ブレインナーシング
Volume 26, Issue 3, 2010
Volumes & issues:
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特集
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- 早わかり 脳の解剖生理 〜解剖を知って症状を理解!〜
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【症状編】脳ヘルニアと神経症状のメカニズム
26巻3号(2010);View Description Hide Description脳ヘルニアとは,頭蓋内の病変(脳出血,脳腫瘍,硬膜外血腫,硬膜下血腫,脳挫傷,脳腫脹など)により脳が圧迫されて,脳が本来あるべき場所から偏位してしまった状態を言います.脳ヘルニアを起こした脳や,脳ヘルニアにより圧迫された脳の場所によりさまざまな神経症状を起こします.脳ヘルニアが進行すると,重篤な後遺症を残すばかりでなく致死的になることも多く,脳ヘルニア徴候をいち早く見つけることは非常に重要です. ここでは脳ヘルニアを理解するために,基本的な脳の解剖と脳ヘルニアの神経症状について述べます. -
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【疾患編】くも膜下出血
26巻3号(2010);View Description Hide Descriptionくも膜下出血は突然の激しい頭痛で発症し,命にかかわる恐ろしい病気として有名で,原因のほとんどが脳動脈瘤の破裂によるものということも大抵の人が知っています.では逆に,なぜ動脈瘤が破裂するとくも膜下出血になるかを,解剖の観点から説明します. -
【疾患編】脳出血
26巻3号(2010);View Description Hide Description脳出血とは,脳内の血管が何らかの原因で破れ,脳実質内に出血する病態です.わが国の脳卒中全体の約20%を占めます(欧米では約10%). 日中活動時に突然発症することが多く,症状は出血部位や出血量により異なります.典型的な症状は,突然の頭痛や嘔吐で,それに麻痺や言語障害,出血量が増大すると意識障害を伴います. 原因は高血圧によるものが最も多く,全体の70 〜 80%を占めます.そのほか(非高血圧性脳出血)に,アミロイドアンギオパチー・血管奇形・もやもや病・脳腫瘍などによるものがあります. 高血圧性脳出血は,動脈硬化によってもろくなった脳の細い動脈(細動脈)が,高血圧によって破れ,脳組織に直接出血することで起こります(図1).高血圧性脳出血の発症部位で頻度が高いのは被殻・視床で,この両者で全体の約4 分の3 を占めます.その他,皮質下・橋・小脳に約10%程度の割合で起こります. -
【疾患編】急性硬膜外血腫,急性硬膜下血腫
26巻3号(2010);View Description Hide Description急性硬膜外血腫および急性硬膜下血腫の病態を理解するには,脳と硬膜の関係を十分理解する必要があります.頭皮とその下にある側頭筋をめくると,頭蓋骨が現れます.頭蓋骨の下には脳表を覆う硬膜が存在し,頭蓋骨に密着しています.硬膜の表面を走行する血管は中硬膜動脈と呼ばれます(図1).硬膜と脳表の間には,薄いくも膜や軟膜が存在するだけですき間が存在し,脳脊髄液が流れています(図2). -
【疾患編】脳梗塞
26巻3号(2010);View Description Hide Description脳梗塞は何らかの原因で急に脳の血管が詰まり,その先に血液が流れなくなることで,酸素や栄養が行きわたらずに脳細胞が障害される病気です.脳細胞が障害されると,突然の手足の麻痺やろれつが回らない,言葉が話せないといった神経脱落症状が見られます.詰まった血管の太さや発症機序によって脳梗塞を分類します(図1). -
【疾患編】(1)脳実質内腫瘍
26巻3号(2010);View Description Hide Description2007 年に,脳腫瘍のWHO 分類(病理分類)が改訂され,その第4 版が出版されました1).本分類によるとじつに133 の脳腫瘍があります.これに下垂体腫瘍の分類を加えるとさらにその数は増えます.しかし日常診療でよく経験するのは,このうちの10 前後でしょう.本稿ではそれらの腫瘍を中心に,成人の脳腫瘍について述べます. -
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【治療編】ドレナージ術
26巻3号(2010);View Description Hide Description脳神経外科では,目的に応じて幾つかのドレナージ法を使い分けています.排液管を腔内に挿入して持続的に行う方法と,穿刺針による間欠的な方法があります.本稿では持続ドレナージ法の種類,目的,仕組み,管理上の注意点を説明します. 日常診療においてはちょっとした不注意で重篤な合併症を起こすことがあるため,とくにドレナージの管理については習熟する必要があります.なお,これまでにも非常にわかりやすく説明した文献がありますので,ぜひ参考にしてください1 〜 3). -
【治療編】シャント術
26巻3号(2010);View Description Hide Description脳神経外科領域で行われる“ シャント術”は,水頭症に対する脳室腹腔シャント(VPシャント:ventriculo-peritoneal shunt) がその代表ですが,そのほかにも表のようなものがあります(図1).このなかで最も目にする機会が多いVP シャント,LP シャントを中心に本稿では述べていきます. -
【治療編】バイパス術
26巻3号(2010);View Description Hide Description脳のバイパス術は,脳への血流路である脳主幹動脈の閉塞や高度狭窄により脳血流低下が起こって脳虚血症状を呈する場合(血行力学的脳虚血)に行われる手術です.一般に頭蓋外- 頭蓋内バイパス術(EC-IC バイパス)と言われ,頭蓋外の外頚動脈の分枝と頭蓋内動脈を吻ふん合することによって頭蓋外から頭蓋内への新たな血流路を作り,低下した脳血流を改善させて脳梗塞を予防します1,2).
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巻頭カラー
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- いのちの輝き〜脳腫瘍の子どもたち〜
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- 短い時間で楽しく読める・じっくりわかる 神経解剖ナビゲーション
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- 拝見!ちょいわざくふうモノ
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- 忘れ得ぬナース&ドクター
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第2特集
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- 介護システムを知ろう
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介護システムを知ろう
26巻3号(2010);View Description Hide Description介護保険制度も,早いもので2000 年4 月の施行開始から10 年が過ぎようとしています.しかし,介護保険を利用している人はいまだ一部にすぎないことを,日々の仕事のなかで痛感しています.「福祉の世話になりたくない」という意識や,「介護保険の利用の仕方を知らない」とひとりで介護を抱え込んで疲労困憊ぱいしている家族も見受けられます. 入院から在宅および施設へのネットワークが構築されていれば,少しでも多くの人が介護を抱え込むことなく生活できるのではないかと思います.本稿が,その“ ネットワーク構築” 一考のきっかけになれば幸いです. -
介護施設を知ろう
26巻3号(2010);View Description Hide Description今や,わが国は世界でも有数の長寿国になりました.人口の急速な高齢化が進むなか,日常生活に介護が必要な人々の増加が予想されます.患者の幸福を考えるとき,医療サービスと福祉サービスの連携を図ることが重要であり,そのため医療と福祉は一体化される必要があります.患者の心身の特性に応じた医療が提供され,生活の質の高い福祉サービスが継続して提供されなければなりません. これを実現するためには,医療従事者は介護福祉現場を理解することが必要であり,介護福祉従事者は医療現場を理解することが重要です.なぜなら,患者はしばしば医療機関と介護施設を往復するからです.医療職と介護職の双方の専門職が患者を理解し合って初めて,その連携が有機的な働きとなります. 福祉では“ 介護福祉” が主点となります.介護の現場を理解するためには,どのような介護施設があり,どんな職種がどのような業務を実施し援助を行っているのか,また,医療が必要な患者へのサービスとして,どのような流れや仕組みでケアを提供しているのか,リハビリテーションはどうなっているのか……などの理解があって,連携がうまくいきます. この稿では介護施設の種類,介護施設で働く職種や看護師の役割,施設の利用者,支援の内容について述べます. -
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お勉強
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- 知らなきゃソンソン!やらなきゃドンドン!高次脳機能障害の看護〜急性期から回復期まで〜
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知っておきたい知識と最新情報 高次脳機能障害者の社会復帰と支援
26巻3号(2010);View Description Hide Description高次脳機能障害者のリハビリテーション(以下,リハビリ)において,障害の鑑別診断が難しいことや理解しにくいことから医療現場で見過ごされる事例が多く,そのため障害者と診断されずに福祉サービスも受けることができないという課題があります.そのような背景に対し,厚生労働省が“ 高次脳機能障害支援モデル事業” を2001 年から5 年間実施し,その活動が地域に波及し,ようやく近年高次脳機能障害が注目されるようになってきました. 高次脳機能障害者の社会復帰・支援へのアプローチには,患者の社会心理的課題に対するリハビリチームアプローチが必要です.併せて家族の負担などのQOL を重視した,臨床心理士を含めたリハビリチームの専門的対応が重要となります. 今回,右被殻出血により注意障害,病識の欠如などの高次脳機能障害を呈した症例に対する臨床心理士を中心としたチームアプローチの結果,復職に至った症例を供覧し,高次脳機能障害者の社会復帰・支援についての理解を深める一助としたいと思います. - スッキリ解決!Q&A
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- 看護に生かせる海外文献この1本!
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- 病棟薬剤師に聞く 脳神経疾患ナースのためのくすりの知識
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アンジオテンシン II 受容体拮抗薬・降圧利尿薬合剤
26巻3号(2010);View Description Hide Description高血圧は脳卒中の最大のリスクであり,脳血管イベント発症を予防するためには厳格な血圧管理が必要です.高血圧の薬物療法において単剤でコントロールすることが難しい場合には併用療法が用いられ,また,推奨されています.しかし,内服薬の数が増えると内服コンプライアンスの低下が懸念されます.複数の成分を含む合剤は,内服コンプライアンスの低下を防ぐとともに降圧利尿薬併用の相乗効果を狙った製剤です.現在,アンジオテンシン㈼受容体拮抗薬(ARB)と降圧利尿薬の合剤がよく使用されていますが,今後,他剤も増え生活習慣病の管理がしやすくなる一方,副作用発現やそのモニタリングが重要になります.
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全国施設情報
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- NURSE STATION
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- おしえて!全国脳神経疾患病棟 看護のくふう
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5 分でできる口腔ケアと保湿剤の導入〜技術の統一とケアへの関心を高めるために〜
26巻3号(2010);View Description Hide Description脳神経外科領域の患者は意識障害を伴うことが多いです.日常生活には多大なケアの介入が必要であり,口腔ケアもそのひとつです.当病棟では口腔ケアに統一された手順はなく個人の技術に任せられていたため,患者の口腔内の清潔にはばらつきがありました.そこで,標準的な手順を整えることでそれらが解決できるのではないかと考えました. また,閉口困難の患者や経口摂取ができない患者の口腔内乾燥は著しく,保湿効果を高める介入が必要であることも考えていました.そこで,病棟で新しく標準的な口腔ケアの方法を取り入れたので紹介します.
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エッセイ・読みもの
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- 脳をくすぐる一冊
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