Volume 49,
Issue 12,
2022
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投稿規定
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癌と化学療法 49巻12号, 1426-1427 (2022);
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癌と化学療法 49巻12号, 1428-1429 (2022);
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総説
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癌と化学療法 49巻12号, 1285-1290 (2022);
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抗がん薬を用いた化学療法は,急速な進歩と汎用化を遂げた一方で,現代の医療を代表する最もハイリスクな業務領域の一つを形成するに至っている。実際,抗がん薬に伴う医療事故は多くの国と地域において発生し,患者安全の展開に多大な影響を与えてきた。本稿では,過去に米国と日本において発生した抗がん薬事故事例について振り返るとともに,近年国内で報告された事例について共有する。また,厚生労働科学研究で作成された患者安全実務の全体像(ダブルループ)について紹介する。医療機関は,迅速かつ組織的に倫理的で公正な有事対応を行うとともに,数理的で効果的な平時活動を実践する必要がある。より高度で先駆的な治療に着手するのであれば,その担い手はそれを支える基盤的安全実務体制を獲得しておく必要がある。本稿で述べたダブルループに照らし,施設内の患者安全体制を点検していただければ幸いである。
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特集
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(医師主導型の)臨床研究,臨床試験のあり方,現状,今後の展望
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癌と化学療法 49巻12号, 1291-1294 (2022);
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はじめに: 高血圧治療薬「ディオバン」や「ブロプレス」,白血病治療薬「タシグナ」などに代表される医薬品の臨床試験におけるデータ操作や,製薬企業との関係における利益相反開示違反などの研究不正が2013~2014年に相次いで発覚した。これを受けて臨床研究に対する信頼性を確保するために,2017 年4 月7 日に通常国会で成立したのが「臨床研究法」(平成29 年法律第16 号)である(同年4 月14 日公布)。研究者に対する臨床研究実施基準の遵守,製薬企業などに対する資金提供に関連する契約の締結およびその公表が求められた他,認定臨床研究審査委員会を設置することにより審査の質の担保を図ることなどが定められ,透明性と安全性が確保された質の高い社会的・学術的意義のある臨床研究を促進することが目的とされた。同法は2018 年4 月1 日から施行となったが,施行当初は研究者間の理解不足,医療機関の対応の遅れ,膨大な書類などに代表される煩雑な手続きと実施費用の高額化などの問題により,医薬品開発に不可欠な臨床研究に萎縮がみられた。施行から数年経過した現在では,厚生労働省から発出された「臨床研究法の施行等に関するQ and A」などの事務連絡,また運用の工夫により臨床研究法にて定められた特定臨床研究数も増加傾向にある。また,臨床研究法下で研究を実施することによる様々なメリットもみえてきた。本稿では,臨床研究法で定められた特定臨床研究をテーマに,その運用と留意すべき点などを概説する。
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癌と化学療法 49巻12号, 1295-1299 (2022);
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従来は企業しか実施することができなかった治験が改正薬事法の施行により,医師または歯科医師が自ら治験を企画・実施することが可能となった。医師主導治験の実施数は年々増加傾向にあるものの,その実現については治験実施にかかる高額な費用,それを補う資金獲得の困難さが障壁となっている。また,医師主導治験の目的は,本来その薬剤ないし治療法の承認をめざすことにあるが,現実的には承認をめざさない医師主導治験が多くあり,特定臨床研究との違いが試験において使用する薬剤の承認状況のみという場合もある。薬剤開発がグローバル化するなか,医師主導治験における現状と問題点について私見を交えて概説する。
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癌と化学療法 49巻12号, 1300-1304 (2022);
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目の前の患者における医療情報,いわゆるリアルワールドデータ(RWD)を臨床研究に利活用する動きが世界的に注目されている。そのため,RWD を活用した臨床研究を行う,もしくはそのような研究を解釈する上での重要なポイントを知っておくことは重要である。本稿ではそのようなRWD の利活用研究や収集方法についての国内外の動きを述べる。まず,第一にRWD 利活用研究の代表例を示した上で,今後増えてくる利活用方法について述べる。特に,近年介入研究にもRWDを外部比較対照集団として利活用するというトレンドが高まっており,そちらについての海外の利活用研究例を述べる。次に,RWD を活用して承認申請のようなregulatory aspects に利用する機運も高まっており,その活用例も述べる。最後に,様々な研究用途に耐え得る大規模で質の高いRWD を作成するために医療者の負担を最小限にした上で,がんの臨床研究に必要な情報を効率的に集めることができるような方法が開発されてきている。そのようなRWD を大規模かつ質が高い形で収集するための方法と世界的な動きについても述べる。
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癌と化学療法 49巻12号, 1305-1309 (2022);
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先進医療とは,適応外の治療と保険診療との併用を認める制度であり,適応外の治療を評価するための臨床試験を行う際に使用される。「完全切除非扁平上皮非小細胞肺癌に対するペメトレキセド+シスプラチン併用療法とビノレルビン+シスプラチン併用療法のランダム化比較第Ⅲ相試験(JIPANG)」は,非小細胞肺癌の術後補助化学療法としての適応がないため,先進医療B の制度を用いて行われた。本試験において試験実施体制の構築に苦労したが,登録期間5 年,観察期間5年の長期間をかけて完遂した。しかし主要評価項目の無再発生存期間で,ペメトレキセド+シスプラチン併用療法の優越性は示されなかった。日本においてアカデミア主導で未承認薬や薬剤の適応外使用での臨床試験を行うには,試験の実施体制の構築,薬剤の提供,資金調達が課題である。
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原著
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癌と化学療法 49巻12号, 1329-1338 (2022);
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目的: 日本人患者における上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺癌(NSCLC)に対する1 次治療選択における治療関連特性の選好を評価した。方法: 日本人NSCLC 患者を対象に横断的離散選択実験を実施した。参加者は,五つの治療に関連した特性(「疾患進行までの期間」,「皮疹の頻度」,「2 次治療における分子標的療法」,「来院頻度」および「投与経路(経口,注射)」)の異なる水準の選択肢を含む質問票にオンラインで回答した。主要解析として各々の治療に関連した特性の相対的重要度を推定した。EGFR 遺伝子変異の有無別の患者選好の差異を評価するため,EGFR 遺伝子変異陽性患者とEGFR 遺伝子変異陰性/不明患者での患者の選好を比較した。結果: 合計158 例から質問票に対する回答が得られた。全体集団の解析で最も相対的重要度が高かった治療特性[平均相対重要度(標準偏差)]は,「2 次治療における分子標的療法: 39.30(17.07)」であり,次いで「疾患進行までの期間: 25.25(10.51)」,「皮疹の頻度: 21.58(11.74)」が高かった。一方,「投与経路(経口,注射): 7.63(6.99)]および「来院頻度: 5.96(3.40)」は相対的重要度が低かった。結論: 今回の調査では「2 次治療における分子標的療法」はEGFR 遺伝子変異陽性のNSCLC 患者による1 次治療の選択に影響を及ぼす主要な要因であった。1 次治療選択時に2 次治療の選択肢も含めて患者に伝え最適な治療法を選択することが重要であると考えられた。
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癌と化学療法 49巻12号, 1339-1342 (2022);
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パルボシクリブはサイクリン依存性キナーゼ4/6 に対して阻害活性を有する低分子化合物で,内分泌療法と併用して使用されるエストロゲン受容体(ER)陽性かつHER2 陰性の手術不能または再発乳癌の治療薬である。今回われわれは,多施設共同にて手術不能または再発乳癌における治療期間の延長に関する因子についてretrospective に検討を行った。パルボシクリブ投与後の治療成功期間(time-to-treatment failure: TTF)中央値は5.6(0.2~22.5)か月で,併用されている内分泌療法はフルベストラント群28 例,アロマターゼ阻害剤群が21 例であった。TTF 中央値はフルベストラント群7.5 か月(n=28),アロマターゼ阻害剤群4.2 か月(n=21,p=0.162)であった。TTF 中央値は,白血球数(WBC): 2.6 vs 6.7 か月(p=0.015),好中球数(Neu): 3.7 vs 6.6 か月(p=0.021),リンパ球数(Lym): 2.8 vs 7.5 か月(p=0.007)となり,パルボシクリブ導入時にWBC,Neu,Lym の値に関して標準値より高い群においてTTF の延長がある傾向がみられた。併用されている内分泌療法においてフルベストラント群とアロマターゼ阻害剤群での比較では,TTF 中央値7.5 vs 4.2 か月(p=0.162)とフルベストラント群のTTF が長い傾向がみられたが,統計学的な有意差はみられなかった。パルボシクリブ導入時のWBC,Neu,Lym の値がTTF の延長に影響を及ぼす要因であると考えられた。今後はこれらのデータの解析を進め,パルボシクリブのTTF の延長に関する要因についてさらなる検討が必要と考える。
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癌と化学療法 49巻12号, 1343-1348 (2022);
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進行がん患者を対象に在宅緩和ケアの早期導入を行った経験や,がん治療と在宅緩和ケアの統合に関する医療従事者の現状の理解を明らかにすることを目的とした。27 名の医療従事者(がん治療医,緩和ケア医,在宅医,看護師,医療ソーシャルワーカー,ケアマネージャーを含む)を対象とした在宅緩和ケアの統合に関する半構造化面接を行い,質的に検討した。帰納的主題分析を行った結果,抗がん治療中の進行がん患者に在宅緩和ケアの併診を導入することの「現状」のテーマに関して,「在宅緩和ケアの導入から死亡までの期間が短い懸念がある」,「抗がん治療中から在宅診療を併診する患者は少ない」,「在宅診療の早期導入により信頼関係を築く期間が担保される」 の三つのサブテーマが抽出された。「抗がん治療中から在宅緩和ケアを併用していくための方略」のテーマに関して,「多職種の意見を集約した上で,本人の意思決定を支えていく仕組みの構築」,「病院の外来治療中の患者を対象とする介入の仕組みの構築」,「外来通院または訪問看護を入り口とし訪問診療を導入」,「緩和ケア外来を介して導入」,「患者向けのわかりやすい資材の活用」,「その他」の六つのサブテーマが抽出された。在宅緩和ケアの早期導入を行った経験は少なく,在宅緩和ケアの導入は遅延していると認識されていた。潜在的な方略として,がん治療病院と在宅緩和ケアサービスのそれぞれにかかわる方略が同定された。がん治療病院と在宅緩和ケアサービスが連携した仕組みを構築することで,在宅緩和ケアサービス導入の遅延は改善する可能性が示唆された。
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薬事
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癌と化学療法 49巻12号, 1349-1353 (2022);
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抗がん薬曝露に起因した労働者の健康被害の発生を予防するために,医療環境中に残留する薬物の回収法を評価した。本研究では,手順書に基づく薬物の回収法(手順書法)およびスマートグラスを用いた遠隔支援に基づく薬物の回収法(遠隔支援法)の2 法によるラクトース水和物(Lac,抗がん薬の代替試料)の回収率を検証した。手順書法の場合,5 名の医療従事者は対面で回収法の詳細な説明を受けた後,手順書に従ってLac を回収した。遠隔支援法の場合,3 名の医療従事者は手順書を確認せず,遠隔地に待機している操作説明者の指示に従ってLac を回収した。本研究の結果,2 法によるLac回収率は80% 以上であることが判明したが,一方で2 法の改善点が明らかになった。今後,明らかになった改善点を解決し,医療関係者,介護サービス関係者,医療関連サービス業者の労働環境の改善に貢献したい。
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癌と化学療法 49巻12号, 1355-1359 (2022);
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ドセタキセル(DTX)は乳がん治療のキードラッグだが,アルコール含有製剤であることが問題となる。当院乳腺科では,2013 年からDTX 先発医薬品(先発品)の添付アルコール溶解液を使用せず調製しており,2015 年よりアルコール非含有の後発医薬品(後発品)に切り替えた。今回,アルコール非含有の条件で,DTX 先発品と後発品の有害事象を比較した。2013 年1 月~2017 年12 月に,周術期にDTX(75 mg/m2)を投与した乳がん患者を対象とし,有害事象発現状況について後方視的に調査した。対象は201 例であった(先発品群75 例/後発品群126 例)。発熱性好中球減少症,過敏反応,皮膚障害の発現率は群間差を認めなかった(p=0.620,0.066,0.205)。浮腫と末梢神経障害の重症度は,後発品群で有意な増悪が認められた(p<0.01,<0.01)。本調査から,DTX 先発品と後発品ではアルコールの有無にかかわらず,浮腫と末梢神経障害の発現状況に差がある可能性が示唆された。
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症例
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癌と化学療法 49巻12号, 1361-1364 (2022);
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症例は72 歳,女性。20XX-4 年3 月に左浸潤性乳管癌に対して,左乳房部分切除術とその後の放射線療法(50 Gy/25 Fr)およびホルモン療法が施行された。20 XX 年7 月,術後フォローアップで施行された胸部CT 検査にて左肺舌区胸膜直下に帯状に分布する腫瘤影,同側肺門・縦隔リンパ節の腫大を指摘され当科紹介となった。左肺舌区胸膜直下の浸潤影に対してCT ガイド下肺生検を施行し,小細胞癌と診断した。全身精査で遠隔転移は認めなかった。乳癌術後の放射線照射野と今回の腫瘍の分布が重なっていることから放射線治療は施行せず,同年8 月にcarboplatin+etoposide+atezolizumab を開始した。放射線治療開始から発癌まで約4 年5 か月と潜伏期間が比較的短いが,病理組織像は異なり,乳癌術後の照射野内に腫瘍が発生していることから放射線誘発癌の可能性が考えられた。
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癌と化学療法 49巻12号, 1365-1367 (2022);
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症例は57 歳,男性。主要脈管浸潤による切除不能局所進行肝細胞癌に対し,レンバチニブを導入した。腫瘍マーカーは低下し,腫瘍と温存脈管との距離が確保できた。門脈塞栓術後に腹腔鏡下拡大肝左葉切除術を施行した。術後の経過は良好で,腫瘍マーカーは基準値内となった。術後3 か月現在,再発所見は認めていない。近年,切除不能肝細胞癌であってもレンバチニブなどの全身化学療法によって,conversion surgery が可能となる症例が散見されている。今回,レンバチニブでconversion surgery が可能となった症例を報告する。
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癌と化学療法 49巻12号, 1369-1371 (2022);
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症例は70 歳,女性。膿瘍形成性虫垂炎に対して保存的加療を施行した。加療後の腹部造影CT 検査で膿瘍は消失していたが,虫垂根部に単房性囊胞性病変を認めた。低異型度虫垂粘液性腫瘍(low-grade appendiceal mucinous neoplasm: LAMN)の診断で腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した。虫垂は腫大し,内腔に粘液貯留を認めた。病理組織検査ではLAMN よりも異型は強いものの腺癌のような浸潤性増殖はみられず,高異型度虫垂粘液性腫瘍(high-grade appendiceal mucinous neoplasm: HAMN)と診断した。HAMN とは2016 年にCarr らが虫垂粘液産生腫瘍の分類に用いた名称で,2019年改訂のWHO 分類第5 版で虫垂上皮性腫瘍のうち粘液性腫瘍の項目内に新たな疾患単位として記載された。本邦の大腸癌取扱い規約ではまだ記載されておらず過去の報告も1 例のみとまれであり,文献的な考察を含めて報告する。
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癌と化学療法 49巻12号, 1373-1375 (2022);
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子宮頸癌ⅢB 期に同時化学放射線療法(CCRT)を実施した。CCRT 終了後17 日目に右側方視時の違和感・右側頭部痛・右顔面知覚鈍麻を自覚した。画像検査,歯科口腔外科,耳鼻科受診では診断に至らず。照射終了後54 日目に症状が増悪し,緊急入院した。頭部造影MRI で右側頭下窩に腫瘤を認め,生検結果から子宮頸癌の転移と診断した。急速な症状進行により右眼失明が危惧されたため,症状緩和目的で強度変調放射線照射(IMRT)を実施した。一時的に症状は改善したものの多発転移を認め全身化学療法を行ったが,側頭下窩転移に付随した症状出現後11 か月で原癌死した。
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癌と化学療法 49巻12号, 1377-1379 (2022);
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症例は83 歳,男性。びまん性大細胞型B 細胞性リンパ腫と診断され今後治療予定であったが,腹痛を主訴に受診した。精査より消化管穿孔の診断となり緊急手術を施行した。手術は小腸に複数の穿孔を認め,小腸部分切除を行った。術後R‒CHOP 療法を導入し腫瘍縮小を得ることができた。小腸悪性リンパ腫は穿孔を来しやすく,穿孔例の予後は不良である。今回,小腸悪性リンパ腫の多発穿孔例に対して最小限の手術と術後早期の化学療法投与にて良好な経過が得られた症例を経験したため報告する。
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癌と化学療法 49巻12号, 1381-1383 (2022);
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症例は33 歳,男性。排便困難,血便を認め,下部消化管内視鏡検査を施行した。直腸に全周性腫瘍を認め精査の結果,直腸癌による腸閉塞,大動脈周囲リンパ節転移,多発骨転移と診断した。経肛門的イレウス管を留置し,減圧後に手術を計画したが前日に下腹部痛が出現し,腸管穿孔の診断で緊急手術となった。イレウス管によるS 状結腸穿孔を認め,人工肛門造設術を施行した。術後に播種性血管内凝固症候群を呈し,抗生剤加療を施行したが感染症軽快後も改善を認めなかった。多発骨転移があり末梢血で幼若細胞も認めたため骨髄癌腫症による病態と判断し,化学療法を行うことで全身状態が改善し転院可能となった。