ペリネイタルケア
Volume 26, Issue 4, 2007
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特集
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- 読解力をブラッシュアップ胎児心拍数モニタリング問題集
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胎児心拍数モニタリングを基にした分娩管理法 ー分娩時リアルタイムマネージメントー
26巻4号(2007);View Description Hide Description分娩時における胎児管理のポイントは,胎児のアスフィキシアを予見・評価し,重度なアスフィキシアを認めればただちに分娩することである.胎児アスフィキシアとは,①低酸素性または低酸素・虚血性のストレスに対して,②胎児の代償機能が破綻した結果,嫌気性代謝が進み,代謝性アシドーシス(または混合性アシドーシス)となり,③進行すれば脳障害をはじめとする臓器障害へとつながる可能性のある病態と定義される.胎児アスフィキシアの臨床診断名がn o n -reassuring fetal status(日本語病名としては胎児機能不全)である.分娩時における胎児機能不全は,もっぱら胎児心拍数モニタリング(または胎児心拍数陣痛図〈cardiotocogram;CTG〉)を用いて診断されている.胎児機能不全と胎児アスフィキシアとの関係を述べることが分娩管理という医療行為を特徴付けていると言っても過言ではなく,以下に述べる. -
「胎児心拍数パターンを基にした分娩時リアルタイムマネージメント法」導入に取り組んで
26巻4号(2007);View Description Hide Description出産時の安全性と高い満足度が要求される産科の臨床現場で,産婦に寄り添う助産師の責任は重大なものであると認識している.当院は年間出産数1,000件余りの産婦人科医院であり,正常分娩に関しては,医師・助産師・看護師の連携のもと,多くは助産師に判断が任されている.しかし,私たち助産師養成課程のカリキュラムにおいて,胎児心拍数モニタリングの講義に多くの時間が費やされることはない.そして看護教育においてはなおさらのことである.このたび,より安全な分娩管理を目指し,「胎児心拍数パターンを基にした分娩時リアルタイムマネージメント法」をスタッフで学習することによりレベルアップを図り,胎児心拍数モニタリングを正しく読むことができるよう取り組んだ.さらにローカルルールを作成し,医師・助産師・看護師が同じ判断基準で適切な行動を取るための取り組みを試みたので報告する. -
Question1
26巻4号(2007);View Description Hide Description38歳,3回経妊2回経産婦.前2回はいずれも妊娠40週で成熟児を経腟分娩している.妊娠週数は11週の頭殿長と大横径で確認済み.36週3日の推定体重が1,874g(−2.4SD)とIUGRのため翌日から精査目的で入院した.入院後の推定体重は37週3日1,892g(−2.7SD),38週5日2,138g(−2.4SD),39週5日2,179g(−2.5SD)と増加し,毎日3回行ったNSTではreassuring patternを示していた.ただ臍帯動脈のRIが0.71,0.71,0.68と高く,中大脳動脈のRIは0.70,0.65,0.61と低下傾向を示して,胎盤機能低下による胎児の血流再配分が進行しつつあると思われた.40週1日と2日のNSTで軽度の遅発一過性徐脈がみられたが,基線細変動と一過性頻脈を伴っていた.40週4日と5日に頸管熟化と分娩誘発を兼ねてプロスタグランジンE2(PgE2)錠(プロスタルモン・ER)を毎時1錠ずつ6錠まで内服したが陣痛発来に至らなかった.胎児心拍もreassuringであった.40週6日の午前9時35分からPgE2錠内服を開始し,11時35分に3錠目を内服した頃から5分ごとの陣痛が発来したが基線細変動と一過性頻脈がみられていた.12時35分に4錠目を内服し,13時30分には4分ごとの陣痛となり,少量の出血をみたので内診すると,頸管は4cm開大し,胎胞を触知したため5錠目は中止した.このCTGは13時50分から12分間のものである. -
Question2
26巻4号(2007);View Description Hide Description26歳,3回経妊産婦.妊娠週数は10週の頭殿長にて確認済み.妊娠初期に悪阻にて輸液治療を行った.36週5日の推定体重は2,397gと−0.8SDであった.39週2日に陣痛発来と破水にて入院した.その際の子宮頸管は4cm開大,ステーションは±0で,羊水インデックス(AFI)は5.0であった.分娩は順調に進み,入院後6時間後に頸管は全開大した.10分後の現在,先進部はステーション+2cmである. -
Question3
26巻4号(2007);View Description Hide Description妊娠週数は前医で9週の頭殿長にて確認済み.37週に胎児脳室拡大のため紹介となる.38週2日の外来での胎児心拍数モニタリング中に遅発一過性徐脈を認めたために管理目的で入院となる.入院後のbiophysicalprofile scoreは10/10であり,入院後のFHRモニタリングでは,reassuring patternであった.羊水インデックス(amniotic fluid index;AFI)は19,側脳室三角部幅14mm(軽度脳室拡大)であった.38週5日に自然陣痛発来した.分娩経過中に微弱陣痛のためにオキシトシンで陣痛の増強を図っている.現在,10cm開大,先進部は+2である. -
Question4
26巻4号(2007);View Description Hide Description25歳,初産婦.妊娠週数は妊娠8週の頭殿長にて確認済み.妊娠10週に切迫流産のために安静入院.妊娠32週に子宮内胎児発育遅延と羊水量減少(AFI=7)のために紹介入院となる.入院後は,胎児の発育,wellbeingを厳重に観察した.妊娠37週2日に子宮内胎児発育遅延および羊水過少(AFI=2.3)のためにラミナリアにて頸管を拡張後,翌日にオキシトシンにて誘発を開始した.子宮口5cm開大時点で中等度変動一過性徐脈が頻発するため,温生理食塩水を子宮腔内に注入した.現在,子宮口は全開大で,ステーション+2である. -
Question5
26巻4号(2007);View Description Hide Description31歳,初産婦.妊娠38週2日.妊娠14週より定期的に健診を受け,その経過に異常はなかった.水様帯下,陣痛発来にて入院し,経過を観察していたが,子宮口開大6cmの時点で陣痛が微弱になり,分娩の進行が停止した.同時に母体に38度の発熱がみられた.抗生物質の投与,および子宮内圧計を挿入した後,オキシトシン静注投与で陣痛促進を行い,入院後約15時間で子宮口全開大,ステーション0となる. -
Question6
26巻4号(2007);View Description Hide Description28歳の初産婦.妊娠40週で自然陣発のため入院した.入院時から胎児心拍数モニター上では基線は110bpm,正常基線細変動で,一過性変化はみられなかったが,子宮口開大8cm,ステーション0で,それまで順調であった分娩の進行は停止した.子宮収縮は10分間に3回で,触診上十分な強度であると判断し,ほぼ3時間経過を観察していたが,その間に子宮口,ステーションともに変化はなく,分娩停止と診断され,帝王切開による分娩と決定された.手術室では十分な補液のもとに腰椎麻酔を施行したが,母体徐脈が出現し,そのために硫酸アトロピン0.25mgの静脈内投与が行われた. -
Question7
26巻4号(2007);View Description Hide Description33歳,初産婦.妊娠34週2日.妊娠糖尿病のため妊娠23週よりインスリンにてコントロールを行い,徐々にインスリン需要量は増加していった.妊娠30週より低血糖発作が出現するようになったため,31週より入院管理とし,インスリンを減量しつつ様子観察としていた.入院後,胎児発育はやや緩慢であった.妊娠34週2日,腹痛を訴えたため胎児心拍数陣痛図モニターを施行したところ,上記のモニターとなった.前日までのモニターに,とくに異常はなかった.出血はなく,子宮頸管は未開大であった. -
Question8
26巻4号(2007);View Description Hide Description35歳,初産婦.妊娠41週3日.妊娠週数は8週の頭殿長にて確認済み.妊娠経過は,軽度貧血以外に異常がなかったが,予定日を越えても陣痛発来がなかった.子宮頸管は未開大であり,Bishopスコアは3点.羊水インデックスが3.5と低下してきたため,分娩のために41週2日に入院した.外来におけるノンストレステストはreactive.ラミナリアにて頸管を拡張後,翌日オキシトシンにて誘発を開始した.現在,分娩進行は順調であり,子宮口開大7cm,展退は100%,先進部は+1cmである.妊婦の体位は仰臥位である. -
Question9
26巻4号(2007);View Description Hide Description33歳,初産婦.妊娠39週3日.妊娠経過にはとくに問題なかった.妊娠38週を過ぎてもBishopスコアは不良で(子宮口ほぼ閉鎖,展退30%以下,児頭浮動),児体重は推定3,200gを超え,羊水量は羊水ポケット20mmと下限ギリギリで推移していた.入院前日に行ったNSTはreactive patternで,一過性徐脈もなく,reassuring fetal statusであった.午後8時より陣痛が発来し,午後10時45分に入院し,直後のCTGで上に示すような心拍数パターンを示した.子宮口は2cm開大,展退80%,児頭sp−1,妊婦の体位は仰臥位である. -
Question10
26巻4号(2007);View Description Hide Description22歳,初産婦.妊娠経過はとくに問題なし.妊娠39週6日,陣痛発来にて入院となった.外来でのノンストレステスト(NST)ではとくに異常はなく,Bishopスコア3点,羊水ポケットは25mm,胎児推定体重は約3,000gであった.入院時は子宮口2cm開大,展退80%,児頭はsp−2,未破水であった.陣痛間隔は7分から10分と不規則で,ゆっくりと進み,陣発後7時間経過した段階で,子宮口4cm開大,展退80%,児頭sp−1,矢状縫合3時9時,第1回旋はまだ終了していなかった.子宮収縮間隔は6分から7分,少し微弱であった.妊婦の体位は座位である. -
Question11
26巻4号(2007);View Description Hide Description30歳,初産婦.妊娠経過にはとくに異常なく,妊娠37週頃より子宮収縮を頻回に認めていた.妊娠38週5日,子宮収縮の増強と少量の性器出血を認め来院した.子宮口は2cm開大,展退50%,児頭位置−3,Bishopスコア4点である.子宮収縮の自覚は頻回にあるものの,痛みはあまり感じていない. -
Question12
26巻4号(2007);View Description Hide Description35歳,初産婦.妊娠40週0日.肥満妊婦として外来で妊婦健診通院中であった.母体体重88kg(非妊娠時体重84kg),身長154cm,胎児推定体重は3,560gで,予定日近くになっても児頭浮動(floating head)の状態であった.妊娠40週0日,自然破水し入院となる.入院時子宮口4cm開大,展退60%,児頭位置−3,Bishopスコア9点であった.その後,陣痛微弱となり,オキシトシン点滴により促進分娩を施行し,徐々に分娩は進行した.現在,子宮口9cm開大,展退90%,児頭位置−1である. -
Question13
26巻4号(2007);View Description Hide Description23歳,初産婦.里帰り分娩のため妊娠35週で初診.身長162cm,体重66.6kg(BMI25).血圧131/70mmHg,浮腫なし,尿蛋白(+),尿糖(−),胎児推定体重2,403g,羊水量正常,血液検査に異常なし(Hb11.1g/dL).妊娠36週1日,深夜就眠中に突然腹痛を発症.40分後にかかりつけ医を受診したところ,強度腹痛,顔面蒼白,嘔吐あり.血圧103/60mmHg,脈拍数64/分,体温36.3度.CTGモニターを装着したが児心拍がうまく拾えず,超音波にて胎児心拍を確認(徐脈,80/分以上).ただちに母体搬送となり,発症1時間27分後に周産期センターに到着した. -
Question14
26巻4号(2007);View Description Hide Description38歳,初産婦.男性因子による体外受精により妊娠する.妊娠39週2日,前期破水にて入院.胎児推定体重は2,530g,羊水インデックス(AFI)=3.5である.前期破水後16時間経過し,現在,オキシトシンにて分娩誘発中である.胎児心拍数図は母体仰臥位にて内測法を施行している.分娩進行は順調であり,内診所見では頭位,子宮口開大8cm,展退ほぼ100%,児頭先進部は+1cmであり,努責感が出てきている. -
Question15
26巻4号(2007);View Description Hide Description23歳,初産婦.B型Rh(+),間接クームス試験:陰性.妊娠36週2日の妊婦健診では特別異常を認めなかった.胎児推定体重2,320g,羊水インデックス(AFI)=9.0.妊娠38週2日に胎動の減少を主訴に来院する.血圧116/76,尿蛋白(−),胎児超音波では,胎児推定体重2,700g,AFI=18.0,胎児腹水・胎児胸水などは認めない.内診所見では,子宮口は閉鎖している.
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連載
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- 最新知識を臨床にいかす! 妊娠高血圧症候群のすべて
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第16回(最終回) 分娩・産褥の管理と長期予後
26巻4号(2007);View Description Hide Description妊娠高血圧症候群はハイリスク妊娠の代表である.分娩方法の選択(経腟分娩にするか,帝王切開分娩にするか),帝王切開時の麻酔法(脊椎麻酔か,全身麻酔か)も重要な問題である.妊娠中のみでなく,産褥の管理についても,降圧剤投与(開始基準と降圧目標)をどうするか,もし降圧剤を投与したときは母乳をどうするかなども十分認識しておかなければならない. - どこを見る!? まず何をする!? 出生直後の新生児SOS
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第4回 呼吸窮迫症候群
26巻4号(2007);View Description Hide Description以前は,本症は原因不明の呼吸障害という意味の特発性呼吸窮迫症候群(idiopathic respiratorydistress syndrome;IRDS)あるいは病理学的診断から肺硝子膜症(hyaline membrane disease;HMD)と呼ばれていた.1959年にAveryらが肺サーファクタントの欠如が本症の原因だと報告1 )してから,特発性(idiopathic)を取って,呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome;RDS)と呼ばれている. - お母さんのこの悩み,こんなひとことで楽になる らくちん育児支援
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「発達の遅れ」
26巻4号(2007);View Description Hide Description「何々ができない」との相談ではあっても,話を聞けば子ども自身はゆったりのんびり着実に育っていて,落ち着いて振り返れば母親自身にもそれは感じられている,ということがよくあります.発達の遅れに関する相談の多くは,実は子どもの問題ではなく,母親自身の育児不安や周囲との軋轢などが「心配」に形を変えて現れたと見ることができそうです. - 助産と看護の飛躍のために
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No.23 新年度は母子保健にフォローの風!
26巻4号(2007);View Description Hide Description年度替わりは制度や仕事にとって意義深いものがあるが,この新年度は助産や看護もまた新たなスタートを切った.保健師助産師看護師法が改正され,助産師になるには助産師国家試験と看護師国家試験の両方に合格しなければならなくなり,さらに助産師の名称は助産師でなければ使えなくなった.また,厚生労働省の助産師確保総合対策事業も2 年度目に入り,予算が大幅に拡充された.助産師の養成課程も充実される. - 助産婦の歴史(284)
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- 使える! 助産ケアのエビデンス
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第4回 文献検索のヒント その1
26巻4号(2007);View Description Hide DescriptionEvidence-based practice注1 )とは,医療者が最新の研究成果を踏まえて,医療の受け手である患者・市民にとって最もよい方法をともに考え選択することです.したがって,医療者は重要なエビデンスをキャッチするために,研究動向がわかる情報源に対してアンテナを張っておく必要がありますし,臨床で疑問を持ち,また判断に迷ったら,情報を収集して最新の研究成果を見落とさないようにすることが大切です.医療の受け手の中でも,とりわけ妊産婦は情報収集に意欲的な人が多く,行動力もあり,厳しい目を持つ消費者であると言えます.助産師も,何か特別なときだけではなく,日常的に実践の一環として情報を収集し,時にはケアを見直すことが求められています.
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エッセー・読みもの
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- Message for perinatal staff
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- Dr. T. Tのおもちゃ学 おもちゃで育てる子どものこころ
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- 遠き国より
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施設レポート
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- わたしのまちのいきいきスタッフ vol.70
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国家公務員共済組合連合会 舞鶴共済病院産婦人科(京都府舞鶴市)
26巻4号(2007);View Description Hide Description2007年1 月現在,京都府舞鶴市の分娩取り扱い施設は総合病院が1 つ,産科医院が2 つである.その唯一の総合病院として同市内の分娩の大部分を担うのが,舞鶴共済病院産婦人科である.