Volume 26,
Issue 11,
2007
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特集
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取り返しのつかない事態を防ぐために妊産褥婦の循環動態を知ろう!
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1075-1075 (2007);
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1076-1077 (2007);
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人の脳への血流は,主に2 本の内頸動脈と2 本の椎骨動脈から供給されている.2 本の椎骨動脈は合流して脳底動脈となり,内頸動脈とともにウィリス動脈輪を形成する.ここから左右の前,中,後大脳動脈の計6 本が出て,大脳皮質に血液を供給する.脳から流出する静脈には深部静脈と硬膜洞があり,主に内頸静脈に注ぎ,その他眼静脈,傍椎骨静脈系などに流出する.成人での脳血流量は約750mL/ 分であり,神経活動に伴って局所脳血流は著しく変化するが,脳循環は脳血流の合計が比較的一定になるように調節されている.脳血流は全身の血流量の13.9%で,脳の酸素消費量は全身の約5 分の1 を占める.また脳組織は低酸素症に極めて敏感で,脳血流を断つと10 秒以内の短期間で意識を消失する1).したがって脳血流の維持は生命にとって重要な意義がある.
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1078-1080 (2007);
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近年,心疾患全体の予後の改善に伴い,妊娠可能ないし希望の心疾患合併女性は増加しているが,周産期専門医や循環器専門医を中心としたチーム医療の向上により,心疾患における妊娠の可否条件や周産期管理については,ほぼ一定の見解が得られつつある1 〜 7).しかしながら,心疾患合併妊娠は,母体と胎児の死亡率,有病率に大きな影響を及ぼしているため4),妊娠・分娩・産褥に伴う心血管系への影響について十分に理解することが重要となる.そこで,特集7(p.26)にて努責による心血管系への影響に関して述べるため,本稿では,とくに,妊娠による生理的な心血管系への影響について述べる.
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1081-1083 (2007);
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子宮胎盤循環は,母体・胎児間のガス交換や物質の輸送など,胎児の正常な発育に重要な役割を担っている.何らかの理由で子宮胎盤循環の血流が障害されると,胎盤機能不全に陥り,胎児は低酸素状態となり,intrauterine growth restriction(IUGR)や胎児機能不全(non-reassuring fetal status;NRFS)が引き起こされる.
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1084-1085 (2007);
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娩出力の一つである腹圧は本来は随意的であるが,腹直筋や横隔膜の収縮による腹腔内圧の上昇により,児娩出直前には陣痛発作に伴い付随的になる.これを努責と言う. 通常,分娩時には心拍出量が増大しているため1 〜 7),心疾患合併妊娠において分娩第2 期に努責をかけさせると,心臓への負荷が増大して,心機能の低下が起こる場合がある.そこで,心疾患合併妊娠においては,妊娠・分娩・産褥に伴う心血管系への影響について十分に理解することが重要となる.本稿では,分娩時,とくに努責に伴う心血管系への影響について述べる.
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1086-1087 (2007);
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妊娠高血圧症候群(pregnancy inducedhypertension;PIH), すなわち妊娠高血圧腎症(preeclampsia)あるいは妊娠高血圧(とくに重症型)では子宮内胎児発育遅延(IUGR)や羊水過少,あるいは分娩時の胎児機能不全を来しやすい.これらは,子宮胎盤循環血流量減少によって胎児への酸素や栄養の供給不足が引き起こされるためと考えられる.では,なぜ本症において子宮胎盤循環が障害されるのだろうか.
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1088-1089 (2007);
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従来,子.症例の剖検所見では,微小血管のフィブリノイド壊死を伴う虚血性小梗塞病変や点状出血が特徴とされてきた.そこで,子.の脳病変は血管攣縮による脳虚血であると考えられてきた.しかし,こうした病理学的所見は子.の中でも予後不良であった症例で得られたものであり,近年の進歩した画像診断により得られる所見はやや異なっている.
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1090-1091 (2007);
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妊娠中の下肢静脈瘤は比較的よく遭遇する疾患で,これは妊娠に伴う静脈圧の上昇といった生理的循環動態の変化に起因している.
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1092-1094 (2007);
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仰臥位低血圧症候群は,仰臥位によって低血圧となり,それに伴い気分不良などの症状が引き起こされるものである.1931 年にスウェーデンのAhltorpが,仰臥位のときのみ低血圧を来す妊娠34 週の妊婦を報告したのが最初である1).妊娠後期にたびたび見られるが,日常の注意で予防できる症候群でもある.また症状が起きた場合も体位変換のみで改善することが多く,妊婦自身への指導も有用である.頻度は2.5 〜 20.6%と報告により幅があるが,平均8%とされ,発症時期は妊娠8 カ月以降が多く,稀に妊娠5 カ月頃や産褥期に本症候群が引き起こされることもある2).
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1095-1097 (2007);
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1098-1099 (2007);
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分娩時には出血が生じる.このため,妊娠中は凝固系の亢進,線溶系の低下など,分娩時の出血に備えた変化を来す.また,分娩に際しては,胎盤.離に伴う子宮壁からの出血に対し,子宮収縮による物理的な止血機構が働く.妊娠中の凝固・線溶系の変化については別項で述べられているため,本稿においては分娩時に特異的に生じる子宮収縮による止血機構について述べる.
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1100-1102 (2007);
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硬膜外麻酔には,局所麻酔薬を間歇的に硬膜外腔に投与する間歇投与法と,持続的に投与する方法とがあるが,運動神経遮断の回避が望ましく,低濃度局所麻酔薬とオピオイドを併用した持続投与法が選択される.すなわち0.0625 〜 0.125%ブピバカイン(0.1 〜 0.2%ロピバカイン)と2 μg/mL フェンタニルを8〜 10mL /時間で投与する方法である.最近はPCA ポンプを用いて産婦自身で痛みをコントロールする自己調節硬膜外麻酔(patient controlledepidural analgesia;PCEA)や脊髄くも膜下麻酔を併用した方法(combined spinal-epidural analgesia;CSEA)が行われている.低血圧が回避できればこれらの区域麻酔により安定した循環動態が得られる.極めて稀には局所麻酔薬中毒,全脊麻(totalspinal anesthesia)による循環虚脱を起こす可能性がある.
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1103-1105 (2007);
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羊水塞栓症(amniotic fluid embolism;AFE)は周産期領域において妊産婦死亡を起こす主要な疾患である.母体循環中に羊水成分が流入することによって起こるとされているが,いまだに原因の詳細はわかっていない.AFE の発生頻度はその報告によってさまざまで,2 〜 3 万分娩に1 例程度と言われていたが,最新のカナダでの大規模調査では10 万分娩に6 例と報告1)されている.死亡率はいままで60 〜 80%と言われていたが,最近の報告では30〜 40%というものが多いようである1,2). AFE の危険因子として,羊水が母体血中に流入しやすい状態が考えられる.具体的には産道裂傷・帝王切開・分娩誘発例などがあげられる.分娩中や分娩後12 時間以内に発症することが多いため,ハイリスク例では分娩中や直後の呼吸困難などの症状に注意が必要である.患者背景としては母体の高齢(35 歳以上)・アレルギー体質・アトピー患者などがあげられている.
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1106-1108 (2007);
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1109-1111 (2007);
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播種性血管内凝固症候群(disseminatedintravascular coagulation;DIC)とは,何らかの基礎疾患があり,組織因子の血中流入,血管内皮細胞障害などにより生体内で凝固系が過度に活性化され,血管内では本来起こらないはずの凝固機転の亢進が起こり,全身の微小血管内に多数の血栓が形成される症候群である.血栓の形成により血小板や凝固因子が消費され消費性凝固障害となる一方,この血栓を溶解する二次線溶亢進の機序が加わって出血傾向が出現し,さらにはこれら病的状態が相まって,諸種の臓器に重篤な障害をもたらす. 検査所見上では血小板と凝固因子の急激な減少,それらに伴うプロトロンビン時間(PT),活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT),出血時間の延長,線溶亢進によるフィブリン分解産物(fibrindegradation product;FDP)またはFDP・D- ダイマーの増加などが認められる.
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1112-1114 (2007);
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わが国における妊産婦死亡の原因に胎盤異常を含めた異常出血の占める割合は高く,2004 年度では分娩後出血による母体死亡は妊産婦死亡全体の20.4%を占めている.そのため異常出血の原因究明と同時に早急な対応を行うことが重要であり,止血困難時には高次医療機関との連携が必要となってくる.出血の原因としては弛緩出血,軟産道裂傷,子宮破裂,子宮内反症,胎盤・卵膜遺残などがあげられる1)が,原因の迅速な診断と止血,正確な出血量の把握,全身管理などにより,母体死亡が回避できると考えられる.本稿では産科出血への効果的な対処法について解説する.
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連載
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何がわかる? どう使う? 画像でみる産科学
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1068-1071 (2007);
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Nuchal translucency(NT)は,妊娠初期の胎児に認められる後頸部皮下の無エコー領域のことです.NTの増大と染色体異常との関連が報告され1),欧米では染色体異常のスクリーニングマーカーの一つとして臨床応用されていますが,本邦ではその有用性は必ずしも確認されているわけではありません.増大したNT のほとんどは妊娠経過中に消失しますが,NT が増大した例には.胞性ヒグローマや頸部浮腫の初期所見も含まれています.NT の発生原因は不明ですが,妊娠初期に認められる一過性の皮膚の生理的性状変化から頸部浮腫あるいは.胞性ヒグローマまで,さまざまなものが考えられます.
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どこを見る!? まず何をする!? 出生直後の新生児SOS
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1118-1121 (2007);
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お母さんのこの悩み,こんなひとことで楽になる らくちん育児支援
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1125-1127 (2007);
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「子育ては3 人目からが楽しい」と言われます.1 人目の子育ては初めてづくしで緊張感が先に立ち,楽しむどころではありません.これはわかりやすいです.ならば2 人目はというと,子どもとの暮らしや世話の仕方に慣れて楽勝と思いきや,複数の子どもに同時に目配り・気遣いする難しさは,1 人目の育児にはなかったことです.新生児訪問などでも,経産婦からは「この子(新生児)はよいのですが,上の子が……」という出だしの相談がたくさん聞かれます. また昨今,いじめや不登校など,児童心理にかかわる諸問題が日々盛んに報じられ,多くの親たちが不安を抱えています.下の子が生まれ,上の子がいわゆる「赤ちゃん返り」するだけで,このまま子どもが壊れてしまわないかと心を痛め,腫れ物に触るような対応をする家庭も見られます. きょうだいが生まれたときに,子どもが普通に見せる反応を知り,落ち着いて見守ることができるように援助したいものです.
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助産婦の歴史
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1130-1132 (2007);
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使える! 助産ケアのエビデンス
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1141-1145 (2007);
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妊娠中に行う運動はマタニティエクササイズとして知られ,主として有酸素系の運動が効果的だと言われています.妊婦が行うエクササイズには,ヨガや妊婦体操,ウォーキングなど,それまで運動習慣がなくても取り組みやすいものから,ジョギング,マタニティビクス,妊婦水泳(マタニティアクア)など,比較的運動量の大きいものまで,その種類はさまざまです1).
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これからのペリネイタルケア vol.1 地域周産期医療システムの再デザイン
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1146-1149 (2007);
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岩手県では,産婦人科医師の絶対数の不足や,産科の休止により地域住民に深刻な不安が広がっています.残された施設に出産が集中し,産婦人科医師が過重労働を強いられることによる医療事故発生の危惧などから,医師から産婦人科は敬遠されがちな傾向にあり,ただちに産婦人科医師の増員を図ることが難しい,というのが現状です.
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読んで即実践できる! 助産師が行う性教育講座
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1150-1153 (2007);
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エッセー・読みもの
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Message for perinatal staff
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1067-1067 (2007);
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いまでも使えるそのエッセンス 未来に伝えたい産育習俗
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1122-1122 (2007);
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Dr. T. Tのおもちゃ学 おもちゃで育てる子どものこころ
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1133-1133 (2007);
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遠き国より
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1138-1140 (2007);
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施設レポート
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わたしのまちのいきいきスタッフ
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ペリネイタルケア 26巻11号, 1134-1137 (2007);
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川崎市にある聖マリアンナ医科大学病院は地域の基幹病院である.周産期領域でも三次施設となっており,搬送はかなり多い.全体の分娩数は2006 年度で688 件,その内訳はローリスク60 〜 70%,ハイリスク30 〜 40%である.切迫早産などで長期入院を余儀なくされる妊婦も多い.