Volume 49,
Issue 13,
2022
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特集
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【第44回 日本癌局所療法研究会】
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癌と化学療法 49巻13号, 1393-1395 (2022);
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2010 年 1 月~2020 年 12 月までの間に当院で原発巣切除を行った大腸癌手術症例のうち,異時性卵巣転移を来し手術を行った 6 例について検討を行った。原発巣手術から卵巣転移再発までの期間は 2~28 か月であった。5 例に対して両側卵巣もしくは付属器切除,1 例に対して片側卵巣切除を行った。手術を施行した理由は有症状 3 例,病勢進行が 3 例であった。卵巣転移から手術までの期間は 0~6 か月で短期間であった。卵巣転移手術時に他臓器に転移を認めた症例は 5 例で R0 切除し得た症例は 2 例であった。卵巣転移切除に伴った術後合併症は認めなかった。手術日から化学療法再開までに要した期間は中央値で 33 日であり,早期に再開可能であった。卵巣転移手術後の生存期間中央値は約 11 か月であり,腹膜播種や他臓器転移を合併していた影響と考えられる。
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癌と化学療法 49巻13号, 1396-1398 (2022);
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悪性消化管閉塞に対する緩和的ストーマ造設術で生活の質が改善し,化学療法の進歩によりストーマ造設術後の長期生存例もみられる。緩和的ストーマ造設術 24 例の早期・晩期合併症について検討した。結果: 男性 14 例(58%),女性 10 例(42%)で,年齢中央値は 60 歳であった。23 例(96%)で術後に粥食以上の食事摂取が可能となり,The ColoRectal Obstruction Scoring System(CROSS)の中央値は術前 1(0~3)~術後 4(2~4)へ改善した(p<0.001)。術後早期合併症は 10 例(42%)に認め,合併症発症群は合併症非発症群と比べ術後在院日数が長かった(中央値 34 日 vs 17 日,p=0.026)。術後全生存期間中央値 101 日を境に長期生存群と短期生存群に分けると長期生存群でストーマ脱を多く認め(4 例 33% vs 0 例 0%,p=0.028),1 例は修復術を要した。結語: 緩和的ストーマ造設術後の長期生存例はストーマ脱発症のリスクが高くなる。慎重な手術操作,ストーマケアを含めた術後のサポート体制が重要である。
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癌と化学療法 49巻13号, 1399-1401 (2022);
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局所進行直腸癌に対し,術前化学療法後に手術を行った 38 例について検討した。化学療法は mFOLFOX6 15 例,FOLFIRI 3 例,CAPOX 10 例,IRIS 1 例,FOLFOXIRI 9 例で,bevacizumab 31 例,panitumumab を 7 例に併用した。男性 27 例,女性 11 例,年齢中央値 64 歳,占居部位は RS 2 例,Ra 9 例,Rb 21 例,P 6 例であった。13 例が同時性遠隔転移あり。Grade 3 の有害事象を 9 例に認めたが,全例で完遂した。原発巣は CR 3 例,PR 31 例,SD 4 例,奏効率 91.9%,縮小率 43.3(18.8~100)%,遠隔転移は CR 3 例,PR 9 例,SD 1 例であった。CR の 1 例は watch and wait となったが,その他は全例手術を行った。術後合併症は Clavien⊖Dindo 分類 Grade 2 を 14 例,Grade 3 を 4 例に認め,術後在院日数は 17(8~59)日であった。同時性遠隔転移を認めなかった 25 例の 3 年生存率は 79.6%,5 年生存率は 74.9%,同時性遠隔転移を認めた 13 例は各々 61.6%,52.6% であった。術前化学療法の奏効率,術後の短期・長期成績は良好であり,選択肢の一つとなり得る。
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癌と化学療法 49巻13号, 1402-1404 (2022);
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山口県における高齢者乳癌治療の現状を把握するため,乳癌診療に携わる 14 施設の医師 17名を対象にアンケート調査を行った。調査項目は,高齢者機能評価(geriatric assessment: GA)の実施状況,手術および薬物療法(内分泌療法・化学療法・分子標的療法)の適応に関して治療開始時の状態(fit/vulnerable/frail)や年齢による制限設定に関する項目とした。GA 実施に関しては 1 施設(6%)のみ実施であり,使用ツールは G8,Charlson 併存疾患指数であった。手術治療に関しては,大部分の施設で年齢や状態による制限を設けていない状況であった。薬物療法では内分泌療法ならびに分子標的治療薬(抗 HER 薬)の許容は高く,年齢制限を設けていない施設が大部分であった。一方,化学療法に関しては 40% が年齢による制限を設けており,frail 症例に対しては70~75 歳までとする回答が多かった。これらの結果は,手術症例を中心にNCD 登録された高齢者乳癌治療の報告と同様の傾向であった。
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癌と化学療法 49巻13号, 1405-1407 (2022);
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近年,HER2 陽性乳癌の予後は改善してきているが,局所進行乳癌の予後は良好とはいえない。症例は 41 歳,女性。初診時,HER2 陽性タイプの切除不能局所進行乳癌(T4bN3M0,Stage ⅢC)であった。docetaxel(DOC)+trastuzumab(Tmab)+pertuzumab(PER)による一次治療は,軽度縮小したのみで SD であった。副作用のため DOC を中止し Tmab+PER での維持療法を行ったが,すぐに腫瘍は再増大した。trastuzumab emtansine(TDM1)に変更後,腫瘍は徐々に縮小し,12 コース後,切除可能と判断し Bt+Ax を行った。病理検査上,右乳房全体に 3 mm 大までの浸潤巣が散在しているのみで,腋窩リンパ節転移はすべて消失していた。胸壁,鎖骨上リンパ節に対して放射線療法を行い,術後 1 年間,TDM1 を投与した。TDM1 中止後,5 年間無再発経過観察中である。切除不能局所進行乳癌であっても,HER2 陽性乳癌は抗 HER2療法を含めた集学的治療で長期生存可能となる症例もある。
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癌と化学療法 49巻13号, 1408-1410 (2022);
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目的: 播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併した oncologic emergency(OE)である手術症例に対するリコモジュリン(rTM)の有用性について検討した。対象: 当科で施行した OE の手術症例のうち,DIC を合併しその治療に rTM を使用した 13 例を対象とした。手術の要因は癌腫による穿孔性腹膜炎 9 例,イレウス 3 例,出血 1 例であった。白血球数,血小数,CRP,PT,DIC スコアを rTM 投与前後で比較検討した。結果: 術後 30 日以内の死亡は 1 例(7.7%)であった。死亡例を除く 12 例の rTM の平均使用日数は 4.7 日で,12 例中 9 例(75%)は投与終了時の DIC スコアが 3 点以下であった。rTM投与前後で白血球数は低下したが,有意差はなかった。CRP,血小板数,PT,DIC スコアはいずれも有意に改善していたp<0.05)。結語: rTM は OE 手術症例における DIC の治療に有用である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 49巻13号, 1411-1413 (2022);
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脱分化型脂肪肉腫は症状が乏しく,隣接臓器浸潤・多中心性発生により切除困難なことが多い。今回,膵頭十二指腸切除(PD)と化学療法で局所制御し,追加で減量手術を行った巨大脱分化型脂肪肉腫の 1 例を経験した。症例は 50 歳台,女性。検診で腹部腫瘤を指摘され,腹部 CT で膵背側から上腸間膜動静脈(SMA and SMV)を取り巻く 18.5×9 cm の主腫瘤と骨盤部,下大静脈周囲,肝背側,小腸間膜内に複数の 3 cm 大の腫瘤を認め,主腫瘤からの生検で脱分化型脂肪肉腫と診断した。主病変を PD+SMV 合併切除術+結腸右半切除術を施行した。術後 doxorubicin 単剤を 10 コース,eribulin 2 コースを投与し,1 年間残存病変は制御できた。追加で腸間膜内の腫瘍を含め小腸部分切除を施行し,eribulin 3 コースを投与した初回手術から 1 年 10 か月現在,残存病変の増大なく通院中である。脱分化型脂肪肉腫の R2 手術は予後不良因子とされるが,減量手術と化学療法で病勢を制御し得る症例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1414-1416 (2022);
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肝細胞癌術後再発の部位としては肝内がほとんどを占め,遠隔転移部位としては肺,リンパ節,副腎,骨などがあげられる。遠隔転移を有する肝細胞癌の標準治療は薬物療法であり,肝内病変がコントロールされている一部の症例に対して遠隔転移巣の切除を行うことがあるものの,その局所療法の意義については明らかではない。今回,リンパ節転移再発に対して切除を行った 1 例について報告する。症例は 74 歳,女性。非 B 非 C 慢性肝炎を背景肝とした単発肝細胞癌に対して腹腔鏡下肝部分切除術を施行した。病理診断は St⊖A,1.6×1.4 cm,多結節癒合型,pT1N0M0,fStage Ⅰであった。術後 9か月の画像検査で肝門部リンパ節に 2 か所の転移を指摘され,sorafenib 投与を開始したが Grade 3 の手足症候群が出現し,不耐として 2 か月で中止となった。経過観察中に新規病変の出現はなく,原発巣切除から 1 年 4 か月後に肝門部リンパ節切除術を行い,現在術後 4 年 6 か月無再発生存中である。
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癌と化学療法 49巻13号, 1417-1419 (2022);
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症例は 76 歳,女性。腹部超音波検査で胆囊体部に腫瘍を指摘され,精査の胆汁細胞診では Class Ⅳであり,胆囊癌として拡大胆囊摘出術を施行した。病理組織学的検査では小細胞型の neuroendocrine cell carcinoma(NEC)の診断であった。化学療法は希望されず,3 か月後に多発リンパ節転移再発を来し,術後 5 か月で原病死となった。胆囊 NEC は悪性度が高い疾患として知られており,化学療法が第一選択である。術前診断が困難で術後予後不良な転帰をたどった 1 例を経験したため,文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1420-1422 (2022);
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直腸癌術後の局所再発は有効な治療が少なく治療に難渋することが多い。今回,高齢者に発症した Miles’ 手術後の傍ストーマ部腹壁と会陰部再発に対して腹腔鏡手術と放射線治療を行い良好な経過を得た。高齢者や polysurgery 後には低侵襲治療の組み合わせが有効である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 49巻13号, 1423-1425 (2022);
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根治度 A 手術が施行された下部直腸 T2 癌 88 例(T2)の治療成績を T3 または T4a 癌(T3/T4a)340 例,T1 癌(T1)51 例と比較した。T2 の全リンパ節(LN)転移率,腸管傍 LN 転移率,中間および主 LN 転移率,側方 LN 転移率はいずれも T1 と差がなかった。T2 の再発率は 15.9% で,T1 は差がなかった。T2 は T1 に比べて肺再発の頻度が有意に高率であった。T2 再発例の 50% は術後 30 か月以降に認められ,T3/T4a に比して有意に高率で,T1 とは差がなかった。LN 転移陰性T2 における多変量解析で術前血清 CA19-9 高値が再発危険因子であった。T2 の 5 年生存率,再発後 5 年生存率は T3/T4aに比べて有意に高率で,T1 と差がなかった。下部直腸 T2 では T1 と同様な LN 郭清が適当で,術前血清 CA19-9 高値は再発危険因子であり,術後 30 か月以降の肺再発に配慮したフォローアップが必要と考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1426-1428 (2022);
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今回われわれは,早期胃癌に対する腹腔鏡下胃切除術と開腹胃切除術の比較検討を行った。腹腔鏡下手術は開腹手術と比べ手術時間,リンパ節郭清個数において遜色はなく,出血量,術後在院日数は有意に少なく,また術後合併症発生率では低い傾向を示し,E-PASS の結果では手術侵襲が有意に低く,総合リスクスコアも有意に低かった。また,癌特異的生存率で差を認めず,全生存率は laparoscopic distal gastrectomy(LDG)で有意に良好であった。以上より,早期胃癌に対する術式としては腹腔鏡下胃切除術が開腹胃切除術に比べ優れていると考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1429-1430 (2022);
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症例は 63 歳,女性。48 歳時に胃消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor: GIST)に対して切除術を実施した。術後補助化学療法としてイマチニブの内服治療を開始した。以後,10 年間無再発であった。内服治療終了 2 年後に GISTの腹膜局所再発を認め,イマチニブの内服を再開した。奏効していたが,内服治療再開 1 年後に進行を認めたためイマチニブ部分耐性を疑い,再発腫瘍摘出術を実施した。再手術後もイマチニブの内服治療を継続した。再手術2年後に腹腔内に再々発を疑う腫瘍を認めた。腫瘍切除術を実施した。病理組織学的検査では,c‒kit,CD34 陽性であり,GIST 再々発と診断した。GIST 再発症例における治療原則はイマチニブの投与である。また,イマチニブ耐性となった際はスニチニブ投与が検討されるが,病巣の切除が可能であれば外科的治療も考慮される。今回,腹膜播種を伴う GIST の手術後にイマチニブ治療を継続するも 2 回の再発を来し,外科的切除を行うことでイマチニブによる治療継続を行えている症例を経験した。イマチニブ耐性となった再発 GIST 症例に対して,局所再発であれば外科的切除を行うことでイマチニブ治療期間を延長させ,予後を改善する可能性がある。
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癌と化学療法 49巻13号, 1431-1433 (2022);
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症例 1: 患者は 58 歳,女性。左乳癌に対し手術を施行した。術後 7 年目に左内胸リンパ節転移が出現したため,左胸壁と左鎖骨上に放射線照射を行った。治療開始後 6 か月でリンパ節腫脹は消失し,8 年間再発なく経過中である。症例 2: 患者は 65 歳,男性。胃癌からの出血に対し準緊急的に単純胃全摘術を行った。術後 3 年目に膵尾部前面のリンパ節転移が出現,全身状態が良好でないため放射線照射を行った。治療開始 3 か月で腫瘤は消失し,4 年 6 か月再発なく経過中である。症例 3: 患者は 67 歳,男性。胸部中部食道癌に対し術前化学療法後に手術を行った。術後 7 か月で左気管気管支リンパ節転移が出現したため,化学療法を併用し両鎖骨上と縦隔に照射を行った。治療開始後 3 か月でリンパ節は正常化し,6 年 6 か月再発なく経過中である。今回の 3 症例はすべて所属リンパ節の再発であった。郭清範囲外や,郭清が不十分となった所属リンパ節の再発は放射線治療も有力な選択肢になると考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1434-1436 (2022);
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症例は 51 歳,女性。2 か月前より出現した下腿浮腫と労作時呼吸困難を主訴に当院を受診した。造影 CT で肺動脈血栓の所見に加え,胆囊内腫瘍が疑われた。緊急入院の上,抗凝固療法が開始されたが,貧血と黄疸が進行したためendoscopic retrograde cholangiopancreatography(ERCP)を施行したところ,胆囊内腫瘍からの出血が疑われた。準緊急で手術を予定したが,多量の下血と貧血の進行を来したため緊急で胆囊摘出術を施行した。胆摘後の閉腹時より酸素化が不良となり,抜管は行わずに集中治療室へ帰室したがバイタルサインは保持困難となり,新たに肺動脈塞栓を来したものと考えられた。蘇生処置は奏効せず,手術 2 時間後に死亡した。摘出した胆囊は病理組織学的に高度のリンパ管侵襲を伴った胆囊粘液癌と診断された。病理解剖は行わなかったが,臨床経過から腫瘍栓由来の肺動脈塞栓により急変に至ったと考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1437-1439 (2022);
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症例は 40 歳,男性。下部内視鏡検査で,上部直腸に 5 mm 大,7 mm 大の粘膜下腫瘍が 2 か所認められ,当院紹介受診した。内視鏡的粘膜切除術を施行し,病理組織学的診断でいずれも neuroendocrine tumor(NET)で,5 mm 大の病変はG1,脈管侵襲陰性,7 mm 大の病変は G2,静脈侵襲陽性,リンパ管侵襲陰性であった。CT 検査では,リンパ節転移や遠隔転移を疑う所見は認められなかった。外科的追加腸切除に関してインフォームド・コンセントが得られ,腹腔鏡下低位前方切除術を施行した。病理組織学的診断で腸管傍リンパ節に転移が認められ,TNM 分類(Union for International Cancer Control 第 8 版)で T1a,N1,M0,Stage ⅢB であった。術後 3 年間,無再発生存中である。直腸 NET は,腫瘍径が 1 cm未満の病変においても,治療方針の決定は慎重を要すると考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1440-1442 (2022);
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症例は 66 歳,男性。高度の貧血(Hb 6.1 g/dL)を認めたため上部消化管内視鏡検査を施行し,胃体上部後壁の進行胃癌と診断した。造影 CT 検査にて膵尾部に浸潤を疑わせる所見を認め,胃癌[T4b(panc),cN2,cM0,cStage ⅣA]と診断し,術前補助化学療法(NAC)として SOX 療法を 3 コース施行した。NAC 後の検査では原発巣および転移リンパ節は著明に縮小(PR)し,膵浸潤を疑わせる所見も消失した(ycT4a,ycN1,ycM0,ycStage Ⅲ)。初診時より 4 か月後に幽門側胃切除術(D2 郭清)を施行した。術中所見では原発巣は膵前面の後腹膜と強く癒着を認め,同部位の後腹膜は合併切除したものの膵臓との境界は明瞭であり温存可能であった。術後の病理組織学的診断では原発巣は粘膜下層から漿膜面に及ぶ線維化を認めるものの癌の残存はみられず,No. 3,9 リンパ節にも転移が消失した所見を認め,pathological CR と診断された(ypT0,ypN0,ycM0,ycStage 0)。現在,術後 1 年 2 か月(初診時から 1 年 6 か月)無再発生存中である。
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癌と化学療法 49巻13号, 1443-1445 (2022);
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症例は 69 歳,男性。2018 年に貧血の精査で食道浸潤を伴う穹窿部から体下部小弯の 3 型胃癌(低分化型,HER2 陰性)と診断された。CT で胃小弯リンパ節転移と横隔膜浸潤を認め cT4bN(+)M0,Stage ⅣA と診断し,術前化学療法を行った。SP 療法を 3 コース施行し,横隔膜浸潤が否定できず CEA の上昇を認めた。このため nab⊖PTX+RAM 療法に変更し,計 3 コースを行った。CT で PD と判断し,third⊖line で nivolumab を行った。15 コース終了後に PR と診断し,胃全摘術,D2 郭清を行った。病理組織学的検査で腫瘍は固有筋層深層まで浸潤し,リンパ節転移は認めず pT2(MP)N0M0,Stage ⅠB であった。腫瘍は Epstein-Barr virus(EBV)陽性で MSI⊖high であった。間質には CD8 陽性のリンパ球浸潤が豊富であった。術後補助療法は行わず 26 か月無再発生存中である。CD8 陽性リンパ球が浸潤しやすい背景に,nivolumab により T 細胞が活性化できたことが腫瘍を縮小したと考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1446-1448 (2022);
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thymidine phosphorylase(TP)は血管新生や固形癌浸潤において重要な役割を果たす因子と報告されている。今回われわれは免疫組織染色法(IHC)にて TP を測定し,胃癌の予後と TP 発現との関係を解析した。対象: 2005 年 1 月~2006年 12 月までに胃切除術を施行した胃癌患者 111 例の切除標本に対して抗 TP 抗体による IHC を施行。低 TP 群(0/1+)と TP 群(2+/3+)の 2 群に分け,TP 発現と臨床病理学的因子や予後との関連性を解析した。結果: 低 TP 群 78 例(70.3%),高 TP 群は 33 例(29.7%)であった。臨床病理学的因子では,高 TP 群は腫瘍径・深達度・静脈侵襲・リンパ管侵襲・進行度が進展している傾向にあった。また,生存曲線による予後解析では高 TP 群は全生存率(p<0.01)および無増悪生存期間(p<0.01)において有意に予後不良であった。結語: 胃癌における TP 高発現は予後不良因子であることが示唆された。
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癌と化学療法 49巻13号, 1449-1451 (2022);
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腹腔鏡内視鏡合同手術(laparoscopy and endoscopy cooperative surgery: LECS)は,腹腔鏡と内視鏡の併用による低侵襲な局所切除手技である。噴門や幽門輪に近い病変に対しても,LECS による必要最小限の切除と欠損部の手縫い縫合閉鎖の方向の工夫により,噴門・幽門の機能を温存することができる。今回われわれは,幽門輪近傍にできた胃 GIST に対し inverted LECS を行った 1 例を経験したので報告する。症例は 58 歳,男性。検診の胃透視で異常を指摘された。上部消化管内視鏡検査で胃前庭部に粘膜下腫瘍を認め,針生検で GIST と診断された。腫瘍は幽門輪から離れており,inverted LECS を行った。欠損部は幽門輪にかかっておらず,腹腔鏡下の手縫い縫合で閉鎖した。幽門輪近くは短軸方向に,残りは長軸方向に閉鎖し,L 字型に閉鎖した。術後の幽門の通過は良好であった。幽門輪近傍の胃 GIST であっても閉鎖の方向を工夫することで,通過障害やうっ滞症状はなく幽門機能を温存できると考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1452-1454 (2022);
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症例は 70 代,女性。食欲不振,貧血を主訴に精査し,幽門前庭部の腫瘍を指摘され当科紹介となった。PET‒CT にて大動脈周囲リンパ節,肝門部リンパ節,左鎖骨下リンパ節に集積を認め切除不能進行胃癌と診断,HER2 陽性であり trastuzumab と腎機能障害のため paclitaxel での化学療法を施行した。5 か月施行後に再評価を行うと原発巣は縮小傾向,リンパ節腫大は消失し FDG の集積も認めなかった。その後,腫瘍マーカーが上昇,原発巣の再増大を認めたがリンパ節は PET陰性のままであり手術の予定とした。手術 2 週間前に腹痛を訴え胃癌穿孔が疑われ,緊急で幽門側胃切除 Billroth Ⅱ法再建を施行した。術後は trastuzumab 単剤での治療を継続している。化学療法中の胃癌穿孔の頻度は少なく,そのなかでも rastuzumab 投与中の胃癌穿孔はまれであるが化学療法中の穿孔を念頭に置き,術式や郭清について検討しておくことが重要であると思われた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1455-1457 (2022);
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症例は 60 歳台,女性。1 か月前より肛門周囲のびらんを自覚していた。生検で重層扁平上皮内に Paget 細胞が散見され,免疫組織化学検査の結果,CK7 陰性,CK20 陽性であった。また,肛門管内に腺癌(tub1)を認めた。CT 検査で遠隔転移や有意なリンパ節腫大を認めなかった。免疫組織化学検査の結果より,重層扁平上皮内の Paget 細胞は肛門管癌から皮膚へ進展した pagetoid spread(PS)であると診断した。肛門管癌は cT2N0M0,cStage Ⅰ(大腸癌取扱い規約第 9 版)と診断した。会陰部皮膚病変に対し mapping biopsy を行い,病変辺縁から 2 cm の部位で PS 陰性であることを確認した上で,腹腔鏡補助下直腸切断術を施行した。病理組織学的検査では腺癌(tub1,tub2)を認め,皮膚切除断端は陰性であった。術後 24 か月目に右鼠径リンパ節転移を認め,右鼠径リンパ節切除術を施行した。リンパ節切除術後 4 か月無再発生存中である。
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癌と化学療法 49巻13号, 1458-1460 (2022);
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症例は 49 歳,男性。腹痛を主訴に前医を受診し,急性虫垂炎の疑いで紹介受診された。腹部 CT 検査にて虫垂腫大と虫垂背側に 40 mm 大の低吸収腫瘤を認め,虫垂粘液産生腫瘍の診断で腹腔鏡下回盲部切除術を施行した。腫大した虫垂の背側に虫垂から連続する柔らかい腫瘤を認め,腫瘤は周囲に強固に癒着していた。腫瘤を損傷しないよう慎重に剝離を行い,組織を一塊として摘出した。病理検査の結果は低異型度虫垂粘液性腫瘍(low‒grade appendiceal mucinous neoplasm:LAMN)であり,虫垂から連続する腫瘤は上皮が欠損しており壁外性粘液貯留と考えられた。LAMN は境界悪性の腫瘍で外科的切除が治療の原則であるが,腹膜偽粘液腫のリスクがあるため術中穿破に細心の注意を払う必要がある。この点において腹腔鏡手術の拡大視効果が有用であった。リンパ節郭清の要否や切除範囲について明確な指針がないが,腹腔鏡下回盲部切除術は LAMN に対して妥当な術式と考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1461-1463 (2022);
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CREATE-X 試験により,HER2 陰性乳癌,特にトリプルネガティブ乳癌(TNBC)で術前化学療法(NAC)後に病理学的完全奏効が得られなかった non-pCR 例に対する術後カペシタビン療法が有意に無再発生存率を改善することが示された。当院における術後カペシタビン療法の成績について検討した。NAC 後 non-pCR に対する術後カペシタビン療法の転機について後方視的に検討した。対象は 10 例で,平均年齢は 54.2 歳,全例完遂し,有害事象はすべてグレード 2 以下であった。平均観察期間 40 .9 か月で 5 年無病生存率は 70.0% であった。再発は 3 例で術後 2 年以内の早期再発であり,全例脳転移を認めた。CREATE-X における TNBC の対象群の 5 年無病生存率は 56.1%,カペシタビン群では 69.8% であり,一定の効果は得られた。再発例は脳転移が多く,術後早期の造影頭部 MRI の実施は脳転移の早期発見につながる可能性がある。
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癌と化学療法 49巻13号, 1464-1466 (2022);
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症例は 81 歳,男性。褐色尿,食思不振で当院を受診し,閉塞性黄疸の診断で緊急入院となった。腹部 CT にて三管合流部より遠位の胆管に造影効果を伴う壁肥厚を認めた。また,ERCP でも遠位胆管に閉塞を認め胆管癌と診断した。遠隔転移など非切除因子は認められず減黄後,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。術後軽度の胃内容排泄遅延を認めたが,明らかな膵液瘻,胆汁瘻なく軽快退院となった。切除した手術標本の病理結果は,びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫(diffuse large B cell lymphoma: DLBCL)であった。悪性リンパ腫は,その経過中に胆管周囲にリンパ節腫大や隣接臓器の節外性悪性リンパ腫の浸潤によって閉塞性黄疸を来すことがある。今回われわれは,肝外胆管原発と考えられた DLBCL の 1 例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1467-1469 (2022);
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症例は 57 歳,男性。腹部 CT にて左右肝管分岐部付近を中心に左右の胆管拡張を伴う 24 mm 大の腫瘤および固有肝動脈と広く接する肝門部リンパ節腫大を複数認めた。切除不能中枢型肝内胆管癌と診断し,GCS 療法を 7 コース施行後,リンパ節腫大の若干の縮小を認め,手術の方針とした。手術は肝左葉尾状葉切除,中肝静脈合併切除,胆囊胆管切除,胆道再建を施行した。固有肝動脈から遺残なく転移リンパ節は剝離でき,根治切除が可能であった。転移リンパ節周囲局所の進展度と切除限界については一定の基準がなく,治療方針や手術適応は慎重に決定する必要があるが,術前化学療法が奏効した症例で安全に切除可能となった貴重な症例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1470-1472 (2022);
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症例は 79 歳,男性。主訴は排便障害と便秘。CT で直腸下部に径 7.5 cm の腫瘤を認め,生検で直腸 GIST と診断された。MRI では前立腺浸潤が疑われ,イマチニブ内服を開始した。6 か月後に腫瘍は径 4.5 cm に縮小したが,本人が手術を拒否したため,そのままイマチニブ内服を継続した。腫瘍は徐々に縮小し,7 年後の現在,径 2 cm となり内部はほぼ石灰化に置き換わっている。
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癌と化学療法 49巻13号, 1473-1475 (2022);
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単形性上皮向性腸管 T 細胞性リンパ腫(MEITL)は従来,腸管型 T 細胞性リンパ腫(EATL)の type Ⅱとされていた疾患で,頻度は低くまれな疾患である。今回われわれは,化学療法中に小腸穿孔を来した MEITL の 1 例を経験したので報告する。症例は 55 歳,女性。心窩部痛を主訴に前医を受診し,小腸内視鏡検査で空腸に地図状潰瘍を認め,同部の組織より T 細胞性リンパ腫と診断された。その後,化学療法目的に当院転院となった。化学療法開始後 7 日目に施行した腹部computed tomography(CT)検査で free air を認め消化管穿孔の診断となり,緊急手術を行った。手術所見としては,トライツ靱帯より 95 cm の位置に穿孔を認めた。また,トライツ靱帯より 80 cm の位置より 115 cm の位置まで潰瘍と思われる変性を来した病変を認めた。他,回腸末端より 150 cm の位置と 90 cm の位置にも全層性に壊死を来した腸管を認め,すべて切除吻合した。術後は,化学療法による汎血球減少症により敗血症を併発したが回復し,24 病日に退院した。その後,施行した PET-CT では腫瘍腸管の残存と腹膜播種を認め化学療法を施行したが奏効せず,6.5 か月後に死亡した。MEITL の根治的な治療は確立されておらず,今後の症例蓄積により予後の改善が望まれる。
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癌と化学療法 49巻13号, 1476-1478 (2022);
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症例は 26 歳,男性。左鼠径部痛と頻尿を主訴に,腹部超音波検査で腹腔内に囊胞性病変の指摘あり。腹部 CT・MRI検査にて腸間膜由来の血管・脂肪織につながる 20 cm 大の巨大囊胞性病変を認めた。有症状の腸間膜リンパ管腫の診断にて切除の方針となった。腫瘍が巨大であり開腹手術を選択,先に腫瘍内容液を吸引し腫瘍を縮小させることで,術野の確保と腫瘍の取り回しが容易になり安全に切除を遂行可能であった。病理組織学的に腸間膜リンパ管腫の診断で,術後 1 年再発なく経過観察中である。リンパ管腫は小児の頸部や腋窩に認めることが多く,成人でかつ腸間膜に認めることはまれである。また,20 cm を超える腸間膜リンパ管腫の報告は少なく,自験例を含め文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1479-1481 (2022);
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大腸癌が腸間膜静脈に進展し腫瘍栓を形成することはまれであり,切除例の報告は少ない。われわれは,上腸間膜静脈(SMV)腫瘍栓を伴った上行結腸癌の 1 切除例を経験したので報告する。症例は 44 歳,女性。右下腹部痛を主訴に受診した。CT では結腸肝弯曲部に径 10 cm 大の腫瘤を認め,SMV 腫瘍栓も指摘された。生検結果から,SMV 腫瘍栓を伴う上行結腸癌の診断で拡大結腸右半切除術+D3 郭清を施行した。SMV 腫瘍栓は胃結腸静脈幹~右胃大網静脈および前上膵十二指腸静脈に進展していた。SMV を楔状に切除し腫瘍栓を摘出,切除部は連続縫合閉鎖した。組織学的には中分化管状腺癌で,領域外リンパ節転移(6 番)および膵内静脈浸潤を認め,pT4b,pN0,pM1a,pStage Ⅳa(規約第 9 版)と診断した。術後経過は良好で術後 13 日目に退院した。mFOLFOX6+bevacizumab を術後 14 コース施行した。術後 15 か月の現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 49巻13号, 1482-1484 (2022);
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症例は 36 歳,女性。下腹部痛と嘔気にて前医を受診した。前医の上部消化管内視鏡および単純 CT 検査にて胃体下部から前庭部にかけて壁肥厚を認め,スキルス胃癌疑いにて紹介となった。当院の造影 CT にても同様の所見であった。数日後に施行した内視鏡所見では,噴門部に発赤肥厚した粘膜を認めたが壁肥厚や巨大雛壁は認めず,スキルス胃癌を疑わせる所見はなかった。生検結果にて異型細胞は認めず,噴門部病変の粘膜間質に多数の好酸球が出現していた。採血にて好酸球の増多,アニサキス IgE 抗体陽性となり,胃アニサキス症と診断した。腹痛前日に焼きアジを食べていた。また,同時期に右膝周囲の搔痒,浮腫も出現し皮膚科にてアニサキス関連の好酸球性浮腫と診断された。1 か月後の CT,内視鏡ではほぼ正常となっていた。スキルス胃癌疑いにて紹介となった若年女性が,胃アニサキス症と診断されたまれな症例を経験した。
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癌と化学療法 49巻13号, 1485-1487 (2022);
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BRAF 遺伝子変異陽性再発大腸癌の 2 例を報告する。症例 1 は 75 歳,男性。治癒切除後 5 か月で多発肝転移を来し,急速な進行から薬物療法導入に至らず再発 37 日後に原病死した。症例 2 は 67 歳,男性。治癒切除後 8 か月で腹膜播種を来しエンコラフェニブ+セツキシマブ療法を導入し効果的であったが,ビニメチニブ追加後に高度の皮膚障害が出現したため治療中断を要し,再発 123 日後に原病死した。治癒切除後 BRAF 変異症例は,補助化学療法施行の有無にかかわらず密な経過観察を行い,再発の早期発見に努める必要がある。また,再発後の全身薬物療法については速やかな治療導入と効果判定を心掛け,エンコラフェニブ+セツキシマブ療法またはビニメチニブを加えた 3 剤併用療法については,それぞれの療法における有効性と有害事象の特徴を把握した治療の実施が肝要と考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1488-1490 (2022);
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大腸ステントは,主に大腸閉塞時の緩和的治療または術前の閉塞解除目的で使用される。一方,食道癌の腫瘍出血や食道静脈瘤出血に対するカバードステントの止血効果が報告されている。今回われわれは,閉塞は軽度だが出血性ショックと重度貧血を来した直腸癌噴出性出血に対し,カバー付きステント留置で止血が得られ化学放射線療法(CRT)後に根治手術を施行できた直腸癌の 1 例を経験した。症例は 67 歳,男性。近医より Hb 4.6 g/dL と貧血を認め紹介された。その後,大量下血,意識消失,後頭部打撲裂傷で緊急入院となった。下血と血圧低下が続き緊急大腸内視鏡検査(CF)を施行した。Ra 直腸癌噴出性出血に対してカバードステントを止血と拡張,bridge to surgery(BTS)目的に留置した。止血が得られCRT 後に腹腔鏡下直腸低位前方切除術,D3 郭清を施行した。根治手術が得られ,術後 6 か月間 S-1 を内服した。2 年経過した現在,転移再発を認めず経過観察中である。
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癌と化学療法 49巻13号, 1491-1493 (2022);
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症例は 62 歳,女性。2001 年に左乳癌にて BP+AX(T2N0M0,Stage ⅡA,IDC)を施行した。2018 年 2 月に右股関節痛と右臀部痛があり,前医にて転移性骨転移と診断され,同年 3 月当院に入院した。精査にて右骨盤骨,右大腿骨などの多発骨転移と 17 cm 大の左乳房腫瘤を認めた。肋骨転移巣の針生検にて乳癌骨転移(ER+)と診断し,エキセメスタンとデノスマブ投与を開始した。右骨盤骨,右大腿骨などに放射線治療を施行した。同年 4 月左乳房切除術を行い,乳癌術後再発の所見(invasive ductal carcinoma: IDC)であった。同年 5 月骨転移の増大を認めレトロゾール+パルボシクリブ療法に変更するも,好中球減少 Grade 4 のため中止しアロマターゼ阻害剤(AI 剤)単独療法とした。腫瘍マーカー高値のため,2019 年 2 月よりレトロゾール+アベマシクリブ療法に変更した。2020 年 3 月には腫瘍マーカーの正常化と骨転移の縮小を認めた。アベマシクリブは副作用のため減量しながら継続し,骨転移は PR を維持している。
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癌と化学療法 49巻13号, 1494-1496 (2022);
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症例は 80 歳台,女性。14 年前に近医で胃 GIST に対して局所切除を施行した。今回,上腹部膨満の訴えを契機に肝左葉に 18 cm 大の囊胞性病変を認めた。囊胞内に造影効果を伴う結節を認めたことから肝囊胞腺癌などの悪性疾患を否定できず,外科的切除を行ったところ病理検査にて胃 GIST の転移と診断された。本邦で原発巣切除後 10 年以上経過して肝転移を認めた症例は自験例も含め 14 例とまれであり,またこのような症例の多くは充実性腫瘤であった。その上,本症例は囊胞性病変であるため針生検による組織診断が得られず術前診断は困難であった。
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癌と化学療法 49巻13号, 1497-1499 (2022);
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症例は 70 代,男性。便潜血検査陽性にて大腸内視鏡検査を施行,直腸癌の診断にて当院紹介となった。精査にて肝S4 から S1 にかけて 60 mm 大の単発肝転移を認め,全身化学療法を先行する方針とした。FOLFOXIRI を 5 コース行い,PRの診断にて切除可能と判断,拡大左葉切除術+尾状葉切除術を施行した。合併症なく退院され,その 4 か月後に腹腔鏡下低位前方切除術,回腸一時ストーマ造設術を施行した。ypT2N0 で,組織学的治療効果判定は Grade 1a であった。ストーマを閉鎖し,初回治療から 1 年 6 か月経過しているが,現在無再発生存中である。全身化学療法後,liver‒first approach(LFA)により根治切除が可能であった直腸癌同時性肝転移症例を経験した。LFA は切除率の向上に寄与し,さらなる予後向上を期待できる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 49巻13号, 1500-1502 (2022);
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症例は 47 歳,男性。閉塞性黄疸で発症した膵頭部癌に対して,亜全胃温存膵頭十二指切除術を施行した。病理組織学的診断はリンパ節転移を伴う膵頭部癌で,癌組織のほぼ全体が invasive micropapillary carcinoma(IMPC)であった。術後は S‒1 内服による術後補助化学療法を 4 年間継続した。術後 4 年目に多発リンパ節転移が出現し,gemcitabine+S‒1 療法を行った。化学療法開始後リンパ節転移は縮小し,約 1 年 6 か月 PR を維持したが,その後リンパ節転移の再増大および多発肺転移を認め,原発巣切除後約 7 年 2 か月で原病死した。膵 IMPC は予後不良であるが,原発巣切除に術後補助化学療法,再発に対する化学療法を加えることで長期生存が得られる可能性がある。
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癌と化学療法 49巻13号, 1503-1505 (2022);
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症例は 60 歳台,男性。上行結腸癌に対して腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行され,術後 2 年目のフォローアップ目的で施行した造影 CT でダグラス窩右側に精囊と接する 12 mm 大の結節を認めた。18F-fluorodeoxyglucose(FDG)⊖positron emission tomography(PET)で同病変のみに異常集積を認めたため切除可能腹膜播種再発と判断し,腹腔鏡下低位前方切除・右精囊合併切除術を施行した。病理診断は大腸癌播種再発で,断端は陰性であった。術後一時的な排尿障害を認めたが,術後 17 日目に退院し,術後 1 年目時点で無再発生存中である。切除可能なダグラス窩腹膜播種再発において,腹腔鏡下低位前方切除・精囊合併切除術は治療選択肢となり得ると考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1506-1508 (2022);
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はじめに: 腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術(LPD)は,2020 年にリンパ節・神経叢郭清などを伴う腫瘍切除術にも適応が拡大され,内視鏡手術用支援機器の算定も保険収載された。当施設でのロボット支援下膵頭十二指腸切除術(RPD)の手術手技と導入の工夫を報告する。対象と方法: 2020 年 7 月~2022 年 6 月までに RPD 45 例を施行した。第一段階は腹腔鏡下に切除を施行しロボット支援下に再建した(hybrid‒RPD)。第二段階は十二指腸授動と空腸切離を腹腔鏡下に施行し,以降の切除と再建をロボット支援下に施行した(modified‒RPD)。第三段階は切除と再建をロボット支援下に施行した(pure‒RPD)。RPD 45例,LPD 62例,開腹膵頭十二指腸切除術(OPD)121例を比較検討した。結果: hybrid‒RPD 20例,modified‒RPD 9 例,Pure‒RPD 16 例は各々,年齢が 73.6,68.7,70.6 歳,性別は男性/女性が 15/5,6/3,8/8 で背景因子に差を認めなかった。手術時間は 667,770,746 分(p=0.0623)と pure‒RPD で長い傾向にあり,切除時間は 286,399,380 分(p=0.0065)と pure‒RPD で長かった。再建時間は 388,371,367 分,出血量は 261,199,293 mL(p=0.8747)とほほ同一で,膵液漏はすべて Grade B 以下であった。RPD 45 例,LPD 62 例,OPD 121 例の比較では,年齢が 71.5,66.7,71.9歳,性別は男性/女性が 29/16,37/25,73/48 で背景因子に差を認めなかった。疾患は浸潤性膵管癌以外/浸潤性膵管癌が40/5,54/8,72/49(p=0.0003)と OPD で浸潤性膵管癌が多かった。手術時間は 716,602,499 分(p<0.0001)と RPD,LPD で OPD より長く,出血量は 260,121,647 mL(p<0.0001)と RPD,LPD で OPD より少なく,術後在院日数は 26.5,24.1,37.4 日(p=0.0962)と RPD,LPD で OPD より短い傾向にあった。結語: RPD は learning curve を経て定型化され,短期成績は良好であった。
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癌と化学療法 49巻13号, 1509-1511 (2022);
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2012~2018 年までに当科で行った直腸癌手術 430 例のうち,局所再発を来した 28 例を対象とした。局所再発に対して手術を施行した群 12 例(Op 群)と手術を施行しなかった群 16 例(N‒Op 群)に分けて,治療成績および疼痛に対する放射線照射の効果を検討した。Op 群のうち R0 切除は 8 例で,そのうち術後の無再発は 2 例であった。N‒Op 群の治療内訳は,化学療法 6 例,化学療法かつ緩和照射 6 例,best supportive care(BSC)が 4 例であった。N‒Op 群のなかで疼痛に対して放射線照射を受けたのは 8 例で,鎮痛効果は 7 例に得られた。照射による有害事象は皮膚炎のみであった。当科における直腸癌術後局所再発に対する手術成績では再々発が多く認められ,術前治療や確実に再発巣を切除できる術式の検討が必要と思われた。また,放射線照射は疼痛緩和に有用であったが,有害事象の発生には注意が必要と思われた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1512-1514 (2022);
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腹膜転移を伴う進行胃癌に対する治療法の一つとして,腹腔内アクセスポート(IP ポート)を留置し,腹腔内に直接抗癌剤を投与する腹腔内化学療法がある。今回われわれは,IP ポート留置後短期間でカテーテル全体が組織反応により鞘状閉塞を来した症例を経験したので報告する。症例は 35 歳,女性。腹膜播種を伴う高度進行 4 型胃癌に対して IP ポート留置後,S-1+パクリタキセル(PTX)の経静脈+腹腔内投与を開始したが,2 コース目途中でカテーテル全体が線維性被膜に覆われ鞘状に閉塞を来したため,IP ポートを抜去および新たな IP ポートを再留置した。IP ポートトラブルの一つに閉塞があるが,このように短期間かつ特殊な形で閉塞することはまれであり,原因としてカテーテルの異物反応が考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1515-1517 (2022);
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症例は 74 歳,男性。左鎖骨上窩の腫瘤を主訴に当院を受診した。精査で領域リンパ節転移,肝転移,左鎖骨上窩リンパ節転移,傍大動脈リンパ節転移を伴う切除不能進行胃癌,cT3N2M1(LYM,HEP),cStage Ⅳと診断した。一次化学療法として S‒1+cisplatin 療法を計 3 コース施行後,食欲不振,腎機能障害,血小板減少の有害事象を認め,経過中に HER2陽性と判明したため,二次化学療法として capecitabine+cisplatin+trastuzumab に変更して計 25 コース施行した。原発巣の著明な縮小を認め,遠隔転移巣に対して complete response(CR)が得られ,初回化学療法開始から 3 年 2 か月後に幽門側胃切除,D2 郭清,Billroth Ⅰ法再建術を施行し,R0 切除を達成し得た。術後経過は良好であり,第 14 病日に退院した。病理組織診断結果は ypT1aN0M0,ypStage ⅠA であった。術後補助化学療法として S‒1 単剤療法を 1 年間施行し,術後 5年 5 か月現在,無再発生存中である。HER2 陽性 Stage Ⅳ胃癌に対する trastuzumab 併用化学療法は,病勢コントロールし得て根治切除が可能となれば長期予後が得られる可能性がある。
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癌と化学療法 49巻13号, 1518-1520 (2022);
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症例は 72 歳,男性。62 歳時に右胃大網動脈(right gastroepiploic artery: RGEA)を用いた冠動脈バイパス術(coronary artery bypass graft:CABG)の既往あり。貧血精査の上部消化管内視鏡検査にて胃角後壁に胃癌を指摘され,術前診断は cStage Ⅰ(T2N0M0)であった。冠動脈 CT 検査で RGEA グラフトは完全閉塞しており,切離可能と判断した。また,心臓血管造影検査で右冠動脈に有意狭窄を認めず,術前術中の血行再建は不要と判断した。手術は腹腔鏡下幽門側胃切除D2郭清を行い,RGEA グラフトは 20 分間のクランプにて心電図異常がないことを確認後に切離した。RGEA を用いた CABG後の胃癌では,綿密な術前検査により RGEA 切離の可否や右冠動脈血行再建の必要性を十分に検討することが重要である。
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癌と化学療法 49巻13号, 1521-1523 (2022);
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背景と目的: 膵・十二指腸周囲を走行する右結腸動脈(RCA),胃静脈幹(GCT)は走行や分枝に多様性があり,右側結腸癌手術の難易度に影響する。腹腔鏡下右側結腸癌手術における膵・十二指腸 3DCT 画像(pancreas/duodenum CT:PDCT)の有用性を検討した。対象と方法: 症例は 80 歳台,女性。2 か所の上行結腸癌。(1)A-C,cT4b(後腹膜)N2aM0,Stage Ⅲc,(2)A,cT3N1bM0,Stage Ⅲb。根治手術の方針となった。方法は術前に造影 CT colonography(CTC)を施行し,Workstation は Ziostation 2®(Ziosoft)を用いて,CTC・動静脈 3DCT・PDCT の三つの 3DCT 画像を作成した。これらの 3DCT 画像を合成し,術前 simulation や術中 navigation として使用した。結果: CTC と動脈 3DCT の合成画像にて,支配動脈は回結腸動脈(ICA)と RCA であることを同定した。さらに静脈 3DCT を合成した画像にて,ICV と RCV の分枝・走行を確認した。PDCT と動静脈 3DCT の合成画像にて,RCA は十二指腸水平脚レベルで上腸間膜動脈より分枝して膵頭部腹側を走行すること,RCV は膵頭部前面で GCT から右胃大網静脈(RGEV)とともに分岐していることを確認できた。手術は後腹膜合併切除と,ICA/V,RCA/V を根部処理した D3 リンパ節郭清を行う腹腔鏡下回盲部切除術を計画した。実際の手術は手術 simulation どおりの ICA/V,RCA/V を比較的容易に同定でき,予定どおりの手術を施行できた。手術時間 310 分,出血量は 90 mL であった。病理組織学所見は,(1)pT3(SS)N1bM0,Stage Ⅲb,(2)pT3(SS)N1aM0,Stage Ⅲb であった。術後特に合併症を認めず,第 10 病日に退院となった。現在,術後約 1 年が経過し明らかな再発を認めない。結語: PDCT は,RCA・GCT と膵・十二指腸との位置関係を明確化し,腹腔鏡下右側結腸癌手術に有用であると思われた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1524-1527 (2022);
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サルコペニアは,骨格筋量の減少と筋力および身体機能の低下した状態とされ,大腸癌において治療に関連した予後因子として多くの報告がある。本研究では,当院で初回手術治療が行われた大腸癌 86 例について骨格筋量,筋力,身体機能を個別に測定し,周術期に各因子の変化を検討した。また,手術時の年齢,術式により症例群を分類し,各症例群の術後サルコペニア化の潜在リスクを検討した。全症例の傾向では,下肢の骨格筋量と身体機能の低下傾向を認めた。また,75 歳以上の高齢者と開腹手術の症例群には,下肢の筋肉量や身体機能の低下を有意に認めた。高齢者や開腹手術の症例には,手術後にサルコペニア化を来す潜在リスクがあると思われた。サルコペニアの潜在リスクを適切に評価するためには骨格筋量,筋力,身体機能を正確に測定する必要性が示唆された。また,高齢者や開腹手術の症例には下肢の筋肉量と身体機能維持のための個別のリハビリテーションの導入が重要と思われた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1528-1530 (2022);
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自壊した進行乳癌は滲出液や出血,悪臭のために局所制御が困難なことが多い。今回,潰瘍形成を伴った巨大な乳癌に対し,Mohs ペーストでの局所制御と薬物療法による病勢制御が可能となった 1 例を経験した。症例は 61 歳,女性。右乳房腫瘤は巨大で潰瘍を形成し,滲出液と出血,悪臭を伴った。生検でホルモン感受性を有する粘液癌の診断で,画像検査では腋窩リンパ節転移と両側多発肺転移を認めた。局所に対しては Mohs ペーストを使用し,1 か月後には局所制御が得られた。全身薬物療法開始 1.5 年後には乳房腫瘤は消失し,肺転移やリンパ節転移もほぼ消失した。3 年 5 か月経過の現在,CRを維持している。露出した非切除癌の滲出液や出血に対する局所制御に対して Mohs ペーストは非常に有用であった。終末期のみならず,薬物療法などの全身療法に伴う局所治療の一環として優れた治療法であると考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1531-1533 (2022);
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症例は 66 歳,男性。人間ドッグの上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部に隆起性病変[生検結果は十二指腸腺腫(low grade)]を指摘され,当院消化器内科へ紹介となった。腫瘍の増大傾向を認めたため,十二指腸腺腫に対し endoscopic mucosal resection(EMR)が施行された。切除標本の病理結果は tubular adenoma であった。以後外来で経過観察されていたが,EMR から 2 か月後の上部消化管内視鏡検査で遺残腫瘍を疑う腫瘤性病変が指摘され,さらに遺残腫瘍の増大傾向を認めた。生検では十二指腸腺腫の再発が疑われた。EMR 後十二指腸腺腫再発に対し腹腔鏡下幽門側胃切除術,#3,#4sb,#5,#6 郭清,Billroth Ⅱ+Braun 吻合再建を施行した。病理結果は tubular adenocarcinoma in adenoma,tub1 であり,深達度 M で,リンパ節転移は認めなかった。非乳頭部十二指腸癌はまれな疾患であり,根治手術術式,リンパ節郭清範囲について確立された治療方針は現段階では示されていない。進行例では膵頭十二指腸切除術が施行されることが多いが,患者への負担,合併症を考慮すると適切な患者では縮小的な手術も選択肢の一つとなり得ることが考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1534-1537 (2022);
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精神遅滞を有する口腔がん患者の多くは,口腔内の異常への意識が低いために早期発見が困難とされる。また,検査や治療においては説明による知的な理解に制限があり,不安が言葉でうまく表現されず身体症状を呈することがある。今回,精神遅滞を有する患者の上顎歯肉癌に対し外科的治療を行い,良好な経過が得られたので報告する。症例は 61 歳,男性。右側上顎臼歯部の疼痛を主訴に来院した。生検にて,高分化型扁平上皮癌の診断を得た。上顎歯肉扁平上皮癌(cT4aN0M0,Stage ⅣA)の診断の下,上顎半側切除術を施行した。現在,術後約 5 年が経過するが再発や転移を認めず,顎義歯の使用により経過良好である。精神遅滞患者の包括的な管理において,口腔外科医のみならず関連する診療科やスタッフとの連携が重要であることを再認識させられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1538-1540 (2022);
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今回,左側上顎歯肉扁平上皮癌術後の海綿静脈洞転移の 1 例を報告する。症例は 83 歳,男性。左側上顎歯肉の腫瘍性病変に対する精査加療依頼にて当科を紹介受診した。造影 CT では左側上顎臼歯部歯肉から上顎洞底および翼状突起部に骨破壊像を伴う腫瘍性病変あり,左上内深頸リンパ節に腫大を触知した。生検の結果,左側上顎歯肉扁平上皮癌(T4bN1M0,Stage ⅣB)の診断で,腫瘍根治手術,術後放射線治療終了後,約 4 か月後に頭痛と左眼窩痛,左眼の視力低下,眼球運動障害が出現し,頭部 MRI で左側海綿静脈洞および眼窩視神経に腫瘍を認めた。左側上顎歯肉癌術後,海綿静脈洞転移と診断し,化学療法を開始するも全身状態が悪化し,術後 5 か月目に死亡した。
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癌と化学療法 49巻13号, 1541-1543 (2022);
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症例は 82 歳,男性。黄疸の精査目的で近医より紹介受診となった。造影 CT 検査にて遠位胆管に造影効果を伴う腫瘤と胆管拡張を認めた。胆汁細胞診は class Ⅳ,胆管生検は挫滅を伴うが腺癌が強く疑われた。遠位胆管癌と診断し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。切除標本の遠位胆管に乳頭状増殖を示す腫瘤を認めた。病理所見にて腺癌と大細胞型神経内分泌癌(large cell neuroendocrine carcinoma: LCNEC)との混合性神経内分泌非神経内分泌腫瘍(mixed neuroendocrine-non-neuroendocrine neoplasm: MiNEN)と診断した。リンパ節転移は認めなかった。術後 6 か月で肝転移再発を来し,S-1+gemcitabine を継続している。膵・消化管 NEC は予後不良であり,集学的治療の適応とされる。今回,まれな胆管 MiNEN の 1 切除例を経験した。適切な治療法開発のために,今後のさらなる症例集積が望まれる。
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癌と化学療法 49巻13号, 1544-1546 (2022);
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症例は 78 歳,男性。胃穹窿部後壁の表在陥凹型中分化型管状腺癌に対して,腹腔鏡下胃全摘術,D1+,Roux-en-Y再建を施行し,U,Gre,Type 0-Ⅱa+Ⅱc,22×10 mm,T1b,N0,M0,P0,H0,CY0,tub2,ly0,v0,Stage ⅠA,R0の診断であった。術後 28 か月に孤立性脾転移の診断で脾摘出術を施行した。術後 S-1+oxaliplatin による化学療法を施行したが,脾摘出後 4 か月に多発肝転移を来し ramucirumab+paclitaxel で治療を行い 4 コース後,肝転移増大のため nivolumab治療を開始した。12 コース後には CT 検査で肝転移巣が消失し,49 コース施行後 nivolumab 治療を中止した。33 か月完全奏効を維持できていたが,構音障害があり CT および MRI 検査で脳転移を認めた。開頭腫瘍摘出術を施行したが,再発後48 か月,脳転移 3 か月後に死亡した。胃癌の脳転移はまれであるが,今後症例の集積によりリスク因子の同定,新たな治療開発が望まれる。
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癌と化学療法 49巻13号, 1547-1549 (2022);
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症例は 60 歳,女性。主訴は血便で,既往歴に子宮体癌の手術歴がある。第一,二度近親者に 3 名の大腸癌を認めた。精査で下行結腸癌,左腎盂癌と診断した。根治切除可能と判断し,下行結腸・横行結腸部分切除,D3 リンパ節郭清,左腎・尿管全摘出術を施行した。術後病理診断では,下行結腸癌(pT4bN0M1c,pStage Ⅳc),左腎盂癌(T1N0M0,Stage Ⅰ)の診断となった。本症例では,家族歴や既往歴より Lynch 症候群が疑われた。臨床所見はアムステルダム基準Ⅱを満たし,MSI 検査は MSI-H,BRAF 遺伝子は野生型であった。下行結腸癌の免疫組織化学的染色で MSH2,MSH6 蛋白の発現が消失していた。Lynch 症候群が強く疑われ,遺伝カウンセリングを行った。下行結腸癌に対して capecitabine+oxaliplatin 療法を 6 か月間施行した。術後 9 か月で再発を認めていない。下行結腸癌,腎盂癌の重複癌を契機に Lynch 症候群が疑われた1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1550-1552 (2022);
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はじめに: S 状結腸癌に対する腹腔鏡手術の際に,同時に行った胆囊摘出術において開腹移行したところ腹膜播種の見逃しを回避し得た症例を経験したので報告する。症例: 患者は 64 歳,女性。血便精査目的に下部消化管内視鏡検査を施行し,S 状結腸に全周性 2 型病変を認めた。術前 cT4aN0M0,cStage Ⅱb と診断した。また,胆囊内 12 mm 大の広基性隆起を認め,同時切除する方針とした。腹腔鏡下 S 状結腸切除術(D3 郭清)を先行し,手術開始時および終了時に腹腔内を観察したが播種結節は認めなかった。次に腹腔鏡下胆囊摘出術に移行したが,胆囊周囲の癒着が強く穿孔リスクが高いことから開腹手術へ移行した。その際,大網を触診したところ播種を疑う結節を 3 個認め,切除とした。その後胆囊摘出術を実施し手術終了とした。術後の病理組織学的検査では pT4aN1b(2/23)M1c1(P2),pStage Ⅳc,胆囊には異型成分なく,胆囊ポリープの診断であった。術後補助化学療法として CAPOX 8 コースを実施し,現在のところ術後 1 年 8 か月無再発で経過している。結語: 開腹移行にて腹膜播種の見逃しを回避し得た S 状結腸癌の 1 例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1553-1555 (2022);
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当院で進行胃癌に対して手術を行ったサルコペニア患者の短期・長期成績に関する検討を行った。2017 年 1 月~2021年 6 月の期間に胃切除を行った胃癌患者 76 例を対象とした。Asian Working Group for Sarcopenia(AWGS)2019 の基準を用いてサルコペニア群(S 群)と非サルコペニア群(NS 群)に分けて両群の手術成績と術後補助化学療法への影響,予後を比較検討した。手術時間,出血量,術後在院日数,Clavien-Dindo Grade Ⅱ以上の合併症発生率に有意差はなかった。術後補助化学療法を導入した患者は S 群 5 例(26.3%),NS 群 38 例(66.7%)と S 群で有意に少なかった(p=0.003)。3 年全生存率は S 群 45.7%,NS 群 71.0% と有意差はなかったが S 群で不良であった。サルコペニアを有する進行胃癌患者は術後補助化学療法が導入できず,予後の悪化へ影響している可能性が示唆された。
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癌と化学療法 49巻13号, 1556-1558 (2022);
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症例は 69 歳,男性。高脂血症にて加療の X 年 12 月 X-12 日に嘔吐・腹痛を主訴に当院を受診した。受診時の腹部単純 CT で下部小腸の拡張および回盲部付近の小腸に closed loop,さらに少量の腹水の貯留を認めた。イレウス管造影でイレウス管先進部から肛門側約 2 cm とその部位より約 15 cm 肛門側に不完全閉塞部位を認めた。審査腹腔鏡では虫垂先端が回盲部より 80 cm 口側の小腸間膜に癒着し,それとは別に大網が右骨盤底に索状に癒着しており,小腸がその間に陥入していた。索状物切離および虫垂切除術を施行し終了した。本例は開腹歴のない小腸閉塞であり,保存的治療で腸閉塞症状は改善していたが,明らかな狭窄を認めるため腹腔鏡を用いた診断が治療方針決定に有用であった。
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癌と化学療法 49巻13号, 1559-1561 (2022);
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症例 1 は 86 歳,男性。肝 S7/8 の径約 11 cm 大の肝内胆管癌(ICC)に対し,経皮的ラジオ波焼灼療法(PRFA)を4 回および動注ポートを留置して 5-FU による肝動注療法を 3 回行った。初回治療から 25 か月後に肺転移を来し,27 か月後に死亡した。症例 2 は 85 歳,女性。肝後区域の径約 8 cm 大の ICC に対し,5-FU による肝動注療法を行った。S-1 およびgemcitabine による化学療法を導入したが,治療開始から 10 か月後に腫瘍の進展を認め,その後主病変に対して PRFA を計2 回施行した。腫瘍マーカーは減少傾向となったが,治療開始から 29 か月後に黄疸を来し,33 か月後に死亡した。高齢発症巨大 ICC に対する治療として,ablation 治療は PS を損なわず,化学療法を中心とする集学的治療の一環として延命に寄与する可能性がある。
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癌と化学療法 49巻13号, 1562-1564 (2022);
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十二指腸を原発巣とする癌はまれである。2003 年 6 月~2022 年 2 月までに当院で経験した十二指腸癌の 8 例を対象に検討した。平均年齢は 69.3(45~84)歳,男女比は 3:5,腺癌 6 例(球部 2 例,下行脚 4 例),神経内分泌細胞癌が 2 例(球部 1 例,下行脚~水平脚 1 例)であった。腺癌例の 6 例中 3 例が Stage Ⅰで,Stage ⅡA,ⅢA,ⅢB が各 1 例であった(UICC 第 8 版)。5 例に膵頭十二指腸切除術(PD)が,1 例に十二指腸部分切除術が行われた。Stage ⅢB の 1 例(1 年で再発死亡)を除き,5 例が無再発生存中である(生存期間: >1 か月~>97 か月)。神経内分泌細胞癌の 2 例は pT3pN1M0,Stage Ⅲと pT4pN0M0,Stage Ⅲ,前者は心・腎機能不良なため十二指腸部分切除術が行われ,後者は PD が施行された。生存期間は前者が 123 か月(他病死,無再発),後者は 7 か月(再発死亡)であった。
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癌と化学療法 49巻13号, 1565-1567 (2022);
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症例は 72 歳,男性。直腸癌膀胱/前立腺浸潤症例に対して術前化学放射線療法を行い,腫瘍の著明な縮小が得られた。泌尿器科と合同で,da Vinci Xi システムを用いたロボット支援下超低位前方切除・膀胱/前立腺合併切除を施行した。手術の局面に応じて大腸外科医師と泌尿器科医師がコンソール操作を適宜入れ替わり,迅速に術者を交替することができた。当院初のロボット手術での多臓器切除であったが,術中トラブルなく安全に手術を遂行し,術後も尿路感染症があったものの軽快し,術後 23 日目に退院した。骨盤内臓器を扱う大腸外科・泌尿器科・婦人科など複数科がかかわる手術において,ロボット支援下手術は非常に有用であると考えた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1568-1569 (2022);
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浸潤性膵管癌(PC)の術後再発例が長期に生存することは難しい。膵頭十二指腸切除術(PD)後 17 か月で再発したPC に対し,集学的治療により術後 10 年以上生存した症例を経験した。症例は 51 歳,男性。2011 年 12 月 PD を施行された(pT3pN1bM0,pStage Ⅱb)。術後補助化学療法(gemcitabine,17 か月間),単発肝転移に対する肝切除(PD 術後 18 か月),術後補助化学療法(S-1 投与,肝切除後 1 年間),腹部リンパ節再発に対する放射線照射(39.6 Gy),次いで 5-FU/l-LV+L-OHP(or CPT-11)の併用療法(PD 術後 33 か月に開始)を行った。現在までに合計 131 サイクルの化学療法を施行した。膵頭十二指腸切除術後から 10 年 5 か月,肝切除後 9 年経過し,上腸間膜動脈神経叢周囲の再発が認められたものの外来通院を継続している。
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癌と化学療法 49巻13号, 1570-1572 (2022);
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症例は 79 歳,男性。2006 年に食道癌に対して根治術を施行された。術後補助化学療法は施行せず経過観察としていたが,2021 年に右頸部腫脹を主訴に受診し,精査を行ったところ食道癌術後右頸部リンパ節再発と診断された。今回われわれは,術後 15 年の長期間経過後に転移再発を認めた食道癌超晩期再発症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1573-1575 (2022);
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症例は 62 歳,女性。十二指腸乳頭部癌(T3bN0M0,Stage Ⅱb)に対して亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。免疫組織学的検討では tubular adenocarcinoma with mixed features,predominantly intestinal type と診断された。術後補助化学療法は行わず経過観察していたところ,術後 2 年 8 か月の胸部 CT にて右肺尖部に 6.7 mm の結節影を認めた。結節影は緩徐に増大し,術後 3 年 11 か月には 10 mm に増大し,その他に新規病変は指摘されなかったため,術後 4 年に胸腔鏡下に肺部分切除術を施行した。切除標本の術中迅速病理組織検査で転移性腺癌と診断され,永久標本にて確診された。肺門リンパ節に転移は認められなかった。術後補助化学療法を施行することなく経過観察し,肺切除術後 4 年 5 か月の現在,再発兆候なく健存中である。十二指腸乳頭部癌の孤立性肺転移は,これまで自験例を含めて 7 例の切除報告例があり,5 例が intestinal type で,7 例とも術後無再発生存中で,oligometastatic disease に該当すると考えられる。
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癌と化学療法 49巻13号, 1576-1578 (2022);
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背景: 難治性腹水に対する腹腔静脈シャントは臨床的に有用との報告もあるが,重篤な合併症や肝不全の進行で在院死に至る症例も存在する。対象・方法: 肝細胞癌合併例を含む難治性腹水に対し腹腔静脈シャントを施行した 54 例を対象に臨床的効果,合併症および転帰について検討した。また,対象を在院死群と退院群に大別し,背景因子を比較検討した。結果: 全 54 例中 39 例で術後に体重減少を認め,eGFR は 34 例で改善した。在院死は 17 例(31.5%)で,有門脈腫瘍栓,Child Pugh 分類 C,ALBI score -1.12 以上,総ビリルビン値 1.7 mg/dL 以上の症例は在院死群で有意に高率であった。結語: 難治性腹水に対する腹腔静脈シャントは術後の腎機能や症状の改善に有用である一方,それの恩恵を享受し難い症例が存在するため適応を慎重に判断すべきである。
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癌と化学療法 49巻13号, 1579-1581 (2022);
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Pull through 法を用いて一時的人工肛門造設を回避し得た下部直腸癌の 2 例を経験した。症例 1 は 59 歳,男性。BMI 29.67。便潜血陽性の精査にて下部直腸癌を指摘された。人工肛門に対する強い拒否感や肥満もあり,Pull through 法を用いた腹腔鏡下括約筋間直腸切除術を施行した。術後 7 日目に再建術を施行した。経過良好で,初回術後 14 日目に退院した。症例 2 は 65 歳,女性。BMI 27.65。下血を契機に下部直腸に病変を指摘され,ESD を施行後,追加切除目的に当科紹介となった。前例同様,人工肛門への拒否感と肥満のため,Pull through 法を用いた腹腔鏡下括約筋間直腸切除術を選択した。術後7 日目に再建術を施行し,経過良好で初回術後 25 日目に退院した。患者満足度も高く,Pull through 法は一時的人工肛門造設が困難な下部直腸癌症例に対して一つの選択肢になり得ると考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1582-1584 (2022);
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blind loop syndrome(BLS)は,腸管吻合後の合併症の一つであり,吻合形態により生じた盲端が原因で吸収障害をはじめ多彩な臨床像を呈する。一方,blind pouch syndrome(BPS)は BLS の一亜型で,類似した機序ではあるものの,吸収障害を伴わず局所症状を主症状とするなど臨床像が大きく異なり,BLS とは区別した疾患概念として扱う報告を散見する。BPS は保存的治療に根治的効果は期待できないため,手術加療となることがほとんどで,その術式として症状の原因となる盲端・盲管を切除する必要があるとされる。また,腸管吻合時に盲端・盲管を作ると本症を発症することを考慮し,不必要な盲端作製は避け,盲端とせざるを得ない術式では吻合時に注意が必要である。
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癌と化学療法 49巻13号, 1585-1587 (2022);
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患者は 79 歳,男性。上行結腸癌の診断の下,腹腔鏡下右半結腸切除術を施行した(Stage Ⅱ)。術後 5 日目に縫合不全を発症し保存的療法にて軽快したが,術後 23 日目に再び 39℃台の熱発を認め MRSA 敗血症と診断した。バンコマイシン投与にて全身状態は安定したが,微熱の断続と CRP 高値が続いた。感染源の同定に難渋したが,術後 43 日目の腰椎 MRI 検査の結果,化膿性脊椎炎と診断された。抗生剤の長期投与にて CRP 値は正常化し,リハビリにより症状もしだいに改善,術後約 4 か月で退院,術後 8 か月で介助なしで歩行可能となった。自験例は上行結腸癌術後,縫合不全を契機に血液を介して化膿性脊椎炎を発症したものと考えられた。化膿性脊椎炎は比較的まれな疾患であるが,長期加療と重篤な後遺症を残す可能性があるため,術後の不明熱や増悪する腰痛を認めた場合,この疾患を念頭に置いて診療に当たることが重要であると考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1588-1590 (2022);
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肝膿瘍を契機に発見され直腸切除後二度の肺転移切除を行い,その後無再発生存中である症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。症例は 67 歳,女性。2018 年 1 月に 2 週間程度続く発熱を主訴に当院を受診した。CT で多発肝膿瘍と肺炎を認め入院となった。経皮経肝膿瘍ドレナージを行い,肝膿瘍は軽快した。下部消化管内視鏡にて直腸 2 型腫瘍を認め,また腫瘍出血も認めたため,2018 年 2 月に人工肛門造設術,CV ポートを挿入した。mFOLFOX+BEV を 14コース施行し,2019 年 7 月に低位前方切除を施行した。2019 年 9 月に左下葉肺転移部分切除,2020 年 9 月に左上葉肺転移部分切除を行い,術後 1 年 9 か月無再発生存中である。今回は直腸癌からの経門脈感染による肝膿瘍と考えられ,抗菌薬により軽快後,人工肛門造設術,化学療法を先行した。原発巣切除後肺転移切除を 2 回行い,現在は無治療で外来経過観察している。切除可能であれば,積極的な集学的治療にて予後が改善する可能性が示唆された。
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癌と化学療法 49巻13号, 1591-1593 (2022);
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症例は 65 歳,女性。10 日前より左季肋部痛,腫瘤の急速増大を主訴に救急外来を受診した。腹部造影 CT 検査で横行結腸腫瘍と広範な腹壁膿瘍を認めた。膿瘍腔は皮下,筋間に波及しており,15 cm 以上に広がっていた。膿瘍ドレナージを行いドレナージチューブからの造影検査で結腸との連続性を認め,大腸内視鏡検査でも横行結腸腫瘍を認めたため,横行結腸癌・腹壁浸潤,腹壁膿瘍と診断した。ドレナージにより膿瘍腔は縮小し感染制御も良好であった。横行結腸切除と腹壁浸潤部の腹壁を一部切除するのみとした。術後より化学療法を行い慎重に経過観察とした。術後 12 か月,腫瘍マーカーの上昇,腹部 CT で腹壁に 20 mm の腫瘍を認めたことから局所再発と診断し,筋皮弁を用いることなく腹壁腫瘍切除を行った。術後より腫瘍マーカーは正常化し化学療法も終了しているが,腹壁切除後 30 か月,無再発生存中である。
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癌と化学療法 49巻13号, 1594-1596 (2022);
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症例は 62 歳,女性。左乳房腫瘤を自覚・触知し,当科外来を受診した。左乳房 DC 領域に 26×24 mm の腫瘤を触知し,精査にて左乳癌(cT1,cN2,M0,Stage ⅢA,ER 陽性/HER2 陽性)と診断した。術前化学療法として,triweekly トラスツズマブ療法 4 サイクル+weekly パクリタキセル療法 12 週後,EC 療法 4 サイクルを施行した。CT による効果判定では原発巣は確認できず腋窩リンパ節は縮小し PR と判定したが,手術の同意が得られず triweekly トラスツズマブ療法を再開するも,計 9 サイクルの後,本人の希望にて治療中断となった。治療中断から 2 年 8 か月後に左乳房硬結を自覚し受診した。左乳房 CD 領域に 38×37 mm の硬結を触知し,精査にて術前化学療法後の再燃と診断,本人の同意の上,手術[乳房全切除術+腋窩郭清(レベルⅡまで)]を施行した。術後の病理組織診断では,浸潤性乳管癌(硬性型),NG3,HGⅢ,ER 0%,PgR 0%,HER2(3+),Ki-67 50% であり,治療前所見からは ER が陰転化したが,腋窩リンパ節転移巣は消失していた。現時点では術前化学療法後の手術省略を可能とするエビデンスは確立されておらず,今後,手術省略のエビデンス構築が待たれる。
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癌と化学療法 49巻13号, 1597-1599 (2022);
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肝細胞癌(HCC)の肺転移に対して肝動脈化学塞栓術(TACE)と経皮的ラジオ波焼灼術(RFA)が奏効した 1 例を報告する。症例は 60 歳台,男性。HCC 破裂に対する緊急 TACE の後に肝右葉切除術を施行され,術後左肺 S1+2 および S6の 2 か所に肺転移が出現した。標準治療としての分子標的治療は有害事象により中断となった。肝外転移は長期にわたり肺病変 2 か所のみであり,肺病変に対して TACE を施行した。いずれの病変も肋間動脈から栄養を受けており,左肺 S6 病変については脊髄枝への薬剤流入を防ぐことを優先した。TACE 後の評価で,左肺 S6 腫瘍に viable lesion が残存したため,RFA を両病変に追加した。RFA 以後,腫瘍壊死効果 100% を得ている。
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癌と化学療法 49巻13号, 1600-1602 (2022);
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患者は 84 歳,男性。血液検査で貧血進行,腫瘍マーカー上昇を認め,精査目的に当院を受診した。下部消化管内視鏡検査で上行結腸に全周性の巨大な 3 型病変を認めた。また,Alb 1.1 g/dL と著明な低アルブミン血症を認め,遷延する低アルブミン血症が,巨大腫瘍による蛋白漏出性胃腸症に起因すると考えられた。本症例に対して開腹結腸右半切除術を施行し,一期的に吻合再建を施行した。切除標本では,上行結腸に径 140×120 mm の巨大 3 型病変を認め,盲腸や回腸にも浸潤を認めた。術後は特に合併症はなく経過し,アルブミン値も徐々に改善を認めた。低アルブミン血症は縫合不全のリスクの一つであるが,自験例を含め一期的吻合を行って良好な経過をたどった報告も多く,術式に関しては症例ごとの検討が必要と考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1603-1605 (2022);
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背景: 抗血栓薬を内服している大腸癌患者において,確立された抗血栓薬の周術期管理ガイドラインは存在しない。今回,大腸癌患者におけるヘパリン置換を用いた周術期管理の治療成績を明らかにすることを目的とした。対象と方法: 2015年 1 月~2017 年 12 月の間に,当施設で腹腔鏡下大腸癌手術を施行した抗血栓薬の内服患者を対象とした。なお,ヘパリン置換の必要性は対象疾患に応じて,各診療科の判断の上で実施している。ヘパリン置換の有無で 2 群化し,治療成績を後方視的に解析した。結果: 背景因子では,ASA-PS Ⅲ以上の患者がヘパリン置換群で有意に多く(p 値 0.004),全入院期間はヘパリン置換群で 21 日と非ヘパリン置換群の 13 日と比較し有意に長かった(p 値 0.0067)。一方,手術時間,術中出血量,Clavien-Dindo 分類 Grade Ⅱ以上の術後合併症の頻度は,両群間で有意差を認めなかった。結語: 腹腔鏡下大腸癌手術において,抗血栓薬の休薬およびヘパリン置換は安全に実施できる可能性が示唆された。
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癌と化学療法 49巻13号, 1606-1608 (2022);
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下部直腸癌の低位前方切除術(low anterior resection: LAR)症例の fecal incontinence(FI)防止に対する,恥骨直腸筋(puborectalis muscle: PM)の役割を明らかにするため本研究を行った。LAR 術後 3 年目の 29 例(40~79 歳,平均63.9 歳,男性 19 例,女性 10 例)を対象とした。FI の有無から 2 群[A 群,FI 陽性(n=13),男性 11 例,女性 2 例,43~75 歳,平均 64.8 歳; B 群,FI 陰性(n=16),男性 8 例,女性 8 例,41~79 歳,平均 62.9 歳]に分け,対照 38 例(C 群,男性 28 例,女性 10 例,42~76 歳,平均 64.5 歳)と比較検討した。方法は,仙骨部磁気刺激(sacral magnetic stimulation:SMS)法による PM が収縮反応を示すまでの sacral motor nerve latency(SMNL)値[肛門管上部の PM の右側(9 時),左側(15 時),後側(18 時)]を用いた。全例が Stage Ⅰ(19 例: T1,N0,M0,10 例: T2,N0,M0)症例であった。吻合部位は肛門縁から 2~7 cm である。なお,Wexner score(WS)を用い 8 以上を FI とした。FI score(WS): A 群で 8~10(平均: 9.0)点 23.1%,11~15(平均 13.4)点 53.8%,16~20(平均 17.0)点 30.7% で,B と C 群は 0 点であった。術前も全例 0 点であった。臨床的特徴; 性別では,A 群は B 群より男性が女性より多かった(p<0.1)。肛門縁からの吻合部位では,A 群(2.2±1.2 cm)は B 群(4.6±1.3 cm)より有意に短かった(p<0.001)。SMNL 値; 右,左,後側の各部位で,A 群(8.4±0.6,8.2±1.9,8.3±0.9 ms)は B 群(4.4±0.5,4.3±0.7,4.4±0.9 ms),C 群(4.1±0.5 ms,4.0±0.5,4.2±0.7 ms)より有意に延長していた(それぞれ p<0.001)。なお,B,C 群の間にはいずれの部位でも有意差はなかった。LAR 後 FI 症例は男性に多く,吻合部位は肛門縁に近く,SMN 損傷による PM 機能低下を認めた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1609-1612 (2022);
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症例は 65 歳,女性。便秘・下腹部痛の精査で施行した下部消化管内視鏡検査で,直腸 Ra に全周性の 3 型病変を認めた。CT 検査で壁外浸潤を伴う原発巣と傍腸管リンパ節転移を認め,遠隔転移はなかった。審査腹腔鏡を施行すると原発巣周囲の直腸間膜は背側に強固に癒着しており,病理学的外科的剝離断端(circumferential resection margin: CRM)確保困難と判断し,人工肛門造設術のみで終了した。術前化学療法として FOLFOXIRI+bevacizumab 療法を 4 コース施行した。治療後の CT 検査で原発巣の周囲浸潤は消失,リンパ節腫大は縮小していた。十分な CRM 確保が可能と診断し,腹腔鏡補助下低位前方切除術を施行した。病理学的に CRM は確保できており,化学療法の治療効果判定は Grade 2 であった。FOLFOXIRI 療法は良好な early tumor shrinkage・depth of response が示されており,本症例のような CRM 確保が困難な局所進行直腸癌に対し有用と考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1613-1615 (2022);
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症例は 50 歳台,男性。血便,血尿を主訴に近医を受診した。下部消化管内視鏡検査を施行され S 状結腸に全周性の病変を認めたため,精査加療目的で当科紹介受診となった。来院時の尿検査で白血球(3+),細菌(2+)で S 状結腸がんの膀胱との交通が疑われた。泌尿器科で膀胱鏡を施行したところ,明らかな膀胱内部への浸潤を認め,この時点では CT 所見も含め膀胱合併切除が必要との判断であった。膀胱温存の可能性を期待し術前化学療法(NAC)を行う方針とした。レジメンは FOLFOXIRI+bevacizumab を選択し,合計 6 コース施行した。NAC 終了後は PR の判定であった。手術は腹腔鏡補助下 S 状結腸切除+膀胱壁部分切除を施行した。病理診断は ypStage Ⅱc であった。術後は補助化学療法として FOLFOXを 6 コース行った。現在,術後約 8 か月で再発は認めていない。
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癌と化学療法 49巻13号, 1616-1618 (2022);
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山口県のがん診療連携拠点病院 5 か所を含む 7 施設を対象に腹膜播種陽性胃癌の治療戦略についてアンケート調査を行った。7 施設中 6 施設で審査腹腔鏡を施行していた。P0CY1 症例の治療方針は「手術先行で術後化学療法を行う」施設が7 施設中 6 施設であり,そのレジメンは S-1 にプラチナ製剤もしくはタキサン製剤を加えたものであった。P1 症例の外科治療は化学療法後に R0 切除が可能と判断した場合に,全施設で胃切除術を考慮していた。また,その化学療法は全施設でガイドラインに沿った治療が行われており,腹膜播種の有無でレジメン変更はされていなかった。
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癌と化学療法 49巻13号, 1619-1621 (2022);
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症例は 52 歳,男性。胃体部癌に対して胃全摘術を施行し最終診断は pT4aN2M0,Stage ⅢB であった。術後 2 年 3 か月後に胸部大動脈周囲リンパ節転移を来し,放射線照射(50 Gy)および化学療法を開始した。翌年には食道狭窄を来したため食道ステントを留置した。3 か月後に発熱と呼吸苦を主訴に受診,感染性心外膜炎と診断し抗生剤投与を開始した。翌朝,血圧低下と酸素化不良を来した。心エコーでは心囊液の増加と左室圧排を認め心タンポナーデと診断し,心囊ドレナージを行った。心囊液からは Enterobacter aerogenes を検出し,食道心囊瘻による感染性心外膜炎と診断した。縦隔への放射線照射後や食道ステント留置後に感染兆候を認めた際には心外膜炎の可能性を考慮し,心囊ドレナージなど早急な対応を要することがあると考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1622-1624 (2022);
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症例は 73 歳,男性。20XX 年,胃体下部小弯の Type 3 進行癌に対して幽門側胃切除術,D2 郭清術,Billroth Ⅰ再建術を行った。術後補助化学療法後,左乳房腫瘤を自己発見し乳癌と診断した。胃癌術後 1 年 4 か月目に乳房切除術,腋窩リンパ節郭清術を施行した。術後補助化学療法後胃癌・乳癌いずれも無再発で経過していたが,胃癌術後 6 年 8 か月目に定期的に行っていた上部消化管内視鏡検査にて残胃体中部前壁に径 8 mm,0-Ⅱa 病変を認め(Group 5),内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)を行い根治切除であった。その後も定期的に上部消化管内視鏡検査を行っていたところ,ESD 後 1 年 9 か月(胃癌術後 8 年 6 か月)目に前回とは異なる異時性の残胃体中部大弯に 0-Ⅱa 病変が認められた(Group 5)。SM massive 以深と考えられたため,残胃全摘術,Roux-en-Y 再建術を施行した。術後経過は良好で,術後 6 か月無再発生存中である。腸液逆流による慢性炎症性胃粘膜病変から残胃癌が生じるには長期間を要し得るため,長期の内視鏡フォローアップが必要な可能性がある。
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癌と化学療法 49巻13号, 1625-1627 (2022);
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症例は 82 歳,男性。既往に糖尿病,心筋梗塞などあり,抗血小板薬を内服していた。4 型進行胃癌による幽門狭窄症のため手術の方針とした。術前の冠動脈造影で三枝の高度狭窄病変を認め,大動脈内バルーンパンピング(IABP)管理下で胃切除を行った。周術期に心血管系トラブルはなかったが,術後に嚥下機能障害となり,誤嚥性肺炎により術後 40 日目に死亡した。IABP は心疾患合併例の手術の循環動態の維持を目的に使用されることがある。本邦の IABP 下の消化器悪性腫瘍切除 21 例では周術期は安定も,早期死亡例もあった。特に高齢者で使用する際には ADL の評価など,より慎重な対応が求められる。
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癌と化学療法 49巻13号, 1628-1630 (2022);
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症例 1 は 56 歳,男性。膵体部癌術後補助化学療法中に右上下肢の脱力感が出現した。頭部 CT 検査では異常所見は指摘されなかったが,頭部 MRI 検査の拡散強調画像で多発脳梗塞を認め,Trousseau 症候群と診断した。症例 2 は 86 歳,男性。遠位胆管癌術後再発に対する化学療法施行中に右上下肢の脱力感が出現し,頭部 MRI 検査を施行した。拡散強調画像で高信号域の散在を認め,Trousseau 症候群と診断した。Trousseau 症候群は悪性腫瘍に伴う血液凝固亢進により脳卒中を生じた病態とされる。担癌患者における脳梗塞初期症状は,化学療法による有害事象や脳転移による症状などと類似するため鑑別を要し,頭部 CT 検査では明らかな異常はなくても頭部 MRI 検査を行うことが望ましいと考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1631-1633 (2022);
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症例は 35 歳,女性。閉塞性 S 状結腸癌に対してステント留置を行った後,腹腔鏡下高位前方切除術を施行した。病理診断は tub2,pT4aN1aM0,pStage Ⅲb であり,CapeOX の術後補助化学療法を 6 か月間施行した。術後 1 年のフォローアップ CT 検査で吻合部右側と左下腹部に結節影を認め,局所・腹膜再発と診断された。イリノテカン+S‒1(IRIS)+ベバシズマブ(BEV)療法を開始したところ,3 コース施行後の CT 検査ではいずれの結節影も縮小を認め,さらに 7 コース施行後の CT 検査においても縮小を維持していたため,外科的切除の方針とした。腹腔鏡下に大網内の腹膜播種結節を切除した後,da Vinci Xi をロールインし,直腸低位前方切除術を施行した。術後合併症はなく,経過良好にて術後 8 日目に退院となった。術後は IRIS+BEV 療法を継続しており,術後 6 か月間無再発で経過している。
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癌と化学療法 49巻13号, 1634-1636 (2022);
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症例は 72 歳,男性。便柱狭小化に対して下部消化管内視鏡を施行された。歯状線にかかる部位に 1 型腫瘍を認め,病理組織学検査で低分化腺癌と診断された。精査の結果,完全内臓逆位を合併した肛門管癌(cT1bN0M0,cStage Ⅰ)と診断され,経会陰アプローチ併用腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術(Tp-APR)を施行した。ポートは当院で行っている通常の肛門管癌とほぼ同様の位置に留置した。直腸の授動までは通常とは逆の術者,スコピストは患者左側,第一助手が患者右側に立ち手術を行った。直腸の授動からは通常の手術と同様の立ち位置で手術を行い,経会陰アプローチを併用して腹会陰式直腸切断術を完遂した。完全内臓逆位を合併した肛門管癌に対する Tp-APR は,直腸より口側の腸管の授動では解剖学的異常に応じた工夫が求められたが,直腸周囲の解剖に異常はなく安全に施行可能であった。
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癌と化学療法 49巻13号, 1637-1639 (2022);
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症例は 70 歳台,男性。2 年前に腹部大動脈瘤に対し,ステントグラフト内挿術(EVAR)を施行した。近医での血液検査で貧血と腫瘍マーカーの上昇を認めた。腹部造影 CT 検査にて S 状結腸に壁肥厚および EVAR 術後の Type Ⅱエンドリークを認めた。下部消化管内視鏡検査にてS状結腸に2型腫瘍を認め,生検にてGroup 5,tub1で,S状結腸癌,cT3N0M0,cStage Ⅱa と術前診断された。S 状結腸切除術および双孔式回腸人工肛門造設術を施行した。術中に IMA 切離前と腸管吻合前に indocyanine green(ICG)蛍光法にて腸管血流を評価し,血流が良好であることを確認し,腸管吻合を行った。術後 14日に退院し,術後 5 か月後に人工肛門閉鎖術を施行した。ICG 蛍光法を行うことで,安全な腸管吻合が行えた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1640-1641 (2022);
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局所進行直腸癌の治療においては局所コントロールが重要であり,欧米では術前化学放射線療法(CRT)と直腸間膜全切除が標準治療となっている。さらに CRT の前後に化学療法を組み合わせた total neoadjuvant therapy(TNT)も施行する施設が増加している。今回われわれは,69 歳,女性の局所進行直腸癌(cT3N3M0,cStage Ⅲc)に対して TNT を施行し,clinical complete response(cCR)が得られた症例を経験した。患者の希望で watch and wait の方針としているが,1年 4 か月経過した現在も再発なく経過している。
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癌と化学療法 49巻13号, 1642-1644 (2022);
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症例は 67 歳,女性。左乳癌,cT2N1M0,Stage ⅡB,Luminal B⊖like と診断し,術前化学療法として dose-dense AC療法(ddAC)+dose-dense paclitaxel 療法(ddPTX)を行う方針とした。ddAC を 4 コース完遂し,ddPTX 1 コース目開始のため受診した際,劵怠感と労作時息切れの症状を認めた。胸部 X 線では異常を認めず,心エコーにて左室壁運動低下を認め,ドキソルビシンによる心機能障害と診断した。術前化学療法は中止し,手術の方針とし,2 週後に術前評価のため CT撮影をしたところ,両側肺野にびまん性の淡いすりガラス陰影の出現を認め,薬剤性間質性肺炎と診断した。3 週間のステロイド加療にて症状は改善し,CT でもすりガラス陰影は消失した。間質性肺炎は,CT 撮影でなければ診断困難な淡いすりガラス陰影で発症することもあり,常に CT の必要性を考慮する必要があると痛感した。
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癌と化学療法 49巻13号, 1645-1647 (2022);
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症例は 69 歳,女性。約 1 年前より右乳房腫瘤を自覚するも放置していた。2021 年 3 月,当院を受診した。右乳房を占拠する 11 cm の腫瘤と皮膚浸潤による自壊を認めた。浸潤性乳管癌(ER 陽性,PgR 陽性,HER2 陰性),cT4bN1M0,Stage ⅢB と診断し,術前化学療法の方針とした。化学療法が奏効しなければ,外科切除の際に皮膚欠損が大きくなると予想されたため,bevacizumab(Bv)の高い奏効率に期待し,2021 年 4 月,paclitaxel(PTX)+Bv 療法を開始した。4 コース施行後,腫瘤は 5 cm に縮小し著明な奏効を得ていたが,末梢神経障害により治療継続が困難であった。よって,Bv による創傷治癒遅延の期間も考慮し,AC 療法後に手術の方針とした。2021 年 12 月,Bt+Ax を施行し,皮膚移植の併用なく閉創可能であった。PTX+Bv 療法は高い奏効率が期待でき,局所進行乳癌に対する有効な治療選択肢の一つと考えた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1648-1650 (2022);
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症例は 71 歳,男性。腹痛,体重減少を主訴に原発性十二指腸癌と診断され,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術が施行された。術後 15 か月後の CT で左鎖骨上リンパ節再発を認めた。カペシタビン+オキサリプラチン(CAPOX)療法を行い,転移巣は縮小した。他部位に病変を認めず,再発から 5 か月後に左頸部リンパ節郭清術を施行し,S‒1 による術後補助化学療法を 6 か月間施行した。しかし初回再発から 2 年 10 か月後の CT で左鎖骨上リンパ節の再々発を認めた。CAPOX 療法を再開したが薬剤アレルギーを認め,カペシタビン単独療法を行い,その後は FOLFIRI 療法とした。再々発から 1 年 5 か月後の PET‒CT では病変は限局しており,左頸部に 60 Gy の体外照射を行った。10 か月程度は病状が安定し化学療法を休薬できたが,徐々に病変が増大し術後 7 年で原病死した。
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癌と化学療法 49巻13号, 1651-1654 (2022);
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肺性肥大性骨関節症(HPO)は,ばち状指,長管骨の骨膜新生,関節炎を三徴とする腫瘍随伴症候群の一つであり,腺癌や扁平上皮癌に合併することが多い。今回,肺多形癌に合併し治療により軽快した本疾患例を経験した。症例は 47 歳,女性。全身の関節痛を主訴に受診した。身体診察上,全身の関節の腫脹とばち状指を認めた。胸部 CT で左上葉に腫瘤影を認め,超音波ガイド下生検で非小細胞肺癌と診断された。骨シンチグラフィでは全身の骨や関節に左右対称性の集積を認めた。HPO を合併した右上葉肺癌の診断で,開胸下に胸壁合併切除を伴う右上葉切除術+縦隔リンパ節郭清を施行した。病理検査では多形癌(pT4N0M0,Stage ⅢA)と診断された。全身の関節痛は術後 1 日目に消失した。術後 1 年目に孤立性脳転移が出現したが摘出し,その後再発なく経過している。現在,肺切除後 4 年経過するが HPO の症状は完全に消失している。HPO の関節症状は肺病変の治療により改善することが期待できるため,積極的な診断と治療が望ましい。
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癌と化学療法 49巻13号, 1655-1658 (2022);
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今回,進行下顎歯肉扁平上皮癌に対して,コンピュータアシスト下による患者カスタムメイド型カッティングガイドと再建用プレート(TruMatch®,以下,本システム)と大胸筋皮弁を用いて再建を行った進行下顎歯肉癌の 1 例を経験したので報告する。患者は 74 歳,男性。左側下顎智歯抜歯窩周囲に 30×30 mm 大の硬結を伴う腫瘍性病変を認めた。精査により下顎歯肉扁平上皮癌,cT4aN2bM0,Stage ⅣA と診断した。既往に脊椎損傷があり,遊離骨皮弁による硬性再建は適応がなく低侵襲な手術が必要であった。そこで本システムを応用した手術を計画した。全身麻酔下に気管切開術,左全頸部郭清術変法,本システムを用いて精密・低侵襲な下顎区域切除と大胸筋皮弁による顎口腔の再建を行った。術後の機能障害は最小限であった。現在,術後 18 か月を経過し再発や転移は認めていない。本システムは進行下顎歯肉癌に対する下顎区域切除術において,正確かつ低侵襲な手術に有用なシステムと考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1659-1661 (2022);
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膵癌術後多発肺転移に対して化学療法を継続し,再発後 48 か月にわたり良好な performance status(PS)を保ったが,化学療法休薬に伴い病状が急激に進行し短期間で死亡に至った 1 例を経験したので報告する。症例は 66 歳,女性。60歳時に膵頭部癌に対して亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行し,fT3N1M0,fStage ⅡB と診断された。術後補助化学療法S‒1 継続中の術後 2 年目の CT で多発肺転移を指摘された。以後 gemcitabine 単剤,gemcitabine+nab‒paclitaxel 療法,nal‒CPT‒11+5‒FU+Leucovorin 療法,FOLFIRINOX 療法を 48 か月間継続し,各レジメンで最良効果 SD 以上を得た。しかし骨髄抑制による化学療法休薬中に,市中肺炎と Trousseau 症候群を併発した。その後,急激な病勢の進行を認め,再発後 50か月で死亡した。自験例は膵癌術後多発肺転移に対する化学療法の病勢コントロール効果が示唆された。
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癌と化学療法 49巻13号, 1662-1664 (2022);
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切除可能膵尾部癌に対し術前 GS 療法 2 コースを施行し,切除標本の病理診断で組織学的 CR となった症例を経験したので報告する。症例は 56 歳,女性。5 か月前より食後の背部痛を認め,前医の腹部エコー検査で膵尾部の腫大を認めたため当院に紹介となった。CT 検査で膵尾部癌を疑われ,EUS 下 FNA で腺癌の診断であった。切除可能膵癌の診断で術前 GS療法を 2 コース施行し腫瘍径は 30 mm から 12 mm に縮小し,化学療法効果判定は PR と判定した。術前診断は ycT3,ycN0,ycM0,ycStage ⅡA(膵癌取扱い規約第 7 版)と診断し,膵体尾部切除,脾臓摘出術,D2 リンパ節郭清術を施行した。術中所見は膵尾部に陥凹および発赤を認め,膵被膜浸潤あり(S1)と診断した。術後病理組織診断で 10×10 mm の範囲で膵実質の脱落を認めるも線維性組織に置換され,活動性の癌細胞は認めず,術前化学療法の組織学的効果判定は Grade 4,組織学的 CR の判定となった。術後経過は良好で膵液瘻は BL,術後第 14 病日目で退院となった。
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癌と化学療法 49巻13号, 1665-1667 (2022);
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症例は 61 歳,男性。2 型糖尿病で通院中の CT で肝 S7 に 90 mm 大の腫瘤性病変を認め,肝腫瘍生検により低分化型肝内胆管癌の診断となった。PET-CT で傍大動脈リンパ節転移を認めたため切除不能と判断し,全身化学療法としてゲムシタビン+シスプラチン+S-1 併用療法(GCS 療法)を開始した。7 コース終了後の CT で原発巣の部分奏効および PET-CTで傍大動脈リンパ節転移の FDG 集積低下を認め,切除可能と判断し conversion surgery として肝 S7 拡大亜区域切除術を施行した。術後に S-1 単剤療法を 6 か月施行し,24 か月後の現在も再発なく経過している。切除不能肝内胆管癌に対してconversion surgery を施行した報告が散見されるが,手術前の化学療法として GCS 療法を行った報告は少ない。今回われわれは,切除不能肝内胆管癌に GCS 療法が奏効し,conversion surgery を施行し得た症例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1668-1670 (2022);
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社会の高齢化に伴い手術患者の高齢化が進み,膵頭十二指腸切除術(PD)を含め高侵襲手術においても同傾向を認める。高齢者では PD 術後の合併症リスクが高く,そのなかでも術後肺炎のリスクが高いことが報告されている。高齢者における PD の安全性を明らかにし,さらに術後肺炎に対する予防策について検討を行った。2015 年 1 月~2020 年 12 月までに当科で PD を施行した 223 例を対象とし,80 歳以上の高齢者群(n=32)と非高齢者群(n=191)とで比較検討した。高齢者群では栄養指標のスコアが有意に低値であったが,術後合併症発生率に有意差はなかった。言語聴覚士(ST)による嚥下リハビリ介入を実施した高齢者 3 名には術後肺炎発症はなく,同介入のなかった 1 名に術後肺炎発症を認めた。今後,術後経口摂取再開時の嚥下評価をクリニカルパスに追加し,さらに 80 歳以上全例に ST 介入を導入することを検討している。
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癌と化学療法 49巻13号, 1671-1672 (2022);
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当院でのロボット支援下膵体尾部切除術(RADP)の導入初期 5 例の治療成績を解析し,その安全性につき検討した。導入の際は,日本内視鏡外科学会のロボット支援下膵切除術導入に関する指針を遵守した。5 例の内訳は,男性 2 名,女性3 名,年齢 45~79(中央値 52)歳,疾患は神経内分泌腫瘍 3 例,膵管内乳頭粘液性腫瘍 1 例,粘液性囊胞腫瘍 1 例であった。5 例中 2 例に脾温存膵体尾部切除術を施行した。手術成績は,手術時間 308~437(中央値 330)分,出血量は 5~270(中央値 100)mL,輸血を要した症例はなかった。ISGPF 分類 Grade B 以上の膵瘻,Clavien‒Dindo 分類 Grade Ⅲa 以上の合併症なく,術後在院日数は 7~11(中央値 8)日であった。学会の指針の遵守し,プロクターの指導の下に当院での RADP は安全に導入し得た。
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癌と化学療法 49巻13号, 1673-1675 (2022);
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症例は 67 歳,男性。2 年 6 か月前に左腎細胞癌に対し腹腔鏡下左腎部分切除術を施行された。CT 検査で下行結腸に接する 3 cm の腫瘤を指摘され,当科紹介となった。初診時の血液検査では Hb 11.8 g/dL と貧血を認めた。CT 検査では下行結腸に接して造影効果を伴う境界明瞭な 3 cm の腫瘤を認め,PET‒CT では同部位に SUVmax 6.01 の異常集積を認めた。下部内視鏡検査では,下行結腸に粘膜下腫瘍様隆起を認めた。腎細胞癌局所再発,下行結腸浸潤と判断し手術の方針とした。摘出標本は 4.5×3.8 cm 大の淡黄色調粘膜下腫瘍であり,組織学的に淡明細胞型腎細胞癌の転移と診断された。腎癌の孤発転移に対して外科的切除の報告が散見され,生存期間の延長が期待される。腎細胞癌術後 2 年 6 か月経過し,下行結腸転移再発に対して腹腔鏡下結腸切除術を施行した 1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1676-1677 (2022);
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症例は 70 歳台,男性。血便を主訴に近医を受診し,精査にて Rb 直腸癌を認めた。術前評価の CT で膀胱内に腫瘤を認めたため泌尿器科にて精査を行ったところ,多発早期膀胱癌の診断となった。直腸癌(cT2N0M0,cStage Ⅰ)に関しては肛門温存,膀胱癌(cT1N0M0,cStage Ⅰ)に関しては膀胱全摘術の方針となり,ロボット支援下骨盤内臓全摘術を施行した。術後 1 年 3 か月が経過し,再発兆候は認めていない。
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癌と化学療法 49巻13号, 1678-1680 (2022);
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症例は 71 歳,男性。腹痛を主訴に救急外来を受診し,急性膵炎,膵頭部癌と診断された。手術時の開腹所見で腹腔洗浄細胞診陽性かつ膵炎の炎症性変化で他臓器合併切除の可能性が高いと考えられ,試験開腹で終了し mFOLFIRINOX 療法を開始した。24 コース終了後に薬剤性肺炎を発症し化学療法を中断,ステロイド投与中に放射線治療を施行した。局所進行および新規遠隔転移の出現は認めず,初回手術から 23 か月後に膵頭十二指腸切除術および結腸右半切除術を施行した。腹腔洗浄細胞診は陰性化しており R0 手術を達成し得たが,術後 5 か月で多発肝転移と肝膿瘍,胆管炎で入院となった。PTCDや肝膿瘍の経皮的ドレナージを行ったが,肝不全のため根治術後 8 か月で死亡した。本症例ではフレイルが顕著で術後化学療法を施行できなかったことが早期再発に影響したと考えられ,NAC 後の再発高リスク症例においては,根治術後に ACTが施行できない可能性が高い場合は手術適応を慎重に判断すべきと考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1681-1683 (2022);
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症例は 53 歳,女性。切除可能膵癌に対して術前化学療法後に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。術後補助化学療法として,5-FU 肝動注療法および S-1 療法を施行した。術後 2 年目の CT で残存膵に 2 cm 大の腫瘤が出現し,超音波内視鏡下穿刺吸引法で残膵再発癌と診断した。審査腹腔鏡検査で CY 陽性を確認後,GEM+nab-PTX 療法を 8 か月行い,再度の審査腹腔鏡検査で CY 陰転化したため,残膵全摘術,脾臓摘出術を施行した。術後化学療法を施行し,残膵再発癌切除後 2 年 1 か月現在,無再発生存中である。CY 陽性は予後不良因子であるが,術前・術後化学療法を組み合わせることで,CY 陽性残膵再発癌も切除適応となる可能性がある。
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癌と化学療法 49巻13号, 1684-1686 (2022);
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gastrointestinal stromal tumor(GIST)ガイドラインでは,根治可能な GIST に対する術前補助療法の有用性は明らかではないとされている。当院では巨大直腸 GIST に対し,手術侵襲の軽減,手術成績の向上を目的に術前補助療法を施行している。症例は 39 歳,48 歳,78 歳,いずれも男性。部位は全例 Rb であり,直腸 GIST 診断時の最大径はそれぞれ 70mm,75 mm,60 mm と巨大腫瘍であり,術前補助療法としてメシル酸イマチニブ(imatinib)投与を開始した。術前化学療法期間は 6 か月,11 か月,12 か月であり,術前 CT での腫瘍最大径は治療前と比較しいずれも縮小しており,reduction rate の平均は 23% であった。2 例は腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術,1 例は腹腔鏡下超低位前方切除術および回腸人工肛門造設術を施行した。Clavien‒Dindo 分類 Grade Ⅱ以上の周術期合併症は認めなかった。全例 high risk 群となり,術後補助療法として imatinib を投与中である。現在は術後 2 年 3 か月,1 年 2 か月,1 年で,いずれも無再発生存中である。巨大直腸GIST に対し imatinib による術前補助療法が低侵襲手術,根治手術に寄与したと考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1687-1689 (2022);
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症例は 73 歳,男性。会陰部から肛門に広がる紅斑に対して生検を行い,肛門周囲 Paget 病と診断した。歯状線からの生検では腫瘍細胞を認めず,歯状線までの臀部皮膚腫瘍切除・植皮術を施行した。病理組織学的検査で肛門側断端陽性であり,術後の肛門狭窄にて当科を紹介受診した。S 状結腸双孔式人工肛門造設術を施行した。その後の検査では明らかな再発の所見はなかったが,肛門狭窄のため十分な再発チェックができないこと,肛門機能の改善は期待できないことなどを考慮して,ロボット支援下腹会陰式直腸切断術を施行した。病理組織学的検査では腫瘍細胞は認めなかった。肛門周囲 Paget病に対する局所切除時には皮弁形成や植皮術により臀部皮膚が瘢痕化し,腹会陰式直腸切断術施行時に会陰創の閉鎖が困難になる。ロボット支援下手術では腹腔内から坐骨直腸窩まで到達することが比較的容易なため会陰創を小さくし,皮膚閉鎖が可能となり,本症例で有用であったと考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1690-1692 (2022);
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症例は 50 歳台,男性。排便時出血と肛門痛を主訴に近医を受診し,下部消化管内視鏡検査にて直腸 Rb に 2 型腫瘍を認め当科へ紹介された。遠隔転移を認めないが前立腺遠位部に浸潤を疑う局所進行癌であり,術前化学放射線療法(45 Gy/25Fr,S-1 併用)を行う方針とした。術前化学放射線療法により腫瘍縮小と自覚症状の改善が得られたが,原発巣は依然として前立腺・尿道へ近接しており,泌尿器科と合同でロボット支援下に直腸切断術,レチウス腔温存前立腺全摘術・尿道膀胱吻合を実施した。切除断端は陰性であり根治切除が施行できていた(ypStage Ⅰ)。術後尿道膀胱吻合部の縫合不全を認めたが,保存的に軽快した。術後 1 年無再発生存中であり,当初腹圧性尿失禁を認めていたが徐々に改善傾向である。骨盤内臓全摘術も考慮された症例に対して,ロボット支援下手術を駆使することで尿路の温存が得られた。同様の報告は未だ少ないが,拡大手術におけるロボット支援下手術の応用も今後期待される。
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癌と化学療法 49巻13号, 1693-1695 (2022);
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症例は 74 歳,女性。嘔吐,歩行困難,見当識障害を主訴に受診した。頭部 CT 検査で異常は認めなかったが,頭部MRI 検査で両側視床内側に拡散強調像,FLAIR で高信号域を認めた。腹部造影 CT 検査で空腸に約 2.4 cm 大の腫瘍と腫瘤口側の空腸に拡張が認められ,小腸腫瘍によるイレウスが認められた。消化管通過障害と消化管腫瘍による栄養障害に伴うWernicke 脳症と診断した。ビタミン B1 300 mg/日×3 日間投与を開始したところ投与開始翌日には眼球運動改善,見当識障害も改善した。全身状態改善後,入院後 10 日目に小腸腫瘍に対し小腸部分切除術を施行した。小腸癌と診断された。術後経過は良好であり,術後 20 日目に転院となった。大量飲酒などの既往がなくても,消化管腫瘍による慢性的な栄養障害でWernicke 脳症が生じることは念頭に置くべきである。
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癌と化学療法 49巻13号, 1696-1698 (2022);
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症例は 53 歳,男性。食事の飲み込みにくさを主訴に受診した。精査より早期食道癌の診断となり,胸腔鏡下食道亜全摘・胸骨後経路頸部食道胃管吻合術を施行した。術後に頸部でのリンパ漏と縫合不全を認めたが保存加療で改善し,退院となった。しかしその後,吻合部狭窄・屈曲による食事の通過障害が出現し,適宜拡張術を行うも頻回となったため QOL を考慮し,狭窄屈曲部に食道ステントを留置した。一時的に通過障害は改善したが,咽頭痛が出現しステントを抜去した。しかし再び通過障害を認めたため,柔軟性の高い十二指腸ステントを留置した。現在,通過障害なくステント留置後 5 か月が経過している。食道癌術後の吻合部狭窄に対して,十二指腸ステントが有用であったため報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1699-1701 (2022);
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症例は 57 歳,女性。動悸と全身浮腫を主訴に近医を受診し,血液検査で高度貧血を認め当院紹介となった。上部消化管内視鏡検査で胃全体にポリポーシスおよび噴門部,胃体中部大弯,胃角部に分葉状ポリープを認めた。大腸,小腸内視鏡検査では異常所見は認めず,重症貧血を伴う胃限局性若年性ポリポーシスの疑いで腹腔鏡下胃全摘術,D1 リンパ節郭清を施行した。病理組織学的検査所見で胃全体に粘膜固有層の浮腫と好酸球浸潤に乏しい腺窩上皮の過形成を認め,2 か所の粘膜内に高分化腺癌を認め,多発粘膜内癌を伴う胃限局性若年性ポリポーシスと診断した。今回われわれは,胃癌を合併した胃限局性若年性ポリポーシスに対し腹腔鏡下胃全摘術を施行した 1 例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1702-1704 (2022);
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症例は 76 歳,女性。局所進行胃癌に対し術前化学療法後に根治切除術を施行した。術後補助化学療法中に CA19-9 の上昇を認めたため FDG-PET/CT を施行したところ,左腋窩,Virchow リンパ節に有意な集積を認めた。左腋窩リンパ節の切除生検を施行したところ胃癌の転移であり,PTX+RAM 療法を開始した。治療開始時から頭痛,ふらつき,難聴の訴えがあったため頭部造影 MRI を施行したが有意な所見を認めなかった。RAM の有害事象により 3 コース目から weekly nab⊖PTX 療法へ治療を変更し,約 6 か月継続した。8 コース時に頭痛やふらつきが増悪し,入院となった。髄液検査で細胞診class Ⅴであり,造影 MRI 所見も併せて髄膜癌腫症と診断した。入院 3 日後には意思疎通困難となり,入院 16 日目で死亡した。胃癌の髄膜癌腫症は比較的まれであり,さらに本症例は nab⊖PTX 投与により髄膜癌腫症の病勢をコントロールできていた可能性があるため,文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1705-1707 (2022);
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食道癌肝転移に対する局所療法の適応や有用性については未だ確立していない。食道癌肝オリゴ転移に対して肝切除を施行した 2 例を報告する。症例 1 は 65 歳,男性。胸部食道癌術後 12 か月目の S7 単発肝転移再発に対して 6 か月間の薬物療法の後,肝切除を施行した。症例 2 は 71 歳,女性。胸部食道癌術後 14 か月目の S8 単発肝転移再発に対して 6 か月間の薬物療法の後,肝切除を施行した。いずれも食道再建臓器への術中損傷なく完全切除を行い,合併症なく退院した。両症例とも術後 5 か月以上の無再発生存が得られた。食道癌肝転移に対する局所療法はオリゴ転移の症例であれば,薬物療法との併用で予後向上に寄与し得る。
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癌と化学療法 49巻13号, 1708-1710 (2022);
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症例は 86 歳,男性。上腹部痛を主訴に上部消化管内視鏡検査を施行し,胃体上部後壁に 0-Ⅲ型病変を認め生検にて胃癌と診断された。cT1bN0M0,cStage Ⅰの術前診断にて腹腔鏡下胃全摘術を施行し,最終診断は pT2N0(0/27)M0H0P0CY0,pStage ⅠB であった。術後補助化学療法は施行せず,術後 5 年間無再発で終診となった。術後 8 年 1 か月目に腹部膨満と食欲不振を主訴に当院を受診した。CT 検査にて胸腹水の貯留を認めたが,PET-CT では明らかな再発病変は指摘されなかった。腹水細胞診およびセルブロックにより胃癌の胸膜,腹膜再発と診断した。積極的な治療は希望されず,再発から 3 か月後,初回手術から 8 年 4 か月後に現病死された。胃癌の晩期再発および胸膜・腹膜への同時転移再発はまれである。今回われわれは,胃癌根治切除 8 年後に胸膜・腹膜同時再発した 1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1711-1713 (2022);
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症例は 70 歳台,男性。上部消化管内視鏡検査と腹部造影 CT 検査で,胃癌,肝転移,腹膜播種と診断された。切除不能進行胃癌として化学療法(CapeOX+T‒mab)を 5 コース施行し,原発巣は縮小し,肝転移,播種結節も指摘困難となったため腹腔鏡下幽門側胃切除・肝部分切除術を施行した。病理組織学的所見では原発巣,肝切除部位ともに癌細胞は認めず,組織学的効果判定は Grade 3 であった。現在,術後 6 か月間無再発で経過している。多発遠隔転移を有する Stage Ⅳ胃癌においても化学療法奏効例では,手術を組み合わせた集学的治療を行うことにより長期生存が期待できると考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1714-1716 (2022);
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症例は 50 代,女性。血尿のスクリーニングで施行した造影 CT で虫垂の腫大を指摘され,当科を受診した。虫垂は10 mm に腫大し内部に粘液の貯留を認めた。悪性を疑う所見がなく,経過観察とした。4 年後の CT で著変はなかったが,確定診断のため腹腔鏡下虫垂切除術を行った。切除標本は肉眼的に軽度の壁肥厚を認めたが,明らかな腫瘤を認めなかった。病理学的検査では,虫垂は盲端部を中心とした領域で,粘液産生の亢進した高円柱状の核分裂像の目立つ異型上皮が腺管状,乳頭状に密に増殖していたが,いずれも粘膜内にとどまっていた。WHO分類のhigh‒grade appendiceal mucinous neoplasm(HAMN)であった。盲端部の 2 mm 程度の小範囲の異型上皮は特に核異型が強く,p53 にびまん性に強陽性を示し,高分化管状腺癌の像であった。以上から,V,Type 0‒Ⅱb,2 mm,tub1 in HAMN,pTis,Ly0,V0,Pn0,pPM0,pDM0,pRM0,R0 と診断した。術後 6 か月目で再発は認めていない。HAMN に併存した早期虫垂腺癌の 1 例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1717-1719 (2022);
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症例は 76 歳,女性。肛門からの腸管,腫瘤の脱出を主訴に受診した。腹部造影 CT で直腸に同心円状構造を認め,S状結腸癌を先進部とした腸重積が疑われた。用手還納は困難であったが,イレウスおよび腸管虚血を認めなかったため,待機的に手術を行った。D3 郭清を伴う Hartmann 手術を施行した。術後 1 年 9 か月,無再発生存中である。腫瘍が先進部となり肛門外に脱出し,腸重積を来した S 状結腸癌を経験したので文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1720-1722 (2022);
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胃 gastrointestinal stromal tumor(GIST)に対する標準治療はリンパ節郭清も不要で胃局所切除術とされ,腹腔鏡下手術のよい適応である。腹腔鏡下手術を中心に 2005 年 1 月~2022 年 3 月までの胃 GIST 手術症例 60 例を対象に検討を行った。局在部位は U 38 例,M 18 例,L 4 例,発育形式は内腔発育型または壁内(混合)型 42 例,壁外発育型 18 例であった。開腹手術 28 例,腹腔鏡下手術 32 例であった。腹腔鏡下手術の適応は 5 cm 以下とし,内訳は従来法の楔状部分切除 19 例,反転法 3 例,LECS 8 例,噴門側胃切除 2 例であった。手術時間,出血量,腫瘍径,術後在院日数は有意に腹腔鏡下手術のほうが低かった。modified-Fletcher 分類による再発リスク分類では超低および低リスク 49 例,中リスク 6 例,高リスク 5例であった。再発は腹腔鏡下手術には認めず,開腹手術の 3 例にのみ認め,10 年生存率は両群ともに 100%,5 年無再発生存率は腹腔鏡で 100%,開腹では 87% であった。様々な方法による腹腔鏡下手術は有用な術式と思われた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1723-1726 (2022);
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Peritoneal Surface Oncology Group International(PSOGI)は 1998 年腹膜播種の治癒をめざす治療法(包括的治療:comprehensive treatment: COMPT)を提唱した。COMPT は肉眼的に認められる播種を完全切除し,術前化学療法(NAC)で手術で取り除けない腹膜表面の微小転移を消滅させ,手術後遺残した微小転移を術中温熱化学療法(HIPEC)で根絶させるものである。この論文では包括的治療の原理と,治療成績・治療の選択基準を述べる。肉眼的完全切除直後は体内にある癌細胞が最も少ない。播種を完全切除した後の遺残癌細胞が術中 HIPEC で完全消滅できる量以下であれば患者は治癒する。患者と方法: HIPEC の効果をみるため,腹腔鏡下 HIPEC(LHIPEC)を施行,1 か月後に腹膜播種係数(PCI)と細胞診を調べた。COMPT の理論で治療された PCI 12 以下の胃癌 171,PCI 21 以下の大腸癌 183 例,PCI 28 以下の腹膜偽粘液腫 460例の予後を検討した。結果: 1 回の LHIPEC で胃癌・PMP で PCI は有意に 1.85,2.7 減少した。しかし大腸癌では有意差はないが増加した。細胞診では胃癌・大腸癌・PMP で陽性例は 57.6%,42.9%,60.9% が陰性化した。胃癌・大腸癌の生存期間の中央値は 21.2,71.5 か月であった。10 年生存率は胃癌・大腸癌・PMP でそれぞれ 12.6%,21.7%,81.6% であった。術後死亡率は胃癌・大腸癌・PMP で 0.8%,1.0%,1.1% であった。結語: COMPT による死亡率は容認可能であり,完全切除+HIPEC は PCI が閾値以下の胃癌・大腸癌・PMP の予後を改善させた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1727-1729 (2022);
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胃癌術後に肝転移・肺転移を来したが,いずれも切除し長期生存を得た症例を経験したため,文献的考察を加えて報告する。症例は 78 歳,女性。胃体下部の 2 型進行胃癌に対して,幽門側胃切除術,D2 郭清,Roux‒en‒Y 再建術を施行した。術後病理組織所見は pT4aN2M0CY0P0,pStage ⅢB であり,術後 S‒1 による補助化学療法を 1 年施行した。胃切除後4 年目に,肝転移(S6)および左肺転移(S9)を認め,SOX 療法を開始した。SOX 療法を 10 コース施行後,肺転移は消失し,残存した肝転移に対して肝 S6 部分切除を施行した。肝切除後,S‒1 療法を再開したが,肝切除後 1 年目に肺転移の増大を認め,左下葉 S9 部分切除術を施行した。病理組織所見で,肺腫瘍は胃癌の肺転移と微小原発性肺腺癌の合併と診断された。現在,肺転移切除後 2 年 6 か月経過し,再発を認めていない。
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癌と化学療法 49巻13号, 1730-1732 (2022);
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症例は 67 歳,男性。検診にて異常を指摘され,当院へ紹介受診となった。上部消化管内視鏡検査にて胃前庭部大弯,大弯後壁,体中部小弯に病変を認め,生検にて多発胃癌と診断され,腹腔鏡下胃全摘術が施行された。最終診断はpT2N1M0,pStage ⅡA(HER2 染色: 3+)であったが,術後補助化学療法は施行されなかった。術後 6 か月の CT 検査にて肝 S6,S7 に肝転移再発を認め,腹腔鏡下肝部分切除術が施行された。病理診断は胃癌の転移として矛盾しない結果であった。術後 2 か月より,S-1 による術後補助化学療法を開始したが,CT 検査にて肝転移および右副腎転移に再々発を認めたため,S-1+cisplatin(SP)+trastuzumab 療法に変更された。6 コース施行にて著効し,画像的 CR が得られたため,いったん終了となった。その後,外来にて画像フォローされているが CR が維持されており,初回術後 8 年 9 か月現在無再発生存中である。今回われわれは,胃切除後に肝および副腎転移再発に対して切除および化学療法にて長期生存を得られた胃癌の1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1733-1735 (2022);
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症例は 73 歳,女性。血便と便柱狭小を主訴に前医を受診し,直腸指診で腫瘍を触知したため当科紹介となった。下部消化管内視鏡で直腸 RbP に 1/2 周性の 2 型腫瘍があり,腫瘍の肛門端は歯状線上にあった。生検で高~中分化腺癌(tub1,tub2)の診断となった。CT で有意なリンパ節腫大や遠隔転移の所見は認めなかった。MRI で腫瘍は直腸周囲臓器への浸潤はなかったが,肛門挙筋に近接していた。確実な肛門側断端の確保を考えると直腸切断術が望ましいと思われたが,患者の肛門温存の希望が強く術前化学放射線療法(chemoradiotherapy: CRT)を行って再評価する方針とした。放射線治療は計50.4 Gy(1.8 Gy×28),化学療法は S‒1(80 mg/day)を放射線治療日に合わせて内服とした。CRT 後の下部消化管内視鏡で,腫瘍は著明に縮小し 1/4 周性の潰瘍病変となった。CT ではリンパ節腫大や遠隔転移の所見はなく,MRI で肛門挙筋との境界は明瞭となった。手術は腹腔鏡下括約筋間直腸切除術,回腸人工肛門造設術を施行した。病理では 18×17 mm の潰瘍病変を認めるも viable な癌細胞は認めず,リンパ節転移も陰性であった。その後の経過は良好で 3 か月後に人工肛門閉鎖術を行い,術後 2 年経過するも再発は認めていない。進行直腸癌に対して術前 CRT により pCR が得られた症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1736-1738 (2022);
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症例は 72 歳,男性。貧血精査の下部内視鏡検査で,S 状結腸癌と診断された。CT で後腹膜に軟部陰影を認め,後腹膜線維症が疑われた。左尿管,下腸間膜動脈,左結腸動脈は狭窄していた。S 状結腸切除術,D1+郭清,後腹膜生検を施行し,ICG 蛍光法で腸管断端の血流を確認した後,吻合した。後腹膜線維症では,後腹膜腔の層構造が不明瞭で,術中の血管走行の同定が困難となる。大腸癌手術の際には,確実な吻合を行うために ICG 蛍光法が有用であると考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1739-1741 (2022);
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症例は 70 歳,女性。排便時肛門痛を主訴に前医を受診,肛門部に腫瘤性病変を指摘され当院紹介となった。下部消化管内視鏡検査で肛門部に閉塞性の潰瘍を伴う腫瘤を認め,生検で扁平上皮癌と診断した。鏡視下に人工肛門を造設した後,capecitabine および mitomycin C の投与と病変部への放射線照射による放射線化学療法を施行した。治療後に腫瘍の肉眼的消失を認め,人工肛門を閉鎖した。しかし,治療開始から 2 年 3 か月後に肝門部リンパ節転移再発を来した。このため,S-1およびcisplatinによる全身化学療法を行ったところ再度腫瘍の消失が確認された。肛門管扁平上皮癌の治療後再発に対し,初回治療時とは異なるレジメンを用いた化学療法を行い,完全奏効が得られている 1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1742-1744 (2022);
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今回,下行結腸癌切除後局所再発に対して腸管再建を伴う切除術,化学療法,放射線療法を行うことで,途中左水腎症を来すも長期的に QOL 維持が得られた症例を経験した。ADL 良好な 60 代,男性。下行結腸癌に対して腹腔鏡下結腸左半切除術 D3 郭清を施行した。術後 4 年 6 か月の CT 検査および PET 検査で左外腸骨動脈と S 状結腸に接する 32 mm の局所再発巣を認め,CAPOX+BEV 療法を開始した。5 コース終了後に胆囊炎を発症した際,胆囊摘出術に加えて再発巣を同時切除した。この 8 か月後同部位に左水腎症を伴う長径 13 mm の再々発巣を認めた。左尿管ステント留置,3 年間化学療法を行い,徐々に CEA 上昇と腫瘍増大を認めた。高度の蛋白尿があり薬物療法に制限があったため,66 Gy/22 分割の放射線治療を実施した。放射線治療終了後 1 か月で CEA は低下,蛋白尿も改善した。自験例では,局所再発に対する放射線治療が化学療法の有用なインターバルとなり得る。
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癌と化学療法 49巻13号, 1745-1747 (2022);
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ramucirumab(RAM)投与によりネフローゼ症候群を発症した進行大腸癌の 2 例を報告する。症例 1: 患者は 54 歳,女性。同時性多発肝転移,多発肺転移,腹膜播種を伴う直腸癌穿孔に対して S 状結腸双孔式人工肛門造設術を行い,術後CAPOX+bevacizumab(Bev)を 15 コース施行した。二次治療として FOLFIRI+RAM を導入した。2 コース施行後に著明な尿蛋白,低アルブミン血症を認めネフローゼ症候群と診断した。利尿薬,降圧薬を開始し速やかに改善を認めた。症例2: 患者は 72 歳,男性。十二指腸浸潤を伴う S 状結腸癌に対し,S 状結腸切除術を施行したが RM1,CY1 であった。術後mFOLFOX6+Bev を 17 コース施行した。遺残腫瘍の増大に伴い二次治療として FOLFIRI+RAM を導入した。2 コース施行後に著明な尿蛋白を認めネフローゼ症候群,心不全と診断した。利尿薬,降圧薬,V2‒受容体拮抗剤を使用し改善を認めた。両症例とも二次治療に移行し 2 回の RAM 投与で著明な尿蛋白を認めており,導入早期にはネフローゼ症候群発症の可能性を念頭に診療をする必要がある。
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癌と化学療法 49巻13号, 1748-1750 (2022);
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症例は 28 歳,女性。左乳房腫瘤を自覚して受診した。マンモグラフィでは左乳房 MI 領域に FAD を認め(カテゴリー3),乳房エコー検査では左 A 区域に 10 mm 大の境界やや不明瞭な低エコー腫瘤を認めた。エコー下マンモトーム生検では,結節性筋膜炎を疑うが境界悪性葉状腫瘍の可能性が否定できないとの所見であったため,全身麻酔下に乳房腫瘤摘出術を行った。病理組織学的検査の結果では,不規則な方向性をもつ線維芽細胞の増殖を認め結節性筋膜炎と診断した。結節性筋膜炎は悪性転化しないとされており,自然消退する場合もある。しかし針生検のみでの確定診断は難しく,最終的に外科的切除が行われることが多い。境界悪性葉状腫瘍と鑑別を要した乳房内結節性筋膜炎の 1 例を経験した。
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癌と化学療法 49巻13号, 1751-1753 (2022);
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今回われわれは,モーズペーストの使用により症状が緩和され,QOL の向上が得られた皮膚浸潤を伴う局所進行乳癌の 3 例を経験したので文献的考察を加えて報告する。症例 1 はモーズペーストにより露出した腫瘍が縮小し,滲出,出血の減少を認めた。症例 2 は著明な貧血の原因となっていた出血が制御され,腫瘍の縮小と上皮化を認めた。症例 3 は全身転移のため予後不良の状態であったが,滲出,出血,悪臭が制御されたことで一定期間 QOL が改善された。緩和ケアの観点から,乳癌皮膚浸潤による多量の滲出,出血,悪臭などの諸症状に対してモーズペーストは安全かつ有効な治療法であり,症例によっては腫瘍が縮小することで予後の延長も期待できる。使用に当たっては医師だけでなく,薬剤師,看護師を含む緩和ケアチームの協力が必須である。
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癌と化学療法 49巻13号, 1754-1757 (2022);
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近年,口腔がんサバイバーが増加傾向にあり,口腔がん術後の口腔機能低下と整容的観点から QOL 低下が問題となる。これまで,上顎癌切除後の欠損部には歯科補綴学的な顎義歯が有用とされてきた。近年,マイクロサージャリーによる遊離皮弁を用いた顎口腔再建が進歩している。今回,上顎癌切除後の広範囲顎欠損部に対して二期的に前腕皮弁と義歯により顎口腔機能回復治療を行い,良好な経過が得られたので報告する。患者は 59 歳,女性。35 年前に左進行上顎歯肉癌に対して,左上顎半側切除が施行された。欠損部に対しては顎義歯が適応されていたが,何度も調整と再作製がなされていた。顎口腔機能の改善と長期的な QOL 向上を主訴に当科を受診した。左上顎骨欠損は 45×50 mm 大であり,形成外科と連携し,遊離前腕皮弁と部分床義歯を用いた再建治療を施行した。経過は良好であり,摂食,嚥下,構音機能も改善を認めた。現在術後 1 年を経過し,患者の満足が得られた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1758-1761 (2022);
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新型コロナウイルスにより 2020 年 4 月に緊急事態宣言が発出され,国民の外出自粛が求められた。これにより患者が医療機関を受診することの不安をかき立てる結果となった。今回,コロナ禍により受診を控えた影響で,口腔前癌病変から悪性転化を来した舌癌の 1 例を経験したので報告する。患者は 62 歳,女性。2020 年 3 月に舌縁部の腫瘤を自覚し,当科を紹介受診した。切除生検を行ったところ炎症性変化と診断を得た。翌月には白色を伴う潰瘍性病変を認め,再度切除生検を施行し,上皮異形を伴わない左舌白板症の診断を得た。手術を予定していたが,コロナ禍のため治療と受診を拒否した。2021年 9 月に本人の意思で当科再診したところ,左舌縁部に境界不明瞭,硬結を伴う潰瘍性病変を認め,精査にて左舌扁平上皮癌(cT2N2bM0,Stage ⅣA)の診断を得た。同年 10 月に,根治腫瘍切除術および遊離前腕皮弁による再建術を施行した。現在術後 8 か月を経過し,良好な経過が得られた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1762-1764 (2022);
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腹腔鏡下肝切除は低侵襲性と整容性に優れ,2010 年に先進医療から保険収載され 2016 年には高難度術式まで適応が拡大された。2010 年 5 月~2021 年 11 月までに関西労災病院にて腹腔鏡下肝切除を施行した肝細胞癌 407 例を 80 歳以上の高齢者 67 例と 79 歳以下 340 例に分け比較検討した。患者背景は 80 歳以上・79 歳以下が各々,年齢が 82.7・68.8 歳,性別は男性/女性が 41/26・238/102,肝機能は Child‒Pugh 分類(A/B/C)が 65/2/0・318/22/0,肝障害度(A/B/C)が 49/18/0241/97/2,原発性肝癌取扱い規約第 6 版による病期は Stage(Ⅰ/Ⅱ/Ⅲ/Ⅳ)が 23/34/8/2・117/146/57/20,術式は(Hr0/HrS/Hr1/Hr2)が 48/4/11/4・242/14/56/28 と年齢以外 80 歳以上と 79 歳以下で差を認めなかった。切除成績は 80 歳以上・79 歳以下で各々,手術時間 316.1・347.2 分,出血量 277.3・233.7 g,肝部分切除と亜区域切除では手術時間 287.7・306.8分,出血量 214.5・189.5 g,肝区域切除と葉切除では手術時間 414.3・470.2 分,出血量 495.2・368.4 g,術後在院日数は14.3・12.9 日,術後出血は 1・3 例,胆汁漏は 2・10 例と 80 歳以上と 79 歳以下で差を認めなかった。80 歳以上の高齢者肝細胞癌に対する腹腔鏡下肝切除の成績は,79 歳以下と比較して短期・中期成績ともに同等であり,腹腔鏡下肝切除の低侵襲性を活用すれば,高齢者に対しても同等に外科的治療が可能であると考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1765-1767 (2022);
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症例は 72 歳,男性。末期腎不全に対して血液透析中の患者である。急性膵炎を繰り返し,精査にて閉塞性膵炎を伴う主膵管型膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)と診断された。手術待機期間中,誘引なく手足の硬結と急激な疼痛を発症し,蜂窩織炎の診断で抗生剤加療を行うも皮膚病変の改善は認めず,皮膚生検を施行した。病理所見では皮下脂肪組織の壊死像を認め,血清アミラーゼの異常高値を伴うことから皮下結節性脂肪壊死症と診断した。亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行したところ皮膚所見,疼痛症状は軽快した。術後病理検査で十二指腸乳頭部癌,膵管内乳頭粘液性腺腫(IPMA)の最終診断に至った。IPMN による閉塞性膵炎から皮下結節性脂肪壊死症を来した症例は少なく,若干の文献的考察を含めて報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1768-1770 (2022);
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症例は 68 歳,女性。皮膚黄染を主訴に近医を受診し,閉塞性黄疸の疑いで当院に紹介受診となった。造影 CT や超音波内視鏡検査の結果,胆囊癌,cT4bN1M0 と診断された。肝浸潤,肝外胆管浸潤,右肝動脈・門脈浸潤が疑われた。内視鏡的胆管ドレナージで減黄後に GC 療法を 9 コース施行した。腫瘍マーカーは低下し,原発巣・リンパ節の著明な縮小を得たため手術の方針となった。明らかな遠隔転移は認めず,腫瘍は右肝動脈・門脈より剝離可能であったため術式は亜全胃温存膵頭十二指腸術および胆囊床切除術とした。病理所見は ypT3aN0M0,ypStage ⅢB であった。退院後は S-1 を 1 年間内服し,術後 5 年経過し無再発生存中である。今回,GC 療法によりダウンステージが得られ,外科切除を施行し長期生存を得た進行胆囊癌の症例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1771-1773 (2022);
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肝細胞癌は腫瘍随伴症候群を比較的高率に合併するとされるが,赤血球増多症を来す頻度は低い。今回われわれは,術前赤血球増多症,高エリスロポエチン(Epo)血症を合併した肝細胞癌の 1 切除例を経験したので報告する。症例は 50歳,男性。20 年前に C 型肝炎に対しインターフェロン治療を行い治癒している(SVR)。右季肋部痛を主訴に当院を受診,精査にて肝 S8/5/7 を占める肝細胞癌の診断となり,腫瘍随伴症状として赤血球増多症・Epo 高値を認めた。肝右葉切除術を施行し,術後 13 日で退院となった。術後速やかに赤血球数,Epo は正常化した。術後 1 年 2 か月時点で多発肺転移再発を認め,現在化学療法中である。赤血球増多症・高 Epo 血症を伴う肝細胞癌は予後が著しく悪いことが報告されており,集学的治療と厳重なサーベイランスが必要と考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1774-1776 (2022);
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症例は 74 歳,男性。近医で膀胱腫瘍の精査目的に造影 CT・MRI を施行したところ,偶発的に肝 S7 に 26 mm 大の肝腫瘤を指摘され,胆管細胞癌が疑われたため当科紹介となった。HBs 抗原・HCV 抗体は陰性,腫瘍マーカー(CEA,AFP,CA19‒9,PIVKA‒Ⅱ)は基準値内であった。造影 MRI では斑状に緩徐に造影され洗いだしを認める腫瘤であり,腫瘤の一部に脈管が貫通していた。胆管細胞癌を考え,肝後区域切除を施行した。術後経過は良好で第 19 日目に退院となった。病理結果から肝 mucosa‒associated lymphoid tissue(MALT)リンパ腫と診断された。術後 5 か月経過しているが,再発所見なく外来で経過観察中である。肝原発悪性リンパ腫のなかでも MALT リンパ腫の報告例は少ない。本疾患は予後良好な腫瘤であるが,遠隔期に再発した症例もあり慎重な経過観察が必要である。
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癌と化学療法 49巻13号, 1777-1779 (2022);
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症例は 73 歳,女性。31 年前に子宮筋腫に対し単純子宮全摘術を施行された。また,20 年前には卵巣腫瘍に対し両側卵巣摘出術を施行されていた。今回,腹部エコーにて肝腫瘍を指摘され紹介となり,CT および MRI にて肝 S6-7 に 65 mmの腫瘍を認めた。肝以外に病変は認めず,肝細胞癌を最も疑い TACE を施行した。しかし良好な治療効果は得られず,肝切除術を施行した。病理組織形態から子宮内膜間質細胞との類似性が示唆され,過去の子宮筋腫,卵巣腫瘍とともに免疫組織学的染色を行った。子宮筋腫,卵巣腫瘍,肝腫瘍いずれも CD10(+),α-SMA(-),MIB-1 index 3% であり,初回手術の子宮筋腫は低異型度子宮内膜間質肉腫と診断を改め,11 年後に卵巣転移を認め,31 年後に今回の肝転移へ至ったことが明らかとなった。子宮内膜間質肉腫の肝転移切除例は極めてまれであり,文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1780-1782 (2022);
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膵腺扁平上皮癌はまれであり,通常型管状腺癌に比べて予後不良である。症例は 73 歳,男性。造影 CT で膵鉤部に47 mm 大の腫瘍を認めた。腫瘍は十二指腸水平脚へ浸潤し,上腸間膜動脈(SMA)に接していた。膵頭部癌,切除可能境界 BR-A(SMA)と診断し,術前補助化学療法として GS 療法を施行した。GS 療法施行中に十二指腸浸潤部からの出血のため,放射線治療を施行した。術前治療の治療効果は Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)で stable disease(SD)であり,下大静脈合併切除を伴う亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。病理組織学的所見で,膵腺扁平上皮癌の診断であった。術後 7 日の造影 CT で肝転移再発を認め,術後 78 日目に原病死した。
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癌と化学療法 49巻13号, 1783-1786 (2022);
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症例は 44 歳,女性。直腸癌(cT2N3M0,cStage Ⅲb)に対し,capecitabine/oxaliplatin(CAPOX)療法を計 4 コース施行後,腹腔鏡下括約筋間直腸切除術を施行した。術後補助療法として CAPOX 療法を計 7 コース施行した。CAPOX 最終投与 1 年 4 か月後,CT で早期濃染を示す多発肝腫瘤と GIST を疑う空腸間膜腫瘤を認めた。肝腫瘤に対し経皮的針生検を施行も診断困難であり,腹腔鏡下肝部分切除 2 か所と腹腔鏡補助下空腸部分切除を施行した。病理診断で肝の 2 結節は過形成性病変であり類洞拡張を認め,sinusoidal obstruction syndrome(SOS)を伴う nodular regenerative hyperplasia(NRH)と診断され,その原因薬剤として oxaliplatin が考えられた。NRH はまれであるが,他疾患との鑑別の上でも oxaliplatin 使用時はその発生を念頭に置くべき病態と思われた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1787-1789 (2022);
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症例は 72 歳,男性。腹痛と下痢を主訴に近医を受診し,腸閉塞の診断で当科を紹介受診した。造影 CT では下行結腸に不整な壁の増強効果と内腔の軽度狭窄を認めた。下部内視鏡検査では下行結腸に高度狭窄を認めたが,生検の結果はGroup 1 であった。FDG⊖PET/CT 検査では左鎖骨上,左腋窩,右縦隔,右横隔膜脚後部,腹部大動脈周囲のリンパ節および肝臓に FDG 集積を認めたが,下行結腸の集積に関しては明確な腫瘍性集積とはいえなかった。左腋窩リンパ節生検の結果,原発は大腸癌と診断した。術前診断は下行結腸癌,cStage Ⅳb 疑いとし,原発巣に対して腹腔鏡下結腸左半切除術 D1郭清を行った。病理結果では D,Type 5; 60×50 mm,tub2>por2,pT4a(SE),INF c,Ly1c(SS),V1c(SS),BD3,pPMO(80 mm),pDMO(105 mm),pR0,pN2b(21/32)で下行結腸癌,sStage Ⅳc と診断した。大腸癌同時性遠隔転移のなかで,結腸癌の Virchow リンパ節転移は 0.1% とまれであり,若干の文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1790-1792 (2022);
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症例は 80 歳台,女性。検診で腹部腫瘤を指摘された。造影 CT 検査にて回盲部腸管外に造影効果を伴う腫瘍を認め,腫瘍内部を回結腸動脈が貫通していた。大腸内視鏡検査では明らかな腫瘍を指摘できなかったが回盲弁が狭窄しており,内視鏡の通過は不可能であった。回盲弁の生検に腺癌成分は認めず,リンパ球増生のみであった。注腸検査では盲腸から口側腸管への造影剤の流入を認めなかった。回盲部の消化管間質系腫瘍を疑い,悪性リンパ腫疑いの術前診断で開腹回盲部切除を行った。回盲部腸管壁外に 5 cm 大の弾性硬な腫瘍を認めた。腫瘍と腸管との剝離は不可能であった。病理組織検査では粘膜面に病変を認めず,粘膜下から漿膜にかけて低分化腺癌の浸潤を認め,壁外性発育回盲部大腸癌の診断に至った。比較的まれではあるが,壁外性発育の大腸癌も念頭に置く必要がある。
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癌と化学療法 49巻13号, 1793-1795 (2022);
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症例は 74 歳,女性。血便を主訴に来院され,下部内視鏡検査で直腸 Rb に潰瘍を伴う 2 cm 大の粘膜下腫瘍を認めた。生検では多彩な炎症細胞の集簇を認めたが,明らかな悪性所見を認めなかった。胸腹部 CT,腹部 MRI では直腸の壁肥厚以外に有意な異常所見を認めなかった。NET を疑い施行したソマトスタチン受容体シンチグラフィでは異常集積を認めなかった。計三度の生検を行ったが確定診断には至らず,診断的治療目的に経肛門的腫瘍切除術を行った。免疫組織染色ではCD20(+),bcl-2(+)であり,B 細胞性悪性リンパ腫と診断した。術後 1 年,無再発経過観察中である。直腸 NET では腫瘍径が 1 cm 以上であった場合,直腸切除術を要し,肛門機能の低下が懸念される。一方,本症例のように直腸粘膜下腫瘍では,生検にて確定診断に至らない場合も多く外科的切除が過大侵襲となり得る。直腸粘膜下腫瘍で切除前診断が困難な場合には,診断的治療として局所切除を行う意義があると考えられる。
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癌と化学療法 49巻13号, 1796-1798 (2022);
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症例は 84 歳,女性。1 か月ほど前からの食欲不振のため,精査目的の CT で上行結腸腫瘍,多発肝腫瘍,下部消化管内視鏡検査では上行結腸に狭窄を伴う全周性の不整腫瘤を認め,閉塞性大腸癌・多発肝転移と診断した。大腸ステントはアプローチが困難と判断された。人工肛門造設術を検討したが,切除吻合を希望したため腹腔鏡下結腸右半切除術を施行した。術中所見で肝臓両葉に及ぶ,びまん性の転移を認めた。術後病理診断にて tub2 相当の異型腺管および CD56(+),chromogranin(weak+)示す部位を認め,MANEC と診断した。術後 3 日目より経口摂取を開始したが,徐々に肝不全が進行した。薬物療法を行ったが肝不全は増悪し,best supportive care の方針となり術後 16 日に死亡した。今回,予後不良であった MANEC を経験したため文献的考察を含め報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1799-1801 (2022);
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症例は 52 歳,女性。健診で便潜血検査陽性のため近医を受診した。大腸内視鏡検査で S 状結腸癌を認めたため,手術目的に当院に紹介受診となった。術前 CT 検査で偶発的に十二指腸水平脚の尾側に 54 mm 大の境界明瞭な分葉状の腫瘍を認めた。腫瘍は十二指腸や横行結腸との連続性は認めなかった。MRI 検査で腫瘍は T1 強調画像で低信号,T2 強調画像で高信号,拡散強調画像で高信号を呈し,ADC は低値を示した。術前,S 状結腸癌および横行結腸間膜腫瘍と診断し,腹腔鏡下S 状結腸切除術および横行結腸間膜腫瘍摘出術を施行した。病理組織学的診断結果,S 状結腸癌[S,2 型,30×30 mm,1/2周,中分化型腺癌,pT3(SS),INF b,Ly1a,V1a,pN1b(#252: 2/4),sM0,fStage Ⅲb]および横行結腸間膜原発 solitary fibrous tumor と診断した。術後補助化学療法として XELOX 療法を施行し,術後 11 か月現在,無再発生存中である。
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癌と化学療法 49巻13号, 1802-1804 (2022);
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症例は 68 歳,男性。嚥下時の背部痛を主訴に当院へ紹介された。上部消化管内視鏡検査にて下部食道から噴門にかけて 3 型腫瘍を認め,生検にて扁平上皮癌が検出された。造影 CT 検査にて胸部下部食道の壁肥厚,左噴門リンパ節の腫大,肝 S8 に低吸収域を認め,PET‒CT 検査でも肝 S8 に異常集積があり,Stage Ⅳb の食道癌と診断された。cisplatin+5‒FU 併用療法を導入後,原発巣・リンパ節・肝転移巣はいずれも縮小し,9 コース施行後の PET‒CT 検査にて肝転移巣は指摘できなかったため,根治的化学放射線療法を行う方針となった。化学放射線療法を終了後は無治療で経過観察中であるが,初回治療から 3 年経過した現在も再燃なく,寛解状態を維持している。
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癌と化学療法 49巻13号, 1805-1807 (2022);
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症例は 71 歳,男性。2020 年 2 月,S 状結腸癌に対して腹腔鏡下 S 状結腸切除術が施行され,pStage Ⅰ(pT1bN0M0)であった。術後 1 年 6 か月の腹部 CT 検査で吻合部近傍に約 30 mm 大の造影効果のある軟部腫瘍を指摘された。MRI ではDWI 高信号を呈する腫瘍性病変として描出され,PET では FDG の異常集積を認めたため S 状結腸癌の局所再発と診断し,腹腔鏡下で腫瘍を含む結腸小腸部分切除を施行した。病理組織学的診断では HE 染色で腺癌組織を認めず,膠原線維を伴った紡錘形細胞の増生を認め,免疫染色ではβ‒catenin(+),c‒kit(-),CD34(-),α‒SMA(-),DOG‒1(-)であったため,デスモイド腫瘍と診断した。S 状結腸癌術後の孤立性デスモイド腫瘍に対して腹腔鏡下で根治切除を施行した 1 例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1808-1810 (2022);
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症例は 83 歳,女性。前医の CT で肝 S4 に 20 mm 大の腫瘤を指摘されたが,精査の希望がなく経過観察の方針となった。初診から 1 年 3 か月後の CT で肝腫瘤は 36 mm と増大を認め,手術目的に当科紹介となった。下部消化管内視鏡検査で,S 状結腸に 1/4 周性の 1 型腫瘤を認め,生検で adenocarcinoma の診断であった。CT で肝腫瘤は最大径 36 mm の単発腫瘍であり S4 末梢に存在し動脈相で辺縁を中心に不均一な造影効果を認め,平衡相で造影効果が遷延していた。一期的に腹腔鏡下 S 状結腸切除術,肝 S4 部分切除を施行した。病理結果では S 状結腸癌の主体は高分化腺癌で,肝腫瘤は中分化腺癌であった。肝腫瘤は免疫組織学的に CK7 陽性,CK20 陰性であったことから肝内胆管癌の診断であった。
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癌と化学療法 49巻13号, 1811-1813 (2022);
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症例は 79 歳,男性。便秘を主訴に当院を受診し,下部消化管内視鏡検査にて横行結腸癌と診断された。腹部造影 CTにて,右腎に腫瘍性病変を認め,肝に早期濃染および後期 wash out を呈する 2 個の腫瘍性病変を認めた。EOB‒MRI では肝病変は ring enhancement を呈した。横行結腸癌,腎細胞癌,肝細胞癌もしくは転移性肝癌の術前診断で,横行結腸部分切除術,右腎部分切除術,肝部分切除術を施行した。術中超音波検査で,術前に指摘されていた S6 の肝病変 2 個以外に S5 にも 1 個腫瘍を認めたため,3 個の肝部分切除術を施行した。術後病理組織学的検査で,肝 S5 の腫瘍は横行結腸癌の肝転移,肝 S6 の腫瘍は腎細胞癌の肝転移と診断された。最終診断は横行結腸癌,pT4a,pN0,pM1,pStage Ⅳa,乳頭状腎細胞癌,pT1a,pN0,pM1,pStage Ⅳとなった。術後 9 か月の現在,明らかな再発は認めていない。
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癌と化学療法 49巻13号, 1814-1816 (2022);
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症例は 57 歳,男性。近医で膵体部癌と診断され,当科紹介となった。CA19-9 は 1,765.0 U/mL と高値であった。CT・EOB-MRI で肝 S4 と肝 S8 に転移病巣を認めた。切除不能膵癌(T3N0M1,cStage Ⅳ)と診断し,gemcitabine(GEM)+nab-paclitaxel(nab-PTX)療法を行った。画像上,主病変と肝 S4 の病変は消失し,肝 S8 の病変は囊胞変性を認めた。CA19-9 は 113 U/mL まで改善した。CA19-9 の正常化を待ってから手術する方針とし 10 コース行ったが正常化せず,FOL FIRINOX 療法 6 コースと GEM+nab-PTX 療法 4 コースを追加したが正常化しなかった。画像上根治切除可能と判断し,手術とした。術中,肝 S8 に囊胞変性病変と横行結腸間膜に腹膜播種を認めた。腹水細胞診が陰性のため,腹膜播種は限局していると判断した。膵体尾部脾臓合併切除術(D2)+肝S8部分切除術+腹膜播種切除術を行った。術後52日目からGEM+nab-PTX を再開した。手術から 3 年の現在,再発なく,CA19-9 24.6 U/mL と正常化した。今回,集学的治療が奏効し長期生存が得られた膵体部癌の 1 例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1817-1819 (2022);
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症例は 71 歳,男性。進行食道癌に対して術前化学療法としてドセタキセル+5‒FU+シスプラチン療法を開始した。2 コース目の抗癌剤投与終了後にペグフィルグラスチムを投与した。3 コース目開始時に白血球増多と CRP 上昇を認めた。精査目的の造影 CT 検査で大動脈弓部の壁肥厚を認め,ペグフィルグラスチムによる大動脈炎と診断した。保存的治療で炎症所見は改善し,造影 CT 検査で大動脈弓部の壁肥厚の改善を認めた。手術は胸腔鏡下食道切除,3 領域リンパ節郭清,胸骨後経路胃管再建を施行した。大動脈弓部付近の炎症による影響はなく,剝離は容易に可能であった。ペグフィルグラスチム投与後に原因不明の炎症反応の上昇を認めた場合には,薬剤誘発性血管炎も鑑別にあげるべきである。
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癌と化学療法 49巻13号, 1820-1822 (2022);
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症例は 46 歳,男性。健診で胃角部後壁に 20 mm 大の粘膜下腫瘍を指摘された。超音波内視鏡検査では,第 4 層由来で内部不均一な低エコー腫瘤を認め,生検では確定診断に至らなかった。造影 CT 検査では同腫瘍は造影効果増強を受け,リンパ節や遠隔臓器に転移を認めなかった。GIST 疑いとして手術適応となったが,残胃狭窄を考慮し,ロボット支援下幽門側胃切除術の方針とした。術中所見で残胃の通過に問題なく,局所切除術を施行した。術後経過は良好で 9 日目に退院となった。病理組織学的検査所見では顆粒細胞腫と診断された。また,手術支援ロボットにより胃局所切除にも安全,柔軟に対応できたと考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1823-1825 (2022);
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症例は 50 歳台,男性。好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis: EGPA)に対してステロイド加療されていた。悪性腫瘍検索にて,横行結腸近位に type 0-Ⅰsp 病変(cT1aN0M0),中央に type 2 病変(cT2N0M0)を認め,当科紹介となった。近位病変は内視鏡的切除を先行し,治癒切除後に中央病変に対して腹腔鏡下結腸部分切除(横行結腸)ならびに D3 リンパ節郭清を施行した。術後経過は良好で POD17 に軽快退院となった。ステロイドや免疫抑制剤の使用により免疫学的異常を来し悪性腫瘍が出現する可能性があり,厳重な経過観察が必要である。
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癌と化学療法 49巻13号, 1826-1828 (2022);
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症例は 43 歳,女性。腹部膨満感および無月経で近医を受診した。腹腔内腫瘍の診断で当院に紹介となった。腹部全体に腫瘍を触知した。腹部 CT では,膵臓と広く接した長径 27 cm の囊胞性病変を認めた。膵由来の囊胞性腫瘍や後腹膜腫瘍などを疑い,開腹手術を施行した。腹腔内に胎児大の腫瘤を膵下縁から下腹部にかけて認めた。被膜を損傷することなく腫瘍を摘出した。病理学的診断の結果,間質は卵巣様間質で構成され,膵由来の mucinous cystadenocarcinoma と診断した。術後補助療法として gemcitabine(GEM)療法を 3 コース施行し,術後 7 か月現在,無再発で経過している。
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癌と化学療法 49巻13号, 1829-1831 (2022);
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症例は 72 歳,男性。膵神経内分泌腫瘍に対する亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,D2 郭清後の経過フォロー中,腹部CT で門脈本幹背側に経時的に増大する結節を指摘され,FDG-PET/CT で同部位に集積亢進を認めた。画像所見から膵神経内分泌腫瘍のリンパ節再発を疑い,開腹腫瘍摘出術を施行した。術後病理組織診断は外傷性神経腫で,神経構成成分の過形成からなり,悪性所見はなかった。外傷性神経腫は腹腔内ではまれだが,胆管周囲に多く発生するとされている。その理由として,肝外胆管には支配神経が豊富に存在し,胆管手術においてこれらを切断することが多いためだと考えられている。検索したところ胆囊摘出術後などの発生報告はあるが,膵頭十二指腸切除術後の症例は報告がなかった。今回,膵神経内分泌腫瘍再発との鑑別が困難な膵頭十二指腸切除術後に外傷性神経腫を発生した 1 例を経験し,胆管周囲術後の神経に沿った腫瘤は外傷性神経腫も鑑別にあげるべきだと考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1832-1834 (2022);
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症例は 50 歳台,女性。心窩部痛を主訴に前医を受診し,胃癌の診断にて当院紹介となった。上部消化管内視鏡検査にて胃体下部大弯に 3 型腫瘍を認めたが,CT 検査ではリンパ節転移,遠隔転移を認めなかった。また,骨盤内に 10 cm の腫瘤を認め婦人科腫瘍が疑われた。腹腔鏡にて手術を施行し,骨盤内腫瘍は左卵巣由来であることが判明したため,左卵巣摘出を行った上で腹腔鏡下胃全摘術,D2 郭清,Roux-en-Y 再建を施行した。病理学的検査にて胃癌の卵巣転移と診断された。R0 切除となったため術後補助化学療法を導入したが,有害事象が強く S-1 単剤で継続となった。術後 4 か月に右卵巣腫大を認め,右卵巣転移が疑われたため腹腔鏡下右付属器切除を施行し,同様に卵巣転移の診断となった。初回手術から 14 か月現在,再発・転移なく経過している。
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癌と化学療法 49巻13号, 1835-1837 (2022);
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腹腔鏡下肝切除術は近年急速に普及したが,転移性肝腫瘍に対する腹腔鏡下肝切除術の安全性や治療成績の報告はまだ少ない。2010~2021 年までに当院外科で大腸癌肝転移に対する腹腔鏡下肝切除術を施行した 174 例を検討した。手術時間384.5 分,出血量は少量,術後在院日数の中央値は 8 日であった。後出血 1 例,胆汁漏 7 例,SSI を 16 例に認めたが,手術関連死亡例は認めなかった。3 年無再発生存率 22.8%,5 年全生存率は 53.3% であった。単発切除/複数切除の比較では,手術時間,出血量は増加したが,術後在院日数に差を認めなかった。初回肝切除/再肝切除では,手術成績に差を認めなかった。原発巣と同時切除/異時切除では,手術時間,出血量に差は認めないものの,腹腔内膿瘍や SSI が増加し,術後在院日数が延長した。大腸癌肝転移に対する腹腔鏡下肝切除術は,複数箇所でも複数回切除でも安全に施行可能で良好な治療成績を得られており,有効な治療法であると考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1838-1840 (2022);
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2011 年 1 月~2021 年 12 月までに大腸癌以外の悪性腫瘍を原発とする肝転移切除症例は 16 例(19 切除)であった。16 例の原発巣は,胃癌 7 例,GIST 2 例,神経内分泌腫瘍,腎癌,膵癌(腺房細胞癌),胆管癌,乳癌,卵巣癌,平滑筋肉腫が各 1 例であった。原発巣切除から肝転移診断までの期間の中央値は 20.6 か月であった。原発巣が神経内分泌腫瘍および腎癌の症例では,肝細胞癌との術前診断で肝切除が行われていた。4 例で腹腔鏡下肝切除を,10 例で系統的肝切除を行った。術後化学療法は 8 例で行われた。肝転移再発は 7 例で認め,胃癌の 1 例および神経内分泌腫瘍の 1 例では再肝切除を施行した。無再発生存期間の中央値は 13.8 か月,全生存期間の中央値は 55.7 か月であった。
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癌と化学療法 49巻13号, 1841-1843 (2022);
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症例は 79 歳,男性。労作時息切れを主訴に前医を受診した。CT で右胸水貯留,腹水貯留を認め,胸水細胞診で腺癌を認めた。上部消化管内視鏡検査で幽門狭窄を伴う胃前庭部腫瘍を認め,同部位からの生検にて Group 5(tub2)と判明した。幽門狭窄,腹膜・胸膜播種を伴う切除不能進行胃癌と診断した。化学療法を施行する方針となり,幽門部狭窄に対し消化管ステントを留置した後に SOX 療法を開始した。ステント留置から 3 か月後,化学療法効果判定目的の CT にてステント内狭窄および口側ステントの一部破損,胃内への脱落を認めた。腹痛などの症状はなく,待機的に脱落ステントの回収を行う方針とした。内視鏡的に脱落ステントを回収し,stent in stent で追加留置した。以降通過障害なく,現在も化学療法を継続中である。切除不能進行胃癌の化学療法中の消化管ステント破損はまれな偶発症であり,文献的考察を含め報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1844-1846 (2022);
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症例は 83 歳,男性。黒色便,体重減少を主訴に当院を受診した。上部消化管内視鏡検査で幽門狭窄を伴う 3 型病変を認めた。術中に腹膜播種結節を多数認め,胃空腸バイパス術を施行した。POD4 より食事を開始したが,POD6 に突如嚥下障害を発症した。MRI,MRA 検査で異常所見を認めず,経鼻内視鏡検査で器質的病変は認めなかった。神経筋疾患,膠原病関連の各種抗体検査も陰性であった。嚥下リハビリで改善を認めず,POD16 に高カロリー輸液を開始した。開始前の血清P 値が 1.4 mg/dL と低値であり,補正を開始した。血清 P 値の改善とともに急激に嚥下機能は回復し,1 週間後に全粥が摂取可能となった。尿中 P 排泄,血清 Ca 値,血清 PTH 値に異常所見を認めず,経口摂取不足に伴う低 P 血症と診断した。低 P 血症が原因と考えられる胃癌・腹膜播種術後の嚥下障害を経験した。
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癌と化学療法 49巻13号, 1847-1849 (2022);
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症例は 60 歳,男性。心窩部痛の精査目的で前医を受診した。上部消化管内視鏡検査で進行胃癌と診断され,当院紹介となった。当院での内視鏡検査では胃体中部大弯後壁に 3 型腫瘍を認め,病理組織検査で高分化型腺癌(tub1)であり,CT検査では胃体中部に造影効果を伴う壁肥厚を認めた。初回手術にて洗浄細胞診は陰性(CY0)であったが,ダグラス窩,腸間膜,大網に白色結節を認め,病理検査では腺癌(P1c)であったため試験開腹のみとした。cT4aN0M1P1cCY0,Stage ⅣB と診断し,S‒1+CDDP 療法を開始した。4 コース施行し原発巣の縮小を認め,審査腹腔鏡でも洗浄細胞診と大網,ダグラス窩の瘢痕結節から悪性所見を認めなかった(P0CY0)。そのため根治切除可能と判断し,胃全摘術,Roux‒en‒Y 再建,胆囊摘出術を行った。病理組織検査は 3 型 tub1,ypT1bN0M0, pStage ⅠA,組織学的治療効果判定は Grade 1b であった。術後補助化学療法として S‒1 療法を 2 年間行い,その後再発を認めなかったため化学療法を終了し,以降 10 年間再発を認めていない。
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癌と化学療法 49巻13号, 1850-1852 (2022);
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症例は 21 歳,女性。血便を主訴に近医を受診し,上部消化管内視鏡検査で胃角部後壁および前壁に粘膜下腫瘍を認めたため,当科紹介となった。EUS-FNA でいずれも胃 gastrointestinal stromal tumor(GIST)の診断となり,腹腔鏡下幽門側胃切除術(D1 リンパ節郭清)を施行した。病理所見ではそれぞれ 47 mm,15 mm 大で,多発リンパ節転移を認めた。KITおよび PDGFRA 遺伝子変異は認めなかった。術後 3 年間イマチニブ内服による補助化学療法を行い,無再発生存中である。若年の GIST はまれで,腫瘍学的にも通常の GIST と特徴が異なるとされ,文献的な考察とともに報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1853-1855 (2022);
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症例は 67 歳,女性。腹部膨満で前医を受診し,腹部腫瘤を指摘され当院産婦人科に紹介となった。CT・MRI 検査で網囊内から骨盤内にかけて直径約 30 cm の多房性囊胞性巨大腫瘍を認め,血清 CA125 の高値を認めた。診断,腫瘍摘出目的に消化器外科,産婦人科合同で試験開腹術を施行した。術中子宮,卵巣に癒着は認めず,胃大弯と連続した境界明瞭な腫瘍を認め,横行結腸間膜にも一部癒着を認めたため合併切除した。病理組織学的には c‒kit 陽性で,modified‒Fletcher 分類で高リスクの胃 GIST と診断された。囊胞性 GIST は比較的まれであることに加え Pseudo‒Meigs 症候群と同様の機序によると思われる CA125 の上昇を認めた極めて特異な病態であったため術前診断に難渋した。
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癌と化学療法 49巻13号, 1856-1858 (2022);
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症例は 80 歳,女性。食後呑酸の精査目的に上部消化管内視鏡検査,CT 検査を施行し,胃体中部小弯に 25 mm 大の胃粘膜下腫瘍を指摘された。EUS‒FNA を実施したところ病理検査にて GIST の診断となり,手術加療の方針となった。combination of laparoscopic and endoscopic approaches to neoplasia with non‒exposure technique(CLEAN‒NET)を臍部 2.5 cm の単孔式手技で開始した。術中に上部消化管内視鏡により胃内から腫瘍を同定し,胃切離予定部分を内視鏡で粘膜側,腹腔鏡で漿膜側から確認した。腹腔側から電気メスで漿膜筋層切開を行い,高張生理食塩水を局所注射して粘膜下層を膨隆させ,自動縫合器で胃部分切除を行い,被膜損傷のないように回収した。手術時間 61 分,出血量は少量,術後合併症なく,術後 6 日目で退院した。病理結果は 16×14 mm,c‒kit(+),CD34(+),GIST の診断であった。modified‒Fletcher分類は very low risk であった。現在術後 5 か月,無再発経過観察中である。
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癌と化学療法 49巻13号, 1859-1861 (2022);
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症例は 39 歳,女性。下腹部痛と倦怠感を主訴に当科を受診した。血液検査で Hb 2.5 g/dL の貧血と CT 検査で腹壁に穿通する胃腫瘍と free air を認めたため,緊急手術で幽門側胃切除術を施行した。病理学的所見は tub2>por2,pT4b(腹壁),pN0,pM1(大網),pStage ⅣB であった。術後は S‒1 単剤での薬物療法を開始した。術後 2 年の CT 検査で腹膜播種,肝転移を認めたため,XELOX 療法に変更した。3 コース施行後の効果判定が progressive disease(PD)であり,PTX+RAM 療法に変更するも 5 コース施行後の効果判定も PD であった。そのため術後 2 年 8 か月から nivolumab の投与を開始した。nivolumab の投与前には肝 S8 の転移巣は 29 mm 大,腹膜播種結節は 75 mm 大であったが 74 コース施行後の CT 検査でいずれも不明瞭化した。現在までに nivolumab 78 コースを施行し 4 年 4 か月が経過しているが,有害事象なく奏効を維持している。
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癌と化学療法 49巻13号, 1862-1864 (2022);
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症例は 79 歳,男性。心窩部不快感,食欲低下を主訴に近医を受診し,上部消化管内視鏡で胃体下部大弯に 1 型進行胃癌を認めた。造影 CT で胃下壁からトライツ靱帯に及ぶ造影増強を伴う 7 cm 大の腫瘤を認めたが,他に遠隔転移を認めなかった。進行胃癌とリンパ節転移,腹膜播種または胃 GIST の診断で審査腹腔鏡を施行した。腫瘤は横行結腸に約 3 cm 接していたが腫瘍の可動性は良好であり,腹膜播種を認めず,切除可能と判断し手術方針となった。胃全摘および横行結腸部分切除を施行し,病理検査では pT3N1 で胃大弯の腫瘤は胃癌による #4sa リンパ節転移であった。現在,術後 12 か月が経過し,再発を認めず生存中である。本症例について多少の文献的考察を加えて考察する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1865-1866 (2022);
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胃癌からの孤立性脾転移は極めてまれであり,異時性孤立性転移に関しては切除により長期生存も散見される。今回われわれは,胃癌異時性孤立性脾転移の 1 切除例を経験したため報告する。症例は 77 歳,男性。胃体中部大弯側の 2 型進行胃癌に対し,2018 年 10 月に幽門側胃切除術を施行した。病理学的進行度は pT3N2M0,pStage ⅢA で,術後補助化学療法に S‒1 を 1 年間投与した。術後 2 年の腹部造影 CT 検査で脾臓上極に 10 mm 大の腫瘤を指摘,6 か月後に 25 mm 大と増大し,脾転移再発と診断した。PET‒CT 検査にて他部位に異常集積を認めず,異時性孤立性脾転移と診断し,2021 年 6 月に脾臓摘出術を施行した。病理組織学的検査でも胃癌の転移と診断されたため S‒1 内服を再開し,現在再手術後 1 年であるが,無再発生存中である。
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癌と化学療法 49巻13号, 1867-1869 (2022);
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症例は 78 歳,男性。胃上部癌に対して前医で腹腔鏡下胃全摘術を施行された(U,Gre,pT3N0,pStage ⅡB)。術後 2 年 6 か月で脾門部に腫瘤を認め,脾門部リンパ節転移または播種の疑いで SOX を 2 コース施行したが,増大傾向を認めた。他に病変を認めないため手術の方針となった。ロボット支援下膵尾部脾臓切除術を施行した(手術時間 384 分,出血量 22 mL)。経過良好で術後 12 日目に退院となった。病理検査では胃癌膵転移の診断であった。退院後に SOX を計 3 コース施行したが,再手術後 2 か月で傍大動脈リンパ節転移と肝転移を認めたため second-line として ramucirumab+weekly paclitaxel を計 16 コース施行し,再手術から 11 か月後の時点で再発巣は縮小を維持している。ロボット支援手術は腹腔鏡手術や開腹手術と比較して合併症が少ないという報告もあり,胃癌術後の孤発性転移の症例でもスムーズな周術期化学療法との連携に適していると考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1870-1872 (2022);
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はじめに: 膀胱癌に対して膀胱摘出術,回腸導管法にて尿路再建後の S 状結腸癌に対して腹腔鏡補助下 S 状結腸切除術を施行した症例を経験したため報告する。症例: 患者は 70 歳台,男性。嘔気,食思不振を主訴に当院消化器内科を受診し,S 状結腸癌に伴う腸閉塞と診断した。膀胱癌に対して,膀胱・前立腺摘出術,回腸導管造設術を施行された既往があった。術中に S 状結腸間膜背側を通した左尿管を同定するため術前に尿管ステント留置を検討したが,以前に腎盂腎炎を来した際の精査で導管狭窄を認めていたためステント留置は困難と判断した。第 21 病日に腹腔鏡補助下 S 状結腸切除術を施行した。術中尿管損傷など,特に問題なく手術を終了した。術後 23 日目に自宅退院となった。術後 10 か月の現在,無再発生存中である。まとめ: 膀胱癌などに対して尿路変更術後に結腸癌手術を行う場合,回腸導管や尿管の温存のため慎重な手術操作により腹腔鏡下手術も安全に施行可能であった。
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癌と化学療法 49巻13号, 1873-1875 (2022);
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横行結腸癌手術は比較的頻度が低く,血管走行が多彩な上に結腸曲の授動操作を伴うことが多く,難易度が高いとされる。2014 年 1 月~2021 年 12 月までに当施設で施行した横行結腸癌手術 51 例を対象とし,臨床的特徴および手術成績を検討するとともに,腹腔鏡下手術における至適アプローチ方法を検討した。術式は結腸右半切除 24 例(47.1%),横行結腸切除 22 例(43.1%),左半切除 5 例(9.8%)で,そのうち腹腔鏡下手術は 37 例(72.5%)であった。腹腔鏡下手術症例において頭側アプローチ先行群 21 例(56.8%)と尾側アプローチ群 16 例(43.2%)で比較検討すると,手術時間は両群間でほぼ同等で,頭側アプローチ先行群において出血量は少なく,MCA 領域リンパ節郭清個数は多い傾向にあった。術後合併症は頭側アプローチ先行群で軽微で,在院日数は短い傾向にあった。腹腔鏡下手術において頭側アプローチ先行術式がより安全で手術精度が高い傾向が示唆された。
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癌と化学療法 49巻13号, 1876-1878 (2022);
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症例は 56 歳,男性。肛門腫瘍を主訴に当科紹介となった。肛門縁~左陰囊裏に腫瘍を認め,下部消化管内視鏡検査では直腸,肛門管内に腫瘍は認めなかった。生検で粘液産生性の印環細胞癌の診断で,免疫染色にて CK7-,CK20+,CDX2+,GCDFP‒15-であり,肛門管癌の診断となった。CT および MRI 検査では腫瘍の球海綿体筋への浸潤が疑われ,腹腔鏡下直腸切断術,球海綿体筋合併切除,V‒Y 前進皮弁による会陰再建を施行した。術後は皮弁に軽度の蜂窩織炎を認めたが大きな合併症はなく,術後 23 日目に退院となった。病理組織検査では pT3N0M0,pStage ⅡB の診断で,術後補助化学療法として CAPOX 療法を施行し,術後 12 か月無再発生存中である。肛門管粘膜に病変を認めない肛門管癌はまれであるが,その診断には免疫染色が有用であった。また,巨大な肛門腫瘍に対する会陰再建は有用と考えられる。
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癌と化学療法 49巻13号, 1879-1881 (2022);
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症例は 49 歳,女性。上行結腸癌,肝転移に対して腹腔鏡下結腸右半切除術を施行した。その後,腹腔鏡下肝切除術を施行した。術後補助化学療法として BEV+mFOLFOX6 療法を行ったが,残肝再発を認めたため FOLFOXIRI 療法を行った。腫瘍は増大傾向であったが限局しており,再度腹腔鏡下肝切除術を施行した。術後 AFL+FOLFIRI 療法を行ったが,14 か月後に腹膜播種と両肺転移を認めた。播種結節は右腎下極,右下腹部,S 状結腸付近と限局しており,肺転移も右中葉2 個,上葉 1 個,下葉 1 個,左下葉に 1 個の転移で限局していたため腹膜播種と肺転移ともに切除可能と判断し,播種結節摘出術,S 状結腸切除術を行った。後に肺切除術を行い R0 切除が得られた。大腸癌の同時性・異時性転移に対して,耐術可能で R0 切除と集学的治療を行うことで生存期間の延長に寄与することができる。
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癌と化学療法 49巻13号, 1882-1884 (2022);
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capecitabine 単剤での化学療法で長期生存を得られた Stage Ⅳ大腸癌の 2 例を経験したので報告する。症例 1 は 71歳,男性。S 状結腸癌に対して開腹 S 状結腸切除術,D2 郭清を施行した。病理診断は pT4aN2aM0,pStage Ⅲc であり,術後補助化学療法で capecitabine+oxaliplatin(CAPOX)を 6 か月間施行した。しかし術後 2 年で腹膜播種再発を認めたため,CAPOX+bevacizumab(BEV)を開始した。腎機能低下,尿蛋白出現を認めたため,capecitabine 単剤を継続とした。以降,再発所見なく,腹膜播種再発から 60 か月経過している。症例 2 は 76 歳,女性。上行結腸癌,多発肺転移に対してCAPOX+BEV を開始した。Grade 2 の下肢の痺れと下痢を認めたため,患者の希望により化学療法を中止した。化学療法中止から 7 か月後,原発巣の増大に伴う腸閉塞を認め,症状緩和目的に開腹結腸右半切除術,D3 郭清を施行した。病理診断は pT3N1bM1a,pStage Ⅳa であった。術後化学療法は,本人の希望で capecitabine 単剤を施行した。肺転移の進行を認めるも全身状態は良好で,capecitabine 単剤での治療開始から 72 か月経過している。
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癌と化学療法 49巻13号, 1885-1887 (2022);
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症例は 58 歳,女性。肝転移・肺転移・骨転移を伴った左乳癌,cT4b,cN3c,cM1,cStage Ⅳ,ER(-),PgR(-),Her2(+),MIB-1 index 44.5% と診断した。初診から 7 日後に呼吸苦を主訴に受診し,胸部 X 線検査・胸部 CT 検査・心エコー検査にて初診時の胸部 CT 検査では認めていなかった多量の心囊液貯留により EF が 50.6% に低下しており,心タンポナーデと診断した。同日緊急で心囊ドレナージを施行し,心囊液の細胞診の結果は悪性であり,癌性心膜炎と診断した。心囊ドレナージにより呼吸苦は軽快し,心エコー検査においても心囊液の消失と EF は 80.4% に改善を認めたため,心囊ドレナージから 10 日後に一次治療として docetaxel+trastuzumab+pertuzumab 療法を開始した。化学療法を開始後,奏効継続しており 6 か月間心囊液の再貯留なく経過している。
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癌と化学療法 49巻13号, 1888-1890 (2022);
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症例は 61 歳,女性。左乳房 CD 領域の石灰化を指摘された。既往に 37 歳時に子宮内膜症で子宮全摘・両側卵巣摘除を施行した。50歳台からめまいで耳鼻科に通院中であった。血液検査所見では異常は認められなかった。左乳癌(cT1N0M0,stage Ⅰ)と診断し,左乳房切除術とセンチネルリンパ節生検を施行した。術後から嘔気あり。術後 37 時間に意思疎通困難あり,せん妄を疑った。術後 43 時間に強直間代性痙攣が出現した。血清 Na 値は 114 mEq/L と低 Na 血症であった。Na 補正し痙攣後 8 時間(Na 121 mEq/L)には意志疎通が可能となった。乳癌術後で低 Na 血症による強直間代性痙攣を来した例は極めてまれである。乳癌術後 31 時間後の異常行動も極めてまれである。通常と異なる事象が生じた場合,特殊なことが起きている可能性を考える必要がある。本症例により医療安全上,乳癌術後の管理,救急対応や整備,看護師教育の見直しを行うことができた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1891-1892 (2022);
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症例は 90 歳台,女性。右腎細胞癌に対し根治的右腎摘除術を施行して 2 年 6 か月,再発なく経過していた。術後フォロー CT で右乳房内に 3 cm 大の腫瘤を指摘され,当科紹介となった。乳房超音波検査で,右 D‒7 時方向に 27 mm 大の境界明瞭でほぼ平滑な楕円形腫瘤を認めた。針生検の結果は,metastatic renal cell carcinoma,clear cell carcinoma であった。術前検査で腎細胞癌の乳房内転移と診断し,その他全身への転移性病変を認めなかったため右乳房部分切除術を施行した。腎細胞癌の転移は予後不良とされており,一般的には薬物療法が基本である。しかし今回のように,オリゴメタスタシスの状態にあり,転移巣の完全切除が可能であれば予後の改善・根治が期待でき,外科的切除が選択される。本症例では局所麻酔下に乳房部分切除術を施行し,比較的低侵襲な手術で根治をめざすことができた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1893-1895 (2022);
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症例は 79 歳,男性。食道胃接合部癌に対しロボット支援下噴門側胃切除術+下部食道切除術+食道残胃吻合術(mSOFY 法)が施行されていた。病理診断は pT4aN1M0,pStage ⅢA であった。術後 9 か月目に腹痛,嘔吐にて救急搬送され,造影 CT 検査で左横隔膜上に造影効果の不良な小腸を認め,小腸絞扼を伴う横隔膜ヘルニアと診断し緊急手術を実施した。開腹下に観察したところ,食道裂孔腹側に 2 横指のヘルニア門を認め,同部から 50 cm にわたり空腸が嵌頓し壊死を認めた。空腸部分切除術を施行し,また開大した食道裂孔を残胃と3‒0吸収糸で縫合し閉鎖した。術後経過良好で退院となったが,同手術より 1 か月後に再度腹痛にて救急搬送され,造影 CT で前回同様の所見を認め緊急手術を実施した。前回手術での食道裂孔の縫合糸が 1 針外れ,2 横指のヘルニア門が形成され 100 cm 空腸の嵌頓を認めた。腸管壊死には至っておらず,嵌頓解除と開大した食道裂孔ヘルニアを残胃と 3‒0 非吸収糸で縫合し閉鎖した。まれに食道胃接合部癌の術後の晩期合併症として横隔膜ヘルニアを生じることがあり,文献的考察とともに報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1896-1998 (2022);
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背景: 腹膜播種を伴う進行胃癌は,化学療法や分子標的薬の導入により予後の改善はみられるものの,治療は依然として困難である。症例: 患者は 65 歳,男性。貧血精査の上部消化管内視鏡検査にて,胃前庭部後壁に 3 型進行胃癌を認めた。根治手術に臨んだ際に播種結節(P1c)を認め,切除不能進行胃癌と診断した。化学療法(SOX,PTX+RAM)を施行したところ,著明な腫瘍の縮小を認め審査腹腔鏡を施行した。腹膜播種の消失が確認できたため,conversion surgery として幽門側胃切除術(R0 手術)を施行した。術後補助化学療法を導入し,S‒1 を約 1 年 6 か月内服した。術後 1 年時の腹壁瘢痕ヘルニア手術の際に,腹腔内に播種再発がないことが確認できた。現在術後 4 年を経過し,無再発生存中である。
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癌と化学療法 49巻13号, 1899-1901 (2022);
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症例は 60 歳台,男性。心窩部痛のため近医を受診し,上部消化管内視鏡検査で幽門前庭部に全周性の 3 型進行胃癌を指摘され当科紹介となった。CT では幽門前庭部に全周性の壁肥厚を認め,壁外突出,十二指腸への浸潤が疑われた。また,小弯リンパ節の腫大を認めた。審査腹腔鏡を施行したところ横行結腸間膜および膵頭部へ浸潤していたため,切除不能と判断し胃空腸バイパス術を施行した。化学療法として S‒1+cisplatin 併用療法を開始したが,1 コース後に腫瘍の増大を認めたため,ramucirumab(RAM)+paclitaxel(PTX)併用療法に移行した。3 コース終了後,腫瘍の縮小を認め切除可能と判断し,開腹幽門側胃切除術(D2 リンパ節郭清)を施行した。組織学的効果判定は Grade 1a であり,根治切除し得た。術後は補助化学療法として RAM+PTX を継続し,15 か月無再発生存中である。
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癌と化学療法 49巻13号, 1902-1904 (2022);
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症例は 73 歳,男性。1 か月前からの食思不振と体重減少を主訴に当院を受診した。胃角部から幽門輪にかけて全周性の type 2 病変による幽門狭窄を認め,精査にて進行胃癌 cT3N+M0,stage Ⅲの診断で手術の方針となった。術中根治切除不能と判断し,胃空腸バイパス術を施行し,術後 SOX+trastuzumab 2 コース,S‒1 単剤 7 コース施行した。治療効果判定で PR と判断し,conversion surgery として幽門側胃切除術+D2 リンパ節郭清術を行い,術後 9 日目に退院となった。術後1 年,明らかな再発を認めていない。切除不能胃癌の予後は不良であるが,化学療法を行い,conversion surgery を施行することで長期予後が望める症例を経験した。
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癌と化学療法 49巻13号, 1905-1907 (2022);
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症例は 78 歳,男性。胸部大動脈瘤術後に肝腫瘍を指摘された。上部消化管内視鏡検査で体中部前壁に 2 型腫瘍を認め,低分化型腺癌と診断された。CT 検査では,多発肝転移を伴い,cT4aN0M1(HEP),cStage ⅣB と診断した。S‒1/oxaliplatin(SOX 療法)を開始し,原発,転移巣ともに縮小効果を認めた。しかし 9 コース後に原発巣が増大した。二次化学療法として ramucirumab/paclitaxel(RAM/PTX)に変更し 3 コース実施したところ,原発巣は縮小し多発肝転移巣は消失した。PET‒CT 検査では原発巣および周囲リンパ節,肝臓に FDG 異常集積はみられず,効果判定 PR と判断した。原発巣の治癒切除が可能と考え,conversion surgery を実施する方針とした。腹腔鏡下幽門側胃切除,D2 郭清,Billroth Ⅰ再建を施行した。病理結果は,M,Ant,type 2,por,ypT2N0M0,ypStage ⅠB,組織学的効果は Grade 0 であった。術後補助化学療法として PTX 単剤を実施し,術後 1 年後の再発はなく補助療法を終了した。術後 2 年の現在,再発なく経過している。
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癌と化学療法 49巻13号, 1908-1910 (2022);
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残胃全摘術は胃癌手術のなかでも難易度が高い手術である。当院ではこれまで開腹術で実施してきたが,近年は腹腔鏡手術に移行している。これまでの手術例から,腹腔鏡手術の安全性・有用性について検証を行った。2010 年以降に開腹もしくは腹腔鏡にて残胃全摘術を実施した 26 例を対象とし,手術成績を比較した。26 例中,初回手術が胃癌であったのが 19例,良性疾患が 7 例であった。残胃癌手術では 19 例に開腹手術,7 例に腹腔鏡手術が実施されていた。腹腔鏡群は手術時間が長く(開腹 274 分,腹腔鏡 402 分),出血量が少なく(434 mL,124 mL),郭清リンパ節数が多く(11 個,20 個),術後合併症(Clavien‒Dindo 分類 Grade 2 以上)の割合が少なく(42.1%,28.6%),術後在院日数も短かった(14 日,10 日)。全症例に術後死,在院死亡は認めなかった。以上から,残胃癌に腹腔鏡手術は安全に実施でき,かつ有用な術式であると考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1911-1913 (2022);
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食道癌術後再建胃管癌に対する手術加療は,特に後縦隔経路では胃管切除は高侵襲となり,症例によっては縮小手術も選択肢となる。われわれは,後縦隔経路再建胃管癌に対して胸腔鏡・内視鏡合同手術(thoracoscopic and endoscopic cooperative surgery: TECS)での局所切除を実施した 4 例を経験した。全例で胸部食道癌に対して胸腔鏡下食道亜全摘・後縦隔経路胃管再建後に胃管癌を認めた。1 例では内視鏡的粘膜下層剝離術を施行したが,深部断端陽性であった。他の症例は内視鏡切除適応外であった。患者背景を考慮して胃管温存の方針とし,TECS での局所切除を企図した。1 例は高度癒着のため,開胸移行した。1 例は胃管縫合閉鎖部が狭小化したため胃管を分節切除し,二期再建とした。全例で切除断端陰性を達成し,無再発生存中である。食道癌術後後縦隔経路再建胃管癌に対する TECS での胃管局所切除は,侵襲を抑えた外科的治療法として有用な可能性がある。
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癌と化学療法 49巻13号, 1914-1916 (2022);
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症例は 81 歳,男性。胃癌術前精査の腹部造影 CT で腹腔動脈閉塞および膵周囲動脈瘤(24 mm)を認め当院を受診された。血管造影検査では腹腔動脈起始部の高度狭窄を認め,前上膵十二指腸動脈に動脈瘤を認めたためコイル塞栓術を施行した。処置後 6 日目に腹腔鏡下幽門側胃切除術(D1+郭清,Billroth Ⅱ法再建)を予定した。動脈瘤塞栓部位周囲は強固な癒着を認めたが,定型どおりの血管処理および郭清を行うことができた。術中 ICG 蛍光法にて肝および残胃の血流が良好であることを確認し終了した。術後経過は良好で,術後 10 日目に退院した。術後 10 か月無再発で経過している。腹部内臓動脈瘤は破裂に伴うリスクが高く単独でも治療対象となるが,手術操作部に存在すると術中損傷や破裂のリスクが高まるため治療が必要である。本症例のような腹部領域の動脈瘤に対する術前血管評価および塞栓術は,術中術後のリスク低減の一助になると考えられた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1917-1919 (2022);
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症例は 78 歳,男性。尿管浸潤を伴う S 状結腸癌に対して腹腔鏡下 S 状結腸切除術,左尿管合併切除術,尿管膀胱新吻合術を施行した。病理組織検査結果は tub2,pT3N2aM0,pStage Ⅲb であったが,本人の希望により術後補助化学療法を施行せず経過観察の方針となった。術後 6 か月目に腹膜転移および肝 S6 に転移を認めた。高齢であり有害事象を考慮し,カペシタビン+ベバシズマブ療法を開始した。手足症候群の有害事象により休薬・減量を要したが治療継続が可能であり,21 コース施行後の CT で CR を得た。その後合計 24 コース後も CR を維持し,治療を中止した。現在 CR 後 5 年経過するが,無治療にて無再発生存中である。
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癌と化学療法 49巻13号, 1920-1922 (2022);
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症例は 71 歳,女性。軟便およびふらつきを主訴に当院を受診し S 状結腸癌との診断となり,腹腔鏡下 S 状結腸切除術,小腸部分切除術,膀胱部分切除術,開腹移行を施行した。術中,小腸間膜基部に転移を疑う腫大したリンパ節を認め,病理組織学的診断で切除した小腸近傍の小腸間膜リンパ節に転移を認めたことから,小腸間膜リンパ節の同時性転移で R2手術と判断した。術後 CAPOX+Bev 療法を施行し,経時的に L‒OHP,Bev 療法を中止し,clinical complete response(cCR)の判定を得,現在も capecitabine 単剤で化学療法を継続し,術後 2 年現在でも cCR を維持している。浸潤臓器への二次的リンパ節転移は比較的まれな病態であり,根治切除し得なかった病変に対して化学療法で cCR となったまれな症例を経験した。
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癌と化学療法 49巻13号, 1923-1925 (2022);
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症例は 76 歳,男性。肛門狭窄感を自覚するようになり,前医を受診した。歯状線から肛門周囲表皮に同心円状に広がる腫瘤を認め,直腸粘膜から肛門上皮に連続的に進展する腺癌がみられた。Pagetoid spread を伴う肛門管癌と診断され,当院へ紹介となった。周囲組織への浸潤はみられなかったが,左鼠径リンパ節転移を認めた。術前化学放射線療法(CRT)を1.8 Gy×25 Fr(計 45 Gy),S‒1 併用で施行し,原発巣の縮小と PET‒CT では左鼠径リンパ節の異常集積の消失を認めた。腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術,D3 郭清,左鼠径リンパ節摘出術を施行し,摘出標本では腫瘍細胞の消失を認め病理学的完全奏効を得た。今後の症例の蓄積が必要ではあるが,CRT が Pagetoid spread を伴う肛門管癌に有効である可能性が示唆された。
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癌と化学療法 49巻13号, 1926-1928 (2022);
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背景: 腹会陰式直腸切断術(APR)後の会陰部合併症(PWCs)の発生率は高い。直腸肛門部病変に対する APR 後のPWCs の発生率とリスク因子を検討した。対象・方法: 2011~2021 年まで当院で直腸肛門部病変に対し APR を施行した患者を対象とした。診療記録に基づき後方視的に Clavien-Dindo 分類 ≧Grade Ⅱの合併症について解析を行った。結果: 対象 81症例のうち PWCs は 24 例(29.6%)に認められ,PWCs 発生群ではクローン病併存割合(p=0.018),手術時間(p=0.040),出血量(p=0.011),広範会陰切除併施割合(p=0.003),皮弁形成併施割合(p=0.003)を有意に多く認めた。直腸癌初発症例 41 例の検討では PWCs を 9 例(22.0%)に認め,術前 prognostic nutritional index(PNI)<45(p=0.049),喫煙者の割合(p=0.034),飲酒習慣ありの割合(p=0.021)が有意に多い結果となった。結語: 当院における APR 後の PWCs の発生率とリスク因子の検討を行った。術前低栄養,喫煙,飲酒への介入が会陰部合併症の予防に寄与する可能性がある。
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癌と化学療法 49巻13号, 1929-1931 (2022);
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症例は 81 歳,男性。発熱,嘔吐,下痢を主訴に前医を受診した。CT で右側腹部に腫瘤を指摘され,入院加療の後,第 8 病日に当院へ転院となった。転院時,右側腹部に手拳大の腫瘤を触知したが圧痛はなく,血液検査では白血球数 10,700/μL,CRP 1.36 mg/dL と炎症反応の上昇は軽度であった。造影 CT では上行結腸に層構造を伴う径 8 cm 大の腫瘤を認め,腫瘤を先進部とする順行性の腸重積を呈していた。腸閉塞の所見はなく,また重積腸管壁の造影効果は良好であった。重積は前医の CT ですでに存在しており,また重症大動脈弁狭窄症を併発しており心精査が必要なことから待機的手術の方針とした。なお,待機中に施行した下部消化管内視鏡検査では上行結腸に 1 型腫瘍を認め,生検では高分化管状腺癌であった。スコープは口側に通過せず,内視鏡的整復は困難であった。第 19 病日(当科入院 12 日目)に結腸右半切除+D3 郭清を施行した。十二指腸下行脚壁が一部重積部に引き込まれていたため,十二指腸壁の部分切除を併施し,重積は解除せず標本を摘出した。9.5×5.7 cm の 1 型腫瘍で,病理組織学的には pT3,pN0,cM0,pStage Ⅱa(規約第 9 版)であった。術後経過は良好で術後 9 日目に軽快退院した。
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癌と化学療法 49巻13号, 1932-1934 (2022);
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症例は 54 歳,女性。滲出液や出血を伴う右乳房腫瘤を主訴に来院した。右乳房全体が癌性皮膚潰瘍を伴う可動性のない隆起性腫瘤を呈した。右乳癌,T4cN1M1(PUL,BRA,LYM),Stage Ⅳ,ER 陽性,HER2 陰性と診断し,輸血,脳転移への定位放射線照射,peg G-CSF を併用した全身化学療法を完遂した。腫瘍は著明に縮小し PR と判定,肺,縦隔リンパ節転移は消失,胸壁浸潤は改善した。術前に脳内新病変へ定位放射線照射を追加し,胸筋温存右乳房切除術+遊離分層植皮術を行った。術後病理組織学的結果,Ki-67 index は低下,ypN0,原発巣の組織学的治療効果は Grade 1b であった。術後は胸壁照射,内分泌治療を行い再燃なく経過している。積極的な放射線照射による脳転移の病勢コントロールと良好な治療強度の保持により,原発巣の切除が可能になったと推察された。
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癌と化学療法 49巻13号, 1935-1937 (2022);
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乳癌は他の固形癌に比べて晩期再発が多いとされる。当院では最近 5 年間に 10 年以上経過して再発した症例を 8 例経験した。全例がホルモン感受性陽性,HER2 陰性,Ki-67 は 7 例が 15% 以下,再発時年齢は 56~93(平均 74.6)歳であった。再発までの期間は 10~14 年が 6 例,20 年以上が 2 例(平均 14.6 年)であった。診断契機は,自覚症状 3 例,初回治療後フォロー中 3 例,他疾患検査 2 例。再発部位は腋窩 3 例,胸膜・肺 2 例,肝・肺 1 例,皮膚 1 例,胸壁 1 例であった。治療はアロマターゼ阻害薬(AI)5 例,AI+CDK4/6 阻害薬 3 例であった。再発後治療期間は 6~31(平均 21.6)か月で,PR 4 例,SD 3 例,他病死 1 例。腋窩再発例では神経障害性疼痛 1 例,上肢浮腫 1 例,局所疼痛 1 例を認めていたがいずれも改善した。胸水の 2 例は胸腔ドレナージを行わずに胸水は減少した。ホルモン受容体陽性晩期再発症例は,一般に治療感受性が高く長期生存が期待される。高齢の症例が多く,副作用や治療費なども考慮すると AI 単独の選択が妥当と思われる症例が多かった。
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癌と化学療法 49巻13号, 1938-1940 (2022);
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症例は 50 歳台,女性。左局所進行乳癌術後で,無再発生存期間 2 年 6 か月で多発骨転移を認め,QOL 増悪予防(職務継続)のため維持療法(放射線療法,デノスマブ投与,内分泌療法)を施行した。術後 3 年 3 か月後に両下肢の感覚異常および下肢麻痺が進行し,職務継続が困難となった。頸部造影 MRI にて脳転移はみられなかったものの腰部脊髄に造影効果を認め,髄液細胞診にて乳癌髄膜播種の診断となった。職務復帰の希望を汲み,照射,抗悪性腫瘍薬髄注療法,カペシタビン内服を開始した。3 か月後には下肢麻痺が軽快し,歩行可能となり職務に復帰した。その後 CDK4/6 阻害薬の維持療法により約 9 か月間の職務を全う死亡した。乳癌髄膜播種再発後の予後は極めて不良であり,下肢麻痺などの神経学的症状はQOL を大きく損なう。今回,乳癌髄膜播種の下肢麻痺に対して,照射,抗悪性腫瘍薬髄注療法および抗癌剤治療にて 9 か月間の QOL を維持した症例を報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1941-1943 (2022);
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症例は 49 歳,女性。左乳癌,pT2N2aM0,Stage ⅢA に対し術後 dose‒dense 化学療法を施行していた。dose‒dense doxorubicin/cyclophosphamide(AC)療法 3 コース目 day 13 より 38℃台の発熱が出現し,レボフロキサシンの内服を開始したが解熱しなかった。COVID‒19 PCR 検査陽性かつ胸部 CT で両側にすりガラス影を認め COVID‒19 肺炎と診断し,入院治療を開始した。ソトロビマブおよびレムデシビルを投与したが解熱せず,入院第 5 病日にβ‒D‒glucan 高値(81.7 pg/mL)であることが判明し,ニューモシスチス肺炎(Pneumocystis jirovecii pneumonia: PCP)の併発と診断した。sulfamethoxazole/trimethoprim(ST 合剤)の内服を開始したところ,速やかに解熱し退院となった。その後すりガラス影は消失し,ST 合剤の内服を継続し dose‒dense 化学療法を再開し,発熱なく完遂した。癌薬物療法中で免疫抑制状態にある患者では,COVID‒19 肺炎を含めた種々の肺炎の鑑別に加え,異なる肺炎が併発する可能性があることを考慮する必要がある。
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癌と化学療法 49巻13号, 1944-1946 (2022);
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症例は 65 歳,女性。左肺小細胞癌に対して化学放射線療法を施行し,PR となった。経過観察中に腫瘍マーカーの上昇を認め,画像検査にて回結腸動静脈の近傍に SUVmax 12.6 と高度集積を有する 8 cm 大の腸間膜腫瘤を認めた。原発性消化器癌は否定的で,肺癌のリンパ節転移の他,悪性リンパ腫が鑑別にあがったが確定診断に至らなかった。診断的治療目的に腹腔鏡下回盲部切除術を施行した。摘出標本は複数のリンパ節が癒合した腫瘤であり,病理組織学的所見にて肺小細胞癌の腸間膜転移として矛盾しない結果を得た。術後補助化学療法を施行の方針となった。肺癌の結腸間膜リンパ節孤発性転移は非常にまれであり,文献的考察を含めて報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1947-1949 (2022);
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Li-Fraumeni 症候群(LFS)は,TP53 の生殖細胞系列病的バリアントを原因とし,様々な臓器に腫瘍が発生する遺伝性疾患であり,集学的治療が必要であるが,放射線照射による二次がんの発症リスクが指摘されており,リスク・ベネフィットと病状を考慮した治療戦略が必要となる。症例 1 は 22 歳,女性。上部直腸癌・両側側方リンパ節転移を契機に LFSと診断された。超低位前方切除術・両側側方リンパ節郭清を施行した。再発に対して再発巣切除,化学療法,放射線治療を行ったが,2 年 8 か月後に原癌死した。症例 2 は症例 1 の姉で,LFS の診断後に意識障害を契機として左高位前頭葉から頭頂葉に腫瘍が認められ,外科的切除が施行された。3 年 10 か月後に局所再発が認められ,放射線治療を施行した。照射終了後 6 か月の現在,増悪所見は認めていない。
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癌と化学療法 49巻13号, 1950-1952 (2022);
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peritoneal lymphomatosis は非ホジキンリンパ腫のまれな病態の一つであり,腹膜や大網にびまん性に腫瘍浸潤を認め腹水を伴うが,確定診断は困難である。今回,単孔式腹腔鏡下組織生検が診断に有用であった 1 例を経験したので報告する。症例は 70 歳,女性。2 日前からの腹部膨満を主訴に当院に救急搬送された。CT(PET-CT)にて腹膜癌を疑われ当科に紹介となり,単孔式腹腔鏡下組織生検を施行した。腹腔内には硬化した大網と多量の腹水を認め,大網を一部採取した。病理検査所見は diffuse large B⊖cell lymphoma であり,peritoneal lymphomatosis を呈したものと診断した。血液内科にてR-CHOP 療法が開始され,治療開始から 1 年 6 か月無再発生存中である。本疾患の鑑別は多岐にわたり,診断は困難である。診断,治療方針の決定に低侵襲な単孔式腹腔鏡下組織生検は有用と思われた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1953-1955 (2022);
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症例は 54 歳,女性。食欲低下を主訴に近医を受診し,腹部超音波検査にて右水腎症を指摘され,精査加療目的で当院の泌尿器科を紹介受診した。腹部造影 CT で右腎下極付近の後腹膜に 6.2 cm 大の内部に造影効果を伴う腫瘍を認め,後腹膜腫瘍の右腎浸潤による水腎症と診断された。腫瘍は十二指腸および下大静脈への浸潤も疑われたが,明らかなリンパ節転移や遠隔転移は認めなかった。腹部 MRI で,腫瘍は T2 強調画像や拡散強調画像で高信号を呈した。手術は膵頭十二指腸切除術,右腎摘出術,下大静脈合併切除術を施行した。術後病理組織学的診断にて,後腹膜原発平滑筋肉腫で pT2,pN0,pM0,pStage ⅢA と診断された。術後経過は良好で,術後 10 日目に退院した。術後 3 か月の胸腹部造影 CT で肝門部に 4cm 大の腫瘤を認め,EOB-MRI では同部位以外にも多数の腫瘤を認めたため,多発肝転移再発と診断した。ADR 療法を開始し,現在も治療を継続している。
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癌と化学療法 49巻13号, 1956-1958 (2022);
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症例は 55 歳,女性。腹部膨満感を主訴に他院を受診した。後腹膜腫瘍の診断で複数の施設へ受診も根治切除不能と判断され当院に紹介となった。当院初診時には巨大腫瘍により横隔膜挙上,呼吸苦と体動困難,腹部コンパートメントと思われる皮膚の変色を認めていた。腹部骨盤造影 CT で,腫瘍は腹部から骨盤までを広範囲に占拠し,胃・結腸・脾・膵・腎などの変位を伴っていた。腹部大動脈や下大静脈に接していたが明らかな浸潤所見は認めず,根治切除が可能と判断した。手術では後腹膜腫瘍と周辺の脂肪組織,左腎,脾を合併切除により,腫瘍を一塊として完全切除した。切除標本は最大径 48cm,重量 14 kg であり,病理組織学的検査で脱分化型脂肪肉腫の診断であった。術後 6 か月経過したが無再発である。
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癌と化学療法 49巻13号, 1959-1961 (2022);
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症例は 78 歳,男性。膵体部癌術後,多発肝転移再発に対して GEM+nab‒PTX 療法 4 コース投与後,全身倦怠感,四肢の浮腫を認めた。血液検査にて汎血球減少を認め,化学療法に伴う汎血球減少症と診断し入院となった。第 2 病日に破砕赤血球を伴う溶血性貧血を認めたため,血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy: TMA)の関与が示唆された。血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura: TTP)の可能性を考慮し,ステロイド併用下で血漿交換を開始した。後に血液検査にて ADAMTS13 活性の低下は軽度,抗体は陰性であることが判明し,GEM 起因性 TMA と診断した。7 日間の血漿交換施行後,血小板低下,溶血性貧血,腎機能障害は改善を認め第 28 病日に退院となった。GEM起因性 TMA は,生命にかかわる合併症であるものの確立した治療法はない。今回,血漿交換が著効した 1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1962-1964 (2022);
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症例は 61 歳,女性。早期直腸癌術後の定期フォロー造影 CT で,胃と横行結腸の間に 17×5.5×9 cm 大の脂肪濃度を呈する低吸収な腫瘍を認めた。腫瘍内には右胃大網動静脈が流入していた。造影 MRI では,腫瘍内部は T2 強調画像で高信号を示し,脂肪抑制 T2 強調画像で信号強度は全体的に抑制された。以上から,大網原発の脂肪肉腫と診断し手術を施行した。腫瘍は,網囊腔右壁に主座を置き右胃大網動静脈が栄養血管となっており,大網から横行結腸前葉・後葉~尾側へ垂れ下がっていた。腹膜播種や周囲臓器への浸潤はなく,横行結腸間膜をくり抜くように完全切除した。病理組織像から,高分化型脂肪肉腫と診断した。脂肪肉腫の治療は手術による摘出が第一選択で,有効な術後補助化学療法は報告されていない。本症例は,腫瘍を完全切除し得たことで術後 2 年 6 か月経過し無再発生存が得られている。
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癌と化学療法 49巻13号, 1965-1967 (2022);
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症例は 72 歳,男性。検診の腹部超音波検査にて肝腫瘤を指摘され,紹介となった。造影 CT では,肝腫瘤は周囲シャントを伴う血管腫,胆囊壁肥厚は胆囊癌を否定できないが腺筋腫症の可能性が高いと判断された。EOB‒MRI では胆囊壁肥厚は腺筋腫症,肝腫瘤は原発不明転移性悪性腫瘍と判断した。胆囊腺筋腫症と原発巣不明の肝腫瘍として,診断目的も含めて切除する方針とした。胆囊摘出術+肝 S4a 亜区域切除術,肝十二指腸間膜リンパ節郭清を施行した。病理組織診断では胆囊原発の神経内分泌癌であった。肝腫瘤も同様の組織像で胆囊腫瘍から連続性が示唆され,直接浸潤と考えられた。術後 15か月経過,再発は認めていない。
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癌と化学療法 49巻13号, 1968-1970 (2022);
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細胆管細胞癌(cholangiolocellular carcinoma: CoCC)はまれな疾患であり,その病態は未だ不明な点が多い。当院では 2017 年 4 月~2021 年 3 月までに CoCC を 3 例経験したので報告する。平均年齢は 74.3 歳,男性 2 名,女性 1 名であった。2 例に肝切除術が施行され,1 例は高齢および患者希望のため肝動脈塞栓術(TAE)とラジオ波焼灼療法(RFA)が施行された。背景に慢性 C 型肝炎 1 例,脂肪肝 1 例,アルコール性肝障害を 1 例で認めた。肝切除術が施行された 2 例の長期予後は良好であったが,TAE および RFA を施行した症例は早期に肋骨や脊椎に多発骨転移再発を来し,治療後 3 か月で死亡した。一般に CoCC の予後は胆管癌よりも良好とされ,切除可能であれば外科的切除が第一選択である。一方で,再発リスクの高い症例に対する治療方針は確立されたものはなく,今後さらなる症例の蓄積が必要であると考えられる。
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癌と化学療法 49巻13号, 1971-1973 (2022);
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症例は 72 歳,男性。X 年,polypectomy の 2 年後のフォロー目的に施行された下部消化管内視鏡検査にて,前回所見のなかった横行結腸に腸管の狭窄を伴う全周性の腫瘍を認めた。横行結腸癌の診断に対し,当院にて手術を施行した。病理結果にて endocrine cell carcinoma(neuroendocrine carcinoma: NEC)と診断された。術後補助化学療法としてシスプラチン+エトポシドを 4 コース施行した。現在,再発なく外来通院を継続している。
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癌と化学療法 49巻13号, 1974-1976 (2022);
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症例は 73 歳,女性。主訴は体重減少であった。主訴にて下部消化管内視鏡検査を施行したところ,前処置にて腹痛が出現し,全周性の直腸癌を認めた。大腸ステントを留置後,当科に紹介となった。膀胱鏡検査において広範な膀胱浸潤を認めた。骨盤内臓全摘術が必要な状態であり,total neoadjuvant therapy(TNT)の方針とした。TNT 後の評価は PR であり,低位前方切除術,膀胱部分切除術,回腸人工肛門造設術を施行した。術後経過は良好であり,第 16 病日で退院となった。病理所見では癌の遺残を認めず,組織学的治療効果判定は Grade 3 であった。
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癌と化学療法 49巻13号, 1977-1979 (2022);
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症例は 81 歳,女性。肛門痛を主訴に近医を受診した。肛門右側に腫瘍を認め,生検で非上皮性悪性腫瘍の診断で当院に紹介された。画像検査において腫瘍は下部直腸への浸潤を認めたが遠隔転移は認めなかった。再度生検を行い,悪性末梢神経鞘腫(malignant peripheral nerve sheath tumor: MPNST)と診断した。治療はロボット支援下腹会陰式直腸切断術(D1)を施行し,病理学的にも遺残なく病変を切除し得た。術後経過は骨盤死腔炎を認めたが,術後 10 日目に退院し,術後6 か月が経過した現在も無再発生存中である。MPNST の多くは四肢・体幹・頸部に発生する。消化管原発や消化管近傍のMPNST は比較的まれであり,手術の際は原則として腸管合併切除が必要となる。今回,肛門近傍に発生し下部直腸まで浸潤したMPNSTに対し,ロボット支援下腹会陰式直腸切断術で切除し得た症例を経験したので文献的考察を交えて報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1980-1982 (2022);
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症例は 61 歳,男性。左下腹部痛が増悪したため当院救急外来を受診した。CT で下行結腸腫瘍と,後腹膜腔に液体貯留像ならびに広範囲の泡沫状ガス像を認めたため,下行結腸腫瘍が壁側腹膜に穿通し膿瘍を形成したと考えられた。後腹膜膿瘍に対して経皮的ドレーンを留置し,横行結腸人工肛門造設術を行った。全身状態の改善を待ち内視鏡下に生検を行い高分化腺癌と診断した。ドレーン管理および創処置を継続しながら FOLFOX+panitumumab(PANI)を 4 コース行ったところで退院し,さらに化学療法を 2 コース行った。PET‒CT で明らかな遠隔転移を認めず,下行結腸腫瘍は著明に縮小したため,根治手術として左結腸切除術および横行結腸人工肛門閉鎖術を行った。退院後,さらに化学療法を 6 コース行った。根治手術後 1 年 1 か月,再発を認めず経過観察中である。
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癌と化学療法 49巻13号, 1983-1985 (2022);
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症例は 50 代,男性。腹痛を主訴に受診した。腹部 CT 検査で下部直腸に 50 mm 大の腫瘤を指摘され,超音波内視鏡下の生検により gastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断となった。腫瘍は前立腺に接しており,他臓器合併切除の必要性が示唆されたため,メチル酸イマチニブ(imatinib mesylate: IM,400 mg/day)による術前化学療法を施行した。IM投与後の 3 か月画像検査では腫瘍径は 40% の縮小を認め,ロボット支援下内肛門括約筋切除術(intersphincteric resection:ISR)を施行した。術後経過は良好で,術後 17 病日に退院となった。術後 IM を継続し 28 か月が経過するが,再発や転移は認めていない。直腸巨大 GIST に対し,IM による術前化学療法を施行することで拡大手術が回避され,根治手術が可能となった症例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 1986-1988 (2022);
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症例は 34 歳,女性。心窩部痛を主訴に受診し,腹部 CT にて小腸に造影効果のある直径 30 mm 大の腫瘍を認めた。小腸内視鏡にて精査を行う予定であったが,突然の腹痛を認めた。CT にて小腸に著明な拡張と腸重積を認めたため,同日緊急手術を施行した。重積部は Treitz 靱帯より 70 cm 肛門側に存在し,腸管壁は黒色に変化し,一部には漿膜の亀裂も認められた。重積解除は困難と判断し,重積部分を含めて空腸を 55 cm 切除した。術後,経過良好にて第 8 病日に退院した。重積先進部の腫瘍は最大径 25 mm の粘膜下腫瘍で,病理組織学的検査では腫瘍は固有筋層から発生し,紡錘形細胞が錯綜構造をとって増殖していた。免疫染色では,KIT 陽性,CD34,S-100,α-SMA 陰性で,GIST と診断した。核分裂像は 5 未満/50HPFs であり,リスク分類にて低リスクと診断した。ガイドラインに従い,現在経過観察中である。
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癌と化学療法 49巻13号, 1989-1991 (2022);
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放射線性小腸炎に起因する非常にまれな回腸穿孔性腹膜炎の 1 例を経験した。症例は 82 歳,女性。30 歳台に子宮癌にて手術を施行し,術後放射線治療歴があった。今回,小腸穿孔にて緊急手術を施行した。穿孔部小腸は肉眼的に広範に放射線性腸炎の変化を認め,初回手術では穿孔部を切除し,放射線性腸炎の変化のある部分で吻合した。しかし縫合不全を併発し,保存的に改善せず再手術を施行した。小腸の広範な切除を行い放射線性腸炎の変化の少ない部分で吻合し,縫合不全なく退院となった。切除腸管の病理学的検索では,放射線性小腸炎の変化の強い腸管では粘膜下層の動脈内膜が高度に肥厚し,内腔の狭窄,閉塞を認め,血流障害が縫合不全の原因と推測された。一方,再手術時の腸管断端は血管壁の肥厚,内腔狭窄を認めず,粘膜下層の浮腫性変化を認めるのみであった。腹部放射線治療歴のある症例の消化管手術においては,放射線性腸炎の変化を念頭に手術術式を決定することが重要と思われた。
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癌と化学療法 49巻13号, 1992-1994 (2022);
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症例は 78 歳,男性。cStage Ⅲの胸部中部食道癌に対して,シスプラチン+5-FU による術前補助化学療法後に手術を施行した。術後 10 か月で左副腎転移を認め摘出術を施行したが,その 3 か月後に肝転移を認めた。ネダプラチン+5-FU を2 コース施行後,肝部分切除術を施行した。術後ネダプラチン+5-FU を 1 コース追加したが,腹腔内のリンパ囊胞感染とその増大による腸閉塞を来し手術を要し,術後は経過観察となった。肝切除から 6 か月後に右肺に小結節が出現し,さらにその 4 か月後には両肺に及ぶ複数の小結節も認めたことから多発肺転移と判断し,ニボルマブの投与を開始した。食道癌の再発から 3 年,ニボルマブ投与開始からは 1 年 5 か月であるが,再発病変は緩徐に増大する肺転移のみで経過中である。
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癌と化学療法 49巻13号, 1995-1997 (2022);
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切除不能進行再発食道癌に対する nivolumab 療法において,完全奏効を示し長期生存する症例がわずかながら存在する。われわれは,食道癌集学的治療中の多発リンパ節転移に対し nivolumab が完全奏効し,高齢でありながらも比較的長期に生存している症例を経験した。未解明である免疫チェックポイント阻害剤のバイオマーカーや完全奏効中の治療中止を考える上で,完全奏効例の検討は非常に重要な知見を与える。
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癌と化学療法 49巻13号, 1998-2000 (2022);
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症例は 62 歳,男性。2019 年に右下咽頭癌の診断となり,耳鼻科治療前の上部消化管内視鏡検査にて食道メラノーシスを指摘されていた。2021 年 2 月にフォローの上部消化管内視鏡検査にて胸部中部食道に腫瘍性病変を認め,生検にて悪性黒色腫の診断となった。精査にて cT1bN0M0,Stage Ⅰ(食道癌取扱い規約第 11 版)となり,胸腔鏡下胸部食道亜全摘・腹腔鏡下胃管作製・胸骨後経路頸部食道胃管再建を施行した。術後経過良好で第 14 病日に退院となった。術後補助療法は施行せず,現在も無再発生存中である。食道メラノーシスの経過観察中に食道悪性黒色腫となり切除し得た症例は極めてまれであるが,注意深い経過観察が必要である。
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癌と化学療法 49巻13号, 2001-2003 (2022);
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症例は 68 歳,男性。摂食障害を伴う進行食道癌で肝 S2 に転移巣を有していた(cT4bN2M1,cStage Ⅳb)。導入化学放射線療法として FP 療法 2 コース+2 Gy×20 回を施行したところ,原発巣の著明な縮小を認めたため食道癌根治術および肝転移巣腹腔鏡下部分切除術を施行した。病理組織所見では原発巣の治療効果 Grade 3 でリンパ節転移,肝転移巣も消失しpathological CR であった。術後化学療法は施行せず経過観察とし,術後 3 年 6 か月食道癌は再発を認めず経過した。
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癌と化学療法 49巻13号, 2004-2006 (2022);
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症例は 73 歳,女性。上腹部痛で近医より紹介された。胃癌(cT3,cN0,M0,cStage ⅡB),急性胆囊炎と診断され,幽門側胃切除術,D2 郭清,胆囊摘出術を施行した。術後病理検査で胃腺扁平上皮癌(pT3,pN2,M0,pStage ⅢA)と診断された。術後補助化学療法として SOX 療法を施行していたが,5 コース施行後,多発肝転移を認めた。XP 療法,DTX 療法を施行したが,PS の低下を認めたため化学療法の継続は困難と判断し,緩和医療に移行し術後 10 か月で死亡した。胃腺扁平上皮癌は,胃癌取扱い規約(第 15 版)で特殊型に分類され,胃癌手術の 0.3~0.5% と比較的まれな疾患である。一般的な胃腺癌と比べ悪性度が高く,予後不良である。
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癌と化学療法 49巻13号, 2007-2009 (2022);
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症例は 71 歳,女性。腹部膨満感と体重減少を主訴に近医を受診し,上部消化管内視鏡検査を施行したところ胃壁浮腫と拡張不良を認め,スキルス胃癌疑いで当院に紹介となった。腹部造影 CT 検査では明らかなリンパ節転移や遠隔転移は認めなかった。内視鏡下に二度生検を施行したが,悪性所見は得られなかった。胃癌が強く疑われたが,これ以上の内科的精査は困難であった。胃全摘術を計画したが,先立って腹腔鏡下に腹腔内を観察すると,右上腹部を中心に白色結節を多数認め,少量の腹水を認めた。白色結節と腹水の迅速病理診断で腺癌の診断が得られ,根治切除困難で手術を終了とした。胃癌,pT4a,NX,H0,M1,P1,CY1,pStage Ⅳ,HER2 免疫染色陰性と診断した。審査腹腔鏡が組織診断および病期診断に有用であったスキルス胃癌の 1 例を経験した。
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癌と化学療法 49巻13号, 2010-2012 (2022);
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今回われわれは,蛋白漏出性胃腸症合併直腸癌のまれな 1 切除例を経験したので報告する。症例は 58 歳,男性。下血,難治性下痢,食欲不振を主訴に当院救急外来を受診した。敗血症性ショック,低蛋白血症,重度の貧血を認めた。CT検査にて左肺に空洞病変と肺塞栓,領域リンパ節腫大を伴った直腸腫瘍を認めた。緊急入院後集中治療を開始し全身状態は改善したが低蛋白血症は遷延した。α1‒アンチトリプシンクリアランス試験にて蛋白漏出性胃腸症と診断された。肺病変は消失し肺膿瘍と診断され,下部内視鏡検査では直腸 RS にカリフラワー状 1 型進行癌を認め,生検にて tub2 と診断された。当科に手術目的にて紹介となり,入院後 121 日目に腹腔鏡下低位前方切除術,D2 郭清,回腸瘻造設術を施行した。術後低蛋白血症は改善し回腸瘻閉鎖した後,初回手術後 66 日目に退院となった。退院後は術後 8 か月まで当科にて経過観察していたが,明らかな再発を認めていない。
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癌と化学療法 49巻13号, 2013-2015 (2022);
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症例は 79 歳,女性。S 状結腸癌,cT2N0M0,cStage Ⅰの診断となった。CT で偶発的に腹腔動脈および上腸間膜動脈起始部狭窄を認めた。CT 上,下腸間膜動脈と腹腔動脈領域とを交通する側副血行路が発達していた。この側副血行路を温存する形で,開腹 S 状結腸切除,D1 リンパ節郭清が施行された。同時に複数の腹部主要動脈の狭窄を認める症例に関する術式についての報告は少なく,温存するべき側副血行路が発達した大腸癌の至適術式,至適郭清範囲についてのコンセンサスは確立していない。側副血行路の誤認,損傷による多臓器虚血のリスクマネージメントとして,術前 three‒dimensional CT angiography(3D‒CTA)および術中 ICG での評価が有用である。また,臓器虚血の回避とともに腫瘍学的妥当性とのバランスが重要である。無症候性の腹腔動脈狭窄と上腸間膜動脈起始部狭窄を同時に有する S 状結腸癌症例を経験したので,文献的考察を加え報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 2016-2018 (2022);
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症例は 73 歳,男性。2018 年 6 月,浸潤性膵管癌に対して膵体尾部切除を施行した(最終病期 T3N0M0,Stage ⅡA)。2020 年 9 月,S 状結腸に膵癌再発による狭窄を認め,人工肛門造設術を施行した。以降,ゲムシタビン単独療法を施行していた(計 14 コース)。2021 年 10 月,腹痛を主訴に当院を受診した。S 状結腸の狭窄を原因とする粘液貯留と,それに伴う炎症反応の上昇を認めた。抗菌薬で保存的に加療を行っていたが改善に乏しく,開腹 S 状結腸切除と洗浄ドレナージを行った。切除標本の病理組織学的検査では,狭窄部に以前の膵癌と類似した分化型管状腺癌の増生を認めた。癌細胞は固有筋層を中心に浸潤し,漿膜面側には浸潤を認めなかった。以上より,膵癌の血行性 S 状結腸転移と診断した。
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癌と化学療法 49巻13号, 2019-2021 (2022);
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症例は 30 歳台,男性。腹痛,下血を主訴に当院を受診した。上下部消化管内視鏡検査で明らかな病変を認めず,症状が軽快したため退院となった。以降,複数回,嘔吐や腹痛を主訴に入院加療され保存的加療で軽快していた。再燃を繰り返すため当科に紹介受診し,腹腔鏡下試験開腹術を施行し,空腸に腸閉塞の原因病変を認め,切除を施行したところ空腸癌で病理組織診断は pT3(SE)N0 あった。原発性空腸癌に対し腹腔鏡下に切除した 1 例を経験したので報告する。
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癌と化学療法 49巻13号, 2022-2024 (2022);
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穿刺吸引細胞診(FNA)クラスⅢで手術を施行した甲状腺良性腫瘍 13 例について臨床病理学的に検討した。FNA の所見では高い核異型を全例に認め,他に核内細胞質封入体,乳頭状大型細胞集塊の所見が多くあり,乳頭癌と鑑別困難例があった。画像診断を含めた術前診断は悪性疑い 5 例,良性疑い 8 例であった。術中迅速診断は 12 例に施行し,悪性疑い 5例,良性疑い 7 例であった。手術は甲状腺亜全摘 5 例,片葉峡部切除 3 例,片葉切除 5 例,リンパ節サンプリングが 5 例に行われた。最終病理診断は濾胞腺腫 5 例,腺腫様甲状腺腫 8 例であった。甲状腺腫瘍 FNA クラスⅢは細胞所見の評価が難しく,手術は悪性腫瘍として切除範囲を設定すべきだが,良性腫瘍の可能性を考え過大侵襲にならない配慮が必要である。