ハートナーシング

　循環器および集中治療領域に配属された新人さんや他部署から異動してきたスタッフの皆さんは，多かれ少なかれ患者さんの重症度に戸惑い，覚えるべき病態や用語・機器などの多さに途方に暮れてしまうことがあるかと思います．どこの職場でも，そんな新人さんやスタッフを育てるためにプリセプター制をとったり，チーム制であっても一応の指導担当者を定めている場合が多いのではないでしょうか．そんな中，「どうしてこんなにできないんだろう」と悩む新人さんがいれば，「どうしてうまく育ててあげられないんだろう」と悩む先輩もいます．　そこで，今回は循環器および集中治療について新人として配属されたスタッフを育てるために，どんなプログラムを活用し，どんな段階で指導を行い，また，先輩がどうアプローチしていけばいいかを具体例に沿って解説する特集を企画しました．プリセプターの立場にある先輩の大きな役割として，技術的な面はもちろん，精神的な面での支えになることも求められます．新人さんが無事に1 年目を乗り切り，意欲的に2，3 年目を迎えることができるようになるための手助けにしていただけますと幸いです．

　4 月，期待と不安の入り混じったキラキラした瞳を持つ新人は，1 年後，患者さんに笑顔を向けながらも，どこかスッと引き締まった表情が見え隠れするプロフェッショナルの道を歩き出した看護師へと変身する．そんな姿を見るたびに，彼らにとってこの1 年間にどんなことがあったのだろうと思いをはせずにはいられない．私たちがおそらくそうであったように，看護師としてのキャリアを歩む中で新人としての1 年間は，特別な意味を持つ期間と言っていいだろう．そこに彼らの努力があったことはもちろんだが，その傍らで成長を見守り続けてきた誰かの存在があることも忘れてはならない．本稿では，そんな先輩看護師に向けて，今の時代に新人を迎え入れるために知っておきたいトピックや考え方について解説する．

　新人を育てる期間というのは，教育的支援を受ける新人看護師にとっても提供するプリセプターにとっても，さまざまなことで思い悩み，試行錯誤を通して両者が飛躍的な成長を遂げる時期である．お互いがどのような存在なのか，願いや思いは相手に伝わっているのかということを，今回はプリセプティの立場から1 年目の笠原絵里子さん，プリセプターの立場から3 年目の川原美穂さんにそれぞれこの1 年を振り返っていただく．

　新人看護師に対する教育を考えるとき，つい「どんな内容をいつ誰がどのように教えるか」ということのみにとらわれてしまいがちであるが，教育の内容や教授方法に関することは，教育というかかわりをシステムとしてみた場合，一部の構成要素に過ぎない．効果的で効率的，なおかつ魅力的な教育活動を行おうと思った際には，これらに加え，学習者の置かれている状況や学習環境，そして，指導者のねがいと学習目標を明確にし，相互の関係性を検証する必要がある．　本稿では教育活動をシステムとしてとらえ直すことで，より具体的で実現可能な新人教育計画となる可能性があることを2 つの事例を通じて紹介する．

　特集1 〜 3 で，新人さんの育て方やプログラム，実際に新人さんがどう考えているかなどについて触れてきたが，最後に「循環器が好きな看護師を組織でどのように育てるか」というテーマで，普段臨床現場で人材育成を担っている主任の皆さんに集まっていただき，座談会形式で具体的なご意見を伺った．

　今，待望の，循環器分野の認定看護師を設立しようという働きかけが日本循環器看護学会政策委員会循環器専門分野認定看護師教育委員会のメンバーによってなされています．循環器ナースのための雑誌である『ハートナーシング』では，この取り組みをいち早くお知らせしていきます！　第2 回目となる今回は，2009 年11 月28・29 日に福岡県で開催された「第6 回日本循環器看護学会学術集会」で発表された内容をもとにハートナーシング編集室がまとめたものを，日本循環器看護学会理事および日本循環器看護学会政策委員会循環器専門分野認定看護師教育委員会委員長を務める山田佐登美先生と委員の池亀俊美先生にご監修いただきました．