Volume 41,
Issue 10,
2007
-
扉・目次
-
-
Source:
治療学 41巻10号, 997-999 (2007);
View Description
Hide Description
-
序説
-
-
ワクチン
-
Source:
治療学 41巻10号, 1001-1006 (2007);
View Description
Hide Description
-
特集
-
-
予防接種の現状と対策
-
Source:
治療学 41巻10号, 1007-1013 (2007);
View Description
Hide Description
感染症の予防策には,“感染源”,“感染経路”および“感受性”という 3 つの視点がある。このうち感染源および感染経路対策については,「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」に基づき,都道府県知事(および保健所を設置する政令市・特別区の首長)を主たる実施主体として推進されている。一方,感受性対策としての予防接種については,「予防接種法」に基づき,基本的に市町村長を実施主体として推進されている。予防接種は,住民にとって身近で頻度の高い保健サービスの代表であり,基礎的自治体(すなわち市町村)の責務として接種機会の確保を図るという制度である。予防接種法は,1948 年の制定以来,幾度も改正を重ねて現在に至っている(表 1)。本稿では,同法に基づくわが国の予防接種制度の変遷,および最近の改正事項(BCG の予防接種法への包含,麻疹・風疹混合ワクチンや日本脳炎ワクチンの扱いなど)に焦点を当てて,現行制度の課題や今後の展望等を含めて解説する。
-
Source:
治療学 41巻10号, 1014-1016 (2007);
View Description
Hide Description
わが国における細菌に対するワクチンは,肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンとインフルエンザ b 菌(Hib)ワクチン,ジフテリア・百日咳・破傷風 3 種混合ワクチン(DPT ワクチン)が実施可能である。これらのワクチンの特徴と現状について解説し,問題点についても述べる。
-
Source:
治療学 41巻10号, 1017-1021 (2007);
View Description
Hide Description
北半球諸国におけるインフルエンザの流行は冬季に一峰性のピークを示す。一方,亜熱帯,熱帯諸国のインフルエンザは雨季を中心にした二峰性またはピークの不明瞭な通年型の流行パターンを示す。しかし,最近ではわが国においても冬場のみならず春から夏場にかけて地域的な流行が起こっており1),インフルエンザの流行パターンが通年化する傾向がみられている。特に,夏場の流行から散発的に分離される流行株はその後の冬の主流行株となることがある。このことから,早い時期における次シーズンの流行予測をするためにも,また,新型インフルエンザウイルスの出現監視を継続的に行うためにも,通年でのインフルエンザ株サーベイランスは重要である。本稿では,昨シーズン(2006~2007 シーズン)のわが国を中心とした世界各国でのインフルエンザウイルスの流行状況と 2007 年度のワクチン株について解説したい。
-
Source:
治療学 41巻10号, 1023-1025 (2007);
View Description
Hide Description
日常臨床において問題となる肝炎ウイルスのうちで,A 型肝炎ウイルス(hepatitis A virus:HAV)と B 型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)に対するワクチンはすでに承認され使用されているが,C 型肝炎ウイルス(hepatitis Cvirus:HCV)に対するワクチンについてはいまだ有効なものはできていない。肝炎ウイルスとしては,ほかに D 型,E 型などがあるが,その発症形態,発症頻度からすると,ワクチンという予防手段を講じる必要性は乏しい。本論では,ワクチンが作成された順に,HBVワクチン,HAV ワクチンについてそれぞれ述べ,最後に HCV ワクチンの開発状況につき簡単に触れる。
-
Source:
治療学 41巻10号, 1026-1030 (2007);
View Description
Hide Description
-
Source:
治療学 41巻10号, 1033-1036 (2007);
View Description
Hide Description
わが国において行われる予防接種は,制度として国の法律,すなわち予防接種法に基づいて行われる定期接種と,それ以外の制度で行われるもの,任意接種の 3 つに分かれる。本特集の他項でもすでに述べられているように,定期接種として対象となる疾患は,公衆衛生学的観点より一類疾病(結核,ジフテリア・百日咳・破傷風,ポリオ,麻疹・風疹,日本脳炎)および二類疾病(インフルエンザ)と定められている。定期接種には接種期間や対象者について一定の決まりを設け,これについて国は責任をもって関与する。実施は,市町村長(東京都では特別区長)あるいは都道府県知事の責任において行われる。定期接種には含まれないが薬事法の承認は得られている予防接種,たとえば水痘,ムンプスは任意接種となる。定期接種に用いられる予防接種であっても,その年齢幅や期間などの規定から外れたもの,たとえば小児へのインフルエンザあるいは成人の麻疹・風疹などの予防接種は任意接種という範疇で行われる。予防接種による,または予防接種が原因であることが否定できないと認定された定期接種による健康被害については,国による救済がなされる。任意接種の場合には,独立行政法人医薬品医療機器総合機構による救済制度が適用される。
-
Source:
治療学 41巻10号, 1037-1040 (2007);
View Description
Hide Description
予防接種対策は,公衆衛生活動のなかでも最も費用対効果の高い対策であり,WHO(世界保健機関)では,蟻田功博士が率いた天然痘根絶計画の系譜を引き継ぐ重点プログラムに位置付けられてきた。また,予防接種対策は,世界には 1 日 1 ドル未満で暮らす絶対貧困者が 11億,飢餓の危険にさらされている子どもが 3 億という現実に対し,21 世紀の国際社会がともに行動するミレニアム開発目標(MillenniumDevelopment Goals:MDGs)を達成するための重要なツールとされる。地球的ワクチン政策は,包括的な概念であり,一対一対応するプログラムはない。本稿では,予防接種対象疾患の最新の知見等は他稿に譲ることとし,地球規模の予防接種関連対策(予防接種プログラム)のこれまでの成果や現状と戦略を紹介しつつ,地球的ワクチン政策の意味について考えたい。
-
ワクチンによる特異的免疫機能の誘導
-
Source:
治療学 41巻10号, 1041-1045 (2007);
View Description
Hide Description
-
Source:
治療学 41巻10号, 1046-1050 (2007);
View Description
Hide Description
古代エジプトのミイラには天然痘の発疹,壁画にはポリオの麻痺症例が認められ,ヒトの歴史において感染症は人類を苦しめてきたことがわかる。こうした感染症が伝染性疾患としてその病原因子が解明され始めたのは 19 世紀になってからである。そして,これらの感染症の感染,発症に至る病態,感染防御機構が解明されてきたのは最近になってからである。感染症学,ウイルス学,細菌学,免疫学,分子生物学の進歩が感染防御,予防の理論的背景を解明してきたが,現在使用されているワクチンの原型は自然現象のたゆみない観察と経験的に実践された産物で多分に偶然の賜物であり,ワクチンの感染防御・発症阻止のメカニズム,弱毒化のメカニズム,不活化抗原の有効性などがすべて解明されたわけではない。現行ワクチンへの理解を深めるとともに新規ワクチンデザインについても言及したい。
-
ワクチンの展望
-
Source:
治療学 41巻10号, 1051-1053 (2007);
View Description
Hide Description
性器に感染するヒトパピローマウイルス(human papillomavirus:HPV)は,子宮頸がんの発生に深く関与している。40 程度の型が知られる性器 HPV のなかで,特定の約 15 の型(16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,68,69,73,82 型など)が,子宮頸がん関連HPV(これを high-risk types という)として知られ,最も高頻度に検出されるのは HPV16 であり,次いで HPV18 である1)。子宮頸がんの原因とはならない HPV は low-risk types とよばれ,尖圭コンジローマや若年性喉頭乳頭腫の原因である HPV6,11 型が代表的である。HPV 感染は最も頻度の高い性感染(STI)で,20 歳前後の女性のコホート研究では 3~5 年で 40~60%に HPV 感染が起こる2)。米国ではHPV の新規感染が年間 620 万人に起こると推定されている。HPV 感染からみると,子宮頸部の HPV 感染のうち,がんにまで至るものはごく一部であり,むしろ例外的なイベントといえる。HPV がん蛋白である E6/E7 の機能と HPV感染細胞に対する細胞免疫が重要な鍵を握っている。HPV 感染は子宮頸がん発生の必要条件であっても十分条件とはいえないが,その感染を予防することで,子宮頸がん発生の制圧が期待できる。先進国では,検診の普及により子宮頸がんの罹患,死亡が減少傾向にあるが,世界的には子宮頸がんは罹患数・死亡数において女性では乳がんに次いで第 2 位を占めている(罹患数;50万人/年,死亡数;27 万人/年)。わが国を含む先進国では,子宮がん検診,子宮頸がんの前駆病変である子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)の経過観察・治療に多くの費用を要し,米国では年間40~50 億ドルを費やしているとされる3)。
-
Source:
治療学 41巻10号, 1055-1058 (2007);
View Description
Hide Description
H5N1 亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルスのヒトへの感染が,これまでに 12 ヵ国,328 人で確定診断され,そのうち 200 人が死亡している(2007 年 9 月 10 日現在)1)。しだいに明らかになってきた高病原性鳥ウイルスのヒトへの感染分子機構は,わずかな変異でそれが世界的大流行(パンデミック)を引き起こす可能性を示している。幸い,WHO(世界保健機関)が推奨する組換えウイルスを基盤とする不活化ワクチンの臨床試験も終盤を迎え,ようやくH5N1 ワクチンの実用化がみえてきた。本稿では,新型インフルエンザワクチンの開発と今後の展望について解説する。
-
Source:
治療学 41巻10号, 1059-1062 (2007);
View Description
Hide Description
ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiencyvirus:HIV)に対する予防ワクチン開発は,世界における HIV 感染者数増大抑制のために重要かつ必要不可欠と考えられている。しかし,有効なワクチン開発に向けての戦略確立には至っておらず,まずは,予防ワクチン接種による HIV 曝露後の体内ウイルス量低下をめざして研究が進められている。
-
Source:
治療学 41巻10号, 1063-1066 (2007);
View Description
Hide Description
感染症を効果的に予防するためには,あらかじめ対象とする病原体に対する免疫を生体内に賦与することが重要である。これまで,さまざまな感染症の予防・根絶にワクチンが大きな役割を果たしてきたことは言うまでもない。現行のワクチンのほとんどは注射による接種法で,粘膜における免疫応答(特に分泌型 IgA 産生)を賦活化しえないが,重症急性呼吸器症候群(SARS),インフルエンザ,エイズ,結核など最近問題となっている新興・再興感染症の原因病原体をはじめ,多くの病原体の主要感染経路は粘膜であることを考えると,注射型ワクチン接種ではこれら病原体の粘膜における感染阻止効果が弱いと考えられる。また,注射型ワクチン接種はヒトからヒトへの感染伝播の危険性,専門的器具,人材の配備やワクチンの保管管理等の問題があり,開発途上国においては普及しにくいのが現状である。粘膜は,全身系の免疫機構と照らし合わせると独特の免疫機構を備えており,粘膜に抗原を感作させることによって,分泌型 IgA の産生や細胞傷害活性といった抗原特異的な粘膜免疫応答が惹起されるのみならず,IgG を主体とした全身・末梢系免疫応答を惹起させることも可能である。つまり,粘膜免疫システムの応用を目的とした粘膜ワクチンは,粘膜面における感染阻止と生体内防御といった 2 段構えの防御機構を構築することが可能であると考えられ,“食べる(飲む)”,“吸う”といった日常の生理的行為によって簡便に接種できることからも,精神的・肉体的苦痛を伴う注射型ワクチンに代わる次世代型ワクチンとして注目を浴びている。しかしながら,粘膜ワクチンの実用化のためには多くの課題が残されていることも事実である。本稿では,粘膜免疫機構を応用した粘膜ワクチン開発について最近の知見を交えながら言及したい。
-
Source:
治療学 41巻10号, 1067-1071 (2007);
View Description
Hide Description
多くの感染症が呼吸器や消化器,生殖器等の粘膜を介し感染することから,感染症に対する予防ワクチンは粘膜面で病原体特異的な免疫反応が誘導されることが必要である。粘膜免疫はその特徴として粘膜面に抗原を運び特異的な免疫誘導を行えば,その局所のみならず広く粘膜面に共通して特異的な免疫反応を誘導できる。一方,近年新たなワクチンの手法としてワクチン抗原の DNA を用いる DNA ワクチンが数多く報告されている。DNA ワクチンは簡便かつ安全,さらに安価であり,保存性からも世界中で広く用いられる可能性をもつことから,新規ワクチン候補として大きな期待を受けている。本稿では,経口感染を示す E 型肝炎ウイルス(Hepatitis E virus:HEV)のウイルス様中空粒子(virus-like particle:VLP)を DNA ワクチンのベクターとして用いる,新たに粘膜免疫誘導可能な DNA ワクチンの投与法について述べる1)。
-
Source:
治療学 41巻10号, 1073-1076 (2007);
View Description
Hide Description
がんワクチンの開発は,標準的治療法としての地位を固めつつある抗体療法以外の手法はまだ開発段階である。しかし,がん関連抗原の同定をはじめとする基礎免疫学研究の進歩により科学的で効果的な治療法として確立されることへの期待が高まってきている。最近の Toll 様受容体(Toll-like receptor:TLR)の発見とその機構の理解により,100 年以上前より施行されてきた治療法の意味付けが可能になるなど,現象論としてしかとらえることができなかったがん免疫療法の作用機構に関する理解も飛躍的に深まっている。今後これらの知識をもとにしたより新しい治療法の臨床試験が進められ,この分野がさらに進展することが期待されている。
-
Source:
治療学 41巻10号, 1077-1080 (2007);
View Description
Hide Description
最近になって,麻疹風疹混合ワクチンとインフルエンザ b 型菌(Hib)ワクチンが承認されたが,その前に承認されたワクチンは 1995 年の A 型肝炎ワクチンであり,10 年にわたって新しいワクチンが登場してこなかった。その間,米国では表 1 に示すようにいくつかのワクチンが承認され,使用できるようになった。では,わが国では米国と異なり,なぜ新しいワクチンの開発や導入がなされなかったのか。それにはいくつかの理由があると考える。以下にそれらの理由について考察するとともに,今後の方向性に関して,最近厚生労働省が打ち出したワクチン産業ビジョン1)の内容を参照しながら考えてみたい。
-
座談会
-
-
Source:
治療学 41巻10号, 1081-1089 (2007);
View Description
Hide Description
-
治療のピットフォール
-
-
Source:
治療学 41巻10号, 1090-1091 (2007);
View Description
Hide Description
予防接種に使用されるワクチンは,精製,改良の結果,重篤な副反応を惹起する危険性がきわめて低くなっている。しかし,ワクチンには免疫応答に必要な抗原成分のほかに,培養資料に由来する蛋白成分,抗生物質,アジュバントなどが含まれ,これらのすべての成分に対しての副反応が,まれではあるが起こりうる。
-
Source:
治療学 41巻10号, 1093-1094 (2007);
View Description
Hide Description
アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)は,アトピー素因を基盤として発症する慢性皮膚炎である。本疾患患者は,年々増加傾向を示しており,小児では 10~15%に及ぶとされ,社会問題になっている。原因の詳細はまだ不明であるが,現在のところ,角層のバリア異常と免疫学的 T helper(Th)2 優位性が本症の発生機序として重要と考えられている。近年勃発したテロ事件を契機に,生物兵器としてのウイルス感染症に対する予防措置として,経皮ワクチン接種の需要が高まっている。皮膚の物理的および免疫学的バリア異常を特徴とする AD 患者が増加するに伴い,それがゆえに発現する経皮生ワクチン接種の副作用も考慮する必要がある。本稿では,ADにおけるウイルス感染に対する防御能について,最近の知見を紹介し,AD における経皮ワクチン接種に対する注意点を解説する。
-
Source:
治療学 41巻10号, 1095-1096 (2007);
View Description
Hide Description
経口生ポリオワクチン(oral polio vaccine:OPV)に関連する麻痺(vaccine-associated paralytic poliomyelitis:VAPP)は,治療の落とし穴というよりワクチンの落とし穴である。本稿では,OPV に不可避のVAPP の臨床疫学的特徴と,最近話題の cVDPV(circulating vaccine-derived poliovirus:生ワクチン由来株の伝搬),不活化ポリオワクチン(inactivatedpolio vaccine:IPV)の開発状況を述べる。
-
治療の歴史
-
-
Source:
治療学 41巻10号, 1097-1103 (2007);
View Description
Hide Description
マラリアはハマダラカによって媒介される寄生虫病である。ヒトには,熱帯熱マラリア原虫(Plasmodiumfalciparum),三日熱マラリア原虫(P. vivax),四日熱マラリア原虫(P. malariae)および卵形マラリア原虫(P. ovale)の 4 種が感染する。マラリア原虫は赤血球の中で増殖を繰り返し,発熱や貧血,昏睡というマラリアの臨床症状はこのときに現れる(図1)。なかでも致死性の高い熱帯熱マラリア原虫は熱帯・亜熱帯地域を中心に流行し,年間に 100~300万人がこの犠牲となっている。また,流行地域においては医療費,労働力をも奪われ,マラリアによる経済的損失は年間に 1 兆 5000 億円と推定されている。一方,わが国でも海外渡航者や来日外国人によって国内に持ち込まれる輸入マラリアが年間に約100 例程度あり,熱帯熱マラリアによる死亡例が散発している。近年,薬剤耐性マラリア原虫が蔓延し,また地球温暖化による流行地域の拡大の懸念から,抜本的な対策としてマラリアワクチンの開発に期待が寄せられている。ワクチンによってマラリア原虫の感染サイクルを断つ可能性は,その生活環において 4 ヵ所が考えられている(図 1)。それぞれ標的とする抗原,期待するエフェクター機構,予防効果など,さまざまな点で異なり,ワクチンの開発戦略も大きく異なる。開発が進められているワクチン候補抗原を図 1に示した。ワクチン候補抗原分子は従来,動物実験によって同定されてきた。臨床試験がなされた試作ワクチンを表 1 にまとめる。
-
DI 室Q&A
-
-
Source:
治療学 41巻10号, 1105-1106 (2007);
View Description
Hide Description
-
suggestion
-
-
Source:
治療学 41巻10号, 1022-1022 (2007);
View Description
Hide Description
-
Source:
治療学 41巻10号, 1054-1054 (2007);
View Description
Hide Description