Volume 17,
Issue 11,
2008
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特集
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いまおさえておきたい注目の微生物
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インフェクションコントロール 17巻11号, 1063-1063 (2008);
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インフェクションコントロール 17巻11号, 1064-1068 (2008);
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多剤耐性緑膿菌(multi-drug resistant Pseudomonasaeruginosa,MDRP)は,アミノグリコシド系,カルバペネム系,フルオロキノロン系の3 系統の抗菌薬に対して,「すべて耐性」を示す緑膿菌のことである.日本(院内感染対策サーベイランス事業:JANIS)の2000 年の血液分離緑膿菌株の報告では,MDRP 株の分離率は1 〜数%と推定されている2)が,分離状況は各施設によって異なる.病原性は通常の緑膿菌とほぼ同じであり,健康な人が腸管内や鼻腔に保菌していても無害であるが,万一,敗血症や腹膜炎などを起こした場合の確立した治療法がなく,患者の予後の悪化や死亡率が増加するため状況は深刻である.
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インフェクションコントロール 17巻11号, 1070-1075 (2008);
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腸球菌は腸管内常在細菌叢を構成する主要菌の一つで,以下の3 つの特徴を有する.① 抗菌薬に低感受性である(セフェム系耐性,感受性のある薬剤でも殺菌されにくい)② 病原性は低く,上皮のバリア(皮膚や腸管)が破綻するか,体内留置異物での増殖が起こらないかぎり感染症を起こさない③皮膚や接触面に付着して生存しやすい このような特徴のため,主に,カテーテル関連菌血症,尿道留置カテーテル関連尿路感染,術創感染といった医療関連の感染症を起こす.
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インフェクションコントロール 17巻11号, 1076-1080 (2008);
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Bacillus cereus(セレウス菌)は,通性嫌気性(嫌気条件でも好気条件でも増殖可能)のグラム陽性大桿菌であり,病院環境を含む生活環境に広く存在する. B. cereusはさまざまな環境で生息することができ,比較的広い範囲の温度条件やpH 条件でも増殖可能である.さらに,乾燥・高温・消毒薬の存在下など細菌にとって不利な環境では芽胞(endospore)を形成し,生き延びることができる. この特徴のため,本菌は加熱調理の際に芽胞となって生き延び,食中毒の原因となることがある.B. cereusは複数の毒素(necrotizing enterotoxin,emetic toxin, phospholipase, protease, hemolysin)を産生することが知られており,これらの毒素が食中毒を含むさまざまな病態と関連している1).
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インフェクションコントロール 17巻11号, 1081-1084 (2008);
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かつてスーザン・ソンタグが指摘したように,ある種の病には隠喩がある.MRSA という名前はかつて「悪魔」という恐ろしいイメージがその名前に刷り込まれていた.しかし現在では,病院にMRSA はあまりにも多く,あまりにも日常的で,このようなイメージは消えてしまったかのように見える.他方,長期療養施設ではMRSA を「怖くて忌み嫌うべき対象」と決めつけてしまう.思考停止に陥り,理由もない受け入れ拒否の対象としているところがいまだに多い.急性期病院での無関心も,慢性期施設での思考停止も,MRSAという菌に立ち向かうときの大きな障害になっている.では,その実態,MRSA とは何者か?
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インフェクションコントロール 17巻11号, 1085-1091 (2008);
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ノロウイルス感染症は1 年を通じて発生が認められるが,冬期嘔吐症ともいわれ,11 月から発生数が増加し,12 月から翌年1 月あたりにピークを迎え,3 月ごろまで緩やかに続く.
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インフェクションコントロール 17巻11号, 1092-1096 (2008);
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疥癬はヒゼンダニ(写真1)が人の皮膚に寄生して生じる皮膚感染症であり,病型には「通常疥癬」と「角化型疥癬」の二型がある(表1).両者では病因となるヒゼンダニは同一であるが,寄生数が極端に違い,後者では数百万に及ぶ.したがって感染力に大きな相違があり,病院感染のほとんどが角化型疥癬を感染源としている.角化型疥癬は何らかの免疫低下に伴い発症する.
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インフェクションコントロール 17巻11号, 1097-1100 (2008);
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結核菌は長さ1 〜 4 μ m,幅0.3 〜 0.6 μ m の桿菌である.結核症は,薬の導入により治癒する病気となったと思われるかもしれないが,日本では結核患者の約1 割が治療中に死亡している.致死率は高齢者,重症者,および主要薬剤が無効となっている多剤耐性結核患者で高い.これらのうち死亡者の多くを占めるのは高齢者であり,多剤耐性結核は,初めて結核の治療を受ける患者の1%,再治療を受ける患者の10%程度である.
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インフェクションコントロール 17巻11号, 1101-1105 (2008);
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ヒトに病原性を有するインフルエンザウイルスでは,A 型,B 型,C 型が知られている.インフルエンザA 型は遺伝子配列が大きく変異して,まったく新しい亜型のウイルスとなることがある.これがヒトの間で世界的に流行することを,インフルエンザパンデミックと呼ぶ.歴史的に30 〜 40 年に一度の頻度で起こっており,1968 年以来観測されていない.
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インフェクションコントロール 17巻11号, 1106-1109 (2008);
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麻疹は小児の代表的な発疹性熱性疾患であったが,最近,高校生や大学生の罹患が多く,15 歳以上が約60%を占める.また幼児期に麻疹ワクチンを接種した者が罹患者の約25%を占め,修飾麻疹が多いのが特徴である.修飾麻疹とは,2次性ワクチン効果不全(secondary vaccinefailure),γグロブリン注射や経胎盤移行抗体により軽症化した麻疹である.
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インフェクションコントロール 17巻11号, 1110-1113 (2008);
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Clostridium difficileは,偏性嫌気性のグラム陽性桿菌であり,抗菌薬関連下痢症の原因の一つである.抗菌薬関連下痢症のうち15 〜 25%をC.difficile 関連疾患( C. difficile-associated disease,CDAD)が占める(図1)1-2). 投与開始後4 〜 9 日目での発症が多いが,手術部位感染予防に用いる単回使用でも発症しうるし,抗菌薬終了後8 週間も経って発症することもある1).症状は,典型的には下痢,腹痛,発熱,血便だが,バリエーションが多く,重症から軽症まで,さらに無症候の保菌者の場合もある.重症の場合は,イレウス,中毒性巨大結腸症,ときに腸管穿孔をきたす.下痢を欠き,イレウスや腹膜炎の病像を呈する場合もあるので注意を要する.偽膜を形成する症例は50%以下であり1),大腸内視鏡検査を行って偽膜がないからといってCDAD を否定できない. 近年,海外では毒性の強い株(BI/NAP1 株)の広がりが問題となっている3).
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連載
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フロントエッセイ
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インフェクションコントロール 17巻11号, 1041-1041 (2008);
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医療の質・安全学会,日本病院団体協議会,日本医師会,日本歯科医師会,日本看護協会,日本臨床工学技士会の呼びかけにより,「医療安全全国共同行動」がスタートした.これは,平成20 年5月から2 年間を実施期間として,全国の病院と医療従事者,医療団体と学会,患者,地域社会が共通の目標を掲げて一致協力することで,質・安全の向上を目指す取り組みが広く全国に普及し,目に見える成果を達成し,入院中の有害事象とこれに起因する死亡を低減させることを目指している. 8 つの重要テーマの一つがMRSA 対策を中心とする「医療関連感染症の防止」である.
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院内勉強会に使える 感染対策問題集 防護用具(1)
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インフェクションコントロール 17巻11号, 1044-1046 (2008);
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自己学習や院内での啓発活動・勉強会時に活用できる問題集です.感染対策の知識を短時間で正確に理解しましょう.
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院内指導にそのまま使える 感染対策まちがい探し
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インフェクションコントロール 17巻11号, 1047-1051 (2008);
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場面写真による「まちがいさがし」方式で,感染対策の基礎を学ぶ連載です.勉強会などの院内指導の場で,上手に活用しましょう!
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IC日記 奮闘する! 感染制御専門薬剤師
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インフェクションコントロール 17巻11号, 1114-1114 (2008);
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私は以前勤めていた新潟市民病院で感染制御専門薬剤師の認定を受けました。この病院のICTにはICD・ICN・認定臨床微生物検査技師と感染に関わる専門認定職種が揃っており、私は専門薬剤師としてフルに活動できました。
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ICMTから発信! 微生物検査室のSign/北里の教壇から
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インフェクションコントロール 17巻11号, 1118-1118 (2008);
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私は市中病院の微生物検査室で勤務していますが,業務内容は検査材料からの塗抹,培養・同定,感受性検査に加え,免疫検査,簡単な遺伝子検査です.塗抹,培養検査は手作業が多く,同定,感受性検査,遺伝子検査については機械化されています.業務内容は米国の微生物検査室と比較してもおそらく遜色ないと思います.世界のなかで日本は,感染症や病院感染に関する教育について後進国と言われますが,微生物検査は,機器主導ではありますが先進化していると言っても過言ではありません. / 当センターでは,今年度からついに感染管理認定看護師教育課程がスタートしました.当センターが所属する北里研究所では,学祖 北里柴三郎先生の精神が脈々と受け継がれ,感染症のメカニズムの解明,ワクチンなどの開発からICD やICN などの臨床に根付いた人材育成まで,幅広く力が注がれています.「感染症を制御するための研究と教育の推進は北里の使命である」と言っても過言ではありません.研修生にもこの使命がじわじわとしみこんで,受け継がれていくのではないかと思います.
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グローバル化時代をどう生きるか
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インフェクションコントロール 17巻11号, 1119-1119 (2008);
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日本は,その近代化の歴史のなかで,約300 年にもおよぶ「鎖国時代」を経て,先進近代国家の社会制度,文化など多くのものを吸収・加工・導入してきた.この歴史は,いまなお繰り返されていると感じる.私は,いまの日本はまさに「情報鎖国状態」ではないかと痛感している.それは,グローバル化の進行で,世の中のあらゆる面で(政治,経済,金融,医療,教育,環境など)世界がひとつ,つまりひとつのアリーナ(舞台)となりつつある時代であるにもかかわらず,日本がなぜか,「孤立化」している感じを否めないからである.
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月刊CDCガイドラインニュース
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インフェクションコントロール 17巻11号, 1125-1125 (2008);
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自爆テロのような大惨事が発生した場合、自爆犯本人や犠牲者(曝露源)の組織(骨片・筋肉など)や血液が飛び散って、周囲の人々(曝露者)に突き刺さっていく。曝露源は複数人のことがあり曝露した血液・体液もかなりの量となるため、病院における職業上曝露での感染対策をそのまま実施することはできない。いつ発生するか分からないので、十分な対応を用意しておく必要がある。CDC が「爆弾および同様の大惨事の傷病者に対するHBV, HCV, HIV, 破傷風の感染予防のための曝露後介入についての勧告」(http://www.cdc.gov/mmwr/PDF/rr/rr5706.pdf)を公開したので紹介する。
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SPOT オリジナル 感染対策マニュアルの作成と改訂
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インフェクションコントロール 17巻11号, 1126-1127 (2008);
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この「手術部位感染対策マニュアル」(以下,マニュアル)作成の最大の目的は,術後縦隔炎の根絶と医療関連感染の予防である.心臓手術後の合併症として心筋不全,脳梗塞などが克服されつつあるなかで,縦隔炎は術後入院期間の延長(時に3 〜 6 ヵ月に及ぶ)や生活の質の低下をきたし,最悪の場合は致死的にもなる,われわれにとって最強の敵である.さらに縦隔炎治療中の患者さんが被る疼痛や不安は深刻で,少なからず変形した創部への心理的,精神的なダメージは計り知れない.心臓は治っても創が治らないのでは患者さんにとっても医療スタッフにとっても無念である. このマニュアルは2007 年6 月に,熊本赤十字病院感染対策マニュアルに連動して,CDC ガイドラインをはじめさまざまな資料を参考に,関連部署が結集し,われわれの臨床現場に即した,今すぐ使える実践的なマニュアルとして独自に作成した.
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プロの真価が問われる コンサル手順 冒頭10分
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インフェクションコントロール 17巻11号, 1128-1128 (2008);
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現場からの第一報を受け,担当者は限られた時間のなかでまず何を伝えられるか? 初動「10 分」こそプロの真価が問われるところです.その場で役立つ手順書を感染症ごとに連載します.
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カンセナー救済企画 現場の疑問氷解Q&A
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インフェクションコントロール 17巻11号, 1139-1142 (2008);
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皆さんの日常現場での疑問やお悩みに,ICN がズバッとお答えします!