治療学
Volume 41, Issue 8, 2007
Volumes & issues:
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扉・目次
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序説
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- 急性冠症候群
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急性冠症候群の意味するもの―本概念の臨床的意義
41巻8号(2007);View Description Hide Description急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)とは,不安定狭心症,急性心筋梗塞,虚血性の心臓性突然死を意味する。その大部分は冠動脈のプラーク(粥腫)の薄くなった線維性被膜に破裂や亀裂が生じ,それに続いて冠動脈内腔に血栓が形成されて,内腔が閉塞ないしは亜閉塞されるために発生することが明らかにされた(図 1)1)。ACS における冠動脈血栓の重要性は,病理学的のみならず,臨床的にも冠動脈造影法,さらには血管内視鏡所見からも証明されている。冠動脈血栓は,冠動脈硬化の最も急激な合併症であり,大部分は動脈硬化巣の線維性被膜の破裂によるが,一部はびらんによっても生じる。破裂やびらんから血栓が生じる機序として,炎症が関与することが指摘されている2)。さらに,動脈硬化の発症から,進行にも炎症が関与していることも明らかになりつつある。その炎症性プラークにはマクロファージの集積があること,またプラークの破裂にはマクロファージから分泌されるマトリックスメタロプロテイネースが関与することも明らかになってきた2)。冠動脈造影法で心筋梗塞発症前後の経過を追った症例の検討では,心筋梗塞は必ずしも動脈硬化が最も強い部位に生じるとは限らず,むしろ軽度の狭窄から発症,いいかえると冠動脈病変の急激な進行(jump-up phenomenon)が大部分である。また冠動脈病変の急激な進行には coronary spasm(冠攣縮)が関与することも指摘されており,さらには心筋梗塞急性期の冠動脈造影像上ニトログリセリンの冠動脈内注入により,閉塞が解除される症例もかなりあることから,冠攣縮も心筋梗塞の発症要因となりうると考えられる3)。また,不安定狭心症の発症にも冠動脈血栓のみならず冠攣縮が関与している症例もある。本稿では,ACS の概念の臨床的意義について,冠動脈血栓形成,炎症,さらには治療について,われわれの知見を交えて概説する。
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特集
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急性冠症候群の日本の現状
41巻8号(2007);View Description Hide Descriptionわが国固有の生活習慣と遺伝素因のもたらす影響により,脳出血に代表される脳血管障害に比べ,冠動脈疾患に対する対策は日本人においてかつては重大な問題ではなかった。2005 年に発表された経済協力開発機構(Organisation forEconomic Co-operation and Development:OECD)の調査結果では,男性 10 万人あたりの虚血性心疾患による死亡率は,日本人男性では44.8 人である。これを OECD 加盟国の平均値150.8 人,米国人男性における 176.6 人と比較すると,きわめて低値であり,OECD 加盟国中最少である。同じく女性 10 万人あたりの虚血性心疾患による死亡率は,日本人女性では 21.3 人である。ここでも OECD 加盟国の平均値は77.5 人,また米国人女性のそれは 98.9 人であることを考えるときわめて少ないことがわかる。しかし生活習慣の急激な変化に伴い,わが国においては冠動脈疾患患者数の増加が問題となっており,今後罹患率がさらに上昇することが懸念されている。従来,冠動脈疾患は,冠動脈の動脈硬化とその結果出現した狭窄病変のために出現する狭心症と,冠動脈閉塞により引き起こされる心筋梗塞としてとらえられていた。しかし病態の解明が進んだ結果,冠動脈プラークの破綻や血管内皮のびらん,潰瘍部に形成された血栓が冠動脈血流を阻害するという事実を共通の土台として生じる急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)という概念が提唱された1)。それに伴って,発症早期の心電図診断や各種心筋バイオマーカーの臨床応用,冠血行再建術の進歩により,診断とリスクの層別化やそれに基づく治療手段の決定が迅速に行われるようになった。その結果,わが国における急性心筋梗塞による急性期死亡率は,20%以上から 10%以下にまで低下した。旧来,心筋梗塞はその心電図所見の最終形から Q 波梗塞と非 Q 波梗塞の 2 群に分類され,詳細な検討がなされてきた2)。しかし ACS という概念の導入後は,より早期に診断し治療に取り掛かることが重要であるとの考えから,急性期の心電図所見に基づき,ST 上昇型 ACS と非ST 上昇型 ACS の 2 群に分類されている。本稿では,わが国における ACS 患者診療の現況を概説し,今後克服すべき課題を論じる。 -
急性冠症候群の発症機序
41巻8号(2007);View Description Hide Description冠動脈疾患の病態の解明が進み,急性心筋梗塞,不安定狭心症,冠動脈突然死は発症病態が同一である,いわゆる急性冠症候群として認識されるようになった。現在の急性冠症候群の概念は 1990 年代前半に提唱されており,冠動脈プラークの破綻,びらんとそれに引き続く血栓形成をその発症病態とすることが示されている1)。最近の日本循環器学会を中心とした急性冠症候群の診療に関するガイドライン2)では,急性冠症候群を,ST 上昇型急性冠症候群と非ST 上昇型急性冠症候群の 2 つに大別し,それぞれに対する診療ガイドラインを制定しているが,これらの発症病態についてはほぼ同一のものと考えてよい。 -
急性冠症候群の病理―特に非 ST 上昇型について
41巻8号(2007);View Description Hide Description急性心筋梗塞,不安定狭心症および心臓突然死の多くがプラーク(内膜肥厚性病巣)の破綻に伴う血栓により発症することが明らかとなり,“急性冠症候群”と総称され,血栓の重要性が認識されてきている1~3)。さらに,血栓形成の程度(完全閉塞か不完全閉塞)とその持続時間によって,ST 上昇型(急性心筋梗塞の大部分)と非 ST 上昇型の急性冠症候群(非 ST 上昇型急性心筋梗塞と不安定狭心症)が生じると考えられている。しかし,ST 上昇型にあたる急性心筋梗塞剖検例においても,プラーク破綻による変化はおよそ 70~80%程度しか認められず,多様な病態をもとにする広範囲な疾患群ともいえる2,4~8)。近年,ST 低下あるいは非 ST 上昇を示す急性冠症候群に対する治療法が注目されている9,10)。これらの症例の大部分は,以前より議論されていた非 Q 波心筋梗塞(non-Q-wave infarction)11~13)と不安定狭心症にあたると考えられる。non-Qwave infarction は非貫壁性心筋梗塞例が想定されているが,病理組織学的検討の報告は少ない14,15)。本稿では,非 ST 上昇型の剖検心筋梗塞例と,不安定狭心症の冠動脈病変の病理像について自験例を含めて概説する。 - 不安定プラークの予知と診断
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2 血管内超音波診断
41巻8号(2007);View Description Hide Description現在では,動脈硬化は複雑な過程を経て引き起こされる炎症性疾患であるという概念が広く受け入れられている1)。さらに,粥腫の破綻(plaque rupture)が,血栓性心血管イベントの引き金であるとする急性冠症候群(acute coronarysyndrome:ACS)の概念が提唱され2),現在その plaque rupture を起こしやすい不安定粥腫の検出および治療に焦点が当てられ,研究が進められている。従来,病理学的検討や動物実験が主だったこの分野の研究も,最近の生体イメージングの急速な進歩から,さまざまな in vivo データが集まりつつある。血管内超音波法(intravascular ultrasound:IVUS)は,血管内腔に超音波トランスデューサー付きカテーテルを挿入し,血管断面像を得ることができる。血管造影では単に血管内腔の閉塞や狭窄としか認識されていなかった病変も,IVUS を用いることにより,plaquerupture などの新たな情報が加わるため3),ACSの研究に大きな進展がみられるようになった。 -
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救急外来における急性冠症候群―胸痛患者のトリアージ
41巻8号(2007);View Description Hide Description救急外来で遭遇する胸痛は,重篤な疾患により生じている可能性が高く,それゆえ治療も早期に行う必要があり,原因疾患の検索と診断を可及的速やかに行う必要がある。また,胸痛の訴えののち,心肺停止となる症例もあり,突然死ときわめて関連する症状といっても過言ではない。本稿では,救急外来における胸痛の鑑別疾患,また急性冠症候群の初期診断治療について,わが国の特徴をふまえ,American HeartAssociation(AHA)ガイドライン 20051)と日本循環器学会ガイドライン 20022)の内容も含めて紹介する。 -
急性冠症候群の薬物療法―不安定狭心症/非 ST 上昇型急性冠症候群を中心に
41巻8号(2007);View Description Hide Description急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)とは,冠動脈内血栓により生じる急性心筋虚血が引き起こす各種病態を指す。一般に虚血性突然死,ST 上昇型 ACS(STEACS),不安定狭心症/非 ST 上昇型 ACS(UA/NSTEACS)の主に 3 つの病態からなるとされ,急性期における治療方針がそれぞれ異なる。虚血性突然死に対しては当然のごとく一次救命処置(basiclife support:BLS),二次救命処置(advancedcardiac life support:ACLS)による自己心拍の再開をめざし,STEACS では心筋壊死の範囲を最小限にすべく冠動脈造影上,可及的速やかなTIMI 3(冠動脈の血流レベル正常)フローの獲得のため,primary PCI(冠動脈インターベンション治療)や血栓溶解療法が行われる。一方,UA/NSTEACS に関し,その急性期の治療方針(特にカテーテルインターベンション)について多くの意見があり,一定の結論は得られていない。本稿では主に UA/NSTEACS の治療方針について,カテーテルインターベンションの治療戦略別の急性期薬物療法と,それに引き続く慢性期の治療法について解説する。 -
非 ST 上昇型急性冠症候群の診断と治療のプロセス
41巻8号(2007);View Description Hide Description急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)は,心筋を還流する冠状動脈の血流供給低下に基づく急性心筋虚血が本態であり,心臓突然死を含んだ不安定狭心症・急性心筋梗塞を指す。これには冠動脈トーヌスの亢進も含まれるが,病理学的検索ならびに臨床像との対比により,動脈硬化巣の粥腫破綻あるいはびらんにより引き続き形成される血栓によって,不安定狭心症~急性心筋梗塞と一連の動的な病状の進行を呈する“症候群”としてとらえられている。このように,非常に幅広い疾患群であるためにその治療戦略も画一的ではない。冠動脈内の血流が急激にほぼ途絶している状態と考えられる場合には,通常心電図上 ST 上昇が認められるため(多くが急性心筋梗塞),閉塞を伴わない高度虚血の状態(不安定狭心症・心内膜下梗塞など)における非 ST 上昇型の急性冠症候群と区別し,その診断・治療戦略が個別に論じられている。この非 ST 上昇型の急性冠症候群は,その診断時には(一連の動的な病状の進行をみるため)心筋壊死の程度が小さいと考えられるためにST 上昇型への移行,あるいは突然死への移行を阻止することが短期的な治療目的となる。しかし,個々の症例でのリスクが大きく異なるために短期的な予後のリスク評価を行い,これに基づいた治療指針決定が推奨されている。また引き続き,病態の安定化後には再発の 2 次予防に向けた治療が施行されるべきである。 -
非 ST 上昇型急性冠症候群のカテーテルインターベンション
41巻8号(2007);View Description Hide Description急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)は主として動脈硬化巣の不安定プラークの破綻,それに引き続く血栓形成による冠動脈の閉塞,狭窄が生じ心筋の虚血が発生したことにより起こる一連の疾患群をいう。具体的には図 1 にあるように,不安定狭心症,非 Q 波心筋梗塞,Q 波心筋梗塞を含む。非 Q 波心筋梗塞と不安定狭心症の診断は,後に行われる諸診断により定義以上の心筋壊死が存在したかどうかで,存在した場合に非 Q 波心筋梗塞とする。ここでは,そのなかでも非 ST 上昇型 ACS の治療について主として述べる。ACS を引き起こすに至る諸因については他項に譲るが,この疾患の疑いのある時,治療に進む前に,もしくは治療法を考えるうえでも短時間のうちにリスクを層別化することは最も重要なことである。リスクの高いものが何かを知り(表 1)1),短時間でリスクの層別化をし(表2)1),治療方針の決定を行う。この層別化は,米国における米国心臓学会(American CollegeCardiology:ACC)/ 米国心臓協会(AmericanHeart Association:AHA)によるガイドライン上のものと比較しても,ほぼ同一である(表3)2)。すなわち,リスクのより高いものであればより intensive care となり,厳重な内服・点滴加療となり,より早期に複雑な治療を施していく可能性が高くなっていくことになる。 -
急性冠症候群の外科治療
41巻8号(2007);View Description Hide Description急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)とは,臨床的には不安定狭心症,急性心筋梗塞および虚血に基づく心臓突然死を包括した概念である。それらは病理学的に冠動脈粥状硬化病変の破綻と血栓形成に基づく一連の疾患群であり,破綻部の狭窄程度および冠動脈病変部位によりさまざまな病態を引き起こすと考えられている1)。ACS は臨床症状,心電図,血液生化学検査,超音波検査,および最終的には冠動脈造影検査により診断される。いったん診断がついた場合,時間的に早期治療が最も重要な課題となる。薬物的治療が最優先となり,その後の冠動脈血行再建は冠動脈造影所見によりカテーテル治療か外科的治療が選択されることとなる。本稿では ACS に対する外科治療の成績と今後の外科的血行再建術の可能性について,われわれの経験をもとに述べたいと思う。
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治療のピットフォール
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急性心筋梗塞再灌流後の早期機械的失調と高度微小循環障害
41巻8号(2007);View Description Hide Description急性心筋梗塞(acute myocardial infarction:AMI)に伴う最重篤な合併症のひとつに左室自由壁破裂(free wall rupture:FWR),心室中隔穿孔(ventricularseptal rupture:VSR),乳頭筋断裂(papillary musclerupture:PMR)という機械的失調の発生がある1)。再灌流療法未施行時代から血栓溶解療法を主体とする時期を経て経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronaryintervention:PCI)を血行再建治療の主体とする現在,この合併症の頻度は激減した2~4)。しかし機械的失調の発生はいまだ致死的であり,この合併症に基づく死亡率はきわめて高い5)。従来機械的失調の発生に関する疫学的危険因子として高齢,女性,高血圧,初回前壁心筋梗塞,後期血栓溶解療法等があげられていたが,より具体的には AMI-PCI 後の遅発性(AMI 発症 72 時間以後)FWR と血中 C 反応性蛋白高値の関連性が報告されているにすぎず,早期機械的失調に関する明らかな予測因子は示されていない6,7)。
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座談会
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- 急性冠症候群
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新しい治療
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急性冠症候群への再生医療―細胞治療と造血性サイトカイン治療―
41巻8号(2007);View Description Hide Description心筋梗塞への再生医療として,末梢血単核球あるいは骨髄単核球を利用した血管新生治療が臨床応用されている。心筋梗塞は ST 上昇型と非 ST 上昇型に二分されるが,再生医療の主たる対象は前者の ST上昇型である。急性心筋梗塞(AMI)の経皮的冠動脈形成術(PCI)治療後に骨髄単核球を冠動脈から注入する血管新生治療が,欧米で 2001 年ごろからスタートした。初期のオープンラベル臨床試験では半年後の心機能が 10%前後と改善し世界中の注目を浴びたが,最近の二重盲検試験では有意な改善がみられないとの報告もあり,適応症例の選択が必要になった。造血性サイトカイン(G-CSF)を AMI後に投与して,心機能を改善させる臨床試験も実施されている。一方,陳旧性心筋梗塞(OMI)への骨髄単核球の直接心筋移植は,有効例が多く報告され,開胸・カテーテルを利用した再生医療が期待されている。ヒト心筋からの多能性幹細胞も分離され低心機能の重症心筋梗塞への移植もまもなくである。心筋梗塞への再生医療の最新の臨床試験の成績を中心に述べ,将来展望についてもふれてみたい。
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症例
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冠動脈攣縮によると思われる急性冠症候群の 3 症例
41巻8号(2007);View Description Hide Description不安定狭心症,急性心筋梗塞,虚血性心臓突然死は,総称して急性冠症候群とよばれる1~3)。その成因は,冠動脈プラーク破綻・びらんから冠動脈内腔に血栓形成を生じ,内腔が完全ないしは亜完全閉塞をきたすためとされている。急性心筋梗塞における冠攣縮の関与については,Oliva らが発症 12 時間以内の急性心筋梗塞 15 例に,ニトログリセリンの冠動脈内投与を行い,6 例(40%)に内腔の閉塞が解除されたことを報告している4)。また,急性心筋梗塞発症前の責任冠動脈の 86%に有意狭窄所見をみとめず,心筋梗塞は狭窄がほとんどないか軽度狭窄病変から発症することも明らかとなった5)。Ogawaらは,急性冠症候群における冠攣縮の関与について,凝固線溶系の異常・血小板凝集能の亢進と炎症の関与を報告している6~10)。冠攣縮は人種差をみとめ,日本人は欧米人に比して約 3 倍多いことがすでに報告されている11~13)。また,急性心筋梗塞亜急性期における冠攣縮関与の国際協同研究では,われわれ日本人はコーカサス人に比して約 3 倍誘発冠攣縮頻度が高値であった14)。したがって,日本の循環器日常診療では,急性冠症候群における冠攣縮の関与を,欧米人に比して多くみとめる可能性が高いと思われる。しかし,自然誘発の冠攣縮を証明しえた場合は診断は容易であるが,急性期の冠動脈造影検査にて有意狭窄をみとめなかった場合には,最終診断が困難となる場合もある。自験例を提示し,診断過程から冠攣縮誘発負荷試験の限界について述べる。当院で,1998 年 7 月から 2007 年 4 月末までに,選択的冠攣縮誘発負荷試験を施行し,266 例の冠攣縮性狭心症を最終診断した。266 例中,異型狭心症は 18 例(6.8%)で,冠攣縮が原因と考えられた急性冠症候群を 13 例(4.9%)にみとめた。急性心筋梗塞が 4 例,不安定狭心症が 8 例,冠攣縮性狭心症診断後の治療中に突然死を 1 例みとめ,6 例は救急車で来院し,緊急冠動脈造影検査を 5 例に施行した。冠攣縮によると診断された急性冠症候群 13 例中,非 ST 上昇型の不安定狭心症例と,非 ST 上昇型と ST 上昇型の急性心筋梗塞症例を提示する。 -
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Virtual HistologyTMにより血栓を同定しえた急性冠症候群の 1 症例
41巻8号(2007);View Description Hide Description血管内超音波検査(intravascular ultrasound:IVUS)は血管断面を断層像として描出する検査方法で,冠動脈血管壁の構造や内腔構造の情報を生体内で得ることができる。そのため,的確な病変形態の把握と,それに基づく安全で効果的な冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention:PCI)を行う際には必須の検査法である。Virtual HistologyTM(VH:Volcano Therapeutics 社製,CA,USA)は radiofrequencybackscatter signal のスペクトルを解析することにより血管組織の性状を定性的に評価し,プラークの構成成分を評価する方法である。一方,急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)の発症には,プラークの破綻を起点として血栓の存在が大きく関与している。VH-IVUS は現段階ではその解析分類ツリーに血栓の同定がなされていないため,ACS 病変における血栓の同定は困難である。しかしながら,われわれは VH の解析と grayscaleIVUS による慎重な読影を加味することにより血栓の同定を行い,血管内視鏡によって確認している。本稿では,慎重な読影が診断に有効であった 1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。
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治療の歴史
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DI 室Q&A
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高脂血症治療薬の主な有害反応
41巻8号(2007);View Description Hide Description高コレステロール血症は動脈硬化の主要なリスクファクターであり,薬物によるコレステロール低下療法が動脈硬化予防に有効であることが大規模臨床試験等によって実証されている。コレステロール低下療法の第一選択薬はHMG-CoA 還元酵素阻害薬,いわゆるスタチンであり,国内外において高脂血症治療薬市場の85%を占めている。高脂血症治療薬を処方する際,血清コレステロール低下作用など直接的な治療効果が選択基準となるが,治療期間が長期に及ぶため,横紋筋融解症をはじめとする有害事象や薬物間相互作用などの発現リスクについても熟知しておく必要がある1)。
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suggestion
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