ブレインナーシング
Volume 24, Issue 3, 2008
Volumes & issues:
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特集
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- 今さら聞けない 脳神経外科看護の疑問40〜後輩に根拠が示せるQ&A〜
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1.意識・神経の観察の疑問
24巻3号(2008);View Description Hide Description「意識とは何ですか」と聞かれると答えに困ってしまいそうですが,“ 意識が正常に保たれている” 状態や“ 意識が障害されている” 状態を考えてみると,少しイメージがわいてきそうです. “ 意識がある” とは,脳幹網様体という脳幹の神経の仕組みが脳全体を刺激している状態です(図1).すなわち,自己と周囲の環境を認識し,周囲の環境に適切に反応できる状態です.意識障害は,大脳や脳幹が障害されたときに脳幹網様体の働きが弱くなり,外からのいろいろな情報や刺激に対して大脳が反応しなくなる状態です.意識レベルは“ 覚醒状態”と“ 認識内容” という2 つの要素の障害程度により判定されます1). -
2.バイタルサインの観察の疑問
24巻3号(2008);View Description Hide Descriptionバイタルサインとは,生体が生きていることを示す“ からだ” のなかの重要な目印であり,それらは“ 数値” により示すことができます.最も代表的なものは,体温,脈拍,血圧,呼吸,意識などです2).脳神経外科では,「1.意識・神経の観察の疑問」で述べたように意識から観察するのが重要なポイントと言えます. -
3.術後管理の疑問
24巻3号(2008);View Description Hide Description手術後に起こりえる合併症にはいろいろあります.それを表1 にまとめました.おもに脳自体の問題で起こるもの,脳以外の原因で起こるもの,基礎疾患が原因で起こるものがあります.これらの合併症が起こると患者の回復が遅れるだけでなく,場合によっては生命の危機を招く事態になることもあります. -
4.処置の疑問
24巻3号(2008);View Description Hide Description褥瘡予防は,①圧力の軽減(体位変換と体圧分散用具の使用),②スキンケア(摩擦とずれや皮膚湿潤の回避)③栄養状態の改善が大切です. -
5.日常生活援助の疑問
24巻3号(2008);View Description Hide Description嚥下障害があると,知らないうちに気道から肺に食物や唾液が入り込み,“ 不顕性誤嚥”が起こりやすくなります.また,胃液が食道に逆流し咽頭に至り,さらにそれを誤嚥する“ 胃食道逆流” という現象もあります.これらの現象により誤嚥性肺炎を併発する可能性があるため,肺炎予防のためにベッドアップを行います. -
6.ベッドサイドリハビリテーションの疑問
24巻3号(2008);View Description Hide Description安静臥床による廃用症候群は,4 〜 5 日で起こり始めると言われています.早期からのリハビリテーションは廃用性筋萎縮を予防するだけでなく,さまざまな合併症(深部静脈血栓症,褥瘡,誤嚥性肺炎など)の予防を可能にするため,急性期であっても適切なリハビリテーションを行う必要があります. 良肢位保持,体位変換,関節可動域訓練は発症後から開始可能と言われています.全身状態を観察しながら慎重に行いましょう.べッドアップや座位訓練も,発症後24 〜 48 時間経過を見て,バイタルサインが安定した状態であれば血圧や自覚症状などを観察しながら行っていきましょう. -
7.栄養管理の疑問
24巻3号(2008);View Description Hide Description栄養不良になると脂肪はエネルギー源として消費され,筋肉はアミノ酸に分解されアルブミンなど身体の維持に必要なタンパク合成に使用されます.その結果,身体はやせ,進行すると仙骨や大転子などの骨突出が著明となってきます.また,アルブミンが低下し血清タンパクが低下すると浮腫や腹水が出現します.浮腫が起こると皮膚が非常に傷つきやすい状態となってしまうため,わずかな刺激で褥瘡が発生しやすくなります. -
8.検査の疑問
24巻3号(2008);View Description Hide Description血液から得られる情報は非常に多く,病状などを判断する材料となります.治療に先駆け貧血の有無,肝機能,腎機能など患者の全身チェックを行い治療方針を検討することが必要です. -
9.薬剤の疑問
24巻3号(2008);View Description Hide Description催眠・鎮静薬は大きくバルビツール酸系(フェノバール Rなど),ベンゾジアゼピン系(セルシン Rなど)およびその他に分類されます.両薬剤ともに重大な副作用として呼吸抑制があります.バルビツール酸系,ベンゾジアゼピン系ともに中枢神経系に作用しますが,前者は広範囲に,後者は辺縁系の情動系に選択的に作用します.ベンゾジアゼピン系に比較して,バルビツール酸系の呼吸抑制は早期に出現します.また,ベンゾジアゼピン系のほうが呼吸抑制の副作用は少なく安全域が高いです.しかし,いずれの薬剤を投与した場合も呼吸の観察は重要です(図).
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巻頭カラー
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- あなたがいたから頑張れたVer.2
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私の周りは師匠だらけ ありがたいですな
24巻3号(2008);View Description Hide Description河村武明(かわむら・たけあき)1970 年京都生まれ.2001 年10 月に脳梗塞で倒れ,一時は生死の境をさまよいながらも奇跡的な回復を遂げた.現在は失語症と言語障害,聴覚障害,右手麻痺の回復のためにリハビリを続けながら,絵と詩を描きためては京都の路上で販売している.お天気の土日に京都・四条小橋の上でする「ストリート」で,多くの人々と交流する. - 短い時間で楽しく読める・じっくりわかる 神経解剖ナビゲーション
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小脳脚(入力から出力へ)
24巻3号(2008);View Description Hide Description今回は,前回述べた小脳錐体外路系の線維の出入り口である小脳脚について触れてみたいと思います.単に上・中・下と理解するよりも入力系の中・下小脳脚があって出力系の上小脳脚がある,としたほうが信号の流れから理解しやすいのではないでしょうか. - 探訪 世界のスカル-ミュージアム
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ペルー国立人類考古学博物館
24巻3号(2008);View Description Hide Descriptionペルー国立考古・人類・歴史学博物館は,考古学,人類学,歴史学の各分野でペルーを代表する博物館であり,180 年以上の歴史と30 万点以上の所蔵品を有し,その規模,収集量はペル−最大です.プエブロ・リブレ地区に位置し,入り口の前には小さな公園があり,周りは静かな住宅街です.入り口には警官が立って警備しており,中に入ると回廊に囲まれた美しい中庭が見られます. - 拝見!ちょいわざくふうモノ
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経管栄養専用トレイとチューブの色分け
24巻3号(2008);View Description Hide Description◎ この方法によりPEG チューブの紛失がなくなった.また,経管栄養専用トレイを使用することで,サイドテーブル上の整理整頓もできた.
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マンガ連載
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- あなたならどうする?先輩・後輩ナースの脳神経疾患看護計画Ver.2
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意識障害患者の呼吸管理
24巻3号(2008);View Description Hide Description今日は,少し呼吸状態の悪い意識障害患者さんを受け持つよ.I さんは右被殻出血,開頭血腫除去術の4 病日でJCS-30 の意識障害患者さんね.術後の呼吸器離脱・抜管は問題なかったけど,肺炎があって痰の量が多くて,1 時間に1 回は吸引が必要な患者さんよ.じゃあ,どんなことに気を付けて呼吸の観察をしたらいいかな?
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エッセイ読みもの
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- 忘れ得ぬナース&ドクター
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物事の筋道・順序
24巻3号(2008);View Description Hide Description私は,脳神経外科領域の看護が社会人としてはじめての職であったことを非常に幸運に思っています.現在の自分の形成に大きな刺激をいただきました. - ドラマ・映画にみる脳の疾患 シネマホスピタル
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男はつらいよ
24巻3号(2008);View Description Hide Description48 作すべてのあらすじを述べることは不可能だが,物語はかなりパターン化されている. 東京は葛飾柴又の団子屋で働く“ さくら” には放浪癖のある兄,寅次郎がいて,その2 階で居候している.団子屋の夫婦は寅次郎とさくらのおじとおばにあたる.行商をなりわいとする“ フーテンの寅さん” は全国を股にかけて旅をしている.その途中さまざまな女性に出会い,ひとり勝手な恋に落ち,気がつくと失恋……ということの繰り返し.このかく乱者寅次郎と,それを取り巻く家族の愛が描かれている. - 脳をくすぐる一冊
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風の旅 四季抄
24巻3号(2008);View Description Hide Descriptionクラブ活動の指導中に誤って墜落し,その後手足の自由を失った元体育教師の星野富弘さんの詩画を紹介します.
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お勉強
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- スッキリ解決!Q&A
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- 完全マスター 脳卒中急性期の看護
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脳卒中患者の急性期の精神的ケア
24巻3号(2008);View Description Hide Description脳卒中は,英語で一撃を意味する“stroke”と呼ばれるように突然の発症であることが多く,心身諸機能にさまざまな障害をもたらします.それまで不自由のなかった日常生活動作が突然阻害されるため,患者の生活に大きな変化をもたらし,その人の人生を根底から揺るがすことになります.そのため,患者は「“ 自己” に損傷を負う」1)とされ,危機的な状況にあります.したがって,急性期の看護目標としては“ 救急処置による生命維持と生命機能恒常性の維持” と“ 異常の早期発見と合併症の予防” という客観的事柄のみならず,“ 危機に対する情緒的安寧と苦痛・不快感の緩和”2)という精神的事柄も必要です. - 病棟薬剤師に聞く 脳神経疾患ナースのためのくすりの知識
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抗コリン薬 パーキンソン病/症候群治療薬
24巻3号(2008);View Description Hide Descriptionパーキンソン病/症候群治療薬(以下,抗パーキンソン病治療薬とする)は抗コリン薬が一番古く,現在使われている塩酸トリヘキシフェニジルは1949 年にその効果が示されました(表1).1960 年代にレボドパが使われるようになってからパーキンソン病の治療が変化し,塩酸アマンタジン,ドパミンアゴニスト(麦角アルカロイド,非麦角系),モノアミンオキシダーゼB 阻害薬につながります(表2).現在は,抗パーキンソン病治療薬としての抗コリン薬はその副作用や認知症との関連のため使用頻度が少なくなっています.一方,保険適用はありませんが書痙や痙性斜頸などのジストニアに使われることがあります.
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全国施設情報
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- NURSE STATION
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財団法人平成紫川会社会保険小倉記念病院 SCU,6 階病棟
24巻3号(2008);View Description Hide Description1916 年に私立病院として創立されて以来,循環器系を中心に急性期医療を担う基幹病院として地域に根付いてきた.2005 年には地域医療支援病院に承認され,救急患者を積極的に受け入れるとともに,かかりつけ医やリハビリテーション病院と密接に連携し診療の継続を図っている.看護部では2006 年に「7:1 看護」体制を実現し,2007 年にはSCU と脳神経外科病棟を一括管理とした.新体制でより手厚い看護に取り組む現場を取材した. - おしえて!全国脳神経疾患病棟 看護のくふう
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頸椎術後患者における肩凝り体操
24巻3号(2008);View Description Hide Description頸椎術後の患者は,頸部の運動制限に起因する肩凝りを訴えることが多いです.また,肩凝りに伴う症状に頭痛,吐き気,倦けん怠感などがあります. 肩凝りの要因のひとつは血行の不良です.筋肉がこわばった肩凝りの状態になると,筋肉の中の静脈が圧迫されてうっ血し,疲労物質がたまります.疲労物質は筋緊張を亢進させ,緊張はさらに血行を不良にする悪循環を繰り返すと言われています1). 頸部にカラーを装着するなどの運動制限が生じた場合,肩凝りを軽減するためには僧帽筋周囲の血流量を改善させることが重要です.肩凝りの予防として,肩凝り体操を実施しているので紹介します.
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メディカアワード受賞論文発表
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- 【看護研究部門】 ●優秀賞
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急性期からの摂食・嚥下アプローチ −高次脳機能障害と臨床重症度分類に焦点を当てて−
24巻3号(2008);View Description Hide Description今回,摂食機能訓練として実施した摂食・嚥下アプローチ訓練(以下,訓練)の結果を,嚥下の臨床症状と高次脳機能分類に焦点を当てて分析した結果,若干の知見が得られたので報告する. - 【看護研究部門】 ● BRAIN NURSING 賞
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わが国の脳神経看護に関する研究の動向
24巻3号(2008);View Description Hide Description脳血管疾患はわが国の三大死因のひとつであり,その発症数は1965 年まで急激に上昇し,その後横ばいとなっている.しかしこの脳血管疾患の特徴は,回復しても機能障害を呈し日常生活に影響を残すことである.このことから,脳血管疾患の後遺症により看護を必要とする患者は増加し続けていると考えられ,脳神経看護の需要は拡大している.また脳神経機能障害は,運動機能・認知機能障害により,身体可動性の障害,身体損傷の危険,セルフケアの不足を招きやすく,自立が困難で長期にわたり介助が必要となる場合も多い.そのため,脳神経機能障害を呈した患者にとって,看護師の果たす役割は大きく,看護師の工夫や調整が生活行動に直接影響するといっても過言ではない.換言すると,脳神経看護は,看護の力が多いに発揮される場であると言える.そのため,看護師がこれまでの経験の蓄積を基に効果的な看護を実践することと,さらに新たな知識を探究していくことが望まれている. そこで本研究では,これまでの脳神経看護の領域における研究内容を検討し,今後も需要が拡大すると予測される脳神経看護の領域における研究課題について探究することを目的とした.