ペリネイタルケア
Volume 27, Issue 2, 2008
Volumes & issues:
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特集
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- ケアの違いはどこにある?母親の満足度を高めるBFH の母乳育児支援
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妊娠中の母乳育児支援
27巻2号(2008);View Description Hide Description当院が2002 年に「赤ちゃんにやさしい病院(babyfriendly hospital;BFH)」に認定されてから5 年が経った.「赤ちゃんにやさしい病院」として妊娠,出産,産後の一連の流れの中で母乳育児を行う母子にかかわってきた.その結果,母乳育児を実践するうえで妊娠中における準備は非常に大切であり,その後に影響を与えることを認識した.そこで今回は,当院での妊娠中の母乳育児支援について述べる. -
分娩直後の母乳育児支援 カンガルーケアへの支援
27巻2号(2008);View Description Hide DescriptionWHO /ユニセフが認定する「赤ちゃんにやさしい病院(baby friendly hospital;BFH)」はWHOが定めた「母乳育児成功のための10 カ条」に従った母乳育児支援を行っている医療施設である.「母乳育児成功のための10 カ条」には分娩直後の早期授乳や終日の母子同室の項目があり,これらの項目に準拠したケアを行うと母子分離の頻度はかなり少なくなると考えられる.当院でも健常な母子に関して母子分離はほとんどないが,実際にどのようにケアを行っているか,当院なりの工夫も若干加えながら「分娩後2 時間のケア」を述べてみたい.これが読者の日常に少しく益し,またご批判をいただければ幸いである.この稿では分娩直後のケアに視点を向けるが,ケアの連続性を理解していただくために,分娩中である児頭娩出直後から述べてみたいと思う. -
産褥入院中の母乳育児支援
27巻2号(2008);View Description Hide DescriptionWHO /ユニセフが1989 年に,世界のすべての国の産科施設に対して「母乳育児成功のための10カ条」(以下「10 カ条」と略す,表1)の推進を呼びかけてから,はや19 年が経過した.そして1991年より10 カ条を採用し実践している産科施設を「赤ちゃんにやさしい病院(baby friendly hospital;BFH)」と認定し,母乳育児をより一層促進させるキャンペーンを始めた. 日本ではようやく,母乳育児が進められるようになった.しかし,母乳を勧めない産科施設は一つもないが,実際に母乳育児ができるように支援している施設は多くはない.それは,産後母乳相談で当院を受診する人のそれまでの母乳育児の方法や入院中の生活の話を聞くと,うかがい知ることができる.日本では,早期の産褥期は産科施設での入院期間にあたり,母乳育児が産科医療者の下で開始されているにもかかわらず,その期間が有効に利用されていない現状がある. 当院は1987 年に開院し現在20 年が過ぎた.1994年には日本で3 番目に「赤ちゃんにやさしい病院」の認定を受けた.年間500 〜 600 の分娩を取り扱い,1 カ月健診,4 カ月健診での母乳率はそれぞれ97%,93%である.そこで今回は,入院中の母親にいかに知識を持ってもらい,母乳育児を実践できるようにしていけばよいのか,そして母親に満足してもらうためにはどうすればよいのか,当院で行っている母乳育児支援を多少の私見を含め紹介する. -
帝王切開後の母親,NICUへ入院した児を持つ母親への支援
27巻2号(2008);View Description Hide Description安全で快適な妊娠・出産・育児が求められるようになっている.安全性は罹病率や致命率で客観的に求められるが,快適性は母親の満足度であらわされることが多い.したがって,そこに単に母親の感じる安楽さだけを求めるのではなく,母子の愛着形成や育児についての長期の見通しを行ったうえでのケアが必要である. 母乳育児支援は,それ単独で行えるものではなく,さまざまな状況でのサポートシステムや,産前・産後を過ごす産科病棟と新生児・病児の入院するNICU とのきめ細かな連携が重要である. -
退院後の母乳育児支援 産後母子訪問の試みを中心に
27巻2号(2008);View Description Hide Description妊婦の96%が母乳育児を希望しているにもかかわらず,2005 年の厚生労働省の発表によると,1 カ月健診時の母乳率は42.4%であり,日本における母乳育児の現状は決して満足のいくものではない.当院では,一人でも多くの母と子に母乳育児を確立してほしいと願い,ここ数年さまざまな母乳育児支援の取り組みを行ってきた.その中で,最初に試みたのが産後母子訪問である. 従来,産科退院から1 カ月健診までの間は,地域の保健師や助産師による母子への訪問指導が行われており,出産した施設とのかかわりが希薄であった.そのため,時として,保健師や助産師のそれぞれの考え方や指導法により,あるいは母乳育児について十分な知識がないために,安易に人工乳の補足が行われたり,間違った指導がなされたりすることがあった.また,訪問の時期もまちまちで,母親が育児について最も不安を覚えると言われる退院後1 週間の頃とは限らない. このような現状を踏まえて,当院では産後入院中から1 カ月健診までの継続的な母乳育児支援を目指して,退院後1週間目の母子訪問を2002 年5 月より開始した.今回は,この産後母子訪問を中心に,これまで行ってきた当院における退院後の母乳育児支援について述べてみたいと思う. -
母乳育児に不安を持つ母親へのサポート
27巻2号(2008);View Description Hide Description母乳育児を初めて行う母親の多くは母乳育児に対して不安を持つと言われている1).とくに出産後の母乳産生量が増えてくるまでの数週間は,産後の復古と慣れない育児への不安,母乳分泌への心配などが相まって,不安定な状況となりやすい. 母親に母乳育児の意欲があり,出産直後から適切な支援が行われていれば,ほとんどの女性は母乳だけで子どもを育てることができる2).これは世界共通のことであり,日本でも「赤ちゃんにやさしい病院(baby friendly hospital;BFH)」での母乳率の実態がそれを証明していると言えよう. しかし,日本全体では出産後1 カ月の時点で人工乳を与えている母親の割合が57%以上を占め,第1子出産後の母親の82%が「母乳に関して不安を感じていた」と回答している3).これらの母親に対し援助者は,「母乳育児に不安を持つ母親へのサポート」について理解し,支援していくことが望まれる. ここでは,母親の母乳育児への不安の原因を,「母乳の分泌に関連するもの」と「母乳の分泌以外のもの」に分けて述べる.
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連載
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- 何がわかる? どう使う? 画像でみる産科学
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第9 回 卵巣腫瘍合併妊娠
27巻2号(2008);View Description Hide Description卵巣腫瘍合併妊娠はその名の通り,妊娠時に卵巣腫瘍を合併している状態です.卵巣腫瘍はその多くが無症状で経過するため妊娠初期の超音波検査で偶然に発見されることが多く,超音波検査の普及に伴いその頻度は増加しています.手術適応となる卵巣腫瘍合併妊娠の頻度は全妊婦の0.5 〜 1%という報告があります. - 使える! 助産ケアのエビデンス
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第14 回 分娩時の破膜は陣痛を加速させ,分娩時間を短くするのに有効か?
27巻2号(2008);View Description Hide Description読者の皆様,こんにちは.るかデンス研究会です.臨床において慣習的に行われているルチーンを見直したり,新しいケアを提案したり,実践の変革を目指したとき,どのようにアプローチしていますか? 本連載では文献的検討によって,助産師をはじめ周産期に携わる医療者が日々のケアにおいて活用することができる助産ケアのエビデンスを紹介します.エビデンスを臨床で応用し,日々のケアの向上を目指しませんか? - 守る 鍛える 骨盤底筋群の再訓練法 フランスで発達した産後ケア
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第2 回「骨盤底がダメージを受けるとどんなことが起こるのか?」
27巻2号(2008);View Description Hide Description「会陰部再訓練法」という言葉は,日本では聞きなれませんが,フランスでは産後のケアとしてたくさんの女性が行っています.この訓練には,弱った産後の骨盤底筋群の力を回復させる働きがあり,尿漏れや性器脱,性交痛などのセンシティブな問題を抱える多くの女性の悩みに応えるものです.周産期医療に従事しているからこそ重要なこのケア.まずは知ることから始めましょう! - “災い転じて福となす”で妊産褥婦との信頼関係構築を目指す クレーム対応相談室
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第2 回 妊婦健診でひどく待たされる
27巻2号(2008);View Description Hide Description多くの妊産褥婦やその家族と接する以上,クレームを受けることもあるはずです.とくに産科では,妊産婦や家族の「安全に出産できて当然」という考えのもと,特有のクレームが寄せられるのではないでしょうか.さまざまな事例をもとに,クレームを妊産褥婦との信頼関係構築のチャンスに転じる方法を学びましょう. - 読んで即実践できる! 助産師が行う性教育講座
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性交(後編)
27巻2号(2008);View Description Hide Descriptionいま,10 代の人工妊娠中絶や性感染症が大きな問題となっています.そんな子どもたちに「性」と「命」の大切さを伝えるために,学校での性教育講座を始めている助産師の皆さんも多いのではないでしょうか? 学校との交渉の仕方やより効果的な授業の展開方法を,「いのち語り隊」のメンバーから学びましょう. - これからのペリネイタルケア vol.1 地域周産期医療システムの再デザイン
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第8 回 経済産業省プロジェクト —地域医療情報連携システムの標準化及び実証事業—
27巻2号(2008);View Description Hide Descriptionピンチが生んだチャンスを生かす岩手県における取り組み産婦人科施設の相次ぐ閉鎖や産婦人科医師不足が取りざたされています.そのような中,岩手県では産む場所を探すお母さんたちのため,地域周産期システムを再デザインし,助産師と医師が協働する体制を構築しています.岩手県におけるさまざまな工夫から,安心・安全・安楽なお産へのヒントを見つけてみましょう! - 助産婦の歴史(294)
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近代の助産婦(その264)
27巻2号(2008);View Description Hide Description20. 明治・大正の産婆・村松志保子 (14)志保子の晩年(続) 志保子の明治末年から大正時代については資料があまりないので明らかではない.事業も順調に継続し,健康状態もとくに悪いところはなかったようである.
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エッセー・読み物
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- Perinatal Food plan
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vol.2「カルシウム編:鮭とししゃものロースト」(レシピはp.57)
27巻2号(2008);View Description Hide Descriptionカルシウムは丈夫な歯や骨などを作るためには欠かせないミネラルです。食品からの摂取量が不足すると、骨に蓄えられたカルシウムが溶け出し、骨や歯の質が低下してしまいます。 - ちょっと脱線 思い出鉄道紀行
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「島根県出雲市:出雲大社」
27巻2号(2008);View Description Hide Description日々の仕事に追われ,忙しい読者の皆様,たまにはちょっと脱線して,旅に出ませんか? 鉄道好きの産科医,助産師が案内する,心を癒す鉄道紀行です. - 遠き国より
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マダガスカル シスター平間からの手紙(22)
27巻2号(2008);View Description Hide Descriptionアフリカ・マダガスカル,アシジの聖フランシスコ病院で働く助産師,シスター平間理子さんから,助産師,上林文子さんへの手紙を掲載しています. - いまでも使えるそのエッセンス 未来に伝えたい産育習俗
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第5 回 産後の肥立ち
27巻2号(2008);View Description Hide Description『日本産育習俗資料集成』1)によると,産後の母親に関する産育習俗には,産後日数を特定した禁忌が多く見られます.
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施設レポート
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わたしのまちのいきいきスタッフ vol.79
27巻2号(2008);View Description Hide Description自然の流れの中での出産が一番いい.だから妊婦の産み出す力を最大限に引き出す努力をするのが助産師の役割とするさくらんぼ助産院.妊婦と家族と助産師,みんなが寄り添って,今日も一人の新しい命が誕生する.
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投稿
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妊娠時鉄欠乏性貧血における適切な食事指導に関する基礎的検討 鉄補給のためのレバー過剰摂取の問題点
27巻2号(2008);View Description Hide Description鉄欠乏性貧血は日本人女性において有病率の最も高い(8.5%) 貧血であり1),妊婦では約50 〜 75%が鉄欠乏性貧血に罹患すると言われている2 〜 4).鉄欠乏性貧血が慢性的に続くと狭心症様の発作や心不全の症状を呈することもあり5),さらに妊娠時の重度な貧血は,自然流産,低出生体重児,胎児死亡などの危険な結果を引き起こすこともあることから4,6),その予防や治療は非常に重要である.妊娠時の貧血の予防や治療としては,鉄を強化した食事療法が広く推奨されており7),栄養と食生活改善に関する保健指導が重要視されている8,9).
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