ブレインナーシング
Volume 23, Issue 1, 2007
Volumes & issues:
-
特集
-
- 脳神経疾患病棟の感染対策
-
-
1. 感染防止の基本を押さえよう
23巻1号(2007);View Description Hide Description脳神経疾患病棟で見られる感染症には,脳神経系に起こる感染症と,脳神経疾患患者の全身のいろいろな部位に発生する感染症があります.いずれも,他領域のものと比べて,命にかかわる重篤な状況になったり,合併症を引き起こす可能性があります.また,いったん感染症にかかってしまうと,感染そのものが重症であること以外に,高齢や意識障害などのために理解が得られにくく,治療がたいへん厄介になります.そこで,感染を起こす前にこれを予防することは,脳神経疾患病棟で日常行われるべき,大切な看護業務と考えられます.患者のみならず医療従事者の安全管理に大変重要なことではないでしょうか.ここでは,感染が起きる要因とその対策,および最近問題となっている耐性菌に関して述べていきます. -
2. 脳神経疾患病棟でみる感染症とその原因
23巻1号(2007);View Description Hide Description脳神経疾患病棟は,神経内科病棟と脳神経外科病棟に分かれ,それぞれがみる感染症は異なります.神経内科では,髄膜炎や脳炎といった感染症を起こしてから入院する患者が中心ですが,脳神経外科では脳膿瘍や硬膜下膿瘍といった手術が必要な患者,または外傷や手術後に感染症を起こす患者が中心です.両科ともに共通した問題は,意識が悪い患者,飲み込みができない患者,寝たきりになった患者が多いことによる入院後の肺炎,またMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などによる院内感染です.本稿では,中枢神経系感染症疾患を紹介し,感染対策,感染症法と結核予防法についても簡単に触れます. -
3. 術後に起こりうる感染症とその予防
23巻1号(2007);View Description Hide Description脳や脊髄は無菌ですので,脳膿瘍などの感染症や外傷の場合を除き,脳神経外科手術は当然清潔手術となります.しかしながら,手術中はいったん外界に開放され,操作を受けるわけなので,術者,器械出し看護師,手術器具などを介して,頭蓋内や脊髄に細菌が入り込む可能性がないわけではありません.そして,ひとたび感染を起こせば,容易に髄膜炎,脳炎あるいは脊髄炎となり重篤な状況が引き起こされますので,きちんと予防することが絶対に必要となります.ここでは,脳神経外科の個々の手術および治療手技について,それぞれ起こりうる感染症とその予防法を説明します. -
-
5. 脳神経疾患病棟におけるICTの活動
23巻1号(2007);View Description Hide Description脳神経疾患病棟での栄養管理で重要なのは以下の3点です.①十分な血糖管理.②早期少量経腸栄養.③十分な摂取カロリー.とくに熱傷や外傷では,組織の修復のために多くのエネルギーが必要とされ,重症頭部外傷などではその必要カロリーは通常の2〜3倍に及ぶと言われています.また外科領域では,手術前の十分な栄養管理も術後合併症を予防するうえで重要とされ,手術前から中心静脈カテーテルを挿入した積極的栄養管理を行うこともまれではありません.ここで大切なのは,いかに患者の必要カロリーを把握し,摂取カロリーを算出していくか,そしてどのような摂取経路を選択するかという点です.
-
巻頭カラー
-
- 食べたくなる!食べさせたい!嚥下食
-
病院で『季節感を味わう』ってうれしい!
23巻1号(2007);View Description Hide Description当院では,『ごちの日』と称して,四季折々の素材を使い季節感や行事を食事に盛り込み,手作りのメッセージカードと一緒に患者様のもとにお届けしています.そしゃく・嚥下障害のある患者様にも対応しています.1月はお正月料理に始まり『ごちの日』の多い月です.今月は,鏡開きのペースト食をご紹介します.今年も,「おいしそう!」と楽しんでいただけるメニューや「困ったわ!」に対応できるようなメニューをご紹介したいと思います. - 手術からみる あたまの神経・血管解剖
-
慢性硬膜下血腫
23巻1号(2007);View Description Hide Description今回は,高齢者の軽微な頭部外傷後しばらくしてから発生し,頭部外傷の受傷者が“あとでおかしくなることがある”という言い方でよく心配される慢性硬膜下血腫についてのお話です(図:今月の手術部位).慢性硬膜下血腫とは,新生被膜(外膜と内膜)に包まれた流動性の血液が,硬膜とクモ膜との間に貯留した状態を言います.慢性硬膜下血腫の原因には,外傷によるものと,非外傷性(外傷と無関係なもので,特発性とほぼ同義語に用いられる)とがありますが,ほとんどが外傷によります.また,外傷も重篤なものではなく,かもいで頭部を打撲したなど
-
新連載
-
- 忘れ得ぬナース&ドクター
-
- 脳をくすぐる一冊
-
-
お勉強
-
- あなたならどうする? 先輩・後輩ナースの脳神経疾患看護計画
-
- 脳神経専門ナース育成プログラム
-
脳卒中リハビリテーション
23巻1号(2007);View Description Hide Description脳血管障害のリハビリテーションは入院直後から始まっており,そのなかで私たちはその時期に必要な援助を的確にアセスメントし,実践しなければなりません.急性期はとくにクリティカルケアと二次障害予防などのリハビリテーションが必要となります.また回復期になると障害の受容段階になるため,精神的援助も重要です.維持期になると,残存機能やリハビリで獲得した機能を維持しながら家庭や社会生活への適応を患者・家族とともに考え,不安の軽減を図らなければなりません.このように患者・家族を取り巻く環境は目まぐるしく変化していきます.私たち看護師は先を見据えた看護能力を必要とします. - 病棟薬剤師に聞く 脳神経疾患ナースのためのくすりの知識
-
アフロクアロン,塩酸エペリゾン,塩酸チザニジン(筋弛緩薬)
23巻1号(2007);View Description Hide Description広義に筋弛緩薬と分類される薬剤は,痙けい縮・筋緊張緩和や痙性麻痺に使われるほか,麻酔・手術に使われる薬剤,悪性症候群の治療に使われる薬剤,ボツリヌス毒素などさまざまです.今回は筋緊張緩和作用を示す薬剤(表1)のなかで,頭痛の治療に使用される薬としてアフロクアロン,塩酸エペリゾン,塩酸チザニジンについて説明します. - 脳神経外科 術後急性期から回復期のリハビリテーション
-
リハビリテーションの装具と自助具
23巻1号(2007);View Description Hide Description脳血管障害や脳外傷のリハビリテーションにおいて,補装具や自助具を駆使した理学・作業療法はきわめて有用な治療手段のひとつです.補装具は,身体に障害を持った人の失われた機能の代償や,残存機能を補う目的で使用されます.また,自助具はself helpdeviceの訳語であり,より豊かな日常生活を送るためみずからを助ける道具という意味になります.本稿では脳血管障害による片麻痺患者に多く処方されるつえ,上下肢装具,自助具について解説します. - スッキリ解決!Q&A
-
-
エッセイ・読みもの
-
- 探訪 世界のスカル-ミュージアム
-
パリ博物館 古生物学・比較解剖学ギャラリー
23巻1号(2007);View Description Hide Description1898年に開設されました.展示のほとんどは1795年から1832年の間,自然史博物館に在籍した創設者のキュヴィエ(Georges Cuvier,1769〜1832)の成果です. - 元気はつらつ 今月のツボ
-
- ドラマ・映画にみる脳の疾患 シネマホスピタル
-
フェノミナン
23巻1号(2007);View Description Hide Description感動的でさまざまなことを考えさせられる良質の映画です.1996年のアメリカ映画で大変話題になりました.主人公の男性が誕生パーティーの帰りに星を見ていると,キラキラ輝いて自分の体に入り,以後,超能力を獲得したというものです.しかし,そのために多くの友人が変人扱いをして自分から離れてゆきます.その後,脳腫瘍による脳の刺激によるものと判明.腫瘍は悪性で余命わずかと診断され,ついに愛する人のもとで人生の終焉えんを迎えます.友人,愛,病気の告知,家庭医の役割について考えさせられる素晴らしい映画でした.随所に流れる音楽もどれも素晴らしい.とくにエリック・クラプトンの『Change TheWorld』は哀かなしく切ない響きで忘れられません.
-
全国施設情報
-
- NURSE STATION
-
徳島大学医学部・歯学部附属病院 SCU,東5階病棟
23巻1号(2007);View Description Hide Description徳島大学医学部・歯学部附属病院は,1943年に徳島県立徳島医学専門学校附属病院として発足.1974年に脳神経外科,1992年に集中治療部が設置され,高度な先端医療を提供してきた.2003年にはまず看護部が,翌2004年には病院全体がISO9001を取得.質の高い看護を支える取り組みやチーム力が自慢の活気あふれる2つの病棟を取材した. (編集部:平野・大谷・藤野) - おしえて!全国脳神経疾患病棟 看護のくふう
-
脳血管障害患者が抱く希望に沿った援助〜積極的傾聴の実践〜
23巻1号(2007);View Description Hide Description脳血管障害により身体・精神機能に障害を負った患者は,生活の再構築を余儀なくされ,障害を持った人間としての自己を再獲得していかなければなりません.またリハビリテーションの過程において,患者は自分が負った障害,起きている現実と向き合うことになります.ショックや落ち込み,不安といった心理的問題は深く大きく,さまざまな心理的葛藤を体験します.私たちは,そのような状況にありながらも,機能訓練や日常生活動作の獲得に取り組み続ける姿には,その人の力となるもの,その人自身を支えるもの,すなわち希望があるのではないかと考えました.そこで,脳血管障害患者がリハビリテーション病院入院中に抱く希望はどのようなものかを明らかにするために面接調査を行いました.