ペリネイタルケア
Volume 26, Issue 3, 2007
Volumes & issues:
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特集
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- 観察眼を磨こう!生後24時間以内に発見できる新生児の異常
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分娩直後のカンガルーケア中に異常を認めたときの対応
26巻3号(2007);View Description Hide Descriptionカンガルーケア(以下KC)は母乳育児を推進するうえにおいても,生理学的・心理学的な面から見ても,必要不可欠なものである.一般的にKCは,出生後に啼泣が盛んで筋緊張も良好な児に対して,保温,気道開通,水分の拭き取り,皮膚色の評価1 )などのルチーンケアに問題がなければできるだけ早期に行われている.しかしながら出生後,全身状態が良好であっても,その状態が持続するとは限らず,KC中に何らかの異常に気付く場合がある.ここでは,そのような分娩直後のKC中に異常を認めたときの観察と対応について記載する. -
分娩室から病棟に移った後,しばらくして呼吸障害に気付いたら
26巻3号(2007);View Description Hide Description新生児は出生と同時に,胎内では肺水で満たされていた肺を使って換気を始めなければならない.その適応過程において一過性に呼吸障害を認めることは生理的にあり得る.また,生後の経過において初めて顕性化してくる症状もあり,さまざまな病態にいち早く気付き対応できるよう想定しておく必要がある.ここでは,出生時から明らかな呼吸障害(中等症以上の呼吸窮迫症候群〈respiratory distresssyndrome;RDS〉,肺低形成,胎便吸引症候群〈meconium aspiration syndrome;MAS〉など)を呈するのではなく,しばらくしてから顕性化する場合を想定しての観察の手順と診断について考えてみたい. -
生後24時間以内の嘔吐・排便異常
26巻3号(2007);View Description Hide Description新生児では,下部食道から胃噴門部にかけての筋層の発達が未熟であるため,嘔吐は極めてありふれた現象として日常的に観察される.実際,病的意義を持たないものが多い.しかしその一方で,嘔吐はさまざまな疾患の初発症状として出現する.中には,タイミングを逃さず検査・処置を施さなければ生命にかかわる場合も存在する.排便異常も,嘔吐と同様,重大な疾患の初発症状として現れる場合がある.ともに正常新生児でも見られる現象であり,正常のバリエーションなのか病的なものなのかの鑑別が重要である.以下,疾患を見逃さないためのポイントを解説していく. -
生後早期の黄疸の発症
26巻3号(2007);View Description Hide Descriptionほとんどの新生児には生理的黄疸が発現するが,通常,皮膚の黄染が肉眼的に明らかとなるのは生後2 日以降である.しかし,中には生後24時間以内に血清ビリルビン値が急上昇(血清総ビリルビン〈TB〉値5 〜 7 mg/dL以上)する場合があり,早発黄疸と呼ばれる1 ).この早発黄疸を放置しておくと,中枢神経系を障害し,急性ビリルビン脳症,さらに核黄疸を惹起し,脳性麻痺をはじめ重篤な神経学的後遺症を児に残してしまう.このような早発黄疸を見逃さないために,出生直後からの黄疸の観察,評価が重要である. -
よく起こる症状その1 心雑音 〜心雑音のない心疾患も含めて〜
26巻3号(2007);View Description Hide Description新生児の心疾患の発見のきっかけは心雑音,チアノーゼ,呼吸障害,元気がない(not doing well),全身性先天異常のスクリーニングなどさまざまである.本稿では新生児早期に聴かれる心雑音に注目し,その意義について述べる. -
よく起こる症状その2 染色体異常・奇形症候群
26巻3号(2007);View Description Hide Description種々の染色体異常や奇形症候群を臨床的に診断する場合は,外表奇形や臨床検査などが参考にされる.外表奇形には医学上治療の対象となる大奇形と,ほとんど問題にならない小奇形とがある.ヒトの先天異常の原因別内訳としては,単一遺伝子異常が15〜20%,染色体異常が5 〜10%,環境要因が5 〜10%,原因不明が65〜70%とされている3 ).診断がつけば,該当疾患についてのさまざまな情報を比較的容易に得ることができ,また遺伝カウンセリングにも役立つ.今回は,染色体異常や奇形症候群を疑うような外表所見を発見した際の対応について概略したい. -
よく起こる症状その3 痙攣と意識障害
26巻3号(2007);View Description Hide Description痙攣の様態は,瞬きを繰り返すだけの軽微なものから,両上肢・下肢をつっぱる全身性の姿勢の異常までさまざまである.新生児に生理的によく見られる振戦と痙攣発作との鑑別(表1 )1 ),痙攣発作の分類(表2 )2 )を示す. -
よく起こる症状その4 凝固異常による出血
26巻3号(2007);View Description Hide Description新生児期は凝固異常を伴わない点状出血や,頭蓋内出血,胃粘膜病変からの出血をしばしば経験し,ほとんど後遺症を残さずに改善する.しかし,血小板減少症,ビタミンK欠乏症,播種性血管内凝固症候群(DIC)などの凝固異常を合併していると,生命予後,神経学的予後に重大な影響を及ぼす出血に進展することがあるので,迅速な診断と対応とが要求される.出血の発見と初期対応は注意深い観察から始まる.
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第22回日本分娩懇話会 シンポジウム「出産場所とそれぞれのお産」
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日常の中で出産を迎える -47件の自宅出産の経験から-
26巻3号(2007);View Description Hide Description日本助産師会の調査によれば,2005(平成17)年の1 年間の助産所出産数は10,526件で,そのうち自宅出産は1,295件であった1 ).戦後の第1 次ベビーブームの頃は97%が自宅出産で,5 万人の助産師が月に50〜100件のお産に寝る暇もなくとび回っていた.私もそうして生まれた一人である.その後,開業助産師は絶滅種と言われるほど減少したが,ここ10年間,高齢助産師の引退を補うように若手が開業し始めた.最近自宅出産が増えているといっても,全出産数の0.1〜0.2%を推移しているに過ぎない.産科医療の危機を受けて嘱託医の確保などの問題で開業も困難を増している現在,自宅出産を希望する女性たちに見合う開業助産師数はかけはなれて少ない.全国で出産を扱う助産所数は388カ所しかないのが現状である. -
助産院でのお産 -産む力,生まれる力を引き出す-
26巻3号(2007);View Description Hide Description助産師は,安全で快適な妊娠・出産を促し,新生児のケアを行うとともに,妊娠・出産・産褥に必要な援助・助言を与える専門家としての責任を担う,正常分娩のエキスパートです.そして,出産の質や安全の確保に努力しなければなりません.私が助産院を開業したとき,仲間の助産師や産婦人科医師によく「随分と勇気があるね」と言われました.開業して分娩を取り扱うと決めたときに私が感じたことは,「勇気」というなまやさしい言葉では表現できない,すべてを抱える覚悟が必要であるということです.お母さんと赤ちゃんの2 つの命に向き合ったとき,その後ろには,たくさんの家族の姿があることを改めて感じます.無事に分娩を終え,赤ちゃんとお母さんを元気に退院させるまでは,気を緩めることはできません. -
アットホームで自然なお産に寄り添う院内助産システム
26巻3号(2007);View Description Hide Description当院助産科は診療技術部に属しており,専属の助産師7 名が2 交代+待機勤務を行い,MCS(ミッドワイフケアシステム)と言われる院内助産システムを実施しています.MCSは①助産師が責任を持って妊娠・分娩・産褥のケア,母乳・育児相談の継続管理を行っている,②アットホームな環境で自然なお産をサポートしているが,病院内での安全性の高い分娩という利点も備えている,という特色があります.助産師7 名は,4 名と3 名の2 チームに分かれています.1 カ月約15名の分娩予約者も2 チームに分け,4 名の助産師が約8 名の方を,3 名の助産師が約7 名の方を妊娠・分娩・産褥期を通してケアしています.一方,産婦人科医師の管理する分娩システムはDCS(ドクターケアシステム)と言い,担当助産師13名(師長を含む)が3 交代勤務を行っており,看護部に属しています.本文では,助産科の助産師をMCS助産師,DCSの担当助産師をDCS助産師とします. -
宮崎県における基幹病院と地域連携の現状
26巻3号(2007);View Description Hide Description宮崎県では,周産期センターでの分娩は全分娩数の約20%であり,残りの80%は1 次分娩施設で行われている.医療の地域化(regionalization)を進めてきた結果,集中管理が必要な症例はできる限り地域の周産期センターに搬送し,迅速な対応を行えるようになった.宮崎県の基幹病院と地域連携の現状について述べる.
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連載
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- ベーシック×ステップアップ講座 周産期超音波のみかた
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第24回(最終回)まとめ 〜よりよい画像を得るために〜
26巻3号(2007);View Description Hide Description前回までに,いろいろな計測についてお話ししてきました.これらはすべて知識として知っていてほしい項目ですが,今回は各項目をよりうまく確認するための方法をおさらいします. - どこを見る!? まず何をする!? 出生直後の新生児SOS
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第3回 先天性横隔膜ヘルニア
26巻3号(2007);View Description Hide Description横隔膜ヘルニアには,食道裂孔ヘルニア,胸骨後ヘルニア,外傷性ヘルニアなどが含まれるが,先天性横隔膜ヘルニアは胸腹裂孔ヘルニアを意味する.1848年に最初に報告した医師の名前から,Bochdalekヘルニアと称せられている.在胎10週頃までに横隔膜が閉鎖しないために,腹腔内臓器が胸腔内へ脱出して,肺が圧迫され低形成となる. - 最新知識を臨床にいかす! 妊娠高血圧症候群のすべて
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第15回 ターミネーションの適応基準
26巻3号(2007);View Description Hide Description妊娠高血圧症候群では母体が臓器障害を発症し,恒久的に健康を損ねる場合もある.最悪,死に至ることもある.胎児側から見ると,子宮胎盤循環機能の低下によって,IUGR,胎児機能不全(nonreassuringfetal status),子宮内胎児死亡,新生児仮死など周産期の異常を来しやすい. - 使える! 助産ケアのエビデンス
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第3回 助産師のケア技術で,分娩時の会陰損傷を減らすことはできるのか?
26巻3号(2007);View Description Hide Description分娩第2 期の会陰損傷を防ぐためのケア技術は,助産師であれば誰もが追求したいテーマではないでしょうか? 分娩時の会陰損傷予防は,助産師の腕にかかっているとも言われており,それぞれの助産師が,実践の中で技を磨き,さまざまなケアや日常的な工夫を試みています.妊娠期の会陰マッサージは,すでに会陰損傷予防への有効性が示唆されています1 ).それでは,分娩第2 期のケアや技術は,どうなのでしょうか? Albersらは,分娩第2 期の会陰の温罨法,マッサージという助産師のケアを取り上げ,会陰損傷予防に有効な方法を検証するために研究を行っています. - お母さんのこの悩み,こんなひとことで楽になる らくちん育児支援
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「仕事と育児の両立」
26巻3号(2007);View Description Hide Description国内外で大規模に行われたどの調査においても,母親の就業が子どもの発育,発達,問題行動のいずれにも悪影響を及ぼさないことがわかっています.母親が不必要に自分を責めたり,退職すべきか意見を求められた場合には,客観的事実として現在起こっている事態が母親の就業のせいではないことを知らせたうえで,つらい気持ちに寄り添い,慎重に行動できるよう援助したいものです. - 助産と看護の飛躍のために
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No.22 助産に携わる皆さんの安心のために
26巻3号(2007);View Description Hide Description助産や産科医療での医療事故に対する国民の不安が高まっている.もちろん提供者側に過失があれば既存の保険で損害賠償が行われるが,十分注意して通常の行為を行った場合に損害が発生した際は過失が認められないので誰が責任をとるかが難しくなる.分娩時の医療事故では,過失の有無の判断が困難な場合が多く,しかも裁判で争われる傾向がある.産科医師のなり手が減っている昨今の事情は,このように紛争が多いことにも一因があるのではないかとさえ言われている. - 妊産婦のリラクゼーションとマッサージ
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月連載第11回 出産のつらさをリセットする
26巻3号(2007);View Description Hide Description何はともあれ出産が無事に終わったとしても,出産時の心身の緊張はすぐには解消できません.ヴァータ(V),ピッタ(P),カパ(K)のどんなタイプであっても,出産直後は胎児,胎盤,羊水,血液が一気に娩出され子宮と産道が空洞になりますので,ヴァータがかく乱を起こします.ヴァータのかく乱を落ち着かせるためには,出産直後に適度な圧をかけて腹部をさらしの腹帯で覆い,大転子の部分をさらしを帯状にして前腸骨棘を少し押し上げるようにややきつく締め上げます.そして,保温効果の高い腰巻で下半身を覆います.もちろん,足首を冷やさないようにレッグウォーマや長めの靴下を履くことも大切です.さらに,軽い布団ではなくやや重みのある布団を腹部から下にかけてあげると,ヴァータのかく乱の強い人ほど「気が落ち着く」と言います. - 助産婦の歴史(283)
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エッセー・読みもの
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- Message for perinatal staff
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- Dr. T. Tのおもちゃ学 おもちゃで育てる子どものこころ
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- 遠き国より
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CATCH THE NOW|
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「どうする日本のお産プロジェクト」からみる助産師教育の現状と今後
26巻3号(2007);View Description Hide Description2006年,「出産難民」「産科医療の崩壊」という言葉が駆けめぐりました.地方の話ではなく,いまや大都市東京でも産科が相次いで閉鎖し,緊急搬送受け入れ先も満床状態.どこの病院も分娩予約は早い者勝ちです.助産師が頼れる医師,医師が頼れる助産師が足りない.何ともやるせない状況が各地から聞こえてきます.産科閉鎖の問題は,産科医師を増やせば解決するような単純な話ではありません.改善していくためには,教育,労働条件,助産師の力,医師と助産師の関係,産む人の意識や心構え,健康教育など,さまざまなことが見直される必要があります.「緊急事態だ! いったい何をどうしたらいいんだろう?」という思いをそのまま,「どうする? 日本のお産ディスカッション大会」に込め,リレー開催を行いました.
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特別寄稿|
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「新型インフルエンザについて,私たちが知っておきたいこと」
26巻3号(2007);View Description Hide Description「新型インフルエンザの大流行」が懸念されていることは,皆さんご存じでしょう.ひとたび流行となれば,患者さんが集中するのが皆さんの職場です.医療従事者の皆さんは,この新しい感染症に関する正しい知識を持つことが強く求められます.以下,ぜひ知っておいていただきたいポイントを記します.
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