-),PgR(-),HER2(-),Ki‒67 10%であった。FEC 療法4 コース+docetaxel(DOC)療法4 コースを施行し,その後に乳房切除術を施行した。治療効果はGrade 2a で,pT3(60 mm),pN2(7/16)の結果であった。術後に放射線療法50 Gy を施行し,5 年経過して再発を認めていない。症例2 は46 歳,女性。左乳房の発赤,腋窩腫瘤,左上肢の浮腫などを主訴に来院した。胸膜・肺・骨に遠隔転移を認め,炎症性乳癌,T4dN3M1,stage Ⅳの診断となった。生検では硬癌,ER(-),PgR(-),HER2(3+),Ki‒67 30%であった。FEC 療法4 コースの後にtrastuzumab(Tra)+pertuzumab(Per)+DOC 療法8 コースを施行して治療効果はcCR であった。さらにTra+Per 療法を8 コース継続した後に乳房切除術を施行し,術後に放射線療法を行った。治療効果はGrade 3 で,術後2 年経過して局所も遠隔転移巣も制御良好である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1951-1953 (2020);
View Description
Hide Description
症例は71 歳,女性。嘔気,嘔吐を主訴に他院を受診した。上部消化管内視鏡にて噴門直下に2 型病変を認めた。CT上大動脈周囲リンパ節転移を認め,切除不能と考えられた。生検病理にてadenocarcinoma(por1),HER2: 2+であり,S‒1+oxaliplatin+trastuzumab 療法を6 コース施行した。その後,神経障害出現のためS‒1+trastuzumab 療法に変更し,4コース施行した。化学療法後のCT にて,原発巣および大動脈周囲リンパ節ともに著明な縮小を認めたため,開腹胃全摘術を施行した。腹膜播種はみられず,大動脈周囲リンパ節まで郭清を行った。病理結果は原発巣およびリンパ節にfibrosis は認めるもののviable な腫瘍細胞を認めず,組織学的CR であった。現在,術後化学療法は施行せず経過観察中である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1954-1956 (2020);
View Description
Hide Description
症例1: 患者は57 歳,男性。直腸癌,pT3N0M0,pStage Ⅱa の根治切除術後12 か月で肝S7 に再発を認めた。術前補助化学療法としてmFOLFOX6+bevacizumab(Bev)療法を4 コース,FOLFIRI+Bev 療法を5 コース施行した。治療効果はResponse Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)でpartial response(PR)であり,肝部分切除術を施行した。病理所見では完全奏効が得られ,術後5 年無再発生存中である。症例2: 患者は70 歳,女性。直腸癌,pT3N0M0,pStage Ⅱa の根治切除術後17 か月で肝S8 に再発を認め,術前補助化学療法としてSOX+Bev 療法を9 コース施行した。治療効果はRECIST でPR であった。肝右葉切除術を施行し,病理組織学的に完全奏効であった。術後4 年無再発生存中である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1957-1959 (2020);
View Description
Hide Description
症例は67 歳,男性。上腹部痛を主訴に前医を受診し,胃体中下部に3 型腫瘍を指摘され,当院に紹介となった。造影CT 検査で腹腔動脈周囲にbulky なリンパ節腫大を認め,膵浸潤も疑われた。cStage ⅢB(cT4b,cN2,cM0)の診断で術前化学療法の後に手術を施行する方針とし,S‒1+cisplatin 療法(SP 療法)を4 コース施行した。効果判定の造影CT 検査で原発巣は著明に縮小し,腹腔動脈周囲のリンパ節も縮小したため,胃全摘術,膵体尾部合併切除術を施行した。病理組織学的効果判定はGrade 3,pathological complete response(pCR)であった。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1960-1962 (2020);
View Description
Hide Description
症例は72 歳,男性。下血を主訴に来院し,大腸内視鏡検査で肛門縁から5 cm の直腸前壁に下縁を有する2 型腫瘍を指摘された。生検で高分化管状腺癌であった。術前胸腹骨盤部CT 検査の結果遠隔転移は認めず,下部直腸癌,cT3N0M0,cStage Ⅱa と診断された。術前の全身検査で徐脈性心房細動および重症肺気腫を認め,全身麻酔のリスクが高い症例と判断された。ペースメーカー留置後,術前化学放射線療法(CRT)(capecitabine 併用,1.8 Gy 28 回,計50.4 Gy)を開始した。術前CRT 後4 週間目の直腸診および画像評価では腫瘍は消失し,生検で悪性所見を認めなかった。十分なインフォームド・コンセントの下,全身麻酔のリスクを勘案し,"watch and wait 治療"の方針とした。現在,術前CRT 後15 か月経過し局所の再増大および遠隔転移を認めず,経過観察を行っている。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1963-1965 (2020);
View Description
Hide Description
症例は81 歳,男性。上行結腸癌に対して腹腔鏡下右半結腸切除術を行った。最終診断はtub1>tub2,pT4apN1bM0,pStage Ⅲb であった。術後1 年4 か月後の腹部CT 検査にて吻合部近傍に腹膜播種再発を認めたため,CapeOX+bevacizumab による化学療法を開始した。治療開始から5 年7 か月後,二次治療としてCapeIRI+bevacizumab 療法を施行中に上腹部痛と貧血の進行を認め入院となった。腹部CT 検査にて再発腫瘍は径30 mm 大から径100 mm 大へ急速に増大しており腫瘍内出血による腫瘍の増大と考え,腫瘍部に対し30 Gy/10 Fr の緩和的放射線療法を行った。その後,効果判定のCT にて腫瘍は径70 mm 大と縮小を認め,上腹部痛の症状も改善,貧血の進行も認めず,第31 病日に退院となった。緩和的放射線療法は,大腸癌術後再発病変からの出血に対する治療法の選択肢の一つとして有用である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1966-1968 (2020);
View Description
Hide Description
症例は70 代,女性。40 代で結腸癌,子宮頸癌の既往がある。70 代で胃癌,乳癌を発症した。家族歴に長男が20 代で大腸癌にて死亡,長女が40 代で子宮体癌があり,Lynch 症候群が疑われ遺伝子診断を行い確定診断を得た。その後,胃癌,尿管癌を発症した。5 臓器7 病変の多臓器多発癌を発症したが,いずれも早期癌であったLynch 症候群の1 例を報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1969-1971 (2020);
View Description
Hide Description
症例は49 歳,男性。術前診断は直腸S 状部癌,c‒T4a,N3,M1b,Stage Ⅳb であった。CT 検査で胃小弯リンパ節を含む領域外リンパ節腫大,肝転移を認めた。局所コントロール目的に腹腔鏡下高位前方切除術,D3 郭清術,胃小弯リンパ節サンプリングを施行した。腫瘍は膀胱壁に浸潤しており合併切除した。摘出した胃小弯リンパ節は転移陽性,f‒T4b,N3,M1b,Stage Ⅳb,cur C であった。術後切除不能直腸癌として中心静脈ポートより化学療法capecitabine/oxaliplatin(CAPOX)+bevacizumab(BEV)を開始した。5 コース施行後中心静脈ライン血栓症を発症し入院,抗血栓療法を行い化学療法は約1 か月休薬した。退院後BEV を中止,CAPOX のみ継続した。計19 コース施行後,下垂体腺腫より出血を認め手術を含め2 か月入院加療を行った。化学療法は約3 か月間休薬した状態でCT およびPET‒CT 検査を施行し,clinical CR の診断であった。化学療法は中止のまま経過観察した。術後2 年7 か月,化学療法を中止し約1 年経過したが,無増悪生存を維持している。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1972-1973 (2020);
View Description
Hide Description
緒言: 葉状腫瘍は乳腺腫瘍の約0.3~0.9%とまれな間質性および上皮性混合腫瘍の一つであり,良性・境界悪性・悪性に分類される。線維腺腫との鑑別が問題になるが,葉状腫瘍と診断された場合,外科的完全切除が推奨される。対象および結果: 2009 年4 月~2020 年4 月までに手術を行い,最終的に葉状腫瘍と診断された44 例を対象とした。観察期間の中央値は44 か月であった。腫瘍径は平均39.2 mm で,施行された術式は乳房切除術3 例,部分切除術26 例,腫瘤摘出術が15 例であった。切除断端は6 例で陽性であった。4 例に乳房内再発を来したが,3 例で初回手術が腫瘍摘出術であった。病理診断では悪性4 例,境界悪性15 例,良性病変が25 例であった。考察: 今回の検討では乳房内再発例の多くに腫瘍摘出術が施行されており,部分切除術などの完全切除するための術式を選択すべきと考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1974-1976 (2020);
View Description
Hide Description
シスチン・テアニンは強力な抗酸化物質であるグルタチオンの生成に寄与するアミノ酸であり,免疫低下の抑制や抗炎症効果,侵襲軽減効果が報告されている。目的: アミノ酸シスチン・テアニンの経口投与が化学療法施行中の口内炎に及ぼす効果を検証する。対象と方法: 消化器癌,乳癌に対し化学療法施行中にGrade 1(CTCAE v4.0)以上の口内炎を生じた17症例に対し,シスチン700 mg・テアニン280 mg/日を28 日間経口摂取させ,口内炎の変化について客観的,主観的な評価を行った。結果: 客観的評価として,Grade の変化は軽快11 例(64.7%),不変5 例(29.4%),悪化1 例(5.9%)と改善傾向にあった。主観的評価として,口内炎による疼痛は13 例中4 例で軽快(30.8%),8 例で消失(61.5%)した。食事摂取量は5 例(29.4%)で増加した。17 例中15 例(88.2%)が効果ありと実感していた。結語: 化学療法施行中にアミノ酸シスチン・テアニンの経口投与を行うことで口内炎症状を軽減する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1977-1979 (2020);
View Description
Hide Description
症例は50 歳,女性。2 か月前から続く心窩部痛と嘔吐のため近医を受診し,CT 検査にて小腸の拡張を認め当院消化器内科に紹介受診となった。造影CT 検査にて上部空腸に狭窄を認め,それより口側の腸管は拡張しており小腸イレウスと診断した。小腸内視鏡にてTreitz 靱帯から約10 cm 肛門側の上部空腸に全周性の2 型病変を認め,生検にて高分化腺癌と診断され手術加療目的に当科紹介となった。手術は単孔式腹腔鏡補助下で行い臍創部までの挙上が容易であったため,体外操作に切り替えた。腸間膜に腫大したリンパ節を認め,口側5 cm,肛門側20 cm のsurgical margin を確保し,リンパ節腫大のある腸間膜を含め小腸部分切除術を行った。病理組織診断はType 2,3×2 cm,tub2,pT4aN1aM0,pStage Ⅲb であった。今回,小腸イレウスを発症したことを契機に術前に小腸癌と診断することができた1 例を経験したので,若干の文献的考察を含めて報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1980-1982 (2020);
View Description
Hide Description
2012 年4 月から6 年間に当院で施行した閉塞性大腸癌に対してbridge to surgery(BTS)目的で大腸ステント留置症例(S 群25 例)と,それ以前の経肛門イレウス管による減圧群(I 群16 例),緊急手術群(E 群15 例)の短期成績および長期成績をretrospective に比較検討した。短期成績ではS 群において全例にステント留置が可能であったが,減圧不成功例とステント脱落例を各々1 例認めた。I 群では腸管穿孔を4 例に認めた。手術時間,術中出血量,術後合併症に関して各群間に有意差を認めなかった。stage Ⅱ/Ⅲ症例の3 年全生存率はS 群79.7%,I 群75.0%,E 群73.3%,3 年無増悪生存率はS群47.1%,I 群56.3%,E 群53.3%であった。同期間のstage Ⅱ/Ⅲ非閉塞性大腸癌群(C 群188 例)では3 年全生存率は85.2%であり,閉塞群(S 群)と同等であった。閉塞性大腸癌に対するステント留置によるBTS は安全で有効な治療戦略であると思われる。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1983-1985 (2020);
View Description
Hide Description
担癌患者における腹水貯留は腹部膨満感や食思不振などの苦痛をもたらし,患者のQOL を低下させる一因となる。腹水の穿刺排液で一時的には症状が改善するものの,腹水とともに有用な蛋白も排出されるため,それを回収し再投与するのが腹水濾過濃縮再静注法(cell-free and concentrated ascites reinfusion therapy: CART)である。この方法で血管内から腹水中に漏出したアルブミンや免疫グロブリンを回収・再投与できるが,処理できる腹水量が限られていること,再投与時に発熱などの副作用があることが問題であった。これらを改善したのがKeisuke Matsusaki-CART(KM-CART)である。今回,当院にて60 歳台,女性のstage Ⅳ乳癌患者に対しKM-CART を行い,良好なQOL 改善を得られた。今後,KM-CART がさらに広く適用されることにより担癌患者のQOL が保たれることが期待される。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1986-1987 (2020);
View Description
Hide Description
症例は46 歳,女性。転移性乳癌で化学療法中に急速に進行する呼吸困難が出現した。胸腹部CT 検査で楔状浸潤影,心臓カテーテル検査にて肺動脈圧高値が明らかになった。肺動脈血の吸引細胞診が施行され悪性細胞を確認し,PTTM の診断となった。化学療法は奏効せず,発症15 週間後に死の転帰をたどった。PTTM は肺動脈に腫瘍塞栓を来す非常にまれな病態であるが,担癌患者に急激な呼吸困難が発症した場合は鑑別に加える必要がある。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1988-1990 (2020);
View Description
Hide Description
症例は54 歳,女性。初診2 年前から右眼瞼周囲皮膚腫脹が徐々に増悪し,当院皮膚科で眼瞼皮膚生検を2 回行うも確定診断に至らなかった。初診後2 か月で右前胸部腫脹が出現し,右腋窩・右鎖骨下・右大胸筋小胸筋間にリンパ節腫大を認め,乳癌による転移が疑われたため当科紹介となった。乳腺超音波検査の結果,右乳房CD 領域に2 cm 大の乳癌を疑う低エコー域を認めた。当科での精査および3 回目の眼瞼皮膚生検の結果より,右乳腺浸潤性小葉癌の眼瞼皮膚転移,右腋窩・右鎖骨下リンパ節転移,右背部皮下転移,T2N3M1,Stage Ⅳと診断した。ER 陽性,PgR 陰性,HER2 陰性,Ki‒67 低発現であり,レトロゾールの内服を開始した。現在もSD を維持しており,QOL が低下することなく治療を継続している。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1991-1993 (2020);
View Description
Hide Description
膵癌は予後不良な癌種として知られているが,集学的治療で53 か月の長期生存が得られているstage Ⅳ膵癌の症例を経験したので報告する。症例は56 歳,男性。悪心・嘔吐と心窩部痛,白色便がありCT 検査が施行され,腹膜播種を伴う膵癌stage Ⅳと診断された。初診時より疼痛が強く,オキシコドン60 mg/日を導入してGEM+nab-PTX による化学療法を計41 コース行った。治療開始から43 か月後に腫瘍増大による十二指腸の通過障害を来したため,十二指腸ステントを留置した。その後,二度再閉塞があったものの,それぞれ追加ステントを留置して十分な経口摂取量を維持している。病勢進行に伴いオピオイド単独での疼痛コントロールが困難となったが,腹腔神経叢ブロックと緩和照射(20 Gy/5 Fr)を行うことで疼痛コントロールは良好となり,二次治療としてFOLFIRINOX 療法を導入した。stage Ⅳ膵癌であっても集学的治療を組み合わせることでQOL を維持し,長期生存を得ることも可能である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1994-1996 (2020);
View Description
Hide Description
Virchow リンパ節転移を伴う進行胃癌に対し集学的治療により長期生存を得られている1 例を経験したため報告する。症例は75 歳,男性。心窩部痛の精査目的に施行した上部消化管内視鏡検査で胃癌の診断となった。左鎖骨上窩リンパ節に転移を認め,cT3N3M1(LYM)H0P0,cStage Ⅳと診断された。以後1 年6 か月間にS‒1+CDDP 療法5 コース,S‒1+docetaxel 療法14 コース,S‒1+CPT‒11 療法3 コースを施行した。化学療法後のPET‒CT 検査で原発巣と所属リンパ節以外に集積はなく,conversion surgery として胃全摘術,D2 リンパ節郭清を施行した。病理所見はType 5,55×50 mm,L,Less,tub1>tub2,T3,int,INF b,ly2,v1,pPM0,pDM0,pN2(3/29),HER2(-),組織学的効果Grade 1b。術後化学療法として1 年9 か月間,S‒1 療法を行った。切除から4 年7 か月後のCT 検査で左頸部リンパ節腫脹を指摘され,左頸部リンパ節摘出術を施行した。病理所見で胃癌の左頸部リンパ節転移の診断となり,術後に放射線照射(56 Gy/28 Fr)を施行した。その後再発なく経過しており,conversion surgery から7 年1 か月間,診断から8 年11 か月間の長期生存が得られている。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 1997-1999 (2020);
View Description
Hide Description
多発性骨髄腫に合併した肺に多発囊胞性病変を示した肺軽鎖沈着症(LCDD)が,特異的なCT,胸腔鏡所見を認めたので報告する。症例は60 歳,女性。主訴: 胸背部痛。精査にて多発性骨髄腫(κ鎖Bence Jones 型)と診断された。全身CTにて両肺に一部で血管が横切する多発薄壁囊胞性腫瘍を認め,骨以外の他臓器に異常は認めなかった。肺病変の確定診断目的に胸腔鏡下肺部分切除術を施行した。胸腔鏡では肺胸膜に多発する白色扁平の楕円形腫瘍を認めた。同腫瘍の切除標本病理所見では,免疫染色でCongo red 染色陰性,κ染色陽性の好酸性無構造物質の沈着を認め肺軽鎖沈着症(pulmonary LCDD)と診断した。治療は全身化学療法(VTD therapy)2コース施行した。化学療法後胸背部痛は軽快し,採血でβ₂-MG,κ/λ ratio,尿検査でベンスジョーンズ蛋白の結果は改善傾向を認めたが,肺多発囊胞性病変に変化はなかった。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2000-2002 (2020);
View Description
Hide Description
症例は65 歳,男性。2019 年9 月,左葉を占有する10 cm の肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC)の破裂で近医より救急搬送された。当院消化器内科で肝動脈塞栓による止血術を施行した。その後の精査でS8 にもHCC を認め,左葉およびS8 病変に対して肝動脈化学塞栓術(transcatheter arterial chemoembolization: TACE)が施行された。左葉HCC は肝外からもfeeder を認め,TACE でのコントロールが不十分であったため,手術目的に当科紹介となった。AFP 18.7 ng/mL,PIVKA‒Ⅱ 16,217 mAU/mL,HBV(-),HCV(-),手術の1 週間前にindocyanine green(ICG)50 mg を静脈投与し,ICG 停滞率14.5%,Child‒Pugh 分類A,liver damage A で,術前CT では明らかな腹膜播種を認めなかった。開腹肝左葉切除術を施行した。ICG 蛍光法で腫瘍へのICG 集積に加え,大網に4 か所のICG 集積を伴う小結節を認めた。これらの結節の切除も行い,すべてが病理で腹膜播種の診断であった。ICG 蛍光法が微小な腹膜播種の検出に非常に有用であった症例を経験したので報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2003-2005 (2020);
View Description
Hide Description
山口県内で胃癌診療に携わる医師23 名を対象に,切除不能再発胃癌に対する三次化学療法の現況および意識調査についてアンケート調査を行った。三次化学療法移行率は60%以下との回答87%,60%以上の移行率との回答が13%であった。三次化学療法の第一選択はニボルマブ87%,CPT-11,トリフルリジン・チピラシル塩酸塩,ドセタキセルがそれぞれ4%ずつであった。また,二次から三次化学療法への切り替えのタイミングとしてはRECIST PD が61%と最多で,その他baseline PD 43%,臨床上病勢進行43%,腫瘍マーカー上昇が39%であった。免疫チェックポイント阻害剤使用後の切り替えのタイミングは初回CT でのPD 43%,2 回目CT でのPD 43%であった。山口県における胃癌三次化学療法の選択レジメンとしてはニボルマブが80%以上で第一選択として使用されていた。一方,二次から三次化学療法への切り替えのタイミングやニボルマブから四次化学療法への切り替えのタイミングは医師間で意識の差がみられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2006-2008 (2020);
View Description
Hide Description
症例は60 歳台,女性。盲腸癌に対して腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した(pT3,pN2b,pM0,pStage Ⅲc)。術後補助化学療法としてFOLFOX を12 コース施行したが,終了24 か月後にCEA の上昇を認め,PET‒CT にてFDG 集積を伴う腹膜播種結節を多数認めた。CAPOX/bevacizumab 療法を4 コース施行し,PET‒CT で結節の縮小を認めたため腹膜播種切除術,両側卵巣切除術によりR0 切除が行えた。腹膜播種再発症例ではCAPOX/bevacizumab 投与により病勢コントロールが可能となり,R0 切除が得られる可能性がある。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2009-2011 (2020);
View Description
Hide Description
症例は52 歳,男性。2014 年6 月小腸癌(pT4aN1M0,pStage ⅢA: 大腸癌に準じる)と診断され,開腹小腸部分切除を施行した。術後補助化学療法(XELOX 8 コース)を施行し経過観察していたが,術後3 年6 か月で腹膜播種再発を認め,bevacizumab+XELOX 療法を導入した。SD を維持していたが,病勢進行のため合計11 コースでレジメン変更となった。原発巣がMSI‒H であることを確認し,2019 年4 月よりpembrolizumab 療法を開始した。最大治療効果PR(31%縮小)であったが,治療開始6 か月で新規病変を認めPD となった。しかし臨床的に有効と考え治療開始後14 か月の現在,有害事象なく治療を継続している。MSI‒H 小腸癌はまれだが,pembrolizumab の投与機会を逃さないよう正確なスクリーニングが肝要である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2012-2014 (2020);
View Description
Hide Description
症例は72 歳,男性。既往歴に未治療の慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease: COPD)があった。心窩部痛を主訴に当院を受診し,上部消化管内視鏡検査を行ったところ胃体下部に3 型の進行胃癌を認めた。術前画像検査で遠隔転移を認めず手術適応であったが,呼吸機能検査で重度の閉塞性換気障害を認めた。この時点での手術は呼吸器合併症のリスクが高いと判断して,COPD に対する投薬と入院2 週間での呼吸リハビリテーションを先行した後に手術を行った。手術は腹腔鏡下幽門側胃切除術+D2 郭清+Roux-en-Y 再建を施行した。術後の呼吸状態は安定して経過し,Clavien-Dindo 分類Grade Ⅱの腹腔内感染を合併したものの,その他の重篤な合併症なく術後12 日目に退院となった。重度な呼吸機能低下を認める症例に関して,術前呼吸リハビリテーションを介入することで術後肺合併症を減らし安全に手術を行える可能性があることが示唆された。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2015-2017 (2020);
View Description
Hide Description
症例は90 歳,男性。胃体上部後壁の内視鏡的切除非適応の早期胃癌に対して他施設で動注化学療法が実施された。その後,再発したため当院で内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)を実施した。内視鏡的根治度はC-2 であったが,高齢であり,かつ早期胃癌ESD 非治癒切除病変リスクスコアリングシステムで中リスクであったため追加胃切除は施行せず経過観察となった。術後15 か月で再発は認めていない。他治療後の再発に対するESD のエビデンスはなく不明な点が多いが,本症例では動注化学療法後の瘢痕を認め,病変直下の粘膜下層には局注液が入らなかった。剝離時も粘膜下層の線維化のため処置に難渋したが,合併症はなく一括切除が可能であった。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2018-2020 (2020);
View Description
Hide Description
症例1 は51 歳,男性。食道胃接合部癌に対し開腹胃全摘術を施行し,術後病理診断でalpha-fetoprotein(AFP)産生胃癌と診断された。術後1 か月の全身CT で肺結節性転移と血清AFP 値の上昇を認め全身化学療法を開始したが,基礎疾患の増悪と有害事象のため継続が困難となり,術後4 か月で死亡した。症例2 は79 歳,男性。胃前庭部進行癌に対し開腹幽門側胃切除術を施行し,術後病理診断でAFP 産生胃癌と診断された。術後6 か月のCT で多発リンパ節転移再発と血清AFP 値の上昇を認めた。weekly PTX,trastuzumab+XP,放射線療法を行い,術後4 年4 か月で転移巣は消失した。その後,術後5 年9 か月のCT にて再度リンパ節転移再発を認め,capecitabine+trastuzumab,ramucirumab,nivolumab などを投与し,best supportive care へと移行したが,術後9 年8 か月生存中である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2021-2023 (2020);
View Description
Hide Description
当院で2013 年4 月~2018 年12 月の間に化学療法後に手術を行った進行大腸癌22 例を検討した。7 例がneoadjuvant chemotherapy(NAC)として施行されていた。治療開始時,切除不能であった15 例中6 例は化学療法が奏効し,R0 切除を行えた(conversion 群)。姑息切除の1 例のみRM1 であったが,残りの21 例ではRM0 切除できた。術後生存期間中央値は,NAC 群42 か月,conversion 群28 か月,palliative resection 群17 か月であった。NAC 群では再発は1 例であったが,conversion 群では全例に再発を認めた。今回の検討では術前化学療法の臨床的意義についてはさらに検討する必要はあるが,術前化学療法は重篤な副作用も少なく安全に施行し得ると思われた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2024-2026 (2020);
View Description
Hide Description
症例は60 歳台,女性。主訴は心窩部不快感。上部内視鏡検査で胃穹窿部に2 cm 大の0‒Ⅱb 病変を指摘,生検で胃印環細胞癌と診断した。胸腹部CT 検査で左肺と右乳腺に腫瘍を認め,生検で浸潤性小葉癌,原発性肺腺癌と診断した。多科合同カンファレンスで治療方針を審議し,三重複癌のうち胃病変に対しロボット支援下噴門側胃切除術,D1+リンパ節郭清,食道残胃吻合術を施行した。免疫組織化学染色でER(+),GCDFP‒15(+),GATA‒3(+)を認め,乳癌胃転移(T2N1M1,Stage Ⅳ)と診断した。2 か月後,左上葉肺癌に対し左肺上葉切除術を施行,肺腺房腺癌(pT2N0M0,pStageⅠB)と診断した。胃切除後6 か月の現在,アロマターゼ阻害薬によるホルモン療法を継続中である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2027-2029 (2020);
View Description
Hide Description
症例は81 歳,女性。主訴は頭痛,倦怠感。血液検査で炎症反応高値を認め,腹部CT 検査で多発肝膿瘍と診断され抗菌薬治療,次いで経皮経肝ドレナージを施行された。経過観察中のCT 検査で下部直腸腫瘤陰影を指摘された。肝膿瘍の診断治療を契機に発見された直腸癌と診断し切除術を施行した。病理組織学的所見では,Rb,type 1,26×25 mm,tub2,pT1b(SM 8,000μm),Ly0,V1a,pN0,pStage Ⅰであった。術後は,肝膿瘍の再燃なく経過している。過去の報告例ではT3 以深の進行症例が多く,本症例のごとくSM 癌はなかった。若干の文献的考察を加えて報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2030-2031 (2020);
View Description
Hide Description
高齢化社会を迎え高齢癌患者への対策は喫緊の課題である。高齢者胃癌は進行して低栄養,貧血を伴って発見されることも多く,術後の栄養管理を含めた治療戦略が必要である。今回,低栄養の高齢胃癌患者に対し胃全摘術および周術期・在宅経腸栄養療法を施行し,良好な経過が得られている症例を報告する。症例は脳梗塞の既往がある82 歳,女性。幽門狭窄を伴う4 型進行胃癌で紹介された。プレアルブミン値7.2 mg/dL,Hb 値8.7 g/dL で高度低栄養と貧血を認めた。中心静脈栄養管理による術前栄養管理を行い,腹腔鏡下胃全摘術および経腸栄養チューブ留置術を行った。第2 病日より経腸栄養を行い術後合併症なく退院した。退院後,在宅で夜間のみの経腸栄養療法を3 か月間施行した。術後6 か月でプレアルブミン値,体重とも維持され,補助化学療法も安全に継続できている。高齢者胃全摘術後の夜間経腸栄養療法は,体重減少予防や栄養状態維持に有用と思われた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2032-2034 (2020);
View Description
Hide Description
症例は79 歳,女性。20XX 年1 月に腹痛,嘔吐を来して上部消化管内視鏡検査を施行した。十二指腸球部上壁に出血・凝血塊を伴う潰瘍性病変を認め,生検で十二指腸神経内分泌腫瘍(NET)と診断し同年3 月亜全胃温存膵頭十二指腸切除術(SSPPD)を施行した。病理組織学的診断はNET,G2,T2,N1,M0,Stage Ⅲであった。術後無治療で経過観察したが,20 か月後の腹部造影CT 検査で肝S4,S7,S8 に転移再発を認めた。治療としては肝動脈塞栓化学療法(TACE)やソマトスタチンアナログ(SSTa)があげられた。高齢でも負担は少なく両者の併用により予後延長効果が十分に得られると判断し,以後28 日ごとのSSTa の皮下注射を継続するとともに,本人の体力を考慮し腫瘍の再増大が著明となった時のみTACE を行う方針とした。以後5 年経過しているが,年1 回程度のTACE で十分な病勢コントロールが得られている。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2035-2037 (2020);
View Description
Hide Description
閉経後ホルモン受容体陽性乳癌に対する術前内分泌療法は,術前化学療法と比較して治療効果は同等であり,有害事象も少ないとされている。そのため患者の希望や年齢などを考慮し,術前治療として内分泌療法を選択することはしばしばある。当院で過去5 年間に内分泌単独療法後に切除を行った閉経後乳癌9 例を検討した。浸潤性乳管癌7 例,粘液癌は2 例であり,最終診断は7 例で腫瘍縮小を認め(PR),1 例では完全奏効(CR)が得られた。1 例では長期経過のなかで一度は腫瘍縮小効果を認めたが,その後増大となった(PD)。治療開始3 か月程度で腫瘍縮小効果を一度検討し,その後の治療方針を再検討する必要がある。高齢者や合併症を伴う閉経後ホルモン感受性陽性乳癌患者への術前治療として,内分泌単独療法は治療選択肢の一つとなり得ると思われた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2038-2040 (2020);
View Description
Hide Description
乳癌術後,多発肺転移を認めた超高齢者乳癌患者に対し低用量paclitaxel(PTX)+bevacizumab(BV)療法が奏効した1 例を経験した。症例は86 歳,女性。cStage ⅡA のトリプルネガティブ乳癌に対し乳房全切除術+センチネルリンパ節生検を施行した。術後1 か月後に肺転移が出現した。超高齢者であるが,全身状態は良好であったため薬物療法を開始することとなった。まずS-1 を開始し8 か月間はSD を維持していたが,NCC-ST-439 の増加と肺転移増悪を認めたためレジメンを変更し,PTX+BV 療法を施行した。高齢のため隔週投与,低用量で行った。投与後よりNCC-ST-439 は低下し,CTでも腫瘤は空洞形成を認め効果はPR であった。重度の有害事象は認めず,PTX+BV は9 か月間投与可能であった。その後,蛋白尿で治療は中止せざるを得なかったが,肺転移に対して一定の治療効果を得られた。PTX+BV 療法の隔週投与は,低用量でもあるにもかかわらず一定の抗腫瘍効果が見込まれる可能性が示唆された。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2041-2043 (2020);
View Description
Hide Description
乳腺紡錘細胞癌は比較的まれな腫瘍である。今回,術前化学療法中に急速増大した乳腺紡錘細胞癌の1 例を経験したので報告する。症例は72 歳,女性。右乳房腫瘤を自覚し受診した。触診で右C 区域に20 mm 大の腫瘤を認めた。針生検を施行し,invasive ductal carcinoma,triple negative breast cancer,右腋窩リンパ節の穿刺細胞診でClass Ⅴとなり,右乳癌,cT2N1M0,cStage ⅡB の診断で術前化学療法を行った。FEC100 4 コース終了後,腫瘤は40 mm 大に急速に増大し,初診から4 か月後に胸筋温存乳房切除術+腋窩リンパ節郭清(Level Ⅱ)を施行した。術後病理組織学的結果はspindle cellcarcinoma であった。術後はweekly PTX 12 コースを施行し,前胸壁・鎖骨上窩に放射線療法を行った。術後3 年が経過したが,再発なく経過している。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2044-2046 (2020);
View Description
Hide Description
症例は48 歳,女性。左腋窩副乳原発の浸潤性小葉癌(invasive lobular carcinoma: ILC)と診断され,当科を受診した。MRI 検査では49×43 mm 大のILC 病変と乳管内進展を含む70 mm 大の広がりを認めた。手術は左腋窩部広範切除,左腋窩リンパ節郭清を施行し,上肢の可動域制限を避けるために広背筋皮弁で腋窩を再建した。病理組織学的検査では副乳原発ILC,浸潤径80×50 mm,リンパ節転移陽性,切除検体の外下方の皮膚側断端で浸潤癌陽性であった。局在の特殊性およびILC の浸潤様式の特徴を考慮した画像診断と,外科治療戦略が必要であると考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2047-2049 (2020);
View Description
Hide Description
症例は79 歳,女性。主訴は左乳房腫瘤。MRI 画像では左乳房CAE 区域に潰瘍を伴う10×8 cm の囊胞性腫瘤を認め,囊胞内癌が疑われた。また,右乳房C 区域に1 cm の腫瘤を指摘された。針生検で左乳房の囊胞性腫瘤は悪性葉状腫瘍と診断され,右乳房腫瘤はLuminal A,cT1N0M0,cStage Ⅰと診断された。CT で両側腋窩リンパ節の腫脹は認められなかった。左乳房は腫瘍直上の広範な皮膚切除を伴うBt(nipple⊖sparing mastectomy: NSM)を行い,右乳房はBp+SN を行った。術後病理組織学的診断では左乳腺腫瘍は紡錘細胞癌と診断し,タイプはtriple negative breast cancer(TNBC),pT4bNxM0,pStage Ⅲであった。術後治療は乳癌に準じた治療と年齢を考慮しweekly-paclitaxel 療法4 コース,内分泌療法,左胸壁と右残存乳房への放射線照射を選択した。左乳腺腫瘍の診断が悪性葉状腫瘍から術後病理組織学的診断で紡錘細胞癌,TNBCへと切り替わった。このことで乳頭乳輪の追加切除の有無,センチネルリンパ節生検の有無など術後治療方針の決定に苦慮した。術前に悪性葉状腫瘍と診断が付いても乳癌の可能性を考慮し,術式,術後治療も検討するべきであった。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2050-2052 (2020);
View Description
Hide Description
症例は65 歳,男性。低血糖による意識障害で救急搬送された際の腹部超音波検査にて,肝腫瘤を指摘された。腹部造影CT 検査において門脈臍部に近接した肝S2/3 に,直径2.5 cm 大の腫瘤を認めた。早期相で濃染され後期相でwashout 像を呈し,肝細胞癌の診断で肝外側区域切除術を施行した。病理組織検査にて神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor: NET)G1 と診断された。上部・下部消化管内視鏡検査および術中所見で他部位に病変が認められず,肝原発NET(primary hepatic NET: PHNET)と考えられた。本症例において未詳の原発巣が存在する可能性もあるため,今後も注意深いフォローアップが必要であると考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2053-2055 (2020);
View Description
Hide Description
十二指腸乳頭部癌に対して,輪状膵温存での経十二指腸的乳頭切除術を施行した症例を経験したので報告する。症例は76 歳,女性。腹痛精査の上部内視鏡検査にて十二指腸乳頭部癌を指摘された。C 型肝硬変を認めたため縮小手術の方針となった。術中所見で輪状膵を認めたため,十二指腸から輪状膵を剝離挙上して経十二指腸的乳頭切除術を施行した。術後経過は良好で術後化学療法(S‒1)を行ったが,術後15 か月で原病死となった。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2056-2058 (2020);
View Description
Hide Description
近年,トラスツズマブ,ラムシルマブ,免疫チェックポイント阻害剤,トリフルリジン・チピラシル(ロンサーフ®)などの新規胃癌抗癌剤の有効性が次々と明らかになり,高度進行・再発胃癌患者の予後が改善してきている。今回,後方lineとしてトリフルリジン・チピラシルを使用しながらPS 0 を長期維持し,再発後38 か月の長期生存を得られている症例を経験したので報告する。症例は60 歳,女性。進行食道胃接合部腺癌に対し胃全摘術+下部食道切除術を施行し,術後補助化学療法(S‒1)を1 年間施行した。術後1 年8 か月目に腹膜転移および肝転移再発を認めた。以後,XELOX 療法,パクリタキセル/ラムシルマブ療法,ニボルマブ治療,イリノテカン単独療法を施行した。腹膜播種は消失したが肝転移でPD の判定となった。五次治療としてトリフルリジン・チピラシルを4 コース継続し,肝転移はSD を維持しており,PS 0 も4 か月間継続している。後方line としてトリフルリジン・チピラシルは安全に使用でき,有効性が期待できる。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2059-2061 (2020);
View Description
Hide Description
胃癌患者の難治性癌性腹水に対して腹腔-静脈シャント(peritoneo-venous shunt: PVS)を造設し,在宅期間の延長およびquality of life(QOL)の向上を認めた症例を経験したので報告する。症例は70 歳台,女性。2013 年2 月,胃癌の診断で胃全摘術を施行された。術後5 年7 か月,腹膜播種再発・癌性腹水の診断となった。一時は化学療法にて腹水は減量し腹部膨満感の訴えはなくなったが,その後増加し,化学療法や利尿薬ではコントロール不能となり,症状緩和のため腹水穿刺ドレナージを行った。徐々に腹水穿刺を希望する回数が増えてきたため,腹水濾過濃縮再静注法(cell-free concentrated ascites reinfusion therapy: CART)を施行した。CART による合併症は認めなかったが,2 回目の予定日前に腹部膨満感著明となったため,PVS を造設した。PVS による合併症は認めず,PVS 挿入後,腹囲と体重は著明に改善した。外来通院にて数回化学療法施行後に体力低下に伴ってbest supportive care(BSC)となったが,PVS は機能し腹水再貯留もなく自宅での日常生活が可能であった。PVS 造設第158 病日に患者・家族希望にて入院となり,第164 病日に原病死した。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2062-2064 (2020);
View Description
Hide Description
症例は55 歳,男性。腹部膨満感を主訴に近医を受診した。上部消化管内視鏡検査で胃体上部後壁に粘膜下腫瘍病変を認め,生検で胃消化管間葉系腫瘍(GIST)と診断され,当科紹介となった。腹部造影CT では,腫瘍は約8 cm 大で,膵体尾部との境界が不明瞭であった。膵体尾部合併切除が必要となる可能性があったため,imatinib による術前化学療法を行う方針とした。imatinib 投与2 週間後のCT で腫瘍体積が44%縮小し,有効と判断した。投与6 か月後には膵体部との境界が明瞭化したため,腹腔鏡下胃局所切除術を施行した。合併症なく術後7 日目に退院した。術後8 か月現在,無再発生存中である。術前imatinib 療法は,拡大手術が懸念される大型胃GIST に対して有用な治療戦略の一つになり得ると考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2065-2067 (2020);
View Description
Hide Description
症例は50 歳台,男性。胃癌に対して腹腔鏡下幽門側胃切除術(D2 郭清,Billroth Ⅰ再建)を施行した。病理結果はL,Gre,Post,Type 3,por>tub2,pT3N3a, M1(CY1),fStage Ⅳであり,S-1 による術後化学療法を行った。術後6 か月のCT 検査にて肝S6,7,8 に最大径5×4 cm の計3 個の腫瘤を指摘され,多発性肝転移再発の診断となった。nab-paclitaxel+ramucirumab(nab-PTX+RAM)併用療法を開始し,部分奏効が認められたため12 コース施行後に腹腔鏡下肝部分切除術を施行した。病理結果にて切離断端がわずかに不明瞭であったため,術後にnab-PTX+RAM 併用療法を6 コース施行したが,現在術後12 か月経過しているが無再発生存中である。今回われわれは,胃癌術後肝再発に対してnab-PTX+RAM 併用療法後に腹腔鏡下肝部分切除術を施行した1 例を経験したので報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2068-2070 (2020);
View Description
Hide Description
症例は60 歳台,女性。胃癌MLU,Circ,type 4 の診断で胃全摘術を施行した。病理組織学的にP0CY1 でStage Ⅳと診断され,一次治療としてS-1+CDDP 療法を行った。しかし食思不振のため2 コースで中止となり二次治療に変更,脱毛と手指の痺れを理由にramucirumab(RAM)単剤療法を選択した。CA19-9 値は術後約2 年間漸増しつづけ,その後約2年間は漸減に転じた。この間画像上無再発であったが,術後4 年目にCA19-9 値が再上昇し,CT 上播種巣が出現したため同治療は74 コースで中止となった。われわれは,約40 か月間のRAM 単剤療法で病勢コントロールし得たP0CY1 胃癌症例を経験した。今後,さらに著効例を集積し,分子生物学的手法によりRAM 投与時の目安となるbiomarker の解明が必要であると考える。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2071-2073 (2020);
View Description
Hide Description
症例は50 歳台,男性。大腸癌,RS,2 型,cT4b(SI: 膀胱,精囊)N2M0,H0P0PUL0,Stage Ⅲc の診断で,開腹前方骨盤内臓全摘術,D3 リンパ節郭清,側方郭清,小腸部分切除,回腸導管造設,S 状結腸人工肛門造設を施行した。術後病理組織学的診断では,大腸癌,RS‒S,3 型,pT4b(SI: 膀胱,回腸)N0M0,pStage Ⅱc であった。術後2 年3 か月経過し骨盤内に再発所見を認め,恥骨への浸潤が疑われたため根治的切除は困難と判断し,化学放射線療法(chemoradiotherapy:CRT)としてS‒1(120 mg/day)内服,放射線照射(40 Gy/20 Fr)を施行した。CRT 後にCT にて腫瘍の縮小を認めたためMiles 手術を施行した。術後病理組織学的診断では,再発巣は消失し癌の遺残は認めず,瘢痕成分のみで病理組織学的効果判定はpCR(Grade 3)であった。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2074-2076 (2020);
View Description
Hide Description
症例は56 歳,男性。主訴は下血。精査の結果,膀胱三角部に浸潤を伴うS 状結腸癌,cT4bN0M0 の診断で術前化学療法としてmFOLFOX6+panitumumab 療法を施行した。6 コース施行後,画像上腫瘍の縮小を認めたものの膀胱浸潤は残存していたため,根治切除には膀胱合併切除が必要と判断した。患者本人より尿路再建術としてストーマ拒否があったため,回腸を用いた代用膀胱造設を選択し,低位前方切除術および膀胱合併切除術を施行した。病理学的根治切除を得た。術後8か月再発なく,排尿機能や尿失禁もほとんどなく経過している。さらなる経過観察が必要であるが,膀胱全摘の合併切除が必要な局所進行大腸癌において代用膀胱造設術は有用な再建法の選択肢となり得る。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2077-2079 (2020);
View Description
Hide Description
症例は70 歳台,男性。全身劵怠感と体重減少を主訴として当院を受診した。精査の結果,傍大動脈リンパ節転移・多発肝転移を伴うS 状結腸癌と診断し,performance status(PS)不良であったため入院となった。原発巣による症状を認めなかったことと,PS が不良で耐術不能と思われたことより,FOLFOX 療法を施行した。2 コース終了後,PS は改善したが原発巣の増大による腸閉塞状態となったため,大腸ステントを留置した上で腹腔鏡下S 状結腸切除術を施行した。術後はFOLFOX 療法を2 コース,FOLFOX+bevacizumab 療法を4 コース施行し,術後5 か月経過した現在無増悪生存中である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2080-2082 (2020);
View Description
Hide Description
症例は55 歳,女性。多発肝転移を伴う直腸RS 癌の穿孔による汎発性腹膜炎で緊急ハルトマン手術を施行した。術前の血液検査ではCEA 高値を認めた。また,CT では左肺尖部に2 cm 大の薄壁空洞病変を認め,敗血症性肺塞栓を疑った。集学的治療により全身状態は改善した。病理組織学的所見はadenocarcinoma(tub2),T3N1M1,Stage Ⅳの診断で化学療法を開始した。CEA 値は徐々に低下し,術後4 か月には正常化した。CT 上で多発肝転移巣は石灰化を認め,肺病変は著変なく経過した。有害事象により抗癌剤を変更しながら化学療法を継続した。術後1 年5 か月の胸部CT で左肺空洞病変の壁肥厚と周囲にspicula を認めた。血液検査ではCEA 値は正常,SLX とNSE が軽度上昇を認め,血清アスペルギルス抗原陽性であった。気管支鏡検査では洗浄細胞診Class Ⅰ,擦過細胞診Class Ⅲであった。直腸癌肺転移,原発性肺癌,アスペルギローマが疑われ,肺部分切除を施行した。病理組織学的所見は直腸癌肺転移の診断であった。初回手術から2 年現在,化学療法継続中である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2083-2085 (2020);
View Description
Hide Description
症例は73 歳,男性。貧血精査目的の上部消化管内視鏡検査で,食道胃接合部に白色から発赤調で易出血性の不整な隆起性腫瘤を認めた。生検では充実型低分化腺癌が疑われたが確定診断が得られず,追加で施行した免疫組織化学染色で悪性黒色腫と診断した。食道胃接合部原発の悪性黒色腫,cT3N1M1(副腎,骨),cStage Ⅳb(食道癌取扱い規約第15 版)に対して,ペムブロリズマブの投与を行ったが肺転移が出現し原病死した。本例は腫瘍の主局在が胃側にあり,メラニン欠乏性悪性黒色腫であったため典型的な肉眼的・組織学的所見が得られず診断に難渋した。食道胃接合部の腫瘍においても,メラニン欠乏性悪性黒色腫の可能性を念頭に置いて診断を行う必要がある。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2086-2088 (2020);
View Description
Hide Description
症例は21 歳,女性。貧血によるショックのため入院し,造影CT で5 cm の十二指腸空腸曲に位置するgastrointestinal stromal tumor(GIST)の診断に至り,腹腔鏡下十二指腸分節切除を施行した。自重で右側に腫瘤が倒れるよう手術時体位を右半側臥位とし被膜損傷を予防し,体腔内で機能的端々吻合にて再建した。当院で胃GIST に対する腹腔鏡下胃切除後の腹膜播種再発例は1 例(5.5%)と少なく,腹腔鏡下手術に習熟した施設であれば十二指腸乳頭遠位側GIST における腹腔鏡下分節切除は安全で有効な選択肢と考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2089-2091 (2020);
View Description
Hide Description
症例は70 歳,女性。3 年前より右乳房腫瘤を自覚するも,放置していた。増大を認め,出血も伴うようになったために近医を受診し,精査加療目的にて当院紹介となった。来院時,右乳房内上部に約8 cm 大の易出血性潰瘍を伴う腫瘤が認められた。乳腺超音波検査にて右A 区域に約8 cm 大の腫瘤を確認,針生検にて浸潤性乳管癌(ER 強陽性,PgR 強陽性,HER2 陽性,Ki‒67 低発現)であった。右腋窩リンパ転移を認めるも遠隔転移はなく,治療前診断は右乳癌,cT4bN1M0,Stage ⅢB,Luminal HER であった。ペルツズマブ,トラスツズマブ,ドセタキセルにて化学療法を開始したところ,6 サイクル投与で部分奏効が得られた。その後,右乳房全体に発赤を認め,乳癌皮膚転移が疑われた。メトロニダゾールゲル起因性皮膚炎も鑑別とされ,塗布中止としたところ改善が認められた。パッチテストにてメトロニダゾールゲルに対する反応を有し,メトロニダゾールゲル起因性皮膚炎との診断に至った。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2092-2094 (2020);
View Description
Hide Description
背景: わが国のガイドライン上,BRCA 1/2 の病的変異を認め遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)と確定した乳癌症例に対し,原則として乳房温存療法は推奨されていない。また対側乳房の切除,乳房再建の可能性を念頭に置き,将来的な対称性も考慮する必要がある。当院でもHBOC 乳癌症例に対しては,乳房切除,インプラントによる乳房再建を第一選択として推奨している。しかし病的意義不明の変異(VUS)と判定された場合の治療方針は確立されていない。症例1: 患者は45 歳,女性。母が卵巣癌を発症している。検診マンモグラフィにて左乳房に1.5 cm の石灰化集簇を指摘され,ステレオガイド下マンモトームで乳癌と診断した。BRCA 遺伝子検査を希望し,判定はVUS であった。乳房切除,インプラントによる乳房再建を行った。症例2: 患者は64 歳,女性。母,母方叔母,母方祖母が乳癌を発症している。人間ドック超音波検査にて右乳房に0.9 cm の腫瘤を指摘され,針生検で乳癌と診断した。遺伝子検査の結果はVUS で,MRI では対側乳房に異常を認めなかった。患者の希望により乳房温存療法を行った。考察: 米国ではバリアント意義の解析が進んでおり,VUS はすでに全体の2%以下となっている。しかし変異内容には人種差が大きいとみられ,国内症例の報告では6.5%と依然高率である。VUS と判定された場合,患者に対してその意義を十分説明し,現時点では対側乳房の予防手術の対象とはならないこと,さらにHBOC であっても乳房温存療法は絶対禁忌ではないことを伝え,手術術式を選択していく必要がある。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2095-2097 (2020);
View Description
Hide Description
症例は70 歳台,男性。左腎細胞癌術後,骨転移再発に対してX 年9 月よりipilimumab,nivolumab 併用療法を開始した。2 コース施行後のX 年10 月に上行結腸憩室炎を発症し,当院外科に入院した。抗菌薬治療で奏効したが,経過中に著明な低Na 血症が出現し意識障害を来した。頭部magnetic resonance imaging(MRI)検査にて下垂体腫大を認め,血中thyroid stimulating hormone(TSH)およびadrenocorticotropic hormone(ACTH),コルチゾールが低値を示し,免疫チェックポイント阻害薬(ICI)に起因する下垂体機能低下症と診断した。ヒドロコルチゾンの投薬により,低Na 血症および意識障害は改善した。その後各種負荷試験を施行し,ACTH は無反応,TSH とluteinizing hormone(LH),follicle stimulating hormone(FSH)は低反応であった。ICI による免疫関連有害事象はあらゆる臓器で生じる可能性がある。なかでも本症例のように重篤化することがあり,診療科にかかわらず免疫関連有害事象について理解を深める必要がある。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2098-2100 (2020);
View Description
Hide Description
当院で診断された85 歳以上の乳癌症例について手術群と非手術群に分類し,臨床病理学的特徴を比較検討した。診断時の所見において非手術群では,手術群と比較しT 因子,M 因子が有意に高く,臨床病期も有意に高かった。病理組織学的特徴,ホルモンレセプターおよびHER2 レセプターの発現,サブタイプの分布には差はなかった。手術群のほとんどには腋窩リンパ節操作を加えた標準手術が行われ,術後大きな合併症なく社会復帰していた。非手術群における手術を回避した要因は乳癌の進行,すなわち局所高度進行例や多発遠隔転移例が最も多かった。高齢者乳癌においても早期発見が標準治療につながる可能性が示唆された。また,両群の予後調査において複数回の転居・転院による所在不明例が散見され,高齢者乳癌の予後観察における問題点の一つと考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2101-2103 (2020);
View Description
Hide Description
症例は50 歳台,女性。呼吸苦にて救急搬送された。Hb 3.7 g/dL と高度貧血を認め,造影CT で胃全周性の不整な壁肥厚像を認めた。病変は腹壁,肝外側区域,Treitz 靱帯近傍レベルの十二指腸に直接浸潤像を呈していた。輸液療法に改善傾向を認めたため,輸血を含めた全身管理を開始した。翌日再出血を認めたことから緊急手術を施行した。胃全摘,肝臓外側区域切除術,Treitz 靱帯近傍の十二指腸合併切除を行った。術後36 日目に軽快退院し,術後1.5 か月に血液内科にて化学療法を開始した。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2104-2106 (2020);
View Description
Hide Description
TAS‒102+bevacizumab(Bev)併用療法の安全性・有効性についての第Ⅱ相試験で,progression‒free surviva(l PFS)は3.7~4.6 か月と良好な成績が報告されている。2017 年6 月~2020 年2 月までの期間に,当院においてTAS‒102+Bev 併用療法を行った切除不能進行再発大腸癌12 例について報告する。PFS 中央値は6(2~12)か月で,Grade 3 以上の有害事象は,好中球減少(33.3%),発熱性好中球減少症(8.3%),血小板減少症(8.3%),嘔吐(8.3%)であった。非血液毒性の頻度は低く,PS の低下した後方ラインでの治療に有用な選択肢の一つであると考えられる。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2107-2109 (2020);
View Description
Hide Description
2018 年4 月に直腸癌に対するロボット支援下手術が保険収載され,当科でも2019 年10 月よりロボット支援下手術を導入している。今回,われわれが施行したロボット支援下手術について検討した。対象は2019 年10 月~2020 年1 月にかけてロボット支援下手術を施行した15 例を対象とした。最初の2 例についてはプロクターを招聘し,指導の下で手術を行った。症例の年齢中央値₇70 歳,男性12 例,女性が3 例であった。術式としては6 例に高位前方切除,9 例に低位前方切除を施行した。手術時間358 分,出血量は0 mL であった(それぞれ中央値)。明らかな術中合併症は認めず,術後在院日数は中央値で13 日であり,Clavien-Dindo 分類Grade Ⅲ以上の術後合併症は1 例に認めるのみであった。当院においてロボット支援下手術は安全に導入できたと考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2110-2112 (2020);
View Description
Hide Description
症例は82 歳,女性。肝S2 に肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC)を認め,2 年6 か月前に経皮的ラジオ波焼灼術(radiofrequency ablation: RFA)を施行した。1 か月前の造影CT で,RFA 穿刺経路に一致する上腹部正中の腹壁に濃染する約20 mm の腫瘤が出現した。その他,肝内を含め再発所見を認めず穿刺経路再発と診断し,手術を施行した。腫瘍摘出に加えて,穿刺経路である腹直筋および後鞘もsurgical margin を取って切除した。病理組織学的検査では高分化型HCCと診断された。術後S3,S4 に再発を認めるも,いずれも経カテーテル動脈塞栓術を施行し,術後1 年9 か月現在無再発生存中である。HCC のRFA 治療後の穿刺経路再発に対する外科的切除は有効な治療選択肢の一つであると考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2113-2116 (2020);
View Description
Hide Description
大腸癌において術後の全身性炎症が予後に与える影響を検討した。大腸癌に対し根治的手術を行った382 名を対象とし,血清C‒reactive protein(CRP)の術後1 日目の値(CRP1)および最高値(CRPmax)と予後との関連を検討した。術後全生存率はCRP1(p=0.001),CRPmax(p=0.023)ともに高値群は低値群に比べ有意に低かった。多変量解析の結果,CRP1 高値,75 歳以上,carcinoembryonic antigen 高値が独立予後不良因子であった。死因を検討したところ,CRP1 高値群は低値群に比べ原癌死が有意に高率であった(18.0% vs 5.6%,p=0.001)。大腸癌患者において術後早期のCRP 値は簡便で有用な予後予測因子である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2117-2119 (2020);
View Description
Hide Description
再生不良性貧血(aplastic anemia: AA)は,汎血球減少と骨髄の低形成を特徴とする症候群の一つである。手術の際には貧血・出血傾向・易感染性のすべてが問題となるが,周術期管理についての報告はほとんどなく,また確立した管理方法もない。症例は77 歳,女性。下血,易疲労感を主訴に来院した。初診時より著明な汎血球減少を認め精査した結果,AAと孤立性肝転移を伴う上行結腸癌と診断された。AA の治療は反応性が乏しく汎血球減少は改善されなかったが,生命予後を考慮して大腸切除を行う治療方針とした。血液内科医と連携して輸血・G-CSF 製剤の投与などの周術期管理を行い,結腸右半切除術ならびに肝外側区域切除を行った。術後は合併症を併発することなく第8 病日に血液内科へ転科した。AA を合併していても適切な周術期管理を行えば,本症例のような高侵襲手術も安全に施行できると思われた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2120-2122 (2020);
View Description
Hide Description
症例は59 歳,男性。胆囊ポリープは術前のCT で偶発的に右腸腰筋前方に50 mm 大の腫瘤影を指摘された。MRI ではT1 強調像で低信号,T2 強調像でわずかに高信号を呈した。PET‒CT では同部位にSUVmax 5.39 と集積亢進を認めたが,他に異常集積はなかった。腫瘤が大きく悪性腫瘍を否定できなかったため,診断を兼ねて切除の方針となった。術中所見では盲腸尾側の後腹膜に辺縁整な腫瘤を認め,周囲組織への明らかな浸潤は認めなかった。腫瘍に沿って全周性に後腹膜を切開し,鏡視下操作で腫瘍摘出を完遂した。免疫染色を含めた病理組織学的診断で平滑筋肉腫と診断された。腹腔鏡手術では拡大視効果で外科的剝離面を詳細に観察することができ,術前検査で完全切除が可能と考えられる腫瘍に対しては腹腔鏡下手術は選択肢の一つとしてあげられると思われた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2123-2125 (2020);
View Description
Hide Description
症例は40 歳代,女性。背部痛,下肢のしびれと歩行困難を主訴に前医を受診した。CT で右乳房の腫大と右腋窩リンパ節腫大,第4 胸椎レベルで圧壊した椎体が胸髄を圧迫する所見が認められ当院に救急搬送された。MRI でも同様の所見を認め,乳癌脊椎転移による胸髄圧迫が疑われた。進行する下肢麻痺に対し緊急で椎弓切除と後方固定術を施行した。右乳房腫瘤の針生検の結果,右乳癌,cT2N1M1(bone),Stage Ⅳと診断した。術後抗エストロゲン療法とデノスマブの皮下投与を開始し,局所に放射線治療を行った結果,ADL が改善し退院となった。脊椎転移による脊髄麻痺はoncologic emergencyであり,不可逆的麻痺を予防するためには早期診断と,除圧術や放射線治療などのタイミングを逃さない迅速な対応が必要である。そのためには,整形外科医や放射線科医と連携を取りながら適切な集学的治療を行うことが重要である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2126-2128 (2020);
View Description
Hide Description
症例は69 歳,女性。performance status 0。肝右葉に長径98 mm の原発巣と,大動脈周囲に多発リンパ節転移を認めた。経皮的肝生検にて肝内胆管癌と診断し,化学放射線療法(CRT)を施行した。化学療法はgemcitabine(GEM)+cisplatin(CDDP)で,開始7 日目より主病変に対する1.8 Gy×20 回の放射線治療を併用した。Grade 3 以上の有害事象は白血球減少,好中球減少,貧血であった。開始後6 か月時点におけるrelative dose intensity は,GEM 58.9%,CDDP 80.2%で,CDDP 総投与量は525 mg/m2であった。最良治療効果はpartial response で,治療開始後2 年3 か月現在,GEM 単剤投与で無増悪生存中である。根治切除不能胆道癌に対するCRT は,コンセンサスが得られていないものの生存期間の延長に寄与するとの報告を散見し,さらなる検討が期待される。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2129-2131 (2020);
View Description
Hide Description
症例は83 歳,女性。9 年前に胃癌に対して幽門側胃切除術が行われた。pT4aN1M0,pStage ⅢA(胃癌取扱い規約第15 版)であり,術後は補助化学療法が行われた。術後3 年目に肝S7 に13 mm 大の境界不明瞭な腫瘤を指摘された。術後5年目でも大きさに変化なく経過観察を継続した。術後8 年目に17 mm と軽度増大を認めた。EOB‒MRI でリング状の早期濃染像を認め,腫瘍生検でadenocarcinoma の診断であった。腹腔鏡下肝S7 部分切除術を施行した。病理組織学的所見では既往の胃癌とは組織像が異なり,高分化な肝内胆管癌の診断であった。現在,肝切除術後1 年再発なく経過している。今回われわれは,緩徐に増大した肝内胆管癌の症例を経験したので報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2132-2134 (2020);
View Description
Hide Description
胃GIST に対する胃局所切除術は部位,発育形式などで術式や難易度が異なる。2005 年1 月~2020 年1 月までの胃GIST 手術症例52 例を対象に検討を行った。男性26 例,女性26 例,平均年齢は67 歳であった。局在部位はU 32 例,M 16例,L 4 例,発育形式は内腔発育型21 例,壁外発育型14 例,壁内型17 例であった。開腹手術26 例,腹腔鏡下手術26 例であった。開腹手術の内訳は局所切除22 例,胃切除4 例であった。腹腔鏡下手術の適応は5 cm 以下とし局所切除24 例で,うちlaparoscopy and endoscopy cooperative surgery(LECS)は₇ 例であった。出血量,腫瘍径,術後在院日数は有意に腹腔鏡下手術のほうが低かった。内腔発育型および壁内型は18 例に認め,うち2 例は漿膜を切開しエンドループにて絞り込む,いわゆる反転法にて単孔式手術を施行した。LECS 症例7 例のうち4 例はinverted LECS 法にて,2 例はNEWS 法,1例は反転法にて行った。腹腔鏡下手術は腫瘍の発育形式にかかわらず有用であった。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2135-2137 (2020);
View Description
Hide Description
今回われわれは,後期高齢者に対する腹腔鏡下胃切除術と開腹胃切除術の比較検討を行った。腹腔鏡下手術は開腹手術と比べ,手術時間,リンパ節郭清個数において遜色はなく,出血量,術後在院日数は有意に少ない。また,術後合併症発生率では低い傾向を示し,手術リスク評価法の一つであるEstimation of Physiologic Ability and Surgical Stress(E-PASS)の結果では手術侵襲が有意に低く,総合リスクスコアも有意に低かった。以上より,後期高齢者に対する術式としては腹腔鏡下胃切除術が開腹胃切除術に比べ優れていると考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2138-2140 (2020);
View Description
Hide Description
症例は61 歳,男性。閉塞性直腸癌に対し経肛門的イレウス管を挿入し減圧後,当科転院となった。下部消化管内視鏡検査にて肛門縁から約4 cm の直腸に全周性の2 型腫瘍を認め,生検にてGroup 5(tub1~2)と診断された。下行結腸からS 状結腸にかけては縦走潰瘍を認め,閉塞性大腸炎の合併が疑われた。腹骨盤造影CT では周囲に腫大リンパ節を数個認めるも明らかな遠隔転移は認めず,Ra,Rb 直腸癌,cT4aN1aM0,cStage Ⅲb と診断した。腫瘍の口側腸管に閉塞性大腸炎の所見が強く,切除・吻合は縫合不全のリスクが高いと判断し,腹腔鏡下横行結腸双孔式人工肛門造設術施行後に術前化学療法(SOX 療法)を施行した。化学療法後の下部消化管内視鏡検査では閉塞性大腸炎は改善を認めた。化学療法の効果判定はSD であり,腹腔鏡下超低位前方切除術+D3 郭清を施行した。病理組織学的検査ではtub1,ypT3,ypN0,組織学的効果判定Grade 1a の診断となり,Ra,Rb 直腸癌,ypT3ypN0M0,ypStage Ⅱa の最終診断となった。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2141-2143 (2020);
View Description
Hide Description
症例は48 歳,女性。45 歳時,閉経前ホルモン陽性HER2 陰性左乳癌(T2N1M0,cStage ⅡB)に対し他院で胸筋温存乳房切除術・リンパ節郭清術を施行され,術後LH-RH アゴニスト+tamoxifen 療法および放射線照射が開始された。ホットフラッシュのためtamoxifen は約1 年で不耐中止となり,以降受診も自己中断していた。3 年後に腰痛を主訴に当院へ紹介となり,PET-CT で多発骨転移・単発肝転移・多発肺転移再発と診断された。医療用麻薬併用の上,緩和的放射線療法および一次内分泌療法leuprorelin+anastrozole(LA)療法を開始した。治療開始から18 か月後のPET-CT で骨転移のFDG集積は消失し右坐骨が残存するのみとなり,造影CT 上,肝転移や肺転移の完全消失を認めた。その後,肝/骨転移の再増大を認めるまで,合計30 か月間,同治療を継続することができた。tamoxifen 不耐後に出現した閉経前ホルモン陽性乳癌術後の遠隔転移再発に対し化学療法の開始が困難な場合でも,LA 療法が有効となり得ることが示唆された。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2144-2146 (2020);
View Description
Hide Description
十二指腸原発消化管間葉系腫瘍(GIST)は比較的まれである。今回,十二指腸水平脚のGIST に対しKocher 授動手技を用いたアプローチで腹腔鏡下に切除し得た1 例を経験したので報告する。症例は49 歳,女性。身長150 cm,体重98.7 kg,BMI 43.4 kg/m2 であった。胆石症の精査で十二指腸水平脚に約20 mm 大の腫瘤性病変を認めた。GIST の可能性が高く,腹腔鏡下十二指腸局所切除を施行した。Kocher 授動にて十二指腸球部から水平脚までを授動し,腫瘍部を頭側に引きだし,linear stapler にて局所切除を施行した。手術時間152 分,出血量は少量であった。術後経過は良好で,合併症なく術後7 日目に退院となった。病理組織学的診断は超低リスクのGIST であった。Kocher 授動を用いたアプローチによる腹腔鏡下十二指腸局所切除は,高度肥満症例でも有用な術式の一つになり得ると考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2147-2149 (2020);
View Description
Hide Description
症例は41 歳,男性。検診にて腹腔内に腫瘍性病変を認め,精査加療目的に当科に紹介受診した。既往歴および家族歴に特記事項はなし。腹部エコーでは下行結腸の外側に頭尾側方向に進展する約80×30 mm 大の腫瘍を認めた。造影CT では腫瘍は不均一な造影効果を示し,FDG-PET/CT ではSUVmax 3.2 と中等度集積を認めた。以上より,腹腔内軟部腫瘍が疑われ手術を施行した。腫瘍は大網に埋もれる形で存在し,一部で横隔膜と癒着していたため横隔膜と大網を腫瘍と一塊にして切除した。病理組織学的検査では異型紡錘形細胞を認め,β-catenin 陽性であり,CD34 ,STAT6,S-100 ,α-SMA,Desmin がいずれも陰性であったことからデスモイド腫瘍と診断した。腫瘍は大網との境界が不明瞭であり,大網原発と考えられた。術後1 年6 か月が経過した時点で無再発生存中である。デスモイド腫瘍は手術,外傷,妊娠や家族性大腸腺腫症(FAP)などに合併することが多く,開腹歴およびFAP の既往がない大網原発デスモイド腫瘍はまれであり,文献的考察を加えて報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2150-2152 (2020);
View Description
Hide Description
症例は37 歳,女性。全身劵怠感,食思不振,嘔気の症状を認め,当院を紹介受診した。血液検査で著明な高カルシウム血症を認めた。触診で径8 cm 大の左乳房腫瘤を認め,左乳癌が疑われた。精査で浸潤性乳管癌,T3N0M1,Stage Ⅳと診断した。多発肺転移,胸膜播種を認め,骨転移は認めなかった。PTHrP 高値を認め,骨転移陰性の進行乳癌が高カルシウム血症の原因と考えられた。大量輸液,電解質補正,ビスホスホネート製剤投与を行い全身状態は改善した。化学療法FEC100を2 サイクル施行したがPD であり,nab-PTX 療法へ変更しPR となった。局所コントロール目的に手術治療を行い,術後は高カルシウム血症の再燃なくホルモン療法にて良好な経過をたどっている。悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症は予後不良であることを示唆するが,集学的治療により長期間にわたり病状安定を得られる症例もあるため,積極的な集学的治療により腫瘍量コントロールを行うことは重要であると考える。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2153-2155 (2020);
View Description
Hide Description
胃粘膜下腫瘍のうち神経原性腫瘍はまれな疾患とされている。今回われわれは,腹腔鏡下胃局所切除術を行った胃神経鞘腫に術中偶発的に発見された壁外性発育を呈する胃GIST が併存した症例を経験した。症例は61 歳,男性。人間ドックにて径15 mm 大の胃粘膜下腫瘍を指摘され,超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS‒FNA)を施行したところ,HE 所見は免疫染色でc‒kit(-),CD34(-),S‒100(+),SMA(-),MIB‒1<2%であったことから胃神経鞘腫と診断した。腹腔鏡下胃局所切除術を施行し,その術中胃体下部前壁小弯寄りに径8 mm 大の壁外性に発育した結節を認め,胃壁漿膜から筋層を含むように切除した。免疫染色ではc‒kit(+),CD34(+)であったことから,胃GIST と診断した。胃神経鞘腫にGISTを併存した症例はまれであり,若干の文献的考察を加えて報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2156-2158 (2020);
View Description
Hide Description
症例は67 歳,男性。食欲不振を主訴に前医を受診し,内視鏡検査で胃癌を指摘され紹介となった。内視鏡検査では胃角部に6 cm 大の0-Ⅰ型の腫瘍を認めた。造影CT 検査では明らかな所属リンパ節転移や遠隔転移は認めなかった。幽門側胃切除術,Billroth Ⅰ再建を行った。経過は良好で術後11 日目に退院された。術後病理組織学的診断はpT2N0M0,pStage ⅠBで,術後経過観察の方針となった。術後4 か月の採血でCA19-9,AFP,PIVKA-Ⅱ高値,CT で多発肝腫瘍を認めた。原発性肝癌の可能性を鑑別にあげ,肝生検が行われた。肝生検の結果,胃癌の肝転移と診断された。化学療法が開始されたが,最終的に門脈腫瘍塞栓,腹水貯留を認め,再発後1 年で原病死された。AFP およびPIVKA-Ⅱ産生胃癌は,進行・切除不能症例が多いとされている。AFP およびPIVKA-Ⅱ産生胃癌について若干の文献的考察を加えて報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2159-2161 (2020);
View Description
Hide Description
症例は76 歳,女性。黄疸の精査目的に当院紹介となった。精査にて切除可能な膵頭部癌と診断し手術を予定したが手術を希望されず,胆管ステントを留置した上で化学放射線療法の後にBSC となった。膵癌診断から11 か月後,腰椎圧迫骨折のための入院中に吐血を来し,ショック状態となった。緊急上部消化管内視鏡検査を施行したところ十二指腸球部から出血を認めたが,内視鏡的に止血は困難であった。緊急IVR を施行し,胃十二指腸仮性動脈瘤が十二指腸内へ穿破していたため塞栓術を施行した。2nd‒look 上部消化管内視鏡検査で,十二指腸球部に胆管ステントが露出しており,胆管十二指腸瘻を来していた。その後は保存的加療で逆行性胆管炎など発症することなく,膵癌診断から15 か月,出血から4 か月で原病死した。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2162-2164 (2020);
View Description
Hide Description
Adachi Ⅵ型24 群の腹腔動脈分岐型を伴う胃癌に対し,安全に腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行できた症例を経験した。症例は60 代,男性。cT1bN0M0,cStage Ⅰ,胃角部小弯に0‒Ⅱa+Ⅱc 病変を認め,生検にてtub2 の診断となり,手術目的に当科紹介となった。術前のMDCT 検査でAdachi Ⅵ型24 群の腹腔動脈分岐型を認めた。術中No. 8a リンパ節郭清時に総肝動脈がないことを確認できたため,門脈前面を露出しその層を保ち郭清した。左胃動脈と脾動脈が共通幹を形成していた。腹腔動脈分岐は非常に変異に富んでいるため,胃癌手術において術前に血管走行破格を認識することは非常に有効かつ重要である。特に触覚が得られにくい腹腔鏡手術では,その有効性が高まると考えられる。術前の画像診断による血管走行の確認,術中の解剖の把握が術中・術後合併症を防ぐために重要である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2165-2167 (2020);
View Description
Hide Description
症例は78 歳,女性。左乳房腫瘤からの分泌物を主訴に外来を受診した。左乳房に悪臭を伴う10 cm 大の潰瘍を形成する腫瘤を認め,生検で硬癌と診断された。胸腹部造影CT では,腫瘍は大胸筋に浸潤し,左腋窩から鎖骨下にかけて多数のリンパ節が腫大していたが遠隔転移は認めなかった。局所進行乳癌として,アベマシクリブ+フルベストラント療法を6か月間施行したところ潰瘍は改善し,CT でも原発腫瘍およびリンパ節腫大は縮小傾向であり,左乳房切除,腋窩リンパ節郭清,大胸筋合併切除術を施行した。術後病理組織学的診断でypT2,ypN0,ypM0,ypStage ⅡA と診断された。術後は補助療法としてアベマシクリブ+フルベストラント療法を継続し,術後6 か月現在で明らかな再発は認めていない。今回,局所進行乳癌でアベマシクリブ+フルベストラント療法が極めて有効であった症例を経験したので報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2168-2170 (2020);
View Description
Hide Description
症例は73 歳,女性。左乳癌にて乳房温存手術を行い,残存乳腺に放射線照射(50 Gy/25 Fr)を施行した。術後4 年目のCT 検査にて左胸壁に腫瘤を認め,左乳房の手術瘢痕の尾側に4.5×3.0 cm の弾性硬,可動性のない腫瘤を触知した。超音波検査にて左胸壁筋層に境界不明瞭,形状不整,内部やや不均一な3.5×3.0×1.5 cm の低エコー腫瘤を認めた。針生検にて紡錘形~多形性で異型性の強い細胞が認められ,免疫組織染色にてAE1/AE3(-),CD34(-),SMA(-),desmin(-),S-100(-),CD68(+/-)であり,未分化な肉腫が疑われた。腫瘍直上に葉状切開を置き,腫瘍縁から3~4 cm 離して第5,6,7 肋骨切除を伴う胸壁全層切除術を施行した。病理組織学的診断にてundifferentiated pleomorphic sarcoma と診断された。経過から放射線誘発性肉腫と考えられた。胸壁腫瘍切除術後4 年6 か月無再発生存中である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2171-2173 (2020);
View Description
Hide Description
今回われわれは,術前にS-1+oxaliplatin(SOX)療法を施行して,pathological complete response(pCR)が得られた進行胃癌を2 例経験したので報告する。1 例目は膵浸潤を疑う下部の大型胃癌で,2 例目は高度リンパ節転移を伴う上部の胃癌であった。これらの経験から,局所進行胃癌に対する術前のSOX 療法は有効な治療法になり得ると考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2174-2176 (2020);
View Description
Hide Description
他臓器浸潤や側方転移を有する局所進行大腸癌に対して,局所再発および遠隔転移の抑制を目的とし術前化学療法を施行してきた。XELOX+bevacizumab の3 か月投与を基本とした化学療法後に手術を施行した53 例(直腸癌36 例,S 状結腸癌17 例)を対象とし,治療成績と手術介入の意義を評価した。治療前深達度はT4b 42 例,リンパ節転移N+39 例であった。12 例の骨盤内臓全摘術を含む34 例で他臓器合併切除が行われた。ypT4b 27 例,ypN0 34 例で,R0 は90.4%であった。組織学的効果判定はGrade(Gr)1a 31 例,Gr 1b 10 例,Gr 2 8 例,Gr 3 4 例であった。5 年生存率はGr 1a 以下60.9%,Gr 1b 以上100%であった。Gr 3 の4 例はすべて腫瘍マーカーの正常化がみられたが,切除前にcCR の所見は認めなかった。局所進行大腸癌に対する術前化学療法は治療成績向上に有用であり,集学的治療としての切除術は必須で,切除標本の病理学的治療効果は予後の推測につながることが示唆された。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2177-2179 (2020);
View Description
Hide Description
悪性食道狭窄は経口摂取を不能とし,生活の質(QOL)を著しく低下させる。内視鏡的食道ステント留置術は低侵襲かつ簡便であり,今回われわれはその治療成績を検討した。2014 年4 月~2019 年12 月までに食道ステント留置術を施行した悪性食道狭窄20 例を対象とした。そのうち6 例(30%)に瘻孔形成を認めた。食道ステントはカバードタイプを使用し,食道胃接合部にかかるものは逆流防止弁付きのものを使用した。嚥下障害スコアは食道ステント留置前の3.3±0.6 から留置後は1.8±0.9(p<0.01)と有意に改善がみられた。ステント留置に伴う合併症は6 例(30%),13 例(65%)で退院が可能であったが,7 例(35%)は在院死亡の転帰となった。在院死亡例では7 例中4 例が瘻孔形成を有していた。悪性食道狭窄に対する食道ステント留置術は摂食状況が改善され,QOL 向上に寄与すると考えられるが,瘻孔形成症例における予後は不良である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2180-2182 (2020);
View Description
Hide Description
未分化多型肉腫は成人の軟部組織に発生する予後不良な疾患だが,四肢・体幹の発生が多く腸間膜での発生はまれである。治療としては腫瘍の完全切除が第一選択であり,化学療法や放射線療法の有用性については報告例も散見されるが一定の見解が得られていない。今回われわれは,上行結腸間膜原発の未分化多型肉腫の症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2183-2185 (2020);
View Description
Hide Description
今回われわれは,ホルモン受容体陽性HER2 陰性進行再発乳癌に対するパルボシクリブの効果とその有害事象である好中球減少について調べた。2017 年12 月~2019 年12 月までにパルボシクリブを開始し,1 コース以上投与できた18 例を対象とした。Grade 3 の好中球減少が83%に生じたが,適切な休薬と減量でGrade 4 や発熱性好中球減少症(FN)は認めなかった。再発転移後にパルボシクリブがfirst‒,second‒line で導入されていた症例ではthird‒line 以降と比較し,治療継続期間や治療最良効果の判定が高い傾向を認めた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2186-2188 (2020);
View Description
Hide Description
症例は53 歳,女性。2 年前右乳癌に対し乳房切除を受け,術後フォローアップの腹部CT 検査にて肝S4 に孤発性肝転移が認められた。今回われわれは,乳癌術後肝転移に対し腹腔鏡下肝切除を行い,その後capecitabine を2 年投与し,現在無再発生存中の症例を経験した。鏡視下手術により早期に全身療法を開始することが可能で,局所療法として有効であったと考える。乳癌肝転移は多発転移や多臓器への転移を伴うことが多いが,孤発性のものに対する肝切除にて長期生存の報告も散見されており,治療の選択肢として考慮すべきと思われる。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2189-2191 (2020);
View Description
Hide Description
消化管原発の神経内分泌癌は比較的まれな疾患であり,治療法はまだ議論の余地がある。今回われわれは,大腸原発の神経内分泌癌を2 例経験した。症例1 は75 歳,男性。2 か月続く肛門痛を主訴に受診し,造影CT 検査では直腸腫瘍,多発リンパ節転移を認めた。下部消化管内視鏡検査ではRb‒P に半周性3 型病変を認め,生検で神経内分泌癌の診断となった。症状緩和目的に人工肛門を造設した後,etoposide/cisplatin(EP)療法を導入した。6 コース施行するも効果判定PD となり,緩和治療に移行となった。症例2 は69 歳,男性。心窩部不快感,下腹部痛,腰痛を主訴に受診した。造影CT 検査で横行結腸腫瘍,多発肝肺転移,多発リンパ節腫大を認め,下部消化管内視鏡検査では横行結腸に全周性腫瘍を認めた。生検で神経内分泌癌の診断となった。本人の希望で対症療法のみを行っていたが,初診より2 か月で原病死した。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2192-2194 (2020);
View Description
Hide Description
症例は72 歳,男性。貧血精査の上部消化管内視鏡で胃体下部に半周性の3 型腫瘍を認め,生検でadenocarcinoma(por)と診断した。腹部造影CT では遠隔転移は認めず,外科初診から3 週間後に手術を施行した。開腹すると肝両葉に10~20 mm 大の多発する腫瘍を認め多発肝転移と判断し,幽門側胃切除+肝S5 部分切除術を施行した。病理組織学的検査でNEC と診断した。初回CT 後7 週のEOB-MRI で術中所見同様の10~20 mm 大の多発肝転移を認め,cisplatin(CDDP)+S-1 による化学療法を開始した。3 コース後の効果判定で著明な縮小を認め,PR と判断した。胃NEC は増殖能が高く,短期間に遠隔転移が顕在化する可能性がある。また,化学療法に関する明確なガイドラインはないが,CDDP+S-1 は一つの治療オプションになり得る。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2195-2197 (2020);
View Description
Hide Description
症例は68 歳,女性。60 歳時に右乳癌に対し乳房切除術を施行している。病理組織学的診断は,硬癌,T1N0M0,stage Ⅰであった。術後補助療法としてアナストロゾールの内服を5 年間行った。術後8 年目に右胸壁腫瘤を自覚し,当科を受診した。視触診で右前胸壁に10 mm 大の腫瘤を触知した。乳房超音波検査にて16 mm の不整形低エコー腫瘤を認め,針生検にて浸潤性乳管癌の診断となった。全身検索にて明らかな遠隔転移は認めず,腫瘤摘出術を施行した。病理組織学的検索にて組織型は硬癌であり,乳癌の局所再発と診断した。ER 陽性,PgR 陽性,HER2 陰性,Ki‒67 25%であった。切除断端が陽性であり,再発部位に放射線療法を施行し,レトロゾールの内服を行っている。局所再発乳癌は根治治療の対象であり,手術,薬物療法,放射線療法を組み合わせた集学的治療が必要である。われわれは,乳房切除術後8 年目に局所再発を来した乳癌の1 例を経験したので報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2198-2200 (2020);
View Description
Hide Description
症例は50 歳台,女性。右乳癌に対して乳房部分切除,腋窩リンパ節郭清(Bp+Ax)を受けた。18 年後,右乳房に腫瘤と左腋窩リンパ節腫大を認めた。右乳房腫瘤からの針生検で乳癌,左腋窩リンパ節の細胞診でClass Ⅴを認めた。術前化学療法(NAC)の後,右残存乳房切除,左腋窩リンパ節郭清を行った。残存乳房再発を認めた際,対側腋窩リンパ節がセンチネルリンパ節になった症例の報告が散見されている。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2201-2203 (2020);
View Description
Hide Description
症例は60 歳,男性。膵尾部癌に対して脾合併尾側膵切除,胃・空腸・左腎静脈合併切除術を施行した。術後補助化学療法としてS‒1 内服を1 年間行った。術後1 年8 か月目にCA19‒9 の上昇を認めたため,gemcitabine(GEM)による化学療法を開始した。以後GEM を継続していたが,術後3 年10 か月目に腸閉塞で入院となった。保存的治療で改善せず,手術を施行したところ腹膜播種巣が小腸に浸潤していたため,バイパス術,播種巣の生検を施行した。術後FOLFIRINOX 療法を開始したが,初回手術より4 年8 か月目にCA19‒9 の上昇を認めGEM+nab‒paclitaxel 療法に変更し,初回手術後6 年11か月,腹膜播種再発確認後5 年3 か月現在,明らかな増悪なく外来化学療法を継続中である。本症例ではいずれのレジメンも長い奏効期間を維持しただけではなく,特筆すべき副作用なく長期継続可能であったことも長期生存に寄与していると考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2204-2206 (2020);
View Description
Hide Description
症例は59 歳,女性。人間ドックでCA19-9 の高値を指摘され近医を受診した。腹部エコーで胆囊の壁肥厚を認め当院に紹介受診となった。EUS-FNA を行い,#12 リンパ節の生検で未分化癌を認めたため胆囊癌と診断した。FDG-PET で胆囊内腔と大動脈周囲の腫大リンパ節にFDG の集積を認めたため,切除不能と判断し化学療法を施行した。gemcitabine+cisplatin 併用療法(GC 療法)を₄ コース施行した後にFDG-PET を再検したところ,腫大リンパ節の縮小とFDG 集積の消失を認めたため手術の方針とし,拡大胆囊摘出および肝外胆管切除術を施行した。合併症なく術後22 日目に退院となった。病理組織学的検査の結果では,胆囊底部およびリンパ節に線維化組織を認めたが腫瘍細胞の残存は認めなかった。術後11 か月の現在,無再発で経過している。一般的に傍大動脈リンパ節転移を伴う胆囊癌の予後は不良であるが,術前化学療法を含めた集学的治療によるconversion surgery が有用な治療戦略となる可能性が示唆された。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2207-2209 (2020);
View Description
Hide Description
症例は39 歳,女性。悪心・嘔吐,下腹部痛のため近医を受診し,イレウスの診断で当院に紹介された。CT で肝S7に乏血性腫瘤と横行結腸に3 cm にわたる壁肥厚と内腔狭窄を認め,閉塞性大腸癌(T,type 2,cT3,N0,M1a,cStage Ⅳa)と診断した。大腸ステント留置による初期減圧を行い,24 日後に腹腔鏡下結腸右半切除術(D3 郭清)を施行した。病理結果は,pT4a,N1b(2/43 ),M1a(H1),pStage Ⅳa,BRAF 変異陽性であった。肝切除術前にmFOLFOXIRI+bevacizumab療法を4 コース施行し造影MRI を行うと,既知のS7 病変は縮小したがS6 に新規病変が出現したため,開腹肝部分切除術(S6,S7)を施行した。手術1 か月後に行った造影CT でS4 に新規病変を認め,さらなる化学療法としてcapecitabine+oxaliplatin(CapeOX)+bevacizumab 療法を選択し,治療継続中である。BRAF 変異陽性の大腸癌は予後不良とされるなか,同時性肝転移を伴う閉塞性大腸癌に対して集学的治療を行った1 例を経験した。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2210-2212 (2020);
View Description
Hide Description
はじめに: 今回われわれは,閉塞を伴う直腸癌に対する人工肛門造設後の人工肛門浮腫に対して,砂糖散布が有効であった1 例を経験したため報告する。症例: 70 歳,男性。肺転移を伴う閉塞性直腸癌に対し,まず人工肛門造設術を施行した。術後1 週間後でも人工肛門の浮腫が改善せず,色調も悪い状態であった。砂糖の散布を開始し,数日後には浮腫の改善を認め,粘膜の色調も改善した。退院前には顕著な縮小を認めた。考察: 癌治療を行うに当たり,早期に人工肛門の状態が安定し,患者のセルフケアも確立することが望ましい。直腸脱や人工肛門脱の際に砂糖を散布することで浮腫を改善させ,整復を容易にする報告がある。また,少数例ではあるが砂糖散布により人工肛門の浮腫が改善するという報告もある。自験例でも砂糖の散布が浮腫の改善に有効であった。結語: 砂糖散布は人工肛門の浮腫の改善を促進する可能性がある。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2213-2215 (2020);
View Description
Hide Description
2003~2017 年の期間中,当科において手術を施行した原発性小腸癌13 例(十二指腸癌6 例,空腸癌7 例)を対象とし,臨床病理学的に検討した。年齢は中央値62(31~83)歳で,男性10 例,女性3 例であった。初発症状は狭窄症状が5例,出血症状が7 例,腹痛が1 例であった。腫瘍径中央値は50(23~100)mm であり,手術治療後の癌遺残としてはR0 が8 例,R1 が3 例,R2 が2 例であった。Stage 別ではStage 0: 1 例,Stage Ⅱ: 2 例,Stage Ⅲ: 6 例,Stage Ⅳ: 4 例であった。術後化学療法は8 例に対して施行した。生存期間中央値は31.6(1~118)か月,5 年生存率は26.9%であった。4 年以上の術後長期無再発生存症例は4 例であった。小腸癌は希少癌であるため確立された標準治療は存在しないが,根治手術および化学療法を積極的に行うことが予後改善につながると考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2216-2218 (2020);
View Description
Hide Description
症例は60 歳,男性。S 状結腸癌膀胱浸潤に対してS 状結腸切除,D3 郭清,膀胱部分切除術を施行した。病理診断は腺癌(por2-tub2),pT4b(膀胱),ly3,v2,PN1a,pN2 で,後に同時性胃転移が判明しpStage Ⅳと診断した。術後12 週に頭痛と嘔吐を認め,緊急入院した。頭部・全脊髄造影MRI で異常所見は認めなかった。髄液検査でCA19-9 値が20.551 U/mL と高値であり,髄液細胞診ではS 状結腸癌と類似した異型細胞を多数認め髄膜癌腫症と診断した。CAPOX+bevacizumabを1 コース施行し,術後18 週に死亡した。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2219-2221 (2020);
View Description
Hide Description
症例は77 歳,男性。直腸癌に対して術前化学療法後,腹腔鏡下直腸切断術(D3 郭清)を施行した。最終診断は低分化腺癌,pT3,N1a,M0,pStage Ⅲa であった。術後補助療法は本人の希望で施行せず,経過観察とした。無再発で経過していたが,術後15 か月目ごろより倦怠感を自覚した。血小板の低下,腫瘍マーカーの上昇を認め,胸腹骨盤部造影CT 検査では明らかな転移や再発を認めなかった。原因不明の播種性血管内凝固症候群(DIC)と診断し,治療と原因検索を開始した。骨シンチグラフィ検査で全身の骨転移を認め,血液検査結果を踏まえ播種性骨髄癌症と診断した。急激に全身状態が悪化したため化学療法を導入できず,術後16 か月目に死亡した。大腸癌を原発とした播種性骨髄癌症はまれで予後不良であり,早期に診断し治療を開始することが必要と思われた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2222-2224 (2020);
View Description
Hide Description
症例は59 歳,男性。腹部膨満感を主訴に近医を受診し,CT 検査で巨大な腹部腫瘍を指摘され,当院を受診した。来院時,左腹部に巨大腫瘍を触れるも圧痛なし。CT では左側腹部に18 cm 大の辺縁造影効果を有する巨大腫瘍を認め,膵原発腫瘍が疑われた。EUS-FNA の結果はadenocarcinoma であった。通常型膵癌としては非典型であるが,膨張性発育を示し,総肝動脈,上腸間膜動脈に浸潤なく根治切除可能と判断し,膵体尾部切除および横行結腸切除と噴門側胃切除を施行し,腫瘍を摘出した。病理所見では膵体部に19.5×16.5×15.5 cm の腫瘍を認め,trypsin,chymotrypsin,elastase が陽性であり,腺房細胞癌,pT3,N0,M0 と診断した。術後8 週目よりS-1 による補助化学療法を4 コース施行し,術後10 か月現在,無再発生存中である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2225-2226 (2020);
View Description
Hide Description
症例は50 歳台,女性。進行直腸癌[cT4b(膣)N3M0,cStage Ⅲc]に対して,術前化学放射線療法を施行した後,後方骨盤内臓全摘術を施行した。術後5 か月目,術後補助化学療法中に強い腰痛を認め,ほぼ同時期に急速に進行する嚥下障害と構音障害が出現した。MRI にて多発骨転移,腰椎圧迫骨折,頭蓋底転移によるCollet⊖Sicard 症候群の診断となった。放射線治療を行う方針とし,Th5 からL4 へ総線量30 Gy,頭蓋底から高位頸椎へ総線量20 Gy の照射を並行して行った。照射終了後は腰痛,脳神経症状とも改善し,一時自宅退院が可能となった。しかし骨髄癌症と思われる血小板低下が遷延し,化学療法の再開はできずにbest supportive care(BSC)の方針となった。脳神経症状の軽快からおよそ1.5 か月後に症状の再発を認め,摂食不能となり入院し数日後に死亡した。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2227-2229 (2020);
View Description
Hide Description
症例は48 歳,女性。食後の腹痛,腹部膨満感を主訴に前医を受診し,膵腫瘍を指摘され当科紹介となった。腹部dynamic CT 検査で膵尾部に多房性囊胞性病変を認め,胸部CT 検査で右肺S10 に3 mm,5 mm,左肺S8 に10 mm の小結節影を認めた。膵粘液性囊胞腺癌(mucinous cystic carcinoma: MCC),両側多発肺転移の診断で膵切除を先行し,二期的に肺転移巣を切除する方針とした。手術は尾側膵切除術を施行し,病理組織学的診断は膵MCC であった。術後経過は良好で術後第18 病日に退院となった。膵切除から2 か月後,5 か月後にそれぞれ左肺S8+9 区域切除,右肺S9+10 区域切除を施行し,いずれも膵MCC の肺転移の診断であった。補助化学療法は施行せず経過観察中であり,膵切除後11 か月,肺切除後6 か月現在,無再発生存中である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2230-2232 (2020);
View Description
Hide Description
HER2 陽性再発乳癌の初期治療は,ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルが第一選択とされている。しかしドセタキセルは,有害事象の発症も少なくない。症例は48 歳,女性。左乳房腫瘤にて受診,精査にて左乳癌(T1N0M0,Stage Ⅰ,Luminal A)との診断に至った。乳房温存手術およびセンチネルリンパ節生検を施行し,術後は残存乳腺への照射およびタモキシフェンによる補助療法を行った。術後3 年6 か月に胸壁再発を来したため局所切除を施行した。ここでHER2 陽転化が確認されたため,フルオロウラシル,エピルビシン,シクロホスファミド(FEC)およびパクリタキセル+トラスツズマブを開始した。トラスツズマブ単独投与11 cycle 目に肝転移が確認され,ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセルへと変更,最良効果のPR が得られた。その後T‒DM1 へ移行,5 cycle 投与し最良効果はSD であった。ここで肝転移が増悪し,ペルツズマブ+トラスツズマブ+エリブリンへレジメン変更を行った。重篤な有害事象も認めず,肝転移は縮小しPR となり,現在は20 cycle にて投与を継続している。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2233-2235 (2020);
View Description
Hide Description
症例は74 歳,男性。血友病A で当院血液内科に通院していた。血便を主訴に当院に救急搬送となり,下部消化管内視鏡検査で2 型の上行結腸癌と診断した。第Ⅷ因子製剤の投与にて止血凝固能をコントロールしつつ待機的に腹腔鏡下結腸右半切除術を行った。関節拘縮を認めていたためポート配置に工夫を要し,術中の止血操作には十分に注意した。術後は出血などの合併症なく経過し,術後8 日目に退院となった。血友病患者に対する腹腔鏡下大腸癌手術は,周術期から計画的に第Ⅷ因子補充を行うことで安全に施行可能であると思われる。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2236-2238 (2020);
View Description
Hide Description
目的: 近年,化学療法中止の判断はより難しくなり,死亡直前まで化学療法を続けることが多くなる傾向にあるが報告は少ない。固形がん患者を対象に終末期化学療法の現状について調査した。方法: 2018 年1~11 月に院内で死亡した固形がん患者を対象とし,死亡30 日以内に終末期化学療法を行った患者(Near group: NG)と行わなかった患者(Far group: FG)に分けて,それぞれの診療内容を後方視的に比較した。結果: 対象患者はNG 46 名(32%),FG 96 名(68%)であった。終末期化学療法の内容はNG とFG それぞれで,細胞障害性薬27 名(59%)と68 名(71%),分子標的薬6 名(13%)と16名(16%),免疫チェックポイント阻害薬8 名(18%)と12 名(12%),ホルモン薬0 名(0%)と5 名(5%)であった(p<0.05)。考察: 終末期化学療法において侵襲の少ない新しい薬が多く選択されていた。終末期化学療法は新規薬剤の登場により治療の選択肢が広がったことが示唆された。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2239-2241 (2020);
View Description
Hide Description
症例は60 歳台,女性。狭心症疑いでの造影CT にて膵頭部領域に腫瘤を指摘され,当院に紹介となった。造影CT にて肝十二指腸間膜内に造影効果のない境界明瞭な40 mm 大の腫瘤を認め,内部には脂肪成分と石灰化を含む充実成分を認めた。画像診断にて成熟囊胞奇形腫疑いと診断し外科的切除の方針とした。開腹すると腫瘤は肝十二指腸間膜内に認め,膵頭部・総肝動脈・胃十二指腸動脈・門脈・総胆管との癒着を認めたが剝離可能であり,合併切除なく腫瘤を摘出した。病理診断にて囊胞内に重層扁平上皮,脂腺,毛髪,中枢神経組織,膵組織を認め,成熟囊胞奇形腫と診断された。退院後に良性総胆管狭窄を認めたが,一時的なプラスチックステント留置にて改善した。現在は2 年10 か月無再発生存中である。肝十二指腸間膜に発生した成熟奇形腫はまれである。いくつかの報告では総胆管,門脈,動脈に接し,合併切除が施行されている。本症例は合併切除することなく比較的安全に根治切除し得た。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2242-2244 (2020);
View Description
Hide Description
進行下部直腸癌の日本での標準治療は,直腸間膜全切除(TME)および側方郭清(LLND)である。しかし欧米では術前化学放射線療法併用TME が標準治療であり,手術単独治療,術前化学療法,術前化学放射線療法などを含めて議論があるところである。本研究では,当科における進行下部直腸癌に対する根治手術療法の再発危険因子を検討した。当科において2010~2015 年に根治切除術を施行した進行下部直腸癌のうち,LLND と術前治療両者施行例を除いた54 例を対象とし,無再発生存率に寄与する因子を後方視的に検討した。全症例の5RFS は57.6%であった。単変量解析ではリンパ節転移(p=0.038)とradial margin(RM)(p=0.015)で有意差を認め,各因子の5RFS は39.7%,0%であった。多変量解析ではRMのみで有意差を認めた(p=0.009)。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2245-2247 (2020);
View Description
Hide Description
背景: 当科では,cStage Ⅱ/Ⅲ下部直腸癌において術前診断でbulky な間膜リンパ節腫大を認める症例に対して術前化学療法を施行し,局所進展が強くcircumferential radial margin またはdistal margin を確保できない症例に対して術前化学放射線療法を施行している。今回,その治療成績を報告し治療の妥当性について検討した。対象と方法: 2010 年10 月~2015年10 月までに術前治療施行後に根治切除し得た局所進行下部直腸癌30 例を対象に後方視的に検討を行った。結果: 術前治療として25 例に術前化学療法,5 例に術前化学放射線療法を施行した。全再発症例は10 例で,再発形式は局所・遠隔ともに50%であった。全症例の5 年無再発生存率は63.9%であった。結語: 切除可能な局所進行下部直腸癌のなかで,より悪性度が高い症例に術前治療を施行し,良好な成績が得られた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2248-2250 (2020);
View Description
Hide Description
症例は72 歳,女性。腹痛と嘔気を主訴に当院を受診し,同日消化器内科に入院となった。精査の腹部dynamic CT にて膵体部に33×25 mm の辺縁不整な腫瘤影と末梢側主膵管の拡張を認め,EUS-FNA にて膵体部癌の診断を得た。遠隔転移などの明らかな非切除因の所見は認めず,手術目的に当科紹介となった。術中所見にて腸間膜に1 か所小結節を認め,術中迅速診断で腺癌の浸潤性増殖を認めるとの回答を得た。手術続行の可否を家族とも相談の結果,膵体尾部脾合併切除術を施行した。病理組織学的診断の結果はTS2,tub2,pT3,mpd0,S1,RP1,PV0,A0,PL0,OO0,N0,M1(PER),CY1,PCM0,DPM0,R1,stage Ⅳであった。術後に化学療法としてgemcitabine(GEM)/nab-PTX 療法を開始したが,3 か月後の4 コース目を施行中に食欲不振,疲労感などの有害事象が出現した。本人と相談の上,化学療法は中止となった。その後,外来にて経過観察しているが,術後1 年7 か月の現在,無再発生存中である。腹膜播種を来した膵癌は予後不良であり,一般的に手術適応はないとされるが,今回,手術と化学療法により無再発生存が得られている症例を経験したので報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2251-2253 (2020);
View Description
Hide Description
症例は47 歳,女性。2018 年6 月,検診にて肝腫瘤を指摘され,精査目的にて当院紹介となった。CT 検査を施行したところ,肝左葉S4 から右葉下面に長径13 cm ほどの境界明瞭な腫瘤を認め,造影所見より肝細胞癌が疑われた。また,左の肺尖部に径0.5 cm,右肺上葉に径0.3 cm 前後の小結節を認めた。B 型およびC 型肝炎ウイルスは陰性であったが,α‒フェトプロテイン(AFP)が高値であり,肝細胞癌および肺転移疑いの診断にて,肝細胞癌に対し肝切除を施行した。しかし術後5 か月に多発性の肝内再発を認め,3 回の肝動脈塞栓術を施行した。経過中の術後6 か月目には最初に認めた肺結節の増大を認め,肺転移と診断しレンバチニブを開始した。術後1 年目には造影MRI にて左葉外側区,S7,S8 にlow‒low pattern の再発腫瘍病変を認め,肝動脈塞栓療法では治療効果が低いと考えられた。このため動注化学療法を選択し,シスプラチン+5‒FU による治療を約3 か月間施行した。造影CT 上は肝外側区域中心に低吸収病変となり,AFP も急速に低下したため効果を得られたと考えられた。動注化学療法による副作用として十二指腸潰瘍を併発したが,その治療後に肺転移切除を施行し,現在明らかな転移巣は認めていない。肝細胞癌の肝外転移に対する治療は肝癌診療ガイドラインの治療アルゴリズムによると,ソラフェニブやレンバチニブなどの分子標的薬などが選択される。今回,これらの薬剤を投与しても効果が得られなかった肝内再発に対して動注化学療法によって治療効果が得られた。一方で,十二指腸潰瘍を併発するという副作用の問題も出現した。今回,肝細胞癌の治療において動注化学療法を含めた集学的治療が奏効した1 例を経験したので,文献的考察を加え報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2254-2256 (2020);
View Description
Hide Description
切除不能進行胃癌は予後不良の疾患であるが,化学療法奏効例に対してconversion surgery を行うことで長期予後が得られるとの報告が散見される。今回,conversion surgery によって根治切除し得た切除不能進行胃癌を経験したので報告する。症例は70 歳,男性。進行胃癌・多発肝転移の診断で,一次療法としてSP 療法(S-1 120 mg/body+CDDP 90 mg/body)を施行した。副作用のため,二次治療のirinotecan 療法(CPT-11 200 mg/body)へ移行しcCR が得られた。44 か月後,局所再発を認め,CPT-11 療法を再開とした。30 か月間のstable disease(SD)を得られたが,播種結節出現のためprogressive disease(PD)として三次治療の免疫療法(nivolumab 150 mg/body)へ移行した。播種結節の縮小を認めたが,貧血のため頻回な輸血が必要であり,姑息的手術として幽門側胃切除術を行う方針とした。術中所見で非治癒因子がなく,膵頭十二指腸切除術による根治切除が可能であると判断し,術式を変更した。手術時間6 時間35 分,出血量は312 g であった。病理組織学的所見はypT2N1M0P0M0,ypStageⅡA であった。術後13 か月経過し,無再発生存中である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2257-2259 (2020);
View Description
Hide Description
子宮内膜癌(endometrial cancer: EC)は,女性リンチ症候群(Lynch syndrome: LS)診断の契機となるセンチネルがんと位置付けされている。しかし本邦におけるその実態はほとんど明らかになっていない。今回この点について,EC を契機に診断されたLS 患者を対象に検討したので報告する。対象は2005~2019 年までの間にLS と遺伝学的検査にて確定診断された8 例で,① EC 以外のがん既往のあるのは5 例(63%),② EC 診断前の大腸癌発症は1 例(13%),③ EC 診断後のがん発症は5 例(63%)であった。また,EC がセンチネルがんであったのは7 例(88%)であった。第一度近親者38(男性15,女性23)例で,何らかのがん罹患15 例(40%),女性のがん罹患7 例(30%),EC 罹患は5 例(22%)でいずれもEC がセンチネルがんであった。第二度近親者98(男性40,女性44,不明14)例で,何らかのがん罹患16 例(16%),女性のがん罹患4 例(9%),EC 罹患は2 例(5%)で,いずれもEC がセンチネルがんであった。少数例の検討ではあるが,本邦の女性LS 患者においてもセンチネルがんとしてのEC の重要性が示唆された。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2260-2262 (2020);
View Description
Hide Description
症例は62 歳,男性。下部直腸癌,cT3N2bM1b,cStage Ⅳb と診断され,原発巣,転移巣ともに切除不能であった。全身化学療法を導入し,FOLFOX およびFOLFOX+BEV 療法を行った。治療開始後12 か月のCT 検査で原発巣,転移巣ともに著明な腫瘍縮小が認められ,原発巣は切除可能と判断し腹腔鏡下マイルズ手術を施行した。術後は重篤な合併症なく経過し,術後21 日目に退院した。退院後24 日目よりFOLFOX+BEV 療法を再開し,初診より25 か月経過時点で現在生存中である。今回われわれは,全身化学療法が著効した多発転移を伴うStage Ⅳ直腸癌に対して腹腔鏡下マイルズ手術を行った1 例を経験した。切除不能転移巣を伴うStage Ⅳ大腸癌に対する原発巣切除,それらの症例に対する腹腔鏡手術の有用性,安全性は現時点では確立されていないが,症例によっては予後延長を期待できる可能性があると考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2263-2265 (2020);
View Description
Hide Description
症例は67 歳,女性。胃痛を主訴に受診した。上部消化管内視鏡検査で胃角部大弯に潰瘍性病変を認めた。造影CT 検査で総肝動脈は上腸間膜動脈から分岐し門脈前面を上行し,右胃動脈および左右肝動脈を分岐していた。腹腔鏡下幽門側胃切除術,D2 郭清を行った。上行する総肝動脈の神経前面の層をトレースし,右胃動脈および左肝動脈の神経前面の層に至り,右胃動脈根部を明らかにしNo. 5 リンパ節郭清を行った。門脈左壁を確認しNo. 12a リンパ節郭清を行った。そのまま門脈左壁をトレースしていくも,かなり尾側で脾静脈と上腸間膜静脈が合流していたため,前肝神経叢をNo. 8a リンパ節郭清のメルクマールとして前肝神経叢沿いに郭清を進め,左胃動脈~脾動脈の神経前面の層につなげた。膵上縁に総肝動脈が存在しない血管破格に対しては,前肝神経叢が膵上縁郭清のメルクマールとして有用であった。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2266-2268 (2020);
View Description
Hide Description
緒言: 局所進行膵癌(LAPC)に対する術前治療では化学療法に放射線治療を組み合わせる取り組みがされてきた。今回われわれは,LAPC に対してgemcitabine(GEM)併用重粒子線治療を施行し,高い病理組織学的治療効果を認めた1 例を経験したため報告する。症例: 患者は65 歳,男性。2019 年2 月,CT で膵体部に乏血性腫瘤を認めた。EUS-FNA で腺癌を認め,腹腔動脈,総肝動脈,門脈への浸潤を伴うことからUR-LA 膵体部癌(cT4,cN1a,cM0,cStage Ⅲ)の診断で同年4 月GEM+nab-paclitaxel 併用化学療法(GnP 療法)を開始した。同年8 月にGEM 併用重粒子線治療を他院にて施行した。同年11 月に膵体尾部切除+腹腔動脈合併切除を施行しR0 切除が得られた。病理組織学的に膵外病変は一つのリンパ節転移を除き消失しており(ypT1c,ypN1a,ycM0,ypStage ⅡB),高い術前治療効果が得られていた(Evans grade Ⅲ)。結論: LAPC に対する化学療法併用重粒子線治療は,治癒切除率を向上させる可能性がある。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2269-2271 (2020);
View Description
Hide Description
症例は46 歳,女性。増大傾向にある後腹膜腫瘤の精査目的に紹介となった。各種精査にて悪性病変が否定できず,腫瘍摘出術を行った。開腹すると既知の後腹膜腫瘍が十二指腸を腹壁側に圧排していた。腫瘍は弾性硬で可動性良好であった。周囲組織を剝離していくと腫瘍は右卵巣静脈と固着していた。右卵巣静脈を結紮切離して腫瘍と一塊にして摘出した。病理組織学的検査では,腫瘍内部は錯綜,花筵状,束状に増殖する紡錘形細胞で構成されていた。免疫染色でHHF35(+),h‒caldesmon(+)であった。右卵巣静脈の平滑筋と連続した平滑筋肉腫であったため,血管平滑筋が発生母地と考えられた。術後2 年経過しているが,現在まで局所再発や転移は認めていない。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2272-2274 (2020);
View Description
Hide Description
症例は77 歳,男性。2017 年4 月に胆石性急性胆囊炎,総胆管結石症に対して開腹胆摘術,総胆管結石切石術を施行した。胆囊底部に15 mm 大の隆起性病変を認め,病理結果は小細胞神経内分泌癌(neuroendocrine carcinoma: NEC),T2(SS),N0 であった。胆道癌診療ガイドライン上,追加切除の適応であり,胆囊床切除術,肝門部リンパ節郭清術を施行した。術後経過観察中に肝転移,門脈腫瘍栓を認めたため,小細胞肺癌の治療に準じてfirst‒line としてcisplatin(CDDP)+irinotecan(CPT‒11)を6 コース,second‒line としてCDDP+etoposide(VP‒16)を3 コース,third‒line としてamrubicin(AMR)を12 コース施行した。途中,局所制御目的に放射線療法(40 Gy/20 Fr)を施行し一定の治療効果が得られ,現在約3 年の長期生存が得られている。悪性度が高い胆囊原発神経内分泌癌に対して集学的治療を行うことで,長期生存が得られる可能性が示唆された。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2275-2277 (2020);
View Description
Hide Description
症例1: 患者は48 歳,女性。HER2 タイプで,胸壁に10×11 cm 大の皮膚浸潤を呈した左乳がんのため当科を受診した。以前に抗HER2 療法を受けていたため当科でも抗HER2 療法を実施したが,腫瘍は徐々に大きくなり,がん性皮膚潰瘍を呈した。腫瘍部にメトロニダゾールゲルを使用すると臭いは軽減した。その後腫瘍は進行し,当院初診後1 年1 か月で死亡した。症例2: 患者は51 歳,女性。数年前より右乳房腫瘤を放置し,当科を受診した際には出血と感染を認める20×17 cm大のカリフラワー状の腫瘤となっていた。多発骨転移を伴う右乳癌と診断し,シクロホスファミド+メソトレキセート+フルオロウラシル(CMF)療法を実施し,その後ドセタキセル,ベバシズマブ療法を40 サイクル実施したところ肉眼的にはほぼCR の状態となり,日常生活を支障なく営んでいる。高度な皮膚浸潤を呈する乳がんの治療は局所の症状コントロールが主となるが,症例2 のように積極的に化学療法を行う価値がある症例も存在すると考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2278-2280 (2020);
View Description
Hide Description
症例は73 歳,男性。傍大動脈リンパ節(PAN)転移を伴う胃癌に対して審査腹腔鏡を施行し,P0CY0 を確認,術前補助化学療法の方針とした。S-1+oxaliplatin 併用(SOX)療法による化学療法を3 コース施行した。原発巣・リンパ節腫大は著明に縮小した。その後,幽門側胃切除術(D2+PAN 郭清)を施行した。病理組織学的診断では原発巣とすべての郭清リンパ節にviable な腫瘍細胞の遺残は認めず,pCR と判断した。術後21 か月経過し,無再発生存中である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2281-2283 (2020);
View Description
Hide Description
症例は68 歳,女性。食欲不振を主訴に来院,上部消化管内視鏡検査で胃体部に全周性の4 型進行胃癌を認めた。造影CT で明らかな遠隔転移は認めなかったが,胃体部に全周性の壁肥厚と漿膜面の不整を認め,漿膜外浸潤が疑われた。審査腹腔鏡を行い,腹壁に少数の腹膜播種病変を認めた。化学療法を行う方針とし,SOX 療法(S‒1 100 mg/body 2 週投薬1 週休薬,oxaliplatin 130 mg/m2 day 1)を3 コースを行ったところ造影CT で胃壁肥厚は軽減し,上部消化管内視鏡検査でも胃壁の硬化は改善した。再度審査腹腔鏡を行い,明らかな腹膜播種を疑う病変を認めず,腹腔洗浄細胞診も陰性であった。根治切除を行う方針とし,胃全摘,D2 リンパ節郭清,脾摘,胆囊摘出,Roux‒en‒Y 再建術を行った。術後は明らかな合併症を認めず,術後13 日目に退院となった。病理組織学的検査で,原発巣,リンパ節とも腫瘍細胞の残存を認めず,治療効果Grade 3(pCR)と診断した。術後はS‒1 による術後補助化学療法を開始し,術後6 か月経過したが無再発生存中である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2284-2286 (2020);
View Description
Hide Description
症例は76 歳,男性。肝S5/6 に肝細胞癌を認め,肝動脈化学塞栓療法(TACE)の後,肝拡大右葉切除を施行した。術後8 か月で肝内再発を認めTACE を施行した。術後13 か月で肝内および肝十二指腸間膜リンパ節再発を認め,肝内病変に対してはTACE およびラジオ波焼灼療法を行った。肝内病変のコントロールは良好で新たな病変の出現がみられないことから,術後20 か月でリンパ節転移再発に対して肝十二指腸間膜リンパ節摘出術を施行した。術後の経過は良好で術後第8 病日に退院となり,初回治療より42 か月,リンパ節切除後より20 か月経過して明らかな再発なく経過している。肝細胞癌のリンパ節転移は比較的まれで,肝外転移として遠隔転移と同様に分子標的治療薬による全身化学療法が標準治療とされているが,その予後は不良である。しかしながら,本症例のように肝内病変が良好にコントロールされている切除可能病変に対しては,外科的切除が有効である可能性がある。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2287-2289 (2020);
View Description
Hide Description
症例は40 歳台,男性。血友病A の診断で6 歳時より輸血と凝固因子製剤の投与を行い,14 歳時に診断されたC 型肝炎に対してIFN 治療,18 歳時に診断されたHIV 感染症に対してHAART 療法を施行されていた。3 年前に肝S8 の腫瘍に対して肝部分切除術を施行,混合型肝癌,Stage Ⅱと診断された。術後2 年7 か月に肝S4 およびS1 に肝内再発を指摘,化学療法を行うもSD と判断され当院紹介となった。肝内再発巣は最大径2 cm,2 個で左葉に限局し,肝外再発所見が明らかでなく手術の方針とした。手術は肝左葉切除術を施行,周術期にAPTT および第Ⅷ因子活性を指標に第Ⅷ因子製剤の投与を行い,経過問題なく術後13 日目に軽快退院した。現在,術後4 か月であるが,無再発で経過している。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2290-2292 (2020);
View Description
Hide Description
症例は75 歳,男性。腹痛を主訴に受診し,腹部造影CT 検査にて横行結腸直接浸潤および領域外リンパ節転移を伴うStage Ⅳ胆囊癌と診断した。gemcitabine+cisplatin 療法を施行し原発巣の縮小は得られたものの,直接浸潤による横行結腸の閉塞を来したため準緊急的に結腸右半切除術および拡大胆囊摘出術を施行した。初診より1 年2 か月後に下膵頭前部リンパ節腫大を認めたため,S‒1 内服および放射線療法を施行し縮小を得た。S‒1 内服を継続したが初診より2 年2 か月後,同リンパ節の再増大による十二指腸閉塞を来した。胃空腸吻合術にて経口摂取可能となり,しばらくは自立した自宅療養が可能であったが徐々に全身状態は悪化し,初診より2 年6 か月後に死亡した。本症例は切除不能胆囊癌であったが,手術,化学放射線療法,姑息的消化管バイパス術などの集学的治療により,結果的に2 年6 か月という長期間の予後延長を得ることができた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2293-2295 (2020);
View Description
Hide Description
食道癌脳転移はまれであるが,麻痺などの症状はADL やQOL の低下に直結するため,緊急的な治療が必要となる。今回,麻痺症状を伴う食道癌脳転移に対して切除によりQOL を維持し得た症例を経験したので報告する。症例1: 患者は50歳台,男性,Stage Ⅲ。食道癌術後6 年9 か月時に左上肢麻痺が出現し,右側頭葉の転移性脳腫瘍と判明し,腫瘍摘出術を施行した。術後身体機能は改善し,自宅生活が可能となった。他転移巣の進行により脳転移診断から10 か月後に死亡した。症例2: 患者は61 歳,女性,Stage Ⅲ。食道癌術後5 か月時に右上下肢不全麻痺が出現し,左前頭葉の脳転移および肺転移を認めた。腫瘍摘出術を施行し,症状は改善し,自宅退院となった。化学療法を継続したが,肺転移巣増悪により脳転移診断より10 か月後に死亡した。まとめ: ADL,QOL の維持のため脳転移に対する積極的な外科的治療も意義のある治療選択肢の一つであると考える。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2296-2298 (2020);
View Description
Hide Description
症例は76 歳,男性。2015 年にS 状結腸癌に対して腹腔鏡下結腸左半切除術D3(pStage Ⅱb)を施行され,その後横行結腸癌も認めたため横行結腸部分切除術D2(pStage Ⅱb)を施行された。2018 年に腹膜播種再発を認め,2019 年には吐血・黒色便を認め,著明な貧血(Hb 3.1 g/dL)と胃小弯側の再発リンパ節が胃壁に浸潤し出血を認めた。内視鏡的に止血を行ったが,再出血のリスクが高いため出血制御目的の緩和的放射線照射を施行した(30 Gy/10 Fr)。照射後の内視鏡検査にて胃壁浸潤部の潰瘍は改善傾向を認め,出血や貧血の進行は認めず,経口摂取が可能となった。全身状態の悪化を認め,緩和的放射線照射施行後80 日で死亡した。緩和的放射線照射の目的として骨転移による疼痛の緩和,気道や食道狭窄の緩和などが知られているが,近年は腫瘍出血に対して症状緩和や予後延長を目的に施行されている。出血制御目的の緩和的放射線照射は外科的切除と比較して止血効果に限界があり,止血が得られるまで若干の時間を要するが,侵襲性が低く有害事象も少ないため有効な治療選択肢となり得る。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2299-2301 (2020);
View Description
Hide Description
高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability‒high: MSI‒High)を示すすべての固形癌に対してpembrolizumab の有効性が示され,既存の化学療法が奏効しない症例に対しても治療効果が期待できる可能性がある。今回,pembrolizumab 療法でcomplete response(CR)が得られたMSI‒High 再発大腸癌の1 例を報告する。症例は69 歳,男性。S 状結腸癌に対し他院にてS 状結腸切除術(D3 郭清),膀胱部分切除術を施行した。病理組織学的検査でT4a,N0,M0,Stage Ⅱb と診断された。術後6 か月後に局所再発による腸閉塞のためハルトマン手術,小腸部分切除術が施行されたが,後腹膜に腫瘍が残存し切除不能であった。術後SOX 療法を施行したが,1 コース目にGrade 3 の下痢のため中止となった。この間に施行したMSI 検査においてMSI‒High と診断された。二次化学療法としてpembrolizumab での化学療法を導入した。2 コース終了後(6 週後)のCT 検査において腫瘍は長径30%以上縮小,4 コース終了後(12 週後)のCT 検査においてもさらに縮小を認めpartial response(PR)と判定した。6 コース後には腫瘍は完全に消失し,8 コース以後も同様に腫瘍消失を認めたためCR と判定した。CR 判定後も約7 か月CR を維持している。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2302-2304 (2020);
View Description
Hide Description
Stage Ⅳを含む切除不能進行胃癌において,幽門狭窄症状が出現した際は経口摂取を可能とするため胃空腸吻合術が行われる場合が多い。当科では以前,開腹による胃空腸吻合術を主に施行していたが,近年は低侵襲性を考慮し腹腔鏡下に行っている。2009 年12 月~2019 年12 月に当科で施行した胃空腸吻合術31 例のうち開腹群24 例,腹腔鏡群7 例の2 群間の患者背景,手術成績および術後化学療法の有無と化学療法開始までの期間について後方視的に比較検討した。両群間で患者背景の差はなく,術後在院日数,術後経口摂取開始までの期間は腹腔鏡群で有意に短かった。また腹腔鏡群は出血量が少なく,合併症頻度が低く術後の化学療法が比較的早期に施行される傾向にあった。腹腔鏡下胃空腸吻合術は安全に施行でき,その低侵襲性により後治療へより早期に移行できる可能性が示唆された。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2305-2307 (2020);
View Description
Hide Description
背景: インドシアニングリーン(ICG)を用いた蛍光法は,大腸癌手術の吻合部血流評価による縫合不全リスク軽減効果が期待されている。また,特殊な解剖を有する症例や血管温存手術を行う際の動脈分岐形態の確認にも有用と考えられる。腸回転異常症を伴う横行結腸癌に対しICG 蛍光法を用いて腹腔鏡下切除を行った症例を報告する。症例: 患者は62 歳,女性。横行結腸癌に加え,CT で腸回転異常症を指摘された。手術は腹腔鏡下横行結腸切除術,D3 郭清を施行した。上腸間膜動脈を確認後,ICG を静注し,回結腸動脈および中結腸動脈をそれぞれ確認した後,中結腸動脈を根部で切離し#223 を郭清した。最終診断はpT2pN0M0,pStage Ⅰであった。結論: 蛍光ナビゲーションは特殊な解剖を有する症例の血管分岐確認に有効であった。しかし描出は短時間のみのほぼ一度きりであり,脂肪の厚い症例では描出不良となることもあり課題も多い。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2308-2310 (2020);
View Description
Hide Description
症例は77 歳,男性。便潜血陽性で当科紹介となり,精査にて横行結腸の中央やや左側に存在するcT2N0M0 の横行結腸癌と診断した。24 年前にS 状結腸癌の手術歴があり,下腸間膜動脈は根部で切離されていた。術前の3D 血管構築では,横行結腸左側からS 状結腸吻合部までは独立分岐する中結腸動脈左枝と辺縁動脈により栄養されていた。また,第一空腸静脈のやや尾側の高さで中結腸動脈左枝は上腸間膜動脈より分枝していた。手術は開腹結腸左半切除術を行った。術前シミュレーションを基に中結腸動脈左枝を根部で処理でき,また術中indocyanine green(ICG)蛍光法による血流評価で口側血流と,前回吻合部を明確に判断することができた。術後は合併症なく経過し,第10 病日に退院した。病理結果はpT1bN0M0であった。3D 血管構築とICG 蛍光法は,左側横行結腸癌症例に対し安全に手術を行う上で有用であると考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2311-2313 (2020);
View Description
Hide Description
症例は46 歳,男性。2 か月前からの右下腹部痛を主訴に受診した。造影CT 検査で虫垂から腹壁に連続する30 mm大の腫瘤を認め,慢性虫垂炎または虫垂腫瘍が疑われたが確定診断に至らず,腹腔鏡下虫垂切除術を施行した。術中の迅速病理診断では悪性所見は認めなかったが最終病理診断で虫垂癌と診断され,右外腸骨動静脈および腹壁に腫瘍が残存した。化学療法を計13 か月間施行後,PET‒CT 検査で局所に限局した異常集積のみで遠隔転移を認めなかったため,初回手術後20 か月で開腹回盲部切除,D3 リンパ節郭清,外腸骨動静脈および腹壁,大腰筋合併切除,大腿動脈‒大腿動脈バイパス術を施行し,R0 手術し得た。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2314-2316 (2020);
View Description
Hide Description
症例は84 歳,女性。20XX 年11 月に右下腹部痛を来し当院に救急搬送され,腹部造影CT 検査で径13 mm 大に腫大した虫垂と,虫垂近傍に9.6×4.1 cm 大の膿瘍を疑うlow density area を認めた。虫垂周囲膿瘍を伴う虫垂炎穿孔と診断したが,巨大膿瘍であるために腹腔鏡手術は視野確保が困難と考えて緊急開腹手術を施行した。巨大膿瘍は虫垂先端に粘液囊腫が形成されたと考えられ,虫垂根部で反時計方向に540°捻転していた。虫垂根部で盲腸を一部含めるように盲腸部分切除術を施行した。切除標本では囊胞内腔に黄色透明のゼリー状の内容液が充満していた。術後病理診断で低異型度虫垂囊腫と診断した。近年,虫垂囊腫の腹腔鏡手術施行例の報告が増加している。虫垂囊腫は境界悪性とされているが,慎重に手術を施行することで腹腔鏡手術も可能であると考えられ,術式の選択についてはさらなる症例の蓄積が必要であると思われた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2317-2319 (2020);
View Description
Hide Description
症例は診断時89 歳,全盲の女性。右下腹部腫瘤とるい痩を主訴に来院した。CT では9 cm に達する右尿管,右腸骨動静脈を巻き込んだ回盲部腫瘍を認めた。TCS では盲腸部にカルチノイドを疑う腫瘍を認め,生検では粘液産生型の腺癌と診断した。UFT を投与するも副作用のため断念した。約3 か月後右下肢痛が生じ,症状軽減目的で放射線療法(50 Gy)を施行したところ症状が消失,腫瘍も著明に縮小した。次にTS-1 の投与を試みたが,副作用にて継続できなかった。初診から約2.8 年後再び腫瘍増大と腸閉塞を発症し,姑息的回盲部切除を施行した。組織は虫垂杯細胞カルチノイド由来の腺癌であった。sig,si(右卵巣),ly1b,v1a,n0。初診から4 年を経過したところでCEA の急上昇を認め,肺転移の出現を認めた。CEA は596.7 ng/mL となり,約4.2 年目に死亡された。CEA の推移をみると,初診時は最低値であり,放射線療法後も軽微に上昇した。摘出後いったん減少するがすぐに上昇し,肺転移に伴い急上昇した。摘出標本の免疫染色ではCEA 強陽性の粘液成分がない細胞が大部分であったため,遺残した腺癌成分が予後を早めた可能性が高い。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2320-2322 (2020);
View Description
Hide Description
症例は30 代,男性。血便,血尿を主訴に前医を受診し,S 状結腸癌,膀胱浸潤の疑いで当科に紹介となった。下部消化管内視鏡検査では,S 状結腸に全周性の3 型腫瘍を認め,内視鏡は通過不能であった。膀胱鏡では左尿管口は同定できず,膀胱三角への浸潤も否定できなかった。body mass index(BMI)45 kg/m2と高度肥満であり,外科手術はリスクが高いと考え化学療法と術前減量を併施しつつ,根治手術の可能性を探る方針とした。RAS 野生型であり,傍大動脈周囲リンパ節の腫脹も認めたことから,mFOLFOX6+cetuximab を6 コース施行した。減量により,BMI は45 kg/m2 から39 kg/m2 まで低下した。化学療法により腫瘍の縮小が得られ,膀胱への接触も頂部のみに限局したため手術を企図し,S 状結腸切除術,膀胱部分切除術によりR0 切除を施行し得た。本症例は治療困難例であったが化学療法と術前減量を併施することにより,安全性と根治性の両立が可能であった。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2323-2325 (2020);
View Description
Hide Description
本態性血小板血症(essential thrombocythemia: ET)は血小板数の著しい増加と,血栓形成や易出血性を呈する骨髄増殖性疾患である。ET と大腸癌が併存することはまれであり,本邦での報告は自験例を含め5 例のみであった。今回われわれは,ET を合併した上行結腸癌に対し腹腔鏡補助下結腸右半切除術を施行し,良好な経過を得たため報告する。症例は81 歳,女性。9 年前にET と診断され,アスピリン,シロスタゾール,ヒドロキシウレア(HU)を内服していた。血便を主訴に当院に紹介となった。下部消化管内視鏡検査にて上行結腸癌と診断された。貧血を呈しており,診断時よりアスピリン,シロスタゾールを休薬した。手術前日にHU を休薬し,腹腔鏡補助下結腸右半切除術を施行した。手術翌日から術後3 日目までエノキサパリンの皮下投与を行い,術後3 日目にHU を,術後4 日目にアスピリンおよびシロスタゾールの内服を再開した。術後経過は良好で,合併症なく術後8 日目に退院した。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2326-2328 (2020);
View Description
Hide Description
fibrolamellar hepatocellular carcinoma(FLHCC)は,慢性肝炎や肝硬変のない若年成人に好発する特殊型の原発性肝細胞癌で通常型と比較し,東南アジアでの発生はまれな疾患である。症例は25 歳,ベトナム人男性。食欲不振を主訴に近医を受診した。右側腹部に巨大な腫瘤を触知し,精査加療目的で当院に紹介となった。HBs 抗原,HCV 抗体は陰性で腫瘍マーカーはPIVKA‒Ⅱの上昇を認めたが,その他は異常を認めなかった。腹部造影CT 検査で肝左葉から右葉にかけて20×13 cm 大の境界明瞭で辺縁分葉状の巨大腫瘤を認め,腫瘍中心部に瘢痕状の造影不良域がみられ近傍に石灰化を認めた。明らかなリンパ節転移や遠隔転移を疑う所見は認めなかった。本症例では患者背景,画像所見からFLHCC(cT4N0M0,cStage ⅣA)と診断し,肝左3 区域切除術を施行した。病理組織学的所見,免疫染色ではCD68 陰性,CK7 陽性でFLHCC と診断した。肝疾患のない若年成人に巨大な肝腫瘤を認めた場合は本疾患を鑑別にあげる必要がある。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2329-2331 (2020);
View Description
Hide Description
症例は72 歳,女性。C 型肝炎で当院消化器内科通院中,腹部超音波検査で十二指腸下行脚背側に腫瘍を指摘され,精査加療目的に当科紹介となった。腹部造影CT 検査で35 mm 大の境界明瞭な腫瘤性病変が十二指腸下行脚背側に膵頭部と下大静脈に囲まれるように存在し,骨盤内に90 mm 大の囊胞性腫瘤を認めた。FDG-PET/CT では後腹膜腫瘤にSUVmax 8.8の集積を認め,骨盤内囊胞性腫瘤,他臓器には明らかな集積は認めなかった。後腹膜腫瘍,卵巣奇形腫の診断で,腹腔鏡下後腹膜腫瘍切除,右付属器摘出術を施行した。病理組織学的所見で後腹膜腫瘍はdiffuse large B-cell lymphoma,骨盤内腫瘍は成熟奇形腫と診断した。自験例では腫瘍が十二指腸下行脚と膵頭部背側に存在し,後上膵十二指腸動静脈に接していたが,画像上腫瘍の浸潤傾向が乏しく剝離可能と判断し腹腔鏡下手術で切除し得た。後腹膜腫瘍と成熟奇形腫に対して腹腔鏡下に同時切除を施行した報告例はなく,非常にまれな症例を経験したので報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2332-2334 (2020);
View Description
Hide Description
症例は47 歳,女性。下腹部痛と発熱を主訴に近医を受診し,腎盂腎炎の診断で抗生剤を投与されるも改善を認めず,当院へ紹介された。CT 検査で膀胱前腔から腹直筋にかけて大きさ8 cm の膿瘍を認め,切開排膿を行うも腹壁離開を起こし,追加手術を行った。開腹すると,回腸に発生したMeckel 憩室が膿瘍内に入り込んでおり,Meckel 憩室炎による腹壁膿瘍と考え,Meckel 憩室と膿瘍を切除した。病理検査では膿瘍内に腺癌細胞を認め,Meckel 憩室が膿瘍へと連続する部位には胃幽門腺様の組織を認めたことから,Meckel 憩室の異所性胃粘膜からの発癌と診断した。術後に補助化学療法を1 年間行い,現在のところ再発なく経過している。Meckel 憩室癌は診断が困難な上,症状の発現が遅く進行した状態で見つかることが多い。本症例は腹壁膿瘍を契機に発見され,2 年間無再発で経過している極めてまれなMeckel 憩室癌の症例である。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2335-2337 (2020);
View Description
Hide Description
症例は80 歳,女性。食欲低下と下痢を主訴に当院を受診した。下部消化管内視鏡検査で上部直腸Ra に2 型腫瘍を認め,生検にて高分化腺癌の診断となった。仙骨に広範囲に接する局所進行直腸癌であり,術前化学放射線療法(S‒1 100 mg/day 内服+放射線治療50 Gy/25 Fr)を施行した。治療終了後,腫瘍の著明な縮小効果は得られるも手術を強く拒否されたため,化学療法の方針となった。XELOX+bevacizumab 療法を開始したが2 コース目を施行した後に腸閉塞症状が出現したため,準緊急で低位前方切除術,人工肛門造設術を施行した。術後病理組織学的所見では,原発巣は粘膜内に微量の腫瘍細胞を認めるのみで術前治療は著効したと考えられた。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2338-2340 (2020);
View Description
Hide Description
閉塞性大腸癌症例は緊急処置が必要となることが多い。今回われわれは,閉塞性大腸癌に対しイレウス管を用いた減圧後に腹腔鏡手術を行った症例を非閉塞症例と比較し,その意義を検討した。2010 年4 月~2019 年3 月に当院で施行した腹腔鏡下大腸癌切除症例129 例を対象とし,非閉塞性大腸癌(N 群)97 例と閉塞性大腸癌(O 群)32 例を検討した。性別に有意差は認めなかった。年齢はO 群のほうが有意に若く,入院期間も有意に長かった。手術時間,出血量,開腹移行,術後合併症においても差は認めなかった。閉塞性大腸癌症例において適切に腸管減圧を行えば,腹腔鏡手術も選択肢となり得る。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2341-2342 (2020);
View Description
Hide Description
急速増大した乳腺紡錘細胞癌の1 例を経験したので報告する。症例は69 歳,女性。主訴は右乳房痛。左乳癌術後で経過観察中であったが,右乳房痛のため受診となった。右乳腺CD 区域に,6 か月前には認めなかった27×27 mm 大の境界不明瞭な腫瘤性病変を認めた。乳管癌の術前診断で右乳房切除術および腋窩郭清を施行した。術後診断はpT2N1M0,pStageⅡB であった。現在,術後2 年2 か月経過しているが,無再発生存中である。急速増大した乳腺紡錘細胞癌の症例報告は散見されるが,具体的に急速増大の定義を行った文献はない。今回われわれは,Gerstenberg が提唱した腫瘍倍加時間(DT)を用いて急速増大を定義した。乳腺紡錘細胞癌報告例のうちDT 算出可能であった症例の多くで,DT が90 日未満のfast-growing group であった。通常型乳癌での報告と比較すると,紡錘細胞癌は急速増大することが示唆された。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2343-2345 (2020);
View Description
Hide Description
症例は70 歳,女性。4 年前に胃癌に対し幽門側胃切除術が施行された。術中に腹膜播種結節を認め,最終診断はpor1-2,T4a(SE),ly2,v0,NX,H0,P1,cy0,Stage Ⅳであった。術後はSOX 療法で3 年6 か月間病勢制御されていた。胃癌手術から4 年後に腹部造影CT 検査で盲腸に腫瘍性病変を認め,下部消化管内視鏡検査で中心陥凹を伴う粘膜下腫瘍様の病変を認めた。生検では悪性所見を認めなかったが,粘膜下進展する悪性腫瘍が疑われ,腹腔鏡下回盲部切除術を施行した。病理組織学的検査では粘膜下層を中心に進展する低分化型腺癌を認めた。漿膜面への露出は認めなかった。過去の胃癌と病理学的形態が類似しており,また免疫組織染色検査でCK7,CK20,CDX2 の発現パターンも過去の胃癌と類似し,胃癌の大腸転移と診断された。病理組織型が印環細胞癌や低分化型腺癌の胃癌の既往がある症例で,大腸の粘膜下腫瘍様病変を認める際には胃癌の大腸転移を念頭に置く必要がある。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2346-2348 (2020);
View Description
Hide Description
症例は73 歳,男性。黒色嘔吐を主訴に前医を受診し,肝転移を伴う胃癌と診断されたがセカンドオピニオンのため当院を受診した。上部消化管内視鏡検査で境界不明瞭な50 mm 大の早期胃癌を認め,腹部造影CT で肝S7 に周囲から遷延性に濃染される腫瘤を認めた。FDG‒PET/CT で前立腺に集積を認め,PSA も高値であった。胃癌および前立腺癌と診断し,肝腫瘍の鑑別診断として肝内胆管癌あるいは転移性肝癌が考えられた。前立腺癌に対してホルモン療法を行ったが,肝腫瘍は縮小せずPSA 染色陰性で前立腺癌の肝転移は否定的であった。早期胃癌の肝転移の可能性は低いことからも肝内胆管癌と診断し,一期的に幽門側胃切除術,肝後区域切除術を行った。重複癌の治療方針は原発巣や進行度,全身状態などを総合的に判断して決定する必要があり,十分な精査を行わなければならない。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2349-2351 (2020);
View Description
Hide Description
症例は70 歳台,女性。直腸癌,T2N1M1a(PUL1),Stage Ⅳに対して腹会陰式直腸切断術を施行した。術後5 年4か月に骨盤内局所再発を認めた。術前放射線化学療法(40 Gy/20 Fr,S‒1 80 mg/日)施行後,骨盤内臓全摘,尿管皮膚瘻造設,有茎薄筋皮弁再建術を行った。術後大きな合併症なく,第39 病日に退院した。直腸切断術後局所再発に対して骨盤内臓全摘,薄筋皮弁による会陰再建で良好な術後経過を得た症例を経験したので報告する。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2352-2354 (2020);
View Description
Hide Description
胃癌皮膚転移と原発性乳癌の重複癌の1 例を経験した。原発性乳癌と転移性乳癌の鑑別に苦慮した1 例を報告する。症例は76 歳,女性。進行胃癌に対して,2019 年2 月胃全摘を施行した。5 か月後,左側腹部の皮膚腫瘤を主訴に来院となり,PET-CT 検査を施行したところ,右乳腺A/E 領域に腫瘤性病変を認め,診断目的に右乳房部分切除とセンチネルリンパ節生検,左側腹部皮膚腫瘤摘出術を施行した。乳腺と皮膚の腫瘍の原発巣の検索に免疫組織学的染色を用いた。既存の胃癌と皮膚腫瘤はCDX2 とMUC5AC が陽性であり,乳癌では両者とも陰性であった。最終的な病理組織学的診断は皮膚腫瘤に関しては胃癌の皮膚転移であり,乳腺腫瘤は原発性乳癌であった。術後の治療は胃癌に対してS-1 内服を10 コース施行中であり,2020 年5 月現在も再発なく生存中である。免疫組織学的染色が診断に有用であった既往に胃癌のある乳癌の1 例を経験した。
-
Source:
癌と化学療法 47巻13号, 2355-2357 (2020);
View Description
Hide Description
胃原発の胎児消化管上皮類似癌は,胃癌取扱い規約(第15 版)では特殊型の一つに分類されるまれな疾患である。一般の腺癌に比べて脈管侵襲が高度で予後不良とされている。今回,食思不振と体重減少をきっかけに発見された胃原発胎児消化管上皮類似癌の症例を経験したので報告する。症例は76 歳,男性。食思不振と体重減少を訴え近医を受診した。腹部超音波検査とCT 検査から胃癌が疑われ,当院に紹介となった。上部消化管内視鏡検査で胃角部小弯に胃癌を認めた。幽門側胃切除術を施行した。病理組織学的所見では淡明な細胞質を有する中分化型腺癌がみられ,免疫染色ではSALL4(+),AFP(-)であり,胎児消化管上皮類似癌と診断した。脈管侵襲は認めなかった。術後経過は良好であり術後9 日目に退院となった。外来で術後補助化学療法を行っているが,術後5 か月経過した現在のところ再発を認めていない。