治療学
Volume 40, Issue 6, 2006
Volumes & issues:
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扉・目次
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序説
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- 睡眠時無呼吸症候群
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睡眠時無呼吸症候群診療の現状と今後の動向
40巻6号(2006);View Description Hide Descriptionヒトの 1 日は平均して覚醒が 16 時間,睡眠が 8 時間からなるサイクルで繰り返されている。したがって,人生の約 1/3 は眠っていることになる。この睡眠中は本人にとっても周囲にとっても身体の状態をなかなか把握できないブラックボックスの時間帯である。われわれ臨床医は外来においても入院時においても患者の覚醒時の状況しか捉えないことが多かった。睡眠中の状況は患者本人も知らないし,家族,医療従事者も患者の睡眠中の状態を無視しがちであった。呼吸は覚醒時であれば止めたり,速くしたり,深くしたりできるように,随意的に調節することができる。これは大脳からの情報が呼吸中枢に伝達されるからである。一方,睡眠中には大脳の影響が少ない呼吸中枢自体のリズムで呼吸が行われる。このように呼吸は意識下の調節と無意識下の調節の二重の調節系になっている。したがって,覚醒時には上位中枢による代償機序が働いているため異常所見を検出し難いが,睡眠中には上位中枢による代償機序が低下するので呼吸中枢自体の異常を検出しやすくなる。ここに睡眠中の身体情報を得ることの重要性がある。睡眠中に呼吸異常を来す疾患として睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)がある。平成 15(2003)年 2 月 26 日に起こった山陽新幹線・運転手の居眠り運転事件は大きな事故に至らなかったものの,社会的問題になった症候群として記憶に新しい。本特集号ではこの領域の研究および臨床で活躍されているわが国の第一人者に最新の話題を織り交ぜながら,本症候群をわかりやすく解説してもらった。明日からの診療に役立つものと期待している。
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特集
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睡眠時無呼吸症候群の疫学
40巻6号(2006);View Description Hide DescriptionGuilleminault らは,1976 年に「7 時間の睡眠中に少なくとも 30 回以上の睡眠時無呼吸が観察され,かつ反復する睡眠時無呼吸(睡眠中の10 秒以上の気流停止)が non-REM 睡眠期で認められる」病態を睡眠時無呼吸症候群(sleepapnea syndrome:SAS)と定義した1)。その後,上気道の閉塞による睡眠時無呼吸に加えて,上気道の狭窄による鼻・口の気流の低下(睡眠時低呼吸:sleep hypopnea)も睡眠時無呼吸と同様に短時間の覚醒等の生体反応を起こすことから,SAS の重症度の指標として無呼吸低呼吸指数(apnea-hypopnea index:AHI)が使用されるようになった。この指標は,睡眠中の脳波,呼吸気流,末梢血酸素飽和度,胸腹部運動などを連続記録する終夜睡眠ポリグラフ(polysomnography:PSG)検査によって得られる。現在,SASは PSG 検査によって判定される無呼吸あるいは低呼吸などの睡眠呼吸障害(sleep disorderedbreathing:SDB)が 1 時間に 5 回以上出現することに加えて,昼間に日常生活に支障を来すほどの眠気や全身倦怠感などの自覚症状を伴うことと定義されている2)。SAS および SDB の疫学研究は,これまでにも数多く報告され,内外の総説にまとめられている3~5)。本稿では,SAS/SDB の頻度,社会的影響,合併症,危険因子に関する最近の疫学的知見を紹介する。 -
睡眠時無呼吸症候群と社会問題
40巻6号(2006);View Description Hide Description睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)の大多数を占める閉塞型 SAS(OSAS)は,睡眠中に惹起される上気道の閉塞のため,著しいガス交換障害と睡眠障害がもたらされる。とくに,上気道閉塞による著しい胸腔内圧の陰圧化は中途覚醒をもたらし,頻回の中途覚醒の結果,良質の睡眠はほとんどとれなくなる。OSAS にもっとも特徴的である日中の著しい眠気(過眠)はこのために生ずる。しかし多くの患者は,自分が十分な睡眠がとれていないことに気がついておらず,したがって,自分がなぜ昼間こんなに眠いのかを理解していないことが多い。この著しい日中の過眠は,当然患者の社会生活に大きな影響を及ぼし,ときに社会的事故の原因となるが,とくに,交通事故との大きな関連性が報告されている。 -
睡眠時無呼吸症候群の発生機序
40巻6号(2006);View Description Hide Description睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)は閉塞型(obstructive SAS:OSAS)と中枢型(central SAS)に分けられるが,高齢者や循環器疾患患者を除くと,実際の臨床で遭遇するものの多くは OSAS である。OSAS は睡眠中に起こる上気道の狭小化および閉塞により,無呼吸や低呼吸を繰り返し起こす疾患である。昼間の眠気により生活の質を低下させるばかりでなく,高血圧や心疾患の独立した危険因子となり,生命予後にも関わることが明らかになりつつある1~4)。OSAS の基本病態である睡眠中における上気道閉塞の発症機序はいまだ明確になっていない点も多いが,バランス理論によって説明することができる。本稿ではバランス理論を中心に述べることとする。 -
睡眠時無呼吸症候群と液性因子
40巻6号(2006);View Description Hide Description睡眠時無呼吸-低呼吸,および無呼吸-低呼吸後の再呼吸により低酸素血症,低酸素血症からの回復,高 PaCO2血症,胸腔内圧の変動,短期覚醒などが起こる。これらの要因は多くの液性因子の分泌に変動をもたらし,交感神経活動亢進,血管内皮機能障害,脈管系への酸化ストレス,炎症,凝固亢進,代謝異常を介して,心血管病変発症のリスクファクターになると考えられている(図 1)1)。 -
睡眠時無呼吸症候群の診断基準
40巻6号(2006);View Description Hide Description睡眠呼吸障害研究会から昨年(2005 年),睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)に関するガイドライン,「成人の睡眠時無呼吸症候群:診断と治療のためのガイドライン」1)が出された。そのガイドラインでは,閉塞型 SAS(obstructive SAS:OSAS)のみに言及しているが,診断基準としては 1999 年の米国睡眠医学会(American Academy of Sleep Medicine:AASM)の提唱する基準2)に準拠している。すなわち,「OSAS とは日中過眠(excessivedaytime sleepiness:EDS),もしくは閉塞型無呼吸に起因するさまざまな症候のいくつかを伴い,かつ無呼吸低呼吸指数(apnea hypopneaindex:AHI)≧5」とする基準を採用している。したがって,本稿でも原則としてこの診断基準を採用するが,SAS には OSAS 以外に中枢型SAS(central SAS:CSAS)などもあるため,無呼吸の型から概説をはじめることにする。 - 睡眠時無呼吸症候群の関連疾患
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1 耳鼻科疾患
40巻6号(2006);View Description Hide Description睡眠時呼吸障害(sleep disordered breathing,以下 SDB)の原因・治療に関連する耳鼻科疾患について述べる。成人と小児では解剖学的要因から原因が異なることがあり,別々に検討すべきである。 -
2 循環器疾患とメタボリックシンドローム
40巻6号(2006);View Description Hide Description睡眠時無呼吸症候群(SAS)は肥満に関連したマルチプルリスクファクターを合併し動脈硬化性の循環器疾患を発症しやすい。最近,Marinら1)は,SAS が虚血性心疾患の罹患や死亡率に関連することを報告した。Sleep Heart HealthStudy2)でも,SAS は心不全発症の危険因子として独立したものとされ,また心不全においてチェーン・ストークス呼吸を含む中枢性無呼吸が増加する。一方,軽微なリスクの集積で虚血性心疾患の罹患や死亡率がより高率になってくることが,Framingham 研究3)などにより明らかになってきた。さらに,リスクの集積された患者群はメタボリックシンドローム(MS)とよばれ,一つの疾患群として提唱されている4,5)。2005 年 4 月,日本人の現状にあわせた診断基準6)がメタボリックシンドローム診断基準検討委員会より発表された。そこで本稿では,循環器疾患の背後に潜む SAS,とくに日本人の SASと MS について述べる。 -
3 消化器疾患
40巻6号(2006);View Description Hide Description閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS:obstructivesleep apnea syndrome)は,睡眠中の頻回の呼吸停止を特徴とし,睡眠障害による日中の眠気や集中力低下などで,社会問題を引き起こし注目されてきた。近年,OSAS が消化器領域の胃食道逆流症(GERD:gastro-esophageal refluxdisease)とも関連することが明らかとされつつあり,さらに注目を集めている。 -
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5 内分泌疾患
40巻6号(2006);View Description Hide Description睡眠時無呼吸症候群(SAS)で繰り返される低酸素血症と覚醒が,高血圧症や不整脈などの循環器疾患を併発するだけでなく,インスリン抵抗性を高めるなど内分泌疾患にも影響を及ぼすことや,その逆に末端肥大症などの内分泌疾患に SAS を合併しやすいことが知られている。本稿では後者の SAS を合併することが多いといわれる甲状腺機能低下症,クッシング症候群,多* 胞性卵巣症候群と SAS の関係に関して概説する(表 1)。 -
6 脳・神経疾患
40巻6号(2006);View Description Hide Description脳・神経疾患における睡眠時呼吸障害は,その病変部位が呼吸循環の神経性調節機構に影響を及ぼす結果として生じることは想定される。さらに,呼吸筋麻痺などの神経疾患の症状に起因する場合や,神経疾患と関係なく閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)のような一次性睡眠障害を合併する場合も存在し,臨床ではこれらが混在していることは少なくない。近年,睡眠医学の分野では欠かせない睡眠ポリグラフ(PSG)検査は診断のゴールドスタンダードになったが,まだ神経疾患のすべての症例に施行されているわけではない。本編では神経疾患のなかで一般内科医が遭遇する脳血管障害について述べる。 -
7 小児科領域
40巻6号(2006);View Description Hide Description小児の睡眠呼吸障害でもっとも頻度の高い閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の概略について述べる。 - 睡眠時無呼吸症候群の治療
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1 治療戦略―生活習慣の改善から始める
40巻6号(2006);View Description Hide Description閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は,睡眠中に上気道の部分的あるいは完全な閉塞が繰り返されることによって睡眠が分断され,その結果,日中の傾眠や頭痛,意欲の低下などの症状を呈する疾患である。またこのような自覚症状を訴えない症例においても,反復する低酸素血症によって心機能の低下や動脈硬化性疾患の進行をきたし,生命に危険を及ぼすことが知られている。したがって OSAS 患者に対しては,いかに自覚症状に乏しくとも十分な治療を行うべきであり,重症例はもとより軽症患者においても,OSAS の悪化を防ぐための方策をたてることが重要である。OSAS の治療は,経鼻的持続陽圧呼吸(NCPAP),口腔内装置(OA)が代表的であり,とくに NCPAP は,その高い有効性から,ここ数年の間に爆発的に普及している。しかし,これらの方法にて夜間の無呼吸・低呼吸イベントが減少・消失したとしても,本質的な OSAS の原因が除去されたわけではなく,治療の中断によって容易に元の状況に復してしまう。したがって,個々の患者における OSAS の発症要因を十分に評価したうえで,生活習慣の改善や薬物療法などを適切に並行していくことが,最終的な予後の改善につながることは明らかである。本稿では,このような OSAS の予後に関連する種々の生活習慣とその改善方法について紹介する。 -
2 CPAP 治療
40巻6号(2006);View Description Hide Description閉塞性睡眠時無呼吸症候群(以下 OSAS)患者の第一選択治療法は,CPAP 療法である。CPAP 療法は,1981 年 Sullivan ら1)が,睡眠時無呼吸症候群に対する治療法として報告して以来,1986 年ころより,広く用いられる治療法となった。現在 CPAP 療法は,auto CPAP,bi-levelCPAP などが開発され,CPAP 治療器が軽量となり,静粛性も向上した。また,鼻マスク種類,サイズも豊富となり,快適性が飛躍的に進歩した。さらに,治療内容が記憶される IC メモリーカードシステムが搭載され,CPAP 治療の継続性を確認でき,CPAP 治療条件の変更も容易となった。 -
3 耳鼻科的治療
40巻6号(2006);View Description Hide Description睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing:SDB)における耳鼻科的治療(上気道に対する治療)のゴールは基本的には,①持続陽圧呼吸療法(continuous positive airway pressure:CPAP)やマウスピースなどの SDB 治療をサポートする,②SDB を治癒または重症度を軽減させる,の二つである。前者は主に鼻に対する加療であり,後者は主に軟口蓋や舌根部に対する手術である。本章では内科の先生に対して成人 SDB に対する耳鼻科的治療のトピックス,ピットフォールをいくつか述べさせていただく。 -
4 歯科・口腔外科的治療
40巻6号(2006);View Description Hide Descriptionいびき症(snoring disease)は,単純いびき症(primary snoring:PS),上気道抵抗症候群(upper airway resistance syndrome:UARS),閉塞型睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleepapnea syndrome:OSA)に分類され(表 1),わが国の有病率は男性 20.1%,女性 5.0%と報告されている1)。この疾患の治療への歯科医師の介入は,昭和 62 年(1987 年)に手術治療に歯科健康保険の適用が認められたことにより始まり,平成 10 年(1998 年)に経鼻式持続陽圧呼吸療法(nasal continuous positive airway pressure:NCPAP)の機器加算に,平成 17 年(2005 年)に口腔装置(oral appliance:ORAP)による治療に歯科健康保険の適用が認められたことにより普及した。ただ,NCPAP については平成 12 年(2000年)に在宅陽圧呼吸療法指導管理料を歯科から申請しなかったため,現在は算定は不可能である。本稿では,最近注目されている口腔装置による治療について詳述し,NCPAP 治療や歯科・口腔外科手術との連携についても言及する。
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診断のピットホール
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無呼吸症候群診断
40巻6号(2006);View Description Hide Description睡眠時無呼吸低呼吸症候群(sleep apnea-hypopneasyndrome:SAHS)は睡眠中の呼吸の途絶と日中の過剰な眠気を主徴とする症候群であり,「無呼吸症」の名でマスコミに取り上げられ,その存在は一般市民も広く知るところとなっている。しかし,睡眠中の病態ゆえか通常の疾患と比較して誤解も多く,偏見や誤認により診断機会を逃す例が後を絶たない。本稿では主として閉塞型(obstructivetype または OSAHS)における誤解を列挙し,ピットホールとして若干の解説を加える。
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座談会
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- 睡眠時無呼吸症候群
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新しい治療
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新しい薬物治療の可能性
40巻6号(2006);View Description Hide Description閉塞性睡眠時無呼吸低呼吸症候群(OSAHS)における現在の治療法としては,持続陽圧換気(CPAP)療法が第一選択治療法として確立されている。オプションとして,口腔内装具(oral appliance)や上気道外科手術が,適応を選んで行われている。しかしながら CPAP のアドヒーランスは決してよくない。重症の OSAHS 患者では,口腔内装具や上気道外科手術の有効性は確立されておらず,CPAP 療法が継続できない場合にそれに代わる治療法がないのが現状である。しかしながら,OSAHS が生活習慣病として認識されるにいたって,他の生活習慣病との関連性が注目され,心血管,脳血管疾患の罹患を高めることから,OSAHS 患者の予後改善のためにも治療の必要性がある。薬物療法は,CPAP や口腔内装具のように就寝前の装着のわずらわしさから解放されることもあり,多くの患者が望んでいる治療法である。これまでにさまざまな薬物が,OSAHS 治療を目的として,検討されてきたものの,CPAP 療法に代わる薬物療法はまだ確立されていない。あくまでも,ある条件においては OSAHS 治療に有効なものもあるという状況である。また,これまでの報告では,比較対照試験としてデザインされた報告が少なく,またあったとしても症例数が少ないことも,薬物療法が確立されていない理由である。
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症例
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肥満低換気症候群か拡張型心筋症か
40巻6号(2006);View Description Hide Description肥満の増加と高度化による睡眠呼吸障害(SDB)と,肥満そのものによる呼吸不全の進展や重症化が急性期ケアだけでなく在宅における呼吸管理上も大きな問題となりつつある。現在の肥満低換気症候群(OHS)の診断基準はさらなる検討を要する。OHS だけでなくうっ血性心不全(CHF)では常に SDB の存在を鑑別し,治療上,持続気道陽圧法(CPAP)や非侵襲的陽圧換気法(NPPV)も第一選択として考慮する。 -
オート CPAP 使用中に悪化をみた睡眠時無呼吸症候群の 1 例
40巻6号(2006);View Description Hide Description睡眠時無呼吸症候群は高血圧,心疾患,脳卒中の心血管系合併症を生じる頻度が高いことが知られている。睡眠時無呼吸症候群の大部分は閉塞型であり,中等症以上では鼻マスク式持続陽圧呼吸(CPAP)療法が治療の第一選択である1)。近年,内蔵されたコンピュータにより上気道の開存性を推定し,圧を自動的に変化する機能を有するオート CPAP 機器が開発され,それを使用することは多くの場合,時間および経費の削減,労力の省力化には有効である。しかし,高齢や基礎疾患がある場合には,病状を悪化させてしまうことがあり,注意して使用する必要がある。今回,明らかな心不全を指摘されていなかった 74 歳の男性が,閉塞型睡眠時無呼吸症候群と診断され,オート CPAP を導入され,心不全・中枢型睡眠時無呼吸症候群の病状が悪化し,オート CPAPを使用するうえで注意を必要とする症例を経験したので紹介する。 -
睡眠時無呼吸症候群の治療は CPAP だけでよいか?
40巻6号(2006);View Description Hide Description閉塞型睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleepapnea syndrome:OSAS)には nasal CPAP を導入することがエビデンスに基づく治療法であり,cardiovascularrisk を減少させることは明らかである。しかし,本当にそれだけで十分か否かを考えなければならない教訓的症例を経験した。今後同じような症例を経験する際,いかなる対応が必要かについて,最近の筆者らの研究を含め紹介する。
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治療の歴史
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DI室Q&A
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睡眠時無呼吸症候群を悪化させる薬剤
40巻6号(2006);View Description Hide Description睡眠時無呼吸症候群の病態は,閉塞型無呼吸(上気道の閉塞により換気が停止するもの),中枢型無呼吸(呼吸中枢の活動停止によるもの),混合型無呼吸(閉塞型と中枢型の混合)の大きく 3 つに分類されるが,なかでも最も頻度が高いのが閉塞型無呼吸である1)。正常な状態の上気道は,覚醒時においては,舌筋などの上気道開大筋群の収縮によって閉塞が妨げられている。一方,睡眠時にはこの上気道開大筋群の収縮反応が低下するために,上気道が覚醒時よりも狭くなるが,これはある程度自然なことである。しかし,肥満, @桃肥大などにより咽頭腔が狭い場合や,睡眠による上気道開大筋群の緊張の低下が著しい場合には,上気道が狭窄し,その狭窄部分が気流の通過によって振動するために「いびき」となる。これよりさらに上気道の抵抗が増加し,咽頭腔の閉塞が起こると最終的には無呼吸となる2)。上気道の閉塞を起こりやすくさせる要因としては,仰向け寝などがあるが,薬物のなかにも上気道を閉塞させる可能性を有するものがあり,一般的には睡眠薬やアルコールなどがあげられる。
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suggestion
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