ハートナーシング

医療技術の進歩により，補助循環も進歩を続けています．IABP（intraaortic balloon pumping：大動脈内バルーンパンピング）は20 年前，万策尽きた心不全患者の最後の手段として使用され，その駆動音から「死の太鼓」と呼ばれていました．それが現在では，IABP に使用されるバルーンカテーテルはサーモダイリューションカテーテル（スワン・ガンツカテーテル）よりも細くなってきていて，経皮的冠動脈インターベンション（percutaneous coronary intervention；PCI）施行時などに待機的に使用されるなど，合併症も少なく適応症例の幅が増えてきています．PCPS（percutaneous cardiopulmonarysupport：経皮的心肺補助装置）についても，最近急速に普及した補助循環法であり，簡便なセットアップを追及して，心肺停止患者の蘇生時に超緊急的に使用されています．　今回は補助循環について，言葉の意味と種類，適応や方法について解説します．補助循環においては，医師のほかに機械の操作を行う臨床工学技士の役割も重要ですが，装置を含めた患者の管理を行うナースの役割も重要で，チーム医療におけるナースの役割についても説明します．

IABP（intraaortic balloon pumping：大動脈内バルーンパンピング）は補助循環として最も頻繁に用いられます．それは，比較的簡単に挿入できることと，単純な原理にもかかわらず心筋への酸素供給を増加させると同時に心筋酸素消費量を低下させるという複合効果を得ることができるからです．　主に大腿動脈から挿入後，胸部下行大動脈内にバルーンを留置し，心臓の動きに合わせてバルーンを収縮・拡張させ，心臓を補助します．補助形式は圧補助と呼ばれ，PCPS の流量補助と比較すると心臓への補助効果は低いものの，薬剤抵抗性の心機能低下時には，第一選択の補助循環としてIABP が選択されます．しかし，誤った管理をすると逆に心臓に負荷を与え，病状を悪化しかねません．また，重要なアラームを見逃すと患者さんの生死にかかわることもあります．この時間は，まずIABP の原理（効果）を理解し，装置の構成と動作，バルーンの挿入から離脱・抜去の注意点，適応や禁忌を説明します．

IABP（intraaortic balloon pumping：大動脈内バルーンパンピング）を必要とする患者は，循環動態が不安定であり専門的なケアを必要とします．また，合併症出現の可能性や，ME 機器に関するトラブル発生の可能性もあるため，IABP の操作・管理についての正しい知識を身につけておくことが重要となります．中でもIABP 挿入中にどんな合併症が起こり得るかを学び，観察ポイントを理解することは合併症の早期発見につながり，適切なケアにつながります．また，IABP 挿入や離脱の際の注意点やケアのポイントを学び，安全に管理することが重要です．チェックリスト（表1）などを活用し，知識や技術の到達度を確認しながら，IABP 挿入中の看護について学んでいきましょう．

ここ数年，医療技術，ME 機器の進歩は著しく，過去に考えられなかった重症症例が救命できるようになってきています．その中でも，救命救急，集中治療領域で多く用いられている補助循環装置の1 つであるPCPS についてどのようなものなのか，そしてどのように管理していけばいいのかを簡単にまとめました．PCPS（percutaneous cardiopulmonary support：経皮的心肺補助装置）は容易に持ち運びができ，簡便に準備ができるため緊急時には非常に便利な生命維持装置です．心不全患者の生命維持には欠かせない重要な機器ですので，よりよい看護に結び付けられるよう少しでも臨床の方々に役立てていただければ幸いです．

PCPS（percutaneous cardiopulmonary support：経皮的心肺補助装置）は心原性ショックなどの重症循環不全患者に使用されています．状態が容易に変動する重篤な患者に対し，全身状態の継続的な観察やモニタリング，PCPS の観察管理，異常の早期発見や対処，家族へのサポートなど，常に患者のベッドサイドにいるナースに与えられる役割は重要であり十分な知識と技術が求められます．またナースは，救命はもちろんですが，合併症の予防など，その後の患者のQOL（生活の質）まで視野に入れた看護を提供していく必要があります．ここでは，PCPS 中の合併症と観察やケアのポイントについて述べていきます．

さて，ここまでIABP とPCPS についてみっちり学んでこられたと思います．その成果を試すのが，この6 時間目「ふりかえりテスト　クイック20 ！」．実践ですぐに役立てることができる20 の問題を準備しましたので，問1 から順番に解いていってみてください．まず，問題が20 題続き，その後に解答と解説があります．20 題解いてみたら，何題解くことができたかを数え，最終ページで理解度を確認してみましょう．皆さんが達人レベルに到達できるよう，頑張ってみてください．また，問題の横にチェックボックスが置いてありますので，できたものにはチェックをつけ，すべての問題にチェックがつくように何度でも繰り返しチャレンジしましょう！

当時，導尿カテーテルのラインにセンサーを装着して，一滴一滴を「ピッ・ピッ・ピッ」という音で知らせてくれる装置がT 社から発売されており，大変便利だった．塩酸ドパミンに反応し心拍出量が改善すると直ちに「ピッ…ピッ…ピッ」が「ピッピッピッピッ」と早くなり，数メートル離れた仮眠ベッドから快音として聞こえ安心したものであった．

私は，地域の基幹病院である広島市立安佐市民病院の北5 病棟（循環器内科，心臓血管外科，代謝内分泌内科の混合病棟）に勤務しています．卒後すぐに当病棟に配属となり，5 年目になります．

冠動脈バイパス手術は，冠動脈の動脈硬化により血管が細くなり，血流不足から心筋梗塞，狭心症を起こすことを予防する目的で行う．血管は非常に細く1 〜 2mm 程度で，薄く非常に弱い血管壁を縫合して血管をつなぐ．

52 歳，男性．2 週間前の午前中，朝食後に急いで会社に向かうためバス停まで早歩きしたところ，「胸部から喉にかけて痛みと違和感」が出現し，歩きを止めると数十秒で改善した．しばらく気にしなかったが昨日も同様の症状が出現してきたため，心配になり来院した．今まで服薬歴もなく，標準12 誘導心電図は正常であった．その後精密検査のため，循環器内科病棟に入院した．受診時や入院後には症状はなく，心電図モニターが装着されたが，行動範囲の制限はなかった．入院翌朝，朝食後トイレに向かって歩いていると同様の症状があったので，病室に戻り，ナースに心電図をとってもらった．

本連載はCCU において，決して自分たちにも他人事ではない「あるある」ケースの疑問について，分かりやすく，循環器看護のセンパイに学ぶことを狙いとしています．新人ナースのシンちゃんと一緒に，先輩ナースのココさんからケアの極意を教わっていきましょう！

患者・家族にとって，循環器の検査や手術は特に強い不安や恐怖感を持ちやすい．また高齢者が増加し，新しいことの理解や環境への適応が困難な場合が多い．そのため，事前のオリエンテーションは重要であるが，業務が忙しく十分な時間を取ることができない状況にある．そこで……？

そんなわけで，「最大の難関であるバリウム検査の突撃レポートをお送りしつつ，いろんなことを考えてみよう！」というこのシリーズは，（前連載含め）今回で3 度目を迎える．

重症高齢患者さんや，すでに口腔内・歯肉トラブルを有する患者さんに人工呼吸器管理下で治療を行う際，既存のバイトブロックでは物理的刺激により悪化する症例があります．そこで，安価で患者さんの口腔環境に合う刺激の少ないバイトブロックを作製してみました．

メタボリックシンドローム（MetS）では，内臓脂肪の蓄積などにより，インスリン抵抗性が生じます．これを是正するには，運動療法と食事療法を基本として，エネルギーの需給バランスを適正に保ち，内臓脂肪を減少させる必要があります．運動療法は，カロリー制限による基礎代謝の低下を防いで，内臓脂肪を効率よく縮小させます．

皆さんは普段，「集中ケア認定看護師って具体的にどんな活動をしているの？」と思ったことはありませんか．本連載では12 回にわたり，実際に集中ケア認定看護師が自施設で行っている看護実践とケアのヒントについてご紹介します．

川崎幸病院大動脈センターは，2003 年川崎幸病院に開設し，心臓血管外科の中でも特に大動脈疾患の外科治療を専門に行っている．手術症例は年間およそ300 例中200 例（2006 年）が人工心肺装置を使用した胸部大動脈手術である．一貫した術前術後管理を行うために，2007年4 月より大動脈疾患治療の専門ユニット（aortic care unit；ACU）を開設した．術後急性期はICU で，その後は一般病棟でという既存の管理形態から，大動脈疾患管理を術前から術後まで1 つのユニット，1 つの看護チームで行う形態に移行させたものがACU であり，専門スタッフは高度な知識･技術だけでなく，迅速な判断力と対応が要求される厳しい現場である．反面，術前術後を通して患者を支える中で得られる信頼関係ややりがいは，継続看護だからこそ感じられる醍醐味でもある．本稿ではACU 開設から現在までの経過を報告する．