ペリネイタルケア

20 歳未満の妊娠・出産を若年妊娠・出産といい，10 代妊娠・出産，思春期妊娠・出産と同義語として使用されている．近年，若年者では体型の変化や性情報の氾濫により性行動が活発化，低年齢化している．未婚女性は経済的に不安定で，社会的にも不利益を被ることが多く，いまだ人工妊娠中絶の数が多い．実際に結婚，出産することとなっても，食生活や嗜好品などを含めた妊娠前の準備が整っておらず，また初診時には大事な妊娠初期を過ぎてしまっているなど，分娩に際してハンディキャップを抱えてしまっていることが少なくない．　一方，35 歳以上の妊娠・出産は日本産科婦人科学会において高年妊娠・出産と定義されている．この用語にはとくに高年初産婦では軟産道強靱，児頭骨盤不均衡，分娩停止などによる分娩障害や染色体異常児の頻度が高まるなどの理由で注意が必要という意味が込められている．わが国において以前はこの定義が30 歳以上とされていたが，WHO をはじめ多くの諸外国では35 歳以上とされていたことや，結婚年齢，出産年齢の高齢化，周産期管理の進歩による母児の異常発生頻度の減少などにより，1992年に変更されている．

近年，女性の高学歴化，就業率の増加などに伴い，女性の意識改革が起こり，子どもを持つ・持たないを選択できる時代となった．このような流れの中で，日本においても高年妊娠は増加する傾向にある．一般に，高年妊娠はハイリスクであるといった認識が強いが，実際どのようなリスクがあるのか，またメリットはあるのかについて記載する．

若年妊娠は，ここ数年間で減少傾向にある．しかし，女性のライフサイクルの変化（晩婚化），性行動の若年化は依然その傾向を強め，臨床現場では多くの10 代の妊娠・出産あるいは人工妊娠中絶を経験する．本稿ではこうした若年妊娠のリスクとメリットを解説する．

働く女性の増加と高学歴化に伴い，わが国では出産年齢の高年齢化が進んでいる．母体年齢が高くなるほど，児に染色体異常が見られる率が上昇することはよく知られている（表）1）．高年妊娠における染色体異常児では，常染色体トリソミーであるダウン症候群（21 トリソミー），18 トリソミー，13 トリソミーと，性染色体トリソミーである47,XXX，47,XXY が増加する．染色体異常の中で最も頻度が高いのはダウン症候群で0.15％に見られる．ダウン症候群における研究では，21 番染色体の姉妹染色体交換頻度の低下と染色体不分離との関連が示唆されているが，なぜ母体の高年齢化に卵子の減数分裂時における染色体不分離が増加するかは不明である2）．出生前診断法には，羊水，絨毛，胎児試料，母体血などを用いた細胞遺伝学的・遺伝生化学的・分子遺伝学的・病理学的な解析法，および胎児を対象とした超音波，MRI，CT などといった機器診断法があり，羊水検査，絨毛検査，母体血清マーカー（トリプルマーカー）検査は胎児染色体異常の診断に有用である．ここでは高年妊娠に対する出生前診断として最も多く用いられている羊水検査と母体血清マーカー検査について述べる．

近年，性行動や価値観の多様化と拝金主義が進展し，IT による性情報の氾濫も相まって10 代の性行動が活発になっている．2005 年の調査で，高校3年生の累積性交経験率は男子35.7%，女子44.3%と高い値を示し，無防備な性行動から予期しない妊娠がもたらされ，産むか産まないかの選択を強いられる者も多い．妊娠の継続は学業の中断や養育の問題など家庭的・経済的・社会的にさまざまな問題を派生させるため，妊娠・出産を希望した場合には精神・心理状態を考慮したきめ細かなケアが必要となる．　わが国では少子化が焦眉の問題であり，もし若年妊婦が出産を希望する場合には，それに応えられるように環境を整備することで，産むことを選択する女性も増加することが予想される．そこで今回，若年妊娠とそのケアについて述べてみたい．

2006 年の人口動態統計1）では，女性の平均初婚年齢は28.2 歳となっており，第1 子の平均出産年齢は29.2 歳である．一方で，図1 で示すように，1975 年以後結婚から第1 子出産までの期間に大きな変化が見られる．これは近年の不妊治療技術向上の成果と考えられ，以前では妊娠・出産をあきらめていたようなケースでも出産に至る割合が増加したと言える．また，図2 で示すように，40 〜 44 歳で第1 子を持つ人が1.3％あり，その実数値は7,013人となっている．　生殖期にある女性たちは働く女性でもあり，労働力率2）における女性のM 字型は，20 〜 24 歳層だったピークが25 〜 29 歳層に移り，ボトム（30 〜34 歳）の労働力率が大幅に上昇している．さらに，再婚女性で，上の子どもと年の離れた子どもを出産した人もいるであろう．　このような背景を持つ35 歳以上の女性が妊娠から出産後までのケアを受け，育児を担うことを意識しながら，本稿では，出産・育児のプロセスは親となる男女が共に成長する過程でもあるということを前提にして私見を述べていきたい．

少子化の進行により，地域での子育て支援の重要性が増している．とくに十代で妊娠・出産する若い母親と出会うとき，その必要性を強く感じる．十代の母親への個別の育児支援は，虐待予防や母子の健康な発育・発達において重要である．そして，個別支援の限界をカバーしてさらに効果を高めるのが，仲間づくりを通したグループ支援や地域の理解を広げる活動である．東京都足立区では，子育て中の十代の母親が，地域に溶け込み孤立せず子育てを続けられること，地域で温かい理解が得られることを目標として育児支援を行っている．本稿では足立区中央本町保健総合センターでの十代の母親への子育て支援，交流会による情報発信，若い世代や地域への理解促進の事業について報告する．

前置胎盤とは，胎盤が子宮口をふさぐように覆っている状態をいいます．その程度により，①全前置胎盤：胎盤が内子宮口を完全に覆うもの，②部分前置胎盤：胎盤が内子宮口の一部を覆うもの，および③辺縁前置胎盤：胎盤が内子宮口の辺縁に達しているもの，に分類されます1）．前置胎盤の原因はいまだ明らかではありませんが，多産，母体年齢，帝王切開術や子宮筋腫核出術などの既往，多胎妊娠などと関連があるとされています2）．発症頻度は約200分娩に1 例程度です．

現在，安全な分娩管理のために，胎児心拍数モニタリングはなくてはならないものとなっています．胎児心拍数モニタリングの学習に先駆的に取り組んでいる施設の活動を知り，自分たちの施設に取り入れる際のヒントを見つけましょう．

4 月号から始まった連載も，早いもので第4 回まで進み，佳境へ入ってきました．今月号のテーマは「分娩直後に行うBKC の実際」です．第3 回（2008年6 月号）で解説した適応を満たした母子の，分娩直後の分娩台でのBirth Kangaroo Care；BKC について説明します．　施設によりバリエーションはあると思いますが，ここでは私たちのクリニック■で行っているBKC の分娩直前から分娩直後までの流れを少し物語り風に紹介してみます．それでは，これから始まるBKCをお楽しみください．

読者の皆様，こんにちは．るかデンス研究会です．臨床において慣習的に行われているルチーンを見直したり，新しいケアを提案したり，実践の変革を目指したとき，どのようにアプローチしていますか？ 本連載では文献的検討によって，助産師をはじめ周産期に携わる医療者が日々のケアにおいて活用することができる助産ケアのエビデンスを紹介します．エビデンスを臨床で応用し，日々のケアの向上を目指しませんか？

いま，10 代の人工妊娠中絶や性感染症が大きな問題となっています．そんな子どもたちに「性」と「命」の大切さを伝えるために，学校での性教育講座を始めている助産師の皆さんも多いのではないでしょうか？ 学校との交渉の仕方やより効果的な授業の展開方法を，「いのち語り隊」のメンバーから学びましょう．

多くの妊産褥婦やその家族と接する以上，クレームを受けることもあるはずです．とくに産科では，妊産婦や家族の「安全に出産できて当然」という考えのもと，特有のクレームが寄せられるのではないでしょうか．さまざまな事例をもとに，クレームを妊産褥婦との信頼関係構築のチャンスに転じる方法を学びましょう．

今日， 国際助産師連盟（The InternationalConfederation of Midwives；ICM）が発足したとみなされているのは大正8（1919）年に開催されたベルギーのBブリュージュruges［ドイツ語ではBブ リュッゲrugge］における［第1 回］国際助産婦学術大会であり，それより前の数回の国際助産婦学術大会が，その前史をなすわけである．しかしこれについて詳細を記した文献は少ない．

葉酸はビタミンＢ群の一種で、血液の合成やＤＮＡ（デオキシリボ核酸）、ＲＮＡ（リボ核酸）といった核酸の合成に必要不可欠です。葉酸が欠乏すると、とくに発育などに大きく関係し、発育不全となるほか、貧血、口内炎、食欲不振といった症状が現れます。胎児の発育に欠かせない成分なので妊娠前から意識して摂取するように心がけましょう。

食い初めは，地域により「食べ初め」「箸揃え」「箸初め」「百日の一粒なめ」など名称は異なりますが，生後100日から150 日に行われています．これは，生後100 日を祝う「百日の祝い」に，子ども用の食器や箸を新調し，それに赤飯や頭付の魚（主として鯛や，金頭，竹麦魚），石などを盛り付け，親戚・地域の人々（とくに長寿の人）や産婆などと共に食べる儀式です．したがって，本来は生後100 日目に行うものですが，「食いのばす（長命になる，食事を急ぐ癖を防ぐ）」という縁起から，生後120 日に行っている地域が多く見られます1）．

日々の仕事に追われ，忙しい読者の皆様，たまにはちょっと脱線して，旅に出ませんか？ 鉄道好きの産科医，助産師が案内する，心を癒す鉄道紀行です．

アフリカ・ブルキナファソ，栄養失調児回復センターで働く助産師，シスター黒田小夜子さんから，助産師，上林文子さんへの手紙を掲載しています．

今春，神戸にて開催されました第22 回 日本助産学会学術集会にて，ペリネイタルケア編集部では参加者の皆さまにアンケートをとらせていただきました．わが国における現在の「お産の危機」について，現場スタッフの方々はどのように受け止めておられるのか？ 結果をご報告いたします．

昨年5 月からスタートした院内助産院が，早くも妊婦の支持を集めている千船病院産婦人科．「医師と助産師の隙間なし」を合言葉に，スタッフが互いに補完し合う関係が築かれている．