Volume 27,
Issue 10,
2008
-
特集
-
-
お母さんが赤ちゃんをおっぱいで育てるわけ徹底理解! 母乳育児のメリット・メソッド・メカニズム
-
Source:
ペリネイタルケア 27巻10号, 967-967 (2008);
View Description
Hide Description
-
Source:
ペリネイタルケア 27巻10号, 968-971 (2008);
View Description
Hide Description
母乳は人類のみならず哺乳類にとって,まだ固形食を食べられず,かつ最も弱い時期である新生児・乳児期の生命活動を助ける唯一の方法である.したがって,母乳はその時期における児の弱点である免疫,栄養,その他の面において,児を支えるのに最もふさわしい食品としてつくられている.同時に,母乳育児は母親がわが子をいとおしみ,育てていくための母性を育み,母子関係を確立するためにも最も重要な方法である.では,この母乳育児とは児の出生後に母乳が分泌されてから初めて準備されるものなのであろうか.実は,母親が妊娠中にすでにさまざまな準備が行われているのである.それによって,児が生まれたときにはスムーズに母乳育児が行われるようになっている.つまり,児が誕生した後の母乳育児の準備を,母親は妊娠したときからすでに始めているのである.このことは人間という生物にとって,母乳育児が本来行われるべき方法であることの証であることを示しているとも言える.以下にそのいくつかの例を示す.
-
Source:
ペリネイタルケア 27巻10号, 972-976 (2008);
View Description
Hide Description
母乳育児は児に栄養を補給するだけでなく,児の生育に最も適した方法であると考えられている.ヒトの母乳はさまざまな活性物質を含んでおり,そのすべてについてよくわかっているわけではない.母乳に含まれる物質が児の生命維持にどのように働いているか,そのメカニズムについて考えると,新生児では免疫機能が未熟であることから児の免疫機能賦活化作用,そして感染に対する防御機構が考えられる.一方,主として疫学的研究からさまざまな疾患の進行に対して母乳育児がそのリスクを軽減させることが報告され,そのメカニズムについての研究も進んできている.
-
Source:
ペリネイタルケア 27巻10号, 977-984 (2008);
View Description
Hide Description
胎児は子宮内において,妊娠12 週以降では顎の運動を行い,17 週頃には指しゃぶりを始め,羊水を嚥下する.24 週では吸啜運動が見られるようになり,妊娠28 〜 33 週には連続した吸啜が見られる.そして,生まれたばかりの児を母親の腹部に腹ばいに置くと自らの力で這い上がり,生後1 時間以内に母親のお乳を吸い始めるのである.これは,子宮内にいるときから母親のお乳を吸う準備を行っている証拠でもある.人工乳首ができてからの歴史は浅く,胎児口腔機能の成熟が人工乳首での哺乳を目的として行われていることは決してない.生まれたときから母親のお乳を吸う力を備えている新生児に,哺乳びんを用いて糖水や人工乳を与えることは,医学的な必要性がない限り行ってはならない.哺乳びんを用いることで,本来母親の乳房を吸う能力を持って生まれてきた児が,その能力を発揮できなくなる恐れもある.
-
Source:
ペリネイタルケア 27巻10号, 986-991 (2008);
View Description
Hide Description
ヒトの母乳の成分は,蛋白質が哺乳類の中で最も少なく,糖質が他の哺乳類に比べて多いという特徴がある.人間と他の哺乳類との大きな違いの一つは,人間は歩きはじめるのに1 年近くもかかるということである.多くの哺乳類の母乳は,運動機能に必要な筋肉や骨格を早く発達させ,可動性を早めるために適した栄養成分を持っていると言える.一方,ヒトの母乳は活発に発達し活動している臓器(とくに脳)に栄養を供給することを目的としている成分と言える1).
-
Source:
ペリネイタルケア 27巻10号, 992-996 (2008);
View Description
Hide Description
母乳は栄養が豊富で,感染防御機能を持ち,免疫力を高め,低アレルゲンであるなど多種多様な利点を持っており,その重要性が科学的に証明されている.また母乳保育の継続が母児間の精神的な関係形成にも大きな役割を果たしていることは疑いのない事実である.これらのことにより,母乳育児を選択する女性が増えてきている.しかし一方で,授乳期において何らかの疾患により服薬し,授乳中止を指示されることも少なくないようである.これは医療関係者の多くが安全性を優先した安易な選択により「薬物投与=授乳中止」と考えているからである.しかし,ほとんどの薬剤は授乳中においても児に対するリスクがなく,服用可能であることを理解すべきである.
-
Source:
ペリネイタルケア 27巻10号, 998-1003 (2008);
View Description
Hide Description
「絆」というと,ともすれば精神的な論議のように思われがちである.しかし,母乳育児に関するさまざまな研究により,直接授乳(哺乳)が母親と子ども双方に精神的・身体的影響を与えることがわかってきている.すべての親は子どもが持っている潜在能力を100%発揮してほしい,させたいと願うだろう.哺乳動物である以上,ヒト新生児は自分の母親の母乳で育つことを前提として生まれてくる.それならば,持っている力を100%発揮するための第一歩は「母乳で育てること」であると考えても不思議ではないだろう.母乳で育てることにどのような効果があるのか,母親と子どもの絆から見ていきたい.
-
連載
-
-
何がわかる? どう使う? 画像でみる産科学
-
Source:
ペリネイタルケア 27巻10号, 960-963 (2008);
View Description
Hide Description
胎位とは,胎児の縦軸と子宮縦軸との位置的関係を言います.両者の縦軸が一致するものが縦位で,胎児の骨盤端が母体の骨盤に向かうものが骨盤位です.妊娠末期の胎位は95%が頭位です1).胎位異常とは,頭位以外の胎位のことで,横位や骨盤位のことを言います.本稿では,主に骨盤位について説明します. 骨盤位は,本来の子宮腔の形態が腫瘤や子宮奇形などにより変化したり,胎児の自然回転が妨げられたりした場合に発生すると考えられています.分娩時の胎児リスクが異なるため,骨盤位の分類は重要です.先進部の種類によって殿位(単殿位,複殿位),膝位(全膝位,不全膝位),足位(全足位,不全足位)に分類されますが,最近では超音波検査を行うことでより正確に知ることができます.しかし,内診所見も重要なことに変わりはありません.
-
使える! 助産ケアのエビデンス
-
Source:
ペリネイタルケア 27巻10号, 1006-1010 (2008);
View Description
Hide Description
読者の皆様,こんにちは.るかデンス研究会です.臨床において慣習的に行われているルチーンを見直したり,新しいケアを提案したり,実践の変革を目指したとき,どのようにアプローチしていますか? 本連載では文献的検討によって,助産師をはじめ周産期に携わる医療者が日々のケアにおいて活用することができる助産ケアのエビデンスを紹介します.エビデンスを臨床で応用し,日々のケアの向上を目指しませんか?
-
新たな視点で学ぼう! 分娩直後のカンガルーケア 〜Birth Kangaroo Care ; BKC〜
-
Source:
ペリネイタルケア 27巻10号, 1011-1015 (2008);
View Description
Hide Description
分娩直後のカンガルーケアにはさまざまな利点があり,すでに実施している施設は多いと思いますが,いまだ手探りで行っているところもあるのではないでしょうか? 母児を,家族を,そして医療者を「つなぐ」という分娩直後のカンガルーケアのもう一つの役割も含め,その実際を学びましょう.
-
胎児心拍数モニタリング 読解力向上プロジェクト 〜私たちの施設の取り組み〜
-
Source:
ペリネイタルケア 27巻10号, 1016-1022 (2008);
View Description
Hide Description
現在,安全な分娩管理のために,胎児心拍数モニタリングはなくてはならないものとなっています.胎児心拍数モニタリングの学習に先駆的に取り組んでいる施設の活動を知り,自分たちの施設に取り入れる際のヒントを見つけましょう.
-
“災い転じて福となす”で妊産褥婦との信頼関係構築を目指す クレーム対応相談室
-
Source:
ペリネイタルケア 27巻10号, 1024-1025 (2008);
View Description
Hide Description
多くの妊産褥婦やその家族と接する以上,クレームを受けることもあるはずです.とくに産科では,妊産婦や家族の「安全に出産できて当然」という考えのもと,特有のクレームが寄せられるのではないでしょうか.さまざまな事例をもとに,クレームを妊産褥婦との信頼関係構築のチャンスに転じる方法を学びましょう.
-
読んで即実践できる! 助産師が行う性教育講座
-
Source:
ペリネイタルケア 27巻10号, 1039-1942 (2008);
View Description
Hide Description
いま,10 代の人工妊娠中絶や性感染症が大きな問題となっています.そんな子どもたちに「性」と「命」の大切さを伝えるために,学校での性教育講座を始めている助産師の皆さんも多いのではないでしょうか? 学校との交渉の仕方やより効果的な授業の展開方法を,「いのち語り隊」のメンバーから学びましょう.
-
国境の町サンディエゴの産科病棟から グローバル社会のお産の行方
-
Source:
ペリネイタルケア 27巻10号, 1043-1046 (2008);
View Description
Hide Description
「お産は生命誕生の自然な過程,病院での分娩もなるべく自然に近いかたちで援助がしたい」というのが,若かりし頃に,私が日本で助産師として働いていたときの理想でした.アメリカへ来て,こちらの病院で働き始めて,そんな私の理想を木っ端微塵に打ち砕いたのは,自然なお産とはかけ離れた完全に管理された病院分娩の現状でした.
-
助産婦の歴史(302)
-
Source:
ペリネイタルケア 27巻10号, 1048-1049 (2008);
View Description
Hide Description
前項(2008 年9 月号)で,国際助産師連盟史の時代区分として筆者は次の3 期を提案した.① 草創期:大正8(1919)年の設立,あるいは第1回大会・大正11(1922)年〜昭和3(1928)年.② 国際助産婦連合時代:第4 回大会・昭和3 年〜昭和29(1954)年.③ 国際助産婦連盟時代(あるいは国際助産師連盟時代):第10 回大会・昭和29 年〜現在.
-
エッセー・読み物
-
-
Perinatal Food plan
-
Source:
ペリネイタルケア 27巻10号, 959-1023 (2008);
View Description
Hide Description
食物繊維は水に溶けない不溶性食物繊維と水に溶ける水溶性食物繊維とに大別されます。どちらも植物性食品に多く含まれ、不溶性食物繊維は根菜、未精白の雑穀などに、水溶性食物繊維は海藻類、果物などに多く含まれています。
-
ちょっと脱線 思い出鉄道紀行
-
Source:
ペリネイタルケア 27巻10号, 1031-1031 (2008);
View Description
Hide Description
日々の仕事に追われ,忙しい読者の皆様,たまにはちょっと脱線して,旅に出ませんか? 鉄道好きの産科医,助産師が案内する,心を癒す鉄道紀行です.
-
遠き国より
-
Source:
ペリネイタルケア 27巻10号, 1036-1038 (2008);
View Description
Hide Description
アフリカ・マダガスカル,アシジの聖フランシスコ病院で働く助産師,シスター平間理子さんから,助産師,上林文子さんへの手紙を掲載しています.
-
いまでも使えるそのエッセンス 未来に伝えたい産育習俗
-
Source:
ペリネイタルケア 27巻10号, 1050-1050 (2008);
View Description
Hide Description
胞衣(臍帯を含む胎盤)には呪力があると信じられ,胎盤に願い文を添えて瓶に入れ,戸口の下に埋める慣習が古くからあったことが,奈良時代の『医心方』に詳細に記されている1).戸口に埋めるのは,人の出入りが多く,胞衣をよく踏んでもらうほど児は丈夫に育つとか,賢い人になるなどと言われたからである.
-
施設レポート
-
-
Source:
ペリネイタルケア 27巻10号, 1032-1035 (2008);
View Description
Hide Description
1999 年の開業以来,約300 件の自宅出産を取り扱ってきた助産院バースハーモニー.院長の齊藤純子先生をはじめ5 人の助産師が所属し,女性が本来持っている「産む力」を引き出すケアを行っている.