脳神経外科速報
Volume 20, Issue 7, 2010
Volumes & issues:
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目次
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Techniques & Arts
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- 私の手術論 脳神経外科の多様性と可能性
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- 基本をマスター 脳神経外科手術のスタンダード
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脳室内血腫に対する神経内視鏡手術
20巻7号(2010);View Description Hide Description脳内血腫に対する治療法は,従来の開頭血腫除去術やCT 誘導下定位的血腫除去とウロキナーゼによる血腫溶解療法の併用から,近年,less invasivesurgery としての神経内視鏡による血腫除去術が注目されてきている11).神経内視鏡手術による脳内血腫除去術については,すでに本誌1,6)や成書8,12)おいて手術手技のポイントに関する詳細な報告がある.そこでこのたびは,脳室内血腫に対する神経内視鏡手術について述べる. 脳卒中治療ガイドライン2009 2)によれば,脳内血腫からの脳室内穿破に対し,脳室拡大の強いものには脳室ドレナージ術を考慮してもよいとされ,その際のウロキナーゼ投与については言及がある.しかし,神経内視鏡による脳室内血腫除去については,脳内血腫除去も含めエビデンスレベルの高い大規模な無作為調査がないため,本ガイドラインではまだ推奨されておらず,これからの課題と思われる. 脳室内血腫に対する手術目的は,閉塞性水頭症による頭蓋内圧亢進の改善,早期の脳室内血腫の排出や脳室上衣細胞障害を最小限にとどめることにある.このため,従来はウロキナーゼやrecombinanttissue plasminogen activator(rt-PA,遺伝子組み換え組織プラスミノゲンアクチベーター)を投与して脳室内血腫の排出を促すことが行われ,予後改善が得られるという報告がされてきた10).しかし一方で,血栓溶解薬による無菌性髄膜炎の発生やシャント依存率が高くなるという報告3),二次性の出血を招く危険性があるとの報告15)がある.そのため,神経内視鏡により直接脳室内血腫を除去する方法は,魅力ある治療法となりうると思われる. - 私のこだわり My Operative Note
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- 手術のコツとピットフォール 一流術者のココが知りたい
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Paraclinoid 内頚動脈瘤クリッピングにおけるClosure Line のとりかた
20巻7号(2010);View Description Hide DescriptionParaclinoid の内頚動脈瘤は,distal dural ringのすぐ遠位(C2 proximal),dural ring をまたがるもの,cavernous portion(C3)などさまざまな高位のものを含み,向きもまたさまざまで,IC-cave など特徴的な呼称を持つものもある2,5,8).また,眼動脈やsuperior hypophysial artery4)など血管分岐部にできるものもあれば,血管分岐とは関係ない発生のものも多い19). しかし,Closure Line をどうとるかという観点に立つ場合は,前床突起を削除してdural ring を開放してしまえばどの高位にあるかはあまり関係がなく,「どちらの方向に発育した動脈瘤か」が重要な要素になる.そこで,筆者の最近5 年間の自験paraclinoid 瘤クリッピング33 例を基に,動脈瘤の方向に応じたClosure Line のとりかたを紹介する. - クリッピングの工夫
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内頚動脈後交通動脈瘤および前脈絡叢動脈瘤の手術
20巻7号(2010);View Description Hide Description内頚動脈の上床状突起部,いわゆるcisternalportion に発生する動脈瘤には,後交通動脈瘤と前脈絡叢動脈瘤がある.これらは内頚動脈の後方から分岐する穿通枝の起始部に発生するため,多くは内頚動脈の背外側部に位置し,分岐血管が近位側ネックからドームの後面を走行している.そのため,クリッピング術における後遺症予防の観点から,穿通枝の温存が重要であり,この点を中心にクリッピングの手技と工夫について述べる. - How do you Neurosurgical テクニック?
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Current Knowledge
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- 専門医に求められる最新の知識
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脳腫瘍 神経膠腫の遺伝子治療
20巻7号(2010);View Description Hide Description神経膠腫に対する遺伝子治療は1990 年代に始まり,自殺遺伝子治療や免疫遺伝子治療などが試された.近年は増殖型ウイルスで直接腫瘍細胞を破壊するウイルス療法が注目されている.国内でも,厚生労働大臣の認可を受けて国内初の増殖型遺伝子組み換えウイルスを用いた再発膠芽腫に対する第 I - II 相臨床研究が始まった.本稿では臨床試験を中心に,これまでの脳腫瘍に対する遺伝子治療を顧みるとともに,現在注目されている臨床試験について解説する. -
脳血管障害 大型脳動脈瘤に対するhigh flow bypass を用いた治療法(1)
20巻7号(2010);View Description Hide Description外頚動脈と中大脳動脈M2 部とをバイパスするECA-RA(SV)-M2 バイパスの作業手順,操作について詳述した.High flow bypass を開放したが,うまく流れていない,流量が足りないなどの疑いが少しでもある場合には,即座にその原因追及を行い,完全な流量が得られるまで何度でもバイパスのやり直しやグラフトの作り直しなどが必要になることを理解して行うべきである. -
小児 小脳脳腫瘍に対する化学療法の流れ:最新トピックス
20巻7号(2010);View Description Hide Description小脳に発生する脳腫瘍のうち,よく見られる疾患を取り上げた.脳腫瘍に対する化学療法は近年急速に進歩しており,非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍では不治の病であったのが,多くの症例で治癒に導けるようになった.現在,各がん種での分子レベルでの発症機序が急ピッチで解明されつつあり,それぞれのがん発生機序に応じた抗体薬やsmall moleculeの開発が今後大きく進むものと思われる.今後,海外では新規薬剤による治療の進展が予想されるが,わが国でも患者が不利益を被ることがないよう,迅速に治験ならびに臨床試験を進めていく必要がある. -
- Current Topic
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脳卒中における新しい画像診断・治療補助システムの開発と構築〜携帯端末(iPhone)を用いた早期診断・治療を目指して〜
20巻7号(2010);View Description Hide Description急性期脳梗塞に対する遺伝子組み換え組織プラスミノゲンアクチベーター(rt-PA,商品名:アルテプラーゼ.)の有効性が欧米の臨床治験により証明され,わが国でも平成17(2005)年10 月11 日より,発症3 時間以内の脳梗塞患者に使用可能となった.Canadian Stroke Registry3)によれば,搬送の5 分の遅れは,rt-PA 静脈投与できる確率を2%減少させ,病院内での治療が5 分遅れれば,効果不良となる確率が5%増加するという.すなわち,rt-PA 静脈投与の施行には,適応基準の厳守とともに可能な限りの迅速な対応(欧米では,適応が3 時間以内から4 時間30 分以内に延びた)が必要であると言えよう1,2,4). また近年,急性期脳梗塞に対する血管内治療による血栓除去術(mechanical thrombectomy)は諸外国から良好な治療成績が報告されており5 〜 8),わが国でも近々認可される予定である. しかしながら,急性期脳卒中治療を有効に行ううえで解決すべき問題も少なくない.現在,国内の中小規模の病院の多くは,経験豊富なベテラン医師,専門医の24 時間体制の勤務形態をとることは難しい.そのため,患者の受け入れが不可能になることや診断・治療適応を含め,専門医師がいないために診断や治療のタイミングが遅れて治療ができないこともある. われわれは,脳卒中の患者の受け入れから専門医へのコンサルトをより有効かつ効果的に行うため,現在広く普及している携帯電話(iPhone)を利用した遠隔画像診断・治療補助システムを開発したので報告する.
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Contribution
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- Case Report
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蝶形骨洞内異所性下垂体腺腫の一例
20巻7号(2010);View Description Hide Description蝶形骨洞に限局する疾患には細菌性副鼻腔炎や.胞性疾患が多いが,頻度は低いながら良性腫瘍や悪性腫瘍,真菌症も鑑別として挙がる3,4,5,8,10,11).一方,トルコ鞍外に発生する下垂体腺腫はまれではあるが,「異所性下垂体腺腫」として報告されている7).今回われわれは,蝶形骨洞内を主座とした下垂体腺腫の一例を経験したので,ここに報告する. -
慢性期にposterior petrosal approach でクリッピングした小型破裂前下小脳動脈瘤の1例
20巻7号(2010);View Description Hide Description脳底動脈−前下小脳動脈分岐部動脈瘤(BA-AICA動脈瘤)は全脳動脈瘤の1%以下とまれであり1,5,9),また解剖学的に手術アプローチが困難とされる.さらに近年の血管内塞栓術の飛躍的な発展によって13),basilar-trunk の動脈瘤に対する直達術の頻度も減少しており,現在でも脳神経外科医にとってchallenging な動脈瘤の一つである. 今回われわれは,血管内塞栓術が困難な小型(2 mm大)の破裂BA-AICA 動脈瘤に対し,慢性期にposteriorpetrosal(presigmoid retrolabyrinthine)approachで直達術を施行して良好な結果を得た症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
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Lecture & General Information
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- World Report
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海外脳外科最新事情(20)
20巻7号(2010);View Description Hide Descriptionオハイオ州都コロンバスは初夏を迎えました.みるみるうちに辺りに緑が広がっていき,あっという間に森の中に埋もれた街となりました.街の中を流れるオレンタンジー河は穏やかです.週末はヨットがあちらこちらで白い帆を広げるようになりました.前回(20巻5 号)もご紹介したように,ここは広葉樹の森に囲まれた肥沃の地,日本で言うと,気候や街の雰囲気が少し軽井沢に似ています.コロンバスにあるオハイオ州立大学(OSU)脳外科での日々のエピソードから,その一端を紹介します(図1). -
- 脳外科医的365日
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- コラム
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- 脳外科Q&A 明るいなやみ相談室
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