ハートナーシング
Volume 22, Issue 2, 2009
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特集
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- めざせ切れ者ナース!周術期の循環器検査から読み取る重症度・緊急度
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1 胸部X線検査,胸部CT検査
22巻2号(2009);View Description Hide Description低侵襲手術の導入,手術方法の進歩や心筋保護法の改善や機器,薬剤の開発により心臓血管外科領域の発展は目ざましい.そのため心機能低下例,高齢者,ほかの臓器障害合併例などより重症例の心臓手術の適応が拡大され,術後の管理は一層複雑となっている.心臓大血管手術後の病状を把握するための検査として,胸部X線や胸部CT 検査の特徴所見を理解する. 低左心機能患者では周術期に極めて短時間のうちに心不全悪化を呈することがあり,ベッドサイドでの呼吸状態など心不全徴候の観察とともに,胸部X 線での早期心不全合併の把握が必要となる.また,高齢者を中心に術後に肺炎を合併することは多く,それぞれの肺炎が示す胸部X 線像の特徴から適切な対応が求められる. -
2 心臓超音波(心エコー)検査
22巻2号(2009);View Description Hide Description心臓・大血管手術の周術期に心臓超音波(心エコー)検査は不可欠である.術前には心機能の評価や弁膜症など,疾患自体の病態・重症度の評価に心エコー検査が用いられる.術前の心機能や重症度は,手術リスクや術後の予後に大きく影響する.急性大動脈解離では,破裂や冠動脈への解離の進展によって起こる心筋梗塞の発症により血行動態に破綻を来すことがある.破裂する部位は心.,胸腔,腹腔であり,特に心.や胸腔への血液流出は超音波検査による検出が迅速であり,診断能力にも優れている.冠動脈に解離が及んでいる場合には,心電図変化とともに心筋の壁運動異常が出現する.また,解離が大動脈弁輪に及ぶと大動脈弁逆流による急性心不全となり,急変することがある. 術中には,経食道心エコー検査による心機能の評価や人工弁機能不全の評価などが行われる.また,特に僧帽弁形成術の際には体外循環離脱直後に残存逆流の有無や程度が評価され,場合によっては心エコー検査の結果により再ポンプが必要となることがある. 術後に血行動態が急変する原因として,出血や肺血栓塞栓症が重要である.心臓手術の術後には,胸部の切開創により胸壁からの評価が困難な場合がある.そのような場合には経食道心エコー検査による評価も検討する必要がある. -
3 心臓カテーテル検査
22巻2号(2009);View Description Hide Description心臓カテーテル検査とは循環器の分野において最も侵襲度の高い検査であるが,その反面得られる情報も多い.特に,周術期の循環器検査として心臓カテーテル検査は重要な位置を占めている.手術適応のみでなく術式や治療方針の決定,合併症や疾患の重症度および緊急度の評価に有用である.術後も予期せぬ急変や合併症の原因検索や,手術が成功しているか確認するために大きな役割を果たす.ここでは各疾患別に,周術期に行う心臓カテーテル検査の内容および重症度,緊急度について解説する. -
4 血液系検査
22巻2号(2009);View Description Hide Description・ 周術期管理に当たって患者の重症度や病態の急激な変化を把握するには,各種モニタリングや画像検査が最も迅速と考えられがちだが,血液検査からも多くの情報があり,時間とともに急激に変化する数値から迅速な対応を求められることが多い.・ ポイントとして,㈰「周術期に心筋梗塞を発症したか? その重症度は?」を知る上では簡便に検査できるCK 値,CK-MB 値が有用である,㈪患者の心不全重症度としてはBNP が最も感度が良い,㈫その他として,術後合併症である感染,溶血,顆粒球減少,ショック肝,筋肉壊死に迅速に対応するための血液データの見方を本稿で示していく. -
5 12誘導心電図・モニター心電図検査
22巻2号(2009);View Description Hide Description・ 弁膜疾患は弁の狭窄および閉鎖不全のために,心房・心室に圧負荷もしくは容量負荷が起こり,心電図変化となって現れる.・ 12 誘導心電図は術前診断の一検査であり,また術直後に採取することで術後の心電図変化を経時的に見ていくために重要である.・ モニター心電図は,心拍数異常・不整脈・虚血性変化・電解質異常などの早期発見に用いられる.・ 術後のモニター心電図は3 極から6 極誘導で心拍数と不整脈をモニタリングするが,虚血性変化(ST 変化)を判断するためには12 誘導心電図で確認することが必要である. -
6 周術期血行動態モニタリング
22巻2号(2009);View Description Hide Description・ モニタリングによる全身管理の必要性を知る:心臓手術後は,手術侵襲による生体反応に加えて,心臓のポンプ機能が著しく低下している.また,慢性疾患を合併しているケースが多く,周術期の集中的な全身管理が必要となる.そのため,集中治療室において動脈圧ラインやスワン・ガンツカテーテルなど観血的圧モニタリングを行い,全身管理を連続的に評価している.・ 情報の統合とアセスメント能力を磨く:看護師は,カテーテル類の安全管理に加えてモニターから得られた情報や身体所見を統合しアセスメントする能力が求められる.これにより,患者の状態の変化に気付き,早期発見・早期対応につなぐことができる.
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連載
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- YELL FOR HEART NURSES
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- 日本列島縦断ハートナースの旅〜エッセイでこんにちは!〜
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- ドクターの目 ナースの目 どっちも知りたい! 心臓手術と術後管理よくばりガイド
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胸腹部大動脈瘤手術
22巻2号(2009);View Description Hide Description胸腹部大動脈瘤とは分かりやすく表現すると,横隔膜をまたいで胸部から上腹部に存在する大動脈瘤と言うことができるだろう.この部位に大動脈瘤が存在するということは,この大動脈瘤は多くの場合,上腹部の大動脈から分岐する腹部の主要分枝である腹腔動脈,上腸間膜動脈,両側の腎動脈を巻き込んだ大動脈瘤である場合が多いということである.そしてこの大動脈瘤は,存在する大動脈瘤の範囲で分類が行われており,Crawford の分類(図1)として広く用いられている.胸腹部大動脈瘤の病因としては動脈硬化性の大動脈瘤と解離性大動脈瘤が大半を占めているが,解離性の場合は解離腔の拡張している範囲でCrawford の分類が行われる.Crawford の分類の㈵型と㈼型は胸部大動脈に広範に及ぶ大動脈瘤で,広範囲置換が必要であり,術後合併症である対麻ま痺ひなどの発症も多く,危険性の高い手術になる. - 河村久美子の ゆるっとタメになる“ナース的徒然川柳”
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- HN・エッセイ ふたつの心臓(ハート)
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第二百三十九話 重症患者の体験(1)−エッセイ中断と復活のご挨拶−
22巻2号(2009);View Description Hide Description2008 年は世界中が,100 年に一度の金融危機の波に襲われた大変な年でした.一方私個人にとりましても,この1 年は一生に一度と言ってもよい苦しい,そして貴重な体験の年でした.その体験の中からお役に立ちそうな項目を抜き出して書く予定ですが,今回はとりあえず発病当時のことをかいつまんで述べ,このエッセイの20 年以上の連載が今春から突然中断したことのお詫わびと,今回また復活することになったご挨拶に代えさせていただきます. - HEART Dictionary
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- ハートナーシングニュース最前線
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- シチュエーション別にステップアップ! ドクターXの心電図スクール
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- 教えてセンパーイ!! 「あるある」ケースから学ぶCCUのはてな
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- 基礎から一歩先へ! ケースに学ぶCCUの心電図
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【番外編】心室期外収縮の動悸はどうして起こるのか?
22巻2号(2009);View Description Hide Description心臓に関する訴えの中で,「胸がグルンといった感じ」,「脈が飛んで不安感が広がる」などと訴える動悸は日常臨床で最も遭遇し,かつわれわれを悩ませる訴えである.厳しく伝えると心臓神経症を助長することになるし,軽く言いすぎることにも躊ちゅう躇ちょする. 今回は,毎日新聞に掲載した健康相談のコラム『期外収縮と動悸の関係』を改編した.動悸を訴える原因として最も頻度の高いものは心室期外収縮(premature ventricular contraction;PVC)である.心電図1 で示すように,㈰〜㈫,㈭,㈮は規則正しいリズムであるが,㈬は早く出現しており,これを心室期外収縮という. - 千里の道も一歩から… 心電図読解道場
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- 飛び立つ勇気 ここにあり! Ricoの英国ナーシングライフ
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劇症型心筋炎患者の両心室補助人工心臓(BVS5000R)における水分管理
22巻2号(2009);View Description Hide Description近年,補助人工心臓の応用によって治療方針が大きく広がり,重症心不全や心臓移植治療において重要な治療の1 つとなっている.当院において,重症心不全患者に対して両心室補助人工心臓(BVS5000R)を用いた治療を初めて行った.BVS5000Rは落差脱血であり,高さが変わると心臓の拍出量も変化するという特徴があり,BVS5000Rの流量は前負荷,後負荷による影響が大きく水分出納の管理が非常に困難であった.日本国内でのBVS5000R装着症例は約90 症例と少なく,先行文献も少ない中で初めて管理を行うという環境にあり,また事前学習を行ったが管理に対して統一した基準がなく,どのように管理すればいいのか探りながら日々の看護を行わなければならなかった.初めてBVS5000Rの管理を経験した中で落差脱血という特徴による管理に焦点を絞り,症例報告としてまとめたものをここに報告する.
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