ブレインナーシング
Volume 25, Issue 1, 2009
Volumes & issues:
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特集
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- 予後が変わる!『超急性期3日間を乗り切る』モニタリング技術と看護
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ブレイン・アタック1 脳梗塞rt-PA静注療法時の看護
25巻1号(2009);View Description Hide Descriptionrt-PA 静注療法は,2005 年10 月に保険適用が認可され,現在では超急性期脳梗塞治療の柱となっています.したがって,これからの脳卒中急性期病院は24 時間態勢で,迅速にrt-PA 静注療法が施行できることが求められます. 当院では,2005 年4 月に脳血管内科医師,脳神経外科医師により,24 時間オンコール態勢診療を開始し,2005 年11 月,脳卒中神経センターを開設しました.rt-PA 静注療法にも積極的に取り組み続けてきました. 当院の場合,救急部での初期診療・検査の後,ICU またはSCU にて治療を開始していますが,発症後3 時間以内での治療開始という制約のなか,rt-PA 静注療法を適正かつ迅速に行い,またその後の厳密なモニタリングを行うためには,脳卒中専門医をはじめ,救急部看護師,ICU/SCU 看護師,放射線技師,臨床検査技師,薬剤師などが一丸となったチーム医療は欠かせないものです.ここでは,超急性期治療への取り組みと,その一端を担う看護師の役割について述べます. -
ブレイン・アタック2 脳出血の開頭術後3日間の看護
25巻1号(2009);View Description Hide Description開頭術後は,手術操作による脳実質への直接的な影響,全身麻酔の影響,患者自身の精神的および心理的な影響という面から看護を組み立てる必要があります.手術後の患者は次のような状態にあると考えられ,おもに5点が挙げられます. ㈰手術後の後出血や脳浮腫により頭蓋内圧亢進症状を起こしやすい. ㈪手術操作や病変部の切除により神経脱落症状を起こしやすい. ㈫手術操作の影響によりけいれんを起こしやすい. ㈬意識障害または気管挿管などによりコミュニケーションが困難である. ㈭創部のドレーン挿入などにより感染症を発生しやすい. 開頭術の適応である脳出血の原因には高血圧,脳動静脈奇形の破綻たん,もやもや病,.のう状動脈瘤破裂,外傷などありますが,多くが高血圧性脳出血です.血腫の局在により,被殻出血,視床出血,皮質下出血,小脳出血,脳幹出血に分類されます.発生は急激なパターンをとることが多く,頭痛,嘔吐,片麻痺,感覚障害,意識障害などの症状を呈します.開頭術の適応となるのはおもに被殻出血,皮質下出血,小脳出血です. 今回述べる脳出血の開頭術後3 日間では,とくに術後早期に見られる後出血の出現が,脳浮腫をさらに増強させ脳ヘルニアへと増悪する危険性を高めます.したがって,看護師には患者の全身状態および神経学的所見を十分にアセスメントし,頭蓋内圧亢進の進行をとらえ対処する役割が求められていると言えます. -
ブレイン・アタック3 くも膜下出血術後の急性期の看護
25巻1号(2009);View Description Hide Description脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血は,突発性の強い頭痛,悪心・嘔吐で発症し,時には意識障害を呈して救急搬送されます.CT 上でくも膜下出血と診断されたら十分な苦痛の緩和を図り,呼吸・循環管理をしながら確定診断のために血管撮影を行い,脳動脈瘤の再破裂を予防するために根治術を行います.当院では,待機手術ではなく発症後早期に手術を行うケースがほとんどです. 以下にくも膜下出血患者の発症後早期手術直後からの急性期看護について述べます. -
ブレイン・アタック4 脳卒中で発症3日間のリハビリテーション看護
25巻1号(2009);View Description Hide Description脳神経疾患患者においては,文字どおり急性期・回復期・維持期の一連のケアの流れのなかで,急性期から長期にわたる機能回復を目標としたリハビリテーションを実施することが必要です.この考え方を根底に持たなければ,患者のQOL を充実させることはできません. 今回のこの項目では,“ 超急性期3 日間を乗り切るモニタリング技術と看護” のうち,超急性期のリハビリテーション看護に関連したモニタリングとその方法や留意点について述べます. 脳神経領域の脳卒中発作後や手術治療後の3 日間は,管理と治療が非常に難しい期間です.この3 日間を合併症を発生させずに過ごすことがポイントのひとつです.急性期に発生しやすい合併症の予防を考えておくことが大切で,とくに回復期に向けて本格的なリハビリテーション看護が実施できるための身体的準備を整えるという非常に大切な時期と言えます. このように,超急性期から回復段階に向かう患者への一連の回復プロセスを管理することは,看護師の重要な役割です. -
長時間の開頭手術後の看護 麻酔・手術時間が10時間以上に及ぶとき
25巻1号(2009);View Description Hide Description脳神経外科における手術は,局部の頭蓋骨を外した狭い範囲での顕微鏡下での緻密な手術操作が必要です.そのため,病変部位が頭蓋底付近などの深い位置の場合や,血管からの.はく離に時間を要す場合などには慎重に術野を展開する必要があり,しばしば長時間に及ぶことがあります.手術時間が長くなるほど脳浮腫など脳への侵襲も大きく,麻酔時間が長くなることから褥瘡や多臓器への悪影響も大きくなり,術後合併症の起こるリスクが高まります. 術後の患者にとって看護師のケアが大きな侵襲になることもあるため,ケアを決まった業務として行うのではなく,個々の患者の病態と状態を十分に理解し,その患者にとって必要なケアを判断できる能力が必要になります.そのため,脳神経外科の通常の術後経過を理解するだけではなく,長時間に及んだ場合にはどのような合併症がより起こりやすいのか,またこの患者にはどのようにすれば合併症が予防できるのかなどを理解したうえで,患者の予後を見据えたケアを行うことが大切です. これらのことを踏まえて,ここでは長時間の手術後管理のなかでも術後出血・脳浮腫への対応,呼吸管理,水分バランス管理,消化管の合併症予防,感染管理,褥瘡管理について述べます. -
後頭蓋窩開頭術後の看護
25巻1号(2009);View Description Hide Description後頭蓋窩とは,小脳テント下の脳幹・小脳を入れた狭いスペースのことを言います(図1).後頭蓋窩開頭術の適応は,この部位に出血や腫瘍などの病変があるときです. 後頭蓋窩開頭術の特徴は,以下のことが挙げられます. ①生命現象に直結する脳幹部(中脳・橋・延髄)の周囲あるいは病変自身に手術の影響が及ぶ. ②腹臥位手術になることが多い. ③長時間手術になる. そのため,手術がスムーズに行われても術後,患者の体力はかなり消耗していると考えられます.この状態でわずかでも新たに侵襲が加わると,重篤な合併症を引き起こす可能性があることを記憶しておきましょう.
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新連載
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- いのちの輝き〜脳腫瘍の子どもたち〜
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特別座談会
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『脳卒中リハビリテーション看護』認定看護師を考える
25巻1号(2009);View Description Hide Description2008 年2 月に認定された『脳卒中リハビリテーション看護』認定看護師.2009 年4 月の愛知県看護協会を皮切りに,静岡県看護協会,熊本保健科学大学で順次開講される.認定看護師に期待される役割は何か,現場の体制をどうするか.その立ち上げから認可申請まで一手に担ってきた日本脳神経看護研究学会の先生方や,臨床の第一線で活躍されているナースの皆様に,それぞれの思いと展望を伺いました.
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新春特別インタビュー
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舛添要一・厚生労働大臣に聞く「安心と希望の医療確保ビジョン」のもたらすもの
25巻1号(2009);View Description Hide Description医療崩壊が雪崩をうつなかで,厚生労働行政の舵取りへの期待は大きく,とくに人員や処遇の問題については,医療者から高い関心が寄せられている.3 内閣にわたり厚生労働大臣を務める舛添要一氏は,大臣直属の「安心と希望の医療確保ビジョン」会議を立ち上げるなど,先陣を切って医療改革の大なたを振るっている.医療者には明るい未来がもたらされるのか——同会議のメンバーでもある嘉山孝正・山形大学医学部長と共に,展望を語り合った.
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巻頭カラー
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- 短い時間で楽しく読める・じっくりわかる 神経解剖ナビゲーション
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外頸動脈系と内頸動脈系の吻合
25巻1号(2009);View Description Hide Description明けましておめでとうございます.本年もよろしくお願いいたします.新たな一年の始まりに肩の力を抜いて勉強していきましょう.前回は基本としての頸部,胸部の血管の全体像を理解しやすいように描いてみましたがいかがでしたか.内頸系に比べ思いをはせることが少ない外頸系の血管系ですがこれを理解すると顔面・前頸部・頭皮の栄養だけではなく頭蓋内の硬膜の栄養血管となり,側頭骨骨折で起こる急性硬膜外血腫の成因,もやもや病の手術の原理,髄膜腫の栄養血管などが理解できるようになります. - 探訪 世界のスカル-ミュージアム
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- 拝見!ちょいわざくふうモノ
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第2特集
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- ここまで進んでいる!脳神経外科の最新治療
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覚醒下手術
25巻1号(2009);View Description Hide Description“ 脳” はその人間のすべてを決定しています.ほぼ同じ形をした千数百グラム程度の“ 脳” が,なぜこれだけ多様な人間を創造し規定することができるのでしょうか.“ 脳” の解析はまだまだ始まったばかりですが,われわれ脳神経外科医は,目の前にいる患者の腫瘍・脳動静脈奇形・てんかんなどの治療のために,その脳を切除しなければなりません.切除の際に,少なくとも人間が生存するために必須の機能である運動・言語機能を温存できるのかどうか確認する方法はないのでしょうか. 皆さんのように看護学や医学を勉強していても不思議に感じると思いますが,脳自体には痛覚受容体はありません.したがって開頭・硬膜切開の後の脳自体に対する手術操作では,痛覚受容体が分布する主幹動静脈・硬膜などへ手術操作が及ばない限り,患者は痛みを感じません.すなわち,完全覚醒状態で,脳の機能検査を行いながら,脳実質を摘出していくことが可能なのです. -
血管内治療
25巻1号(2009);View Description Hide Description近年,脳血管障害の治療として“ 血管内治療” が,医療現場に急速に広がっています.血管内治療とは,足の付け根の血管(大腿動脈)からカテーテルを入れて脳の血管の中へ誘導し,病変部の治療を行う方法です. 従来,脳血管障害の治療には外科手術が行われていましたが,メスで身体を切開する必要があり,開頭手術では直接脳を触るため侵襲も大きく,患者の身体には大きな負担がかかっていました.その点,血管内治療は身体にメスを入れず,局所麻酔下にも治療が可能であるなど,患者にとって低侵襲であることが特徴です. まだ比較的新しい治療ですので,長期的な治療成績については外科手術に比べ不明な点もありますが,欧米の研究では外科手術に劣らないという結果も発表されています1,2).カテーテルなどの治療器具の発達に伴い,今後も血管内治療には,さらなる発展が期待されています. -
脳深部刺激療法
25巻1号(2009);View Description Hide Description脳深部刺激療法(deep brain stimulation:DBS)とは,視床や大脳基底核などの脳深部に細く柔らかい電極を挿入・留置し,完全埋設型刺激発生装置(パルスジェネレータ)につないで電気刺激を送り,疾病の治療を行うものです(図1).電極とパルスジェネレータを埋設した後も,簡単に刺激のオン/オフを切り替えたり,刺激の強さを変更することができるのがこの治療の大きな利点です. -
神経再生医療
25巻1号(2009);View Description Hide Descriptionつい最近まで,中枢神経は再生しないという考え方が神経科学の領域では常識でした.1990 年代になりマウスの脳において,一部の領域で神経細胞が新たに生まれてきていることがわかりました.また,受精卵から得られた胚性幹細胞(ES 細胞,embryonic stemcell)から神経細胞が誘導できることも報告されました.これらの報告から生まれてきた,傷害された脳を新しく生み出す神経細胞で機能回復を図ろうとする考え方が,神経再生医療です.
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エッセイ・読みもの
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- 忘れ得ぬナース&ドクター
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- 脳をくすぐる一冊
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お勉強
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- スッキリ解決!Q&A
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- 病棟薬剤師に聞く 脳神経疾患ナースのためのくすりの知識
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メチルフェニデート……中枢神経刺激薬
25巻1号(2009);View Description Hide Descriptionリタリン R としてのメチルフェニデートは1944 年に合成され,日本では1958 年に“ うつ病・抑うつ性神経症” に対して使われるようになりました.再評価時に少しずつ適応が変化し,1998 年には「抗うつ薬で効果の不十分な難治性うつ病,遷延性うつ病に対する抗うつ薬との併用」に改められました.その後,メチルフェニデートの乱用などの社会的背景を受け,2007 年には1978 年に効能が追加取得された“ ナルコレプシー” のみの適応となりました.一方,徐放製剤であるコンサータ R は,注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の治療薬として,日本では2007 年に承認されました. - 症例で見る看護計画
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全国施設情報
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- おしえて!全国脳神経疾患病棟 看護のくふう
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脳神経疾患領域における肺合併症撲滅への取り組み〜効果的な呼吸療法を実践するための呼吸療法認定士による啓発活動〜
25巻1号(2009);View Description Hide Description脳神経疾患では,脳幹の障害によって呼吸調節機能が障害される場合や,重度の意識障害によって気道確保が困難となる場合があります.さらに,頭蓋内圧亢進症状などの嘔吐による誤嚥性肺炎,そのほか意識障害もしくは嚥下障害による誤嚥性肺炎を引き起こすこともあり,不顕性誤嚥も少なくありません.そのため,看護師は脳神経疾患の病態や症状の理解,看護のほかに人工呼吸器の理解や呼吸療法の知識・技術が必要とされます.当院では,ここ数年の間に3 学会合同呼吸療法認定士(以下,呼吸療法認定士)の資格を取得するスタッフが増え,急性期において肺合併症の対応が早期に行われ,予防の重要性に関しても意識が高まっています.