ペリネイタルケア

胎児心拍数モニタリングは，簡便で，いつでもどこでも，ある程度の知識があれば非常に臨床に役立てることができる検査である．この検査で分かることには限界もある．今までにもさまざまな試みはあったが，いまだにこれに代わる本格的な検査は現れていない．胎児心拍数モニタリングの限界を知る人々が，どのようにすればこの検査を臨床に反映できるかを考え，さまざまな定義がなされ，現在もなお見直しがなされている．本稿では主に，胎児心拍数モニタリングの装着方法としての外測法と内測法について記載し，最後に陣痛圧モニターについて簡略に述べる．

　胎児心拍数モニタリングを判読するに当たって，偽陽性率（誤って胎児の状態が悪いと判断する率）を減らすために，胎児睡眠サイクルを考慮することは非常に重要である． 胎児がREM 期（activestate）にあるのかnon-REM 期（sleep state）にあるのかを常に意識する必要がある．胎児がnon-REM 期にあれば，時間経過を見てREM 期に変わるのを待つか，あるいは振動音響刺激（vibroacousticstimulation；VAS）などを行って胎児を刺激し，REM 期（active state）にすることによって胎児状態が良好である（reassuring）情報を得るように努力する．

　胎動は，妊婦自身が自覚できる胎児情報です．初産婦は妊娠20 週前後に，経産婦は妊娠18 週前後に胎動を感じ始めます（胎動初覚）．胎動を感じたときに，妊婦は自分の子どもがお腹の中で生きていることを実感します．胎動の自覚は児との絆を妊婦に感じさせます．近年，胎児well-being の評価に超音波などが用いられるようになりました1）．胎動・胎動数評価はそれらに比べると古典的ではありますが，これが胎児well-being の指標になる可能性があります．胎動と胎児well-being との関係に焦点を当てた研究がこれまでいくつか行われてきました．胎児死亡前には胎動が減少し，胎動減少が胎児機能不全や胎児死亡の予兆となる症例が報告されています2，3）．また陣痛発来前には胎動が減少することが報告されています2，3）．Pearson らは，妊娠後期に妊婦が10 回胎動を感じるのに要する時間を計測し（胎動10 回カウント法），胎動量・回数を定量評価し，これを胎児の健康診断に用いる試みを報告しました4）．また本連載第3 回で述べたように，われわれは日本人の新規胎動標準値を作成し報告しました5，6）．このほかにも，胎動をカウントすることで周産期死亡率を減らす効果があるとの報告もあります7，8）．このように胎動・胎動数は胎児健康度の指標となる可能性が極めて高いと考えられます．　　本連載では，今号と次号の2 回に分けて「胎動減少と胎児病」について述べていきます．本稿では胎児急性腹症と胎動減少について，次回は神経筋疾患と胎動減少について解説します．

　児の誕生の後，臍帯切断後の断面をアルコールで消毒し，乾燥剤を振りかけることをルチーンに行っていますか？　臍帯は，子宮の中にいる児に栄養や酸素を供給する重要な命綱です．その臍帯は，生まれると同時に臍帯剪刀で切断され，児は母親から離れ，独立した個体となることを象徴的に表しています．他方，ケアの視点としては，臍帯剪刀で切断された断面は動脈と静脈とが露出しており，乾燥して臍帯脱落が見られるまで，感染しないように気を付ける必要があります．感染の原因菌として，皮膚に存在している大腸菌型細菌や連鎖球菌が挙げられます．また，施設や文化が違うと，臍帯切断を行う際にさまざまな道具を使用することがあり，時として，これが感染の原因になることがあります．世界的に見ると発展途上国では，新生児死亡率が4 ～ 6％（2010 年，WHO 報告）となり，特に，新生児の臍帯の不衛生な切断による新生児破傷風が大多数を占め，問題視されています．　臍帯切断時には，感染防止のために清潔な手で扱うこと，臍帯剪刀などにおいて，滅菌された器具を用いること，抗菌物質の使用などが広く行われていますが，その処置については施設によってさまざまのようです．わが国では新生児破傷風などはここ10 年ほど報告されておらず，新生児死亡率は世界的に見てもトップクラスの低さです．一方で，この清潔な環境のもとで，過度な医療処置が行われていないでしょうか．わが国にとって適切で標準的な臍帯ケアの方法を，エビデンスをもとに探ってみたいと思います．