ペリネイタルケア
Volume 26, Issue 6, 2007
Volumes & issues:
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特集
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- どうして起こる? どうやって防ぐ?妊娠・産褥期の生理から学ぶマイナートラブル予防法
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循環器,呼吸器系の変化とマイナートラブル
26巻6号(2007);View Description Hide Description妊娠中,母体の血管系,呼吸器系は劇的な変化を示す.母体の循環血液量は著明に増加するが血圧はほとんど変化しない.また母体の分時換気量は増加し胎児のガス交換を助ける.こういった生理変化の機序や意義,それに伴ったマイナートラブルについて説明したい. -
消化器系の変化とマイナートラブル
26巻6号(2007);View Description Hide Description妊娠中は胎盤由来の各種ホルモンや増大した子宮による圧迫などの影響で,つわり・胃食道逆流症・便秘などさまざまな消化器症状が現れる.その多くは食生活やライフスタイルの工夫で改善されるが,重症例に対しては適切な薬剤による治療が必要となる. -
膀胱・尿道の変化とマイナートラブル
26巻6号(2007);View Description Hide Description子宮と腟のすぐ前方には,膀胱と尿道が位置している.妊娠中は,骨盤底支持組織の軟化,膀胱平滑筋の弛緩,増大した子宮による膀胱圧迫などにより,頻尿や尿意切迫,尿もれなどが起こりやすい.また分娩の際に,骨盤底支持組織の損傷や膀胱・尿道を支配する神経の機能低下を伴うと,産褥期に排尿困難や尿失禁が見られるようになる.分娩時の骨盤底支持組織や神経系への負担を最小限に留め,産褥期には骨盤底の養生とトレーニング,排尿指導により可及的に膀胱・尿道のリハビリテーションを励行すべきである. -
運動系の変化とマイナートラブル
26巻6号(2007);View Description Hide Description妊娠中は体重の増加,子宮の増大,ホルモン分泌量の変化などを背景に,運動系の変化が起き,これに伴うマイナートラブルが起こりやすくなる.とくに腰痛は妊娠中のマイナートラブルの60〜70%を占めるが,そのほかに手のしびれ,足の痙攣などがあげられる. -
精神神経系の変化とマイナートラブル
26巻6号(2007);View Description Hide Description周産期の生理学的変化に伴う精神症状は病的なレベルのものとの区別が困難な場合がある.予防的介入はいまのところ,一般には困難であるが,リスクと症状の評価を適切に行えば,母子の長期のメンタルヘルスに寄与できる可能性は少なくない. -
産褥復古に伴うマイナートラブル
26巻6号(2007);View Description Hide Description産褥子宮の生理的変化と,子宮復古不全,妊娠線,会陰創部痛,後陣痛,痔核・脱肛,閨怠と疲労といった,従来軽視されてきたものの日常臨床で出会うことの多いトラブルについて,その病態,治療と予防を中心に,褥婦のQOLを念頭において解説した.
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連載
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- NEW 何がわかる? どう使う? 画像でみる産科学
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第1回 総論1:妊婦健診と画像診断
26巻6号(2007);View Description Hide Descriptionさて今回,『ペリネイタルケア』の誌面を借りて,「画像でみる産科学」というシリーズを始めることになりました.この連載は数多い産科関連疾患の中からとくに見逃してはならない疾患を取り上げ,疾患ごとの診断や管理法について画像を通して理解していただこうというコンセプトで企画しました.初回は妊婦健診における画像診断についてお話しします. - どこを見る!? まず何をする!? 出生直後の新生児SOS
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第6回 心雑音のない心疾患
26巻6号(2007);View Description Hide Description心雑音は,狭窄や短絡,逆流などに生じる乱流が原因とされている.乱流が血管壁に当たり,雑音を生じさせる振動を起こす.逆に,心疾患があるにもかかわらず心雑音が聴取されない病態としては以下のようなことが考えられる2 ).①狭窄,逆流,短絡などの病変が非常に軽度である.②心房間や動脈管での短絡はあっても,狭窄,逆流,心室間の短絡がない.③心室中隔欠損が大きいため心室間の圧差がなく,短絡が少ないか,あっても乱流が生じない.④心機能が極度に低下していたり,多血症で血液の粘稠度が高い. - 使える! 助産ケアのエビデンス
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第6回 子宮収縮抑制薬の経口剤は早産予防に有効だろうか?
26巻6号(2007);View Description Hide Description早産にはさまざまな原因があり,多胎,前期破水・頸管無力症などの子宮に関連した異常,妊娠高血圧症候群といった母体の全身状態,子宮内胎児発育不全ほかの胎児異常などが主なものと言われています.また原因が特定されないものも約30%あるとされています.このように,早産にはさまざまな原因が関係していると考えられていますが,実際には,37週未満での子宮収縮に対して,対症療法として子宮収縮抑制薬(主にβ刺激薬)を使用しているのが現状です.ただし,たとえば米国産婦人科学会ガイドラインには「子宮収縮抑制薬(注射剤)の有効性は,未成熟児に対する出生前ステロイド剤が効果を発揮するための時間やNICUを持つ施設への母体搬送時間を確保することであり,妊娠期間の短期的延長に限られる」とされています. - お母さんのこの悩み,こんなひとことで楽になる らくちん育児支援
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「赤ちゃんのアレルギー」
26巻6号(2007);View Description Hide Description近年,アレルギー疾患の有症率は年ごとに増えています.東京都などはアレルギー疾患を「現代における都市問題の一つ」と位置付け,都をあげて対策を練っているほどです.もとより,アトピー性皮膚炎や喘息をはじめとする赤ちゃん・子どものアレルギー疾患は,子育てにおける大きなトピックの一つですが,以前は,自分の子どもがアレルギーと診断されるか身近にひどいアレルギーの子どもがいるのでなければ,「あったら怖い」程度の危機感しかない親が大半でした.それが,自ら花粉症に悩まされる人の割合が増えてくるにつれ,「何とかしてアレルギーのない子どもに育てたい」と考える母親が多くなってきているようです.しかし過度に心配するあまり,妊娠中から卵・大豆・乳製品などの除去食を開始したり,通常の月齢を過ぎても離乳食を開始しなかったりと,かえって母子の健康が心配される例もあり,冷静さを取り戻す必要を感じます - 助産と看護の飛躍のために
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No.25 助産行為の定義とは?
26巻6号(2007);View Description Hide Description年度末も押し詰まった去る3 月30日に,助産師免許や医師免許制度を所管する厚生労働省医政局から通知が出された.通知というのは,行政機関同士で法律を解釈したり,事実を明らかにしたり,法制度や事実に基づき行政目的推進を要請したりするための伝達手段である.したがって,通知は法律を超えて国民の権利や義務を規定することはないし,新たな制度を創設することもない.法律を変えることもできない.今回の通知は「分娩における医師,助産師,看護師等の役割分担と連携等について」というタイトルで,母子の安心・安全の確保や新生児の健全な育成の観点から,これら職種の適切な役割分担と連携が確保される必要があるとの事実を確認している.とりわけ分娩においては,これらの職種が母子の安全・安心・快適を第一義に,お互いの業を尊重したうえで,適切な役割分担と連携のもとで支援にあたることが何より重要であるとしている. - 助産婦の歴史(286)
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エッセー・読みもの
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- Message for perinatal staff
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- Dr. T. Tのおもちゃ学 おもちゃで育てる子どものこころ
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- 遠き国より
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施設レポート
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- わたしのまちのいきいきスタッフ vol.72
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くまがい産婦人科(大分県大分市)
26巻6号(2007);View Description Hide Description大分市郊外の静かな住宅街に,くまの親子のマークが目を引く建物がある.今回うかがった,くまがい産婦人科である.同院では,1992年の開院当初から母乳育児支援に積極的に取り組み,いまでは1 カ月健診時で9 割以上の母親が母乳育児を続けることができている.その成果が評価され,1998年には「赤ちゃんにやさしい病院( Baby FriendlyHospital;BFH)」の認定を受けた.「母乳育児が大切なのは周知のこと,それを諦めざるを得ない人をできるだけ少なくするのが助産師や産婦人科の役割です」と,師長の武石美智代さんは語る.
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投稿
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オーストラリア,ニューサウスウエールズにみる多言語サービス—産科のシステムと医療通訳の利用に注目して—
26巻6号(2007);View Description Hide Description臨床現場においては,より正確な情報伝達が必須とされるため,通訳者を介したコミュニケーションが必要な場面が多々ある.そのため医療現場で通訳者と協働することが今後必要となってくるであろうと考えられ,通訳サービスを提供する大規模なシステム構築の必要性が推測される.このような言語の問題を解決するヒントを得るために,今回,先駆的に多言語サービスを行っているオーストラリアの現状を調査した.産科は,日本でも通訳依頼が多い領域であるため6 ),とくに産科に注目して調査を行った.日本とオーストラリアでは,多様な背景を持つ人々を受け入れている歴史など,国の特徴が大きく異なるためにすべてを応用することは難しいが,今回の調査では,とくに通訳サービスと多言語での医療提供について,日本に応用できるヒントを得ることができたので報告する(なお,本調査は2006年7月に行った).
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