薬理と治療
2010, 38巻Suppl 2
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特集 肝病態生理研究のあゆみ 第18回肝病態生理研究会報告 於:山形
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扉・目次
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特集 肝病態生理研究のあゆみ 第18回肝病態生理研究会報告 於:山形
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2 .有機カチオン Multidrug and Toxin Extrusion 1阻害剤 Pyrimethamine と Metformin の薬物相互作用試験
38巻Suppl 2(2010);View Description Hide Description -
3 .トランスポーター機能低下を診断するバイオマーカーの探索
38巻Suppl 2(2010);View Description Hide Description薬物の体内からの排泄には種々のトランスポーターが深く関わっており,併用薬による阻害,遺伝子多型や病態におけるトランスポーター機能の低下は,薬物の排泄クリアランスを低下させ,薬物の血漿・組織中濃度の上昇を招くケースがある。同時にトランスポーター基質である内因性物質の輸送も制限し,血漿や組織への内因性物質の蓄積も起こりうる。このような内因性物質はトランスポーター機能を診断するバイオマーカー候補になると考えられるが,どのような内因性物質がトランスポーターの機能低下に伴って実際に体内に蓄積するのかはほとんど報告されていない。multidrug resistance-associated protein 2(MRP2/ABCC2)は,肝胆管側膜上に局在し,一次性能動輸送により種々のアニオン性薬物やグルタチオン抱合体,グルクロン酸抱合体を細胞内から胆汁中へと排出する。近年,ABCC2 遺伝子多型が MRP2 基質である薬物の体内動態に影響することが報告されている1)。また,Dubin-Johnson 症候群は ABCC2 遺伝子の変異によるものであり,MRP2 の代表的基質である抱合型ビリルビンの胆汁排泄が低下して高ビリルビン血症を呈する。今回,これと同様の表現型を呈する Mrp2 欠損ラットの Eisai-hyperbilirubinemicrat(EHBR)を用いて,抱合型ビリルビンと同様に,Mrp2 欠損に伴い血漿中に蓄積する内因性物質あるいは食物由来物質をメタボノミクス手法により探索した。なお,本稿は口演抄録であり,原著論文としては現在投稿準備中である。 -
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6 .[11C]Telmisartan を用いた Positron EmissionTomography(PET)による肝胆系輸送評価
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特別講演 肝発癌と治療におけるミトコンドリアの役割
38巻Suppl 2(2010);View Description Hide Description酸素は生物が創生した最大の遺産であるが,その濃度がきわめて低かったカンブリア紀に,なぜか遺伝子が爆発的に変異して種の多様性が拡大した。実は,その時代の低酸素環境は消化器をはじめとする体内の随所に保存されており,今もヒトの生老病死を支配している。癌の多くが消化器に発生する理由もカンブリアの遺伝子爆発と関係している。ミトコンドリアの内外で生じる活性酸素は加齢とともにゲノムを劣化させて生活習慣病を加速させる。一方,活性酸素は感染防御,循環エネルギー代謝,生殖・遺伝子継承などを統合制御し,生存を支えるスーパーシステムを構築している。生物が海から陸や空へとニッチを拡大して進化してきた背景にも本システムが関与している。発癌や癌治療でもその歴史的特色がミトコンドリア代謝の中に色濃くうかがわれる。本講演では,生物進化とミトコンドリア代謝特性の観点から肝発癌と癌治療の問題を論じた。 -
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10.総胆管結紮による急性胆汁うっ滞におけるKeap1-Nrf2 System の役割
38巻Suppl 2(2010);View Description Hide Description胆管結石や悪性腫瘍によって引き起こされる閉塞性胆汁うっ滞は,肝における toxic bile acid や bilirubinの貯留により肝細胞に強い障害を与える。障害を受けた肝臓では大量の活性酸素が発生し,その消去のために還元型グルタチオンが消費されることが報告されているが1),生体の閉塞性胆汁うっ滞への防御機構についての分子メカニズムの詳細は不明な点が多い。これまでわれわれのグループは,生体において抗酸化ストレス応答,解毒代謝を制御する転写因子 Nrf2 が,肝細胞の胆汁排泄に重要な働きをする肝トランスポーター Mrp family の発現誘導を制御すること,そしてウルソデオキコール酸などのMrp family を介した利胆作用が,Nrf2 を活性化することによって行われることを明らかにしてきた2,3)。今回の研究では,総胆管結紮による閉塞性胆汁うっ滞病態モデルを作製し,生体の胆汁うっ滞に対する防御機構において転写因子 Nrf2 の果たす役割を解析した。なお,本稿は口演抄録である。 -
11.胆汁うっ滞におけるコレステロールの動態
38巻Suppl 2(2010);View Description Hide Description胆汁うっ滞は胆汁の流出または生成の障害により,通常胆汁中に排出される物質の血中濃度の上昇をきたす。胆汁うっ滞疾患である原発性胆汁性肝硬変症(PBC)や原発性硬化性胆管炎(PSC)などの患者血清コレステロール値が増加することが知られている。その機序に関しては胆汁中コレステロールの大循環への逆流と考えられており,われわれは PBC,PSC 患者の胆管細胞あるいは肝細胞間の tight junctionの破綻を形態学的に確認し報告した1)。しかし胆汁うつ帯時の高コレステロール血症出現の機序は本変化のみではない可能性がある。そこでさらに胆汁うっ滞時における高コレステロール血症のメカニズムについて,コレステロールのトランスポーターである ABCA1 の肝細胞における動態について培養肝細胞,胆汁うっ滞ラットと PBC 患者の肝臓を用いて検討した。なお本稿は口演抄録である。 -
12.IL-6 と肝発癌リスク―とくに男女差に注目して―
38巻Suppl 2(2010);View Description Hide Description慢性肝炎において Interleukin-6(IL-6)は炎症惹起とともに肝再生にも関与し,発癌に重要な役割を果たすと考えられているが,実際に IL-6 発現レベルと発癌が関連するか不明である。また近年Naugler らはマウスモデルを用いて,エストロゲンによる IL-6 分泌抑制が女性で発癌率が低い原因であることを示し注目されている1)。そこで血清 IL-6値と肝発癌との関連について,とくに男女差に注目し後ろ向きコホート研究を行った。なお,本稿は口演抄録である。 -
13.TIMP-2 遺伝子多型と肝線維化進行
38巻Suppl 2(2010);View Description Hide Description慢性肝疾患の肝線維化進展速度は患者間で大きく異なっている。この理由の一つに宿主側因子の関与が示唆されており,近年,サイトカインおよびケモカインを中心に機能的遺伝子多型との関連が検討されている1,2)。tissue inhibitor of metalloproteinase-2(TIMP-2)は細胞外マトリックス分解酵素(matrixmetalloproteinase:MMP)の生物学的活性を制御するとともに,線維芽細胞や平滑筋細胞の成長を促進するとの報告もあり3,4),さまざまな疾患の病態および進展に関与している。TIMP-2 遺伝子のプロモーター領域には転写開始点から上流 418 bp(-418)にguanine(G)と cytosine(C)の点変異が存在している。-418 G/C は転写因子である Sp1 の binding siteに位置しているが5),Sp1 の binding site が C アレルの場合,Sp-1 の親和性が低下し TIMP-2 の転写活性が低下する5,6)。したがって転写活性の高低は G アレル>C アレルとされている5,7,8)。TIMP-2 遺伝子多型と疾患との関連については,これまでに口腔癌9),乳癌10),胃癌11),慢性閉塞性呼吸器疾患7,8),子宮腺筋症6)などで検討されているが,慢性肝疾患との関連についての報告は少ない。今回われわれは TIMP-2 遺伝子多型-418 G/C とC 型慢性肝疾患における肝線維化進行との関連について検討した。なお本稿は口演抄録である。 -
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15.非アルコール性脂肪肝炎におけるM30 の臨床的意義
38巻Suppl 2(2010);View Description Hide Description近年わが国でも肥満や糖尿病の増加につれて,非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liverdisease:NAFLD)が増加している。NAFLD のうち炎症と線維化を伴う脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)は,単純性脂肪肝(simple steatosis:SS)と異なり,肝硬変,肝細胞癌へと進展することが知られている1~5)。NAFLD に対する患者管理では,NASH への移行を評価することが重要である。しかし,NASH の診断には現時点では肝生検が必須となっている。最近,アポトーシスと関連しているサイトケラチン 18(CK-18)の分解産物である M30 が,NASHと単純性脂肪肝(simple steatosis:SS)の鑑別に有用であることが報告されている6~8)。M30 はアポトーシスの過程において CK-18 が caspase-3 によって分解された後,血中に逸脱してくるとされている6,9)。血中 M30 はアポトーシスが関連した病態,たとえば慢性肝炎や各種悪性腫瘍などにおいても報告されている9,10)。今回われわれは,肝生検を行ったNAFLD 患者を対象に,M30 の血中濃度を測定し,血清 M30 の NAFLD での臨床的意義について検討した。なお本稿は口演抄録である。 -
16.非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の病態進展における骨格筋脂肪化の意義
38巻Suppl 2(2010);View Description Hide Description肝および骨格筋は糖・脂質代謝の主要臓器である。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の病態形成には内臓脂肪蓄積や骨格筋における糖・脂質代謝の関与が示唆されているが臓器関連の詳細は明らかでない1~9)。われわれは過去の研究で非アルコール性脂肪性肝疾患の肝における脂肪沈着と内臓脂肪蓄積およびインスリン抵抗性(IR)との関連を報告した10~14)。また,骨格筋の質の評価として臍部 CTで腰椎背側に位置する多裂筋と皮下脂肪との CT 値比を MM/F ratio(MMFR)と定義し,この MMFRを骨格筋脂肪化の指標として NAFLD の病態について報告してきた15)。過去の研究において,インスリン抵抗性(IR)と骨格筋の脂肪化が関連し NAFLD群では正常群にくらべ骨格筋脂肪化が有意に進行していること, またクリティカルパスを用いたNAFLD に対する前向き食事運動療法にて骨格筋脂肪化改善群では肝脂肪化の改善とともに IR が有意に改善し,IR 改善には内臓脂肪蓄積および筋脂肪化の改善が重要であることを明らかとした15,16)。しかし NAFLD は予後の良好な単純性脂肪肝から肝硬変への進展,肝細胞癌の発症のリスクをもつ非アルコール性脂肪肝炎(NASH)までの幅広い表現型をもつ疾患の総称であり,NASH の病態進展における骨格筋脂肪化の意義は明らかではない。今回の研究の目的は, ① 肝生検により診断されたNASH に対して病理学的な activity および stagingと骨格筋脂肪化の関連を明らかとし, ② NASH 進展に寄与する因子を多変量解析にて検討し,肝および骨格筋との臓器関連を明らかとすることとした。 -
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18.シトリン発現抑制による代謝能と酸化レドックスの変化
38巻Suppl 2(2010);View Description Hide Descriptionシトリン欠損症は新生児肝内胆汁うっ滞(NICCD)の後,代償期を経て,高アンモニア血症を伴う意識障害として成人型シトルリン血症Ⅱ型(CTLN 2)を発症する。責任遺伝子は 7q21.3 に位置する Citrin(SLC25A13)で,ミトコンドリア膜上に位置する aspartate-glutamate carrier である。ヘテロ保因者は東アジアで 65 人に 1 人とされる。本症の発症予防には食事療法が肝要であるが,一方で,代償期にあっても,同疾患の肝組織は非アルコール性脂肪性肝炎を呈し,さらに,肝細胞癌の合併がときに認められる。今回われわれは新たな治療法の開発を念頭に,細胞モデルを用いて,シトリン欠損症の病態の解明を試み,結果を第 18 回肝病態生理研究会(ホテルメトロポリタン山形)において発表したので,口演抄録として掲載する。 -
19.成人発症Ⅱ型シトルリン血症 3 例の検討
38巻Suppl 2(2010);View Description Hide Descriptionシトルリン血症は尿素サイクルの律速酵素であるアルギノコハク酸合成酵素(ASS)の活性低下により,高シトルリン血症,高アンモニア血症を呈し,意識障害を中心とする症状を発現する。本症は常染色体劣性遺伝を示す疾患であり,小児期に発症する古典的シトルリン血症(Ⅰ型,Ⅲ型)と成人期発症のⅡ型(CTLN2)に分類される1)。Ⅰ型,Ⅲ型は第9 染色体長腕に局在する ASS 遺伝子の異常に基づき,ASS が発現するすべての臓器で ASS 活性の低下を認める2,3)。一方,Ⅱ型は第 7 染色体長腕に局在する SLC25A13 遺伝子(citrin 遺伝子)の異常4,5)に基づいて,肝のみで ASS 蛋白の発現が低下し,腎,皮膚,線維芽細胞など他臓器では活性低下を認めず6),緩徐な経過をたどるものから急速に死に至る症例や肝癌(HCC)発生例も存在する。今回,われわれが経験した 3 例の CTLN2 について報告する。なお,本稿は口演抄録であり,症例 1 および症例 2 についてはすでに論文発表済みである7)。 -
20.成人発症Ⅱ型シトルリン血症の 3 例
38巻Suppl 2(2010);View Description Hide Descriptionシトルリン血症は,尿素回路のアルギニノコハク酸合成酵素(ASS)関連部位の異常により,高シトルリン血症,高アンモニア血症をきたす疾患である。シトルリン血症は異常の形態により 3 型に分類され,ASS 遺伝子の異常に基づく新生児,小児期発症の古典型シトルリン血症(Ⅰ型・Ⅲ型シトルリン血症)と成人発症Ⅱ型シトルリン血症(CTLN-Ⅱ)に分けられている。CTLN-Ⅱはミトコンドリア膜上の輸送蛋白シトリンの遺伝子異常が原因とされており,その臨床像としては,幼少期より豆類や魚介を好み,糖類,アルコールを嫌う特異な食物嗜好がみられるのが特徴で,20~50 歳代に高アンモニア血症による意識障害,痙攣発作で発症する。今回われわれは最近 30年間に当科で経験した CTLN-Ⅱの 3 例について,若干の文献的考察を加えて報告する。なお,本稿は口演抄録である。 -
21.急性間欠性ポルフィリン症における遺伝子解析の意義
38巻Suppl 2(2010);View Description Hide Description急性間欠性ポルフィリン症(acute intermittentporphyria,AIP)はヘム合成系 3 番目の酵素であるハイドロキシメチルビラン合成酵素(hydroxymethylbilanesynthase,HMBS;別名ポルホビリノゲンデアミナーゼ,PBGD)[EC 4.3.1.8]の活性低下によってδ-アミノレブリン酸(δ-aminolevulinic acid,δ-ALA)およびポルフォビリノゲン(porphobilinogen,PBG)が生体内に過剰に蓄積し,腹痛,便秘,嘔吐といった腹部急性症状のほか,けいれんや四肢麻痺などの中枢神経症状,さらに高血圧や頻脈,多汗などの自律神経症状を呈する遺伝性疾患である1)。われわれはこれまでに本邦におけるポルフィリン症各病型の遺伝子解析を試みてきたが2),今回あらたに新規 AIP 症例につき HMBS 遺伝子を解析したので結果を提示し,あわせて AIP における遺伝子解析の意義について考察する。 -
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